「Nothing」と一致するもの

本邦初のイギリス現代思想案内

インタヴュー
國分功一郎毛利嘉孝田崎英明宮﨑裕助

資本主義リアリズム、思弁的実在論、加速主義、ゼノフェミニズム
そしてカルチュラル・スタディーズの功績とは
押さえておきたいキーワードを解説

●マーク・フィッシャー入門――その音楽批評から加速主義との関係、うつ病、最終講義のポイント、現代アートへの影響まで
●初めて触れる読者のための、マーク・フィッシャー著作案内――『資本主義リアリズム』『わが人生の幽霊たち』『奇妙なものとぞっとするもの』『K-PUNK』『ポスト資本主義の欲望』それぞれの解題から未邦訳テキストの紹介、そして彼が手がけた出版事業まで
●ポール・ギルロイの功績、現代のキーパーソンたち=レイ・ブラシエ、オーウェン・ハサリー、アルベルト・トスカーノらの思想、サイバーフェミニズム、イギリスにおけるマルクス主義の系譜、ほか

執筆
イアン・F・マーティン/野田努/河野真太郎/鈴木慎一郎/有元健/仲山ひふみ/幸村燕/清水知子/水嶋一憲/平山悠/大岩雄典/宮田勇生/安藤歴/杉田俊介/大橋完太郎/原塁/飯田麻結/山本浩貴/星野真志/長原豊/小林拓音

装幀:SLOGAN
菊判220×148/並製/256ページ

目次

【インタヴュー】
國分功一郎 今こそ階級闘争を仕掛けるとき──イギリス滞在時に感じたこと
 ▶イギリスと日本の違い│社会の幼年期に注目する必要がある│こちらから階級闘争を仕掛けなければならない│自然と満足できるように│新しい病としての「うつ病」│今こそフィヒテを読みなおすとき
毛利嘉孝 自分たちの知をつくること──大衆文化にラディカルな思想が流れこむ
 ▶イギリスだからこそカルチュラル・スタディーズは生まれた│知をアカデミズムに閉じこめない風土│スチュアート・ホールの功績│ストリート出身のポール・ギルロイが変えたこと│ヨーロッパの理論はイギリスでどう受けいれられたのか│マーク・フィッシャーが残したもの
田崎英明 ジェンダーも人種も、階級とセットで考えよう──アイデンティティ・ポリティクスが批判される背景
 ▶加速主義を切り捨ててはいけない│なぜ労働はなくならないのか│イギリスとフランスは交流が盛ん│イギリスにはアルチュセール派の影響が大きい│マルクス主義とフェミニズム/クィア理論は共闘できるか│シニシズムに陥らないために
宮﨑裕助 私たちの世界には根本的に幽霊がいる──デリダ研究者から見たマーク・フィッシャー
 ▶デリダ研究を牽引していたのは英語圏だった│ロンドンは世界各地から知が集まる場所│亡命知識人たちがつなぐ世界│ポップ・カルチャーに思想が侵入する│もともとの憑在論の意味について│イギリス現代思想の未来

【マーク・フィッシャー著作案内】
『資本主義リアリズム』(仲山ひふみ)/『わが人生の幽霊たち』(平山悠)/『奇妙なものとぞっとするもの』(大岩雄典)/『K-PUNK』(宮田勇生)/『ポスト資本主義の欲望』(安藤歴)/その他のテクスト(仲山ひふみ)/ゼロ・ブックスとリピーター・ブックス(仲山ひふみ)

【ポール・ギルロイの功績】
黒い大西洋(鈴木慎一郎)/ポストコロニアル・メランコリア(有元健)

【コラム】
道は一本ではない、とマーク・フィッシャーの音楽批評は示している(イアン・F・マーティン/青木絵美訳)
ポピュラー文化との共鳴にこそ興奮するイギリスの論客たち──レイモンド・ウィリアムズからバーミンガム学派へ、そしてフィッシャーへ(野田努)
成人教育はポストフォーディズムの侍従か──マーク・フィッシャーのカルチュラル・スタディーズ的出自(河野真太郎)
レイ・ブラシエと哲学の未来(仲山ひふみ)
加速主義以後の加速主義と加速主義的なもの(幸村燕)
憑在論的メランコリアを超えて──マーク・フィッシャーとサイバーフェミニズムの行方(清水知子)
月曜の朝のかすかな光──マーク・フィッシャーと加速主義(水嶋一憲)
鬱病リアリズムという提案──生き延びることの肯定に向けて(杉田俊介)
『ポスト資本主義の欲望』講義の続き──欲望の向きをいかに定めようか(大橋完太郎)
旅をして夢をみる──《消滅していく土地について》とふたつの「イーリーなもの」(原塁)
亡霊の足跡(あるいはDo It With Style)(飯田麻結)
イギリス現代アートにおけるマーク・フィッシャーの影響──オトリス・グループとスペキュラティブ・テートを中心に(山本浩貴)
オーウェン・ハサリー──闘争するモダニスト(星野真志)
馬鈴薯と袋と資本とその主義(ファシズム)(長原豊)
ぎょっとするホブゴブリンがブリテンのあちこちではびこっている──イギリスにおけるマルクス主義の大雑把な見取図(小林拓音)

[共同監修者プロフィール]
仲山ひふみ(なかやま・ひふみ)
批評家。主な寄稿に「加速主義」(『現代思想』2019年5月臨時増刊号)、「ポストモダンの非常出口、ポストトゥルースの建築――フレドリック・ジェイムソンからレザ・ネガレスタニへ」(『10+1 website』2019年10月号)など。レイ・ブラシエ『解き放たれた無──啓蒙と絶滅』(河出書房新社、2026年)を共訳。

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・仲山ひふみによる記事
Aaron Dilloway Japan Tour 2023@落合Soup (2023/2/11) ライヴ(デッド)レポート
不気味なものの批評を超えて──マーク・フィッシャー『奇妙なものとぞっとするもの』紹介

interview with LIG (Osamu Sato + Tomohiko Gondo) - ele-king

 LIGは佐藤理とゴンドウトモヒコによる新しい音楽ユニットだ。
 デビュー・アルバムは2枚組CDの『Love Is Glamorous/Life Is Gorgeous』。
 レコード会社による紹介ではLIGの音楽は「電子音楽と金管楽器を融合し、現代音楽、ジャズ、民族音楽、クラシックを横断するオーガニックなインストゥルメンタル・サウンド・トリップ」とある。
 こう書くとずいぶんと曖昧に捉えられるかもしれないが、実際に彼らの音楽を聴いてみたら、まさにその通りの音楽だった。
 ただし、とてもポップかつダンサブルで楽しい「インストゥルメンタル・サウンド・トリップ」でもある。
 LIGのふたりのうち、佐藤理は1990年代に発表された『LSD』や『東脳』といったサイケデリックで中毒性の高いゲームのクリエイターとして高名だが、音楽やグラフィック・デザイン、映像の分野でも数多くの作品を世に出しているマルチな才能を持ったアーティストだ。
 片やゴンドウトモヒコはボストン大学で音楽を学び、帰国後はオフィス・インテンツィオ(高橋幸宏らが創設した会社)でのサウンド・プログラマーを経て電子音楽と金管楽器の奏者、そして作曲家として活動を続ける。自身のバンド、アノニマスのほか、YMOや蓮沼執太フィルのサポート、高橋幸宏との数多くのコラボレーションで知られている。
 1960年生まれの佐藤と1967年生まれのゴンドウ。ちょっとだけ年は離れているが、かなり以前から面識があり、近年はライヴやレコーディングで共演を続けてきた。

いっぱい曲ができて新人バンドなのに2枚組になっちゃって(ゴンドウ) 65歳と58歳の新人ですが(佐藤)

ゴンドウ:最初に会ったのは1995年ぐらいかな。ぼくがオフィス・インテンツィオに入ったばっかりの頃。アノニマスの山本(哲也)くんが佐藤さんの事務所でバイトをしていて、その縁です

佐藤:それからすぐに一緒にライヴをやるようになって、吉祥寺のスターパインとか、なにかのイベントで渋谷のクアトロに出たこともありました。そのときはアノニマス+ぼくという形が多かったかな

ゴンドウ:そうそう。(徳澤)青弦もいて、即興的な演奏をしていました

 しかし、その後は一旦、共演は間が空いた。

佐藤:その間、ぼくは〈ソニー〉でゲームを作ったりして、その音楽は作ったものの、しばらく音楽活動はお休みしていたんです。あまりに忙しくてゲームやグラフィックの作業に専念しようと。ただ、その後に海外の会社からぼくの音楽をアナログ盤で出したいというオファーが続いて、昔の音源やデータをひっぱり出してきて、よしこれでアルバムを一枚作ろうと。その中の1曲でゴンちゃんにホーンを吹いてもらって、それがひさしぶりでしたね

 その曲は、かつて佐藤理が坂本龍一さんからコードとメロディを提供され共作した『Retrocognition』のセルフ・カヴァーで2017年の発表。

佐藤:その頃からビームスで毎年のように展覧会をやってライヴをやるようになったんですが、最初の2017年にゴンちゃんと成田忍さんにサポートで入ってもらったのが本格的に共演するようになった始まりかな?

