「IR」と一致するもの

5年目のJOLT in Japan ! - ele-king

 熱心な弊媒体読者はJOLTの見出しに一昨年の〈JOLT TOURING FESTIVAL 2015〉を思い出されたかもしれない。PHEWと灰野敬二+大友良英がトリを飾った豪華きわまりないあの2デイズは、現在進行形の音楽の切っ先の鋭さをうかがわせただけでなく、日豪両国のシーンの厚みというか深みというか、そのようなものを垣間見せた。オーストラリアのソニックアーツ組織「JOLT Arts INC.」の継続的な活動が成熟をみせた場面だったと記憶するが、2017年のいま、JOLTの試みはさらに加速している。
 日本では5年目に入ったJOLTはこのたび、女性アーティストに特化したプログラムを披露する。豪州からは、JOLTのディレクターでもあるジェイムス・ハリック、そのハリックが率いるボルト・アンサンブルからダブルベースのミランダ・ヒルとチェロのカーウェン・マーティンが本ツアー用の編成で来日。メルボルンのノイズ・トリオ、タイパン・タイガー・ガールズのギタリスト、リサ・マッキニーは単独でドローン以後のフィードバック・ノイズを聴かせるという。迎え撃つ日本勢は箏の八木美知依とヴォイスのヒグチケイコ。箏と身体に潜在する響きをあますところなくひきだす両者のパフォーマンスが、オーストラリア勢とどうかさなりあうか、ここでしかお目にかかれない瞬間を目撃できるのが、何度もいいますがJOLTのたのしさでありおもしろさです。前日には野毛アンダーグラウンドと共催で、横浜のツァルトでも関連イベントもあるようです。両日ともぜひ! (松村正人)

2017年4月14日(金)
JOLT Presents The Book of Daughters
六本木SuperDeluxe

開場:19時/開演:19時30分
料金:予約2300円/当日2800円(ドリンク別)
出演:
八木美知依(electric 21-string koto, 17-string bass koto, electronics, voice)
BOLT ENSEMBLE(Miranda Hill: bass, Caerwen Martin: cello)
Lisa MacKinney(guitar, feedback)
James Hullick(voice, electronics)+Keiko Higuichi(voice/electronics)
Akiko Nakayama(Alive Painting)
DJ Evil Penguin
https://www.super-deluxe.com/room/4285/

2017年4月13日(木)
Noge Underground and JOLT Presents The Book of Daughters
桜木町ZART(横浜市中区花咲町2丁目67-1)

開場:19時/開演:19時30分
料金(当日のみ):1000円
出演:
a qui avec Gabriel(accordion)
Lisa MacKinney(guitar, feedback)
BOLT ENSEMBLE(Miranda Hill: bass, Caerwen Martin: cello)+Cal Lyall(banjo)


八木美知依


Lisa MacKinney

special talk : BES × senninshou - ele-king


BES - THE KISS OF LIFE
ILL LOUNGE

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes


仙人掌 - VOICE
Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 BESと仙人掌というふたりのラッパーがいなければ、少なくとも2000年代中盤以降の東京の街から生まれるラップ・ミュージックはまた別の形になっていただろう。ふたりは恐縮して否定するかもしれないが、これは大袈裟な煽りではなく、厳然たる事実である。BESと仙人掌はそれぞれ独自のラップ・スタイルを発明して多くのフォロワーも生んだ。どういうことか?

 作品や彼らのキャリアや表現について個人的な論や説明を展開する誘惑にも駆られるが、ここでは多くを語るまい。ひとつだけ端的に言わせてもらえれば、余計な飾りつけなしの、1本のマイクとヴォイスとリズムのみでラップの表現を深化させたのがBESと仙人掌だった。ここにその両者の対談が実現した。ふたりを愛するヘッズはもちろん、彼らをまだよく知らない『ele-king』読者の音楽フリークにもぜひ読んでほしい。そして、仙人掌が2016年に発表した一般流通として初となるオリジナル・ソロ・アルバム『VOICE』、BESが3月に出したサード・アルバム『THE KISS OF LIFE』を聴いてみてほしい。『THE KISS OF LIFE』のプロデューサー、I-DeAにも同席してもらった。ふたりのラッパーの物語は、今年20周年をむかえた池袋のクラブ〈bed〉からはじまる。


ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。 (BES)

BES from Swanky Swipe feat. 仙人掌, SHAKU“Check Me Out Yo!! Listen!!”

ふたりの最初の出会いをおぼえてますか?

BES:〈bed〉ですね。仙人掌は昔からラップが上手くて、初めてライヴを観てすげぇ食らったのをおぼえてる。それで気づいたらウチに来て遊んだりするようになってた。メシア(the フライ)がまだDOWN NORTH CAMP(以下、DNC)にいたときで、CENJU(DNC)もTAMUくん(DNC)もいた。

仙人掌:最初に遊んだのはその4人だったかもしれないっすね。SORAくん(DNC)もちょっといたと思う。そのとき俺は〈bed〉でライヴしてて、気づいたらタカさん(BES)が「そうとう酔っぱらってらっしゃいますね」みたいな感じでいきなり肩組まれて、「お前、とにかくウチ来い」って。俺、まだ高校生だった。

BES:ははははは。17とか?

仙人掌:そうっすね。タカさんの自由ヶ丘の家にいそいそと遊びに行って、それからホント全部教えてもらいましたね。

BES:教えてもらいましたよ、俺も。ENYCEの読み方とかね。俺が「エニシー」って読んでたら、仙人掌に「いや、違います。エニーチェです」って言われてさ。

仙人掌:ははははは。〈bed〉で〈ELEVATION〉(2001年にスタート、2012年にファイナルを迎えた)っていう長く続いたパーティがあったんですけど、そのパーティの第4月曜日にSWANKY SWIPEと俺らが出てたんですよね。当時はまだSWANKYじゃなくて、SPICY SWIPEって名前でやってましたっけ?

BES:そうそうそう。

仙人掌:SWANKY SWIPEに名前が変わったころになると、〈bed〉の人たちはみんな「ヤバいラッパーはBESでしょ!」みたいな感じだった。DJのサイドMCでバリバリカマしているタカさんをフロアで観てましたね。

BES:〈ELEVATION〉がはじまる前に〈bed〉で〈URBAN CHAMPION〉(1999年スタート、現在まで続く)っていうパーティがあったんですよ。そこで“煽りMC”って言うんですか? それをやりまくって盛り上げまくってた。そこにPorsche(SWANKY SWIPEのDJ)もDJ MOTAI(〈URBAN CHAMPION〉のオーガナイザー)もいた。あとIKDくん(NOISE2 SOUND SYSTEM)もいたね。

仙人掌:Gatchaくん(〈bed〉でおこなわれているパーティ〈the River〉のオーガナイザー)もいましたね。〈bed〉がとにかくヤバいラップの見本市だった。そのなかでSWANKYは俺にとって特別だった。SWANKYが新曲をやると、当たり前にフロアのいちばん前に行っていた。突発的に出演者同士がライヴでヴァースに混ざったり、次のライヴでサイドMCやりあったり普通にありましたね。

BESさんの曲のなかでいま思いつく印象的な曲はありますか?

仙人掌:1曲にしぼるのはなかなか難しいですね。ただ、『Bunks Marmalade』(SWANKY SWIPEのファースト・アルバム。2006年)の前にもたくさん曲があって、“Check Me Out Yo!! Listen!!”でも当時の曲のフックを引用させてもらったりしてますね。ライヴもいちばん観ていたし、当時の印象が強いんですよね。タカさんもEISHINくん(SWANKY SWIPEのビートメイカー/ラッパー)もステージでふらふらで壮絶でしたね。

BES:ははははは。

2006年にSEEDA & DJ ISSOの『CONCRETE GREEN.1(改)』がリリースされて、あのコンピ・シリーズが本格的に動き始めますね。そういうなかで、BESと仙人掌というラッパーはそれまでの日本語ラップとは異なるラップのスタイルを打ち出していったと思うんです。自分たちのスタイルをどのような意識で作り上げていきましたか?

