「ele-king」と一致するもの

Oscar Jerome - ele-king

 オスカー・ジェロームといえば、編集部イチオシのアフロ・ジャズ・バンド、Kokorokoのメンバーでもあり、ジョー・アモン・ジョーンズの諸作に参加しているシーンきってのギタリスト。UKジャズのマニフェストとなった『We Out Here』にも名を連ねている。いわばジャイルス・ピーターソンの秘蔵っ子で、トム・ミッシュの「ネクスト」などとも日本では言われているらしい。というのも、ジェロームのソロ作品にはシンガー・ソングライターとしての彼の資質が大きくフィーチャーされているからだ。
 もっともジェロームへの評価の高さは、彼の思わずうっとりしてしまう音楽性とバランスを取るように描かれているその深い歌詞にもあるようだ。先日発表された彼の新曲“Your Saint”は、難民たちが直面している貧困に触発された曲で、先進国の偽善的態度を告発している。
 待望のデビュー・アルバム『Breathe Deep』は7月10日〈Caroline International Japan〉からリリース。これは楽しみ~。


VirtuaRAW - ele-king

 これはすごい試みだ。沖縄のクルー「赤土」の呼びかけによる企画、50組以上の出演するオンライン・フェスティヴァルが5月3日から5月6日にかけて開催される。その名も「VirtuaRAW」。北海道から沖縄まで、全国15のクラブやライヴハウスが協働した取り組みで、合計40時間にもおよぶ配信を決行する。一度チケットを購入すれば、開催中いつでも閲覧可能とのこと。出演者などの詳細は下記を(すごいメンツです)。危機に瀕しているクラブやライヴハウス、アーティストたちによるすばらしい連帯、果敢なチャレンジを応援しよう。

VirtuaRAW (バーチャロー)
~ 40時間配信!音楽フェスティバル ~

日時:
2020/5/3 (日) 13:00 〜 5/6 (水) 5:00

視聴(チケット)料金:
[前売] ¥567- [当日] ¥1,000-

★チケット購入・イベント詳細はこちらから★
https://akazuchi.zaiko.io/_item/325705

北は北海道から南は沖縄まで、全国15会場のクラブやライブハウスが連動し、50組以上の豪華出演者を迎えて40時間に及ぶライブ配信を行います。

現在日本全国のクラブやライブハウスが自粛により存続の危機に直面している状況の中、それに直結するアーティストやクリエーターも窮地に追い込まれています。

また、音楽に関わらずさまざまな業種や人々が危機に直面している中でも創造的なモノを共有し、皆んなで協力してバトンを繋ぎ、家に居る時間はみんなで楽しんでほしい、という思いから「VirtuaRAW」と題して、オンライン音楽フェスティバルを3日間に渡って初開催いたします。

各地に居るアーティストが配信という形で集結する事が可能となり、視聴者もチケットを一度購入すれば開催中はいつでも閲覧可能となっています。

離れていても、きっと音楽やカルチャーを共感できる事を信じ、未知なる未来へのチャレンジへと一歩足を踏み出すため、今回の初開催にとどまらず、今後も開催していく予定です。

[会場一覧]

北海道旭川 / Club Brooklyn
東京 / Dommune
東京中野 / heavysick ZERO
東京町田 / FLAVA
神奈川江の島 / OPPA-LA
山梨 / 一宮町特殊対策本部
名古屋 / TRANSIT
京都 / OCTAVE KYOTO
大阪 / TRIANGLE
岡山 / 三宅商店
山口 / のむの
福岡 / Kieth Flack
沖縄 / output
沖縄 / 熱血社交場
石垣 / GRAND SLAM

[出演者 (A to Z)] ※追加出演者発表あり

■LIVE
赤土・伊東篤宏・孫GONG・鶴岡龍 a.k.a. LUVRAW・三宅洋平・B.I.G.JOE・BUPPON・Campanella・CHOUJI・cro-magnon・DAIA・DLiP RECORDS・electro charge・FUJIYAMA SOUND・HIDADDY・HIDENKA a.k.a. TENGOKUPLANWORLD・HI-JET・HI-KING TAKASE・I-VAN・ifax!・J-REXXX・K-BOMB・KOJOE・KOYANMUSIC & THE MICKEYROCK GALAXY・KURANAKA a.k.a.1945 feat. Daichi Yamamoto. Ume・LibeRty Doggs・MADJAG・MAHINA APPLE & MANTIS・MONO SAFARI・m-al・NORMANDIE GANG BAND・OBRIGARRD・OLIVE OIL & POPY OIL・OMSB & Hi`Spec・OZworld a.k.a. R`kuma・RICCHO・RITTO・RHIME手裏剣・SHINGO★西成・SMOKIN`IN THE BOYS ROOM・stillichimiya・Tha Jointz・U-DOU & PLATY・Zoologicalpeak

■DJ
光・BIG-K・Daichi・HI-C・K.DA.B・SINKICHI・SYUNSUKE・POWBOYZ・YASS fr POWER PLAYERZ・UCHIDA ・VELVET PASS ・4号棟

[INFOMATION]
Instagram @virtuaraw
Twitter @RealVirtua
Facebook https://www.facebook.com/events/2871947506225903/

ハッシュタグ
#VirtuaRAW #バーチャロウ #オンラインフェス #生配信

主催:AKAZUCHI

Mahito The People - ele-king

 コロナ禍を受け、各地でさまざまなアイディアが試行錯誤されるなか、マヒトゥ・ザ・ピーポーによる無観客ライヴの配信が決定した。これは、もともと5月14日に WALL&WALL で予定されていた大友良英との公演の中止を踏まえての試みで、同日20時より開催される。CANDLE JUNE によるろうそくに囲まれて、弾き語りのパフォーマンスが披露される模様。配信サイトはこちら


マヒトゥ・ザ・ピーポー 配信ライブ開催のお知らせ

5月14日(木)、表参道 WALL&WALL で開催予定の「にじのほし15『one×one』大友良英×マヒトゥ・ザ・ピーポー」公演は、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、残念ながら一旦中止とさせていただきます。払戻の対応に関しての詳細は販売サイト Peatix より個別にご案内いたします。

これを受けて、同会場よりマヒトゥ・ザ・ピーポーによる無観客の電子チケット制ライブ配信を開催することになりました。
会場には日本のキャンドルアーティストの第一人者、CANDLE JUNE によるキャンドルの炎を囲んだ弾き語りライヴをお届けします。
普段のバンドサイドでの烈しさに内包された繊細さが顕になる、うたの世界とキャンドルの静かに燃え上がる美しいコラボレーションにご期待ください。

