「AY」と一致するもの

SWANS - ele-king

 いよいよ来週の火曜日(東京)と水曜日(大阪)、USオルタナティヴ・シーンの巨星、スワンズの来日ライヴがあります。2年前にも素晴らしいステージを披露し、昨年〈ミュート〉からリリースした13枚目のスタジオ・アルバム『To Be Kind』でも、彼らの底力をこれでもかと見せつけました。彼らのライヴには、「何百万ものロック・バンドが忘れたものがあり、最高のレイヴ、最高のサウンドシステムの経験に等しい」とは、ある米音楽メディアの評。
 最高の体験は、いよいよ来週です。

 以下、主宰者から熱いメッセージです。

 1982年、Michael Gira(ギター/ヴォーカル)を中心に結成、70年代末から80年代初頭の混沌としたニューヨークのアンダーグラウンド・シーンを象徴するバンドとして、SONIC YOUTHと共にオルタナティヴ・シーンに君臨した。ジャンク・ロックと称された初期作品『Filth』『Cop』、当時隆盛したノー・ウェイヴ・シーンと激しく共振しながら、その余りにヘヴィーなサウンドと破壊的なライヴ・パフォーマンスも相まって瞬く間に注目を集めた。Jarboe参加後の聖と俗、静謐と混沌の入り交じったような中期作品『Greed』『Holy Money』『Children of God』辺りから、唯一無二の絶対的な世界観とサウンドを獲得していく。ビル・ラズウェルのプロデュースによるメジャー・リリース作品『The Burning World』で見せた限りなくダークな歌へのアプローチは、自らのレーベルYoung God Records設立後の後期作品『White Light from the Mouth of Infinity』『Love of Life』でのサイケデリックかつドローンなサウンドへと継承されていった。Michael Gira以外のメンバーは、Norman Westberg(ギター)とJarboe(キーボード/ヴォーカル)以外は1997年に解散するまで流動的であった。
 2010年、「SWANS ARE NOT DEAD」の宣言と共に楽曲をアップ、Norman Westberg, Christoph Hahn, Phil Puleo, Thor Harris, Chris Pravdicaといった新旧のメンバーを召集、復活第一弾アルバム『My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky』を同年9月にリリース、精力的なツアーを行った。2012年8月復活後第二作目『The Seer』を発表。数多の媒体のレヴューでは最高の賛辞を持って軒並み高得点を獲得した。2013年2月には約22年振りの来日公演を敢行、ヴォリュームのリミット無しの2時間を超える強靭なパフォーマンスは新旧のファンの度肝を抜いた。そして、前作を遥かに凌駕する怪物アルバム『To Be Kind』を引っ提げて2年振り3回目の来日公演決定!現在最も体験するべき価値のある最高のライヴ・パフォーマンス、現在進行形の伝説を五感を総動員して自ら確認して下さい! 
 最新作『To Be Kind』は年末のアルバム・ベストに数多く選ばれている。

【東京】
開催日時:2015年1月27日(火) Open 18:00 Start 19:00
会場:SHIBUYA TSUTAYA O-EAST
前売券:¥6,000(1ドリンク別)
お問い合わせ:TEL03-3444-6751 (SMASH)
https://smash-jpn.com/live/?id=2195

【大阪】
開催日時:2015年1月28日(水) Open 18:00 Start 19:00
会場:UMEDA CLUB QUATTRO
前売券:¥6,000(1ドリンク別)
お問い合わせ:TEL06-6535-5569(SMASH WEST)
https://smash-jpn.com/live/?id=2195

【年間ベスト・アルバム】
# 18 - A.V. Club
# 23 - Clash
# 14 - CMJ, Cokemachineglow
# 28 - Consequence of Sound
# 12 - Crack Magazine
# 10 - Drowned in Sound
# 20 - MAGNET
# 42 - MOJO
# 14 - musicOMH, Newsweek
# 22 - NME
# 7 - No Ripcord
# 19 - Pazz & Jop
# 6 - Pitchfork
# 5 - PopMatters
# 8 - Pretty Much Amazing
# 36 - Rough Trade
# 17 - SPIN
# 25 - Sputnikmusic
# 13 - Stereogum, The Line of Best Fit
# 3 - The Quietus
# 11 - The Skinny
# 3 - The Wire
# 30 - Tiny Mix Tapes
# 18 - Uncut
# 22 - Under the Radar
# 28 - Wondering Sound


Mika Ninagawa - ele-king

 FKAツィッグス『LP1』は鮮やかなスパニッシュ・カラーのデザインである。FKAツィッグスにはスペインの血が流れ、ジェシー・カンダが移住したヴェネズエラがスペイン文化圏だと思うと、とくに不思議はないのかもしれない。しかし、あの色合いがなかなか頭から離れない。強烈である。この10年余、スペイン映画が面白くてよく見ていたせいもあるのかな。
 そんな折り、偶然、蜷川実花展のフライヤーが目に入った。カラフルというより真っ赤な写真が印象的な写真家である。なにかとスペインにこだわるイギリスのリン・ラムジー監督も『少年は残酷な弓を射る』で大胆に赤を使い倒し、とても印象的な作品に仕上げていた。それと同じように「赤」といえば「蜷川実花」という図式が僕の中には出来上がっていた。
 ところが、そのフライヤーには、こう書いてあった。「光に対するものと同じくらい、彼女の目は影にも向いています」。要約すると、4回連続で行われる展示は蜷川実花の光と影を共に見せるものだという。「黒の中には色が溢れ、色の中に黒は潜む」。なるほどー。色を見続けると黒が見え、黒の中にも色が見えてくるのか。どういう境地なんだろうか。そういえば赤塚りえ子がファンだといってたから、ちょっと誘って行ってみようかな。(三田格)


「蜷川実花:Self-image」 /原美術館 / 2015年1月24日(土)~5月10日(日)
開館時間 11:00~1700 水曜のみ~20:00 / 東京都品川区北品川 4-7-25 / 03-3445-0651 / 入館料 一般1100円

蜷川実花展 "noir"/ TOMIO KOYAMA GALLERY / 2015年2月4日(水)~2月23日(月)
営業時間 会期中無休 / 東京都渋谷区渋谷 渋谷ヒカリエ8F / 03-6434-1493

蜷川実花展 / CAPSULE / 2015年2月21日(土)~4月12日(日)
開廊時間 土曜・日曜 12:00~19:00 / 東京都世田谷区池尻 2-7-12-B1 / 03-6413-8055

蜷川実花展 / SUNDAY /2015年2月21日(土)~4月12日(日)
営業時間 水曜定休 11:30 23:00 / 東京都世田谷区池尻 2-7-12-B1 / 03-6413-8055

KOHH - ele-king

 梔子。くちなし。東アジアに分布する常緑低木。英名は「ケープ・ジャスミン(Cape Jasmine)」、花言葉は「幸せを運ぶ」、「私はとても幸せ」、「胸に秘めた愛」、「洗練」。花びらは白く、朱色の実をすりつぶして得られる染料は少しだけ赤味を帯びた柔らかな黄色で、抽出される香りは、ほのかに甘い。その実は熟しても決して割れ落ちることがなく、よって和名は「口無し」「朽ち無し」に由来する、とされる。──喉仏にマルセル・デュシャンのモナリザ、左手の甲にニコラ・テスラのタトゥーをでかでかと彫り込み、前歯に金や銀のグリルズを光らせる日本人ラッパーのアルバム・タイトルとしては、とても謎めいていて、同時に様々なイメージを喚起する、秀逸なネーミングだと思う。

