「Not Waving」と一致するもの

Yossy Little Noise Weaver - ele-king

 ヴァンパイア・ウィークエンドと音で渡り合えるバンドが日本にいることをご存じか。そう、ヨッシー・リトル・ノイズ・ウィーヴァー(YLNW)である。彼らの3枚目のアルバム『Volcano』は、カリブ海の音楽とミュータント・ディスコのブレンドで、エゴ・ラッピンとザ・ゴシップ・オブ・ジャックスによるあの素晴らしい『EGO-WRAPPIN'AND THE GOSSIP OF JAXX』に続くかのようにポスト・パンクのダンス・サウンドを演奏する。

 実際のところ、YLNWは大雑把に言って日本のレゲエ・シーンから生まれている。中心にいるのは元デタミネーションズ/元ブッシュ・オブ・ゴーストという経歴を持つキーボーディストYossyとトロンボーン奏者のicchieで、またメンバーには菅沼雄太(エゴ・ラッピン他)やThe K(元ドライ&ヘヴィー)もいる。2005年のデビュー・アルバム『Precious Feel』はキングストンの海辺で録音されたエレクトロニカであり、隙を見てはカンの『フロー・モーション』に接近する。2007年の『Woven』はジャッキー・ミットゥーがフォー・テットと一緒にスタジオで作ったミュータント・レゲエである。そうした過去の美しい2枚の抒情主義と打って変わって、3年ぶりの『Volcano』は、リスナーの身体をより大きく、波のように動かせる。

 "スーパー・ラビット"はトーキング・ヘッズがジャマイカ旅行したような曲だ。あかぬけたリズムとディレイの効いたスカのトロンボーン、そして滑らかなエレピのコンビネーションが甘い夢を紡いでいく。"ピース"はプラスティックスのカヴァーで、今回のアルバムにおけるベスト・トラックのひとつ。4/4ビートとジャジーな鍵盤とスカの香気が心地よいミニマル・ポップである。タイトなヒップホップ・ビートを取り入れた"ウォッシング・マシン・ブルース"やドリーミーな"ドラム・ソング"は過去2枚と連なるバンドの抒情性がよく出ている曲で、"ヴォルケーノ"は日差しを浴びたミュータント・ディスコ、"ペイル・オレンジ"はラテンの陶酔に包まれた温かいスロー・ダンスだ。

 こうした彼らの音楽は、とにかくキュートだし、耳障りの良さゆえにその背後にある挑戦が見過ごされがちだが、彼らの目的はジャマイカとディスコを並列させることでもはなく、ワールド・ミュージックのレトリックでもない。それは絶えず変化しながら新しいミュータント・サウンドを創造することに違いない。

 ここ数年続いている欧米のポスト・パンク・リヴァイヴァルとはまるで共振することのない日本の音楽シーンだが、興味深いことにレゲエ系のシーンではそれが起きている、起きていくかもしれない――そう思わせるYLNWの新作で、バンドはこの路線を継続しながら、初期のエレクトロニカ・スタイルをあらためて加味すべきである。何故なら、YLNWの輝きはこの1枚に限ったことではないのだ。

Excepter - ele-king

 2003年から電子音とゾンビ声によってひたすら"荒廃"を描き続けるブルックリンのイクセプター、アニマル・コレクティヴのレーベル〈ポウ・トラックス〉になってからは昨年の12インチとDVDによる『ブラック・ビーチ』を挟んで2年振りの2枚目となるアルバム(通算では8枚目らしい)――といっても2003年から2009年前の彼らのライヴ音源を編集したもので、CDで2枚組140分近くの代物となる。ここで取り上げるくらいだから、それを最後まで聴かせる力量がこのバンドにはあると思っていただきたい。喩えるのなら......ヘア・スタイリスティックスから駄洒落を抜き取ってもっとへなへなにして意味不明にしているのがこの5人組の音楽で、初期クラスターやコンラッド・シュニッツラー、あるいはドローンやミニマル・ミュージックやハウス・ミュージックさえも通過している痕跡を瞬間的には見せるものの、しかしそのどこにも依拠しないという本物の根無し草としてこのバンドは、『ピッチフォーク』から一定の評価を得ている(出せばほとんどレヴューされる)。そして今回の壮大のインプロヴィゼーションの記録においてその根無し草感性のたしかさが証明されている。早い話、つかみどころがないのである。

 31分におよび、6つのパートからなる1曲目の"テレポーテーション"(08年10月収録)はこれまでの彼らの軌跡を追うように、イクセプターのすべてが込められていると言える。おおよそクラウトロックの残骸とダブの抽象概念のブレンドによってはじまるこの冒険は、ノー・ネック・ブルース・バンドの輪郭をゆっくり溶解しながら限りなく退屈な、そして実に魅惑的なトリップを繰り返す。ハイライトに向かって電子音がまばたきをするようにとことこ鳴る。そしてテリー・ライリーの悪夢と腐敗したハウス・ミュージックのダンスフロアが待っている。尽き果てることのない異常な酩酊状態......それはこのバンドの真骨頂だろう(タイトルの"テレポーテーション"="念力移動"通りの展開とも言える)。7曲目の"レング"(08年冬)はメランコリックなアンビエント、8曲目の"OG"(07年)は寒々しいドローンである。

