「!K7」と一致するもの

Loraine James - ele-king

 『Reflection』は、最近ぼくが聴いたクラブ系のアルバムとしてはダントツのお気に入り……なのだけれど、ロレイン・ジェイムズの音楽が生まれた場所はクラブではない。それは彼女が育った北ロンドンにある高層アパートのリヴィングルーム。エイフェックス・ツインやスクエプッシャー、ドリルやグライムを好んで聴いていた彼女が、窓からの景色を眺めながら、母のキーボードを時間も忘れて弾いたことにはじまっている。
 アグレッシヴなデビュー・アルバム『For You And I』(2019)のアートワークに見える高層アパート群が彼女の故郷なのだろう。その1曲目、彼女のもっともずば抜けた曲のひとつ“グリッチ・ビッチ”は、ユニークなリズムを背景に「ビッチ、ビッチ」という声が反復される。ロレインは、黒人女性でありクィアである。彼女はそのアイデンティティと社会との複雑な関わりと向き合いながら、白い文化も黒い文化も男性性も女性性も折衷したエレクトロニカをじつに魅力的に展開している。

 いまやロレイン・ジェイムズはUKエレクトロニック・ミュージック新世代を代表するひとりだ。彼女はAFXやテレフォン・テル・アヴィヴをただエミュレートするのではないし、いたずらにグライムやドリルをやっているわけでもない。喩えるならうまい料理人で、それもずば抜けて腕の立つコック、しかもその料理が満足させるのは耳だけではない。ハートもときには頭も直撃する。
 コロナ禍においては、これまでの人生でもっとも集中的に多くの楽曲を制作したというロレインだが、昨年はグライムを咀嚼した「Nothing EP」やAFXのお株を奪うかのように楽しげな「Hmm」をリリース、リミキサーとしても売れっ子になりつつあるようで、ダークスターやケリー・リー・オーウェン、ジェシー・ランザやクーシェなどの楽曲を手掛けている。そして先週、待望のセカンド・アルバムとなる『Reflection』を出したばかりというわけだ。

 それでは景気づけに“Simple Stuff”を聴いてみよう。

https://soundcloud.com/hyperdub/loraine-james-simple-stuff

 UKガラージのミニマルな変異体で、シンプルに聴こえるがIDM的なアプローチがあり、しかも軽やかでなおかつ官能的という上質なダンス・トラックだ。これもそうとうカッコイイ曲だが、驚くのは早い。この手の曲はもう1曲ぐらいで、アルバムにはいろんなタイプの曲があり、その多くにはラップがフィーチャーされている。で、はっきり言うが、ほとんどそのすべてに心惹かれてしまうのだ。
 ラッパーを起用しての曲がじつに面白い。たとえば1曲、初期フライローをドリーミーに進化させたようなトラックが秀逸で、ややメランコリックでありながら「目指すは山の頂上/その日が来るまでがんばれ」と前向きな言葉を吐くラップとの絡みも絶妙だ。この曲で思わず気持ちが上がったところに、続いてジャングルがズドンと突き刺さる。そして、その重低音とブレイクビートが恍惚と跳ね回ったあとには、くだんのガラージ変異体に繫がると。まあ、たいていのアルバムは3曲目あたりで力尽きてしまいがちなのだが、驚くべきことに『Reflection』は4、5、6曲目において、グローバル・コミュニケーション風の夢見るアンビエントをヒップホップのリアリズムに変換してみせているのだ。そして、ガラの悪いトラップやドリルでさえも彼女にかかるとエレガントな宝石のような輝きを携え、その夢幻めいた音響を特別なものにする。いずれにせよ、評判の良かった前作では控え目だったドリーミーで甘美な響き、あるいは内省やメランコリーが今作のサウンド面における特徴となっている。
 ドリーミーといえば、彼女がファンだというLAのBathsが1曲参加しているが、これは予測されるようにエモい。でまあ、ポップなR&Bヴォーカル曲もトラック自体は悪くはないのだが、ハイレベルな本作においては歌のメロディがやや凡庸でベストな出来とは言えないだろう。しかし総じて言えば、これだけ聴き応えのあるエレクトロニック・ミュージックのアルバムはそうそうあるものではないし、『Reflection』には〈Warp〉のAIシリーズのラップ・ヴァージョンめいた側面がある。しかも……『Reflection』はたんに夢心地でうっとりするだけの作品ではないのだ。警察への怒りと黒人の連帯を主題にしている=つまりBLMとリンクする最後の曲におけるラップとジャジーなトラックとのエモーショナルな融和がみごとなように、90年代エレクトロニカのブラック・ヴァージョンとも言えるのかもしれないなと思ったりしている。そんなわけで、いまは時間が許される限りこのアルバムをただただ聴いていたい。

KMRU - ele-king

 ロンドンとイスタンブールを拠点とする〈Injazero Records〉、音楽プロデューサー/ジャーナリストのSiné Buyukaが設立したレーベルで、マット・エメリーやシー・ディアブなどの音源で知られる尖端的なエクスペリタンル・ミュージック・レーベルである。その〈Injazero Records〉が、2020年に〈Editions Mego〉から傑作アンビエント・アルバム『Peel』を出したことで知られるKMRUの新作アルバム『Logue』をリリースした。これが話題にならないはずがなく、リリース直後からアンビエント・ファンのみならず多くの音楽マニアが本作をSNSで絶賛している。
 しかし『Logue』は完全新作アルバムではない。どうやらKMRUのセルフ・リリースしていた膨大なトラックのなかから〈Injazero Records〉が選び、アルバムにまとめたのである。しかしそのせいだろうか、前作『Peel』より曲調ヴァリエーションに富んでいるし、実質、彼の「ベスト・オブ・ベスト」とでもいうべき仕上がりであり、KMRUというアーティストの多面性が理解できる構成になっている。

 KMRUのキャリアについては『Peel』についてレヴューを書いたときに簡単にまとめたので今回は省略するが、彼はケニア出身・現在ベルリン在住のアーティストであり、もともとはダンス・ミュージックを制作していたアーティストでもある。ゆえにその音楽性がいわゆる「アンビエント・ミュージック」だけに留まるものではないことはわかっていた。じっさい昨年『Peel』直後にリリースされた『Opaquer』でもアンビエントを超えた神話的な音響世界を構築していたのである(人によっては『Peel』よりも『Opaquer』を高く評価したのではないか)。

