「W K」と一致するもの

jjj - ele-king

 『YACHT CLUB』を最初に聴いた感想は、パブリック・エネミーやアイス・キューブ『アメリカズ・モスト・ウォンテッド』のプロデュースで知られるボムスクワッドのハンク・ショックリーの次の言葉に集約される。「音楽は組織化されたノイズに他ならない」というものだ。『YACHT CLUB』は実際にすさまじいノイズの美学で、フロウ、レイヤリング、ラプチャーという、90年代にトリーシャ・ローズが『ブラック・ノイズ』(1994年)で定義したヒップホップの三大コンセプトを否応なしに彷彿させる。

音数の多さとドリフト走行をくり返す激しい展開にまず圧倒される。一曲のなかで複数のキック(バスドラ)、スネア、ハイハット、あるときはリムショットを用い、いくつものサンプリング・ソースをレイヤリングしていく。ブルース・ロックのギターが唸りを上げ、オルガンのビター・スウィートな音色が響き渡り、パーカッションがカツカツカツカツと打ち鳴らされ、レコードを引っ掻く針の音が次のヴァースへの高揚感をギギギギーと煽る。そうかと思えば、唐突にそれまでの展開を切断する(=ラプチャー)ビート・パターンやシンセ音を大胆にくり出し、聴く者を翻弄し、ソファにふんぞりかえる鑑賞者になる余裕を与えない。jjjは「アメブレイク」のインタヴューで、「サンプリング6:シンセ4って感じですね。音源は、聴こえないところとかで隠して使ってますね」と語っているが、いずれにせよ、この騒々しさと疾走感にぐるぐると目が回るのはたしかだ。全17曲中のいくつかは、さながら暴走特急である。

 僕と同世代のあるビートメイカーは、jjjのトラックのこの騒々しさについていけないと漏らしたが、言いたいことはわかる。これは、若さの速度であり、若さのエネルギーの放出であり、89年生まれのjjj流のクールなバカ騒ぎだ。そして、このけたたましい騒音のなかに潜り込み、強い意志のこもった言葉と毅然とした態度でスピットし、切れ味の鋭いライミングを優雅に披露していく。ビートと併走しながら、シュッシュッシュッと忍者のようにあちこちに飛び回る俊敏なフロウで音の時空をコントロールし、jjjの暴走特急は終着駅までぶっ飛ばす。さあ、参考までに、ボクシングの試合開始を告げるカンカンカンというゴングの音が闘争心を高める次の曲を聴いてほしい。NYのハーレムに移り住んだキッド・フレシノをフィーチャーし、ミュージック・ヴィデオはNYで撮影されている。


jjj - vaquero! ft. KID FRESINO (prod.jjj)

 jjjのラップや断片的なリリックに意味や主張がないとは言わないが、リズム楽器としての切り返しの鋭さの魅力が勝っている。池袋の〈bed〉でライヴを観たとき、同じステージに立つ、酩酊気味で覇気のない仲間のラッパーたちに対して、「ヨレてんじゃねえよ!」という叱咤の言葉を吐き出したjjjの容赦のない表情をいまでも鮮明に覚えているが、jjjのビート/トラックとラップのヨレの無さそのものが彼の主張であり、メッセージだろう。
 「PAINやGAINの話じゃねえ/すべて向き合った上/HAVE A NICE DAY!」(“Fla$hBackS”)というパンチラインで、日本のラップ・ミュージックの新しい時代の幕開けを予感させた色男である。そう簡単に、わかりやすい言葉でわれわれを納得させたり、期待させたり、甘い夢をみせるような野暮な真似をしないだろう。密かな野心とクールな立ち居振る舞いと厳しい表情というものが、jjjにはよく似合っている。

