「W K」と一致するもの

友川カズキ - ele-king

 復讐バーボン。私は酒場の暗がりでひとり杯を傾ける男の内面にうずまくものを思わせるタイトルにシビれながら、しかしそこに70年代的なデカダンスを見てシビれているなら、ゴールデン街で昔話に花を咲かせながらトグロまくオヤジたちと同じではないかと思ったが、友川カズキの歌を聴いて我に返った。

「花ではない 黄色が拡がってる
永遠とは 刹那のことである

とっくの昔に明日は終わった
静かならざる狂おしい夕暮れに

したたかにあおっているのは
しあさっての復讐の
復讐のバーボンのロック」(“復讐バーボン”)

 すでに終わっている「明日」のさらに先の「しあさって」のために呷るバーボンのロックは、過去の仇を討つ復讐という言葉の指向性にもかかわらず虚無に向いている。友川カズキの詩は現代詩的な方法意識をことさら表に出しはしないけれども保守的ではなく、言葉はイメージで色彩豊かに結合していくが、つねにぼくぼくとしている。そんなことはとっくのとうにわかっていたつもりだった。ところが新作を聴くたびに目がさめるのは、私のモノ忘れがひどいのもあるにちがいないが、友川カズキの言葉は歌になることでさらに凄絶さを増す。アコースティック・ギターをかかえ膝をそろえイスに坐り、ツバキを飛び散らしながら文末を食いちぎるように鋭くカブリを振る歌いぶりから一転、朗々と歌い上げる友川カズキの姿をこのアルバムを聴きながら思いだす。同時にあの舞台の上の人を食ったユーモアも。その落差に人は狂気のようなものを目のあたりにした気になり目を逸らし、その実、耳はそばだてるから歌の余韻は残る。いや、余韻などと余裕綽々とはしてはいられないおそるべき残響である。
 このアルバムにもそれがある。いままで以上に、といってもいい。『青いアイスピック』(PSF)から3年ぶり、スタジオ盤としては通算21枚目のアルバムである『復讐バーボン』は“順三郎畏怖”のアコースティック・ギターの大きなストロークからはじまる。順三郎とは戦前からモダニズム~シュルレアリスムの旗手であった西脇順三郎のことで、この曲は西脇の詩を元に友川が歌にした。友川カズキといえば、4作目『俺の裡で鳴り止まない詩』でとりあげ、後にアルバム1枚まるまる使った中原中也(『中原中也作品集』)を思いださないわけにはいかないが、友川は詩人(実作者)であるとともに一遍上人から山頭火から葛西善蔵から住宅顕信から、他者の言葉(と存在)に触発される人でもある。受け手でもあるのだ。それも流行に右顧左眄しない。『復讐バーボン』でも西脇順三郎のほかにもソニーロリンズ(“兄のレコード”)、ジャンポール(“『気狂いピエロ』は終わった”)、新吉高橋(“ダダの日”)など、人名がちらほらある。もっとも引用で何かをほのめかそうとは友川は狙ってはいない。詩に迷いこんだ他者が詩を異化するのを丸抱えしながら存在するから、ディランでもスプリングスティーンでもなく、朝靄をぬって走る滝澤正光様に私は――競輪はズブの素人ではあるけれども――胸を撃たれるのである。
 資質という、わかったようないい方をしていいかわからないが、その側面では友川カズキの音楽は変わりようがない。変わりようがないことは代わり映えしないのではなく変わらないものが不意を突いて眼前に突き出してくる。『復讐バーボン』がとくにそうなっているのは演奏のすばらしさもあるだろう。頭脳警察/シノラマの石塚俊明、パスカルズの永畑雅人、金井太郎、坂本弘道、松井亜由美といったレギュラー陣にNRQ/前野健太とDAVID BOWIEたちの吉田悠樹(二胡)、さらに2009年の友川のドキュメンタリー映画『花々の過失』で共演したギャスパー・クラウス(チェロ)を加えた演奏陣は、曲ごとに組み合わせを変えながら歌を支えるだけでなく、このアルバムでは歌をひっぱっているところもある。資料には「完全一発録りの前例を破り、初めてスタジオ・リハーサルを行った」とある。これってわざわざ特記することなんだろうかと聴く前は思ったが、特記すべきでした。これまでは歌に対して演奏は即興(的)だったので、反応が事後的―といっても、譜面に記せないほどのものなのだが、そしてそれは一部のブルースマンのやり方と同じともいえるのだが―になることもあったが、『復讐バーボン』では事前に音を合わせることで音は不即不離になっている。もちろん緊張感がないわけではない。“わかば”の坂本弘道とギャスパー・クラウスの二台のチェロによるメロディと軋み、“馬の耳に万車券”の即興空間、あるいは“夜遊び”の後奏において私は友川バラッド(ワルツ)とでも呼ぶべき一連の三拍子系の曲の大陸的な音楽性―これはまた縄文的な三上寛とは好対照だと思うが、それについては別稿をもうけたい―がすんなり腑に落ちた。
 そして『復讐バーボン』は1977年の3作目『千羽鶴を口に咬えた日々』に収録した“家出青年”の36年ぶりの盤上の再演で終わる。歌詞の一部を書き換えているとはいえ、この歌に歌われる「家出青年」の内面は36年前のこととは思えない。彼は「蒲団に潜る時『このままでええや』」と思い、「蒲団を蹴る時『このままじゃダメだ』」と思う。その煩悶は時代とは関係なく、ある世代にかぎらずとも、誰もが思いあたる節の嵌りこむ穴であるだろう。友川カズキはセルフ・カヴァーで、生きるに手いっぱいの青年の夜更けに頭をもたげる悩みと、「原発だろうと何だろうと/イヤなモノはイヤだと声を成せばいい」という問題意識を重ね合わせ、歌をなまなましくよみがえらせる。というより「『次世代のため』なぞと言うから滑稽になっちまう/『負の遺産』なぞと括るからたいがいになっちまう」と、過去と未来、以前と以後を峻別したがる人たちと、それにすらとりあわぬ人たちのおためごかしに、友川カズキは再生することで生まれる音楽のなかから、過去でも未来でも以前でも以後でもない現在から叫ぶのである。それでさえ「歌は平気でウソをつく」(“『気狂いピエロ』は終わった”)かもしれないけども。虚構がそうやって真理をつかまえることはいうまでもない。

interview with 快速東京 - ele-king


Punk Heavy Metal

快速東京
ウィーアーザワールド

felicity

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 「僕たちは悪者だから」と一ノ瀬雄太は取材の最後にぽつりと言った。
 快速東京は悪者ではない。が、そう言いたくなる気持ちもわからなくもない。彼らは、いまの日本では確実に少数派だろう。涙もろく、猫も杓子も「がんばれ」のこのご時世、快速東京の切り込み方は例外に思える。「ムダじゃん、ムダじゃん、いいじゃん」とか、「あー、ムダじゃん、絶望なんて」とか、ニヒルな言葉を撃ちまくる。いまどき、こんなパンク・ソングなんて誰が聴こうか。
 快速東京は浮いている。ふざけているし、ナンセンスを面白がるような、ある種プリティ・ヴェイカントな感性が、真面目腐った日本で素直に受け入れられるとも思えない。思えば、セックス・ピストルズも出て来たときはアレルギー反応を示した人が多かった。時代は変われど、世のなかに何となく生まれるもやっとした情緒にあらがう小さな存在の扱いとは、だいたいそんなものでしょう。が、こういう人たちが切り拓くところには、いつの日か心地良い風が吹くものでもある。

 2013年の1年を通して、個人的にもっと数多く見たライヴが、快速東京だった。レーベルの担当者よりも多く見た自信がある。彼らが演奏するライヴ会場に行けば若い子たちが踊っている。そして、筆者よりじじいなストーンズやキッスの10倍の速さで福田哲丸が踊っている。ミック・ジャガーとマイケル・ジャクソンを高速で動かしたような面白い踊りだが、いつぶっ倒れてもおかしくない運動量で、ときにそれは「面白い」以上の迫力を見せる。
 哲丸が自らの音楽を「娯楽」とエクスキューズするわりには、その規模はまだ小さい。大きければいいってものではないのだが、彼らは規模の大きなバンドを好んでいる。筆者なんぞは、彼らが尊敬するキッスにもメタリカにも関心を持たない人間であるのだが(ブラック・サバスだけは別)、快速東京の「いま」には共感するところがある。

 この若いパンク・バンドは、大人の憂鬱をよそに、「いまを生きる」ことを強調する。LIVE NOW DIE LATER──いまを楽しもう。快速東京にとって3枚目となる『ウィーアーザワールド』が1月15日に発売された。音楽的にはいままでの路線と大きな変更はないが、表現の幅は少しばかり広がり、ゲストにはラップ・グループのコチトラ・ハグレティック・エムシーズも参加している。彼らの基本にあるのはパンクとメタルで、アメリカ系の乾いた質感を特徴としているわけだが、そのサウンドは哲丸の、叙情性のいっさいを排除した簡潔な言葉表現と良く合っている。ダメじゃん、と思えるからこそ楽になれる、前に進める、そういうやり方で彼らは時代に挑んでいる。

 以下のインタヴューからは、その歴史性を失ってからのロックの現在が読み取れるかもしれない。彼らが実は2000年代の東京のハードコアに影響を受けていたこともわかる。これはリアルな話だ。筆者でさえもその時代はハードコアのライヴハウスに足を運んだものだ。彼らがまだ10代の頃、西荻のライヴハウスで会っていたかもしれない……取材には、ギターの一ノ瀬雄太、ヴォーカルと踊りの福田哲丸、ベースの藤原一真が参加してくれた。

「“ムダ”。暗いよね、これ」(哲丸)
「暗い」(一ノ瀬)
「実はさ、これ、希望なんだけどね」(哲丸)

なんでもいいワケじゃないぜ
どうでもいいだけなのだ
ムダじゃん ムダじゃん いいじゃん
 “ムダ”

先日のクアトロのワンマンが大盛況だったんだってね。良かったという評判しか聞いてないんだけど。

一ノ瀬:ほー。

あんなにたくさんのお客さんがいるのがすごかったと、行った方々が言っててね。自分たちでも、ようやく快速東京が受け入れられてきた実感はありますか?

一ノ瀬:クアトロでワンマンをやると決めて、直前になってゲスト枠を増やすとか、そういうことをしなくて良かったなとか(笑)。

哲丸:人が増えてるなーとは思うけど。でも、増えてるからどうのとは思わない。

冷静だねー。

哲丸:増えてんなー! ぐらい(笑)。

1年ちょい前に快速東京と知り合って、それ以来、何回もライヴを見させてもらって、つくづく思ったのは、日本の音楽文化というか、シーンのなかでは、ホントに、似たものがいない。良い悪いの話じゃないんだけど、浮いているよ。

哲丸:へへへへ!

ある種逆風のなかで活動しているっていうかさ。いまの日本のシーンで、快速みたいなことをやってオーディエンスを増やしていくのって、すごいよ。この面白さを理解してもらうのが、こんなに大変だったとはねー。

哲丸:ハハハハ!

一ノ瀬:キリンのCMはそこを逆手に取って、コレを見たら気になる人も増えるだろうと思ってやってるんだけど、クアトロのワンマンも、それまで普通にワンマンやるとチケット売り切れるんで、キャパを少し広くしていかないとお客さんに悪いなって気持ちでやったから。クアトロでやりたいって思ってやったわけじゃなく、クアトロでやらないと入れない人に悪いなって気持ちでやったんですよ。

哲丸:やったらできたみたいなね。

そういうスタンスだと思うし、作年末の踊ってばかりの国との「東京ダンス」じゃないけど、まずは楽しんでもらいたいってことをやっていると思うんだけど、それがストレートに伝わらないという、変な状況もあるでしょう。

哲丸:それでもやりゃあいいじゃんってスタンス。

クアトロのライヴでの哲丸君のダンスはどうだったの?

哲丸:いやね、正月明けで、怠惰な生活がたたってか、カラダが重たくて(笑)。

いつものキレがなかった(笑)。

一ノ瀬:僕らは演奏しているから、哲丸の動きはよく見えてないんですよね。映像を見ると、「動いてるな、この人」って思うんだけど。

哲丸:(動くしか)やることないからね。

で、新作『ウィーアーザワールド』、すごく良いアルバムだと思ったし、この表現は快速にしかできないと思うんだけど、ただね、今回のひとつの関心としては、いろんなことが出来たと思うんだよ。

哲丸:そうだね。

3枚目だし、音楽性をどうするかって言ったときに、いろんな選択肢があったじゃないですか。

哲丸:流行っていたんだよな。

一ノ瀬:そうそう。

何が?

一ノ瀬:来日ラッシュがあったんですよ。ブラック・サバス、メタリカ、キッスと。けっこうメンバー全員行って。

ハハハハ、その流れすごいね。

一ノ瀬:オレ、去年ブラック・サバス死ぬほど聴いたし、まあ昔のアルバムだけど。

ああ、たしかに昨年もTシャツ着てたもんね。

一ノ瀬:ホントにそれだけ(笑)。

いや、でもスタジオ録音なわけだし。仮にブラック・サバスだとしてもスタジオ録音だからこそできることを追求するとか、いろんな選択肢はあったと思うんですよ。でも、大雑把に言って、ライヴ演奏とそう大差ない作品に仕上がったよね。

哲丸:ライヴのことしか考えていないからだよ。

ああ。

哲丸:曲作りの段階でライヴのことしか考えていないから。

一ノ瀬:そうそうそうそう。

哲丸:短くて速くて、明るくてポップで、軽快な曲はいっぱいあるから、あのセットリストに足りないモノを、なんとなく考えながらやった。

なるほど。あくまでライヴありきの楽曲なんだね。

一ノ瀬:他の楽器を入れるっていう発想は一回も出なかったすね。

哲丸:そうだね。

一ノ瀬:ギター的には、ライヴではできないことやっているところがあるんですよ。2本録ってそれぞれ違うことやってるっていう。

それは初めて?

一ノ瀬:やってたかな。ギターに関しては。

哲丸:やってたけど、今回のほうが激しいわな。

一ノ瀬:そうね。

哲丸君と一ノ瀬君ふたりの友情関係は大丈夫だったの?

一ノ瀬:いや、もう、最初から一回も仲良くないから。

ハハハハ!

哲丸:いや、変わらないよ。ずっと一緒。

一ノ瀬:永遠に仲悪いから。

ハハハハ、面白いな-(笑)。本当に仲悪いからね。なのに、しっかり作品作れるからすごいよ。

哲丸:そこは櫻木さん(※レーベルのボス)の仕事だから。

一ノ瀬:オレらはね、ワイワイやってればいいから。

仲良しで「良いね」「良いね」なんて言い合ってるようじゃダメでしょう。喧嘩ぐらいしなきゃ良い物なんてできないよね。偉大なバンドはみんなメンバー仲悪いじゃん。

哲丸:今回はね、来日があったことが大きかったかも。

一ノ瀬:大きいよ。

哲丸:険悪な関係でも、キッスが来たら一緒に行くとか(笑)。

一ノ瀬:そう。

哲丸:ブラック・サバスが来て、雄太だけ行って、その感想を聞いて「良いなー」って思うとか。

一ノ瀬:こいつ、来日アーティストに高い金払って見に行くって発想なかったから。

哲丸:でもキッスは行かないと。

一ノ瀬:オレはガキの頃にオヤジにストーンズとか連れて行かれてるから、そういう発想があるんだよ。

哲丸:こういう、仲が悪くても好きなモノが一緒だから、好きなモノの話はできるじゃないですか。

一ノ瀬:いやでもね、見方が違う。

哲丸:ホントに見方が違う。

一ノ瀬:感想の話とかすると揉めるもんな。

哲丸:へへへへ!

一ノ瀬:面倒くさい!

哲丸君はホントに面倒くさいよ。

哲丸:いいんだよ!

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オレらがバラードを作ることはないってことだけはわかっているんですけど。「やらない」ことははっきりしているんだけど、「やりたいこと」はわりとほんわかしていて。


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快速東京
ウィーアーザワールド

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リリースが予定よりも遅れたじゃない。それは何でだったの?

一ノ瀬:あれはね、googleのキャンペーン・ソングとかあったからだもんな。

哲丸:いろいろやってたから。

キリンのCMもね。

一ノ瀬:ああいうのがあったり、いろいろあったから、レコーディングを遅らせてもいいかという話になったんです。

哲丸君は昔から歌詞を書くのが早いと評判だけどさ。

哲丸:オレ、遅かった。今回は遅かった。

一ノ瀬:なんか、最後の最後まで、ごにょごにょやってたよな。

哲丸:書き方を変えたんですよ。みんなちょっと変えたように、オレもちょっと変えたいと思った。オレは楽器持ってないから、変えられるのは歌詞の書き方だけだって。

歌い方も変わったよね。

哲丸:ホント?