 当然、『Logue』にも、KMRUのポップ・アンビエント的な側面が存分に収められている。だが一聴すれば即座にわかるが、それは安易に「アンビエントの型」を守るようなものではまったくない。ところどころに導入されているケニア(KMRUの生まれ故郷だ)や東アフリカ周辺で録音されたフィールド・レコーディング音が非常に効果的に用いられているのだが、そのサウンドが反復し、やがてリズムへと変化する。そこにカーテンのように柔らかい電子音がレイヤーされていくような特異な構造になっているのだ。アフリカ音楽とアンビエントの融合とでもいうべきか。
 じじつ、2曲目“Jinja Encounters”、6曲目“11”などは、ダンス・トラックからアンビエント・トラックに変わっていく過程を感じることができる貴重な曲といえるだろう。環境音が反復し、リズムになり、電子音の層と交錯する。いわばアフリカ音楽とアンビエント/電子音楽の融合とでもいうべきサウンドなのだ。ちなみに“Jinja Encounters”は2017年のトラックで、このアルバムの中でも最初期の楽曲という。
 その意味ではプレ『Peel』『Opaquer』とでもいうべきサウンドなのだ。特にアンビエントなムードが濃厚な1曲目“Argon”(2018年の楽曲)、7曲目“Bai Fields”、8曲目“Logue”、9曲目にして最終曲“Points”などの楽曲を聴くとそれを強く感じる。彼のシーケンスはまるで親指ピアノのようにリズミカルであり、独自のアンビエンスを生成している。なかでも“Argon”はそのまま『Peel』『Opaquer』につながっていきそうなムードのトラック(ドローンとシーケンスの絡みが絶妙だ)で、極めて重要な曲に思える。

 しかしである。これが不思議なのだが、どのトラックも、まったく「過去」の曲という気がしないのだ。2020年・2021年を経たコロナ禍の音楽としての存在感を強く感じてしまうのである。これは編集した〈Injazero Records〉の力量かもしれないが、当然、もともとの楽曲に時代を超える力が宿っていたとすべきだろう。
 じじつ、この『Logue』のサウンドを、日々、繰り返し聴いていると、その優雅にして、どこか不穏なサウンドスケープが、まるでこの不安定な世界のサウンドトラックに聴こえてくる。単なるBGM的な「心地良さ」へと至るのではなく、そこかしこに不穏でダークなムードがある楽曲たちなのである。
 なぜこのような「ひっかかり」があるのだろうか。勝手な想像だが、KMRUは自らが安易に消費されるのを拒んでいるように思えてならない。「個」の存在を大切にしつつも、どこか世界の行く末を見据えているような音に感じられるのだ。アンビエント、リズム、反復、融解、空気、感情、世界、現在、未来。 NTSは、KMRUの音楽のことをこう評した。「ザラザラした土着のサウンドからフィールド レコーディングやシンセシスまで、あらゆるものを使用した、知的でアトモスフィアで感情的に実験的な音楽」。まさにそのとおりだ。

 すぐれた音楽は、リアルを捉え、そして良質なSFのように予見的だ。だからこそこの『Logue』はアンビエント・マニアのみならず、ジャンルを超えた広い音楽ファンに聴いて頂きたいアルバムなのだ。ここに音楽の「今と未来」がある、とは言い過ぎだろうか。しかし最終曲“Logue”で展開される「穏やかな最後の光景」のようなサウンドスケープを聴くと、ついそんなことを思ってしまうのである。

梅雨のサウンドパトロール - ele-king

 オリンピック村で配布されるコンドームの数が尋常じゃないと話題になってるけれど、どうせ東京オリンピックを強行するなら、いっそのこと夜のオリンピックも「OnlyFans」(https://onlyfans.com)で強行配信すれば収益もガーンと上がって、電通ウハウハなんじゃないでしょうか。セクシーな行為や姿を見られたい人が自作映像をアップする「OnlyFans」はディズニー女優のベラ・ソーンが主演作のリサーチ目的でアカウントを開設しただけで1日で1億1000万円も売り上げたというから、運営側が夜のオリンピックもコントロール下に置けば赤字も秒で解消でしょう! ああ、オレはなんて国想いなんだろう……つーか、見せたいバカはきっといる(https://twitter.com/onlyfansjapan_)。そうしたことを踏まえて、梅雨のサウンドパトロールです。

1 Cam Deas & Jung An Tagen / That (yGrid/C#) / Diagonal


https://soundcloud.com/diagonal-records/diag059-3-cam-deas-jung-an


https://presentism.bandcamp.com/track/that-ygrid-c

ケンイシイ “Extra”……かと思った。ロンドンから実験音楽系のキャン・ディーズことキャメロン・ディーズがパウウェルのレーベルに移籍し、オーストリーのステファン・ジャスターと組んだビート・アルバムの3曲目。“Extra” のダンス・ビートをゴムのミリタリー・ドラムに置き換え、全体にソリッドな質感で押し切っている。偶然にも大坂なおみを襲った病気と同じ『プレゼンティズム(Presentisim)』と題されたアルバム全部が様々なアプローチで “Extra” をアップデートさせた集合体のようで、オープニングはFKAトウィッグスの最良の仕事のひとつといえる “Hide” に通じるメキシカン・テイスト。


2 Ghost Warrior / Meet At Infinity / Well Street


https://soundcloud.com/oneseventyldn/premiere-ghost-warrior-meet-at-infinity

ハーフタイムなどドラムンベースの刷新に取り組んできたピーター・イヴァニ(Peter Ivanyi)による7作目のEPからタイトル曲。空間的な音処理に長け、ダークな余韻を残すことにこだわってきた彼が作品の質を落とさず、緊張感をアップさせた感じ。快楽的なんだかストイックなんだか。同EPからは複数のリズム・パターンを駆使した3曲目の “They Live” もいい。ハンガリーから。


