「IR」と一致するもの

special talk : tofubeats × Yoshinori Sunahara - ele-king


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First Album Remixes

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 つい先日デジタルで発売されたトーフビーツの『First Album Remixes』の1曲目が“Don't Stop The Music”の砂原良徳リミックス。新世代の作品にベテランが手を貸した最初のヴァージョンとなった。

 トーフビーツからは「現在」が見える。インターネット時代の(カオスの)申し子としての彼の音楽には、90年代を楽しく過ごした世代には見えにくい、重大な問題提起がある。ゆえに彼の楽曲には「音楽」という主語がたくさん出てくる。音楽産業、音楽文化、あるいは知識、音楽の質そのもの。

 自分が若かった頃に好きだった音楽をやる若者は理解しやすいが、自分が若かった頃にはあり得なかった文化を理解することは難しい。なるほど、ボブ・ディランは最近ロックンロール誕生以前の大衆音楽をほぼ一発で録音して、発表した。これは、インターネット時代の破壊的なまでに相対化された大衆音楽文化への本気のファイティングポーズなんじゃないだろうか……だとした、さすがディランだ。しかしもう時代の針を戻すことはできない。
 インターネット文化には、そもそもヒッピーの聖地近郊のシリコンバレーには、カウンターカルチャーの遺伝子がある、と今さら言うのは、80年代を懐かしんでいるわけではない。僕がUSの若い世代の音楽批評を読んでいてあらためて感じるのはそのことなのだ。ヴェイパーウェイヴの「日本」には、『ニューロマンサー』の「チバシティ」と似たものを感じるでしょう? それはずっとあり続けているのだ。
 が、しかし……それを反乱と呼ぶには、瞬く間に資本に取り込まれているのかもしれない。自由であるはずが、意外なほど窮屈だったりするのかもしれない。トーフビーツは、そうしたもうひとつの現実も知っている。親は、子供がライヴハウスに出演することよりも四六時中インターネットにアクセスしているほうを心配するだろう。電気グルーヴが登場したときのように、トーフビーツにも賛否両論の新しい価値観がある。ものすごーく引き裂かれたものとして。


だから電気グルーヴは聴かなきゃいけないみんなの教科書的なものなんですよ。──トーフビーツ
電気グルーヴが教科書ってどうかと思うけど(笑)。──砂原良徳

今日が初対面っていうのがあまりにも意外でした。

砂原良徳(以下、砂原):ハハハハ!

当然もう何回も会っているものかと。

砂原:クラブとかの入れ替わりで1回くらいはどっかのイベントでね。

トーフビーツ(tofubeats以下、T):それこそサーカスとかで1回くらい会っていてもおかしくはないんですけど。

砂原:会ってなかったね。

意外だよね。とにかく、今回のリミックス・アルバム『First Album Remixes』は、まりんが参加したってことが大きなトピックだから。トーフビーツ世代と電気グルーヴ世代がいままで一緒になることって、作品というカタチではなかったよね?

T:そうなんですよね。こっちからソニーに「マスターをください!」って言って“MAD EBIS”をリミックスしたことはあったけど。

砂原:あったねー! それは俺も聴いたよ。

T:実は僕、××(大手メジャーの新人発掘部門)に5年くらいいて。

砂原:あ、そこにいたんだ!

だってWIREに出てるんだよ。

T:WIRE08の一番上のちっちゃいアリーナに出てて。

しかも高校生で。

T:それで、てっきりそこからデビューすると思っていたら、ワーナーさんからデビューすることになって。

このひと(トーフのマネージャーのS氏)もそこだったんだよね。

T:だから、最後の最後に、これまでのリミックスをまとめたアルバムを出しましょうってなって、「“MAD EBIS”のパラをもらえますか?」って聞いたら、「DATがテープしかないから、スタジオに請求するから」という流れでいただいて作ったんですよね。

砂原:俺はそれを何で知ったんだっけな。電気のリミックスをやったんだって経緯を後で聞いたんだけど。

T:そのときに「“Shangri-La”じゃなくていいの?」みたいな話をされたって言いましたよね。

砂原:ははは、自惚れ。

T:ハハハハ!

あれは何年前?

T:まだ3、4年前ですね。

砂原:ちなみにいまはおいくつなの?

T:僕は24です。

砂原:まだ若いもんね。

T:90年生まれです。

砂原:90年生まれ! そうかぁ……。

それは……って感じだよね(笑)。

砂原:いやでもまぁ、そんなもんなんだろうね。

24歳のときって何してた?

砂原:電気グルーヴですよ。24歳のころはアルバムでいうと『DRAGON』のときかな。

ちなみにWIREに出ていながら、いままで面識がなかったじゃない? トーフビーツのなかで電気グルーヴとか砂原さんはどういう存在だったんですか?

T:卓球さんには僕はまだ会ったことないんですよ。

砂原:会ってないんだ。いずれはどっかで会うと思うけどね。

T:WIREは僕、2回出させてもらったんですけど、どっちもあいさつできなくて。

砂原:まぁ、DJしてないときは遊んでるからね。あと、あの日はあいさつしたりいろいろあるんだよね。

T:あとNHKの『MJ』でご一緒したときも、『メロン牧場』で「楽屋挨拶にきたら殴る」っていうのをまだ読んでいなくて、あいさつに行っちゃって、マネージャーさんに「ダメだから」っていわれて(笑)。

砂原:ハハハハ!

T:後から考えて、「そうだ! 『メロン牧場』を読んでなかった!」って。あの日はすごい後悔したんですよ。「ほんと、すいません」って。

WIREに出てたっていっても、まだ10代だったし、早い時間の出演で、早い時間に帰らなきゃならなかったしね。

T:そうなんですよ。だから帰らされてたんですよね。

砂原:そうかぁ。90年代に生まれたってことは、本当にうちらの音楽を聴いていたときは、4歳とか5歳っていってもウソじゃないっていうことだもんね。僕らのアルバムで『KARATEKA』って作品があるんだけど、あれはパカって開けたところに赤ちゃんが出てくるじゃん? あの世代ってことだもんね(笑)。

T:そうです(笑)。

砂原:恐ろしいな(笑)。

T:いま25周年じゃないですか? だから(電気グルーヴは)僕より年上なんですよ。

ハハハハ!

砂原:そうだね。まぁ、でもそのくらい時間はたってるよ。だって人間って20年ちょっとでこんなんになっちゃうんだよ(笑)?

T:でもそのときは『DRAGON』だったわけじゃないですか? 僕はまだデビューして間もないですけど、『DRAGON』のときは砂原さんはすでに何枚か出しているじゃないですか?

砂原:でもまぁ、あのときといまじゃ音楽のあり方が違うもんね。もっとリリースすることが主体だったというか。

そこは今日のテーマですよ。

T:そんな時代に生まれたっていう話ですから。

いま思うと象徴的だったね。トーフビーツがWIREに出たときに、ちょうど僕が〈マルチネ・レコーズ〉周辺の子たちをWIREに連れて行って。

T:ありましたね。

まだみんな高校生や大学生でね。4、5人で行ったんだよ。そのときに、みんなが「トーフくんが出てるんで」って言ってて。トーフは神戸で、みんな東京の子どもたちだからね。ネットでは知り合っていても、そんなに会えるわけじゃなかっただろうし。で、僕はそこで初めてトーフに会うんだけど、みんなを引き連れて会場に入ろうとしたときに、ちょうどタサカくんが通りかかって、「なんか引率の先生みたいだね」って言われてね。

砂原&T:ハハハハ!

おじさんが子どもたちを連れているようにしか見えないよね(笑)。でも、そのときの子供たちがネット・レーベル世代として日本のサブ・カルチャーに大きな影響与える存在になるわけだから。その晩のWIREではそういうことも起きていたんだよ。

T:その頃は、全員まだクラブに行ったことがない歳ですから。まだ18にもなっていなかったし。

砂原:でも本当にはじめるのってそのくらいの歳だったよね? 僕もライブハウスとかに出だしたのって高1とかだよ。中学の3年くらいのときに早いやつは出てたから。それを知って、「これはヤバいな」って焦った記憶があるくらいで。

T:おー。

砂原:高1でライブハウスに出てなかったら、もうやる気がないやつみたいな感じだったよ。

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ドミューンで初めて見たとき、「コイツ面白いな」というのと「いい顔してんな」って思った(笑)。──砂原良徳
宇川さんが悪意たっぷりで俺の顔のアップとかを超抜きまくってていまだにけっこう言われるんですよ。「コイツの説明よりも顔が面白い」って。──トーフビーツ

昔、もう何年も前だけど、トマドくんにインタヴューをしたとき、何に影響を受けたのか聞いてみたら、最初はライムスターとかが好きだったみたいで。

T:そうだ! 俺、その話、超好きなんですよね。

だから最初は日本語ラップが好きで、その延長で電気グルーヴへ……っていう。

T:リップ・スライムの“ジョイント”って曲を聴いて、2曲くらい聴いたらもうジャングルへいっちゃったんですよ。それで、この音楽をもっと聴きたいってなって電気グルーヴのラジオを聴いて。それで、こんなことになってしまいました、って出てきたのが僕の友だちのレーベルなんですよ。だから、日本語ラップを2曲くらい聴いて、あとはテクノを聴きだしたっていうのが僕らのヘッドというか。

砂原:へぇー!

T:だから電気グルーヴは聴かなきゃいけないみんなの教科書に的なものなんですよ。

砂原:電気グルーヴが教科書ってどうかと思うけど(笑)。

ハハハハ!

T:そこで流れていた当時の音源とかをシェアして、シカゴ・ハウスをチェックしてとかそんな感じでした。

砂原:なるほどね。

世代的に情報源がTSUTAYAなんだよね。小学校、中学校のお小遣いがないときはとくにね。

T:TSUTAYAだけで聴ける絞られた有名なテクノだけを。

砂原:でも野田さんとかが出していたコンピレーションはけっこうあるもんね。

石野卓球とやっていた『テクノ専門学校』ね(笑)。

T:そうなんですよ。あと、ソウルとかも『フリー・ソウル』でしか聴けない。ボサノヴァもコンピでしか聴けない。そういう感じでTSUTAYAで頑張るみたいな。そうやって最初はスタートしましたね。

そこでいきなり電気グルーヴの影響がね。90年代にはあまりなかったじゃない? 2000年代も出てこなかったと思うしね。

砂原:あんまり出てこなかったもんね。だから、それくらいの時間が一応必要だったというか。影響力もないわけじゃないけど。まぁ、こんなものなのかな、くらいに思っていて。だいぶ遅れて影響が出てきているところっていうのはあるのかな。

T:どうなんですかね。そのサイクルは意識したことがないですけど。

砂原:たまにイベントとか行って、若い子とかとごはんを食べながら話しをしてて「昔は何を聴いていたの?」って聞くと、「電気グルーヴとか」って言うんですよ(笑)。「いや、まじめに話しをしてよ!」「いや、まじめですよ!」みたいになるのね。

T:まじめですよ(笑)。

砂原:「えー! そうなの!」ってなることはありましたね。あとは「小学生のときに聴いていました!」とか。「ウソつけ! そんなことねぇだろ!」って思って計算してみたら当たってるっていう(笑)。

T:ハハハハ!


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まりんは、トーフビーツの名前を当然知っていたんだよね?

砂原:いつ知ったかは憶えてないけど、最初は「またこんな名前付けやがって」って思った(笑)。

T:えー! 名前なんすか!?

砂原:まずその印象で、自分にインプットされて。それでドミューンか何かに出てたのを見たのかなぁ……。なんかね、サンプルを細かく切り刻む説明をしていたような気がする。

T:やってました。

砂原:だよね? それってやっぱり、音楽の手法としてはメインにくるものではないじゃないですか? それを主食とするような説明をしてて、「コイツ面白いな」というのと「いい顔してんな」って思った(笑)。

一同:(爆笑)

T:その日すごく憶えてるのが、宇川(直宏)さんが悪意たっぷりで俺の顔のアップとかを超抜きまくってて。

砂原:ハハハハ!

T:いまだにけっこう言われるんですよ。「コイツの説明よりも顔が面白い」って。

砂原:実はそのとき、顔を見たてたら、瀧の若い頃とちょっとかぶって見えたんだよ。

一同:(爆笑)

砂原:それでたぶん、いい顔だって思っちゃったんだよ。その後、ツイッターとかフェイスブックみたいなものが浸透してくるとさ、どんなことをやっているかが自動的に流れてくるじゃん? 

T:はい。

砂原:それで曲を聴いてみたら、意外と普通の……

T:顔のわりにはちゃんとというか(笑)。

砂原:普通というか曲っぽい曲をちゃんと作っていて、「あ、こういうのも作れるんだ!」って思って。でもサンプルを切り刻むのはずっと主食なんだなって。強く認知されたのは、どこがポイントだったの?

T:メジャー・デビューの前にボンってなったのは、テイ・トウワさんと今田耕司さんが作った曲を弾き直して作った曲がインディーズ・ヒットになったんです。そこでアルバムを出して、そのままメジャー・デビューって感じだったんで。

“水星”だよね。

T:そうですね。

でも、その前の“しらきや”とか。

T:それがターニング・ポイントになっていると言うのは、野田さんだけですよ(笑)!

