「K Á R Y Y N」と一致するもの

interview with Yakenohara - ele-king


やけのはら
SELF-PORTRAIT

Felicity

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 やけらしい……というか、総じて、のんびりしている。カリブ海の影響を受けたリズムも、控え目に鳴っている。ジャケはかわいいイラスト。
 『SELF-PORTRAIT』はやけのはらのリミックス集で、2007年から2013年までのあいだに彼が手がけた楽曲が12曲入っている。
 このリミックス盤は……、彼のファースト・アルバム『ディス・ナイト・イズ・スティル・ヤング』が2010年のリリースなので、2007〜8年という、より初期のやけのはらが聴ける作品だと言える。リミックスを依頼しているのは──中村一義 、奇妙礼太郎、idea of a joke、ランタンパレード、アナログフィッシュ、Spangle call Lilli lineなどなど──名前を並べるとあまり統一感のないように思えるのだが、彼らの曲をやけのはらが再構築すると1枚のアルバムの1曲に収まる。
 個々のアイデアについては、彼自身が書いたライナーに詳細が記されている。ライナーをいつか自分で書きたかったということだが、たしかに力が入った言葉をみっちり書いている。

 ボヘミアン気質の初期の作風、オプティミスティックな感覚はいまでもやけのはらのトレードマークなのだろうが、やはりある時期までの初々しさは、その時期──彼がまだ真冬でもサンダル履きで街をうろついていた頃──だからこそ出せたものだと言えるだろう……ふと、いまこれを書きながら思ったのだが、サンダル履きのやけのはらは、日本でチャヴ・ファッションを先んじて実践していた男なのかもしれない。

 彼は、2000年代なかばの時点では、ラッパーというよりも、若手のDJのひとりとして評判だった。いろんなところから声をかけられ、よくDJをしていたと思う。ファースト・アルバムを出すのが遅すぎただけで、早い時期から彼のもとにリミックスのオファーがあっても不自然ではない……

ずっとリミックス盤を出したかったんですけど、タイトルが決まらなかった。エイフェックス・ツインのタイトル、『26ミクシーズ・フォー・キャッシュ』がずーっと頭にあって、ほんと最高のタイトルだなと思ってたんで(笑)。あの秀逸なタイトルが、ハードルとして高くありすぎましたね。

率直な感想を言うと、けっこうリミックスをやってたんだなっていう。

やけのはら(以下、やけ):あ、そうですか。まずそこから(笑)。

(笑)すごくやってたんだね! 奇妙礼太郎のリミックスは知ってるけど、他のはほとんど聴いてなかったなあ。知らないものばかりだったよ。

やけ:野田さんの聴きそうなところとはちょっと違うかもしれないですね、もしかすると。

日本では、リミックス作品のリリースが90年代ほど盛んじゃないし、あとポップスとDJカルチャーとの溝、いま日本では開いちゃってるからね。

やけ:その頃だったらリミックス盤ってけっこうありましたもんね。1枚丸々リミックスとか。

だから、いまエレキングでもリミックス盤って作ってるんだよ。12インチのアナログ盤で。

やけ:知ってますよ。踊ってばかりの国。

そうそう、それが1枚目で、次はオウガ・ユー・アスホールの新曲をアルツくんにリミックス頼んでいて……いま気がついたんだけど、やけちゃんってアルツくんに似てるよね?

やけ:それ見た目でしょ(笑)? たしかによく言われます。

へへへへ、それにしても、やけちゃん、こんなにリミックスをやってるんだなあ。売れっ子じゃない。

やけ:けっこう、長いタイムスパンのなかから選んだんで。でも、もっといっぱいあるから。まあ、あんまクラブ仕様って感じでもないですけどね。

そうかなー。やっぱ、どちらかと言うとクラブ寄りの感性だなと思ったんだけど……と言っても、オリジナルを知らない曲が多いから、オリジナルがクラブ寄りだったりするのかもね。でも、やけらしさは感じるよ。ちょっと清々しい感じとか、タイトルを『SELF-PORTRAIT』ってつけたくなる気持ちもわかる。良いタイトルだね。

やけ:はい。ありがとうございます。

やっぱ、フェリシティから出してから、リミキサーとしての仕事は多いの?

やけ:いや、わかんないです(笑)。ひとと比べて多いのか少ないのかわかんないですけど、まあたまに誘ってもらったり。さっきの、ポップスとクラブとの溝の話で言えば、僕がロックとかポップスが好きだったり理解があった上でクラブっぽいものができると思われてるのかもしれないですね。頼んでくれるひとからしたら。

ああー。(DJ)ヨーグルトとちょっと近いよね、その見られ方は。

やけ:あくまで想像なんで、実際はわからないですけどね。頼む側からすると、自分たちの音楽はあんまりわかんない人間がただクラブ仕様にするっていうのは、ちょっとなって思うのかもしれないです。

なるほど。頼まれると絶対断らないタイプでしょ?

やけ:基本は。ただ自分のそのときのスケジュールとかもあるんで。

よほどのことがない限りね。

やけ:まあそうですね。

相手は選ばない?

やけ:選ばないって言うとヘンですけど、なんというか、挑戦というか。例えばこれには入ってないですけど、てんぱ組.ってアイドルみたいなひとなんかもやらせてもらったりしたんですけど。そういう普段聴かなかったり自分の作っているものと距離があっても、リミックスだと、チャレンジでやってみようかな、っていうのはありますけど。

なんで入れなかったの。

やけ:リミックスは、今回選んだ曲の倍ぐらいあって、そのなかからこれにしたんで。なんとなく、評判が良かった風のやつから逆算して入れていったというか。あと、ぼんやりなんですけど「あのとき友だちがいいって言ってくれたな」とか。3票ぐらい。ゼロか3かくらいの小さい差なんですけど(笑)。あとは自分がいままで関わったやつの、一番端と端まで入れちゃうとぐちゃぐちゃになりすぎるんで。いちおう1枚の整合性とバランスを考えつつ。

なるほど。でも、昔から議論されることだけどさ、リミックスを楽しむ文化が、いまだに日本では定着してないんじゃない?

やけ:どういうことですか?

いまだにビョークの曲をハーバートがリミックスするとビョークのファンが怒っちゃうみたいな。

やけ:はい、はい。ミュージシャンのクレジットのほうが大きいのは仕方がないけど。

だから、アイドルだろうが何だろうがさ、リミックスする側からすれば関係ないじゃない。

やけ::そうなんですけど、でも僕の場合は、たとえば歌のひとの曲だったら歌は全部残すとか、素材にはしないって自分内での決めごとにしてるんで。元のひとの中心軸は、まあ歌なら歌で、全部残すんで。あとなんだろう、そのサジ加減を楽しんでるんですけど、思いっきり全部素材にはしないで、いちおう元のリアレンジって風にやってるんで。だから自分ヴァージョンにはなってるけど、元のひとの核は全部尊重してるっていうか残してるっていうか。

なるほどね。たしかにリミックスっていうのは原曲に対するリスペクトがあるかどうかっていうのは、ひとつあるかもね。

やけ:リスペクトって言葉かはわからないですけど、素材にしちゃうんだったら何でもいっしょになっちゃうんで、やっててもつまらないっていう。

まあね。エイフェックス・ツインがそれこそ「カネのためにやったリミックス」って言ったりね(笑)。

やけ:あれが頭にあったんですよね、あのタイトル。

『26ミクシーズ・フォー・キャッシュ』(2003年)だっけ。あれは、リミックス文化に対するシニカルな批評だもんね。

やけ:そうなんですよ。ずっと(リミックス盤を)出したかったんですけど、タイトルが決まらなかったんですよね。で、エイフェックス・ツインのあのタイトルがずーっと頭にあって、ほんと最高のタイトルだなと思ってたんで(笑)。『26ミクシーズ・フォー・キャッシュ』みたいなのがいいなーって。あの秀逸なタイトルが、ハードルとして高くありすぎましたね。それで、なかなか出せなかった。

ああー。それでなんで『SELF-PORTRAIT』にしたの?

やけ:これはね、もう……まあボブ・ディランなんですけど。

うわ、大きいこと言うねー(笑)!

やけ:いや、ディランのアルバムであるじゃないですか。カヴァーが多く入ってる『セルフ ポートレイト』。あの感じでいいかなっていう。いま言った話の流れに通じるかもしれないですね。一見ひとの曲だけど、意外と俺のエッセンスがあるぞ、と。

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リミックスって、トム・モルトンとかウォルター・ギボンズとか、初期ディスコのひとたちのリエディットが最初じゃないですか。もっと過去に遡れば、やっぱりジャマイカのダブって発想があるでしょう。すでに録音してある素材を並べ替えたり、抜き差ししたりっていうか。


やけのはら
SELF-PORTRAIT

Felicity

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このジャケットの感じも、2000年代半ばぐらいの、やけのはらが自主で作ったミックスCDを思い出すなー。

やけ:たぶん一貫してそういうノリが好きなんじゃないですかね、僕。

これって、どういうノリなんだろうね?

やけ:まあ明るい感じ。楽しい感じ。

かわいい感じ好きだよね。ちなみに、リミックスしても歌詞を残すっていうのは、ひとつのこだわり?

やけ:うーん、歌詞を残さないとつまらない。なんだろうな、元からあった自分の曲のストックにちょっとヴォイス・サンプル乗せるとかやり出したら、なんかあんまり楽しく取り組めないんで。

ある程度縛りがあるなかでオリジナリティを出すっていう。

やけ:そうっすね。あとはアレンジって意識なんで、元の曲の一番大事なところは残さないとアレンジにならないんで。野田さんはどれが面白かったとかありますか?

意外なことに、中村一義のリミックスがいちばん良かったね。

やけ:意外(笑)? 何に対して意外なのかわかんないですけど(笑)。僕もけっこういいと思ってるから2曲めにしてるんですよ。

あと1曲めも良かったけどね!

やけ:それはイントロですよ(笑)。大丈夫ですか、2曲めまでしか聴いてないんじゃないですか?(笑)

はははは、中村一義のリミックスは、ちょっとハウシーな感じじゃない?

やけ:ハウスではないですよ。アンビエントですよ。

ピッチが遅いけどビートはあるし、ビートダウン・ハウスって感じじゃない? 

やけ:キックがないし。

ああ、これはアンビエントという解釈なんだね。で、続く奇妙礼太郎はダブんだけど。

やけ:リミックスやるときに限らず、あんまり打ち出すタイミングがないんですけど。ダブとアンビエントはすごく好きなんですよ。ただそれだけなんですよね。

ダブとアンビエントっていうのは、自分のスタイルとして意識しているの?

やけ:それはね、違うんですよねー、なんとなく。でもリミックスって、トム・モルトンとかウォルター・ギボンズとか、初期ディスコのひとたちのリエディットが最初じゃないですか。もっと過去に遡れば、やっぱりジャマイカのダブって発想があるでしょう。すでに録音してある素材を並べ替えたり、抜き差ししたりっていうか。どうしてもリミックスって、ダブにたどり着くところがあるような気がしますけどね。

なるほどね。そういう理解かー。音色はどういう風に選んでるの?

やけ:マニアックな質問ですね(笑)。それはそのときどきで、「これが合うな」とか、逆に「合わないから面白いな」とか、ケース・バイ・ケースですけど。

なんで訊いたかって言うと、基本的にはわりとストレートな音色っていうかさ。

やけ:まあ、そうかもしれないですね。作っていくなかで、自分がしっくり来るものを選んでいるだけなんですけどね。

基本的にはキラキラした感じの、気持ちいいサウンドだよね、って言っちゃうと単純だけど。

やけ:まあ、そうですね。やっぱ自分のなかの要素としてはあんまりないんじゃないですか、インダストリアルとかは。

あんまり気持ち良すぎて、気持ち悪くなったりしない?