3 kincaid / Slow Stumble Home / Banoffee Pies


https://banoffeepiesrecords.bandcamp.com/track/slow-stumble-home


https://soundcloud.com/banoffee-pies/premiere-kincaid-slow-stumble-home

ブリストルのニュー・レーベルからキンケイドとシューティング・ゲームに由来するらしいゼンジゼンツ(Zenzizenz)が2曲ずつ持ち寄ったEP「Single Cell」のオープニング。ロンドンのキンケイドは長らくオーガニック・ハウスをやっているという印象しかなかったけれど、ロックダウン下で取り組んだEP「Pipe Up」でハーフタイムらしき “Thirds” を聴いてから急に興味が湧いたひとり。そして、フィールド・レコーディングを素材に用いた “Slow Stumble Home” でダウンテンポというジャンルに新風を吹き込んできた。素晴らしくてナイス・チルアウト。


4 どんぐりず / マインド魂 / Victor


https://dongurizu.com/news/detail/80

本誌でヒップホップ特集を組んだと聞き、僕がたまにユーチューブでチェックしている群馬の二人組をピックアップしてみました。何を伝えたいのかさっぱりわからないけど、なぜか何度も観て(聴いて)しまう。


5 Kamus / Kult / Céad


https://soundcloud.com/cead_cd/kamus-kult?in=yungkamus/sets/kult

グラスゴーからキャメロン・ギャラガーによるアラビック・テイストのトライバル・ダブステップ。延々と宙吊りにされる快楽。かつてのトラップ趣味や妙な情緒の揺れは消し飛び、カップリングの “Wallace” とともにストイックでヒプノティックなパーカッション・ワークがとにかく素晴らしい。


6 ディノサウロイドの真似 a.k.a Dinosawroid-mane / 210212 / Opal Tapes

松本太のソロ・プロジェクト。カセット・アルバム『AOB』から6曲目。アルバム全体はエキゾチックなトライバル・ドラムやフェイク・ファンクなど、いい意味で懐古的なオルタナティヴ・サウンドみたいですが、“210212” はちょっと毛色が変わっていて、伸びたり縮んだりするスライムを音楽に移し替えたような面白い展開。関西の人なのか、自己紹介がふざけていてよくわからない。ネーミングの由来は→https://twitter.com/dinosawroidmane


7 Poté / Young Lies (feat. Damon Albarn) / OUTLIER


https://potepotepote.bandcamp.com/track/young-lies-feat-damon-albarn

パリ在住のポテによるアフロ・シンセ・ポップのデビュー作から8曲目。アフリカ・イクスプレスやブラカ・ソン・システマのレーベルを経て、ボノボが〈ニンジャ・チューン〉傘下に設立したレーベルから。癖がなくて聞きやすい曲が並ぶなか、ジェイミーXXのソロを思わせる “Young Lies” は重そうな歌詞をしなやかに聞かせていく。


8 miida and The Department - Magic hour

元ネゴトのマスダ・ミズキによるニュー・プロジェクト。渋谷系リヴァイヴァルというのか、さわやかで微妙にアンニュイな感じは懐かしのクレプスキュール・サウンドを思わせる。そこはかとなくダンサブルで、ロッド・ステュワート “I’m Sexy” のベース・ラインを思い出すのはオレだけか。


9 Maara / WWW / UN/TUCK Collective

「孤独なインターネット・インフルエンサー」を自称するマジー・マン(Mazzy Mann)による過去2枚のEPを素材としたリミックス・アルバム『MAARA 2​.​5: X MIXES & REMIXES』の冒頭に置かれた3曲のオリジナルから3曲目。リミックス部分は全部いらなかったという感じで、オリジナル曲では嘆き悲しむようなメロディをゴージャスに歌い上げ、確実にスキル・アップが達成されている。カンザス・シティのクイアーやトランスジェンダー専門のレーベルから。


10 Marjolein Van Der Meer & Big Hands / Kitty Jackson / Blank Mind

アラン・ジョンソンやラックなど秀逸なトラックものを連発してきたダブステップのレーベルがロックダウンを機に製作したアンビエント・アルバム『Comme De Loin』の5曲目。レイジーなウイスパー・ヴォーカルを軸にふわふわと頼りなげに漂う薄明のダウンテンポ。はっきりいって、良かったのはこれ1曲。

New Order - ele-king

 ニュー・オーの昨年のシングル曲“”のリミックス集が8月27日にリリースされる。バーナード・サムナーとスティーヴン・モリス、アーサー・ベイカーによるリミックスやadidas SPEZIALとのコラボレーション曲など全13曲が収録。
 なお、現在アーサー・ベイカー(※エレクトロ・ヒップホップの始祖、NOが1983年の「Confusion」でフィーチャーしたことは有名)でによるリミックスがデジタル配信中。


New Order
Be a Rebel Remixed

Mute/トラフィック
発売日:2021年8月27日(金)

Tracklist
1. Be a Rebel
2. Be a Rebel (Bernard’s Renegade Mix)
3. Be a Rebel (Stephen’s T34 Mix)
4. Be a Rebel (Bernard’s Renegade Instrumental Mix)
5. Be A Rebel (Paul Woolford Remix New Order Edit)
6. Be A Rebel (JakoJako Remix)
7. Be A Rebel (Maceo Plex Remix)
8. Be A Rebel (Melawati Remix)
9. Be A Rebel (Bernard's Outlaw Mix)
10. Be A Rebel (Arthur Baker Remix)
11. Be A Rebel (Mark Reeder's Dirty Devil Remix)
12. Be a Rebel (Edit)
13. Be a Rebel (Renegade Spezial Edit)

[Listen & Pre-Order]
https://smarturl.it/BARremixed


 ちなみに昨年3月に予定されていたジャパン・ツアーは、コロナ禍の影響により延期となり、2022年1月に実施されることとなっている。

■ジャパン・ツアー日程
大阪 2022年 1月24日(月) ZEPP OSAKA BAYSIDE
東京 2022年 1月26日(水) ZEPP HANEDA
東京 2022年 1月28日(金) ZEPP HANEDA
制作・招聘:クリエイティブマン 協力:Traffic
https://www.creativeman.co.jp/event/neworder2020/



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 UKの新しいDubレーベル〈Dub Junction〉よりサウンドシステム・ミュージック界の重鎮、Vibronicsとその盟友、ルーツ・レゲエ・シンガーのParavezとの共作による新曲「Healing Of The Nation」がリリースされる。記念すべき第一発目となるこの作品には、今日の日本でサウンドシステム文化を啓蒙するBim One ProductionがリミックスとそのDubミックスで参加。
 こちらは180g重量盤12インチ (400枚限定!)とデジタル配信で販売開始となる。すでにIration SteppasやKing Shiloh, Don Letts, OBFなどがサポート。メッセージ性が高いリリックにヘヴィー級の重低音で、心も身体も揺れること間違いなし!