 2015年1月1日、新年の喧噪のさなかに東京都北区王子のKOHHの「ファースト・アルバム」である『梔子』は届けられた。去年の夏、新人としては異例のセールスを上げた『MONOCHROME』のリリース時点ですでに明らかにされていたことだが、制作順で言えば、実はこの『梔子』こそが正真正銘のKOHHの「ファースト・アルバム」であり、その完成後、まずはよりKOHHの内面を掘り下げた楽曲をリリースすべきだとの判断のもと、急遽レコーディングされた「セカンド・アルバム」が、前作『MONOCHROME』だったことになる。
 そのタイトル通り、都市生活者の心象風景を精緻にスケッチしたモノクロのポートレートを思わせた『MONOCHROME』の濃いブルーの佇まいに比べて、制作時期もバラバラな楽曲で構成された本作は、より多彩で、初々しい雰囲気に満ちている。トラックのほとんどは、GUNSMITH PRODUCTION所属の俊英ビートメイカー、理貴によるもの。彼がこれまでも得意としてきた疾走感のある叙情的なビートに加え、サックスやストリングスを取り入れたメロウで奥行きのあるミドル・テンポ・チューンなど、KOHHとの新たなコンビネーションを披露している。

 聴き終えて残る印象は三つ。一つめは、旅立ちと別れのフィーリング。現時点で最も新しくレコーディングされたというリード・シングル“飛行機”も、「どこにいこう?」というフックが印象的に繰り返され、「いってきます、未来に」と締めくくられる“WHERE YOU AT?”も、どちらも放送禁止用語やきわどい表現は皆無のさわやかさで、新たなフィールドに足を踏み入れる瞬間の、特別な高揚感を漂わせている。最も古い曲は3年前に録られたものだというから、当然KOHHのライミングもフロウも荒削りだが、直感的でときに幼児的なボキャブラリーは、東京の片隅で育った一人の青年の幼い野心のうごめきと青春の終わりを、みずみずしいタッチで写し取っている。
 二つめは、愛。普遍的な愛ではなく、性愛。つまりラヴ・ソング。まずは、R. ケリーばりの艶っぽさで愛情のない剥き出しの性的欲望のやりとりを描き、そのままフェミニズムの教科書にセクシズムとミソジニーの典型的なサンプルとして載せられそうな“NO LOVE”、そして、成熟と呼ぶにはあまりにも初々しい手つきで「ボーイ・ミーツ・ガール」の定型的な物語をなぞってみせる“REAL LOVE”。
 それぞれ直球なタイトルがつけられた対照的な2曲を聴いて連想したのは、レオス・カラックスのSFノワール『汚れた血』の劇中のセリフ、「いま、きみとすれ違ったら、俺はこの世界すべてとすれ違ってしまうことになる。そんな人生って、あるか?」── 愛のないセックスによって感染する奇病が蔓延する近未来のパリで、運命的なヒロインに出会った主人公の男が吐く言葉。いくらありきたりでも、当事者にとってはひどく切実なボーイ・ミーツ・ガールのこんな決まり文句は、だが、必ず裏切られる。終盤にかけてセンチメンタルなトーンで描かれるのは、その拙い恋物語の終わりであるとともに、KOHHにとっての「青の時代」の内省の始まりでもある。
 三つめは、ミックステープ『YELLOW T△PE』シリーズからの再録曲に顕著な、徹底した空虚さ。現代の消費主義のアイコンである最新の携帯電話をモティーフに、SNSを通じたチープで発情的なコミュニケーションを露悪的に表現する”iPhone 5”、そして何より、A$AP ROCKYの”PUSSY, MONEY, WEED”を彷彿とさせる虚無的なパンチライン、「ただ生きてるだけ/女と洋服と金」が飛び出す"JUNJI TAKADA"。特に、有名コメディアンの名前と衝動的なフレーズを繰り返すだけの後者のリリックは、30分で書き上げ、推敲もあえて一切しなかったそうだ。このジャンクフードのような言葉とノリを、まるで甘さのない、圧倒的な強度のビートにのせてバウンスさせること。ひどく空っぽで、かつ強烈なこの自己肯定は、同時代の凡百のパンク・バンドに、ピストルズの「プリティ・ヴェイカント」の現代的なヴァージョンがどのようなものか、まざまざと教えてくれるだろう。

 決定的に重要なのは、これらの夢や欲望や愛をめぐる独白がどれも、USラップからのいくつかの引用と、まるでひと昔前に流行したケータイ小説のような、とてもシンプルな日本語だけで成立していることだ。巨大な壁のようにそびえ立つ団地、汚れたハイエース、渋谷の喧噪のなかで仰ぎ見る青空、切り裂かれた宇多田ヒカルの歌声、やりたいだけのブーティ・コール、汗ばんだ女の首もとで踊るダイヤモンド、iPhoneで撮る半裸のセルフィー、灼けた肌のタトゥーをなぞる唇、遊びの相手とお揃いのピンキーリング、宝石店に強盗に押し入る目出し帽の男たち、ルブタンのハイヒール、幼馴染たちの実名、死んだ友人の面影、JFKに向けて離陸する飛行機、女の頬を伝う涙…。
 そこでは、かつてソウル・ミュージックが慎みとともに「メイク・ラヴ」と呼んだ愛の営みは「ファック」と粗暴に呼び変えられ、その相手は「ビッチ」、ときには「プッシー」と、もはや「女性器そのもの」の俗称で呼ばれる。徹底的にモノ化した男女の身体のイメージと、電波のように飛び交う無防備な感情が、ひどくたどたどしく、それゆえ生々しい言葉ですくい取られることで、ぎりぎりのところで新鮮なポップ・ミュージックに昇華されている。これは、いままで一度も文化と呼ばれることのなかった文化であり、一度もアートと呼ばれることのなかったアートだ。図書館の棚に整然と陳列される「文化研究」のテキストや、アーティストの卵が「アート」の制作にはげむ美大のアトリエには決して存在しない、濃密な文化と芸術の先端が、ここに無造作につかみ取られている。

 強く直感するのは、これが犬の言葉だということ。目の前の快楽をただむさぼり、自分が選んだ絆だけを真っすぐに強く信じる、純粋で乱暴な、犬の言葉。かつてスヌープ・ドギー・ドッグがカートゥーン風の自画像で自らを「犬」と呼んだ自己演出さえも、いまや必要とされない。そんなメタファーなどなくても、KOHHが頻繁に発する「UGHH」という唸り声や、フロウの端々で裏返るファルセット、いきなり噴出する怒声を聴けば、誰にでもすぐに、これが犬の言語だとわかる。
 実はこれはKOHHに限ったことではなく、直近で言えばOG MACOやRAE SREMMURDなど、近年のUSの若手ラッパーたちも、もはや「鳴き声」としか形容しようのない、奇妙で動物的な発声を多用する。詩情のまるで感じられないスカスカでジャンクな言葉、そしてそこからもこぼれ落ちる、叫びとも呻きともつかない、衝動的な喉の震え。ラップ/ヒップホップ文化のなかで繰り返し表現されてきた「犬(Dawgs)のような俺たち」という比喩が、いつの間にかラッパーたちの生身の身体に浸透し、独自の言語を操る新種のミュータントを誕生させたかのようだ。
 だから、手のつけられない凶暴さと、こちらが気恥ずかしくなるほどのナイーヴさが同居しているのも、少しも不思議ではない。つぶらな黒い瞳と尖った牙。無邪気な仕草と獰猛なうなり声。涎を垂らしてひび割れたコンクリートを低くうろつき回り、突如驚異的な跳躍力でジャンプする。濡れた鼻先を鳴らして仲間たちとじゃれ合い、敵対者には鋭く牙を剥く。重苦しい現実のプレッシャーからも、ポリティカル・コレクトネスのくびきからも、彼らは自由だ。自分たちに名前をつけ、首輪をはめて飼い馴らそうとする新しもの好きの手をすり抜けて、犬たちの群れは次々と未開の場所を目指す。この『梔子』を聴いた後、続いて制作された『MONOCHROME』を聴き直せば、あのアンビヴァレントな叙情が爆発する“貧乏なんて気にしない”が、「Started from the bottom Now my whole team fuckin' here」(Drake)の高らかな宣言だったことが、はっきりとわかるだろう。