ゴンドウ:そうですね、本格的に一緒にやったのはそのときが初めてですね

 アーバン・ダンスの成田忍は本作にもゲスト参加している。

佐藤:ぼくは京都出身なんで同郷のアーバン・ダンスは昔から知っていて、成田さんは、しばらく活動していない時期もあったんですけど、ときどきライヴのゲストに誘ってみたり。また、沖山優司さんと一緒にアルバムを共作しかけて、でも途中から彼がやる気になってきて、やっぱり全部自分でやるって音楽活動に本格復帰したりと、つきあいが長いんですよ

ゴンドウ:あのライヴは楽しかったですね

佐藤:ただ、あのときは自分のアルバムが出たのにそこからの曲は1曲もやらず、即興だけやっていたので、レコード会社の人からは“それじゃなんのプロモーションにもなりません”って(笑)。ま、そうして以降、ゴンちゃんとは何度も共演してきたんですが、そうだ、それをお願いする前に、ぼくMETAFIVEのライヴを観たんだ

ゴンドウ:え、そうなの?

佐藤:ぼくの仕事場の富士の近くでイベントがあって、いろいろ関わってたテイ(トウワ)さんから誘われて観に行ったの。自転車乗って(笑)

ゴンドウ:そのとき会ってないですよね?

佐藤:そう。ゴンちゃんにメールで“いま観てるよ”って送っただけで、観終わったらすぐ帰っちゃった

ゴンドウ:自転車で?(笑)

佐藤:そう、自転車で。ゴンちゃん出世したなって思いながら(笑)

ゴンドウ:いや、そんな!

佐藤:その前からYMOのバックをやったりして、がんばってるなって思ってましたけど、そのとき自分は音楽をやってなかったんで、ちょっと自分ごととしては考えてなかった

ゴンドウ:以前からいろいろと繋がりは多いんです。レピッシュのtatsuさんと一緒に仕事をしたり、沖山さんとも仲がいいし

佐藤:ぼく、20代の頃に沖山さんと成田さんと3人で一緒にアメリカに音楽の旅に行ったこともありますよ。ニューヨークとナッシュビルとニュー・オーリンズ。ドクター・ジョンやテンプテーションズ、ライヴ・ハウスで無名のアーティストをいっぱい観ました。ジャズだったりカントリーだったり。それ系の音楽が昔から大好きなんです

ゴンドウ:すごく詳しい

佐藤:聞く音楽とやる音楽がちがうんです(笑)。自分ではブラック・ミュージックはできないのでテクノになる。日本人にはいちばんテクノが向いているんじゃないかなと

ゴンドウ:ぼくは昔からゲームをしないので、『LSD』とか評判になっているのは知ってましたが、やったことがない。でも、佐藤さんの音楽は大好きで、すごくおもしろい。感覚的に作ってるんだろうなって思うんですけど、その感覚がすばらしい

佐藤:ぼくはゴンちゃんみたいにアカデミックな音楽教育を受けてないし、楽器の演奏もできない。コンピューターを通すことによって初めて音楽ができる

ゴンドウ:で、いろいろ共演していくうちに、そろそろなんか一緒に作ろうかって話になったんです。いつの間にかライヴでいろんな曲をいっぱいやってるし

佐藤:そうそう。いつからかぼくのソロ・ライヴでもゴンちゃんの曲をちょっとずつ入れていってた

ゴンドウ:しかし、やろうとは言ったものの、そこからが長かった(笑)

佐藤:やろうやろうと言いつつなかなか進まなかった。お互いソロは出してたんですけど。そうしたらある日ゴンちゃんが、そろそろちゃんと録音しようって

ゴンドウ:なにか曲のMIDIファイルがあるならください。それに何か加えて返しますよと

佐藤:それでMIDIのやりとりが始まってお互いの素材を換骨奪胎していったり、ゴンちゃんがホーンを吹いて入れたり。それで大体できたところでふたりで聴いてここはこうしたい、ああしたいって感じで進めていきました

ゴンドウ:そうやって初めてみたらあれよあれよと進んで、結局2枚組ということに(笑)

佐藤:曲がいっぱいできすぎた!(笑)。で、できたアルバムはお互いレーベルもやっているんで、そこからの流通でいいかなと思ったんですが、ゴンちゃんがメジャーで出したいと

ゴンドウ:いやいや、そんなことは言ってないですよ(笑)

佐藤:言った言った! それでぼくの個展にソニーの人が来てくれたのでそのときにデモを渡したら興味を持ってくれたんです

ゴンドウ:現代音楽もテクノも詳しいという人で、ぼくも佐藤さんもテクノではないんですが、そういう人が気に入ってくれたのはうれしい

佐藤:歌もないし、ポップ・ミュージックじゃないし、クラブ系でもないから

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音楽だけじゃなく映像も自分で作っているケースってあまり多くないと思うんですよ。LIGの場合、映像まで含めての作品なので。(佐藤)

 LIGというユニットの名前の由来は、結成したものの一向に本格始動しなかった経緯からのものだ。

佐藤:先ほど言ったとおり、一緒にやろうと言ったきりぐずぐずなにもせずだったので、LIGという“のらりくらりする”という意味に合わせて亀にしたんですね。で、亀といえば亀甲だろうとこのマークにして、メガネも亀甲型に変えました(笑)

ゴンドウ:かかるまでは長かったけれど、いざ始めると早かったんですよ。制作期間は2か月ぐらい?

佐藤:そうね。始まったらぼくがアルバムまとめ係になって、ゴンちゃんに、もう1曲、こういう感じの曲がほしいなとかをリクエストしていきました。ボーナス・トラックを除いて同じ曲数を書きました

ゴンドウ:曲のきっかけを作ったほうがいちおう作曲という感じかな

佐藤:そうだね。全部共作なんだけど、かっこよく表現するとレノン=マッカートニー的なクレジットになってます。ただ、曲ごとにどちらかの比重が多い少ないかがあって、1曲目から主な作曲者ぼく、ゴンドウ、ぼく、ゴンドウの並びになっています

ゴンドウ:で、いっぱい曲ができて新人バンドなのに2枚組になっちゃって

佐藤:65歳と58歳の新人ですが(笑)。最初は2回にわけて出すという案もあったんですが、結局2枚組に。アナログ化のことを考えて、どちらのディスクも46分以内にしてますから、アナログ・レコード2枚組も実現したいですね(笑)

 この2枚組CDの初回生産限定盤は24ページのアート・ブックが付属しており、佐藤理による収録曲各曲のタイトルが添えられたグラマラスでゴージャスなグラフィック・アートが掲載されている。このフルカラーのアート・ブックは単体でも楽しめるし、音楽のお供としても最適だ。グラフィック・アーティストとしての佐藤の面目躍如だろう。

佐藤:音だけならサブスクでタダで聴けたりするので、パッケージを買ってもらうにはという思いはあります。ぼくが以前ソニーから出したCDやゲームはいますごいプレミア価格で売買されていて、ゲームだと10万円とかになっている。そうなる前にこのCDを買っておいてください(笑)

ゴンドウ:そこは強く言っておきたいですね

佐藤:ケースやアート・ブックが付くのは初回プレスだけなのでぜひ

 本作にはゆかりの深い成田忍がギターで、水出浩がフレットレス・ベースで参加しているほか、ソプラノ・ヴォイスでEpoke、ピアノで鶴来正基も加わっている。

ゴンドウ:鶴来さんは宮沢和史さんのバックをよくやっていていいピアノを弾くんですよ

佐藤:彼は京都に住んでいて、ぼくも京都に家があるんでいい飲み仲間っていう感じ。曲を聴いて、これって生でやってもおもしろいんじゃないのっていうから、じゃあ、ピアノ弾いてって

 フレットレス・ベースは水出浩が弾いている。

ゴンドウ:オフィス・インテンツィオの先輩です

佐藤:最近モジュラー・シンセをいっぱい買って音楽をやってるらしいので、今度12月にあるぼくのソロ・ライヴにゲストで出てもらって、即興で何曲か一緒にやろうかなと思ってます

 そしてソプラノのヴォーカルはEpokhe.。

佐藤:エポケって読みます。彼女はもともとぼくのファンで、ネット経由で連絡をくれたんです。音大を出て声楽をやっていましたというから、あるときサンプリング・ネタにしたいから、キーを変えていろいろ声を録音して送ってって頼んだんです。その後、せっかく声楽をやっていたのだから本格的に音楽やったらいいのにって勧めて、Macはこれがよくて、シーケンス・ソフトはあれがいいとか推薦したんです。で、今回、ぼくがLIGのファイルを送って“なんか歌って”って

 すでにLIG名義でのライヴも複数回行っており、佐藤理の映像と完全にシンクロしたそのライヴ表現は大きな話題にもなっている。

佐藤:このあいだ京都でやったライヴは、このアルバムからの曲と、以前からLIG名義のライヴでやっていた曲。映像と曲が全部シンクロしていて床や背面も使った3面のマルチ・スクリーンに映像を投影して没入感はすごいと思います