トーフビーツには電気グルーヴにとっての人生みたいな時期があったんですよ。

砂原:そうそう。最初はその印象だったんだよ。

T:某グループのブートレグとかを作ったり、リミックスのCD-Rをゴニョゴニョとかしてて、高校のときはそれでお小遣いを作っていました。

“しらきや”っていう曲は初期の電気グルーヴに似ているといえば似てるよ。言葉のコンセプト的には。

T:どうなんですかね。ハイ・ファイ・セットのループで2ちゃんのコピペを読み上げただけなんですけど。

砂原:わりと初期衝動をそのままパッキングするようなね。

ようするに、白木屋でバイトしている友だちとの会話みたいな感じで、「あの頃の俺は時給いくらだった」みたいな。アホみたいな会話のなかのディレイのかけ方とか。

砂原:でもさぁ、そういうのって面白いよね。ああいうのって、何だろうね。そういうのは、そういうときにしか作れないし。そんなくだらないこと大人になったらやらないから、やっとくべきだよ。記録しておくべきだね。

T:大事にとってあります。

砂原:あとからすごく面白くなると思うんだよね。

しかも、なんで俺がトーフビーツを知ったかっていうと、静岡のクラブで“しらきや”がかかってたんだよね。電気グルーヴっていまでこそ誰もが評価しているけど、初期の頃は、当時の若い世代が熱心に支持していた印象があって、その感じも似ているんじゃないかと思った。

砂原:へぇー!

若い大学生くらいの子たちのパーティに行ったらアンセムになってたんだよね。

T:青臭いヤツらだ(笑)。

砂原:それは随分いびつな状況だ(笑)。

T:いびつな流行り方をしていって、最終的には就職しようってなったときに、ワーナーさんが申し出をくれまして。まぁ、一応は体良くアーティストっぽく収まった感じなんですよ。

砂原:なるほどね。まぁ、でも、ミュージシャンも野球選手みたいなものでポジションがなかったらすぐに「いけ」って言われるけど、外で空いていたら「じゃあうちで」っていうのはあるよね。

まりんのマネージャー氏の前で言うのもあれだけど、本来であれば電気グルーヴを見いだしたソニーがね(笑)。

T:その話は実際に野田さんとしていたじゃないですか?

砂原:でもねぇ、そうじゃないところの方がいいかも。やっぱり過去にこういうことがあったってところに、当てはめちゃうきがしない? 

たしかにね。

砂原:だからそれが必ず正解だというわけじゃないからね。

まりんも昔、(YMOがいた)アルファ・レコードから出したいって思ったものなの?

砂原:思ったこともあったけど、ほんの一瞬だけかな。スタジオが見たかったからね。2回くらい見たけど。

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サンプルを切るのもそうなんですけど、切ると現実じゃない音を出したりできるのがよくて。ピッチを落とすのもそれに近いというか。──トーフビーツ
そういう意味でいうと、僕も昔、音楽を聴いていたときに、タンテで自分が好きなところにピッチを合わせて聴いて「コレは落とした方がいいんだよ」とか、「45回転でもいける」とかね。──砂原良徳

それでまりんはトーフビーツの、顔やサンプリング以外では、他にどんなところが気になってたの?

砂原:その、ネット・レーベルと言っていいのか、電気グルーヴを子どものころに聴いていた世代と言っていいのかわからないけど、なんかそういう地位みたいなものがうようよあって。そのなかのわりと目立っているひとつなんだなって認知はしてたね。やっぱり気にしてみてたんじゃないかな。やっぱり記事とかあるとクリックして読んだりとかしていたと思うし。興味がなかったらクリックすらしないからね。


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音は今回のリミックスより前も聴いてたの?

砂原:ネットにあがってるのとかは聴いてたよ。

T:マジっすか! ヤバい。

砂原:だから、最初の初期衝動っぽいやつとかも聴いたことがあるし。あと、わりと普通っぽい曲を聴いたときに、こういうのも作れるんだって思ったかな。

T:それはありがたいです。

砂原:それでなんか、化ける兆候が見えてきたなってそのときは思った。それでアルバムが出たっていうから、聴いたんだけど、「あっ、普通に作るんだな」って思ったかな。ただ、普通なんだけど、サンプルを切り刻むのがね。

T:本当はそれをやりたいけど、メジャーにいくと権利のクリアランスとかもあるので。

砂原:でもそういうのを取り入れるバランス感というか、それはよくできてるなって。電気とかだとさ、そうじゃなくて初期騒動をそのまま7インチで出そうとかってなっちゃうこともあったけど、それをひとりでうまくまとめてる気はしますね。

T:電気グルーヴを見てて思うのが、僕はひとりなんで、それができないっていうのか、それがずっと俺の悩みというか。このひとといたら、俺を開放できるとか。あと、このひとがふざけてくれるから、俺はまじめにやろうとか、そういうのもないので。

砂原:ソロはねぇ、いいところもあるけど、バンドっていいよ(笑)。

ハハハハ! それは何周目かして言える意見だよね。

砂原:バンドってホントいいよ。楽しいしね。

T:いいな!って思いながら見てます。

砂原:僕自身音楽を聴いてきてさ、ソロで好きなひとがいなかったわけじゃないけど、やっぱり最初に好きになるのはバンドだよね。僕の場合は。クラフトワークだって、最初はラルフ・ヒュッターを好きになったわけじゃないし。

たしかに。

砂原:4人が並んでああやっている感じがよかったわけで。YMOやディーヴォやトーキング・ヘッズとかもそうだけど。あのへんはバンドとしてかっこ良かったというか。

そうだよね。そのバンドっていう単位も、現代ではカジュアルではなくなっているよね。この10年で、いろいろなものが変わったからね。たとえば、トーフビーツの『First Album』を聴いてひとつ思ったことがあって。アルバムのなかで、テーマとして「音楽」って言葉をくり返し使うじゃない? まりんがリミックスした曲も“ドント・ストップ・ザ・ミュージック”だけどさ、「音楽を止めないで」っていうのはクリシェ的なところもあるんだけど、トーフビーツが「音楽を」とかって言うとさ……アルバムのはじまりも「音楽サイコー」っていう言葉でしょ。で、「音楽で~」って歌がはじまって、なんか、大袈裟に言うと、「音楽」っていうものはいまどうなっているのか?っていうか。不自然なほど「音楽」という言葉が出てくるんだよ。

T:悲壮感が漂っていることが多いですからね。

「音楽」に、複層的な感情が込められている気がするの。それは夢であり、もはやたんなる消費物で、もはや過去の文化かもしれなとか……それは、トーフがインターネット時代に打ち込みの音楽をやっているということが、大きいと思うんだよね。初期の電気グルーヴがライヴハウスでやっていた時代とはぜんぜん別の世界でしょ。

砂原:うんうん。

だから、トーフビーツのアルバムを聴いていると、なんか問題提起を聞いているような気持ちになるんだよ。

T:みなさん打ち込みだけど、スタジオとかでやって、マスタリングへいって、トラックダウンもひとがやってとか、当たり前ですけど、結局僕は90%くらいが家ですもん。

あと、トーフビーツはわざわざ「僕はメジャー・デビューしました」ってすごく主張するんだけど、90年代に同じことを言ったとしても全然意味が違うというか。

砂原:うん。全然違うよね。

インターネット時代には、ヴェイパーウェイヴだとかチルウェイヴだとか、シーパンクだとかって、ある種のアマチュアリズムを面白がる文化空間があって。そこは、機会のチャンスの増えた分、音楽の価値が相対化している場所でもあるんだよね。だから、トーフの表現には、そのアンビヴァレンスがすごく出ている。

T:アンビヴァレンスというか、僕は単純に昔が羨ましいって一点張りなんで。

ハハハハ。でも『First Album』の前半なんかは、サンプリングをするにしてもスクリューしたりね、それは現代のネット音楽や若い世代が好んで使っている手法なんだよね。そういうディテールは、明らかに現代的なんだけどね。

砂原:あのピッチをすごく落とすのはなんなの? 西海岸のあれなの?

アメリカのテキサスにDJスクリューってやつがいてね。

T:「ピッチを下げたほうがよく歌詞が聴こえるじゃないか」って名言を残しているひとなんですけど。

砂原:なんか僕そういうのを探してたな。エイティーズのもののピッチをガツンと落としたものばっかりあって。そこに俺の曲のネタも入ってて。それで俺の曲とか聴いてんだって思って。

あー、まさにそのノリ。さっき言ったヴェイパーウェイヴとかって。

T:日本語は一番スクリューにいいっていう話しがあって。中高域が出てるから、下げるとちょうどよくなるっていう。

砂原:なるほどね。

T:僕は意味もなくピッチを下げるのが超好きなんです。普通に自分で聴くように、ピッチを70パーセントくらいにしたボニー・ピンクの曲とかがiPhoneに入っているんですよ。そういうのをやりたいみたいな。

砂原:あのピッチを落としたのを聴いたときに、意味はわからないけどすごくいいと思って。

T:DTMをやっていて一番いいのは、現実にはできない音が作れるってところが好きなんで。

砂原:例えばどういう音?

T:サンプルを切るのもそうなんですけど、切ると現実じゃない音を出したりできるのがよくて。ピッチを落とすのもそれに近いというか。

砂原:そういう意味でいうと、僕も昔、音楽を聴いていたときに、タンテで自分が好きなところにピッチを合わせて聴いて「コレは落とした方がいいんだよ」とか、「45回転でもいける」とかね。

T:『音楽図鑑』の“チベタン・ダンス”とかみんなが45でかけているのを見て、俺はあの曲はずっとあの速さだと思っていたんですよ(笑)。家で『音楽図鑑』を聴いてみたら、全然違うじゃんって。

ここ5年くらい、ずっとスクリューは流行りなんだよね。

砂原:あれ流行りなんだね。

アンダーグラウンド・シーンの流行りだよね。だから、トーフビーツは、ポップスを意識しているけど、アンダーグラウンドの要素もちゃんと入っている。そこも電気グルーヴっぽいんだけど、ただし現代では、そういうトレンドが生まれる場所はインターネットで、しかもそこでは音楽がタダでもある。

砂原:そうなんだよね。

だからトーフは、敢えてメジャーにいったってことを強調しなきゃいけない。

T:そうそう。いまはこれで生計を立ててるぞっていう。

そうすると、「音楽を止めないで」っていう彼の言葉も意味深に思えてくるんだよね。

砂原:「音楽を止めないで」は、音楽をやるひとの普遍的なテーマというか、それこそクラフトワークですら「ミュージック・ノン・ストップ」って言っているくらいだから(笑)。でもいまそう言うってことはそういう意味があるってことなんだね。

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俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。──砂原良徳
データもクレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。──トーフビーツ

インターネットはいろんなものを破壊しちゃったから。


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砂原:そういうことができていたのって僕らくらいまでだよね。僕より下の世代とかだと、ACOとかスーパーカーのナカコーとかさ、あのへんの世代って多いじゃん? あの世代になってくると、それで生活できていたひとと、そうじゃないひとが分かれてきている感じがするんだよね。そのくらいからそうなってきていて、現代では、ほとんど難しいっていうことだよね。

そういう意味ではトーフビーツは、シーンというか現在に対して問いかけをしている存在でもあるんだよね。

T:あと、あんまり言いたくはないんですけど、「こうこうこうだから買ってくれ」って言うって感じですけどね。

砂原:難しいよね。昔だったら普通にCDっていう形しか方法がなかったから、お金を出していたんだけど。

T:いまは形がどうこうっていうよりも、あんまりみんな聴いてもないって気もしますし。

砂原:シーンとか音楽の内容とかよりも、システムの話になっちゃうけど、昔だったらCDやレコードの棚とかプレイヤーを買ってさ、そういうことをやらなきゃいけなかったじゃない? 音楽を聴くためのシステムとして、棚からプレイヤーから全部あったってことなんだけど、いまそれをきちんと代用できるものがないんだよね。

T:たしかに。

砂原:たとえば、iTuneで買っても歌詞カードはどこで見るんだよっていう。

T:クレジットも見れないし。

砂原:そうそう。そういうところがパーフェクトにできるシステムが存在していないわけ。お金を稼ぐことだけがその唯一の道じゃないと思うけど、世界中の音楽ビジネスを守っていきたいってひとがいたら、ある程度は合意して統合したシステムを作らないといけないと、守れないような気がしているんだよね。
 だから、「いまハイレゾって言っとけば、とりあえずは稼げるか」みたいな雑なビジネスをしようとしているひとはいっぱいいるでしょう?

ハハハハ。

砂原:そうじゃないひともいるけども、せっかくハイレゾにするんだったら、もうちょっと音楽が周りのことも巻き込んでカルチャーを作ってきたことを認識して、いままでできてきたことを当たり前のようにできるようにしなきゃいけないんじゃない? なんでそうしないのかなって思うんだけど。

T:それはホントにマジですよね。

砂原:音だけ良くなったらいいと思う?