やけ:(笑)すごい質問ですね! 面白いですね。あ、でも、それがギリギリ僕のなかでテクノですかね。ちょっと砂糖多すぎるなと思うとテクノ聴いたり。

いまの世のなかの一部っていうのは、どんどん快適な方向に行ってるからさ。

やけ:いや、そこの対立軸には置いてほしくないっていうか。

はははは!

やけ:いや、この気持ちいい世界観は直接的にわかりやすい気持ち良さじゃないですよ。もうちょっと隙間産業的なもので。

(笑)ニッチな。

やけ:でもストレートに、「こういう風にしたら気持ちいいだろう」っていう風には行ってないっていうか。自分の意識としては。

すごく抽象的な質問だけど、じゃあどの辺に落とし込もうとしてるの?

やけ:それは毎回チャレンジというか。でも、けっこう行き先を決めないで作ってるかもしれないですね。自分の曲でもそうですけど。とりあえず、最短距離には行かないようにはしてるんですよね。たとえば「シティ・ポップ風のアレンジにしよう」とか、そういうのは自分のなかでは無いっていうか。

そうだね、当たり前だけど、やけのはらの個性が出てるもんね。

やけ:僕の好みは出ていますよね。

今回のリミックスで一番古いのってどれ?

やけ:Aira Mitsukiってひとかな。2008年とかだから。

このひとは知らないんだけど、どういうひとなの?

やけ:ちょっとアイドル的な。パフューム的なことをやってたひとですね。

とくに大変だったものってある?

やけ:うーん、どれが極端に大変だったってことはないかもしれないですね。もちろん、どれも頑張ってやってるんですけど、でもそんなに苦労しなかったやつのほうが入ってるかもしれないですね。こねくり回してやったやつは、なんだろう、悪いってわけでもないですけど。ここには入ってないやつのほうが、むしろこねくり回したり悩んじゃったのが多いかもしれないです。

「こういうリミックスをお願いしたい」みたいな、リクエストをされたことはある?

やけ:うーん、思い出す限り、基本的にはないですね。そういうオファーだったら他のひとに行くんじゃないですか(笑)。もっと器用にできそうなひとに。

「クラブでかけられるダンス・ミュージックにしてくれ」っていう依頼はなかった?

やけ:思い出す限りそういうのはなかったですね。あと、僕がリミックスやるときは、そのメディアのことも考えてやるんで。CDのあとにボーナス・トラックで付くのか、5曲ぐらいのシングルのカップリングで入るのか、レコードの7インチや12インチで出るのか、とかは、いちおう考えて作ってるんで。最初からレコードだったら、クラブでもかかる可能性のあるようなのにしようとか。
 あと、対象のミュージシャンを僕が知ってる場合もあんまり知らない場合もあるんですけど、どんなリスナー層が多いのかな、とかもぼんやりとは気にするというか。そのひとたちがまったく好きにならないものは避けたいけど、合わせてもつまらないので、そのバランスは最初に考えますけどね。ギリギリ楽しんでくれるかな、ぐらいの感じだけど、その層のひとが聴かない要素も入れたりとか。そういう案配は考えます。

時代的な難しさはとくに感じなかった? リミックスって、そのファンのためにやるものでもないんだけど、そのファンに聴いて欲しいものでもあるし。

やけ:リミックスなんで、ひとから頼んでやってることが前提にありますからね。まずは、頼んでくれるひとがいたからできたものなんで、そこは受け身は受け身ですから。ただ、今回リミックスを出したいと思ったのは、自分なりにそのときどき──バイト的にではなく──ちゃんとリミックスをやってるって意識があったり、それが世のなか的にどう取られるのかはわからないですけど、まとめて聴いて面白く聴いてもらえるんじゃないかと思ってるからなんですね。

ダンスフロアのことは考えない?

やけ:僕の曲ってもともと日本語の歌とかが入ってるのが多いので、ダンスフロアのど真ん中、2時とかの感じではないですよね。アレンジや曲調によっては時間帯が違えばかけられるかも、とかはあっても。

昔、ディスコをよくかけてたじゃない?

やけ:ディスコはいまでもかけてますよ。ダンスフロアの感覚はどれもあるんですけど。でも、けっこう(自分が頼まれるリミックスは)歌ものが多いからなー。そういう意味ではダンス・リミックスって言うより、やっぱりリアレンジしてるって意識かもしれないですね。あんまり想定はフロアではなかったりもする。
 そういう意味で言えば、たしかに直接的にダンスフロアを目指したものは少ない。っていうかそういう意識はないかもしれないですね。でも後半のアンビエント的なやつも、自分のなかではダンスフロア的な感覚でアンビエントになってはいるんですけどね。自分としては、ハウスやテクノもやってみたいんですけどね。あんまりそう見られてないのかもしれないですね。いまは、あんまりダンスのイメージがないのかもしれない。

選曲は、それなりに大変だった?

やけ:選曲は、けっこう大変でしたね。リミックス盤は、5年前からずっと出したいなと思ってたんですよ、ファースト・アルバム(※2010年の『ディス・ナイト・イズ・スティル・ヤング』)の前ぐらいから。僕の気持ちとしてはもっと前からやりたかったんですけど。

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僕のことをラッパーだと知らなかったひとも多かったと思います。自分でラップをしてるひとが、ひとの曲をリミックスしてアルバム出すっていうのも前代未聞な気がするんですけどね。


やけのはら
SELF-PORTRAIT

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2007年から2013年までに作った曲が入っているわけだけど、やけのはらは、2007年のあたりはクラブ系だと括られていたじゃない?

やけ:ある意味、いまでもそのつもりなんですけど(笑)。でもリミックスって、クラブ・ヴァージョンにするもんだってことも忘れて作業してましたね。普通にただリアレンジのつもりっていうか。アレンジャーの気分っていうか。ただ自分の手駒として、ギターを上手く弾けるとかじゃないんで、どうしてもクラブ的な感覚が自分のできる解釈になるっていうのはありますけど。

2007年から2013年だと、デビュー・アルバム前からの仕事も入っているわけだけど、自分自身のリミックス・ワークに対する姿勢はあんまり変わらなかった?

やけ:聴き返して思うのは、変わらないっていうとヘンかもしれないですけど、古い曲でもいま作りたいものや好きなものと細かいポイントはあんまり変わらなかったり。興味あることなんかはそのときどきで変わるんですけど。今回振り返って、逆に連続性を感じましたね。半分ぐらいミックスも直したりしたんですよ。古い曲に手を入れたりしてたら、そんなに断絶したものと感じなかったというか。

統一感があるよね。

やけ:さっきの話とも繋がるんですけど、そのときに流行ってる音のモード/ジャンル/スタイルをちょっと取り入れてても、そのときそのときで飛び石的に変えていくってことをやってないですからね。自分なりのやり方でいつもやってるし、そういう面では時間軸はあんまり関係なかったりする。良くも悪くも。この時代は流行ってたからエレクトロやってたけど、いまではEDMですねとか、そういう直接的な進み方ではないっていうか。

たとえば、アイドルには興味なくても、アイドルのやけのはらリミックスには興味がある人もいるはずだし。

やけ:僕も、自分と関わりのないひとのリミックスもしてみたいですけどね。

それもやっぱ、それはやけのはら的なものに落とし込まれるんだろうね。メローで、アンビエントなフィーリングなものに。

やけ:わからないけど、自分の好きテイストには持って行こうと努力しますね。

やけちゃんって不思議なポジションだよね。ヒップホップでもないし、ロックでもないし、ハウスやテクノのクラブDJでもない。なんか、カテゴライズできないよね。

やけ:そこは僕も悩みどころなんですよ。

なんで(笑)? 良いことじゃない、カテゴライズされたくないって言いながらカテゴライズされた音楽をやるより。

やけ:いや、それは自然にやっててそういう状況になってるんですけど。どれもやりたくてやってるからいまから変わりようもないんですけど、普通の感じの売り方──っていう言い方が合ってるかもわからないですけど──でいったら、こういうのじゃダメなんだろうなーとか思ったりするんですけど。どれも楽しく、思い入れあってやってるんで難しいんですけど。

2007年って言うとDJばかりをやってた頃?

やけ:そうですね。その頃やってたことを今回まとめられたりしたんで。そのときにアルバムって形で直接出せなくても、やってたことがいままとめられたし良かったかなとは思います。今後に関しては、自分のアルバムを5年に一度、10年に一度ではなく、もっと早いペースで出したいなっていうのは思っていますね。

もうちょっと制作に力を入れたいんだ。

やけ:なんていうか、作るのが遅いんですよね。

ファースト・アルバムもリリースが遅かったもんね。

やけ:そうですね。たぶん遅いんです。27歳とかでアルバム出せても良かったのかもしれないし。20代のときはいっぱいDJをやってそれが楽しくて良かったっていうのもあったんですけど、形に残ることでいろいろしたいなっていうのは思いますけど。

最近はクラブとライヴハウスだったらどっちからのオファーが多い?

やけ:けっこう同じぐらいになってるかもしれないですね。ちょっと前までは基本DJやクラブをバーッといっぱいやって、ライヴのほうがちょこちょこって感じだったのが。

ライヴのオファーがけっこう増えてるんだ?

やけ:それと、DJが減ってる。で、ラップのアルバムを出すとライヴに誘ってくれるひとが増えて、クラブ系のひとは「あれ、この頃あんまりDJやってないのかな」みたいな感じで両方のバランスが動くというか。自分としてもそれをどっちかだけに振り切りたいわけでもないし。DJのオファーが減ると寂しいんですけど。

ははは。

やけ:だけどDJばっかり年100本とかできないな、とかもあるし。そのペースでやってるとアルバムが作れないんですよ、結局。

そうだよね。ファースト・アルバム出る前は、DJとして評判だった男だもんね。

やけ:まあラッパーであることを知らなかったひとも多かったと思いますしね。ひとの曲にたまに参加しても、そういうことを知らないひとはいっぱいいたんじゃないですか。このひとはラップをしてる、みたいなことは。ちなみにその話で言うと、自分でラップをしてるひとが、ひとの曲をリミックスしてアルバム出すっていうのも前代未聞な気がするんですけどね。普通あんまりないっていう。それだったらどっちかって言うと、自分のラップをいろんなひとにリミックスしてもらったアルバムは出すでしょうけど。

たしかにそれは言えてる。だからそういう意味でヘンなポジションだと思うんだよ。

やけ:そうですね。そういう認識は自分でもあります。

良くも悪くもオリジナルなポジションだよね(笑)。

やけ:もっとわかりやすいほうが良かったのかなと思ったりもするんですけど、でも変えようがないんでね。

でも、やりたいことは、はっきりあるでしょう?

やけ:それはつねにありますね。いつでもいっぱいある。10個ぐらい先までありますね(笑)。そういう意味で言うと。アンビエントのアルバム出してみたいとか、ブレイクビーツのアルバム出してみたいとか。ラップのアルバムはラップのアルバムで、僕のなかにいろいろあるんですよ。たとえば全部バンドでやってみたいとかもあるし、全部ひとにプロデュースしてもらってやってみたいとか。そういうやりたいことはいっぱいあって。「でも次はこれをやろうかな」とか、いまのことより次のことを日々考えてるって感じですね。

じゃ、次はアンビエントだ。

やけ:アンビエントは僕のなかで取っといてるんですけどね。20年後ぐらい後にやろうかなと。

はははは、20年後生きてるかどうかわからないよ(笑)。

やけ:ま、そうですけど、いまはまだ、先に、もっとフィジカルなものをやりたい気分ですね。


※初回盤特典のダウンロードEP(5曲入り)は思い切りダンス仕様でした。


語られていないことが多すぎる!
磯部涼×九龍ジョー、
ライヴハウスからネット・ミュージックまで、
音楽と“現場”のいまを考える対話集。

磯部涼と九龍ジョー。
音楽やそれを取り巻く風俗を現場の皮膚感覚から言葉にし、時代を動かすアンダーグラウンド・カルチャーをつぶさに眺めてきた人気ライター2人が、これからの音楽の10年を考える連続対談集『遊びつかれた朝に──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』、ついにリリースとなります!
2010年代に、音楽はどのような場所で鳴っているのか、それは政治や社会とどのように関係しているのか……。
過剰な情報に取り巻かれながら、いまいる場所に希望を生むための、音楽のはなし。
ele-king booksから4月25日、発売です!