 さて、ここで触れるべきことにも触れておきたい。フラッシュバックスのメイン・トラックメイカーであり、ラッパーのjjjによる、幾度かの延期ののちに発表されたファースト・ソロ・アルバムには、クレジットを見るだけで、「おっ」と反応してしまう点がいくつかある。まず、スキット/インタールード的な3曲以外のミキシング(ヴォーカル・ミキシングのみの曲を含む)をすべてD.O.I.が担当していること。さらに、リップスライムのSUとACOが参加していること。そして、キッド・フレシノ、説明不要の3人組のモンジュ、若手のキアノ・ジョーンズ、ヤング・ドランカーズのムタ、盟友フェブ、Taha Vanillaという美しい歌声の女性シンガーが参加している。

 ここで作品全体の根幹に関わるのはやはりD.O.I.である。D.O.I.は、95年に発足したDJ KENSEIとnikとのプロジェクト、インドープサイキックスのメンバーの一員として、ブレイクビーツ/エレクトロニカという形式を採りながら、誤解を恐れず言えば、その目の覚めるようなクリアな音響のみでクラブ・ミュージック・リスナーの耳の感覚を変容させ、ジャンルの壁を打破した人物である。また、エンジニア/マニピュレーターとしてブッダ・ブランド、ムロ、ライムスターといったヒップホップ勢を手がけ、安室奈美恵やエグザイルといったJ・ポップの楽曲のミキシングも担当している。そして、jjjがD.O.I.氏を引っ張り出した(この表現を使いたくなる事件なのである)ことは大正解……というとおこがましいが、jjjは自分が目指すべき音の方向性を明確に意識して、制作に入ったということだろう。

 これだけのノイズ=サンプリング・ソースとけたたましいサウンド(メロウで、レイドバックした楽曲もあることは付け加えておこう)を構築、構成する上で、D.O.I.のミキシングと、推測するに彼からのアドヴァイスも大きかったのではないだろうか。いや、まぎれもなく、ノイズを音楽にするスリリングな創造はjjjの手によってもたらされたに他ならない。
モンジュをフィーチャーした“go get 'em”がそのことを証明している。80年代ディスコ風の上ネタのチョップの俊敏性と斜めから切り込むモンジュの3人とフックのjjjのラップ・シンギンと3連ハイハット、極めつけは意表を突くMr.PUGのヴァースのあたま8小節の(おそらく)殿下のファルセットと女性の喘ぎ声の大胆な引用だ。はちゃめちゃなことをやっておきながら、この曲は、jjjのハーモニーとメロディのセンスによってポップなラップ・ミュージックとして成立している。一皮剥けば、そこにはばらばらのノイズが散らばっているというのに、jjj流のフレッシュな秩序がたしかに存在している。見事だ。

時代はジェフ・ミルズです。 - ele-king

 時代はジェフ・ミルズです。たとえば、〈PAN〉から出ているリー・ギャンブル、ピンチのコールドのコンピレーションを聴いてみてください。サージョン・リヴァイヴァルとも言えるかもしれないけど、シーンは、確実にジェフ・ミルズとリンクしているじゃありませんか。アントールドもカレント・ベストにジェフのアルバムを挙げていたし、素晴らしいことに、ジェフ・ミルズは新しい世代に受け継がれています。
 そんな折りに、フランスで作られた、ジェフ・ミルズ主演のドキュメンタリー映画がDVDとなってリリースされます。「テクノとは何のために存在するのか」、この大きなテーマと向き合っている映画です。ぜひ、ご覧下さい。

 2014年2月、パリのルーブル美術館オーディトリアムでのワールド・プレミアを皮切りに、日本を含む各国で上映され話題を集めた、ジャクリーヌ・コー監督、ジェフ・ミルズ主演のアート・ドキュメンタリー・フィルム『MAN FROM TOMORROW』。ジェフ・ミルズ書下ろしのサウンド・トラック収録CD+DVDで発売となった。

 通常のドキュメンタリーとは一線を画したノン・ナラティブな手法、アーティスティックでエクスペリメンタルな映像と音楽で構成された本作品は、ジェフの初主演作品。彼の考えるテクノのあり方や音楽制作の過程、彼の想像する未来などが凝縮して織り込まれ、テクノ・ミュージックの醍醐味をDJイベントとは異なった形で表現する試みでもあるという、ジェフの創造性・実験的精神をあますところなく体現する作品となっている。

