「Nothing」と一致するもの

Various Artists - ele-king

 現代的なアンビエントの定義は曖昧である。イーノ的なアンビエントとも、KLFやジ・オーブ的なアンビエントとも違う。儚さ。夢。美しさ。現実。崩壊。夢。境界線。持続。消失。空気。霧。時間。曖昧さ。コンセプトや効能・機能性よりも、記憶のように不定形で、物語の気配のように抽象的なもの。フラジャイル(弱さ)への志向/嗜好。それが現代のアンビエント音楽の特徴といえないか。
 「弱さ」といっても、単に繊細なだけのものではない。そうではなく、静謐な映画のシークエンスのように断片的であり、想像力を喚起する力がある音。時間が溶け合うような静けさと物語の兆候のような想像力がうごめく音。

 〈パン〉初のコンピレーション・アルバムとしてリリースされたアンビエント・コレクション『Mono No Aware』(もののあわれ)は、このような記憶と物語の境界線のムードを醸し出しており、すぐれて現代的なアンビエント・アルバムといえる。
 参加メンバーは、ビル・コーリガス(Bill Kouligas)をはじめ、イヴ・テューマー(Yves Tumor)、ヘルム(Helm)、ADR、ジェフ・ウィッツチャー(Jeff Witscher)、Sky H1、M.E.S.H.など、過去に〈パン〉からアルバムなどをリリースしてきたエクスペリメンタル・アーティストたちのみならず、カリーム・ロトフィー(Kareem Lotfy)、マリブー(Malibu)、AYYA、フローラ・イン=ウォン(Flora Yin-Wong)、マヤ・ゴメス(Mya Gomez)、TCF、ジェイムス・K・フィーチャリング・イヴ・エセックス(James K feat. Eve Essex)、オリ・XL(Oli XL)、DJハヴァド(DJ Hvad)・パン・ダイジン(Pan Daijing)など、新鋭からマニアならば唸るようなアーティストまでが多く参加している(マスタリングはラシャド・ベッカー)。
 彼らが必ずしもアンビエント・ミュージック専門ではないという点が重要である。アンビエント、ミュジーク・コンクレート、フィールド・レコーディング、ニューエイジ、ドローン、ヴォイス、楽器音など、さまざまな音楽的要素を交錯させつつ、「音楽」によって生成されるアトモスフィアな現代的なアンビエント/ミュージックを構成・生成しているのである。

 アルバム冒頭は、新鋭カリーム・ロトフィーの“Fr3sh”。弦を思わせる電子音と環境音による柔らかなアトモスフィアが耳に心地良く、映像的ですらある。続くマリブー“ヘルド”は、同じようにシルキーな電子音のレイヤーで幕を開け、やがて重厚なシンセ・ストリングスへと展開する。この曲も映像的な想像力が刺激されるが、すぐに音楽は途切れ、途中で何らかの映画からの引用のようなセリフと環境音(何かから逃げているような吐息と足音が聞こえる)が展開し、楽曲は音のない映画的な音響空間へと変貌を遂げていく。やがてそこにギターらしき音や声がレイヤーされ、トラックは「音楽」へと舞い戻る。コンクレート的技法と音楽的要素とアンビエントな音響が交錯する本トラックは、このアルバムのイメージを代表する曲であろう。
 続く、イヴ・テューマーの“リメレンス”もまたアンビエント/環境音/声のコンクレート的な技法を展開する。イヴ・テューマーの音響作家としての才能を垣間見る(聴く)こともできた。反対にヘルム“エリミネーター”は彼らしい硬質なインダストリアル/アンビエントを展開し、前3曲との絶妙なアクセントとして機能しているように思える。ADRの“オープン・インヴィテーション”は音響の中に溶け合っていくような声と電子とノイズが交錯する壮大なトラック。以降、アルバムは「もののあわれ」のムードを変奏しながら(唐突に挿入されるビル・コーリガス“VXOMEG”のノイジーなトラックの妙!)、まるで音によって想起される「イメージの演出」のように全体が構成されていく。

 そう、本作に収録された各曲は、独立した曲であり、同時に、『Mono No Aware』という作品=総体を形成するシークエンスのようである。それらをまとめ、ひとつの作品=映像のない映画のようなアルバムに仕上げた〈パン〉(ビル・コーリガスの?)の美的感覚は冴えわたっている。なにより前衛電子音楽とクラブ・ミュージックを結び付けたレーベルが、このように儚い「もの/ごと」への繊細にして大胆なアンビエント音響を生み出したことが大切なのだ。
 持続を僅かに変化させ、折り重なるサウンドに自己の感性や感情の微妙な揺らぎを重ね、そして溶かしていくこと。音とモノと耳と世界との境界線を溶かすこと。具体的な、微かで、抽象的な音による『Mono No Aware』のアンビエンスは、インターネット/世界という騒がしくも非物質的な空間に対して、フラジャイルなモノ=音たちからのカウンターに思えてならない。

SWINDLE - ele-king

 今年に入ってアルバム『Trilogy In Funk』をリリースしたスウィンドルが来日する。UKグライムの寵児として脚光を浴びた彼も、くだんの作品では、ラテン、USファンク、そしてUKグライムをミックスしながら音楽的成熟を見せてくれた。ele-kingの予想では、1. ジャングルをかけまくる。2. そのなかにラテン・ジャズ・ファンクを盛り込む。となっているのだが、果てして最新の彼はどんな音楽を聴かせてくれるのだろうか……楽しみだ!


【名古屋】 05.19 (金) Nagoya: JB's https://www.club-jbs.jp/
【京都】  05.20 (土) Kyoto: THE STAR FESTIVAL https://www.thestarfestival.com/
【東京】  05.21 (日) Tokyo: WALL&WALL https://wallwall.tokyo/



SWINDLE 『Trilogy In Funk』
https://p-vine.jp/music/pcd-24564


■ブラジルのパーカッショニストとサンパウロのシンガー、リカルドチャイナとの競演。
Swindle - Connecta Ft. Ricardo China


■UKグライムのD ダブル Eとの競演。
Swindle x D Double E - Lemon Trees


■Gorillazらとの共演でも知られるUKのR&Bシンガー・ソングライター、デイリーとの競演。
この”いなたい”UKの兄ちゃんさを醸しだしイイ感じです。
Swindle, X Daley - Sympathy

interview with Juana Molina - ele-king

新しいアルバムを作るときに大事にしているのが、いかに前作と違う作品を、違う人間にならずに作るかということ。


Juana Molina - Halo
Crammed Discs/ホステス

PopExperimental

Amazon Tower HMV iTunes

 フアナ・モリーナの3年半ぶり、7作目のアルバム『ヘイロー』がリリースされる。彼女のアルバムは、遠い海の向こうのアルゼンチンから届く、ちょっと風変わりで、でも届くのが楽しみなグリーティングカードのようだ。あの名作『セグンド』(2000)以降、『トレス・コーサス』(2002)、傑作『ソン』(2006)などのアルバムがリリースされるたびに、「ああ、また、フアナの音の世界に行ける」と思ってしまったほど。シュールで、少し怖くて、だけどポップな、あのフアナ・ワールドに(ちなみに、もはや「アルゼンチン音響派」など死語といっていい)。

 とはいえ、彼女の音楽は、いつも一筋縄ではいかない。じつに不可思議な世界観とサウンドを持っているのだ。それはシュールでもあり、少し不気味でもある。細やかでもあり、大胆でもある。反復的でもあり、非反復的でもある。映像的でもあり、まるで活字の世界のように抽象的でもある。
 本作『ヘイロー』も同様だ。少しダークな夢のなかに迷いこんだようなポップ・ループ・サウンド。親しみ深く、複雑で、しかし素朴でもあり、同時に、そこはかとない怖さや、美しさをたたえているアルゼンチン・エクスペリメンタル・ポップ・ミュージックに仕上がっているのだ。

 今回、アルバムの制作を終え、リリースを待つばかりのフアナにインタヴューをすることができた。ブエノスアイレスからテキサスまでを越境しつつ制作・録音されたフアナ流ダーク・ポップの創作の秘密を、いかにもフアナ・モリーナらしく素直に、しかし謎めいた言葉で、しかし誠実に語ってくれた。とくに本作のラストに収録されたフアナ史上、屈指の名曲(!)といえる“Al oeste”の意外な誕生秘話にも注目してほしい。
 ぜひ新作を聴きながら、ぜひとも彼女の言葉を追っていただきたいものだ。この新作アルバムの魅力が、より一層伝わるのではないかと思う。

食べ物に例えるとしたら、音楽は味みたいなものかな。もしすごく興味があってもっと掘り下げたいなら、その材料を調べればいい。でも私のメイン・ゴールは、完成されたお料理を出すこと。どのパートも互いに溶け込んでいい感じになっているような料理。

前作『ウェッド21』から約3年半ぶりのアルバムですね。アルバムの制作はいつ頃から始められたのですか?

フアナ・モリーナ(Juana Molina、以下JM): 2年前くらいに始めたかな。合間にいろんな邪魔が入って、ゆっくりと進めていた感じだった。最初はアイデアを作るところから始めて、その種が徐々に曲に育っていった感じだったわ。

新作『ヘイロー』のテーマやコンセプトはどのようなものですか?

