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interview with Yakenohara

interview with Yakenohara

ゆるいリミックス

──やけのはら、インタヴュー

野田 努    Apr 14,2014 UP

やけのはら
SELF-PORTRAIT

Felicity

Amazon

 やけらしい……というか、総じて、のんびりしている。カリブ海の影響を受けたリズムも、控え目に鳴っている。ジャケはかわいいイラスト。
 『SELF-PORTRAIT』はやけのはらのリミックス集で、2007年から2013年までのあいだに彼が手がけた楽曲が12曲入っている。
 このリミックス盤は……、彼のファースト・アルバム『ディス・ナイト・イズ・スティル・ヤング』が2010年のリリースなので、2007〜8年という、より初期のやけのはらが聴ける作品だと言える。リミックスを依頼しているのは──中村一義 、奇妙礼太郎、idea of a joke、ランタンパレード、アナログフィッシュ、Spangle call Lilli lineなどなど──名前を並べるとあまり統一感のないように思えるのだが、彼らの曲をやけのはらが再構築すると1枚のアルバムの1曲に収まる。
 個々のアイデアについては、彼自身が書いたライナーに詳細が記されている。ライナーをいつか自分で書きたかったということだが、たしかに力が入った言葉をみっちり書いている。

 ボヘミアン気質の初期の作風、オプティミスティックな感覚はいまでもやけのはらのトレードマークなのだろうが、やはりある時期までの初々しさは、その時期──彼がまだ真冬でもサンダル履きで街をうろついていた頃──だからこそ出せたものだと言えるだろう……ふと、いまこれを書きながら思ったのだが、サンダル履きのやけのはらは、日本でチャヴ・ファッションを先んじて実践していた男なのかもしれない。

 彼は、2000年代なかばの時点では、ラッパーというよりも、若手のDJのひとりとして評判だった。いろんなところから声をかけられ、よくDJをしていたと思う。ファースト・アルバムを出すのが遅すぎただけで、早い時期から彼のもとにリミックスのオファーがあっても不自然ではない……

ずっとリミックス盤を出したかったんですけど、タイトルが決まらなかった。エイフェックス・ツインのタイトル、『26ミクシーズ・フォー・キャッシュ』がずーっと頭にあって、ほんと最高のタイトルだなと思ってたんで(笑)。あの秀逸なタイトルが、ハードルとして高くありすぎましたね。

率直な感想を言うと、けっこうリミックスをやってたんだなっていう。

やけのはら(以下、やけ):あ、そうですか。まずそこから(笑)。

(笑)すごくやってたんだね! 奇妙礼太郎のリミックスは知ってるけど、他のはほとんど聴いてなかったなあ。知らないものばかりだったよ。

やけ:野田さんの聴きそうなところとはちょっと違うかもしれないですね、もしかすると。

日本では、リミックス作品のリリースが90年代ほど盛んじゃないし、あとポップスとDJカルチャーとの溝、いま日本では開いちゃってるからね。

やけ:その頃だったらリミックス盤ってけっこうありましたもんね。1枚丸々リミックスとか。

だから、いまエレキングでもリミックス盤って作ってるんだよ。12インチのアナログ盤で。

やけ:知ってますよ。踊ってばかりの国。

そうそう、それが1枚目で、次はオウガ・ユー・アスホールの新曲をアルツくんにリミックス頼んでいて……いま気がついたんだけど、やけちゃんってアルツくんに似てるよね?

やけ:それ見た目でしょ(笑)? たしかによく言われます。

へへへへ、それにしても、やけちゃん、こんなにリミックスをやってるんだなあ。売れっ子じゃない。

やけ:けっこう、長いタイムスパンのなかから選んだんで。でも、もっといっぱいあるから。まあ、あんまクラブ仕様って感じでもないですけどね。

そうかなー。やっぱ、どちらかと言うとクラブ寄りの感性だなと思ったんだけど……と言っても、オリジナルを知らない曲が多いから、オリジナルがクラブ寄りだったりするのかもね。でも、やけらしさは感じるよ。ちょっと清々しい感じとか、タイトルを『SELF-PORTRAIT』ってつけたくなる気持ちもわかる。良いタイトルだね。

やけ:はい。ありがとうございます。

やっぱ、フェリシティから出してから、リミキサーとしての仕事は多いの?