[ライブ詳細]
にじのほし16
Mahito The People × CANDLE JUNE "one" live streaming

出演:マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)
装飾:CANDLE JUNE (キャンドル)
2020年5月14日(木)
配信開始20:00より
TICKET:¥1,000
配信サイト:https://nijinohoshi14.zaiko.io/_item/325805

チケット販売開始/終了日時:2020年4月23日20時~2020年5月17日21時
配信アーカイブ公開終了日時:2020年5月17日21時

※当日は会場の表参道 WALL&WALL にはお入り頂けません。
* 配信のURLは購入した ZAIKO アカウントのみで閲覧可能です。
* URLの共有、SNSへ投稿をしてもご本人の ZAIKO アカウント以外では閲覧いただけません。
* 途中から視聴した場合はその時点からのライブ配信となり、生配信中は巻き戻しての再生はできません。
* 配信終了後、チケット購入者は72時間はアーカイヴでご覧いただけます。

#SaveOurLife - ele-king

 日々新型コロナウイルスの影響が甚大になっていくなか、ライヴハウスやクラブへの支援をもとめる #SaveOurSpace が、新たな呼びかけをはじめている。「#SaveOurLife」と題されたそれは、音楽や文化関連業種に限定せず、すべての分野の(新型コロナウイルスの感染拡⼤防⽌に尽⼒する)事業者、施設、従業員、フリーランスに対する助成を求めるもので、4月27日に国会に提出される補正予算案に向け、100万人の署名を集めている。詳しくは下記を。

#SaveOurLife
私たちの命と仕事を守ろう

感染症拡大防止のなかで職を守り、継続的な助成を国に求める署名活動

100万人署名と呼びかけのお願い

新型コロナウイルスの影響で
私たちの身の回りのお店、会社、そこで働く多くのひとが大変な苦境に立たされています。
この国を支える中小企業・フリーランス(個人事業主)は、
2月から続く営業自粛要請や外出自粛要請で経営が悪化し、廃業や解雇が相次いでいます。
終息の見込みが立たない中、この状況が続けばとてつもない数のひとたちが
廃業や解雇に追い込まれるのは目に見えています。
私たちは、営業自粛・外出自粛要請の影響を受けているすべての中小企業、
フリーランス(個人事業主)に対する国や地方公共団体からの
継続的な支援を求めます。

4月27日、国会に補正予算案が提出されます。
それまでに100万筆、国を動かすだけの声を集めましょう。

#SaveOurSpace

Twitter: @Save_Our_Space_
Instagram: @Save_Our_Space_

Website: https://save-our-space.org/
E-mail: saveourlife.info@gmail.com

ele-king books 電子書籍、始動。 - ele-king

ele-king books 電子書籍、始動。

これまでわたしたち ele-king books は、時流を見すえながらも、独自のアティテュードにもとづいてさまざまな本を刊行してきました。そのオルタナティヴな視点を、より多くの方々にお届けすべく、ついに ele-king books も電子書籍に乗り出します。

電子書籍化第3弾! 新たに3タイトルの配信をスタート。

昨年12月に刊行された新刊2タイトルおよび関連書を合わせて合計3タイトルを電子化。1月29日より配信開始!

配信タイトルは今後も随時追加予定です。

女性のためのサウナ・ハンドブック サウナ女子の世界

女性のためのサウナ・ハンドブック サウナ女子の世界

著者:サウナ女子
電子版ISBN:978-4-909483-90-4
本体価格:1,500円

女性ユーザー目線で厳選した国内施設紹介を中心に、カップルや家族で楽しめる混浴、入浴後のおたのしみである「サウナ飯」、海外施設などの情報をはじめ、コスメや自宅サウナなどのコラムまで、サウナに興味のある女性の求める情報を凝縮

断言 読むべき本・ダメな本 新教養主義書評集成・経済社会編

断言 読むべき本・ダメな本 新教養主義書評集成・経済社会編

著者:山形浩生
電子版ISBN:978-4-909483-89-8
本体価格:2,176円

本当に読者の役に立つ書評──いい本をしっかり褒め、ダメな本は徹底的に批判する。人気の書評家・翻訳家が30年にわたって様々な媒体に寄稿した膨大な書評から経済・社会分野に関するものを集成

断言2 自分を変える本・世界を変える本 新教養主義書評集成・サイエンス・テクノロジー編

断言2 自分を変える本・世界を変える本 新教養主義書評集成・サイエンス・テクノロジー編

著者:山形浩生
電子版ISBN:978-4-909483-91-1
本体価格:2,176円

好評第2弾。科学する心の尊さ、テクノロジーに託す夢、そしてトンデモ科学に惑わされない知性──サイエンス、テクノロジー、環境、エネルギーなどの分野に関する書評集

HIP HOP definitive 1974 - 2017

HIP HOP definitive 1974 - 2017

著者:小渕晃
電子版ISBN:978-4-909483-80-5
本体価格:2,080円

1974年から2014年の40年におよぶヒップホップの全貌を概観する画期的なディスクガイド。

椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門

椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門

著者:スズキナオ、パリッコ
電子版ISBN:978-4-909483-81-2
本体価格:1,248円

コロナ禍で新たに注目を浴びる野外アクティビティ「チェアリング」創始者たちによる世界で唯一の徹底ガイド。

ギャングスタ・ラップ ディスクガイド

ギャングスタ・ラップ ディスクガイド

著者:小渕晃
電子版ISBN:978-4-909483-82-9
本体価格:2,000円

現在世界でもっとも聴かれ、影響力を持つ音楽であるギャングスタ・ラップの定番アルバム、ヒット曲を網羅。

晩酌わくわく! アイデアレシピ

晩酌わくわく! アイデアレシピ

著者:パリッコ
電子版ISBN:978-4-909483-83-6
本体価格:1,350円

ウェブや雑誌、テレビまであらゆるメディアでひっぱりだこの酒場ライターが長年にわたり追求してきた実験レシピ・おもしろレシピ・アイデアレシピをまとめて紹介。

女の子は本当にピンクが好きなのか

女の子は本当にピンクが好きなのか

著者:堀越英美
電子版ISBN:978-4-909483-59-1
本体価格:1,920円

現代女児カルチャーに鋭く切り込み、「男の子らしさ」「女の子らしさ」についての新たな視点を提示。

人生が「楽」になる達人サウナ術

人生が「楽」になる達人サウナ術

著者:大久保徹(編著)
電子版ISBN:978-4-909483-60-7
本体価格:1,350円

いまやビジネスパーソンにも注目されるサウナ、その「入り方」について各界のサウナ通・粋人たちに話を聞く。

ゲーム音楽ディスクガイド──Diggin' In The Discs

ゲーム音楽ディスクガイド──Diggin' In The Discs

著者:田中 “hally” 治久(監修)、DJフクタケ(著)、糸田 屯(著)、井上尚昭(著)
電子版ISBN:978-4-909483-61-4
本体価格:2,064円

40年にわたるゲーム・ミュージックの歴史を網羅し、「音楽的な価値」という視点で編み上げた画期的ガイド。

美容は自尊心の筋トレ

美容は自尊心の筋トレ

著者:長田杏奈
電子版ISBN:978-4-909483-62-1
本体価格:1,480円

「自分を慈しむための美容」という新たな価値観で熱狂的な支持を獲得!