仙人掌:『CONCRETE GREEN』は俺らにとっては“第2段階”って感じなんです。その前があるんです。いちばん最初にタカさんの家でラップの話をしているときに、タカさんが強調していたのは「とにかくノれるラップ、フロウなんだよ」ってことです。「いかに“フロウを崩せるか”なんだ」って。それで、ブーキャン(ブート・キャンプ・クリック)とかいろんなダンスホール・レゲエとかを見て、聴いて、学んでいった感じですね。

BES:昔、レゲエの現場に行ったね。バスタ(・ライムス)もメソッドマンもレッドマンもフージーズもみんなレゲエを使うじゃないですか。俺もレゲエが大好きだったからヒップホップとレゲエのふたつを押さえときゃ間違いないと考えてた。だから、ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。あと、SIMONだね。「こういうことするヤツいた! 見つけた!」って。

仙人掌:SIMONは俺と同い年で、18、19のころに出会ってるはずですね。SIMONも当時からずば抜けてヤバかった。

BES:USの流行にただ流されるんじゃなくて、自分の好きなことをやっていたよね。〈SON〉(〈SON OF NINJA〉という〈ニンジャ・チューン〉傘下のレーベル)っていうアンダーグラウンド・レーベルがあって、そういうレコードを〈ギネス・レコード〉とかで買ったりもしていたね。

仙人掌:〈ギネス・レコード〉で日本人のブレイクビーツを2枚買いしたりもしてましたよね。

BES:知らないレコードでも試聴して「かっけー! これ2枚買いだ!」って買ってDJにライヴで2枚使いしてもらってたね。

仙人掌:「このビートはヤバイ!」って反応したときのタカさんの体の動きはすぐわかった。SWANKY SWIPEはライヴで使ってるビートも他と違ってた。俺らの周りでネプチューンズやカニエ、ジャスト・ブレイズなんかにいちばん最初に反応してたのもタカさんだった。ユニークなビートに対しての嗅覚がありましたね。ブーキャンとかの裏ノリを維持しつつ新しいビートのフォーマットにハメていくフロウを作り出していったラッパーは、俺の知る限りでは間違いなくタカさんですね。EISHINくんの存在もデカかったですよね。

BES:超デカかった。EISHINは俺よりもアンテナを広げてるヤツで、のちにヒップホップ以外も大好きになっていって、ソウルを聴きながらチルしてゆっくりする時間を設けたりするようなヤツだった(笑)。ネプチューンズがプロデュースしたバスタの曲が流行ったときにEISHINとふたりでトライトンでビートを作ったりもしたね。

仙人掌:EISHINくん、J・ゾーンが超好きでしたよね。何かと言うと、「J・ゾーン、聴いたか?」って言っていた記憶がある。そういうセンスがすごく面白かった。

BES:グレイヴディガズのアルバムに入ってる、(体を捻らせながら)こんなんなっちゃうようなリズムのビートが超好きで、そういうのをDJでかけたりしてたよね。

仙人掌:俺、EISHINくんとタカさんとの会話でいまでもおぼえていることがあるんですよ。Shing02が『400』(2002年)を出したときに、EISHINくんが「Shing02のラップはキレてる。上手いよね」みたいなことを語っていたんですよ。そういう、変わったリズムへの嗅覚のあるEISHINくんのShing02の聴き方とかも新鮮だった。ラップやリズムの捉え方が圧倒的に独特だった。

BES:俺ら、韻の数とか数えてたしね。例えば「あいう」の母音の単語でヴァースをはじめたら、ヴァースの最後も「あいう」の母音の単語をもってくるとかね。そういう作業もしていたから当時はラップを作るのに超時間がかかった。

SEEDA feat. 仙人掌“山手通り”

SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。 (仙人掌)

ふたりが共作した曲はいくつもありますが、いちばん最初はどの曲でしたか?

仙人掌:盛岡のDJ R.I.Pさんとの曲ですね。

BES:あれ? 何だっけなぁ。俺、超ド忘れしてるぞ(笑)。

仙人掌:未発表曲だけど、俺も盛岡の人たちもみんな持ってますね。IKDくんの家で録りましたね。

BES:今度聴かせて。俺が当時の仙人掌でおぼえてるのはファボラスの曲のトラックに乗せてラップしてて超かっこよかったことだね。

仙人掌:ああ、ありましたね。それはたしか、〈ELEVATION〉の6周年か7周年のときに作ったエクスクルーシヴ音源ですね。あのときはエクスクルーシヴをかましまくってましたよね。やっとラップを録ることをおぼえたぐらいじゃないですか。

BES:そうそうそう。いまはRECの仕方もリリックの書き方も当時とは変わっちゃってるけど、あのときが基礎になっているね。『CONCRETE GREEN』ぐらいからちょっとスタイルや描写の仕方も変わって、スキル的にも上手くなっていった。

仙人掌:『CONCRETE GREEN』からタカさんもラッパーとして加速していったと思う。レコーディングの仕事も増えていきましたね。〈bed〉の人たちだけじゃなくて、メジャーでやっているようなアーティストからも「BESとSWANKYがヤベえぞ」という雰囲気が出てきた。そこで俺はちょっとさびしい気持ちになるというね(笑)。

BES:ははははは。俺も行く先々でDNCの宣伝をして歩いてたんだよね。「仙人掌っていうヤバいラッパーがいる」ってさ。

仙人掌:SEEDAくんを紹介してもらったのもタカさんの家でしたね。元々SEEDAくんはTAMUくんを昔から知っていて(SEEDA、TAMU、EGUOでMANEWVAというグループを組んでいた)、俺が会ったのはそのときが初めてだった。

BES:SEEDAと仙人掌はその後“山手通り”(SEEDAのメジャー・デビュー作『街風』収録。2007年)を作ったりしたよね。

仙人掌:そうですね。タカさんにはいろんな人を紹介してもらった。

BES:あのカナダ人に会ったことおぼえてる?

仙人掌:え? え? ああぁぁぁー、わかります! うわー!(笑)

BES:俺とSEEDAといっしょに会いに行ったでしょ。

仙人掌:あの双子のラッパーの! 彼に「ラップ持ってないか?」って訊いたら、「ラップ? いまやってやろうか?」って答えてきて、「違ぇ、違ぇ、そのラップじゃなくてサランラップだよ!」って(笑)。

BES:そんなこともあったね(笑)。

仙人掌:タカさんがマックスで危ないときにもいっしょにいたりもしましたしね。3、4日寝てないのも普通だったり、テーブルにアサヒのビールの空の缶がブーーーワーーーッと積んであって、灰皿もブーーワーーーッて山盛のタバコだったり。

BES:鼻地獄だったみたいっすよ。

仙人掌:ははははは。そういうダークな時期もありましたね。タカさんとラップしたり遊んでいるうちに謎の状況に巻き込まれていっしょにタクシーに乗って向かうと、「俺がいるべきじゃない場所にいるかもしれないぞ。ヤベえ……」ってこともありましたね(笑)。そういう意味でもホントにいろんな貴重な経験させてもらいましたよ。タカさんはそういう時期を経て、『REBUILD』(2008年)をリリースしていったんですよね。

BES:『REBUILD』を出したあともまた俺はいろいろ食らっちゃったけどね(笑)。

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俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。 (仙人掌)

SEEDA feat. BES, 仙人掌“FACT”

『CONCRETE GREEN』と言えばいわゆる「ハスリング・ラップ」をシーンに認知させて、定着させたコンピでもありましたね。一方で、BACHLOGICがプロデュースした、BES、仙人掌、SEEDAの共作曲“FACT”(『CONCRETE GREEN.3』収録。2006年)も重要な曲ですよね。

BES:そのころの俺はもうファックドアップでしたね。金があるときとないときが激し過ぎて山あり谷ありで大変だった。子どももできて育てなくちゃならなかったですしね。“FACT”を作ってるときはまさにそういう時期ですね。あの曲は現実を目の前にして困惑する自分も出ている。

仙人掌:あの曲をI-DeAさんの家で録ってるときにちょうど子どもが産まれそうな時期でしたね。「(録音中に)嫁が産気づいちゃったらすみません」みたいなことをSEEDAくんに話してたのをおぼえてます。

BES:“FACT”は思い浮かぶリリックをそのまま書くっていうテーマがあった。『REBUILD』に入ってる仙人掌との“Get On The Mic”は、俺が「そろそろコレじゃダメだ。マイクとラップで生きていこう」という気持ちで作った曲でもありましたね。

仙人掌:だから実際、ハスリング・ラップがどうこうでもないと思うんですよ。SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。リリックの言葉遣いに迷っていたり、そのころになるともう韻の数を数えてやっていたら……

BES:追っつかないよね。

仙人掌:そう、ぜんぜん追っつかないじゃないですか。そういうスピードが『CONCRETE GREEN』1枚1枚の、あのヴォリュームにもなってると思う。とにかくラップをビートに乗せて、ヤバい表現があって、それが作品なんだっていうラップとヒップホップの捉え方なんですよ。ホントにずーっとフリースタイルしてましたからね。それで作品も作っていく。そういう物事の捉え方とアウトプットとスピードが俺には衝撃的だった。

BES:しかも世に出す作品としてのクオリティが問われはじめるときだよね。

仙人掌:ホントにそうですね。俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。もちろんこれからも。

BES:もう最初に会ったときにすでに認めてるけどね。

“FACT”はI-DeAさんの自宅スタジオで録音したということですけど、当時のことをおぼえてますか?