JM:私はアルバムを作る前にコンセプトを決めることは滅多にないの。まずはいろんなアイデアが降りてくるのを自然に任せて、後から枠に入れていく感じなのよね。そのときもコンセプトっていう感じじゃなくて、ほんと、なんとなく枠に入れてみる感じ。例えば前作にしても、決め込んでタイトルに合うようなアルバム内容にしたとかはなくて、自然とそうなったのよね。

サウンドメイクで意識されたことはどういった点ですか?

JM:新しいアルバムを作るときに大事にしているのが、いかに前作と違う作品を、違う人間にならずに作るかということ。だから新しいことにチャレンジしながらも、自分らしさも失わないでいることを意識しながら作っているわ。自分を新しい方向に誘うことを恐れないで、そういう挑戦を大事にしているのよ。新しいサウンドに挑戦してみたり、ほかの人が私にもつイメージに耳を傾けたり、これまで軽くイメージしていた新たな挑戦にもっと踏み込んでみたり。そういう感じで新しい作品には取り組んでいるわ。

フアナさんの楽曲は「ループ」がポイントと言われていますね。「ループ」は、どのような意味を持っていますか?

JM:ループには意味はないの。すごく自然に出てくるもので、考えてやっている訳ではないから。ループはどちらかというと、自分のプレイ(演奏)の形みたいなものなのよね。この言葉が認知される前から私はこのスタイルでプレイしていたの。あるフレーズを繰り返し弾いていて、それが「ループ」っていう手法だとはそのときはまったく知らなかったわ。それをすることで催眠術的な感じがしていたのよね。いろんな音をループすると、そういう浮遊感みたいな感じが生まれて。でもいまは前よりもループをすることが減ってしまったとは思う。それは、いろんなインタヴューでジャーナリストたちがそのことについて聞いてくるなかで、いままで無意識的だったことが意識的になってしまったから。だからたまにあまり取材を受けない方がいいのかなぁって思うことがある。取材で聞かれたことで、いままで無意識だったことを意識的に気にし始めてしまうから。いままで自然だったからこそ美しく感じていたこともそうじゃなくなっちゃって、マジックが壊れてしまうって感じることがあるの。

なるほど。たいしてヴォーカルは反復から逃れていて、とても自由に感じます。ヴォーカル(ヴォーカリゼーション)で気をつけている点はどういったことですか?

JM:そういうふうに聴こえる? やっぱり人の意見って聞くと面白いわ。あまり何も意識したことなかったけど、これもこれから意識することになるのかもしれない(笑)。でもそう言ってもらえて光栄よ。本当に自由に歌っているだけなの。でもそれでたしかに解き放たれる気持ちになることもあるかもしれないけど、どちらかというとヴォーカルは音楽の一部って考えているわ。

フアナさんのリズム・アレンジは、とてもヴァリエーション豊かですね。リズムが音楽に与えるものは、どういったものですか?

JM:リズムが加わることで、暗黙さが軽減されて、明確さが増す気がする。リズムもまた、自分が最初に弾いたものによって自然に訪れる。でもリズムに関してそう感じるのは私だけだったりするのよね。それが証明されるのが、ほかの人と演奏しているときに、自分にとっては当たり前のリズムだったものが、ほかの人が弾くとちょっと違ったりして。すごく明らかなリズムだと思っていても、人にとってはそうではないって気づく。もちろん、リズムは人によっていろんな捉えられ方をされると思うのだけど、どうして私がたくさんリズムを重ねるかというと、自分に降りてきたリズムをそういう手法で説明したくて、そうしちゃうのよね。

どの曲も、ベースラインがとても独特です。リズムとベースラインの関係について、どのような点を意識されていますか?

JM:関係については考えないと思う。すべては同じ絵の一部で。リズムかベース、どっちを先に録音するのかにもよるけど、どちらかを先にとったら、次はどちらかが足りない部分を補うみたいな感じかな。私にとって音楽は、パート、パートで別々のものとは感じてないの。私が、もっとも音楽で満足することとは、みんなに完全なものとしてその音楽を届けること。食べ物に例えるとしたら、音楽は味みたいなものかな。もしすごく興味があってもっと掘り下げたいなら、その材料を調べればいい。でも私のメイン・ゴールは、完成されたお料理を出すこと。どのパートも互いに溶け込んでいい感じになっているような料理。

私が街にいようが砂漠にいようがどこにいようが、音楽は自分のうちにあるものだから変わらないのよね。でも歌詞は、見たものを言葉にしたときにそれがいい言葉だったらそのまま歌詞になったりするから、場所は影響すると思う。

フアナさんの音楽は、即興と作曲が絶妙なバランスで同居しているように思いました。アルバム制作においては、どちらの比重が高いですか? もしくは、即興と作曲のバランスをどのようにとっているのですか?

JM:ほとんど即興だと思う。例えばギターとメロディが浮かんだとして、しばらくそれでいろいろ試してみるの。即興でやっているなかで、自分のなかでピンときたものがあればとにかく録ってみる。頭に浮かんだものをすぐに録音するわけじゃなくて、いま言ったみたいにアイデアで少しは遊んではみるけど、特にそのあとこうしようとかそういう構想はなく、ほとんど即興に近い形で曲を作り進めていくの。最終的には即興で録音した音を組み合わせて、曲を作り上げることが多いわ。

“In the lassa”など、部分的にエレクトロニックなトラックがあります。テクノやエレクトロニカなどからの影響はありますか?

JM:ハウス・ミュージックとテクノは好きなんだけど、家ではまったく聴かないのよね。だからじつはジャンルとかもぜんぜんわからなくて。でも私は踊るのが大好きだから、友達がおうちで開くパーティによく行くの。最低月に1~2回は必ずあるんだけど、エレクトロニックな音楽を聴くのは唯一そこでだけかな。そこで「この曲いいわね!」って友達に言うと、「それはハウス・ミュージックよ」ってジャンルを教えてもらったりするわ(笑)。

ブエノスアイレス郊外のホーム・スタジオとテキサスのソニック・ランチ・スタジオで録音されたそうですね。

JM:いちばん大きな理由が、自宅スタジオの機材がいろいろ壊れていたからなの。何かを録音しようとすると、マイクが壊れていたり、ソフトウェアがクラッシュしたり、いつも何か駄目なことが起きちゃって、ほんと何もかもがうまくいかなかった。その状況が何ヶ月も続いちゃって、すごくストレスが溜まったの。そしたら一緒にレコーディングしていたオーディン・シュヴァルツが「もうどこかスタジオに行こうよ!」って言ってきて。でも私は別のスタジオにはぜんぜん行きたくなくて。過去にスタジオでレコーディングして、すごく嫌で、危険なことをしたことがあるから。そもそも自分がレコーディングしようとしているときに、ほかの人がいたりするのがすごく嫌いなのよね。まるで見知らぬ人の前で裸になっているみたいで。あと、スタジオは時間も決まっているし、お金もかかっちゃうし、家にいるときみたいにアイデアが浮かんだら時間とか関係なく、すぐにレコーディングするとかができない。そしたらミックスをしてくれたエンジニアが、テキサスにいいスタジオがあるって教えてくれたの。そのスタジオはテキサスの郊外にあって、住みこみができる貸し切りスタジオだったの。だから24時間いつでも使えるし、街から離れているから気が散ることもないし。値段もリーズナブルだったし。みんなからの「いいから、スタジオ借りてみよう! 過去の悪いイメージは捨てて! 同じことにはならないから!」って言われるプレッシャーにも負けて、スタジオを借りることにしたの。結果、すごくいい経験になったわ。スタジオに行って本当によかったなぁと思うのが、そこで膨大な数の楽器に触れることができたの。新しい楽器っていつだって新しいアイデアになるから、それがすごく良かった。また行ってもいいなぁって思えるようになったわ。

[[SplitPage]]

音楽を作るとき私にとってその音楽はふわふわ浮いていて、浮遊しているみたいなもので。それで、その浮遊している音たちは、自分にとってすごくパーフェクトなもの。でも歌詞をつけることで、その浮遊して夢のあるものが、すごく現実的になってしまう気がして。その夢が壊れてしまうんじゃないかって怖くなっちゃう。


Juana Molina - Halo
Crammed Discs/ホステス

PopExperimental

Amazon Tower HMV iTunes

テキサスでの録音が本作に与えた影響は?

JM:歌詞のアイデアはもらったかもしれないけど、音楽的には変わってないと思う。私が街にいようが砂漠にいようがどこにいようが、音楽は自分のうちにあるものだから変わらないのよね。でも歌詞は、見たものを言葉にしたときにそれがいい言葉だったらそのまま歌詞になったりするから、場所は影響すると思う。

今回、コンゴトロニクスVS ロッカーズで出会ったディアフーフ(!)のギタリスト、ジョン・ディートリックさんが参加されています。彼とのコラボレーションは、この作品に、どのような効果をもたらしましたか?