Bim One Production - ele-king

 Bim One Productionが久しぶりの新作を出す(https://project.bim-one.net/)。ブリストルのグライム/ヒップホップMC、RIder Shafiqueをフィーチャーした10インチのアナログ盤、プレオーダーは本日(23日)から開始、デジタル/ストリーミングでも聴くことができる。スコーンと抜けたリズムにストイックな空間および瞑想的な言葉が格好いい曲で、映像(by 鷹野大/Tabbycat)があるのでまずはどうぞ。

 RIder Shafiqueは過去、BSOのために何度か来日しており、Bim One Productionとはかねてより親交あり。このコラボは2作目になり、映像には下北沢Disc Shop Zeroの店内がばりばりに写っている。曲の最後のほうには亡き飯島直樹さんも登場、じつはこの映像は飯島さんがまだ生きていたときに本人も確認しているという話で、Bim One ProductionとしてはZEROの27周年にあたる4月27日のリリースを前もって考えていた。
 新型コロナの影響で現在店舗は開けられず、無念のリリースとなったが、彼らのソウルが籠もったこのシングルは、たくさんの人に飯島さんのDIY精神をうながすことだろう。チェックよろしくです。
 

Bim One Production - Guidance feat. Rider Shafique
カタログ番号:BIMP003
デジタル配信:Bandcamp / Spotify / Apple Music / Amazon / ReggaeRecord Downloads 他 *4/24配信開始
レコードフォーマット:10inch Vinyl / スタンピング、ナンバリング付き 
限定100枚 *4/24プレオーダー開始 4/27発売
配信サイトまとめ: https://kud.li/bimp0003 (4/24公開)

Akira Inoue - ele-king

 世界の和モノ・ディガーたちによって発掘され、再評価されているアルバムがまたリイシューされる。井上鑑による1984年の問題作にして隠れ名盤、モダンクラシカル・ダンス・アンビエントとでも言えばいいのか、カテゴライズしようのない美しき作品『カルサヴィーナ』、奇跡の再発。清水靖晃の『Kakashi』、Mariahの『うたかたの日々』、高田みどりの『鑑の向こう側』、ムクワジュの『Mkwaju』、吉村弘の『Green』、芦川聡の『Still Way』なんかと並列されるべく80年代の日本の音楽シーンから生まれた素晴らしきアヴァン・ミュージックのひとつである。『和レアリック・ディスクガイド』でも大推薦盤として掲載されておりますよー。
 『カルサヴィーナ』は、細野晴臣『花に水』(名作!)や高橋悠治の水牛楽団など、いまとなっては入手困難な作品が居並ぶ冬樹社のカセットブック・シリーズ、その一角を占めた作品で、もちろん今回は世界初の再発&CD化となる。ちなみに井上鑑には、すでに和モノ・ファンのあいだではマストな1枚となっている『Prophetic Dream = 予言者の夢』という、メロウAORフュージョンの名作もあり、近年リイシューされたところでいえば山口美央子もあり、日本のポップ・シーンで数多くの楽曲を手がけてきた作編曲家にして鍵盤奏者である。『カルサヴィーナ』は、そんな井上鑑の当時としてはもっとも尖った部分が出ている野心作/実験作だが、しかしいま聴くと耳障りは驚くほど良く、むしろ現代の音楽としての最高の陶酔が広がっている。
 今回のCDには本人による回想録も封入されるとのことで、資料性の高い1枚になっている模様(解説は『和レアリック・ディスクガイド』監修の松本章太郎)。これはなくなる前にゲットしておきたい1枚です。

日本を代表する作曲家、アレンジャー、キーボード奏者である井上鑑が1984年にカセット・ブックのみで発表した幻想の音世界『カルサヴィーナ』が世界初CD化!

20世紀初頭の伝説的バレエダンサー “ニジンスキー” をテーマに取り上げ、クラシックかつエレクトロニックなスタイルでアンビエント〜ミニマル〜エスノ〜フュージョンとを織り交ぜたまさに時空を超えたインストゥルメンタル・ミュージック!

タイトル:カルサヴィーナ / Karsavina
アーティスト:井上鑑 / Akira Inoue
【CD】
発売日:2020.4.29
定価:¥2,600+税
PCD-26076
解説:松本章太郎

【収録曲】
01. プロローグ
02. アントルシャ・ディス
03. ア・キ・エス・パスポート
04. INNOVATIONS
05. ワスラフのいちご狩り
06. 第二幕のはじまり
07. 湖のピアノ
08. オンディーヌ
09. ア・キ・エス・パスポート (Version 2020) *
* Bonus track

細野晴臣『花に水』、矢口博康『観光地楽団』、ムーンライダーズ『マニア・マニエラ』、南佳孝『昨日のつづき』といった一連の作品とともに冬樹社 “カセットブックシリーズ SEED” として1984年に発表された井上鑑『カルサヴィーナ』。1st アルバム『予言者の夢』(1982年)以降、ソロ名義で自身の音楽性をさらに追求すべく試行錯誤が繰り返されるなか制作された本作は、20世紀初頭の伝説的バレエダンサー “ニジンスキー” をテーマにテクノロジーとともに飛躍的な進化を遂げた電子楽器&機材と稀有なプレイヤーたちによる生演奏とを精密に重ね合わせた先鋭的なサウンドで、「当時だからこそ可能であった」と本人も語るように長時間に及ぶレコーディングやスタジオワークから生み出され楽曲はそれぞれアンビエント、ミニマル、エスノ、フュージョンといった側面を持ちながらも全編通してはカテゴライズ不可能なまさに幻想の音世界! 今回の再発にあたりオリジナルのカセットテープに最新デジタル・リマスタリングを施し新たなマスターを作成、さらに井上鑑本人とエンジニアとして参加していた藤田厚生による当時の回想録もブックレットに掲載し本作の成り立ちからどのように制作されたのかまで詳細に記された80年代の音楽シーンが垣間見ることもできる資料的にも価値のある歴史的作品です!