T:僕、ハイレゾはあんまり信仰していないです。

砂原:まぁ、音が良いのはいいんだけどね。

T:先日、小室哲哉さんと対談させて頂いたんですけど、作っていたときの音質で聴ければ大丈夫だよっていう。

砂原:それはそうなんだけど、歌詞カードもクレジットもないし。ヴィジュアル的に音楽を聴くためのきっかけみたいなものを与えてくれないとうかね。

T:ハイレゾの機械はデカいし、液晶画面は小さいから、iPhoneよりもテンションが下がるんじゃねえかって思いますよね。

砂原:それでなんでiPodクラシックがバカ売れしてくるかっていうと、入れる曲そのものがなかったりとか、電話とプレイヤーが一緒になっていると、電話がかかってくると音楽を止めなきゃいけないからっていうのもあるんじゃないかな。「音楽を止めないで」って言っているのにさ(笑)。

T:そうそう。それはありますね。

砂原:あるでしょう? だから音楽プレイヤーは独立する必要性があると僕は思うんだよね。

友人にハイレゾでまた音楽に夢中になっている男がいて、それなりに魅力はあるんじゃないの。

砂原:ハイレゾ自体はそうなんだけど、なんでそこで止まるんだってね。

T:結局はヘッドフォンを売るためとか、そういうところに着地しているような気がしてて。

砂原:カルチャーを守ろうとか育てるっていう気があまりなくて、「とりあえずお金になるものはなんだ?」ってところしか考えていない感じがしちゃう。音が良いことだけで満足できるひともいるとは思うんだけどね。

T:自分のインタヴューでも言うんですけど、「最近は音楽そのものがカッコいいと思われていないんじゃないか?」説というものがあって。最近、マネージャーと〈トリロジー・テープス〉の話しをしていて、あれを聴いてカッコいいって話せるひとが国内に数百人くらいしかいない。「これをどうすればいいんだ!」っていう話になっても、「どうすることもできないよね」ってなるんです。そもそも「CDを出しました、買ってください」ってところを、昔に比べたら聴いているひとの10分の1くらいしか音楽をカッコいいと思っていないんじゃないかなって。

砂原:テレビを見ているとさ、これから音楽が流行りますってなってCDプレイヤーが出てきて、芸人が「えっ! いまどき!?」って言うシーンを何回も見てるよ。だから一般的な考えだと、CD買ったり、CDプレイヤーを持っていることって「いまどきそんなことあんの?」みたいなことなんだよ。

T:電車で隣のひととかを見ていても、携帯でYouTubeを開いて曲を聴いてる、みたいな。

それはホントに多いよね。ほとんどスマホでYouTubeで音楽聴いているよね。

T:それが悪いこととは言えないんですけど。でも昔みたいに、ウォークマンでカセットのミックスを聴いてる俺ってもうないわけで。それはどうにかならないのかってよく思うんですけどね。

砂原:YouTubeが潰れるだけで、状況は随分と変わると思うけどね。

T:YouTubeが潰れても状況は変わらないんじゃないですか?

砂原:いや、変わってくると思うね。YouTubeに情報が一極集中で蓄えられているのが僕は問題だとおもうんだよね。だから、それが分散していけば違ってくるんじゃないかな。投稿系はここで、聴く用の音楽はここ、みたいにね。でも、YouTubeがどういうものかよくわからないからね。日本のものでもないし。

トーフビーツの場合は、そこでネガティヴなことも言っているけど……

T:恩恵も超受けている世代でもあるんですよね。

砂原:もしYouTubeに違法アップロードがなくなったとしても、プロモーション的なことはそこでやるわけじゃん? そういう合法のものもあるわけで、それはこっちが認証するかしないかの話だから、それはそれでいいと思う。でも買ったCDを違法に拡散する権利を俺は獲得したと思っているひとがいるけども。

T:そのおかげで、僕たちが中高時代の音楽を聴けた側面も無視はできないというか。

砂原:それを言ったら、レコード時代からカセットのコピーとかはあったし。レンタル・レコード屋で堂々とカセットが売られていたりとか。そういうことは昔からある程度あったからね。みんながそうなったっていうのが問題なんだよね。

T:結局、それが普通になっちゃって、たまに大学生に会うんですけど、CDを買ったことがないっていうレベルのひともいるんですよ。CDドライヴがついていないパソコンもありますからね。

砂原:俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。

T:でも、データも(高校生にとっては)クレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。

砂原:なるほどね。カードがなきゃ買えないか。

T:母校の高校生に話を聞いたら、みんなPCでDJをはじめているんですよ。オートでピッチを合わせてくれるやるです。「曲はどうしてるの?」って聞くと「サウンドクラウドで落としてます」みたいな。どうしよう?ですよね(笑)。何もかける言葉がない、みたいな。

トーフビーツはインターネットの恩恵を授かりながら、アナログ盤も必ず出すじゃない? ホント引き裂かれているっていうか。

T:それはアナログを自分が買うからなんですけどね。

トーフのアナログ盤って売れているんだよね。CDもちゃんと売ってるでしょう。

T:でも、絶対的な量でいうと、1万って大学のひと学年より少ないわけですから。

まぁ、いまの時代を考えると、それだけでもね。

T:普通に考えて、1万売れたら僕らも「おー!」ってテンションが上がるんですけど、俺の母校のひとたち全員にCDが売れたらオリコンでデイリー1位だって思う虚無感というか。幕張メッセでフェスをやってて、ここにいるひとたち全員がCDを買ったらオリコンで絶対に1位って思う、あの感じが……。

砂原:いや、そう考えると1万なんて規模はすごく小さいよ。業界はそれに馴れちゃって、「1万、うぉー! やったー!」って感じかもしれないけど、冷静にみたら全然そうじゃないからね。

T:フェスもいいんですけど、「CDは買わなくて4千円のTシャツを買って帰るって、なんなんだそれ!?」って。

砂原:ハハハハ。

T:この状況はほんとにどうしよう?って思います。自分がそう思ってても、そうじゃないひとが大半だとしたら、俺にはこれはどうすることもできんと。でも「どうにかなるんやったら、一応ここにおったらおもろいかな」みたいな。この状況がどうなるか見てみたいなと。

砂原:昔は音楽を楽しもうと思ったら受け手に回ろうと思うことが多かったんだけど……

T:いまはみんなやり出すんですよね。

砂原:そう。やるってこと自体が音楽を楽しむ形に変わってきている。だから、電子楽器とかはそれなりに売れていると思うんだよね。

T:だから高校生のDJがめっちゃ増えているんですよ。

砂原:パソコンに何かをくっつける形で何かとりあえずはできるじゃない? そう考えると、受け手になるよりも送り手になって楽しもうってひとが多くて。たとえば、20人、30人のサークルみたいなものが星のように日本中にあってさ、定期的にイベントをやったりして。そこから爆発的に広がっていくことは稀だと思うけど、そういうものが点在していて音楽自体の勢いは、そういうところに担保されていると僕は思うんだよね。

T:楽器メーカーの調子がいいみたいな話ですよね?

砂原:だから消費していくという形だけじゃくて、消費しながらも送り手に回るっていうそういう状況に変わってきている感じがするかなって。

T:でも、純粋に音楽ファンとしてインストラクターと生徒だけみたいになるのって気持ち悪いなって気もするんですよね。

砂原:それはわかるね。

T:いま、DJスクールってむちゃくちゃあるんですよね。道玄坂にも大きいのができて。

砂原:学校を批判するわけじゃないけど、DJスクールって何を教えてくれるの?

T:知らないですよ、そんなの(笑)。言い方が悪いですけど、DJなんて30分あれば仕組みなんて全部わかるんですから。あとはそれをどうするかって話じゃないですか? ギターとかと全然違いますよ。

砂原:それこそ寺とかに3日くらい入って、最初の30分だけDJのインストラクションをしてあとは座禅でも組んで叩かれたりした方が、よっぽどいいDJができそうだよね(笑)。

T:座学みたいな話ですからね。

砂原:でさぁ、いろんなひとがいるんだけれども、たまにそういう若い子と接して「何かやってみなよ!」って言っても何をやっていいのかわからない。でも、何をどうやるかっていうことはみんなわかっている。この状況は異常だなって僕は思うんだよね。

T:最近よく言うんですけど、DTMをやっているひとは多いと。ただ、面白くないひともいると。

砂原:面白くないひとのほうが多いよ。好みは増えたよね。

T:でも、その溝は何なんだって話をみんなでしてたんです。たとえば素人とひとが、プロの描いた丸と素人が描いた丸を見分けられんのか、みたいな話で。僕らもDTMで作っている。それで若い子も作っていると。その間の違いを売上っていう意味でもそこまでちゃんと説明できていないし。

砂原:それはでも、説明できるものであったらつまらないと思うね。

T:でもそれで結局、「打ち込みってあんまりうまくないひとが多いんだ」ってイメージがついていって、「打ち込みとかダサくね?」みたいになったら大丈夫かよって思います。いまって音楽のほとんどが打ち込みですからね。いまのアイドルとかもそうですけど、よくわからないアイドルがいっぱい出てきて、良いアイドルもいるけど、「アイドルってつまんなくね?」ってあるけど、打ち込みがそうならないのかっていう。

砂原:わかる。たまにYouTubeとかに自分で作りましたってやつが上がってて、ヒドいのがあるときはあるよね。

T:あとはそれっぽいだけとか。上手いけど毒がないというか。

砂原:要するに手法だけを知っていてコアがないというか。

T:自分でお金を使って音楽を聴いていない、つまりギャンブルをして対価を得ていないから、そりゃそうだろって気もするんですよね。痛い目をみないと覚えないじゃないですか? だからネットで流行っぽいものを聴いて、それを作る方法を自分で調べて、それっぽいモノを作って俺に送ってくれたりするんですけけど「うーん」って思うんです。だけど、サークルでそうやってみんなで楽しいってなったら……。

砂原:わかるわかる。だから、それのことも言ってるんだよね。

T:だから自分が音楽をやるんだったら、説明をちゃんとしなきゃダメだ、みたいな。だからアナログを切ることもしないといけないわけです。それでも、わかってくれるひとはちょっとだろうって気持ちはあるというか。

砂原:若い子の方がそういう危機感はあるのかもね。

T:同世代に対しては余計ありますね。「コイツら、何も考えてないんだな」というか。

砂原:ちょっと、ソニーの会社にきてその話をみんなにこれからしてあげようよ。

ハハハハ。

T:そういうことを言ってたら、ソニーから3年くらい前にパーンってされて(笑)。「iTuneやりましょうよ!」、パーンッみたいな。

砂原:それでやってんじゃん、みたいなね。

T:あとあとね。あのときはスゲえ笑いましたよ。だからそのときはアグリゲーターと個人で契約して、僕はiTunesでシングルを出しました。そういう感じでやってましたね。

砂原:そういえば、ミュージック・アンリミテッドがなくなったんだよね? スポティファイに変わるんだっけ。あれは合併なの? 名前は消えるんだよね? それって吸収されたってことじゃないの(笑)?

T:まぁ、スポティファイの方がブランドは強いですよね。

砂原:データとして、いままでアナログやCDでできていたことがある程度は仮想現実として確立すれば、音楽産業にお金が入ってきて自分たちのやりたいことができると僕は思うんだよね。世界中のいろんな事情が関係あるからさ、どっちにいくかはわからないけど。最近、アナログが爆発的に売れてって言うひとがいるけど、あれは勘違いだから。

T:「爆発的」ではないですよね。

砂原:それこそスカイマークの株とかでもいいんだけどさ(笑)。

T:ハハハハ!

砂原:株を持ちまくったらちょっと上がるから。どんなもので落ちるときは大体落ちて、またちょっと上がるって感じだよね。だから、そのちょっと上がっているところを指して「去年の20倍」っていうのは、去年がすごく落ちていただけじゃんっていう。

でも、実際に工場にプレスを頼むと予約がいっぱいなんだよ。

T:まぁ、それは工場が減ったというのもありますからね。

UKとUSは事情が全然違っていて、ヨーロッパはどっちかっていうと昔のリイシュー版をアナログ180グラムで出すっていうのがメインなんだけど、USはトーフビーツじゃないけど、ネットの洗礼を世界でいち早く浴びている国なんだよね。最初にタワーレコードがなくなって、作品では稼げないかもという瀬戸際でやっている国だから、インディ・シーンにとってのアナログ盤、カセットテープは、ちょっと切実な問題かもね。

T:USとかってインディはフィジカルでちょろっと100、100くらいで出して、あとはデータで売ってツアーで回るって感じですよね。

砂原:「100、100」っていうのは100枚ずつ出すってこと?

T:そうですね。カセット100本、7インチ100枚とか作って。

砂原:100枚じゃねぇ……。

ちょっと話題になっている人でも、まあ、500枚限定から、いっても1000枚とかね。とにかく、音楽を取り巻くシーンは、こうやって変化しているわけですよ。

砂原:でも起こっていることは大体わかっているというか。気にはしていることだけどね。もし自分にたくさんのお金と決定権があったら、統一規格を作りたいなと。そうしたほうが、一番音楽って変わるんじゃないかなって僕は思うんだよね。

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すごいモノを作っているやつに「何を聴いてきたの?」って聞いて「いや、何も聴いてない」って答えられるのが一番恐いていうか、「うわぁ、お前すげえ!」って。──砂原良徳
でも、インターネットをやっていてわかったのは、何かしらをやっていたやつからじゃないと、結局は何も出てこないってことなんですよ。──トーフビーツ


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First Album Remixes

WARNER MUSIC JAPAN INC.