JM:彼は私が考えもしないようなギター・フレーズを入れてくれるの。最初に聴くと「何これ! こんなギター・フレーズ聴いたことないわ」って衝撃を受けるんだけど、いつしかそれ無しでは生きていけないみたいになって(笑)。彼とのコラボレーションはコラボレーションのあるべき姿だと思う。だって彼は私が絶対に思いつかないようなことをやってくれるから。私のアイデアとかけ離れたことをやってくれるから逆にそれがいい形でハマっているんだと思う。彼は本当にアイデアをたくさん生み出す人で、次から次へと出てくるから止めなきゃいけないくらいなの(笑)。すごく親しみやすい人だし、大好きだわ!

ライヴでおなじみのシュヴァルツ・オーディン・ウリエルさん(キーボード、ヴォーカル、ギター、ベース)、ディエゴ・ロペス・デ・アルコートさん(ドラムス)も参加されていますね。彼らの演奏はこのアルバムにどういった色彩を与えてくれたとお考えですか?

JM:正直に言うと、あまり色彩は与えてないと思う。というのも私は自分の音楽になると、自分の世界が広がってしまうから。だから私と音楽をやるのはすごく難しいと思う。でも彼らはミュージシャンとしては大好きよ。ディエゴが叩いてくれたドラムがレコーディングに採用されたんだけど、だからといってそれがアルバムの何かを変えたかというとそうではない。ただ、本当に良いドラムだったからそれを使った感じなの。

今回もエドワルド・ベルガージョさんがミックスを手掛けられていますね。今回のアルバムでも重要人物ではないかと思うのですが、彼の仕事が本作に与えた影響を教えてください。

JM:これもさっきと同じで「影響」っていうと、答えるのが難しいかもしれない。彼とは何度も何度もミックスのやり取りをするの。彼はいつもたくさんディレイやリヴァーブをつけて戻してくるんだけど、私はそれがすごく嫌で。あと彼はすごくパンチの効いた音にしたがるんだけど、それも私は嫌で。でも彼は私のやりたいこととか、私がどういうミックスを求めているのかとかはちゃんとわかってはくれているのよね。私はある程度自分でミックスしたものを彼に渡すから、まっさらなミックスをするんじゃなくて、私がミックスしたものが基盤になる。それでも彼なりに挑戦してくるときもあって、それが採用されることもときどきあるのよ。例えば“Lentísimo halo”では、私のミックスに比べて、彼はギターのヴォリュームを3倍くらい上げたの。最初はびっくりしたんだけど、どんどんそれが良く感じてきて。それで曲のムードがとても良くなったの。あれをやった彼は正しかったわ。

フアナさんのリリックは日本人である私には意味はわからないながら、とても心地よい響きを感じます。フアナさんにとって「言葉」とはどういった意味を持っていますか?

JM:「言葉」とは音楽をもっと生かすものだと思う。地に足をつけてくれるものだと思う。だから私はいつもアルバム制作の最後の方に歌詞を書くのよ。私にとって歌詞を書くことはとても難しいことなの。説明が難しいけど、音楽を作るとき私にとってその音楽はふわふわ浮いていて、浮遊しているみたいなもので。それで、その浮遊している音たちは、自分にとってすごくパーフェクトなもの。でも歌詞をつけることで、その浮遊して夢のあるものが、すごく現実的になってしまう気がして。その夢が壊れてしまうんじゃないかって怖くなっちゃう。だからあまり歌詞って好きじゃないのよね。だから少しでもそれを崩さないように、オリジナル・メロディの音にきちんと合う言葉を選んでいるの。私にとって大事なことは歌詞がメロディに溶け込むということ。だから言葉選びに関してはすごく厳しいわ。

過去に日本人音楽家とも共演されていますが、現在、気になる日本人音楽家はいますか?

JM:いまは誰もいない。その理由が最近すごく怠け者になってしまって、ぜんぜん新しい音楽を探さなくなってしまったの。だからこういう質問をされると申し訳なくなる、答えがなくて。正直なことを言うと、ここ2年くらい、自分自身が音楽に圧倒されちゃって、音楽をあまり聴かなくなっちゃったの。友達で音楽ライターの人がいるんだけど、いつも彼が私にいろんな新しい音楽を勧めてくれていたんだけど、最近彼にも会ってないから私に音楽を教えてくれる人もいなくて(笑)。

余談ですが日本のマンガ『NARUTO -ナルト-』のファンということですが、気になっている日本のマンガやアニメーションなどはありますか?

JM:宮崎駿の大ファンよ。みんな彼の大ファンだとは思うけど。彼の作品は本当に美しくて、感動的で、完璧で、でもどことなくシンプルで。何気ないところにすごく動かされるのよね。例えば『崖の上のポニョ』で、ポニョが笑顔で水面を駆け抜けるシーンとか、ああいう場面を想像できるってある意味すごくクレイジーだと思うんだけど、本当に美しくて心動かされるわ。本当に彼は世界が誇る天才だと思う。最初にアメリカ版を観てから日本版を見てみると、ディープさとダークさがより際立つのよね。アメリカ版だと削除されているシーンも多くて。だから日本のオリジナル版を観ると、強烈さと感動が増すのよね。

オリジナル・アルバムのラスト曲である“Al oeste”は、メロディ、ギターの演奏など、シンプルにして、とても美しい曲に思いました。

JM:この曲は驚くかもしれないけど、前作よりも前に書いていた曲なの。サウンドチェックのときに書いたのよ。このアルバムの多くの曲はサウンドチェックで書いたの。この曲は、何かが足りなくて、だから前作には収録されなかった。それで、今回のアルバムを制作していて、スタジオの準備をしているときに誰かが、この曲のデモを流したの。そこにジョンもいたんだけど、彼が特に気に入って、「こんな曲あったのか! すごく美しい! アルバムに入れるべきだ!」って言ってくれて。私にとってはちょっと間抜けな感じの曲だったから、みんなが気に入ってくれたことにびっくりしたわ。すごくシンプルな曲だったから。でもみんなのリアクションを見て、私もこの曲に対する気持ちが変わったの。人のリアクションってやっぱり影響すると思う。特に「悪い」とね。センシティヴ(神経質)すぎかもしれないけど、リアクションで自分の気持ちすら変わってしまうこともある。この曲に関してはベンにありがとうって言わなきゃいけないと思う。彼がこの曲を引っ張りだしてきてくれなければ、私の判断では絶対にこの曲はアルバムには収録されなかったと思う。

いつもアートワークが独特ですね、今回は目と骨のイメージです。何を意味するのでしょうか?

JM:これは誰もわからないわ(笑)。私はいつもアレハンドロにアートワークをお願いするんだけど、じつはこれになる前に、もうひとつアートワークができていたの。でもそれが過去にもやったことのあるようなアートワークで、なんかしっくりこなくて。そしたら、アレハンドロが「じゃあ、ちょっとそこに立って、目の写真を撮らせて」って言って、突然私の写真を撮り始めたの。自分のiPhoneで。私が「え! 何? 何をするつもりなの?」って聞いても、「いいから! とにかく写真を撮らせて!」って言ってきたの。それで彼が目の写真を撮った。もう一度同じ写真を撮り直してみたんだけど、その目にはならなくて、結局彼のiPhoneで撮影した目写真が使われることになったの。彼が何をするのかまったく想像できなかったんだけど、結果、想像を絶する素晴らしいイメージができ上がったと思う。最初に見たときは、あまりの奇妙さに本当に大爆笑したわ(笑)。とても奇妙だし、不気味だし、でもなんか目が離せなくなっちゃって(笑)。知り合いに見せても、すごく酷いリアクションをされたりして(笑)。でも思ったのが、何もリアクションがないより、それがネガティヴなリアクションでも、記憶に残るくらいインパクトがあるものの方がいいなぁって。それとタイトルにも合うことに気づいて。タイトルの『ヘイロー』は、昔郊外に存在していた神話なの。白く蓄光する光が地面から浮いていて、みんなそれを恐れていた。何か悪いことが起きてしまうんじゃないかって。その光は、人の後をついていったり、脅かしたりして、人びとにいろんな違う側面を見せるから、人びとはその光の行動をオラクルとして捉えていたの。その白く蓄光している光は、動物の死骸の骨からその光を放つようになったの。だから偶然にもアートワークにも骨があって、『ヘイロー』と合うって感じたの。

なるほど。話が少し前後しますが、アルバム名を『ヘイロー』とした理由を教えてください。

JM:どうして『ヘイロー』にしたかというと、タイトルを何にしていいか、まったくわからなかった。それでアルバム全体の歌詞を見直して、アルバムに合う言葉がないか探したの。そしたら“Lentísimo”っていう曲に「Halo」っていう言葉があって、なんかピンときて。だからその曲のタイトルも“Lentísimo halo”に変えたのね。さっきも言ったけど、もともとコンセプトはないところからスタートするんだけど、結果、パズルのようにすべて引っ付き始める。ひとつの行動でいろいろと変わるのに、結果、いろいろつながるのはアートのマジックだって感じるわ。

音楽も含めて、最近、もっとも感動したことは?

