「Nothing」と一致するもの

別冊ele-king J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶 - ele-king

小さなシーンの大きな革命、
1970年代後半から1980年代にかけての
日本のパンク~ニューウェイヴ・ムーヴメントを紹介する!

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ』で描かれた東京ロッカーズ周辺、
そして映画では描かれなかった関西のシーン、ノイズの誕生、アンダーグラウンドの大いなる拠点として機能した、吉祥寺マイナー、京都大学西部講堂、法政大学「学館」のこと。
当時の貴重な写真、ヴィジュアル、永遠の名盤たち、主要レーベルガイド、その多様な作品の魅力、埋もれた歴史、そして当事者たちの「いま」を語る永久保存版です。


菊判220×148/224頁
表紙写真:地引雄一/表紙アーティスト:アーント・サリー

■J-Punk / New Wave概史(松山晋也)

■インタヴュー
地引雄一「都市の鼓動の記録者」
s-ken「粋とヒップを追い求める江戸っ子ロマンティシズム」
小嶋さちほ「Outside Of Society──阿修羅のごとく」
巻上公一「最前線で歌い演じてきた〝声〟の半世紀」
NON「今のわたしが、今の歌をうたう」
渡辺正「フジヤマという灯台で」

■地引雄一フォト・ギャラリー

■Timeless Masterpieces名盤30選
小堺雄三 /立石太郎/中山義雄/野田茂則/福島恵一 /湯浅学/野田努/松山晋也

■極私的名盤40選 
JOJO広重/田畑満/掟ポルシェ/吉田豪

■林原聡太チラシ・ギャラリー

■重要レーベル・ファイル(剛田武)

■コラム
大熊ワタル「東京の地下帝国 吉祥寺マイナーと法政大学学館」
石橋正二郎「西部講堂物語」
イアン・F・マーティン「J-Underground 混沌と革命」
美川俊治「ジャパノイズの発明」
岸野雄一「川向こうの秘密結社 京浜兄弟社」
工藤冬里「東京‐アメリカ‐イギリス‐愛媛 地下水脈のうた」
東瀬戸悟「ヴァニティと阿木譲」

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
Rakuten ブックス
◇7net(セブンネットショッピング) *
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◇Yahoo!ショッピング *
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TOWER RECORDS
disk union
◇紀伊國屋書店 *
MARUZEN JUNKUDO
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◇Honya Club *

全国実店舗の在庫状況
◇紀伊國屋書店 *
◇三省堂書店 *
丸善/ジュンク堂書店/戸田書店、ほか
◇有隣堂 *
◇くまざわ書店 *
◇TSUTAYA *
大垣書店
◇未来屋書店/アシーネ *

* 発売日以降にリンク先を追加予定。

 90年代初頭のニューヨークのクラブ・カルチャーといえば、それはもう、すごかったことだろう。東京もそれなりにすごかったし、そこにはいろんなスタイル/規模/年齢層が混じっていたので、ひとまとめにすることはできないが、各都市ごとの特徴があった。
 「クラブ・キッズ(Club Kids)」とは、「なんでもあり」の時代のNYのクラブ・カルチャーにおいて、ひときわ異彩を放っていた集団の名称。〈ライムライト〉や〈トンネル〉といった伝説的クラブを拠点とし、過激なファッション(ドラァグクイーン文化とパンクを融合させたような、派手なメイク、派手なコスチュームで知られる)と過激な言動によって、文化的な影響力をほこった「夜遊び集団」である。人種やジェンダーを解放したその態度表明は、社会に馴染めない若者の受け皿にもなった。しかしその最後はあまりにも悲しく……クラブ・キッズの伝説は、映画『パーティ・モンスター』にもなっている。

 今月、その軌跡を記録した本、『90年代ニューヨーク・ダンスフロア:ファッション・アート・ジェンダーを解放した「クラブ・キッズ」の物』(DU BOOKS)が刊行された。「クラブ・キッズ」のメンバーだった著者による、480ページにおよぶ膨大な写真と証言で構成された大著で、その当時のNYクラブ・カルチャーの栄枯と、この伝説的集団のはじまりから終焉までが詳細に描かれている。
 70年代から続くNYゲイ・カルチャーの歴史、伝説的ヴェニュー、そして文化全盛時代のNYの夜、『RE/Search』などその時代のサブカルチャーの思想的背景にあるもの、ハウスからテクノへの展開……などなど、そして、なぜ彼らは、ドラッグや狂乱のなかに救いを見出していったのかが真摯に語られている。
 NYのディープなアンダーグラウンドを知るには、メル シェレンの『パラダイス・ガラージの時代』やティム・ローレンス の『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ 』と並ぶ好著。お薦めです。

『90年代ニューヨーク・ダンスフロア:ファッション・アート・ジェンダーを解放した「クラブ・キッズ」の物語』
ウォルトペーパー(著)
Jun Nakayama(訳)
DU BOOKS
Amazon

Teresa Winter, Birthmark, Guest,A Childs - ele-king

 窓の外を眺めながら、メモを読む。1月末、アメリカは150機以上の軍用機/特殊部隊を投入、ベネズエラの大統領官邸や軍事施設を爆撃。マドゥロ大統領とその妻を拘束、そのまま米軍機でニューヨークへ移送。1か月後の2月末、アメリカとイスラエルは、イラン国内の500カ所以上の目標を一斉に攻撃。ハメネイ師はピンポイントで殺害。イラン側の発表によれば、3月5日の時点で死者は1200人超。スペインのサンチェス首相は、3月4日のテレビ演説でアメリカを非難。スペイン国内にあるアメリカ軍との共同運用基地をイランへの攻撃に使用することを明確に拒否。スペインからの全輸入/貿易を停止するよう指示したトランプ大統領に対し、同首相は「報復を恐れて、世界にとって悪影響を及ぼす行為に加担することはない」と反論。ページをめくる。アメリカ開催予定のワールドカップ。ブラッター元FIFA会長は1月末、同大会の「ボイコット支持」を表明。ドイツサッカー連盟副会長のオケ・ゲトリッヒは、W杯のボイコットを真剣に検討すべきときが来たと語る。インファンティーノ現FIFA会長は、昨年、トランプ大統領にFIFA平和賞を授与。その賞は、今回初めてもうけられたもの。追記。イラン政府は湾岸/中東の親米諸国に報復攻撃。「徹底抗戦」を表明する。イラン女子代表チームは「女子アジアカップ2026」にて国歌斉唱を拒否。彼女たちはいまでもヒジャブの着用義務が強いられている。
 
 「あなたに平和はありますか?("Do You Have Peace?")」とは、デモのスローガンではない。ブリストルのJabuのレーベルである。このレーベル&コレクティヴは、とくに目立つことはないし、こんなレーベル名を持ちながら、音楽性はハードでもないしラウドでもない。まったく威勢がよくない。そうしたやる気満々の文化からは積極的に離れている。政治的/文化的躁状態とは距離をおいて、DYHPは、内省的かつ静謐な、暗く沈んでいくダブ的音響加工のスロウコアに向かっている。『メザニーン』『マクシンクェーイ』『ダミー』、そして『ヤング・エコー』直系のブリストル・サウンド。フライング・ソーサー・アタックのアンビエントを横目で見ながら、コクトー・ツインズとディス・モータル・コイルのエーテル系ドリーム・ポップを吸収し、21世紀のドローンとダーク・アンビエント、モダン・クラシカルもここに合流している。