【Musicians】
井上鑑(Compose / Arrange / Piano forte / Synthesizer and more)
山木秀夫(Drums / Percussions)
川村昌子(筝 / 十七絃筝)
銅銀久弥(V. Cello)
カクラバ・ロビ(ベラフォン / Percussion) on M8
高水健司(E.Bass) on M4, M6, M8
今剛(Guitar) on M8
浦田恵司(Synthesizer Manipulate / Sound Design)
野坂惠璃(二十五絃箏) on M9

【井上鑑】
1953年9月8日、東京生まれ、作編曲家、作詞家、ピアノ、キーボード奏者。チェリスト・井上頼豊の長男であり桐朋学園大学作曲科にて三善晃氏に師事。桐朋入学前後より故・大森昭男氏との出会いによりCM音楽作曲、スタジオワークを始め、現在に至るまで寺尾聰 “ルビーの指環” 大滝詠一、福山雅治、他膨大な数のヒット曲、話題作を生み出す。1981年 single 「Gravitations」、Album 『予言者の夢』で〈東芝EMI〉よりソロ・デビュー、以降先鋭的サウンドとメッセージに満ちた言葉を駆使した通算17枚のソロ・アルバムを発表。初期作品も再発売が相次ぎ、新世代DJたちの熱い支持を得ている。創作活動はジャンルを超え、箏や津軽三味線などの邦楽器やチェロを始めとする弦楽器と真摯に向き合った作品は独特の変拍子感覚と近現代的書法、優美なメロディーとハーモニーを併せ持つものである。2011年、書籍『僕の音、僕の庭』発表、2013年より「連歌・鳥の歌」プロジェクト主宰、現地カザルス財団のサポートを得て2016年カタルーニャ、ウクライナにて公演。同時期よりソロリサイタルを年1回シリーズで開催。Bela Bartok、Peter Gabriel を敬愛し David Rhodes、Tchad Blake など英国アーティストとの作品作りを80年代より続けている一方、盟友である今剛、山木秀夫などと商業ベースを超えた音楽作り+ライブを精力的に展開。

interview with Lorenzo Senni - ele-king

 EDMにビッグ・ルームというジャンルがある。く○らない音楽である。これにフレンチ・タッチの変わり種であるミスター・オワゾが新進気鋭のラッパー、ロメオ・エルヴィスとタッグを組んで新風を吹き込んだ。同じジャンルとは思えないほど批評的な視点を加えた“Pharmacist(薬剤師)”である。この曲はあきらかに今年前半のハイライトをなす1曲である。同じことは8年前に『Quantum Jelly』でトランスを一変させてしまったロレンツォ・センニにもいえる。センニはネオ・トランスというジャンルを生み出したにもかかわらず、そのフォロワーたちがやっていることは彼の曲とは似ても似つかず、いまではセンニがつくる曲だけがネオ・トランスには属していないかのようになってしまった。ジャンルというのは「型」であり、それを守るもよし、遊ぶもよし、はみ出すのもよしだと思うけれど、モノマネに追いつかれもしなければ、マネにもなっていないというのはなかなかにスゴい(言葉だけがひとり歩きした例ということだろうけれど)。センニの独走はそして、2014年の『Superimpositions』から、さらに、新作の『Scacco Matto』へと続く。〈ワープ〉からは初のアルバム・リリースである。

 ロレンツォ・センニが暮らし、活動の拠点としているのはイタリア北部のロンバルディア州で、新型コロナウイルスが世界で最初に感染爆発を起こしたミラノである。外出禁止令が出されたミラノの様子もよくわからないし、新作について聞くだけでは済まないと思った僕はとりあえず彼のツイッターを開いてみた。そこには「みんながバルコニーで歌っている時に自分は新作のプロモーション中」という投稿がなされたばかりだった。なんとなく冷ややかな印象である。ロック・ダウンが宣言された直後、イタリアの人々はバルコニーで歌い、励ましあっていたというニュースが流れたことは記憶に新しい。それらの映像がユーチューブに投稿されると、彼らが歌っていたのはケイティ・ペリー“Roar”やマドンナ”I Rise”などで、自分の曲が歌われていると知ったセレブたちは「私たちはひとつ」「みんなで立ち上がろう」などと熱いメッセージを添えて勤しんでリツイートしていた。しかし、これらはすべてフェイク動画で、実際にイタリア人が歌っていたのは国歌だったのである。そう、「みんながバルコニーで歌っている時に自分は新作のプロモーション中」とは、政治的な集団感染には距離を置いたロレンツォ・センニの小さな抵抗だったのである。

「クラブで唯一のシラフ」って言われるぐらい(笑)。まあ、こういうシーンでは珍しいかもしれないけど、僕は音楽を研究したいだけなんだよ。だから僕自身では、自分のことを「レイヴ・シーンの覗き屋(Rave Voyeur)」だと思っているけど。

こんにちは。『Scacco Matto』というアルバム・タイトルはチェスでいう「チェックメイト」の意ですよね。まるで封鎖されたロンバルディア州やミラノのことみたいですけれど、預言者の気分じゃないですか? ジャケット・デザインも窓から見た外の景色だし、イタリア政府が住民に要請している「State a casa(家にいろ)」と、悪い意味でイメージがダブってしまいます。

ロレンツォ・センニ(以下、LS):こんな悲劇は誰も予想していなかったよ。ジャケットのアートワークのようなモチーフを使うことになったきっかけは、15年前に大学で音楽理論を学んでいた時に遡るんだ。当時、僕は実家で暮らしていたんだけど、ある有名な写真家が隣の家に住んでいた。彼の名前はグイド・グイディ(Guido Guidi)。彼の作品を色々と調べていくなかで、別な写真家、ジョン・ディボラ(John Divol)の77年のある作品に出会った。その写真が15年間忘れられなくて、たびたび眺めていたんだ。それを今回のアートワークに使うことにしたんだよ。ディボラには自分で連絡をして使用の許可をもらった。窓から外を見る構図が気に入っているんだ。いまは春で、昼の景色も夕暮れの景色も綺麗だから、この写真みたいな色合いが見られるよね。『Scacco Matto』は、チェックメイトっていう意味で、「どこかに閉じ込められる」という意味合いも持っているから、いまのイタリアの状況を表しているように思えるかもしれないけど、そうではなくて、僕の音楽に対する意識の話なんだ。

〈ワープ〉からのデビューEP「Persona」(16)のジャケット・デザインも盗撮に由来するものでしたが、閉ざされた世界から外の世界を覗くことに興味があるのでしょうか?

LS:そうだね。僕のなかでは「閉ざされた世界」というのは「しきたり」のことだけどね。

ああ。

LS:現状の打破を暗示しているような。トランスやエレクトロをやるとき、僕は外に目を向けるようにしている。『Scacco Matto』と「Persona」のアートワークが同じアイディアであることは、事前に計画していたことではないけれど、結果的にそうなったことは嬉しい。僕はアルバムごとに方向性を変えるタイプのアーティストではないけれど、少しずつ成長はしていきたいと思っているから。それを反映しているようなものになったから良かったよ。

暗い音楽が多かった2010年代と違って『Scacco Matto』には明るい音楽が多くていいなと思っていたのですが、パンデミックの影響でストレートに楽しめない雰囲気になってしまいました。やはりつくった時とは気分が変わってしまいましたか?