JM:何かあるとは思うけど、なんかいまは頭が真っ白で思いつかないわ(笑)。インタヴューが終わった瞬間に100万個くらい浮かびそう(笑)。

最後に、今後のご予定などを教えてください。

JM:アルバムが5月に出てからは、アルゼンチンで4公演ライヴをする予定なの。その後はヨーロッパでツアーをしつつ、ソナー・ミュージック・フェスティヴァルにも出る予定よ。まだ長いツアーではなくて、短いツアーからスタートする感じ。本格的な長いツアーは秋以降かな。そのときには日本も行きたいと思っているわ。東京と京都に行きたいわ。

YUKKE - ele-king

10 records in my bag now (no particular order)

Bibio - ele-king

 ナイス・タイミングですね。5月27日・28日に開催されるTAICOCLUBへの出演が決まっているビビオが、急遽新たなEPをリリースします。昨年の『A Mineral Love』はソウルやファンクからの影響を独自に取り入れた素敵なアルバムでしたが、今度はなんとハウスです。なんでも彼は、いまのような音楽スタイルになる以前はハウス・トラックを作っていたんだそうで。きっとビビオの新たな一面が見られるEPに仕上がっていることでしょう。リリースは5月5日。なお、国内流通盤は100枚限定だそうですよ。

B I B I O
TAICOCLUB’17 出演も話題!
来日に先駆け、BIBIOが最新EP『Beyond Serious』を来週緊急リリース!
全世界1000枚、国内流通100枚限定の12”は即完必至!

人気の野外音楽フェスティバル「TAICOCLUB」への出演も発表され、初披露となるLIVEパフォーマンス決定のニュースも話題のBIBIOが、過去最高傑作の呼び声高いアルバム『A Mineral Love』、アルバムに参加したオリヴィエ・セイント・ルイスとのコラボレート作品『The Serious EP』に続く新作EP『Beyond Serious』を来週5月5日(金)にリリースすることが決定! 発表に合わせ、リード曲“Beyond My Eyes”が公開! 本EPは、全世界1000枚、国内流通100枚限定の12”ヴァイナルとデジタル配信でリリースされる。

Bibio - Beyond My Eyes
https://vimeo.com/214653200/9e4d745ed1

本作では、BIBIOことスティーヴン・ウィルキンソンが10代に熱中したという90年代中期から後期のフレンチ・ハウスにインスパイアされた楽曲を4曲収録。キャリアの原点でもあるBIBIOスタイルのハウス・トラックにオリヴィエ・セイント・ルイスの歌声がフィーチャーされている。

僕が最初にサンプラーを買ったのは1998年なんだ。とてもローファイなやつで、機能やサンプリングの可能な時間もかなり限定されていた。そのサンプラーを使って初期に作ったのは、僕が大好きだった90年代半ばから後半にかけてのフレンチ・ハウスにインスパイアされた、荒削りなハウス・トラックだったんだ。実際のところ、BIBIOとしていま知られているような様々なスタイルの音楽を作る以前は、ハウス・ミュージックを作ってたんだよ。

そこから18年が経って、Rolandのドラムマシーン、TR-808を手に入れたんだ。その808で2016年にたくさんのリズム・トラックを作って、リング・モジュレーターを使ったサウンドで実験を繰り返した。それから808以外の楽器を一切使わずに4つのトラックを作ったんだ。それらを携帯に入れて、家で聴き込んだ。そのままでも楽しめたけど、そこから何かへと発展できる確信を持ったんだ。808を買ったことで、ハウス・ミュージックを作りたいって願いが強くなったんだよ。その後、それらのドラム・パターンをベースにさらに発展させることにした。僕のハウス好きだった一面を知ってる親友は、ハウス・トラックだけでEPか何かをリリースすべきだって言ってくれてたし、それはつねに僕がやりたかったことだった。

だからスタジオに戻って、808だけで作った4つのリズム・トラックにシンセサイザーを加えることにした。その後ヴォーカル・サンプルを加えたいって段階になって、どんなアカペラが使えるかを考えてるとき(スタジオの中には使いたいサンプルがないということもあって)、オリヴィエ・セイント・ルイスが「Why So Serious?」用の送ってくれたヴォーカル・トラックやその他の素材があったのを思い出したんだ。リミックスEPを作ることには興味がなくて、オリヴィエのヴォーカルの生素材から、オリジナルのメロディーを使って、まったく新しい楽曲を作ることが今作のコンセプトで、挑戦だった。
- Bibio

Labels: Warp Records
artist: BIBIO
title: Beyond Serious

release date: 2017/05/05 FRI ON SALE

iTunes Store: https://apple.co/2oI8FYm

01. This Ain’t ‘bout The Feelings
02. Beyond My Eyes
03. Turn It All Down
04. Fix This Thang

Jack Peoples - ele-king

 ま、まだあったのか! さすがにもう未発表曲は残されていないだろうと思っていたが、ぜんぜんそんなことはなかったようである。オランダのレーベル〈Clone〉が、ドレクシアの片割れである故ジェイムズ・スティンソンの新たな音源をリリースすると発表した。そのアナウンスによれば、2000年代初頭にジ・アザー・ピープル・プレイス名義でリリースされた2タイトルのすぐ後に、それと関連するミニ・アルバムが用意されていたのだという。スティンソンが亡くなってしまったためそれが日の目を見ることはなかったそうだが、最近になって「長いこと失われていたDATテープ」が見つかったとのこと。そのジャック・ピープルズ名義の未発表曲集『Laptop Cafe』には6曲が収録されており、6月26日に発売される。リリース元は、これまでドレクシア関連の音源に特化してきた〈Clone〉のサブ・レーベル、〈Clone Aqualung Series〉。
 ちなみに、上述のジ・アザー・ピープル・プレイス名義の2タイトルとは、アルバム『Lifestyles Of The Laptop Café』と12インチ「Sunday Night Live At The Laptop Cafe」のことで、それぞれ今年の2月と4月にリプレスされたばかりだ。さらに、ドレクシアのもう半分であるジェラルド・ドナルドのドップラーエフェクト名義の新作もつい先日リリースされたところで、スティンソンが亡くなってから15年というこの節目の年に、どうもドレクシア再評価の波が来ているような気がしてならない。
 ともあれ件の『Laptop Cafe』は、SoundCloudに公開された音源を試聴するかぎり、ジ・アザー・ピープル・プレイス名義で展開されていたのと同じスウィートでロマンティックな路線のようである。正直、もうこのサンプラー音源を聴く段階で泣きそうになってしまう。ああ、スティンソンよ。

アーティスト:Jack Peoples
タイトル:Laptop Cafe
レーベル:Clone Aqualung Series
カタログ♯:CAL008
発売日:2017.06.26

[トラックリスト]
01. Song 6 (Instrumental)
02. Song 2
03. Song 1
04. Song 4
05. Song 3
06. Song 5 (Vocal)

interview with Ásgeir - ele-king

コンセプトやテーマはとくになかったんだ。強いて言うならば……自分探し、かな。一生懸命自分を見つけようとする僕がそこにいるんだ。


Ásgeir - Afterglow
One Little Indian/ホステス

PopR&BElectronic

Amazon Tower HMV iTunes

 ジョン・グラントがアメリカから逃げ出し、放浪ののちアイスランドに移住したのはやはり傷心のせいなのだろうか。孤独な人間は北国に向かわずにいられないのだろうか……。グラントはその歌詞から偏屈な皮肉屋に違いないと思っていたら、しかし、実際に会ってみれば何てことのない気さくな中年だった。だが、たくさんの問題を抱えていた彼を再生させたのはアイスランドという土地そのものだったのではないか、とも思う。
 そのジョン・グラントが英語詞を提供したことでも話題となったアイスランド生まれのシンガーソングライター、アウスゲイルの朴訥でまっすぐなフォーク・ミュージックを聴いていると、わたしたちがアイスランドに抱きがちな、厳格で豊かな自然に囲まれた国というある種のステレオタイプさえも大らかに受け止められるように感じられてしまう。ビョークとシガー・ロスのような特例に限らず、アイスランドは何かしらの形で音楽に携わる人間の割合が高いことで知られているが、そのなかでもとくに辺鄙な土地で育ったというアウスゲイルもまた北国の大自然と向き合いつつ、すくすくと音楽で育ったことが鳴らす音と歌によく表れている。

 以下のインタヴューは、2016年夏に〈ホステス・クラブ・オールナイター〉のためにアウスゲイルが来日した際におこなったものだ。その時点では制作中だったセカンド・アルバムからは5曲のマスタリング前の音源を聴くことができ、すでにサウンド面での新たな展開も予見することができたが、完成音源は遥かに音響的に洗練された仕上がりとなった。
 インターナショナル盤としてはセカンド・フルとなる『アフターグロウ』は、全世界的に流行中のオルタナティヴなR&B解釈と、シンセ・ポップ、あるいはよりエレクトロニック・ミュージックの意匠を取りこむことによってサウンド面での大胆な更新に取り組んだ作品だ。ジェイムス・ブレイクやボン・イヴェールのような、モダンなシンガーソングライターたちに続かんとする意志が感じられる。ソングライティングの骨格自体はフォークを大きく外れることはないが、ピッチシフトやノイズの挿入、凝ったエフェクトも多用されており、ファーストにおける北欧フォークトロニカの印象を大きく覆すアウスゲイル流オルタナR&B“アンバウンド”、ミニマル・テクノ的なトラックが展開する“アイ・ノウ・ユー・ノウ”などははっきりと新基軸だと言える。『イン・ザ・サイレンス』はポテンシャルを秘めた若いミュージシャンの習作といった向きもあったが、『アフターグロウ』は現時点での彼の最新の成果を衒いなく報告してくれる。それでいてアウスゲイルが多くのひとに親しまれる所以となった、透明感のある歌声やあくまでも穏やかで温かみのあるメロディを惜しむことも隠すことも一切ない。
 この北国からやってきた青年とその歌には、曲がっているところがまるでないのだ。

アイスランドから来られたら、日本の夏はさぞおつらいと思うんですけど――。

アウスゲイル:(ため息をついて)ああ。

(笑)こんな風にツアーで海外を回っていると、アイスランドが恋しくなるのではないですか?