 本作、つまりJabuの3人──O$VMV$M/ヤング・エコーのエイモス・チャイルズ、アンチボディのバースマーク、ヤング・エコーのゲスト(ジャスミン・バット)──、そしてリーズからやって来た神秘的な音楽家、テレサ・ウィンター(〈The Death Of Rave〉からの諸作で知られる)を加えた計4人によるセッション音源には、半開きになったカーテンの、窓の外から月光が部屋を照らす床の、ひんやりとした感覚までも伝わってくるような親密さがある。

 わかっただろう? 立ち上がるな。寝転べ。

 それにしてもだ。これがギグの後の「一夜限りのレコーディング」であり、オーヴァーダブ/編集なしの、即興演奏の実況録音であったことが信じられない。計4曲には、ゆっくりと霧状に広がるその儚いサウンドの魅力が漂っている。時間が経つにつれ、4人はより深いムードのなかに入っていく。眠たげに混ざり合う彼女たちの歌声とベース、ドローン、スローモーション、シロップのようなリヴァーブ……催眠的な領域がアルバムの後半には待っているが、心配無用、演奏は、最後まで崩壊することはない。
 意図的な情報の遮断、重力のない夢。このアルバムは、世界の混沌とは精神的な距離をおいて、リスナーをあらゆるものから解放された、どこか別のところに連れていくだろう。言うまでもないことだが、この即興性、不透明さ、幽霊のようなため息は、今日の文化的躁状態に対する、いかにもブリストルらしいロマン主義的対応である。

 こうしたダークサイドは、スコットランドのグラスゴーにも広がっている。昨年レーベル・コンピをリリースした〈blush〉、夜のしじまのジャズ・アンビエントを特徴とする〈Night School〉、それから〈Somewhere Press〉も面白い作品を出している。つい先日は、民話やフォークロアをテーマにしたコンピレーション『The Black Hill, The Glass Sky』が話題になっているが、このプロジェクトにもテレサ・ウィンターは参加し、1曲提供している。そして、「エロイーズ・ベネット(イギリスの現代美術の研究者)の“場所と音響”に関するテキストへの、アーティストからの集団的なアンサー」としてまとめられたそのアンソロジーのコンセプトは、"Haunted landscape"、すなわち「かつてそこにいた人びとの気配や記憶が染み付いている風景」という「ホーントロジー(失われた場所の記憶)」にある。いかにもUKらしい、あらたな「音の生態系」なのである。

 作戦成功。彼は発見した。邪魔物は「ただ消せばいい」。会話は必要なし。我々には力がある。笛を吹くな。ルールなどないのだから。……暗くなるのを待とう。ワインとシガーは用意した。ひっそりと、この音楽的対話を、静かに楽しもうじゃないですか。床に座って。

 

Jeff Mills with Hiromi Uehara and LEO - ele-king

 ジェフ・ミルズが手塚治虫「火の鳥 未来編」からインスパイアされ、完全オリジナル作品を制作することになった。一夜限りの公演として実現されるその作品では、3D技術を駆使した特別な演出がなされ、ゲストとしてジャズ・ピアニストの上原ひろみ、箏奏者のLEOを迎える。
 公演日は5月17日(日)。会場は、高輪ゲートウェイ駅に新しくできるミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」(3月28日開館)内のスペースのひとつ、地下にある「Box1000」。チケットの先行発売は本日3月11日18時より。

ジェフ・ミルズ presents
原作=手塚治虫「火の鳥 未来編」一夜限りの特別公演

3月11日(水)18時よりチケット特別先行販売開始
出演者からのコメントも到着

時空を超えて蘇るサウンドスケープ
火の鳥 ー エレクトロニック・シンフォニカ ー
Special Guests 上原ひろみ and LEO

2026年3月、TAKANAWA GATEWAY CITYに新たに開館する文化の実験的ミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」。その開館記念プログラムとして5月17日(日) に開催する『ジェフ・ミルズ presents 火の鳥 ーエレクトロニック・シンフォニカ ーSpecial Guests 上原ひろみ and LEO』のチケットが3月11日(水)18時より特別先行販売されます。
限定枚数の指定席は、本公演書下ろし楽曲収録のピクチャー盤LP【Jeff Mills / Phoenix - Future】がセットになったSチケットと、ピクチャー盤LPと限定Tシャツに加え、公演後のジェフ・ミルズサイン会への参加特典がついたプレミアムチケットとなります。

先行販売リンク:https://w.pia.jp/t/mon-jeffmills/
プレミアムチケット(2階指定席)25,000円 ※ピクチャー盤LP+限定Tシャツ+Jeff Millsサイン会参加券
Sチケット(2階指定席)18,000円 ※ピクチャー盤LP付き
Aチケット(1階スタンディング)10,000円
U25チケット(1階スタンディング)7,000円

本公演は、手塚治虫の代表作「火の鳥 未来編」に着想を得て、ジェフ・ミルズが制作する完全オリジナル作品。「永遠の命」や「輪廻転生」という壮大なテーマを軸に、物語を音楽で紡ぎ出します。
共演には、世界的ピアニスト・上原ひろみと、箏の次世代を担うLEOを迎え、エレクトロニック、ピアノ、伝統楽器が交錯する唯一無二のアンサンブルを披露。原作が持つ普遍的なメッセージを、現代の新たな「音の物語」として描き出します。
壮大な音のコラボレーションとともに公演を盛り上げるのは、この日限りの映像と3D技術を駆使しした特別な演出。売り切れ必須な一夜限りの奇跡のステージを、ぜひ新施設「MoN Takanawa」でご体感ください。

<Jeff Millsコメント> 総合プロデュース、エレクトロニクス、パーカッション
環境の相転移と手塚治虫の、一見遊び心のあるイメージこそが、私たち人間がそれを表現する最良の方法だ。『未来編』の物語のように、そこには希望を指し示す要素が確かに存在する。

<Special Guest 上原ひろみコメント> ピアノ
「火の鳥」の世界観の中、ジェフ・ミルズさんが、私、そして箏のLEOさんと創る宇宙、今からとても楽しみです。新しい美術館の匂いを感じながら、その瞬間にしか生まれないものを掴みに行きたいと思います。

<Special Guest LEOコメント> 箏
ジェフ・ミルズさんが描く壮大なサウンドスケープの中で、箏という楽器の音がどのように響くのかとても楽しみです。上原ひろみさんと同じ舞台で「火の鳥」の物語を音で紡げることを光栄に思います。

イベント詳細:
MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥連携企画
ジェフ・ミルズ presents 火の鳥 ーエレクトロニック・シンフォニカー
Special Guests 上原ひろみ and LEO