 2枚目の1曲目、タイトル曲である"プレジデンス"は03年の演奏で、本作でいちばん古い。"テレポーテーション"の不透明でカオティックなトリップと違って、中心人物であるジョン・フェル・ライアンによるソロ・シンセのミニマリズム(実に33分にもおよぶ)は明らかに催眠効果を高めていく。電子の単音が延々と鳴り続けて、いつ展開があるのかという思いを踏みにじるかのようにそれは続く。20分を過ぎたあたりでリスナーは宇宙の誕生を見てしまうかもしれない。そしてこの曲をアルバム・タイトルにした理由を悟ることだろう。「ああ、そういうことだったのか」と。少なくとも底力がなければ演奏できない曲である(バンドはこれを"long distance music"と定義している)。"アンチ・ノア"(07年)ではテレビのナレーション(天気予報らしい)のコラージュ、"ザ・オープン・ウェル"(08年)ではいっさいのヒューマニズムを排した人工的で無機質な電子を鳴らし続ける。年代不明の最後の曲"ウェン・ユー・コール"は、言うなればスーサイドの屍体とダブステップの混合である。

 電子によるフリー・ミュージック、いまどきこういう音楽はあるものだと思われるかもしれない。しかしイクセプターはそう考える以上に挑戦的で頑固者である。

Zinc - ele-king

 DJジンクは彼がハウスに回帰した理由について語る。「初期のジャングルというのは、ハウスと同じエネルギーを持っていた。同じテンポで、同じエレメンツだった」――昨年の7月28日、奇しくも筆者の誕生日に『ガーディアン』はDJジンクの提唱するクラック・ハウスについての記事を掲載している。アシッド・ハウス、アンビエント・ハウス、メタル・ハウス、ラガ・ハウス、プログレッシヴ・ハウス、ディープ・ハウス、ファンキー・ハウス、テック・ハウス、ミニマル・ハウス、マイクロ・ハウス、エレクトロ・ハウス、フィジット・ハウス......、そしてクラック・ハウス。まあ、なにはともあれ、ドラムンベース界のパイオニアのひとりがハウスに向かったとは興味深い話だ。

 DJジンクといえば、ジャンプ・アップ・ジャングルのアンセム"スーパー・シャープ・シュート"によって傑出した経歴を築いた人物である。が、彼は2007年にそのジャンルに背を向けている。そしてDJジンクは2008年を息子と一緒に過ごしながら自身が前進するための術を思案したという。そこで生まれたのがクラック・ハウスである。DJジンクは初期のジャングルにしばしば見られたような4/4ドラム・パターンをブレイクビートにブレンドする。そのドライヴするベース音、くらくらするシンセ音、歌と陶酔、それは90年代初頭のレイヴのヴァイブを想起させる。そしてそれはプロデューサーのルーツをより鮮明にする。女性MCのノー・レイを起用した彼の"サブマリンズ"や"キラサウンド"にはジャンプ・アップ・ジャングルと同じようなエネルギーがあるのだ。彼は彼がかつて恋したハウスというルーツに立ち返ってジャングルを再発見したのである――と同紙は記している。

 で、まあ本当にその通りなのだよ、これが。昨年末にリリースされた10トラック入りの『クラック・ハウスe.p.』は90年~91年あたりのレイヴ・サウンドの現代版だと言える。これはノスタルジーから来たというわけではない。同紙の取材で、ジンクはこの再発見の契機となったのがスウィッチとシンデンだったことを明かしている。フィジット・ハウスのベースラインがジンクを20年前の倉庫の熱狂へと導いたというのだ。また、同紙でジンクはダブステップへの複雑な気持ちも告白している(UKガラージがドラムンベースを食ってしまうかと心配されたが、むしろ現在はダブステップに有能な新人が持っていかれている――そうだ)。いずれにしてもUKダンス・カルチャーの競争意識、しのぎ合いが新しいスタイルと新しい呼称を生み出しているわけだ。クラック・ハウスはたしかに面白い。シンプルな4つ打ちとベースラインの絡みにしても、ヴォイス・サンプリングにしても、レイドバックしているというよりもダンス・サウンドとしての説得力の強さを感じる。もちろんでっかい倉庫で浴びるように聴きたいけれど、家で流しているだけでも気分は良い。

 さて、2010年はUKファンキーの年だと言われているけれど本当にそうなるのだろうか。だが、その前にまだまだダブステップの快進撃も続きそうだ。スキューバのセカンド・アルバムも良かったし......。

CHART by JET SET 2010.03.08 - ele-king

Shop Chart


1

V.A.

V.A. 20 YEARS OF STRICTLY RHYTHM MIXED BY DJ NORI & TOHRU TAKAHASHI »COMMENT GET MUSIC
Strictly Rhythmから豪華すぎるアニヴァーサリー・アイテムが到着!DJ NoriとTohru TakahashiによるミックスCDに加えて、国内の気鋭なクリエイター陣が本作のためにRe-edit、Remixを施した未発表曲を収めた3枚組。

2

SOMBRERO GALAXY

SOMBRERO GALAXY JOURNEY TO THE CENTRE OF THE SUN »COMMENT GET MUSIC
Lovefingers新レーベル"ESP Institute"第1弾!!Discossessionのキーボード奏者Jonny NashとオランダCBS一派のTakoによる新ユニット、Sombrero Galaxyによる待望の1st.シングルが、噂のLovefingers主宰ESP Institute第1弾として登場!!