アウスゲイル:うーん、アイスランドはもちろんいい国だと思うんだけど、このツアーの前はブレイクを取ってずっと地元にいたからそろそろ外に行きたいとは思ってたんだよ。でも、ここまで暑いとあっという間に疲れちゃって困るね。でも、いまは日本にいて、見るものがたくさんあるから楽しいよ。

それが救いですね。今日はアイスランドのお話を訊きたいなと思っていて。というのは、アウスゲイルの音楽って、日本にいるわたしたちにも「アイスランドらしさ」みたいなものが伝わってくるものだと思うんですよ。ただ、アウスゲイルの音楽にはアイスランド以外の音楽への関心や興味もすごく織り込まれていますよね。あなた自身は、アイスランドの風土による影響と、外国の音楽の影響とどちらのほうが大きいと思いますか?

アウスゲイル:その融合だと思うね。自分では意識しているわけではないから、正直自分でははっきりとはわからないけれど、でも両方あるのは間違いないね。

アイスランドの音楽に共通する要素として自然そのものを表現するサウンドがあるよね。僕の音楽にもそういう要素があると思う。でもそれは、敢えて出そうとして出しているものではないんだよ。

アイスランドらしさというところで言うと、シガー・ロスから影響をすごく受けたとお聞きしていますが、そこには自然の厳しさに対する敬意みたいなものが表現されていると思うんです。シガー・ロスからはどのような影響が大きいですか?

アウスゲイル:たしかに自然に対しての考え方での彼らからの影響はあるんだろうなあ。僕の場合も、曲によってそういうテーマが出ている気がするね。とくに、アイスランドの自然の厳しさだね。その厳しさはアイスランドの自然の個性なんだよ。これは国外からよく指摘されることなんだけれど、アイスランドの音楽に共通する要素として自然そのものを表現するサウンドがあるよね。僕の音楽にもそういう要素があると思う。でもそれは、敢えて出そうとして出しているものではないんだよ。

あともうひとつ、僕がアウスゲイルの音楽に対して思うのは、生活と音楽がすごく近い感じがするんですよね。たとえば日本だと、何かあるとすぐ音楽みたいなことにあまりならないんですけど、アイスランドではひとが集まったらすぐ音楽が鳴っているようなイメージがあって。

アウスゲイル:ああ、そうだね。ほかの多くの国とは違って、楽器をやるひとがとにかく多いんだよ。僕も海外を回って知ったんだけど。学校でも音楽の授業があるし、みんなどこかの段階で楽器に触れるんだよ。30万人ぐらいしかいない国ってことを考えるとバンドの数は相当だし、しかもその多くが海外で成功してる。これはすごいことだな、と。僕の家族も、僕の姉もバイオリンをやっていて、母親もオルガンを弾いたりクワイアをやったり、父親がアコーディオンをやっていたり……僕はギターとドラムをやってるし、兄は何でも演奏する。だからうちには早くから楽器で溢れていたし、僕も6、7歳でギターに触れて、両親はどんどんやれって言ってくれたしね。クラシックから入って、しだいにそれはやりたいものではなくなったから19歳ぐらいで転向したけど、それがいい基礎にはなっていると思う。たしかにアイスランドにはそういう傾向があるね。

漠然としたイメージですけど、ホームパーティなんかで何人か集まったら演奏しようぜ、っていう感じというか。

アウスゲイル:ああ(笑)。僕はすごく小さい町で育ったんだけど、子どもの頃から音楽好きの仲間っていうのは何人かいて。そいつらと放課後、誰かの家のガラージで音出してってことをしょっちゅうやってた。ただ、家族ではそんなにやっていなくて……母親がクラシックのひとだったんで、譜面を読んできちんとっていうのに対して、僕はインプロで作っていくのが好きだったからね。父親もやっぱり譜面派だったから、うちのなかでいっしょに演奏するということはあまりなくて。兄がたまに実家に帰ってくるとギターを教えてくれたり、それぐらいかなあ。

なるほど。でも、お友だちとガレージで演奏するっていうのもすごく素敵ですよね。

アウスゲイル:たしかに(東京のように)こんなに大都会だと難しいだろうね。僕の場合は、4つか5つそんな場所が確保してあって、いつでも演奏していい、そんな感じだったよ(笑)。

羨ましいですねー。では、日本限定リリースの7インチ・シングル「ホェア・イズ・マイ・マインド?」の話なのですが(『アフターグロウ』国内盤のボーナス・トラックとして収録)。これまでライヴでニルヴァーナの曲をカヴァーしていたこともありましたが、今回はピクシーズのカヴァーですよね。あなたの音楽からするとちょっと意外な気もするんですけど、そもそも1990年前後のアメリカのオルタナティヴ・ロックからの影響ってけっこう大きいんでしょうか?

アウスゲイル:ああ、確実にそうだね。ものにもよるけど、幼いときは当時の音楽が好きだったよ。ニルヴァーナは、彼らを通じてああいう音楽を知ったというのが大きいね。ピクシーズのカヴァーに関しては、カヴァーをやることは決めてたんだけど、何をやるかってなったときにレコードをひっくり返してたら彼らのアルバムが出てきて、すぐにイメージが浮かんだんだ。その通りにピアノのパートを弾いてみたらいい感じに行けそうで、そのままトントン拍子で全体像が見えてきて、あっという間に完成したよ。で、いい感じのカヴァーができたから、7インチを出してみようとなったんだ。

なるほど。ただ、そのピクシーズの“ホェア・イズ・マイ・マインド?”もサウンドはロックではなくて、たとえばジェイムス・ブレイクみたいな実験的なR&Bに近いものになっています。そういったいまのR&Bやヒップホップも、サウンド・プロダクションの面で意識されているんでしょう。

アウスゲイル:ああ。そこは自分でもすごく意識してたと思う。今回はヴォーカルにオートチューンをはじめて使ったし、ビートもすごくルーズに、R&B風にした。ドラムの音の数も少ないし、ピアノもレイドバックしていて、あとはベースとギターが少しだけ。すごくスロウだし、スペースを生かしたんだ。こういうサウンドだと、ミックスしたときに分かるんだけどすべての音がちゃんと聞こえるんだよね。それだけがあればよくて、そういうシンプルなサウンドだと手拍子ひとつでもリヴァーブを効かせればバッと広がりが出るんだ。その広がりが出ればよくて、ミックスのときにトラックが50もあったらゴチャゴチャして何も聞こえなくなっちゃうから、それだけは避けたかった。この曲に関しては、全体像が見えた上でスタジオに入れたから時間もかからなかったしね。思った通りの仕上がりだったからすごく嬉しかったよ。

そういったサウンド面での挑戦が、完成目前だというセカンド・アルバムにも繋がっていくと思うんですが――

アウスゲイル:いや、じつはそうとも言えなくて。たとえば7インチのもう1曲の“トラスト”なんかはR&Bテイストとは全然違うし、アルバムも曲によってサウンドはバラバラになっているよね。そういう意味ではアルバムの参考になる7インチだと思う。

アルバムのテーマやモチーフは見えていたんですか?

アウスゲイル:コンセプトやテーマはとくになかったんだ。強いて言うならば……自分探し、かな。一生懸命自分を見つけようとする僕がそこにいるんだ。使っている「絵の具」自体は前回と同じだと思う。つまり、アコースティックとエレクトロニックなんだけど。そしてメロディに焦点を絞っていて、とりわけ進歩的なことをしようとしているわけではないんだ。とくに曲作りに関しては感覚的には前作から続いている。ただ、できた曲に施したサウンドは前作よりもドラマティックになっている部分はあるかな。

いまの時点ではアルバムから5曲聴かせていただいたんですが、まさにいまおっしゃたように、アコースティックとエレクトロニックのサウンドでの融合をさらに洗練されていますよね。なかでもダンス・ミュージックの要素が入っているのは新基軸かなと思ったのですが、もともとダンス・ミュージックを好んでお聴きになっていたんですか?

アウスゲイル:いいや(笑)。

(笑)ただ、“アイ・ノウ・ユー・ノウ”なんかは、ダンス・ミュージック的ですよね。

アウスゲイル:どうやって作ったんだっけ……思い出してみるよ。……そう、自分で作ったサンプル・ヴォイスから広がっていった曲なんだ。前半はゆったりと、どちらかと言えばオーガニックに盛り上がっていく曲なんだけれど、中盤で別の曲かっていうぐらいの展開になる。でもじつはコード進行は同じなんだ。そのまま違うチャプターに進化していく構成になってるんだ。そのせいもあって曲の色合いがかなり変わっていくから、かなりクレイジーな感触を受けるかもしれないね。で、最初に使ったサンプル・ヴォイスを最終的にはシンセサイザーにかけて、それで違う響きを作って、違う次元に持っていったっていうのかな。オーガニックな感触の、変わったダンス・チューンに仕上がったと思うよ。

なるほど、すごくよくわかりました。では時間なので最後の質問なのですが、アウスゲイルの音楽には悲しさや切なさがありながらも、最終的にはホープフルな感覚が満ちていくように感じられます。ご自身では、どうしてそのようなムードになるのだと思われますか?

