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HENRIK SCHWARZ AND KUNIYUKI
ONCE AGAIN REMIXED-SOULPHICTION REMIXES
MULE MUSIQ (GER)
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PHONIQUE
OUR TIME OUR CHANCE-WAHOO REMIX
DESSOUS (GER)
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今日にいたるまでクラウトロックはポップにおける巨大な影響のひとつとしてあり続けている。たとえばそれはレゲエと同じように、実に広範囲にわたってその影響の痕跡を残している。ブライアン・イーノからデヴィッド・ボウイまで、セックス・ピストルズからオアシスまで、アフリカ・バンバータからデトロイト・テクノまで、ポーティスヘッドからLCDサウンドシステムまで......クラウトロックの影響を受けていないジャンルがあるとしたらJ-POPぐらいだろう。それほどまでにクラウトロック(このギャグとして発せられた造語)は、欧米のポップ(ロックだけではない。テクノはすべてその恩恵にあずかっている)における重要なアイデアである。
その昔、偉大なるリロイ・ジョーンズがブラック・ミュージックの本質を「chainging same(変わってゆく同じもの)」という言葉で表現したことを受けて、評論家のサイモン・レイノルズはクラウトロックの、とくにノイ!のトーマス・ディンガーによるドラミングをホワイト・ミュージックにおける「chainging same」であると書いたことがあった。なるほどーと思ったものだが、しかし後から考えてみれば、日本のバンド――コーネリアス、バッファロー・ドーター、ゆらゆら帝国、ボアダムス、あるいはヘアー・スタイリスティックスといった連中には多かれ少なかれクラウトロックからの影響が聴こえる。白人だけに相性が良いわけでもない。
1990年代初頭はフリー・ジャズとスピリチュアル・ジャズ、その後半は〈スタジオ・ワン〉、ゼロ年代前半はポスト・パンク、そして最近ではダブステップのコンピレーションをせっせとリリースしている〈ソウル・ジャズ〉レーベルが2010年に送り出すのはクラウトロックである。これは興味深い話だ。何故ならこの20年、トレンドセッターとしての役目を果たしているこのイギリスのレーベルが、いまになって70年代のドイツの実験的なロック・バンドに手を伸ばしている。レゲエの7インチや70年代初頭のスピリチュアル・ジャズのオリジナル盤の隣には、これからカンやアモン・デュールが並ぶというわけだ。
実はクラウトロックに関して言えば、ここ数年、イギリスではその手の文献が出版され、また、レディオヘットをはじめオアシスやプライマル・スクリームといった大物までもがその影響を取りいれたこともあってか、再評価の熱が高まっている。1970年代なかばにイーノが発見し、それを真似てデヴィッド・ボウイが取り入れて、あるいはポスト・パンクにおいてはジョン・ライドンやザ・フォール、キャバレ・ヴォルテール等々がその先鋭性を評価し、それから1995年にはジョリアン・コープが70年代初頭のドイツのロックにおける精神錯乱にスポットを当てて『クラウトロックサンプラー』を上梓した。これまでも何度もドイツの波は来ている。ただ、今回はようやく歴史的に......というか、まあ、教科書的にそれを俯瞰しようとしている。
よって話は1967年のドイツの学生運動からはじまる。活動家、ドイツ赤軍、コミューン文化の拡大、ドラッグ・カルチャーの氾濫、これら政治的騒乱と平行して繰り広げられた電子音楽の実験――カールハインツ・シュットクハウゼンはホルガー・シューカイに教え、あるいは松村正人が思い入れを持って語るヨゼフ・ボイスの指導のもとでコンラッド・シュニッツラーが学んでいる。それは、ナチスの悪夢といっしょに過去を消去された当時の若者に"ゼロ年"という意識を植え付け、さらに熱を呼ぶ。そしてそれは、非・音楽、反・メロディーと反・リズムという、どんな過去ともリンクしようとしない破壊的な試みをうながすのだった。その最大の実験がシュニッツラー率いるKlusterだった、といまでは言われている。
CDでは2枚組、全24曲を収録したこのコンピレーションは思っていたよりもずっと良いできだ。1曲目はカンの"ア・スペクタクル"、1978年の曲で、見逃されがちな時期の曲だが、いま聴いても素晴らしいし、コズミック・ディスコの隣で鳴っていても何ら違和感はない。そしてハルモニア、ポポル・ヴー、コンラッド・シュニッツラー、ファウスト等々といった有名どころが続いて、1枚目の最後はノイ!の大クラシック"ハロ・ガロ"。2枚目はクラスターのコズミック・サウンドからはじまる。それからメビウス、アモン・デュール・II、アシュ・ラ・テンペル、タンジェリン・ドリーム、レデリウス等々。カンの後期のヒット曲"アイ・ウォント・モア"に続いて、締めはアンビントの先駆者のひとり、ドイターのドローンによる恍惚としたトリップで終わる......。ダモ鈴木在籍時代のカンが収録されていないのは大いに不服だが、それでもこれだけよく揃えたものだと思う。入門編としては上出来でしょう。