I-DeA:俺が中目黒に住んでいたときの部屋に2時間おきとかにラッパーが来て録ってました。『CONCRETE GREEN』の1、2、3あたりのSCARS関連の録音は全部俺ですよ。アカペラをインストに乗せて、エディットして、別バージョンを作ったりしていた。でも、ぜんぜん金が入ってこなかった(笑)。「遊びましょうよ」って連絡があって『ウイニングイレブン』をやって、俺が負けたらタダでRECしてましたから(笑)。そうやってRECしていって気づいたら『CONCRETE GREEN』が出てた。『SEEDA'S 27 SEEDS』(2005年)なんかもまさにそうですね。

ラッパーたちの録音の仕方とか、曲で印象に残っていることってありますか?

I-DeA:DNCやSD JUNKSTA周りのラッパーと一気に知り合って、彼らが入れ代わり立ち代わり俺の自宅スタジオに来てひたすら録音していったから、その記憶しかないんですよね。あと、ビートがかかるとみんなでずーっとフリースタイルしている光景は鮮明におぼえてる。俺はラップしないから、「うぜぇなあ」とか思いながら見てましたけど(笑)。でも、いま10年ぐらい経ってあらためて思うのは、お世辞抜きに『CONCRETE GREEN』に入ってるラッパーたちのクオリティやスキルが高かったことですね。関係も近くて当時はそのことにあんまり気づいてなかったけど、レベルが高かったんだなって。

ちょっと前に田我流くんに『別冊カドカワ DIRECT』という雑誌の日本のラップ特集で取材させてもらったんですよ。仙人掌くんも同席してもらって。そこで田我流くんが、『CONCRETE GREEN』はひとつの「ムーヴメント」だったと言っていて、「いまの俺らがあるのは、『CONCRETE GREEN』の勢いがあったから。いままであのジェットコースターの勢いに乗ってやってきたと言っても過言じゃない」って強調してたのがすごく印象的でした。

BES:俺もそうっすね。それに乗っかった感じですよね。当時はずっとみんなと遊んでいたんですけど、生活が変わればサイクルも合わないし遊ぶ時間もなくなる。だから、いま会うのは〈bed〉ですよね。そういえば、当時、SCARS全員が俺らの下でワチャワチャ遊んでた高校生の卒業式のアフター・パーティみたいな会に呼ばれて行ったことがありましたね。親御さんもいて、「これでどうやっていつも通りライヴしろっていうの?」って雰囲気だった。案の定ライヴ後にシーンとなりますよね。親御さんが「いったい、これは何なの?」みたいな顔してたな(笑)。

一同:だははははっ。

辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。 (BES)

JUSWANNA feat. BES & 仙人掌“Entrance”

BESさんは、「勘繰り」や「バッド・トリップ」の複雑な精神状態をラップの表現に落とし込んで、それを他に類を見ないひとつのスタイルにまでしましたよね。

BES:それをやると絡まれるから誰もやらないんですよ(笑)。“かんぐり大作戦”を作って実際に3、4人に絡まれてますしね。

仙人掌:ヤバい(笑)。

BES:まあ、ハスってると勘繰りがたぶんすごいっす。みんなそうだと思います。

勘繰りって物事の裏の裏まで読んでしまうことだと思うんですけど、本人が意図しないものも含めて、そのことによってラップの中にダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングといくつもの意味が発生していってそれが独特のドープさになったのかなと思うんです。BESさんと同じ経験をしていなくても、聴く側はそのラップからいろんな想像力を喚起させられる余地を作るというか。

仙人掌:たしかに。それはまさにそうかもしれないですね。

しかも、スラングはあったりしますけど、特別に難しい言葉や単語をそこまで使わないですよね。

BES:そうですね。国語辞典を引いたりしていたのは初期だけですね。パトワ語の辞典も引いてましたね。でも、辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。

仙人掌:タカさんの表現はアメコミっぽい部分もあると思うんですよ。俺とメシアくんとタカさんで作った“Entrance”(JUSWANNA『BLACK BOX』収録。2009年)もそうですよね。現実をただありのままに描写しているんじゃなくて、自分たちが何かと格闘しているというある設定を頭のなかに描いてラップしたりしている。それで、あの曲の最後に「火のついたマイク飛ばす」って表現が出てくる。

ああ、なるほど。

仙人掌:やっぱり人と違う言語感覚がありますよね。例えば、金色(キンイロ)をあえて金色(コンジキ)って発音することで言葉のハネやリズムを良くするとか、そういう感覚を当たり前につかんでるんですよね。仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。俺が最初観たときからそういうセンスや感覚がずば抜けていたんです。

BES:ありがとうございます(笑)。仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。

仙人掌:ははは。それはホントに勘弁してくれって思いますけどね(笑)。

仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。 (仙人掌)

仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。 (BES)

仙人掌 feat. ISSUGI & YUKSTA-ILL“STATE OF MIND”

それぞれの最新作を聴いてお互いどんな感想を持ちましたか?

BES:仙人掌は選ぶトラックがやっぱりオシャレだなっていうのはありますよね。

仙人掌:タカさんの選ぶビートは俺にはつねに驚きがありますね。『THE KISS OF LIFE』もかなりヴァリエーションがあるっすよね。

BES:そうだね。作り始めたときは振れ幅があってまとまりのないアルバムにしようと思って。最終的には起承転結のついたアルバムとしてまとまっているけれど、まずはそこまで意識しないで曲作りをしようと思った。次に作る曲のことを考えながらいま作ってる曲をやらないようにした。まず、目の前にある曲に対して思ったことを書いて、完成したら次の曲を録る。そうやって作ったね。(I-DeAを見ながら)先生もそれを手伝ってくれましたね。昔からレコーディングのときに的確なアドバイスをいただいているんで。

仙人掌:B.T.REOくんのビートの曲(“ピキペキガリガリ”)、おもしろいっすよね。ディストーションがかかったようなミックスにしてますね。あれは自分のアイディアですか?

BES:あれは先生のアイディアでしたね。

I-DeA:あれはBESくんのアイディアじゃなかったでしたっけ? BESくんがそういう感じにしたいって言ってたと思う。

BES:もう忙し過ぎておぼえてないっすね(笑)。

一同:ははははは。

MVもアップされている“Check Me Out Yo!! Listen!!”のRECはどうでしたか?