J-PopTechnoHouseEDMExperimental

Amazon iTunes

PC一台で音楽が作れて、発表の場もあって、それは、民主主義的には良いとするじゃない? もうひとつ問題提起すると、インターネット時代の作り手の多くが、歴史から切り離されているってことだよね。まりんやトーフビーツにはバックボーンがあるけど、歴史なんてそんな重たいモノ、必要ないじゃんっていう考え方もあるし……

砂原:俺はそのなかからとんでもないものが出てくる可能性ってかなり高いと思っているけど。

それはたしかにあるんだよ。

砂原:それが一番恐ろしいというか、すごいところっていうか。

さっき言ったペーパーウェイヴやシーパンクみたいなものって、ひょっとしたら彼らにはある程度の知識はあるんだろうけど。

T:彼らはどっちかって言うと、歴史参照派ですよ。

砂原:すごいモノを作っているやつに「何を聴いてきたの?」って聞いて「いや、何も聴いてない」って答えられるのが一番恐いていうか、「うわぁ、お前すげえ!」って。

T:でも、インターネットをやっていてわかったのは、何かしらをやっていたやつからじゃないと、結局は何も出てこないってことなんですよ。

砂原:なるほどね。

T:これが逆に言うとよくわかるというのがあって。今回のリミックスにまりんさんを呼んで、僕の友だちもたくさん入れたのは、言い方は悪いですけど、僕の友だちはプロの仕事を全然見たことがないから、自分と同じレベルの素材をもらってどうなるかっていうのを、見てほしかったっていうのもあるんですよね。

あー、そこには熟練や経験も必要だと。

T:自分がメジャーにいって、マスタリングをひとにやってもらったりとか、そういうことの機会さえ普通のひとには与えられていないわけですよ。今回のまりんさんの納品のされ方とかも、「ちゃんとこのビット・レートで長さはこのくらいで納品してくださっていますよ」とか、「原曲のパラデータをちゃんと歌以外のところも使っていますよ」とか。そういうのって勉強というよりも経験と自分が習得した技術の上にしか絶対に築けないんですよ。突然の天才も出てくるんですけど、そいつも見ず知らずにうちにやっているから、意識して勉強しないで出てくるって話で。

砂原:そうだね。

T:その手の知り合いが長野にひとりいるんですけど、結局は見ず知らずのうちに勉強していたってことなんですよ。してないって思っていただけで。昔みたいに、勉強のためにスタジオに入るような端から見て明らかに歴史を勉強したっていうのがないだけで、逆に家にいながらもトップクラスの勉強ができる時代にはなってきているんですよね。

砂原:それはそれでいいよね。

T:だから、僕らも早い段階でDTMをはじめられたと思うんですけど。

砂原:昔ははじめるとなったら一大決心というか。出家に近い感じだったからね(笑)。

T:何十万とか、何百万の世界ですもんね。DTMがギターみたいになればいいって思ったりもするんですよね。

砂原:昔は僕がテクノをやろうと思ったら、ドラムマシンを買って、シーケンサーを買って、シンセサイザーを買って、MTRを買ってってさ、一通りやろうと思ったら最低でも5、60万はかかっちゃうわけ。でもギターのやつは5万円で済むわけ(笑)。ギターはスタジオに抱えて来れるじゃん? 俺なんか父ちゃんにお願いして、車で運んでもらって機材を一緒にセッティングしてってすげえ大変だったんだよ(笑)。昔はホントに大変だったけど、いまは逆に一番楽になっちゃっているもんな。

T:そうですね。

砂原:USBだけもってきましたとかさ。

T:ライヴとかでは、僕はラップトップだけなんですけど、家で作るときはどうしてもそれがいやで。ハードを使いたくて、使いたくて、みたいなのがすごくありました。僕の周りで一緒にやっているひとはけっこうお金をハードに使ってますね。逆にみんなパソコンだけの音だから、それだけでやっていても面白くないというか、ベッタリしちゃうから。ハードを買うくらいの努力はしなきゃ無理っていうか。

砂原:買えば全てを解決できるとは言わないけど、でもやっぱりそこにはそういう差がある程度は存在するよね。

T:そうそう。めちゃくちゃあればいいってわけでもないですけど、必要なものは必要だなと。

砂原:ただ僕は、それなりの時間を使って、すごく高い機材を使ったりとか、すごく高いスタジオを使ったりしてきたけど、たまにインターフェイスとパソコンだけですごい音が良いひととかいて、そのときは「うわぁ、恥ずかしいな、俺」って思うね(笑)。これを使えば間違いなく音がよくなるって機材はいまもあるんだけど、僕はそういうのを安易に採用しないようにしているんだよね。やっぱり、同じ土俵で戦いたいというのが自分のなかであって。にしてもお金は使わなきゃだめだけどね。

T:そんなことを言ったらプラグインだってそうじゃないですか? パソコンだけでやるひともプラグインに金を使っているかもしれないし。

砂原:昔はプラグインもすごく高かったんだよ。

T:って言いますよね。僕が高校のときと比べても、いまは当時の半分以下というかね。

砂原:いや、4分の1くらいじゃない?

T:僕は高校生のときにアカデミック版のエイブルトンを買ったんだけど、それでも8万円とかして、「学生じゃ買えねえよ!」ってなったのを憶えてますもん。

砂原:プラグインを買うにしても、WAVESに何十万と使ってたよ。

T:WAVESは良いやつだといまでも40万くらいはしますよ。でも年に1回くらいは安くなったりするっていう。あれ、すげえ腹立つんですよね(笑)。

砂原:腹立つよね(笑)。でも、昔は売れたらお金が入るからさ、たとえば、ファッション、映像、文学の世界のひとたちが音楽の世界に入ってくるんだよね。だから違うジャンルの融合みたいなものが盛んにあったような気がするんだけど。そういうのが一時よりは減っている感じがするね。

T:てか、いまは全員がお金がないっていう。ファッションも映像もデザインもないし。

 

※以下、続編&ele-king vol.16(3月30日発売)に続く……。

アイスランド・ミュージシャン・インタヴュー・シリーズ#2:
interview with Sindri Eldon(シンドリ・エルドン)

アイスランド・ミュージシャン・インタヴュー・シリーズ#3:
interview with Paul Fontaine(ポール・フォンティン)

アイスランド・ミュージシャン・インタヴュー・シリーズ#4:
interview with Leifur Bjornsson(レイファー・ビョーンソン)

 この2年、アイスランド・エアウエイブスというレイキャビックでおこなわれるフェスティヴァルで、アイスランドのインディペンデント・ミュージックの活き活きとしたシーンに感銘を受けた。フェスということもあって、都市自体が盛り上がっていたこともあるが、バンドのクオリティの高さ、年齢幅の広さ、国をあげてフェスをサポートする姿勢(飛行機に乗るとブローシャーが配られ、音楽プログラムには、エアウエイブスのチャンネルがある)などから、アイスランドという国にも興味が湧いた。
 初めてアイスランドに行ったときは、レイキャビック以外の郊外にも出かけたのでショックが倍だった。違う惑星かと思うくらい、厳しい自然の姿が目の前に広がる。これが日常なら、私たちは違った感覚も生まれるのではないかと思えるほど。

 ここに、アイスランド・シーンのキーパーソン3人のインタヴューを紹介する。3人とも、経済破綻に関係なく、アーティストはずっと貧乏だというが、バーに入るのに夜中の3時でも行列を作り、街で浮浪者を見たこともないし、治安も良い街では、その言葉の意味も、私たちの使っているそれとはちょっと違うのではないかと思えてしまう。
 街が小さくて、街を出て行っても、しばらくするとアイスランドに戻ってくる人が多いのもそのため?

 音楽、アートなどの文化に関しては、気候(寒くて外に出れない)、国民性(大酒呑みでフレンドリー)、アイスランドに対する批判的な意見はあるが、自分にはどうしようもない、ここに居るしかない、という一種の諦めが、創造性を掻き立て、クオリティが上げているのだろう。
 子供の頃から、文化に触れる機会が多々あることや(エアウエイヴスには親子連れに観客や18歳以下のバンドも多い)、アイスランドのイメージからは遠い、アフロ、レゲエ、ヒップホップ、ラップ・シーンまである多様性も、音楽シーンを独特にしている。それら音楽にアイスランド語が乗ると別物に聞こえる。
 平均的なアイスランド人はグローバリゼーションには関心がないようだが、シーンはとてもグローバリズムに感じる。

まず自己紹介をお願いします。

Sindri(シンドリ):僕は、あまり知られていないミュージシャンで、翻訳とソーシャル・メディアでお金を稼いでいます。

※Sindri Eldon
ミュージシャン(シンドリ・エルドン&ザ・ウェイズ)、ソーシャルメディア&翻訳家。アイスランド出身。
https://soundcloud.com/sindri-eldon

Paul Fontaine(ポール・フォンティン):僕はジャーナリスト/ライターのポール・フォンティンです。grapevine.isで僕の書いた記事が読めます。

※Paul Fontaine
ジャーナリスト、ライター。アメリカ、メリーランド州出身。
媒体grapevineで執筆。
Paulの記事はこちら: https://grapevine.is/author/paul-nikolov/

Leifur Bjornsson(レイファー・ビョンソン): 僕はレイファー・ビョンソンです。ロウ・ロアというバンドでキーボードやビート、サンプラーを担当しています。僕は、ロンドンで勉強をしていたアイスランド人の両親から生まれました。アイスランドに戻ってからは、西海岸の小さな街で育ち、怖いもの知らずの、とても自由な環境で育ちました。

※Leifur Bjornsson
アイスランドのバンドLow Roarのメンバー。アイスランド出身。
https://www.lowroarmusic.com

どのくらいアイスランド(レイキャビック)に住んでいますか。現地の生活について教えてください。

S:行ったり来たりしているけど、だいたいアイスランドに住んでいます。一番長くアイスランドから離れていたときで3、4年ぐらい。小さいときはロンドンに住んでいました。しかし、僕はアイスランドが大嫌いで、なんとか離れようとしています。頑固で頭が小さく、外国人嫌いで、貪欲な保守的な大バカ者と自己中心なスノッブが、不注意に共謀し、出来るだけ物を高く、視野を狭く、古い考えに持っていく、愚かで無意味な小さな国です。田舎は素敵ですが、それは人があまりりいないからです。

P:15年ぐらい前にアメリカからアイスランドに引っ越してきて、ここ8年はアイスランドの市民です。僕の人生のように、ここはとても快適です。

L:レイキャヴィックには高校に進学する為に引っ越し、それ以来ずっとここで暮らしています。レイキャヴィックは素敵な街ですが、小さいと感じる時が良くあります。幸運な事に、僕はバンドで、時々ここを離れる事が出来ますが、レイキャビックは、素晴らしい自然に囲まれているので、それもここに住む利点だと思います。

ポールはなぜイスランドに引っ越したのですか? アメリカからアイスランドに引っ越すのは簡単ですか?

P:僕は元々メリーランド州のバルチモア出身です(TVシリーズの「ザ・ワイア」を見たことあるならそこです)。アイスランドに引っ越したのは冒険心からです。1998年にヴァケーションで来て、国を旅行しているうちに何人かのアイスランド人に会い、同じ年の後半に、またこの新しい友だちに会いにきました。バルチモアに戻ってから、真剣にアイスランドに引っ越すことを考え始めました。何故なら……出来るときにやろうと決めたからです。もしうまくいかなかったら、戻ってきたら良いだけですし。結果うまくいったのです。ヨーロッパ以外の国から引っ越すとなるとアイスランドは難しいです。引っ越す前に、仕事と住むところが必要です(幸運にも僕には助けてくれる友だちがいました)。市民になりたいのなら、7年間は法に触れることができませんし、6ヶ月以上国を離れることは出来ません。ヨーロッパの人は、比較的簡単にアイスランドに引っ越せます。

バルチモアとアイスランド(レイキャビック)とではインディ・ミュージックシーンはどう違いますか。

P:面白い質問ですね。と言うのは、バルチモアとレイキャビックは同じようなインディ・ミュージックシーンがあると思うからです。お互いのショーに行き、サイドプロジェクトのためにメンバーを交換したり、バンドはお互いをサポートしています。ですが、アイスランドのミュージシャンは、バルチモアより世界に露出できる確率が高いと思います。

アメリカとアイスランドでは生活費などは違いますね。アイスランドは生活コストが高いですが、どの様に暮らしているでしょう。

P:アイスランドは世界で4番目に物価の高い国です。冗談じゃないです。しかも、右翼の政府は、食べ物の税を上げたばかりです。食べ物ですよ!