ゴンドウ:お客さんの反応もよかったんじゃないかな。踊りまくるというよりは食い入るように観てる感じ

佐藤:即興とまではいかなくても、その日によって変わる部分も出てくるし

ゴンドウ:同じことをくり返してはいません。映像と同期するんで曲の尺は変わらないんですけど、上物はけっこう

佐藤:映像もちょこちょこ変えてますから、何度観ても飽きないんじゃないかな

 LIGの活動は今後も続き、来年は新たな展開も見せてくれそうだ。

佐藤:今回あらためてゴンちゃんの吹くホーンのフレーズをいっぱい聴いて、昔の音楽をたまたま聴いているときに、あ、このホーンはきっとゴンちゃんが吹いてるなってわかるようになりました

ゴンドウ:ぼくも、どこをとっても佐藤さんの音楽は佐藤さんらしいなあと思いましたね

佐藤:とにかくふたりとも作業は早いよね

ゴンドウ:曲もまだまだいっぱいできてますし

佐藤:すぐにでも次のアルバムが出せます

ゴンドウ:そう、スイッチが入ると早いんです

佐藤:あらためての出発なので、来年はライヴも増やしてアナログを出したり

ゴンドウ:ツアーもしたいですね

佐藤:そう、いろんなところでライヴをやって知ってもらわないとね。いま映像を使ってライヴをやるアーティストも多いですけど、音楽だけじゃなく映像も自分で作っているケースってあまり多くないと思うんですよ。LIGの場合、映像まで含めての作品なので。時間もかかるしめんどうなんですが(笑)、人から求められる限り、これからも続けていきます

キャロライン二階堂和美Tocago

特集:日本のシンガーソングライター、その新しい気配
featuring 中野ミホ、井上園子、heimrecord
エクスペリメンタル系SSW/クィアの表現/新潮流ディスクガイド30、ほか

2025年ベスト・アルバム発表

cover photo by Yuichiro Noda

菊判218×152/160ページ
*レコード店およびアマゾンでは12月18日(木)に、書店では12月25日(木)に発売となります。

編集部より、お詫びと刊行のお知らせ

【目次】
キャロライン、インタヴュー(ジェイムズ・ハッドフィールド/野田祐一郎/江口理恵)
二階堂和美、インタヴュー(水越真紀)
Tocago、インタヴュー(野田努/野田祐一郎)

特集:日本のシンガーソングライター、その新しい気配

「シンガーソングライター」とは何か?(野田努)
オルタナティヴとしてのフォーク主義(松永良平)
小さき者たちの矜持(岡村詩野)
中野ミホ、インタヴュー(風間一慶/川島悠輝)
井上園子の登場は衝撃だった(大石始)
井上園子が選ぶ2025年もっともよく聴いた5枚
ヘイムラコルトが漂わせるノスタルジー(峯大貴)
ヘイムラコルトが選ぶ2025年もっともよく聴いた5枚
新潮流ディスクガイド30
(天野龍太郎、峯大貴、松島広人、小林拓音、田中亮太、風間一慶、野田努、三田格)
ポップスにクィアの想いを溶けこませる(木津毅)
シンガーソングライターに惹かれない理由(三田格)
エクスペリメンタル系SSW(野田努)

2025年ベスト・アルバム30枚
リイシュー&アーカイヴ23選

●ジャンル別チャート
テクノ(猪股恭哉)│インディ・ロック(天野龍太郎)│ジャズ(小川充)│ヒップホップ(高橋芳朗)│ハウス(猪股恭哉)│エクスペリメンタル(ジェイムズ・ハッドフィールド/青木絵美)│ポスト・ハイパーポップ(松島広人)│レゲエ/ダブ(河村祐介)│アンビエント(三田格)
●コントリビューター・チャート
青木絵美、天野龍太郎、小川充、小山田米呂、Casanova.S、河村祐介、木津毅、緊那羅:Desi La、篠田ミル、柴崎祐二、柴田碧(パソコン音楽クラブ)、高橋智子、TUDA、つやちゃん、DJ Emerald、デンシノオト、橋本徹、ジェイムズ・ハッドフィールド、二木信、Mars89、イアン・F・マーティン、松島広人、三田格

2025年のオアシス現象、その拭いがたき違和感(野田努)

プロフィール

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お詫びと訂正

このたびは『ele-king vol.36』をご購入いただきまして誠にありがとうございます。
同書に誤りがありましたため、謹んで訂正いたしますとともに、
お客様および関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

●1ページ下段中央および137ページ左上

誤 DJ Emerlard
正 DJ Emerald

●155ページ上段後ろから8行目

誤 磯部(拓)→ここも森の発言 この時期は本当に暗い曲ばっかで、
正 この時期は本当に暗い曲ばっかで、

●155ページ下段4行目

誤 磯部(拓) ライヴで〝家〟をやったとき、
正 ライヴで〝家〟をやったとき、

SCARS - ele-king

 来年デビュー20周年を迎えるSCARS。A-THUG率いるこの日本語ラップ・シーンの重要グループが、おなじく50周年という節目を迎えるPヴァインとコラボすることになった。第一弾として、オリジナルのワークジャケットが発売。完全限定、受注生産とのことなので、早めにチェックしておきたい。

A-THUG率いる日本語ラップ・シーン最重要グループ、SCARSのオリジナルワークジャケットが完全限定の受注生産で発売!

2025年12月に設立50周年を迎えるP-VINEと2006年に衝撃のファースト・アルバム『The Album』でデビューし、来年2026年がデビュー20周年となるA-THUG率いる日本語ラップ・シーン最重要グループ、SCARSとのコラボ・プロジェクトが始動!その第一弾としてSCARSのオリジナルワークジャケットが完全限定で発売!
キルティング素材のワークジャケットで裏地はサーマルを使用。ボディーは黒1色、ロゴ部分はレッドとホワイトの2色でサイズはM~XXL、完全受注生産での発売になります。受注受付は本日から1217(水)正午まで、発送は2026年3月上旬頃を予定しております。購入していただいた方には1着につき1枚SCARSステッカーが特典として付属します。

SCARS オリジナルワークジャケット – 販売サイト
httpsanywherestore.p-vine.jpproductsscarswjkt-1

<商品情報>
アイテム: SCARS オリジナルワークジャケット
カラー:レッド ホワイト
サイズ: S M L XL
販売価格: 23.800円(税抜)
受注締切:2025年12月17日(水)正午
発送予定: 2026年3月上旬頃

※オーダー後のキャンセル・変更は不可となります。
※配送の日付指定・時間指定は出来ません。
※1着のオーダーにつきSCARSステッカーが1枚、特典として付きます。
※商品発送は2026年3月上旬頃を予定しております。
※受注受付:2025123(水)18時~20251217(水)正午

サイズは下記をご参考にしてください。
Mサイズ 着丈 67.5cm 身巾 62.5cm 袖丈 66cm 裄丈 91.5cm
Lサイズ 着丈 70cm 身巾 65cm 袖丈 67cm 裄丈 93.5cm
XLサイズ 着丈 72.5cm 身巾 67.5cm 袖丈 68cm 裄丈 95.5cm
XXLサイズ 着丈 75cm 身巾 70cm 袖丈 69cm 裄丈 97.5cm

材質は下記となっております。
表面:ナイロン100%
裏面:ポリエステル100%
中わた:ポリエステル100%
リブ部分:アクリル87% ポリエステル11% ポリウレタン2%
※洗濯に関しては水洗い可能ですが手洗いを推奨します。
※アイロンを当てる際は当て布をして下さい。

R.I.P. Jimmy Cliff - ele-king

 ジミー・クリフはボブ・マーリーと並ぶ輝度をもったレゲエ・アイコンだった。とはいえ、そもそもマーリーの最初のオーディションをアレンジしたのがクリフだったのであり、先に世界的なレゲエ・スターとなったのもクリフだ。そして2025年11月24日、肺炎によって81歳で亡くなったジミー・クリフは、36歳で没したボブ・マーリーより遥かに長い間スターダムに君臨したのだ。その意味で、彼こそがレゲエ界最大のインターナショナル・スターである。

 そのクリフの名を挙げて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、1972年のカルト・ムーヴィ『ハーダー・ゼイ・カム(The Harder They Come)』で彼が演じたアイヴァン・マーティンのイメージだろう。キングストンのゲットーから這い上がってスター歌手になることを夢見る青年が、音楽業界からは搾取され、警察からは虐待され、遂には八方塞がりの窮地に陥ってしまう過程は何度観返しても胸が締め付けられる。あの主人公アイヴァンは、社会的弱者が抱く希望と反骨精神の永遠なる権化として、その同名主題歌 “The Harder They Come” の:

I'd rather be a free man in my grave
 Than living as a puppet or a slave

操り人形や奴隷として生きるくらいなら、墓の中で自由な人間でいたい

 というラインに要約されるあの映画の精神と共に生き続けている。アイヴァンがスタジオ(ダイナミック・サウンズ)で、胸に大きな黄色い星がついた長袖Tシャツを着て、腕でリズムをとりながら同曲を歌うシーンは純粋で、ゆえに痛々しく、強烈にかっこいい。