仙人掌:ビートが決まるのもRECも早かったですよね。ふたりでMalikのビートを聴いて「これだ!」って決めて、スタジオ行く前に駅前のマックで1時間ぐらいでリリックも書いた。即行作らないと緊張するんですよ。これまでタカさんと曲を作るとき俺のほうが待たせたこととか多いから。俺も無意識に力が入っちゃうんですよ。でも、俺、タカさんとやるときはラップ、キレてると思うっすね。

BES:たしかにキレキレですね。この曲のアナログも出しますよ。

仙人掌:だから、タカさんとやるときは「このフロウで食らわしてやろう」みたいな気持ちっすね。

SHAKUもかっこいいですよね。

BES:かっこいいっすよね。JOMOさん(〈bed〉のマネージャー/ヒューマンビートボクサー/DJ)に「最近〈bed〉でいい若いラッパーいます?」って訊いたときに名前が挙がったのがSHAKUだったんですよ。自主でCDも出しててかっこいいんですよ。今日、持って来れば良かったな。

仙人掌:このアルバムもそうだし、『REBUILD』も『Bunks Marmalade』も何がヤバいって、ほとんどのメンツが〈bed〉で完結してるんですよ。そうやってフッドを上げることはヒップホップのなかでいちばんかっこいい行為だと思うんですよね。それは何にも代えがたい行為でもあるし、そういうタカさんを尊敬してますね、俺は。

BES:ラッパーとしてのノウハウをおぼえていろんな勉強をして、お世話になってきた場所が〈bed〉だからね。すべてのきっかけとなったのが、俺はあそこだから。俺のホームなんですよ。だから、リリパは〈bed〉でやるって決めてる。今日もこれから〈MONSTER BOX〉でライヴがあるしね。

仙人掌:今日あらためて、普通に、冷静に、タカさんとこうやって話せるの、自分的にヤバかったです。ありがとうございました。

仙人掌“Be Sure”

Stormzy - ele-king

 ロンドンのバッド・ボーイ、Stormzy のギャングスタ・ラップは強さと弱さを曝け出す。

 ロンドンの地下鉄のいたるところに、真っ黒の最後の晩餐のポスターを見る。〈#MERKY〉 という Stormzy 自身のレーベルから、『Gang Signs & Prayer』(以下、『#GSAP』)がリリースされ、巨大なジャケット・ポスターがロンドンの地下鉄のプラットフォームに貼られていた。しかし、そんな「メジャーな」アルバムのタイトルが「ギャング・サインと祈り」というのもかなり意味深である。
 Stormzy はリリースはミックステープ作品を除けば、5枚のシングルのみで、初のスタジオ・アルバムである。公園でラップしたビデオ“Shut Up”、Stormzy のお母さんまで登場する“Where You Know Me From”など凝ったミュージック・ビデオで人気を獲得してきた。そして発表された『#GSAP』は、彼の人生そのものを描こうとする野心に溢れている。

 アルバムの序盤、“First Things First”はこのアルバム全体のイントロにもなっている。

 一言あるカラード(意:有色の)のブラザー
 だが、スマッシュするぜ
 俺が銃をぶっ放そうとするときに逃げるんじゃねぇぞ、
 俺たちが祈りを捧げる前には、ギャング・サインがあったんだ

 A coloured brother with a bone to pick
 But I still get to gunning, don't be running when I bang mine
 Before we said our prayers, there was gang signs (Gang signs)

 ギャングが用いるハンドサインである「ギャング・サイン」と祈りがどのような関係を結んでいるか物語る。
 ギャングスタで暴力的な一面を見せる一方で、彼は自分の弱さも曝け出す。

 お前が彼女と喧嘩している間に、俺は鬱と戦ってたんだ

 You was fighting with your girl when I was fighting my depression, wait

 彼はこのラインで、単にマッチョなゲームや時間を無駄にすることに没頭するMCではないと宣言する。彼自身を曝け出すこと、そしてそれを克服したことをラップすることで、彼の本当の強さを獲得する。続く“Cold”、Ghetts(ゲッツ)をフィーチャーした“Bad Boys”、そしてグライムのヒットメイカー Sir Spyro のプロデュース・シングル曲“Big For Your Boots”は一貫して「俺の方が優れている」というテーマを、コミカルかつストレートにラップしている。MCの聞き取りやすさは、エンターテイナーとしての成長を示している。チキン・ショップでラップする姿は、リアルで面白くもある。

 6曲目のインタールード以降は、彼のストーリーがより前面に出る。Kehlani(ケラーニ)との“Cigarettes & Cush”では、Lily Allen のバック・コーラスとともに「俺が遅れて電話を取れなくてごめんね」と優しく謝り、“21 Gun Salute”では友の死にマリファナとともに祈りを捧げる。“100 Bags”ではお母さんへの愛と感謝を伝える。

 「ママは10万ポンドを見たことがなかったかもしれないけど、今の俺なら100個のバッグを買ってあげるよ」

 'Cause mummy ain't never seen a hundred bags Now I'm like 'Mum, buy a hundred bags'

 14曲目で伝説的なギャングなグライムMC Crazy Titch のシャウト(終身刑に服役中で、なんと7年ぶりに声を届けてくれた)から、Stormzy のヒット曲“Shut Up”になだれ込む。アルバムの最後に作られたという、“Lay Me Bare”では、

 銃を取り主張する、痛みを撃ち、恐怖を殺す
 死ぬ前には祈りの言葉を捧げる。

 Grab this gun and aim it there
 Shoot my pain and slay my fear Before I die, I say my prayer

 アルバムのタイトル「ギャング・サインと祈り」は、“First Things First”とのコントラストでさらに意味深いものとなる。ギャング・ライフとの決別、亡くなった古き仲間への祈り、鬱の克服、Stormzy は『#GSAP』でその全てをグライムというアートフォームで表現している。

Throbbing Gristle - ele-king

 ダニエル・ミラーは自分の趣味に忠実な人間で、〈ミュート〉はこのたび、バンドの協力のもとスロッビング・グリッスルの全カタログをリイシューすると発表した。
 フルクサスのパフォーマンス・アートないしはメール・アートの影響下、1969年から1970年代のロンドンのアンダーグラウンドにおける伝説となったアート集団、COUMを前身にもつスロッビング・グリッスルは、セックス・ピストルズがデビューした1976年、彼らとは別の場所で、翌日タブロイド紙を激怒させることになる、過激なポルノと、そして血と小便と嘔吐にまみれたショーを試みていた。そして同年、インダストリアル・レコーズを立ち上げて作品を発表していく彼らだが、それらは後のエレクトロニック・ミュージックにおいて大きな影響を残すことになる……という話は電子音楽が好きな人にはよく知られている。
 今回再発されるのは、代表作として知られる以下の4枚+ベスト盤1枚+近年の成果2枚。
 『The Second Annual Report』(’77年)
 『D.O.A. The Third And Final Report』(’78年)
 『20 Jazz Funk Greats』(’79年)
 『Heathen Earth』(’80年)
 『Greatest Hits』(’80年)
 『Part Two The Endless Not』(2007年)
 『Thirty-Second Annual Report』(2008年)
 まずはApple MusicとSpotifyでも配信され、ボックス・セットや各アルバムのリイシューが予定されている。


Donato Epiro - ele-king

 〈ルーピー〉は、〈4AD〉のA&R、サミュエル・ストラングが設立したレーベルで、〈サブテクスト〉からのリリースでも知られるFISのアルバム『ザ・ブルー・クイックサンド・イズ・ゴーイング・ナウ』を、2015年に送り出している。まさに現在、注目すべきアンダーグラウンド・エクスペリメンタル・ミュージック・レーベルのひとつといえよう。
 その〈ルーピー〉の2017年におけるファースト・リリースが、イタリア人アーティストのドナート・エピロ『ルビスコ』である。ドナート・エピロは、カニバル・ムーヴィーのメンバーでもあり、ソロとしても、あの〈ブラッケスト・レインボウ〉や〈ブラック・モス〉からダーク/アヴァンなエクスペリメンタル・ミュージックをリリースしている。また、00年代後半からレーベル〈スタームンドラッグス・レコード(Sturmundrugs Records)〉を主宰し、あのディープ・マジックやTHEAWAYTEAMなどの作品を送り出してきたという重要人物でもある。
 本作は、これまで少部数のCD-R作品として発表した曲をまとめたアルバムだが、しかし、その廃墟のような音響空間は、まさに2017年的ポスト・インダストリアル・ミュジーク・コンクレート・サウンドである。聴き込むほどにドナート・エピロの先見性と、この作品を、2017年の今、リリースするレーベルの審美眼の鋭さに唸らされてしまう。

 細やかなノイズ、鼓動のようにパルスをベース、打撃のようなリズム、分断される環境音。それらは断片化され、まるで終わりつつある世界を描写するようにインダストリーなサウンド・スケープを展開していく。それはドローンですらない。新しい時代のミュジーク・コンクレートが生みだすアンビンエスがここにあるのだ。
 アルバムは、環境音らしき音の持続/反復から幕を開ける“Rubisco”からスタートするわけだが、いくつもの霞んだ音色のミュジーク・コンクレート的なトラックは、まるで世界の廃墟を描写するように静謐に、そしてダイナミックに展開する。さながら映画の環境音のように、もしくは夢の中の環境音のように、である。そして、アルバムは次第に音楽としての反復を獲得しながら、反復と逸脱を重ねていくだろう。特に5曲め“Nessuna Natura”、6曲め“Scilla”のサウンドを聴いてほしい。