アンカーソングはロンドン在住の日本人青年である。彼は音楽をやるために渡英し、働きながら活動を続けている。彼の音楽はインストゥルメンタルのエレクトロニック・ミュージックだが、実は、すでに数年前から日本では若いリスナーから幅広く支持されている(過去のミニ・アルバムはともに1万枚近くのセールスがある)。これは、アンカーソングがロンドンから送ってくれた便りである。
ロンドン、それは世界中のありとあらゆる人種が共存する街で、週末のOxford Streetの様相は、まさに「メルティング・ポット」そのもの。その中には、世界の音楽シーンの中心地であるこの街で成功することを夢見て、海外からやって来た人びとも少なくありません。まさにそんな外国人のひとりである自分が、この街でミュージシャンとして生きる日常について、綴ってみたいと思います。
まずは簡単に自己紹介をさせて頂きます。
僕はAnchorsong(アンカーソング)という名前で、ロンドンを中心に音楽活動をしています。2004年に東京で活動をスタートさせ、3年後の2007年10月に、ここロンドンに引っ越してきました。現在はこの街のクラブやライブハウスを中心に、ジャンルを問わずさまざまなパーティーで演奏しています。ロンドンでは、ライヴハウスとクラブのあいだにあまり隔たりがないのですが、ここでは敢えて、前者を中心に活動するロック/ ポップス系と、DJを中心としたクラブシーンに分けて、書いてみたいと思います。

アンカーソングのライヴ風景
まずロック/ポップス系のシーンでは、やはりオルタナティヴ/インディー系が人気です。東ロンドンに店を構える〈Rough Trade Records〉に足を運べば、スタッフによって厳選された世界中のアーティ ストによる作品の数々が、有名無名を問わず、所狭しと並べられています。なかでも現在とりわけ注目を集めているのは、いまやトレンドの発信地として認識されつつある、NYはブルックリン出身のバンドです。MGMT、Vampire Weekend、Grizzly Bear、それにAnimal Collective等々、メジャーで成功しているバンドのみならず、Bear In Heaven、 The Hundred In The Hands、Pains of Being Pure At Heartなど、現地でまさに人気に火が点こうとしているバンドまで幅広く取り扱っていて、流行に敏感な音楽ファンで店内は常に賑わっています。個人的には、〈XL Records〉傘下の〈Young Turks〉から新作を発売したばかりのHoly Fuck、また彼らと同じくカナダ出身のBorn Ruffiansというバンドに注目しています。
クラブ/ダンスミュージック系のリスナーがよく足 を運ぶのは、Central Londonにある〈Phonica Records〉です。テクノ、ハウス、エレクトロ、どれをとってもまさにダンスミュージックの本場であるロンドンならではの洗練されたセレクトで、現場でプレイするDJたちにとっても欠かせないレコード屋となっています。なかでもやはり、いまもっとも勢いがあるのはDubstepのシーンで、SkreamやBengaはもちろんのこと、Burialを擁する〈Hyperdub〉を主催するKode 9、Scuba、Ikonika、Joy
Orbison等々、ユニークな才能が次から次へと登場して、シーンに更なる活気を与えています。
個人的に注目しているのは、「Vacuum EP」のリリースで一躍脚光を浴びたFloating Points、デトロイトの新星Kyle Hall、そしてAaron Jeromeの変名プロジェクトであるSBTRKTなどです。
レコード業界も不況の煽りを受けているというのは紛れもない事実のようですが、クラブやライヴハウスといった現場では、その事実を感じさせないほどに、連日大いに賑わっています。
先日は〈Heaven〉にて開催された、Holy Fuckのライブに足を運んできました。ロンドンではクラブとライブハウスのあいだにあまり大きな隔たりがないというのは先に述べましたが、今回のイヴェントはまさにその事実を体現するかのような内容で、先述のSBTRKTがサポートとして出演していました。レーベルメイトであるという点を除けば、両者のあいだにはさほど共通点がないようにも思われますが、集まったHoly Fuckのファンたちはラップトップを使用したSBTRKTのパフォーマンスにもしっかり反応してい て、ロンドンのオーディエンスの懐の広さを、あらためて感じさせてくれました。生演奏とエレクトロニクスをユニークなバランスで組み合わせたHoly Fuckのパフォーマンスはとてもパワフルかつ新鮮で、満員御礼となった会場は大いに盛り上がっていました。