アウスゲイル:うん、昔から感じてきたインスピレーションから来るものなんだと思う。17歳くらいから僕はずっと曲を書き続けているんだけど、ずっと同じ書き方をしているんだ。なぜと訊かれて正確に答えるのは難しいけれど、いまはこれが僕の曲作りのスタイルなんだと思うし、自分が心地いいと思うやり方に純粋に従っているんだよ。僕という人間の一部分が音楽を通じてたしかに出てきているんだ。

Big Boi - ele-king

 6月にニュー・アルバム『Boomiverse』のリリースを控えるアウトキャストのビッグ・ボーイが、去る4月20日、ストリーミングにて新曲を発表した。そのトラックにはキラー・マイク(ラン・ザ・ジュエルズ)とジーズィーがフィーチャーされており……とここまではいいのだけれど、まずは音源を聴いてみておくれ。

 出だしからぶったまげる。なんと、初音ミクがサンプリングされているのである。なんでこんな冒険を試みようと思ったのだろう……アウトキャストでビッグ・ボーイの相方を務めるアンドレ3000は、かつてエイフェックス・ツインをお気に入りだと発言したりもしているので、まあ彼(ら)ならありえるといえばありえる選択ではあるけれども、しかしまた初音ミクとは大胆な。目から血を流す芸者のジャケといい『キル・ビル』をパロった曲名といい、どこまでが本気でどこからが冗談なのかわからない。これは単なるジャポニスムなのか? それとも何か狙いがあるのか? 気になって眠れないいい。

DUB SQUAD - ele-king

 まるで〈モ・ワックス〉のタイトルのようなアートワークじゃないか! これは間違いない! と鼻息を荒くして『Versus』をレジに持っていったのは高校生の頃だった。それから16年。ついにDUB SQUADが帰ってきた。かれらはまさにパーティの現場から登場してきたユニットだけれど、そこに留まらないレンジの広さを持っているところが魅力でもあった。だからこそ、当時の僕みたいに東京を知らない田舎のガキンチョが、DUB SQUADを聴きながらまだ見ぬシーンを想像して勝手に盛り上がることができたのだろう。その視野の広さはかれらの16年ぶりのアルバムにも引き継がれている。砂原良徳、ZANIO、DUB-Russell、空間現代、System7――参加しているリミキサー陣の名前を見てもそのことがわかるはずだ。発売日は5月24日。まだ1月ほど先の話だけど、16年という時間に比べればあっという間である。待つべし。


System 7、砂原良徳、ZANIO、DUB-Russell、空間現代が参加。
ブレイクビーツ・テクノ・ユニットDUB SQUAD新作『MIRAGE』の全貌を公開!

先日、16年ぶりの活動再開をアナウンスした、中西宏司、山本太郎、益子樹(ROVO)の3人によるブレイクビーツ・テクノ・ユニット DUB SQUADが、5月24日にリリースする新作『MIRAGE』の全貌を本日公開した。

新作『MIRAGE』は、独自のトランス感溢れるオリジナル・サウンド5曲を収録したDISC1と、System7、砂原良徳、空間現代、DUB-Russell、ZANIOといった、世代もジャンルも様々な5組のアーティストによるリミックス曲を収録したDISC2の2枚組。

リミックスについてはノン・リクエスト、ノン・ディレクションを徹底することで個々のアーティストの独自の解釈が生かされており、“MIRAGE(蜃気楼)”と対となり乱反射するかのように輝きを放つ個性的な全5曲が揃う。

DUB SQUADの新作『MIRAGE』は、U/M/A/Aより5月24日に発売。収録曲の詳細は下記にて。


【CD情報】

DUB SQUAD『MIRAGE』
5月24日リリース

価格:¥3,000+税
品番:UMA-9086-9087
仕様:2CD
収録曲数:DISC1、DISC2各5曲、計10曲

◆Disc1
01. Mirage
02. Psycho Out
03. Star position
04. Exopon
05. Straight Ahead

◆Disc2
01. Mirage – Yoshinori Sunahara remix
02. Psycho Out – ZANIO remix
03. Star Position – DUB-Russell remix
04. Exopon – Kukangendai re-form
05. Straight Ahead – System 7 Space Lab remix

詳細:U//M/A/A
https://www.umaa.net/what/mirage.html

Run The Jewels - ele-king

エル・Pは「黒さ」という価値観に従属しないところが際立っていたというか、音もサンプリングの仕方が独特でプログレを彷彿とさせるサウンドが生まれたり、トレント・レズナーやマーズ・ヴォルタとも共演したりとロック寄りでもある。 (吉田)

黒いグルーヴじゃなくて、インダストリアルとして表出したのが、エル・Pとカンパニー・フロウの特異性だったんですよね。(二木)


Run The Jewels
Run The Jewels 3

Run The Jewels Inc. / Traffic

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

前作がさまざまなメディアで年間ベストに選ばれたヒップホップ・デュオ、ラン・ザ・ジュエルズ。かれらがついに3枚めのアルバムを発表しました。ポリティカルなメッセージを発する一方で、じつはダーティなリリックも満載、そのうえトラックはかなりいびつ。にもかかわらずチャートで1位を獲っちゃうこのふたり組は、いったい何者なんでしょう? いったいRTJの何がそんなにすごいのか? このデュオのことをよく知る吉田雅史と二木信のふたりに、熱く熱く語っていただきました……そう、あまりに熱すぎて長大な対談に仕上がってしまいましたので、前後編に分けてお届けします。まずは前編をご堪能あれ。

二木信(以下、二木):小林くん(編集部)からのメールの中で、「カンパニー・フロウやエル・P、〈ディフィニティヴ・ジャックス〉、ラン・ザ・ジュエルズは欧米の音楽メディアやUSのヘッズには高く評価されているけど、日本ではそこまで評価されていない。その理由とは何か」という問いがありましたよね。でも実は日本のコアなヒップホップ・リスナー、特にヘッズと言われる人たちの間ではカンパニー・フロウとか〈デフ・ジャックス〉、〈ローカス・レコーズ〉って確固たる人気があると思うんですよ。そもそもがインディペンデントでアンダーグラウンドな音楽だから、例えばいまでいえばケンドリック・ラマーとかと比較するとそこまで人気がないように見えるんですけど、日本のアンダーグラウンドのリスナー、ヘッズの間ではカンパニー・フロウ、〈デフ・ジャックス〉、〈ローカス〉の影響はいまだに根強いと思いますね。おそらく小林くんが言いたかったのは、エル・Pのリリシズムや言語表現の文脈が日本の中で理解されて伝わっていないんじゃないのか、ということじゃないですか。そこは僕も非常に興味深い点で、今日は吉田さんにもいろいろ教えてもらいたいなと(笑)。まず、エル・Pのリリシズムは英語がネイティヴの人が聴いたり、読んでも難解な側面があると思います。わかりやすいストーリーテリングではないし、それこそフィリップ・K・ディックとか、トマス・ピンチョン、テリー・ギリアムからの影響を公言するようなラッパーですし、サイエンス・フィクション色が強く、ディストピアめいた世界を描いていたりもする。だからまず、英語がネイティヴではない人間にとってはリリックの難解さは大前提としてありますよね。

吉田雅史(以下、吉田):そうですね。だから先ほど指摘のあったように日本でも受け入れられていたというのは、実はリリック面の特異性が評価されたというより、サウンド面も革新的だったからそこだけでも十分に評価されたということですよね。だけど実際アメリカではサウンド以上に評価されているのは、さっき仰っていたみたいにやっぱりリリックであり、ボキャブラリーであるわけで。カンパニー・フロウの曲で最初に注目を浴びて日本にも入ってきた12インチが「Eight Steps To Perfection」で、そのエル・Pのヴァースは、1979年のSF映画『ブラックホール』に登場する「マクシミリアン」というロボットを冒頭から引用しながら「俺をマクシミリアンと呼んでくれ/狂ったロボットだ/宇宙空間の端っこを彷徨いながら/ブラックホールに飲み込まれるまで/弾丸をばら撒くようにラップする」というラインで始まるんですね。この曲がリリースされた1996年の状況としては、まず数年前の1993年にウータン・クランのファースト・アルバムがリリースされて、ある種サブカル的なものを取り入れたと。

二木:カンフーとかね。

吉田:そうですね。ウータンはそのことによって、新しいボキャブラリーを持った奴らが出てきたというふうに思われたところがあった。エル・Pはその前例を経た上で、サイファイ的なボキャブラリーや世界観を取り入れる形で、ヒップホップにサブカルを持ち込んだということですね。たとえばギャングスタとかストリートといったそれまでの価値観とは全然違う抽象的かつサブカルを引用したスキルフルなラップで、しかもあのサウンドという。