Legend of the sound system scene, Vibronics, links up with longtime collaborator Parvez, to deliver a much-needed anthem in the face of Babylon.
Bim One deliver remix cuts direct from Tokyo inna future dubwise style.
Limited run of 400, pressed to heavyweight 180g vinyl with mastering from Ten Eight Seven.
Support already from King Shiloh, OBF, Don Letts, Dreadzone, Mungo’s Hi Fi, Iration Steppas, Ras Kwame, Charlart58, Blackboard Jungle + more!

Soundcloud (unearthed sound)


Vibronics & Parvez - Healing Of The Nation + Bim One Remix
Label: Dub Junction Catalog: DUBJ001 Release: 18/06/2021

Preorder/buy link (active from 1st June): dubjunction.com/dubj001
Format: 12” Vinyl (180g), streaming + download

1. Original Mix
2. Dub Mix
3. Bim One Production Remix
4. Bim One Production Dub Mix


Vibronic


Bim One Production

Seefeel - ele-king

 シーフィールが1994から96年にかけて〈Warp〉と〈Rephlex〉からリリースした作品をまとめたボックス・セット『Rupt+Flex 94-96』がリリースされた。
 まず情報的なことを書いていこう。ボックスは以下の4枚のCDで構成されている。

●Disc1……彼らが〈Warp〉から1995年にリリースしたセカンド・アルバム『Succour』、全11曲。
 このディスクについては、1995年にリリースされたオリジナルの『Succour』と同じソースが使われているようだ。ボックスのクレジットにあるマスタリング・エンジニアの名前もオリジナルと同じ(Geoff Pesche)。2002年と2008年に〈Warp〉から出たリプレス盤も同様だった。オリジナルと同様にGeoff Pescheがリマスターした可能性もあるかなと思ったが、念のためダイナミックレンジやピークレベルを見てみると、過去の音源も今回のボックス音源もほぼ同じだったのでおそらくオリジナルのままのようだ。このアルバムをリマスターしなかったのは、マーク・クリフォードがこのアルバムの音に自信を持っているということなのだろうか。
 ちなみに過去のディスクと今回のディスクの違いがひとつだけある。アルバム最後のナンバーの扱いだ。これまでのディスクでは、アルバムは全10曲収録となっており、8分近くに及ぶ長尺の“Utreat”がラストトラックだった。ただし、元素表を模した表ジャケットには、クレジットされている10曲の斜め下に“( )11”という表記があり、アルバムに隠しトラックがあることが示唆されていた。このことは当時から知られていたことだが、今回のボックスセットではトラック10の“Utreat”が5分8秒で終わり、続く部分は“Tempean”のタイトルで2分44秒のトラック11として初めてクレジットされている。

●Disc2……『Succour (+)』と題された、『Succour』制作期のレアトラック全12曲。
 このディスク以降は、エレクトロニック・ダブ・ユニットで、当ele-king netでもおなじみPoleのステファン・ベトケによるリマスターとなる。これもこのボックスのアピールポイントだ。
 この12曲中、完全な未発表トラックはトラック1、6~12の8曲。
 トラック2から4の3曲はベルギーの実験音楽レーベル〈Sub Rosa〉から1995年にリリースされたエレクトロニック・ダブ系のコンピレーション・アルバム『Ancient Lights And The Blackcore』に収録されたもの。このアルバムは全6曲から成るが、シーフィールはなんとその半分の3曲を提供している。他の3曲はナパーム・デスのドラマー、ミック・ハリスのユニットScornのアンビエント・ダブ、デヴィッド・トゥープによって録音されたヤノマミ・シャーマンズ──ヤノマミ族はブラジルとベネズエラの国境に並ぶ丘陵地帯に住む民──のフィールド・レコーディング、LSDグル、ティモシー・リアリーとDJ Cheb I Sabbahによるスポークン・ワード、と言えばこのアルバムがどういうものなのかは理解できるだろう。
 残るトラック5は、2009年にワープ20周年を記念してリリースされたアルバム『Warp20(Unheard)』に収録されたもの。

●Disc3……〈Warp〉との契約を残しながら、1996年にエイフェックス・ツインのレーベル〈Rephlex〉からリリースされたアルバム(6曲入り、30分弱のミニ・アルバムだった)に、未発表曲6曲を加えて全12曲とした『(Ch-Vox) Redux』。トラック1から6までがオリジナルの『(Ch-Vox) 』、7から12が新たに加えられたトラック。
 
●Disc4……『St / Fr / Sp』と題された全10曲を収録するこのディスクは、1994年に〈Warp〉からリリースされた12インチ・シングル「Starethrough EP」(4曲)と10インチ・シングル「Fracture / Tied」(2曲)、1994年に10インチ3枚組で発表されたオウテカの「Basscadet」にシーフィールがリミックスを提供したことへの返礼として同じ年に制作されながらも、2003年にマーク・クリフォードが運営するレーベル〈Polyfusia〉からリリースされるまで未発表だった“Spangle”の貴重なオウテカ・リミックス、完全未発表の“Starethrough(transition mix)”、2019年にSfl4e名義で配信のみでリリースされたシングル「Sp / Ga 19」の2曲(“Sp19”は“Spangle”の、“Ga19”はアルバム『Succour』に収録された“Gatha”の略称)の、2017年から19年にかけてデンマークとフランスで行われたライヴ音源をエディットしたもの)を収録している。