LS:『Quantum Jelly』(2012)や『Superimpositions』(2014)をつくっているときは、いまと比べて音楽に自分の感情を入れることにあまり関心がなかった。音楽をつくる過程の方に興味があってね。それと比べると最近の曲はもっとメロディー志向になっている。メロディーが果たす役割が大きくなってきているんだ。その理由を考えたことはないけれど、僕は根本的に歌が好きで、最近は特に歌ものを聴くことが多い。それが関係しているとは思うよ。以前はもっとコンセプチュアルな音楽が好きだったからね。さっきも言ったみたいに、音楽の構成とか製作過程の方に興味があったから。僕はその時々の世情に左右されるタイプのアーティストではないから、曲調の移り変わりはイタリアの情勢とは関係ない。毎日、ほとんどの時間は地下のスタジオにいるので、そもそも左右されようがないしね。それに、そもそも自分の感情が音楽にどう影響しているかとか、全然、考えたことがないから答えるのは難しいな。

僕があなたの音楽を知ったきっかけはワン・サークル(One Circle)のEPでした。イタリアでグライムをやっている人がいるのかと思って聴いたんです。そこから遡っていくと最初にあなたは実験音楽をやっていて、その後、ダンス・ミュージックに興味を持ったという流れになるのでしょうか? 昨年はロック・バンド、スターゲイトとしてソナー・フェスティヴァルにも出演しているようですが。

LS:ワン・サークルより前に2枚のアルバムを出しているんだ。1枚目は僕にとって初めてのアルバム『Early Works』(08)。アンビエントでトリッピーな感じの作品だ。その後に『Dunno』(10)をリリースした。これも実験音楽で、抽象的なコンピューター・ミュージックだね。その後に、フランチェスコ・フランチーニとダニエレ・マナと3人でワン・サークルを始めた。それまではダンス・ミュージックに手を出したことはなかったんだ。いまでもダンス・ミュージックをつくっているとは言いたくない気持ちがあるんだけど(笑)。「踊れる」曲をつくるというのは僕にとっては難しいからね。まあ、とにかく、ワン・サークルでつくった音楽はダンス・ミュージックと位置づけられるもので、クラブのダンスフロアでかけられるような音楽だ。だからこそ、僕の中ではワン・サークルの楽曲には納得がいっていない。僕の出自はドラマーだから、音楽の中にグルーヴィーな解答を見つけたい。僕の音楽をかけてみんなが踊ることは、僕にとっては不本意なんだ。でもワン・サークルでは、結果的にそうなってしまった。

そこまで言いますか。

LS:僕がダンス・ミュージックを出すのは、あれが最初で最後になるね。ライヴに来てくれる観客は、自由に聴いてくれていいと思ってるけど。前の2列の人たちが踊ってたりするのがステージから見えるし、それは気にならない。ドラムのビートやキックが入ってなくても、みんなが踊っていて面白いなと思うよ。うしろの方には、ただ立って聴いているだけの人もいるしね。僕の音楽には色々な要素があって「踊れる」と受け取られる要素もあるだろうし、聴く側からしたら理解できない面も含まれている。だけど、クラブでプレイする時は、いつも場違いな気持ちになるよ。僕としては「踊れる」曲だと思っていないから。でも、着席型のコンサート会場で演奏するときも観客たちはきっと動きたいだろうなと考えてしまう。だから僕の音楽は、中間にあるんだと思う。こうやって考えると面白いけど、音楽としては破綻しているかもね(笑)。

はは。ワン・サークルのダニエレ・マナが〈ハイパーダブ〉から昨年リリースしたアルバム『Seven Steps Behind』は感情の起伏のない落ち着いた内容だったので、ワン・サークルではダニエレ・マナとあなたのセンスが拮抗していたことがよくわかります。ワン・サークルからダニエレ・マナを引き算すると派手で感情豊か、時にはギミックを駆使することもいとわないのがあなたの資質なのかなと?

LS:ワン・サークルでは自然と役割分担ができていて、プロジェクトとしてはいいものだったと思っているんだ。3人それぞれがきっちり別々の役割を果たしていたからね。僕は作曲担当だった。僕がメロディーをつくるのが得意だというのは、話し合わなくても全員が了解していたことだったから。そして、ダニエレがビートをコントロールしていて、アレンジメントも彼が担当していた。フランチェスコはクラシック音楽を学んでいたミュージシャンだから、音程やコード進行を見て、その曲の方向性を音楽的に正しい方向に導いてくれる存在だった。そんな風に、それぞれの経歴やスキルがうまく作用していたね。

僕はその時々の世情に左右されるタイプのアーティストではないから、曲調の移り変わりはイタリアの情勢とは関係ない。毎日、ほとんどの時間は地下のスタジオにいるので、そもそも左右されようがないしね。

あなたの音楽はなぜドラムを入れないのですか? OPNにも感じることですけれど、ベースもあまり重くせず、中?高音域で曲を完結させる意図は? あなたの曲をリミックスしているDJスティングレイなどとはあまりに対照的です。

LS:ドラムは好きだよ。いまでも、家の中でさえスティックを持ち歩いてるぐらいだからね(そばに置いてあったスティックを見せながら)。いまだにたくさん練習するし、そもそもドラムは僕の恩人のような存在だ。ドラムに規律というものを学ばせてもらったから。ただ、エレクトロ・ミュージックを独学で始めた当時、僕が勉強のために聴いていた音楽にはドラムがなかった。『Quantum Jelly』をリリースしてくれた〈エディション?メゴ〉から出ている音楽を主に聴いていたんだけど、バックビートもベースラインもないし、シンセのメロディーもなかった。すごく抽象的なエレクトロニック・ミュージックばかりだったんだ。僕はもともとロック・ミュージック出身で、そもそもドラムン・ベースにも親しみはなかったし、エイフェックス・ツインを知ったのも遅かったからね。そういうことで、僕にとってはエレクトロのクレイジーな要素をかき集めて、ドラムビートやベースラインについては考えずにそのままエディットするのが自然な流れだったんだ。それに、その方が自由を感じられた。その影響で最初のアルバムはすごく抽象的な音楽で、トリッピーな要素もあったから、ドラムは使わなかった。その後、トランス・ミュージックやクラブ・ミュージックの方に移ってもドラムの要素を入れないことで制約が生まれて、そのおかげでコンセプチュアルな音楽を作ることができた。ドラムなしでグルーヴィーな音楽をつくるという、挑戦にもなっているね。結果的に、僕の音楽のシグネチャー的なものになったと思っている。ドラムを入れることももちろんできるし、今後やるとしても、それはサイド・プロジェクトになるだろうね。

『Quantum Jelly』や『Superimpositions』はネオ・トランス(もしくはポインティリスティック・トランス)というジャンルを生み出しました。僕には最初、オウテカがトランスをやっているように聞こえましたが、あなたの音楽はダンス・カルチャーに対して批評的で、ダンス・ミュージックを現代音楽の材料として使っているという感触もあります。ご自分ではどうですか?

