「IR」と一致するもの

 カメラのシャッター音と強靭なリズムが聴こえてきたので興奮しながら踊っていると、DJブースの前で跳ねまわっていた男が「ジャム・シティだ!」と叫び、とつぜん僕に飛びかかってきた。びっくりさせるなよ! ああ最高だよ、わかってるから、落ち着け。いや、まだ落ち着かないでくれ。みんなそれぞれ好きなだけ踊り狂っていよう。フロアには走り回って遊ぶパーティ・ピープルまでいた。
 いやしかし、待て、いったい僕はどこから来てここに辿り着いたんだっけ? そして、ここはどこだったっけ?

 ときは2013年3月某日の夜。東京・渋谷の街を見おろす商業施設ヒカリエの9階のホールでは、その立地に似つかわしくない奇妙な光景が繰り広げられていた。ファッション・ピープルが見守るなか、ロンドン・アンダーグラウンドの深い闇に根を張るウィル・バンクヘッド(The Trilogy Tapes)がジョイ・オービソンをプレイしている。それだけではない。自身の新曲を響かせながら、〈C.E〉のファッション・モデルとして大画面で堂々登場したのは、なんと我らがゾンビー。新作『ウィズ・ラヴ』のリリースを控えているゾン様、こんなところでいったいなにを!?

 ファッション・ショーが終わり、なだれこむようにしてパーティは開かれた。DEXPISTOLSや〈キツネ〉のふたりやVERBALといった名の知れた出演陣がDJをしていたが、その一方、すこし離れたもうひとつのフロアでは、海を越えてやってきたアンダーグランド――その熱狂の予感が渦を巻いていた。
 それは〈REVOLVER FLAVOUR〉と題された、デザイナー:KIRIによる饗宴だった。
 日本から1-drink(石黒景太)が迎え撃ったのは、先に述べたウィル・バンクヘッドに加え、ロンドンの〈ナイト・スラッグス〉の姉妹レーベルとしてLAに基地をかまえる〈フェイド・トゥ・マインド〉(以下FTM)の面々。〈FTM〉をキングダムとともに運営するプリンス・ウィリアム(Prince William)、同レーベルに所属し、アメリカのアート・ミュージック・シーンをさすらうトータル・フリーダム(Total Freedom)
 彼らのプレイから飛び出したのは、グライム/UKガラージ/ドラムンベース/ジャングル/レゲトン/リアーナ/サウス・ヒップホップ/R&B/ジューク/ガラスが粉々にされる音/赤子の泣き声/獰猛な銃声/怯えたような男の叫び声/乱打されるドラムなどなど。
 〈FTM〉について知っていた人はその場でも決して多くなかっただろう、が、とにかくフロアはダンスのエネルギーで溢れていた。レーベルのヴィジュアル面を担っているサブトランカ(Subtrança)によるヴィデオゲームめいたCGのギラギラした冷たいライヴVJも、このイヴェントの奇怪さと熱狂を促した。

 それにしても、ヒカリエとベース・ミュージック――そのコントラストは〈FTM〉にうってつけだった。ぜひレーベルのウェブサイトやアートワークを見て欲しい。そこでは、発展していく文化やテクノロジーと、留まることのない人間の物欲や暴力と、地球を支配する自然界の力とが、ワールド・ワイド・ウェブのなかで拮抗と核融合を重ねながら爆発を起こし、我々の脳――PCの液晶ディスプレイへ流れだしている。すでにわれわれの実生活において、文明は現代のテクノロジーやデザインの(快適な)成果として現れつづけている(最近はじまった『to be』というウェブ・サーヴィスはもはやヴェイパーウェイヴを作るためのツールにしか見えない......)。〈FTM〉は、そんな現実を生きる活力として、LSDでもSNSでもなく、ダンスとソウルを主張する。すなわち、心へ(Fade to mind)、と。


Kingdom
Vertical XL

Fade to Mind

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 間もなく〈FTM〉から、レーベル・オーナーでもあるキングダムの『ヴァーティカル・XL』がリリースされる(先行公開されている曲は"バンク・ヘッド"と題されている)。

 以下は、〈FTM〉の共同オーナー:プリンス・ウィリアムと、サブトランカの片割れ:マイルス・マルチネスとの貴重なインタヴューである。取材を受けるのは初めてとのことだった。サウンドトラックにはぜひこのミックスを。
 いつなにが起こるかわからないのはデジタルの世界もアナログの世界もおなじ。インターネットが見れなくなる前に、いますぐ印刷するのをおすすめしたい。

 夏以降、〈FTM〉のアクトが来日する動きもあるようなので、詳しくはまた追ってお知らせしよう。どうか、ダンスとソウルをあなたに。

90年代のレイヴ・カルチャーは逃避主義的すぎた。僕らは人びとに触れあいがあってほしいし、「いま」を生きてほしいんだ。クラブの外に出たとき自分たちがどこにいるのかを認識してほしいんだ。僕らのメインドラッグは珈琲だよ(笑)。

今回はわざわざ来日してくれてありがとうございます。まさかこんなに早くあなたたち〈FTM〉に会えるとは思いませんでした。日本に来るのは何回目ですか?

マイルス・マルチネス:僕は2回目だよ。最初の来日は2001年で、アシュランド(トータル・フリーダム)も同じ。ングズングズ(Nguzunguzu)はソナーが初来日だ。

プリンス・ウィリアム:僕も同じころが最初で、今回は2回目だ。前にきたときは〈アンダーカヴァー〉や〈ベイプ〉とかストリート・ウェアのファンでただの買い物客だったんだ。だから、KIRIやSk8ightthingをはじめ、ファッションに携わるみんなとこうして仕事ができるなんて夢みたいな出来事だよ。いつか日本の生地をつかった服をつくりたいね。

では、もともとファッションにはつよい興味を持っていたのでしょうか?

プリンス・ウィリアム:もちろんだよ。僕は人口の少ないテキサスのちいさな町で育ったんだけど、そういったカルチャーをディグしたんだ。

マイルス・マルチネス:ヴィジュアル・アーティストとして、映像も音楽もファッションもすべて表現という意味では共通しているものだと思っているし。

プリンス・ウィリアム:実際〈フェイド・トゥ・マインド〉のほぼみんながアートスクールに通っていたんだ。アシュランドとマイルスはレーベルのなかでももっとも精力的に現代アートの世界でも活躍していて、ほかのみんなは音楽にフォーカスしつつ、やっぱりアートはバックグラウンドにある。新しくてユニークでイノヴェイティヴであるカルチャーそのものを提示するっていう共通のアイデアが僕たちを動かしているし、繋げている。僕らは〈FTM〉をライフスタイルそのものだと考えているよ。〈FTM〉はみんなが友だちで、強い信頼関係にあるんだ。

マイルス・マルチネス:アシュランドはアートスクールには通っていなくて、ただただアーティスト/ミュージシャンとしてのキャリアがあるんだ。彼は学校にいってないことを誇りに思っているよ。

日本の音楽やアートあるいはカルチャーでなにか惹かれるものはありますか?

プリンス・ウィリアム:音楽にもアートにもすごく魅了されているよ。マイルスは日本のアニメーションが好きだよね。僕はコンピュータ・グラフィックスが好きだ。

マイルス・マルチネス:日本のアートだと草間弥生や森万里子が好きで、日本のアニメもたくさん好き。広告もいいし、ヴィデオ・ゲームとかも。全体的に、ファッションもデザイナーもいい。葛飾北斎なんかの古典的な美術も好きだよ。

プリンス・ウィリアム:プリクラも。

マイルス・マルチネス:プリクラ、いいね。

プリンス・ウィリアム:音楽なら、坂本龍一のことは〈FTM〉のみんなが大好きだよ。YMOのこともね。とても大きな影響力があるよ。つまり何が言いたいかというと、日本のテクノロジーに惹かれるんだ。

マイルス・マルチネス:YAMAHAとかシンセサイザーとかね。

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インターネットの文化にはさまざまな問題も感じている。たくさんのリサイクルで溢れているし、多くの人びとが好きなだけ情報を享受しているばかりで、自分から何かを還元している人は少ないよね。その状況には文化的に何か問題がある気がするんだ。

なるほど。テクノロジーについてはまたのちにお訊きしますが、その前にまず〈FTM〉のヴィジュアル面を大きく担っているサブトランカの活動について聞かせてください。ちょっと気になっていたんですが、ジャム・シティのヴィデオを手がけたのはあなたの相方であるダニエラ(Daniela Anastassiou)ですか? 変名かなと思ったのですが。

マイルス・マルチネス:あれは違うんだ。僕たちはングズングズ(Nguzunguzu)マサクーラマン(Massacooramaan)のヴィデオを手掛けていて、〈FTM〉以外ではSFのショート・フィルムをサウンドトラックまで手掛けて、小規模な映画祭で上映したこともあるよ。

〈REVOLVER FLAVOUR〉でもライヴですばらしいVJをしていましたね。以前にジェームス・フェラーロやインクのメンバーのライヴでもマッピング映像を披露しているそうですが、そういった上映作品はウェブにアップなどして公開しないのですか?

マイルス・マルチネス:僕たちは変人だと思われるかもしれないけど、レアなライヴの感覚が好きなんだ。サイバー・カルチャーには深く入れ込んでいるし、影響を受けてはいるんだけど、僕たちはインターネットに対して懐疑的でもあって、オンラインだと簡単に見過ごされてしまうこともある。だから僕たちはライヴ・ヴィジュアルにこだわって、体験としてレアでありたいんだ。変なことかもしれないけど、それが自分たちにとってここちよいやり方なんだ。

プリンス・ウィリアム:僕はそれがクールだと思うけどな。

〈FTM〉はウェブサイトをとてもアーティスティックに作っていますし、コンピュータ・グラフィックによるアート・ダイレクションも、インターネットにおける情報の無茶な重層感/合成感といいますか、テクノロジーのごった煮感が強く表れていると思いますが、それでも同時にインターネットに対して懐疑的になるのはなぜでしょう?

プリンス・ウィリアム:インターネットは定義上、現れては消えて、臨時的だから。僕たちはクラシックな瞬間を作りたいんだ。それにとても言いたいのは、僕たちがおなじ部屋にいて初めておなじ瞬間をいっしょにわかちあっているという共通の体験を大切にしたいということだよ。ヴュアーの類としてではなくね。

マイルス・マルチネス:インターネットの文化にはさまざまな問題も感じている。たくさんのリサイクルで溢れているし、多くの人びとが好きなだけ情報を享受しているばかりで、自分から何かを還元している人は少ないよね。その状況には文化的に何か問題がある気がするんだ。もちろん僕はインターネットを愛しているよ。たくさんのひとが色んなものを見れるし、それは偉大なことだと思う。でも、レコードを手にして初めてアートワークを見る事ができたり、映画館に行かないと作品を見れない事だったり、現実世界のそういう制限的、だけど経験的な部分に僕は強く惹かれるんだ。たくさんのものがコピー&ペーストされていくインターネットとは違って、新譜のレコードを実際に手にするあの瞬間のような、その経験自体を僕はクリエイトしたいと思っているから。

プリンス・ウィリアム:タンブラーのことは知ってるでしょ? みんなが素材を拾って、再投稿する。そこでは新しいものを作らなくてよくなる。クリエイトするエナジーを使わないかわりに、「これイイネ!」「あれいいね!」ってライクすることでリサイクルにエナジーをつかっているだけなんだ。なにかを作っている気になれるのかもしれないけど、実際には借りているだけだ。それじゃあ新しいコンテキストは生み出せない。

マイルス・マルチネス:インターネットはたくさんのものを見れるかもしれない。それはたしかにクールなことだ。でも、僕たちはミステリーが好きだし、ミステリアスでいたいんだ。ファティマ・アル・カディリ(Fatima Al Qadiri)もングズングズも一目見てミステリアスでしょう。人知れぬ存在というか。

プリンス・ウィリアム:そう、僕たちはアンダーグラウンドを愛しているんだ。とても実験的なエッジ(力)として。

なるほど。〈FTM〉は、ポスト・インターネット的な意匠が共通していながら、現状いかに面白い素材を拾ってきてリサイクルできるかを匿名で競っているヴェイパーウェイヴとはまったく逆の哲学を根源でお持ちなのですね。
 〈FTM〉のレーベルを強く印象づける要素としてアートワークがとても大きな役割を果たしていると思います。サブトランカとはどのようにして手を組むことになったのでしょうか?