●まるで問題集。考えるためのヒントがぎっしり!
日々おびただしい音源とニュースが行き交う音楽シーン。しかし、「話題」はあふれていても、「問題」はぼんやりとそのなかに埋もれてしまっているもの。小さなシーンやコミュニティの豊かなあり方から、隣国韓国インディの現在や風営法や原発をめぐる運動、あるいはシティ・ポップ再評価を通した東京と都市の考察まで、インターネット上も含めたさまざまな「現場」を軸として、見えない問いに色をつける4つの対話を収録。もっともっと考えたくなる、音楽カルチャーのいま。

●すぐに誰かと話したい! いまならではのトピック、ふたりならではの考察。
銀杏BOYZが残した本当のインパクト/日本にインディが根づくとき/音楽に可能な“下からの再開発”/ミュージシャンと政治の関係/風営法は何を守るのか/「すべてをかける」音楽の終わり/アートと倫理/韓国インディのいま/世界標準か、「ガラパゴス」か/「ずっとウソだった」──ヒットソングが示すもの/2万字インタヴュー再考/東京とシティ・ポップ/圧縮情報のシャワー/なぜ音楽のなかで社会について語ろうとするのか
……などなど既視感を越えていく充実の議論。

■磯部涼
音楽ライター。1978年生まれ。主にマイナー音楽、及びそれらと社会との関わりについてのテキストを執筆し、2004年に単行本『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(太田出版)を、2011年に続編『音楽が終わって、人生が始まる』(アスペクト)を刊行。その他、編著に風営法とクラブの問題を扱った『踊ってはいけない国、日本』『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(ともに河出書房新社)がある。

■九龍ジョー
編集者、ライター。1976年生まれ。ポップ・カルチャーを中心に原稿執筆。『KAMINOGE』、『Quick Japan』、『CDジャーナル』、『音楽と人』、『シアターガイド』、などで連載中。『キネマ旬報』にて星取り評担当。編集近刊に、坂口恭平『幻年時代』(幻冬舎)、岡田利規『遡行 変形していくための演劇論』(河出書房新社)、『MY BEST FRIENDS どついたるねん写真集』(SPACE SHOWER BOOKS)などがある。


Amazon Tower HMV

■磯部涼+九龍ジョー・著
『遊びつかれた朝に
──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』

ISBN:978-4-907276-11-9

発売日: 2014年4月25日(金)

価格: 本体1,800円+税

仕様:
182mm×122mm
並製 256ページ


■磯部涼&九龍ジョー、出演情報!

・6月4日(水)
紀伊國屋書店新宿本店
磯部涼、九龍ジョー著『遊びつかれた朝に』刊行記念トーク・セッション

開催日時:
2014年6月4日(水) 19:00~(開場18:30)
場所:
紀伊國屋書店新宿本店 8階イベントスペース
定員:50名
参加費:1,000円
参加方法:
2014年5月20日(火)午前10:00時より紀伊國屋書店新宿本店7階レジカウンターにてご予約を承ります
ご予約電話番号:03-3354-0757
新宿本店7階芸術・洋書売場(10:00~21:00

出演:
磯部涼
九龍ジョー
北沢夏音
前野健太

スペシャル・ゲスト、北沢夏音さん前野健太さんを交えてのトーク・セッション!
アンプラグドな前野さんの演奏も間近く聴ける!
詳細はこちらまで

https://goo.gl/Ml61dK

■これまでの出演

・4月16日(水)
dublab.jp Radio Collective #55 From Tokyo @cafe_malmo

インターネット・ラジオdublab出演!
『遊びつかれた朝に──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』の刊行にちなんで、磯部涼がネット時代の“マイナー音楽”について考察。

時間:20:00 start
Labrats DJs:AZZURRO , 磯部涼
場所:Malmö(東京都目黒区青葉台1-15-2 AK-3ビル 1F)
詳細:www.malmo-tokyo.com


・4月27日(日)
磯部涼×九龍ジョー×cero高城晶平
「ライヴトークで紐解くインディ・ミュージックのいま」
~『遊びつかれた朝に──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』刊行記念~

下北沢の本屋B&Bにてイヴェント開催!
本書のなかでも重要なバンドとして紹介されるceroの高城晶平さんを迎え、音とトークでインディ・ミュージックの現在を考えます。

時間:19:00~21:00 (18:30開場)
出演者:磯部涼、九龍ジョー、高城晶平(cero)
場所:本屋B&B(世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F)
入場料:1500yen + 1 drink order
詳細・予約:
https://bookandbeer.com/blog/event/20140427_b_asobitsukaretaasani/


・4月29日(火・祝)
TBSラジオ
荻上チキ・Session-22


「Midnight Session」コーナーにゲストとして著者ふたりが出演!

時間:23:55~24:50
出演者:荻上チキ、南部広美、磯部涼、九龍ジョー
番組ホームページ:https://www.tbsradio.jp/ss954/

・5月10日(土)
タワーレコード渋谷店
磯部涼、九龍ジョー著『遊びつかれた朝に』刊行記念 トーク&サイン&特典お渡し会

開催日時:
2014年05月10日(土) 14:00

場所:
渋谷店 3Fイベントスペース

出演:
磯部涼
九龍ジョー
寺沢美遊
どついたるねん

参加方法:
観覧フリー。サイン&特典お渡し会への参加は参加券が必要です。4月25日(金)発売の書籍『遊びつかれた朝に─10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』(磯部涼、九龍ジョー著 ISBN:9784907276119)を一点ご購入につき先着で参加券を一枚お渡し致します。

対象店舗:
渋谷店 ・新宿店

対象商品:
磯部涼、九龍ジョー著『遊びつかれた朝に─10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』(ISBN:9784907276119) ¥1,800(税抜)
・参加券はイベント時のみ有効とさせていただきます。
・参加券による特典のお取り置き等は致しかねます。特典のお引き換えはイベント当日のみです。               
・参加券はアーティストの都合により無効とさせていただく場合がございます。予めご了承下さいませ。
・参加券を紛失・盗難・破損された場合、再発行はいたしませんのでご注意ください。
・観覧はフリーですが混雑の場合入場規制をかけさせて頂く場合がございます。予めご了承下さいませ。
・ご購入いただいた書籍にサインをさせていただきます。イベント当日、参加券と一緒に必ずご持参ください。

※出演情報は随時更新されます!
まだまだ更新予定!


SEWN LEATHER - ele-king

 先日LAから東京に戻った折に、たまたまビジネストリップで東京を駆け巡っていた〈ハンデビス・レコーズ(Hundebiss Records)〉代表のシモーネ・トラブッチに会う機会があり、いままでミラノやLAなど、さまざまな場所ですれ違い、顔を会わせることがなかった彼と東京で出会うのはなんとも妙な気分であった。

シモーネは最高の尊敬に値する男だ。グラフィック・デザイナーとして多忙な毎日を送るかたわら、つねにカッティング・エッジなアーティストのサウンドを、ダイカット変型ジャケ仕様でお馴染みの美しいパッケージに包んでリリースしつづけ、おまけに自らドラキュラ・ルイス(Dracula Lewis)として精力的にツアーに出かけ、ミラノに戻れば国内外のアーティストを招聘した最高にイケてるパーティを主催する。
んなやつぁシャブ中かコークヘッドに違いねぇ! ......といつものひがみ全開目線で見つめる僕の前に立つこの男の心身健康たる風貌。ウルティメイト・リスペクトである。しかし何よりも尊敬に値するのは「あの男」への惜しみないサポートだ。そういえばあの男もノー・ドラッグ/メガ・ハイ野郎である。腕にも「健康パンクス(HEALTH PUNX)」って書いてあったし。

グリフィン・ピンことソーン・レザー(SEWN LEATHER)と最後に会ったのはたしか2012年の秋。当時LAを徘徊していたグリフィンはおそらく人生で初めて賃貸したであろう自分のスペースを僕に自慢しながら「ドリフト人生は終わりだ。俺はLAで暮らすぜ!」と鼻息を荒げていた。彼の寝袋が敷いてある硬質なハードフロアを見つめながら僕は彼の幸運を祈った。
先月のある晩、いっしょに暮らしていたマシュー・サリヴァンとアレックス・グレイに最近グリフィンに会ったか? と訊ねると、あれ以来会っていないとのこと。彼は再びツアーとドリフトの日々に身を委ねたのだ。グリフィンがいないと寂しいねぇと僕が漏らすと、マットとアレックスが「いや、会えたら楽しいけど、ぜんぜん寂しくはないね。アイツ常時ハイパーだし。」と。そうそう、そういう意味で言ったのだ。

ソーン・レザーはシモーネのサポートの下、近年ほぼ毎年ヨーロッパ・ツアーをおこなってきたし、US国内でもツアーは組まなくとも東西問わずかなりの頻度でライヴをこなしてきた。両サイドに全身ハードコアがねじ込まれていながらも、まさかのスプリット・ソノシート(やる気ねぇー)も記憶に新しい、盟友ホアクス(Hoax)と歴戦を重ねた彼は、最近までホアクスの連中の本拠地であったウェスト・マサチューセッツをヤサにしていたようだ。どうやら昨年暮れにそこでソーン・レザーは死んだらしい。グリフィンはソーン・レザーからスカル・カタログ(SKULL KATALOG)へと改名した(ややこしー)。
おそるおそるバンドキャンプを開いて、決して洗練されることのないマッシヴ・グダグダ・サウンドを聴きながら、とくに変わっていないことに安心した。ウルティメイト・リスペクトである。

このアルバムはソーン・レザーのラストアルバムだ(とも言える)。そしてこのレヴューは少しだけフライングでもある。このレコードを引っさげて、ソーン・レザーとしては最後のヨーロッパ・ツアーをドラキュラ・ルイスとともに絶賛爆走中のグリフィン。来月の発送まで待てないぜ! という明らかにクレイジーな人はひとまず先行シングルで一足先に世紀末感に浸ってみるのもいいだろう。

正直、僕の持っている音源がファイナルではないと思うので一概には言えないが、このアルバムはソーン・レザー史上もっともつくり込まれ、かつヴァラエティに富んだものに仕上がっている。ヒップホップを通過したスロッビング・グリッスル、ゴミのようなシンセパンク、ゴスなチューンに時折覗かせる超ピュアな内面性……。
御託を並べても仕方あるまい。春の狂気に誘われてYoutubeで彼のライヴ映像を見ながら、プレスされたこのレコードが届くのを楽しみに待とうではないか。

interview with Shonen Knife - ele-king


少年ナイフ
嵐のオーバードライブ

Pヴァイン

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 「ロックでなければ何でもいい」という、ザ・ワイア―の有名な発言はポストパンクの精神を表すひとつのステートメントとなっている。
 少年ナイフもそんな時代に音楽に目覚め、パンク/ニューウェイヴの影響のもとに活動をはじめたバンドのひとつだが、そんな彼女たちの2008年のアルバム『Super Group』の帯には「ロックなら何でもいい!!」と書かれている。ずっとまっすぐにロックと向き合ってきた彼女たちはいまやロックの日本代表といった趣だ。

 そして結成から30年以上の間に幾度かのメンバーチェンジを経て、現在のメンバーとなっての3作目のアルバムとなる新作『嵐のオーバードライヴ』は、少年ナイフのトレードマークであるラモーンズ・スタイルのパンクポップを封印、なんと70年代へのオマージュに溢れたハードロック・ナンバー満載のアルバムとなった。
 シン・リジィを思わせる“Bad Luck Song”からはじまり、ブギー・ロックあり、ブラック・サバスやジューダス・プリーストを思わせるハードロック・チューンあり、それでいて食べ物や猫が登場するお馴染みの歌詞世界はもちろん健在。
 数ある少年ナイフのアルバムの中でも異色作となったこのアルバムについて、3月某日、新代田FEVERでのロックの楽しさのすべてがつまったライヴの後に、楽屋で話を聞かせてもらった。

70年代後半の頃は、ハードロックとかはその前から王道であって。新しくパンクとかニューウェイヴが出てきたので、当時は自分はまだ若かったから新しいものが好きと思って。王道のロックとかは、そんなんおっさんくさいと(笑)、反発してあんまり聞かなかったんですね。

まずは今日のライヴ、お疲れ様でした!