一ノ瀬:メロディが出現しているんですよね。

あと、歌い方がよりパンキッシュになった。

一ノ瀬:ほー。

哲丸:へー。

それない?

一真:ジョニー・ロットン風味になった。

ねえ?

一ノ瀬:それもねー、さも考えているようだけど、実は考えていないから。全然そんなことない。

哲丸:ハハハハ。

でもオレは、今回のアルバムでアンガー(怒り)をより強く感じたんですよ。

一ノ瀬:そこはね、オレは哲丸も大人になったなと思ったところがあったんだけど、でも、ちょっと説教臭いんじゃない?

えー、全然説教臭くないよ。むしろ、快速東京は、情緒とか、詩情とか、日本人が好きなウェットな感情をホントに取り入れないじゃない。

哲丸:入れないね。

それを売りにしないというか、そこが素晴らしいと思うんだよ。

哲丸:娯楽だから。

一ノ瀬:その解釈はすごいね。たしかにそうかも! そういうものは全然オレらにはないですね。

娯楽って言ってもね、ビジネスを考えれば、しんみりした音楽のほうが売れるわけだよ。

哲丸:そこを考えてないから。

わかってて逆らっているのか、はなっからそれがないのか。

哲丸:はなっからないんだと思う。

そうなんだ。

哲丸:音楽をやる理由がそこにない。

一ノ瀬:だけどね、意外とオジー・オズボーンやメタリカは詩情を出しているときもある。キッスにはないけどね。

オジー・オズボーンはなんかわかる。

一ノ瀬:子供が生まれたときに優しい曲を書いているんですよ。けっこう、可愛いヤツなんですよ。

哲丸:生まれたらオレだって書くかもよ。

一ノ瀬:ブラック・サバスで最初あんなダークなアルバムを作ったのも、当時ゾンビ映画を作っていて、ただそれだけだっていうね。

あの人たちは工場の町の労働者階級に生まれ育ったから、その環境に影響されたとも言ってるけどね。

哲丸:それはわかる。そこへいくとオレたちは、まあまあ幸せな家庭に育っているから、そんなヤツらが「生活が-」とか歌っても説得力ないじゃん。

そうは言うけど、哲丸君の言葉には何か訴えるものがあると思うよ。今回も“ハラヘリ”とか“ダラダラ”とか“ムダ”とかさ、良い歌詞がいっぱいあって、さらに言葉の力も強まっていると思ったけど。

哲丸:お、“ハラヘリ”っていま言ったよ(笑)。

一ノ瀬:すげー、“ハラヘリ”に言及した(笑)。

面白いよ、あれ。

哲丸:だよねー。ほらー、ハハハハ!

一ノ瀬:やっぱ虚無感みたいなもの(笑)?

哲丸君がいちばん気に入っている歌詞はどれ?

哲丸:いや、別に、歌詞はぜんぶよく書けているでしょう。今回は、たくさん書いて、削って作っているの。このことは、原爆オナニーズのタイロウさんとの対談が関係しているんだけど、ま、それはいいとして、歌詞かぁ。

一ノ瀬:気に入ってる曲は何よ?

哲丸:オレは“ヤダ”とか好きだよ。

一ノ瀬:“ゴハン”がいいって言うのは?

哲丸:“ゴハン”は、曲における歌詞という意味では、いちばんハマったなと思ってる。僕のなかのパンクというぼんやりしたもののなかに、“ゴハン”という曲はばっちりハマった。書いて、「わー、パンクだ、これ」と思った。

一ノ瀬君は?

哲丸:知らないだろ、歌詞なんて。

一ノ瀬:いや、こないだも久しぶりに聴いたけどさ。オレはやっぱ“メタルマン”がね。

哲丸:ハハハハ。

“メタルマン”と“あくまくん”が好きなんだ。

一ノ瀬:ていうか、“メタルマン”はオレの曲で、オレが種を撒き、「お前ら触るなー」って育てているわけですけど。で、“メタルマン2”の歌詞を書いたとき、哲丸もやっとオレが言ってることがわかってきたなと思って。それは、歌詞の内容じゃなく、アクセントの置き方とか、そういうところで、他の曲は、オレが思っていたアクセントとは違っているところがいっぱいあるわけ。だけど、“メタルマン”は、アクセントが良い感じで入っている。

哲丸:一真はどれが好き?

一ノ瀬+哲丸:思い出して!

一真:……。

ここに歌詞カードあるよ。

一真:……。

もっとも哲丸らしいなと思うのはどれ?

一真:……。

“ダラダラ”なんか哲丸節って感じじゃない?

一ノ瀬:これは説教臭さがないですよね。

哲丸:あれは時間がかかってない歌詞だね。

一ノ瀬:“アトム”なんかは哲丸にしては……。

哲丸:いや、あれはいろいろあんだよ。

ポリティカルだしね。

哲丸:ハハハハ。

一ノ瀬:そういうことは出さないほうが、あんときは格好いいと思っていたんだけど……

一真:“ムダ”。

哲丸:“ムダ”。暗いよね、これ。

一ノ瀬:暗い。

哲丸:実はさ、これ、希望なんだけどね。

一ノ瀬:とにかく、哲丸の変化は感じてましたね。

哲丸:いいじゃん。

一ノ瀬:難しいことを言うようになったとは思いましたね。

一真:「じゃん」って言い方が哲丸らしいよね。

哲丸:ハハハハ!

一ノ瀬:腹立つよね。

え、なんで(笑)?

一ノ瀬:うーん!

哲丸:ハハハハ!

一ノ瀬:まあ、歌詞はこいつの聖域だから、よほど迷っているときぐらいしか、オレらにも相談しないし、せいぜい「どっちが1番がいい」ぐらいだよね。

哲丸:そうそう。

音楽的な主導権は一ノ瀬君なの?

一ノ瀬:いや、それは全員。

哲丸:「このあとどうしたら格好いいかな」とか、「キッスだったらこんなにドラムを細かくしないよ」とか。

一ノ瀬:意外とみんなで話しているんですよ。オレが主導権を握ったのは“メタルマン2”ぐらいで、あとはみんなで話し合ってやってますね。誰かが主導権握って、ひとりの頭で作れば、スタジオ代1/4で済みますよ。必ず、音を出して、確認するんですよ。オレがギターを弾いて、それをみんなで聴いて、そこからリズムを考えてって。時間がかかるんです。

哲丸:意外と建設的だよね。

一ノ瀬:全員が「いい」ってなると、「ヨシ!」ってね。

しかし、今回は3作目だしさ、何か仕掛けてくるかなという期待もあったんだけどね。変化球とかさ。

哲丸:やらんね。

一ノ瀬:オレら、そんなにクレバーじゃなかったんでしょう。

いや、賢さっていうか、バンドの信念みたいなものがあるのかな?

一ノ瀬:実は、信念もそんなないし……いや、オレらがバラードを作ることはないってことだけはわかっているんですけど。「やらない」ことははっきりしているんだけど、「やりたいこと」はわりとほんわかしていて。将司がおそいリズムを叩きたいと言ったのも意外だったし、あいつがキッスを聴き出したりとか。メタリカも遅い曲あるし。みんながステージに上がってやりたいことをやる、で、一真だけが一段上から見下ろしているっていうね。

哲丸:(一真が)いちばん冷静な判断をするからね。

一真君もキッスやメタリカが好きなの?

一真:好きですけど……。

哲丸:ハハハハ。

強制されたの?

一真:いやいや、そういうわけじゃないですけど。高校のときに聴いてたけど、最近は聴かないですね。

だってさ、世代的にはおかしいでしょ。キッスはオレが小学校のときだったし、メタリカだって80年代からいるバンドだし。

一ノ瀬:メタリカやストーンズを好きなのって、僕らよりも下が多くて。
意外なんだけど。

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東京のリアルってハードコアだったんですよ。哲丸もやっぱそうだし。東京人はみんな聴いていたんだよな、ハードコア。


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快速東京
ウィーアーザワールド

felicity

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ずっと思っていたんですけど、快速東京のお客さんは本当に若いじゃない。若い人が多いよね。

一ノ瀬:オレらの世代は、せいぜいニルヴァーナとか。もうちょっとリアルタイム感があったんですよ。90年代の音楽だったりとか。でも、いまの子たちは、ネットのせいなのか、マジで時間がフラットなんですよ。2000年以前はぜんぶ一緒くたに考えているから。

哲丸:「昔の音楽」みたいな。音楽の時間軸がない。

一ノ瀬:アナログ・レコーディングもエフェクトのひとつぐらいにしか考えてないから、悪い音でも素直に聴けてしまっているんだよね。オレらよろ上になると、80年代以前は古くさくて聴けないみたい人もいるんだけど、(中尾)憲太郎さんとかそうだよ。うちのプロデューサーです。ナンバー・ガールのベースやっていた。「オレらのときは、ニルヴァーナより昔の音は古くさくて聴けなかったけどね」って言ってたよね。リアルタイム感があるんですよ。

哲丸:ロックにまだ時間軸があったときだよね。

一ノ瀬:いまではもう歴史になってるから。いまロックが生まれている実感がない。

まあ、言い方変えれば、ブラック・サバスと競り合わなければならないわけだ。

一ノ瀬:そうそう。新しいものを目指すとロックから離れなければならないという、この矛盾を抱えながらやっている。最近メジャー・レーベルがやっているのは、みんな、裏打ちの速いリズムで、そこに日本人ぽいメロディが乗るっていう。それってでも、日本にしかないから、新しいんですよ、サビでハモっちゃたりして。

ちょっとエモな感じ?

一ノ瀬:90年代のエモの影響は大きいですよ。でも、イギリスなんかは、アークティック・モンキーズみたいに、ちゃんとブルースの影響が残っているところが面白いなーと思いますね。

哲丸:日本にはロックがなかったからさ。

一ノ瀬:メロディがさ。

哲丸:歌謡曲みたいになっちゃうんですよ。

一ノ瀬:アメリカ人がロックやると、そうはならない。

哲丸:生活にロックがある感じがするんだよね。

一ノ瀬:生まれ育ったところのメロディが違うんだよね。

みんな、同世代のなかでも浮いてたでしょ?

一ノ瀬:どこで?

学校とかで。

一ノ瀬:多摩美時代には、テクノ好きばかりだったね。

マジで?

一ノ瀬:ホント、そうすよ。オレの入ったときは、『トレインスポッティング』世代が多くて、みんな“ボーン・スリッピー”から入ったみたいな。
週末はアゲハに行くみたいな(笑)。そんなヤツばっかりで、オレなんかが「ギター弾いてるんだよね」って言うと、みんなピンと来ないっていうか。やっとテクノ・ブームが終わりつつあるよ。東京人からすると、東京のリアルってテクノじゃないんだよね。オレが高校のときは、みんなバンドだった。銀杏ボーイズも人気あったけど、東京のハードコア・バンドに詳しいヤツ、いっぱいいたもん。で、大学に入ったら、田舎もんがいっぱい来て、「東京はテクノだね」って。

それ何年の話?

一ノ瀬:8年前ぐらい?

『トレインスポッティング』って1996年の映画だよ、多摩美のその子らが時代錯誤だっただけでしょう。

一ノ瀬:そうそう、田舎もんなんですよ。

“ボーン・スリッピー”なんてもうかなり昔だよ(※1995年)。テクノのDJ、いまさらそんなものかけないから。

一ノ瀬:だから音楽好きじゃないヤツらが、テクノとかって言いだして、アゲハ行ってって、そんな感じだったんですよ。

それはダサ過ぎるよー。

一ノ瀬:ですよね。まあ、それはとにかく、東京のリアルってハードコアだったんですよ。哲丸もやっぱそうだし。東京人はみんな聴いていたんだよな、ハードコア。

オレでさえSFPを聴いていたからね、2000年代の東京がハードコアだっていうのは理解できる。みんなはどんなハードコアを聴いていたの?

哲丸:僕はレス・ザン・TVですよ。僕は、どしゃーと社会的なことを歌うのは耳が痛いってなってしまうんですけど、レス・ザン・TVの面白さは、客がみんな爆笑しているんですよ。だからあの人たちがやっている音楽にはユーモアがある。だけど、「それがどんな音楽か」と訊かれれば、ハードコアとかパンクとしか答えようがない。その現象が、僕にはハードコアだと。

一ノ瀬:ポリティカルなヤツらって、ハードコアにいなかったよね。

哲丸:いなかった。

一ノ瀬:BREAKfASTの“VOTE!!”が出たときは、すごかった。革命を感じたね。そこを歌ってしまうんだ! って思った。

哲丸:あれはすごかった。面白かったもん。

へー、ちょっと意外。でもさ、BREAKfAST聴いている子なんて、同世代で言ったらかなりの少数派でしょう。

一ノ瀬:そりゃそうですよ。

哲丸:みんな、くるりとかさ、ナンバー・ガールとか、アジカンとか。

一ノ瀬:ハイスタの残り香のあるようなのとか、そういうのはいたけど、オレがクラプトンのライヴに行くことを理解できる友だちはいなかったです。

哲丸:オレもひとりでレス・ザンのライヴに行っていたから。

一ノ瀬:そういえば、高校のときもメタリカ聴いてたヤツなんかいなかったなー。

だから一ノ瀬君が高校生のときなんか、メタリカのピークは過ぎていたでしょ。

一ノ瀬:そうっすね。

哲丸:オレらの世代だと、まわりは、洋楽自体をもうあんま聴いてなかったもんな。

一ノ瀬:グリーンデイぐらいじゃない。オフ・スプリングとかね。

哲丸:ああ、そういうのはいたね。

一ノ瀬:そこを入口に深いほうに行くヤツはいたよ。

哲丸:オレのまわりにはいなかったな。

いまの、ハードコアが背景にあるのは面白い話だと思ったんだけど、快速東京のライヴでもみんな笑ってるじゃん。

哲丸:やっぱそうじゃなきゃ、意味ないもん。

一ノ瀬:楽しむことがいちばん大切なのに……、楽しくないライヴ多いよね。

哲丸:ライヴを聴いて、次朝起きて曲を思い出して、そして思いを深めてとか、止めて欲しい。オレらのライヴが終わったら、それはそれまで。オレらの話なんかしなくていい。

一ノ瀬:そこは見に来た人が勝手に考えることだろ。

哲丸:ぜんぜんそうなんだけど、僕がやりたいのはそういうこと。

余韻を残すようなことはしたくないだよね。

哲丸:その瞬間に「イエー!」で。

ユーモアとか反抗心とか、いろんなもんが吐き出ているんだけど、スカッと終わる。

哲丸:娯楽だから。

一ノ瀬:エンターメインメントだから。

ところが日本のロックって、なんかちょっとトラウマがないとっていう。

一ノ瀬:そうそう。

哲丸:あれなんでなの?

一ノ瀬:演歌だからね。不倫のカルチャーでしょ。

哲丸:やべー(笑)。

なにそれ?

一ノ瀬:不倫の歌って多いじゃないですか。でもオレ、“孫”とか売れたときに晴れやかなものを感じて、演歌も進化してんなーと思ったことがある。

哲丸:氷川きよしもいいよな。♪やだねってら、やだね~。

一ノ瀬:あれ、ロックだよ。ジェロも良いよね。でも、“天城越え”とか言われると「ちょっとなー」って。

“天城越え”、いい曲じゃん(笑)。

哲丸:良い曲なんだよ(笑)。でもなー。

一ノ瀬:「越えられてもなー」って(笑)。

ハハハハ。

一ノ瀬:オレら、わりと真面目に音楽聴いてるんですよ。演歌だってちゃんと聴いてる。

そうだよね、“天城越え”なんか君らの世代は知らないものね。

一ノ瀬:アイドル文化の歌詞には最近は違和感を感じね。「みんな元気を出しましょー」とか。なんか、気持ち悪いんだよね。アイドル・カルチャーこそ本来はエンターテインメントであるはずなのに。

哲丸:ありゃ-、また別モノだからな。

銀杏ボーイズの峯田君が、アイドルよりもこっち(ロック)のほうが格好いいよってことは言いたいみたいな話をしてて。たしかに、オレも正月帰省して同世代のヤツらと会ったりして、同世代のいいオヤジがアイドルに夢中になっている様を見ると、ちょっとマズいかもって思っちゃうよね(笑)。

一ノ瀬:合法ロリっていうか、海外ではNGじゃないですか。レディ・ガガがあれを批判的にやってるってことを気づけてないこともすごくダサいし。アンチテーゼってことが理解できてないんじゃないのかなって思いますね。

哲丸:お国柄かな。

一ノ瀬:励ましソングもいいけど、実際に励ますとき、励ましの言葉じゃない表現もあるじゃないですか。「元気出せよ」じゃなくて、「ふざけんなよ、おまえ」っていうのも励ましだったりするわけですよ。そういうことが理解できなくなっちゃったんですよ。

哲丸:みんな疲れちゃってんだよ。

一ノ瀬:疲れかぁ?