LS:「オウテカがトランスをやっている」っていうのはすごい褒め言葉だけど、自分ではわからないな(笑)。ダンス・ミュージックを参照することはあるけれど、そもそも関心があるジャンルではないからね。10代のころに僕が住んでいたイタリアの街ではトランス・ミュージックがすごく流行っていた。当時、僕自身はハードコア・パンクのバンドをやったりしていたんだけど、トランスのカルチャーにはずっと触れてきたし、トランスがかかっているクラブにも行ったことがある。その時は自分でそれをプレイしようとは思わなかったけどね。そういう背景があって、2010年か2011年になって、自分のなかでトランス・ミュージックを再発見したんだ。当時、一緒にトランスに触れていた友だちから情報収集したりして、トランスを研究し始めた。それで、トランスが自分が探し求めていた音楽だと気づいたんだ。ブレイクダウンからビートへの繰り返しの構造が、音楽的にとても面白いと思った。ビートで音楽的表現をするという形態自体がね。ビートを軸に、アーティストによってはとにかくアグレッシヴなトラックをつくっていたり、ちゃんと音楽理論を学んだアーティストのトラックだったら、すごく練られた構成になっていたり、色々なアプローチがなされていることを知って、すごく興味が湧いたんだ。ありとあらゆるトランス・ミュージックのトラックを何千回と聴いて、トランスとは一体何なのかを追求した。僕は「トランス・エキスパート」なんて呼ばれているけど、特別なことは何もしていない。何千ものトラックを漁って、自分で地道に研究しただけ。さっきも言ったみたいに、実は10代の頃からトランスには触れていたけど、僕はこうした音楽シーンにいても酒もドラッグもやらないから。「クラブで唯一のシラフ」って言われるぐらい(笑)。まあ、こういうシーンでは珍しいかもしれないけど、僕は音楽を研究したいだけなんだよ。だから僕自身では、自分のことを「レイヴ・シーンの覗き屋(Rave Voyeur)」だと思っているけど。

ああ、また覗きですね(笑)。あなたの音楽におけるアレグロ(パッセージの速さ)や、ひきつったような音色にはジュークやソフィー(Sophie)との共通点も多く感じました。『Quantum Jelly』とはほぼ同時期でしたけど、シカゴのジュークやイギリスで起きたバブルガム・ベースの動きには興味を持ちましたか?

LS:その質問への答えは「ノー」だね。つまり、当時そのあたりの音楽や、僕の音楽に関心があった人たちと同じ方向性での関心を持っていたわけではない。ジュークやバブルガム・ベースのシーンと繋げて考えられる理由はわかるけどね。たとえばソフィーと僕のバックグラウンドには親しいものがあって、音楽的にとても似ているとも思っているから。

トレンドを先導するかのようなタイトルをつけた“The Shape Of Trance To Come”(17)がはっきりと酩酊感を排除していたのとは裏腹に、その後のネオ・トランスはサム・バーカー(Barker名義)「Debiasing」でもバッチ(butch)“countach (k?lsch remix)”でも昔ながらのトリップに馴染むフォーマットに揺り戻しています。逆にいうとシリアスにあなたの真似をしている人はいないということにもなりますが、そうしたなか、『Scacco Matto』はアルバム全体をネオ・トランスで固めず、“XBreakingEdgeX”ではレゲエを取り入れたりと、今後の多様な方向性を予感させます。自分ではどこへ向かっていると思いますか?

LS:面白い質問だね。自分がどこへ向かっているかは、次の作品をつくっている最中にしかわからないことだと思っている。なぜ、今回のアルバムに『Scacco Matto』というタイトルをつけたかというと、音楽をつくるというのは自分のなかで、ひとつのゲームでもあるからなんだ。パワフルな音楽とのバトルのような。音楽の抽象的な側面と自分のアイディアを戦わせて、両者のバランスを見つけていくゲーム。まさに、頭のなかでチェスのゲームをしているような感覚だね。『Scacco Matto』では特に、抽象的な音と具体的な音の中立点を見つけたかった。だから全体として歌的で、メロディックなものに仕上がっている。『Quantum Jelly』や『Superimpositions』をつくっていたときの感覚に近いね。次の作品についてはまだわからないけど、ヴォーカルを入れたいとは思っているんだ。実は今回もヴォーカルを試したんだけど、最終的に気に入るものができなくて諦めた。でも、必ずまた挑戦したい。普段からヴォーカル曲はよく聴くから、それを自分の音楽に落とし込みたいんだ。その一方で、アブストラクトな長編もつくりたいなと思っているし。だから自分の方向性は色々だね。僕は自分の音楽をつくるとき、最初に音楽的なルールやリミットを決めて、そのなかでどれだけのことをやれるかを試す。可能性を広げすぎないようにするんだ。今後、どういう方向に進んでいくかを事前に考えたり決めたりすることはしないから、自分の今後の方向性についてはその時にならないと分からないな。

ちなみにあなたの運営する〈プレスト!?〉では実験音楽のリリースが多いなか、ジェイムズ・ブレイクのダンスホール・ヴァージョンといえるパルミストリー(Palmistry)の「Lil Gem」(14)をリリースしていることが目を引きます。彼の作品はどんな経緯でリリースすることになったのですか?