手塚治虫「火の鳥 未来編」に着想を得て、ジェフ・ミルズが制作する一夜限りの完全オリジナル公演。永遠の命、輪廻転生をテーマに据え、火の鳥の物語を壮大な音楽で奏でる。

【日程】2026年5月17日(日)
【会場】Box1000
【原作】手塚治虫「火の鳥 未来編」
【主催】MoN Takanawa: The Museum of Narratives、TBS
【企画制作】Axis Records、U/M/A/A Inc.
【企画協力】手塚プロダクション

チケット販売スケジュール詳細:
<抽選販売>
チケットぴあ:ぴあ特別先行販売:3月11日(水)18時00分~3月15日(日)23時59分
チケットぴあ:いち早プレリザーブ:3月18日(水)18時00分~3月22日(日)23時59分
抽選販売リンク:https://w.pia.jp/t/mon-jeffmills/
<先行販売>
【公式】MoN Takanawaチケット(会員限定):3月27日(金)10:00
MoN Takanawa公式プレイガイド ゲスト販売(Fever):3月27日(金)10:00
先行販売リンク:https://montakanawa.jp/programs/jeff_mills/
TBSチケット:3月27日(金)10:00
先行販売リンク:https://tickets.tbs.co.jp/jeff_mills/

チケット価格:
プレミアムチケット(2階指定席)25,000円 ※ピクチャー盤LP+限定Tシャツ+Jeff Millsサイン会参加券付き
Sチケット(2階指定席)18,000円 ※ピクチャー盤LP付き
Aチケット(1階スタンディング)10,000円
U25チケット(1階スタンディング)7,000円

<Jeff Millsプロフィール>

1963年アメリカ、デトロイト市生まれ。
現在のエレクトロニック・ミュージックの原点ともいえるジャンル“デトロイト・テクノ”のパイオニア的存在。
マイアミとパリを拠点に1992年に自ら設立したレコードレーベル<Axis(アクシス)>を中心に数多くの作品を発表。またDJとして年間100回近いイベントを世界中で行っている。
ジェフ・ミルズの代表曲のひとつである「The Bells」は、アナログレコードで発表された作品にも関わらず、これまで世界で50万枚以上のセールスを記録するテクノ・ミュージックの記念碑的作品となっている。

エレクトロニック・ミュージック・シーンのリーダーでありながら、クラシックやジャズなど様々なジャンルの音楽界に革新を起こす存在としても世界の注目を浴びている。2005年初演、ミルズの代表曲をクラシック化したオーケストラ作品Blue Potentialを始め、日本人で初めてスペースシャトルに宇宙飛行士として搭乗した、日本科学未来館元館長の毛利衛氏との対話から生まれた作品「Where Light Ends」や、ミルズがクラシック用に書き下ろした作品「Planets」が日本でも公演されている。音楽のみならず近代アートのコラボレーションも積極的に行っており、パリ、ポンピドゥーセンターやルーブル美術館内でのアートインスタレーション、シネマイベントなど数多く手掛けている。
最近では、アフロビートの先駆者、トニー・アレンとの共演から始まったインプロビゼーションプロジェクトのTomorrow Comes The Harvest はキーボード、タブラ、フルートなど多彩なミュージシャンとともに精力的に全世界をツアー中である。
このような活動が評価され、2017年にはフランス政府よりオフィシエの称号を元フランス文化大臣のジャック・ ラングより授与された。
またコロナ禍中には、若手テクノアーチスト発掘支援のためThe Escape Velocity (エスケープ・ベロシティ)というデジタル配信レーベルを設立。60作品をリリースし、若手アーチストにコミュニケーションと発表の場を与えるのに貢献した。
www.axisrecords.com
https://twitter.com/JeffMillsJapan
https://www.facebook.com/JeffMills
https://www.instagram.com/jeff_mills_official/
https://linktr.ee/jeffmills

<上原ひろみプロフィール>

1979年静岡県浜松市生まれ。16歳の時にチック・コリアと共演。1999年バークリー音楽院に入学し、2003年ジャズの名門テラークより『Another Mind』で世界デビュー。2008年チック・コリアとのアルバム『Duet』を発表。2011年には『スタンリー・クラーク・バンド フィーチャリング 上原ひろみ』で第53回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム」を受賞。2016年上原ひろみザ・トリオ・プロジェクト feat. アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップスとしてのアルバム『SPARK』がアメリカのビルボード・ジャズ総合チャートで1位を記録。2021年「東京2020オリンピック開会式」に出演。2023年映画『BLUE GIANT』では音楽監督を務め、第47回日本アカデミー賞「最優秀音楽賞」を受賞。9月には新プロジェクトHiromi’s Sonicwonderとしてのアルバム『Sonicwonderland』をリリース。アメリカの放送局NPRが企画する人気プログラム「Tiny Desk Concerts」にも出演し話題となった。ニューヨーク・ブルーノートでは日本人アーティストとして唯一20年以上も公演を成功させている。2025年にはHiromi’s Sonicwonderとしての最新作『OUT THERE』をリリース。

<LEOプロフィール>

1998年生まれ。ジャンルを超えたボーダレスな活動で注目を集める箏奏者。
9歳より箏を始め、カーティス・パターソン、沢井一恵の両氏に師事。16 歳でくまもと全国邦楽コンクールにて史上最年少・最優秀賞・文部科学大臣賞受賞、その後東京藝術大学に入学。「情熱大陸」「題名のない音楽会」「徹子の部屋」など多くのメディアに出演。
読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、京都市交響楽団などオーケストラとの共演も多く、2024年にはヨーロッパに招聘されウィーン・コンツェルトハウス、スロヴァキア・フィルハーモニーで現地楽団と共演し好評を博した。
また、箏奏者として初めてブルーノート東京や、SUMMER SONICにも異例の出演を果たしている。
2025年にリリースされた最新アルバム『microcosm』では、フランチェスコ・トリスターノやU-zhaan、林正樹、LAUSBUB、坂東祐大、網守将平、梅井美咲など国内外の多様な音楽家との共演・共作を行うなど、実験的なコラボレーションに積極的に取り組んでいる。
出光音楽賞、神奈川文化賞未来賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞受賞。

<関連公演>

■プログラム概要/チケット情報

MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥
50年前マンガの神様・手塚治虫が、予言し創造した世界「火の鳥 未来編」が2026年、最先端のライブ空間MoN Takanawaで、新たに着彩された原稿、豪華キャストたちとともに、最新のイマーシブ・物語体験として蘇る。

【日程】2026年4月22日(水)~5月16日(土)
【会場】Box1000
【主催】MoN Takanawa: The Museum of Narratives、TBS
【企画制作】MoN Takanawa: The Museum of Narratives、TBS、Bascule Inc.
【原作】手塚治虫「火の鳥 未来編」
【制作協力】手塚プロダクション