 だが、こうしたストーリーもすでに昔話に過ぎない。事実、KOHHはもうサード・アルバムに向けて動き出している。昨年末に1ヶ月ほどNYのハーレムに滞在していたKOHHは、次作はアメリカに渡ってレコーディングするそうだ。その直近の軌跡を知るうえで重要な客演曲がふたつ。ひとつは、KOHHがハーレム滞在時にともに行動していたラッパーJ $TASHが来日の際、ANDY MILONAKISを加えて地元王子でPVもろともたった1日でレコーディングされたという「HIROI SEKAI(WORLDWIDE)」。もうひとつは、韓国のアンダーグラウンド・レーベル〈HI-LITE RECORDSのKIETH APE〉の新曲に、 彼が所属するTHE COHORTのOKASIAN、JAY ALL DAY、日本からは SQUASH SQUAD の LOOTA とともに招かれた"It G Ma"。どちらも海を超えた共同制作であるという点で目新しいとともに、そこで聴けるKOHHのフロウは、彼が著しい進化の途上にあることを雄弁に物語っている。
 むろん海外勢とのジョイントはこの2曲に限ったことではない。サウス・ヒップホップの音楽的爆心地のひとつ、ヒューストンのSLIM Kが『YELLOW T△PE』シリーズの楽曲をドラッギーにリミックスしたチョップド&スクリュー盤『PURP TPE』の例に象徴されるように、KOHH、そして彼が所属するGUNSMITH PRODUCTIONは、近年インターネットを中心に急速に発達してきたミックステープ・シーンが生み出したグローバルなラップ/ヒップホップ文化のコミュニティ、ないしはネットワークを共有している。昨年、DJ ISSOとSEEDAがサウス・シカゴの新鋭CHIEF KEEF周辺の重要人物、DJ KENNとのコラボレーションのもとリリースした『CCG THE CHICAGO ALLIANCE』や、ANARCHYがメジャー・デビュー直前に同じく多くの海外アーティストを招いてフリーダウンロードで発表した『DGKA』といったミックステープが、こうした流れの一端であることは論をまたない。

 いま起ころうとしているのは、それぞれの社会の文脈によって多様にローカライズされつつも、国境を越えて確かに共振する、グローバルなアウトサイダー・カルチャーの混淆だ。まるで基礎教養のように様々なドラッグの隠語をそらんじ、幼い頃から熟知した犯罪の符牒を暗号じみた手つきとアイコンタクトでやり取りする、越境者たちのコミュニティ。服では隠せない場所に入れたタトゥーでお互いのアイデンティティを確認し、通常の人間には聴こえない周波数の音に耳を尖らせ、独自のスラングと遠吠えで交信する、異形の犬たちのネットワーク。グローバルなラップ/ヒップホップ文化は、これまで強く根ざしてきた場所と人種に基づく垂直的な軸に、インターネットをベースとした流動的なネットワークによる水平的な軸が加わることで、ゆるやかに再構成されつつあるようだ。
 東京北部郊外、隅田川沿いにそびえる巨大な団地のたもとで鳴らされるこのラップ・ミュージックは、官製の文化政策をバックに、国民的アイドルや現実から遊離したアニメーションによって推進される「クール・ジャパン」とはまったく別種の、日本から世界への応答となるだろう。本作『梔子』は、世界中にバラまかれたラップ/ヒップホップという危険な文化の種子が、極東の地で独自の交配を繰り返して誕生した突然変異種であり、マリファナの灰とコデインの原液を養分に育った、いびつで、美しい花だ。しかも、毒を秘めた。

 ここにあるのは、最新の、古いポートレート。紙飛行機のかたちをした置き手紙。タイムラグとともに届けられた初対面の挨拶は、そのまま別れの言葉だ。ハロー。グッバイ。アイ・ラヴ・ユー。リラックスして真っ白なカンバスに向き合えば、ピカソ風の自画像が歌い出し、隣で写楽が伴奏する。あっという間に月と太陽が入れ変わり、手もとのiPhoneが出かける時刻を告げる。赤い口紅の付いたTシャツを着替えて、真新しいキックスに足を突っ込む。甘い香水の匂いも、首筋のキスマークも、すぐに消える。はじめまして。さようなら。いってきます。だけど、いまはまだここにいる。喧噪の余韻を濡れた鼻先に感じながら、次に見る景色を思い浮かべている。さあ、どこにいこう?

Ryuichi Sakamoto, Taylor Deupree, Illuha. - ele-king

 2月、坂本龍一、テイラー・デュプリー、イルハ(伊達伯欣+コーリー・フラー)の共作が〈12K〉よりリリースされる。
 これは、2013年の7月、山口県のYCAMホワイエにて坂本龍一をディレクターに迎えて開催された「アートと環境の未来・山口 YCAM10周年記念祭」におけるライヴ音源。

 以下、〈12K〉のレーベル・サイトから。

 「糧や会話や探求のためにアーティストたちはコンサートの日々に集った。有意義で、打ち解けた情調があり、彼を共演へと導いていった。ピアノ、ギター、パンプオルガンやシンセサイザーによる即興演奏は結果的にアーティストたちに深いところで影響をもたらしたのだった。
 4人はそれまで一度も共演したことがなかったが、徐々に彼らを取り巻いた節度や聴力のレヴェルにあっけを取られてしまった。息をのむほどの静寂に腰をおろしたオーディンスたち。音楽は7月の空気に満ちた束の間の休息を彼らに与える。
 最後に奏でられた静かな一音が暗闇に消え入るとき、アーティストたちは自らが深い旅に出ていたのだと気づくのだった。このような瞬間が捉えられたときこそ幸運な出来事であり、コンサートはまさにそうであった(その様子は良質なDSDによって録音された)。
 不変で齢を重ねることとは無縁な音楽の性質を指す永久性が、シンセサイザーや加工されたギターにはじまり、開放的で空気感のあるプリペアド・ピアノと無音の連続性や、果ては寂寥なピアノ、ひび割れた既製品やフィールド・レコーディングの音声、そして霧のように宙に浮遊する音による、限りなく忘れがたい繊細な子守り歌の緩やかな層を横断する3楽章に存している。
 永久性とは我々と時間の伸張を囲い込むだけではなく、単一の記憶や、時間が静止し4人の音楽家が合一する刹那の記録への広がりをも包括するのである」

Ryuichi Sakamoto, Taylor Deupree, Illha
Perpetual
12k


以下、イルハからのコメントです。

「この日の演奏は、坂本さんのプリペアドピアノ、テイラーがモジュラーシンセ、僕らはパンプオルガンとギターを中心にコンタクトマイクなどで坂本さんの音をプロセッシングしたりしました。
 演奏前の二日間も演奏者でゆっくり食事ができ、企画のタッツを始め、YCAMスタッフも素晴らしく、良い演奏に繋がりました。
音源を聴いて改めて驚かされたのはPAのzAkさんのミックスと音質の良さです。当日はテイラーとILULHAのトリオの演奏の後に、数十秒のインターバルを挟んで坂本さんとのカルテットでしたが、音楽的な連続性があったので1曲にしました。各チャンネルごとの録音もあったのですが、結局zAkさんの2mixを使うことになりました。
 山口という場所に、あれだけの施設があるということは不思議なことですが、山口だからこそYCAMが存在しているんだと思います。
またいつか演奏出来たらと思っています」 ── ILLUHA

※なお、TaylorDeupree, ILLUHAの参加したStephan Mathieu, Federico Durandとのツアー音源が ハイレゾで1ヶ月限定で以下で販売されている。 https://kualauktable.limitedrun.com/

映像をBaconが、音楽はRezzettが再編集! - ele-king

 スケートシング、トビー・フェルトウェルらによる東京発のアパレル・ブランド〈C.E〉より2015 Spring/Summerのルックムービーが公開された。

 これは、昨年末〈Tokyo Fashion Week VERSUS TOKYO〉にて披露されたプレゼンテーションの模様を俯瞰カメラでシュートし、このルックムービー用にBacon(足下から視界までコントロールする方々)が映像をエディット。