プリンス・ウィリアム:レーベル初期のアートワークはエズラ(キングダム)が担当していて、彼はコンピュータ・グラフィックのとてもクラシックなスタイルをとっている。マサクーラマンのアートワークの真んなかにあるオブジェなんかにそれが現れているね。ただ、彼も音楽にフォーカスしていくうちに時間が限られていってしまったんだ。マイルスはングズとも親友だったんだよね。

マイルス・マルチネス:ングズの作品はファーストEPからアートワークを担当しているよ。

プリンス・ウィリアム:当初〈FTM〉のアートワークを写真だけで作ろうと思っていたんだけど、イメージ通りにはいかなかったんだ。そこで3Dグラフィックをデザインできるひとを探しているところに、ングズと仲のよいマイルスたちサブトランカがいたんだ。自然な運びだよ。マイルスと初めて会った時からもうファミリーみたいに打ち解けたんだ。エズラがアート・ディレクターみたいなもので、マイルスはとてもコンセプチュアルなアイディアにもとづいたデザイナーでありクリエイターだ。エズラがちいさなアイディアをもっていたとして、マイルスはそれを実現に導いてくれる。

マイルス・マルチネス:最近はファティマの『デザート・ストライクEP』のアートワークを担当したり、ボク・ボク(Bok Bok)から『ナイト・スラッグス・オールスターズ・ヴォリューム2』の依頼も受けたりしているよ。

サブトランカのツイッターの背景には写真がたくさん並べてありましたが、あなたのアートワークの基礎には写真があるということなんですね。

マイルス・マルチネス:僕はヴィジュアル・アートやフォトグラフィーやペインティングや3Dを主に学んで、相方のダニエラ・アナスタシアはアニメーションなど映像が基礎にあるんだ。僕はもともと映画業界で働いていたこともあったし、ウィル(プリンス)は写真を勉強していたり、それぞれみんなの背景があって現在のアートワークがかたちつくられているんだよ。僕のアートのコンセプトは「現実と非現実のブレンド」から来ているんだ。

プリンス・ウィリアム:僕たちは「現実と非現実」の狭間にいるね。

〈ナイト・スラッグス〉もしかり、〈FTM〉も唯物的でフューチャリスティックなテクノロジーをアートワークの題材に用いていると思うのですが、それはどういった思想に基づいているのでしょう?

プリンス・ウィリアム:そうだなあ。僕たちは「いま」を生きなければならない。僕たちはクリシェとしてのレトロな音楽をつくりたくはないんだ。いまを生きている僕たちはたしかに過去から影響を受けているけども、僕たちがはじめてガラージやグライムを聴いたときのような衝撃を――音楽の原体験をファンに与えたいんだ。でもそれらを真似したり、おなじことを繰り返したくはない。そのとき、テクノロジーというのはコンテンポラリーであることの大きな要素ではあるよね。でも同時に、最新のシンセサイザーだけを使うわけではない。もちろん、ヴィンテージのサウンドも使う。ヴァイナルのほうが音がよいのもおなじで、過去からのものを活かすこともする。そう、僕たちのコンテクストで意味を成すことが大事なんだ。

マイルス・マルチネス:過去と現在の状況から何かを想定出来るという意味では、フューチャーという概念はすごく面白いと思う。

プリンス・ウィリアム:でも「いま」であるいうことはやっぱりすごく大切で。先進的であるという事ももちろん大切だけれども、リリースする作品は常に今を意識しているし、リスナーにも今好きになってほしいと思っている。2年後に再評価されるとかそういう物ではなくてね。とても難しい部分ではあるのだけれど、そういったバランスを大切にしながら、つねにイノヴェイティヴでいたいんだ。

マイルス・マルチネス:ただただ物事を先に進めて行きたいと思っている。前進だね。

プリンス・ウィリアム:そう、前進していくんだ。ただ、フューチャーという言葉はいまではレトロの文脈で使うことが多いよね。70年代とかクラシックなSFとかが持っていた「どんなことが起こり得るか」の想像力を愛してはいるけど、僕らはやっぱり現代に強く根ざしているし、〈FTM〉の哲学は「いま」(now)だよ。

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僕たちは「いま」を生きなければならない。僕たちはクリシェとしてのレトロな音楽をつくりたくはないんだ。いまを生きている僕たちはたしかに過去から影響を受けているけども、僕たちがはじめてガラージやグライムを聴いたときのような衝撃を、音楽の原体験をファンに与えたいんだ。

なるほど。未来的なイメージとの差異から現代(いま)を浮かび上がらせるということでもあるのでしょうか。
 それでは、レーベルそのものについて話を伺いたいと思います。〈FTM〉は、ロンドンのボク・ボクらによる〈ナイト・スラッグス〉の姉妹レーベルとしてLAで運営されていますね。まず、ングズングズをリリースをしたいということから〈FTM〉が始まったというのは本当ですか? 

プリンス・ウィリアム:そのとおり、それがとても大きな理由だね。彼らは最初のEPをフリーでリリースしていた。色んなバンドをリリースしているレーベルからオファーがあったみたいだけど、旧いコンテキストのうえで紹介されて理解を得られないんじゃないかと僕たちは心配だった。だから僕たち自身のコンテキストを作ったんだ。それにングズングズとマイクQ(Mike Q)が〈ナイト・スラッグス〉の色とは違っていたのもあって、キングダムと手を組んで〈FTM〉を立ち上げてレコードを出すことにしたんだ。
 それまで僕はブログをもっていたから、それをつかってレーベルをやろうとしていたんだ。例えば、ガール・ユニット(Girl Unit)はとてもシャイだったから当時隣の家に住んでたのに初期のデモ音源をボク・ボクに直接送れなくて、僕に渡してきたから、それを僕がボク・ボクに「これを聴くべきだよ」って繋いだんだ。だからもしそのとき僕がレーベルをはじめていたら、きっとガール・ユニットやキングダムと契約していただろうね。
 その年に〈ナイト・スラッグス〉がはじまっていい仕事をしはじめて、僕たちは「オーケー、僕たちの出る幕はないな」と一旦は思ったんだけど、まだやる余地があるのを見つけたんだ。
 そうして〈FTM〉は〈ナイト・スラッグス〉を基にして生まれたんだ。アレックス(ボク・ボク)がロゴをデザインしてくれたり、ミキシングやマスタリングなどのすべてにおいて彼から学んだんだ。リリースする作品に関しても彼の意見を常に参考にしていたよ。

ボク・ボクとはどのようにして出会ったんですか?

プリンス・ウィリアム:インターネットだよ。マイスペースを通してだね。キングダムは当時デュオでDJをしていたボク・ボクとマナーラ(Manara)に出会ったんだ。キングダムはガラージや2ステップやグライムといったイギリス発の音楽にとても大きな影響を受けていて、ボク・ボクたちはサザン・ラップやアメリカ発のクラブ・ミュージックに影響を受けていた。お互いの国のカルチャーへの興味が交差して、その強いコネクションがあってそれぞれのサウンドが築かれていったんだ。

〈FTM〉とおなじくングズングズやファティマ・アル・カディリをリリースしている〈ヒッポス・イン・タンクス〉や〈UNO NYC〉など、他のレーベルとはなにか交友関係があるのでしょうか?

プリンス・ウィリアム:〈ヒッポス・イン・タンクス〉のバロン(Barron Machat)はいい友だちなんだ。でも他の多くのレーベルもそうだけど、バロンもレイドバックしてるんだ。ングズングズがデモを送っても彼はそれを受け取るだけだった。でも僕たちはフィードバックを返して、ミックスに入れたり、好きなレコードをプレゼントしたりした。〈FTM〉は他のレーベルと違ってデモを受け取ってリリースするだけじゃないんだ。アーティストをプッシュして、彼らによりよいものを作ってほしいと思っている。僕らはアーティストのために働きたいし、リリースに際してたくさんのエナジーをつかうよ。お金や資源を投じるだけじゃなくてね。〈ヒッポス〉のようなレーベルと僕たち〈FTM〉の契約するときの違いはそういうところかな。〈UNO NYC〉もレイドバックしてるからね。でもどちらが正解ということじゃない。〈FTM〉にはクリエイティヴなプレッシャーがあるんだ。アーティストにはクリエイトする環境で生き抜いてほしいから。だから、ほかのレーベルとは違うシステムで動いていると思う。
 〈FTM〉と〈ナイト・スラッグス〉はふたつでひとつのレーベルだと思う。僕たちはビヨンセやリアーナ、クラシックなR&Bに大きな影響を受けている。エモーショナルな歌が大好きだ。ブレンディーのレコードは去年のお気に入りだな。ジェシー・ウェアもわるくないけど、彼女の場合はスタイルに重きがあるよね。僕はエモーショナルなものが欲しい。メアリー・J. ブライジのように。

「フェイド・トゥ・マインド(心へとりこまれる)」というレーベル名はプリンスがつけたそうですね。レーベル・コンセプトについてキングダムはクラブ・ミュージックに心を取り戻すと語っていたと思うのですが、つまりそれまでのクラブ・ミュージックに対する批評的な視点があるということでもあるのでしょうか? また、レーベルをスタートさせてから2年経ちますが、現状どのような感想をお持ちですか?

プリンス・ウィリアム:それはちょっと誤解で、僕たちはそれまでのクラブ・ミュージックに対して不満があったわけではないよ。レーベル名の意味については、ただ僕たちがやりたいこと――クラブにソウルを吹き込みたいということを語っているだけだよ。エズラ(キングダム)はとてもスピリチュアルでミスティカルな人間なんだ。メディテーションに興味があって、「身体の外の経験」――すなわちそれが「フェイド・トゥ・マインド」なんだ。そこにクラブ・ミュージックがあるとき、人びとにソウルフルな体験を味わってほしい。僕たちはクラブに/リスナーにエナジーを注ぎこみたい。朝の起き抜けに音楽を聴いて起きたり、夜の疲れているときクラブに行ったりするでしょう。僕たちはそういうものを欲しい。ハイエナジーな音楽を。

さきほども挙げられていたガラージや2ステップなど、なぜイギリスの音楽に惹かれるのでしょう?

プリンス・ウィリアム:繰り返しになるけども、僕たちはただイノヴェイティヴなレコードを作っていく。けれど、それと同時に一般的な人びとやストリートにもアピールしたいと思っている。人びとがソウルフルになれる実験的なクラブ・ミュージック――たとえば、グライムはとてもクリエイティヴでイノヴェイティヴだ。さまざまなジャンルに派生していける可能性も秘めていたしね。
 全体的にイギリスの音楽は、ソウルフルでありながらとても冷たい、温かいのにハードなんだ。驚くべきバランスで成り立っている。ロンドンにはとてつもない緊張感があって、それがすばらしい音楽を生み出しているんじゃないかな。そういうところに影響を受けているね。トレンドが移り変わって、リアクションがあって。イギリスの音楽はヴォーカルやアカペラをまったく色の違うトラックに乗せたりするけど、ヴォーカルを新しいコンテキストに組み込むというのは僕たち〈FTM〉にとっても設立時からずっと鍵であるアイディアだった。それもあって、ケレラ(Kelela)のようなオリジナルなシンガーをレーベルにずっと迎えたかったんだ。

イギリスの音楽というところで、ブリアルやアンディ・ストット、また、国は違いますがR&Bのハウ・トゥ・ドレス・ウェルなどにはどのような感想をお持ちですか?