3

JOY ORBISON

JOY ORBISON SHREW WOULD HAVE CUSHIONED THE BLOW »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆ダブステップ・シーンから登場した超新星による美麗特大名曲!!デビュー曲"Hyph Mngo"が特大アンセム化、Four Tetの特大ヒット"Love Cry"でもリミキサーとぢして大抜擢された超新星が、待望過ぎる3rd.12"をリリース!

4

MENDO

MENDO ENCANTOS EP »COMMENT GET MUSIC
絶好調Cadenzaからの新作!!Michel Cleis"La Mezcla"の大ヒットと共に、近年のトレンドとなったアフロ・チャント系トライバルなモダン・ミニマルハウス作品!!

5

LINDSTROM & CHRISTABELLE

LINDSTROM & CHRISTABELLE BABY CAN'T STOP PT.2 »COMMENT GET MUSIC
Prins Thomas & Idjut Boysという鬼に金棒なリミックス!!アルバム国内版CDに先行収録されていてシングルカットを待ち望んでいた方も多かったはずのPrins Thomas、idjut Boysリミクシーズが遂に登場!!

6

QATJA S

QATJA S KROM EP »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆これが当ジャンル'10年の一推しサウンド=フレンチ・テックだ!!当店お馴染みのベルジャン・ジャンパーDr. Rudeとのコラボ12"もリリースしているフレンチ・テック・マスターQatja Sによる特大傑作がこちら!!

7

ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT

ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT SPRIT »COMMENT GET MUSIC
Real Estate好きは絶対泣きます。Underwater Peoplesからの素晴らしすぎスプリット!!特大スイセン盤★Real EstateをリリースしたUnderwater Peoplesからの4枚目。Real Estate~Ducktails~Julian Lynchなロウファイ・ビーチ・ポップ・スプリット。完璧です!!

8

DOMINIK EULBERG

DOMINIK EULBERG DATEN UBERTRAGUNGS KUSSCHEN (REMIXES) »COMMENT GET MUSIC
美麗テックからディープなダビー・ミニマル・アレンジまでの好リミックスEP!!先ごろMassive Attackの過去名作"Taerdrop"のリミックスを手掛け話題となったMinilogueがリミックスを担当!!

9

DJ SPINNA

DJ SPINNA THIRST / SUMMER MADNESS »COMMENT GET MUSIC
これは間違い無し!その通りSide-B"Summer Madness"使いです!定番クラシック・ネタKool& the Gang"Summer Madnnes"をうまくバラしたSpinna印なトラックに4th・アルバムにも参加していたNYのラッパー、Fresh Daily、Daniel Josephをフューチャー。

10

GAPE ATTACK!

GAPE ATTACK! BURN THIS CITY »COMMENT GET MUSIC
どんどん出てくるBlank Dogsフォロワー・バンド。この人たちも超最高です!!シアトルのシンセ・パンク・トリオ、Gape Attack!のデビュー・7インチ!!ノイジーなダンス・ビートがCold Caveにも通じるキラー・チューン。絶対注目です!!

Nice Nice - ele-king

 ナイス・ナイスの音楽は非常にヴァーチャルな想像力を刺激する。そこで体験すること、見ることや聞くことは、この目この耳この手で感じることではない。それはなにかもっと間接的なもの、まるで自分自身の......アバターが体験しているもの、そんな気がしてくる。よく設計された音世界。隙間なくめぐらされた打ち込みの音ひとつひとつがこの世界のねじ釘だ。トライバルで多層的なビート、和太鼓を思わせるタムの乱れ打ちはその動力源、モーターだ。たとえば映画『サマー・ウォーズ』の舞台、あの可愛らしくクリーンにデコレートされた二次元の惑星を思い浮かべるとしっくりくるかもしれない。国境や国籍が一旦キャンセルされ、距離という概念が存在しない仮想世界に、あらゆる人種が思い思いの姿かたちで入り交じって生活している。鳥が飛び、車が走り、人が繋がり、金が動く。現実世界さながらの圧倒的な重層性と複雑な構造を抱えて稼働する、擬似世界。

 ギタリストとパーカッショニストによるポートランドのエクスペリメンタル・デュオ、ナイス・ナイス。活動自体は90年代半ばから続いているようだ。ファースト・アルバム『クローム』が〈テンポラリー・レジデンス〉からリリースされているが、それでさえ2003年に遡る。そしてふたりは2006年〈ワープ・レコーズ〉とサイン。バトルスの発掘以来さらに新たなフェイズに突入し、IDMという言葉の限界を拡張しつづける〈ワープ〉が2010年に提示するものは何か? 本作は、そうした期待と注目をもって迎えられたセカンド・フルということになる。