 シーフィールが1994年に〈Warp〉と契約した時、世間は「あの電子音楽の牙城〈Warp〉がギター・バンドと契約した!」ということで大騒ぎになった……いや、大騒ぎというほどではなかったかもしれないが、中騒ぎくらいにはなったのではないだろうか。いや、しかし実際1995年にリリースされたアルバム『Succour』は驚くほどここ日本では売れなかったと、ele-kingの編集長・野田努は当該アルバム日本盤にライナーノーツを寄せた僕にそう告げたことをいまでもよく覚えている。もっとも、〈Too Pure〉時代のシーフィールは日本ではほとんどメディアに取り上げられることはなかった。当時日本でもその名が轟き始めていたコーンウォールの異能、エイフェックス・ツインとキャリア初期から密接な関係を持ち、そのエイフェックス・ツインがほぼ原曲の骨格を崩さずに彼らの美しいサイケデリック・ギター・ロックな〈Time To Find Me〉にリミックスを施したということで一部の好事家の間で話題になっていたにも関わらず、である。
 シーフィールの音楽は黎明期からそもそも不思議な存在だった。ちなみにマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『Loveless』はシーフィールの最初のシングルよりも2年近く前の作品である。
 1992年の初頭、マーク・クリフォード、サラ・ピーコック、ジャスティン・フレッチャーの3人がシーフィールを結成した当初は、「3分間のポップ・ソングを作っていた」という。「ヴァース、コーラス、ヴァース、コーラス、ミドルエイト、コーラス、フェード・トゥ・エンド……」というやつだ。しかしすぐに飽きてしまった。その年の夏にダレン・シーモアが加入し、後に最初のEP「More Like Space」となる曲を録音したとき、彼らはそれまで試行錯誤したインディー・ロックの定石を捨てて、サウンドの核心に迫る旅をはじめることにした。〈Too Pure〉からの最初のアルバム『Quique』に至ると、コードチェンジは最小限に抑えられ、キーボードのループ、周期的なギターのフィードバック、ドラムマシンの音などがきらびやかなコラージュとなり、サラの言葉を使わないヴォカリーズが彩りを添え、水のようなレイヤーのシーケンスが重なり、異次元のサウンドスケープが生まれ、ダンスフロアとは無関係のある種のトランス状態を誘発するような音楽を彼らは生み出した。
 彼らの初期の作品のエレガントさを愛していたインディー・ロック・ファンはたしかに存在しただろう。が、彼らはその地点にとどまることなく、ドリーム・ポップ的なサウンドから実験的なアイデアを持ってよりダークでインダストリアルな領域へと急ピッチで進出した。そして彼らはアンダーグラウンドなエレクトロニカ・シーンの橋頭堡とも言えるレーベル、〈Warp〉と契約した。
 同じ頃にシーフィールはジャーナリストのサイモン・レイノルズによって提唱された「ポスト・ロック」というジャンルの代表的なバンドと見なされるようになる。シーフィールのほか、Bark Pyschosis、Pram、Main、Laika、Insidesといった「ロックの楽器を非ロック的な目的で使用し、ギターをリフやパワーコードではなく、テクスチュアや音色のファシリテーターとして使用している」グループの音楽がそのジャンル名で呼ばれるようになり、ロック・バンドにおけるサンプラーの導入やテクノ、ヒップホップ、ダブへのアプローチの呼び水ともなったのである。シーフィールの〈Warp〉時代は、イギリスのロック界におけるパラダイム・シフトの時代とぴったり一致しているのだ。
 だが、残念なことに〈Warp〉に移籍してからの彼らの活動は決して順風満帆ではなかった。バンドの司令塔でもあったマーク・クリフォードはより硬質な音響彫刻ユニットDisjectaを、ダレン・シーモアは初期シーフィールのメンバーであったLocustのマーク・ヴァン・ホーエンとユニットを、マーク・クリフォード以外のシーフィールのメンバーはSeefeelより歌に重点を移したScalaといった課外活動を展開し、シーフィールとしての活動は2010年までほとんど行われなくなる。マーク・クリフォードとサラ・ピーコックに加え、二人の日本人メンバーを迎えて改めて〈Warp〉から2010年にリリースされたアルバム『Seefeel』はいいアルバムだった。だが、このボックスセットに収められたわずか2年ほどの活動期間に創作されたシーフィールの音楽を聴くと、あの激動の時代を反映しているが故の凄まじいばかりの音の強度に頭をぶん殴られたような気分になる。いま聴いても決して聴きやすい音楽ではない。メタリックで、パーカッシヴで、引き裂くようなリズム。しかし音楽は一面的ではない。サラ・ピーコックの幽玄なヴォーカル・サンプルが穏やかさと光をもたらす瞬間があちこちにある。その音楽はストーリーを語るものではない。抽象的で、荒涼とすら表現したくなるような響きだが、それゆえ時代遅れになる危険性とは無縁であるとも言える。抽象的な音楽と言ったけれど、例えば彼らにはスティーヴ・ベケットも愛した“Spangle”といった名曲があるのは強い。オリジナルもいいが、オウテカによってさらなる幽玄空間を現出させたリミックスや、ライヴ・テイクをエディットした“Sp19”の、どちらも12分にも及ぶ天国的な響きに持っていかれて抗えない。

韓国文学ガイドブック - ele-king

「今の私たち」とともにある物語

面白い、でもそれだけじゃない。今を生きる私たちとともにある現在進行系の言葉。
注目の作家とおすすめ作品、そして作品の背景をより深く知るためのコラムも掲載。
今の韓国文学の熱さがわかる一冊!