プリンス・ウィリアム:僕はとても〈ハイパーダブ〉に影響されたけど、もっとエネルギーのあるレコードを好んでいたから、ブリアルを最初聴いたときはチルな感触がマッシヴ・アタックのようなトリップ・ホップのように感じられた。そんなにプレイすることもなかったし、おおきな影響を与えられた存在とは言えない。エズラ(キングダム)はヴォーカルのマニピュレーションがとても評価されているけど、どちらかというとドラム・ン・ベースからの影響が強いね。
 アンディ・ストットはどんな音楽なの? 知らないな。
 ハウ・トゥ・ドレス・ウェルよりも、僕はインク(Inc.)の方が好きだ。近しい友だちでもあるしね。
 僕は音楽においてダイナミクスが聴きたいんだ。ただ悲しいものだけじゃなくてね。僕たちの音楽は、悲しかったり、ハッピーだったり、ハイエナジーだったり、すべてがひとつの瞬間に起こる。でもハウ・トゥ・ドレス・ウェルはとってもとっても悲しくてとっても沈んでいるよね。沈みっぱなし。彼のプロダクションとかサウンドは好きなんだけど、僕は音楽にアーク(弧)が欲しいんだ――クラシカル・アーク――『クラシカル・カーヴ』さ。

(一同笑)

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〈FTM〉と〈ナイト・スラッグス〉はふたつでひとつのレーベルだと思う。僕たちはビヨンセやリアーナ、クラシックなR&Bに大きな影響を受けている。エモーショナルな歌が大好きだ。ブレンディーのレコードは去年のお気に入りだな。ジェシー・ウェアもわるくないけど、彼女の場合はスタイルに重きがあるよね。僕はエモーショナルなものが欲しい。メアリー・J. ブライジのように。

ングズングズも含め、〈FTM〉のみなさんのDJプレイはダンスを強く希求するハイエナジーなものでした。本誌でも工藤キキさんが〈GHE20G0TH1K〉(ゲットーゴシック)の客のファッションについて「90'Sのレイヴの独自の解釈?」と表現していましたし、PROMの甲斐さんも「まるでレイヴだった」と話してくれました。あなたたち自身は、たとえばかつてのレイヴ・カルチャーないしはセカンド・サマー・オブ・ラヴに対して憧憬はありますか?

マイルス・マルチネス:僕個人的にはオリジナル・クラブ・ミュージックというのは、ヨーロッパではなくアメリカ発祥のそれであって、シカゴ・ハウス/シカゴ・ジューク/デトロイト・テクノなどかな。初めて好きになった音楽はヒップホップで、それからすこし違う文脈でハウスやテクノを知るようになった。

プリンス・ウィリアム:僕も初めはヒップホップから入ってデトロイト・テクノのようなものを知った。でもエズラはまったく違くて、彼はヨーロッパのクラブ・ミュージックに入れ込んでいた。彼も僕もドラムンベースは大好きだし鍵となる影響を受けているし、ドラムンベースは僕のなかでヒップホップとテクノとを繋いでいる橋なんだけれど、僕がヒップホップに入れ込んでいる一方で、エズラはR&Bに入れ込んでいた。ラジオでかかる音楽を実験的なテリトリーに引き込みたいというアイディアがあったんだ。ヨーロッパの国営放送では実験的なレコードがかかるよね。それはただのポップではない。アメリカのラジオは崩壊したシステムで成り立ってる。DJに金を払わなければいけない。良いレコードをつくってラジオでかけてもらうということがアメリカではありえないんだ。
 はじめてレイヴが起こった頃に僕は14歳だったし、レイヴはヴィジュアル面でとてつもなく大きい影響があったこともたしかだ。フライヤーとかモーション・グラフィックとか、エズラもアート・ダイレクションにすごくレイヴカルチャーの影響を受けているよ。

マイルス・マルチネス:そう、そのとおり。

プリンス・ウィリアム:でも同時に、90年代のレイヴ・カルチャーは逃避主義的すぎた――ディプレスやデジャヴからの逃避。僕らはひとびとに触れあいがあってほしいし、「いま」を生きてほしいんだ。クラブの外に出たとき自分たちがどこにいるのかを認識してほしいんだ。なにも日々の仕事から離れさせようとか落ち込んでいるのをカヴァーするとかではなく、僕は気分の沈みをクリエイティヴィティに変えるのを助けたいんだ。僕らのメインドラッグは珈琲だよ(笑)。

カフェインもなかなかですからね。プリンスはコンセプトについて語ると一貫していますし、〈FTM〉が逃避ではなく、いま現実を生きる活力としてのダンスを主張しているというのがよくわかりました。それでは、最近聴いた音楽でよかったものと、うんざりしたものを教えてください。

プリンス・ウィリアム:インク。インクだよ。僕たちのもっとも好きな音楽だし、とてつもない影響をもらっているし、新しいアルバム『ノー・ワールド』はつねに車でプレイしている。
 不満をいうなら、トラップだね。あれはカウンター・カルチャーじゃないと感じるし、事実あれはアメリカのラジオでかかっている。たとえば、ビヨンセがトラップに乗った音楽がある、一方でトラップのインストゥルメンタルだけの音楽がある。どっちがほしいだろう? 僕はビヨンセが欲しい。わかるかな。僕はトラップのインストじゃなくてビヨンセがあればいい。それにトラップはサザン・スタイルのヒップホップだ。でも南部じゃないひとたちがたくさんトラップを作っているでしょう。そんなのはリアルじゃないよ。ただのトレンドだ。

マイルス・マルチネス:僕はDJラシャドが好きだな。新作はもちろん、古いのも。クドゥーロも好きだし、グライムも好きだし......なんていうかな。

プリンス・ウィリアム:マイルスはとてもポジティヴだからね。

マイルス・マルチネス:はは(笑)。好きじゃないものは聴かないから。音楽雑誌も読まなくなったし、欲しいものをは自分で探すようにしてる。僕はングズングズが大好きだし、ジャム・シティもキングダムもファティマ・アル・カディリも......シカゴの音楽も、マサクーラマンも、E+Eとかも...とにかく友達はすばらしい音楽を作るし、それが好きなだけだよ。

それでは最後の質問です。あなたたちが日本にくるまえ、2年前に、震災と原発の事故があったことはご存知ですよね。日本国内の市民である僕たちでさえ安全だとはとても言えないのですが、そんななか自国を離れ、わざわざ日本に来るのは不安ではなかったですか?

マイルス・マルチネス:この世界では日常的に汚染だとか放射線とか僕たちにはわからないクレイジーなことが起きているし、いつも死に向かっているようなものだよ。それに、日本にはいつだってまた行きたいと思う場所で、それは事故のあとも変わらないよ。

プリンス・ウィリアム:僕が思うに、〈FTM〉は恐れではなくポテンシャルによってここまで来ることが出来た。僕らのクルーが恐れについてどうこう話をすることすらないよ。日本はすばらしい場所だし、いつだってサポートしたいと思うカルチャーがある。アメリカでもカトリーナのあとのニュー・オリーンズとおなじで、僕たちはそこに行ってお金を回してカルチャーを取り戻したいと思ったし、実際、日本の経済的な状況は前に来た時よりもおおきく変わったのを今回は肌で感じることもできた。
 ストリート・カルチャーもおおきく変わったね。前に来日した時はコンビニに入れば『smart』とかストリート・ファッションの雑誌がたくさんあった。でももうそういうのが見られないよね。ストリート・カルチャーはもっと狭くなってしまった。みんな年を重ねてソフィスティケイトされた。でもそれは悪いことじゃなくて、ただシフトが起こっただけだと思う。
 とはいえ、実際に住んで生活をしている人とアメリカにいる僕とでは経験としてまったく違うのだろうと思う。(311の頃)日本の友達にはすぐ電話したんだけど、僕はとても心配だったよ。
 災害時にすぐにメディアがポジティヴな話題に切り替えたり、人びとの間で実際に被害の話ばかりするのが良くないという風潮があったというのは、やっぱり日本の文化的な面も大きいと思う。そこには悪い部分もあるかも知れないけれど、僕はそれは日本の良い部分でもあると思うんだ。恐れの話をしてもしょうがないというときもある。それはポテンシャルと自信を生む事もあるし、このように気の利いた社会というのはそういうメンタリティによって支えられているとも思うんだ。だから僕たちはまた機会があれば日本に来たいし、出来る限りサポートしたいと思っている。ここの文化からはすごく影響を与えられているから。

なるほど。これからも〈FTM〉を躍進させて、僕たちを思いっきり踊らせてください! ぜひまたお会いしたいです。今回はありがとうございました。

vol.51:オタクはヒップスター? - ele-king

 先週はアーヴィング・プラザ(Irvingplaza.com)という比較的大きめの会場に、アナマナグチという8ビット・パンク・ポップ・ダンス・バンドを見に行った。

 メンバー4人、ニューヨーク・ベースの彼らの特徴を上げる:「蛍光色」「アニメ」「ヴィデオゲーム」「ライトアップ」「かわいい」「おたく」
 サイト(https://www.anamanaguchi.com)からもわかるように、彼らには、たくさんのこだわりとアイディアがある。それに同意する人がいかに多いのかという結果として、最新アルバム「endless fantasy」を作るためにキックスターターで、189.529(=200万弱)をレイズした(https://www.kickstarter.com)。

 会場は、半分がおたく男子(ナード、ギーク、でもスタイリッシュ)。彼らに向ける声援もアイドルのようだ。目を閉じるとゲーム音楽が流れ、目を開けると蛍光カラーのライトが反射するステージが飛び込んでくる。
 このライトに関して言うと、ベースのジェイムス(彼のベースの弦は、4色とも蛍光カラー、ネットで購入したらしい)は自分の家の地下室にライト研究室を持つぐらい、蛍光ライトにこだわり、さらに映像と音のシンク、ステージでのプレゼンテーション全てをケアしている。ギターのアリーは、蛍光グリーンの髪に(最近黄色から変えた)、蛍光オレンジのキャップ、蛍光ピンクのTシャツに、蛍光イエローのギターで、見た目はアニメキャラ。

 メンバーが着ていたのは、ブルックリンのファッション・レーベルRHLS/ルフェオ・ハーツ・リル・スノッティ(https://rhls.com/)、ウィリアムバーグ・ファッション・ウィークエンドでもおなじみの彼らは、アナマナグチと同じ世界観、ファンタジーの世界を生きている。ウィリアムズバーグにmovesというコンセプトストアも運営している(https://movesbrooklyn.com/)。

 基本インストなのだが、ゲスト・ヴォーカルが入る曲もある。今回は、アイルランド人の女子(歌が下手なきゃりーぱみゅぱみゅ風)と、女性R&Bシンガーがアナマナ好みにサンプリングされていた。ライヴの最後には、今日の観客から引っ張り出されたような、ヒップスター女子ふたりが登場(柄物レギンスにボーイフレンドT)、歌い終わったあとは、客席へダイヴするのだった。
 彼らの音楽は、アメリカのアタリや日本の任天堂、サブカルのごちゃ混ぜ感を、音楽+映像をプラットフォームに表現している。インディ・バンドのように心に訴えかける力やハングリー感はないが、音楽に対する熱意やアイディアは相当ある。オタクというと気持ち悪いというイメージもあるだろうが、新世代のオタクはヒップスターなのだ。バンドというフォーマットにこだわらず、自分が操作できる装置を使って、自分たちの娯楽を作っている。



