「Not Waving」と一致するもの

キノコホテル - ele-king

「『ロックは死んだ』と何度も言われて来た」という言葉にも聞き飽きた。2009年、年の瀬、私は新潟にいた。夜も深くなった頃、寝静まった新潟古町の商店街を抜けて、雑居ビルのなかで30年も前から変わらずやっているというロック喫茶に連れて行ってもらった。

 「サラダホープ知らないの? 新潟では、柿の種より、サラダホープがメジャーなんだよ」
 「キュアー知らないの? そうだよねー、まだ生まれてないよねー」
 カウンターには発売されたばかりの『ジャップ・ロック・サンプラー』(ジュリアン・コープ、白夜書房、2008年)
 「フラワー・トラヴェリン・バンドは最高だよ!」
 このご機嫌なマスターがいまもっとも夢中になっているのが、このキノコホテルだという。「ちょっと待ってて、DVD見せたげる」と言って、マスターはDVDをかけはじめた。
「ほら、これこれ。俺が映ってんの!」
 カメラの前で拳を挙げてピョンピョンはねているマスターの頭の影が映っている。キノコホテルは、日の沈む街、あの極北の間章の街のロック喫茶の親父を夢中にさせている。これは一体どういうことなのか。

 キノコホテルは、キノコカットの女の子四人からなるGSバンドで、メンバーは架空のホテル「キノコホテル」の支配人と従業員ということになっているらしい。ボーカルの女の子の名前は、マリアンヌ東雲である。マリアンヌと言えば、ジャックス。早川義夫が「♪オレはマリアンヌを抱ーいているー」のマリアンヌである。早川義夫が惚れたマリアンヌである。

 あの間章の街のロック喫茶の親父を夢中にさせ、早川義夫が抱いた女と同じ名前を名乗る女がどんな女なのか、いちどは聴いておかねばならない。私のこのアルバム購入の動機は他でもない、単なるつまらない女のジェラシーの感情にすぎないのかもしれない。

 ジャックスは歌う。
「二人が見つけたこの恋を離したくないいつまでも。時計をとめて見つめていたい瞳にうつる愛を」
"時計をとめて"『ジャックスの世界』

 いっぽう、キノコホテルはこう歌う。
「許されない二人の時は止まりはしない。繋いだ手離したなら、何もかも忘れましょう。果てのないこの旅路をまた独り歩き出す」
"還らざる海"『マリアンヌの憂鬱』

 ジャックスはこんなに気持ち悪いラヴ・ソングだったんだなあ。「ロックは死んだ」とか「ロックは永遠だ」とか議論するのはたいてい男たちだ。そんなことどっちでもいい。生まれて、死んで、また生き返って、また死んで、またまた生き返って......。世界はこんなに無情なのに。それなのに、誰が、すでに誰かがやったことと同じことをもういちどしてはいけないと決めたんだろうか。キノコホテルには「何か新しいことをしなければならない」という強迫観念の潔い消失がある。この時代遅れのGS歌謡を、「ネオGS」とか「ポスト・ネオGS」とか「ポスト・ポストネオGS」......とか言わずに何のためらいもなくおこない、親父たちを確信犯的に翻弄できるのが、この毒キノ娘たちである。そして、「パンクの初期衝動が!」と言いながらも、ふと気を抜くとまんまと毒キノコに翻弄されてしまうノスタル爺じいを、私はとても愛おしく思う。

「キノコは生の世界と死の世界の媒介者である。」(飯沢耕太郎『きのこ文学大全』平凡社新書、2008年)

CHART by JET SET 2010.04.27 - ele-king

Shop Chart


1

WOOLFY / DJ SPUN

WOOLFY / DJ SPUN WHATCHAWANNADO VOL.2 »COMMENT GET MUSIC
新興リエディット・レーベル"Whatchawannado"第2弾がヤバイんです!!Stone Throw配給によるエディット・シリーズ第2弾。本作では"Woolfy"と"DJ Spun"のニュー・ディスコ界のドンお二方をフック・アップ。これからの季節の重宝必至ですのでお見逃しなく。

2

ARSENAL

ARSENAL OUTSIDES »COMMENT GET MUSIC
またもやベルギーからの驚異。Cut CopyでDelphicな青春ダンス・ロック・キラーを超感動Remix!!当店注目のベルジャン・デュオArsenalによる、Cut CopyのムードとDelphicの高揚が襲うロマンティック・インディ・ダンス・キラー!!Compuphonic、Gui BorratoによるRemixも死ぬほど素晴らしい!!

3

CX KIDTRONIK

CX KIDTRONIK BLACK GIRL WHITE GIRL »COMMENT GET MUSIC
これはトンでもない!!キラー・アバンギャルド・ヒップホップ!昨年復活を果たしたAnti Pop Consortiumの元DJ、鬼才CX KiDTRONiKのピクチャー盤12"+CD仕様の限定盤がStones Throwからリリース!さらにC/WにはMF Doom a.k.a. King Geedorhaをフューチャー!

4

CYPRESS HILL

CYPRESS HILL RISE UP »COMMENT GET MUSIC
復活作にして最高傑作!「Cypress Hill」8thアルバム、遂に入荷です!!6年も待ったかいがあった・・・B-Real、Sen Dog、Dj Muggs、Eric Boboの4人が自らが持つ魅力をじっくりとビルド・アップし集約、余す所無く封じ込めた待望過ぎる8thアルバム堂々完成です!

5

DANNY THE DANCER PRESENTS OTO GELB

DANNY THE DANCER PRESENTS OTO GELB A DISCO CLASSIC »COMMENT GET MUSIC
Daniel Wangさんのリエディットはやはり他とは一味も二味も違います!!昨年の来日、そして今年の元旦の恵比寿ガーデンホールでもスピンしていたキラー・チューンが遂にアナログ・カット。これは最高です、買って下さい。

6

MIM SULEIMAN

MIM SULEIMAN NYULI »COMMENT GET MUSIC
先日のDommuneプレイも最高だったMaurice Fultonのプロデュース!!ザンジバル出身のシンガーMia Suleimanによる1st.アルバム『Tungi』からの先行カット。Maurice Fultonプロデュースによるグレイト・モダン・アフロ・ポップ!!

7

MAKOSSA & MEGABLAST / DISKOKAINE

MAKOSSA & MEGABLAST / DISKOKAINE CD TWELVE SAMPLER 1 OF 2 »COMMENT GET MUSIC
辺境ビーツ・ファンにも大推薦のレフトフィールド・トライバル・ディスコ傑作A1!!マンレコの人気シリーズ"Funk Mundial"への参加でもお馴染みMakossa & Megablastと、GommaのDiskokaineによる強力スプリットっ!!

8

FLYING LOTUS

FLYING LOTUS COSMOGRAMMA »COMMENT GET MUSIC
US西海岸の怪物Flying Lotusが豪華ゲスト陣を迎えた歴史的傑作を完成!!Thom YorkeやLaura Darlington(Long Lost)、Dorian Conceptらも参加、漆黒の崩壊寸前グルーヴで冒頭から突っ走る脅威の17トラックス+1(T18)!!

9

JEFF MILLS

JEFF MILLS THE DRUMMER PT.3 »COMMENT GET MUSIC
全世界で限定300枚という超限定シリーズ"The Drummers"の最終章がこちら!!Jeff氏自身も実は若い頃はドラマーだったという経緯から、自らがリズム・マシーンを用いて表現する本シリーズがいよいよ最終章となりました。自身が尊敬するという音楽史上重要なドラマー達の名前をタイトルに付けた入魂のDJツールです!!

10

V.A.

V.A. AFRO BALEARIC EP »COMMENT GET MUSIC
絶人気Sol Selectasシリーズ第10弾★今回はアフロです。メチャクチャ最高ですー!!前作のクンビアに続いて、今回はアフロ篇!!Radioheadをハイライフ風に仕立てたA-1、Bow Wow Wow"I want Candy"をトロピカル・ディスコにしたA-2がズバ抜けてます!!

interview with a editor of Pitchfork - ele-king

 シカゴ在住のエイミー・フィリップ(Amy Philip)は、いまもっとも影響力のあるミュージック・ウエブサイト、わが国でも読者の多い『ピッチフォーク』のニュース・エディターだ。もともとはフリーの音楽ライターだった彼女だが、5年前から『ピッチフォーク』のスタッフとして働いている。また、彼女の原稿は『ヴィレッジ・ボイス』、『スピン』、『フィラデルフィア・インクワイアー』、『セヴンティーン』など、たくさんの媒体に取り上げられている。
 アメリカの音楽メディアで精力的に働きながら、インディ・ロックを中心に原稿を書いている彼女に話を訊いてみよう。

アニマル・コレクティヴがアメリカで人気なのは驚くべきことだと思う。一般的には、難しい音楽で、簡単に受け入れられる音楽だとは思わないけど、人びとがこの手の音楽に興味を持ちはじめて、『ピッチフォーク』にも、突然アニマル・コレクティヴのようなバンドが増えだした。

えー、まずはあなた個人の音楽体験史について教えてください。

エイミー:10代の頃はニルヴァーナ、ホール、ソニック・ユースの大ファンで、そこから音楽にのめり込んでいったわ。

音楽ライターになった経緯、『ピッチフォーク』で書くようになった経緯について話してもらえますか?

エイミー:音楽にとても夢中になって、音楽の全サイド、例えばミュージシャンの生活などにも興味をもって、こんなジャンルの音楽のことを書いて生活できたらいいなと思っていたの。ギターを少し習ったことがあるけど、そんなに我慢強くもなかったし、才能もなかったし、音楽を書いているときほど楽しめなかったの(笑)。自分のモノより、他の人の音楽を聴いている方が断然に楽しかったのよね。それでフリーランスの音楽ライターになって、いろんな媒体で書いていたんだけど、『ヴィレッジ・ボイス』の記事を『ピッチフォーク』が見て、私にコンタクトをとって来たのよ。2005年だったかな。『ピッチフォーク』の新しいセクションに私を持って来たかったみたい。

『ピッチフォーク』はどのように生まれたのでしょうか?