 そして、当日もライヴをこなしたRezzett(英国より現れた謎に満ちたニューカマー、しかし一聴してソレとわかる電子音を司る2人組)によって新たにマスタリングを施された内容は一見の価値あり。もちろん当日のライヴ音源を使用している。

 ムービー公開に合わせて、今回もニューヨークのSplay/がC.Eのウェブサイト・リニューアルを担当(www.cavempt.com)。
 New York / London / Tokyoと張り巡らされるC.Eネットワークが、オンライン上にて結実した世界は2015年も増殖膨張をつづける。

あらべぇ - ele-king

去年よく聴いてた10作品

去年よく聴いてた10作品です。順不同です。
ちなみに、去年のベストレーベル(?)は「psalmus diuersae」です。(僕も密かにゴニョゴニョ……)
https://soundcloud.com/wlowlodub

“告知です”
2/8に恵比寿のKATAにてD/P/I(Alex Gray)の来日公演があります。僕はDJさせていただきます。ぜひ!
https://www.kata-gallery.net/events/BONDAID4/

interview with Sherwood & Pinch - ele-king


Sherwood & Pinch
Late Night Endless

0N-U SOUND / TECTONIC / ビート

DubWorldBass MusicSoulReggae

Amazon iTunes

 『レイト・ナイト・エンドレス』には姿勢がある。音楽は、時代と関連づけて語られるものであると同時に、何度も繰り返し体験できる楽しみなのだ。ふたりのベース探求者は、アルバムを通して、そう主張している。
 実際、これはクオリティの高いアルバムだ。話題性のみで終わらせないぞと、意地でも良い作品にするんだという気概を感じる。ヴァリエーションも豊かで、ロマンティックな側面もある。以下のインタヴューで本人たちが言っているように、これは、「クラブとリヴィングを繋げる音楽」だ。

 簡単に、ふたりの紹介をしておこう。
 エイドリアン・シャーウッドという人物の名前は、少なくとも5年音楽を聴いたら覚えることになる。それほど彼は、コンスタントに、ポストパンク時代から延々と、スタジオの卓の前に座って、フェーダーやつまみをいじりながらダブ・ミキシングをし続けている。
 音の電気的な加工、あるいはミックスを変えることがひとつの創造行為として広く認識される前から、彼はその技術をジャマイカの一流ミュージシャンに囲まれながら磨いてきた。ジャマイカ大衆音楽、すなわちレゲエは、音のバランスにおいてベースの音量を上げたことで知られている。ことレゲエから派生したダブは、ベース・ミュージックという言葉が生まれる前からの低音の音楽で、ベースの扱いに関しては歴史があり、研究の成果がある。
 シャーウッドは〈On-U Sound〉という主にレゲエ/ダブを出しているレーベルの主宰者としても知られている。いまでこそ白人や日本人がレゲエ/ダブをやったところで文句を言われることはないが、シャーウッドが活動をしはじめた時代は、白人が関わっているだけでレゲエ・ファンから「偽物」と言われていた時代だった。つまり、文化的な観点においても、シャーウッドは先駆者のひとりである。

 いっぽうのピンチ(ロバート・エリス)は、ダブステップ世代を代表するDJ/プロデューサー。人気と実力を兼ね備えたひとりだ。〈Tectonic〉を主宰し、最近では新レーベルの〈コールド〉が話題になった。ちなみに、ピンチがブリストルに生まれた1980年は、シャーウッドが〈On-U Sound〉をスタートさせた年でもある。それは、1958年生まれのシャーウッドが22歳の年で、彼が初期ブリストル・シーンのゴッドファーザー、マーク・スチュワートらと交流をはじめた頃だ。

 まさに親子ほど年が離れ、世代の異なるふたりだが、『レイト・ナイト・エンドレス』には、しっかりそれぞれの長所が出ている。ダブステップ系のグルーヴもあれば、いかにもシャーウッドらしいダブの宇宙とルーツの香気も広がっている。ふたりの調和が取れているのだ。
 それは時代の風向きとも合っている。細分化するダブステップ以降のダンス・ミュージック/商業化されたレイヴ全盛の現代において、足元を見つめる慎重なプロデューサーたちは、自分たちの立ち帰る場所を求めている。ある者はハウスへ、ある者はテクノへ、ある者はジャングルへ、そしてある者はダブへと向かっている。ハウスが来ているように、長いあいだ埃をかぶっていたダブもいま、たしかに来ているのだ。
 が、まあとにかく、今作においてなによりも重要なのは、この作品を家で聴いたときに気分良くなれること。アルバムのなかばあたりのメロウな雰囲気は、とくに素晴らしい。
 力作と呼ぶに相応しい作品を完成させたふたりに、昨年末、スカイプで取材した。

“ムード”を描写してるんだ。このレコードを聴いたら、真夜中のダンスやまったりした雰囲気、そういうのが延々と続くようなムードが反映されてるのがわかると思う。だよな?

通訳:こんにちは。今日は宜しくお願いします。

ピンチ(以下、P):こちらこそ。いま、エイドリアンを呼ぶから待ってね。(スカイプで招待)

エイドリアン・シャーウッド(以下、A):ハロー!

通訳:部屋のクリスマス・デコレーションが素敵ですね。(※取材は昨年のクリスマス前におこなわれた)

A:娘が飾ってくれたんだ。いいだろ?

P:ツリーも光ってるしね。

さっそくいくつか質問させて下さい。「Music Killer」のスリーヴアートは誰のアイデアだったんですか? あのキミドリのスマイリー(の逆の表情)ですが。

P:あれはスポティファイ(※欧米では有名だが、インディ・シーンでは不評の配信サービス)のマークをイメージしたんだ。周りはあんまり気に入ってなかったけどな……

A:でも俺たちは気に入ったから使うことにしたんだ。

P:だね。アンハッピーなスポティファイ・フェイス。

A:ロブとチャットしてて……

P:で、その会話の中であのアイディアが出て来たんだ。

A:そうそう。

P:俺は面白いと思ったんだよね。

A:基本、俺はスポティファイとかそういったものが好きじゃないんだ。それを表現したのがあのマークなんだよ。

P:当時、スポティファイが話題になってたからね。まあ、スポティファイはスポティファイ。好きな人はそれでいいとは思うけど。

通訳:日本って、まだスポティファイがそこまで普及してないんですよ。

A:それはいい。さすが日本だ。先進国だからスポティファイがないのさ(笑)。日本人はいまだにCDやヴァイナルを買うし。

P:デジタル時代になって、音楽は使い捨てになってきてしまってるからね。危険だと思う。CDやヴァイナルを買えば、それを聴こうとする気持ちが強くなると思うんだ。デジタルだと、音楽のチョイスが無限になってしまう。でも形として手元にあれば、それをもっと聴こうとするんじゃないかな。

A:最近は情報が飛び交いすぎてる。音楽もそうだし、だからハイプがすごいんだ。もう誰を信用していいのかわからない。昔はレコード店に行ってオススメを聞いたりしてたのにね。他のアーティストとの交流も前より減ったと思う。俺はプロモーションのために流された情報は信じたくないし、そういういまの時代だからこそ、人の信頼を得ることが大切だと思ってるんだ。ロブと俺のCDは信用できる内容だよ。是非聴いて欲しいね。

『Late Night Endless』というタイトルは、ふたりのセッションのことを喩えているんですか? それとも、この音楽の性質のようなものを表しているのですか?

A:あれは、“ムード”を描写してるんだ。このレコードを聴いたら、真夜中のダンスやまったりした雰囲気、そういうのが延々と続くようなムードが反映されてるのがわかると思う。だよな?