 「なぜ彼が音楽を作るのか、テクノとは何のために存在するのか、という疑問の答えを解き明かす映像による旅路」(コー監督)というこの作品。スタイリッシュな映像と音楽を通じてジェフの宇宙が凝縮されたこの作品をぜひ体験して欲しい。

 また、12/20 (土)には、これまで国内テクノ・シーンの歴史の一端を担ってきたageHa随一の人気テクノ・パーティー“CLASH”のファイナル・パーティに、DERRICK MAY、KEN ISHIIらと共に出演することも決定している。

 ジェフ初主演映像作品とともにこちらも見逃せないラインナップとなっているのでぜひチェックを。

 ジェフ・ミルズ初主演映画作品『MAN FROM TOMORROW』は、U/M/A/Aより本日発売される。


JEFF MILLS『MAN FROM TOMORROW』
生産枚数限定日本仕様

XECD-1132(CD+DVD)
価格:\3,900(+税)
発売日:2014年12月17日
【限定特典のJEFF MILLSサイン入りポスター付き!】

Amazon

[CD]
1. The Occurrence
2. Multi-Dimensional Freedom *
3. The Event Horizon *
4. Gravity Drive *
5. Star Marked *
6. Us And Them *
7. Sirius *
8. The Man Who Wanted Stars *
9. The Source Directive
10. Actual
11. The Watchers Of People *
12. Searching *
13. The Warning *
14. Light-like Illusions *
15. Star People *
16. Utopia
(合計:71分)
* 未発表曲
All music are written and produced by Jeff Mills

[DVD]
ドキュメンタリー映画・本編 40分(オーディオ:英語/字幕:日本語、フランス語)
ブックレット解説: 門井隆盛/ジャックリーヌ・コー(英文+和訳)


Lawrence English - ele-king

 英国のオンライン・ミュージック・マガジン『FACT』の2014年ベスト50において、数あるポップ・ミュージック勢に混じって、ローレンス・イングリッシュの2014年作品『ウィルダネス・オブ・ミラーズ』が選出されていたのには驚いた。順位は21位だが、この種のエクスペリメンタル・ミュージックなアンビエント/ドローン作品がポップ・ミュージック勢に混じって選出されたことは注目に値する。これは昨年リリースされ、多くのメディアの年間ベスト内に選出されたティム・ヘッカー『ヴァージンズ』以降の変化だろう。あの作品への評価は、ドローン/アンビエントなアルバムが、ポップ・ミュージックとして受容=需要されつつあることの象徴といえる。

 近年のローレンス・イングリッシュの活動を振り返ると、〈ウィンズ・メイジャー・レコーディングス〉からのリリースや、自身が主宰する〈ルーム・40〉の旺盛なレーベル活動に加え、ベン・フロストの『オーロラ』(2014)への参加も重要に思える。ベン・フロストと〈ベッドルーム・コミュニティ〉の面々はティム・ヘッカーの『ヴァージンズ』にもエンジニア、パフォーマーとして全面参加しているのだから、西欧のドローン/アンエント・シーンは、コミュニティのように連帯しているのだろうか。
 そして、〈ベッドルーム・コミュニティ〉といえば、ニコ・ミューリーなど、ポスト・クラシカルの話題作もリリースしており、日本人が思う以上にポストクラシカル(=モダン・クラシカル)とドローン/アンビエントの境界も、また曖昧ともいえる。(ポスト/モダン)クラシカルな音楽(ハーモニー/メロディ)が(西欧)人の心にもたらす安堵と沈静は、日本人がときに「癒し」などと軽い言葉で消費するのとは違い、音楽的な源泉のようなものである。だからこそアルヴォ・ペルトは偉大な作曲家なのだ。しかしペルトのような作曲家ですら、かつてのニッポンの知識人層からは、通俗的な癒しの音楽などと断じられてしまったわけで、となると、そもそもわれわれはドミソの三和音のハーモニーの美しさですらわかっていなかったのではないかと自虐的に思ったりもするが、これは余談。