エイミー:『ピッチフォーク』はライアン・スクレイバーが高校を卒業したばかりのときに、彼のミネソタのベッドルームではじめたのがことの発端よ。彼はインディ・ミュージックの大ファンで、当初はウェブにすら載っていなかった、彼の好きなバンドを紹介していたの。1996年だったかしらね。しばらくは彼と友だちとでやっていて、2005年に私が入って、いまの体制が整った。私は5人目のスタッフだったわ。

スタッフはいま何人いるのですか?

エイミー:スタッフは20人いるわ。オフィスはシカゴとブルックリンで、シカゴが本拠地。

毎日のように、新しいバンドの情報が届くと思うのですが、そのなかから、ピッチフォークで、取り上げるバンドはどのように決めているのでしょうか。

エイミー:いろんなところから音楽が届くけど、基本は、自分たちが書いて価値があるもの。ひとつの答えはないけど、例えば、私たちが好きなレーベル、〈マタドール〉や〈サブポップ〉の音源はだいたい取り上げるわね。

『ピッチフォーク』のコンセプトを教えてもらえますか?

エイミー:たくさんの違う角度から、私たちの好きな、ときには嫌いな音楽をあつかう音楽ウェブサイト。レヴュー、私が担当しているニュース、インタヴュー、ヴィデオ(ピッチフォークTV)、シェアリング・ミュージックなどで、私たちが重要だと思う音楽をカヴァーしている。

多くの音楽メディアはメジャー・レーベルからの広告で成り立っています。それで提灯記事ばかりが氾濫してしまいました。

エイミー:『ピッチフォーク』に関してはそれはないわね。編集と広告のセクションはまったく分かれていて、『ピッチフォーク』は広告を出したバンドに悪いレヴューをすることもある。もちろん良いレヴューをすることもね(笑)。他の媒体に関してはわからないわ。そういうことも他ではあるのかもしれないけど。

ゼロ年代を通じてアメリカからレコード店がなくなったこととブルックリンのインディ・シーンとの関係について話してください。僕の友人は、タワーレコードがなくなったことで商業主義に対する幻想から吹っ切れた若いバンドが自由に表現するようになったんじゃないのかという説を立てていましたが。

エイミー:うーん、それは関係ないと思う。ブルックリンは住むのにとても良い場所で、たくさんの若いキッズ達が引っ越して来た。それだけのことよ。レコード店がなくなったのはテクノロジーが発展し、自分の家でもインターネットで、手軽に音楽にアクセスできるようになったから。私はレコード店が好きだし、こういう形でなくなっていくのは悲しいけど、インターネットは音楽の制作面のみならず流通も手軽にさせたし、音楽を買うこともたやすくさせた。同時に違法ダウンロードも可能にしてしまったし、レコード店は生き残れなくなった。ただ同じ時期に起こったのだと思う。
 とにかく、そうね、たくさんのバンドがブルックリンに引っ越すようになって、たくさんの音楽が生まれている。それで、さらにたくさんのバンドが引っ越して来て、良い音楽が生まれていく。最初は小さかったのが、どんどん大きくなっていったの。いわゆる雪玉みたいにね。

9.11のインパクトは、USインディ・シーンにどのような影響を与えたのでしょうか?

エイミー:みんなが思っているほどの影響は、直接的にはないと思う。ただ、9.11の後は、セキュリティーなどが厳しくなったりして、海外ツアーをやりにくくなったのは事実ね。

 

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アニマル・コレクティヴのようなバンドの価値を高めたのは『ピッチフォーク』だ言われていますが、アメリカではどれほどの人気なのでしょうか?

エイミー:アニマル・コレクティヴがアメリカで人気なのは驚くべきことだと思うわ。一般的には、難しい音楽で、簡単に受け入れられる音楽だとは思わないけど、人びとがこの手の音楽に興味を持ちはじめて、『ピッチフォーク』にも、突然アニマル・コレクティヴのようなバンドが増えだした。たしかに『ピッチフォーク』は彼らをサポートしているけど、それが彼らの人気の理由のすべてではないわ。彼らはたくさんのツアーをするし、コンスタントに新しい音楽を発表しているからね。

あなたがとくに気に入っているバンドやアーティストは誰ですか?

エイミー:M.I.A.、ナイフ、フィーヴァー・レイ、もう少しクラシカルなところで言うと、ブルース・スプリングスティーン、プリンス、さっきも言ったように、10代の頃好きだったのはソニック・ユース。彼らがいままでやって来たことをとても尊敬しているの。

最近の若いバンドではお気に入りはいますか?

エイミー:いま期待しているのは、スレイ・ベルズね。

ブルックリンのバンドですよね。

エイミー:彼らは何の音源もリリースしていないし、マイスペースのみなんだけど、最近M.I.A.のレーベルと契約したばかりなの。これからが楽しみよね。

あなたのゼロ年代のアルバム・トップ5を挙げてみてください。

エイミー:えー、M.I.A.の『アルラー』と『カラ』。アーケイド・ファイヤーの『フューネラル』、ナイフの『サイレント・シャウト』、ダフト・パンクの『ディスカヴァリー』、PJハーヴィーの『ストーリーズ・フロム・ザ・シティ、ストーリーズ・フロム・ザ・シー』。

サイモン・レイノルズがこの10年を"フラグメンタル・ディケイド"という言い方をしていますが、実際の話、もう大きなムーヴメントはずいぶんとありません

エイミー:それはたしかにその通りだと思う。コンピュータ、インターネットなどは、音楽へのアクセスを簡単にしたし、音楽を作るのを簡単にした。だから、ひとつの音楽に支配されることは、私たちが生きているあいだはきっとないと思う。それは悪いことかしら? いいえ、良いこともたくさんあると思う。私はたくさんの人が、同じ音楽を聴いているアイディアが好きだし、美しいことだと思うけれど。

ムーヴメントのないこの現在、そして将来において、カウンター・カルチャーとしての音楽はどうなると思いますか? 

エイミー:いまの時代は、ひとつの大きなムーヴメントというものはなく、すべてが断片的で、たくさんの小さなムーヴメントがあるのよ。カウンター・カルチャーが大きな影響を与えるとは思わないわ。

アメリカにはグリール・マーカスをはじめ、レスター・バングスなど、偉大なロック・ジャーナリストの系譜がありますが、とくにあなたが影響を受けたのは誰ですか?

エイミー:最初にライターをはじめた頃は、アン・パワーズというライターにとても影響を受けたわ。彼女は、元『NYタイムス』のライターで、いまは『LAタイムス』のライターをやっている。アン・パワーズは、『彼女が書いたロック:Rock She Wrote(women write about rock, pop and rap)』という、女性が書いたロック・ジャーナリズムのコレクションを出版しているのよ。90年代なかばに出版された本なんだけど、私はとても影響を受けたわ。

それはとても興味深い本ですね。ところで音楽ライターにとって重要な要素は何だと思いますか?

エイミー:たくさんあるけど、いちばん大事なのは、良いライターであること。強い声を持ち、スタイルに良いセンスを持ち、正確であり、自分の話していることがわかっている。きちんと、締め切りに間に合わせること。音楽に対してパッションがあり、自分の記事が何を書いているか注意することよね。

ちなみにアメリカでは音楽ライターをやって食べていけますか?

エイミー:良い質問ね(笑)。ほとんどは、一般的に言って難しい。私や『ピッチフォーク』のスタッフはこの仕事で食べていけて本当にラッキーだと思う。でもこれはレアで、ライターだけやってフルタイムで生活するのは本当に難しい。ほとんどのフリーランスのライターは別の仕事をもっている。それだけでやっていくことは可能だけど、とても難しいのよ。

日本の音楽についてはどの程度知っていますか? 

エイミー:そんなに多くは知らないけど......若い頃は少年ナイフを聴いたわ。彼女たちはとても楽しいわね。そしてボアダムス、彼らは天才ね。アシッド・マザー・テンプル、彼らもアメイジングね。ディア・フーフには日本人のメンバーがいるわよね。私は大ファンではないけれど、彼らのことは尊敬している。他にも......、ゆらゆら帝国、トクマルシューゴなどは、とても楽しく聴かせてもらったわ。

日本の音楽シーンに期待することはありますか?

エイミー:とくに何かを期待することはないわね。いまの時代は、すべてがとても断片的で、ひとつの特別なシーンが何かを作るということもないので、日本の音楽も、アメリカの音楽も、ただたんに、世界のなかの断片的な部分だと思うのよ。私たちは、自分たちの手の届くところにある断片的な音楽を紹介しているだけなのよ。

ちなみに6月にはトーク・ノーマルが来日ツアーをやるんですよ。

エイミー:彼女たちのことはいろんなライターがカヴァーしているし、とても良い評判を聞いているわ。いつもチェックしたいと思っているのだけど、私はまだ聴いたことがないの。来週シカゴでプレイするから見に行くわ。とてもエキサイティングね。

Various Artists - ele-king

 フランスのスピリチュアル・ジャズのレーベルとして知られる〈ヘヴンリー・スウィートネス〉だが、"天国のように甘い"というレーベル名が好事家たちを虜にするその音楽性を物語っている。だいたいスピリチュアル・ジャズという当時のタームをそのまま3~40年後の2010年に使用すること自体、誤解を招きやすいというか、実際のところその音楽も後期コルトレーンのようなハードな信仰心を表したようなものばかりがすべてではなく、それよりももっと"天国のように甘い"感覚がこのジャンルには多くあるように思う。むしろその感覚があるからこそ、この20年、スピリチュアル・ジャズはDJカルチャーの陶酔感とともにあったのだ。