 擬似世界と言ったが、カオティックでありながらも緻密な重層性を抱え込んだナイス・ナイスの音には、だからメロディ、主題というものがない。そもそも主体がない。とにかくあらゆる効果音やらミニマルな反復を続けるギターやら打楽器やらが洪水のように渦巻いて、とことんハイパーに運動しつづける。音のインフレーションが止まらない。ある特定の主体の眼差しから捉えられた世界の描写(それがメロディ、主題というものだ)ではなく、誰かの意図や恣意では決定されない、世界の設計図=曼荼羅の完成を志向しているというふうだ。もちろん本作からはヴォーカル入りの曲もあるし、メロディらしきものもあるが、それは定点を持たず、どこからか立ちのぼった祝詞、礼拝の掛け声ででもあるかのよう。

 「身体性」という言葉で指摘されることの多い彼らのサウンドだが、実際に運動するのは身体ではなく脳だ。身体はむしろ固く緊張する。そして脳の奥が広がる。そう、踊り、動きまわっているのはアバターたちなのだ。世界はじつにノイジー。私はそこでかわいいカモメのような姿で日がな過ごすだろう。ようこそ擬似世界「エクストラ・ワウ」へ。入場にあたってはアカウントを取得し、ログインすることが必要です。パスワードを入力してゲートが開く、"One Hit"。大きな象に乗ってパレードが進む、"A Way We Glow"。ストリートでハリネズミと巨人のケンカがある、"On And On"。おや、雨だ、"See Waves"......。

 リアルの底が抜けた現在という時間を祝祭的に描き出す、彼らもまた新しいリアリティに生きる人びとのひとりだ。アーティスト写真がどれもノー・エイジのような、丸腰のインディ・ロッキン・テロリストといった雰囲気をたたえているのもいい。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

 プラスティック・オノ・バンドが、去る2月16日(木)に〈BAM〉で再結成しプレイした。「●●がゲストに来る」......など、私のまわりでもさまざまなうわさが回っていて、ショーはあっという間にソールドアウト! あまりにも早くて、この1日前にはリハーサルをパブリックに公開するショーも追加で催された(こちらもかなり競争率が激しかったらしい)。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!
(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

このショーは、現在のオノ・バンド・メンバー(コーネリアス、ショーンレノン、本田ゆか)に加え、曲ごとに豪華なゲストが登場した。エリック・クラプトン、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとキム・ゴードン、ポール・サイモン、ベティ・ミドラー、マーク・ロンソン、シザー・シスターズ、細野晴臣......この上ない豪華なショーである。年齢(77歳!)をまったく感じさせないパワフルなパフォーマ ンスはもちろん、彼らをこの場所に一同に集めることができるYoko Onoの存在はさすがというしかない。このショーを見た人は一同に「彼女はすごい!」と言うし、このゲストたちが、最後に一列に並んであいさつした時は、ニューヨークにおけるYoko Onoと言う存在を重要さを再確認した。

mi-gu
mi-gu
Ghost Of A Saber Toothed Tigers
Ghost Of A Saber Toothed Tigers

 ところで、私が今回ピックしたいのは、数日後に行われたmi-guのショー。mi-guはコーネリアスのドラマー、あらきゆうこさんのバンドで、昨年は〈HEARTFAST〉のCMJショーケースにも出演して頂いた。ショーン・レノンとガールフレンドのバンド、Ghost Of A Saber Toothed Tigers(Sean Lennon & Charlotte Muhl)の前座として出演。ギターのシミーとドラム&ボーカルのゆうこさんの息もぴったりなショーは、数日前のプラスティック・バンドと比べるとこじんまりして、タイプは違うが、雰囲気がとてもよく、観客もアットホームな感じで、声援を送ったりして盛り上げる。観客には、坂本龍一の姿もあり、私の友だち(アメリカ人男)は大興奮して、一緒に写真を撮ってもらったりしていた。最後の2曲にはゲストとしてショーン・レノン、本田ゆか、そしてコーネリアス本人が出演。そして次のバンド(Ghost~)が登場すると、先ほどと、メンバーがシャーロット以外全て同じ! ただ、そのシャーロットが、この世のものとは思えない程かわいい。ショーン・レノンが自慢したくなる気持ちもわかるが、かわいいだけでなく歌も歌えるしベースも弾ける。基本ショーンとシャ―ロットふたりのバンドなのだが、今回はメンバーがいたのでバンド編成になっている。フォーキーなロックで、サウンド的にはショーンのソロに女の子ヴォーカルが入った感じだ。

 2月、NYはファッションウイークでもある。うちの近所のウィリアムスバーグにもファッション・ショーが存在する。NYファッション・ウイークエンドに対抗したウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)だ。ローカルの若いデザイナーたちが斬新なアイディアや手法で洋服を作り、個性あるファッション・ショーを作っていく。 洋服はもちろんのこと、とくに面白いのはデザイナーのプレゼンの仕方。NYファッション・ウイークのように、洋服がメインで、モデルがキャット・ウオークをするだけではなく、こちらは、どちらかというとパフォーマンスがメイン。

フラウク
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドにおけるフラウク
トータル・クラップ
トータル・クラップ
ロボット・デス・カルト
ロボット・デス・カルト

 今回の2010年春夏のショー は、WFWでは初のサンフランシスコのデザイナーで、テクノロジーv.s.自然をテーマにしたライン、フラウク、グラムとパンク、アヴァンギャルドをミックスしたライン、トータル・クラップ、Lace & Voidをテーマにし、普段も着れるドリーミーさが売りのデシラ・ペスタ、主催者のラインであるKing Gurvy等々......。