P:だね。本当にそう。あと、俺が音楽を作るのも大抵深夜だし。

通訳:クリエイティヴ・タイムってよくいいますもんね。

P:静かでピースフルだからね。メールを返さなくてもいいし、電話もならないし。夜中って好きなんだ。そういう時間だとマジックも生まれやすいし。

A:このレコードを作ったときも、深夜の作業が多かったよな。

通訳:作業はどうでした?

A:かなり楽しかったよ。自分たちの創造力を探求したんだ。そこからマジックが生まれたし、いつもと違うムードで作れたのがよかったね。

通訳:ロブ、あなたはどうですか?

P:エイドリアンと夜中の2時とか3時まで作業するのは楽しかった。作業する度にどんどん楽しくなっていったんだ。

先に出たふたつのシングルがわりとダブステップ(ベース系)のマナーで作られていましたが、今回のアルバムで予想以上に音楽性が幅広くて驚きました。ピンチにしたらフロア向けの曲はたくさん作っているわけで、このプロジェクトでのアルバムにおいては、クラブ・リスナー以外の人たちにも届けたいという気持ちがあらかじめあったのだと思いますが、いかがでしょうか?

P:2枚のシングルは、もう少しダンスフロアを意識して作ったんだ。でも今回のはアルバムだから、リスナーをさまざまなエナジーへと誘い込む音楽の旅を作る事ができた。だから、いろいろな幅広いサウンドを取り込むことを意識したんだ。それが出来るのがアルバムの特権だからね。

A:このレコードを聴いたら、完璧な真夜中のレコードっていうのがわかると思うよ。家でも楽しめるし、すごく瞑想的であると同時に、クラブでプレイすることも出来る。そんなレコードなんだ。

P:だね。

A:クラブとリヴィングを繋ぎたいんだ。俺が作って来たレゲエのレコードもそう。サウンドシステムでもスピーカーでも楽しめる作品。僕とロブは、ダンス・フロアのムードを持ちつつ家でも楽しめる作品を完成させることが出来たと思う。

P:エンジニアが、ダンスフロアでもプレイしたくなるインパクトを音に加えてくれたと思う。それもあって、ベースのフィジカルなインパクトを持っていながら、音の深さや緻密さも持ったレコードが出来たんじゃないかな。そのふたつのレベルを兼ね備えてる。だからサウンドシステムでも楽しめるし、ヘッドフォンや家で注意して聴きながら音の細かさを楽しむことも出来るんだ。

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クラブとリビングを繋ぎたいんだ。俺が作って来たレゲエのレコードもそう。サウンドシステムでもスピーカーでも楽しめる作品。僕とロブは、ダンス・フロアのムードを持ちつつ家でも楽しめる作品を完成させることが出来たと思う。


Sherwood & Pinch
Late Night Endless

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今回エンジニアにベルリンのダブプレート&マスタリング(のラシャド・ベッカー)を起用していますね。

P:俺はラシャドの大ファン。彼は俺がシャックルトンとやったアルバムを手掛けてくれたんだけど、そのときにすごく良いエンジニアだなと思って。忙しすぎてなかなかつかまらないけどね(笑)。

通訳:じゃあ、ピンチが彼にオファーしたんですね?

P:そうだよ。今回もすごく良い仕事をしてくれたと思う。

A:かなりね。

通訳:制作中に会うことは?

A:俺は会ってない。

P:彼はベルリンに住んでるから、こっちに呼んだり会いに行くよりデータを送った方が安いんだ(笑)。

1曲目の“Shadowrun”のビート、細かいエフェクトは、まさにシャーウッド&ピンチですね。お互いの特徴がうまく混ざっている曲のひとつですが、これを1曲目にすることに迷いはなかったですか?

P:トラックの順番がすんなり決まるってことはまずない。でも“Shadowrun”に関しては、最初に持ってくるのがいいんじゃないかって、しっくりきたんだよね。曲の順序ってすごく大事なんだ。音楽の“旅”を作るのにはそれがすごく重要だから。
(エイドリアンがクリスマスの飾りの人形をカメラの前で左右にいったり来たりさせる)

通訳:何してるんですか(笑)?

A:いや、旅っていうから漂わせてみたんだ(笑)。……このトラックは、他のトラックと比べてもっとS&Pっぽい自然なトラックだったからね。まずそこから入っていって、期待以上のものに入っていくっていうのが良いと思った。今回は、境界線を越えて、たくさんの面での可能性を探求したんだ。もっとお決まりのこともやろうと思えば出来たけど、でも、自分たち自身もいつも以上のことに挑戦したかったんだよね。“Bring Me Weed”や“Music Killer”みたいな(フロア向けの)曲だらけのアルバムは作りたくなかったんだ。
 例えば、俺の前回のアルバム『Survival & Resistance』と比べると、このアルバムには全く違うフレイヴァーが詰まってる。このアルバムでは、俺とロブのアイディアや音の調和が探求されてるんだ。それが出来たことをすごく誇りに思う。妥協することなく、ふたりの融合によって新しいものを作り出すことが出来た。だから新鮮なサウンドでもあるし、10年経っても飽きないレコードが完成したと思うよ。

P:本当にタイムレスな作品だと思う。未来的とかそういうのでもなくて、特定の時期に当てはまらない作品を作りたかったんだ。ある意味、参考となっているのは〈On-U Sound〉や俺のダブステップの背景だけど、同時にそのどのサウンドでもない。その要素の間を自由に動き回ることが出来るというか。そういう作品がこのアルバムなんだよ。

まさにその通りで、曲ごとに趣向が違っていて、聴き応えのあるアルバムですよね。たとえば、“Wild Birds”みたいなエレガントな曲は、アルバムの目玉のひとつだと思うんですが、この曲に関してコメントください。

P:そういってもらえると嬉しいね。

A:どのトラックだって?

P:“Wild Birds”だよ。

A:ああ、あれか。

P:俺はあのトラックが大好きなんだ。

A:あれはアシッド・トリップみたいな音楽だな。ダブ・チューンだと思う。セットの最初に流す、みたいな感じだな。

P:だな。ムードを変える曲だね。1年くらい、自分のDJセットの最初に、この曲の初期のヴァージョンを流してたんだけど、すごく良かったんだ。その部屋にどんなエナジーやムードが出来ていても、この曲をプレイするとパッと雰囲気が変わる。リセットボタンを押してる感じ。いちから新しいエナジーを生み出していくんだ。大好きなトラックだね。トリッピーなヴァイブがあって。

“Wild Birds”におけるふたりの役割をそれぞれ教えて下さい。

P:俺が自分で作ったリズムやサウンドをエイドリアンに持っていって、そこから何を乗せることが出来るかを探していったんだ。スキットを入れたり、ピアノやサンプルを加えたり。で、それをアレンジした。で、そのあとエイドリアンがデスクでボタンをいじりながら魔法をかけてくれたんだ(笑)。

A:ははは(笑)

“Stand Strong”も素晴らしい曲ですね。メロウでエキゾティックな歌とパーカッションが魅力的だと思いました。歌っているのではどなたですか? 

P:あれはTemi(テミ)だよ。

通訳:『Ten Cities』(※〈サウンドウェイ〉からのコンピレーション)で一緒にやったTemi?

P:そう。俺がラゴスに行って、テミと何曲か作業してたんだけど、そのときたまたまこの曲の初期のヴァーコンのインストが手元にあって、それにヴォーカルを乗せてみれくれないかと彼女に頼んだんだ。そしたらそれが最高でね。ふたりとも結果に大満足で。彼女はナイジェリアのヨルバ語で歌ってるんだ。
 先にインストのアイディアがあって、彼女がその上から歌って、そこからまた音を変えていって。声やムードがインストにフィットしたんだ。嬉しかったね。君がパーカッションを魅力的と言ってくれてよかったよ。あのバランスをとるのにすごく時間をかけたから(笑)。

A:ははは(笑)、かな~り長く(笑)。

通訳:どれくらいかかったんですか(笑)?

P:思い出したくもないよ(笑)。エンドレスだったから(笑)。

通訳:今後、共演するヴォーカリストは増やしていきたいのでしょうか?