 ハウスではサン・ラーからアーチー・シャップまでを再構築したセオ・パリッシュが代表格だが、まさにそのパリッシュ・ヴァージョンのサン・ラーをリリースしたオランダの〈キンドレッド・スピリッツ〉を拠点に世界に知れ渡ったUS西海岸のカルロス・ニーニョ率いるビルド・アン・アーク(メンバーのひとりはフライング・ロータスの作品にも参加している)、あるいは現代のギル・スコット・ヘロンとも呼ばれるトリニダード系の詩人/作家のアンソニー・ジョセフを擁するロンドンのザ・スパズム・バンド......、えー、それから卑近な例ではカール・クレイグが70年代のデトロイトにおけるスピリチュアル・ジャズのレーベル〈トライブ〉との交流を新しい音源として発表している。こうしたクラブ系の動きは、70年代的な精神主義への傾倒も少なからずあったのかもしれないが、音楽的に言えばその雑食性(ジャズ、ファンク、アフロ等々)がクラブ・ミュージックにマッチしたのだと思う。〈ヘヴンリー・スウィートネス〉から昨年リリースされたドン・チェリーとインディアン・パーカッション奏者、ラティーフ・カーンによる1978年の『Music / Sangam』など、チャリ・チャリや高橋クニユキのような音楽の青写真とも言える。まあ、70年代の精神主義がそしてニューエイジへと辿った道筋を振り返れば(占いブームや自己啓発、あるいはオウム等々)、クラブ・カルチャーの通俗性がむしろスピリチュアル・ジャズのスピリチュアル加減を良い意味で抑止していると僕は考えたい。

 2006年に設立された〈ヘヴンリー・スウィートネス〉は、このジャンルの代表格、ダグ・カーンやダグ・ハモンド、あるいはフリー・ジャズ系のサックス奏者として知られるバイアード・ランカスター等々のお歴々の入手困難だった盤を再発してはマニアたちを喜ばせている。と同時にアンソニー・ジョセフ&ザ・スパズム・バンドやロンゲッツ・ファウンデイションといった"現在"の音楽も発表しながら、ジャズ・ファンが陥りやすい単なる懐古趣味に閉じこめられないよう努めている(まあ、いまではロック・ファンの大半もそうか......)。

 今回はレーベルにとって最初のコンピレーションで、CDで2枚組、CD1はレーベルのベストでCD2はヴァイナルで発表したリミックス/カヴァーがフィーチャーされている。フォー・テットやカルロス・ニーニョによるリミックス、あるいはブルックリンのジャズ・ファンク・バンド、チン・チンによるカヴァー、フランスのダンス・バンドのブラックジョイによるリミックス、UKヒップホップのフルジーンスとキッドカニーヴィルによるリミックス......などが収録されている。

 フォー・テットのリミックスが最高である。彼は2曲手掛けているが、とくにダグ・ハモンドの"ドープ・オブ・パワー"のリミックスは、アーサー・ラッセルの『ワールド・オブ・エコー』をダブステップにしたようだ。カルロス・ニーニョによるジョン・ベッチ・ソサイエティの"アース・ブロッサム"のリミックスは、スピリチュアル・ミュージックの音的な面白味を強調し、モダンなチルアウト・テイストを加えている。ブラックジョイのリミックスは洒脱でラウンジーなジャズで、フルジーンスやキッドカニーヴィルによるストリート・テイストの注入も面白い。

 しかしこのコンピレーションを楽しむなら、やはりCD1だろう。"天国のように甘い"ジャズを堪能できるのはこちらだ。生きる伝説たちのキラー・チューンに混じって、ここにもザ・スパズム・バンドやロンゲッツ・ファウンデイションのような新しい世代の音源も収録されている。そしてレーベルが選曲するだけあって、どの曲も魅力的で、聴いてうっとりしてしまう......とは言うものの、いわゆるスピリチュアル路線よりも、逸脱しているほうが僕の耳には面白い。ドン・チェリーとラティーフ・カーンによる"エアーメイル"はいま聴くとハイブリッドなチルアウトに聴こえる。チン・チンによるそのグルーヴィーなカヴァーも素晴らしい出来だった。あるいはまた、ザ・スパズム・バンドの灼熱のパーカッションとポエトリーは路上の匂いを運んでくれる。

 ちなみにCD2の冒頭はバイアード・ランカスターの"聖なるジョン・コルトレーン"ではじまっている。このジャンルのパイオニアに対する最大限の敬意のつもりなのだろう。が、たとえそれが誰であろうと、聖人視するのだけはどうしても違和感を覚えるのであります。ちなみに"天国のように甘い"はバイアード・ランカスターのアルバム名である。

CHART by JAPONICA 2010.04 - ele-king

Shop Chart


1

MOODYMANN

MOODYMANN DEM YOUNG SCOONIES / THE THIRD TRACK DECKS CLASSIX / GER / 2010/4/18 »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANN人気レア・トラック"DEM YOUNG SCONIES"と"DON'T BE MISLED"がカップリング再発!!97年に<PLANET E>からリリースされた出世作"DEM YOUNG SCONIES"と96年リリースのEP「DON'T BE MISLED!」に収録の人気曲"THE THIRD TRACK"をドイツの名作リイシュー・レーベル<DECKS CLASSIX>が再発!リマスタリングしてのリイシューなので音圧音質もバッチリです!

2

ERYKAH BADU

ERYKAH BADU NEW AMERYKAH PART TWO : RETURN OF THE ANKH UNIVERSAL MOTOWN / US / 2010/4/18 »COMMENT GET MUSIC
前作「NEW AMERYKAH PART ONE」から約2年、その続編ともなる最新アルバム「NEW AMERYKAH PART TWO」遂にリリース!!前作に引き続きプロデューサー陣にMADLIB、9TH WONDER、SHAFIQ HUSAYNを、さらに今作にはJ.DILLAやTA'RAACH、GEORGIA ANN MULDROWまでも迎え入れた鉄板陣容!その豪華プロデューサー陣によるヒップホップ/R&B・マナーのベーシックながら味わい深い上質トラックでERYKAH BADUが抜群のヴォーカル・ワークで独自の世界観を演出した超傑作!!

3

SHHHHH

SHHHHH STRICTLY ROCKERS RE:CHAPTER. 32 EL QUANGO / JPN / 2010/4/23 »COMMENT GET MUSIC
ノンカテゴライズ・レゲエ・ミックス・シリーズ「STRICTLY ROCKERS」にSHHHHHさん登場!!ダンスの現場で培ったトランス感とアフター・レイヴ感覚をもって完全に新しい解釈で非西欧圏の音楽の楽しみ方を提示してきたSHHHHHの魅力が濃密に展開された本作。いわゆる「レゲエ」が1曲も入っていないにも関わらず当シリーズから出す意味も聴けば完全に納得できてしまう何とも言えないこの独特な質感、病み付きになること請け合いです!!

4

LIPARIS NERVOSA

LIPARIS NERVOSA TAKE THE FUNKY FEELING ALL CITY RECORDINGS / US / 2010/4/18 »COMMENT GET MUSIC
西海岸のソウル・ファンク系レーベル<ALL CITY RECORDINGS>よりジャズ・ファンク・バンドLIPARIS NERVOSAの新作。A面収録オリジナル曲"TAKE THEFUNKY FEELING"は安定したファンク・グルーヴにJBライクなしゃがれ声ヴォーカルが効いたダンス・ナンバー。そしてC/Wにはカヴァー曲となる芯の太いミッド・テンポなドラムブレイクにギター・リフ、ホーン等が絡むムーディーなジャズ・ファンク"FLAT BLACK"を収録!本盤はもちろんこの"FLAT BLACK"がイチオシです!!

5

KOSS

KOSS OCEAN WEAVES MULE ELECTRONIC / JPN / 2010/4/18 »COMMENT GET MUSIC
先日リリースされた傑作アルバムからの12inchシングル「ONCE AGAIN」も大好評の中、<MULE ELECTRONIC>よりKOSS名義での新作が到着!A面にはKUNIYUKI氏自身でのセルフ・リミックスとなる幻想的なミッドグルーヴでの四つ打ちトラック"OCEAN WAVES (RETURN TO RING MIX)"、アブストラクトなディープ・サウンドで展開されるテックハウス・トラック"MERCURY DUB"を、そしてB面にはMINILOGUEによるスピリチュアル度を増したトリッピーな長編リミックスを収録!いずれも文句無しに大推薦!!

6

FLOATING POINTS

FLOATING POINTS PEOPLES POTENTIAL EGLO / UK / 2010/4/9 »COMMENT GET MUSIC
全世界限定500枚で市場に出回るも一瞬で姿を消してしまった片面プレス、ホワイト盤プロモ仕様のFLOATING POINTS渾身の新曲"PEOPLES POTENTIAL"が待望の正規リリース!今作は名作「VACUUM EP」もリリースしたホーム・レーベルとも言えるUK<EGLO>よりリリース!煌びやかなレイヤード・シンセをベースにポスト・ビートダウン的ビート構築で進行し、エレクトリックなうねりを効かせコズミックな世界感を披露した秀逸ビートダウン・トラック!

7

BOOHGALOO ZOO

BOOHGALOO ZOO NO JOKE LOVE MONK / SPA / 2010/4/11 »COMMENT GET MUSIC
ドイツとオランダのベテランK'BONUSとU-GENEによる新星ユニット=BOOHGALOOZOOのデビューEPとなる今作。USのリリシストREPLIFEを迎え陽気なヒップホップ・ナンバーに仕上がったオリジナル・ヴァージョン、そして SEIJIによる激烈アッパーなブロークン・リミックス、もいいのですが、ここでは<REAL SOON>や<DOWN BEAT>からのリリースでハウス・サイドではお馴染み異国籍ユニットJUJU & JORDASHによるビートダウン的解釈でのリミックスがやはり圧勝!

8

CREATIVE SWING ALLIANCE

CREATIVE SWING ALLIANCE MONDAY BONZZAJ / CHE / 2010/4/7 »COMMENT GET MUSIC
MOTOR CITY DRUM ENSEMBLEでおなじみのレーベル<RAW CUTS>周りのPABLOVALENTIOとクリエイターSTEVEN Jの二人からなるプロジェクト=CREATIVE SWINGALLIANCEのデビュー作がスイス発ヒップホップを基盤にクロスオーヴァーな展開をみせる良質レーベル<BONZZAJ>からリリース!!内容もハイクオリティかつ幅広くハウス~ヒップホップ・サイドに至るまでこれは見逃せない一枚です!!

9

LAYO & BUSHWACKA!