 個人的にいちばん好きだった、ルフェオ・ハーツ・リル・スノッティはリーズ・ア・パワーズのミュージック・ヴィデオ"イージー・アンサーズ"のデザインも担当していて、メンバーはモデルで登場したり、アフター・パーティではDJをしたり大活躍。2010年の冬をイメージした野生の冒険のキャラクター、ガチョウ、イルカ、カエルをモチーフとし、カラフルな色を切り貼りしてリサイクルした洋服を着たモデルたちがラッパーに合わせてダンス・パフォーマンスを展開。ホットドッグやアイスクリームを、ウエブサイトの入ったフライヤーと一緒にオーディエンスに投げたり......。

 アートギャラリーでもある、シークレット・プロジェクト・ロボットのライン、ロボット・デス・カルトは、モンスター(ドラキュラ、フランケンシュタインなど)メイクのモデルたちが、ロボット・デス・カルト印の旗を持って、ステージに突如現れ大騒ぎ、そしてすぐに去る。5分ぐらいのショーだったが、存在感とインパクトは圧倒的。

 どのデザイナーもいまあるものを使い、いろんなアイディアを組み込んで、新しいものに変えていく。レイヤーだったり、コラージュだったり、リサイクルだったり。NYファッションウイークと規模はまったく違うけれど、DIY精神の面白いファッションショーだと毎回感心する。

 最後に、このファッション・ショーの主催者のアーサー・アービットに話を訊いてみた。彼は、元ツイステッド・ワンズという名前で、ライトニング・ボルト、ブラック・ダイス、ヤーヤーヤーズ、ライアーズなどを初めてウィリアムスバーグでブッキングした人で、最近では、DJ、イラストレーターとしても活躍している。また、普段もスーツでびしっと決めている人だ。


RNY:ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)はいつ、どのようにはじめたのですか。

アーサー・アービット:3年前、これから出てくる若手デザイナーにプラットフォームを作ってあげたいと思った。

RNY:NYのファッション・ウィークとは、どの辺が異なりますか?

アーサー・アービット:デザイナーたちはデザインをプッシュすること、それを創造する工程にとくに興味を持っていて、ビジネスは透明になっている。

アーサー・アービット
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドの主催者のアーサー・アービット

RNY:当日いろんなメディアのインタヴューを受けていましたが、WFWはどのようにプロモートしているのですか。

アーサー・アービット:いつも同じだけど、主要なメディアやブログサイト、ファッション業界の人たちだね。

RNY:WFWで何が大変で、何が楽しみですか。

アーサー・アービット:いまは楽しいことしか思いつかない。これが自分のやりたいことだからね。

RNY:あなたは主催者でもあり、デザイナーでもありますが、あなたの洋服ライン「King Gurvy」を紹介して下さい。

アーサー・アービット:エクスペリメンタル!

RNY:2010年おすすめのデザイナーは。

アーサー・アービット:フラウク(Flawk)だね!

Various - ele-king

 それは最近ではダブステップ系に顕著だ。決定的だったブリアルの"アーチャンジェル"をはじめ、コード9の"タイム・パトロール"やピンチの"ゲット・アップ"......グイードやジョーカーあたりもそうだろう。あるいはJ・ディラ以降のヒップホップではフライング・ロータスの"ロバータフラック"やエグザイルの"チューンド"、あるいはインディ・ロックにおいてはザ・XXの"ベーシック・スペース"......ここ数年、ソウル・ミュージックの急進派が開拓するある領域をポスト・R&Bと括ることができるのなら、ハウス・ミュージックのコンテキストでそれをやっているのがケニー・ディクソン・ジュニアと彼の〈マホガニー・ミュージック〉だと言える。彼が2008年末と2009年初頭に発表した2枚のアルバム『デトロイト・ライオット'67』と『アナザ・ブラック・サンデー』はまさにその最新版である。

 もっともケニー・ディクソン・ジュニアと彼の〈マホガニー・ミュージック〉は、コード9やフライング・ロータスのような進歩派のコスモポリタンな感性とはまた違ったベクトルを持つ。ディクソン・ジュアニの面白さは、例えば1970年代当時に進歩的な黒人から批判されたブラックスプロイテーションを積極的に引用して、あるいはそのヴィジュアルや言葉遣いにおいてステロタイプの黒人像をむしろ自ら弄ぶところにある。彼にはブラック・ナショナリスト的な側面が大いにあるけれど、だがそれは、アフリカ回帰のような正当派とも違った奇妙なねじくれ方をしているのだ。彼はまるで......黒人にとってのよい子の教科書をひっくり返し、同時にそれをサポートする白人のリベラル派を牽制するかのようだ。あるいは......僕は、極度にエフェクトがかけられ街の亡霊のうめき声にしか聴こえないR&Bヴォーカルが繰り返されるブリアルの"アーチャンジェル"をこのジャンルにおける最高のクラシックだと思っているひとりだが、ディクソン・ジュアニのポスト・R&Bは、60年代や70年代の亡霊があたかも本当に彼に取り憑いているように聴こえる。