一堂:ありがとうございます!

今日は“Goose Steppin' Mama”をやってましたけど、あれはやはりラトルズ来日記念ということで?

Naoko:そうなんです、ラトルズが来るからというので今回のセットに入れました。だけどラトルズが来るときには私たちがいないという。

Ritsuko:残念なんですー。

Naoko:私たちがヨーロッパに行っているときにラトルズもヨーロッパをちょっと回ってそこから日本に来るみたいなので。ライヴが見られないのが残念です。

あらあら、それは残念ですね……。では早速新譜のお話をうかがいたいと思います。前作は『POP TUNE』というタイトルのとおりのカラフルでポップなアルバムでしたが、今回は『嵐のオーバードライヴ』というタイトルが発表になった時点できっとロック・アルバムになるんだろうと思ってたんですね。で、実際に聴いたところ、これがもう思っていた以上だったというか。

一堂::(笑)

Naoko:そう言っていただけると嬉しいですね。全部野太い曲にしようと思ってたんですけど、案外猫ちゃんの歌ができちゃったりして、ちょっと息抜きする曲も入ったんですけど。

そうですね、適度に入ってる感じで。

Naoko:基本は図太い感じ。70年代の。

アルバム1曲目の“Bad Luck Song”は今日のライヴでもお披露目してましたし、PVも作られているということで、アルバムのリードトラックみたいな位置づけだと思うんですが、このイントロの時点でもうシン・リジィ(※70年代に活躍したアイルランドのロック・バンド)あたりを彷彿と。

Naoko:そうですね、シン・リジィに影響を受けてます。“Boys Are Back in Town”とか大好きで。

「この曲を聴くとどうもツイてない、何かよくないこと」が起こるというような曲があるんだけど、ひょんなきっかけから逆に幸運を呼ぶ曲だと思えるようになった、というような内容ですが、あの歌詞は何か実話から?

Naoko:はい、経験にもとづいて──今日初めて人前でタネを明かすと、レッド・ツェッペリンの“天国への階段”が私にとってのバッドラック・ソングで。あの曲を聴くと悪いことが──と言ってもそんなシリアスな悪いことじゃないですけど、たとえば電車を乗り過ごしたり。

道に迷ったりとかですね。歌詞によると。

Naoko:まさしくその通りで。そういう経験をもとに書いたんですけど、そこで発想を転換して、逆に思えばよくなるんじゃないかなと思って歌詞を書きました。

ロンドンの地下鉄でその曲を歌っていたスターを見た、と歌詞に出てきますが、それも実際に?

Ritsuko:会ったんですよね、たしか?

Naoko:ロンドンのベイズウォーターていう地下鉄の駅を上がったところにある電器屋さんでジミー・ペイジを見かけたんです。

Ritsuko:あの歌詞はそのことやな、って思いました(笑)。その話聞いてたんで。

Naoko:何年前やったかな?

Ritsuko:2年前ですね、たしか

Naoko:イギリスとヨーロッパのライヴツアーに行く数日前にロンドンに入って、ちょっと観光してたんですよ。泊まってたのがそのベイズウォーター駅の近くで。地下鉄に乗る前にちょっと電池買お、と思って電器屋さんに入ったら「こ、この人!」っていうオーラを感じまして。ジミー・ペイジらしき人と、マネージャーみたいな若い男の人とふたりでいて。その人たちはお店を出てすぐにタクシーを拾ってどこかに行ったんですよ。駅前だからどこかに行くならそのまま地下鉄に乗るだろうけど、タクシーを拾ったということは有名人なんだろうと思って、確信を深めたんです。白いロングヘアーの背の高いひょろっとした人でした。

へえー。1曲目からそうでしたけど、たとえばえみさんが歌う“Green Tea”なんかもブラック・サバスを思わせますし。

Naoko:あの曲は特に何っていう意識はないんですけど、70年代のハードロックを念頭に置いて作ったらああいう曲ができました。で、ドラムのえみさんは京都出身なので京都といえばやっぱりお茶だと。

Emi:フフフ。

Ritsuko:お抹茶ですよね。

Naoko:だからえみさんに歌ってもらおうと。

それで言うと、やっぱりりつこさんと言えばラーメンということで“Ramen Rock”を(笑)。

Ritsuko:たぶんわたしがふだん言ってることをそのまま歌詞にしてくれたんだと思います(笑)。

Naoko:ライヴのあとによくラーメン屋さんに行ったりして。

Ritsuko:そうなんです。ほんとに事実そのままです。いつもラーメンライスセット、もしくはラーメン唐揚げライスセットを。

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外国の人の場合だったら「新曲聞いてシン・リジィを思い出した!」とか、ELOを思い出したとか、KISSがどうだとか、わーっとそういう70年代のバンドの話で盛り上がるから。アメリカやらヨーロッパの人にとっては70年代ロックっていうのはロックを聴く基本だから、みんな誰もが知ってるベーシックな知識というか。日本のひとはちょっと違いますけど。

前にライヴのMCでも、イギリスツアーの時に一番よかったのはラーメンにありつけた時だったみたいなことをおっしゃってましたよね。

Ritsuko:そんなん言ってました、わたし!? でも……事実です(笑)。アメリカだとロサンゼルスに一か所、日本のラーメン屋さんが──。

Naoko:山頭火。

Ritsuko:山頭火ラーメンが食べれる日本のショッピングモールがあるですけど、イギリスにはなかなかなくて。わたしからしたらほんとに約1ヶ月以上もラーメンを食べれない日々が続くわけなんですけど。そのなかでまさかロンドンで、しかも本当にクオリティの高いラーメンが食べれたんで感動して(笑)。

前にお話をうかがった時に、曲を書く時点ではあまり誰が歌うかという、当て書きみたいなことは考えないっておっしゃってたと思うんですけど。

Naoko:はい、前回は作らなかったんですけど、今回はちょっと意識して何曲かは書いてみました。

それはやっぱり、いまのメンバーが馴染んできたという?

Naoko:いまのメンバーが最高だと思っているからです!

たとえば他の方に曲を提供するような機会って、多くはないけどまったくないわけではないですよね?

Naoko:そうですね、昔だと篠原ともえさんとか。うーん、でもあんまりないですね。

最近だとタルトタタンの『グーテンベルクの銀河系』に提供した“バーチャルディスコ”がありましたけど、あれはまあ曲自体は既存(“チャイニーズ・ディスコ”)の──

Naoko:ちょっと焼き直しで、歌詞を考え直しました。

そういうときってやっぱり歌い手のことを想定するんですか?

Naoko:えーと、その時点ではあんまり考えなかったんですけど、いまもし頼まれたらたぶん考えると思います(笑)、ちょっと成長したので。

いまのメンバーということでいうと、新譜の「Shopping」はブギーみたいな感じですけども、ああいうノリはいままでのメンバーではちょっとなかったんじゃないかと。それも含めて70年代ロック・サウンドというのはいまのメンバーだからできるというのがあるのかなと思ったんですが。

Naoko:いまのメンバーはなんでもフレキシブルにできるから。70年代ロックにしたのはたまたま前のアルバムをポップにしたから、次は何しよかなと思ったときにそういう風にしようと、アルバムのカラーをつけただけの話で。いまのメンバーはオールマイティなので何でもできると思います。ロックでも、ダンスでも。踊りも上手いし(笑)、演歌はどうかな?

Ritsuko:(笑)。でも、今回はなおこさんの、趣味というと変ですけど、好み全開やなっていう。

Naoko:好きなものですねえ。

Ritsuko:前作は少年ナイフのポップな面で、今回はなおこさんのいまはまってる感じというか。近年はずっと70年代のハードロックにはまってらっしゃるので(笑)、それをずっとそうやって聴かされてて。わたしは実は70年代のハードロックはあんまり通ってなかったんですけど、今回はそれで聞かされて……がんばりました(笑)。

Emi:同じく(笑)。

Ritsuko:あんまり自分のなかにないものだったので、ちょっと苦労したかもしれないですね。

Naoko:わたしが”スクール・オブ・ロック”の先生ということで。ジーン・シモンズが中高生にロックを教えにいくテレビ番組があって、あと映画でもそういうのがあったし。

Ritsuko:ああ、『スクール・オブ・ロック』めっちゃ好きですよね。

Naoko:そういう感じでやってます。

少年ナイフのリスナーもあまり70年代ハードロックには馴染みがないんじゃないかと思うんですけど、お客さんにもこれを通じてそういうサウンドの魅力に触れてほしい、みたいな思いはあるんですか。

Naoko:日本のお客さんはちょっとわからないけど、アメリカとかヨーロッパ、イギリスのお客さんはまさにそういうのが好きな人たちなんです。70年代ロックとかが好きな人が多いので。

あ、そうなんですか、へえー。むしろストライクとか?

Naoko:まさにストライクだと思います。お客さんとそういうバンドの話をして盛り上がるくらいの世界やから。Twitterでメッセージをくれるような人も、外国の人の場合だったら「新曲聞いてシン・リジィを思い出した!」とか、ELOを思い出したとか、KISSがどうだとか、わーっとそういう70年代のバンドの話で盛り上がるから。アメリカやらヨーロッパの人にとっては70年代ロックっていうのはロックを聴く基本だから、みんな誰もが知ってるベーシックな知識というか。日本のひとはちょっと違いますけど。

Ritsuko:でも少年ナイフのリード曲ってだいたいポップじゃないですか、“ロケットに乗って”とか。そこがまさにザ・少年ナイフなんですけど。でもわたしもファンだった頃に“アントニオバカ貝”とか“コブラvsマングース”とか、“トマトヘッド”とか、ハードな曲にめっちゃハマったんですよね。なんで、たぶんナイフを好きなひとはその両局面を好きなんじゃないかなとわたしは思ってるので、前作がポップな局面のアルバムで、今回はちょっとハードさを出して、どっちも受け入れられるのではないかと思ってます。

たしかに去年あたりはハードな曲だけでセットを組んだライヴもやられてましたよね。

Naoko:大阪で3回やって、東京でも1回やったかな。

Emi:けっこう喜んでもらってるような気がするんですけど(笑)。

Ritsuko:やってても楽しい。ライヴ映えしますからね、やっぱりハードな曲って。頭のふり甲斐があるというか(笑)。

ライヴで手応えを感じた部分もあったかもですね。

Naoko:そうですね。

あと新譜の曲でいうと“Robots from Hell”がすごいジューダス・プリースト(※70年代〜80年代に活躍したバーミンガムのメタル・バンド)だなあと思いました。

Ritsuko:ああー。

Naoko:ジューダス・プリーストはここ数年すごいハマってて。で、とくにあの曲がジューダス・プリーストを意識したっていうことではないけど、やっぱり影響はすごく受けてるので作っている間にそういう風になったんです。歌詞の方は“ロボッツ”というのはいまボーカロイドがすごく流行っているので、ロボットが歌ってるみたいなそういう歌詞。

ああ、そうなんですか。ジューダスのジャケに出てくるようなロボットをイメージしてました。

Ritsuko:初音ミクですね、どっちかというと(笑)。

Naoko:鏡音リンとか。子供たちとか若い人がボーカロイドみたいなのに洗脳されてるのんちゃうか(笑)、みたいなことを感じたので、そういう歌詞を書いたんです。

なるほど、タルトタタンに提供したやつもちょっとそれっぽい歌詞でしたよね、そういえば。

Naoko:そうですね、人間性よりも機械みたいな世界になってきてるんじゃないかなと思って書いた歌詞です。

インターネットとかSNSは苦手だったりしますか?