LAYO & BUSHWACKA! FEMME FATALE OLMETO / UK / 2010/4/18 »COMMENT GET MUSIC
UKのベテラン人気コンビLAYO & BUSHWACKAニュー!お馴染み主宰レーベル<OLMETO>より28弾!UKテクノ・シーンの御大LAYO & BUSHWACKA新作はディスコ・タッチなシンセ使いでトリッピーな仕掛けが施されたテック・ハウス・ナンバーに!C/Wには好調AUDIOFLYによるディープ・ミニマルなリミックスを収録!

10

PRINS THOMAS

PRINS THOMAS S.T. FULL PUPP / NOR / 2010/4/10 »COMMENT GET MUSIC
出ました!ノルウェーの才人、PRINS THOMASが遂にソロによる渾身のファースト・アルバムをドロップ!ジャーマンエレクトロニックの巨匠KLAUS SCHULZEにも通ずるようなプログレ風のリフや、彼らしい北欧ならではなメランコックフレーズなどを交え、圧巻としか言いようの無い壮大な世界観で描き出すディープでドリーミーでサイケデリック、そしてコズミックな世界観は唯一無二!間違いなく2010年ベスト・アルバム候補です!

Cobblestone Jazz - ele-king

 スティーヴ・リードが死んだ。ガンとの闘病の末、息をひきとった。享年66歳。あの激しいドラムがたまらなく好きだった。

 スティーヴ・リードはブラック・ジャズを陰から支えたドラマーで、アポロシアターのスタジオ・ミュージシャンとしてキャリアをスタートしている。ソロでのヒットには恵まれなかったが、ジェイムズ・ブラウン、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、サン・ラー、フェラ・クティなどなど、さまざまなバンドで活躍し、最近ではフォー・テットとも競演していた。1975年にリリースされたリーダー作『Rhythmatism』は名盤で、フォードからカーター政権に移るアメリカに激しいドラムが叩きつけられている。レアグルーヴとは彼のグルーヴのことだった。オバマ政権の誕生も彼の尽力なしには実現し得なかっただろう。謹んで故人の冥福を祈る。

 10代の頃はよくジャズを聴いた。背伸びするにはちょうどいいジャンルだった。テクノはもちろん聴いていたが、12インチを買ってDJをはじめるまではジャズを聴くことが多かった。ジャズのなかで抜きん出て好きだったのが、マイルス・デイヴィスだ。「破壊せよ!」と自分に命じたのはセックス・ピストルズではなく、マイルスだった。とくにエレクトリック期のマイルスに強く惹かれた。何をやっているのかよくわらなかったが、そこにはあらゆる音楽があった。アブドゥル・マチ・クラーワインによるサイケデリックなジャケットにも圧倒され、マイルスの想像力が怖かった。

 20歳くらいの頃だったと思う。リットーから出版されていた雑誌『Groove』で"マイルス・デイヴィスの大いなる遺産"なる特集が組まれていた。マイルスの足跡をたどりながら、当時のクラブ・シーンにおけるマイルスの影響がうかがえるアーティストを紹介したものだった。アズ・ワンやスクエアプッシャーをはじめ、オウテカ、フォー・テット、セオ・パリッシュまでもがそのなかで紹介されていた。90年代のテクノとともに70年代のエレクトリック期のマイルスを軸とするルーツ・ディスクが選盤され、ハービー・ハンコックやゲイリー・バーツから、ゴングやマグマ、ヘンリー・カウやロル・コックスヒルまでもが並べられていた。当時、ジャズとテクノを聴いていた自分にはぴったりの特集だった。この号を参考に、レコード屋を巡っては、ジャズやレアグルーヴを掘り進めた。ファラオ・サンダースやスティーヴ・リードに出会ったのもこの頃だ。そして、ブラック・ジャズを聴きこむなかで引き当てた1枚が、〈コブルストーン〉から出ていたノーマン・コナーズの『Dark Of Light』だった。

 ノーマン・コナーズはサン・ラーやアーチー・シェップとの共演でも知られるジャズ・ドラマーで、後にディスコ・プロデューサーに転向し、多くのヒット曲を残している。彼がプロデュースしたスターシップ・オーケストラは、セオ・パリッシュもよくかけるダンス・クラシックの1枚である。そして〈コブルストーン〉とは1972年に〈ブッダ〉のジャズ部門としてスタートし、後の〈ミューズ〉の母体となったレーベルである。マイルスの門下生ともいえるミュージシャンたちがリリースをしているが、『Dark Of Light』ではハービー・ハンコック、セシル・マクビー、スタンリー・クラーク、エディー・ヘンダーソンなどなど、蒼々たる面子が集結し、時代の熱い息吹を響かせている。
 レーベル名であるコブルストーンとは、当時ニューヨークの街路に使われていたレンガのことであり、〈コブルストーン〉のレコード盤のセンターラベルには"石畳"がプリントされている。つまり、コブルストーンのジャズとはこのことなのだ。

 モントリオールではなくヴィクトリアで結成されたコブルストーン・ジャズは、2002年にデビューするや否やメディアから注目を集め、次々とヒットを重ねていった。2006年に〈ワゴン・リペア〉からリリースされた「India In Me」は、間違いなくゼロ年代を代表するテクノ・クラシックの1枚だろう。

 3年ぶりに発表されたセカンド・アルバム『The Modern Deep Left Quartet』で、彼らはとてもリラックスした演奏を展開している。とても落ち着いている。まるで政治的な無風状態をあざ笑っているかのようだ。

 メンバーはマシュー・ジョンソン、ダニエル・テイト、タイガー・デュラに加えモールが復帰し、カルテットの編成にもどり、前作『23 Second』の延長上でさらなる洗練を追及している。アット・ジャズの『Lab Funk』にも近いアプローチだ。もともとがジャズ・ミュージシャンであり、ミューテック・ミュージック・フェスティヴァルによってテクノに転向したのが彼らである。4人はミュージシャンとしてのエゴを葬り去って、ハウス・ミュージックにおける調和を目指したのだ。

 先行シングルの「Chance Ep」は穏やかなディープ・ハウスだった。そしてアルバムはモダン・フュージョンの大傑作と言えよう。これも"マイルス・デイヴィスの大いなる遺産"の1枚である。

 マシュー・ジョンソンの師匠であるホアン・アトキンスはかつてこう言った。「Jazz Is The Teacher」と!

[House] #1 by Kazuhiro Abo - ele-king

1. Henrik Schwarz / Ame / Dixon / A Critical Mass Live EP | Innervisions

 ダンス・ミュージックを聴きはじめたばかりの友人に日々質問攻めにされている。たいていの場合、質問の内容は「この曲ってなんていうジャンルなの?」というものである。そんな友人に「これはダブステップっていうんだよ」だとか「これはミニマル・テクノね」などと教えているうちに、彼もだいぶ詳しくはなってきたのだが、いまだにハウスとテクノに関しては判別に困ることがあるらしい。友人曰く「生音だとか、ヴォーカルが乗ってたらわかるんだけど。テック・ハウスとかミニマルとか、いまいち違いがわからないものがある」とのことなのだ。僕自身、ジャンル分けにおける、ある種の縄張りのようなものにはあまり頓着しないほうなので、たいていの場合は、「あんまり気にすることないと思うよ。気持ちよく踊れればそれでいいじゃない」とお茶を濁してしまうのだが、本人が気になるというのならばしょうがない。本当は「とにかくいろいろ聴いて自分の好きなものを探せ!」と一喝すべきなのかもしれないが......。

 そういえば、僕がクラブカルチャーに足を踏み入れた90年代の終わり頃には、そこまで悩むようなこともなかったように思える。記憶を遡ってみると、テクノとハウス、言ってみれば4つ打ちのエレクトロニック・ダンス・ミュージックの領域が双方向に侵食の度合いとその速度を増していくその契機になったのは、05年にリリースされたアーム(Ame)の「Rej」である。これがミニマル・テクノとディープ・ハウス両方の現場で熱狂的な支持を集めたことに端を発していたように思える。

 このシングルは、そのアームが「Rej」を発表したレーベル〈インナーヴィジョンズ〉の看板アーティストたち、ヘンリック・シュワルツ、ディクソンとともに昨年おこなった〈a critical mass〉ツアーでのライヴ・テイクを収録したものだ。ライヴのコンセプトは「テクノ的アプローチによるフリー・ジャズ」だったそうだが、しかしこの演奏からフリー・ジャズの持つ力学――作法や理論による束縛から脱却しようとするエネルギーを感じることは難しい。むしろライヴ・テイクであるにも関わらず、そして4人で演奏しているにも関わらず、そこから発せられるサウンドはそのコンセプトとはまったく逆の印象さえ覚える。無駄をいっさい削ぎ落とした、ひたすらストイックに反復する強固なマシン・グルーヴである。

 A面に収録されているのは、2003年にリリースされたヘンリック・シュワルツによるロイ・エアーズの"Chicago"のカヴァーのライヴ・エディットで、原曲に含まれていたヴォイス・サンプルなど多くのパートは消失し、ミニマル・チューンに再構築されている。ジワジワと厚みを増すアシッド・シンセとハイハットの微細なディケイの変化によってグルーヴは紡がれていく。

 B面に収録されている"Berlin-Karlsruhe-Express"では、中期のアシュ・ラ・テンペルを彷彿させるかのようなシンセ音のレイヤーが幾重にも折り重る。なんともダイナミックなテック・ハウスである。

 同期された3台のラップトップ・コンピュータと2台のキーボード、そしてドラムマシンによって演奏されるこれらのミニマルなサウンドは、強固なシステム的束縛の上に存在するように思える。が、しかし、だからこそプレイヤーの一瞬の閃きによるインプロビゼーションが、その束縛との対比によって拡大され、そして聴衆に大きなカタルシスを与える。この現象こそが彼らの目指した「ミニマル・テクノ以降のフリージャズ」なのかもしれない。また、友人への説明に苦労しそうだ......。