哲丸:だって、満員電車に乗ると、隣のサラリーマンのイヤホンの音がもれてくるわけですよ。そうするとさ、西野カナとか、慰めている曲を聴いているわけですよ。「がんばって」とか。「大丈夫だよ」とか。「なんとかなるよ」とか。そういうのばっか聴いてる。みんな、余裕がないですよ。ロックは、余裕がないとできないと思っているから。

心の余裕だよね。

哲丸:そう、心の余裕。

一ノ瀬:金銭的な余裕がまったくないのも問題ですけどね。

哲丸:余裕がないんだよ。

一ノ瀬:オレ、そこだけじゃないと思うけどな。そこもあるんだけど、やっぱアンチテーゼを理解できないってことも大きいと思うよ。たとえば会田誠の絵を見てさ、あれはただのロリ好きのおじさんって本気で思っちゃってるじゃない。

哲丸:思ってるね。

一ノ瀬:でも違うじゃん。あれはアンチテーゼじゃん。そこが理解できないのよ。その裏側に何があるのかってことを。

哲丸:だから、考える余裕がない。

一ノ瀬:ま、それもそうか。

哲丸:見たまんま理解しちゃってるから。

一ノ瀬:宮崎駿の作品でさえ批判があるのに、なんでアイドルにはそれがないのかって。

別にその人の趣味だったらどうでも良いけど、2~3年前までロックについて書いていたような、偏差値高そうな連中まで本気で論じちゃったりとかね(笑)。

一ノ瀬:昔のちゃんとしたアイドルとはまた別モノだからね。海外にもアイドルいるけど、歌うまいし、曲も自分で書いたりしているし。でも、日本では、なんかおっさんに踊らされてるっていうか。小学生や中学生の女の子は憧れらるからなりたいと思うじゃないですか。

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会田誠はそのあたりうまいよね。アンチテーゼをうまく出せていると思う。直接的な言い方はしないけど、めちゃくちゃ批判しているっていうね。


Punk Heavy Metal

快速東京
ウィーアーザワールド

felicity

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踊ってばかりの国もそういうところがあるけど、哲丸君の歌詞にはトゲがあって、でも、いまの日本ではそのトゲを見ないようにするっていう風向きが強いよね。

哲丸:ハハハハ。

一ノ瀬:会田誠はそのあたりうまいよね。アンチテーゼをうまく出せていると思う。直接的な言い方はしないけど、めちゃくちゃ批判しているっていうね。

傷つけ合うのが恐いみたいな空気感があると思うんだけど、快速東京は良いよ、ふたりが仲良く喧嘩しててさ。

一ノ瀬:銀杏ボーイズみたいに(売れている)数字もあって、知らない人はいないような存在でさえも、なんかメインストリームからははじかれるっていうか。アイドルって、結局、無害で、いっさいの苦情が来ないような、綺麗なことしか歌えないようなカルチャーになってしまっているわけですよ。あの子たちもすげーがんばって、だんだん人気も出てって、それで会場も大きくなっていって、ももクロじゃないけど、日産スタジアムでどかーんって。それを記録して、見せて……で、それって、キッスとどこが違うだ? って言われれば、「同じじゃん」とも思うんだけど(笑)、でも、それを気持ち悪いって言う人間がひとりもいない状況は絶対に良くないよね。

哲丸:まあ、アイドル自身は悪くないからな。

一ノ瀬:でも、人生のいちばん大切なときに勉強しないでさぁ、どうするんだろうなぁって思うよ。

日本のロック・バンドにがんばって欲しいよ、マジで。

一ノ瀬:がんばったほうがいいすよね。まあ、オレの読みでは、もうすぐロック・ブームが来るので。

どこに根拠があるの(笑)?

一ノ瀬:いや、もう流れがきてますよ。僕の世代では、モーニング娘が下火になったときに、銀杏が出てきている。だから、AKBがそうなったときに(ロックが)出てきますよ。まあ、これだけアイドルの時代が続いてるんだから、そろそろ下火になっていくでしょう。

今日は、せっかく一真君がいるんだし、彼の話を聞こうよ。

一ノ瀬:いいね!

一真君から見て、いまバンドはどう?

一真:どうって?

この1年で、どう飛躍したのか、どう変化したのか、どう……。

一真:どう変化?

なんか感想あるでしょう?

一真:あんま変わってないですね。最初からこんな感じですよ。

バンドにとってベースは重要だよね。

一ノ瀬+哲丸:ハハハハハ!

一真:ホントは、もっとうまく演奏したいんですけど、できないんで……。

一ノ瀬:いいよ、ルート弾きが似合っている人もあんまいないから。

哲丸:一真はそこにいるだけで格好いいんだよ。

一ノ瀬:ここにめちゃくちゃうまいヤツが来ても面白くないから。

哲丸:そんなじゃ、やる気なくなっちゃうよ。

一ノ瀬:オレ、絶対にソロ弾かないよ。

一真:ホントはね、フーみたいなベースを弾きたいんですけど。

一ノ瀬+哲丸:おいおい!

哲丸:すごいの出すね-(笑)。

志は高いほうがいいでしょ。いずれベースソロが聴けそうだね。

一ノ瀬:ルート音のベースソロね。♪だらだだ~。

哲丸:格好いい~、格好良いね。

今回の『ウィーアーザワールド』は、資料には「東京から世界へ」って書いてあるけど、本気で世界進出を意識しているの?

一ノ瀬:前作が『ロックインジャパン』だったから、今回は「ワールド」ってことで広くなるのと。

ハハハハ、「ジャパン」の次に「アジア」とか、それはなかったの?

一ノ瀬:たまたま“ウィ・アー・ザ・ワールドを聴いたんですよ。「これだ!」って。で、後付けの意味としてはだんだん広くなっている。意味ありげなね。オレらがそれを言ったら、マイケル・ジャクソンの“ウィ・アー・ザ・ワールドとは別の意味を持てるだろうって。『ロックインジャパン』のときも、オレらが同じ言葉を使えば、あのフェスとは別の意味を受け取る人もいるはずだと。発言者によって意味が変わって聞こえる有名な単語。

オレは深読みしちゃって。

哲丸:それはしてくれたほうが良いね。

一ノ瀬:深読みしやすいタイトルだからね。

「オレたちが世界だ、おまえたちに見えてない世界がここにある」っていう風に。

一ノ瀬:あ、それ良いね。

哲丸:そうしよ。

一ノ瀬:良いタイトルだな。

哲丸:それで決まりだな。

ところで今回のデザインは何? 不評だった、カッターで切らないと開かない仕様をまたしても踏襲しているけど。

一ノ瀬:いや、これは意志持ってやっているんだから! 中古対策なんで
す。BOOK OFFに持っていっても、ジャケが破けているから、値段が下がるはずでしょ。

売るなと。

一ノ瀬:そう。あとは自分で開ける感動だよね。一回PCに取り込んでもう開かれないCDじゃなくて、友だちにデータ送るんじゃなくて、モノとしてこのCDを貸してやって欲しい。

デザインは一ノ瀬君の聖域になっているの?

一ノ瀬:いや、ベースはオレが考えているんですけど、歌詞カードは前作の倍の大きさにしたいってい意見があって。

歌詞カードの文字もでかいしね(笑)。

一ノ瀬:だから重いんだよ。

哲丸:重いCDっていいじゃん。モノ感があって良いよ。

一ノ瀬:オレは紙のケースが良かったんだけど、意外なことに哲丸がプラケースが良いって。

哲丸:オレはデジパックでも良かったけど、雄太のアイデアがデジパックでなければいけないほどのものじゃなかったから、じゃあ、プラでいいんじゃない? って。

細かい話だけど、『ウィーアーザワールド』のこの書体は?

一ノ瀬:ハハハハ、それは勘亭流っていういちばんダサい書体で、そのダサい書体をどう使うのかっていうのが自分のテーマとしてあって。

哲丸:これだけはオレも一発で良いなって思ったね。

一ノ瀬:説明しちゃうと、段ボールに「取り扱い注意」ってステッカーが貼ってあるイメージなんです。

いちいち理由があるんだね。

哲丸:ハハハハ。

一ノ瀬:そう、ぜんぶ理由があってやっているから。

(了)

Vince Watson - ele-king

 スコットランド……といえば、サー・アレックス・ファーガソンである。苦戦しているがモイーズもスコットランド人だ。プレミア・リーグにはスコットランド人監督が多く関わっているが、やはりあの昔気質の面倒見の良さが活きるのだろうか? 
 スコットランド……それもグラスゴーとなると、クラブ・カルチャーも熱く、ことデトロイト・テクノの人気はすさまじい。かつてURはロンドンは避けてもグラスゴーではライヴをやっていたほどだ。その寒くて熱い街、グラスゴー出身のデトロイト・フォロワー、ヴィンス・ワトソンの来日公演が週末にある。テクノ/ハウス好きは、ぜひ、覚えておいて欲しい。

1/31(金) Vince Watson

 Francois K.やJoe Claussellなど数々の著名DJが楽曲をこぞってプレイしたことで世界的に一躍有名になり、Carl Cox、Laurent Garnierからも高く評価されるハウス/テクノ・プロデューサー、Vince Watsonが表参道ORIGAMIだけの来日公演をおこないます!
 さらに、ドイツの〈Kompakt〉からのKaito名義の作品で知られるHiroshi Watanabe(aka Kaito)も出演決定!
 他に、Shinya Okamoto、Ko Umehara、Kyohei Saitoと、VJには HAJIME が一晩を演出します。

 疾走感漲るリズムに、叙情的でメランコリックなシンセ・ワークで、スケール感の大きな繊細なアルペジオ・シンセが軽やかに浮かび上がってくる楽曲は、デトロイト・フォロアーとしての高いクオリティで、際立った存在感を放っている。Vince Watson(ヴィンス・ワトソン)は、現在アムステルダムを拠点に活動し、自身のレーベル〈BIO〉を中心に、グラスゴーの〈HEADSPACE〉やデトロイトのCARL CRAIGが主宰する〈PLANET E〉からも作品を出している。

 オンリーワンのサウンドシステムを持つORIGAMIで鳴らされるデトロイト・テクノを継ぐ者=ヴィンス・ワトソンの久々のDJプレイは見逃せない! 

[日程] 1/31(Fri)
[公演名] Vince Watson
[OPEN] 24:00
[PRICE] Door:3,000yen

[出演]
MAIN FLOOR:
Vince Watson(Bedrock/Planet E/Pokerflat/Ovum/Amsterdam)
Hiroshi Watanabe aka Kaito (Kompakt)
Shinya Okamoto(Foureal Records)
Ko Umehara(-kikyu-)
Kyohei Saito(Ourhouse)

GALLERY FLOOR:
dsitb (BLAFMA / invisible / Snows On Conifer)
Satoshi Onishi (strobo)
Aiko Morita 
Kamekawa (MTCP / Daytona / Drop) 
Nao (inception) 

[会場名] ORIGAMI
[住所] 〒107-0062
     東京都 港区 南青山 3-18-19 FESTAE表参道ビルB1F(表参道交差点)
[電話] 03-6434-0968

[facebook イベントページ]
https://www.facebook.com/events/469506413161295/


VINCE WATSON (BIO MUSIC/PLANET E/DELSIN/AMSTERDAM)

 スコットランド、グラスゴー出身、現アムステルダム在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、VINCE WATSON。

 彼はハウス/テクノのダンス・ミュージックからアンビエント・ミュージックまで幅広く楽曲を制作し、デトロイト・テクノ・フォロワーとして注目されているアーティストである。

 VINCEは、10代の頃にDJをはじめた。主にHIP-HOPや初期のHOUSEをプレイしていたという。ハービー・ハンコックやジャン・ミッシェル・ジャール、デリック・メイが創り出す音楽に影響され、自らも楽曲制作を開始する。1995年にはデイヴ・エンジェルのレーベルである〈Rotation〉からデビュー・シングル「Innovation EP」をリリース。そしてグラスゴーのクラブ、アリーナでレジデントDJとしてそのキャリアをスタートする。当時Jeff MillsやLuke Slater、Kenny Larkinといった著名なアーティストと共演する。

 ハウス~テクノとクロスオーヴァーな音楽性を追求する彼は、1999年、〈Aloha Records〉より1stアルバム『Biologique』を発表。そこに収録されていた"Mystical Rhythm"はシングルとしてもリリースされ、今でも色褪せないテクノ~ハウス・クラシックとなった。
 発表当時Francois K.、Joe Claussell、Derrick May、Carl CraigといったDJがヘヴィー・プレイしたこの楽曲は世界的大ヒットを記録し、一躍彼の名は注目を集めている。
 2002年には2ndアルバム『Moments in Time』を〈Ibadan Records〉からリリースしているが、こちらはCarl CoxやLaurent Garnierからも高く評価された。その後2005年には『Sublimina』、『Echos From The Future:View To The Past』、2006年には『The eMotion Sequence』、『Live At Kozzmozz』と好調にハイ・クオリティなアルバムをリリース。今やシーンにとって欠かせないアーティストとなった。

 昨年には傑作アルバム『Every Soul Needs A Guide』をリリース。彼独特の美しい旋律が胸を打つ素晴らしい内容のアルバムで、世界的に絶大な評価を得ている。今回の来日ではDJとしてではなくLIVEを披露。彼の本領発揮となる素晴らしいパフォーマンスが聴ける絶好の機会だ。

https://www.vincewatson.com/


#1 Cherry Brown - ele-king

■サウス×アイドル×アニメ=Cherry Brown

「彼女ですか? いるわけないじゃないですか! 僕、人見知りだから初対面の人と会話ができないんですよ(笑)。『なに話したらいいんだろう?』ってなっちゃう」

 Cherry Brownは大きな目を見開いて笑いながらそう話した。彼は正直な人間だ。

「どのジャンルだから聴かないとか、そういう壁みたいなのは薄れちゃいましたね。もともとはサウスのヒップホップが大好きだったけど、『らき★すた』がきっかけでアニメにハマって。時期は高校を卒業したばかりの3月で、とくにすることもなくいつものようにネットを観てたんですよ。ちょうどその頃、ネットで『らき★すた』のオープニング曲の「もってけ! セーラーふく」がヤバいって話題になっていたんです。それで興味を持って観たら、一発でやられちゃって(笑)」


“もってけ! セーラーふく”

「アイドルだって、昔は大っ嫌いだったんですよ。モーニング娘。とかがラップっぽい曲とかやってるのとかも“ダサー”って思ってたし。 偏見がなくなったいちばんのキッカケはPerfumeにハマったこと。『チョコレイト・ディスコ』ですね。当時通ってた音楽の専門学校で仲良くなったさつき が てんこもりが僕に教えてくれたんですよ。あの曲が良すぎて、それまでアイドル・ソングに対して持っていた偏見や壁みたいなものがなくなってしまった。そしたらどんどんいろんな曲が自分の中に入ってきて。ももクロもZになる前までが好きでした。あの頃のほうが単純に曲が良かった。しおりん(玉井詩織)に関しては別ですけど(笑)。ずっと好きです」

「好きなものからの影響って自然に出てきちゃうんですよ。“サウスとアイドルを混ぜてやったら(表現したら)クールだろう”とかそういう意図はぜんぜんなくて、自分の中にあるものを表現したら自然とこういう形になっていきましたね。僕がヒップホップのトラックメイカーだからといって、アニメやアイドルが好きなのを隠してサウスのトラックしか作らないのは、それこそ不自然だと思います」

 この考え方は彼のリリックにも表れている。

NΣΣT“All That I Can Do feat. Cherry Brown”

NΣΣT“All That I Can Do feat. Cherry Brown”抜粋

まぁぶっちゃけると好きな子がいるんだ
正確にはいた そう、今は違うさ
久々だった本当あんな夢中になったのは
いつも気づいたら想ってた君を脳内でうつしてた
キモいのはわかってるけどメールがない時迷いながらもツイッター覗き見
どうしようもなかった本当に 超考えてたよ付き合ってもないのに
でも特に何も変わらず過ぎてた半年 1歩近づくと5歩は離れるの繰り返し
いいかげんそういう君にしたようんざり


チェリー・ブラウン
エスケーピズム

ビクターエンタテインメント

Tower HMV iTunes

 この曲について彼はブログで「聴けばわかると思うんだけど歌詞がストレートすぎるというか・・・剥き出しというかwww これはなーーって思ったんでお蔵入りしてたんだよね」と綴った。

 ヒップホップは「お題」に対してどれだけ面白い/カッコいいことを言えるかを競うコンペティションのような側面がある。実体験をもとにしていれば、他のラッパーが言えないディティールをリリックに入れ込むことができる。それは説得力のある強いラインにつながる。つまりラッパーにとっては自身の「リアル」をどう定義するかが、非常に重要であると言えるだろう。