 私には、このアルバムに収録されたトラックは、いわば、ジャンクな世界に満ちたジャンクなモノの蠢きによって再構築し、それによって、廃墟的なロマンティズムをコンポジションした稀有な例に思えた。これが2009年から2010年までに少部数リリースされたCD-R作品からの曲というのだから、そのあまりの先見性に、もう一度、唸ってしまう。音楽とSFは世界を預言するもの、とはいえ。
 世界が最悪になっているのなら、その最悪さを引き受け、人というモノ以降の世界の廃墟のセカイを音によって描き切ってしまうこと。そのような「廃墟のアンビエンス」が本作にはある。美しさと郷愁がともに存在し、そして鳴っている。私には、その「ヒトのいない世界のザワメキ=音響」が、とても穏やかなアンビエンスに聴こえてしまうのである。

RAINBOW DISCO CLUB 2017 - ele-king

 GWの5月3日~5日にかけて伊豆の稲取で開催されるRAINBOW DISCO CLUB 2017の魅力について、渡辺健吾と野田努が語り合いました。詳しいラインナップと入場料、アクセスなどはホームページを見ていただくとして、ここでは何故2人がこの野外フェスを推すのかを読んでいただけたら幸いです。

野田:昨年初めてRAINBOW DISCO CLUB(RDC)に行ったんだけど、行って良かった。いろいろな意味で。
健吾:僕は晴海でやってた時代は何度か行っていて、ビル群や海がすぐそこに見えるロケーションでさっと行けるし、割りと好きだったんだよね。夕暮れの雰囲気とか、海風が気持ちいいとか、いい点もたくさんあった。だけど、やはり伊豆で開催になってまるで違うパーティというくらいよくなったと感じたなぁ
野田:昨年のが伊豆になってから1回目なの?
健吾:いや、2回目だよね
野田:健吾は2年連続だったんだ?
健吾:いや、僕も去年が初なんですよ。伊豆の初回がすごくよかったという話をあちこちでたくさん聞いていて、これは行くしかないだろうと
野田:なんだよぉ~、すっかり行き慣れたベテラン面してるからさー、「ヨロシクお願いします」なんって言っちゃったじゃない。
健吾:いやいや、そうだっけ?
野田:もうすっかり、場慣れしてたじゃん。水道場で食器とか洗っててさ。なにがプチアウトドアだよ。俺なんか、民宿だぜ。
健吾:春先から秋までは、キャンプ含めて子供連れで楽しめる野外のパーティによく行くようになっていて、毎年数ヶ所の野外パーティやフェスに行っているからね。そういう中であそこは楽しいぞ、雰囲気いいぞ、とか、そういう嗅覚は結構磨かれてるんじゃないかと。
野田:俺なんか、多摩川に釣りに行くぐらいだからなー。それはともかく、RDCは素晴らしいよね!
健吾:素晴らしいですね! 噂以上だった。
野田:じゃあ、お互い、どこが良いと思ったのか、理由をいくつか挙げていこう。まずはロケーションだね。これ、重要。
健吾:そうですね。あんな場所よく見つけたなと思うけど、ただの山の中でもないし、かといって日常の空間でもないから、不思議な魅力がある。
野田:公共の交通手段を使って、2時間ぐらいで行けて、山と海がある。ホントによく見つけてくれたって感じ。
健吾:そういう会場だと、他にいくつも違うイベントが開催されて、スペシャル感が薄れるケースもあるけど、あそこはRDCだけだからな
野田:日本の初夏の青々しい風景、そして伊豆の小さな港町……子供がいようがいなかろうが、行きやすいし、場所だけでも気持ちが上がるね。
健吾:突飛な場所でやりすぎて、1年でできなくなっちゃうっていうケースもたくさん見てきてるから、3年続けてやって年々よくなっているという継続ができたらすごくいいなと思うしね。前に千葉のビーチであったパーティに行って、感動するくらいロケーションよかったんだけど、ビーチだから夜中になったらみんな勝手に入ってきちゃって、大変だったらしい(笑)。
野田:野外パーティの難しさってやつか。ぼくが泊まった民宿では、民宿だから共同風呂なんだけど、風呂に入ってくる人がみんなRDCのバンド捲いてんだよ。で、「同じっすね」とか言うと、「去年も来たんですよー」なんてね。今年もリピーター多いんだろうなぁ。
健吾:あれは口コミで広がるタイプの良さだから、そう思う。
野田:そもそも健吾は野外フェスに何を求めているの? なんで、いまも行き続けているの?
健吾:一言では言い表せないけど、遠慮会釈なくいい音、でかい音で踊りたいっていうのがいちばんかな。クラブという日常の延長にある場所では、なかなかそういうことができなくなってしまった。
野田:野外フェスなら家族で行けるのは、たしかにオレら世代にとっては魅力だよね(笑)。でも、オレが野外に目覚めたのはまだ自分がギリギリ20代のときの1993年、最初はグラストンベリーだったんだよね。
健吾:いきなりグラストンベリーか。インパクトがすごそう。僕はあまりロック・フェスで楽しかった記憶がないんだけど、グラストンはどこが良かったの?
野田:どこがって……とにかくカルチャー・ショックだよ。なんていうか、ヘッドライナーがスピリチュアライズドだろうがオーブだろうがヴェルヴェッツの再結成だろうが、そんなことは最終的にはどうでもいいわけ。自分たちがその場にいて、その場にいることを楽しんでる。多様な人間がそこはいたし、年齢層もヒッピーからインディ・ロック、レイヴ世代までと幅広い。そして、その場にいる人たちもそのフェスの重要な要素なんだよ。あの感じ……クラブやライヴとは違った、過激なまでの「ゆるさ」とでも言おうか、あれがオレのなかの理想としてあるんだ。つまり、出演者のタイムテーブルに合わせて客も移動するみたいな、あの感じはまったくないよ(笑)。とことんレイドバックしてるのよ。
健吾:なるほどね。RDCでいいと思ったポイント、僕が嬉しいのは「ゆるさ」なんですよね。もちろん、歴史あるイギリスのグラストンベリーとは違うタイプのものだろうけども、運営サイドと客が信頼しあっていて、ゆるく運営されているっていうのは日本においては貴重だからね。
野田:あのゆるさは素晴らしい。しかもさ、良い音楽が良いオーディエンスを集めるってことを実践してるジャン。
健吾:うん、そう思う。日本だとクラブ系のDJやアーティストがたくさんでるフェスですら、「出演者のタイムテーブルにあわせて客が大移動」みたいなことが起きるから。そうすると、どうしても有名で、たくさんファンを呼べるような人中心のブッキングになってしまったりして。ポスターにずらずら名前が並んでいるのを見るとすげえって思っても、実際にその場に行くと、楽しめないっていうことも多いんだよね。RDCの場合は、たぶん敢えてその逆いってるという。
野田:ヨーロッパのフェスっぽいんだよね。極端に言えば、ライヴを見ずにただテントで生活して帰ってく人も珍しくないっていう感じ。そういう場を作るってホントに難しいと思うんだよ。さっき健吾が言ったように、雰囲気って、オーディエンスや出演者なんかとの信頼関係で築かれるものだからね。その信頼関係をうながすかっていうと、音楽愛じゃない? RDCはそこがしっかりしているよね。
健吾:そこまで裏話やなんかを知ってるわけではないけど、ステージや楽屋の写真を見たり、発言を読んだりしていると、出演者にもRDCという場やコンセプトが愛されているんだと感じるね。
野田:ハンモックとかさ、ああいうのが並んでいるのもいいよね。キッズ広場まであるし。適度に逃げ場もあるし、適度に散歩もできるし。
健吾:キッズ・スペースはだいたいどこの野外パーティでも設けてるけど、ちゃんと遊び場として機能してると感じたのは数少ないね。RDCのキッズ広場はあってすごく助かった。
野田:絵本もいっぱいあるしさ。
健吾:そういえば去年、結構早い時間帯だったけど、瀧見さんがプリンスかけたの覚えてる? まだ昼くらいでそんなに客もいなかったし、皆のんびりした雰囲気で座ったり寝そべって見ていたら、セットの最後の方でいきなりプリンスかけたんだよね。たしか、「Sometimes It Snows In April」だったかな。
野田:それってプリンスでオレがいちばん好きな曲!
健吾:去年は4月の終わりだったし、気がきいてるよね
野田:さすがベテラン。今年も出るんでしょ。彼みたいなのがいるのは心強い。