2. Sly Mongoose / Noite | ene

 同期型ラップトップ・ライヴ・ユニットの次に紹介する1枚は、一転して"人力コズミック・ハウス/ディスコ"とでも言うべき作品である。

 リーダーでベースの笹沼位吉、キーボードの松田浩二、ギターの塚本功、パーカッションの富村唯、そしてトランペットのKUNIという完全生バンド編成から成るスライマングースは、2002年に結成し、腕利きのライヴ・バンドとして地道な活動を続けている。ザ・スカタライツやロヴォらと競演するいっぽう、そのトラックは海外の人気DJによるミックスCD――レディオ・スレイヴの『Radio Slave Presents Creature Of The Night』やリトン & サージ・サンティアゴ(Riton & Serge Santiago)の『We Love...Ibiza』など――に収録されている。要するに、海外のダンスフロアからの支持も集めている稀有なバンドなのだ。

 "Noite"は、昨年発表したメジャー・デビュー・アルバム『Mystic Daddy』に収録の、空間を捻じ曲げながら疾走するようなシンセ・リードと、レゲエ・マナーを基調とした粘りながら地を這うベースが印象的なトラックである。この度、ノルウェーにおけるコズミック・ディスコの鬼才、プリンス・トーマスによる13分にも渡る大作リミックスを収録してのシングル・リリースとなった。レーベルは、先日"13"時間に渡るロング・プレイで幕を閉じた〈青山LOOP〉の老舗パーティ〈DANCAHOLIC〉をオーガナイズしていたDJ CHIDAが主宰する期待のレーベル〈イーネ〉である。

 プリンス・トーマスのリミックスは、オリジナルのグルーヴに敬意を払いつつも、ピアノとテープ・エコーによるフィードバック・ノイズをフィーチャーした2分を超える荘厳なイントロからはじまる。そしてじわじわとビルドアップさせながら、ミステリアスなヴォイス・サンプルを加え、あるいはYMOの"ファイヤークラッカー"を彷彿とさせるオリエンタルなフレーズ・サンプルを散りばめながら、まさにコズミックなディスコ・チューンとなっている。

 自身のDJプレイにおいてもアナログにこだわるCHIDA氏のレーベルからのリリースだけに、ダイナミック・レンジはとても広く、クリアなサウンドの盤になっていることも特筆したい。

3. Underground Resistance / All We Need / Yeah | UR

 まず最初に断っておかなければならないのは、高校3年の夏休みにわざわざ地元の青森から上京し、宇田川町のレコード・ショップでアンダーグラウンド・レジスタンスのバックパックを購入し、現在に至るまでほぼ1日も欠かさず使用し続けているような僕が冷静で客観的な批評眼をもってURの音楽を語ることができるか、非常に怪しいということだ。もちろん、できる限りの努力は試みるが......。

 アンダーグラウンド・レジスタンスの魅力を端的に語るならば、強いメッセージ性を持ちながら、それを決して言語だけではなく、トラックにおいてもときに攻撃的に、そしてときに力強くロマンチックなサウンドで饒舌に物語るマッド・マイクのスタイルにある。2007年の「 Footwars」以来のシングルは、マッド・マイクとデトロイトのベテランDJ、ジョン・コリンズとのプロデュース作品で、URクルーのDJ スカージ(DJ Skurge)がエディットで参加している。それはシンプルで力強いゴスペル・ハウスだ。おそらくマッド・マイクによるであろうレーベル面に記された――「本物ぶった偽者のサウンドに飽き飽きしているお前に本物がなにか教えてやろう。なに、簡単なことさ、ファンクがあればそれでいいんだ」――とういこの言葉の通り、これらのトラックは愚直なまでに骨太なファンクネスで満ち溢れている。

 "All We Need"、"Yeah"、それぞれのタイトルは曲中に使用されているヴォイス・サンプルに由来している。そして、レコードから採取されたであろうそれぞれのサンプルは大きなニードル・ノイズを発する。それがよりいっそう荒々しくラフな雰囲気を醸し出している。サンプルを支えるトラックもざっくりとしたエディットが施され、手弾きと思われるシンセサイザーやギターのレイヤーで構成されている。ラップトップ・コンピュータ1台でいくらでも綿密なプログラミングや編集が可能な現在のやり方と逆行するかのようである。

 このEPに一貫しているテーマは原点回帰だろう。ノイズが乗ったままのサンプル使いや、確信犯的にラフなエディットは、音楽制作の初期衝動を想起させるエッセンスとして抜群の効力を発揮している。風邪をひいたときにはファンクを爆音で聴くことで治すというほどに、ファンクに並々ならぬ思いを持っている男、マッド・マイクである。ファンクがあればそれでいいと言う気持ちに一片の嘘もないのだな! ......と関心してしまうのは、ちょっと感動屋がすぎるだろうか?

4. madmaid / Who Killed Rave at Yoyogi Park EP | Maltine Records

 E王
DOWNLOAD LINK→ https://maltinerecords.cs8.biz/69.html

 プロディジーが初来日し、東京ドームでライヴをした1993年に産声をあげ、2008年に当時若干15歳ながら代々木公園で開かれていた初期ハードコア・テクノにフォーカスしたフリー・レイヴ〈MAD MAX〉にて、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのネット・レーベル、〈マルチネ・レコーズ〉代表のトマド(Tomad)に見出されるという、筋金入りのレイヴ・キッズにして日本のダンス・ミュージック・シーンにおける新星中の新星"まどめ"ことmadmaidのシングルを紹介しよう。

 〈マルチネ・レコーズ〉からリリースされた彼のデビュー作「Who Killed Rave at Yoyogi Park EP」は、2ライヴ・クルーの『Fuck Martinez』が「ファック・マルチネ」に聞こえるこという空耳一点張りで展開する"Too Mad To Fuck"、往年のコカ・コーラのCMソングをサンプリングしながら牧歌的ベースライン・ハウスに仕上げた"Buy Me Cola"(ビールじゃなくて本当に良かった......!)など、思わず年齢を疑いたくほど巧みなプログラミングセンスで構築されたトラックが収録されている。そして、そこには素晴らしい悪ノリ、悪ふざけ、悪ガキ感溢れる荒唐無稽なサンプリングが散りばめられているというわけだ。自身でデザインしたというジャケットもどこまでも人を食ったできになっていて、僕が最早この上ないほどハマっていると言わざるを得ない。

 驚いたことに、2ライヴ・クルーや、ユーロマスターズといった往年のIQひと桁チューンを無邪気にサンプリングして切れ味鋭いベースライン・ハウスに仕立て上げるこの早熟すぎる16歳のトラックは、早くも海を渡り、ニューヨークのビッグ・パーティ〈Trouble & Bass〉でもプレイするUK出身のプロデューサ、カンジ・キネティック(Kanji Kinetic)にプレイされ、反響を呼んでいる。しかし、そんなことよりも、我々が本当に驚くべきことであり、信じがたいことはIDチェックによって20歳以下のクラブへの入場が厳しく制限されている東京のクラブ・シーンにおいて、彼のプレイを合法的に楽しむにはあと3年もの年月が必要だということだ。我々がいますべきことは3年間コーラを冷やし続けることか、はたまた10代でも堂々と存分に遊べて、表現出来る場を作ることか......。答えは明確だろう。

5. Santiago Salazar / Your Club Went Hollywood | Wallshaker

 アンダーグラウンド・レジスタンスを母体とするバンド・ユニット、ギャラクシー2ギャラクシーやロス・エルマノス(Los Hermanos)のメンバーでもあり、イーカン(Ican)名義でも活躍するS2ことサンティアゴ・サラザールがデトロイトのアーロン・カール(Aaron-Carl)の〈ウォールシェイカー〉レーベルからリリースした新作は、現在のUSアンダーグラウンド・クラブ・シーンに対するUR流儀での痛烈な問題提起である。イーカン名義のラテン・フレイヴァーなサウンドは影を潜め、感情を押し殺したようにダークなフェンダーローズの反復フレーズとフランジャーによって金属感を増したハイハットに添えられるのは「車を停めるのに20ドル、入場するのに25ドル、ドリンクを買うのに12ドルもかかる」というコマーシャリズムに傾倒したクラブ・シーンを批判するポエトリー・リーディングだ。サラザールはこう続ける「一体アンダーグラウンドに何が起こってるんだ?」

 ポエトリー・リーディングが佳境にさしかかるにつれてトラックも熱を帯び、アンダーグラウンド・レジスタンスの名曲"インスピレーション"を彷彿とさせるようなソウルフルなシンセとドラマチックかつ浮遊感溢れるストリングスフレーズが挿入される。

 ここで語られているような問題は決してアメリカのシーンだけの話ではないだろう。建前としてはアンダーグラウンドを名乗りながらも、ときに、当人も気づかぬうちに、ゆえにその実はハリウッド化されてしまっているような現場は少なくない。それだけならまだしも、結局のところはどっちつかずでエンターテイメントとしてのクオリティすらハリウッドの劣化コピーにしかなっていないようなパーティも少なくない。現実的な問題としては、パーティを作る上で商業的意図が介入することは避けることができないが、その上で常に自らを省みることの重要性を思い出させてくれる1枚と言えるだろう。

6. VSQ / This Is That | Kalk Pets

 DJプレイ、とりわけひとりのDJが朝までプレイするようなロングセットは、レコードによって紡がれるその世界観をしばしば旅に例えられる。今回最後に紹介するのは、そういう意味では"旅情"を高めるのに最適な1枚だ。

 ドイツのエレクトロニカ・レーベル〈カラオケ・カルク(Karaoke Kalk)〉は、どこか牧歌的で、どこかアコースティックな趣があるサウンドを多くリリースすることで知られている老舗レーベルである。その〈カラオケ・カルク〉を母体として、ミニマル・ハウスに特化したサブレーベル〈カルク・ペッツ〉の19作目はハンノ・リヒトマン(Hanno Leichtmann)によるプロジェクト、ザ・ヴルヴァ・ストリングス・カルテット(The Vulva String Quartet)ことVSQの作品である。本作は、昨今のミニマル/テック・ハウスにありがちな、エッジのたったパルスやノイズは形を潜め、ひたすら柔らかで催眠的な音響世界が展開されている。

