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Kode9

Kode9

DJ-Kicks

Studio K7/Ultra Vibe

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Kode9

Kode9

Memories of the Future

Hyperdub/Ultra Vibe

Apple Music

E王

野田 努   Jun 07,2010 UP

「このアルバムの秘密はリンスFMを聴かずにフーコーとドゥルーズを読んでいる人たちだけに明らかにされるのだろうか?」――コード9の『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』に関して、『ピッチフォーク』はなかば皮肉っぽくこう書いている。『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』は簡単に言えばリントン・クウェシ・ジョンソンのポエトリー・リーディングのダブステップ・ヴァージョンで、アルバムのなかでダブポエットを披露しているスペースエイプは、コード9のアカデミシャン仲間でもある。とうてい僕の英語力では聴き取れないので、「何を言ってるんですか」と以前コード9に取材したときに訊いたら、それなりに哲学的な内容を喋っているらしい。もっともそれは「フーコーとドゥルーズ」というよりも、コード9によればポール・ギルロイに触発されているとのことだったが......。

 しかしそれでも周知のように、2006年の10月にリリースされた『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』は素晴らしい評価を得た。何よりもブリアルのあの偉大なデビュー・アルバムに続いて同じレーベルからリリースされるという、決して有利な順番とは言えない状況のなかで、コード9はその逆境を跳ね返し、自分のヴィジョンをしっかりと見せつけたと言える。まあ、そもそもコード9はブリアルのデビュー・アルバムの次に自分のアルバムのリリースを決めたレーベルの主宰者であり、そしてコード9こそブリアルの師なのである(ブリアルはコード9の文章の読者だった)。

 そしてブリアルのデビュー・アルバムが都市の腐敗の"悲しみ"を表しいているのに対して、コード9のそれには都市の貧困や抑圧、もしくは監視への"怒り"がある。彼のリントン・クウェシ・ジョンソンのダブポエトリーの借用は、決して飾りではないのだ。彼は......「テロリズム・パラノイア、内部コミュニティの争い、インナーシティの抑圧、それら恐怖のテーマを文字通りのジャマイカ感覚において企てるのである」(『ピッチフォーク』)

 コード9と〈ハイパーダブ〉において重要なのは、「フーコーとドゥルーズ」ではない。その"ジャマイカ感覚"である。彼は『ガーディアン』の取材で、ジャマイカのサウンドシステム文化のUKにおけるミューテーション(突然変異)が〈ハイパーダブ〉のコンセプトであると話している。それは......「ダブからレゲエ、ジャングルを通じてグライムやダブステップあるいはファンキーまで、音楽の変化と進化がどのようにおこるのかという考え方でもある」

 この度、コード9にとって2枚目となるミックスCDが"DJ-Kicks"のシリーズとしてリリースされる。"ダブステップ・オールスターズ"の"vol.3"として発表された最初のミックスCDではスペースエイプのダブポエットをフィーチャーしたように、コード9は『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』と同じように暗闇を凝視している、と言える。が、4年ぶりの"DJ-Kicks"では、彼はファンキー(スティッキーやムジャヴァ)を挟み込み、ブロークンビーツ(マッドスリンキー)を混ぜ、ポスト・ダブステップ(ラマダンマン)を取り入れ、グライム(テラー・デインジャー)をかぶせる。この1年ほどのダブステップの新しい展開を楽しんでいるようである。ヴァリエーション豊かになった〈ハイパーダブ〉のカタログ(アイコニカ、クーリー・G、あるいはゾンビー等々)を披露しながら、あるいはオリジナル・ダブステップ(デジタル・ミスティックズ)の古びない魅力を証明する。緊張感という点では4年前の"vol.3"だろうけれど、「ジャマイカのサウンドシステム文化のUKにおけるミューテーション」という点でいえばこちらは素直にその音を楽しめる内容でもある。ちなみに最後のトラックは、ローファーの〈スワンプ81〉から今年リリースされたザ・バグの"ラン"。

野田 努