健吾:僕はハンモックのあたりでそれ聴いてて、少し立ち上がって、高いところからフロアの様子を見ていたら、皆「プリンスだ!」とか騒ぐ感じでもなくて、ゆっくりそこここで立ち上がって、レクイエムみたいにゆらゆら踊る人が増えるのがわかったんだよね。なんかすごく心にしみた。
もちろん瀧見さんの、あそこであのタイミングでプリンスのしかもあの曲っていうのがすごいと思ったけど、客もそれに応えてる感じだったなぁ
野田:あんな良い天気のなかで、あんな切ない曲を……。そういう、その場の物語が生まれるんだよね。クラブでもそうなんだけど、良い野外フェスにはとくにそのときでしか経験できない物語が生まれる。これから2日後にはどうなっているんだろ? っていうワクワクした感じがあって、わずか3日のあいだにいろんなことが起きるんだよな。
健吾:ほんとそう。で、ワガママかもしれないけど、子持ちだと、ピークタイムが深夜~明け方に設定されてるフェスでは、いちばんいいところを絶対に経験できないんだよね。夜通し踊った皆が休みにテントに戻りだす朝はやくにようやく活動し始める。RDCの場合は、夜は平等にみんな寝るというタイムテーブルだから、みんなと同じようにいい経験ができるチャンスがあるのよ。
野田:なるほど。で、テント生活はどうよ?
健吾:もちろん、楽しいよ。半分それが目的だからね。
野田:夜はまだ寒いだろ?
健吾:装備によると思うけど、うちは冬用のシュラフ持っていくからそうでもないね。もちろん、民宿とかホテルでもいいと思うし、お風呂は入れたほうが体も休まるんだけど、テントの場合、子連れだったら一度寝かせてからまたちょっと踊りに行くとかもできるしね。テントサイトからフロアまでそんなに距離がないのもいいね。野田さんもテント張ったらいいのに(笑)。
野田:オレは今年も民宿ですが、稲取の金目鯛はぜひ味わって欲しいですね。港の近くに市場があってさ、そこにもRDCに来た人たち大勢いたぜ。
健吾:実は、今年は前日の夜から行こうかなと思ってて、その日は民宿に泊まる予定なの。だから、金目鯛も食べられるかな(笑)。そうそう、テントと言えば、去年は風がすごく強かったんだよ
野田:いいじゃない。風が強いくらいがちょうどいい。
健吾:いやいや、どこの人気フェスもそうだけど、テントサイトはそんなに広くないし普通よりくっついてちょっと無理にテント張ってるから、きちんと張れてないのね。ペグダウンしてないとか。それで、去年の2日目は奥さんが踊って僕子供の世話っていう担当になってたので、夕飯食べて子供連れてテントに帰ったら、強風でテントが崩壊しそうになっててさ。子供と2人で協力して、1時間以上かけてなんとか風でテントが吹っ飛ばないように張り直して、事なきを得たけどちょっと泣きそうだったよ。深夜に周囲でバンバン物が飛んだりテント崩壊したりしてたから、みなさん自然をなめないようにしましょう、という話はしておいたほうがいいかな。
野田:野外っていうのはリスクもあるから。しかし渡辺家は前泊とは、すげー気合いを感じるな。
健吾:なはは。民宿も楽しそうだなぁと思ってね。気合入ってます。
野田:出演者も相変わらずイイよね! 日本人の出演者だけでも充分なメンツですよ。
健吾:そうだね。個人的には、ここ5年位ずっと気になっていたヘッスル・オーディオの3人が揃って来るのが本当に嬉しい。でも、それ以外のメンツもRDCらしさもあり、とても楽しみだわ。
野田:ベンUFOは、ベース世代を代表するもっとも人気/評価の高いDJだしね。しかし今回は、いろんな世代が混じっている感じが出たね。
健吾:日本だとああいうダブステップ以降のものが混沌としてるパーティあまりないし、今の彼らがどういうプレイするか興味ある。
野田:欧米は、数年前からベース世代とハウス世代が混じり合ったじゃない。日本ではまだその溝があるけど、これからはどんどん溝が埋まっていくと思う。だから今年のRDCは、チャレンジしているよ。
健吾:NOBUくんと一緒にB2Bでやる、フレッドPは、どんな感じか知ってる? NOBUくんは、去年のブラック・マドンナとのスペシャル・セットがすごくよかったから、今年も期待してるんだけど。
野田:フレッドPは作品しか知らないけど、ずっと評価高い人だよね。とくにブラック・ジャズ・コンソーティアム名義の作品はディープ・ハウスが好きな人にはたまらないものがある。
健吾:だよね。僕も彼の曲いくつか聴いたくらいだけど、DJも良いといいな。普段やらない人と一緒にやってしかもいいプレイが聴けるって、フェスの醍醐味だから
野田:しかしフレッドPとNOBUくんのB2Bというのは、まあ音楽を追究して好きでなきゃ、まず思い付かないよ。RDCは、いまでもちゃんとレコード店に行ってる感じが出ているもんな。
健吾:ふふふ。野田さんの注目アーティストは?
野田:さっきも言ったように、主催側のセンスを信用しているんで「おまかせ」って感じなんだけど、敢えて他に名前を挙げるとしたら、寺田創一さんとKUNIYOKIとsauce81のライヴ、野外が似合う井上薫、あとはフローティング・ポインツかね。野外であれを聴くのは楽しみ。
健吾:寺田さんとKUNIYUKIさんとSauce81のセッションってすごそうだよね
野田:今年はディープ・ハウス色が強いね。
健吾:とは言っても、その場にならないとどんな音が出てくるのかわからないのがRDCの楽しさでもあると思う。去年も、ウェザオールが急遽キャンセルになって、マット・エドワーズ (aka レディオ・スレイヴ)が代役で出たでしょう。以前、RDCにマットが出たときはかなりディスコ寄りのセットだったから、去年もパーティのテイストにあわせてそういう感じになるかと思ったら、完全にレディオ・スレイヴ・モードで、ゴリゴリのテクノだったしね。
野田:いずれにしても、良いメンツだよ。話をぶった切るようだけど、弘石君たちがどさくさに紛れて、マッサージ屋を出していたよね。あのお店のエリアに古本屋さんも出店していたの憶えている? ああいうのもナンかイイよね?
健吾:弘石くんの会社がやってるマッサージ屋は、結構老舗だよ。晴海でやってた時代からRDCに出店てしてたんじゃないかな。とはいえ、たしかにRDCでは他ではあまり見ないような出店があるんだよね。他のフェスで食事しようとして、だいたいいつも同じような、フェスに行くたびに目にする店ばかりで食傷気味になるところ、RDCは地元の店が多いよね。
野田:弘石マッサージテントの隣で、地元の魚屋さんが焼き魚と定食売っていたのが良かったな。野外フェスで魚って、なかなかないでしょ(笑)。
健吾:そうだね。少し店のおばちゃんと話したけど、もろに地元の人って感じだった。
野田:さあ、これで、まだ行っていない人も、だいぶイメージが湧いてきたんじゃないのかな。良いダンス・ミュージックも聴けて、伊豆の魚も味わえるなんて……。あとはテント組は自然を舐めるなと。
健吾:3日だからガツガツしないで気候や音楽や景色の移り変わりも楽しめるといいよね。あと5分〜10分ほど歩いたところにあるレッドブル・ミュージック・アカデミーのキュレーションする体育館の会場も、雰囲気違っておもしろいよね。今年はNORIさんや、サファイア・スロウズ、アキコ・キヤマなんかもでる。去年はあまりにメイン会場が良すぎて、ほとんどレッドブル側に行けなかったから今年はあっちでも踊りたい。
野田:最近UKでは、レイヴ・カルチャーが見直されているっていう話だよ。あの暗い時代における、ひとつの抵抗のカタチとして再評価されているんだって。
健吾:そうなのかぁ。まぁわかる気がするなぁ。
野田:オレらもまだまだ伝えていかないとね! なーんて。
健吾:そうですねぇ
野田:じゃあ、オレは伊豆踊り子号の指定席でビールを飲みながら駆けつけるわ! 現地で会おうぜ!
健吾:ははは、飲み過ぎないように(笑)。今年もひとりで来るの?
野田:昨年も家族で来てるって! 今年も子供連れて行くつもりでーす。ダンス・ミュージックを愛するみなさん、当日お会いしましょう!
健吾:あれ、そうなんだ。ひとりで楽しそうにフラフラしてる姿しか見なかったから、てっきりひとりで羽を伸ばしているのかと!
野田:いや……
健吾:ふふふ。まぁ今年も去年以上に盛り上がるでしょう。今から楽しみ!
野田:です!