過去もいまも変わらず、音楽ファンにとってロンドンは本当に刺激的な街で、僕自身、シーンを外から見ているだけでなく、その一部になりたいという希望を胸に、この街にやってきました。
とくに頼れそうなアテがあるわけでもなかった僕は、渡英したばかりの頃はブッキングを見つけるのに苦労した時期も、少なからずありました。当時は駆け出しのバンドらに混じって、街の小さなパブでよくライヴをしていました。ロンドンには小さなパブが星の数ほどあって、そのなかには簡易なステージを設置しているところがたくさんあるため、それだけアーティストにとって演奏する場が多いということでもあります。
また日本とは違い、出演する上でバンドにノルマがかせられることはまずなく、それは若者たちが気楽に音楽をはじめるのを促す要因にもなっていると思います。
ロンドンではアーティストのブッキングやマネージメントが、アンダーグランドにまでしっかりと行き渡っていて、どんな小さなパブであってもエージェントやプロモーターを通して出演するというのが一般的です。
現在、僕はSOUNDCRASHというプロモーターにマネージメントを担当してもらっています。彼らは〈KOKO〉や〈Cargo〉といったロンドンのクラブを中心に、〈Ninja Tune〉や〈WARP Records〉のアーティストを軸にした、数多くのコンサートやイヴェントをオーガナイズしていて、僕はこれまでに、DJ Krush, Jaga Jazzist,Hexstatic, DJ Vadimなどのアーティストのサポートを務めてきました。つい先日には、収容人数3,000人を誇るロンドン市内でも最大規模の会場のひとつ、〈The Roundhouse〉にて、〈Ninja Tune〉から新作を発売したばかりのBonoboのサポートを務めさせてもらいました。

会場となったザ・ラウンドハウス
ロンドンのオーディエンスはとても素直で、いいと思ったときにはとても熱のこもったレスポンスを見せてくれますが、逆に退屈したときには、たとえそれがヘッドライナーのパフォーマンスであっても、冷ややかな反応を見せます。とくに今回の僕のようなサポートアクトの場合は、オーディエンスの多くが事前に予備知識を持たずに来ているため、彼らを楽しませることができるかどうかは、まさにその日のパフォーマンス次第と言えます。
そういう意味でもソールドアウトになった今回の公演は、これまででもっともやり甲斐のあるショーのひとつになりました。開演直後は様子を伺っていたオーディエンスが、どんどん盛り上がっていくのが手に取るように見え、最初は5割程度しか埋まっていなかったフロアも、演奏を終える頃には超満員になっていて、3,000人のオーディエンスから大きな拍手と歓声を頂きました。こういうシチュエーションは、本当にいいパフォーマンスが披露できたときにだけ経験できることなので、僕にとって非常に忘れ難い夜になりました。
そして満を持して登場したBonoboは、集まったお客さんをさらに盛り上げる、素晴らしいパフォーマンスを披露してくれました。今回はストリングスやホーンセクションを交えた、総勢12名によるフルバンド編成での公演で、マルチインストゥルメンタリストであるBonoboことSimon Green本人はベースを中心に演奏しつつ、バンドを見事にまとめあげていました。
また今回の公演にはFlying Lotusの"Tea Leaf Dancers"のシンガーとしても知られるAndreya Trianaが全面的に参加していて、新世代の歌姫として大きな支持を得つつある彼女が、その抜群の存在感を誇る歌声で、オーディエンスを大いに湧かせていました。終演後、いつまでも鳴り止まない歓声と拍手を前に、ステージ上のSimonはとても嬉しそうな表情を浮かべていました。SOUDCRASHのクルーも「これまでにオーガナイズしたコンサートのなかでも最高のもののひとつになった」と、大いに満足している様子でした。

白熱したステージを展開するボノボ
ロンドンに来て約2年半、シーンの刺激を毎日のように肌で感じられるこの街での生活は、本当に魅力的だと思います。非常に競争率が高い業界であることは事実ですが、実力のあるアーティストが評価され、そしてのし上がっていくという古き良き体制が、この街のアンダーグランドシーンには、いまもしっかりと根付いています。
最近、日本では海外に出たがる若者が少なくなったという話を時折耳にしますが、僕の知る限りでは、そういうった刺激を求めてこの街にやってきている日本のアーティストはたくさんいて、それぞれがさまざまな形で、その個性を表現しています。この記事を読んでくれた方が、この街で音楽をするということに少しでも興味を抱いてくれたのであれば、この上なく幸いです。
■アンカーソングのサード・シングル「The Lost & Found EP」は〈Lastrum〉より発売中。また、アンカーソングは7月29日、ele-king@DOMMUNEに出演決定!