 以前AKLOはこんな発言をしていた。「日本のヒップホップシーンには不良で面白いやつはいっぱいいるけど、もうその枠は供給過多なんですよね(笑)。USのヒップホップシーンはそれこそいろんなキャラクターがいっぱいいるんですよ」。

 AKLOの言う通り現在の日本のヒップホップ・シーンには不良が多く、彼らの主張の多くは「ラップでのし上がる」というものだ。しかし、それはUSヒップホップのリアルであって、日本ではなかなか受け入れがたい考え方のような気がする。

 たとえば、アメリカでは街角のギャングから億万長者になったJAY-Zや、冴えない音楽オタクから一躍ヒップ・スターとなってしまったPharrellのようなアーティストが実在している。しかし日本にはまだそういった例が存在しないだけに、若者が「ラップで人生の一発逆転を狙う」と言っても説得力に欠ける気がするのだ。それこそ、「なんで日本人がヒップホップなんて」という、もうB-BOYなら耳にたこができるくらい言われてきた常套句を聞かされるのがオチだ。

 日本のロック・シーンにさまざまなアーティストがいるように、ヒップホップにだっていろんなアーティストがいるべきだ。MSCやANARCHYのようなギャングスタ・ラッパーも、5lackのようなマイペースなのに繊細なラッパーも、AKLOのようなUSヒップホップを意識的にトレースしたようなラッパーも、THA BLUE HERBのようなストイックなラッパーも。もっともっと、ラッパーの数だけリアルがあっていい。そしてそのすべてが正解なのだ。その数が増えれば、USヒップホップとは違う、日本のヒップホップの形がもっと見えてくる。

 Cherry Brownの存在は、ある意味で日本のヒップホップ・シーンが到達した“幅”の突端でもある。

DUPER GINGER“Dubwise Madness feat. Cherry Brown”

DUPER GINGER“Dubwise Madness feat. Cherry Brown”抜粋

週末 外には出ず 今夜もひとり家でチル
モニター通して聞こえてるみんなの声 まただぜ
どこか遊びに行けばよかったとひとりつぶやいて
わけわかんねえこと考えて 勝手にひとりで落ち込んで
(中略)
とくになんもすることないから 自分の部屋ベッドの上座ってる
お酒はチビチビ飲んでる そして適当な場所トリップ遠足

「この曲は普通に実話です(笑)。僕がこんなに引っ込み思案になった原因ですか? うーん……。女の子との関係性をうまく築けないという部分が、(僕の引っ込み思案の)根っこにあるかもしれません。小学生の頃はお調子者で「ちんこ、まんこ」とか言ってみんなを笑わせてました。でも、女子に対する積極性みたいなものはなかったんですよ。それを思春期にこじらせちゃって。積極性がないというよりも、むしろ引っ込み思案な人間になってしまった。そうなってしまう直接のきっかけや明確なトラウマみたいなものはないんだけど、小学生の高学年くらいからは女の子の視線も自分を嘲笑しているように感じてしまったし、そういう子たちの笑い声も自分に向けられているような気になってしまってました。まあ、いま考えれば被害妄想が激しかっただけだと思うんですけどね」

 こういった吐露をするアーティストは多い。だが実際には、彼らは大抵モテる。彼らの弱音はただのカッコつけツールなのではないか。ステージに立つ華々しい姿に反比例するかのような弱々しい自分を見せることで異性の興味を惹こうとしているのではないか……そうだとすれば、ずるいし、うらやましい。そもそも意識的にそんなギャップを作れる時点で、もしくはそれを女性の前で開陳できる時点で、「あなたは弱くない」と言いたくなる。
 そういった疑念は、もちろんCherry Brownにも持っていた。だから訊いた。「でも、彼女いるし、モテるんでしょ?」その答えが冒頭の発言につながる。「もちろん、昔よりはマシになってきてますけどね(笑)」。やはりCherry Brownはリアルだ。

■歴史

「生まれたのは横須賀の米軍基地の中です。先輩にも基地内で生まれた人がいて、その人いわく(基地の)中で生まれた人はLA出身になるらしいんですよ、神奈川県横須賀市ではなくて。でもそういうのを除けば、僕は横須賀生まれです。物心つく前には父の仕事の関係でアメリカで暮らしていたこともあったらしい。お父さんはマリーンでした」

 横須賀といえば、SIMI LABのMARIAが思い出される。彼女は自身の幼少期をこう語る「当時は基地のなかに住んでたの。なかにも学校はあるんだけど、あたしは外の小学校に行っててさ。お父さんは基地内のアメリカの学校に行かせたかったんだけど、お母さんはあたしが基地内の学校に進学するといずれアメリカに行っちゃうと思ったみたいで、日本の学校に行かせたのね。あたし、こう見えてほとんど英語力がないの(笑)。日常会話程度。だから小学校では“あいつ外人なのに英語しゃべれない”とか言われて、友だちはできなかった。当然、基地内の子とも学校が違うから仲良くなれない。だからあたしはいつもひとりだった」。この経験は彼女の人格形成に大きな影響を及ぼし、リリックにもそれが如実に表れている。ではCherry Brownはどうだろうか?

「MARIAとは同い年なんですが、当時はまったく接点がありませんでした。僕は(お父さんが)小学校に上がるタイミングで軍を辞めちゃったから、ほとんどアメリカ人のコミュニティの中で育ってないんですよ。小学校も公立の学校だけど、人種の問題でいじめや差別をされた経験は別にそんなないかな。友だちとケンカしたときに『このガイジン』って言われるとか、そんな程度ですよ。あと、当時はサッカーやってて、結構真面目にJリーガーを目指してました」

「ヒップホップに興味を持ち出したのは、けっこう昔です。アーミーだったお父さんがギャングスタ・ラップ好きだったこともあって、家や車で普通にヒップホップが流れているような環境だったんですよ。ラップをはじめたのは中学3年の頃からかな。当時はミクスチャーロックの全盛期で、MTVでいろんなバンドのPVが流れてたんです。そういうのを観て僕もミクスチャーのバンドをやりたくなって。でもいっしょにやる人がいなかったんで、ひとりでラップを書きはじめたんです」

「中高生の頃はMTVばっかり観てましたね。サウスが好きになるキッカケとなったリュダクリスもMTVで知りましたし」

 現在25歳のCherry Brownが中学3年生の頃となると、だいたい2000年代初頭。ISDNがどうしたこうしたと言っていた時期なので、インターネットで動画を観るなんていうことは夢のまた夢。そんな時期に洋楽のPVを観るにはTVK(テレビ神奈川)などのローカル局か、MTVやスペーシャワーTVのようなCS放送に頼るしかなかった。拙著『街のものがたり』でPUNPEEもこう語っている。

「ヒップホップをちゃんと認識したのは中2~3くらいですね。スペシャ(スペースシャワーTV)のナズ特集みたいなので、「ナズ・イズ・ライク」のPVを観て“うわー!”ってなったんですよ。その頃、スペシャとかではティンバランドとやってたミッシー(・エリオット)のPVとかもかかってたから、“こういうのがヒップホップなんだ……”みたいな感じで。(中略)あの頃はいろんな音楽がストリート系みたいな感じで括られてましたよね。だから俺もヒップホップだけを強く意識して聴いていたわけじゃなくて、ベックとかブラーとかも同時に聴いてました。当時スペシャでやってた『メガロマニアックス』って番組とか、TVK(テレビ神奈川)でやってた『ミュートマ』とかでかかってる音楽はなんかイケてる感じがしてて、そういうのを聴いてました」

 彼もミクスチャー・ロックにハマってスペースシャワーTVをよく観ていたというが、彼は当時の同局が志向していたオルタナティヴ路線を自ら突き詰めていき現在のスタイルに辿り着き、Cherry BrownはMTVのカラーであるUS色に染まっていく。メディアの打ち出していた姿勢が、その後のミュージシャンたちにここまで色濃く表れるというのも興味深い。

「ライヴをやることになったのは、RICHEEさんと知り合いになったからです」

 RICHEEとはCherry Brownが所属するJACK RABBITZのメンバーで、BIG RONの実弟でもある。

「RICHEEさんはもともとウエッサイの有名人で。それで僕が高校生の頃にバイトしてた居酒屋に飲みに来たんですよ。僕は人見知りなんで、面識のない人に自分から声をかけたりはしないんですが、このときは勇気を出して「僕、ラップやってるんです」って話しかけたんですよ。そしたら、「じゃあデモテープちょうだい」と言ってくれて。」

「RICHEEさんに渡したデモは何も考えないパーティ系の「盛り上がろうよ〜」みたいなラップでした。でもそれより前のいちばん最初は社会派だったんですよ(笑)。「戦争やめろー」とか言って。でもなんか違うなって気がしてきて、今度はいろんな人をディスしまくったんです。当然それもハマらなくて、自分がハマる感じを探して、いろいろやるうちにけっこう自然といまのスタイルになったんですよ」

■Soulja BoyとLil B

 Cherry BrownはAKLOと同じくインターネットのミックステープのシーンから登場したアーティストだ。

「インターネットは高校生くらいから好きでずっとやってるんです。僕の制作環境がPCに移行するきっかけもじつはインターネット経由で。僕はメジャー・デビューする前からSoulja Boyが大好きで、彼のMyspaceプロフィールを細かくチェックしてたんです。そしたら、そこで“FL Studio”って言葉を見つけたんですよ。「なんだろうなー」と思って調べてみたらそれが作曲ソフトだということがわかったんです。当時の僕の制作環境はリズムマシーンとSP404というサンプラーだったんですけど、そこからPCで制作するようになりました」

 Soulja BoyがCherry Brownに与えた影響は、もちろん機材だけではない。Cherry BrownはSoulja Boyからインターネットを活用したセルフ・プロモーションのメソッドも学んだという。

「インターネットの使い方はかなりお手本にしています。あの人はガンガン新曲作って、すぐにネットでフリー・ダウンロードできる形で公開してって感じでしたよね。自分も当時はそういうのをすごく意識してて、もういっぱい曲を作って、どんどん発表してくしかないって思ってました。そのイズムはいまもあって、作ったら気楽にポンって上げちゃうっすね。曲ができたら、すぐにみんなに聴いてもらいたいというのもあるし」

「あとはLil Bっすね。Myspaceのプロフィールを死ぬほど作ったり(※違法アップロードを繰り返してすぐに削除されてしまうため)、自分で工夫したネットのセルフ・プロモーションだけでどんどん知名度を広めていきましたからね。彼はめっちゃ頭いいアーティストだと思います。リリックも普通にすごいですから。しかも実際は超ラップうまいのに、あえてああいうショボい感じでやったりもして。でも話題が話題を呼んでじゃないっすけど、なんかクチコミでどんどん広まって“なんだ、こいつは?”的に広まってったみたいな。」

 Cherry BrownがLil Bを意識して作った曲が“I’m 沢尻エリカ”だ。

Cherry Brown“I’m 沢尻エリカ [Prod.Lil'諭吉]”

 ブログでは「ある日歯医者の帰りにその曲(「I’m Paris Hilton」)聴いてて、パリス・・・パリス・・・日本だったらエリカ様!って思いついて。とりあえずその日のうちにちゃちゃっとトラックと1ヴァースだけ書いて数日後に最後のヴァース書いて週末にレコした感じです。まぁ面白いからって感じで作ってみた。アメリカのLil Bが作ったパリスヒルトンに対して日本からちぇりーが沢尻エリカさんでアンサーだ的な感じかなww」

 Cherry Brownは計算というより、本当にノリで楽しみながら活動しているのだろうが、Lil Bと同じく「めっちゃ頭いいアーティスト」であると言えるだろう。彼が優れているのはラップ・スキル、トラックメイキングのみならず、他の誰とも違うという点だ。日本はもちろん、世界を見渡してもCherry Brownと同じアーティストはいない。つねに自分に正直に、楽しいことを妥協なく追求した結果が、現在の彼のポジションを作り出している。

■Escapism


チェリー・ブラウン
エスケーピズム

ビクターエンタテインメント

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巻紗葉
街のものがたり―新世代ラッパーたちの証言

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 彼のメジャー・デビュー・アルバムとなった『Escapism』。“現実逃避”と題された本作は、そんな彼のパーソナリティ、サウンド、ラップ・スキルが詰め込まれている。

「もともと別のインディ・レーベルからずいぶん前にリリースする予定だったんですよ。でも結局はその話が流れちゃって。だから今回のアルバムはコツコツとブラッシュ・アップできたという部分がありますね。最近は原点回帰じゃないですけど、また二次元がアツくて。アニメとか超観てるんですよ(笑)。『Angel Beats』というアニメがあるんですけど、そのオープニング(“My Soul Your Beats”)とエンディング曲(“Brave Song”)がいいんです。とくにエンディング曲が好き。そういうのとか、あとまたサウスをすごく聴いてたりしてて。そういう気分もアルバムにはすごく反映されてますね」

 タイトルにはどんな意味があるのだろうか?

「最初のほうにも言ったけど、被害妄想が激しいところがあって。(精神的に)落ちるときはホントめっちゃくちゃ落ちるんですよ。アルバムの1曲めの“Loop”なんかは、まさにそういう曲。あぁ、またこの感じがきちゃったなぁって。そういうときにうわーって二次元とかに行っちゃうんですよ」

「確かに僕にとって音楽が現実逃避という部分はあると思います。音楽だったら普段できないことでもなんでもできちゃう。たとえば「C.H.T.」なんかは日本語ラップのシーンのことを歌っていて、僕がやっていることにああだこうだ言うやつとか、ちょっと名前が売れてきたらすり寄ってくるやつとかを全員ぶっ殺すみたいな感じなんです。こんなの実際は絶対にできないけど、音楽だったらできる。ライヴもそう。普段は人見知りで知らない人とは話せないようなやつだけど、ステージに立つとスイッチが入っちゃう」

Cherry Brown“Escapisms”抜粋

俺はムズカシイ事を考えるのはもう止めた
未来を心配するのも止めた 面倒な事は
美少女の笑顔の下に埋めた ごちゃごちゃうるさいよ俺の手は
お菓子で手一杯 好きな事を考えるので精一杯
今日からは楽しいことで目一杯

 これまた偶然なのだが、PUNPEEも以前こんなふうに話している。

「俺は何も背負いたくない。ナイトオウルみたいに世界がどうとか考えてないんですよ。好きな人といっしょに世界の終わりとかも関係なく、楽しく生きていたい無責任な男なんです。たとえば“CHRONO TRIGGER”のサビは基本的にただの言い訳なんですよ。“こんなデカい時代の一部なら この際もう開き直っちゃえばいいじゃん”とか、超カッコつけた開き直り(笑)」

 アーティストとは元来クリエイティヴのことだけを考えていれば良いのだろう。売り上げがどうした、セルフ・プロモーションがこうした、ヒップホップ・シーンがうんぬんかんぬん……。そういったことは彼らを支える人間が考えればいい。彼らはただただ絶対的な力を持った音楽を作り出すことに注力すればいい。たとえ彼らの作った曲が負から生まれたものだとしても、そこには僕らを笑顔してくれたり、スカッとさせてくれたりするエナジーが込められているのだから。

CONGO NATTY JAPAN TOUR2014 - ele-king

 「92年はどこにいた?(Where Were U In '92?)」が合い言葉となって久しい。92年とは、UKレイヴ・カルチャーすなわちジャングルが爆発した年です。私はその年クボケンと一緒にロンドンのレイヴ会場で踊っておりました。ジャングルのパーティで。
 で、ブリアルの新作にも如実に表れていたように、紙エレキングでも紹介したブリストルのドラムステップがそうであるように、ジャングル・リヴァイヴァル(そしてそのニュー・スクール)は、目下、UKのアンダーグラウンド・ミュージックの台風の目になっている。
 来る2月14日と2月15日、ジャングルの本場からシーンのパイオニアレベルMCことコンゴ・ナッティが来日DJを披露します。UKならではのサウンドシステム文化ばりばりの、迫力満点のオリジナル・レイヴ・ジャングル・サウンド、この機会をお見逃しなく!
 主催はいつもの〈DBS〉。2月14日(金曜日)は大阪CIRCUS。2月15日(土曜日)は代官山ユニット。「ジャングルってどんなもの?」って興味がある人たちにとっても気軽に入れるパーティです。
 来日を記念して、オーガナイザーの神波京平さんが「ジャングル・クラシック20選」を書いて下さいました。以下、ジャングルの歴史をおさらいして、コンゴ・ナッティの来日を待ちましょう!