 さらにマーリーとの対比で言えば、70年代のルーツ・レゲエ期におけるクリフの独自性ははっきりと際立っていた。レゲエ・ミュージックとラスタファリアニズムの関連性が強固なものになってくるあの時代に、クリフは直接的なラスタファリアン・ミュージックを(おそらく一切)歌わなかったという意味においてである。そこには彼の宗教観が関係しているのだが、彼はもともとクリスチャンで、一時はラスタファリアニズムに傾倒したものの、70年代後半のルーツ・レゲエ全盛期にイスラムに転向し、のちに最終的に宗教全般を “見切った” ――という表現が適切か自信がないが――かのスタンスを取った。原理主義的な執着からは相当かけ離れているその好奇心と柔軟性、いわゆるオープンマインデッドな性格が、聴き手を選ばない彼の音楽性に通じている。
 その歌詞の題材も、卑近な出来事よりも、より広い外側=マスに向けた普遍性の高いトピックが主体だった。例えばジャマイカが誇る路上音楽文化の一大培養装置だった《ステューディオ・ワン》のアーティストが街角のルード・ボーイ、フーリガンやギャングについて歌っているときに、クリフは訛りのない綺麗な英語でヴィエトナム戦争をテーマにするような違いがあった――そしてクリフは知る限りその《ステューディオ・ワン》に一曲も録音していないし、その商売敵《トレジャー・アイル》からも正式リリースはないはずだ。要するに、ストリート臭が希薄で、ひとり超然とした意識高い系といったところか、前掲 “The Harder They Come” はもちろん、“You Can Get It If You Really Want” “Many Rivers to Cross” “Wonderful World, Beautiful People” “Hard Road to Travel” などの代表曲はどれも精神性が高く啓発的でユニヴァーサルなメッセージだ。ローカル・ギャングや暴力やストリートのいざこざを扱うのではなく、抵抗や反逆精神、社会的苦難、社会的不正といったテーマを、誰もが自分自身に引き寄せて聴けるレトリックを用いながらポジティヴに昇華させる手法を好んだのである――もちろんボブ・ディランが、最も偉大なプロテスト・ソングのひとつだと絶賛した “Vietnam” のように、戦争の悲惨を簡潔にえぐり出し、こちらをただただ陰鬱にさせる曲もあるにせよ。……ところが、不釣り合いにもあの曲のメロディは明るく、ビートは軽快なのであり、その人々の耳を惹く見事なテクニックにも舌を巻いたものだ。

 もう一点、彼がジャマイカのレゲエ・ミュージシャンとして特異なのは、ダブにまるで興味を抱かなかった点である。乱暴に言えば、彼は音響と内省的メディテイションに没入する趣味がなかった。外側に向けてメッセージを発することがすべて。常にそういう人だったのだと思う。
 そうしたメッセージを伝える媒介手段として、クリフは早い時代からポピュラー音楽のスタイルを果敢に取り入れた。そのスタンスは80年代により顕著となり、彼の音楽はほぼ完全にゲットー・ミュージック、ストリート・ダンスの文化を離れ、ポップ、ソウル、ファンク、ディスコからブラジル音楽、アフリカ音楽まで取り入れたグローバルかつクロスオーヴァーなものになっていく。その “ワールドワイドに大衆寄り” なスタイルによって、ジミー・クリフはレゲエ/ジャマイカ音楽を世界に広めたパイオニアとなり、同時に純粋主義のレゲエ愛好家を相手にしない存在になったという側面も確実にあろう。1992年、『ニュー・ヨーク・タイムズ』はクリフのニュー・ヨークのショウの評文で、その音楽性をいみじくも〈アリーナ・レゲエ〉と表現した。噛み砕けば〈大規模コンサート・ホールを “一般客” で一杯にできる、国際市場を意識した大衆向けレゲエ〉というニュアンスだろうが、そこに揶揄はないのである。ジミー・クリフもボブ・マーリーも1970年代から世界中の大きなホールでショウを行なったにせよ、マーリーの音楽に〈アリーナ・レゲエ〉という表現は馴染まず、それはまさしくクリフならではのキャラクターと功績を見事に集約させた表現のように感じるのだ――そう呼ばれる音楽性を、好む好まないは別問題として。

 ジャンルレスなポップ・スターと化したクリフは、1990年代にまさにその面目躍如たる世界的ヒットを記録する。そう、93年のジャマイカのボブスレー・コメディ映画『クール・ランニング(Cool Runnings)』のために歌った “I Can See Clearly Now” だ。アメリカにレゲエを広めた立役者ジョニー・ナッシュの曲を、本家よりも遥かにキャッチーに提示したそれは、彼のアメリカにおけるシングルで最も上位のチャート成績を記録、これまた世界的に愛される彼の代表曲のひとつとなった。そうしたポップな側面が脚光を浴びつつも、同時にブルース・スプリングスティーンが好んでカヴァーし、彼のファンに人気の高い “Trapped” ――絶望の中でも自由を求めて闘い続ける人間の歌だ――のように硬派なメッセンジャーとしてのクリフも、また別のクラスタから最後まで並行して愛され続けた。
 グラミーは、『Cliff Hanger』(1984年)と『Rebirth』(2012年)で二度受賞している。2010年にはロックの殿堂(ロック・アンド・ロール・オヴ・フェイム)入りを果たしたが、それもボブ・マーリーに続く二人目であり、過去殿堂入りしたレゲエ・ミュージシャンは二人以外にいない。本国ジャマイカでは《メリット》勲章を授与されたが、これもマーリーと並ぶ栄誉だ。
 ロックの殿堂入りから二年後、グラミーを獲ったアルバム『Rebirth』は、米パンク・バンド:ランシドのティム・アームストロングと組んで、1960~70年代のスタイルやサウンドに力強く回帰した快作だった。ザ・クラッシュのポール・シムノンが “The Guns of Brixton” の歌詞で『ハーダー・ゼイ・カム』のアイヴァンに言及したからだろう、そこではクリフがそのクラッシュ・ナンバーをお返しでカヴァーしていた。22年の遺作『Refugees(難民たち)』も、まさしく現在の地球が耳を傾けるべきタイムリーな表題曲のほか、“Security” “We Want Justice” “Racism” と言った世相を反映したメッセージ・ソングが並んだ。この晩年の二作は『ハーダー・ゼイ・カム』の頃のクリフをまたしても強く回想させた。いろいろやってきたけど、最後にまたここに戻ってきた、というところだろうか。

 妻さんがインスタグラムにポストしたクリフ逝去のお知らせでは、「passed away」の代わりに「crossed over」という表現が使われていた。クリフ自身、2020年に盟友トゥーツ・ヒバート(トゥーツ&ザ・メイタルズ)が他界した際の『ローリング・ストーン』誌へのコメントでその表現について語っている――我々(ジャメイカン)は “pass away(この世から消え去る)” とは言わず “cross over(境界の向こうへ行く)” と言うのです、と。存在の別のサイドに行くだけで、死というものは存在しない。その後、魂はより高次のレヴェルへ上昇するのだと。
 1944年7月30日、ジャマイカはセイント・ジェイムズ教区にジェイムズ・チェンバースとして生まれた彼は、克服するべき状況のメタファーとしてクリフ(崖)という芸名を選んだ。そして、まさに崖から這い上がり、何も視界を遮ることのない頂から世界を見渡したのち、またアイヴァンに戻ってきたと思ったら、今度は存在のまた別の面に移行したのだ。これはむしろ成就なのではないか? そう思いながら聴くクリフの歌声が、いつにも増して一層すがすがしい。

Sorry - ele-king

 フリをする時代、そうMGMTが歌った“Time To Pretend”から20年、近ごろは誰も彼もが何者かになることを求め誰かを演じている。YouTubeもSNSもまだ一般的ではなかったインターネットの時代に果たして彼らはこんな未来を予見していたのだろうか。ロック・スターの振る舞いを皮肉った歌が2025年のいまではまるでこの日常を暮らす我々のことを歌ったものに思える。誰もが情報を受け取り発信し、ロック・スターにもワイド・ショーのコメンテーターにもなれる時代、そしてもしかしたらそれに少し辟易しかかってもいるかもしれない時代。我々はすべてのものを目撃し何にだってなれ、周りと比べてもはや井の中の蛙ではいられなくなり、傷つくことを恐れ、心を守るため自分以外の何かになる。他者を見れば見るほど素の自分がわからなくなり答えを求め、共感のショーウィンドウに並ぶ服を着ることで適した人間になり変わる(思うに少し伝わりすぎてしまうのだ)。大学、音楽、漫画、ファッション、映画に育児、アイドル、野球、エトセトラエトセトラ、それぞれにSNSのアカウントを作りその場に適した自分、そこで求められている人間に寄せていく。あるいは媒体自体を切り替えることもあるかもしれない。それは違う自分で、定まったよくわかる自分なのだ。自分の枠組みを自分で作る、目に映る他者の形を求め違う誰かになることであやふやな自己を規定する。そして時には肩書きや設定をプラスする。その場その場にあった振る舞いをするというのは昔からあったがいまはより強調しはっきりと分裂させている。そうしていつもなにかの価値を気にしている。