 アンビエント/ドローン/ノイズ、ポスト(モダン)・クラシカルの交錯。ローレンス・イングリッシュの新作『ウィルダネス・オブ・ミラーズ』(イングリッシュ自身が主宰する〈ルーム・40〉からのリリース)は、そのような状況下にリリースされたわけだが、その音は、一聴し即座にわかるように、これまでの穏やかなドローン/アンビエント・サウンドのイメージを覆すように一種の轟音化/ノイズ化の様相を示している。リリース時は、ティム・ヘッカーの『ヴァージンズ』の類似なども指摘されたが、先に書いたように彼を取り囲む現在のコミュニティを体現しているといえるから当然の変化だろう。またローレンス・イングリッシュは、本作の制作中にスワンズやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのライヴを体験し、轟音空間に打ちのめされ、影響を受けたとも語っているのだから、近年のノイズ・ムーヴメントの空気を存分に吸収して生まれたアルバムともいえる。さらに、その不穏な音は、インダストリアル・テクノ以降の「世界の不穏さ/不安さ」を体現したような音楽にもリンクしており、インダストリアル・テクノ以降のダーク・アンビエント作品として聴くことも可能である。その意味で、二―ル『フォボス』などとともに聴くべきアルバムかもしれない。

 しかし、そうはいっても本作は、「静寂と空間の作家ローレンス・イングリッシュ」の作品である。その音響空間の設計/構築には、かつてと同様に複雑な静寂性がある。ドローンといえば単一の音が持続するものだが、イングリッシュの音は、いくつものドローン的な持続が、平行的/多層的に続き、絡み合い、まるで一瞬の響きを引き伸ばされた、いわば弦楽のようなドローン=電子音響に仕上がっているのである。2012年にリチャード・シャルティエの〈ライン〉からリリースされた『フォー/ノット・フォー・ジョン・ケージ』と本作を続けて聴いてみると、サウンドの構造的には非常に似通っているのがわかってくると思う。
 これはステファン・マシューの『ザ・サッド・マック』(2004)あたりをオリジンとする、00年代後半のドローン/アンビエント・シーンのベーシックなフォームともいえるが、その中にあって、イングリッシュの音は、かなり洗練されたものだ。低音部から高音部の音が、ハーモニーともレイヤーともちがう調和/非調和で持続する感覚。私見だが、10年代のノイズ/ミュージックは、80年代のそれが反社会的なイデオロギーを内包し表出していたのとは対照的に、サウンドの多層性によって、時間/音響をコントロールし、静寂(のイメージ)を生成しようとしていたように聴こえる。その意味で、エレクトロニカ以降のドローン/ノイズ・ミュージックは、新しいハーモニーの生成ですらあったのではないか。

 それはローレンス・イングリッシュの場合も同様で、音響と音響のレイヤー、つまり音と音の重なりあいの構造によって新しい沈静(=ハーモニー)が生成している。つまり、サウンド/音響の構造によって、静寂が生まれているのだ。たとえ轟音化した『ウィルダネス・オブ・ミラーズ』であっても、それは同様であり、〈ウィンズ・メイジャー・レコーディングス〉からリリースされた彼のフィールド・レコーディング作品『Suikinkutsu No Katawara Ni』や、鈴木昭男との共作『Boombana Echoe』などと、それほどかけ離れた作品ではない。つまり、『ウィルダネス・オブ・ミラーズ』は、現在のアンビエント/ドローン・シーンの変化を十二分に体現しつつも、彼のサウンド・デザイナー/音楽家としての資質を浮きぼりにした作品なのだ。
 同時に、『FACT』の2014年ベスト50内に選出されたということは、先に述べたような西欧音楽の源泉のようなエレメント、つまり調和による鎮静というものが、『ウィルダネス・オブ・ミラーズ』にも埋め込まれているからではないかとも思う。ドローン/アンビエントは、鎮静に特化した音楽形式でもあり、決して、難解な音楽ではない(それは新しいハーモニーの生成でもあった)。それゆえむしろポップ・ミュージックになりえる。『ウィルダネス・オブ・ミラーズ』は、ポップ・ミュージック化するドローン/アンビエントいう2013年の『ヴァージンズ』以降の環境を象徴する一作ともいえる。まさしく2014年の必聴作だ。