 このショーを見ながら、私はオブ・モントリオールを思い出した。どちらも現実を忘れさせるほど、ファンタジーの世界を捻り出している。ヴィジュアルやステージでのパフォーマンス、ライティングに定評があるが、その裏では果てしない奮闘を繰り広げている。
 ちょうどアナマナグチのショーの3日後に、オブ・モントリオールを見たのだが、ステージを盛り上げるゲスト(シアトリカル・パフォーマー、女性ヴォーカリスト)、ライトショー(白い布を来た人がステージの中心に立ち、そこに映像が当てられる)など、音楽以外にさまざまなおまけが付いてきて、アナマナグチよりストーリー性を感じた。
 ライトショーは前回もあったが、今回は人の体のラインや形によってライトの当て方を変え、まるで動くプラネタリウムを見ているようだった。新曲からヒット曲をまんべんなくミックスし、全曲スムースに進む。まったくソツがない。
 バンドとして全体を見たとき、勢いなのか、新しいことをやっているワクワク感なのか、アナマナグチの方にパワーを感じたが、オブ・モントリオールは経歴も長いし、今回のツアーも後半に差し掛かっている。そこを差し引いても、オブモンはオーディエンスを楽しませること、アナマナグチは自分たちが楽しむことをいちばんとしているように思えた。
 オブ・モントリオールはその足で、日本(6/1タイコクラブ)に行くので、多くの人に是非ライヴを体験して欲しい。

interview with AOKI takamasa - ele-king


AOKI takamasa
RV8

Rater-Noton/p*dis

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 村上春樹がなぜ海外であんな評価されているのかと、英国在住のある人に尋ねたところ、エキゾチック・ジャパンではないところが良いのではないかという答えをもらった。欧米の理屈のなかで解釈できると。なるほど。
 これ、読み替えれば、世のなかにはエキゾティズムをかさにして輸入されるものは多くあれど、ハルキはそれを売りにしていない、ということにもなる。三島由紀夫も、相撲も舞踏も、オタク文も、良い悪いは別にして、エキゾティズムないしは物珍しさとして受け入れられているフシは隠せない。とくにパリとか、博覧会気質の伝統なのだろうか......。アメリカとか......。
 エキゾティズムは使いようだ。本サイトで公開されているアシッド・マザーズ・テンプルのインタヴューを読めば、こうした眼差しを逆手にとるように、敢えて確信犯的に利用しているところが見える。YMOにもそれがあった。ケンイシイやDJクラッシュもそれを利用している。ボー・ニンゲンの写真を見ると、ジャックスのような髪型が欧米では「JAP ROCK」のイメージとして機能していることがわかる。

 しかし、今日、欧州でもっぱら評判の日本人電子音楽家のひとり、タカマサ・アオキ(青木孝允)の音楽にそれはない。彼が何人だろうと、髪型がどうであろうと彼の人気とは関係ない。大阪出身のこの音楽家の作品の評判は、純粋な音としてヨーロッパ大陸で広がっている。
 彼は、新世代への影響力もある。赤丸急上昇の大阪のレーベル〈Day Tripper〉を主宰する25歳のセイホーがテクノを作るきっかけは、ヨーロッパへ渡航する前のタカマサ・アオキだった。

 2001年1月、東京の〈Progressive Form〉からデビュー・アルバム『Silicom』をリリースした彼は、その後、同レーベルからの諸作、そして〈Cirque〉やロンドンの〈FatCat〉、〈Op.disc〉や〈Commmons〉、ベルリンの〈Raster-Noton〉等々、さまざまなレーベルからコンスタントに作品を発表し続けている。どの作品もファンから好まれているが、とくに2005年に〈FatCat〉からリリースしたツジコノリコとの『28』(これはちとエキゾだが茶目っ気がある)、そして、〈Op.disc〉からの『Parabolica』(2006年)、〈Raster-Noton〉からの「Rn-Rhythm-Variations」(2009年)といった作品は彼の評判を決定的なものにしている。また、初期の頃は、オヴァルやSNDあたりのグリッチ/エレクトロニカ直系の音だが、〈Op.disc〉と出会って以降は、より強くダンス・ミュージックを意識するようになったと言う。

 今作『RV8』は、この7~8年のあいだに発表した12インチ・シングルの「Mirabeau EP」や「Rn-Rhythm-Variations」、今年に入って〈Svakt〉からリリースされた「Constant Flow」、これらミニマル・テクノの新しいヴァリエーションとしてある。エレクトロニカの実験精神を残しつつも、作品はファンキーに鳴っている。押しつけがましくはないが、確実にダンスのグルーヴを持っている。バランスが良いのだ。
 彼のファンクは上品で、アンビエントめいたところもあるので家聴きにも適している。ルーマニアのアンダーグラウンド・パーティの起爆剤としても使われ、アート・ギャラリーのBGMとしても機能している。サカナクションの音楽にもフィットするし、ヨーロッパを自由に往来する感覚はNHK'Koyxeиにも通じている。新作のマスタリングは砂原良徳、いま、タカマサ・アオキの音楽には、10年前よりもさらに多くの耳が集まってきている。

テクノは、ぜんぶの音楽の最終地点だという気がするんですよ。全ジャンルの......ダンス・ミュージックは当たり前だけど、クラシックも、ブレイクビーツも、レゲエも、ダブも......ぜんぶみんな......

青木君は、なんでそんなにテクノという言葉にこだわっているの?

青木:テクノは、ぜんぶの音楽の最終地点だという気がするんですよ。全ジャンルの......ダンス・ミュージックは当たり前だけど、クラシックも、ブレイクビーツも、レゲエも、ダブも......ぜんぶみんな......

ロックも?

青木:あ、ロックも......あるかもしれないですね、(小節の)頭にしかタイミングがないような、パンパンパンって(笑)。ギターのディストーションの質感とかね、あれもテクノだし、サカナクションのようなバンドもそうだし、ぜんぶの音楽の行き着く先がテクノだという気がしますね。

それは斬新な意見ですね(笑)。テクノとは、普遍的な音楽であり、雑食性の高い音楽であると。

青木:ハイブリッドの極みですね。そして、シンプリシティの極みというか......すべてシンプルにして、すべて飲み込んで、すべてどうでもいい、踊るーっということに意識を集中させるのがテクノだと思うし。そういう意味で、コンピュータも生音もふくめて、ぜんぶを統括するのがテクノだと思いますね。

すごいね。

青木:個人的にそう思っています。音も好きやし、字面も好きやし。

字面(笑)。

青木:アルファベットで書いてもカタカナで書いても。

自分の音楽のハイブリッド度合いは高いと思う?

青木:わからないです。自分はそれはただ意識して作っているだけなんで、それが他を比較してどうかはわからないです。自分ではそういうものなんだと思い込んで作っています。

青木君は、最初からテクノだったの?

青木:中学生のときから打ち込みの音楽が好きになって、高校生のときに機材持っている友だちに教えてもらって作った。ジャンルとかはぜんぜん知らなくて、ただ、自分が好きなリズムを打ち込んで作れるってところに興味があったんですよね。リズムに興味があったんで。それがテクノだろうがレゲエだろうがヒップホップだろうが、良いリズムであればなんでも良かった。

メロディよりもリズムだったと。

青木:リズムっすね。

なぜヒップホップにはいかなかったの?

青木:ヒップホップは作ってたんですけど......、ちょっと言葉汚い感じが自分には合いませんでした(笑)。

ハハハハ。

青木:でも、ヒップホップのトラックは好きですよ。だって、最初に作ったのはヒップホップでしたからね。自分で叩いた音か、レコードのドラムブレイクをサンプリングして作ってましたからね。ヒップホップのスタイルなんですよ。ブレイクビーツというのかヒップホップというのか、僕、そういうジャンル分けはわかんないんで。

リズムの面白さを追求するなら、それこそブレイクビーツ、ジャングルとかドラムンベースとか、他にもあるじゃないですか。そうじゃなくていまのアオキ君のスタイル、ミニマルな方向性に行ったのはどうしてなんですか?

青木:作為的なものよりも、問答無用に感動するほうに意識がいったかもしれない。「こうだから良い」とか、「この人だから良い」とか、ただ「良い」っていう。何も知らずに初めてそこに来た人が「良い」と思えるようなもの、「なんか知らんけど良い」っていうか。そういう思考を挟まない良さがリズムにはある気がしました。

ピート・ロックが作るビートだって、本能的に「良い」と感じてると思うよ。

青木:わからないです。ピート・ロック知らないです。

DJクラッシュでもプレミアでも、本能的に「良い」ということだと思うんだけど。

青木:僕、聴いてないんで、わからないです。

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F1とか、レースのエンジン音にすごく興味があって。あれって、アンプとかスピーカー関係なく、モノが燃焼によって鳴っているじゃないですか。スピーカーとか関係なく音が鳴るってところにすごい興味があって。ぜんぶのパーツがその回転させるためだけにあって、良い素材を集めてあの音が鳴るっていうところに美しさを感じて。


AOKI takamasa
RV8

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青木君が本能的に「良い」と思った作品って何?

青木:ファンクのレコード、ドラムのブレイクとか、リズム、「誰か知らんけどココ良い」とか。

はぁ。

青木:そういう感じ。

いちばん最初に興味を持ったのは、エンジン音なんですか?

青木:F1とか、レースのエンジン音にすごく興味があって。あれって、アンプとかスピーカー関係なく、モノが燃焼によって鳴っているじゃないですか。スピーカーとか関係なく音が鳴るってところにすごい興味があって。ぜんぶのパーツがその回転させるためだけにあって、良い素材を集めてあの音が鳴るっていうところに美しさを感じて。

はぁ。

青木:クラブが、ダンスという機能のためにすべての機材があるように。とにかくあの鳴る感じがすごいと好きで、しかも美しい音で。野蛮で美しいところに。あんだけ金かけて、ただ速く走るためだけに金をかけているあのアホさ。

ハハハハ。

青木:それとダンス・ミュージックに近いモノを感じたんですよね。

エレクトロニック・ミュージックに行ったのは何故?

青木:自分に演奏技術がなかったのと、自分が欲しい音を作るとき、サンプラーとシーケンサーが便利だった。

最初はどんな風にはじめたの?

青木:高校生のときに同級生がたくさん機材を持っていて、そこでサンプラーの使い方とか教えてもらった。高校卒業した頃はバンドでやったりしていたんですけど、大学に入って、バイトして、やっとコンピュータを買えるようになって。98年ぐらいからですかね。

目標としていたアーティストっていますか?

青木:衝撃を受けたのは、エイフェックス・ツインとか、オウテカとか、SNDとか、......あとは......マイク・インクって人。あとは、名前は知らないですけど、ヒップホップのトラック、黒人のグルーヴの感じられるものは好きでしたね。失礼だけど、名前を覚えていないんで。

ブラック・ミュージックのことは本当に好きなんですね。

青木:子供の頃に影響を受けたのものはずっと残るのかなって。父親が聴かせてくれたスティーヴィー・ワンダーとか、マイケル・ジャクソンとか、そういうのはとにかく好きですよ。

そういう黒い感じを前面に出すような方向にはいなかったんですね。

青木:物真似はしたくなかったんですよ。日本人のフィルターを通してその影響を出したほうが良いだろうと思って。

僕は、青木君の音楽は、最初イギリス人から教えられたんだよ。昔から知っている某インディ・レーベルの人から、「タカマサ・アオキ知ってるか?」「すげー、良いよ」って何度も言われて。で、意識して聴くようにしたんですけど、結局、彼らが青木君の音楽のどこを「すごい」と思っているかと言うと、リズムだったりするんだよね。本当に、ビートなんだよね。

青木:そうなんですよ。それが問答無用に良いっていうことで、赤ちゃんが踊ってしまうのもリズムなんですよ。

サッカーはイギリス生まれなのに、イギリス以外の人たちがどんどんうまくなってしまったように、ダンスのリズムも、アフリカ起源だけど、いまでは人種を問わず、いろんな国にうまい人が出てきていると思うんですよね。

青木:僕もそう思います。DNA的に見てもみんなアフリカに行き着くし、根本的にはいっしょだと思うんですよね。そもそも、宇宙の摂理自体がひとつのリズムを持っていると思うから、宇宙のなかで生まれた人間には同じリズムが宿っていると思っているんです。それにいちばん正直なのがアフリカの音楽なんだと思います。

なるほど。先日、青木君は、スイスの〈Svakt〉というレーベルから12インチを出しましたよね。たまにレーベルをやっている人とメールのやりとりするんだけど、彼いわく「とにかく自分はタカマサ・アオキのファンで、リリースできて嬉しい」と。で、「君は何でそこまでタカマサ・アオキが好きなんだ?」と訊いたら、「ホントに彼の音が好きだ(i really like the sound he has)」と。「とてもピュアで、生で、アントリーティッドなところがね」と言ってきたね。

青木:向こうの人らは、そこで鳴っている音が良いか悪いかで判断してくれる人が多いんで、ヨーロッパはやりやすかったですね。

今日はぜひ、ルーマニア・ツアーの話をうかがいたかったんですが。

青木:あー、それ流れちゃったんですよね。ポーランドも。昔、ライヴでは行きましたけど。

ヨーロッパは何年いたんですか?