僕は、オフタイムではルーツ的な音楽を聴くことが多い。スカやレゲエといったジャマイカの音楽だったり、ジャズ/フュージョン、ソウル、ファンク、ディスコ、ブルース、カントリー、ソフト・ロック、ワールド・ミュージックなどなど。日頃、主張が強くてうるさいものばかり聴いているので、なるべくけれんみのないものを求めてしまうのかもしれない。生活や街に根付いたような表現だったり、推敲を重ねて削りだされた作品は、たとえどんなジャンルの音楽であってもけれんみなく響くものだ。
キセルのニュー・アルバム『凪』は、まさに推敲を重ねて削りだされた美しさを持つ作品だ。が、よ~く見つめてみると、美しさと同時に「いびつ」をも有している。生活に根付いているようで、どこか「ねじれ」ている。そんな面白さがあるアルバムである。
あまりに音楽が日常の空気と溶け込んでいるためか、最初の1~2回は、うっかり聴き過ごしてしまうくらいだった。〈これまででもっとも音数が少ない〉と言われた前作よりさらに音数は少ない。演出も抑制されていて、作為的なものを徹底的に排除したアルバム......、最初はそう思っていた。しかし、聴くたびにその本当の輪郭と細部が浮かび上がってくる。その巧妙さに感嘆する。つまり、実はさりげなく演出を加えている、そんな塩梅が今作『凪』のポイントではないだろうか。
キセルの音楽をひと言で表すなら、モンドな感性で彩られたフォーキーなポップス、ということになる。ノスタルジックな日本語の歌と穏やかな演奏を核にしながら、レゲエをはじめとしたカリブ・ミュージックのリズムとシンセサイザーやテルミンなどの空間的な音が、若干のエキゾチズムとサイケデリックな風味を与えている。うまいなぁと思うのは、「さあレゲエやってます」とか「ダブを取り入れてますよ」といった主張を感じることのないアレンジだ。それは耳を澄ませば聴こえてくるレゲエのリディムであり、電子音だ。音が削がれていった結果なのだろうが、考えてみると、ものすごモダンかつオルタナティヴな試みのように思える。彼らはさも平静な顔で、どこにもないような音楽を奏でているわけだから。
兄弟"ふたり"のユニットであるということが大きく関係しているのかもしれない。ふたりで演奏するわけだから、大人数のバンドよりも音数を減らす必要がある。また、ふたりで演奏できる範囲で、最大限に曲を表現しなければならない。だから、なおさら音を吟味しなければならない。アルバムを何度も聴いていると、いろんな発見がある。多様な音楽のエッセンスを1曲のなかに見つけることもできる。あらゆる音楽の"素"を取り出して再構築されているのがわかる。もうひとつ、キセルの音楽の特徴のひとつとしてよく言われる、空想的な世界観だ。新作『凪』も、じっくり覗き込んでみると日常の風景とは少々異なる世界が広がっていることに気付かされる。
キセルの独自性がさらに磨かれた通算6枚目のアルバム『凪』。長い付き合いになりそうだ。
僕があれこれ批評する立場にいないことはよくわかっているけれど、20年近く前から同じようにレーベルをやったり日本の電子音楽を発掘して世界に発信しようとしてきたかつての仲間には、やはり頑張ってほしいからいつも少し辛口になるし、老兵の意地というかネット・レーベルなんかには真似できないような作り込んだプロダクションやあっと驚くような作品を聴かせてほしいと思ってしまう。最近UMAと名前を変えたらしい(?)〈サードイアー〉は、去年初音ミクでYMOのカヴァーをやったアルバムがかなりヒットしたんだけど、正直「もうどうやってもYMOの呪縛からは離れられないのかな」と感じてしまった。ほら、その前にもセニュール・ココナッツの『Yellow Fever』というヒットもあったし。まぁどっちもいい作品だったとは思うけど......。そして、そのセニョール・ココナッツのなかのひとでもある、アトム・ハートが、普段は神経内科医として活躍されてるという日本人マサキ・サカモトと組んだのがこちらのアルバムである。古いリスナーなら「アンビエントオタク」ことテツ・イノウエとかつてよく組んでいたアトム・ハートのことを思い出すかもしれないが、今回やっているのは、あの頃のアンビエントやエレクトロニカとも違って、なんというかエキスポ的な電子音楽博覧会だ。アトムでいうとHAT以降の細野さんとのつながりだったり、さらにはテイトウワとか、まりんの系譜にもつながるような神経質で繊細でキッチュで、でもポップという路線。YMOが大衆を惹きつけた大きな要素であり、遺伝子的に後の世代にも受け継がれてるあの感じをすごく持っている。