お隣の県のOGRE YOU ASSHOLE - ele-king

 山梨のラッパー、田我流が、国道20号線をたどって「お隣の県にお住まいの」オウガ・ユー・アスホールを訪ねるロード・ムーヴィ……ではなくインタヴュー・ヴィデオが届けられた。これは12月20日(土)に甲府Convictionにて開催される〈国道20号線〉第4弾を記念しての特別企画だ。取り合わせとして意外な印象もある2組(田我流×出戸学)が、田我流を訊き手としながらもくだけた雰囲気で語りあう12分の動画は、ドキュメンタリー・フィルムのような編集が施され、ここに映し出されているような心地のよい音楽の場所がおそらくイヴェントにおいても生まれるのだろうということを予感させる。
 どちらかのファンの方も、どちらのファンでもない方も、この清々しくぬくもりあるコラボレーションに、思わず興味をかきたてられるだろう。
 イヴェントにはゲストとして「東京の」KILLER BONGも登場する!



■田我流 presents 「国道20号線 Vol.4 」
& OGRE YOU ASSHOLE 「ニューアルバム・リリースツアー "ペーパー・クラフト"」

出演:
田我流 (Band Set)
OGRE YOU ASSHOLE
KILLER BONG

日時:
2014/12/20(土)
OPEN/START 18:00/19:00

会場:
甲府Conviction 山梨県甲府市朝気2丁目4-1

前売:
3,000円/当日3,500円(税込み/ドリンク代別)

チケット発売日:
2014年10月18日一般発売開始

チケット取り扱い:
ローソンチケット [73742] / ぴあ[243-380] / e+ / 甲府CONVICTION / 桃源響RECORDS

お問い合わせ:
甲府Conviction 電話055-236-0661
info@officeconviction.com

https://event.maryjoy.net/article/105457152.html


IORI (DJ / producer from Okinawa,Japan.Based Berlin) - ele-king

最近、家で良く聴く曲達。

https://www.residentadvisor.net/dj/iori
https://www.clubberia.com/ja/artists/3317-IORI/

Michael Pisaro, Matthew Sullivan - ele-king

 今日発売の『ele-king vol.15』に向けてD/P/Iのインタヴューをおこなったわけであるが、かつての同居人に対しての真面目な質疑応答を経てアレックス・グレーのアーティストとしての核心に近づけた気がする。当時LAのあの家で暮らしていた時間が僕にとって最高にバカバカしく、そして最高にクリエイティヴであったのは、アレックス・グレー、ショーン・マッカン、マシュー・サリヴァンという異なるミュージック・バッググラウンドを持つ3人が、相乗効果によって確実に互いを向上させるという環境があったからだ。

 アメリカが失ったポップ・アイコンへの鎮魂歌としてのアンビエント・ユニット1958 - 2009のマシュー・サリヴァンとアレックス・トゥミー(ミラー・トゥ・ミラー/Mirror to Mirror)やジェフ・ウィッチャー(レネ・ヘル/Rene Hell)等の連中はゼロ年代初頭、「ニューウェーヴ・オブ・LAノイズ」と言われたようなシーンを形成するほど精力的に極端なパフォーマンスを展開させていた。彼らはほぼ同時期にノイズからアンビエントへ移行していった。
 同居していた当時、何度かマシュー・サリヴァンにそういった話を振ってみたが、彼いわくそれは意図的な移行ではなく、そもそもアメリカン・ノイズ・(ノット・)ミュージック・シーンに属したこともないし、アンビエント・ミュージックを志したつもりもないという。じゃあ君は君の音源やライヴをまだ体験したことのない人間からどんなサウンドなのか訊ねられたらなんと答えるんだ? という僕の質問を受けた彼は開け放たれた部屋の窓を指差しながら、こんな音だって言うさ、と笑いながら答えた。朝日が差し込む窓からは風が外の木立を揺らしながら吹き込んでいた。