青木:7年。住んだのは、2004年から2011年です。最初の4年はパリで、あとの3年はベルリンに住んでましたね。

日本にいたらやってられないっていうか、ヨーロッパに可能性を感じて行ったんですか?

青木:ライヴのオファーが多かったんでね。2001年からライヴで、2~3ヶ月行くようになって、ギャラも良いですからね。日本は、年功序列もあるし......。

日本じゃ食っていけないと。

青木:ライヴでは食っていけなかったですね。僕らはCDでは食っていけない時代のミュージシャンなんで、ライヴやって、ライヴやって、それでお金を稼ぐしかなかったんですよ。駆け出しの頃は、ギャラがもらえるのって東京ぐらいだったんですね。でも、東京で何回もライヴをやることもできないし、ライヴ・セットを何回も変えるわけにもいかないじゃないですか。で、やりたくない仕事をやりながら、ちょこちょこ東京と大阪でライヴをやるんだったら、ヨーロッパに行ってライヴをやったほうが収入が良いと思って。

向こうにいってしまうと、ブッキングも増えるものなんですか?

青木:僕の場合は増えましたね。バルセロナのソナーに出たら、その影響で、ぶわーっと1年ぐらいブッキングが決まりましたね。で、次にいったら、別のオーガナイザーが来ていて、「おまえ、うちのフェスティヴァルに来いよ」みたいなね。「あ、行く行く」って、次決まるとか。それでぽんぽんぽんぽん、2年~3年やってましたね。
 能の勉強をするのにドイツ行っても意味ないように、ダンス・ミュージックが栄えたところはヨーロッパだと思うんで、その文化が栄えた場所の空気吸って、メシ食って、人と接して、社会感じて、それで初めて本質が見えると思って。自分が音楽を続けるなら、ヨーロッパに行ったほうが良いだろうと。

へー、すごいなー。

青木:いや、ずっと綱渡りですよ(笑)。ぜんぜんすごくないです。

いやいや、その行動力とか、素晴らしいですよ。しかし、せっかく渡欧して、成功したのに、帰国したのは何故なんでしょうか?

青木:いろんな理由があるんですけど、じいちゃんが死にかけてました。帰ってきて、1年だけでもいっしょに過ごすことができたんで良かったです。他に犬も死にそうやったんで。

日本が恋しくなったというのはなかった?

青木:ずっと恋しかったです。日本食もそうだし、母国語で喋れるのも良いし。ビザがいらないというのも最高やし。ヨーロッパも日本も自由であるけど不自由でもあるし、そのバランスをどう取るかっていう。まあ、7年もおったし、最初は3~4年で転々としたかったんですよね。だから、パリで4年、ベルリン3年、いま大阪2年目だから、次はどこに行こうかなと思っていますね。

生まれも育ちも大阪?

青木:そうですね。

関西って、面白い人がどんどん出てくるよね。NHKyxとか、セイホー君とか、マッドエッグとか。

青木:情報が関係ないんだと思いますよ。

大いなる勘違いの街だと思うんだよね。デトロイトやマンチェスターだって、大いなる勘違いの街だから。独創的なモノが生まれる。

青木:ハハハハ。そうかもしれないですね。あと、何かあっても「へー、そうなんかー」みたいな、情報をそのまま受け入れないっていうか、そういうところがあるんだと思います。

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ライヴでは食っていけなかったですね。僕らはCDでは食っていけない時代のミュージシャンなんで、ライヴやって、ライヴやって、それでお金を稼ぐしかなかったんですよ。駆け出しの頃は、ギャラがもらえるのって東京ぐらいだったんですね。


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青木君が作品を作るうえでのインスピレーションはどこにあるの?

青木:F1。

たとえば初期と後期......、え、F1!!!!

青木:F1。

そこまでFIが好きなんだ(笑)。

青木:F1と宇宙の摂理ですね。F1の音が入っているCDもあります。

へー。

青木:文明のあり方と宇宙の生成。

ハハハハ! 最高、それサン・ラーだね(笑)。

青木:サン・ラー(笑)。でもそれは、ほんまに、人間として当たり前のことやと思うんですよ。文明に毒されて思考が限定されると、どうしても文明がすべてになっちゃうと思うんですけど、でもそこから解放されると、宇宙がすべての源だとわかると思うんです。
 僕がF1に興味があるのは、宇宙摂理に反した文明があって、その文明の究極の形がF1だと思うんですよ。石油、技術、戦争、広告、地球の文明のいろいろなものが集中しているのが、戦争とF1だと思うんです。ふたつのうち戦争は、人殺しで、ださいし、かっこ悪いけど、F1は誰がいちばん速いんやということを何十億もかけてやるアホさと、凶暴なエンジンを持ちながら、そのできあがったマシンの美しさと、そういった多面性が現代文明を象徴している気がする。

文明としていま猛威をふるっているのはコンピュータだと思うんだけど。

青木:F1もコンピュータ無しではあり得ないですよ。

あー、そうか。

青木:制御にしても、管理にしても。F1は軍事と同じで、地球上のすべての技術が集約されているんですよ。公開されている技術ですね。

つまり、ツール・ド・フランス(by クラフトワーク)なんて言ってる場合じゃないと。

青木:いや、別にそれはそれで良いんですけど。僕も自転車大好きなんですけど。人力も良いけど、作ったものを乗りこなすっていうのに興味があるんです。

そうした青木君の写真機に対する偏愛と繋がっているの?

青木:いや、写真は、地球に初めて来たっていう気持ちで、「アホやな地球文明。まだモノ燃やしているわ」とか。

ハハハハ。

青木:まだ競い合って、争って、どんぐりの背比べしているっていう。まだ自然を破壊してコンクリートの建物たてているっていう、その面白さ。それを記録する気持ちで。

そんなシニカルな......それは機械が好きだからっていうことではないんだ?

青木:機械も好きですけど、「地球オモロイ」みたいな感じですね。「地球、変なとこー」みたいな(笑)。

初期の頃からそうだったんですか?

青木:疑問に思うことが多かったですね。「なんでそんなことせなあかんの」とか。

「地球オモロイ」は、いろんな思いが詰まっているんでしょうけど、やっぱ国境を何度も超えながら思ったことでもあるんですかね?

青木:それもあります。そして、国境を何度も超えたことで、わかったこと、自分なりに理解できたこと、腑に落ちたことが多くて。自分の疑問に対する答えでもあったし。

F1は実際に観に行ったの?

青木:いや、日本では行ったけど、ヨーロッパでは行ったことがないです。ヨーロッパって、ほんま階級社会だから。サッカーはいちばん下のスポーツで、F1やクリケットや乗馬はほんまトップの階級のモノですね。

そんな糞忌々しい文化を(笑)。

青木:いや、糞忌々しくないです(笑)。その人たちはただ生まれながらにそうなっているだけなんで。生まれてから金持ちなんでね。

なるほど。青木君は、もうひとつ、ダンス・ミュージックということを強調するけど、世のなかにたくさんのダンス・ミュージックがありますよね。EDMっていうんですか?

青木:いや、知らないです。

なんか、ダンス・ミュージックが大流行なのね。たとえば、DJでも、アニメの歌とかアイドルの曲とかアッパーなハウスをまぜるような人がけっこういて、それで踊っている人もいるのね。そういう音楽もダンス・ミュージックなわけですよ。自分がやっている音楽とそういう音楽もダンスという観点で見たら等価だと思いますか?

青木:ダンス・ミュージックには、魂が入っているモノと装飾だけのモノがあると思うんですよ。それは音楽全般に言えることですけど、そこに魂が入っていれば、同じだと思います。

その魂というのは、別の言葉で言うとどういうことなんだろう?

青木:純粋な思いじゃないですかね。「○○っぽいのを作ろう」じゃない音楽。

ヨーロッパなんかとくにダンス・ミュージックが根付いているからいろいろなモノがあるじゃないですか。そういうなかで好きなモノを嫌いなモノもあったわけでしょう?

青木:自分は作っているばっかで、あんま聴いてないので、うまく答えられないですね。ただ、ライヴで呼ばれて、その場で他の人の音楽も聴いて思うのは、あまりにも自己主張が強いダンス・ミュージックはちょっとしんどかったですね。

自己主張が強いモノね、なるほど。

青木:そうじゃない人のほうが踊りやすかったですし、心地よかったですね。

ダンスを強制するようなものは好きじゃない?

青木:そうですね。うぉぉぉぉーみたいな、そういうのが好きな時期もあったんですけど。歳のせいかもしれませんが。

アンビエントというコンセプトは意識している?

青木:自分が聴いてきた音楽のハイブリッドがテクノなんで、当然、アンビエントもそのなかに入っています。しかも、いまのステレオの技術では、わりと簡単に立体音像が作れるんですよね。たとえミニマルであっても、そのなかにアンビエントを挟み込むことができるんです。そういう意味では意識していると言えますね。
 僕もジャンルに詳しいわけじゃないんで、アンビエントが何なのかよくわかってないんですよね。それでも、打点のない、ビートがないけど、リズム感のあるような音楽は好きはですね。

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自分が聴いてきた音楽のハイブリッドがテクノなんで、当然、アンビエントもそのなかに入っています。しかも、いまのステレオの技術では、わりと簡単に立体音像が作れるんですよね。たとえミニマルであっても、そのなかにアンビエントを挟み込むことができるんです。そういう意味では意識していると言えますね。


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最近、日本の作品で、お金を出して買ったCDは何ですか? 

青木:キリンジ。

どういう人?

青木:ふたり組の。めちゃくちゃ良いですよ。

詳しいなー(笑)。

青木:それは京都在住のDJのkohei君が教えてくれたんですけどね。すごい音楽に詳しい先輩で、魂籠もった音楽をよく知ってはるんです。

レコード店はよく行く?

青木:行ってないですね。お金がなくて。機材買うお金とレコード買うお金は両立できないです。ほんまにDJで使いたい曲があるときは行きますけど、それ以外では行かない。

青木君は機材に対してはどう考えているの? 90年代末はちょうどソフトウェアを使いはじめた時期だったけど、最近はまたモジュラー・シンセが流行ったり、いろいろ考えがあるじゃないですか。

青木:レーサーと同じで、自分のフィーリングに合ったマシンが欲しいですね。ベースの鳴り、キックの密度、ハイハットのシャープさ、シンセの広がり、温かさ、そういうのが自分の感覚に合うかどうかで判断していますね。それがぜんぶ組み合わさったときに自分なりのドライヴができる。まあ、そんなに機材を買えるほどのお金もないんでね、昔のヤツをずっと使ってますけど。

ライヴの本数はいまも多い?