■JUNGLE CLASSIC 20選 (神波京平・編)
1.CONGO NATTY - Jungle Revolution
[2013: Big Dada]
ジャングルのパイオニア、コンゴ・ナッティ/レベルMCの最新アルバム。オリジネイター達のMCや数々の生演奏をエイドリアン・シャーウッドと共にミックスしたニュー・クラシック!
UK All Stars
2.TRIBE OF ISSACHAR Feat. PETER BOUNCER ‎– Junglist
[1996: Congo Natty]
レベルMCの変名リリース。レイヴ期から活動するシンガー、ピーター・バウンサーをフィーチャーした、まさにジャングリスト・アンセム。
https://www.youtube.com/watch?v=yXVrwuJo-6Q
3.BLACKSTAR Feat. TOP CAT ‎– Champion DJ
[1995: Congo Natty]
これもレベルMCの変名。UK屈指のラガMC、トップ・キャットをフィーチャーしたビッグチューン。
https://www.youtube.com/watch?v=SPAPDltCrIA
4.Barrington Levy & Beenie Man ‎– Under Mi Sensi (Jungle Spliff Mix)
[1994: Greensleeves]
UKレゲエ・レーベルからレベルMCによる名作のジャングルREMIX。
https://www.youtube.com/watch?v=-YQX1jnFT0I
5.CONQUERING LION ‎– Rastaman
[1995: Mango]
メジャーのIsland/Mangoからジャマイカのビーニ・マンをフィーチャーしたレベルMCのプロジェクト。
https://www.youtube.com/watch?v=J8TRMgfb7aU
6.LEVITICUS ‎– Burial
[1994: Philly Blunt]
ウェアハウス/レイヴ期から中心的DJとして活動するジャンピング・ジャック・フロストのレーベルよりフロスト自ら手掛けたアンセム。
https://www.youtube.com/watch?v=z5NMTyAuPMk
7.M-BEAT Feat. GENERAL LEVY ‎– Incredible (Underground Deep Bass Mix)
[1994: Renk]
10代からハードコアとラガをミックスしたジャングルの原型的サウンドを作ってきたMビートの全英大ヒット曲。
https://www.youtube.com/watch?v=rQGUJ7KZ7hU
8.UK APACHI With SHY FX ‎– Original Nuttah
[1994: Sour]
Mビートの"Incredible"と共にラガ・ジャングルの代名詞となる、当時10代のシャイFXによる大ヒット曲。
https://www.youtube.com/watch?v=ACCDZlLLV0I
9.POTENTIAL BAD BOY ‎– Warning (Remix)
[1994: Ibiza]
ラガ・サンプルと銃声等のSEでギャングスタ・ジャングルを完成したポテンシャル・バッド・ボーイの名作。
https://www.youtube.com/watch?v=uimZmQCptjE
10.PRIZNA ‎– Fire
[1994: Kickin' Underground Sound]
レゲエ・サウンドシステム直系のジャングル・コレクティヴ、プリズナがMCデモリション・マンをフィーチャーしたアンセム。
https://www.youtube.com/watch?v=WApv8H5RzXQ
11.TOM & JERRY ‎– Maxi(Mun) Style
[1994: Tom & Jerry]
4ヒーローのジャングル・プロジェクト、トム&ジェリーの名作。4ヒーローならではエモーショナルなセンスが光る。
https://www.youtube.com/watch?v=af9hXricyv0
12.MORE ROCKERS ‎– Dub Plate Selection Volume One
[1995: More Rockers]
スミス&マイティのロブ・スミスがピーターDと結成したブリストル・ジャングルの中核ユニットの1st.アルバム。ソウルフル!
Your gonna
13.SOUND OF THE FUTURE ‎– The Lighter
[1995: Formation]
ハードコア期からFormation Recordsを主宰するDJ SSによるアンセム。フランシス・レイ作曲のイントロから一転爆発!
https://www.youtube.com/watch?v=R8jvWnXEGJM
14.FIRE FOX & 4-TREE ‎– Warning
[1994: Philly Blunt]
ロニ・サイズの変名リリース。トリニティ名義のディリンジャ、グラマー・ゴールド名義のクラスト等、Philly Blunt作品はどれも要チェック。
https://www.youtube.com/watch?v=qfMepn9dzn4
15.DEAD DREAD - Dred Bass
[1994: Moving Shadow]
アセンド&ウルトラヴァイブ名義でも知られるコンビによるハードコア〜ハードステップの名門、Moving Shadowからの重量ベース・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=Uj7EO2uVfDQ
16. DJ ZINC - Super Sharp Shooter
[1995: Ganja]
DJジンクの名を知らしめた爆発的大ヒット・チューン。DJハイプが主宰するGanjaはジャングル〜ジャンプアップの必須レーベル。
https://www.youtube.com/watch?v=bwX6d4wZcso
17.THE DREAM TEAM ‎– Stamina
[1994: Suburban Base]
ビジーB & パグウォッシュのデュオ、ドリーム・チームが名門Suburban Baseから放ったメガヒット!
https://www.youtube.com/watch?v=pNGddllF7AA
追記: ドリーム・チームはやがて自らのJoker Recordsからジャンプアップ・ジャングルの名作を連発。Joker日本支部のDJ INDRA氏から推薦の1曲。
THE RIDDLER - Rock 'n' Roll
[1998: Joker]
https://www.youtube.com/watch?v=nzuPL_W1j-Q
18.KEMET CREW ‎– The Seed
[1995: Parousia]
Ibiza Recordsと共に初期からアンダーグラウンドを牽引したKemetクルー。BMG傘下レーベルにライセンスされたアルバムからのカット。Jungle will never die!
https://www.youtube.com/watch?v=h8myXqa7J6c
19.REMARC ‎– R.I.P
[1994: Suburban Bass]
バッド・ボーイ・ディージェイの代表格、マッド・コブラのヒットを極悪ジャングルに再生したリマークの代表作。
https://www.youtube.com/watch?v=qMYAiVZ-vNQ
20.D.R.S. Feat. KENNY KEN - Everyman
[1994 Rugged Vinyl]
プロダクション・デュオ、D.R.S.がジャングルのトップDJ、ケニー・ケンと組んだディープ&ドープな傑作。
https://www.youtube.com/watch?v=vFLYMXU1C2k

JUNGLE REVOLUTION 2014!!! 最新作『ジャングル・レヴォリューション』でコンシャスな音楽革命を提示したジャングルのパイオニア、レベルMCことコンゴ・ナッティが実息コンゴ・ダブスを引き連れDBSに帰還! 2014年、Congo Natty Recordings創立=ジャングル音楽20周年のセレブレーション! Get Ready All Junglist!
JUNGLE REVOLUTION 2014.......ONE LOVE
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CONGO NATTY JAPAN TOUR 2014

2014.2.15 (SAT) @ UNIT

feat.CONGO NATTY aka REBEL MC
CONGO DUBZ

with.DJ MADD(Roots & Future, Black Box - HU), DJ DON, JAH-LIGHT, JUNGLE ROCK, PART2STYLE SOUND,

open/start: 23:30
adv.3500yen door 4000yen
info.03.5459.8630 UNIT
https://www.unit-tokyo.com
https://www.dbs-tokyo.com
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Ticket outlets:NOW ON SALE!
LAWSON (L-code: 78063)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

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CONGO NATTY JAPAN TOUR 2014

2/14 (FRI) 大阪CIRCUS (問)06-6241-3822 https://circus-osaka.com/
       OPEN 21:00 ADV&MEMBERS: 3500/1d DOOR: 4000/1d
2/15 (SAT) 東京 UNIT (問) 03-5459-8630 https://www.unit-tokyo.com/
      
Total info〉〉〉 https://www.dbs-tokyo.com

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★CONGO NATTY aka REBEL MC
 ルーツ・レゲエを根底にヒップホップ、ラガの影響下に育ったレベルMCは、'80年代後半からスカとハウスのミックス等、斬新なブレイクビートサウンドで注目を集め、『BLACK MEANING GOOD』('91)、『WORD, SOUND AND POWER』('92)でジャングルの青写真を描く。また92年にボブ・マーリーの"Exodus"のリミックスを手掛ける。〈Tribal Bass〉、〈X-Project〉レーベルを経て、JJフロスト、DJロンと共にCONQUERING LIONとして活動、ラガ・ジャングルの中核となる。'94年にジャングル・ファミリーの母体となる〈Congo Natty〉を設立、自らもコンゴ・ナッティを称す。『A TRIBUTE TO HAILE SELASSIE I』 をはじめ、数多くのリリースを重ね、'02年にはMCテナー・フライをフィーチャーした『12 YEARS OF JUNGLE』を発表、初来日を果たす。'05年は足跡を伝える『BORN AGAIN』、'08年には入手困難なシングルをコンパイルした『MOST WANTED VOL.1』をリリースし、新世代のジャングリストを狂喜させ、レベル自らDJとして新たなパフォーマンス活動に乗り出す。
近年は息子のDJコンゴ・ダブス、ヴォーカルのナンシー&フェーベらファミリーも広がり、'13年にニンジャ・チューン傘下の〈Big Dada〉と電撃契約、待望の最新アルバム『JUNGLE REVOLUTION』(日本盤:BEAT RECORDS)をリリース、オリジネイターたちのMCや数々の生演奏をエイドリアン・シャーウッドと共にミックスし、ルーツ・レゲエとジャングルのヴィジョンを深く追求する。レーベル名の"CONGO"はアフリカの民族音楽の太鼓、"NATTY"はラスタファリアンに由来し、彼らの音楽のインスピレーションは主にこの2つの要素から来ており、真のアイデンティティーはもちろんJAH RASTAFARIである。

https://www.facebook.com/CongoNattyOfficial
https://twitter.com/CongoNattyRebel



No Age - An Object
Sub Pop/Traffic

Tower HMV iTunes

 あなたはカラフルなグラデーションで「NO AGE」ってプリントされたTシャツを持っている人? ノー・エイジがローファイ概念を刷新し、シットゲイズやらネオ・ローファイやらとシーンを席巻していた頃、彼らのバンドTシャツはとてもシンボリックに機能していて、たとえば「Frankie Says Relax」とはぜんぜん違うけれども、こんなに鮮やかに、アーティに、Tシャツにメッセージを宿らせるロック・バンドがいまどき存在可能なのかと驚いた。
 あれから数年、シーンは確実に推移しているが、彼らの佇まいはいまだクールだ。今週末にせまった来日公演にぜひ!

■NO AGE Japan Tour 2014

徹底したDIY精神を貫きながら音楽のみならず、ヴィジュアル・アート、パフォーマンス・アートの領域にまで影響を及ぼしてきたNO AGE、最新アルバム『AN OBJECT』を引っ提げての来日公演決定!!

2.1 sat @ 東京・渋谷 CLUB QUATTRO
support: THE NOVEMBERS, ZZZ's
Open 18:00 Start 19:00
¥5,000 (Advance), ¥5,500 (Door) plus 1 Drink Charge @ Door
Ticket Outlets: PIA (P: 212-152), LAWSON (L: 75614), e+ (eplus.jp), GAN-BAN (03-3477-5710)
Information: 03-3444-6751 (SMASH), 03-3477-8750 (CLUB QUATTRO)

2.2 sun @ 大阪・心斎橋 CONPASS
support: BONANZAS
Open 18:00 Start 19:00
¥5,000 (Advance), ¥5,500 (Door) plus 1 Drink Charge @ Door
Ticket Outlets: PIA (P: 212-078), LAWSON (L: 54311), e+ (eplus.jp), TOWER RECORDS (梅田大阪マルビル店, 梅田NU茶屋町店)
Information: 03-6535-5569 (SMASH WEST), 06-6243-1666 (CONPASS)

TOTAL INFORMATION: 03-3444-6751 (SMASH) https://www.smash-jpn.com/
supported by TRAFFIC

■NO AGE
https://noagela.org/

ロサンゼルスのインディー・ロックの聖地として現代版CBGBとも言えるユース・アート・スペース、The Smellを拠点にDIY精神に貫かれた活動を続けるバンドが、NO AGEである。英ファット・キャット・レコーズからリリースされた『Weirdo Rippers』に続くセカンド・アルバム『Nouns』をSUB POPから2008年春に発表。米ピッチフォークでは9.2と破格の評価を獲得、同サイトの年間アルバム・チャート3位にも選出された。更にその他欧米の有名主要メディアでも軒並み高評価を得て、2008年を代表する1枚となった。レディオヘッドのメンバーやコーネリアスがNO AGEのTシャツを着用するなど話題になった。2010年にリリースされたサード・アルバム『Everything In Between』でも、ピッチフォークからニューヨーカー誌まで驚くほど幅広い筋から熱狂的な評価を獲得する。2011年にはフジロック・ホワイトステージ出演、集まった多くのオーディエンスを熱狂させた。そして、3年ぶりとなる待望の4枚目のアルバムにして既に最高傑作との呼び声も高い『An Object』を8月上旬に日本先行リリースしたばかりである。LAパンク・ハードコア、シューゲイザー、サイケ、ノイズが融合された彼等独自のサウンドは、ポップな強度を兼ね備えたマスターピースとなった。

〈東京公演〉
THE NOVEMBERS
https://the-novembers.com/
2005年に結成した日本のオルタナティブ・ロック・バンド。2007年にUK PROJECTから1st EP「THE NOVEMBERS」をリリース以降、毎年ワンマン・ツアーを行い、年々会場の規模を大きくしながらもその都度ソールド・アウト。国内の大規模なロック・フェスティバルでは「ARABAKI ROCK FEST.」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN 」「RUSH BALL」などに出演。2012年からはiTunes Storeで世界62か国への楽曲配信を開始。海外バンドの来日公演のサポートも増えWild Nothing、Thee Oh Sees、ULTERIORとも共演。そして、台湾の「MEGAPORT FESTIVAL」にも出演し、国内だけでなく海外からの注目も高まる。メンバーのソロ活動としては、小林祐介はソロでの弾き語り以外に、CHARAのライブサポート及び音源制作や、L’Arc-en-Cielのyukihiroのソロ・プロジェクトであるacid androidのライブ・ギタリストを務める。ケンゴマツモトは、映画監督である園子温のポエトリー・リーディング・セッションなどにも参加し、更に活動の幅を広げる。音楽以外の分野からも注目も高く、「Harem」(GIFT収録)のPVは映画「白痴」の監督である手塚眞がディレクターを務め、「dogma」(Fourth wall収録)のPVは映画「おそいひと」の監督である柴田剛が監督を務めた。アーティスト写真は「Vivienne Westwood」や「Miu Miu」などのポートレートを撮影するアンダース・エドストロームや、「agnès b」のショーで作品集が取り上げられた花代が撮影。特にファッションとの関わりは深く、「LAD MUSICIAN」の2012-13A/Wのコレクションのミュージックとしてライヴを行い、その模様は宇川直宏主催の「DOMMUNE」で生放送された。2013年9月末までにUK PROJECTから計8枚の音源をリリース。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、自分たちのやり方で自分たちなりの成功を掴みに行く。

ZZZ’s
https://www.facebook.com/zzzs.official
https://zzzs-jpn.com/

https://twitter.com/ZZZs_OFFICIAL

Youkaku (Guitar, Vo), Yukary (Bass, Vo), Lyn (Drums) によって2011年末に結成された兵庫の女性3人組。2012年には、バンド単体でニューヨークへ。バンド自らブッキングを行い、2度の渡米の中、SXSW2012, CMJ2012, Miami Art Baselなどへの出演を含む80本を超えるライブやThe Rapture, Le Tigreなどを手がけるエンジニアJONATHAN KREINIKと出会い、2nd EP ”Magnetica” のレコーディングを敢行。マイアミでライブを見たサーストン・ムーア(SONIC YOUTH, CHELSEA LIGHT MOVING)は、彼の所属するマタドール・レコーズのウェブサイトで2012年でもっともエキサイティングだったバンドとしてZZZ’sを絶賛している。2013年には、COLD CAVE (US), DIE DIE DIE (NZ), acid android (L’Arc~en~Ciel) と共演。自主リリースの2枚のEPをコンパイルした ”Magnetica / Prescription” のデジタル・ヴァージョンの世界リリース。11月からベルギーのコルトレイクでのPortisheadのジェフのバンド、BEAKがバンド選出をした ”SONIC CITY"、オランダのユトレヒトでの ”LE GUESS WHO?” といった2つのフェスティヴァルへの出演を含む1ヶ月間に渡る初のヨーロッパ・ツアーを敢行。結成以来、ボーダーレスな活動を繰り広げている。