 彼のギター・ミュージックとしてのプロジェクトであるアーン(Earn)のヘル・オン・アース(Hell on Earth)は個人的に昨年のベスト・アンビエント・レコードである。ある種の達成感を得たと語る彼はアーンとしての活動を停止し、また主宰していたDIYカセットレーベル、〈エクヘイン(Ekhein)〉も停止する。彼がミュージック・コンクレートに没頭するきっかけとしては、アカデミックに現代音楽を追求する自分とは異なるバッググラウンドを持つショーン・マッカンとの共同制作が大きいのはもちろんであるが、なにより彼自身の生活の変化にもよるだろう。それまでのレーベル・ワークスを打ち切り、〈プーバー・レコーズ〉での勤務をはじめた彼は、日々の通勤中に膨大なサンプリングと着想を得ているように思われる。一般論において車移動が当たり前であるLAでの生活において、この家の住民たちのように公共交通機関を主として移動する連中も珍しい。いつだったか、いわゆる通勤ラッシュ時に電車に乗っていた日本人の僕は、ガラガラの車内から見えるフリーウェイの猛烈な渋滞が奇妙でならなかった。妙な話であるが、僕はこのときマシュー・サリヴァンの、日常のありふれた情景とグロテスクさを切り取り、それ自体の意味を曖昧にしながら美しい音楽を編む行為に共感した。

 このレコードはマシュー・サリヴァンとアメリカの現代音楽におけるベテラン・コンポーザー/ギタリストであるマイケル・ピサロによるスプリットである。大げさな言い方かもしれないが、これは異なる世代によるアメリカの現代音楽のいまだ。軽薄な快楽主義者である僕が真面目な批評家がごったがえす領域に対してそんな台詞を放っていいものだろうか、はなはだ疑問ではあるが、このレコードの素晴らしさは無視できない。堅苦しいことは何も言えなくてもうしわけないが、少なくとも僕にはアクティヴィティが下がりがちな寒い日々の隙間にこのレコードが新たな意味をもたらしてくれている気がする。

 90年代のドラムンベース・シーンが生んだスター、ゴールディー。彼のレーベル〈メタルヘッズ〉は今年で20年を迎える(1994年は、ドラムンベースが最初に爆発した年でもあった)。ワックス・ドクター、ディリンジャ、ドック・スコット、アレックス・リース、フォーテックなどなど、ハードコア〜ドラムンベース〜ダークコア/アートコア……、レイヴ・ミュージックをより音楽的に洗練させたこのレーベル(そして4ヒーローの〈リーンフォースト〉)があればこそ、今日のUKベース・ミュージックがあると言っても過言ではない。マーラ、アントールド、アコードなども〈メタルヘッズ〉からの影響を認めている。
 今週末、ゴールディーは盟友ドック・スコットと共に東京でプレイ。彼らがどのようなプレイをするのか是非体感してほしい。日本からはマコトやDX、テツジ・タナカなど、国内のドラムンベース・シーンの第一線で活躍するDJたちも出演。

DBS 18th Anniversary
"METALHEADZ HISTORY SESSIONS"

2014年12月20日
@代官山ユニット

OPEN/START 23:30
CHARGE:ADV 3,300YEN  DOOR 3,800YEN

feat.
GOLDIE x DOC SCOTT

with.
MAKOTO
TENDAI
MC CARDZ
MC LUCID

vj/laser: SO IN THE HOUSE
live painting: The Spilt Ink

SALOON:
DX x JUN
TETSUJI TANAKA x DJ MIYU
STITCH x PRETTY BWOY
DJ DON x JUNGLE ROCK
DUBTRO x HELKTRAM

info. 03.5459.8630 UNIT
www.unit-tokyo.com
https://www.dbs-tokyo.com

<UNIT>
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

Ticket outlets:NOW ON SALE!
PIA (0570-02-9999/P-code: 246-233)、 LAWSON (L-code: 78221)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