 A1に収録されているエフデミン(Efdemin)のリミックスはこの上なくシックで美しいミニマル・ハウスである。音程感を失うギリギリの瀬戸際に踏みとどまった、低周波のサイン波によって奏でられるベースラインと、虚空を漂うかのような2拍ループのシーケンスの向こう側には、極々小さな音量で高いピッチのランダム・シーケンスが配置されている。パーカッションの存在に気づいた頃に、今度はフィルタリングとダブ処理を施されたアコースティックピアノが現れる。意識の遷移を見透かされているかのように音の主題が移り変わっていくさまは、さながらディズニー映画の『ファンタジア』のようにサイケデリックだ。

 B1に収録されているオリジナル・ヴァージョンは、硬めの音色によるイーブン・キックと変調されチョップされたアコースティック・ピアノと地底で蠢くようなサイン波ベース、そしてタイトルをリフレインするヴォイス・サンプルで構成されたダビーなミニマル・トラックだ。B2にはロングセットのクライマックスにプレイしたくなるドラマチックなテック・ハウス"This is Not the Last Song"が待っている。揺らめくシンセパッドのレイヤーは、ぼんやり明るくなったダンスフロアの照明を、2拍4拍のタイミングで入ってくる発信音は小鳥の囀りを連想させる。エッジを取り去って体への浸透圧を高めるかのようなミックスをほどこされたこのトラックは、一晩を踊り明かした夜の住人たちに朝を告げるにふさわしい音楽である。

Various Artist - ele-king

 1990年、ニューヨークのこのレーベルのリリースがはじまったときの、ハウスを扱っているレコード店のプッシュときたらすごいものがあった。"黒い"ディスコのファットなビート、このグルーヴ、このピアノ、このベース、この歌、これぞハウスの真髄である、僕はそう教え込まれた。当時、レコード店のディスプレイにはザ・KLFやコールドカットが並んでいて、店に入るとそっちに歩く僕の向きを、ニューヨークを信仰するハウスの玄人たちはレンガのほうに変えるのだった。そして僕はその当時の誰もがそうしたように、アンダーグラウンド・ソリュージョン(ロジャー・サンチェス)の「ラヴ・ダンシン」を買った。まさに1990年のことだ。

 とはいえ、当時の僕はこの手の黒いディープ・ハウスや歌モノのハウスの心地よさを心底理解していたわけではなかった。また、ニューヨークを向いていたわけでもなかった。UKレイヴ・カルチャーへと、それからデトロイトの未来派ファンクへとアプローチしている最中だった。DJピエールをつまみ食いしたほかは、〈ストリクトリー・リズム〉に夢中になることはなかった。僕の耳がまだ肥えていなかったというのもあるのかもしれないが、たくさんの優秀なプロデューサーを抱えて数多くのヒットに恵まれながら、しかしジャンルをまたぐような決定的な代表作というものを発表できなかった〈ストリクトリー・リズム〉というレーベルの限界もあった。地味と言えば地味だったし、大人びていると言えば大人びていた。それでも"青レンガ(ストリクトリー・ブルー)"が出てきたときは、知り合いから「青レンガこそ玄人好みなんだぜ」と教えられ、「そっか」と思って買ったけどね(玄人好みというか、本当は歌モノ専門が青レンガ)。レーベルはじょじょにコマーシャルになって失速していったけれど、少なく見積もっても1993年まではハウスにおける重要な拠点のひとつだったと言えるだろう。

 レーベル生誕20周年ということで、昨年から今年にかけてミックスCDが2枚出ている。第一弾は昨年の夏にリリーされた森田昌典(スタジオ・アパートメント)とムロによる選曲とミックスで、そしてもう1枚が今年に入ってからリリースされたDJノリと高橋透による選曲とミックスだ。ふたりのベテランによる第二弾は、レーベルの魅力を再発見するというだけでなく、ふたりの大御所の個性がとてもよく表れている点でも興味深い。

 DJノリのミックスは、ある意味では、1992年あたりの東京のクラブへとタイムスリップさせる。当時のハウス系のフロアは本当にこういう感じだった。〈ストリクトリー・リズム〉はニューヨーク系らしくフロア映えする音だったから、熱心なリスナーではなかった僕でさえもクラブでかかるとその心地よさに陶酔したものだった。
 そして、やはりと言うべきか......DJノリの選曲のほとんどが、1993年以前の音源だ。そして、物静かなこのDJは、いまからおよそ20年前の黒いグルーヴがいまでも充分に有効であることを証明する。あるいは、この時代の人気スタイルのひとつであるピアノ・ハウスも、ソウルフルな歌モノのハウスも、いま聴くと新鮮に感じることを教えてくれる。
 それにしても......「さすが」というか、現場で実際に使っていた人のミックスだと思う。はじまりからバーバラ・タッカーの"ビューティフル・ピープル"までの流れは圧巻だし、モアレル・インクのゴスペル・ハウスを経由しながらエレガントに終わっていく後半にも彼のセンスが出ている。早い話、ドラマチックなのだ。ちなみにニューヨークのダンスフロアは"ビューティフル・ピープル"のようなキャッチーな歌モノがかかると一緒に大声で歌う。

 かつて自分がまわしていたアナログ盤を使うことにこだわり(だからノイズまで入っている)、レーベルのさまざまな表情と素晴らしいグルーヴを抽出するDJノリとは対照的に、高橋透は彼の好奇心と冒険心を大胆に発揮している。すべてをデジタルでミックスするばかりではない。ムードマンによるリエディット、DJケントと千田によるリエディット、アッキーによるリミックス、DJノザキによるリミックスといった新しい解釈の加わったヴァージョンを使っている(CDは3枚組で、2枚のミックスCDのほか、もう1枚、日本人DJによるリエディット/リミックス音源も付いている)。

 〈ストリクトリー・リズム〉の最良の部分を抽出しようとするDJノリに対して、高橋透は老舗レーベルの音源をモダンな感性で再解釈していると言える。いちどミニマル・テクノにドップリつかった耳をフル稼働させながら、酒を愛するこのDJはクラシカルなハウスに新しい光沢を与えているというわけだ。アシッディで、起伏の多い展開で、それもまた「お見事」である。ちなみにふたりともアンダーグラウンド・ソリュージョンの"ラヴ・ダンシン"を使っているけれど、使い方がまったく違っている!

 簡単に言えばソウルフルなDJノリ、フリーキーな高橋透というか、面白いようにふたりの色が出ているし、それは尊敬に値するお手並みなのだ。続けていることの凄さというヤツである。録音も良い。

Shop Chart


1

DANIEL BELL

DANIEL BELL Globus Mix Vol. 4 - The Button Down Mind Of Daniel Bell TRESOR / JPN »COMMENT GET MUSIC
名盤再発!! DBXことDANIEL BELLが2000年代初頭にリリースしたMIX CDが再発!!! 現在のシーンを予見する確かな選曲。当時はほぼ無名だったVILLALOBOSをフックアップし、LOSOUL、HERBERTあたりのTECH HOUSE、さらにはNICK HOLDERまでチョイスする、今でもブレないセンス。海外サイト「レジデントアドバイザー」でゼロ年代BEST MIX 2位に選出。(I)

2

JEFF MILLS

JEFF MILLS Occurrence -Vinyl-disc Edition- THIRD EAR / JPN »COMMENT GET MUSIC
MINIMAL TECHNOのパイオニア、ターンテーブルの魔術師の異名を持つJEFF MILLS、実に6年ぶりの最新MIXが到着!! 『MIX-UP 2』での超絶スキル、『Exhibitionist』での完全オープン状態でのMIXワークに続いて、今作は自身の音源のみを使用し、宇宙遊泳中に自身に起こったトラブルをMIXで表現したコンセプチュアルな作品。限定プレス盤は日本初のヴァイナル・ディスク仕様。(I)

3

PRINS THOMAS

PRINS THOMAS Prins Thomas FULL PUPP / NOR »COMMENT GET MUSIC
NU DISCOシーンの決定盤!! LINDSTROMの盟友でもあり、レーベル「FULL PUPP」の主催者PRISN THOMASが初のソロ・アルバムをリリース!!! 出し惜しみの一切ない、渾身の一枚ということが、ひしひしと伝わる力作!! LINDSTROM、TODD TERJEもゲストで参加していて。やっぱり最高です!!!(I)

4

CASSY

CASSY Cassy 03 CASSY / GER »COMMENT GET MUSIC
ヨーロッパでは絶大な人気を誇り、SVEN VATH主宰「COCOON」からMIX CDをリリースした女性アーティストCASSY、久方ぶりの自身のレーベルから。シンプルながら、音のチョイスが他とは違い、グルーヴも強靭。ダウナーなVOCALを絶妙に重ね合わせながらひた走るこのビート。DJならば必須でしょう。(I)

5

DJ CHIDA

DJ CHIDA 7 Years Journey Of Dancaholic ENE TOKYO / JPN »COMMENT GET MUSIC
東京アンダーグラウンドを代表するパーティーの一つ、"DANCHAOLIC"@青山LOOPのラストパーティー用に製作されたアニヴァーサリーMIX CD!!! フロアを揺らす低音とDISXO GROOVEが場所を選ばず踊れるDISC 1。朝方、アフターアワーズの時間帯に向けたチルアウトかつ、メランコリックなMIXを聴かせるDISC 2。厚い歴史を誇る東京のハウスシーンに残る、しっかりした内容です。(I)

6

JENS ZIMMERMANN

JENS ZIMMERMANN C30 INTERNATIONAL FREAKSHOW / JPN »COMMENT GET MUSIC
現在のミニマル・テクノシーンの中で、面白いことをやっていて、かつ踊れるトラック・メイカーと言えば、ツィマーマン。このC30はアナログ・オンリーでリリースされていたものを元に、17分の未発表VERSIONを加えた5曲収録の1STアルバム。ほぼリズムとベースで構成されたミニマルな展開のなかで、じっくりと捻れていき、本当の深みに到達する、エキスペリメンタル・テクノ。(I)