 そんな時代においてロンドンのインディ・ロック・バンド、ソーリーはこの3枚目のアルバム『COSPLAY』で我々に静かに問いかけるのだ。ゴート・ガールシェイムらと共にウィンドミルのインディ・シーン初期に登場したこのバンドはシェイムのチャーリー・スティーンがかつて評したようにやはり優れた観察眼を持っているのだろう。シーンを先導し流れを作るようなタイプではなくそこから一歩外れた染まらないアウトサイダー。観察し、それがどういうことかを考えて形を作り、また観察し考えるということの繰り返し。サンプリングが多用されたこの3rdアルバムはソーリーのバランス感覚、引き算のセンスが遺憾無く発揮されている。1stアルバムの作り込まれたサウンド・プロダクションと2ndのラフな感触を残した曲作りの両方の良い部分を抽出したかのようなこのアルバムはまさにソーリーの観察眼の賜物だ。重ね合わせても決して過剰になることのないこの音楽は淡々と熱を帯び、変化していく現代社会に生きる人の心を浮かび上がらせる。

 心の隙間に入り込むようなアルペジオが響くオープニングトラック“Echoes” でアーシャ・ローレンツは熱っぽく冷めて孤独を歌う。繰り返される「エコー / エコー/アイ・ラヴ・ユー」。この曲はもちろん悲しく揺れる美しさを持ったラヴソングであるのだが、自分にはこの言葉がインターネットの海を彷徨う孤独な叫びのように聞こえてくる。日々目の前を飛び交う声、知らない誰かの愛に憎しみ。誰に向けてのものかわからない、文脈が消え方向性を失った匿名のアイ・ラヴ・ユーはまるで助けを求めるようにこだまする。それは受け手以外の目に触れる多重コミュニケーションの反響なのだ。特定の誰かに向けての言葉だったものが反響し遠くの人間にまで届き意味が変質する。そして他の言葉や価値観と合わさりまったく違ったものに聞こえるようになる。あるいはこれは現代社会のありかたの一端を象徴しているのかもしれない(つまり我々の頭の中、スマートフォンの中で繰り広げられている日常だ)。

 そしてルイ・オブライエンが歌う“Life In This Body”がある。この曲は数年前に作ったものの一部を再利用して持ってきたのだというが、相変わらずルイは美しく枯れたメロディを紡ぐ。自分はこうしたタイプのルイの曲が大好きなのだが、しかし今回のアルバムではそれを決して単独では使わない。かってバンドを象徴していたコラージュのアートワークのようにサンプリングと合わせられ、ストリングスと共にいまのアーシャの作った部分と接続される。古いラジオから流れ出してきたような「I want to be out on the sea~」という冒頭部分はソーリーのエレクトロニクス奏者のマルコ・ピニが盟友のセイント・ジュード、hekaとともに始めたプロジェクト・Dorothyの曲でも使われ、共有されているのだが、それも何と接続するかで意味が生まれる現代アートのような振る舞いに思える。アルバムのレコーディング作業はパッチワークのようなものだったとバンドは言うが、曲のアプローチの仕方といい歌詞といいやはり社会の空気を反映させたアルバムのように感じられるのだ。

 そうしてこのアルバムはアーシャがかってSoundCloudに1分半の断片をアップしていた“JIVE”で締められる。アルバムの時間に繋がり4分に膨らんだこの曲にソーリーは混乱したクラブでの虚無を描いたようなアレンジをほどこしている。ハイパーポップまではいかない、ギター・ロックでもない、ダンス・ミュージックとも違う、それはまるでどこにも属することはない孤独を示すように響いていく。暗く狭い部屋でフラッシュバックするように点滅を始める感情。そうしてまた断片、接続される声。最後まで頭の中に響く匿名の声はやはり現代社会の孤独を感じさせる。誰しもいるがその全てに馴染めない、群衆の中の孤独。そうしてそれは終わりが来ずに続いていく。

 理解と観察のソーリーのこのアルバムは絶望せずにそれでも人を信じている。現代は誰かのフリをするコスプレの時代であると同時に、繋がることができるコネクトの時代でもあると感じているかのように。他者への関心を強く持ち続け、全体から切り離された断片に溢れる世界で意味を探し繋げていく、その熱は心を強く揺さぶる。なぜ自分がソーリーに惹かれるのか、その理由がこのアルバムには詰まっているのだ。

Susumu Yokota - ele-king

 京都のレコード喫茶/バーの「しばし」。同店にゆかりのあるゲストがアナログ盤をかける企画「しばし円盤くらぶ」のスペシャル版として、横田進のリスニング・イベントが開催されることになった。日程は年明け後、1月17日(土)。
 今年はレーベル〈Lo〉が横田の没後10年を機にLP 7枚組ボックスセット『Skintone Edition Volume 1』をリリースしているが、これにあわせ同レーベルは世界各地で「Susumu Yokota World Listening Tour」を実施、日本ではしばしがオファーを受けることに。当日はそのボックスセットからele-king編集長・野田が選んだ2枚がプレイされる。

以下、編集長のコメントとイベントの詳細です。

「横田進さんの『Sakura』は、途中から聴くのではなく、できればそのレコードに針が落とされる前から、そこに待機していただけたら幸いです。というのも、その1曲目の“Saku”の最初の出音がスピーカーからこぼれた瞬間、その場が別世界になるからです。『Sakura』は、海外の人がしばしば言うのは「悟り」ということです。横田さんは特定の宗教に依拠していませんでしたが、彼のなかには彼自身さえ制御できないほどの夢見る力があったことはたしかです。その彼の能力がすばらしく具現化されたアルバムが『Sakura』です。『Image 1983-1998』は彼がハウス・ミュージックと出会う以前から書きためていた音のスケッチ集みたいなものです。これは、よりリラックスしながら、誰かと話ながら聴いてもいいと思います。どうぞ自由に楽しんでください」

● 1/17(土)18:00~21:00︎
しばし円盤くらぶ SPECIAL
Susumu Yokota World Listening Tour

selected by 野田努(ele-king編集長)
featuring albums;
『Sakura』
『Image 1983-1998』

─ リマスター音源
─ 野田努(ele-king編集長)による選盤

入場は無料(要ワンドリンク)
ご予約はDMか店頭にて

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『Skintone Edition Volume 1』

横田さんの没後10年を節目としたロンドンの〈Lo Recordings〉の企画で、7枚組のボックスセットが今年発売されました。
全作品はリマスタリングされ、アナログ盤ではカラー・ヴァイナル(全13枚の12インチの盤)仕様、各アルバムのカヴァーアートは新しくデザインされ、彼の詳しいバイオグラフィーが綴られたブックレットも封入されている。

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◎喫茶しばし(月曜定休)12時-19時

◎しばし ばー 毎週土日 17時-22時
(土日は喫茶17時終了、そのままばーopen)

場所
しばし
〒606-8335
京都府京都市左京区岡崎天王町76-16

 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下、OPN)ことダニエル・ロパティンによる11作目のアルバム『Tranquilizer』が11月21日にリリースされた。その前夜、原宿に期間限定で展開されているBEATINK Listening Spaceでは先行試聴イベントが開催。一足早く、なおかつ高音質で『Tranquilizer』のサウンドを体験するために、OPN愛に溢れるリスナーが集った。
 高音質というのは、BEATINK Listening Spaceに設置された、「正確で曇りのない音」をコンセプトに掲げるドメスティック・スピーカー・ブランド、BWVによる最高音質のスピーカー・システムのみに由来するわけではない。今回は特別にオーディオ専門家視点で高音質の録音メディアの最高位とされるオープン・リール・デッキが導入。このオープン・リール・デッキは、スイスの老舗オーディオ・メーカーであるREVOX社製で、プロの現場でも親しまれてきた名機の最新型である。
 いわゆるヴェイパーウェイヴと呼ばれるジャンルの代表的アーティストとして名前を挙げられることも少なくないOPNの最新作を、このようなハイエンドな環境でリリースの前夜に聴くことに、この日、この場所に集まったリスナーがどのように価値をつけるのかはそれぞれの物差しに依るだろうが、とはいえ、特別な時間/空間だったことは間違いない。というのも、視聴前、視聴中と会場にはえも言われぬ緊張感が充満していたのだ。おそらく、それは見ず知らずの人とまだ聴いたことのない音楽を同じ場所で聴く緊張感というよりも、長いキャリアの中で様々なコンセプトを持って制作に取り組み、世界中のリスナーを知的かつ身体的に楽しませてきたOPNが作品に込めた意図を一聴して理解できるのだろうか、という自問によるところが大きいだろう。そこには要するに、ラーメンではなく情報を有難がって摂取しているというような状況が音楽にも往往にしてある中で、OPNの新作とほとんど情報のない状態で対峙する緊張感とスリルが立ち込めていたのである。