LS:パルミストリーとは、2012年かそれよりも前にオンラインで知り合ったんだ。「Lil Gem」は混沌としていて、異色だよね。だけどすごく良いトラックだ。〈プレスト!?〉はすごく小さなレコード・レーベルだけど、〈プレスト!?〉の仕事は気に入っているんだ。リリースする楽曲はどんなにアブストラクトで混沌としたものだとしても、そこにポップなアプローチをかけてソウルな要素を入れるようにしている。だから、ベンジャミン(パルミストリーの本名)にも、どんなにクレイジーな楽曲でも大丈夫だからEPをリリースしようと伝えた。「君の音楽は形にして残す必要がある」とね。「Lil Gem」を出した当時はまだデジタル・リリースのみというのがそんなにちゃんと一般的じゃなくてフィジカルもリリースするのが主流だったからフィジカル盤もプレスしたし。「Lil Gem」をつくった当時のベンジャミンは僕の音楽に影響を受けているから、曲にもそれが表われている。シンセ・ラインがすごく目立っていてね。だからあのEPには、僕たちが近い距離で一緒に曲づくりをしていた様子が表われていると思うよ。いまでもそうだけどね。〈プレスト!?〉からリリースした、トライアード・ゴッド(Triad God)というアーティストの作品のプロデュースをしてもらったりだとか。パルミストリーのことは誇りに思っているよ。「Lil Gem」のあとにも〈ミックスパック〉からデビュー・アルバムをリリースしたり、ディプロともコラボしたりしているしね。

 〈プレスト!?〉からは日本のファッション・ブランド、TOGAの音楽を手掛けるTasho Ishiのアルバムンドもリリースされていて、ほかにもいくつか聞きたいことがあったのだけれど、時間がなくなってきたということで、これ以上は追求できす。「プレスト」というのは、ちなみに「短時間」という意味の音楽用語で、セニの曲がせわしないこととも関係があるのかなーとか(?)。

国歌を歌ってこの状況を美化しようとする様子は僕にとってはいただけない。だけど、これを議論しすぎるのも大変だから、自分のアルバムのプロモーションと絡めてツイートすれば、シニカルで面白いかなと思ってね。

『Scacco Matto』に戻ります。“Discipline of Enthusiasm”はスタッカートを強調したピアノ曲を思わせます。マイケル・パラディナス(?-Ziq)の曲にも聞こえる”Canone Infinito”もカノンというタイトル通り声楽に発想を求めた曲かなと思うのですが、あなたにはクラシックの素養があるんでしょうか。ちなみに“Canone Infinito”はもうちょっと長く聴いていたかったです。

LS:イエスでもありノーでもある。「プレスト」という言葉はそもそもテンポを指示するクラシックの音楽用語で、(〈ワープ〉からリリースしたシングル)“XAllegroX”だってそう(=アレグロという音楽用語)だしね。自分のことをロッシーニのような作曲家だというつもりはさらさらないけれど、僕は自分の小さな世界のなかで、トラックのアレンジメントをとても大切にしている。イタリア人だから、クラシック音楽が僕の血に流れている可能性はあるね。

そろそろ、最後の質問ですね。パオロ・ソレンティーノ(Paolo Sorrentino)監督の映画『ローロ』はご覧になったでしょうか。この映画は日本人にはわかりませんが、イタリア人が観るとベルルスコーニ以前に戻ることができないイタリア人の悲しさが伝わってくるという評を読みました。それは隙間産業のようなことしかできない現状に対する不満を背景にしたもので、まさに、最後の曲のタイトルでもある“THINK BIG”という考え方がベルルスコーニの長期政権を支えたという解釈でもありました。シュプリームスをモチーフとした”THINK BIG”という曲のタイトルに込めた思いはそれに通じるものがありますか? ちなみにベルルスコーニが病院の数を半分に減らしてしまったことがイタリアで医療崩壊が起きた原因のひとつだそうです。

LS:映画は観てないし、その質問への答えは「ノー」だけど、ベルルスコー二との関連を考えると面白いね。ほとんどの人が認めたくないだろうけど、僕たちベルルスコー二・ジェネレーションはテレビ世代でもあって、常にテレビ番組とコマーシャルを目にして育ってきた。コンピュータ世代ではないんだ。テレビをずっと観てきた。子どもの頃からそうやって育ってきたから、いまでもパソコンで作業している最中もテレビをつけっぱなしにしていてガールフレンドに怒られるほどだよ。だけどそれはベルルスコーニの影響でもあるんだ。彼はすべてのテレビ局を所有していて、自分の政策を推し進める手段としてメディアを使っていたからね。たくさんの理由から、僕の音楽がベルルスコーニと関連しているとは言いたくないけれど(笑)。現状よりも高い場所に到達できると信じる”THINK BIG”という考え方、そして、ベルルスコーニが持っていたような物事に対する強い執念は目標達成のためには欠かせないものだ。その点に関しては、必要な姿勢だと思っているよ。ただ、彼がやっていたことはまったく尊敬できない(笑)。マフィアと関わりあったり、汚職にまみれたりね。

未成年と関係したりね(笑)。パンデミックの早い収束を願って、これで最後の質問です。イタリアの国民がバルコニーで国家を歌っていることに冷ややかとも取れるツイートをしていましたけれど、これに関しては批判的ということですか? 曲が差し替えられている映像が出回ったりして、文化と政治が入り乱れた現象と化しているようですが。

LS:そうだね。深く考えていないように思えたから。先週は国政について寄ってたかって批判していたのに、次の週には国歌を歌うなんてね。外出禁止や都市封鎖を美化しようとしているように思える。自分の人生についてゆっくり考えたり、本を読んだりできるから、それはいい点かもしれないけど、仕方なく外に出られないだけだからね。命の危険がある問題なわけだし。経済状況も大変なことになっている。だから、国歌を歌ってこの状況を美化しようとする様子は僕にとってはいただけない。だけど、これを議論しすぎるのも大変だから、自分のアルバムのプロモーションと絡めてツイートすれば、シニカルで面白いかなと思ってね。

ああ、そこまで考えて。まんまと乗ってしまいましたね(笑)。

Moor Mother & Mental Jewelry - ele-king

 怒りのことばはおさまらない。昨年は自身のアルバムアート・アンサンブル・オブ・シカゴゾウナルイリヴァーサブル・エンタンガルマンツにと、三面六臂の活動で大躍進を遂げたフィラデルフィアの詩人=ムーア・マザーが、ノイズ・プロデューサーのメンタル・ジュウェリーとタッグを組みバンド・プロジェクトに挑戦、初のフルレングス『True Opera』をリリースしている。
 両者によるコラボは今回が初めてではなく、2017年に一度「Crime Waves」なるEPが送り出されているが、エレクトロニックなエクスペリメンタル・ミュージックだった前作とは打って変わり、今回は彼らの音楽的ルーツのひとつであるパンクにぐっと寄った、荒々しいサウンドに仕上がっている(ムーア・マザーがヴォーカルとギターを、メンタル・ジュウェリーがドラムスとベースを担当)。2020年の見逃せないリリースのひとつ、ふたりの新たな船出に注目しよう。

artist: Moor Jewelry
title: True Opera
label: Don Giovanni
release date: April 20, 2020

Tracklist:
01. True Opera
02. No Hope
03. Look Alive
04. Judgement
05. Eugenics
06. Working
07. Westmoreland County
08. Le Grand Macabre
09. Boris Godunov
10. Shadow