Naoko:危険もあるから、あまり自分のプライヴェートとかは明かさないようにはしてます。嫌いとかではないですよ。使いようやと思います。どっちかというと世界中の人たちと同時につながれるから面白い。わたしたちみたいなバンドは世界中に行ったり世界の人たちとやりとりをしないといけないから便利ですよね。あとは新しいアルバムの“Like a Cat”という猫ちゃんの歌でも、猫ちゃんの画像を世界の人から募ってアップロードしてもらって、それを集めてヴィデオを作ろうという企画をしていて。やっぱりそれはネットがあるから世界中から自慢の猫ちゃんを送ってもらうことができますよね。

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「なんちゃって」70年代ハードロックみたいになるのが少年ナイフの味やと思うので。少年ナイフがハードロックをやったらこうなった、みたいなのが聴きどころだと思ってます。ハードロックだけど、ちょっとファニーな。本当に悪い、ワルな感じではなくて(笑)。ワルっぽく歌ってるけどラーメン・ロックだったり(笑)、中身はやっぱり少年ナイフだなあって。

なるほど。先ほどMCでも6週間のツアーがはじまるとおっしゃってましたが、長い海外ツアーに出るのはもう完全に毎年の予定に組み込まれた感じですね。

Naoko:アメリカとヨーロッパはもうここ10年くらいは。あとは最近は台湾とかオーストラリアとか。

行ったことのないところで行ってみたいところはありますか?

Naoko:南米とか行ってみたいかな。

Ritsuko:ああー、南米行ったことないですね。

Naoko:ブラジルとかアルゼンチンとかメキシコとか。わりとその辺の方でナイフを好きと言ってくれる方がいるので。アメリカだったらサンディエゴなんかでライヴをやるとメキシコから来てくれるお客さんが多いし。南米は行ってみたいかな。

Ritsuko:CJラモーンが、南米は世界一クレイジーに盛り上がるよって言ってたので(笑)行ってみたいですね。

そうそう、ラモーンズがブラジルでものすごく人気あったんですよね。

Naoko:『アディオス・アミーゴス』っていうくらいやから。

Ritsuko:だからきっと受け入れてもらえるんじゃないかと(笑)。

Naoko:あとはアラブの大富豪のパーティで演奏するのに呼んでほしい(笑)。最近はイギリス行くときにいつもカタール航空に乗るのでドーハで乗り換えたりするんですよ。だからアラブに行ってみたい。

去年くらいからだと思いますけど、国内も今までは東名阪くらいだったのがもっといろんなところに行くようになってますよね。

Naoko:この7月は初めて鹿児島に行くことになりましたし。もっと日本中回りたいけど。

Ritsuko:行きたいですね。イギリス国内を回るくらい日本も回りたい(笑)。

Naoko:イギリス国内だけで20か所とか回りますからね。もっとか。

Ritsuko:日本で全国ツアーね、回ってみたいですよね。

Naoko:でもやっぱりイギリスなんかは、どんな小さな町に行ってもみんなが音楽をすごく好きだから。若い人から年行った人までライヴハウスにも常連さんみたいな状態で見に行ってて、どんなバンドが来ても楽しんで面白いと思ったらCDをちゃんと買ってくれたり。日本だったらちょっと年行った人はライヴハウスには行きづらいけど、イギリスとかは楽しくお酒を飲んで音楽を聴くっていう感覚で近所の人がいっぱい来るから、音楽にはいい状況だと思います。

生活に密着してるんですかね。

Naoko:そうですそうです。

CDを買っていくといえば、今日もみなさん最後まで物販をやられてましたよね。先日ネットでちょっと話題になったブログ記事あって、要するにアイドルの子たちはライヴが終わるとすぐにブースに行って物販をやって1枚でも多くCDなりグッズなりを売るように頑張ってると。で、ロックバンドはそういうのをスタッフに任せてるようなのが多いけど、それでCDが売れないとかぼやいてないで、そういうところは見習ったほうがいいんじゃないかみたいな話だったんですね。それでロックバンドでライヴ後すぐ物販ブースに行く人たちというと、少年ナイフとラフィン・ノーズのポンさんが真っ先に思い浮かんだんですが(笑)。

Naoko:(笑)。意外とアメリカ・ツアーを一緒にまわったバンドなんかは自分たちで車を運転して自分たちでライヴをやって、物販も自分たちで売ってるみたいな人ばっかりですけどね。ばっかり。

ああ、じゃあそういう感覚からするとむしろそっちのほうが普通というか。

Naoko:普通かなと思いますね。お客さんとしゃべるのも面白いし。お客さんがちやほやしてくれはったら嬉しいですよね(笑)。

今回のアルバムはなおこさんの70年代ロックが好き! っていうのが反映されたアルバムになっていると思うんですけど、もともとはラモーンズだったりバズコックスだったりXTCだったり、パンク/ニューウェイヴが原体験としてはあるわけですよね。どちらかというと70年代ハードロックみたいなのは後追い的に聞いていった感じだと思うんですけど。

Naoko:そうですね、はい。

それはやはりニューウェイヴとはまた違った魅力がありましたか。

Naoko:70年代後半の頃は、ハードロックとかはその前から王道であって。新しくパンクとかニューウェイヴが出てきたので、当時は自分はまだ若かったから新しいものが好きと思って。王道のロックとかは、そんなんおっさんくさいと(笑)、反発してあんまり聞かなかったんですね。王道でもビートルズは中学生くらいからずっと聞いてたんですけど。70年代後半はパンク/ニューウェイブをずっと聞いてて。そこから大人になってあらためて70年代のアメリカやイギリスのロックを聴いたら「こんなにかっこよかったんだ!」と。そこからずっとハマって聴いてます。

たとえばハードロックなんかだと髪を振り乱してギターを弾くみたいなちょっと大仰なアクションがあったりしますよね。そういうのはニューウェイヴのノリとはちょっと違うと思うんですが、少年ナイフはパロディというんでもないけど、微妙に距離を置きつつ取り入れてるようなイメージがありますけども。

Naoko:ロックはロックでも80年代の、ボン・ジョヴィとかポイズンとか、あと何があったかな。

モトリー・クルーとか?

Naoko:そんなんなるとわたしはちょっと聴かなくて、それよりも前の70年代のバンドのフリみたいなのは好きで影響を受けてます。

逆に新しい音楽にインスパイアされるようなことはあまりないですか?

Naoko:いま新しくて面白いのは何ですか(笑)? 逆に聞きたいですけど。

Ritsuko:わたしは何でも、流行りの曲もそれなりに聞きますし、上手いことそのへんにインスパイアされたうえでのいま、という感じですけど。すっごくハマったりは最近はしてないけどそれなりに聴きはするしCDも買います。流行りってこんな感じかーとか。

Naoko:昔にあったバンドだけど知らなくて、新しく知って「へえー」みたいなのがあって。つい最近はロビン・トロワーを最近知って買って聴いたりとか。あと、ちょっと前やけどウィッシュボーン・アッシュを買って「かあっこいい!」と思ったり。それは昔はバンド名だけしか知らなくて、見かけがちょっとおじさんぽいというだけで嫌いだったけど、今は見かけよりも音楽が面白かったらピピッてくるんです。ファンクだったらコンファンクシャンていうのを教えてもらって「うわ、かっこいい!」と思ったり。それが新しい発見。

なるほど、まあ出会ったときが新しい時ですもんね。

Naoko:そうです(笑)。わたしにとってはそれが新しい。


少年ナイフ
嵐のオーバードライブ

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では最後にニュー・アルバムはいままでのナイフのアルバムとはちょっと違う感じだと思うんですが、こういうふうに聴いてほしいというか、聞き所を。

Naoko:聴きどころは……今までのナイフの曲はパンクとかニューウェイヴとかパワーポップの影響を受けてたから、コードでイントロを動かすラモーンズ的な曲が多かったけど、今回のアルバムではそれはやめようと思って。もうちょっとパワーコードみたいなのを中心に使って曲を作ろうと。わたしたちにとっては新しい試みだけど、その音楽自体は70年代のすごく昔からあるもので、昔からあるだけに絶対聴く人にとってもどこかで聴いたことのあるような音楽だと思うから。聴いたら心に、体に、無意識に響いてくると思うので、その響きを感じてもらったら嬉しいかな。難しいけど、体に染み込んでるものに訴えかけたいと思ってます。

Emi:何回も繰り返し聞いてもらって、ライヴにも来てもらって楽しんでもらえたら嬉しいです!

Naoko:そのとおりです(笑)!

Ritsuko:これが少年ナイフ式ハードロック。さっきおっしゃってたように、ちょっと「なんちゃって」70年代ハードロックみたいになるのが少年ナイフの味やと思うので。少年ナイフがハードロックをやったらこうなった、みたいなのが聴きどころだと思ってます。ハードロックだけど、ちょっとファニーな。本当に悪い、ワルな感じではなくて(笑)。ワルっぽく歌ってるけどラーメン・ロックだったり(笑)、中身はやっぱり少年ナイフだなあっていうところを聴いてほしいです。

Naoko:70年代のアメリカやイギリスのバンドって、女の人のバンドは全然なかったと思うんです。女の人だけっていうのは。ランナウェイズとかはちょっと別だけど、女の人だけで自然発生的にできたバンドはないと思うから。男の人がやったらゴツゴツした感じになるけど、私たちがやってたらこうなるということで。

HOUSE definitive 1974 - 2014 - ele-king

 90年代リヴァイヴァル、ハウス・ミュージック回帰が加速する2010年代、待望のカタログ本『HOUSE definitive 1974 - 2014』が4月11日、刊行されます。

 ハウス前夜のディスコ時代から1980年代半ばのシカゴ・ハウスの誕生へ、そして「ハウス」を世界中に飛び火させた1988年のセカンド・サマー・オブ・ラヴ、音楽的にハウスを洗練させた1989年のディープ・ハウス、1990年以降のディスコの故郷NYを拠点に広がったガラージ・ハウス、1994年以降、原点回帰を標榜しながら音楽性を拡張させたディープ・ハウス・リヴァイヴァル、1996年以降のダフト・パンクを生んだフレンチ・タッチとムーディーマンを生んだデトロイト・ハウス……
 激動の1990年代を経てからの2000年以降のディスコ・ダブ……そして、北欧、東欧、南米、日本にも拡散していったハウスの種子たち……、そして、いちど死んだハウスが見事に蘇る、2008年のカイール・ホールの登場。あるいは、UKガラージ/ベース・ミュージックからのハウスへのアプローチ。

 悲しいことに、この本が刊行される前に、その父親であるフランキー・ナックルズは他界してしまいましたが、その日3月31日~4月1日までの世界中のDJのタイムラインのすべてが彼への追悼だったことを思えば、ハウス・ミュージックが今日のクラブ・ミュージックにおける偉大なる故郷であることはたしか。
 ディスクロージャー世代から往年のハウス/テクノ世代にまで、幅広く手にとって欲しい一冊です。もちろん、スマホでも読める電子書籍アクセスキー付きです!