GOLDIE (aka RUFIGE KRU, Metalheadz, UK)
"KING OF DRUM & BASS"、ゴールディー。80年代にUK屈指のグラフィティ・アーティストとして名を馳せ、92年に4ヒーローのReinforcedからRUFIGE KRU名義でリリースを開始、ダークコアと呼ばれたハードコア・ブレイクビーツの新潮流を築く。94年にはレーベル、Metalheadzを始動。自身は95年にFFRRから1st.アルバム『TIMELESS』を発表、ドラム&ベースの金字塔となる。98年の『SATURNZ RETURN』はKRSワン、ノエル・ギャラガーらをゲストに迎え、ヒップホップ、ロックとのクロスオーヴァーを示す。その後はレーベル運営、DJ活動、俳優業に多忙を極めるが07年、RUFIGE KRU名義で『MALICE IN WONDERLAND』をMetalheadzから発表、08年に自伝的映画のサウンドトラックとなるアルバム『SINE TEMPUS』を配信で発表。09年にはRUFIGE KRU名義の『MEMOIRS OF AN AFTERLIFE』をリリース、またアートの分野でも個展を開催する等、英国が生んだ現代希有のアーティストとして精力的な活動を続けている。12年、Metalheadzの通算100リリースに渾身のシングル"Freedom"を発表。13年には新曲を含む初のコンピレーション『THE ALCHEMIST: THE BEST OF 1992-2012』をCD3枚組でリリース。そして今年7月、ロンドンの名門クラブ、Ministry of SoundからのヴィンテージMIXシリーズ『MASTERPIECE』の3枚組CDを発表している。
https://www.goldie.co.uk/
https://www.metalheadz.co.uk/
https://www.facebook.com/Goldie
https://twitter.com/MRGOLDIE

DOC SCOTT (aka NASTY HABITS, 31/Metalheadz, UK)
"King of the Rollers"と称される至高のDJ、ドック・スコットはダークコア、テックステップ、リキッドファンク等の潮流を生む革命的トラックの数々でドラム&ベース・シーンの頂点に君臨する最重要アーティストの一人である。14歳よりヒップホップDJを開始。その後、デトロイト・テクノ/シカゴ・アシッドハウスに触発され'91年から制作を始め、第1作"Surgery"がグルーヴライダーの支持で大ヒット、ハードコア・テクノ/レイヴ・シーンに頭角を現わす。華やかなレイヴ時代の終焉と暗い現代社会を反映したダークかつハードなサウンド、ダークコアを先駆けた彼は、ドック・スコット及びナスティ・ハビッツの名義で"Drumz"、"Dark Angel"、"Last Action Hero"等の傑作をReinforced、Metalheadzから送り出し、ドラム&ベースの革新に貢献する。'95年には自己のレーベル、31を設立し、"Shadow Boxing"に代表されるテックステップと呼ばれるサイバー・サウンドの急先鋒となり、オプティカル、ペンデュラムらの才能を逸早く見いだした。DJとしては伝説のMetalheadz Sunday Sessionsのレジデントをつとめ、シャープなミキシングと独自のプログラミング・スキルでクラウドを絶頂へ誘う、シーンの至宝である。実に7年ぶり、待望のDBS帰還!
https://www.facebook.com/DOCSCOTTOFFICIAL
https://twitter.com/docscott31
https://soundcloud.com/docscott31