やけ:いや、わかんないです(笑)。ひとと比べて多いのか少ないのかわかんないですけど、まあたまに誘ってもらったり。さっきの、ポップスとクラブとの溝の話で言えば、僕がロックとかポップスが好きだったり理解があった上でクラブっぽいものができると思われてるのかもしれないですね。頼んでくれるひとからしたら。

ああー。(DJ)ヨーグルトとちょっと近いよね、その見られ方は。

やけ:あくまで想像なんで、実際はわからないですけどね。頼む側からすると、自分たちの音楽はあんまりわかんない人間がただクラブ仕様にするっていうのは、ちょっとなって思うのかもしれないです。

なるほど。頼まれると絶対断らないタイプでしょ?

やけ:基本は。ただ自分のそのときのスケジュールとかもあるんで。

よほどのことがない限りね。

やけ:まあそうですね。

相手は選ばない?

やけ:選ばないって言うとヘンですけど、なんというか、挑戦というか。例えばこれには入ってないですけど、てんぱ組.ってアイドルみたいなひとなんかもやらせてもらったりしたんですけど。そういう普段聴かなかったり自分の作っているものと距離があっても、リミックスだと、チャレンジでやってみようかな、っていうのはありますけど。

なんで入れなかったの。

やけ:リミックスは、今回選んだ曲の倍ぐらいあって、そのなかからこれにしたんで。なんとなく、評判が良かった風のやつから逆算して入れていったというか。あと、ぼんやりなんですけど「あのとき友だちがいいって言ってくれたな」とか。3票ぐらい。ゼロか3かくらいの小さい差なんですけど(笑)。あとは自分がいままで関わったやつの、一番端と端まで入れちゃうとぐちゃぐちゃになりすぎるんで。いちおう1枚の整合性とバランスを考えつつ。

なるほど。でも、昔から議論されることだけどさ、リミックスを楽しむ文化が、いまだに日本では定着してないんじゃない?

やけ:どういうことですか?

いまだにビョークの曲をハーバートがリミックスするとビョークのファンが怒っちゃうみたいな。

やけ:はい、はい。ミュージシャンのクレジットのほうが大きいのは仕方がないけど。

だから、アイドルだろうが何だろうがさ、リミックスする側からすれば関係ないじゃない。

やけ::そうなんですけど、でも僕の場合は、たとえば歌のひとの曲だったら歌は全部残すとか、素材にはしないって自分内での決めごとにしてるんで。元のひとの中心軸は、まあ歌なら歌で、全部残すんで。あとなんだろう、そのサジ加減を楽しんでるんですけど、思いっきり全部素材にはしないで、いちおう元のリアレンジって風にやってるんで。だから自分ヴァージョンにはなってるけど、元のひとの核は全部尊重してるっていうか残してるっていうか。

なるほどね。たしかにリミックスっていうのは原曲に対するリスペクトがあるかどうかっていうのは、ひとつあるかもね。

やけ:リスペクトって言葉かはわからないですけど、素材にしちゃうんだったら何でもいっしょになっちゃうんで、やっててもつまらないっていう。

まあね。エイフェックス・ツインがそれこそ「カネのためにやったリミックス」って言ったりね(笑)。

やけ:あれが頭にあったんですよね、あのタイトル。

『26ミクシーズ・フォー・キャッシュ』(2003年)だっけ。あれは、リミックス文化に対するシニカルな批評だもんね。

やけ:そうなんですよ。ずっと(リミックス盤を)出したかったんですけど、タイトルが決まらなかったんですよね。で、エイフェックス・ツインのあのタイトルがずーっと頭にあって、ほんと最高のタイトルだなと思ってたんで(笑)。『26ミクシーズ・フォー・キャッシュ』みたいなのがいいなーって。あの秀逸なタイトルが、ハードルとして高くありすぎましたね。それで、なかなか出せなかった。

ああー。それでなんで『SELF-PORTRAIT』にしたの?

やけ:これはね、もう……まあボブ・ディランなんですけど。

うわ、大きいこと言うねー(笑)!

やけ:いや、ディランのアルバムであるじゃないですか。カヴァーが多く入ってる『セルフ ポートレイト』。あの感じでいいかなっていう。いま言った話の流れに通じるかもしれないですね。一見ひとの曲だけど、意外と俺のエッセンスがあるぞ、と。

取材:野田努(2014年4月14日)

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