 ここに紹介するレーベル・コンピレーション『マホガニー・ミュージック』は2005年に発売されたものだが、あっという間に完売し、この度嬉しいことに再プレスされたので取り上げる。今年に入ってセカンド・アルバム『II』を発表したアンドレスやランドルフ、ピラーナヘッドといった面々の他に当時ディクソン・ジュアニと関わりのあったUKの〈ピースフロッグ〉周辺のプロデューサー(チャールズ・ウェブスターなど)のトラックも収録されている。また、CDは2枚組となっていて、もう1枚のほうはデトロイトの女性シンガー、ニッキー・O(『アナザ・ブラック・サンデー』の最後の曲"リクティファイ"でも歌っている)のソロ・アルバムとなっている。

 マリク・アルストン、ジェソン・ホガンズ、そしてジョン・アーノルドら"ビートダウン"系による"イン・ア・ベター・ウェイ"はミニマルなダブの効果を取り入れて、ヒプノティックなソウルを響かせる。そして、人びと(黒人たち)のざわめきからパーカッションによるイントロへと続くという、いわばマホガニー・ミュージック・スタイルによるドウェイン・モーガンの"エヴリシング"へと滑らかに移行する。ピラーナヘッドがスローなファンクで決めれば、UK出身のベテラン、チャールズ・ウェブスターはメランコリックなギターとアンビエントをブレンドする。ロベルタ・スウィードとディクソン・ジュアニのふたりによるピッチ・ブラック・シティが気怠い深夜のジャジー・ハウス"ランナウェイ"(名曲!)で酩酊すれば、アンドレスは先日発表した自身のアルバムに収録した"ステップ・パターン"で夜霧のなかを彷徨する。そしてもう1枚のCDでは、ニッキー・Oが場末のクラブへと連れて行く。

 いずれにしても、この、例によって挑発的なまでに"黒い"音楽の背後でコンダクトを振っているのはディクソン・ジュアニだ。彼はそして、巷に氾濫する"ディープ"という決まり文句(ボンゴ、ブルース・コード、チャント等々のレトリックから成る、とりあえずブルージーな雰囲気)をあざ笑うかのように、スモーキー・ヴォイスをマイクに吹きかけるってわけだ。

The Irrepressibles - ele-king

 10年前に(紙の)エレキングで追悼文を書いたビリー・マッケンジー(アソシエイツ)はその後も発掘音源がぽつぽつとリリースされ、なかではクラブ・トラックばかりを集めた『オーフターマティック』(04)は仕事から離れたいときにはよく聴いていた。イエロと組んだ"リズム・ディヴァイン"は歌詞が丸ごと差し替えられた"ノーマ・ジーン"に、パスカル・ゲイブリエル(元ボム・ザ・ベース)のプロデュースによる"サワー・ジュエル"やユーリズミックスのカヴァー(ポール・ヘイグによるプロデュース)など、聴いたことのない曲も多く収録され、壮大極まりないルームとのトランス・ページェント"アナコスタ・ベイ"はフルで採録。バリー・アダムスンのプロデュースによる"アチーヴド・イン・ザ・ヴァレー・オブ・ドールズ"や元ラグジュリアのノコによるアポロ440がプロデュースした"ペイン・イン・エニー・ランゲージ"などマガジン周辺とのセッションが2曲も聴けちゃうし、ピーター・アッシュワースによるボツ写真のようなカットもファンにはたまりません(B.E.F.やスティフン・エマーなど、レイヴ・カルチャー以前のものはナシ)。生前の作品としてリリースされた他のアルバムよりも聴き応えのあるところは少々、複雑だったりもするけれど。

 ......そこに送られてきたジ・イレプレッシブルズ。インフォメーションだのなんだのは読まずにいきなりサンプル盤を聴き始める僕は「えッ」と驚いた。声がまるでビリー・マッケンジーだし、歌い方もサウンドもそっくりで、プレス・シートにあるように、なるほどスコット・ウォーカーを参考にしてるというのはわかるものの、それにしても......やはりビリー・マッケンジーにしか聴こえない。たしかにデヴィッド・ボウイやケイト・ブッシュと比較されることが多いというのも頷ける。しかし、僕にとっては、これはビリー・マッケンジーのそっくりさんである。その陰を払拭して聴くことは、僕には一生不可能だろう。時々、死んだ妻に酷似した女性を見かけて、内面はまったく違うのに、また再婚してどうの......というドラマがあったりするけれど、いきなりその主人公にされたような気分である。妙だ。延々と妙な気分が続いている。何度、聴いてもその気持ちに変化はない。そして、その気分をたしかめるためにまた何度も何度も聴いてしまう。

 実際には10人組でバロック・オペラを基調とした現代音楽のグループだと資料には書いてある。ビリー・ホリデイがパンク・バンドで歌うという設定ではじまったニュー・ロマンティクスの変り種だったアソシエイツとはどこも重なるところがない。アントニー&ザ・ジョンソンズとも比較されることが多いらしく、そうだよなー、いまだったらそうなんだろうなーとも思うものの、頭がちっとも現在形の音楽シーンには染まってくれない。この人たちには悪いけれど、アソシエイツのファンと「どーなの、コレ?」とかいう会話がしたい(せっかく7年間の活動を経てメジャー・デビューに漕ぎ着けたというのに......)。ビリー・マッケンジーに大きな影響を受けたといっていたビヨークは、そして、どう思うんだろうか。「ビリー・マッケンジーは本当に空虚だ」と歌っていたモリッシーは。あー、また、いま、高音がそっくりに張り上げられた......。