アイスランド語はとても難しい言語ですが、あなたはアイスランド語をはなしますか? もし話せないのであれば、そこに住んでいて疎外感など感じることはないのでしょうか。

P:僕はアイスランド語を話します。英語と同じ言語家族ですが、習得するのはかなり難しい言語です。僕は字幕のついたテレビをたくさん見て覚えましたが、この方法はオススメしません。僕もアウトサイダーの気持ちはわかります。まだ言葉を理解できない1年目は孤独でした。とにかく習えるだけ習って、移民の友だちも作り、結果たくさんのアイスランド人の友だちができました。

私は、2013/14年のアイスランド・エアウエイヴス時にレイキャヴィックに滞在し、ユニークなインディ音楽シーンと文化に魅せられました。アイスランドは、一度経済崩壊した国にも関わらず、少なくとも、同じように、経済的、将来の不安にさらされながら、活動している他の国のインディバンド達に比べて、とても元気で活発なエネルギーがあります。それはなぜでしょうか。

S:経済崩壊は、バンドの人たちに影響を与えませんでした。彼らは元々お金を持っていなかったし、崩壊しても、失うものがありませんでした。一般的に言って、この国はうまく渡っていて、ほとんどの人は借金のために働く賃金奴隷ですが、道で食べ物に困って倒れているわけではありません(いまの政府は、この10年の間にみんな貧困で死ぬように働きかけているけど)。なので、彼らは趣味でバンドをするための時間、お金、エネルギーがあります。ここの90%の音楽シーンはアマチュアが基本で、ミュージシャン、テクニシャン、ブッキング・エージェントも、本当の「仕事」を持ちながら、自分たちの音楽をサポートしています。ここにも、経済的、将来への不安はありますが、単純に、ミュージシャンでやっていける人はいないし、だから基本的に何も変わらないし、経済がどうであれ、僕たちは、やっぱり貧乏で必死にもがいているのです。

P:抜け目ない観察力ですね(笑)。たしかに、とくにレイキャヴィックは、長いあいだ、とても良い揺れ動くようなインディペンデント音楽シーンがあります。最近は、競合するようになりましたが、地元のバンドはお互いを助け合っていますし、違うバンドのメンバーたちが、同じ音楽シーンから出てきて、一貫性の感覚を加えます。正直に言って、インディペンデントミュージシャンは元々貧乏で、厳しい中で繁栄しプレイし続けるので、良くも悪くも、経済が音楽シーンに影響したとは思いません。

L:ここアイスランドは、たしかに生々しく、保存された才能に溢れています。音楽コミュニティはとても小さく孤立していますが、ほとんどのミュージシャンは、いくつかのバンドを掛け持ちし、リンクしています。アイスランドの音楽シーンの人びとは、音楽やアートを作ることだけに占領されず、ラジオやメディアなど、あらかじめ決められた基準にフィットしているような気がしますが、これが物事を本物で新鮮にしているのかもしれません。経済破綻のあるなしに関わらず、アートは発見されるのです。アイスランド通貨の低下など、良い面、悪い面はありますが、アイスランドは、いままでで最高に観光地として人気で、アイスランド文化やアートへの興味がどんどん上がりました。

レイキャヴィックに、マクドナルドやスターバックスがないのはなぜでしょうか?

S:マクドナルドやスターバックスが他の国で占めているニッチな部分を、ここでは他のチェーン店が占めています。マクドナルドの支店は、10年ほどありましたが、彼らは生き残れませんでした。なぜかはわかりませんが、アイスランドの人びとは、すでにドミノピザ、KFC、サブウェイなどを食べ過ぎていたので、マクドナルドがなくても困らなかったのではないでしょうか。スターバックスについては、アイスランドには、KaffitárとTe & Kaffiというふたつの地元のチェーン店があって、スターバックスと同じような機能を果たしているからだと思います。

P:はは、その通りです! 最後のマクドナルドがアイスランドを去ったのは2008年。マクドナルドの材料を輸入するにはコストがかかりすぎで、ちっぽけな値段でしかチャージできないからだと思います(マクドナルドには、彼らが生産した物しか使わないと言う、材料に厳しい規定があります)。それにマクドナルドは、ドミノピザなどの、他のチェーン店に比べ、アメリカンフードとして、そこまで人気がでなかったです。スターバックスに関しては、ここには、Te og Kaffi(tea and coffee) という同じようなチェーン店があって、すでにコーヒー市場を占領していて、さらには個人経営のコーヒーショップもあります。スターバックスのアイスコーヒーのボトルはスーパーマーケットで見かけますが、スターバックスがアイスランドで生き残れるチャンスは少ないと思います。小さな市場にたくさんの競争相手です。

 注:アイスランドで最後に出されたマクドナルドのチーズバーガー(2008年)が、6年たっても変わらないという記事がPaulも執筆する媒体に出ている。
https://grapevine.is/news/2015/01/26/last-mcdonalds-burger-sold-in-iceland-unchanged-after-6-years/

L:アイスランドにマクドナルドは昔ありましたが、スターバックスはないです。何故だかわかりませんが、大手の企業はこんな小さな市場、たった30万人の人口から、十分な利益が出ると思わなかったのでしょう。アイスランド人はクールなので、大企業はまわりにいらないという人もいますが、そうだとは思いません。アイスランドの郊外の生活を見たらわかると思いますが、何処でもあるような光景が広がっていて、全然クールだと思いません(笑)。

アイスランドの人びとは、反グローバリゼーションを意識しているのでしょうか? またアイスランドがEUに加盟しない理由はなんでしょうか?

S:アイスランドはEU加盟国ではありません。この問題はいまも続いていて、僕が覚えている限り、熱い討論になることもあります。いまの政府は、無能なハッカーと貪欲者、操られた田舎者によって成っていて、なかにはEUへの加入についての話し合いを辞めるように、任意に決める反社会者ギリギリの人もいます。なので、いまのところEUに加盟していませんが、いままで起こっていることを総体し考えると、それが良いのかもしれません。個人的にはどちらでも良いですし、正直に言って、僕の毎日の生活がからりと変わるとは思えないし、EU加入国になったら、魚が載っている馬鹿げたコインを使わなくてよいぐらいだと思います。
 反グローバリゼーションについてはわかりません。わかっているのは、グローバリゼーションがなければ、アイスランドは存在していないでしょう。我々はほとんどの物を輸入に頼っていますし、個人的に僕は、グローバリゼーションのプロです。でも君もわかっていると思いますが、僕にはアイスランド全体のことは話せません。

P:アイスランドから見て、グローバリゼーションとEUへの加盟は別の問題と考えています。平均的なアイスランド人は、彼らがグローバルな企業から買う製品は、発展途上国で低賃金で作られた物で、未開発で危険な時もあるとは、そんなに真剣に考えていません。
 EUについては、ほとんどのアイスランド人は加盟することに反対です。ただし、反対意見にも、問題について意見を混ぜています。いまの右翼の政府は加盟に反対していますが、反対の左翼は問題に対して国民投票を望んでいます。アイスランドがEUに加盟するのは、良くも悪くも、時間の問題だと思います。

L:グローバリゼーションはアイスランドではそんなに大きな問題ではないので、人びとはあまり気にしていませんが、EUは大きな問題です。EUに加盟しないのが、良いのか悪いのかわかりませんが、一般の人びとは良いと思っているのでしょう。アイスランドは、世界で10本の指に入る物価の高い国ですが、人びとはそんなにお金を稼ぎません。問題はアイスランドが他の国と天然資源を共有しないことかもしれませんが、僕にはわかりません。

ビョークのニューアルバムが発売されましたが、ビョークはアイスランドでも特別人気があるのでしょうか? レイキャヴィックで素晴らしいバンドをたくさん見た後では、ビョークもアイスランドではごく普通なのではと思いました。

S:君はだいたい正しいと思います。ビョークは、ここではそこまで人気ではありません。ヨーロッパで人気がでるまで、彼女やシュガーキューブのことを誰も凄いと思っていませんでしたが、ここでは良くある話なのです。実際同じことは、オロフ・アーナルズやオーラヴル・アルナルズ、アウスゲイル、オブ・モンスターズ・アンド・メンに起こっています。いまでも、ここでは彼らのことを聞いている人はあまりいません。彼らは、アイスランド以外で人気があるのです。ビョークは、ここ何年かでアイスランドの顔になってきましたが、いまでも平均的なアイスランド人はそんなに彼女を聞かないし、聞くのは他の場所と同じように、アーティなオルタナティブ・キッズのみだと思っています。

P:アイスランド人は、もちろんビョークが好きですが、他の国ほど彼女に対して大騒ぎはしません。彼らは、彼女を地元ではなく、グローバルシーンにいる、一人のアイスランド人としてみています。彼女を尊敬し賞賛していますが、地元で活躍するアーティストの方に注目しているのではないでしょうか。

L:アイスランドはビョークが誰かは知っていますが、知名度はそこまで大きくはありません。僕のまわりの人たちはビョークの作品を高く評価し、素晴らしいアーティストだと思っています。しかし地元のメディアや僕のまわり以外は、そこまでではありません。一般的なアイスランド人は、ビョークが世界的にインパクトあるアーティストだと思っていないのではないでしょうか。

シンドラはアイスランドが大嫌い、ということですが、どこに住んでみたいなど、希望はあるのでしょうか。

S:いま、シアトルに引っ越そうと思っています。僕の妻がシアトル出身で素敵な都市だし、快適に暮らせると思うのです。

アイスランドの音楽に共通する特徴は何だと思いますか? 自然主義的なところはひとつあると思うのですが。

P:難しいですね。アイスランドの音楽は、他の国の同様に多種多様です。世界的に知られているとは思いませんが、アイスランドのラップ・シーンもあります。一般的に言って、アイスランドのポップ音楽はインディ・テイストに、ソフトロック、アコースティック、フォーキーな感覚が備わったものが多いと思います。Of Monsters And Menなんかは良い例です。

L:自分のまわりの自然、話す言葉の響きなど、人は自分の置かれた環境に影響を受けるので、それがアートにも表れるのでしょう。ある場所の、全ての音楽に共通点を見つけるの、難しいです。恵まれたことに、たくさん種類のアイスランド音楽がありますから。

アイスランドで好きなバンドを教えて下さい。彼らはコミュニティとして存在するのか、より独立しているのでしょうか?

P:お恥ずかしいことに、そんなにたくさん「いま」のアイスランドの音楽を聴いていないのですが、僕がアイスランドのミュージシャンで好きなのは、100,000 Naglbitar、とくにアルバム『Vögguvísir fyrir skugguprins』、Emiliana Torriniのアルバム『The Fisherman's Wife』、Ragnheiður Gröndalのモノならなんでも。彼女の声は素晴らしいです。『Rokk í Reykjavík』のサウンドトラックや、Mammút、友だちのシンドリも、とても良い作品を作ります。

L:すでにレコードを出しているアーティストなら、Múm, Sin Fang, Sóleyなど。新しい物なら、Mr. Silla のニュー・アルバムは楽しみです。今日はいつも素晴らしいと思う、スロウブロウというアイスランドの古い音楽を聞いていました。新しい物、古い物、どちらも良い物がたくさんあります。

ShotahiramaをTOWER RECORDS渋谷店で! - ele-king

 Shotahirama、この若き才能は何に苛立ち、何に戸惑い、そして何に向かって疾駆しているのだろうか──。本日掲載のディスクレヴューに加え、近日公開の三田格氏によるインタヴューからは興味深いアーティスト像が次々と露わになるようでいて、むしろミステリアスさの度合いも強まっていく(乞うご期待!)。ぜひともこの最新作『Stiff Kittens』や、それを記念するインストア・ライヴも目の当たりにしたい。

■shotahirama 『Stiff Kittens』発売記念ライブ+特典引換会

shotahirama (LIVE)
Ametsub (DJ)

開催日時:
2015年3月1日(日)

開始時間:
16:00

場所:
TOWER RECORDS渋谷店
8F Space HACHIKAI

内容:
ライブ+特典引換会

参加方法:
観覧自由(*)

ノイズ/グリッチミュージックの新機軸として、いま国内で最も注目を集めるshotahiramaによる待望の最新作『Stiff Kittens』発売を記念してタワーレコード渋谷店での貴重なライブパフォーマンスが決定!また、日本が世界に誇る音楽家AmetsubがスペシャルゲストとしてDJセットで登場!エレクトロニック・ミュージックの新たな地平を切り開き、シーンの最前線を直走るサウンドを発信する両雄の一夜限りの豪華共演、絶対にお見逃しなく!(担当:高野)

◆shotahirama by Shota Hirama Independent sound label SIGNALDADA
https://www.signaldada.org/

◆Ametsub Official Website
https://www.drizzlecat.org/

(*)
2/22発売(渋谷店先行2/15入荷)shotahirama『Stiff Kittens』(SIGNAL010)をタワーレコード渋谷店、新宿店にてお買い上げいただいたお客様に、先着で特典引換会参加券を差し上げます。特典引換会参加券をお持ちのお客様はライブ終了後の特典引換会にご参加頂けます。

対象店舗:
渋谷店 ・新宿店

対象商品:
shotahirama『Stiff Kittens』(SIGNAL010)
2015/2/22発売(渋谷店先行2/15入荷) 2,000円(税別)