HOUSE definitive 1974 - 2014
 
監修・西村公輝+三田格
選文・Alex Prat、Alixkun、木津毅、島田嘉孝、Nagi、野田努、水越真紀、森本益司

272ページ
全ページカラー
発売日:4月11日
価格:2600円+税


Untold - ele-king

 前にも書いたことだが、時代が動くときはいっきに動くもの。2010年前後では、おそらく誰もが、まさかダブステップが乗っ取られるかのような事態になるとは思ってもいなかっただろうし、ハウス・ミュージック回帰がはじまるとも夢にも思わなかった。ゴス・トラッドがフランソワ・Kから大評価され、シカゴのゲットー・ミュージックが世界を明るくして、デリック・メイがDJで“エナジー・フラッシュ”をかけることになるとは……
 そして、ハウスにもジャングルにも(あるいはR&Bにも)逃げ場を見られなかった“追い詰められたシーン”からインダストリアルという名の断末魔のごときハード・ミニマル現代版が、おそらくブレイディみかこさんが書いているところの荒廃したUKから聞こえてくるとは思わなかったし、〈モダン・ラヴ〉がここまで魅了的になるとは思わなかった。何にせよ、息詰まっていることを受け入れることは、息詰まっていないふりをするよりは時代のドキュメントとして面白いのだ。

 4年ほど昔に戻ろう。いわゆるポスト・ダブステップと呼ばれた一群のなかで衝撃的だったひとりが、アントールドである。2008年から2009年にかけて主に彼のレーベル〈Hemlock〉などからリリースされた数枚のシングルは、ダンス・ミュージックであるものの奇怪で、そして間違いなく非凡だった。とくに“Anaconda”、〈Hessle Audio〉から出たこの風変わりなリズムはいちど聴いたら忘れられない。まだ有名になる前のジェームス・ブレイクがリミックスを手がけた“Stop What You're Doing”もユニークだったが、“Anaconda”の衝撃がいちばんだった。あの時代を共有している人の誰もがそう思った。

 彼はもっと早くファースト・アルバムを出すと思われていた。2009年の感覚で言えば、ブリアルの背中を見ながら、新しい領域を目指そうとしていたラマダンマン(ピアソン・サウンド)、ジェームス・ブレイク……などなどと並んで、アントールドには誰もが期待して、一目置いていた。ちなみに彼のレーベル〈Hemlock〉は、ジェームス・ブレイクの12インチを最初に出したレーベルである。

 アントールド──口では言い表せないという、いかにもDJカルチャーめいた名前を持ったこの男は、思わせぶりな曖昧さを打ち出してきている。具象的なアートワークを使ったシャックルトンとは真逆で、アントールドは黒い唐草模様の、微妙にエキゾティックな絵柄をレーベルのスリーヴにした。シックにも見えるし、ゴシックにも見える。
 また、彼の音楽は、ダンス・ミュージックではあるがDJがミックスしやすいものではないし、ダンサーがステップを踏みやすいものとも違う。遅すぎた彼のファースト・アルバム『Black Light Spiral』はとくにそうだ。が、これは、追い詰められ、息詰まっているところからのカウンターアタックとしては、破壊と再構築の感覚としては、実に興味深い作品である。彼にしては初めて自らのアートワークに具象的な写真──耳の割れた豚の置物を用いている。

 退屈なループ、サイレンの音、これがアルバムのはじまりだ。そして“Drop It On The One”のダビーで不安定なループ、電子音、毒々しいノイズ。“Sing A Love Song”の断片化された「ラヴ・ソングを歌え」という言葉のダブ処理と低音、ノイズのミニマリズム、唐突にミックスされる壊れたピアノ、“Wet Wool”の不吉なルーピング……
 『Black Light Spiral』のキーワードを挙げるなら、ダブとノイズ、音響コラージュ、そしてミニマリズムとなるわけだが、僕がこのアルバムに見るのは行き場を無くしたモノの不敵な実験性だ。ダブとミニマルの応用と言ってしまえばそうなのだが、それだけでは到底説明できない、独特な音の位相を持った情け容赦ない音響が収録されている。“Strange Dreams”の歪んだ音の反復は、インダストリアルとも共鳴し合っているようだ。

 行き場がないのなら地下を掘ればよいと言わんばかりのこのアルバムが、同時期にリリースされたミリー&アンドレアのアルバムほどの光沢があるかと言えば、僕としては答えが難しいところではあるが、いったい何が起きているのかと惹きつける力は充分あるし、確実なのは、“Anaconda”が無邪気に思えるほど、良からぬことが起きているというディストピックな感覚を感じざるえないということ、そして、アントールドはまったく日和らなかったということである。個人的には、ハイプ・ウィリアムスの来日ライヴを思い出した。

音から泳ぎだした絵画たち - ele-king

 ティーブスの新作『エスターラ』はあいかわらず素敵だった。プレフューズ73とのサンズ・オブ・ザ・モーニングもとてもよいという話をよくきく。〈ブレインフィーダー〉の新世代として注目されるビートメイカー、ティーブス。ゴツゴツとしてロジカルなビート構築ではなく、繊細で優しい、水彩タッチのトラックメイキングには、やはり彼にしかない世界を感じさせられる。そして、あらためて、2010年のデビュー・アルバム『Ardour』が5年も前のだとは考えられないほど、古びず消費されない音だということに感心させられる。

 さて、そんなティーブスの展覧会が東京で行われる。彼の絵はジャケットにも使用されているが、今回はなんと約100点も観ることができるそうだ。また、来場者にはティーブスがこの個展用に制作したという音楽を収録したPLAYBUTTON(缶バッジ型のデジタルオーディオプレイヤー)が渡され、イヤホンなどを利用して聴きながらの鑑賞ができるとのこと。開催は4月17日から19日土曜まで。会場では本人にも会えるかもしれない。

新作リリース直前に緊急決定!
4月にティーブスが日本初となる個展開催!
4/17-19の3日間のみ開催されるアート展に本人も登場!

teebs展 - ANTE VOS / BEFORE YOU -

3/29 (土) にいよいよ待望の2ndアルバム『E S T A R A』をリリースするティーブス (Teebs) が、日本初となる個展を4月17日 (木) 〜 4月19日 (土) の3日間限定で、ギャラリースペース「KATA(カタ)」 (恵比寿LIQUIDROOM 2F) にて開催することが決定した。音楽シーンのみならず、ストリート・カルチャー〜アート・シーンでも絶大な人気を誇るティーブスは、これまでも所属レーベル〈Brainfeeder〉のショウケース・イベントで来日した際には、必ずライヴ・ペイントを披露するなど、音楽のみならずアート面でも特別な才能を持つことを証明してきた。プレフューズ73やジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーントヴェットも参加した新作『E S T A R A』のリリース後、フライング・ロータスの出演でも話題沸騰中のイベント【Brainfeeder 4】への出演を前に開催される本個展には、ラテン語で“Before You”を意味する【Ante Vos】というタイトルがつけられている。

本展覧会のコンセプトは、“レコードジャケットが作品として完成する前の姿”。有名無名問わず、“語りかけてくるものを選んだ”という既存のレコードジャケットに、新たな命を吹き込むようにペイントを加えるティーブス独特のスタイルで生まれた作品が100点(確認中)以上展示される。またティーブスの世界に没頭できるよう、来場者には、ティーブスが本個展用に制作したという音楽を収録したPLAYBUTTON(缶バッジ型のデジタルオーディオプレイヤー)が渡され、会場に用意されたヘッドフォン、もしくは、使い慣れた自分のヘッドフォンおよびイヤフォンでその音楽を楽しみながら作品を鑑賞できる。また4月18日 (金) と19日 (土) には本人も会場に登場し、サイン入りグッズや限定グッズの発売も予定されている。詳細は追って発表される。

ティーブス展用に公開されたショート・ドキュメンタリーはコチラ

TEEBS / ANTE VOS / Part 1 artwork of Mtendere Mandowa from Theo Jemison on Vimeo.

【アート展情報】
teebs展 - ANTE VOS / BEFORE YOU -
2014.4.17 (thu) - 4.19 (satu) @ KATA GALLERY (LIQUIDROOM 2F)
●日時
4/17 (木):17:00 - 21:00
4/18 (金):13:00 - 22:30 *20:00からはアーティスト本人も登場するレセプションを予定
4/19 (土):13:00 - 20:00
入場無料

PLAYBUTTONとは?
缶バッジ型の本体に、ヘッドフォンを差し込むだけで音楽を楽しめる新世代のデジタルオー ディオプレイヤー。
https://ja-jp.facebook.com/playbutton.jpn

【アルバム情報】

プレフューズ73、ラーシュ・ホーント ヴェット(ジャガ・ジャジスト)参加!
ティーブス待望の2ndアルバム『エスターラ』がいよいよ今週末発売!


Teebs - Estara

Tower HMV iTunes

artist: TEEBS
title: E s t a r a
ティーブス[エスターラ]

release date: 2014.03.29

label: Brainfeeder / Beat Records
cat no. : BRC-412
price: ¥2,000 (ex.tax)

商品情報はこちら!
https://www.beatink.com/Labels/Brainfeeder/Teebs/BRC-412/

[Tracklisting]
01. The Endless
02. View Point
03. Holiday (feat. Jonti)
04. Shoouss Lullaby
05. SOTM
06. Hi Hat (feat. Populous)
07. NY pt 1
08. Piano Days
09. Piano Months
10. NY pt 2 (feat. Prefuse 73)
11. Mondaze
12. Wavxxes (feat. Lars Horntveth)
13. Gratitude (Bonus Track for Japan)

ご 予約は こちら!
beatkart :amazon : Tower Records : HMV : iTunes :
Tr.02 View Point / Tr.03 Holiday (feat. Jonti)の2曲が公開中!
https://soundcloud.com/ninja-tune/sets/teebs-estara


春の胸騒ぎはいつしか潮騒へ - ele-king

 夏が来ていた......! 春の胸騒ぎは潮騒とチルアウトの季節へとワープする。噂のJINTANA&EMERALDSが、ついにファースト・アルバムをリリース。難しい音楽ではない。かまえることなく、いますぐこのスウィートでメロウな音楽に身をゆだねよう。

JINTANA & EMERALDS - "Destiny" Album Digest

 7インチシングルが話題になった奇跡のネオ・ドゥーワップ・バンドJINTANA&EMERALDSが、4月23日、ついにフル・アルバムをリリース。横山剣などからの紹介コメントも到着! 丸ごと2曲聴ける楽曲トレーラーも解禁!

 7インチ・シングルがJETSET総合ランキング1位、海外の音楽メディアでも取り上げられ話題を生んだ、ネオ・ドゥーワップ・バンドJINTANA&EMERALDSがついにファースト・アルバムをリリース!
 JINTANA&EMERALDSは、横浜発、スウィート&メロウなサウンドを届けるハマの音楽集団PPPこと〈PAN PACIFIC PLAYA〉からのレイドバックでドリーミーな新しいサウンド。〈PPP〉所属のスチールギタリストJINTANA、DORIANらへの客演でひっぱりだこなギタリストKashif、アーバンなニュー・シティ・ポップで話題沸騰中の媚薬系シンガー・一十三十一、(((さらうんど)))でも活躍するCRYSTAL、少女時代や三浦大知など幅広くダンスミュージックの作詞/作曲/プロデュースをするカミカオル、女優でもあるMAMIという豪華メンバーによる魅惑のレイドバック・ミュージックです。彼らが4月23日(水)、ついに待望のファースト・アルバム『Destiny』が発売します。

 彼らは2011年のクリスマスに発表されたフリーダウンロード音源で話題となり、2012年にリリースされたスウィート&トロピカルなシングル曲『HONEY / RUNAWAY』収録の7インチはJETSET総合ランキング1位で即完売、さらにTiny mix tapesなど、アメリカやブラジルの海外メディアでも取り上げられるなど、国内外で高く評価される彼ら。3人の歌姫の水の揺らめきのように煌めくシルキーボイスと、エキゾチックでメロウなギター&トラックが激スウィートな至極のレイドバック・ミュージックに多くのリスナー、ミュージシャンが魅了されました。本作にはPPPのLUVRAW&BTBもトークボックスでゲスト参加、素晴らしい衣装ワークの数々はファッションデザイナーの青木貴志(MACARONIC)が手掛けています。そして、ファンタジスタ歌磨呂による海沿いの夏を切り取った写真集といった趣のジャケット&ブックレットも必見です。

 本作のリリースに寄せて、〈PPP〉が拠点とする横浜が生んだスター、横山剣さんや、音楽ライターの野田努さん、メンバーが交流のある荒内佑(cero)さんやVIDEOTAPEMUSICさんから紹介コメントを頂いております。

得体の知れない多幸感がエコーするエメラルド色のソウル電波だ!イイネ!イイネ!イイネ!―――横山剣(CRAZY KEN BAND)

甘く、ノスタルジックで、そして未来的な、このコーラス・ポップを聴いているあいだは、すべての嫌なことを忘れられる。気持ちはすでに夏。―――野田努(ele-king.net)

ジュークボックス流れる甘いメロディー、キャデラック、月明かりと海岸線、謎の美女、そして私の脳内では完全にプロムパーティーが始まる。
こんなロマンチックな世界は映画の中にしか存在しないと思っていました。
まるで魔法。
まさに「I Hear a New World」
―――VIDEOTAPEMUSIC

7インチシングルの時からファンで聴かせてもらっていて、特に「Runaway」にヤラれてます。
50年代のアメリカへの情景だけでなく、現代の「私たちの音楽」としてリスナーに寄り添ってくれるのがこのアルバムの一番の魅力なんじゃないでしょうか。
―――荒内佑(cero)

◼︎収録曲をまるごと2曲!