CHART by TRASMUNDO 2010.02 - ele-king

Shop Chart


1

STRUGGLE FOR PRIDE『FELEM 15TH,AUG,2009.』LIVE DVD

STRUGGLE FOR PRIDE 『FELEM 15TH,AUG,2009.』LIVE DVD »COMMENT

2

SKUNK HEADS

ECD 『ライブ30分』CD-R »COMMENT

3

HAIR STYLISTICS

CE$ 『Steal da city』 »COMMENT

4

Dj Killwheel a.k.a.16flip

STRUGGLE FOR PRIDE BRAND NEW T-SHIRTS »COMMENT

5

SFP

ELEVEN(SEMINISHUKEI)VS BLACKASS(M.N.M/MEDULLA) 『DUB CITY OF CURSE』 »COMMENT

6

UG KAWANAMI

UG KAWANAMI 『DROP SCENE』 »COMMENT

7

LVDS CAP

CARRE 『SONIC BOOM』 »COMMENT

8

ELEVEN(SEMINISHUKEI)VS BLACKASS(M.N.M/MEDULLA)

MEDULLA CAP »COMMENT

9

PAYBACKBOYS SWEAT

K-BOMB 『TRIPLE SIXXX!-OLIVE OIL REMIX-』 »COMMENT

10

Eternal B

Eternal B 7inch »COMMENT

[Techno] #3 by Metal - ele-king

1 Clouds / Timekeeper --Dave Aju Remix--- | Ramp Recording(UK)

 いやー、本当に、ぶっ飛びすぎ!......てか、笑えてくる。壮大な"エイリアン・ミュージック"に出会ってしまったのかもしれないな。黒光りするシンセが痛いくらいにまぶしいぜ。

 ハウスを借り物にブラック・ジャズの更新をはかるサンフランシスコの奇才――それがデイブ・アジュだ。ベルリンのマイマイやモントリオールのギヨーム・アンド・ザ・クーチュ・デュモンツのリリースで知られる〈サーカス・カンパニー〉を拠点にしているため、いわゆるモダン・ミニマル/ディープ・ハウスの文脈から語られることが多いプロデューサーだが、彼のポテンシャルはそんなものではない。あのマシュー・ハーバートが期待をよせるヴォイス・パフォーマーのひとりでもある。

 少し振り返ろう。2007年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされた「Love Allways」はアリス・コルトレーンに捧げられたものだった。ルチアーノのリミックスが収録された、2008年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされたシングル「Crazy Place」はフロアヒットした。同年にリリースされた自身のスキャットとヴォイス・サンプルのみで作られたアルバム『Open Wide』はビート・ポートの年間ベストのうちの1枚にも選ばれた。サン・ラー、セロ二アス・モンク、バニー・ウォーレル、カール・クレイグ、グリーン・ヴェルヴェット......これらは彼がリスペクトするアーティストのほんの一部だが、彼の曲には必ずと言っていいほどブラック・ジャズの意匠が散りばめられている。

 そんな才人が、〈ディープ・メディ〉などからサイケデリックなエレクトロニカ/ダブステップをリリースするヘルシンキのユニット、クラウズが2008年にイギリスの〈ランプ・レコーディング〉に残したトラックをハウスに再構築する。オリジナルはメランコリックなヴィブラホンに優しいトーンのアコーディオンが絡むヒップホップ調のトラックで、ラス・ジーによるリミックスは当時コード9やフライング・ロータスのプレイリストにもあがり、ダブスッテップの側からの支持も得ていた。

 原曲のアコーディオンとジャジーなフィーリングは生かされているものの、もはやオリジナルといってもよいほどの出来だ。冒頭から入るローファイでぎらついたシンセサイザーの音色はまるでシカゴのジャマール・モスか、あるいは初期のラリー・ハードを髣髴とさせる。単純で無機質なアジッド・ハウスかと思えばブレイクで突如モーダルなジャズに変化して、原曲で使われているアコーディオンの調べがゆったりと流れだす。構成、展開もドラマチックで面白い。加工されているためわかりづらいが、シンセのリフを良く聴いてみるとファラオ・サンダースとレオン・トーマスがモダン/フリー・ジャズの最重要レーベル〈インパルス〉に残した名曲"The Creator Has A Master Plan"のピアノが元ネタになっていることがわかる。この曲もまさにモダン・ミニマルのふりをしたブラック・ジャズというわけだ。彼はあらかじめクラブを体験してしまったがためにハウスをやっているアーティストであって、前の世代とは逆のプロセスを辿ってジャズに行き着いている。