サカモト氏のソロ作はしっかり聴いてないのでこれまでの作風を十分把握してるわけではないが、ノリノリでコスプレ風の写真に収まっているふたりを見ると、間違いなくレトロ・フューチャー的な志向はどちらか一方が仕切ったものではなく合作の方向性として自然に出てきたものなのではないかと想像できる(大元のコンセプトはアトム側から提示があったとサカモトがインタヴューで話している)。そしてそこで掘り起こされたのは、組曲風の意匠をまとった、カラフルな宴のごとき歴代電子音楽大全であり、冒頭ではノンスタンダード時代の細野さん的な東洋エレクトロOTTビートが幕を上げ、コシミハル嬢がかつてとなにも変わらないキュートな声で電子音との共演を聴かせ、トレヴァー・ホーン的なオケヒットがうなりを上げたかと思うと、フロア向けトラックのように重いキックが鳴ったり、さらには「サブライムだから」と言わんばかりにレイ・ハラカミのごときシンセが耳をとらえるのである。ジャケに描かれてる道の向こうの光は、誰が見てもわかるとおり『未知との遭遇』へのオマージュで、あのUFOとの交信に使われた曲のフレーズをモチーフにしたパートも後半には出てくるし、異星人交響曲と名付けられたアルバム全体が、「異星人は8本脚でもないし、地球を侵略しにやって来るわけでもない」という時代の変化とともに提示された科学・未来・未知への無根拠な信頼や明るい展望に彩られたあの頃への思いが詰まっている。
ドイツ人のアトム・ハートがチリに移住してチリのペースで生活しながらこうやってまったく南米的でもなんでもない、むしろ東京的な電子音響に手を染めているのは、我々としては感慨深い。まぁ彼もセニョール・ココナッツやアシトン(アシッドなレゲトン)とか、南米に住んでいることを体現した音楽もやっているのでこれは、サイド・プロジェクトならではの上質な洒落というとらえ方もできるだろう。ただ、本職はドクターというサカモト氏が加わることで得られたはずの、商業的成功から解放された位置にいる音楽家ならではのプラスαの創造性というのがあまり見えてこないのが残念だ。ハラカミ的トーンをスパイス的に、なかばジョークとして入れるというのも、ここまで作り込んだ作品でなら「ニヤッとさせられる」という感想でもいいと思う。もし、少し前にUstreamでおこなわれたハラカミ氏のライヴを聴かなかったら、自分もそんな風に思ったかも。これまでの作風を一旦リセットするような、ときに猛々しくアヴァンギャルドな響きをまとった尖った音にビックリしつつ、中盤からじょじょにハラカミ節が聴こえてきて、あぁこの人はすごいと、その神々しいまでの電子音の波に打たれながら思ったのだ。普段はあんなに飄々としてるハラカミ氏だけど、あのライヴは回線を通してでもその並々ならぬ気迫が伝わってきたし、だからこそ、〈サブライム〉が、サカモト氏が、こういうアプローチをするのはどうなんだろうと、いまいちど考えてもよかったのんじゃないか。大人の遊びとしては充分すぎる楽しいアルバムだけど、音楽でどうやって食っていくか、いや職業としての音楽家でなくてもいいのではないか、というような議論が頻出するようになった現在だからこそ。
おそらく南アフリカのワールドカップが近づいているせいだろう。アフリカが色濃い熱帯のビートを耳にすると無性に燃えてくる。カネと時間があれば行っていただろう。アフリカ大陸の最南端まで。
アフリカにとっても、フットボールは庶民のスポーツだ。南アフリカでラグビーのワールドカップは開かれているが、ラグビーは当地の黒人にとっては関わりのないスポーツである。が、フットボールはそういうわけにはいかない。何か新しい盛り上がりがあるんじゃないかと期待している。そんなときにポワリエの新作『ランニング・ハイ』は実によろしい音楽だ。このアルバムを聴いたら多少なりとも気持ちが上がるはずだ。たとえ南極大陸で鳴ったとしても観測員たちに汗をかかせ、ひょっとしたら、そのこわばった皮膚に笑みをもたらすかもしれない。