RAINBOW DISCO CLUB 2017

日程:
2017年5月3日(水・祝日)9時開場/12時開演 ~
2017年5月5日(金・祝日)19時終演(2泊3日)予定

会場:
東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ
(〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3348)

出演:
FLOATING POINTS / RDC EXCLUSIVE: DJ NOBU B2B FRED P
HESSLE AUDIO (BEN UFO / PANGAEA / PEARSON SOUND)
20 YEARS OF RUSH HOUR: SPECIAL GUEST: SADAR BAHAR
RUSH HOUR ALLSTARS (ANTAL / HUNEE / SAN PROPER)
LIVE SESSION: SOICHI TERADA × KUNIYUKI × SAUCE81
LIVE: FATIMA YAMAHA / DJ DUSTIN From GIEGLING
KENJI TAKIMI / KAORU INOUE / KIKIORIX / SISI

GERD JANSON / PALMS TRAX
SKEME RICHARDS B2B DJ NORI / KEITA SANO
AKIKO KIYAMA / 77 KARAT GOLD × KASHIF
SAPPHIRE SLOWS / WONK / MISO

料金:
一般発売チケット(3日通し券)(16,000円)

場内キャンプ券(3,000円)
*炭を使用するBBQは禁止。コンロ、バーナーのみ可能。
*アルコール類、瓶、缶の持ち込みは固くお断り致します。

駐車券(2,000円)
*駐車場出入庫は1回1000円別途必要。

当日券(18,000円)
*前売券が規定枚数に達しましたら当日券の販売はございません。
*20歳未満の入場は保護者同伴の場合のみご入場いただけます。
*中学生以下はチケット不要。

チケット購入:
https://www.rainbowdiscoclub.com/#ticket

店頭販売
テクニーク 03-5458-4143
JETSET 03-5452-2262
ライトハウス 03-3461-7315
GAN-BAN/岩盤 03-5391-8311

ディスクユニオン取り扱い店舗

ディスクユニオンclub music online
渋谷クラブミュージックショップ 03-3476-2627
新宿クラブミュージックショップ 03-5919-2422
下北沢クラブミュージックショップ 03-5738-2971
お茶の水駅前店 03-3295-1461
池袋店 03-5956-4550
吉祥寺店 0422-20-8062
町田店 042-720-7240
横浜西口店 045-317-5022
千葉店 043-224-6372
柏店 047-164-1787
北浦和店 048-832-0076
立川店 042-548-5875
高田馬場店 03-6205-5454
大宮店 048-783-5466
大阪店 06-6949-9219
中野店 03-5318-583

RAINBOW DISCO CLUBとは?
東京を拠点に2010年にスタートした音楽とアートを結ぶフェスティバル「RAINBOW DISCO CLUB」は、良質なダンス・ミュージックを届ける日本の都市型イベントとして、世界的な音楽情報サイト「Resident Advisor」の「世界TOP 10フェスティバル」に毎年選出され、国内外から注目を浴びていました。

その「RAINBOW DISCO CLUB」が、2015年からは伊豆半島 稲取高原の「東伊豆クロスカントリーコース」で大自然に囲まれた野外フェスティバルへと大きく姿を変え、ダンスミュージックの本質を捉えた豪華ラインアップはもちろん、ハンモックカフェ、焼きたてパン、東伊豆の地元食材など充実のフードコート&バー、キッズエリアも備えており、のどかな環境の下、子供から大人までが一緒に楽しめる野外フェスティバルとして心機一転、生まれ変わりました。

https://www.rainbowdiscoclub.com


スカート - ele-king

 思春期を失敗したひとにありがちな、これは僕だ、という誤解がある。青春パンクに悪態をついた15歳のころ、「冷凍都市」とは何かを知りたくて上京した19歳のころ、中古のアナログ・ターンテーブルを捨てたあとでも MUJI の据付ラックに飾り続けた『スピッツ』、ブルー・クリア・ビニール仕様の12インチ、よしもとよしとものオマケ漫画つき。そういえば漫画『青い車』は生活に困った学生時分に泣く泣く売ろうとしたらなぜか売れなかったから、まだ本棚に残っている。だから20歳を越えれば〈Plus 8〉や〈Minus〉レーベルのカタログを漁るものだと思い込んでいた。結果、Beatport にばかり課金した。東京での学生生活は沙村広明の『おひっこし』のような世界のはずだと夢見ていたが(それもそれでディストピア・コメディだけど)、異界の果て、コンクリート・ジャングルの見えない東京砂漠を体感した以外、だいたい予想ははずれた。三億円事件が起きた現場のすぐ近くでした。
 おそらく後半はズレている。けど、東京のすみっこかその周辺、小田急線、京王線、そして西武線の風景に転がり込んだオールド・スクールの音楽マニア志望などこんなもんだろう。とタカをくくったうえで、スカートこと澤部渡は僕だと誤解した。4、5年前の渋谷、たぶん O-Crest あたりのミツメ目当てで見に行ったライヴ以来、そう思っていた。一聴してわかる雑多かつ重厚な音楽的背景と素養、ある意味で向井秀徳的なルックス、何より圧倒的な曲の素晴らしさ。何度も何度でも聞くに耐えうる曲自体とアルバム全体の構成、のひねくれたあの感じ。列挙すればするほど自分がかつて持ったことないものばかりだけれども、それでも同い歳の僕は澤部渡だと信じてやまなかったのだ。ポップ・スターはそういうものだということにしておいてほしい。
 先日、広島にある STEREO RECORDS に12インチを売りに行こうとした。手持ちのそれらの相場をいやしくも調べていたら、スカートが『CALL』のアナログを出すことを知った。
 〈カクバリズム〉の一員となって以降の澤部渡が、さらなる名曲を量産しているのは周知のとおりで、2016年にCDで発売された後、先述のとおりアナログで再発される予定の『CALL』はこれまでの総決算であると同時に、新たなデビュー・アルバムのような作品だった。収められた曲たちの多彩さ、ポップネスはそのままに、あきらかに豊穣になったサウンド・プロダクションを武器に、一粒一粒の音の輪郭がより聴き手に馴染みやすいものとなっていた。メディアのベスト・アルバム・ダービーには意外にもあまり顔を出していなかったけど、それはこのアルバムのポップネスのひとつの機能だと考えている。つまり、いかなる流行、潮流、世界的な趨勢とも切り離されながら、それでも必然しか感じないポップ・ソング。8分のルートを走るベースラインが印象的な表題曲の“CALL”は、これまでの複雑性から解放されたかのようなストレートなうたで、そこには衒いなど突き抜けた強度があった。
 それから約半年の短いスパンで上梓された初の全国流通シングル「静かな夜がいい」の表題曲は、ディスコグラフィー上では“都市の呪文”(『サイダーの庭』)から“回想”(『CALL』)につらなるような、ギターのカッティングで運ぶアーバン・ファンク・マナーの1曲だった。イントロのリフ、そしてブレイク後の跳ねるベース・ソロなど、一聴して誰しもが思い浮かべるのはシュガーベイブの“DOWN TOWN”に違いない。しかしその元ネタの下敷きとされた The Isley Brothers から滲むような「黒さ」は、“静かな夜がいい”からは感じない。むしろ Bruce Roberts の“Cool Fool”あたりを引き合いに出したくなるような、「白い」ファンクネスやAORの趣をもっている。この点は D'Angelo からの影響をもとに、『Obscure Ride』から「街の報せ」にいたる、cero の提示する曲群との分岐点ともなるのだろう。
 澤部のフェイバリットのひとつだろうムーンライダーズの『DON'T TRUST OVER THIRTY』は1986年の作品で、その1年後に生まれた僕たちは今年30歳になる。15歳のときに遠くに聞こえた青春パンクのバンドも、同じ名前の違う曲を歌っていた。
 そういえば前田司郎による映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(2013年)は、30歳を超えた大学の同級生たち(とひとりのカノジョ)が、ただ最高のスキヤキを食べるために繰り広げるロード・ムービーだった。こう書くと未見のひとはいったい何の映画だと思うに違いないが、岡田徹が劇中音楽を手がけていて、いくつかムーンライダーズの曲がかかる。それらがこの映画の中の風景に完全に溶け込んで、思い当たる節のある(と誤解する)僕たちは幾度となく涙腺が緩んでしまう。エンディングに“Cool Dynamo, Right on”のギター・イントロがかかるところなんかもう嗚咽が止まらない、なんて、何かしらの病である。
 その曲には、こんな歌詞がある。