A:イエス。ロブはこれまでに俺と同じくらい様々なアーティストと作業してきたし、彼はテミを始めとするいろいろなヴォーカリストとの作業を楽しんで来た。既に共演したことのあるヴォーカリストももちろんいいけど、他のヴォーカリストも含め、いるかロブとヴォーカル・アルバムを作れたらいいなとは思うね。可能性はあるかも。

P:だね。

通訳:どんなヴォーカリストとコラボしたいですか?

A:マイケル・ジャクソン。

P:エルヴィス。

A:エルヴィスいいな。

P:ジョン・レノン、ジミ・ヘンドリックス(笑)。

通訳:亡くなってないとダメなんですか(笑)?

A:ははは。世の中には素晴らしいヴォーカリストがたくさんいるからね。このアルバムにはテミやビム・シャーマンなんかが参加してくれているけど、彼らとまた作業したいとも思う。やっぱり、内面でも繋がりを持てる人間とコラボしないと。今回も、だからこそチームとして良い仕事が出来たと思うし。

P:たしかにそうだ。

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本当にタイムレスな作品だと思う。未来的とかそういうのでもなくて、特定の時期に当てはまらない作品を作りたかったんだ。ある意味、参考となっているのはON-U Soundや俺のダブステップの背景だけど、同時にそのどのサウンドでもない。その要素の間を自由に動き回ることが出来るというか。


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このアルバムの「アフリカ」について訊きます。“Africa 138”という曲がありますよね。ピンチには、2009年の“カッワーリー(Qawwali)”という、アフリカンなリズムを披露した人気曲があります。

P:あれは、アフリカンというより、スーフィーが参考になっているんだ。スーフィーっていうのはスピリチュアルな音楽のフォームで、“カッワーリー”はヴォーカル・ベースの音楽なんだけど、“カッワーリー”全体のポイントが意識なんだ。スピリチュアル・メディテーションみたいな。そのアイディアやムードが好きで、自分と音楽のスピリチュアルな繋がり、みたいなものを元にしてヴォーカルなしで書いたのがあのトラックなんだよ。

通訳:そうなんですね。で、質問なんですけど、エイドリアンには『スターシップ・アフリカ』というクラシックがありますよね? つまり、お互いの音楽に「アフリカ」はこれまでもあったと思いますが、今作においても“Africa 138”があります。

A:すべてのリズムはアフリカから来てるんだよ。ロブはラゴスに行ってたくさんの若手アーティストたちと出会ってるし、テミもそのひとり。ロブのパーカッションのほとんどもアフリカンだし、興味深いビートのほとんどはアフリカから来てるんだと思う。あそこが起源なんだよ。

P:俺はポリリズムが好きなんだけど、ダンス・ミュージックの面白い面の多くがアフリカのパーカッションに通じてると思う。ローランド808を見てみても、あのサウンドのほとんどがアフリカのパーカッションを基に作られてるしね。モダンなものとして受け入れてるけど、実はアフリカの伝統的なフォームが基になってる。ダンス・ミュージックに限らず、音楽におけるアフリカのパーカッションの影響はすごく深くて浸透してる。それと離れて音楽を作る方が無理ってくらいさ。

通訳:あの曲はどのようにして生まれたんですか?

P:“Africa 138”は最初の方に作った品のひとつ。そこから変わっていったんだ。いろいろな面白いリズムさサウンドのコラージュみたいな作品だと思う。

A:あれは、元々は俺がビム・シャーマンと一緒に何年も前に作っていたトラックなんだ。

P:だから最初に作りはじめて、時間があったからこそどんどん変化していった。

では、“Run Them Away”はどうでしょう? これはもう、エイドリアンらしいルーツ・レゲエを基調にした曲ですが、この曲にはメッセージも込められていますよね? 

A:あの歌詞は、最近世界を操ってるバカな奴らを排除しようっていう内容なんだ。彼らが何をやってるかとか。

ベース・ミュージックとルーツ・ダブとのミックスということについては、かなり意識的に取り組んだのでしょうか?

A:俺たちは、あまりそのふたつを違うものとして捉えてないから……ダブステップがシーンに来たとき、すでに好きな音楽だったから、俺にとってはすごく良かったんだ。ジャングルもそうだし、すぐに繋がりを感じることが出来たんだ。ロブもそうだと思う。ルーツを辿ると同じだから、ダブステップやベース・ミュージックは好きだね。俺にとっては、すべてが調和してるんだ。トーンやパワー、マイナーコード、それが全部重なった音楽が好きなんだ。同じだから、1972年~1973年のルーツ・ミュージックとコンテンポラリーなベース・チューンのバック・トゥ・バックは自然なんだよ。“Run Them Away"も、すごく自然に出来たしね。

“Gimme Some More”はベース系のリズムで、とくにダブの強度が強い曲ですが。

A:君が言うように、ダブの強度が強いトラックではある。ロブが最初にリズムを作って、そこから俺たちで色を加えていったんだ。このトラックは、どちらかというとロブが率いた作品で、そこに俺がアイディアやオーバーダブを加えていった。

P:俺が作ったものはすべてデスクに行って、エイドリアンの魔法の手にかかる。だから、必ずダブの要素は入る。このトラックには、ダンスフロアの良いグルーヴが入ってると思う。だからそこまでルーツは感じないけど、ダブとのコネクションは確実にあるトラックだと思うよ。

“Different Eyes”も面白いリズムなんですけど、この曲のメロディラインは、ルーツ・レゲエ的で、しかしビートがハイブリッドですよね。

P:このトラックは、90年代初期のブリストルを感じさせるんだ。俺が昔から聴いてきた音楽でもあるし、ルーツっぽさももちろんあるけど、この曲はもっとヒップホップ・クオリティが強い。

A:これは、アルバムのなかでも一番ダブステップなトラックだね。

“Precinct Of Sound”のような、敢えてクラシックなダブステップ・スタイルを使いつつ、エイドリアンのスペーシーなダブ・ミキシングが活きている曲も面白いですね。

P:Andy Fairley(※かつてON-Uからアルバムを出している)のヴォーカルが少し入ってるんだ。彼は多分、クラシックなON-U Soundのヴォーカルだから、それをもっとコンテンポラリーな環境におとしこむのことは意識したね。自分の初期のダブステップの作品とか。すごくパワフルな作品が出来上がったと思う。

ああいうミキシングはスタジオで一発録りなんですか?

A:ノー(笑)。完璧な作品を作りたくて、何度もミックスしたんだ。たくさんのアイディアを何度も試したんだよ。

P:アルバムには、オンもオフも含めて制作に2年かかったんだ。だから、書いたけどアルバムに使わなかったトラックもたくさんある。出来が悪かったからじゃなくて、アルバムのムードにフィットしなかったからっていう理由でだよ。トラックとトラックの繋がりは大事だから。最終的には269くらいミックスがあった(笑)。

A:ははは(笑)。

P:ムードを繋げるっていうのがチャレンジだったし、かなりの時間を費やしたから、皆にはそれを評価して欲しいな(笑)。

通訳:是非、CDを買って何度も聴いて欲しいですね(笑)。

P:2枚買って、1枚は母親にあげて(笑)クリスマスだから(笑)。

「Bucketman」とか、「マリワナ」とか「スモーキング!」とか、笑える声ネタもありますが、こういうのはエイドリアンが集めて来るんですか?

P:あれはダディ・フレディだったよな?

A:そう。いつも人がスタジオに出入りするから、そういうレコーディングを録リためておいているんだ。あれは2、3ヶ月前に録ったダディのヴォーカル。最近のなんだよ。かなり前に録ったものもいくつかあるけどな。ダディのヴォーカルは使ったことがなかったから、今回使ってみることにしたんだ。アルバムにすごくフィットするだろうと思ってね。

絶対に笑いながら作っていたと思うんですね。

A:毎回笑いが耐えなかった。レコーディングのプロセスは、クリエイティヴでありつつ、マジックでありつつ、そして何より楽しくないといけない。だから仕事と思わずに楽しめるのさ。スタジオの時間は楽しい時間でなきゃ。ロブとはそれが出来てる。彼と作る作品だけじゃなくて、制作過程にも感謝してるんだ。

通訳:どんな風にリスナーには楽しんで欲しいですか?