二木:ドロドロ・サウンド。

吉田:そうそう。で、当時のニューヨークで現場を見ていた人間から話を聞くと、本当にカンパニー・フロウ以前と以後で世界が変わったような感じで、ものすごく衝撃的だったと。何を言っているかよく分からない抽象的で難解なライムだけど、やたら攻撃的で、しかもフィリップ・K・ディックの世界を参照するようなSFフレイヴァーも入ったリリックをスピットする白人ラッパーが現れた衝撃ですよね。ブラック・ミュージックの系譜でSF的と言うと、連想されるのはいわゆるアフロ・フューチャリズム的な想像力や、サミュエル・R・ディレイニーのような作家だったりすると思うんです。一方でエル・Pは「黒さ」という価値観に従属しないところが際立っていたというか、音もサンプリングの仕方が独特でプログレを彷彿とさせるサウンドが生まれたり、トレント・レズナーやマーズ・ヴォルタとも共演したりとロック寄りでもある。RTJ(ラン・ザ・ジュエルズ)の音もブラック・ミュージックというよりもダンス・ミュージック、クラブ・ミュージックの系譜ですよね。日本でもヒップホップと言ったときに、非ブラック・ミュージック的なダンサブルなサウンドにラップが組み合わさるものは珍しいと思うんです。共演もしているダニー・ブラウンの異質さなんかもそういう意味では近いのかもしれないですけど(笑)、だからRTJも、いわゆるヒップホップ・ファンというより、ダンス・ミュージックの系譜としてマニアックな層に聴かれることが多いのかなという気もします。

RTJはポリティカルだから知的と捉えられる向きがあって、もちろんそれは間違いじゃないんですけど、エル・Pの知性に関していえば、言葉にしても音にしても文脈を理解した上で意味をいかに組み替えていくかという発想力にあると思う。(二木)

二木:だから、カンパニー・フロウが『Funcrusher』(1996年)や『Funcrusher Plus』(1997年)をリリースして登場したとき、日本のコアなヒップホップ・リスナーに大きな戸惑いを与えつつ、そのいびつなサウンドがかなり求心力を持ちましたね。というのも、当時はパフ・ダディによるヒップホップのビッグ・ビジネス化や、ティンバランドのいわゆるチキチキ・ビートが席巻しはじめた時代で、そういう流れやサウンドに乗れないヘッズたちが彼らに可能性を感じてのめり込んでいったのはあると思う。ただ、いまあらためて『Funcrusher』や『Funcrusher Plus』を聴き直して印象的だったのは、エル・Pのビートはサンプリング・ヒップホップに忠実だったんだなということでしたね。

吉田:そうですよね、あくまでもブレイクビーツの打ち換えとネタのオーソドックスなスタイルで。時代背景的にもニューヨークではサンプリング・ベースのビートが主流で、まだシンセ・サウンドを足すようなケースはあまり見られなかった時期ですしね。

二木:例えばDJプレミアのフリップへのリスペクトを感じるし、その手法をいかに自分なりに解釈して表現するかという挑戦をしているように思いましたね。それが結果として、黒いグルーヴじゃなくて、インダストリアルとして表出したのが、エル・Pとカンパニー・フロウの特異性だったんですよね。エル・Pはブルックリン生まれですが、彼はセント・アンズ・スクール(Saint Ann's School)という芸術系のプライヴェート・スクールに通っていた経験があるんですよね。バスキアとか、ビースティ・ボーイズのマイク・D とかも通っていた学校らしいんです。元々そういった芸術志向があって、ヒップホップというアートフォームの中で言葉と音でどこまで、何を表現できるかを模索していたように思いますね。

吉田:そうですね。カンパニー・フロウの2枚目の『Little Johnny From The Hospitul: Breaks & Instrumentals Vol.1』はインスト・アルバムじゃないですか。エル・Pは元々少年時代にラップをしたかったからビートメイクを始めたと言っていますが、インスト・アルバムをリリースするくらいにビート・メイカーとしての自意識もかなり強いわけですよね。先ほども言ったようにサンプリング・ビートの時代だった当時、カンパニー・フロウの頃はエンソニックのEPS16+というサンプラーをメインに、サンプリングのアートを追求していた。当時、例えばDJプレミアとか、ATCQ(ア・トライブ・コールド・クエスト)とかがやろうとしていたことって、複数のレコードからネタを持ってきて、それらを重ねてもキーやリズムがうまくあってハーモニーやグルーヴが生まれるという、どちらかと言うと調和に重きが置かれていたわけですよね。この曲のこの部分と、また別の曲のこの部分がこんなにうまく融合するぞ、みたいなことじゃないですか。

二木:まさにトライブの『The Low End Theory』(1991年)ですよね。

吉田:そうそう。ATCQの最初の3枚は、それを体現してますよね。

二木:あの作品のエンジニアであるボブ・パワーは「ヒップホップ版の『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だ」とも言っていますね。

吉田:そうですよね。エル・Pはそれに対してある種逆をやろうとしたというか。いびつさの美学とも言うべき、調和の対極を目指したところがあったと思うんです。昔ミスター・レンやビッグ・ジャスがインタヴューで言っていたのは、デモ段階ではクソみたいなビートらしくて(笑)。聴けたもんじゃないみたいな。それが最終的に仕上げる段階で素晴らしいものに生まれ変わるらしいんですよね。要するにデモの段階での制作プロセスは、ゴミクズを集めて何か造形できないか、みたいなことを彼はやっているイメージですよね。だからサンプリング・ネタも明らかにグルーヴがあって音楽的な旋律を成しているようなものではないという。本人もいわゆるネタの掘り師というわけではないと言っていますが、どこにでもある価値のないレコードのネタを生まれ変わらせる錬金術に長けているというか。“Population Control”とか“The Fire In Which You Burn”のように、旋律のないノイズっぽいネタに、ドラムの打ち方も変則的でヨレたビートというか、クオンタイズせずにグリッドに合ってないんだけど、それを当時積極的にやっていたのはRZAとかエル・Pくらいでしたよね。

二木:たしかに。

吉田:それをどこまでずらしたらイケるかとか、ハットを打たないで変則的にやってみるとか、エル・Pはビートメイクは「実験」だし、1曲完成までに5回も6回もやり直すと言っていますが、カンパニー・フロウの初期の方が、権威のない素材からいびつなビートを造形するという、直接的にアートっぽい作り方をしている気はしますよね。

二木:聴いている側に驚きを与えようというか、そういう意図はかなりあったと思う。エル・Pのインタヴューで「El-P’s 10 Favorite Sample Flips」って記事があって。読まれました?

吉田:はいはい、ありましたね。

二木:これがすごく面白くて、その『エゴトリップランド』の記事を『探究HIP HOP』というブログをやっているGen(ocide)AKtion(@Genaktion)さんが日本語に訳していて。この記事を訳していることが本当に素晴らしいんですけど。この中でエル・PはDJプレミアが手がけたジェル・ザ・ダマジャの“Come Clean”や、ラン・DMCの“Peter Piper”とか、エド・OG・アンド・ダ・ブルドッグスの“I Got To Have It”とか、マーリー・マールがアン・ヴォーグの“Hold On”をサンプリングしたLL・クール・Jの“The Boomin' System”とかを挙げて、サンプリングの真髄について熱く語っていくんです。Gen(ocide)AKtionさんの訳をそのまま引用させてもらうと、エル・Pはサンプリングに関してこんなことを言っているんです。「サンプリングというモノの大きな役割は、人々の予想を裏切る所にあるんじゃないかと思うんだ。知的に物事を変化させるって事さ。使うべきだとは思えないモノを使用し、いざそのサンプルを使った時に皆が他の曲を加えたがる場合は、敢えてそのやり方に背く事でね」。まさに「ゴミクズ」を集めて新たなものを生み出すサンプリングの発想ですよね。“Peter Piper”はボブ・ジェームスの“Take Me to the Mardi Gras”をサンプリングしているんですけど、ここでエル・Pはリック・ルーヴィンが“Peter Piper”を作った偉業を知るためには“Take Me to the Mardi Gras”の一部のブレイク以外がどれだけダサいかを知らなければいけないとも語っているんですよ。RTJはポリティカルだから知的と捉えられる向きがあって、もちろんそれは間違いじゃないんですけど、エル・Pの知性に関していえば、言葉にしても音にしても文脈を理解した上で意味をいかに組み替えていくかという発想力にあると思うんです。吉田さんが磯部(涼)さんと大和田(俊之)さんと作った本(『ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで』)の中でエル・Pについて語っていましたけど、彼はフリー・スタイルで出てきたリリックを並べ替えたりしてヴァースを作ったりもするそうですよね。

吉田:そうそう。あれもカット・アップの手法ですよね。

二木:そう、彼はカット・アップの手法にすごく忠実にやっているというのがすごく面白いところで。

吉田:だからそういう意味ではウィリアム・バロウズなんかも好きかもしれない(笑)。

二木:そうですよね。

[[SplitPage]]

キラー・マイクとエル・Pのコンビは、ポリティカル・ラップとコンシャス・ラップみたいな捉え方もできると思うし、具象と抽象とも言えるし、だからこそ対照的なふたりのコンビネーションというのが光っている。 (吉田)