青木:ずっと多いです(笑)。

コンピュータを持ったブルースマンみたいだね。機械を持って世界のいろいろなナイトクラブを回って、演奏して、金を得るみたいな。

青木:不思議な仕事ですよ。みんなが踊っているのを見ながらやっているというのは。純粋に楽しいです(笑)。

日本では〈ラスター・ノートン〉を支持している層とフロアで踊っている層との溝があるように思うんだけど、ヨーロッパでは実験性とダンス・ミュージックがしっかり重なっているんでしょうか?

青木:正直、自分のことで精一杯だったんで、ヨーロッパのシーンのことまでわからなかったんですけど、やっぱ、金払って実験みたい人って、そんなにいないと思うんですよ。自分やったら、実験のためだけには行かないです。ダンスがあるから、そこに金払っても行きたいと思うんで、そこは重要かなと思いますね。僕は、自分の音楽が人の心を高揚させて、日々のストレスを忘れさせて、良い気持ちになってくれたら最高なんです。それだけですね。すべてに対してアウトサイダーかもしれないですね。シーン関係ないし、ジャンル関係ないし......。

今回のアルバムの収録曲には曲名が"rhythm variation 01"とか"rhythm variation 02"とか、順番に数字になっているじゃない?

青木:意味を持たせたくないからです。ダンス・ミュージックに意味はないからです。思考が働かないほうが、無心に踊っているほうが自分をより解放できるし。

曲名がある作品もあるじゃないですか。

青木:仕方なく......ですね。

はははは。

青木:字面とかね。もちろん、言葉があったほうが曲に入りやすいかなと思って付けたものもありますけど、今回に関しては、踊るためだけなんで。

この先、やってみたいことは何でしょうか?

青木:F1のエンジンを使って。

ハハハハ。

青木:音源としてF1のエンジンを使いたいですね。

シュトックハウゼンのヘリコプターみたいだね(笑)。でも、鈴鹿サーキットって、日本でいちばん爆音を出せる場所かもね。

青木:いつか、野外フェスでライヴをやって、トレイラーで、「AOKI LIVE powered by HONDA F1」とかやりたいですね。

ハハハハ。

青木:子供の頃、レーサーになりたかったんです。いまでもレーサーになれるなら、音楽とかぜんぶ止めてなります!

わかりました。今日はどうもありがとうございました。

Latin Quarter (Pan Pacific Playa) - ele-king

https://soundcloud.com/latinquarter_ppp
https://www.panpacificplaya.jp/blog/

DJの予定
5/25 福岡 Megaherz https://www.megahertz.jp/pickup.html
6/14 藤沢 Freeculture
6/22 渋谷 Koara https://www.koara-tokyo.com/

最近DJの際に持っていきがちなモノ


1
Robert Staruss - Slow Dancing - BBE

2
Robert Strauss - Party In My Body -BBE

3
Nick Nikolov - Come Down - Liebe Detail

4
CLASSIXX - Holding On (Losoul Remix) - Innovative Leisure

5
Randomer - This Train - Hemlock

6
Dajae - Day By Day (Cajmere Extended Mix) - Cajual

7
Syclops - Sarah's E With Extra P - Running Back

8
Physical Sound Sport - Nigeria Game - JAZZY SPORT

9
Whitney Houston - Million Doller Bill(Frankie Knucles Directions Club Cut) - Unknown

10
xxxx - Kahlua and Milk 1989EDIT - unreleased

Marii (S・THERME) - ele-king

フロアでだれかに話しかけたくなるような、いいにおいが漂う90'sよりのハウスを選んでみました。
音攻めパーティ「S」をオーガナイズしたり、THERME GALLERYというギャラリーの運営をしていたりします。
6月はSクルーみんなでHOUSE OF LIQUIDに出張します。
6/15 @ KATA (Liquid Room) 【HOUSE OF LIQUID】

THERME GALLERY https://thermegallery.com/
SOUND CLOUD https://soundcloud.com/mariiabe
BLOG https://cawgirl.exblog.jp/

いいにおいのするハウス10曲 2013.5.10


1
Enrico Mantini - The maze(What you like) - Smooth sounds

2
Jump Cutz - Meditate on this - Luxury service

3
The visionary - Free my soul (duke's deep skool mix) - Music for your ears

4
Pierre lx - Gabita - Initial cuts

5
Aly-us - Go on (club mix) - Strictly rhythm

6
Vapourspace - Vista humana - Ffrr

7
Cazuma & Hiroaki OBA - Alphonse - TBA

8
Raiders of the lost arp - Stealing my love - Snuff trax

9
Reese&Santonio - Truth of self evidence - KMS

10
Kornel Kovacs - Baby Step - Studio Barnhus

Charles Bradley - ele-king

 1948年生まれ、少年期をニュー・ヨーク/ブルックリンで過ごしたチャールズ・ブラッドリーは、14歳のとき(1962年)にアポロ劇場でジェイムズ・ブラウンを見て衝撃を受け、その歌真似をしはじめ、自分も歌手になることを心に決めた。しかし、その道に順調に敷石は並べられなかった。若くして野宿生活を余儀なくされ、職業訓練でコック職を得てからはヒッチハイクで全米を転々とする。その間の音楽活動も実を結ばず、1990年代半ばまでの約20年間は、カリフォルニアでアルバイトで食いつないでは、歌手として小さな仕事を取る暮らしを送っていたという。
 90年代の後半には、ブルックリンのクラブでジェイムズ・ブラウンの物まねパフォーマンスの仕事をするようになるが、およそ50歳になってもまだ"自分の歌"を聴いてもらえる機会をつかめなかったばかりか、それ以降もペニシリン・アレルギーで命を落としそうになったり、ガンショットによって弟を失ったり、芽の出ない下積み生活に深刻な不幸が追い討ちをかけるという、話に聞くに散々な日々を送りながらも、とにかく歌うことは止めなかった。
 そしてJBなりきり芸人と化していたチャールズ・ブラッドリーは、遂にそのブルックリンのクラブで、〈ダップトーン(Daptone)・レコーズ〉の主宰者、エンジニア兼レーベルの中心バンド:ダップ=キングス(Dap-Kings)のバンマス/ベイシストでもあるゲイブリエル・ロスの目に止まるのだ。

 ブルックリンに拠点を置き、ファンク、ソウル、アフロ・ビートを主な守備範囲とする〈ダップトーン・レコーズ〉は、今世紀創業の新興ながら、当初からディジタル録音を一切行わず、アナログ・レコードをリリースの基本メディアとしていることで知られているインディ・レコード会社/レーベルだ。音楽の種類とサウンドの質に硬派な職人気質のこだわりを示す同プロダクションは、チャールズ・ブラッドリーのよく言えばヴィンテージ・スタイルの、悪く言えば堅物の唱法/個性を丸ごと評価し、この歌手を、そこから大切に"育てはじめる"。
 そしてレーベル最初期の2002年から、ブラッドリーの7インチ・シングルが定期的にリリースされはじめ、その計8枚のドーナツ盤によってじっくりと仕上げられた長い長い下積みの努力が、ダップトーン内のダナム(Dunham)・レコーズからのファースト・アルバム『No Time For Dreaming』に結実したのは2011年、ブラッドリー62歳のことだった。

 歴史上のA級ソウル・シンガーたち(O.V. ライト、ジェイムズ・ブラウン、シル・ジョンソン、ジョニー・テイラー、ボビー・ウォマック......)の面影がちらつくブラッドリーの歌のなかには、むしろそれゆえに、彼のそうした偉人たちには及ばない部分が浮き彫りになる。率直に言えば、それは"華"と呼ばれる類のものだろう。だけど一方でこの男の"歌"とは、そこを補って余りある誠実さと熱量なのだということ、この質実剛健を絵に描いたようなたたずまいと生命力それ自体が歌い、メッセージと化しているような存在感なのだということもまた、聴けばすぐにわかる。歌唱力ばかりか、"華"にも運にも恵まれたスターたちの圧倒的な輝きのなかには望むべくもない、古いソウル名盤には刻まれていない種の"ソウル"が、62歳の"新人"シンガーにはあった。それでこの男に日の目はようやく、しかし当たるべくして当たり、人びとはこの素敵な、同時にほろ苦い美談を愛でては、"あきらめずにやっていれば、いつかはものになる"、という教訓をそこから汲み取った。そしてジャケットで寝っ転がっている当人が、「夢を見てる時間はないのさ。起きて仕事しねえとナ(gotta get on up an'do my thing)」と歌うのに感じ入った。

 そして、その初作で広く賞賛され、ここにきていよいよ仕事期の本番を迎えたブラッドリーが、"たった2年しか"インターバルを置かずにこの4月に放った2作目『Victim of Love』がとにかくみずみずしいのだ。苦み走り、枯れ味も立つ、還暦を越えて久しいシャウターが、このフレッシュでエネルギッシュな歌い飛ばし方一発ですべてを魅惑的に潤していくカッコよさは、実力派歌手の技巧的成熟とは全く質の違うものだ。長い潜伏期の果てに、"はらわた"からマグマのように噴出する歌だ。

 サウンドの面では、自己紹介盤にふさわしくファンキー~ディープ・スタイルを重視したファースト作よりも、少し曲調が多彩な広がりを見せた。歌メロには60~70年代ポップスの薫りもするし、サイケ・ロック/70'sモータウン・サイケ風のアレンジもある。総じてダークでスモーキーな前作から明るくカラフルな方向へ歩みを進めた印象を受けるのは、この間に彼が浴びたスポットライトの光量も反映している気がするし、今作のリード・チューン"Strictly Reserved for You"のPVの彩度も関係していると思う。

 それにしても、都会に疲れた男がベイビーを愛の逃避行に誘うそのPVの、絶妙に制御されたダサあか抜け具合が素晴らしい。苦労人の背中に染みついた陰影も、人としてのチャーミングさも殺がずに映し出しながら、現代的な色彩感やカットと、わざと古臭いPV風に演出したゆるい絵づらとを繋ぎ合わせている。このセンス、バランス感覚に、〈ダップトーン/ダナム・レコーズ〉と、ブラッドリーの専属バンド:メナハン・ストリート・バンド(Menahan Street Band)に特徴的な"ネオクラシック哲学"が見て取れる。

 ダップ=キングスや、人気アフロ=ビート・バンドのアンティバラス(Antibalas)にブドーズ・バンド(Budos Band)などから精鋭たちが集い、ブルックリンの通り名を冠したメナハン・ストリート・バンドの演奏は、一聴するとかなりオーソドックスな70's南部サウンドのようでいて、細部にはソウル・マニアの白人ならではの美感とイマジネイションがさりげなく補われている。言わば21世紀のスティーヴ・クロッパーやドナルド・ダック・ダンたちが、60~70年代サウンドの洗練の一段先で、今の耳が望む痒いところにさらに手を延ばしたような音作りだ。メナハン・ストリート・バンド名義で洒脱な(ジャケットからして!)インスト・アルバムを2作出していること、そしてその1枚目『Make the Road by Walking』(Dunham)のタイトル曲を、ジェイ=Zが2007年の"Roc Boys (And the Winner Is)"で効果的にサンプリングしていたことを記憶している人も多いだろう。

 さらにチャールズ・ブラッドリーの2枚目が今年4月にリリースされたのと同じタイミングでジェイ=Zが発表したニュー・シングル「Open Letter」(内政問題に発展した、ビヨンセとのキューバ渡航について言及した内容が話題を呼んだ)では、ブラッドリーの1枚目に入っていた"I Believe in Your Love"をサンプリングしている。ブルックリンの話題の新多目的スタジアム《バークレイズ・センター》の昨年のこけら落としに抜擢され、8公演を全ソールド・アウトにした地元愛に篤いブルックリン・ボーンの超スーパー・セレブが、地元インディ・レーベルの〈ダップトーン〉の作品をバックアップし、さらには62歳でデビューしたブラッドリーのセカンド作のリリースに、前作からのサンプリングで花を贈るなんていうのは、なかなかにいい話である。