大友良英スペシャルビッグバンド - ele-king

 15年を長いと見るか短いと見るかは人によって様々だと思うが、少なくともいまの若者たち、たとえば中学生には15年前の記憶がない。わたし自身、音楽を自覚的に聴くようになったのは14歳の頃だと思うから、いまあの頃の自分のような人間が背伸びしてアヴァンギャルドな音楽を聴いているのだとしたら、そのリスナーには東日本大震災発生時の記憶がないことになる。そう、3.11から15年の歳月が経過した。決して短くない時間が経った。そしてこの間、世界ではさらなる災厄、さらなる惨禍がもたらされてきた。だが時の流れとともに少しずつ積み重ねられてきた物事もある。15年前には思いもよらなかったような「希望」を鳴らす人たちもいる。大友良英率いるスペシャルビッグバンド(OSBB)はそのような響きでわたしたちに未来について考えさせる。

 もともとは劇伴が出発点だった。2013年に放送された連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽を手掛けるためにOSBBのメンバーは集められた。そこに至る経緯を手短に振り返っておきたい。大友良英はゼロ年代の中心的なプロジェクトのひとつだったニュー・ジャズ・オーケストラ(ONJO)を2009年に休止した。その後軸足を移したのは、相前後して進行していた音遊びの会への参加(2005年〜)やアジアン・ミーティング・フェスティバルの開催(同)、インスタレーションの試み(同)、FENの結成(2008年)、ONJTの始動(2009年)、ダブル・オーケストラの立ち上げ(2010年)といった複数のプロジェクトだった。それらのいくつかは「アンサンブルズ(=アンサンブルの複数形)」をキーワードに展開していった。そうしたなかで2011年、3.11を契機にプロジェクトFUKUSHIMA!へと活動の比重が傾くことになる。そこでは阪神・淡路大震災の発生から15年後の神戸を舞台としたドラマ『その街のこども』(2010年、音楽は大友が担当)を参照しながら活動したという。

 3.11以後の大友の活動は「アンサンブルズ」がますます重要なコンセプトとなっていった。というより、一般の参加者と制作するインスタレーションからアマチュアを交えたオーケストラまで、誰かひとりが中心となるのではない、様々な来歴の人びとと共同作業をおこなう「アンサンブルズ」の試みが、3.11以後の混乱した社会において文化活動をおこなう上で大きなヒントとなったのだと思う。そして2013年、『あまちゃん』の音楽を任されることになった大友は、2年前に「アンサンブルズ・パレード/すみだ川音楽解放区」で知り合ったチャンチキトルネエドの全メンバーが合流する形で、劇伴のためのスペシャルビッグバンドを結成した。

 通常であればドラマが終われば劇伴バンドも解散するものだが、スペシャルビッグバンドは活動を継続した。正確には2013年をもって「あまちゃんスペシャルビッグバンド」は解散し、OSBBとして再出発を果たした。大友はOSBBについて「ONJOの続きができるかもしれないと思った」と語ったことがある。後期ONJOではジャズ・ミュージシャンだけでなく、いわゆる音響的な即興演奏家やアジア近隣諸国の実験的音楽家、音遊びの会のメンバーなど、非ジャズ・ミュージシャンが参加するようになっていた。そのようにONJOで垣間見られた「ジャズ経験者以外の人たちによるジャズ」の可能性を、OSBBに見たのだという——チャンチキトルネエドのメンバーはクラシックの素養を持つ藝大卒の演奏家たちだった。新宿ピットインがオープンから50周年を迎えた2015年、OSBBはファースト・フル・アルバム『Live at Shinjuku PIT INN』をリリース。『あまちゃん』の劇中曲も含みつつ、チャーリー・ヘイデンやエリック・ドルフィーなど、ONJO時代のレパートリーを新たな解釈で演奏してみせた。コロナ禍に見舞われた2022年には初のスタジオ・アルバム『Stone Stone Stone』を発表し、多数の気鋭ゲストを交えるとともに「あまちゃんバンド」から脱した新たな段階に到達したことを示した。

 さらに2024年、OSBBは初の欧州7カ国を巡るツアーを敢行。楽曲の演奏だけでなく、指揮を駆使して即興的なアンサンブルを創出するという大友が長年取り組んできた試みをバンド・メンバー全員が入れ替わりで指揮者となる形で導入し、唯一無二のラージ・アンサンブルへと成長を遂げた——その記録は翌年にライヴ盤『Live at Cafe OTO 2024』として世に放たれることになる。そして勢いを増したOSBBが新たに挑んだのが、組曲『そらとみらいと』のレコーディングだった。同組曲はもともと指揮者・佐渡裕からの委嘱を受けて大友が作曲、江藤直子、加藤みちあき、荻原和音が編曲し、阪神・淡路大震災から30年の節目となる2025年1月に兵庫芸術文化センター管弦楽団によって初演された25分ほどのオーケストラ作品だった。それをOSBBがあらためて編曲し、50分近くにおよぶ大作へと発展させた。

 『そらとみらいと』は3つの楽章から成っている。第1楽章「レクイエム」は場を鎮めるような鈴やおりんの静謐な響きから幕を開ける。じっくりと時間をかけながら、次第に管楽器の持続音やピアノの打音などが重なり、徐々にクレッシェンドしていく。美しいハーモニーが形成されると、ふっと音が消え、木管楽器が穏やかな速度で印象的なメロディを奏で始める。近年の大友良英のレパートリーとなっている「空が映えた2022年11月18日水曜日」をベースとしたじつにシンプルなメロディだ。大きく深呼吸するようにメロディが繰り返され、ピアノやギターがまるで浮遊する魂のごとく漂うと、低音が力強いリズムを刻み始め、ドラムやパーカッションも入り、アンサンブルが豊かな厚みを増していく。続く第2楽章「Life」は指揮による集団即興のパートだ。ここでは佐渡裕がゲスト指揮者として参加している。強烈なアタック、不定形なサウンドの変容、突如として流れ出すリズミカルなビート。自在に変化するアンサンブルはカオティックにもなればときには調和をも生み出す。大友のノイズ・ギターが炸裂する一方、ストレンジなグルーヴで身体を揺さぶりもする。いまここで生まれ落ちた剥き出しの音楽。そして第3楽章「祭りと空と」で16分を超える壮大なクライマックスへと向かう。「福島わらじまつり」の笛のフレーズを取り入れた祭囃子から始まり、骨太なベースを合図に即興的アンサンブルが躍動し始めると、第1楽章で聴いたあの印象的なメロディが、今度は希望に満ち溢れた晴れやかなサウンドで高らかに奏でられる。同一のメロディがこれほど変わるのかと驚いた。さらにそこに大河ドラマ『いだてん』のメインテーマから引用したメロディが紛れ込み、記憶を撹拌するようにコラージュされた、しかし有機的なビッグバンドのアンサンブルが、祝祭の興奮を高めるようにして場を盛り上げていく。ピークに達したところで一転、穏やかなメロディへと切り替わるが、そこからさらに祭囃子を経て奇怪な音色が暴れ出し、最後は三三七拍子で大団円を迎えるのである。ラスト・トラックの「Epilogue」では「福島わらじまつり」のフィールド・レコーディングと思しき響きが幻影のように姿を現し、そこに被さるように音頭のリズムが奏でられ、あたかも終わらない祭りが延々と続くかのようにフェードアウトしていく。