※対象商品のご予約、お取り置きはお電話とタワーレコードホームページ(https://tower.jp/)の店舗予約・取置サービスでも承っております。
※特典引換会参加券の配布は定員に達し次第終了いたします。終了後にご予約(ご購入)いただいてもお付けできませんのでご注意ください。
※特典引換会参加券を紛失・盗難・破損された場合、再発行はいたしませんのでご注意ください。
※ライヴ終了後特典引換会を実施致します。
※特典特典引換会参加券1枚で1名様ご参加頂けます。(ライブ観覧自由です)
※当日は必ず特典引換会参加券をお持ちください。盗難・紛失等による再発行は致しません。
※当日の混雑具合により入場規制をかけさせて頂く場合がございます。
※イベント対象商品は不良品以外での返品をお受け致しません。
※カメラ及び録音機器等によるLIVE模様の撮影及び収録は固くお断り致します。
※店内での飲食は禁止となっております。
※都合によりイベントの内容変更や中止がある場合がございます。あらかじめご了承ください。


Shotahirama - ele-king

 ノイズが、グリッチが、サウンドが疾走している。ショータヒラマの音楽/音響を聴くと(というより聴覚に摂取すると)、その速度をありありと実感することができる。速度は、彼自身の鼓動や知覚、記憶の運動のようだし、同時に、この現代を生きている自分たちのリアリティのようでもある。破壊、粉砕、構築、速度。ビートは粉々に分解され、ノイズ・音響は超高速で接続される。これまでの事実が意味をなくし、新たな事実が増殖するように。そして音楽の反復性は有限の中に封じ込められ、一瞬の永遠が圧倒的な速度=強度のなか立ち現れるのだ。

 2014年のショータヒラマは、「速度」そのもののような活動を繰り広げてきた。『ポストパンク』『クラスター』『クランプダウン』『モダン・ラヴァース』などのアルバム4枚連続のリリースを敢行したのである。本作は、それらをすべて収めたボックスセットだ。まずは各アルバムについて簡単に述べておこう。

 ショータヒラマは2014年1月に自身のレーベル〈シグナルダダ〉からサード・アルバム『ポストパンク』をリリースする。清冽にして精密な電子音響作品であったファースト・アルバム『サッド・ヴァケイション』(2011)、セカンド・アルバム『ナイス・ドール・トゥー・トーク』(2012)を超える決定的なアルバムであった。ノイズ/グリッチが高速/高密度で展開し、新時代のノイズ/グリッチ・ミュージックの幕開けに相応しい傑作である。
 同年5月には、京都の電子音楽レーベル〈シュライン・ドット・ジェーピー〉のiTunes限定リリース・シリーズとして『クラスター』を発表した。電子ノイズが四方八方に炸裂するような強烈な作品である。芸術家・津田翔平による素晴らしいアートワークとの相乗効果もあり、イマジナティヴな作品に仕上がっていた。本ボックスも〈シュライン・ドット・ジェーピー〉からのリリースで、津田がアート・ディレクションを手がけている。

 翌6月にはマイクロダイエットとのスプリット盤『クランプダウン』を〈シグナルダダ〉からリリース。街中を包囲網に包むような、臨戦態勢を思わせる緊迫感に満ちた作品である。翌7月、カセット作品にして、初のドローン作品『モダン・ラヴァース』を福岡のカセット・レーベル〈ダエン〉から発表した。〈ダエン〉は、オヴァル、メルツバウ、イクエ・モリ、中村弘二(ニャントラ名義)、杉本圭一(フォーカラー名義)などのカセット作品を送り出しており、マニアから絶大な信頼を得ているレーベルだ。この『モダン・ラヴァース』は、音の粒が高速の粒子になり、そのまま線=千の持続的な音響になったかのような美しいドローン作品である。ちなみに『クラスター』と『モダン・ラヴァース』は本ボックスによって初CD化された。

 この4作を一気に聴き直してみると、彼のサウンドは電子音響でありながらも聴覚にアディクトするような「神経的」なものというよりは、肌に触れるヒリヒリとした感覚を想起させる「触覚的」なものだということがわかってくる。90年代末期から2000年代、〈メゴ〉以降に誕生したグリッチ・ノイズ・サウンドが偶発的なエラーを導入し、聴覚の神経性にアディクトするデジタル・パンクであるとするなら、ショータヒラマの発する電子ノイズやグリッチ・ノイズは、彼の鼓動やリズムと直結しているかのような肉体性を獲得しているように思えた。まさにポスト・デジタル・パンクといえよう。われわれ聴き手の肌や皮膚を直接的に刺激してくるような(電子ノイズの)触覚性。彼のトラックは低音が極端に少ないのだが、それは音響の空間性の確保し、サウンドの運動性を向上させることで、触覚性・肉体性を得るためではないかと勝手に考えてしまう(余談だが私は彼の痙攣し疾走するようなノイズとエレクトロニクスを聴くと、不意に阿部薫のサックスを思い出してしまう。もしくはアート・リンゼイのノイズ・ギターも)。
 
 デジタル・ノイズと肉体性を直結させるという新しい領域へと踏み込んだショータヒラマ。その2014年における驚愕のリリースは何を意味するのか。私は真夜中の世界からの闘争だったと(とりあえずは)仮定してみたい。2013年にリリースされたEP『ジャスト・ライク・ハニー』(DUCEREY ADA NEXINOとのスプリット盤)以降、アートワークの写真が夜の光景であったことを思い出してみよう。2011年の『サッド・ヴァイケション』と、2012年の『ナイス・ドール・トゥー・トーク』は、陽光が降り注ぐような写真であったのだから対照的である。たしかに、2011年にリリースされたユウ・ミヤシタとの『サッド・ヴァケイション・アゲイン』のアートワークは昼の光景とは思えないが、しかし2013年以降のアルバム・EPのほとんどが夜の意匠を纏っていることは紛れもない事実である。

 では、なぜ彼は真夜中の世界を選択したのか。それは昼という穏やかで安定した世界が、もう終わってしまったと実感したからとは考えられないか。夜は不可視のモノたちが蠢く世界である。闇は視界を遮るが、そのぶん、音たちの存在感は増してくる。つまり音楽とは本来、夜の世界に属するものだ。ショータヒラマは夜のストリートに蠢くサウンドの群れを、電子音響によってリ・スキャンしマッピングするようにコンポジションする。音の光景は、高速でグリッチするように変化し、聴き手の肌を夜風のようにすばやく触れて走り去っていくだろう。破壊、粉砕、構築、速度。こうして音たちは解凍/解放される。となれば、これは(世界との/からの)闘争=逃走の音だ。

 同時に彼は「愛」の人でもある。ジャケットのアートワークで佇む女性たちの姿を思い出してみよう。それは闘争=逃走の向こうにいる女性たちの姿だろうか(いわば未来の「娘」たち?)。
 ゆえに私はショータヒラマの作品に、闘争と愛という二面性を聴く。いわば「ラヴァーズ・ノイズ」。その愛こそが、ヒリヒリするような皮膚感覚の音響で現在を疾走するショータヒラマの「未来への希望」なのかもしれない。思えば、2014年のラスト・リリースは『モダン・モヴァーズ』と名づけられていた(もっとも彼の作品のタイトルはほとんど引用であるのだが、大切なことは何を、どう引用しているかという点である)。この美しいドローン作品は、いわばドローン/ノイズによるコーダといえよう。そして『モダン・ラヴァース』はその曲名にも記されているように(ワールド・トレード・センターのエレベーター・ミュージック?)、9.11の記憶が刻印されている。声のない哀歌として。声を喪失したラブソングとして。音響のコーダとして。終わりからはじまるアリアとして。となれば、この曲もまた闘争と愛の幕開けだったのではないか。

 2015年。疾走は継続している。2月、ニューアルバムがリリースされるのだ。その名は『スティフ・キトゥンズ』(!)。私はこの新作をプレビューで聴いたのだが、ノイズが、リズムが、音響が、極限まで解体/再構築されており、途方もない速度でサウンドが疾走していた。そこは音響のゼロ地点であり、闘争のゼロ地点ですらあった。音の蠢きはさらに圧縮/解凍され、新しい闘争と愛が同時に世界に解放されていく。しかもジャケットには夜から早朝(もしくは夕焼け)の光景も! ショータヒラマの闘争と愛はつづく。それは同時に私たちの闘争であり、愛の選択でもある。聴くしかない。

愛国と狂気を見つめる - ele-king

アメリカン・スナイパー
監督 / クリント・イーストウッド
出演 / ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー 他
配給 / ワーナー・ブラザース映画
2014年 アメリカ
©2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
2月21日(土)より、全国公開。

 『アメリカン・スナイパー』劇中、ある海兵の葬儀の場面では弔砲が鳴らされ、トランペットの高らかで悲壮な演奏が響く……日本に住んでいる僕たちでも、この儀式は知っている。なぜならば、何度もその場面をアメリカ映画のなかで目撃してきたからだ。そう、何度も何度も……そこで広がっていくアメリカ映画的としか言いようのない叙情。だけど僕たちは、どうして繰り返し兵隊たちの死を見届けているのだろう?

 イラク戦争で160人を射殺したクリス・カイルを取り上げ、予想を遥かに上回る大ヒットとなっているイーストウッドの新作は、「殺戮者を英雄視する、コンサバティヴな映画」との批判も受けつつ、まさにいまもっともコントラバーシャルな一本としてアメリカを揺らしている。立場的には共和党支持者である(実際は中道に近いとも言われるが)イーストウッドへの色眼鏡もあるのだろう、とくにリベラルを自認するメディアからは疑問の声も多い。オバマ政権の行き詰まりに際して、ブッシュ政権時の「英雄」を浮上させる試みなのではないか、と。
 しかし、たとえばキャスリン・ビグロー『ハート・ロッカー』(2008)を「戦意昂揚映画だ」とするひとがいたときも、自分にはどうも、そんなふうには思えなかった。戦時下のイラクの張り詰める死の匂いのなか、地雷処理という命懸けの作業に向かって行くジェレミー・レナーは大義もないままただ「処理」としての戦争に向かいつづけるアメリカの呪われた姿の化身にしか見えなかったのである。たしかにそこに立ち向かっていく兵士たちは勇壮にも見える。が、イラク戦争においてはそれがいったい何のための勇ましさか見えなくなっていたのは誰もが多かれ少なかれ気づいていたことで、だからそこには剥き出しの映画的反復のみが残っていたのだろう。『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーも自宅とイラクの戦場を往復するなかで壊れていくが、それでも戦地で遥か彼方の敵に銃を向ける。そうしないと生きる理由を見失う、とでも言うかのように。
 だからこれはイーストウッドが繰り返し描いてきた、トラウマを抱えた男の物語であるだろう。そしてその傷痕は、紛れもなくアメリカの歪みが生んだものである。『ミスティック・リバー』(2003)の頃には「良心的な」アメリカのリベラルたちは「この国にいるのが恥ずかしい」と言っていた。だが、ラストで償いようのない罪を背負うことになるショーン・ペンを思い返すとき、そこに横たわっていたのはイーストウッドからの「それを負え」という重々しい念のようなものだった……かつてひとを殺しまくっていたダーティハリーだけがあのとき、そのことを告げていたのだ。

 『世界にひとつのプレイブック』(2012)でも怒りをコントロールできなくなったブラッドリー・クーパーは、ここでは「レジェンド」と讃えられるいっぽうで精神に混乱をきたし、父であることも剥奪されている。強い父になることがアメリカのかつての理想だったとして、太平洋戦争における『父親たちの星条旗(Flags of Our Fathers)』(2006)、すなわち「父たちのアメリカ」と、イラク戦争における「アメリカの狙撃手」であることには大きな隔たりがあるようなのだ。彼を所有するのはあくまで国家であり、個人であることは後回しにされている。イーストウッドはこれまでも――とくに21世紀の作品において――二分される政治的立場を超える倫理的葛藤を問いつづけてきたが、舞台がイラクであることで、フィルム自体が混乱しているようにも見える。クリス・カイルは英雄か被害者か? ではなく、同時にそのどちらでもあることが起こってしまっている。
 映画ではクリス・カイルが志願したきっかけはテロのニュースを見たからだとされているが、そこで「国のために」と迷いなく宣言する姿を理解することが僕にはできない。しかし理屈ではない何か強烈にエモーショナルな迸りがそこにはあり、だとすれば、それは「政治的立場」なんてものよりも遥かに恐ろしいもののように思える。愛国という狂気の下で、クリス・カイルは英雄の自分と被害者の自分に引き裂かれていった。ただそのことが痛切だ。

フォックスキャッチャー
監督 / ベネット・ミラー
出演 / スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ 他
配給 / ロングライド
2014年 アメリカ
© MMXIV FAIR HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
2月14日(土)より、全国公開。

 ベネット・ミラー『フォックスキャッチャー』もそのような愛国の下で熟成される狂気を見つめる一本である。映画は財閥の御曹司がレスリングの金メダリストを殺害するまでを張り詰めた空気で映し出すが、スティーヴ・カレル演じる御曹司ジョン・デュポンは経済力によってチャニング・テイタム扮するレスリング選手の疑似的な父親になろうと試みているように見えなくもない。が、それはけっして達成されないまま、関与した人間たちの運命をひたすら狂わせていくことになる。
 それはデュポン自身の内面の問題であったからなのか、母親との確執のせいだったか映画では明示されないが、しかし「強いアメリカ」を標榜する彼の目は宙を泳いでいるようだ。それが「ありもしないもの」だったことが証明されたのがこの四半世紀ないしは半世紀だったとして(映画の舞台は30年前)……しかし彼らはなおも、諦められないのだろうか? 映画はそして、「USA!」の大歓声で幕を閉じる。

 愛国心にまつわる問題をアメリカ映画や、あるいはスプリングスティーンの作品などに見出してきたとき、ヘヴィなものだと認識はしつつもそれでも「よそのこと」だと感じていたのだと僕はいま認めざるを得ない。なぜなら、ここに来て日本に住む人間にとってもそれが急激に生々しいものとして立ち上がってきているからだ。「強い国家」「美しい国」が幻であると、うすうすそのことに気づいていたとしても、熱狂は止められないのだろうか? だとすれば、それはいったいどこに向かっているのだろうか?