JINTANA & EMERALDS - "Emerald Lover"

JINTANA & EMERALDS - "Destiny feat. LUVRAW & BTB"

 究極のレイドバックを追い求める運命に導かれ、50年代の西海岸にたどり着いたJINTANA & EMERALDSは、メロウなオールディーズを現代のチルアウト・ダンスミュージックとして再構築。フィル・スペクターが現代のダンスフロアに降り立ったようなネオ・アシッド・ドゥーワップ・ウォールオブサウンドで、いつしかあなたも気分は50年代の西海岸へ......そこはエメラルド色の海。エメラルド色に輝く街。エメラルドシティに暮らす若者たちの織りなす、ドリーミーでブリージンなひとときをお届けします......!


ジンタナ&エメラルズ
デスティニー

Amazon Tower HMV

JINTANA & EMERALDS / Destiny
ジンタナ&エメラルズ / デスティニー
release : 2014/04/23
定価:¥2,400+税

1. Welcome To Emerald City
2. 18 Karat Days
3. Emerald Lovers
4. I Hear a New World
5. Honey
6. Runaway
7. Destiny feat. LUVRAW & BTB
8. Moon
9. Let It Be Me
10. Days After Happy Ending


HOUSE definitive 1974-2014 - ele-king

ハウス・ミュージックという大河を見渡す世界で唯一のカタログ本登場!!

ディスコからシカゴ・ハウス、NYガラージ・ハウス、デトロイト・ハウス、UKハウス、フレンチ・タッチ、ディープ・ハウス・リヴァイヴァル、ミニマル・ハウス、ディスコ・ダブ、UKガラージ、北欧から南米へ、そして再びNYへ……。いま、ハウス・ミュージック40年の歴史を紐解く。

『テクノ・ディフィニティヴ』(12年)、『アンビエント・ディフィニティヴ』(13年)に続くエレキング・ブックスによるディスク・ガイド第3弾となる本書は、それぞれ50年、55年という歴史で括られたテクノ、アンビエントに比べたら未だ若輩であるが、そこそこ一端の歴史を持つに至ったハウス・ミュージックを40年という期間で俯瞰してみようという試みである。

― 西村公輝(序文より抜粋)

執筆:Alex Prat、Alixkun、木津毅、島田嘉孝、Nagi、野田努、水越真紀、森本益司

■Only Love Hurts(a.k.a. 面影ラッキーホール)とは?


Whydunit?

Tower HMV iTunes


ON THE BORDER

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aCKy:インタビューするよりWikipedia読んだらだいたいわかりますよ。さっき見てみたけど、だいたい合ってたから(笑)。

──ご自分でWikipediaを編集してるんですか?

sinner-yang:するわけないでしょ(笑)。ネットに書き込んだりとか、そういうのは基本的に女子供がやるもんだと思ってるから。でも最近のバンドはみんな自分たちで書いてるんでしょ?

──でも実際やってる人、少ないと思いますよ。バンドマンには「プロモーションなんてアーティストの仕事じゃない」みたいな思いもあるみたいで。

sinner-yang:それはただ彼らの識字率が低いだけでしょ(笑)。

とまあこんな具合にOnly Love Hurts(a.k.a. 面影ラッキーホール、以下、O.L.H.)へのインタヴューはスタートした。O.L.H.はsinner-yang(B)とaCKy(Vo)を中心とした大所帯のファンクバンドだ。彼らのディスコグラフ、「好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた」や「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた・・・夏」など、強烈なタイトルが並んでいるので、アーティスト名は知らなくても曲名くらいは聞いたことがあるはずだ。雄弁な楽曲に対して彼らに関する情報は極端に少ない。Wikipediaにはたしかにバンドの詳細が書かれているが、バンドにコアに触れるような記述は一切ない。まずはバンドの成り立ちについて訊いてみた。

──そもそも初期のバンド・コンセプトはどのようなものだったんですか?

sinner-yang:20年近く前のことを思い出せって言われても難しいですね。

──じゃあ、aCKyさんとsinner-yangさんの出会いを教えていただけますか?

aCKy:え〜、そういうのも恥ずかしいよ〜。でも言っちゃうね(笑)。俺が大学3年生の時、21かな、なんかしなくちゃいけないなって思ったんです。もともとはマルコム・マクラーレンみたいな裏方になりたかったんですよ。でもまあ、あんなのそんな簡単にできないし、そもそもアイディアがあるんだったら自分でやったほうがいいかなって思って、バンドを作ることにしたんです。とはいえ、当時はインターネットなんて当然ないからメンバー募集のビラを作ったんです。下のとこがイカの足みたくなって、取って持って帰れるやつ(笑)。

──懐かしいですね(笑)。昔はライヴハウスとか、練習スタジオによく貼ってありました。

aCKy:募集内容も恥ずかしいんだけど、……言っちゃうね(笑)。当方はギター・ヴォーカルで、全パートを募集。ジャズロックやりたし。イメージはマイルス・デイヴィス『オン・ザ・コーナー』『アガルタ』『パンゲア』、オーネット・コールマン『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』って書いたんです。

sinner-yang:オーネット・コールマンは「ヴァージン・ビューティー」じゃなかったっけ?

aCKy:いや『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』。そのビラを作ったのがちょうど学園祭の時期だったんで芸術系の大学やジョン・ゾーンの来日公演とかに配りにいって。そこで連絡してきたのが2人で、ひとりがリーダー(sinner-yang)なんですけど、もうひとりは大友良英さん(笑)。大友さんは「ジョン・ゾーンのライヴでビラもらったんだけど」って。

sinner-yang:惜しかったねー! 大友さんと組んでたら、いまごろaCKyも紅白の審査員席に座ってたわけですよ!(笑)

──(笑)。

aCKy:そうそう(笑)。で、リーダーとふたりで無駄話したり、あれこれ試行錯誤するようになって。しばらく経ってから、バンドを始動させることにしたんです。

sinner-yang:実際にスタートしたのは知り合ってから2〜3年後だよね。

──ではバンドを始動するにあたってはどのように動いたんですか?

sinner-yang:aCKyはフロントマン、即ち御輿ですよね? だから神輿を担ぐ人たちを集める作業は、俺主導でやりました。それにaCKyは面影が人生最初のバンドだから、ミュージシャンの横の繋がりとかもなくて。僕はそういう知り合いが結構いたから、それでいろいろバンドに合う人たちを探したんです。

──sinner-yangさんはいろいろなバンドに入っていたんですか?

sinner-yang:俺もバンドはやってなくて、面白半分で宅録してましたね。あとCMとか商業音楽の制作みたいなこともやってました。

──そのつてでメンバーをそろえていったと。

aCKy:最初の最初はDCPRGみたいなのがやりかったんですよ。

sinner-yang:ああいうのってさ、音楽的偏差値が一定以上の人にとっては麻疹みたいなもんでしょ。

aCKy:そうそう。でもさ、当たり前だけどああいうのは簡単にできないわけですよ。たとえばバンドとしては小さいパーツが欲しいのに、ばかデカいパーツを持ったメンバーが入って来ちゃったり。そういうので、なかなか自分が思い描いてるものが形作れなかったというのがありましたね。現在のO.L.H.っていうのは、そういう細かい齟齬を修正していって、その中から出てきた最適解なわけ。その意味でいくと当初の思いとはまったくちがうバンドになっていますね、いまは。こんなはずじゃなかったと(笑)。

sinner-yang:いずれにせよ小奇麗な音楽をやろうとしてなかったから、集まってくれた人たちの理解を得るのも難しかった(笑)。そういう意味でバンドも最初はなかなか苦労しましたね。

──ファースト・アルバムの収録曲“必ず同じところで”や“今夜、巣鴨で”が個人的にはすごく好きなんですが、バンドとしてはその時点ではある程度、いまにつながるものができあがっていたんですね。

sinner-yang:そうですね。バンドが結成されて4〜5年で、あそこまで固まった感じですかね。

aCKy:うん、だいたいあの方向が見えてきたのは2〜3年たってから。ライヴで客の反応を見て、これやるとこうなるんだ、みたいな感じで微妙に修正していったんです。

■科学者の視点

 O.L.H.といえば、彼らの歌詞について触れないわけにはいかない。スキャンダラスな題材もさることながら、その視点の妙は特筆すべきものがある。彼らが2011年に発表したアルバム『ティピカル・アフェア』の1曲めに収録された“ラブホチェックアウト後の朝マック”を例にとれば、この曲はタイトル通り「ラブホチェックアウト後の朝マック」にいるカップルについて歌っている。ヴァース1では昨夜の情事について、ヴァース2ではふたりがワケありカップルであることが明らかにされ、最後に主人公の女性が関心を寄せることへの回答が出される。しかもその回答から連想させられるものは、この男女が発するどうしようもないほどの人間臭さだ。

──O.L.H.の歌詞の源泉はどこにあるんですかね?

sinner-yang:恥ずかしいね。

aCKy:でも言っちゃうね(笑)。歌詞についてはいろいろ研究したんですよ。ニューウェーヴのとんがった詞とかありえない詞とか。あと現代詩を読んだり、ドアーズがどんなこと歌ってるのか調べたりもしました。そんなとき、はたと昔の日本の歌謡曲の歌詞のほうがすごいということに気づいたんです。こっちのほうがアヴァンギャルドだし、サイケデリックだなって。だからそういう意味で歌詞については日本の歌謡曲に影響を受けてると言えますね。

sinner-yang:なかにし礼と阿久悠という両巨頭に代表される70年代の歌謡曲の世界です。では、なぜ70年代の歌謡曲がラディカルかと言えば、それは作り手と歌い手がまったく関係ないところにいたからです。シンガーは歌ってればよかったし、作詞家は歌詞を書いていればよかった。だからその誰も責任を取らなくてもいいシステムが、結果としてラディカルな作品を生み出していたんです。でもね、そういうものは80年代のニューミュージック・ムーヴメント以降、淘汰されてしまった。

──なぜですか?

sinner-yang:客単価を上げるためですよ、シングルよりもアルバムを売るため。アルバムを売るためには、それが“アーティスト”の内面を反映したものであると客に思いこませる必要があるんですよ。

──価値を“アーティスト”に集約させたということですか?

sinner-yang:そうそう。だからコンセプトも、アートワークも、作詞も、作曲も、すべては“アーティスト”の内面にある何かを表現していると思わせて、アルバムを売っていったわけです。誰もピンク・レディーに「歌詞の源泉はどこにあるのか? なぜUFOと歌うのか?」なんて訊かないけど、尾崎豊には訊くじゃないですか?(笑) でもその結果としてすべての“アーティスト”は、自ずと私小説家になって行かざるを得ないですね。その場合、なかなかラディカルなものは生まれにくくなる。だって身の回りの卑近なことを歌って“共感”を誘うビジネスモデルだから。だから俺らの最大の特徴は、意識的に私小説じゃない歌を作っているということですね。そうすると何からでも題材がとれるんですよ。