執筆陣(50音順):アサノタカオ/石橋毅史/伊藤幸太/江南亜美子/小川たまか/菊池昌彦/権容奭(クォン・ヨンソク)/倉本さおり/柴崎友香/杉江松恋/すんみ/チョン・ソヨン/仲俣暁生/長瀬海/西森路代

[目次]
まえがき

■バックグラウンド
韓国現代史(菊池昌彦)
韓国の地理(菊池昌彦)
韓国の出版社と文芸誌(すんみ)
韓国の文学賞(すんみ)

■作家紹介+おすすめ作品
ハン・ガン──生き残った者たちの義務(黒あんず)
パク・ミンギュ──「もっと、もっと」に殺されないためのユーモア(倉本さおり)
チョン・セラン──ジャンル小説と文学の垣根を超えて現実を描く(黒あんず)
イ・ギホ──ユーモアにひそむ〈罪〉と〈恥〉の感覚(黒あんず)
ファン・ジョンウン──打ち捨てられたものたちのゆくえ(黒あんず)
チェ・ウニョン──市井に生きるひそやかな声(黒あんず)
ペク・スリン──闇の中で出会う人(柴崎友香)
キム・エラン──無数の時間の檻のなかで(倉本さおり)
ピョン・ヘヨン──恐怖と不安に満ちた〈不快の美学〉(黒あんず)
キム・ヘジン──淡々と描かれる社会の暴力(黒あんず)
キム・ヨンス──わかり合えない現実と向き合う(長瀬海)
オ・ジョンヒ──美しい言葉で描かれる濃密な時間(伊藤幸太)
イ・スンウ──人間の根源へと向けた祈り(伊藤幸太)
パク・ワンソ──あたたかく大きな「山」(黒あんず)
チョン・ジア──時間と向き合うパルチザンの娘(長瀬海)
キム・ジョンヒョク──ポップ・カルチャーと飛躍する想像力(江南亜美子)
キム・グミ──得体の知れない世界の感触(黒あんず)
チョン・ミョングァン──巨大な物語(メガノベル)とジェンダー感覚(仲俣暁生)
チョ・ナムジュ──声なき声の記録(黒あんず)
キム・ヨンハ──グロテスクなユーモア(黒あんず)
クォン・ヨソン──日常のディスコミュニケーションを射抜く(黒あんず)
イ・ヒョン──時代に分断された人々(大久保潤)
チョン・ユジュン──負の感情を描く〈韓国のジム・トンプソン〉(杉江松恋)
ユン・イヒョン──書くべきでないときに書かないこと(黒あんず)
チョン・イヒョン──現代社会と切り結ぶ女性像(江南亜美子)

■ジャンル別
さらなる紹介が待たれる韓国のミステリー(杉江松恋)
自分が自分であるために大切にしているもの──韓国のエッセイについて(アサノタカオ)
たたかいの最前線に立つ、美しいことばたち──韓国の詩について(アサノタカオ)
韓国文学アンソロジー紹介(黒あんず)
韓国のSFについて(チョン・ヨソン)

■トピック別
韓国フェミニズム本、いま読みたい四冊(小川たまか)
民主化運動と韓国文学(権容奭/クォン・ヨンソク)
「喪失」と「トラウマ」に向き合う韓国文学──聖水大橋・三豊デパート・セウォル号(クォン・ヨンソク)

■コラム
韓国文学と映像(西森路代)
K-POPアイドルとK文学(黒あんず)
韓国の書店──闘いの場の記憶(石橋毅史)
二〇〇〇年代の韓国における日本文学受容(すんみ)

あとがき

[監修者プロフィール]
黒あんず
早稲田大学大学院修了。趣味で韓国文学を読み始めた。

[執筆者プロフィール]
アサノタカオ
編集者。一九七五年生まれ。大学卒業後、二〇〇〇年からブラジルに滞在し、日系移民の人類学的調査に従事。二〇〇九年よりサウダージ・ブックスの編集人をつとめる。著書に『読むことの風』。

石橋毅史
一九七〇年生まれ。作家。書店や出版についての文章が多い。二〇〇二年に初めて訪れて以来、韓国へたびたび出かけている。著書に『本屋がアジアをつなぐ』(ころから)、『本屋な日々 青春篇』(トランスビュー)など。

伊藤幸太
東京・西荻窪にある書店、忘日舎店主。古書と新刊を扱う。読書会、朗読会など書籍に関するイベントも不定期に開催。最近では配信型イベント、またチーム選書プロジェクトも試行中。ときどき書く仕事、読む仕事とか。

江南亜美子
書評家、京都芸術大学専任講師。おもに日本の純文学と翻訳文芸に関し、新聞、文芸誌、女性誌などでレビューや批評を手掛ける。共著に『世界の8大文学賞』(立東舎)など。韓国文学関連では『韓国・フェミニズム・日本 完全版』(河出書房新社)にも寄稿。

小川たまか
ライター/フェミニスト。二〇一五年頃から性暴力の取材に注力。著書に『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)。YAHOO! ニュース個人などで執筆。

菊池昌彦
フリーライター。主に韓国・中国のドラマ、音楽などエンタメ関連ムックの他、歴史書、雑学書などの執筆を手がけるフリーライター。グループSKITアジア担当。二〇二一年九月に執筆を手がけた『一冊でわかる韓国史』(河出書房新社)が発売予定。

権容奭(クォン・ヨンソク)
一橋大学大学院法学研究科准教授。専門は東アジア国際関係史、日韓関係、韓国現代史。政治・外交・歴史だけでなく、映画・音楽・スポーツまで幅広く研究している。著書に『岸政権期のアジア外交』『韓流と日流』『韓国文学を旅する60章』(共著)、訳書に『イ・サンの夢見た世界―正祖の政治と哲学』。文在寅大統領の自伝『運命』に解説を執筆している。

倉本さおり
書評家。共同通信文芸時評「デザインする文学」、週刊新潮「ベストセラー街道をゆく!」連載中のほか、新聞や文芸誌、週刊誌を中心にレビューやコラムを執筆。TBS「文化系トークラジオLife」サブパーソナリティ。

柴崎友香
小説家。二〇〇〇年の初の単行本『きょうできごと』が二〇〇三年に映画化。二〇一〇年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、二〇一四年に『春の庭』で芥川賞受賞。著書に『百年と一日』『千の扉』など。

杉江松恋
一九六八年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒。ミステリー中心に書評ライターとして活動中。著書に『路地裏の迷宮踏査』、『ある日うっかりPTA』他。近著『書評七福神が選ぶ、絶対読み逃せない翻訳ミステリベスト2011‐2020』。

すんみ
翻訳家・ライター。早稲田大学大学院文学研究科修了。訳書にキム・グミ『あまりにも真昼の恋愛』(晶文社)、チョン・セラン『屋上で会いましょう』(亜紀書房)、ユン・ウンジュ著、イ・ヘジョン絵『女の子だから、男の子だからをなくす本』(エトセトラブックス)、共訳書にイ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』『失われた賃金を求めて』(タバブックス)、チョ・ナムジュ『彼女の名前は』(筑摩書房)などがある。

