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Michael Pisaro, Matthew Sullivan

AmbientNoise

Michael Pisaro, Matthew Sullivan

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Bánh Mì Verlag

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倉本諒   Dec 16,2014 UP

 今日発売の『ele-king vol.15』に向けてD/P/Iのインタヴューをおこなったわけであるが、かつての同居人に対しての真面目な質疑応答を経てアレックス・グレーのアーティストとしての核心に近づけた気がする。当時LAのあの家で暮らしていた時間が僕にとって最高にバカバカしく、そして最高にクリエイティヴであったのは、アレックス・グレー、ショーン・マッカン、マシュー・サリヴァンという異なるミュージック・バッググラウンドを持つ3人が、相乗効果によって確実に互いを向上させるという環境があったからだ。

 アメリカが失ったポップ・アイコンへの鎮魂歌としてのアンビエント・ユニット1958 - 2009のマシュー・サリヴァンとアレックス・トゥミー(ミラー・トゥ・ミラー/Mirror to Mirror)やジェフ・ウィッチャー(レネ・ヘル/Rene Hell)等の連中はゼロ年代初頭、「ニューウェーヴ・オブ・LAノイズ」と言われたようなシーンを形成するほど精力的に極端なパフォーマンスを展開させていた。彼らはほぼ同時期にノイズからアンビエントへ移行していった。
 同居していた当時、何度かマシュー・サリヴァンにそういった話を振ってみたが、彼いわくそれは意図的な移行ではなく、そもそもアメリカン・ノイズ・(ノット・)ミュージック・シーンに属したこともないし、アンビエント・ミュージックを志したつもりもないという。じゃあ君は君の音源やライヴをまだ体験したことのない人間からどんなサウンドなのか訊ねられたらなんと答えるんだ? という僕の質問を受けた彼は開け放たれた部屋の窓を指差しながら、こんな音だって言うさ、と笑いながら答えた。朝日が差し込む窓からは風が外の木立を揺らしながら吹き込んでいた。

 彼のギター・ミュージックとしてのプロジェクトであるアーン(Earn)のヘル・オン・アース(Hell on Earth)は個人的に昨年のベスト・アンビエント・レコードである。ある種の達成感を得たと語る彼はアーンとしての活動を停止し、また主宰していたDIYカセットレーベル、〈エクヘイン(Ekhein)〉も停止する。彼がミュージック・コンクレートに没頭するきっかけとしては、アカデミックに現代音楽を追求する自分とは異なるバッググラウンドを持つショーン・マッカンとの共同制作が大きいのはもちろんであるが、なにより彼自身の生活の変化にもよるだろう。それまでのレーベル・ワークスを打ち切り、〈プーバー・レコーズ〉での勤務をはじめた彼は、日々の通勤中に膨大なサンプリングと着想を得ているように思われる。一般論において車移動が当たり前であるLAでの生活において、この家の住民たちのように公共交通機関を主として移動する連中も珍しい。いつだったか、いわゆる通勤ラッシュ時に電車に乗っていた日本人の僕は、ガラガラの車内から見えるフリーウェイの猛烈な渋滞が奇妙でならなかった。妙な話であるが、僕はこのときマシュー・サリヴァンの、日常のありふれた情景とグロテスクさを切り取り、それ自体の意味を曖昧にしながら美しい音楽を編む行為に共感した。

 このレコードはマシュー・サリヴァンとアメリカの現代音楽におけるベテラン・コンポーザー/ギタリストであるマイケル・ピサロによるスプリットである。大げさな言い方かもしれないが、これは異なる世代によるアメリカの現代音楽のいまだ。軽薄な快楽主義者である僕が真面目な批評家がごったがえす領域に対してそんな台詞を放っていいものだろうか、はなはだ疑問ではあるが、このレコードの素晴らしさは無視できない。堅苦しいことは何も言えなくてもうしわけないが、少なくとも僕にはアクティヴィティが下がりがちな寒い日々の隙間にこのレコードが新たな意味をもたらしてくれている気がする。

倉本諒

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