7

DJ FUNNEL

DJ FUNNEL Wind Flow VIBRANT RECORDINGS / JPN »COMMENT GET MUSIC
07年に発表された「MOMENTS OF」以降リリースを重ねるごとに熱心なファンを増やしてきたDJ FUNNELが、待望のNEW MIX CDをドロップ! FUNNELにしか描き得ない、クラブ・ミュージック的ビート感覚とリスニング・ミュージックとしての叙情性が破綻せず同居した唯一無二のMIXが堪能できます! これぞミュージカル・ジャーニー!(S)

8

DEER

DEER Projectionist's Nightmare GIEGLING / GER »COMMENT GET MUSIC
ドイツはワイマールのマイナー・レーベル・GIEGLINGの5番。NEO OUIJAのオーナーであるMARTIN HIRSCHによるプロジェクト・DEERの作品で、ウッドベースや環境音をカットアップし、淡々とした生々しいビートと融合させたA-1が、ダーク・ミニマルを好む輩にはたまらない仕上がり! 小さなレーベルなので、あまり日本には入ってきてません。(S)

9

DJ JUS-ED

DJ JUS-ED Next Level UNDERGROUND QUALITY / US »COMMENT GET MUSIC
LEVON VINCENTやDJ QUと共にアンダーグラウンドハウスの中核を担いEUでも現在ブレイク中!!のDJ JUS-EDによる本人手刷りのCDRアルバムが入荷。90年代のNYアンダーグラウンドハウスの雰囲気とジャジーなコード、アンビエンスを醸し出すシンセにJUS EDらしいミニマリスティックな実験性が幅広いDJに支持されています。(Y)

10

RON HARDY

RON HARDY Best Of Ron Hardy Volume 1 STREETFIRE / US »COMMENT GET MUSIC
リビングデッド、というかリアルなキ●●イになってしまったMARCUS MIXXと今は亡きRON HARDYによる、92年リリースの激レア音源のリイシュー。ベースライン、エフェクト、リフやスポークンワード等どのパーツを拾っても歓喜と狂気、体がガチガチになるくらいのアシッドさ。孫の世代まで「これこそドープ」と語り継がれるべき1枚。(Y)

interview with Shugo Tokumaru - ele-king

 トクマルシューゴの『ポート・エントロピー』を聴いていると元気になる。決まりごとで窒息しそうなこの世界の外側へと道が開けるようだ。「......すべきだ」「......しなきゃいけない」という、社会の常識のようなものの手綱をゆるめ、「ま、いいか」と思えてくる。シュールレアリスティックなこの音楽を聴いていると、愉快な気持ちになって、気持ちも上がるのだ。森のなかのアヴァンギャルドなパーティのようなこの音楽を聴いていると、いちいち子供に「うるさい」と怒る気をなくす。


Shugo Tokumaru
Port Entropy

P- Vine

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 それは想像を快楽とする者にとってはまたとないプレゼントである。『ポート・エントロピー』を聴いていると......変な言い方だが、ますます音楽を聴きたくなる。というか、音楽を好きになる。その自由な広がりにおいて。

 この音楽の背後からは膨大な量の作品が広がる――フォーク、ジャズ、エレクトロニカ、カンタベリー、あるいはスラップ・ハッピーやファウストの諧謔性。あるいはマッチング・モウルの素晴らしき"オー・キャロライン"......もし『ポート・エントロピー』にもっとも近接している作品を1枚挙げるとするなら、僕は『そっくりモグラ』(の前半)を選ぶだろう。さらにもう1枚挙げるならパスカル・コムラードの玩具と前衛とポップのカタログのなかから選ぶだろう。

 こう書いたからといってみんなに誤解して欲しくないのは、この音楽が過去の亡霊たちの再現ではないということ、これは後ろを向いている音楽ではないということ、つまりたったいまこの現在を生きている音楽だということだ。

あるはずの音楽......「ホントはあるはずなのになぁ」とずっと思っていた音楽を具現化する、だから"想像"を具現化する作業なんです。僕には伝えたい言葉は何もないんです、メッセージとかね。自分の曲のなかではそれはない。

ひとりでしか作れない音楽だと思うんですね。緻密だし、ものすごく凝っているし。その"ひとりで"っていうのは日常生活における属性でもあるんですか? ひとりでいるほうが好きとか?

トクマル:基本的にはひとりでいるほうが好きですね。5人以上いるときつい。

5人という制限は経験上?

トクマル:そうですね。食卓を囲めるくらいの人数でないと気持ち悪くなってきますね(笑)。

バンド(GELLERS)なら大丈夫?

トクマル:いまやっているバンドは幼なじみなんで。

気を遣わない?

トクマル:そうですね。居心地がいいですよね。

ひとりで作っている音楽のほうが好き?

トクマル:そういう感じではないです。むしろあまり聴かないかもしれない。

ひとりで作っていて辛いこともあるでしょう?

トクマル:イメージ通りいかないときはつらいですね。でも、基本的にはひとりで作っているのはそうとう面白いですけどね。自分が面白がれるものしか作らないようにしているというか、人に聴いてもらうわけだから、自分がやってて面白くないと、あとになってからきついですよね。作る前にイメージしていて、その段階から面白いっていうのでなければ、CDには入れたくないですよね。

じゃあ、作る前はゴールというものが見えているんですね。

トクマル:そうですね。ゴールは見えています。

じゃあ、自分の頭のなかには音楽が鳴っていて、それに近づけるために作っていくという。

トクマル:そうですね。

さすがですね(笑)。

トクマル:そのやり方しかできないんです。でないと不安でしょうがないというか、作りながら曲をどんどん育てていくやり方っていうのはアリだと思うんですけど、僕は子供の頃から違うんですよ。物事を順序立ててやっていくというやり方で......。

じゃあ、フリー・ジャズみたいなインプロヴィゼーションの美学よりも『サージェント・ペパーズ~』みたいにあらかじめ設計されて作り込まれたものを好む......って、トクマルシューゴの音楽を聴けばそりゃそうですよね。

トクマル:だけど10代の頃はフリー・ジャズにハマったたんです。僕はそこに幻想を抱いていたんですね。「この音が来たら次のこの音が来て、こうなったからこうなるんだ......」って、そこを僕はすごい研究したんです。

研究熱心な......。

トクマル:そうですね。だいぶ好きですね。フリー・ジャズはよく聴いていたんです。

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Shugo Tokumaru
Port Entropy

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トクマルシューゴの音楽を聴くと、あまりにもいろんな要素が詰め込まれていて、この人は何の影響を受けたのかというのが掴みづらいというか、とにかく多様なものを感じるんだけど、やっぱムチャクチャ聴いていたんですか?

トクマル:もう、とにかく聴いていました。CDを集めるのも好きだったし、知らないCDやアーティストがいるのがイヤだった。

「知りたい」って感じで?

トクマル:もっと良いものがあるんじゃないか、もっと自分にフィットしたものがあるんじゃないかと思っていたんです。自分の作りたい音楽も見つかるんじゃないかって、「ここにあるはずなのに、何でないんだろう?」って、そう思ってました。

へー、それは興味深い話ですね。そこまでマニアックなリスナーになったのっていつからですか?

トクマル:んー、そうですね、14とか。パンクにすごくハマってしまって。

それはすごく意外ですね(笑)。

トクマル:ハハハハ。それまではビートルズとかクイーンとか、マイケル・ジャクソンとか......を聴いていたんですけど、パンクを聴くようになると面白いエピソードがどんどん出てくるんです。

たとえば?

トクマル:実はこの人はこれこれこういう人から影響を受けていて......とか。それで、どんどん遡っていったんです。そこからいろんなアーティストを知っていったんです。

追体験ですよね。

トクマル:そうです。そこから派生した音楽をたどっていくと、プログレやサイケ、フリー・ジャズ、もっと古い音楽とか、そういう風に探していくのがすごく好きでしたね。

へー。

トクマル:それで自分にいちばんフィットする音楽を探していくんですよね。

1日のほとんどの時間は音楽に費やされていたんでしょうね。

トクマル:そうですね。学校にもライナーノーツだけを持って行ったり(笑)。

ハハハハ。

トクマル:読んでましたね。

でも高校生のときは小遣いもかなり限られているし。

トクマル:だからみんなと協力し合って、それがいま一緒にやっているバンドのメンバーだったので、ちょうど良かった(笑)。

へー。しかし、パンクがきっかけという話がホントに意外だったなぁ。いまやっている音楽はむしろその真逆とも言えるじゃないですか。

トクマル:そうですよね。

そうやって音楽を探していって、最初に自分にフィットした音楽は何だったんですか?

トクマル:んー、なんだったのかなぁー。中学の2~3年のときにキング・クリムゾンとドアーズにものすごくハマったことがあって。しかもそれをアナログで聴くというのが、もう、至高の時間帯で(笑)。

ハハハハ、キング・クリムゾンのどのアルバムなの?

トクマル:キング・クリムゾンは『レッド』までぜんぶ揃えたんです。で、聴いていると、その時期のもやもやした気持ちと重なっていくというか......。

キング・クリムゾンとドアーズって、でもまた違いますね。

トクマル:そうですか? 僕的にはすごく似ていて、どちらも聴いていてぜんぜんハッピーにならないというか(笑)。

キング・クリムゾンというのは、なんとなくわかる気がするかなー。トクマルシューゴの曲に奇数拍子があったりするし、あと、ギターもロバート・フリップみたいなところがあるし。

トクマル:好きですね。

最初からギターだったんですか?

トクマル:その前にピアノをやっていました。

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ところで、トクマルシューゴの音楽、とくに今回のアルバムを語るうえでひとつキーワードとされるのは"ファンタジー"だと思うんですね。ファンタジーとしての音楽、メルヘンとしての音楽、そういう風に言われたとき違和感はありますか?

トクマル:ファンタジーやメルヘンという言葉が好きじゃないんですけど、意味合いとしてはぜんぜんアリだと思います。ファンタジーやメルヘンというと、どこか女々しい感覚があって、それが苦手なだけです(笑)。

空想世界......というかね。

トクマル:いちおうパンクから入ったので、そういう女々しいのが苦手なだけで、意味としては当たっていると思います。実際に作っているモノはそういうモノなので、メルヘンという言葉は大嫌いですけど(笑)。

僕もパンクから入ったんですが、女々しいモノが大好きだということにあるときに気がついたことがあって(笑)。

トクマル:ハハハハ、まさにそういう感覚ですね。

リスナーとしてもそういう、ある種の別世界を構築していくような音楽を好んで聴く傾向にあるんですか?