P:聴くにふさわしいシチュエーションはたくさんあるよ。夜中に聴くのがいいかもね。ムードがいいから。でも、どこで聴いていてもそういうムードに導いてくれると思う。とにかく、あまり先入観をもたずに耳をすまして欲しい。少なくとも、2~3回は聴いて欲しいな。

A:ロブが言ったように、毎回プレイするたびに違う何かを発見して欲しいね。たくさんレコーディングしたし、ミックスしたり、いろいろなものが詰まってるから。だから家でも楽しめるし、クラブでも楽しめるんだよ。

ピンチにとって、このアルバム制作はどのような意味を持つのでしょう? 

P:たくさんある。自分が昔から聴いてきたエイドリアンの素晴らしい音楽でもあるし、そこからさらに音を探求するっていう素晴らしい経験だった。これは彼との作業という経験のシンボルだし。楽しい時間も含め、すべてがポジティヴな経験だよ。

ダブを長年作ってきたエイドリアンとの作業は、ピンチのダブステップの解釈にも影響を与えましたか?

P:エイドリアンが俺のダブステップの見方を変えたとは思わない。俺たちは、自分それぞれが持つ要素を使って音楽を作ってるだけだから。

〈コールド〉で試みているテクノ・サウンドとこの作品とはどのように関連づけられますか? 

P:うーん……関連はとくにないよ。“Shadowrun”にはちょっとその要素が見られるかもしれないけど、他のトラックはとくにそういうのはないと思うな。

エイドリアンにとってこのプロジェクトは、どのような意味を持ち、今後、どのようにご自身のキャリアに活かされるものなのでしょう?

A:ロブに出会えたことは本当に嬉しいんだ。俺は常に自分が共感出来る何か新しいもの、新しい才能を探しているからね。彼はまさにそういう存在なんだ。世の中、才能のある人間はたくさんいるけど、メンタリティが合わないことも多い。でもロブとは共感が出来るから作業が楽しいんだ。共通点もあるし、互いの創造力をエンジョイしてる。ロブは若くて才能があるから、一緒にいてプラスだらけなんだよ。良い人間と働けば、それが作品に反映される。ロブでもプリンス・ファーライでも(笑)、良い環境で作ることが大事だからね。それ以上のものはない。だから本当に彼と作業が出来てハッピーなんだ。ギグも、レコーディングも、ただ飲みにいくだけでも、彼と一緒ならすべてが楽しみになるんだよ。

P:たしかに。

客観的に見て、『Late Night Endless』はダブ・ミュージックを更新できたと思いますか? 

P:更新とか、あまりそういうのは考えてない。未来に進もうとか、未来のことを考えたりはしてないんだ。俺たちは、ただ昔からのサウンドのインスピレーションを使って、いま自分たちが楽しめるものを作ってるだけだから。

通訳:もし、『Late Night Endless』のライバルがいるとしたら、何(作品名/アーティスト名)だと思いますか?

A:『サージェント・ペッパー』だな(笑)。

P:同じだったり似たレコードは他にはない。2015年に買うべき唯一のアルバムさ(笑)。

Arca - ele-king

 昨年リリースした『ゼン(Zen)』が好調のアルカの、ファッション・ショーのために書き下ろした新曲11曲が無料でダウンロードできる!
 ゼンは急げ、ダウンロード・イット!


■『Sheep (Hood By Air FW15)』

Tracklist:
1. Mothered
2. Pity
3. Drowning
4. En
5. Faggot
6. Submissive
7. Umbilical
8. Hymn
9. Don't / Else
10. At Last I Am Free (interlude)
11. Immortal

■ビョークの3月に発売されるニュー・アルバムに共同プロデューサーとして参加! カニエ・ウェスト、FKAツイッグス作品のプロデュースを行ってきたアルカが、3月に発売されるビョークのニュー・アルバム『Vulnicura』に、2曲の共作曲、7曲の共同プロデューサーで参加している。

■1stシングル 'Thievery' MV 視聴リンク (Created by Jesse Kanda )

​■2ndシングル 'Now You Know' MV 視聴リンク (Created by Jesse Kanda )

■3rdシングル 'Xen' MV 視聴リンク (Created by Jesse Kanda )

こだま和文 - ele-king

 最近何が驚いたかって、ぜんぜんダブのイメージのないパンダ・ベアがキング・タビーからの影響を取り入れたらしい新作を発表するかと思えば、Back To Chillのレーベルを始動させたゴス・トラッドがいまだからこそダブのベースの凄みを強調しようとする。UKでは、エイドリアン・シャーウッドとピンチは世代を超えたダブ・アルバムを作って、リリースしたばかり。そして日本のダブの先駆者、こだま和文が還暦を迎える。1月29日には、その一大イベントが開かれる。ここしばらく「ダブ」というキーワードは表だってこなかったけど、これは、ダブの季節の到来、本当にあるかも。

  以下、リキッドルームからの熱いメッセージです。

還暦のエコーこだまする宴へ

 30年以上にわたるエコーの連なりをこの国の音楽シーンに響き渡らせ続けてきた男、こだま和文。還暦を迎える、現在もそれは継続した響きの連なりを 持っている。ミュート・ビート、世界初のライヴ・ダブ・バンドとして東京の音をひとつ、1980年代に前進させた。これを発端にして、そして“レゲエ” や“ダブ”という言葉を外しても、彼がいなければ、果たしてこの国のアンダーグラウンドからポップ・ミュージックにいたるまで、それらがいまと同じ形に なっていったかというのを考えるばかりである。ソロ・アーティストとしても数々の名作を残し、1990年代以降から現在にいたるまでの中心的プロジェク ト“DUB STATION”での、ある種、ヒップホップやベルリンのリズム&サウンドやミニマル・ダブへの回答のような、そのスタイルは唯一無二の存在感を放ってい る。そして、フィッシュマンズのファーストなど、プロデュース作においても、やはりその動きはこの国の音楽シーンに消せない刻印をくっきりと残している。 新作が待たれるばかりだが、ライヴや客演での活動は、いまだ活発だ。

 先ごろ、ミュート・ビート以前の、これまで謎の多かった、その若き半生を綴った近著『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』が刊行されたばかりだが、こだま和文がこのたび還暦を迎える。

 この日、これまで共演や客演などでそのリスペクトを示してきたEGO-WRAPPIN’、bonobos、ORESKABANDなど、その遺伝子を 持つアーティストたち、そして後期ミュート・ビートのメンバーでありこだま和文の朋友、故江戸アケミ率いるじゃがたらでもキーボードを務め、先ごろ円熟の ソロアルバム『遠近(おちこち)に』をリリースしたばかりのキーボーディスト、エマーソン北村も出演。

この宴、祝う。

▼EGO-WRAPPIN’
1996年 中納良恵(Vo、作詞作曲)と森雅樹(G、作曲)によって大阪で結成。2000年に発表された「色彩のブルース」や2002年発表の「くちばしにチェ リー」は、多様なジャンルを消化し、エゴ独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなる。以後、作品ごとに魅せる斬新な音楽性において、常 に日本の音楽シーンにて注目を集めている。2014年5月には、オダギリジョー主演テレビ東京系ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」の主題歌・劇中歌、エンディングテーマの3曲を収録した、New Single「BRIGHT TIME」をリリース。
https://www.egowrappin.com