 「鎮魂、即興、そして祭り」がテーマだという。それは大友良英がとりわけ3.11以後に力を入れてきた活動の足跡でもあるだろう。その意味で『そらとみらいと』はまさに集大成と言っていい作品だ。だがたんに大友の個人史がまとめられたというわけではない。彼の活動そのものがつねに社会と接してきたからである。ではその活動とはどのようなものであったのか。大友は2025年10月18日に放送された『JAMJAMラジオ』のなかで、ゼロ年代半ば頃に現在へと繋がる「原点」が生まれたと説明しつつ、その後の活動について「コミュニティ運動」という言葉で振り返っている。誰かひとりが全ての決定権を持つのではなく、あるコミュニティのなかで、プロフェッショナルもときにはアマチュアも交えて協働し作品を制作することを繰り返してきたのだと。それはたとえば音遊びの会で知的な障害のある人たちとワークショップをおこなうことであったり、山口情報芸術センターや水戸芸術館でそれぞれの地域の人たちとコラボレートしながらインスタレーションを制作することであったり、プロジェクトFUKUSHIMA!で見知らぬ人びとと盆踊りを踊ることであったりしただろう。2015年から始まったアンサンブルズ東京では市民参加型のワークショップで指揮による集団即興の試みをさらに発展させていった。そのように社会と接する様々なコミュニティにおける協働なくしては、『そらとみらいと』も生まれなかったのではないか。

 3.11の記憶を持たない世代は時を経るにつれて増えていく。いかにして記憶を継承するかということがいまを生きるわたしたちの課題である。もちろんそれだけを取るならば手段は様々にあるだろう。言葉、映像、モニュメント——音楽はどちらかというと記憶を形として残すことには不向きで、鳴り止めば空中に消え去って忘れられてしまう。だが音楽を聴くには一定の時間が必要であり、裏を返すなら、わたしたちは音楽を聴くことによって何がしかを感じ取り考えるための時間を確保できる。『そらとみらいと』を聴きながら、たとえ当時の記憶がなかったとしても、3.11とそれ以後に起きた様々な出来事について思いを巡らすことができる。未曾有の大震災から15年ほど経ってこのような響きが生み出されたのだ。さらに15年後の未来にはどのような空が広がっているだろうか——。

「僕だけじゃなくて、誰も全部は見られないというのが、やっぱりいいな」

 大友良英は小田原・江之浦測候所で開催したイベント「MUSICS あるいは複数の音楽たち」を振り返ってそのように呟いた。普通、できることなら、全体を見渡したいと思うものである。木を見て森を見ず、と言うように、全体が把握できないと物事の本質が見極められないような気がしてしまう。何か大事なことを見逃してしまっているのではないかと不安に駆られる。それでも誰も全体を把握することができないことにポジティヴな意味合いを見出すとしたら、それはどのようなことなのだろう。


11月3日(月)、江之浦測候所。撮影:田村武

 去る2025年11月初旬、アジアン・ミーティング20周年記念スペシャルが各地で開催された。大友良英が2005年に立ち上げ、その後dj sniffとユエン・チーワイがキュレーターとなって継続してきたアジアン・ミーティング・フェスティバルの詳細については、これまで様々な場所で書いてきたので、ここでは繰り返さない。一言だけ説明しておくならば、アジアン・ミーティング・フェスティバルとは、アジア諸地域で活動する様々なタイプの実験的ミュージシャンたちを集め、即興を一つの鍵となる手法として用いながら、音楽的交流を行うプロジェクトのことだ。開催を経るにつれて規模が拡大し交流も広がりと深まりを見せていったプロジェクトだったものの、コロナ禍も相俟ってニーゼロ年代に入るとともに休止状態となっていた。そうした状況にあるアジアン・ミーティングを再起動するべく、20周年の節目を迎えた年に大友があらためて狼煙を上げた。このうちわたしは11月3日の江之浦測候所と11月6日の新宿ピットインでの公演へと足を運んだ。

 江之浦測候所での公演は、2022年から大友が同地で開催してきた「MUSICS あるいは複数の音楽たち」と題したイベントの第3弾を兼ねておこなわれた。江之浦測候所は現代美術作家・杉本博司が手掛けた、それ自体がアート作品でもあるような特異な施設である。100メートルの長大な廊下状のギャラリー、冒険心を擽るトンネルのような空間、石舞台、光学ガラス板を木琴のように敷いた舞台などがあるほか、海に面した斜面を下ると蜜柑畑や竹林が広がる。歩くだけでも景色の移ろいが楽しめ、鳥の囀りやカラスの鳴き声、航空機が過ぎる音、遠くを行く列車の走行音など、開けた空間ならではの豊かなサウンドスケープがある。パフォーマンスする演奏家にとっては、普段のライヴハウスとは勝手が異なり様々な制約がある一方、アプローチ次第ではこの場所ならではの表現ができる可能性を秘めた挑戦的な環境だと言えるだろう。

 わたし自身はこれまで2022年、2024年と「MUSICS あるいは複数の音楽たち」を観てきたため、3度目となる今回は、場所そのものに対して新鮮な驚きを期待していたわけではなかった。むしろ、どこへ行けばどんな響きが得られるのか、ある程度把握しているつもりでもあった。加えて11月3日は、公演前に竹林エリアでスズメバチが発生する不測の事態があり、限られた安全なエリアでのみパフォーマンスがおこなわれることになった。ギャラリーやトンネル、屋外のいくつかの舞台といった比較的行き来しやすい施設に限定されたことから——それでも一望できない広さはあるものの——、なおさら「面白そうな空間」を狙って観て回ろう、などと考えていた。だが開始早々、そのような邪な考えは打ち砕かれることになる。


11月3日(月)、江之浦測候所。撮影:田村武

 パフォーマンスはまず石舞台周辺で始まった。気づけば始まっていた、と言った方が正確かもしれない。打楽器を微かに鳴らす石原雄治、敷砂を足で擦る松本一哉、ゴングを引き摺る大友良英。樹下でスツールに腰掛けたイェン・ジュンは虚ろな表情で砂を拾ってはステンレスボトルのようなもの目掛けて投げ続けている。石舞台には吉増剛造が鎮座しており、Sachiko Mは四角錐のピラミッド型チャイムを鳴らして歩く。リュウ・ハンキルはショルダーバッグよろしく抱えたスピーカーから猛獣の唸り声のような音を発している。ふとフィードバック音のようなものが聴こえてくる。細井美裕と岩田拓朗によるインスタレーションのようだ。しばらくするとパフォーマーたちは思い思いの場所へと散らばっていった。