 視聴会は主催するビートインクのスタッフによる(おそらく、あえて作品そのもののコンセプトや背景に一切触れない)簡単な説明が終わるとすぐさまスタートする。ビートと呼べるものがほとんど存在せず、しかしカオスで、同時に美しい音の鎮座する前半。視聴会後のトークに登壇したOtagiriが触れていたように、オーディエンスはビートのない中でどこか節のようなものを見つけてかすかに揺れていたり(その揺れはそれぞれズレていたりもする)、じっと動かずに耳を傾けていたりと思い思いに楽しんでいたが、その掴めなさゆえだろうか、どこからどこまでが同じ曲というのもわからない状態だったのもあるが、場を支配している緊張感はむしろ膨らんでいたようにも感じる。
 オープン・リール・デッキの特性上テープの入れ替えで10分程度の小休憩が挟まれて、『Tranquilizer』の後半が再生される。後半、つまり終わりが見えてきているとはいえ、いつ終わるのかもわからない中でアルバムを聴くという行為は現代において極めて特殊で会場を覆う緊張感が途切れることは決してなかった。ただ、とりわけ終盤の激しいビートが登場し、アルバムが明確にクライマックスへと向かっていく段階では、その緊張の糸にほんの少し緩みが現れていたようで、視聴会を終えたリスナーの多くは安堵と満足感の混じりあったような表情を浮かべていたように思う。

 視聴会が終了すると、GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEが主宰する、現代美術の展覧会とライヴを組み合わせたプロジェクト『獸(JYU)』などでアート・ディレクションやグラフィック・デザインを手がける八木幣二郎、社会的・政治的背景を帯びた音声や音響と音楽のあいだを往還する作品を制作する電子音楽家=Prius Missile、ラッパー/トラックメイカー/DJ として活動し『獸』にも出演するOtagiri がゲストとして登壇しトークがスタート。ここで重要だったのが、自己紹介より先にPrius Missileが『Tranquilizer』についてはっきりと「すごく音楽的」と評した瞬間だろう。筆者も含め、コンセプトや周辺情報を差し引いて、というかそういった情報の少ない中で作品に触れてまず抱いたであろう、「音楽として美しい、素晴らしい!」という感想を彼が代弁したことで、会場の緊張感は目に見えて崩れていった。
 その後、「到達していない未来から見た懐かしさ」のようなものを感じるという点でも共鳴しつつ、三者のトークが用意された資料に基づく“答え合わせ”にならず展開していったこともこのイベントを特別なものにしていただろう。それぞれが作り手としての視点とリスナーの視点を行き来しながら、『Tranquilizer』についての意見を交換していく。

 例えばPrius MissileはOPNを追いかけるリスナーの視点で最近の傾向をこう分析する。

「論じるよりも聴いた方が早いんですよね。例えば僕の大好きな『Replica』(2011年)は、その広告の音楽っていうルール、縛りをまず作って、それを音像に立ち上げるというような手法で制作されていて、何がどこからどうサンプリングされているかっていうのに論じ甲斐があるんですけど、特に最近のOPNのリリースに関しては聴くのがまず先。すごく絵画的というか、OPNの描いた情景をシェアしているような状態ですかね。その彼の文体がリリースを重ねる毎にアップデートされていて、それを追ってチェックしているような。この『Tranquilizer』はもっとシンセ・オタクとしてのOPNの、日頃作り溜めたアーカイヴ的なものという印象がすごくある」

 八木幣二郎は最新作のデザインと『Age Of』のデザインを比較してこう語る。

「OPNのジャケの話だと、『Age Of』ではDavid Rudnick(デヴィッド・ラドニック)という今の流行の一つのChrometypeの元祖のような人がやっていて。中世の音楽シーンを意識してあえて装飾的にロゴを作ったりしている人で。その次とかはちょっとサイケっぽくなって。今回のアルバムはElliott Elder(エリオット・エルダー)というロンドンの方がやっているんですけど、最近はブラック・ミュージック、ヒップホップ周辺でよく仕事をしている印象のある人なんです。彼がよくやるのは結構固めに組んだ文字をあえて印刷してスキャンして画像に取り込んでちょっと陰影とか紙のノイズ感とかを入れていくような手法で。そういう手触り感みたいなものを意識的に取り込んでいて、なおかつ高解像度のディスプレイで見られることを前提にしているから細かい文字もあえて使っていたりする。で、今回のアルバムを聴くと、細かい文字感とロゴっぽさってちょっと未来っぽく見えるんですよね。SFチックなデザインをあえてやっているんだろうなって」

 一方でOtagiriは手法が先か、デザインが先かという話題を登壇者に回しつつ、『Tranquilizer』から感じた羨ましさを紐解いていく。

「というのも私がイメージというものをあまり持ちながら創作をしたことがなくて、手法に寄っているんですけど、『Tranquilizer』はイメージと手法が一緒にあるような気がしたんです。イメージ先行は画家の場合だと「こんなこと描きたいのに、それが描けない、つらい」みたいな状況が起こる。手法が先だと、例えば私はヒップホップ的な、ラップ的なことやっているんですが、ヒップホップが一人称であることに昔から嫌悪感があって、誰よりかっこいいとか、金持ちだとか、強いとか、女の子にモテるとか、そういうのもいいんだけど、私はそういう人ではないし、もっと登場人物が勝手に喋ってくれればいいなと思っていた。だから今は6個世界を作って、世界ごとの主人公を作って。Chat GPTさんと協業しながらプロットを作って、その人たちがどんなことを喋るかというようなことをやっているんです。だから完璧に手法が先なんですね。と定義したときに、皆さんの話を聞いていて、イメージと手法が同時にあるようなものを羨ましい、それをやりたいって思ったんだろうなという気がしました」

 最後まで、共通する意見と、それぞれの視点が次々に現れ、示唆に富んだトークが展開されていった。そこには、みんなで集まって音楽を聴くこと、その感想を言い合うことの意義がたしかに存在していたのではないだろうか。トークは「明日別の環境で聴くのも楽しみ」「来年のライヴに行きましょう」といういわばありがちな締めによって終わるが、その頃には会場を満たしていた緊張感はすっかり溶け、代わりにそれぞれがそれぞれの視点でOPNの作品と向き合うことの尊さにも似た何かが漂っていた。それは紛れもなく、この特別な時間と空間の成果だろう。


 VINYLVERSEをご利用いただいているコアなユーザーの皆様にお話を伺う連載企画『ユーザーズ・ヴォイス』。今回で3回目となる本企画では、次は若い世代の声に耳を傾けたいと思い、白羽の矢を立てたのが「Kang」という名義でアカウントを運用されている23歳の中尾莞爾さんです。

 時代の主流とは異なるフォーマットであるレコードをあえて選ぶ。その選択の裏側には、どんな価値観や感覚があるのか。中尾さんの言葉を通して、レコード文化の“今”を少しでも浮き彫りにできたらと思います。


——こんにちは。中尾さん、今日はありがとうございます。 今回お声がけさせていただいたきっかけが、中尾さんが大学院でサブスク時代のレコードを研究されてるとプロフィールに書いてあったので、面白いお話が伺えるんじゃないかなと考えてお声がけさせていただきました。

中尾:はい。大変光栄です。ありがとうございます。
今は大学院修士1年なんですけど、2年間かけて研究していこうかなっていう感じで思っております。

——まず中尾さんがVINYLVERSEを知ったきっかけを教えてください。

中尾:はい、ele-kingで出しているVINYL GOES AROUND監修の『レコード復権の時代に』を読ませていただいて、内容がすごく面白かったのですが、その中のVINYLVERSEの記事を読んで、レコードっていう家の中にあるものをアウトプットするオンライン空間、そういうメディアって今までなかったなと思って、これはかなり面白いと思いまして、それで使わせていただきました。

——ありがとうございます。現在はどのように使われておりますでしょうか?

中尾:僕はコレクターって言うほど全然枚数を持ってなくて、ただ本当に買ったものをそのままアップしていて、今アップしているものがほぼ全部なんですけど、 レコードを買ってはVINYLVERSEに乗っけて、例えば友達と話をする時に、「俺こんなレコード持ってるよ」っていう風に画面で説明したりだとか 。あとはなんだろうな。それこそ自分で眺めて、「俺こんなん持ってたわ」みたいな、そういう確認をする時によく使わせていただいております。

——VINYLVERSEに何かしら興味を持たれているのであれば、その魅力ってなんでしょうか。

中尾:肌感覚の話になってしまうのですが、僕って音楽の話をするのがすごく苦手なんです。 例えば「好きな音楽は何?」って聞かれた時に自分の本当に好きなものを言えない。これって割と最近の若者全体に、この風潮があると思っているんですけど、その時にフィジカルを持っているっていうこと自体が自分の中での、 自信というか「その音楽を好きで、理解しているひとつの根拠になるな」という風に感じています。そういう時に、「こういうレコードを持ってるんだ」ってアプリ内のギャラリーを見せれば、その音楽のビジュアルを提示できるっていう点がとても便利です。あとはレコードの単純な物量であったり、「このジャケットのこのデザイン面白いよね」っていうところをすごく簡単に共有できるところ。それはインターネット空間でもそうですが、リアルの空間でも、実際にスマホの画面を見せながらそういったコミュニケーションを外側に開いていけるメディアとして魅力があるというか、自分みたいなタイプの人間にはめちゃくちゃありがたいと思っています。

——ご友人でも使われている方って結構いらっしゃるんですか?