吉田:好きそうだなあ(笑)。で、いま仰ったようにポリティカル対コンシャスということについても話したいんですけど、直接的に政治的なメッセージをラップするポリティカル・ラップに対して、コンシャス・ラップの中には寓話的な語りで現代社会の有り様を考えさせるようなスタイルがあると思っているんですが、エル・Pにも後者の寓話タイプの特性があると思うんですよね。1曲丸ごと物語調という曲はあまりないけれど、マイク・ラッドの“Bladerunners”で「俺は見たんだ/奴隷船がオリオン座の沿岸で火を吹く姿を」とか“Krazy Kings Too”で「錬金術/アートでお前の苦痛を癒せ/そのやり方を学ぶことだ」とか、ヴァースの最後のラインでストーリーをまとめる力も光っていて。彼はいわゆるコンシャス・ラッパーには分類されないけれど、SFマナーのディストピア的な世界観がインストールされているから、それらを描くことで逆にいまの世界の問題に光を当てている。それは近未来の人間社会を映すタイプのコンシャスなSFの書き方そのものでもあると思うんですが。でも彼自身『Fantastic Damage』をリリースしたときに自分はSFのつもりでは書いていない、現実を書いているだけだと言ってもいるんですけどね。9.11以降の世界では、現実が十分に終末論的だと。だからキラー・マイクとエル・Pのコンビは、ポリティカル・ラップとコンシャス・ラップみたいな捉え方もできると思うし、具象と抽象とも言えるし、だからこそ対照的なふたりのコンビネーションというのが光っている。まあ、僕はどうしてもエル・Pの話の方に力が入ってしまうところがありますが……(笑)。

二木:やっぱりエル・Pのほうが好きですか?

吉田:いや、実際持っている資質が違うので簡単に比べられないと思うんですけどね。やはりカンパニー・フロウの衝撃が大きい世代なので。一方のキラー・マイクは最早ブラック・コミュニティのご意見番のような感じになっていますよね。

二木:いまやそうですよね。

吉田:で、バーニー・サンダース支援についても、ラッパーであそこまで堂々と長々と本人とも対談していて、しかもコメントもすごく的を射ている。コミュニティからの信頼感もすごくある。で、なんでそういうふうに信頼される存在になったのかというと、エル・Pもインタヴューで言っているんですけど、ふたりは一見ポリティカルなメッセージを発信したり、シリアスな曲もあるんだけれど、一方で下品なジョークやFワードも連発するという(笑)。要するに二面性があるわけです。

二木:いや、これねえ、ライムは本当にダーティ(笑)! キラー・マイクは床屋でバーニー・サンダースにインタヴューしていましたよね。バーニー・サンダースが大統領候補として民主党から出馬しているときに黒人からの支持があまりないとも言われていて、キラー・マイクは床屋と言えばブラック・ピープルが集う場所だからと、そういう設定もすごく考えて、床屋でバーニー・サンダースにインタヴューするということをやったと思うんです。で、キラー・マイクってある種原則的な左派なんですよ。というのも、彼はあるインタヴューでプロレタリアートという単語を使っていました。いわゆるコンシャス・ラッパーと言われる人でもなかなかプロレタリアートという言葉までは使わないと思うんですよ。そういうのもあって明確な理念や理想があって活動しているアクティヴィストだと思いました。彼の話を聞いていると、自由や平等、社会的な公平性の重要さを真摯に説いたり、例えば家を出て玄関の前に穴が開いていたらちゃんと行政に言おうとか、コミュニティに根差した模範的なアクティヴィスト然としているんですよ。なのに、それとは対照的にリリックのほうはびっくりするくらいダーティで(笑)。もちろんドラッグやマリファナのライムも多い。

吉田:そう(笑)。一方のエル・Pもサイファイ好きでサブカル・ラップみたいなものを代表していて、それでナードだったり文学的だったりするのかというと、そんなことはなくて結局マッチョなんですよね。要するにボースティングするとかヒップホップ的であることは全く捨てずにそれをやっているから、そこが文系みたいな感じでもないじゃないですか。

二木:ないですね。

吉田:で、キラー・マイクも、俺はパブリック・エネミーが好きだけどトゥー・ライヴ・クルーも好きだし、ふだん奥さんとストリップ・バーに行ったりしてるし、そういうダーティな自分とポリティカルな自分と両方あるから、その両方を見せないとある意味信頼も勝ちえられないと思っていると。だから俺は全部見せるんだと言っていて。それでエル・Pはすごくシニカルな人でもあるけれど、「そんな正しいことばかりできるわけじゃないんだから、俺はバカなことや間違ったことも言うし、そういうところを持っているのが人間だろ」とふたりとも別々のインタヴューで言っていて。だから、彼らはポリティカルなメッセージを発信していると見られているけれど、実際にリリックを見ていくと「アレェ?」みたいな(笑)。


ラン・ザ・ジュエルズの場合は、今回のアルバムでダンス・ミュージックに振り切りながら、時代性もありポリティカル/コンシャスなメッセージを今までよりも大幅に投入しているのが面白いと思うんですよね。両方とも減らすんじゃなくて、両方とも増しているという。 (吉田)

二木:今回のアルバムの“Hey Kids”という曲でキラー・マイクが「馬鹿げたライムの野蛮なラップ」と言っていて、これは自分がやっている表現についての説明的なリリックですね。エル・Pも同じ曲で「1/2パウンドのウィードを吸って逃げるのさ」とかライムしているんですが、そうかと思ったら後半のヴァースで「ラン・ザ・ジュエルズがブレグジットの息の根を止めるんだ」というフレーズが飛び出してくる。そういうリリックが混在していますよね。エル・Pが全面的にプロデュースしてキラー・マイクの出世作になった2012年の『R.A.P. Music』に“Big Beast”って曲があるじゃないですか。このPVがだいぶスプラッターですよね(笑)。露悪趣味ともとられかねない。けれども、これはただの露悪趣味ではないと思います。ラン・ザ・ジュエルズがBBCのチャンネル4って番組でインタヴューを受けている動画がYouTubeに上がっているんですが、キラー・マイクは「グラヴィティ(重力)から解放されるために音楽をやっている」というようなことを語るんです。おそらくここで言うグラヴィティってシリアスネスってことだと思うんですけど、これはさっき吉田さんが仰った「ストリップ小屋に行くことも大事なんだ」って話と同じことだと思うんですね。また面白いのが、そのインタヴューでエル・Pがなんだか退屈そうにしているんですよ(笑)。

吉田:ははは(笑)。

二木:その対比がまた良くて(笑)。キラー・マイクが「異なる人種が仲良くして友達になることが、いまのトランプが大統領になった世界に対する対抗策だ」というようなことを真摯に語る一方で、エル・Pのほうはニヒルな笑いを見せたりして、ちょっと達観した主張を語るんです。僕の印象ですけど、エル・Pはどちらかと言えば、皮肉屋でペシミスティックな性格なんじゃないかなと。そういうエル・Pのパーソナリティとディストピアめいたリリシズムは無縁ではないように思います。


吉田:後はユーモアに溢れているというか、さっきの言葉遣いやライミングの仕方もそうだし、たとえばYouTubeに上がっている「NPR Music Tiny Desk Concert」なんかのライヴ映像も、とにかくヒップホップのMCであることを楽しんでいる感じですよね。カンパニー・フロウの時代は、エル・Pもステージ上ではアングラのアイコンとばかりにシリアスに振る舞っていた印象でしたが。それから昨今のポリティカル・ラップの文脈で考えると、ラン・ザ・ジュエルズの、特に今回のアルバムの場合はダンス・ミュージックの上にポリティカルなメッセージというのがポンポンと出てきて、特に後半にかけてシリアスな曲が何曲かあるけど、ビートのグルーヴは最後までキープされてリスナーを引っ張っていきますよね。昔ECDがライヴで反原発の曲なんかをやるときに、クラブに踊りにきたり、現実逃避しにきたりしているお客さんに向かって、そういう現実的で政治的な曲をやることに躊躇もあるってことを言っていたんですよ。ラップに限らず多くのリスナーを相手取る音楽にはそういう側面があって、どうしてもポリティカルなメッセージを発信するときに「僕はそういうのはトゥー・マッチです」というお客さんもいるわけじゃないですか。さらにBLMや大統領選の影響もあって、最近は政治的なメッセージをはっきり持つラップと、そういったものは食傷気味で、ポストテクスト・ラップとも言われるような、サウンドやフレーズ重視のラップに向かう傾向も見えたりすると。つまり意味と無意味、あるいは記号の対立みたいなことにある種なっていますよね。ラップ・ミュージックは、メッセージなんて要らない、ただラップ・ミュージックで踊りたいという欲望に応える。でも、ダンス・ミュージックだからこそ、普通に語られたらトゥー・マッチに思ってしまうメッセージも乗っけられるという側面もあって。ラン・ザ・ジュエルズの場合は、今回のアルバムでダンス・ミュージックに振り切りながら、時代性もありポリティカル/コンシャスなメッセージを今までよりも大幅に投入しているのが面白いと思うんですよね。両方とも減らすんじゃなくて、両方とも増しているという。

※ 後編に続く。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037