 何箇所か、ミュージシャンが好みそうな空間があった。たとえば鋼板で作られた全長70メートルのトンネル。まるで管楽器の内部のようでもあり、実際、ここで発された音は独特の反響を生み、トンネル自体が楽器となって壮大なドローン・ミュージックを聴かせる。そのトンネルへ向かったミュージシャンがいた。わたしは後を追った。だがすぐに音を出すわけではなかった。ただ佇んでいるだけのミュージシャンの姿をしばらく眺めていた。すると全く別の場所から、耳を惹く奇妙な音が聴こえてきた。誰かがセッションしているのだろうか。トンネルの中からは見えない。すぐに音の鳴る方へと向かった。だが着いたときにはすでにパフォーマンスが終わっていたようで、それらしき姿は確認できなかった。それどころか今度はトンネルの中から興味深い響きが聴こえてきた。

 しまった、と思った。同時に、やはり、面白そうな出来事だけを狙い撃ちして追いかけることは不可能だと悟った。野外フェスのように目当てのステージを効率よく観て回ることなどできないのだ。そう思った瞬間、いまここにいることがとても自由であるような気がした。多くの見落としがあるかもしれない。大層盛り上がった場面をいくつも聴き逃しているかもしれない。だが誰もがそうであるならば、どこへ行こうとも自由なのだ。足を運んだ先で偶然起きた出来事を受け入れればいい。その積み重ねがこの日のイベントの個々別々な体験を形成する。来場者の数だけあるそうした個別の体験を集めたところで、おそらく、それは全体を構成することにもならないだろう。


11月3日(月)、江之浦測候所。撮影:田村武

 開演から2時間半ほど経ち、パフォーマーたちは光学硝子舞台に集まってきた。初めはダンサーの小暮香帆が舞台にひとりで立ち、相模湾を臨む絶景をバックに踊りを披露していた。次第にひとりまたひとりとパフォーマーが舞台に上がり、集団での緩やかな即興演奏を行なった。ほぼ全ての観客がこの舞台を眺めていたことだろう。広大な江之浦測候所の様々な場所で繰り広げられていたパフォーマンスを個々別々に体験してきた観客は、最後、この舞台上での集団即興の光景を共有する。バラバラだった景色が束の間の重なりを見せる。石舞台で始まり光学硝子舞台で終わる、まるでテーマで始まりテーマで終わるジャズのような構成。ただしその中間部はどこまでも自由で誰も把握し切れないほどの広がりを持つようなものとしての。

 誰も全体を把握できないイベント。だがそもそも全体を把握するとはどういうことなのか。大友はそれを「録音」的な思考として説明する。たしかにそうだ。「面白そうな出来事」だけを追いかけようとしていたわたしは、どこかでそれを特定の視点——すなわち集音するマイク——によって捉えられる記録可能なイベントとして考えていた節がある。大友は「いまの音楽って、基本的には皆の頭の中では録音できる前提になっているでしょう。コンサートも録音できるようなものが前提になっているけど、そうじゃないものをやりたい」と「MUSICS あるいは複数の音楽たち」について語る。

「録音も否定しないよ。もちろん大好きなんだけど、でも、録音って音楽の中のごく一部でしかない。いま、録音しないと音楽って評価されないというか、評価軸に乗りにくいと思うんです。けれどもそれは、昔の西洋音楽で言えば、譜面じゃないと評価軸に乗らないのと同じぐらい、録音が不自由なものになっているということでもある。別にそれへのアンチで作ってるわけじゃないけど、少なくとも『MUSICS あるいは複数の音楽たち』に関しては、そういう視点では一切評価軸には乗らないというか。録音してもいいけど、全然違うものになっちゃう」(大友良英)

 こうした全貌が把握し難い非記録的なアプローチは、新宿ピットインでのアジアン・ミーティング20周年記念の公演でも試みられた。11月6日、ピットインの会場は通常のようにステージと客席が一方通行的に分かれたセッティングではなく、会場内の至るところに楽器が置かれ、それらミュージシャンの持ち場を取り囲むようにステージの上にも下にも客席が設置されていた。座る場所によって目の前で演奏が見えるミュージシャンもいれば、音しか聴こえてこないミュージシャンもいる。1stセットではデュオ〜トリオの小編成による短いセッションを4つ行い、2ndセットでは全員が参加した集団即興をおこなった。むろん江之浦測候所に比べれば、ひとまずは全員の音を聴くことができるという意味で「全体」が把握できはする。

 だがたとえばわたしが座った場所からはトランペットの類家心平とターンテーブルのdj sniffがよく見え、このふたりの演奏が特に強烈だったのだが、それは手元まで見える位置で体験したから印象が強かったとも言えるかもしれない。座る場所が異なればライヴの印象はまた違っていたことだろう。視覚的な体験としてもそうだし、聴覚的にも——いわば異なるミキシングで聴くように——それぞれの観客にとって別様の体験をもたらしたと思われる。先ほど「全体」と書いたが、それは出来事の総体ということではなく、ピットインという空間を来場者同士で「共有」していたと言った方が正確だろう。2ndセットは映像が配信されていたが、映像では記録し切れない要素が現場には多々あった。


11月6日(木)、新宿ピットイン。撮影:横井一江

 こうも言い換えることができるだろう。演奏者や観客それぞれに出来事の中心があったのだと。ただし単にバラバラな体験がもたらされたのではなく、全体としてひとつの同じイベントを共有していた。何かひとつのことを全体で描いているが中心はひとつではない、そのような試みは、アジアン・ミーティング・フェスティバルがテン年代を通じて磨き上げてきたひとつの音楽実践のフォーマットであった。以前、2017年に札幌で開催されたアジアン・ミーティング・フェスティバルを評して松渕彩子が「中心を持たない円を描く」と記していたが、これは言い得て妙だと思う。全体としては円を描いている。だがそうでありながら中心を持っていない。むしろ多数の中心がある。多数の中心があり、誰も全体を掴めない中で、しかしながら全員で何がしかを共有しつつ、全体として何かを作り上げていくこと。

 そもそも人間社会とはそのようにできている、とも言える。というより音楽とは、ある種の人間社会を反映するものである。とりわけ集団即興はプリミティヴな形でそうした社会のありようを映し出す。アジアン・ミーティング・フェスティバルにあっては、国籍もジャンルも違えた、異なる背景を持つ人びとが集まり、時と場に応じて音を介した共同作業をおこなう。あらかじめ用意された再現すべき設計図があるわけではなく、交流を通じてその場で何がしかを設計していかなければならない。中心が多数あることは、こうした共同作業を必ずしも円滑に進めるとは限らない。むしろ衝突や破綻のリスクと隣り合わせである。だがそれこそが人間社会の豊かさでもあるのではないか。

 むろん中心を設けないという大友の試みはいまに始まったわけではない。それどころか大友の活動に一貫した音楽思想であるとも思う。「MUSICS あるいは複数の音楽たち」において録音を前提としない音楽を考えていたことも、生のパフォーマンスに真実が宿るといった現場主義的な発想ではなく、それ以前に、録音偏重の時代に評価軸の中心をズラそうとしたからであるはずだ。そしてそのような複眼的思考はわたしたちがいま生きていくうえであらためて見つめ直すべきことでもある。ひとつの中心、ひとつの価値観、ひとつの原理に大勢が偏りつつある時代においてこそ。