〈大阪公演〉
BONANZAS
https://bnzsmail.wix.com/bonanzas
元suspiriaの吉田ヤスシとgoatの日野を中心に2010年春からライブ活動を開始。数々のメンバー・チェンジを繰り返し、現在はVOCAL「吉田ヤスシ」、BASS「日野浩志郎」、DRUMS「西河徹志」、ELECTRICS「蓮尾理之」4人のメンバーで活動中。キック/スネア/ハイハットのみのドラム、音階楽器である事を忘れたかのようにリズム・ユニゾンのみに執着するベース、まとわりつく電子音、恐ろしい迄の精度を誇る打撃音群を押さえ込むかの様な凶刃な声帯。ベースは鈍器、ドラムは銃、声は針、シンセは刃物。世界中の凶器を手にROCK’N ROLLの彼岸を目指した辺境の人民達が繰り出す独立武装部族音楽。そのやりすぎとも言えるシンプルな楽器構成を基に膨大なディシプリン(鍛錬)の上に積み上げられた強靭な「音」。そこから放たれるサウンドを敢えて色で表現するなら「一切光沢を持たない黒」。彼らの異形なサウンドは百鬼夜行な関西アンダーグラウンド・シーンにおいても特異点とされ、あまりにも特殊な存在のせいか、特定のジャンルとの交流はなくテクノ、ヒップホップやダブステップ、ハードコアから前衛音楽までリンク可能な存在となり、現在ライブ・シーンのみならずクラブ・パーティー・シーンからも注目されている。ある種デトロイト・テクノをも連想させるbonanzasの人外強靭なサウンドは呪術ダブステップ帝王のSHACKLETON氏さえも虜にし熱いラブコールを受けている。


『すべすべの秘法』The Secret to My Silky Skin - ele-king

 「日本で現在、ゲイネスを作中に潜ませたエッセンスやくすぐりとしてでなく、ナラティヴを作り続けているのは、我田引水ながら自分らの他には思い当たりません」というのは、今泉監督とのパートナーシップで映画を作り続けておられる音楽担当の岩佐浩樹さんの言葉だ。彼らの作品は海外の映画祭を中心に上映されており、新作『すべすべの秘法』(“The Secret to My Silky Skin”)のワールドプレミアも日本ではなく、2013年ベルリン・ポルノ映画祭だった。
 真正なるゲイ映画というのは、確かに現代の日本で市場が成立するのかは不明だし、発表の場もごくごく狭い箱の中になるのだろうが、例えば昨年。今泉監督がピンクのバナーを掲げて反韓デモにカウンターをかけに行っておられる写真を見た時には、勇ましげに中指を突き立てる人びとや、白地に黒文字のプラカを手にした人びとが並んだ新大久保の街に、ピンクのバナーがひっそりと、力強く存在しているイメージが頭に浮かび、彼らの映画も日本映画界のピンクのバナーだ。と思った。

               ********

 『すべすべの秘法』はゲイ漫画家、たかさきけいいち原作のコミックの映画化だ。そのせいか、日本におけるカミングアウトや同性婚、「社会改革がリアリティになるのは、よその国の話よね」みたいな日本人の当事者意識の無さ、といったポリティカルな問題をやんわり微笑しながらナイフで斬ってみせた『初戀』(拙著収録の書き下ろしレヴュー参照)とは違う。もっと王道のゲイ日常記というか、京都から東京のヤリ友(ファック・バディー)に会いに来たあるゲイの数日間をまったりと描いている。
 今泉監督は1990年からピンク映画の俳優としても活躍しておられ、2013年ベルリン・ポルノ映画祭では、彼の過去の出演作品と『すべすべの秘法』の上映を合わせた特集プログラム「RETRO : KOICHI IMAIZUMI」が組まれた。ポルノ映画祭で上映されたからには、セックスシーンがばんばん出て来て描写が露骨なんだろう。と思ったが、実はセックスシーンは少ない。露骨。という点でも、そのものズバリを見せているという点ではそうだろうが、そういう派手な言葉は似合わない。
 にも拘わらず、今回の今泉作品でもっとも印象に残っているのは性描写である。
 なぜだろう。
 ゲイ映画をストレート(とくに女子)が見る場合、「いったい男どうしが褥で何を、どうやって致しているの?」的な好奇心があるのは当然であり、BLとかやおいとかの存在もそこに無関係であろう筈がない。わからないもの、自分ではけっして経験で征服することができないものには人間は必要以上にそそられ、ファンタジーすら抱くものだからだ。
 が、そうした映像消費者のBL的期待や、それを満足させようとする市場の常識を打ち砕くかの如くに、『すべすべの秘法』の性描写は日常的で当たり前だ。
 なんかこう、炬燵で蜜柑を食べているようなセックスシーンなのである。
 が、一部のフェティッシュ好きの方々がプロに金を払って行うスペシャル・セッションでもない限り、人間が営んでいる性行為などというものはやはり炬燵で蜜柑を食べているようなものだ。生活の一部であるセックスで、いちいち大袈裟なエロスが毎回展開されることはない。それは性的指向がどうであれ、同じことだろう。
 だのにゲイのセックス描写となると、何か特別なもののようにいやらしく美しく演出されたり、激しいもののように描かれがちなのは、それは作り手(&受け手)の意識にそれが「倒錯したもの」だという前提的感覚があるからではないか。

 そこへいくと『すべすべの秘法』の性描写は見事なまでに倒錯感がない。ったく人間ってやつは、男女だろうと男男だろうとやることは同じなのねー。と微笑ましくさえなる。この日常的で健康的な性描写は、「倒錯したもの」という暗黙の了解の上に成り立つゲイの性描写へのアンチテーゼではないか。何かそこには、ピンクのバナーを掲げて新大久保の街角に立つ今泉監督の姿が透けて見える気がするのだ。

 今日も勤務先の保育園で、子供たちを相手に、「ダディとマミイがいる人、手をあげてー」「はーい」「じゃ、ダディとダディがいる人ー」「はーい」「マミイとマミイがいる人ー」「はーい」「うちのマミイは服を脱いでシャワーする時はダディになるから、どっちなのかわかんない」「うーん、そりゃ微妙だね」みたいな話をしたばかりだ。
 わたしの住むブライトンは同性愛者が多い地域ではあるが、英国では、同性愛者の存在はもはや炬燵の上の蜜柑のようなものになりつつある。

 日本もそのうち、ある日気がついたらそうなっている。
 『すべすべの秘法』の風呂場のラストシーンからはそんな声も聞こえたような気がする。

※第8回ベルリンポルノ映画祭特集プログラム凱旋上映
 RETRO 今泉浩一×佐藤寿保
 2014年2月5日(水)から8日(土)まで渋谷UPLINKで行われます。
 『すべすべの秘法』を含めた4作品に『家族コンプリート』を加えた特別凱旋上映です。
 2月8日(土)15:00〜上映後には田亀源五郎×今泉浩一のトークショーがあります。
https://www.uplink.co.jp/event/2013/21607


Opitope - ele-king

 かつては理屈っぽい特殊なジャンルだったアンビエントも、今日ではすっかり感覚的かつ曖昧なジャンルとして欧米のいたるところから量産されるようになった。需要も高まっているのだろう。アンビエントはいまやカジュアルなジャンルである。
 三田格の調査によれば2006年が史上3度目のピークだというが、現在あるのは90年代のクラブ・カルチャーのサブジャンルとして拡大したアンビエントとは別の潮流だ。とは言うものの……、期待を込めて書かせてもらえば、かつてのクラブ・カルチャーを特徴付けた匿名性(スターはいらない)、共同体の再構築(その質を問う)、場の意外性(まあ、お寺とか、普段行き慣れていない場)という視座を継承している。何にせよ、相変わらずうるさい音楽が好きな人間が多数いる一方で──僕もうるさい音楽を聴いてはいるが、しかし、このところ密かに、多くの人間がうるさくない音楽のフォーマットに可能性を見ているのである。
 それこそその昔、「ハウス」と名が付けられさえすれば、あとはもう何でも好きなように音を工夫できたのと似て、「アンビエント」もすっかり雑食的な分野になった。インダストリアルでもコズミックでも、メタルでもダブでも、ギャグでもシリアスでも、素人も大勢参加して、何でもありだ(ということを三田格の『アンビエント・ディフィニティヴ』は言っている)。アンビエトはマニアのためのジャンルであることを超えて、時代のうねりのなかの切り拓かれた場となり、手段となった。

 実際、日本でもアンビエント系のクリエイターの作品は後を絶たない。そうしたアンビエントの時代において、伊達伯欣と畠山地平は、とくに2005年以降、国内外での評価をモノにしてきた人たちで、シーンの今後を占うという意味でもキーパーソンだ。
 日本のミュージシャンは「静けさ」を表すのがうまいと感じることが多々ある。彼らの「静けさ」が自分の好みに合っただけのことかもしれないし、伊達伯欣と畠山地平のオピトープを国民性になぞって紹介するのは無粋だとは思うのだが、素晴らしい「静けさ」が録音されている彼らのセカンド・アルバム『ピュシス』の収録曲は、とくに捻りもなく、ずばり率直に、自然をテーマにしている。曲名に出てくる「雫」や「朝露」や「冬の森の温かさ」は、日本で暮らしている彼らが感じている自然だろう。同じように、たびたび自然をテーマにしたエメラルズとは明らかに違った感性が広がっている。英国風ユーモアもフランス風のウィットもないが、自然と人間とを結びつける宮沢賢治的コスモロジーがあり、僕の耳には彼らのアンビエントがよどみもなく入ってくるのだ。

 2006年にシカゴの〈クランキー〉からデビューした畠山地平は、すでに20枚近くのアルバムを発表し、海外でもライヴ・ツアーをしている。自身が主宰するレーベル〈White Paddy Mountain〉では、アンビエント的感性を基調にしながらもその枠組みに囚われず、多様な音楽作品を出している(最近は、ASUNAによる美しい『Valya Letters』を出したばかり)。また、畠山地平はフットボール好きでもある。アンビエントとフットボールの両立とは、ただそれだけで実はかなり価値があるのだ。
 そして、いっぽうの伊達伯欣は、コリー・フラーとのイルハ(Illuha)でブルックリンの〈12K〉(タイラー・デュプレーのレーベル)から作品をリリースしつつ、Tomoyoshi Date名義のソロ作品も出している(彼の2011年の『Otoha』は、『アンビエント・ディフィニティヴ』においてはその年の代表作に選ばれている)。今年はイルハの新作、坂本龍一とのライヴ・アルバムなども控えているそうで、彼の音はさらに多くの耳にとまりそうだ。ちなみに彼は、某医科大学に勤務している医者でもあり、免疫学の研究者でもある。

 バイオを見るだけでも個性的なふたりによるオピトープだが、作品には、ほどよい緊張感がある。静けさのなかにも、音の「間」が際立つような、ささやかだが、衝突とためらいがある。『ピュシス』は、ただいたずらに心地良いだけの、多幸症的な音楽ではないのだ。それでも僕はこのアルバムにもっとも近いのは、『ミュージック・フォー・エアポート』ではないかと思っている。重厚さを回避していくような、音の間の取り方も似ているし、何よりも極上の静けさがある。どこかメランコリックな気配を持たせながら、とめどくなく広がり、そして決して破綻することのない平静で穏やかな雰囲気も似ている。
 録音が2008年~2011年とあるが、古さは感じられない。アンビエント/ドローンの2000年代を駆け抜けた世代のクオリティの高さというか、初期はラップトップをトレードマークとした彼らは、現在、アナログ機材──高価なヴィンテージ・シンセのことではない。オルガン、テープ、弦楽器、ミキサー等々──を使っているが、その響きは実に瑞々しいのだ。それはスキルの問題でもあるが、同時に、なにかしら社会生活で生じる抑圧から逃れたいと願う気持ちによって磨かれるものだろう。僕は長いあいだ環状八号線の近くに住んでいた。窓を開ければ昼夜問わず車の騒音が入ってくるようなところだった。ジョン・ケージのように、そうした騒音を「素晴らしい」と言えれば良かったのだが、しかし、ケージのレトリックとは別のところで、現代では騒音は拒まれることなく広がっている。アンビエントのピークは、まだまだこの先にあるのだろう。


※今週、30日、青山CAYにて、アルバム発売記念のライヴがあり。ぜひ、彼らの生演奏を見ていただきたい。

時間:OPEN 18:30 / START 19:30
料金:予約 2,500円 当日 3,000円 
☆ドリンク、フード、マルシェに使える700円分のショッピングチケット付き
席種:着席または立見
会場:CAY(スパイラルB1F)
〒107-0062 東京都港区南青山5-6-23 ACCESS MAP
出演 :Opitope、テニスコーツ+大城真、HELLL、Yusuke Date、佐立努、aus(DJ)

第4回:馬に恋する女の子たち - ele-king

 ドイツで女の子を育てている旧友から、ドイツの女児には昔から馬が人気らしいと聞きました。おもちゃコーナーでも絵本コーナーでも、馬キャラものが大プッシュされているとか。


ファンシーな馬グッズ売り場


絵本コーナーにも馬キャラがいっぱい

 なるほど、馬とふれあう機会の多い国では、馬がファンシー・キャラ扱いされることもあるんですね。そういえばうちの子も、ファンシーな仔馬たちが活躍するアメリカの女児アニメ『マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜』(ハズブロ・スタジオズ)を喜んで観ていますし。

 などと言っていたら、ファンシー・グッズだけじゃないとのこと。女児向けの馬DSゲーム、馬ボードゲーム、馬ポスター付きの馬のグラビア雑誌などが、普通に販売されているといいます。

 明らかにこれは私の理解を超えた世界。ゆるふわエアリー・ヘアのイケメン馬たちが、あたかもティーン・アイドルのようにセクシーにこちらを見つめているではありませんか。白馬の王子様ならわかりますが、馬そのものを王子扱いするなんて聞いたことがありません。いったい何が起きているのでしょうか。

 左はドイツの少女向け馬雑誌『WENDY』。8~14歳の女の子が対象読者で、ドイツのほか、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーで発行されています。馬を愛するイギリス人少女の冒険マンガ『WENDY』、6人の少女が登場し、その飼い馬同士がおしゃべりする日本のジュエルペットのようなコミック『Horseland』、2匹の馬が主人公のギャグマンガ『Snobben & Skrutten』の3本のコミックがメイン・コンテンツだそう。

 真ん中の『LISSY』も、馬マンガがメイン・コンテンツであるドイツの少女雑誌。チェコでも販売されているようです。対象読者は7~13歳の女の子。乗馬学校や馬の育て方に関する美しい馬の写真付きレポ、読者投稿ポエム、ポスターなども掲載されています。

 右の『Min Häst(私の馬)』は、スウェーデンの馬雑誌。対象読者は7~14歳の女の子。公式サイト(https://www.minhast.se/)をのぞくと馬と少女がチュッチュしているイメージが散見され、言葉はわからないながらもただの愛玩動物雑誌ではないことが察せられます。

 これらの雑誌に共通しているのは、前思春期の女の子を対象としていること、コミックがメイン・コンテンツであること、ポスターや写真も多く、馬の美しさがフィーチャーされていること。日本のような少女向けコミック市場はよその国にはないんじゃないかと思っていましたが、あるんですね。(少なくともスウェーデンでは、少女向けの中でも馬マンガは冒険マンガに次ぐ一大ジャンルを成しているようです)。

 それにしてもなんでまた、馬なんでしょう。海外のYahoo! 知恵袋的なサイトでもそんな質問がいくつか寄せられていたので(1, 2, 3)、かいつまんで見ていくことにしましょう。

 「男の子がなんで車が好きかって訊くようなもんだよ」「男の子がアクション・フィギュアやヘビを好むのと一緒じゃない? 遺伝子に組み込まれてるのよ」「カワイイからに決まってる」「馬は金持ちしか飼えないだろ。女の子が好きなのは本当は金持ちなのさ」「メディアの刷り込みでしょ」「マンガの中でかわいく描かれてるから」「犬猫と違ってウンチが臭くないからじゃないかな。草食だし」

 女の子が馬好きというのは疑うまでもない当たり前のことらしく、質問の答えも相当ぼんやりしています。少なくとも、アジア圏の私にはピンとこないものばかり。「私は少女時代、馬なんか好きじゃなかったけど」という反論もちらほら見受けられます。そこで、馬好きであるという少女たち自身の回答を拾ってみることにしました。

「馬は私の背中に鼻を押しつけて休んだり、たとえエサを持っていなくても私を見て興奮するの。そんな家畜ほかにいる?」
「美しくて、勇敢で、雄大な動物。馬に乗っていると自由を感じる」
「どんな男の子よりも正直だし、女友だちみたいに陰口をたたいたりしないから。馬と私は対等なの」
「思春期前に女の子が恋をする疑似ボーイフレンドという説もあるみたい。思春期に入ったら男の子が馬に取って代わるんですって」
「説明するのが難しいけど、馬に乗り風を切って走るとき自由だと思えるの。馬と私の間には破れない絆がある。私にはない翼を貸してくれる存在」
「男性的な姿形。危険から守ってくれそう。信義に厚く、勤勉で、誠実(たぶん)」