▼bonobos
2001年結成、2003年『もうじき冬が来る』でメジャー・デビュー。レゲェ/ダブ、ドラムンベース、エレクトロニカ、サンバにカリプソと、様々なリズ ムを呑み込みながらフォークへ向かう、天下無双のハイブリッド未来音楽集団。ROCK IN JAPAN、FUJI ROCK FES、RISING SUN ROCK FESなど、毎年数多くの野外フェスに出演し、ライヴ・バンドとしても確固たる地位を築いている。他アーティストへの楽曲提供、演奏サポートなど、それぞれ のソロ活動も精力的に行われ、2010年にはvo.蔡、dr.辻ともにソロアルバムも制作/発表。2014年3月5日には6thアルバム『HYPER FOLK』をリリース。さらに8月20日には初のライヴ・アルバム『HYPER FOLK JAMBOREE TOKYO.1/2』をライヴ会場限定販売にてリリース。
https://www.bonobos.jp

▼ORESKABAND
2003年に大阪・堺にて結成し、ライブを中心に活動するガールズ・ブラスロックバンド。3Rhythms&3Hornsの楽器構成。The Specials から絶大な影響を受けており、結成当初からスカバンドとして活動してきたが、活動を続けていくにつれて、2トーンをより精神的なものとして捉え、音楽のス タイルやジャンルをさまざまな方向に広げ、より自分たちらしい音楽を追求するようになる。2008年に全米46都市ツアーを行ってから、精力的に海外と日 本での活動を続けている。
https://www.oreskaband.com

▼エマーソン北村
ミュージシャン。オルガン・シンセを中心とする鍵盤演奏及び作編曲を行なう。ニューウエーブのバンドで音楽活動を始め、「ワールドミュージック」全盛 の’80年代末、JAGATARAとMUTE BEATに参加。’90年代前半にはライブハウス「代々木チョコレートシティ」及びそのレーベル「NUTMEG」においてあらゆる個性的な音楽、特に初期 のHip Hopやレゲエの制作に関わる。その後忌野清志郎&2・3′sを皮切りにフリーのキーボードプレイヤーとして活動。ロック畑からオルタナティブな 分野まで、音数は少ないが的確な演奏と音楽を広く深く理解する力によって、インディー/メジャーを問わない数多くのアーティスト・バンドをサポートしてき た。また、レゲエの創成期からジャマイカで活躍したミュージシャン、ジャッキー・ミットゥーの音楽を出発点としてリズムボックスと古いキーボードによるイ ンストゥルメンタル音楽を作っており、「エマソロ」と呼ばれる一人ライヴを全国各地や海外で展開している。2014年7月、オリジナル曲を中心としたソロ アルバム『遠近(おちこち)に』を、自身のレーベルからリリース。
https://www.emersonkitamura.com

▼松竹谷 清
1957年、北海道・札幌市生まれ。80年代から90年代初頭 に掛けて”TOMATOS”のリーダーとして活躍。メンバー には、じゃがたらのNABE CHANG(Bass)、EBBY(Guitar)や ミュート・ ビートの松永孝義(Bass)、今井秀行(Drums)ら が在籍。TOMATOSは、80年代にじゃがたら、ミュート・ ビート、S-KENと共にTokyo Soy Souceというライブ・イ ベントを企画、 シリーズ化して、それまでの日本のロック とはまた違った新たな音楽シーンを作った。彼らの活動が ベースにあった上で、後にリトルテンポやフィッシュマン ズが生まれた といっても過言ではない。又88年には、ス カの創始者ローランド・アルフォンの初来日公演 “Roland Alphonso meets Mute Beat”でサポート・ギタリストとし て参加、 後世に語り継がれる感動のライブとなった。その 後、ローランド・アルフォンとは2枚のアルバム 『ROLAND ALPHON SO meets GOOD BAITES with ピアニ カ前田 at WACKIES NEW JERSEY』、『Summer Place』を 一緒に作り、リリースした。
近年は、”吾妻光良&The Swinging Boppers”、“西内徹バ ンド”、“松永孝義”のアルバム等に参加。その天真爛漫 な存在感、ブラック・ミュージックの粋なエッセンスを日 本語に 置き換えた唄は、キャリアと共により味わい深さを増している。

▼こだま和文
1981年、ライヴでダブを演奏する日本初のダブ・バンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム『QUIET REGGAE』から2003年発表の『A SILENT PRAYER』まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして 『IN THE STUDIO』、2006年には『MORE』を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム『チャッピー・ドント・ クライ』等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。現在、ターン・テーブルDJをバックにした、ヒップホップ・サウンドシステム型のラ イブを中心に活動してしている。また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。著述家としても『スティル エコー』(1993)、『ノート・その日その日』(1996)、「空をあおいで」(2010)『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』(2014)がある。
https://echoinfo.exblog.jp

主催:上村勝彦
企画:上村勝彦
協力:LIQUIDROOM

2015.01.29
OPEN / START 18:00 / 19:00
ADV / DOOR ¥3,500(税込・ドリンクチャージ別)

LINE UP
EGO-WRAPPIN'、bonobos、ORESKABAND、エマーソン北村、松竹谷 清、こだま和文
*エマーソン北村の一人ライヴ「エマソロ」は開場時に行われます。

TICKET
チケットぴあ [250-653] ローソンチケット [74120] e+ LIQUIDROOM 12/13 ON SALE

INFO
LIQUIDROOM 03(5464)0800


Extreme Precautions - ele-king

 昨今のそれっぽい黒テクノをなぎ払う……なんじゃこりゃあ的レコード。先日、とある先輩から「YOUたちもこーゆーのやればいいじゃない」とコレをご教授いただいた。

 フレンチ暗黒テクノ・レーベル、〈イン・パラディズム(in paradisum)〉から看板アーティスト、モンドコップ(Mondkopf)の別名義、エクストリーム・プリコーションズ(Extreme Precautions)のファーストLPがお披露目。針を落とした瞬間、聴者に襲いかかる超シンフォニックな展開と鬼ショボ・打ち込みブラストビートに爆笑必至だ。
 〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉の台頭以降、メタルからの影響を公言するテクノ・アーティストは急増、ブルズム(Burzum)Tシャツを着用したヒップなテクノDJが昨今のクラブのトレンド! ……という状況は生粋の中2病ヘドバンガーを自認する僕としちゃファックなんですよ。そもそもヨーロッパでは90年代レイヴ・カルチャーに傾倒していたメタル・ヘッズは多く、本家のメタルバンド名義に隠れてこっそりとトランスやゴアのDJとして多くのメタル・ヘッズが活動していたとかいないとか……とくにその傾向が強かったのがフランスとノルウェイであり……そんなものに改めてフォーカスを当てることなんて今後あり得ないだろうと思っていた矢先にこのレコードである。ロウ・ジャックといい、彼といい、いまフレンチ・イナタイ電子音楽がキテる。あれ、そもそも最近再逮捕/釈放されたヴァルグもフランスにヤサを構えている影響もあるのかも。

 カシオトーン的簡易アルペジエーター感全開のメタル旋律によるリード・シンセ、ショボ過ぎる質素なモジュレーション、打ち込みフル・ブラストビート、全編似たり寄ったりのショート・チューンで最後までぶっちぎる潔さ。ブルズムの『フィロソフェム(Filosofem)』以降確立された打ち込みワンマン・ブラックメタルという精神不衛生きわまりないジャンルを完全に形骸化、ブラックメタルへのテクノ的パロディとも捉えられる本作品はモンドコップが同レーベルより昨年リリースしたヘヴィ・ドローン色全開のアルバム『ハーデス(Hadès)』(こっちもかなりメタルなんだけれども。そもそも冥界の王、ハーデスって……)完成後にテクノEPを制作しようとしたところ、ブルータル・トゥルースやナパーム・デス、アサックやピッグ・デストロイヤーを聴き過ぎていたらこんなんを作ってしまったそうな。

 ブラックメタルにおける劣化音質の美意識を電子音楽側で完全に体現しているという点はとても現代的だ。だってこれ、雑じゃなきゃ絶対かっこよくならないし。これこそテクノ・メガネ男子ヘドバン・ミュージック。

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