 『アメリカン・スナイパー』のエンド・クレジット、そこで流れる映像にはただうなだれるしかなかった。それはたぶん、これからもその場面を繰り返し見なければならないという予感が的中しているからだろう。

『アメリカン・スナイパー』予告編

『フォックスキャッチャー』予告編

 1月末、NYでは「史上最大の暴風雪に見舞われる」との警報があり、住民をあたふたさせた。地下鉄などの交通機関が止まり、食料調達も十分(スーパーマーケットに入るのに長い行列!)「危険なので、家にから出ないように」など住民に呼びかけ、万全で暴風雪に備えた。が、結局、史上最大ではなく、よくある雪の1日で終わった。
 みんなが悶々していた暴風雪警報が出た月曜日の夜、ほとんどのショーがキャンセルの中で、勇敢にもショーを行ったのがゾラ・ジーサス(https://www.zolajesus.com)だ。予定より早めに行われたショーの途中で、彼女は「ついてきて」、トロンボーン・プレイヤーを率い会場の外に出て、1曲「Nail」をアカペラで歌いだすなど、雪ならではのパフォーマンスを披露した。車も通らない、ガランとした雪のストリートにこだまする彼女の声と、それをあたたかく見守るオーディンス。大停電や台風の時といい、ニューヨーカーは災難時でも、エンターテインメントの心を忘れない。因みに、彼女はウィスコンシン出身、雪には慣れたものだったのかもしれない。
https://www.brooklynvegan.com/archives/2015/01/zola_jesus_perf.html



 暴風雪騒ぎから1週間経った今日2月2日も雪は降っていて、外はマイナス10度の世界。雪が降ろうが槍が降ろうがイベントは普通にある。昨日2月1日はスーパーボウル、フットボールの決勝戦。個人的に興味ないが、周りが盛り上がっているので、いやでも目に入ってくる。行き着けのバーに行くと、この日だけは大きいスクリーンを出し、みんなが大画面でスーパーボウルを鑑賞している。お客さんはもちろん、店員も仕事そっちのけで画面を熱く見守っている。点を入れなくても、何か好プレイ珍プレイをするたびに、「おーー!!!」や「ノーーー!!」や、「ぎゃーーー」などの奇声が飛び交うので、ドリンクもうかうかオーダー出来ない。一緒に行った友だちは、接戦の最後の5分は「もう心配で心配でしかたない!!!」と、私の手をぎゅっと握り、自分の事のようにハラハラドキドキしていた。
 結果、ニューイングランドのペイトリオッツが勝利(10年ぶり)。ルールがわからない著者にも、周りの気迫で好ゲームだったことが伝わってくる。
 スーパーボウルで注目されるのは、ハーフ・タイムショー。過去に、マドンナ(w/M.I.A.,ニッキー・ミナージュ)、ビヨンセ(w/ディスティニー・チャイルド)、ブルノ・マーズ(w/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)などが出演しているが、今年はケイティ・ペリーとレニー・クラヴィッツ、ミッシー・エリオット。旬なのか、古いのかわからないラインナップだった。
 そういえば、テロリスト(?)に揺すられ、公開中止になりかけた、問題の映画『インタビュー』のなかで、主役のセス・ローガン(役名アラン)が、北朝鮮の最高指導者の金正恩の戦車に乗った時に、流れてきた曲を聴いて一言「あんた、ケイティ・ペリー聞いてるの?」。著者は、それで初めてケイティ・ペリーを知った。それだけ、彼女が「いま」の大衆音楽を表している。ハーフタイム・ショーの彼女も見事だった。レニー・クラヴィッツもミッシー・エリオットも貫禄抜群だったが、今年の顔はケイティ・ペリーで万場一致。

 ケイティ・ペリーは、メイクやポップなファッションが特徴で、一見今の時代どこにでもいるような女の子。歌がこの上なくうまいとか、ダンスが飛び抜けて上手とかではなく、格好を付けようとせず、素で勝負しているところが、同世代からの共感をかっているのだろう。下積みも長く、所詮ポップスなのだから流通しないと意味がないと、堂に入ったあきらめ感もあるし、彼女のキャラクターや世界観は、見る人を素直にハッピーにさせてくれる。プライヴェートもさらけ出し、ポップスターにも悩みはあるのよと、オーディエンスに近い感覚が現代のスーパースターのあり方なのだ。
 楽曲も親しみやすく耳に残り、カラオケに行ったらみんながシンガロングで歌いたくなるつぼを抑えている。ハーフタイムショーの1曲目に演奏した「ロアー」は聴いているとヴォリュームを上げたくなってしまう。映画で流れた「ファイア・ワークス」も、ヘリコプターを爆破するシーンに使われたが、周りの雰囲気を壊すことなく、シーンにぴったりとはまっていた。実際、彼女の曲は人の生活のなかに入って来ても邪魔しない。そこが現代的で彼女が支持されている理由なのだろう。

 ファイア・ワークスと言えば、スーパーボウルの1日前の1月31日に、ウィリアムスバーグの北の川沿いで大規模な火災があった。N11とケントアベニューの4F建ての貯蔵施設シティ・ストレッジから発炎し、200人以上の消防士が出動し、寒い中消火にあたった(制服に氷柱がしたたっていた)。一駅離れた著者の家の周りさえも灰が飛んできたり、こげた臭いが充満し、窓を開けることが出来ない。周辺の住人お店やレストランは、避難したり休店したり、暴風雪よりも大きい被害を被っている。完全鎮火には1週間ほどかかる見込みだそうだ。ドミノ・シュガー・ビルディングなど周辺ビル/コンドミニアムの契約書類が保管されていたのだが、無残にも焼かれてしまった。ここは、デス・バイ・オーディオやグラスランズなどの音楽会場を閉店に追いやった、ヴァイス・オフィスの真近くでもある。実はあまり報道されていないが同じ頃、グリーン・ポイントでも火災があったのだが、このふたつの火災の関係は? ウィリアムバーグの家賃高騰に対する嫌がらせだと言う噂も飛び交っているのだけれど……。

 スーパーボウルの日、誰もが家でピザやバッファローウィングを食べながらテレビを見ると思われたが、著者がスタジオをシェアしているバンドは「今日ショーがあるんだ」と雪のなか揚々と出て行った。雪+スーパーボウルという悪条件で「人は来るの~?」と思われたが、「友だちがたくさん来てくれた」とご機嫌に話してくれた。彼らは20代前半で、「スーパーボウルなんて、ピザしか食べない年寄りの見る物」と思っているらしい。
 彼らが演奏したのは、トラッシュ・バーという、ウィリアムスバーグの音楽会場。こちらも他の会場と同じく、リースが継続できず(家賃が4倍(!)になると言われたらしい)、3月の閉店が決まった。閉店後は、ブッシュウィックに移る予定らしいが、既にブッシュウィックはヒップスターの聖地、どうなることやら。
 また、元ウィリアムスバーグにあったガラパゴスという音楽会場は、ダンボで数年営業した後、来年ニューヨークを飛び出し、デトロイトに移ることを決めた。NYの小さなアパートメントと同じ値段で、デトロイトでは10,000スクエアフィートの湖つきの会場が手に入るらしい。ガラパゴスはウィリアムスバーグ時代は、ガラス張りの外から見える会場にある湖がトレードマークだった。ダンボに移った時点で、会場に湖なんて夢のまた夢と忘れられていたが、デトロイトで初心に戻るのだろう。ゴーストタウンと言われるデトロイトだが、そろそろ移住してもいいかもと思えるようになったのは新たな希望だ。アメリカの地方都市がこれからなるべき姿なのかもしれない。もちろんいまもNYは特別で、人が集まりたい場所であることは否定できない。が、ウィリアムスバーグの家賃問題は深刻極まりないし、火事も起こる(!)。地価問題と戦いながら、バンドは残されたところで演奏して行く。露出されなければ意味がないが、転がっているチャンスを、掴むことも可能な場所だから……。

スーパーボウル
https://www.nfl.com/superbowl/49
https://www.billboard.com/articles/events/super-bowl-2015/6458199/katy-perry-super-bowl-xlix-halftime-show-review

ウィリアムバーグの火事
https://bedfordandbowery.com/2015/01/photos-six-alarm-fire-on-williamsburg-waterfront/
https://bedfordandbowery.com/2015/02/photos-epic-warehouse-fire-enters-day-2-in-williamsburg/

トラッシュバー
https://www.thetrashbar.com

ガラパゴス
https://www.galapagosartspace.com

C.R.A.C. - ele-king

 このところ安部政権の好戦的な態度ばかりを見せつけられているせいか、戦意も失せるふぬけた音楽とユーモア(ないしは平和的エスニック・ジョーク)に飢えている編集部に、代官山ユニットから熱いメールが……。
 以下、そのメールです。

2015年、東京に全く新しいパーティーが誕生する。

伝説のCLUB VENUSのオーガナイザー久保憲司、そしてShufflemasterとTASAKAという2人のDJたち。
彼らの共通点は、2013年以来東京の路上を侵食しようとした極右排外主義デモに対抗してきた対レイシスト行動集団、C.R.A.C.(Counter-Racist Action Collective)のメンバーだということだった。

デザイナー、写真家、ライター、ミュージシャン、アーティスト、建築家、など多岐にわたる才能を内包し、東京の路上文化に多大な影響を及ぼしてきたC.R.A.C.が、満を持してパーティ”CLUB CRAC”をオーガナイズする。

レジデントはDJ Shufflemaster、DJ TASAKA、そしてDJ NOBUの3人。第1回のゲストにはECD+ILLICIT TSUBOI、MC JOE、ATS、AKURYOといったヒップホップ勢に加え、東京ハードコア・シーンからはPAYBACK BOYSが盟友BUSHMINDと共に参戦。さらに狂気のノイズ・アーキテクトENDON、スクリューのAIWABEATZ、そしてC.R.A.C.のメンバーでロゴのデザイナーでもあるDJ=1-Drink(ex.キミドリ/ILLDOZER/JAYPEG)が、真夜中のUNITを反ファシスト闘争の最前線へと変える。

ビジュアル面では、最近ではほとんどVJパフォーマンスをやらないDOMMUNEの宇川直宏がC.R.A.C.のために重い腰を上げるほか、The RKP(a.k.a. rokapenis)、映画『堀川中立売』の監督・柴田剛など強力すぎる面々が、音楽、文化、政治、そして路上の思想が交錯する未曾有のパーティ体験をもたらしてくれるだろう。

あいつらが論文を書いていたとき、俺たちはピットでモッシュし、フロアでダンスしていた。ナイトクラブで培われた身体の知性が、2月7日、代官山UNITに結集する。

Strictly Antifascist.
Music is The Weapon of The Future.


CLUB CRAC

DATE & TIME: Feb 7th (sat), 2015
DOOR OPENS at: 23:00
VENUE: UNIT (https://www.unit-tokyo.com)
FEE: 2000 yen in adv / 2000 yen with Flyer / 2500 yen at door / 3800 yen with T-shirt
TICKET: https://peatix.com/event/68703(通常前売)
       https://peatix.com/event/69652(Tシャツつき/1月19日発売)

LIVE PERFORMANCES:
 ECD+ILLICIT TSUBOI
 PAYBACK BOYS
 ENDON
 MC JOE
 C.R.A.C. (ATS, AKURYO, G.R.)