チョン・ソヨン(鄭昭延)
大学在学中にストーリーを担当した漫画「宇宙流」が二〇〇五年の「科学技術創作文芸」で佳作を受賞し、作家としてスタートを切る。小説執筆と併行して英米のフェミニズムSF小説などの翻訳も手がけている。二〇一七年には他の作家とともに「韓国SF作家連帯」を設立し初代代表に就任した。また、社会的弱者の人権を守る弁護士としても活動中。著書に『となりのヨンヒさん』(吉川凪訳、集英社)がある。

仲俣暁生
一九六四年東京生まれ。文筆家、編集者。大正大学表現学部客員教授。著書『ポスト・ムラカミの日本文学』(朝日出版社)、『極西文学論』(晶文社)、『失われた「文学」を求めて―文芸時評編』(つかだま書房)ほか。

長瀬海
千葉県出身。インタビュアー、ライター、書評家、桜美林大学非常勤講師。文芸誌、カルチャー誌にて書評、インタビュー記事を執筆。「週刊読書人」文芸時評担当(二〇一九年)。「週刊金曜日」書評委員。翻訳にマイケル・エメリック「日本文学の発見」(『日本文学の翻訳と流通』所収、勉誠社)共著に『世界の中のポスト3.11』(新曜社)がある。

西森路代
ライター。ユリイカ、マイナビニュース、GALAC、リアルサウンド、現代ビジネス、&M、CINRA、朝日新聞、ハフポストなどで執筆。共著に『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020』。


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Black Midi - ele-king

 SNS時代では、好きなことを好きなようにやることがますます難しくなっているのだろう。もはや自分が何を好きなのかさえもわからなくなっているのかもしれない。とにかく、不特定多数の誰かに自分がどう見られるのか、市場やメディアでの自分の見せ方ばかりを気にしているミュージシャンやライターを見るにつけ、本当につまらない連中だなと思う反面、大衆自らが監視装置になっている現在のディストピアにぞっとする。
 しかし、絶望的なこのがんじがらめから脱出するには、ひとつ方法がある。誰になんと思われようと知ったことではない、好きなことを好きなように情熱をもって徹底的にやり抜く。ブラック・ミディというロンドンの若き4人組のロック・バンドはまさにそれをやった。

 彼らの音楽にはトレンドらしきものなどない。ラップもダンスもドラッグも恋愛もない。パンク版キング・クリムゾン? XTC風のキャプテン・ビーフハート? ときにボアダムスっぽくもあり、そしてヴァンダーグラフ・ジェネレイターっぽくもあり……、いやまあなんにせよ、象徴的に言えば、少なくとも誰もが待ち望んでいるであろうことなど眼中にないサウンドをもって、だからこそ逆説的に誰もが待ちのぞんでいたことをやってのけたと。そう、この突然変異体は彼らのサウンドのパワーでもって、人びとを惹きつけたのである。最近出たばかりの『カヴァルケイド』はブラック・ミディにとってのセカンド・アルバムで、プログレ御仁をも泣かせたという前作『シュラゲンハイム』にはそれほどピンとこなかったぼくにも今回はガツンときた。
 先ほどぼくは、ぼくのいつもの怠惰さゆえに既存のバンド名などあげつらってブラック・ミディを説明しようとしているが、彼らの言うなれば“パンク・ジャズ・ロック”はもっと多様で(ボサノヴァまでやっている)、そして完璧に新鮮だ。10代という若さでダモ鈴木と共演している彼らだが、後ろ向きの郷愁など感じない。今年で22歳になる彼ら自身が若いように、この音楽にもはち切れんばかりの若さがある。それが『カヴァルケイド』における緻密さと勢いの両翼にわたって、ときに激しくリンクしている。ケオティックであるが凛としたサウンドで、この暗いご時世のなか物事に立ち向かっているような勇敢さを携えている。
 また、このアルバムには「別世界からの人物たち──苦境に陥ったカルト教団のリーダーからダイヤモンド鉱山で発見された古代の死体、伝説のキャバレー歌手マレーネ・ディートリッヒ──が、列を成して、彼らの前を誘惑的に通り過ぎていくようなイメージが描かれている」と資料には書いてある。それぞれの楽曲はそれぞれの人物のそれぞれのストーリーであり、そしてそれぞれのパレードだというが、ま、ぼくにひとつ言えるのは、ここで語られるそれぞれのストーリーやパレードはひどくエキサイティングだということである。
 アルバムはバランスも取れている。激しいリズムの“John L”や“Chondromalacia Patella”そして“Slow”の「動」に対してボッサ調の“Marlene Dietrich”、ゆったりしたアメリカーナ風の“Diamond Stuff”のような「静」もあり、スコット・ウォーカーめいた歌とアコースティックな圧倒的な美しさの“Ascending Forth”で締めている。サブスクの恩恵はあるにせよ、まあ、よくここまで折衷的なサウンドをうまくまとめ上げて、しっかりブラッシュアップさせたなと。
 
 過去がアーカイヴされた現代では、古いものも新しいものも等価であり、ときには古いものが新しいとも言われる。いや違う、新しいものが新しく、いまここに新しさがはじまろうとしている。ブラック・ミディを聴こう。お小遣いをためて高価な中古盤を買うのも悪くはないけれど、こんな苦難な時代においても前を向けるという意味で、少なくとも精神的には良いことがあると思います。

Skee Mask - ele-king

 ここ数年、いわゆるベース・ミュージック以外、わりとダンサブルなテクノからもブレイクビーツの、もしくは別方向からのベクトルを見るとIDM的なリズムの捉え直しというのがわりと盛んなのはもはやゆるぎのない事実というかひとつの路線となっているわけですが(この前ここで紹介したブラザー・ネブラあたりも、それのブレイクビーツ方面のそんなフィーリングの作品ではありました)。で、そのあたりのサウンドが顕在化する、その流れを象徴する作品にスキー・マスクの2016年のファースト・アルバム『Shred』があるんではないかと。でもこの2021年にみてみると、意外にこの辺の流れ、いやいや意外とエイフェックス・ツインの『Syro』(2014年)ってやっぱり結構大きなターニング・ポイントだったんじゃないかと思うような。IDM的なブレイクビーツ・テクノ+ダブ・テクノといった感じで、作品としてのリスニング性能とダンサブルな曲がしっかりとフロア対応といった感じでアルバムにおいて繰り広げられており、なんというか逸材が出てきたなと思ったわけです。