ポワリエは熱帯のリディムの採集家である。このモントリオールのDJは、いつの間に、そういうことになっていた。2003年にジスラン・ポワリエ(Ghislain Poirier)名義でデビュー・アルバム『ビーツ・アズ・ポリティクス(政治としてのビート)』を発表した頃の彼は、そうではなかった。リース元である〈チョコレート・インダストリーズ〉やプレフューズ73、アンチ・ポップ・コンソーシアム、あるいは初期のディプロの流れを汲むようななかばストイックなIDMスタイルに基づくヒップホップを展開した。2005年の『ブレイクアップダウン』は彼の美的なセンスによる初期のベストと言われているが、同じく2005年にはレディ・ソヴァリンの"フィデル・ウィズ・ザ・ヴォリューム"のリミックスを手掛け、彼なりのグライミーなダンスホールを試みるている。で、それから〈ニンジャ・チューン〉と契約してからの最初のシングルとなった2007年の「ブレイジン」では、ザ・バグやDJ C(M.I.A. のリミキサーとして知られる)といった人たちの力を借りながら野太いビートを鳴らしつつ、まあ、悪くはないのだけれどまだ自分のスタイルを模索している感じだった。
ターニング・ポイントは2007年の『ノー・グラウンド・アンダー』だ。アルバムで彼は、南半球やカリブ海のビートをループさせ、MCたちのエネルギッシュな声を活かしながらパワフルなダンス・ミュージックを披露する。そして......アルバムに収録された"ディアスポラ"という曲は、いみじくも彼のデビュー・アルバムのタイトルである"政治としてのビート"という志をその曲名とともに表している。「レバノン! イングランド! シリア! ナイジェリア!」――MCのこうしたシンプルな叫び声は、しかしポワリエの音楽にふくまれる政治的野心の叫びであもる。えー、つまりアフロ・ディアスポリック・ミュージック――周縁化された文化から聴こえる響きは支配的な文化への抵抗として機能する、それが『ピッチフォーク』言うところの"ポスト・モダンの脱構築主義者"ポワリエの戦略である。
......などと書くと堅苦しい音楽だと思われる方もいるだろうが、実際のところ彼の音楽は、その背後にある種の知的な根拠があるにせよ、とても激しく、魂がこもっている。事情を知らなくても多くの人は楽しめると思う。なにせこれは熱いダンス・ミュージックなのだ。ポワリエはダンスホール、ソカ、サンバ、アフロ......さまざまなビートを都市のIDMスタイルのなかで掻き回している。今作ではソカのビートを大々的にフィーチャーしているが、トリニダード・トバコ生まれのこの音楽はゼロ年代におけるもうひとつのトレンドでもあって、さまざまな編集盤が出回っている。
お馴染みのフェイス・Tやズールーをはじめ、ほとんどの曲にMCを入れているのも今作の特徴である。そのなかにダンスホール系のブロ・バントンやウォーリア・クィーン、白人のYTもいる。どいつこいつも気合いが入っていて、スピーカーからはMCたちのツバや汗が飛び散ってくるようだ。"エネミーズ"や"レット・ゼム・ヘイト"など、曲名にはポワリエの抵抗めいた態度がそれとなく見えているのだが、僕には何をライムしているのかわからない。それでも熱いものは伝わる。そして......ビートの猛攻撃は最後まで手を抜くことはない。ミニマルなデジタル・ダンスホールの"マラソン"、アシッディなエレクトロ・ソカの"90'S バックヤード"のようなインストゥルメンタルの曲も面白い。
ポワリエは2009年にメジャー・レイザーの「ホールド・ザ・ライン」のリミックスを手掛けているが、いまや彼はたとえディプロと比較されても遜色のない、IDMの文法における熱帯リディムの採集家だ。そう、メジャー・レイザーはバカバカしいけど憎たらしいほどスタイリッシュだった。で、ポワリエときたら......がちがちにシリアスだけど素晴らしくエネルギッシュである。
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KAZAMATSURI KENTA
ALTITUDE IMPROVING MIX
RUDIMENTS / JAP / 2010.5.11 /
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