音楽には世界を変える力がある──

混迷きわまる現代日本において、声をあげつづける音楽家たち

[インタヴュー]
マヒトゥ・ザ・ピーポー
寺尾紗穂
Mars89+Miru Shinoda
津田大介
ダースレイダー
春ねむり
DANNY JIN
毛利嘉孝

[特別インタヴュー]
ニーキャップ

菊判220×148/208頁
装丁:大倉真一郎+安藤紫野
表紙写真:野田祐一郎

目次

世界を変える音楽の力(野田努)

[インタヴュー]
Mars89Miru Shinoda 低音で空間を制圧する──Protest Raveのこれまでとこれから(小林拓音/野田祐一郎)
寺尾紗穂 ガラッと変わってしまった世界で、それでも歌いつづける(二木信/川島悠輝)
津田大介 社会全体が不感症になっているいまこそ音楽の力が必要だ(二木信/河西遼)
マヒトゥ・ザ・ピーポー 俺はすごく面白いですね、この流れはすべて、試されてるなと思う(野田努+小林拓音/野田祐一郎)
ダースレイダー 乱世にこそ輝くヒップホップ(二木信/河西遼)
毛利嘉孝 『ストリートの思想』の著者が俯瞰するここ20年の日本の変化(二木信+小林拓音/小原泰広)
春ねむり 沈黙しない音楽(野中モモ)
DANNY JIN そのラップは多くの人びとに勇気を与える(二木信/河西遼)

[コラム]
一声二節三臓のちから──日本の大衆歌が育んできた豊かな想像力(中西レモン)
橋の下でうごめく、新たな自治空間──「橋の下世界音楽祭」の挑戦(大石始)
ECDの軌跡──『失点 in the park』に刻まれた選択と孤独(高久大輝)
2003年、反戦サウンドデモの思い出(水越真紀)
いま台湾から世界が変わりはじめている──台北レイヴ・カルチャーの一側面、〈Urban Legend 1.0〉とSssound Without Borders(二木信)

[特別インタヴュー]
ニーキャップ 彼らがアイルランド語でラップする理由 (イアン・F・マーティン/竹澤彩子)

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Loraine James - ele-king

 ロレイン・ジェイムズが4枚目となるニュー・アルバム『Detached From the Rest of You』を5月8日に〈Hyperdub〉よりリリースする。本名名義としては2023年の『Gentle Confrontation』以来のアルバムだ。今回の新作について本人は「IDMポップ・スター・アルバム」と形容しており、〈Mille Plateaux〉の『Clicks & Cuts』や青木孝允(AOKI takamasa)池田亮司などから影響を受けているという。ゲストとしてミネソタのヴェテラン・バンド、ロウのアラン・スパーホーク、ティルザ、チボ・マットの羽鳥美保、NYのドラマー、アニシア・キムなどが参加している模様。現在、シドニー・スパンをヴォーカルに招いた新曲 “In a Rut” が公開中だ。


https://hyperdub.net/products/loraine-james-detached-from-the-rest-of-you-cd-vinyl-digital?srsltid=AfmBOorvRhWr4bzGqmdmso3vntBqGyHMnVTeuOKZQSDZoeVIfqOHTO-2

KMRU - ele-king

 エモーショナルでありながら静謐。サイレンス/エモーショナルなアンビエンス。アンビエント音楽における人と社会の関係性の再構築。

 そのような音の痕跡と感触が、KMRUの音楽を特徴づけている。彼の粒子状のアンビエンスは、われわれの意識を「ふたつの状態」へと分けていく。そこにこそ聴取の「創造的進化」があるとでもいうように。
 2017年頃から活動・リリースをはじめ、コロナウイルスが猛威を振るった2020年代初頭に活動を本格化させた彼にとって、「個人と社会」の関係性の再構築は重要なテーマなのだろう。

 ケニア・ナイロビ出身、現在はベルリンを拠点に活動するKMRU(Joseph Kamaru)は、フィールド・レコーディングと電子音響を横断するアンビエント作家として国際的な評価を確立してきた。KMRUは幼少期にギターやフルートなどを手にし、独自のサウンド感覚を培ったという。2018年にはレジデント・アドヴァイザー(RA)で「いま聴くべき東アフリカのアーティスト」のひとりとして紹介された。
 2020年にリリースされた『Peel』は、彼の名を新世代アンビエント・アーティストとして世界に知らしめた重要作である。このアルバムはコロナ禍で制作された。本作『Kin』は〈Editions Mego〉から発表されたアルバムであり、同レーベルからは2作目となる。以降、彼は各地のフェスティヴァルに出演し、アルバムを制作し、ナイロビとベルリンというふたつの拠点を往復してきた。その「身体性」の経験は、彼のアンビエントに漂う「移動と記憶」の感覚を裏打ちしているともいえる。
 2026年の『Kin』と2020年の『Peel』とのあいだには明確な連続性がある。都市の環境音を緻密に織り込み、個と空間の関係をエモーショナルで静謐なアンビエンスによって浮かび上がらせた『Peel』に対し、『Kin』はさらにその主題を深化=進化させている。『Kin』で焦点化されるのは、音と音、人と場所、記憶と時間といった複数のレイヤーが織りなす「関係性」そのものだ。タイトルの「Kin」は英語で血縁や近縁を意味する。だが本作が示すのは、人間関係だけではない。身体と空間、過去と現在、不在と残響。それらが相互に浸透し合うサウンドスケープを構成・生成しているのだ。

 『Kin』の制作はナイロビで開始されたが、レーベル創設者であるピーター・レーバーグ(ピタ)の急逝によってプロジェクトは一時中断を余儀なくされる。1994年に〈Mego〉を設立し、後に〈Editions Mego〉へと再編、実験電子音楽の拠点を築いたレーバーグの存在は、KMRUにとってレーベル主宰者以上の意味を持っていた。その彼の不在は、本作全体に通底する静かな緊張と陰影へと転化しているといえよう。とはいえ『Kin』は喪失を直接語る作品ではない。不在を構造として引き受けつつ、その「震え」を持続させる音楽なのだ。個人的な経験とレーベルの歴史、共同作業の痕跡が深層に沈み込みながら、静かな強度を保つ。
 音響面では、広がりのあるドローン、環境音、微細なノイズ、断片的な旋律が層を成す。だがそれはたんなる空間装飾ではない。冒頭曲 “With Trees Where We Can See” は柔らかな音色で聴き手を包み込むが、内部では絶えず微細な揺れが持続する。音は決して安定しきらず、わずかな歪みを抱えたまま漂う。その不確かさが、本作の感情的リアリティを支えている。
 2曲目 “Blurred” には、フェネスが参加。〈Editions Mego〉の歴史と深く結びつく彼のギターは、ここでは繊細に分解され、グリッチ状のドローンと溶け合う。煌めきは前景に出ることなく、音響組織の内部で淡く光る。世代や地理を超えた対話が、音場のなかに刻まれている。続く3曲目 “They Are Here” は濃密な陰影を帯び、4曲目 “Maybe” では電子的な高まりが波のように押し寄せる。
 さらに5曲目 “We Are” では抽象的なリズムの断片が浮上するが、決定的なカタルシスは提示されないまま、一種の断片性を保ち続ける。楽曲はつねに「途中」にあり、完結を拒む。この姿勢は、音楽を結論ではなく思考と感覚を開くプロセスとして捉えるKMRUの美学を体現しているといえる。ラスト6曲目 “By Absence” は20分を超える長尺曲だ。ここでは「空虚」が「欠如」ではなく、音を受け止める能動的な場として機能する。聴き手は音を「鑑賞する」というより、時間とともにサウンドスケープへ「棲み込む」感覚を得るだろう。
 以上、全6曲。『Kin』を繰り返し聴き込むほどに思うのは、KMRUの時間処理の精緻さである。明確な起承転結を排し、持続のなかで緩やかに変容する。その繊細かつダイナミックな音響生成と時間処理は、本作でもさらに研ぎ澄まされている。その抑制された変化の内部に、濃密な情感が封じ込められているとでもいうべきか。存在と不在が交錯する瞬間、微細な振動が記憶を揺さぶるのだ。