 で、そのスキー・マスクがミュンヘンのゼンカー・ブラザーズのレーベル〈イーラン・テープ〉からわりかし謎の新人的な扱いでデビューしたのが2014年。本名はあとあとに明かされたのですが、ブライアン・ミュラーという人物。その正体はEDMというかわりかしバンギンなエレクトロで2000年代から活動するベテラン、ボーイズ・ノイズ一派の天才少年枠で世に出た逸材でした。ブライアンは2011年のデビュー、1993年生まれというのだからわずか17歳という年齢で SoundCloud で発掘されたという、そんなアーティスト。件のレーベルから SCNTST という名義にてリリース。どちらかというと SCNTST 名義はフロアライク、といってもバキバキのそれではなく、もう少しわかりやすいドリーミーでポップな空気のテクノといった感じでしょうか。

 RAのインタヴュー(https://ra.co/features/3108)によれば、当時、ボーイズ・ノイズに象徴されるようなバンギンなエレクトロを好んでいたそうですが、18歳のときに〈チェイン・リアクション〉の作品にてディープ・テクノの洗礼を受けて、エイフェックス・ツインやオウテカなどを聴きあさり、その辺の影響もあり、こちらのスキー・マスク的な音作りもするようになったとか(別にバンギンなエレクトロを辞めた訳ではない模様)。またある種のメンターとしてゼンカー・ブラザーズ、特にマルコの影響も大きいことを件のインタヴューでは言っています。

 テクノ・シーンで注目を浴びるなかリリースした2019年セカンド『Compro』はそうした期待に応えるもので、さらに緻密にプログラミングされた躍動感溢れるリズムと、アブストラクトかつ美しいシンセのラインが交叉、楽曲によってはアンビエント・テクノへも進み、その感覚はどこかAIシリーズやオウテカの初期作品(『Amber』もしくは『LP7』あたり)を彷彿とさせる作品に、さらに評価を盤石なものに。“Kozmic Flush” のようなアートコア・ジャングルも印象的でした。そしてある意味でその手のサウンドの先達とも言えるプラッドのリミックス、“Maru (Skee Mask Remix)”では不穏なシンセとフリーキーなジャングル・ビートが分裂気味に突き進むトラックでどこかここ最近〈リフレックス〉などのドリルンベース再評価を彷彿とさせる感覚に。また〈イーラン・テープ〉からのシングル諸作ではディープ・エレクトロ、ブレイクビーツ・テクノといった要素をやはり彼らしいIDM的な実験性とダンスフロアへのアクセスと、両方の絶妙なバランス感を持ったサウンドを展開していた、というのが2020年ぐらいまでの流れ。
 そういえば2020年には〈リヴィティ・サウンズ〉などからもリリースするベース〜ダンスホールなサイモ・セルとのB2Bテープ「TemeTape1」もリリースしてました。こちらはA面にはニュー・ビート〜初期ハウス〜テクノ〜IDMをつなげたBPM125サイドと、ハードコア・テクノ〜ジャングル〜ゲットー・テック〜ジュークなどを横断する160BPMのB面を配していて、なんというかその横断性とIDMの躁な部分とジャングルとの接続から僕はシロー・ザ・グッドマンの2000年代中頃のDJを思い出したりもしました。

 そしてつい先日リリースされたのが本作『Pool』。今回は18曲の2時間近くにも渡る大作、というよりも、リズムの展開がひとつのストーリーを描くような『Compro』などに比べると、どこかコンピレーションのような作品に。グリングリンとグラインドするAFX的な高速ドラムの冒頭の “Nvivo”、または “Rdvnedub”、アートコア・ジャングルな “Dolan Tours”、メランコリックなIDMサイドとジュークを絡め取ったような “Harrison Ford”、幽玄なアンビエント・トラック “Absence”、エレクトロの実験 “60681z” “Pepper Boys” などなど、楽曲はまさにいろいろ、とにかくこれでもかというくらい彼のリズムへのセンスが感じられる様々な楽曲が集録されています。
 作品としてはコンピレーション盤のようですが、時代の空気というか、いまこのコロナ禍をへて、ダンスフロアに過去のIDMやエレクトロニカ的なビート実験から、なにを取捨選択しようとしているのか、そのプロセスが垣間見えてるのではという感覚があります。そのあたりは先を考えると非常におもしろいのではという作品ではないかと思うわけです。どこかアルバム1枚のアーティストの表現を核にしたものというよりも、彼のある種の天才肌な感性を通した、時代のドキュメントといった感じすらあります。多様にばらまかれた種子が今後、ダンスフロアでどんな芽を出し葉を茂らすのか、そんな可能性を感じる作品ではないかと。

DIE KRUPPS - ele-king

 ドイツのポスト・パンク系の音源をたくさんリリースしている新潟の〈SUEZAN〉がディー・クルップスのデビュー・ライヴの映像をDVDとしてリリースする。日本でディー・クルップスといえば、「俺のカラダの筋肉はどれをとっても機械だぜ」のバンドとしてのほうが通りが良いかもしれないが、国際的にはミニマルなメタル・パーカッションの元祖的な存在として知られている。CANのインナースペースで録音されたファースト・アルバム『鉄工所交響曲』はメッセージとしては労働と機械を主題とした作品で、ドイツのポスト・パンクにおける重要な1枚となっている。
 で、今回リリースされる彼らのデビュー・ライヴの映像だが、これは阿木譲氏が当時その場に居合わせて撮影したというもの。古いビデオテープからデジタル化してのリリースというわけだ。当時の生々しさは充分に伝わってくる、まさに貴重な記録。
 なお、〈SUEZAN〉は今年で10年目を迎える。

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