トクマル:んー、あるかもしれないですね。ただ、ホントに無差別に聴くのが好きなんですよね。

日本の音楽からの影響はあるんですか?

トクマル:あると思いますよね。子供の頃から耳にしてきたモノだから、あると思いますね。

コーネリアスなんかもファンタジーだと思うんですけど、シンパシーはありますか? 欧米ではトクマルシューゴとよく比較されていますが。

トクマル:好きですけど、そんなに詳しくはないですが......

聴いてなかった?

トクマル:10代の頃のはホントに洋楽ばかり聴いていて、むしろ日本の音楽は避けていたようなところがあったんです。

コーネリアスがクラウトロックだとしたら、トクマルシューゴはソフト・マシーンというか、カンタベリーかなと思ったんですね。だから似ているようで違っているとも言える。

トクマル:でも、言われてみれば、すごく近い感覚があるのもわかるんです。

ファンタジー、という言葉を敢えて使わしてもらうと、自分自身ではファンタジーを作っているという意識はあるんですか?

トクマル:結果的にそういう面はあると思います。ただ、もっと単純なところで、自分が作りたい音楽を作るっていうところがありましたね。"空想"は後付のところもあるんです。あるはずの音楽......「ホントはあるはずなのになぁ」とずっと思っていた音楽を具現化する、だから"想像"を具現化する作業なんです。

ああ、なるほど。まずは音ありきなんですね。

トクマル:そうですね。

じゃあ、言葉というのは自分のなかでどういう風に考えていますか?

トクマル:僕には伝えたい言葉は何もないんです、メッセージとかね。自分の曲のなかではそれはない。

感情を伝えるというタイプでもないですよね。

トクマル:そうですね。感情を伝えるタイプでもないです。具体的なワードを述べたいというわけでもないんです。ただ、想像のきっかけになればいいかなと思っているんです。僕は夢日記から歌詞を取っているんです。夢日記をずっと付けているんです。

へー。

トクマル:そこから引用するんです。たとえば......テレビというものがあるとしたら、「テレビ」という言葉を使わずに「四角い箱」という言葉を使うとする、そうすると想像の幅が広がるんですよね。もし10年後に同じ作品を聴いたとしたら、想像の幅を広げたほうが違った聴こえ方をすると思うんです。10年後に思う「四角い箱」になるんです。

そういう、別世界を見せてくれる表現に関して、音楽以外で好きなモノはありますか? 

トクマル:映画は好きですね。いまはそんなに観ている時間がないけど、昔は1日3本みたいな感じで観ていましたね。

とくに思い入れがあった監督は誰ですか?

トクマル:映画もやはり、とくにひとりという感じじゃないんですよ。もう自分のなかで決めるんですよ。今月はヒッチコックをぜんぶ観るんだ、とか。デヴィッド・リンチをぜんぶ観るとか。リンチにハマったときもあったし、B級アクションにもハマりましたね。けっこう好きでしたね。

ホントに何かひとつって感じじゃないんだね。

トクマル:そうなんですよ。すぐに飽きてしまうんです。

文学作品は?

トクマル:芥川とか......。

ハハハハ、まったく意外だね(笑)。

トクマル:ハハハハ。ひと通り読むんですよ。でも、いつの間にか苦手になってしまった。

童話文学は?

トクマル:ないですよね。

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質問変えますけど、海外ツアーを最初にやったのはいつですか?

トクマル:2006年ですかね。

どこをまわったんですか?

トクマル:ヨーロッパでしたね。

「ラムヒー」には2008年のアメリカ・ツアーの模様を編集したDVDが付いていましたね。

トクマル:あれが初めてのアメリカ・ツアーだったんです。

海外ツアーというのはトクマルシューゴにとってどんな体験なんですか?

トクマル:初めてリリースしたのがアメリカのレーベルで、なかなかツアーに行けなくて、だから現実感がなくて、その現実感をすり合わせていく感じでしたね。行ったことがないところで出会ったことのない人の前でやるというのは、経験としてすごい良かった。

アメリカのレーベルからデビューして、ツアーしたのはヨーロッパだったんだ。

トクマル:そうですね。

ヨーロッパはどこに行きました?

トクマル:最初はひとりで行って、フランス、スペイン、それから北欧もまわりましたね。フェスにも出たし、狭いところでもやりました。

ギター一本で?

トクマル:そうですね。

日本で出すことは考えていなかったんですか?

トクマル:出せるものなら出したかったんですけど。ファーストの前に作ったアルバムがあって、それがたまたま友だちの友だちを通じてアメリカでレーベルをはじめた人に伝わって、「出したいんだけど」という話になって、ホントに偶然だったんです。びっくりしたというか、ぜんぜん現実感がなかった。

自分から海外で出したいと思ったわけじゃないんだ。

トクマル:ぜんぜん。デモテープをレーベルに送るという考えがなかったですからね。

じゃあどうしようと思ってたんですか? 自分の作品を。

トクマル:とりあえず、作りたいから作っていた。30、40ぐらいになったらCDを1枚出したいなぐらいに思っていたんです。

なるほど。育った国とは違う文化圏で演奏することが、自分の作品のなかにフィードバックされることはありますか?

トクマル:音楽的なものよりも、想像に関するフィードバックのほうが大きいですね。見たことのない風景、聞いたことのない会話とか、それを記憶しておくとあとで夢に出てくるんです。それがまた夢日記に書かれて、ひょっとしたら歌詞になったりとか(笑)。まあ、そんなイメージなんですけど。もちろんそのときの対バンの演奏を聴いて「おー!」と思うことはありますけど。

こないだはテレヴィジョン・パーソナリティーズと一緒にやったんですよね。そのときのライヴがすごかったという話を聞いて。

トクマル:あれはすごかった。昔から大好きだったし、一緒に出れて光栄でしたね。いままで好きだった人と一緒にできるというのは嬉しいですね。

トクマルシューゴの音楽は受け手によってかなり違うだろうから、テレヴィジョン・パーソナリティーズと一緒にやっても合うのかしれないけど、片方では。

担当者Y氏:フライング・ロータスともやってますしね。

ハハハハ。いいですね。

トクマル:シカゴで(笑)。『The Wire』のイヴェントでしたね。だから面白いライヴにはいっぱい出させてもらっているんです。初めてライブをやりはじめてから、たしか数回目のライヴがマジカル・パワー・マコさんと一緒だった。

濃いねー。

トクマル:すごい嬉しかったし、「なんでオレここにいるんだろう?」って思った。対バンには恵まれていましたね。あげればキリが無いほどいろんな大好きだった人たちと一緒に演奏出来たりして。

ニューヨークのライヴでは現地の人たちとバンド演奏していたじゃないですか。あれは譜面を渡して?

トクマル:そうですね。あらかじめ譜面を渡しておいて。1~2回リハーサルをやって。

そういう形式のライヴは多いんですか?

トクマル:少ないです。でも、こないだヨーロッパ行ったときはアイスランドの人たち(Amina)と一緒にやったんですが、そのときも譜面を渡してやりましたね。

なんかね、トクマルシューゴの音楽からはパスカル・コムラード的な自由な感性を感じるんですよ。

トクマル:もちろんパスカル・コムラードは大好きなんですけど、それを目指してここまで来たというよりも、すごい回り道をして結局ここまで来たという感じなんですよね。

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なるほど。『ポート・エントロピー』は、ホントに力作だと思ったんですけど、やはり『EXIT』から2年半もかかったと言うことは、本人的にもそれなりの強い気持ちがあったんじゃないかと思います。そのあたり聞かせてください。

トクマル:そうですね、かなりありましたね。自分のなかでスタンダードなものを作って、基盤を固めたかったというのがありましたね。そうしたら次、何をやってもいいかなと、どこにでも行けるというのがありました。

曲はたくさん作るほうですか?

トクマル:あまり作らないほうなんですが、今回は50~60曲ぐらい作りましたね。

そのなかから選んだ?

トクマル:多作じゃないんですけどね。

ひとりで。

トクマル:はい。

完成の瞬間は自分でわかるものなんですか?

トクマル:わかります。

いま目標にしているミュージシャンはいますか?

トクマル:いないですね。好きな人はいますけどね。

若手と言われているミュージシャンで共感がある人はいますか?

トクマル:んー......。音楽的な意味で言えばウリチパン郡。それと倉林哲也さん。

ブルックリンのアニマル・コレクティヴやグリズリー・ベアみたいな連中はどうですか?

トクマル:もちろん。僕のライヴ・バンドも手伝ってくれたベイルートやザ・ナショナルとかもですね。

世代的にも近いでしょう。

トクマル:近いです。グリズリー・ベアは僕のことを見つけてくれてレーベルに紹介してくれたりもして嬉しかったです。たぶん、あの辺の人たちと僕に共通するのが、すごくたくさんの音楽を聞いていて、いろんなところにアンテナを張ってるってことなんですよね。単純に音楽好きというところから出発している。そこにいちばん共感しますね。なんであんな音楽が生まれたのかというと、そこだと思うんですよ。「こういう音楽もあってもいいんだ」という気持ちから生まれている。グリズリー・ベアもアニマル・コレクティヴもダーティ・プロジェクターズも、ああいう人たちはそうだと思うんです。

そう思います。ちなみに『ポート・エントロピー』というタイトルは?

トクマル:とくに意味はないです(笑)。ブルース・ハーク(Bruce Haack)という音楽家がすごく好きで、彼の作品で『キャプテン・エントロピー』というのがあって、そこからの引用です。

ジャケットのアートワークは?

トクマル:幼なじみに頼んだんですよ。曲だけ聴かせて「描いて」って(笑)。何もディレクションはしていない。それで何枚も何枚も描いてくれてそのなかから選びました。

これが音楽に相応しいと。

トクマル:うん、そうですね。

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