Rainbow Disco Club 2020 - ele-king

 リボ核酸(RNA)、それ自身では生きられないが生き物に寄生することで生きる新型のウイルスの影響によって、ことごとくライヴおよびクラブは休止を余儀なくなされている。この状態は永遠に続くわけではないが、しばらくのあいだ(ワクチンが普及するまでは)以前のようには行動できないだろう。こうしたシビアな状況のなかで海外でも国内でも「じゃあ、いまこの条件でできることをクリエイトしよう」という前向きな動きが出て来ている。ぼくはもう歳が歳なので夜更かしはできず、RDJのライヴもNOのライヴも見逃してしまったが(NOはあとから見ました)、RDCは国内イベントなので、しかとリアルタイムで楽しませていただきました。

 Rainbow Disco Club、通称RDCは、日本がほこるDIYフェスティヴァルのひとつで、音楽もさることながら環境のクオリティをふくめ海外でも評価が高く、またele-kingでもかねてからリコメンドしているのだけれど、今年は周知のように早々と開催を断念し、配信による開催に切り替えていた。
 とはいえ、RDCにリピーターが多いのは、なんといってもあのロケーションであり、あの場のヴァイブなので、ぶっちゃけ言えば、試みは素晴らしいが実際どうなんだろうと訝ってはいた。ドネーション感覚で、というのはある。あれだけ楽しい思い出を作らせてもらったフェスに対して感謝があるし、少しでも赤字の足しになってくれればという思いもある。
 しかし、である。ぼくのように妻子がいる立場の人間が、そして土曜日の昼から家でダンス・ミュージックを浴びながらひとりでダンスするというのは、これ簡単そうに見えて難儀なことなのだ。ただでさえ自粛生活のなかで家人のストレスは上昇している。「土曜日ぐらい、家の掃除を手伝えや」というオーラが午前中の段階ですでに発せられているのである。これが日常生活のなかで“体験する”ことの難しさだろう。いきなり自分ひとりだけ非日常化するわけにはいかないし、じゃあ、家族全員で楽しめば良いという意見もあるろうが、世界はピースな家庭ばかりではないということだ。

 そんなところに長年の友人である弘石雅和からショートメールが届く。「いま瀧見さんですよ~」、時計を見るとすでに14時過ぎ。外は暴風雨で、寒い。だが、ぼくはいよいよ覚悟を決めた。コンビニでビールを買い込み、部屋を閉めて、チケットを購入しチューンイン。弘石君にメール。「パーティに間に合ったぜ!」
 こうして長い1日がはじまった。


(こんな感じの画面です。瀧見憲司には間に合ったぜ~)

 弘石雅和からメール。画面では「俺を見ろ」と言わんばかりに、すでにクラフトワークのTシャツを着て部屋のなかで踊っている(笑)。すげー、この男もうすっかり入っていやがる。最初ぼくは、DJのプレイするダンス・ミュージックを部屋で鳴らしながら(PCをDJミキサーに突っ込んでオーディオ装置で聴いてました)、ただぼんやりと座っていた。音質はかなり良かった。ちゃんとPAの方がミキシングしているのがわかる。また、当たり前かもしれないが、やはりどうしても画面を見てしまう。画面では、すべて録画だが伊豆稲取の山の中腹になるいつもの場所でDJたちがプレイしている。いつもの山、空……もっと山とか空とか写してーと思いながら椅子に座ってダンス・ミュージックを聴いていると、いつの間にだんだん気持ち良くなっていった。で、ここあたりで弘石雅和とZOOMで話すことに。


(自室でひとり踊っている弘石氏。U/M/A/A主宰、ケンイシイやジェフ・ミルズなんか出してます)

 「けっこう良いね」「いま何飲んでるの?」「俺レモンサワー」「俺ビール」といったどうでも良い話からコロナのシリアスな話、いつの間にか最近の身の上話までして、「ちょっと冷蔵庫までビール取ってくるわ」などと言ってまた音楽に集中したり、「こりゃ、ヴァーチャルなフェス空間作れるかもな」なんて言い合ったりして、どんどん時間が過ぎていった。DJがWATA IGARASHIからNOBUのあたりで、それまでの寒々しい暴風雨から一転、空から晴れ間が見えはじめ東京地方はいっきに青空。「うっひょー」「やっぱ天気って重要だね」
 やがてあたりは暗くなり、さらにパーティのテンションは上がっていく。「弘石君、この画面に出ているチャットに書き込みたいんだけど、どうすればいい?」「ツイッターのアカウントで書けますよ」「俺、ele-kingの公式アカウントしかない」そんな会話をしながら、どうしてもチャットに書き込みしたい衝動が抑えられなくなってきた。これは、クラブやライヴハウスでテンションが上がると叫んだり奇声を上げたくなるあの衝動と同じだ。いまの思いを伝えたい──我慢できずにele-kingの公式アカウントで書き込みと、「弘石君もチャット書き込めよな」と思いきり同調圧力を加える。ノリの良い彼はしっかりと書き込み、「もっと場を盛り上げようぜ」と逆に煽ってくる。「場って何だよ、場って(笑)」「この場ですよ」「ああこの場ね」……
 すっかり夜で、DJはLICAXXX。「おお、テクノだねー」「テクノだねー」……、ホントにどうでもいい会話(酔っぱらいトーク)をしつつ、我々はお互い踊り続けている。


 こんなシチュエーションもいまだけなのだろう。いや、意外とこれはこれで面白いし、パンデミックが収まっても根付く可能性だってある。そう、実際体験してみて思ったのは、それだった。いや、もちろんこれを伊豆の稲取の山の中腹の芝生の上での経験と比較してはダメです。やっぱダンス・ミュージックはダンスフロアでしょうとか、そういう話ではない。これはそれとは別モノとしての楽しさがあるということを発見したと。そう、いまこの条件のもとでもできることはある。不安は星の数ほどあれど、使い慣れたフレームがいま使えないなら新たなフレームをクリエイトすればいい。それがアートってもんだ。ブライアン・イーノがそんなようなことを言っていた。

 さて、弘石雅和はすごい男だ。夜も深まりはじめた頃、その日の夜同時にやっていた「BLOCK. FESTIVAL」に行ってみないかと誘ってきた。「ちょうどいまチャラが歌ってるんだ」という彼はすっかり家でトランスしている。(失笑しながら)「ごめん、俺は腹減った。風呂に入って、風呂でトランスさせてもらうよ」「そうか、わかったよ、いつか野外でトランスしよう」「それまで感染しないように気をつけよう」
 そんなことを言いながら弘石君と別れて、ぼくは夕食を食べて風呂に入った。それからベランダに出て外気浴をしつつ、PCの画面のなかのCYKを見た。夜の22時過ぎ。楽しい1日だった。ありがとう弘石君、そしてRDC。可能性を見せてもらいました。


(LICAXX、盛り上がりましたね~。隣にはチャットが書き込めて、みなさんと一緒にいるような気持ちになります)

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