 Coolなはずの 今日のパーティ
 道に迷った みたいだな
 君のスカートの
 中に地図は 宿るかい

 “静かな夜がいい”は30歳を目前にした澤部渡が、ポップ音楽家としてさらなる成長を遂げていく最中に残した1曲となった。この表題曲を含めた4つの曲を地図に、さらなる旅程をかさねていくスカートを同じ時代に遠くから見続けられることが素直に嬉しいし、3月25日に最終回を迎える『山田孝之のカンヌ映画祭』に提供した“ランプトン”(名曲!)では、早速の新機軸を打ち出したようにも思える。しかしまずは「静かな夜がいい」こそが、僕にとって『ジ、エクストリーム、スキヤキ』と同様、不意に見返す、聞き返す作品となってしまうだろう。それはもう、すでに重ねすぎている過去を思い出すための大切な道標として。

 君に預けた 僕のハッピー
 冷凍にして 持ってておくれ
 そうすれば いつでも
 あの頃が 戻るだろう
(ムーンライダーズ“Cool Dynamo, Right on”)

Shobaleader One - ele-king

 スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン。3月8日にアルバム『Elektrac』をリリースしたばかりのかれらが、昨日3月23日、ボイラー・ルームにてライヴをおこないました。そのときの映像が YouTube に公開されています。いやー、バカテクですね。来日公演が楽しみです。下記よりチェック。

超 必 見!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、
ショバリーダー・ワンが
3月23日23時にBOILER ROOMに登場!
衝撃のパフォーマンスを披露!
待望の来日ツアーはいよいよ3週間後!

ライヴ・バンドのコンセプトを根底から改革すべく、スクエアプッシャーが招集した、凄腕ミュージシャンたち:STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)、ARG NUTION(ギター)擁するショバリーダー・ワンが3月23日23時にBOILER ROOMに登場! 衝撃のパフォーマンスを披露します!

Shobaleader One @ Boiler Room
https://blrrm.tv/squarepusher

東京公演が即日完売で大きな注目を集めるジャパン・ツアーはいよいよ3週間後! 大阪公演も完売ペース! 東京公演のチケットをゲットできなかったファンは名古屋へGO!

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン待望のデビュー・アルバム『Elektrac』は、3月8日日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットも販売中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック
cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD(¥2,500+税):オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
国内盤2CD+Tシャツセット(¥6,000+税)

Cornelius - ele-king

 小山田圭吾=コーネリアスが動いた。2006年の傑作(いま聴くとさらにその凄さわかる)『センシュアス』から11年、コーネリアスがニュー・シングル「あなたがいるなら」をリリースする。タイトル曲は坂本慎太郎が作詞を担当、つまり歌モノ。
 昨年はMETAFIVEメンバーとしての活動もあり(また、その作品とライヴは大いに反響を呼んだこともあり)、コーネリアスってまたしばらく動かないんじゃないかと決めつけていたあなた、どうぞご安心を。
 詳細がわかり次第にまた報告しますが、これは注目です。『ポイント』~『センシュアス』でひとつに頂点に達したと言えるコーネリアスだけに、次に何をやるのか? というのはひじょうに気になるところですが、まずはオヤマっちゃんの復帰、良かった良かった。


SINGLE「あなたがいるなら」
A1 .あなたがいるなら (作詞: 坂本慎太郎 / 作曲: 小山田圭吾)
B1 .Helix / Spiral (作詞作曲: 小山田圭吾)

発売日:2017年04月26日
価格:\1,400(本体)+税
規格番号:WPJL-10041

!!! (Chk Chk Chk) - ele-king

 あ、これはヤバいやつだ。公開された !!! (チック・チック・チック)の新曲“The One 2”を一聴して思った。頭で処理しようと思っても、まず先に身体が動いてしまう。ワン・トゥ、ワン・トゥ。かなりディスコ色が強まっている。でも彼ららしさは失われていない。これは素直に、アがる。
 チック・チック・チックが待望のニュー・アルバム『Shake The Shudder』を5月19日にリリースする。タイトルには「恐れを振り払え」というメッセージが込められているそう。かつてジュリアーニを批判する曲で脚光を浴びた彼らのことだ。いまこんなにもソウルフルかつダンサブルなサウンドを鳴らすのにはきっと彼らなりの理由があるのだろう。あー、はやく他の曲も聴きたいぜ。ワン・トゥ、ワン・トゥ。

!!!(チック・チック・チック)が新作とともに帰還!
最新アルバム『Shake The Shudder』完成&新曲公開!
数量限定Tシャツ付セットの販売も決定!

ニューヨークが生んだ最狂のディスコ・パンク・バンド、!!!(チック・チック・チック)が最新アルバム『Shake The Shudder』の完成を発表! アルバムのオープニングを飾る新曲“The One 2”のミュージック・ビデオを公開!

!!! - The One 2
https://www.youtube.com/watch?v=zPn_AnP9N9I

「恐れを振り払え!」というメッセージが込められた今作のタイトル『Shake The Shudder』は、彼らの座右の銘であり、そのキャリアを通して示してきた言葉である。彼らのDIYなパンク・スピリットが炸裂した今作では、ここ最近のお気に入りだというニコラス・ジャーやケイトラナダなどからの影響を反映した様々なエレクトロニック・ミュージックの要素に加え、自由な精神の象徴としてハウス・ミュージックを取り入れ、「ビートに乗ってりゃ何でもあり!」というオープンな姿勢から生まれた痛快なアルバムとなっている。

リスクが大きければ大きいほど、得るものも大きい。そして、究極に楽しい経験になる。改革は次の改革を導き、それが繰り返されるんだ。
- Nic Offer

バンドのホームタウンであるブルックリンでレコーディングされた今作には、UKのシンガー、リー・リー(Lea Lea)、シンガーソングライターで女優でもあるミーア・ペイス(Meah Pace)、グラッサー名義での活動も知られるキャメロン・メジロー(Cameron Mesirow)、チェロ奏者でシンガーでもあるモリー・シュニック(Molly Schnick)といった個性豊かな女性ヴォーカリストが多数参加している。

一貫して変わることのないパンクなアティテュードと、アルバムごとに進化を続け、シーンの変化とも巧みにリンクするサウンド。移り変わりの激しい景観の中、その状況を楽しむかのようにキャリアを重ねてきたチック・チック・チックの最新作は、そのキャリアの全てを反映させた集大成でありながら、歌詞とサウンドの両方にさらにエッジを効かせ、「この打ち砕かれたような状況から、何か美しいものが育ってほしい」という、混迷を極める世界に対するバンドの願いが込められた一撃でもある。

チック・チック・チックの7枚目のアルバムとなる本作『Shake The Shudder』は5月19日(金)に世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“Anybody’s Guess”が追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。またiTunesでアルバムを予約すると公開された“The One 2”がいちはやくダウンロードできる。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のオリジナルTシャツ付セットの販売も決定!

label: Warp Records / Beat Records
artist: !!! ― チック・チック・チック
title: Shake The Shudder ― シェイク・ザ・シャダー

cat no.: BRC-545 / BRC-545T
release date: 2017/04/19 FRI ON SALE
国内盤CD: ¥2,200+税
国内盤2CD+Tシャツセット: ¥5,500+税
国内盤特典: ボーナス・トラック追加収録 / 解説書・歌詞対訳封入

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