中尾:そうですね。僕自身がVINYLVERSEをめちゃくちゃ広めていまして。「これめっちゃ面白いから使ってくれ」ってレコード持ってる人に言って回っています。それこそコメント機能がまだないので、人のギャラリー覗いては、LINEとかで友達に「これいいじゃん」みたいな。そういう事をやっていますね。

——それはとてもありがたいです。そんな中尾さんにとって初めてレコードを買ったきっかけって何だったのでしょうか?

中尾:レコードを買い始めたのは、大学1年生のときです。ちょうどその頃に横浜へ引っ越して、同時にサブスクも使い始めました。世の中的には、サブスクを使い始めたタイミングは、わりと遅い方だったと思いますが、使っていくうちにあんまり音楽をちゃんと聴けてないという感じがしました。というのも、月額1000円ぐらいで無限に何でも聴けるがゆえ、音楽が自分の中にうまく定着していないような感覚があって、自分のプレイリストを見ても、「なんだったっけこれ?」みたいな曲が増えてきてしまい、「もっとちゃんと聴きたい」と思って、レコードを買ってみたーーというのは1つ理由としてあります。やっぱり物として存在するのと、あと時空間が束縛されるので、しっかり聴かざるを得ない。 なので、音楽をちゃんと聴かせるメディアとしてはレコードって、今の時代にはとても貴重だなと思っています。おそらく、今、若者がレコードを買っている理由の一つにこういう視点も、もしかしたらあるんじゃないかなと思っています。

——ちなみに初めて買ったレコードって何ですか?

中尾:ディアンジェロの『Voodoo』が1番が最初ですね。当時は全然お金もなかったので、確か渋谷のフェイスレコーズで6000円ぐらいで売っていたものを、思い切って買ったのですが、そこでお金がなくなっちゃったので、それ以降1ヶ月間くらい食事はパスタばっかり食べてました。

——中尾さんがVINYLVERSEに上げていただいているレコードの中で、特に思い入れのある1枚ってありますか?もしあればその理由もお伺いできますか。

中尾:インク・スポッツのベスト盤ですね。基本的に僕はレコードはインターネットで買わず、リアルな実店舗に行って出会ったものを買うという探し方をずっとしているんですけど、ある時インク・スポッツが欲しくなって店を巡ったのですが、どこにもないんですよ。本当にどこの店に行っても。でも、どこを探していいかもわかんないし、ボーカル・グループなのかジャズ・ボーカルなのかっていうのもよくわらなくて、全然見つからなくて。で、「今日は必ずインク・スポッツを見つけるぞ」って思い立った日があって、たくさんのレコード屋さんを回ったんです。横浜と渋谷とか。でもなかなか見つからない。朝から出かけたのですが、夜の8時ぐらいまで探していても見つからなくて。そうしたら、本当に最後の最後でインク・スポッツのレコードが出てきて、半分泣きながら「これお願いします」ってレジに持っていった・・という思い出がありますね。

——インク・スポッツって、まだドゥワップがでてくる直前のすごい絶妙な、ある意味、時代のはざまにいるグループなんですね。ジャズではないし、R&Bの先駆け的な音楽なのですが、他に同時代にこういうコーラス・グループ的なスタイルの音楽をやっているって実はかなり珍しいんです。なおかつ、レコードとしても高額なレコードじゃないから、お店も積極的に仕入れたり、目立つところに置いたりしないんですね。 レコード自体は珍しく無いんですけど。

中尾:そうなんですよ。

——でも、なんでインク・スポッツなのでしょうか?どこで出会ったんですか? 23歳の人がインク・スポッツに出会うタイミングって、非常に興味深いです。

中尾:バイオショックっていうゲームがあるんですけど、このゲームが1930年代頃の音楽をBGMに使っていて、それのプレイリストにぶつかった時に多分知ったんだと思います。

——なるほど。すごい。そんなところにこういうのがあるんですね。音楽以外で、例えば映画、アート、ファッションとかで何か好きなものってありますか?

中尾:あんまり「好き」って言えるほど自信はないんですけど 、本を読むのはすごく好きですね。映画もちろん好きです。本当に広く浅くというか。音楽きっかけでいろんなものを知った、みたいなところはあるかなと思います。それこそインク・スポッツも『ショーシャンクの空に』の冒頭で使われていることを知って、それがきっかけで観てみたり。あとは『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が好きなのでそのサントラのレコードを探してるんですけど、これもなかなか見つからないですね。

——ところで中尾さんにとってレコードは昔のメディアだと思うのですが、レコードを新しいものに感じているのか、それともレトロなものに感じているのか。またレコードに新しさを感じるとしたらどういうところに感じるのでしょうか?

中尾:僕の研究と少しかぶってくるんですけれども、レコード自体の「古い」「新しい」というよりも、レコードっていうものに付与されてる意味みたいなもの、レコードがどういうイメージなのかみたいなものが、おそらく昔の時代とは変わってきていると思うんです。特に若者の中で。多分それってサブスクの影響がものすごく強くて。僕が時空間に束縛されているって言ったのは、サブスクが、いつでもどこでも気軽に聴けるーー加えて何でも聴けるっていうような、聴取空間を作り出したわけですよね。その中で、みんながそういったものを使っている環境の対局にあるのがレコードだと思っています。レコードは再生する装置やレコードそのもの自体にも、すごくお金がかかるし、基本的には室内で聴かなければいけない。かつ、レコードが再生している時間っていうのは改変できない。針を飛ばしながら聴くことはできますが、スマホのボタンひとつでスキップとかはできない。レコードってその特性が現代のメディアに比べると、融通が効かないんですよ。そんな中でも、すごく今はレコードっていうものが「若者にとって正当性のあるもの」―――って話し出したら説明が長くなってしまうのですが、つまり趣味っていう、そのものが他人との闘争みたいな、マウントの取り合いって言ったら語弊があるかもしれないのですが、でもそういった側面もあると。 で、例えば極端な話かもしれませんが、1970年代ごろだったら、クラシックを聴いている人はハイソサエティで、ロックを聴いている人は労働者階級、みたいな。ジャンルごとのイメージや、リスナーの音楽性に基づいたヒエラルキー(文化的な上下関係)が、当時は確かに存在していたと思うんです。
 でも、サブスクが普及してからは、みんなそこまでジャンルを意識せずに音楽を聴いている。じゃあ今の時代、何がその文化的なマウントの序列を担保しているのか?と考えると、僕は「メディア」なんじゃないかと思っています。
 レコードを買うという行為には、それなりの経済的余裕も必要だし、作品を理解するための教養も求められる。
 そういった意味で、レコードというメディアは今、文化的ヒエラルキーの中で比較的高い位置にあると思うんです。
 だからこそ、レコードの存在意義や象徴性が、今、大きく変わりつつあるんじゃないかと感じている……というような研究をしてます。

——面白い研究をされてますね。

中尾:ありがとうございます。

——でもそれは、あるかもしれないですね。やっぱり、他人とのコミュニケーションの中で“マウントを取り合う”というのは、人間としてある程度避けられない部分があると思います。それって、きっと全世界共通の感覚なんじゃないかなと。僕らの時代、「お前、そんなもん聴いてんのかよ」っていう、ある種ネガティブな競争意識の中で音楽を聴いていた実感がありました。でも今は、例えばすごくマニアックなソウルを聴いている人が、同じ感覚でアイドルやJポップも聴いていたりする。それがごく自然なこととして受け入れられていて、「そんなの聴いてるの?」とか「そんなの知らないの?」みたいな発言で優位に立てる、というコミュニケーション自体が、あまり成立しなくなっている。
 ただ、その中で例えば「俺はレコードで聴いてるよ」「お前、まだサブスクだけ?」という価値観には、確かにある種の上下関係が感じられます。
 もう1個だけ、ちょっとその発展で話させてもらうと、極論かもしれませんが、昔よりも今の方が「お金持ちが優位」な感じが強くなっている気がするんですよ。ステータスとして。30年前は「お金持ち=かっこいい」っていうイメージもゼロではなかったけど、今ほど強くなかったと思うんです。それよりも、知識があったり、スポーツができたり、文化度が高かったり、もっと言えば人情味があるとか。もちろん外見もあるけど、その人自身のポテンシャルの方が評価される時代だったように思います。
 でも今は、経済的に成功した人=かっこいい、っていう空気をすごく感じるんですよね。
 昔は音楽に詳しくなくちゃ話にならない、みたいな雰囲気もあったし、貧乏でも哲学や学問に深い人がリスペクトされた。でも今は、そういう人ってちょっと“変わり者”みたいな扱いをされがちで、それよりも“お金を持っている人”がもてはやされる。なのでみんなまずは「お金が欲しい、お金で成功したい」と思いがちな気がします。そうなると、音楽や哲学、文学といった“すぐにはお金に結びつかないもの”が後回しにされてしまって、結果的に文化活動全体が軽視されていくように感じるんです。いわば文化の衰退につながってきている。
 そういう価値観が、昔よりもあからさまになってきてる気がするんですよね。
 だからもっと、中尾さんみたいに若い世代に文化的な人が増えていってほしいと思うし、そういう人がかっこいいと思われる社会になってほしい。
 で、ここでもうひとつ聞きたいんですけど、ただ中尾さんを見てると、ステータスの感じ方もまた少し変わってきてるのかなと感じまして。――今の若者って、「文化度が高い人=かっこいい」っていう感覚って、あるんでしょうか?