デンシノオト - ele-king

2014年 年間ベスト・アルバム

Sound Patrol - ele-king

 萩原健太さんはオソロしい。何日も何日もぶっ続けで『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』を書きつづけ、ということは、その間も繰り返しボブ・ディランを聴きつづけ、ほぼ400ページを書き終えたと思ったら、「じゃー、ボブ・ディランでも聴くかな」と、実際に聴いたそうなのである。信じられない。僕はといえば、今年は1月2日から『ハウス・ディフィニティヴ』のために何万曲というハウス・ミュージックを聴きつづけ、2ヵ月を過ぎた頃にはハウスが嫌いになってきて、3月もなかばになると、憎しみさえ芽生えつつあったというのに。時間に追われながら、来る日も来る日もトントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントンヘイヘイホートントントントントントントントントントントントントントントン……(足立正生『幽閉者 テロリスト』参照)。もう、とにかくほかのリズムが聴きたかった。ハウスというより、4つ打ちのリズムが拷問だった。そのときは何を聴いたのか忘れてしまったけれど、ようやく『ele-king Vol.15』の編集作業から解放され、特集と関係ないものが聴けるようになったら……以下のようなものに埋没しているわけですね。細かく調べるのは面倒くさいので、正確なことが知りたい人は竹内正太郎のツイッターをフォローしてくださいね(間違っていたら、きっと彼が調べてくれる……)。校了してから聴きはじめたので、ここに挙げたものは年末号には載っていません!


felicita / Mmmhm


 フェリチータ。イタリア語で「幸せ」。思わずミニ・アルバムを買ってしまいましたが、「幸せ」というのにはあまりにアヴァンギャルド。ロンドンに住むアジア系の女性だそうです。ケロ・ケロ・ボニトに対するマウス・オン・マースからのアンサーか。

Night & Tickets / August Morning In My City

 フィッシュマンズをドローン化させたような1曲。これも思わずカセットを買ってしまいましたが、こういうのはコレだけでした。アルバム・タイトルは『本当に夏が嫌いなんだよ(actually i really hate summer)で、どうやらロシアの人らしい。

Rabit / Sun Dragon


 何が起きているのか考えたくないグライムの新星。ロティック(Lotic)とかテキ・ラテックス(TTC)とかロクな人がミックスに使ってません。スラック(Slackk)といい、2015年はグライムですね(希望的観測)。

Raaskalbomfukkerz


 アムステルダムでスクォッテイングをしている人たちだそうです。ノイエ・ドイッチェ・ヴェレをちょっとヒネッた感じ。手術前の患者の体を使って演奏するとか、スウェーデンの『サウンド・オブ・ノイズ』という映画と発想が似てるのかな。

Vince Staples / Blue Suede


 これはもうあちこちで騒がれてます。西海岸のラッパーです。ジェイ・ミルズ“フー”を悲しいモードに切り替えた感じ?

Gypsy Mamba / BLESS THA RATCHET


 西海岸からまた変り種。ルーマニア系だそうです。あったようななかったような。EPには入ってなかった。

Nederlandse Maatschappij Ontwikkeling / Full Spectrum Intercourse


 アムステルダムの2人組。ひとりはジャズ系のようで、タイコたたきまくりのちょっと変わったミニマル。

Russo / Purple Earth


 トーン・ホークのレーベルからデビューしたアリ・ルッソのデビュー・シングル。この人もニューヨークの映像作家だそうです。

NxxxxxS / Vaporlove


 デビュー・アルバムも出ましたが、これはそれ以前の曲。渋谷のスクラッブル交差点を映せば、なんでもヴェイパーウェイヴになると思ってるだろー。「エヌ・ファイヴ・エックシーズ」と読むみたい。パリから。

One Circle / Transparency


 コード9が持ち上げていたイタリアのダブステップ、ヴァーゲ・ステーレことダニエル・マナがセーラーかんな子のDJチャートでもおなじみスターゲイトことロレンツォ・センニらと組んだグライムの変り種。

(おまけ)

Dinner Music / Blood Quantum 2013


DJ WADA (Dirreta, Sublime) - ele-king

12月Dirretaより2枚目のアナログEP 「Flax, SaivoA13」発売されました。
皆様よろしくお願いします!
https://www.facebook.com/beetbeat?ref=hl
https://www.facebook.com/beetbeat/app_109770245765922
https://soundcloud.com/dj_wada

 

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