──その歌詞の題材についてなんですが、いつも目の付け所がすごいですよね。

sinner-yang:そうかな。どこにでもあることだと思いますよ。俺たちは、どこにでもあるけど誰も触れないものに関心があるんです。

aCKy:僕らは若いわけでもないし、ルックスがいいわけでもないので、隙間を狙わないといけなんですよ(笑)。

sinner-yang:俺らが「桜」や「絆」や「感謝」の歌を歌ってもしょうがないでしょ。

──僕はO.L.H.の歌詞にものすごい批評性とユーモアを感じるんですよ。

aCKy:俺らのやってることに批評性を感じてるっていうのは、それはたぶんあなたが世の中を批判的、批評的に見ているということなんじゃないですか? 俺たちは自分たちが見たまんまを表現してるだけですよ。

sinner-yang:もっと言えば、俺らにユーモアを感じるのは、あなたがそれを滑稽だと思ってるからなんですよ。僕たちはファーブルのように昆虫日記をつけてるだけ。“見てる”ってだけです。“見てどう思う”じゃないですよね。ただ見てる。“観察してる”ってことにつきる。これはいろんなインタヴューで言ってることだけど、ファーブルは自分の糞を転がすフンコロガシを観察して「こいつ、汚ねえな」とは思わないでしょ。そもそもフンコロガシは違う種族だから、そいつらに「自分のウンコいじったら汚いよ」ってアドバイスしても仕方ないじゃないですか。「え! マジで!?」と新鮮に驚きつつ見てるってだけですよ。逆にそこで怒ったり、バカじゃねえかって思った瞬間に観察眼が曇るし、違う習俗を持った種族に対して不遜ですよね。
 あとね、俺らは自分が何者でもないって思いがすごく強いんですよ。何か言える立場ではないというか。俺らみたいなチンピラには何かを批判する資格もないし。そういうのは新橋のSL広場でTVのインタヴューに答えているような人たちに任せとけっていう(笑)。

──すごく達観した、まるで神様のような視点ですね。

sinner-yang:いや、それはおこがましいですよ。せいぜい「日本野鳥の会」の視点です。見たものを正確に記録しなくちゃいけない。右手にカウンター持ってね。つい最近震災のドキュメント映画で演出がどうしたこうしたって問題があったじゃないですか。あれと同じですよ。過剰な演出はしない。

■面影ラッキーホールとジェイムズ・エルロイ

 多くの人を絶句させた楽曲“パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏”。この曲もタイトル通りの内容なのだが、歌詞は「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた」母の独白という形で進行していく。彼女が置かれた境遇、パチンコにハマっていく過程、そして娘を死なせた原因がやたらと陽気なファンクチューンに合わせて歌われていく。彼女に対して同情の余地もあるものの、曲中では結局何の救いもなく、ただ絶望のみが残る。これはまさしくノワールの世界観だ。

──おふたりはジェイムズ・エルロイがお好きらしいですね?

aCKy:『Whydunit?』を作る前に時間ができたから本を読もうと思って、リーダーに「何かバシッとくるものない?」って訊いたら、エルロイを教えてもらって読みはじめました。だから『Whydunit?』自体がエルロイにすごく影響を受けてると思う。あのどこまで行ってもクールというか、救いようがない感じ、ウェットな感じがない、ビシビシ行く感じはエルロイに影響を受けていると言えますね。

──なるほど。僕はO.L.H.作品の中でもとくに『Whydunit?』が好きなんですが、それはエルロイ作品の世界観が好きだからというのもあるのかしれませんね。

sinner-yang:君はエルロイでは何がいちばん好きなんですか?

──『ビッグノーウェア』です。

sinner-yang:俺もそう。

aCKy:『ホワイトジャズ』じゃないんだ?

sinner-yang:じつは俺、『ビッグノーウェア』は当時新刊で買ってて。エルロイの何がすごかったかっていうと、アメリカ文学におけるノワールの価値観をぶっ壊したことにあるんですよ。エルロイ以前のノワール文学ってのは(レイモンド・)チャンドラーや(ダシール・)ハメットだったわけじゃないですか。つまりアメリカのノワール文学は90年代になるまで50年代の価値観のままだったわけなんですよ。でも『ビッグノーウェア』はそれをひっくり返したんだ。俺は本当の意味ではパンクをリアルタイムで経験してないんですよね、1978年の時はまだローティーンだったから。既存の価値観がぶっ壊されるさまを見てないの。だから俺はパンクというものを後づけで想像するしかなかったわけ。パンクがいかに先鋭的で、価値観をひっくり返したかってのをね。でも『ビッグノーウェア』を読んで、ようやくパンクが起こした価値観の転倒を知ることができたんですよ。音楽の世界でパンクを体験することができなかったけど、文学の世界では体験することができた。だからエルロイは特別なんです。

──O.L.H.はその世界観をユーモアを交えて表現するところが好きなんです。

sinner-yang:音楽とユーモアで言うとね、ザッパは好きでしたよ。でもお笑いってとらえ方で行くと、意識的でないぶんプログレは笑いの宝庫なんです。キング・クリムゾンとか抱腹絶倒ですもん。

aCKy:あと志村けんね! たしか「だいじょぶだぁ」のエンディングテーマってオーティス・レディングの“セキュリティ”じゃなかったっけ。“髭ダンス”とかもファンキーだしね。あれ、テディ・ペンダーグラスでしょ。

──では、価値観の転倒という意味でヒップホップはどうだったんですか?

sinner-yang:それはどっちかっつったらaCKyなんじゃない?

aCKy:ヒップホップは価値観がぶっ壊れるって感じじゃないですね。ヒップホップはカットアップや編集の音楽だと思うんで。

sinner-yang:俺はパンクとヒップホップはすごく似てると思いましたね。音楽のフォーマットが違うってだけで。ヒップホップの起源は相手へのディスなわけでしょ。そこも含めて、大きな視点で言うとパンクとヒップホップは似たものなんじゃないかと思いました。自分が90年代の頃に青春時代を送っていたら、もっとぶっ太いパンツを履いてたと思います(笑)。でも、(ヒップホップがパンクは)似ていたからこそ衝撃は受けなかったな。

■目的のない人生

aCKy:話をノワールに戻すと、たしかに『Whydunit』以降の作品はノワール的な表現に意識的になったというのはあります。でもね、『Whydunit』を含む〈Pヴァイン〉から出した3枚というのは、自分で自分を演じてるという感覚が強いんですよ。「こういうのが好きなんでしょ?」というか。やりたいことは「音楽ぎらい」までの作品でやりきってるんですよね。一回終わってるというか。

sinner-yang:〈Pヴァイン〉時代とそれ以前との作品が明確にちがうのは、いまの俺たちはもう目的を完全に見失っているんですよ。初期の3枚というのは、いまよりももっとマスにコネクトするにはどうしたらいいかと考えているところがあった。それは曲づくりの面でもそうだし、aCKyが書く歌詞にしても、当時はもっとふたりの間に激論があったんです。最近はもうまったくないですから(笑)。

aCKy:まったくなくはないでしょう(笑)。

sinner-yang:(笑)。過剰なディレクションはしないと言ったほうが正しいかもね。初期3枚は本当に喧嘩になるくらいだったし。

aCKy:そうだったっけ?

──じゃあいまは完全に惰性でやってるということですか?

sinner-yang:完全に惰性です(笑)。

aCKy:ライヴも10年前とほぼ変わってないですよ。アレンジやディティールの違いはありますけどね。この前、田我流さんたちのstillichimiyaとのライヴはヒップホップを意識したんですけど、あれはすごい昔に新宿の〈MARS〉というところでRUMIちゃんとか漢くんとかが出たライヴの焼き直しですよ。MCとかも全部いっしょだし。

──ではなぜいま現在もバンドは存続しているんですか?

sinner-yang:それは俺ら以外のメンバーたちが楽しそうだから。あとレコード会社の方や、ファンの人たちからの期待に応えなきゃって思いはすごくあります。

──……。

sinner-yang:なんだか不満そうですね(笑)。じゃあ、こういうたとえはどうですか。俺が小学生のときに従姉のお姉ちゃんがお祭りでカラーひよこを買ってきたんですよ。ああいうのって普通すぐに死んじゃうじゃないですか。でも電球入りの巣箱とかちゃんと作って、しっかり面倒みたらそのまま何年も生きてニワトリになったんですよ。朝とかすごい早い時間から鳴いたりして、もう鬱陶しくてしょうがない。デカいし、うるせーし、かわいくねーし(笑)。でも生きてるから殺せないじゃないですか。つまり、面影っていうのは育ってしまったカラーひよこみたいなもんなんで、殺すわけにもいかないんですよ。

──好きなバンドに「惰性でやってます」と宣言されるのって、ファンにとっては残酷なことだと思いませんか?

sinner-yang:そおお? 生きてるだけでいいじゃない。バンドを死なせないようにするのってすごく大変なんですよ。だって20年も続くバンドなんてないでしょう? カラーひよこがニワトリに育つのと同じくらい奇跡的なことなんだから!

──極端な話ですが、目的もない人生があってもいいんですかね? 僕は何の目的もなくただ生きているという状態に自分がおかれたとき、えも言われぬ不安感に支配されてしまうんです。「俺はこんなことでいいのか?」と。

sinner-yang:いいも何もそうせざるを得ないでしょう。存在というものは善悪の彼岸にあることじゃないですか。

──人生を善悪で割り切ろうとすること自体に無理がある、と。

sinner-yang:そう。その概念の前に、いまここに存在そのものがあるから。それを受け入れるしかないでしょう。しかも存在は未来永劫つづくわけではない。みんないつかは死ぬでしょう。だから、死ぬまでの暇つぶしをしてるんですよ。みんなが電車でスマホいじってるのと同じです。

aCKy:暇つぶしのアイテムがバンドだけじゃないから、活動しなかったこともあるんですよね。いまここでインタヴューを受けているのも暇つぶしのひとつでしかない。もちろん悪い意味じゃなくてね。楽しいんですよ、こうやってあなたと話してるのも。

sinner-yang:だってこうやって僕らに「話を訊きたい」なんて言ってくれる人は非常に稀なことですから(笑)。

aCKy:こんなおっさんふたりの出会いなんて誰も聞きたがらないよ、普通。

sinner-yang:こういう機会があるから、俺らもブログやらツイッターやらはじめなくて済んでるのかも知れないし。みんな自分のことを知ってほしいんですよ。だから昼飯の写真撮ってブログやSNSに上げたりしてるんでしょ?

aCKy:リーダーは絶対やらないよ(笑)。

 RHYMESTERの宇多丸氏が映画『かぐや姫の物語』を評したとき、「“ここにはない何か”“こうではなかった人生”という幻を追っている、それが人間の生である」「しかしそれすらも肯定するしかない」と語った。さらに「仮に人が害をなすだけの存在であったとしても、それでもその害も含めて何かあるほうがいい」「無(死)より何か(生)があったほうがいいじゃないか」とも話していた。生とは何か。これは僕個人が最近自問していることだ。何もなさずに、何もなすことができずにただ生きている。しかもその存在が周りにとって有益ではなかったなら、そんな状態なら無に向かうべきなのか、否か? 今回のインタヴューはそんなことを考えているなかで行われた。O.L.H.のふたりはどうしようもない生の塊を観察している。それが滑稽でも、醜くても、生ある者について歌いつづけている。生とは何か。僕自身にその答えはまだ見つかっていない。しかし、僕にとってこのインタヴューを行っている時間、そしてそれを原稿にまとめている時間は本当に楽しいものだった。

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