中尾:文化度が高い人が“かっこいい”とされる感覚、今の時代だからこそ実はあるのかもしれません。たとえば、音楽の聴き方でいうと、今はサブスクリプションを通じて音楽を聴く人がほとんどですよね。サブスクの面白いところは、そこに“経済的な優位性”が出にくいという点なんです。みんな同額の金額しか払っていないので。つまり、お金を持っているかどうかではなく、どれだけ幅広く聴いているか、どれだけ知識があるか、といった“リテラシー”が問われる仕組みになっていると思います。たとえば、あるアーティストの名前がふと出たときに、「あ、それって○○の系譜ですよね」みたいな話ができる人は、音楽好きとしてちゃんとリスペクトされる。そういう価値観は、サブスクやSNSの中にも確かに存在していると思います。
一方で、その対極にあるレコードが“救世主”になれるかどうか、という視点もすごく重要だと思っています。さっきも話したように、レコードには「所有していること自体に価値がある」と捉える文化もありますよね。例えば、高価なレコードの所有を誇示するスタイルや、インテリアとしてレコードを「飾る」ような感覚などです。これは、ele-kingが刊行している『ヴァイナルの時代』でも語られていたことですが、レコードのモノ性にだけ頼りすぎると、かえってその内実である音楽が蔑ろにされてしまう。ここで大事なのはそれがサブスクでもレコードでも、「どんなメディアで聴くか」ではなく、「どう聴くか?」が問われなければならない。「レコードで聴いているから=素晴らしい」といった単純な価値観にも注意が必要で、ここも今の音楽文化の難しいところかなと思います。
 つまり大事なのはメディアが持っている文脈、それこそ「レコードは正当」ーーだとか、「サブスクは幅広く聴いているやつが偉い」とか、そのような価値観をどう個人が「自身の気持ちの中で読み替えていくか」っていうところに意義があると思っています。大事なのはいつの時代も「音楽」そのものなので。ただ、僕個人の意見ですが、レコードで音楽を聴くことで、サブスクでの体験との違いみたいなものが、明確に実感できるだろうし、その比較の中で音楽の輪郭もはっきりしていく。だからこそレコードって今は非常に大きな価値があるし、今後の音楽文化を救う可能性があるのではないかなというふうに感じています。

——どうもありがとうございます。勉強になります。最後にサブスクしか使ってない人にレコードを聴かせようとする場合、その人たちにレコードをお勧めする方法やご意見があれば教えてください。

中尾:ありがとうございます。多分サブスクしか使ってない人の中には最初の僕と同じような感覚、なんか音楽をちゃんと聴けている感じがしないであるとか、 自分のものとして音楽を吸収できている感じがしないっていう人が多分いると思うんですよね。で、それこそレコードっていうのは、参入障壁が高い、お金もかかるし、機材揃えなきゃだし、機材の知識ないしみたいな感じなので、 多分踏みとどまっているというか、なかなかそこに行けてない人っていうのは一定数いると僕は思っています。で、 その人たちに向けてメッセージを送るとするならばとりあえず買ってみよう。 安いスピーカー内臓のプレイヤーでも何でもいいから。とりあえず自分の好きなアーティストをそれで聴いてみて欲しいなってすごく思います。やっぱそのレコード体験っていうのは、そういうモヤモヤがある人にとってはすごく貴重なものになると思うので。是非迷っている人がいれば、 買って聴いてみてください。


Kangさんのギャラリーはこちら
https://vinylversemusic.io/gallery/kang


 音楽を取り巻く環境が日々進化し、スマートフォンやストリーミングサービスなどの利便性、AIの発展が極まる中で、レコードというアナログメディアは、再生に手間がかかり、保管にも場所を要するなど様々な制約があります。にもかかわらず、彼の言葉からは、そうした「不便さ」こそが、レコードに特別な価値を与えているのだという強い意識が伝わってきました。選ぶという行為そのものに意味があり、自らの意思で音楽と向き合う時間が、現代においては逆に新鮮で豊かな体験となっていると感じ取れました。

 VINYLVERSEは、そうした一人ひとりの文化的なこだわりや、主体的な選択を尊重し、それを外に向けて自由に発信できる場でありたいと考えています。そして今後は、人と人とがつながり、価値観を共有し合えるようなコミュニケーションのハブとして、より一層の発展を目指していきたいと思います。

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Geinoh Yamashirogumi - ele-king

 山城祥ニが主宰する音楽集団、芸能山城組の代表作『輪廻交響楽』(1986)がアナログでリイシューされる。レーベルはロンドンの〈Time Capsule〉(ちなみにレーベル・オーナーのケイ・スズキのインタヴューは『ele-king vol.33』に掲載)、発売日は2026年の2月20日。
 当時同作を聴いた大友克洋が『AKIRA』に使わせてほしいと問い合わせたところ、それなら一からつくるということで1988年に『Symphonic Suite AKIRA』が生まれることに──というエピソードをご存じの方もままおられるかもしれないが、こたびのリイシューはかなり気合いが入っている。というのも山城は、人間の可聴域を超える高周波であっても脳や身体に直接影響を与えるという理論「ハイパーソニック・エフェクト」の提唱者なのであるが、今回のリイシューではその理論が実践され、耳では聞こえない音域まで盤に刻まれているという。
 また、その『輪廻交響楽』第一章~第四章までの再現ライヴ《「幻響」其之弐〈転生〉》も開催が決定している。12月14日(日)、会場はなかのZERO大ホール。これは見逃さないほうがよさそうです。

アーティスト:芸能山城組
タイトル:輪廻交響楽
レーベル:タイムカプセル
カタログ番号:TIME024
発売日:2026年2月20日
ジャンル:エレクトロニック・クラシック・フォーク、ワールド、
スタイル:ニューエイジ、アンビエント、トライバル、合唱、声明、ガムラン
フォーマット:世界初の〈ハイパーソニック・エフェクト〉オーディオ強化処理 × ハーフスピード・マスタリング盤。8ページ・インサート/初回プレス限定帯
ライナノート:Anton Spce
マスタリング:Miles Showell (Abbey Road)
キュレーション:関塚林太郎(VDS)、Kay Suzuki

https://timecapsulesounds.taplink.ws/

芸能山城組公演
「幻(げん)響(きょう)」其之弐〈転生(てんしょう)〉開催のお知らせ

2025年12月14日(日)
なかのZERO大ホール

芸能山城組は、来る12月14日(日)、芸能山城組公演「幻響」其之弐〈転生〉を、なかのZERO大ホールで開催いたします。
危機に瀕する地球の未来を精神世界から転換させる試みに挑戦し大反響を巻き起こした昨年の「幻響 其之壱」に続く、待望のシリーズ第二弾となります。
芸能山城組が長年追求してきた意識を失わない恍惚の状態〈ライト・トランス〉性の音表現で、地球生命の循環を謳うライブ空間です。
第一章の『輪廻交響楽』は、東洋の宇宙観の根底をなす〈輪廻転生〉をモチーフに、地球生態系の循環メカニズムを讃えた1986年の作品です。大友克洋監督にアニメ「AKIRA」の音楽を芸能山城組に託すことを決意させた作品でもあります。
今回、作曲者・山城祥二自らが全編を刷新し、絢爛たるガムランの響きや人の声が豊かな生命力を謳いあげます。
第二章では、アニメ映画の金字塔「AKIRA」(大友克洋監督)の世界を彩った『交響組曲AKIRA』を基に、人の声、ジェゴグ、ガムラン、電子楽器が交錯し、見違えるような変貌を遂げたライブパフォーマンス『幻響AKIRA』をお楽しみいただきます。

【公演概要】
■名称:芸能山城組公演「幻響」其之弐〈転生〉
■日時:2025年12月14日(日) 開演16:00 開場15:30
■会場:なかのZERO大ホール(JR・東京メトロ東西線「中野駅」南口から徒歩8分)
■チケット(全席指定):HS席8,000円/S席6,000円/A席4,000円
■チケット取り扱い:イープラスeplus.jp 好評発売中

【演奏曲】
第一章『輪廻交響楽』から〈翠生〉〈散華〉〈瞑憩〉〈転生〉
第二章『交響組曲AKIRA』から〈金田〉〈クラウンとの闘い〉〈鉄雄〉〈ケイと金田の脱出〉〈未来〉他

【お問合わせ先】 
芸能山城組 公演プロジェクト 
〒164-0003 東京都中野区東中野1-22-3 芸能山城組事務所内
Tel 03-3366-4741 Fax 03-3366-4742
メール:kouen@yamashirogumi.jp
公式サイト:https://www.yamashirogumi.jp/

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