 「疑似ボーイフレンド」「男性的」。犬猫ウサギではなく、馬でなくてはいけない理由が見えてきました。馬とは自分より大きく男らしく、かつ自分に危害を与えることなく、いついかなるときも自分を愛し守ってくれる誠実な存在。と書くと、まるでお父さんのようです。いくらお父さんが居心地のよい存在であったとしても、いつまでも家庭の中で守られているわけにはいきません。7~8歳といえば、親の束縛が煩わしくなり、家庭の外にある自由やときめきへの憧れも芽生えるお年頃。でも本物の男の子はまだ怖い。そんな少女たちにとって、自らより大きくてたくましい馬こそが、そうした憧れを満たしてくれる対象となるのではないかと推察できます。いわばイケメン馬とは、「お父さん」と「ボーイフレンド」の橋渡しをしてくれる存在なのかもしれません。

 一方、日本の少女たちは同時期、ジャニーズなどの中性的な美少年アイドルや、線の細い男の子が登場する少女マンガ・BLに入れ込むのが一般的です。なぜ日本には体毛ボーボーで筋肉ボーンな男性性に憧れる少女が少ないのか。もしかしたら、男性の育児参加率の低さに原因があるのかもしれません。母親、祖母、幼児教育・保育従事者といった女性ばかりに取り巻かれて育つ日本の女児は、大人の男性から無条件の愛情を与えられるという機会をしばしば逸してしまいがちです。そのため異性に興味を抱く年代になっても男性性を忌避し、男の子に女性性を求める……あながちありえない話ではなさそうです。

 ところで、馬雑誌のコンテンツはコミックがメイン。イケメン馬写真以上に、馬との物語が重視されているようです。いったいどのような物語が好まれているのでしょうか。できればすべて取り寄せて中身を確認したいところですが、私の語学力と財力では難しいので、物語の類型を収集しているサイト「tvtropes」(https://tvtropes.org/pmwiki/pmwiki.php/Main/PonyTale)で調べてみます。同サイトによれば、少女と馬の物語には、以下のような共通点があるのだそうです。

  • ・環境にうまく順応できない少女が主人公。イギリス発の物語ではなくても、舞台はイギリスであることが多い。

  • ・ひょんなことから馬に出会い、馬術を通して成長していく。

  • ・ヒロインは馬のための努力はしても、女子力アップには無関心。化粧はせず、ドレスを着ることを厭う。

  • ・ヒロインは学校で男子の存在を意識することはない。

  • ・社交やデートにいそしむ級友たちとなじめず、学校に居心地の悪さを感じている。

  • ・ライバル女子騎手と争う競技会や自分を忠実に愛してくれた馬の喪失を経て成長し、トラウマを抱えた馬たちを癒す特別な女性となる。
  •  おそらくキーとなるのは、性的存在であろうとする自意識を持たない無垢なヒロイン像。女児がピンクやプリンセスにどっぷり浸かる4~7歳は、俗に「プリンセス期」と呼ばれます。この時期を過ぎると、女の子たちは家族・保育者・友達だけで完結していた狭い世界から、徐々に社会を意識するようになっていきます。女の子でありさえすればプリンセスになれると信じていた女の子たちは、性的存在として値踏みされる視線を感じはじめるのです。だからといって皆が皆、そうした視線に合わせた振る舞いができるようになるわけではなりません。他人の欲望に合わせて意識的に媚びることは、無垢であった自己像を傷つけます。親に大切に育てられた女の子ほど、この落差に苦しむであろうことは想像に難くありません。そこで性的存在ではなくても、愛情の相互作用が期待でき、自分という存在を受け入れてくれる馬というファンタジーが必要とされるのではないかと想像します。すべてを受け入れてくれる父性的な存在は、いつかは訣別しなくてはならないもの。馬を失った少女は、馬の弱さを受け入れる側となる。そうしたフィクションをいくつも読んでいくことで、現実へと踏み出す強さを身につけていくのでしょう。

     4~7歳の女の子が好むものは、世界的に共通しているように見えます。ハローキティもミッフィーもバービーも『マイリトルポニー』も、国境を越えて女児に愛されています。しかし社会を意識しはじめる年代の少女文化にはそれぞれの国の事情が反映され、先鋭化していくのが面白いところ。ところで最近、女子小学生向けマンガ冊子の付録にも「そのまんまの自分でモテたいなんて甘い!」「ちょっぴりおバカなフリで男子を落とせ!」といったフレーズが踊るようになってきたとか。もはや少女マンガの世界も安住の地ならず。そろそろ我が国でも、イケメン馬がさっそうと少女を救いに現れる頃合いかもしれません。

    ギークマム 21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア
    (オライリー・ジャパン)
    著者:Natania Barron、Kathy Ceceri、Corrina Lawson、Jenny Wiliams
    翻訳:星野 靖子、堀越 英美
    定価:2310円(本体2200円+税)
    A5 240頁
    ISBN 978-4-87311-636-5
    発売日:2013/10 Amazon

    interview with GING NANG BOYZ (Mamoru Murai) - ele-king

     銀杏BOYZから新しいアルバムの構想を聞いたのは2007年末のこと。しかしその制作は難航を極めた。あれから月日は流れ、いつしかメディアへの露出も減り、傍目にはバンドの存続すら危ぶまれるようになった2013年秋、突然ニューアルバム完成の報が入った。オリジナル・アルバム『光のなかに立っていてね』とライヴ・リミックス・アルバム『BEACH』の2枚同時リリース。
     ニュースはそれだけではなかった。すでにギターのチン中村とベースの安孫子真哉が脱退、さらにアルバム発売日をもってドラムの村井守も脱退するという(ちなみに今回の発売日となった1月15日は、村井の誕生日でもあり、2005年に銀杏BOYZが初めてリリースした2枚のアルバムの発売日でもある)。つまりアルバムの完成と引き替えに、銀杏BOYZはフロントマン・峯田和伸以外のメンバーを全員失った。
     この数年間、銀杏BOYZになにが起こっていたのだろうか。峯田と高校からの同級生で、前身バンドのGOING STEADY時代から音楽活動をともにしてきた村井に、彼がよく飲んでいる街・吉祥寺で会って話を聞いた。表情はずいぶん晴れやかだ。いつものおしゃべり好きな“村井くん”がそこにはいた。

    “愛してるってゆってよね”のイントロとかは「曇ったところから突き抜ける」っていうメモがあって、それを元にヴァージョンを20個ぐらい作ったかなー。


    銀杏BOYZ - 光のなかに立っていてね

    〈初回限定仕様〉 Tower 〈通常盤〉 Tower HMV


    銀杏BOYZ - BEACH

    Tower HMV

    村井:いやぁ~、(アルバムが)できましたよ!

    できましたね。ホント待ちましたよ(笑)。もしかしたら完成しないかもって頭によぎったことは?

    村井:ちょっとは……ありましたねぇ(笑)。

    いちばん危なかった時期は──?

    村井:アルバム収録曲のレコーディングが本格的にはじまったのが2009年で、2010年にはそれまで使っていた下北沢の〈トライトーン〉が使えなくなり、スタジオも変わったんですけど、実際にはそのずっと前から曲は録りはじめてたんですね。没テイクも入れると、スタートは2007年で。その2007年から2009年までの時期は、もう足下がおぼつかないというか、バンドとしてはふんづまりでしたね。

    具体的にはどんな状況だったんですか。

    村井:メンバー同士がシビアになりすぎちゃって。2005年にアルバムが出て、ツアー回るんですけど、そのツアーが尋常じゃなくて。それが終わった反動もあると思うんですけど、DVD(『僕たちは世界を変えることができない』)の編集があったり、峯田が本(『恋と退屈』)を出したり、あとオレもムック(『GING NANG SHOCK!』)の編集があったりで、それぞれちょっと違う方角を向いているような感覚になって。それをもう一回、同じ船に乗ろうって作ったのがシングルの「光」だったんです。でも、そこから「じゃあ、アルバムを……」ってなっても、わりとお互いシビアな感じでぶつかり合っちゃう、みたいな。その状況から抜け出せたのが、2010年ぐらいで。遠藤ミチロウさんのカヴァー・アルバム(『ロマンチスト~THE STALIN・遠藤ミチロウTribute Album~』)に参加して、さらに劇伴音楽の話も来て。

    三浦大輔作・演出の舞台『裏切りの街』ですね。

    村井:そう、どちらも依頼されてのことだからモードも変わるし、わりとまたみんな同じ方角を向けるようになってきたんです。しかも、劇伴のほうは打ち込みでやってみようってことになって。もともと打ち込みの曲は前から作ってみたくて、でもなかなか手が出せなかったんです。だから、ちょうどいいタイミングかもってことで、みんなで機材を買ってやってみたら、案外やれちゃった。で、やれたらやれたで、どんどん楽しくなり——。

    制作中のアルバムにも思いっきり影響して。

    村井:ホント楽しかったんですよね。あのキックの音ってこういう感じかなぁ? とか。それこそ、『サンレコ(サウンド&レコーディング・マガジン)』とか『ele-king』も読みましたよ。インタヴューが参考になるので。

    村井くんの場合、ドラムっていうパートの性格上、打ち込みが増えることで演奏の機会は減りそうですけど、そこは気になりませんでした?

    村井:そこは抵抗なかったですね。やっぱり普段から聴いてるのも打ち込みの曲が多かったし。それに銀杏BOYZの場合は生演奏かどうかは関係なくて、やっぱり“歌”なんですよね。歌を活かせたらいいわけで。ただ、ライヴどうすっかなぁっていうのは思いました。そしたら峯田が「ステージ上で立ってるだけでいいやぁ、お前うたも歌えないし」って(笑)。実際、東北ツアーでの“I DON'T WANNA DIE FOREVER”とかは、ステージの前に行って「ワーワー」やってました。けっこう出たがりですからね、オレ(笑)。

    アルバムを聴くと、「打ち込み」と同時に「ノイズ」の導入も顕著ですよね。こちらもかなり研究したんじゃないですか。ノイズ・コアのライブなんかも観にいってたみたいだし。

    村井:みんなもともと好きでしたからね。そう、NERVESKADEの来日公演があって、東京公演がちょうど震災の翌日だったんですよ。それで中止になっちゃって。翌3月13日に愛知県の岡崎BOPPERSでもライブがあるっていうから、あびちゃん(安孫子真哉/ベース)とクルマで観にいったんですよ。そしたら高速道路で上りのクルマはほとんどなくて、自衛隊の車両とばかりバンバンすれ違って。あれは忘れられないですねえ。そんなことやってるうちにあびちゃんもチンくん(チン中村/ギター)もオレもどんどん音作りにハマっていき、それを峯田が軌道修正して。

    逆に峯田くんは新しい音楽をまったく聴かないようにしていたみたいですね。

    村井:峯田がよく言っていたのが、「○○っぽいやつを作ってもしょうがない」ってことで。そりゃ、オレらがテクノ畑の人たちに対抗してもしょうがないわけで。オレらにしかできないものを作るべきだと。

    最終的に峯田くんが聴いて判断するわけですか?

    村井:うん、オレらは技術担当で、監督は峯田だから。峯田が判断してオッケーした音が銀杏BOYZになる。みんなで和気あいあいっていうバンドもいいと思うんですよ。でもオレらの場合は、ブレない峯田っていうのが絶対的な存在としている。そのぶんオレら3人はブレてもよくて、そうやって作ったものを最終的に峯田にジャッジしてもらうっていう。峯田んちにチボリってメーカーのステレオがあって、音がめちゃくちゃいいんですよ。今回はそのステレオを基準に音を作りました。ただ、そうやって「1曲、完成した!」ってなっても、別の曲を仕上げているうちに1年ぐらいして、「そういやあの曲のアレ、もうちょっとやれたんじゃねえの?」ってなって、またやり直すっていう(笑)。

    そこで1年経っちゃうのがおかしい(笑)。

    村井:もうね、時間の流れが、早い!

    一方で、“ぽあだむ”みたいにほとんど一発録りでいけた曲もあるわけですよね。しかも峯田くんに言われるまで気づかなかったんですけど、あの曲のドラム、生音なんですね?

    村井:そう、オレ叩いてるんですよ。“ぽあだむ”は3日間ぐらいでできましたね。


    “ぽあだむ”

    「ストーン・ローゼズが最初のイメージであった」って峯田くんは言ってましたね。

    村井:うんうん、聴いてましたね。3人で峯田がいないところでカヴァーしたりして。DVDも何回か見たんだけど、何回見てもわからない(笑)。

    そうやって峯田くんの最初のイメージをそれぞれが発展させるって感じですか?

    村井:そうですね。まず峯田がベーシックを作って、チンくんとあびちゃんとオレでさらに発展させます。それが峯田の思ってる最初のイメージを超えないとダメなんですよ。

    イメージは具体的なんですか?

    村井:具体的な曲もあれば、そうでない曲もある。たとえば“愛してるってゆってよね”のイントロとかは「曇ったところから突き抜ける」っていうメモがあって、それを元にヴァージョンを20個ぐらい作ったかなー。あびちゃんなんかはLogicってソフトが使えるようになったので、できることがどんどん増えるんですよ。極端な話、あびちゃんがオレに音を聴かせる時点で100パターンぐらい作ってくるんです。それをオレも一緒になって「これはいい、これは悪い」って絞ったものを峯田のところに持っていき、そこからまた峯田の意見を訊いて作りかえて……って、そりゃ時間かかるわ~(笑)。

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    当然さみしいですよ。ただ、どこかでいつか戻ってくるだろうっていうのもあったし、それ以上にアルバムの完成が見えてきたから、とにかくその進行を止めたくなかった。

    2011年の初夏、東北ツアー(〈スメルズ・ライク・ア・ヴァージン・ツアー〉)の頃にすでに村井くんはバンドを辞めようと思ったことがあったそうですね。

    村井:ええ、たまたまその時期だったっていうだけで、ツアーが関係しているわけじゃないんですけどね。あびちゃんが中心になって進めていたライヴ盤のほうが具体的に曲順も決定して、タイトルもいまとは違うんですけど決まり、それからスタジオ盤のほうも曲がほぼほぼカタチになって、両方とも着地点が見えてきたなってときに、ふと辞めることを考えたんです。それがたまたま東北ツアーの時期だったっていう。でも、その気持ちは自分の中でなかったことにした。気の迷いだと思って。

    その気持ちを他のメンバーに伝えることはなく、やがてチンくんがバンドを離れますね。

    村井:怪我でギターが弾けなくなってね。2012年の夏か。

    チンくんは精神的にも追い詰められていた?

    村井:それもあったと思います。ただ、そのことにオレは気づいてあげられなかったってことを最近すごく思うんですよ。チンくんとはよくふたりで飲みに行ったりもしたんですけど、飲み方が尋常じゃないときが何度かあって。思い詰めてたのかなぁ……って。

    それでも2007年から2009年にかけての時期よりは、バンドの状況はよかったわけですか。

    村井:うん、なんかもうトンネルは抜けたなっていうのはあった。ようやく足並みが揃ってきたと思ってたんだけど……いま思うと、たぶんチンくんはそうじゃなかったんですよね。

    その後、チンくんと話をしました?

    村井:最後に会ったのが2012年の秋かな。「他のメンバーやスタッフとは会えないけど、村井くんとは話したいわ~」って連絡がきて、吉祥寺の喫茶店で会って。で、顔見たらやっぱわかるんですよ。「ああ、もう続けていく気はないな」って。これがまだ一緒にやってた頃なら、「アルバムも、もうすぐできるからさ!」ってハッパをかけられたんだろうけど、そのときはもうバンドのことはほとんど話さずに、エロビデオの話とかでゲラゲラ笑って、30分ぐらいで別れましたね。峯田にも、「チンくんの顔見たら、やれる感じじゃなかったわー」って報告して。

    2013年の春に、今度はあびちゃんもバンドを離れますね。

    村井:あびちゃんは何年も前からたまに体調が悪くなるときがあって——。

    よく、霊に取り憑かれてるんじゃないかなんて冗談で言ってましたもんね。

    村井:そうなんですよ。でも、それがここにきて作業に参加できないぐらい体調が悪化して。蕁麻疹とか出ちゃうんですよ。で、しばらく家で休んでもらってたんだけど、その後もなかなかよくならない。喫茶店とかで会うんですけど、毎回、「もうちょっとしたらよくなるから……」って。で、あびちゃんも顔色を見ると、チンくんと一緒で、スイッチが切れちゃってる感じなんです。やっぱり、ずーっと集中して作業をしてきたので、ちょっと時間を置いたら、プッツリ切れちゃったんだろうなって。

    そうやってメンバーがひとり減り、ふたり減り……村井くんとしてはどういう心境だったんですか?