 しかし、何にも増していい話だと思うのは、ブラッドリーがこの5月、遂に、彼が50年前にあのJBを見たアポロ・シアターに、齢60代半ばにしてデビューすることだ。夢は叶うものなのだ......。ブラッドリーの歌が、しみじみ、生きる歓びの歌に聴こえてくる。

Sonarsound Tokyo - ele-king

もうかれこれ1ヶ月以上経ってしまいましたが...... 文:木津 毅

 ニュースでは嵐が来ると繰り返していたし、東京へ向かうバスは雨風で揺れまくっていたのでヤな予感しかしなかったが、それでも新木場に向かったら、同様にそれでも新木場に集まったひとたちがいて少しばかり安心する。今年は悪天候に見舞われた<ソナーサウンド・トーキョー>だがどうにか開催され、「アドヴァンスト・ミュージック」の祭典は水浸しの会場で始まった。さすがにひとは少なかったかもしれない、が、アクトレスが登場するフロアの期待をたしかに感じた僕は、すっかり景気のいい気分になり、1杯目のアルコールを口にする。


Actress

 ソナーについての放談で斎藤辰也が言っていた、「そのフェスだからいく、と思わせるような何か」が悪天候によって奇しくもテーマになっていたように思う。それでも新木場に集まったひとたちは何を持って帰っただろうか? ただ踊って発散したひともいただろうし、もちろんそれとてじゅうぶんに価値のあることだ。ただ、僕があの2日間を思い出したときにじわりと湧き上がるのは、「これから何かが始まるのかも」という予感のようなものだ。
 僕の記憶のなかのこれまでのライヴよりもBPMが落ち着いていたLFOの安定したプレイ、"LFO"が投下された瞬間のフロアの興奮も良かった。カール・ハイドが"ダーティ・エピック"をやったときのアンニュイさも感慨深かった。エイドリアン・シャーウッドのダブはさすがの貫禄で、そのずっしりとした低音に震えた。が、ニコラス・ジャーの思ったよりもヘヴィで迫力のあるバンド・セット(その分、これからの音源であの浮遊感がどうなるのかがちょっと不安でもある)や、ダークスターが何とか後半で辿り着いていたメランコックな高揚感(前半は演奏が噛み合ってなくて危うかった)や、プールサイドのトーフビーツに集まったキッズたちのちょっと遠慮がちなダンスと笑顔......をより鮮明に思い出す。サブマーズは"あげぽよ"どころかスムースでクールなダウンテンポ、ヒップホップだったし、アディソン・グルーヴのベースラインは思っていた以上に折衷的で面白かった。彼らははっきり言って、まだまだ途上中だという印象を残したが、しかしながら、それらが一堂に会することによって、そんな風に世界中に散らばった「アドヴァンスト・ミュージック」の可能性をたしかにフィジカルに感じられたのだ。たくさんのアクトのなかで僕が出会わなかった予感たちと、出会ったひとも当然いただろうと思うとなんとも落ち着かない。


Karl Hyde

 ちなみに僕のベスト・アクトは、迷うことなくアクトレスだ。ひどく抽象的なサウンドの隙間で意表をついて大胆に挿入される仕掛けや、断片的なループが出現しかけたかと思うと違うループが気がつくと背後で蠢いている、そんな風にクリシェを軽やかにかわす展開はスリルそのものだった。後半は思っていた以上にダンサブルなテクノへとなだれ込みそれもたまらなかったが、前半の繊細な音の配置と位相こそ、アクトレスがその日披露した「予感」だったように僕には思えた。

 ソナーは今年も、現在と、そこから続いていく未来を感じるためのグルーヴが胎動するイヴェントだった。結局丸々2日間大いに楽しんでしまった僕は気がつくと何度も酒を飲んでいたようで、膝に疲労と財布に侘しさを残したが、後悔も反省もとくにしていない。

文:木津 毅

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ずぶ濡れダンス 文:斎藤辰也

 初日の夜は大雨が会場に降り注がれたので、プールのあるテラス・ステージでは踊りながら天然シャワーで汗を流すことができた。屋内のバー・スペースからテラスをはさんで対岸の小屋でプレイするサファイア・スローズを観たとき、ロッカーにしまわないでおいたマウンテン・パーカーに鼓舞され、僕は天然シャワーのなかに文字どおり踊り出た。音量は控えめだったものの湿ったハウスのリズムがたしかに胸に響き、やわらかいシンセサイザーと深いリヴァーブにつつまれたサファイアの声が夜空を満たしてゆく。円柱型のストーブの火が消えてしまうたびに、暖まるつもりもないけども見知らぬひとと協力して火をつけた。プールは妖しく緑色にライトアップされており、泉をかこむ妖精のような気分のなか数人のオーディエンスとともに雨のなかを漂いながら踊った。
 僕はもっとみんなにテラスに出て踊ってほしかった。たしかに、終わったあとはずぶ濡れすぎて人にぶつからないように歩かなければならなかったが、踊っていれば服は乾くのだ。事実、そのあとも友人たちに遭遇しLFOやシャーウッド&ピンチで踊り明かしたので、ずぶ濡れだったズボンもさっぱり乾いた。

 ひとつ言わせてほしい。好き勝手に踊るのは、とても快いことだ。かつてゾンビーは言った――「1992年に、きみはどこにいた?」。当時まだ幼稚園にもいなかった僕にはいまになってレイヴがとても羨ましい。アンディ・ストットのライヴもその気持ちを強くさせるものだった。音楽の鳴るところで好き勝手に踊ること。それは音楽から「作品」としての額縁を外す(あるいは、額縁をつけない)楽しみ方でもあり、そこにいる他者おのおのの存在の発露を認めながらそのなかのひとりでいる自分をも同時に認める遊びであるように僕には感じられる。最近はそんなことを強く感じながら音楽の鳴る場所で踊っている。鳴っていなくても鳴らして踊っている。

 2日目の真昼。昨夜は大雨に見舞われていたテラス・ステージで、頭上には嵐と雨後のしらじらしい青空が拡がり、足元には飛びこみ禁止のプールが堂々と日光を浴びている。すっきりしないエセ・リゾート気分をトーフビーツ情報デスクVIRTUALのオープニング・ナンバーで解放させ(空には航空機が飛んでいた!)、以降もスクリューとトラップのビートで客の脚をふらつかせた。田中宗一郎にバトン・タッチする頃にはテラスも笑顔で溢れかえっていた。
 テント風の会場が似合うエキゾチックなングズングズ(Nguzunguzu)は、ラウンジ程度の音量の低さを考慮してか前半は4つ打ちの堅実なプレイに徹していたが、後半になると、ミステリアスなメロディに彩られた自作曲をはじめR&Bやサウス・スタイルのヒップホップでようやく弾けてくれた。しかし別の機会に体感した彼らのDJプレイは、レゲトンをプッシュしまくり、観衆をダンスへと積極的に鼓舞する爆発力があったし、それこそが彼らの本領といえるものだろう。ぜひこんどは音響の豊かなヴェニューでプレイしてほしい。

 そして、なにより僕が待ち望んだ時間がやってきた。夕焼けもどこかに潜み、あたりも暗くなった18時すぎ、ダークスター(Darkstar)がメイン・ステージに登壇し夜の帳を降ろした。ロンドンでの出会いから待つことちょうど2年。まさかほんとうに日本でしかもこんな大舞台で観れるとは思っていなかったので、おおきな拍手で迎えられる彼ら3人の姿に、胸と目頭があからさまに熱くなってしまう。ショーの間はずっと3人の黒い影だけが青い逆光のなか浮かぶ美しい演出が施され、ただ3人がそこにいること/そして音楽が演奏されていること――そのシンプルな情景が暗闇のなかにはっきりと立ち現れていた。
 新譜同様にきめ細かくたゆたうシンセ・ドローンでショーははじまったが、歪んだベース音やノイズが重ねられ、これがライヴであることが宣言された。すこしの静寂をおいて、調子の外れたギターがフェイドインし、"アルモニカ"のビートがフロアに響きわたる。つづいて、ジェイムス・バッタリーのすこしおどけた甘いヴォーカルがは歌いだす。ため息がでるほど美しい瞬間だった。
 前作『ノース』からは歌の目立つ3曲"ゴールド""デッドネス""ノース"が演奏されたものの、そのほかはすべて新譜『ニュース・フローム・ノーウェア』からの選曲で、しかし"タイムアウェイ"と"ア・デイズ・ペイ・フォー・ア・デイズ・ワーク"というプロモーションされた2曲は演奏されず、逆に"ヤング・ハーツ""ホールド・ミー・ダウン""ユー・ドント・ニード・ア・ウェザーマン"などアルバム後半のエレクトロニカ/インストゥルメンタルのテイストの深い、意外な展開を見せた。

 といっても、思い返せば意外だったというだけで、じっさいショーは滑らかに運ばれたし、途中ジェームス・バッタリーが「メイク・サム・ノ~イズ」と囁いておどけてみせたが、曲と曲のあいだの静寂さえ彼らの演奏だ。『ノース』と『ニュース・フローム・ノーウェア』はいま並べてみてもそのサウンドの違いに驚かされるが、ライヴではどちらの楽曲も違和感もなく自然につながれていて、それは静寂となによりジェイムス・バッタリーがもたらした成果であろう。歌うことは演じることだとバッタリーは本誌に語ってくれたが、彼の歌声は抒情的な脚色もなければエゴも感じさせない。白くてまっさらな役者である。バッタリーをダークスターというキャンパスの真ん中に据える(メンバーとして迎えた)ことで、ジェイムス・ヤングとエイデンは好きなように色(サウンド)を塗り変えて楽しむことができているというわけだ。そのことがよくわかる繊細だが力強いライヴだった。たのしそうに歌うバッタリーは愛らしくもあり魅力的で、歌唱力も以前よりレベル・アップしていた。なんの嫌みもない彼の存在は、バンドや会場の緊張をほどよくほぐしてくれる。ルックスも格好いい。
 音響が不十分だったこともあってかアンサンブルがちぐはぐになりかける場面も少なくなかったが、バンドの佇まいは2年前よりも堂々としたし、3人が各々で携えたサンプラーやキーボードやエフェクターの数も増え、ライヴをつよく意識した姿勢が印象的で、そのふくよかなサウンドの裏にバンドとしての意欲が燃えているのが感じられる熱い演奏だった。これまでライヴでの試行錯誤をつづけていたことをユーチューブなどで追いかけていたが、彼らはたしかに逞しく成長しているし、これからそのサウンドを塗りかえ続け、僕たちを驚かせる便りをくれるに違いない。〈フジロック〉に行かれるひとにはぜひダークスターを観てほしい。


Darkstar

 そして、〈ビートインク〉のスタッフさんのご厚意で、開演前の彼らにサウンドについて補足の質問をできました。以前のインタヴューではどこかぶっきらぼうな印象もあったかもしれませんが、対面した彼らの気さくさが伝わればこれ幸いです。エイデンはわざわざビールを運んできてくれました。通訳は岩崎香さんです。

ジェイムス・ヤング:ここに座りなよ。

ジェイムス・バッタリー:そうだよ、座ってリラックスしなよ。

ありがとうございます。(ビールを開けて)では、チアーズ。

全員:チアーズ。

J.バタッリー:日本語でなんていうの?

KANPAI(乾杯)と言います。

J.バタッリーんー! もういちど、乾杯!

ふふふ(笑)。『ele-king』にはすでに編集長によるインタヴューが載っているので、今回は補足的な質問をさせてください。ダークスターははじめ、ヤングとエイデンのふたりのユニットで、すこし風変りだったとはいえどダブステップのトラックを制作していましたね。もしダブステップを通っていなかったら、どんな音楽でデビューしていましたか?