2 Mirko Loko / Seventynine --Carl Craig&Ricard Villalobos Remix-- | Cadenza(Ger)

 DJワダの〈イグナイト〉でのアンビエント・セットを終え、天狗食堂で開かれていたDJサチホがオーガナイズする〈リリース・シット〉に駆けつけると、週末の朝に特有のとても良い空気が流れていた。DJはサチホ~スポーツ・コイデ~イナホ~リョウ・オブ・ザ・デックス・トラックスの面子でのローテーションだった。グルーヴがキープされたまま新旧のディープ・ハウスがたんたんと続く。朝の9時をしばらく過ぎると天狗食堂のイナホがロングミックスを聞かせる。足の運びが軽やかだ。スネアに引っかかりがあるが、スマートなミ二マル・ハウスがじょじょに子供の声と水の音、透明感のあるシンセとともに広がっていく。誰も声を上げず首を振りながらその音楽をきいていた。そのトラックここに挙げた。ミルコ・ロコのリカルド・ヴィラロヴォスによるリミックスである。

 レイジー・ファット・ピープルのメンバーとして〈プラネット・E〉からヒットを飛ばし、ソロでは現在のプログレッシヴ・ハウスのリーディング・レーベルであるロコ・ダイスの〈デソラ〉からも傑作を放った期待の新星ミルコ・ロコ。その彼のリミックスがルチアーノの〈カデンツァ〉からリリースされた。リミキサーは言わずとも知れたデトロイトのテクノ・ゴッド、カール・クレイグとベルリンのテクノ・ゴッド、リカルド・ヴィラロヴォスである。

 カール・クレイグのリミックスはプリミティヴな質感の力強いダンス・トラックで躍動感のあるパーカッションにローランドの名器JUNOの音色と思えるシンセが絡んで、全体がじょじょにビルドアップしていく。まるで音のなかに吸い込まれるようだ。美しく、しかも引きが強いトラックだ。彼が何枚かに1枚だけ見せる本気のトラックなのだろう。デリック・メイの名曲"To Be Or Not To Be"(ゴースト・イン・ザ・シェルのサントラに収録)にも近い感覚とでも言えよう。

 いっぽうリカルド・ヴィラロヴォスのリミックスはメランコリックで美しいアンビエント・ハウスだ。スティーヴ・ライヒのミニマリズムを彷彿とさせるような自然音と子供の声が螺旋を描いていく。リカルドらしい抜き差しとダブ処理も効果的だ。ジェームス・ホールデンによって解体されたプログレッシヴ・ハウスのドラマ性とスピリチュアリティはこの曲をきっかけに見事に復活を遂げるのではなかろうか。両面とも大事に使いわけることができる盤だ。

3 Badawi / El Topo | The Index(USA)

 エルサレム出身でニューヨーク在住のパレスチナ人パーカッショニスト、ラズ・メシナイが率いるバダウイのニュー・シングルを紹介しよう。ラズ・メシナイとは......その名前とバダウイ、サブ・ダブ、ベドウィンといった4つの名義を使い分け、DJスプーキーのホームである〈アスフォデル〉、ビル・ラズウェルのリリースでも知られる〈リオール〉、DJワリーが率いる〈アグリカルチャー〉等から数々の傑作を放ってきた男だ。ニューヨークのアンダーグラウンドを象徴するアーティストであり、ユダヤの政治と宗教をテーマにしたサウンドと彼の芸術、そしてその超絶的なパーカッションのテクニックは多方面で高い評価を得ている。最近ではクロノス・カルッテットやジョン・ゾーンとの競演も話題になった。

 今回は自身が立ち上げた〈ザ・インデックス〉からの第1弾である。昨年リリースされたコード9とのスプリットで見せたダブステップへのアプローチはさらなる進化を遂げ、"ElTopo"では抜けの良いタブラとばっつり出た低音が絶妙にマッチしたダブステップを展開している。そして"Dstryprfts"のリミックスではシャックルトンがブライアン・イーノのリミックスとはまた違うところで興味深いトラックを響かせる。〈パーロン〉からのリリースでみせたミニマルへのアプローチはさらに研ぎ澄まされ、キックとハット、メロディではなく飛び音として使われるシンセとノイズがかったアシッド・ベースがトランシーにうごめき、時折入るディレイがかかったシンバルがリスナーの意識を遠くに飛ばす。原曲からのサンプルとトースティンによるポエトリーが最小限にキープされたグルーヴのあいだでゆらめいている。僕もよく経験することだが、暗闇のなかで右も左もわからなくなったユーザーに襲い掛かる強烈なバッド・トリップである。

 リッチー・ホーティンが2003年にリリースした"Closer"をダブステップに変換したようでもある。アシッド・ハウスのオリジンであるフューチャーの"Acid Tracks"そしてその裏面に収録されている"Your Only Friend"にも共通するような独特のムードを持った曲でもある。まー、手短に言うとこの曲こそが最先端のミニマル・テクノであると僕は思う。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040 1041 1042 1043 1044 1045 1046 1047 1048 1049 1050 1051 1052 1053 1054 1055 1056 1057 1058 1059 1060 1061 1062 1063 1064 1065 1066 1067 1068 1069 1070 1071 1072 1073 1074 1075 1076 1077 1078 1079 1080 1081 1082 1083 1084 1085 1086 1087 1088 1089 1090 1091 1092 1093 1094 1095 1096 1097 1098 1099 1100 1101 1102 1103 1104 1105 1106 1107 1108 1109 1110 1111 1112 1113 1114 1115 1116 1117 1118 1119 1120 1121 1122 1123 1124 1125 1126 1127 1128