DJs:
 DJ NOBU
 BUSHMIND
 DJ Shufflemaster
 DJ TASAKA
 1-Drink
 AIWABEATZ

VJs:
 Ukawa Naohiro from DOMMUNE
 The RKP a.k.a. Rokapenis
 Shibata Go

FOOD:
 True Parrot Feeding Service

https://crac.club


The Best 5 Reissue 2014 - ele-king

01 Lewis Baloue / Romantic Times / Light In The Attic


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 アメリカでは近年、プライヴェート・プレス(いわゆる私家版)の発掘が進んでいる。文字通り、商業的な流通には乗せず、「仲間内に配って終わり」みたいなやつで、アンビエント・ミュージックだとそれらをまとめた『アイム・ア・センター』が決定的だったりする。そのようなプライヴェート・プレスには、当然、どんなものがあるのか想像もつかなかったりするわけで、昨年、最も話題を集めたのがルイス『ラムール』の再発だった。同作はカナダの大富豪が恋人のために1983年に吹き込んだアシッド・フォークというかなんというかで、これが2013年にEベイでいきなり20万円近くで落札され、それを受けてフリー・デザインやベティ・デイヴィスの再発を手掛けてきたシアトルの〈ライト・イン・ジ・アティック〉が正式に再発。簡単にいえば、あまりの音痴に世界は笑いの渦に巻き込まれた。そして、それで終わりかと思ったら、ルイスには2作目があり、『ロマンティック・タイム』(85)はシンセ-ポップにサウンドも様変わり。またしても切々と歌いかけるトーンには笑いが止まらなかった。後半でちょっと歌が上手くなる曲があって、その時だけ少し白けるものの、全体として見れば、世界を少しばかり平和な気分にしてくれたことは確かでしょう。この騒ぎのさなか、ルイス本人もイタリアの避暑地にいるところを発見され、再発されたレコードを手渡されたらしいのだけど、本人からは「で?」という返事が返ってきただけだったとか。(オリジナルは83年)

02 Tom Dissevelt / Fantasy In Orbit / Sonitron


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 実は『テクノ・ディフィニティヴ』のオープニングにしたかったオランダのパイオニア的シンセサイザー奏者(2年前にはキッド・バルタンとのジョイント・アルバム『ソングス・オブ・ザ・セカンド・ムーン』しか再発されていなかった)。『セカンド・ムーン』がまさにそうだけど、随所にエイフェックス・ツインを思わせる面があり、裏を返していえば、エイフェックス・ツインにはこの種の音楽がまだ黎明期に表現していた「驚き」を表現する素朴さが備わっているとも言える。ミュージック・コンクレートにありがちな生硬さもなく、時期的にまだニュー・エイジのようなスピリチュアリズムに陥るわけでもなく、単純にスペース・エイジの電子版をつくりあげている。インドネシアに演奏旅行に行き、現地で出会った歌姫と結婚し、シュトックハウゼンに興味を持って電子音楽に乗り換え…という彼の人生を映画化して欲しいかも。(オリジナルは63年)。

03 / Psychedelic Sanza 1982 - 1984 / Born Bad Records(Beans)


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 2011年に編集盤『アフリカン・エレクトロニック・ミュージック 1975-1982』が話題を呼んだカメルーンのギタリストによるサンザ(親指ピアノ)の演奏を集めた『アフリカ・サンザ』(82)と『アクワアバ:ミュージック・フォー・サンザ』(84)をパックした2枚組。サンザだけでメディテイティヴな空間を創出したり、ベースを加えてダンサブルな曲調を展開したり。同じカメルーンのマヌ・ディバンゴがエレクトロに走った時期だけにその差が際立つというか、ローカルに徹したことで現在に再生する余地があったという感覚はそれだけで示唆的。「サイデリック」というより「アトモスフェリック」ではないかと。

04 Berto Pisano, Jacques Chaumont / Kill ! / The Omni Recording Corporation


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 イタリア映画のOST盤。どんな映画かぜんぜんわかりませんけど(ジーン・セバーグの遺作らしい)、初期のカーティス・メイフィールドに憂いを含ませたようなスパイ音楽と甘く切ないストリングスのヴァリエイションがたまらない(菊池俊輔作曲『非情のライセンス』っぽいという か)。最後でいきなりドロス・トロイが歌い出す。(オリジナルは72年)。

05 The Topics / Wanted Live! By A Million Girls / Jazzman(P-Vine)


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 国内盤のライナーノーツを読むと、同じモダン・ソウルで同じ時期に同じ名前のグループが存在し、そちらの方が有名らしい。そこまで詳しくはないので、単純にこれだけを聴くと、それこそシティ・ポップスの元ネタみたいなサウンドがぎっしり。マインドデザイン(Mndsgn)が去年、アップしたミックスを聴くと、D/P/Iにジェリー・ペイパー(新)やシャラマー(旧)に混じって佐藤博や間宮貴子の曲もミックスされていて、70年代をどう聴くかということではもう同じなんだなーということがよくわかる。(オリジナルは78年)。

*次点でペレス・プラドーと名前が同じ弟によるイタリアン・ファンクの『ラヴ・チャイルド』(73)かな。レシデンツの5枚組とかウイリアム・オニバーの9枚組は面白そうだけど、さすがに外しました。

D/P/Iが日本を通過 - ele-king

 D/P/Iことアレックス・グレイについては、ele-kingでも何度取り上げているかわからない。彼や彼らをとりまくLAローカルがローカルではないことは、この数年のD/P/Iの動向や、マシュー・サリヴァンやショーン・マッカンやゲド・ゲングラスといった才能が名を馳せ、マシューデイヴィッドが押しも押されぬ存在になったいま疑う余地はない。そのD/P/Iのうれしい来日ツアーが金曜(福岡)からはじまるが、東京公演の目撃をゆるされるのはわずか111人+α。先行チケット購入者にはD/P/Iデザインのツアー・ポスターがついてくるということで、ヴィジュアル表現においてもヴェイパーウェイヴ以降のリアリティをスマートに切り取る彼の魅力を(QRコードとはかくもミステリアスで甘やかなものなのか)、何方向からも愉しむことができるにちがいない。

■D/P/I JAPAN TOUR 2015

2.6 FRI Fukuoka at KIETH FLACK 20:00 -
mew×duenn presents OBDELAY feat. D/P/I
More Info: TBA

2.7 SAT Osaka at CIRCUS 17:00 -
INTEL feat. D/P/I Japan Tour Osaka
More Info: https://intelplaysprts.tumblr.com

2.8 SUN Tokyo at KATA LIQUIDROOM 2F 18:00 -
BONDAID #4 feat. D/P/I Japan Tour Tokyo
More Info: TBA

Tour Info: https://meltingbot.net/event/dpi-japan-tour-2015

■BONDAID #4 feat. D/P/I Japan Tour Tokyo
powered by forestlimit sound system

日時:
2015.2.8 Sun START 18:00

場所:
KATA + Time Out Cafe & Diner [LIQUIDROOM 2F]

料金:
ADV ¥2,500 w/ Ticket (LTD 111) / DOOR ¥3,000
※限定111枚
ADV Ticket ¥2,500 yen inc. D/P/I JAPAN TOUR 2015 POSTER
アドバンスのチケットを購入された方にはD/P/Iデザインのツアー・ポスター(A2)が付いてきます。
ポスターは公演当日受付にてチケットと引き換えにお渡します。
※ ¥3,000の当日券もございますが混雑により入場規制がかかることも予想されますので予めチケットのご購入を強くオススメ致します。

チケット販売:
KATA [LIQUIDROOM 2F]
DISK UNION (SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP/SHINJUKU CLUB MUSIC
SHOP/SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP/KICHIJOJI/CLUB/DANCE ONLINE SHOP)
DISK UNION ONLINE SHOP
https://diskunion.net/clubt/ct/detail/1006568517

2014年の各媒体を大いに賑わしたニューフェイスARCAやGiant Clawと並び、今日のオンライン・アンダーグランド~レフトフィールドにおけるエレクトロニック・ミュージックの新時代を切り開くLAの異端児D/P/Iが満を持しての初来日公演。R&B / ヒップホップの名義Heat Wave、アンビエント / ドローンの名義Deep Magic、グリッチ / ミュージック・コンクレートの名義D/P/I、そしてジューク / リディムの新名義Genesis Hullなど、様々な名義で現行の流動的なジャンルを縦横無尽に駆け巡り、コラージュやサウンド・プロセスを繰り返しながらインターネットを介して溶け合うサウンド /ヴィジュアル・アートとダンス・ミュージックのクロス・ポイントへと到達。圧倒的なスピードで加速を続ける時代の寵児が紡ぎ出す"今"という最高の瞬間を祝うべく、既存のジャンルやシーンの主流からは外れた異種 "#Leftfiled" (レフトフィールド)をキーワードに各シーンで異彩を放つ気鋭の国内アーティストが集結。新世代インディーズの巣窟でもある幡ヶ谷のライブ・ハウス forestlimit のサウンド・システムを投入、活気付く電子音楽の現在を体現した全14アクトで東京公演をお届けします。

LIVE :
D/P/I (from LA aka Alex Gray, Genesis Hull, Deep Magic, Sun Araw, etc)
[Leaving Records, Duppy Gun, CHANCEIMG.es, melting bot] #Glitch

DREAMPV$HER #Techno
FUMITAKE TAMURA (Bun) #Beat
Akihiko Taniguchi #Glitch
食品まつり aka Foodman [Orange Milk] #Footwork
KΣITO [SHINKARON] #Footwork

DJ :
Inner Science #NewAge
ENA [7even / Samurai Horo] #Bass
HiBiKi MaMeShiBa [Gorge In] #Gorge
Cold Name (from Jesse Ruins) [Desire] #Industrial
Fruity [SHINKARON] w/ Weezy & Takuya #Footwork
あらべぇ #Ambient
Hi-Ray [Sukima Tokyo] #HipHop
SlyAngle [melting bot / BONDIAD] #Techno

More Info : https://tmblr.co/ZThEfs1aIsq_N

■D/P/I aka Alex Gray :
LAのプロデューサーAlex Grayによるソロ・プロジェクトDJ Purple ImageことD/P/I。Deep Magic名義で2009年に〈Not Not Fun〉よりデビューし、 アンビエント / ドローンを主体とした作品を〈Preservation〉や〈Moon Glyph〉といったレーベルから連発、一方のD/P/I名義は自身のレーベル〈CHANCEIMAG.es〉立ち上げと共に2012年に始動、アブストラクトなベース / ビート・ミュージックへアプローチをした作品を矢継ぎ早にリリース。勢いは加速され〈Brainfeeder〉所属のMatthew David 主宰〈Leaving〉からのEP『RICO』、そしてアルバム『08.DD.15』と『MN.ROY』ではそのアブストラクトなビートは更にデジタルなプロセスを経て細切れとなり、Oneohtrix Point Neverの『R Plus 7』へも通じるシャープでグリッチーな音像のコラージュを主体としたミュージック・コンクレートへと発展。別名儀Heat WaveではR&B / ヒップホップをスクリューしたミックステープ、最近ではSun ArawとM. Geddes Gengrasの電子ダブ・レーベル〈Duppy Gunn〉よりGenesis Hullなる新名義でジューク / フットワークの影響下にあるリディムを披露。また同じくLAの盟友Sun ArawやDreamcolorのメンバーでもあり、映像やアートワークも自身で作る、流動する現在のジャンルを縦横無尽に駆け巡り加速を続けるマルチ多作家。

最新作リリース情報 :
D/P/I - MN.ROY / RICO [melting bot / Leaving Records 2014] #Electronic
#Glitch #MusicConcrete
https://meltingbot.net/release/dpi-mn-roy-rico/

Genesis Hull - Who Feels It, Knows It [Duppy Gun 2014] #Bass #Juke #Riddim
https://soundcloud.com/zonatapes/sets/genesis-hull-who-feels-it

Deep Magic - Reflections Of Most Forgotten Love [Preservation 2013]
#Ambient #Drone #NewAge
https://soundcloud.com/experimedia/deep-magic-reflections-of-most


ANDY STOTT Japan Tour 2015 - ele-king

 AFXの最新EPが先週末出た。評価された作品のすぐあとに出される作品の多くはコケるものだが、AFXは「やっぱすごいわ」と唸らせた。アンディ・ストットの『Faith In Strangers』は大評価された『Luxury Problems』のすぐあとの作品ではないが、前作が大きなインパクトだっただけに、アーティストの真価が問われる作品ではあった。『Faith In Strangers』は、「やっぱすごいわ」とファンを唸らせた。紙エレキングの年間ベストの7位である。2014年はミリー&アンドレアとしての『Drop The Vowels』もあった。こちらは紙エレキングの13位である。
 『Faith In Strangers』は、FKAツイッグスや下手したらビョークの新作ともリンクしそうなほど、彼の拡張する音楽をみせている。パワフルなベースの響きと妖艶なポップ・センスが彼の新しいライヴセットでどのように再現されるのか、注目したい。

2015.2.13 friday @ 東京 代官山 UNIT
LIVE: ANDY STOTT (MODERN LOVE, UK), STEVEN PORTER (10 LABEL)
DJ: HARUKA (FUTURE TERROR), Chris SSG (MNML SSGS)
SALOON: Viorhythm / Live: hakobune / DJ: Koba, Yuki Moriyama, medical, maki / VJ: CHRISHOLIC / Art: STONE63, ayanicoco
Open/ Start 23:00-
¥3,500 (Advance), ¥4,000 (Door)
Ticket Outlets: LAWSON (L: 78755), e+ (eplus.jp), disc union CMS (渋谷, 新宿, 下北沢), TECHNIQUE, Clubberia Store, RA and UNIT
Information: 03-5459-8630 (UNIT) www.unit-tokyo.com
You must be 20 and over with photo ID.

2015.2.14 saturday @ 大阪 心斎橋 CIRCUS
LIVE: ANDY STOTT (MODERN LOVE, UK)
DJ: DJ: Kihira Naoki (S.I), Ooshima Shigeru (S.I, Mobbin hood), AIDA (Factory, Copernicus), Masahiko Takaeda (RÉCIT RECORDS)
Open/ Start 22:00-
¥2,500 (Advance, Members), ¥3,000 (Door)
Ticket Outlets: e+ (eplus.jp) または info@circus-osaca.com までお名前と枚数をお送り下さい。
Information: 06-6241-3822 (CIRCUS) www.unit-tokyo.com
You must be 20 and over with photo ID.


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