 特筆すべきは、空間設計の巧みさだ。KMRUは音を前景と背景に単純に分割するのではなく、複数の層を半透明の膜のように重ね合わせる。その結果、聴き手は定位のはっきりしない音の「あわい」に身を置くことになる。音像は明確な輪郭を持たず、遠近感も固定されない。まるで都市の残響がゆっくりと拡散し、再び収束する過程を俯瞰しているかのように。この両義的な曖昧さは、移動と離散を経験してきた作家の身体感覚とも共鳴するのではないか。
 『Kin』は過度にドラマティックな展開を避けることで、リスニング体験の質を問い直す。強いフックや明確な旋律に依存せず、聴取者の集中力と想像力に委ねる構造は、ストリーミング時代の消費速度とは対極にある。音は即時的な快楽を与えるのではなく、時間をかけて聴き手の耳に、身体に、心にゆっくりと浸透する。そうした態度は、実験電子音楽の系譜を継承しつつも、内省的で開かれたアンビエントの新たな局面を提示している。その意味では2024年に〈Touch〉からリリースされた『Natur』の作風の延長線上にあるが、本作にはそこにエモーショナルな要素も加わっているように思う。『Natur』が都市論とすれば、『Kin』は個人と都市(街)との関わりを示す都市エッセイとでもいうべきか。
 また、グローバルな電子音楽の地図においても象徴的な位置を占めている点も忘れてはならない。アフリカ出身アーティストの実践が、たんなる地域的エキゾティシズムとしてではなく、批評的かつ構造的な音響探究として提示される点において、『Kin』は決定的だ。ここには単純な自己表象はなく、むしろ音そのものの運動を通して出自や歴史がにじみ出ていく。その控えめでありながら揺るぎない態度は、ポスト・インターネット以降の匿名的な音楽状況に対する応答とも読める。
 このような複雑な文脈のなかで網の目のように鳴り響く20年代のアンビエントである『Kin』(のみならずKMRUの音楽全体)が示しているのは、「アンビエント・ミュージック」の(さらなる/何度目かの)再定義ではないかと思う。
 環境音楽がしばしば「背景」として機能する音楽と理解されてきたのに対し、『Kin』は聴き手の知覚を静かに撹乱する。音は空間認識そのものを揺さぶる媒介として作用し、聴くという行為が受動的な受容から能動的な参与へと転換する。
 そう、『Kin』が提示するのは、関係性の持続可能性への再編成だ。人と人、都市と身体、過去と未来の交錯。それらは断絶ではなく、微細な振動によって結び直されること。音は記憶の容器であり、同時に未来への回路でもある。静寂と共振のあいだで揺れ続けるこの作品は、「聴取」という行為そのものを再編成する力を秘めている。

 静謐さとエモーショナル。都市と個人。この二つを往復するように鳴り響く、美しい粒子のような電子音響。それが『Kin』だ。本作はKMRUのキャリアにおける成熟を示すと同時に、現代実験電子音楽の現在地を示す重要作と位置づけられるだろう。

Free Soul × P-VINE - ele-king

 90年代からつづく名物コンピレーション・シリーズ「Free Soul」が、現在創立50周年を迎えているPヴァインとコラボレーション。新作Tシャツの販売がはじまることになった。「Free Soul」32周年にちなんで各3,200円、Pヴァイン50周年にちなんで全50種という驚異のラインナップ。完全受注生産とのことなので、ご予約はお早めに。

Free Soul × P-VINE presents
50th Anniversary "Free Soul" T-Shirts
In 50 color variations
PRE-ORDER START !

90年代以降、世界中の音楽ファンを魅了してきたコンピレーション・シリーズ “Free Soul” と、Pヴァイン創立50周年を記念したコラボレーション企画として、新作Tシャツの受注販売を開始します。

Pヴァイン内でレコードカルチャーを応援し続けてきた VINYL GOES AROUND が手がけた 2023〜2024年の本企画は、異例のヒットを記録。20代の若い世代から、90年代に青春を過ごした世代まで、幅広い層から高い評価を受けました。

当時は30ヴァリエーションでの展開でしたが、今回は50周年のアニヴァーサリーにちなんだ全50ヴァリエーションをラインナップ。

“Free Soul”の世界観と、Pヴァインが歩んできた50年の歴史を重ね合わせた、特別なコレクションとなっています。また、昨年末逝去された小野英作さん(Free Soul のロゴを手がけたデザイナー)への哀悼の意を込め、襟元に特別なイラストをプリントしました。

本商品は完全受注生産。ボディの在庫にも限りがございますため、数量に達し次第、受付を終了する場合がございます。 この特別な機会を、どうぞお見逃しなく。

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Free Soul × P-VINE Official T-Shirts

サイズ: S / M / L / XL / XXL
販売価格: 3,200yen (With Tax 3,520yen)

受注期間:2026年3月4日(水)10:00〜3月29日(日)23:59
発送時期:4月下旬以降

https://anywherestore.p-vine.jp/collections/50th-anniversary-freesoul-tshirts

■橋本徹さんからのコメント

P-VINEの50周年記念で、三たび企画をいただいたVINYL GOES AROUND制作によるFree SoulロゴTシャツ。今回のオファーと前後して、Free Soulコンピのジャケット・デザインを手がけてくれた、僕の友人で恩人でもあるアート・ディレクター、小野英作が2025年12月21日に亡くなってしまいましたので、ご遺族の承諾を得て急遽、彼のSNSアイコンをタグ下にあしらい、R.I.P.メッセージをプリントさせていただきました。

P-VINE 50周年を祝して50種、Free Soul32周年にちなんで各3,200円。Free SoulもCafe Apres-midiもSuburbiaも今の自分があるのも、小野英作のおかげです。感謝と追悼の思いをこめて。
橋本徹(Suburbia)

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