J.ヤング:ダブステップという言葉は嫌いで、認めてはいないんだけど......、そうだね、はじめは、きっとヒップホップかな?

エイデン:グライムを作ってたよ。

J.ヤング:そうだね、MCたちのためにグライムのトラックを作っていたと思う。

その面影もないくらいにスタイルを刷新した新作『ニュース・フローム・ノーウェア』では、ハープシコードやチェロのようなトラディショナルな楽器が使われていますが、初めからそういう構想があったのですか?

エイデン:ハープシコードじゃなくて、アーモニウム(Armonium)なんだよ。

あ、ハーモニウムだったんですか(聞き間違える)。

J.バタッリー:ちがうちがう、アーモニウムだよ。ペダル・オルガン(ハーモニウム)じゃなくて。

J.ヤング:そうそう、アーモニウムっていうのは、プルルルルルルルルっていうやつ(手で筒が回るジェスチャーをしながら、唇を高速で震わせる)。

え(笑)?

エイデン:そうそうそう。

なるほど......、え、なんなんですか(笑)?

J.ヤング:(自分で堪えきれず失笑)ふふふふ......!

(一同、10秒爆笑)

J.バタッリー:本当は「テン、テンテン、テンテンテン」って弾く楽器だよ(笑)。

エイデン:そうそう。ペダル・オルガンもプルルルルルルルルっていうんだよ(笑)!

はい、よくわかりました(笑)。"アルモニカ"という曲名も楽器からなんですね。

※筆者註:英語/日本語圏での一般的な呼称はアルモニカ(Armonica)。

エイデン:真面目に答えると、たくさんの楽器がリチャード・フォンビーのスタジオにあったから、あるものすべてで遊んだんだ。クールなシンセサイザーに、オルガンとか、サーズ(saz)っていうトルコの楽器も使ったね。

もしそういった楽器がなかったら、どんなサウンドを作っていたのでしょうか?

J.ヤング:とてもシンセティックなものになっていたと思う。

J.バタッリー:リチャード・フォンビーと組むことにした理由のひとつには、彼が楽器をたくさん持ってるからというのもあるんだ。僕たちはすこしだけピアノやギターを持ってはいるけども。あと、レコーディングした邸宅にあったたくさんの家具も使ったよ。グラスの音もあれば、ドラムサウンドとして椅子をバンバン叩いたりもしてね。

ビーチ・ボーイズは『スマイル』で野菜をかじる音をパーカッションとして用いましたし、ビートルズの『サージェント・ペパーズ』ではトイレット・ペーパーの芯の音も入っているらしいんですけど、そういうことを思い出すエピソードですね。そこで質問です。好きなビートルズのアルバムはなんですか?

J.バタッリー:『サージェント・ペパーズ』(即答)。それか『ホワイト・アルバム』。それと...『ア・ハード・デイズ・ナイト』が......(ずっと呟いている)。

エイデン:『リヴォルヴァー』も好きだな。

J.ヤング:"エリナー・リグビー"って『リヴォルヴァー』だっけ? たぶん『リヴォルヴァー』がいちばん好きだな。それか『アビー・ロード』。

なるほど。『ニュース~』では古いテープ・エコーの機材も使われているとのことですが、クラシカルな楽器の使用もふくめ、まさしく1967年頃のロック・バンドの実験的なレコーディングと似た感触がサウンドにあらわれています。やはりというか、初期よりも後期のビートルズのほうがお好きなんですね。

J.ヤング:お父さんは熱心なファンなんだけど、僕はそこまでファンじゃないんだ。でも、もちろんビートルズはことはとても評価しているよ。ずば抜けて実験的だから。

J.バタッリー:僕はファンだよ(服につけた『サージェントペパーズ』の色褪せた缶バッジを見せてくれる)。ビートルズのなによりも好きなところは、新しくて他とは違うものになるよう努めていたことだよ。だからこそ、彼らのようなサウンドを作る必要はないんだ。それが彼らの哲学でもあるわけだしね。

エイデン:『マジカル・ミステリー・ツアー』の映像はとても面白いよね。

みなさんは、おなじく熱心なビートルズ・ファンでジョージ・ハリスン推しであるゾンビーと仲が良いですよね。そこで質問です。「Where Were U in '92」?

J.ヤング:うん......、あ、僕がどこにいたかってことかな? ハイスクールがはじまったばかりだったよ。

J.バタッリー:フットボールをしたり、自転車をこいだり、軍隊みたいな秘密基地のようなものを樹のあいだに作ったりして遊んでいたよ。

レイヴには参加してなかったんですね。

エイデン:僕はレイヴしてたよ! 9才で、レイヴしてたんだ。

(一同爆笑)

えー、それは本当ですか!?

エイデン:ジョークだよ。煙草を吸ったり酒を飲んでたね。いや、これもジョーク(笑)。煙草を吸いだしたのは12才のときだね。

J.ヤング:12才......!

不良ですね。不良すぎる......(笑)。

(一同笑)

エイデン:だからもう禁煙したよ。煙草は吸わない(煙草を吸いながら)。

J.バタッリー:僕はいつでも吸ってるよ。毎日だ。よくないよね(笑)。いつの日かやめようと思うよ。癌で死んだときにやめるかな。

どうか死なないでくださいね。新作のタイトルは「どこでもないところからの便り」という意味ですが、じっさいみなさんは定住する家をきめていないと聞きました。それはなにか理由や目的があってのことなのでしょうか?

J.ヤング:そう、スーツ・ケースのなかに住んでるんだ。理由はすこしだけあって、基本的にツアーの事情とお金の事情だ。たとえばいまはこうして日本にいるけども、月末にはロンドンへ戻らなくてはいけかったりするから。

ということは、ロンドンが一応のホームではあるのですか?

J.ヤング:いや、僕にとってはそうでもないよ。

J.バタッリー:ロンドンは2番めのホームだな。僕にとってのホームは、ヨークシャー地方にあるリーズだよ。とはいえ、多くの友だちがいるし、ロンドンもホームのようなものだね。10年も住んだし。

エイデン:人生のほとんどをロンドンですごしたけどね。

J.バタッリー:いまはこうして日本にいる。東京で生活できるなんてナイスなことだよ。

それはなによりです。今回はわざわざ日本にきてくれてありがとうございました。

文:斎藤辰也

Chart - JET SET 2013.05.13 - ele-king

Shop Chart


1

!!! - Thr!!!er (Warp)
2010年の『Strange weather, isn't it?』に続く約3年ぶり通算5枚目のフル・アルバム。これまでになくタイトでポップな仕上がりとなった会心作!!

2

J Dilla - Lost Tapes, Reels + More (Mahogani Music)
ローカル・レベルでMoodymannやAndres、Amp Fiddlerあたりとも強く結び付いていた事は周知の事実ですが、その関係もあってか今回もMahoganiからのリリース。今回もアナログ・オンリーとの事!

3

Vampire Weekend - Modern Vampires Of The City (Xl)
2010年の『Contra』に続く3枚目のフル・アルバム!!Us/Xl盤アナログ、ダウンロード・コード封入!!

4

Factory Floor & Peter Gordon - Beachcombing / C Side (Optimo Music)
70年代後期のNy地下シーンで活躍、DfaからのEpリリースも記憶に新しい御大Peter Gordonとのコラボレートを展開したUk気鋭トリオFactory Floorによる話題の最新Ep!!

5

Bibio - Silver Wilkinson (Warp)
2011年の『Mind Bokeh』以来となる4枚目のフル・アルバム!!今回もUk/Warpからのリリース。ダウンロード・コード封入です。

6

Yatha Bhuta Jazz Combo - S.t. (All City)
ごぞんじ大人気クリエイターOnraと、その友人で、Roy Ayersのカヴァーでその名を広めたBuddy Sativaが組んだ話題必至のユニットがアルバム・リリース!!

7

Rsd - Perfect Timing (Zamzam Sounds)
Ukダブ・マスターたちとエレクトロニック・ニューダブ勢の音源を並列にリリースするUs重要レーベルZamzam Soundsから、Smith & Mightyの片割れRob Smithが登場です!!

8

Coyote Clean Up - 2 Hot 2 Wait (100% Silk)
デトロイト在住のクリエイター、Christian Jay Sienkiewiczによるソロ・プロジェクト、Coyote Clean Upのファースト・フル・アルバム!!

9

Roger Eno / Plumbline - Endless City / Concrete Garden (Hydrogen Dukebox)
ごぞんじBrian Enoの弟Roger EnoとPlumblineによる、2006年以来となる久々のコラボ作が限定アナログ・リリース

10

Phoenix - Bankrupt! (Glassnote)
説明不要のフレンチ・ロック最高峰4ピース。グラミーを獲得した2009年の『Wolfgang Amadeus Phoenix』以来となる、全世界注目のニュー・アルバム!!

ackky (journal) - ele-king

チャートは順不同で。最近レコードバッグに常に入ってる方々。もち全部アナログです。レートが最近厳しくてレコード値上がりがリアルに痛い...

NEW MIX
https://www.mixcloud.com/akimotohideyuki/sunday-mix-2013/


1
Black Rox - Filaw - Black Rox

2
Michel De Hey vs Grooveyard - Compound(Shinedoe Remix) - EC Records

3
Tornado Wallace - Thinking Allowed - ESP Institute

4
Sevensol & Bender - How Not To Lose Things - Kann Records

5
The Candle Family - Love Theme From Two Hearts - Unforgettable Music

6
Jazzanova feat. Paul Randolph - I Human (Mike Huckaby Remixes) - Sonar Kollektiv

7
Motor City Drum Ensemble - Send A Prayer (Part 2) - MCDE

8
RAY OKPARA - Druid Hills - Soweso

9
Livio & Roby - Garaghivirap - Desolat

10
Spencer Parker - Romantic (D'julz Remix) - Rekids

DJ KAZUSHI (DUB FRONTIER) - ele-king

blog : https://djkazushi.blogspot.jp
Twitter : https://twitter.com/DJ_KAZUSHI
Face Book : https://www.facebook.com/kazushi.minakawa

DJ Schedule
13.6.8(sat) DUB FRONTIER@仙台CLUB ADD
13.6.5(wed) Light my fire 1st anniversary@仙台CLUB ADD
13.5.31(fri) ZOO DISCO@米沢ARB
13.5.25(sat) まともがわからない満月夜@盛岡MOTHER
13.5.24(fri) @三軒茶屋天狗食堂
13.5.23(thu) @高円寺GRASSROOTS
13.5.19(sun) Sunday chill-out@仙台壱弐参横町 和音
13.5.17(fri) @vinyl diz
13.5.12(sun) Gnu@仙台CLUB ADD
13.5.12(sun) Sunday chill out@仙台壱弐参横町 和音
13.5.5(sun) ZUNDOKO DISCO@仙台CLUB SHAFT
13.5.5(sun) Sunday chill out@仙台壱弐参横町 和音

dilute colord thinly


1
Dub Diablo - A LESSON IN STYLE - JOINT RECORDS

2
NIGHTMARES ON WAX - PRETTY DARK - WARP RECORDS

3
THE IRRESISTIBLE FORCE - POWER - Ninja Tune

4
Lemon jelly - Ramblin' Man - Xl Recordings

5
pizzicato five - 愛餓を - HEAT WAVE

6
Little Tempo - 無能の人 - cutting edge

7
WILD RUMPUS - ROCK THE JOINT - Bitches Brew

8
U2 - LEMON(Bad Yard Club) - island Records

9
HERE COMES THE SUNBURST BAND - Monte Carlo - Z Records

10
atlantic conveyor feat. Habibur Romman - Open Your Soul(Music Box mix) - untracked recordings
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369