    村井:当然さみしいですよ。ただ、どこかでいつか戻ってくるだろうっていうのもあったし、それ以上にアルバムの完成が見えてきたから、とにかくその進行を止めたくなかった。だからチンくんが戻ってこれなくなったとき、峯田とあびちゃんに「(アルバムの制作を)進めよう」って話したのはオレだったし、あびちゃんの体調が悪くなったときにも、やっぱり峯田に「進めよう」ってメールして。オレはとにかくアルバムを出すことが目標になってたから。


    村井がアルバムのレコーディングで使っていたノート。その混沌とした筆致から制作の難航ぶりがうかがえる

    銀杏BOYZというバンドを外から見ていると、村井くんはムードメーカーというか、メンバー間の調整役を担う局面もあるのかなって思ってたんですけど。

    村井:いや、それぞれ峯田との関係性もありつつ、峯田以外の3人でもわりとシビアにぶつかることが多かったですね。なので、オレがそれぞれの間を取り持って、って感じではなかったです。

    どういうところでぶつかるんですか?

    村井:たとえば事務所であびちゃんが泊まり込んで作業をしていたとして、オレが横で「この音、あまり面白くないわー」って言っちゃうんですよ。あびちゃんが数日間かけて作った音なのに。あびちゃんからすると、「なんで打ち込みができない村井さんにそんなこと言われなきゃならないんですか?」って。

    それは言い方の問題?

    村井:そうです。そんなレベルですよ、オレらが揉めるのって(苦笑)。ま、オレがパットを使って音をつけて、あびちゃんはあびちゃんでLogicで音を作って、そこでディスカッションがあったりもするわけですけど、でも、ぶつかり合ったりするのはもっと些細な言葉遣いとかなんですよ。

    まあ、ずっと顔を合わせてますしね。

    村井:だって……ねぇ? 恋人や夫婦だってそうじゃないですか。最初は楽しかったのが、だんだん相手のイヤな部分も見えてきて。一個の音を作るにしても意地の張り合いなのよ、全員が。それはいい悪いの話じゃなくて、意地張っちゃうんですよ。それで進まなくなる。そのうちゴールも見えなくなって、「オレらどこに立ってるんだろう?」って。それはみんなキツかったと思います。

    生活の大半を事務所での作業に費やしている感じだったんですか?

    村井:事務所にいる時間はあびちゃんがいちばん長かったですね。オレはちょくちょく帰ってたし、チンくんも自宅のProtoolsで音を作ってたから。だから、夕方ぐらいにフラッと事務所に来て、「じゃあ、あびちゃん聴かせてもらっていい? ……うん~、なんか違うねこれは」って、そりゃムカつきますよね(笑)。

    峯田くん以外は家庭もありますよね。

    村井:チンくんとあびちゃんは子どもいるし。でも、オレはそういう面で生活が厳しいと思ったことは一度もない。チンくんとあびちゃんからも、そういう話は一度も聞いたことがないですね。逆に峯田は言いますけどね。「お前らは奥さんがいる。その違いはデカい」って。でも、奥さんがいても、彼女がいても、音楽を作るときにそこは関係ないと思ってましたね、オレは。ま、ウチの奥さんは「どうぞ好きなことやってください」っていう人なので、あまり干渉もされないし。で、また峯田が言うんですよ、「こんな生活してたら、お前が知らないだけで、浮気されてるに決まってっから」って(笑)。

    はははは! ちなみに村井くんは奥さんには脱退することは相談したんですか?

    村井:しましたね。「もう銀杏辞めて、違うことやるわ~」って。そしたら「辞めてもいいけど、次もやりたい仕事をやってね」って言われました。自由にさせてくれるのはありがたいですよ。

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    峯田にしてみたら、オレらだったらイチから説明しなくても感覚はわかるから、そこは早いんだと思う。またオレらも、やれねえクセに「やれるやれる、やろう」って言っちゃう(笑)。

    アルバムが完成した達成感によって、バンドを脱退したいって気持ちが吹き飛ぶことはなかったですか?

    村井:うん。すごくいいアルバムができたっていう達成感はあっても、だから続けていこうっていうふうにはならなかったですね。マスタリングが終わったってときにはもう、「これで辞めよう」っていう気持ちが止められなくなって、すぐに峯田に言おうと。でもすぐには言えなくて、言うか言わないかで1ヵ月半ぐらい悩みました。

    それは峯田くんの気持ちを考えて?

    村井:ええ、そりゃあ、考えますよ! ずーっと一緒にやってきたんだもん。それで別れようって話ですからね。“ぽあだむ”のミュージック・ヴィデオの撮影もあったりしながら、1ヵ月半ぐらい考えて、でもやっぱり気持ちは変わらなかったので、11月4日に峯田に「バンドを抜けたい」ってメールしたんです。そしたら「すぐ会って話そう」ってことになって。峯田はビックリしてましたね。チンくんやあびちゃんがいなくなったときに、それでもアルバム作業を続けようって言ってたオレが、まさかそのアルバムが完成したタイミングで「辞めたい」って言い出すとは思わなかったって。峯田とオレとあと新しいメンバーを入れて、新生銀杏BOYZでやれたらいちばんいいって。だから考え直しなよって。

    11月15日にチンくんとあびちゃんの脱退が発表されますね。

    村井:そう、その時点ではまだオレのことは決着がついてなくて。ただ、やっぱりオレも気持ちが変わらないから、改めて話したら、今度は峯田も受け入れてくれた。それで12月22日のUSTREAMでの脱退発表になったんです。

    辞めたあとのことは考えてます?

    村井:まーったくなんも考えてない! いま(注:取材日は昨年12月27日)はまだ“ぽあだむ”のミュージック・ヴィデオの編集があったり、わりと目の前にやることがあるんだけど、ひと段落したら一気にリバウンドがきそう(笑)。

    ミュージック・ヴィデオといえば、“東京終曲”もなかなかヘヴィで面白かったです。

    村井:あっちは峯田が監督・脚本・主演で、オレは制作……っていうか完全に雑用(笑)。テント組んだり、機材借りてきたり、ケータリング用意したり。


    “東京終曲”

    ポツドールの米村(亮太朗)くんややっぱりポツドールの舞台でおなじみの古澤(裕介)くんも出てますけど、以前、村井くんが古澤くんの人となりを絶賛してたのが印象に残ってるんですよね。

    村井:なんか話が合うんですよー、古澤くんは。米村さんもすごく気が合いますね。

    彼らは彼らで演劇界の銀杏BOYZというか、ちょっと通じる雰囲気がありますよね。

    村井:「なんでもいいから面白いことやりたいんすよ~」って言ってて、オレらもそうなんですよね。ただ過剰にやりすぎちゃうっていう。

    やっぱりそのへん過剰だって自覚はあるんですか?

    村井:ある(笑)。いい作品を作るためなら、いつからいつまでとかそういう時間感覚がなくなっちゃいますからね。そういう意味ではほかの人には頼めないんです。で、結果的に全部、自分たちでやるっていう。オレらだけなら時間を気にせず、納得いくまでやれますからね。

    また、“ぽあだむ”のミュージック・ヴィデオのほうはすごい数の女の子が出演してますよね。

    村井:投げキッスの素材が、撮影したものとバンドのHPで募集して送ってもらったものを合わせると1400人分ぐらいあるのかな。編集がもう大変ですよ。使えるのはひとり0.5秒とか1秒とかですけど、それぞれ素材は3分ぐらいあって、その中のいちばんキラキラしている部分をチョイスするわけですからね。仮編集だけでもとんでもなく時間かかってます。最終的には1283人、入れました(笑)。

    その作業を自分たちでやるわけですよね。

    村井:そっちのほうが早いから。いや、でも機材の使い方をいちいち覚えたりして……けっきょく時間はかかってるか(笑)。ただ峯田にしてみたら、オレらだったらイチから説明しなくても感覚はわかるから、そこは早いんだと思う。またオレらも、やれねえクセに「やれるやれる、やろう」って言っちゃう(笑)。

    『僕たちは世界を変えることができない』の編集のときも1000本以上ある素材DVテープのシーンをあびちゃんとチンくんがノートに全部書き出したりしてましたもんねえ。ハードディスクにキャプチャした映像データが消えた! とか言って大騒ぎしたりして(笑)。

    村井:「パソコン、落ちた~!」とかね(笑)。それを何回も繰り返して。すごいことになってましたよね。でも、やっぱり楽しいからねぇ。やりたがりなんでしょうね、みんな。いや~、でも“ぽあだむ”は女の子の撮影ができたから楽しかった(笑)。カメラ持つと、オレもキャラ変わりますからね! 一日中撮影してると、最後は慣れてきて、「ちょっと耳にかけましょうか」なんて言いながら髪を触ったりして(笑)。

    長澤まさみさんもいいですね。あの撮影も村井くん?

    村井:いや、あれは峯田!

    村井は髪触るから危ないって(笑)。

    村井:長澤さんにそんなことするわけないじゃないですか! でも撮影はホント面白かったっすよ~(笑)。

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    やっぱり辞めるって言ったら、「村井おつかれ」って言われて、それから「オレはバンド続けていくよ」って。それを聞いたときに救われたと思いましたね。「オレたちが作ってきたことを、ここで終わらせない」っていう言い方も峯田はしていて。

    最終的に辞める意志を伝えたとき、峯田くんから「オレは銀杏BOYZ続けるよ」って言われたそうですけど、どんなことを思いました?

    村井:さみしいっていうよりも、救われたって感じですね。最初、峯田は「お前が辞めるなら、オレももう音楽辞めるわ」って言ってて、オレとしてはその一言が重くのしかかったんですよ。でも、オレも自分の気持ちに嘘ついてまでバンドはできないから、やっぱり辞めるって言ったら、「村井おつかれ」って言われて、それから「オレはバンド続けていくよ」って。それを聞いたときに救われたと思いましたね。「オレたちが作ってきたことを、ここで終わらせない」っていう言い方も峯田はしていて。「もっと上手いドラムいれるわー」とか(笑)。

    村井くんはそれこそ山形の高校時代から、上京、GOING STEADY、銀杏BOYZ……と、ずっと“峯田和伸”っていう人を見てきたわけですけど、峯田くんは変わりましたか?

    村井:いや、オレの周りでいちばん変わってない人ですね。高校のときは昼休みとかひとりでウォークマンを聴いてるような感じだったから、バンドを組んでみんなの前で演奏しはじめたときはこんなに前に出られる人なんだっていう、そういう状況の変化はありましたけど。基本的な部分はなにも変わってないですよ。まず中心に音楽があって、それで友だちを喜ばせるのが好きな人なんです。オレが通ってた専門学校のグチとか、自分のモラトリアムとかそういうモヤモヤした話をすると、かならずその晩、留守電が入っていて、それが曲だったりするんです。そうやっていつもオレを喜ばせてくれた。そこはいまも変わってないです。バンド・メンバーも喜ばせるし、さらにもっともっと大勢の人も喜ばせる。だからバンドを辞めてまた元の友だちに戻る感じですよね。いままでずっと峯田の背中を見てきたから、これからはいちリスナーとして銀杏BOYZを聴いてみたい。

    でも、まだあの4人以外の銀杏BOYZっていうのは想像できないんですよね。

    村井:おそらくアルバムも1年に1枚出ますよ。峯田は上手い人を入れたいって言ってたから、「こんなラクなんだね、バンドって!」ってことになると思います(笑)。

    つくづく過剰なバンドだと思うんですよ。

    村井:やってるほうは「こういうもんだろう」と思ってやってますからねえ。ただ一時期、チンくんとあびちゃんが楽器をケースに入れず裸の状態で持って24時間生活しているときがあったじゃないですか。

    ありましたねえ。2007年頃、一緒に大阪行ったときも肌身離さず提げてましたね。

    村井:あの頃、チンくんと練習のあと一緒に電車に乗ってたら、酔っ払いのおじさんがいたんですね。そしたらチンくんが「あの人、酔っぱらって電車乗るなんて迷惑だよね!」ってギターを弾きながら言うんですけど、お前のほうがよっぽど迷惑だろ! って(笑)。

    よく肛門の匂いを嗅ぎ合ったりするようなヒドい罰ゲームとかやってましたけど、ああいうノリってその後もずっと続いてたんですか?

    村井:続いてましたよ(笑)。2010年頃かな、あびちゃんと飲んでるときに「“カレー味のウンコ”と“ウンコ味のカレー”どっちなら食えるか?」って話で意見が分かれて、酔っ払ったあびちゃんが、「これ究極の問題ですよ。村井さん、そこまで言うんなら、ウンコ食えるんすか?」って。そこも意地の張り合いだから(笑)、「いや、食えるっしょ」ってなって。それから何日かしてスタジオであびちゃんとリズム隊の練習してるときに、いい感じでハイになってきたので、「あびちゃん、オレ、今日だったらウンコ食えるよ」って。で、あびちゃんも1時間ぐらい歩いたらウンコ出るって言うから待ってたら、「いまウンコ出ます!」「やれやれー!」つって、紙皿にウンコして。ま、食うよね。言ったからには。

    食べたんだ。

    村井:箸でつまんで(笑)。

    もはや“カレー味”、関係ないじゃないですか(笑)。

    村井:たしかにそうだ! そしたら、それを見ていたあびちゃんが吐きながら、「こういう話はもう他でしないでほしい。オレが犯された感じになるんで」って。あびちゃんの方がショック受けちゃって(笑)。

    はははは! かつてはよくビデオカメラを回してましたけど、そういうのは?

    村井:ウンコ食ってるのは、木本(健太/映像ディレクター)がたまたま事務所にいたので撮ってますね。「ムリっす、止めます」とか言って(笑)。この話、いろんな人に話してるんですけど、前にミノケン(箕浦建太郎/画家)にもしたんですよ。そしたらミノケン、マジなスイッチが入っちゃって、「そういうの面白いと思って話してるだろうけど、そんなことしてるからアルバム進まねぇんだよ!」って、真剣な顔で言われた(笑)。

    ミノケンは毎日、絵を描いてますからね。

    村井:「村井くんって、なんかそういうのも活動のひとつみたいな感じで言うじゃん? だから出ねぇんだよ」って。

    正論ですね(笑)。『光のなかに立っていてね』のデザインにはこれまでもずっと関わってき川島小鳥くんとミノケンの作品が使われてますけど、彼らの仕事としても一段階ステージが上がってるような印象を受けました。

    村井:この何年間かで、みんなも動いてるのを感じましたねぇ~。それでまた一緒にできるんだから嬉しいですよ。

    けいくん(坂脇慶/デザイナー)の力も大きいですね。

    村井:峯田とすごく気が合うっていうか。ミュージック・ヴィデオのテロップのフォントまで関わってくれてましたからね。

    『光のなかに立っていてね』はパッケージまで含めて、“いまの時代”っていうよりはもっとタイムレスな名盤の薫りがするんですよね。

    村井:ただただもうメンバーと向き合い、音と向き合って作ったのがこれで、時代性を意識してっていうのはなかったですからね。暗い洞窟のなかで4人でずっと作ってきて、最後に完成したアルバムを聴いてたら、そりゃいろいろありましたけど、そういういろいろあったことは全部忘れて、音だけがすうっと入ってきたんです。「いいアルバムだな」って思えて。だから、みんな……っていうか“あなた”っていう言い方をしますけど、あなたに聴いてもらいたくて曲を作っていた。それだけがすべてなんですよ。

    峯田くんはアルバムができてからあびちゃんともチンくんとも連絡をとってないって言ってましたけど、村井くんも?

    村井:とってないですね。だから打ち上げとかもないんですよね。

    いつかしたい?

    村井:うん、できる気がしますね。それでもう一回ウンコ食う! ぜってえ、その話にはなると思うから(笑)。レコーディングして曲ができたときはもう、「オレら無敵だ!」っていうのがすごくあった。その「無敵だ!」っていう念がアルバムには詰まってます。

    銀杏BOYZに影響を受けてバンドをはじめたとか、そういう若い人たちに会ったりしませんか?

    村井:ちょうど岡崎にNERVESKADEを観にいったときに、愛知ってわりとグラインドとかハードコアが強いんですけど、革ジャンにモヒカンみたいな子がずっとこっちを睨んでて、歩いてきたから「うわ、いびられんるじゃねぇかこれ」って思ったら、「銀杏BOYZ、大好きなんです。銀杏の影響でいまグラインドやってます」って。びっくりしましたけどね。そういう声はちょくちょく聞きますね。

    脱退が発表されてから、ミュージシャンとして声が掛かったりは?

    村井:そんなのあると思います? 『リズム&ドラム・マガジン』からだって、一度も話がきたことないですよ(笑)。チンくんとあびちゃんが抜けるって発表されたとき、ネットに「あれ、村井が残ってどうすんの?」ってコメントがついてましたもん。ナメられてますわ~(笑)。

    新しい人生がはじまるワクワク感はありますか。

    村井:それはある! すっごいある。ずっと音楽聴いてなかったのが、上京して峯田とライヴに行くようになり、でバンドをはじめてっていう、そのノリがここまで続いて。次もノリではじめたことがこんなふうに続くのかもなっていう根拠のない自信があります。峯田には「そんな社会は甘くないぞ」って言われてますけど。「なにより音楽やってないお前のこと、奥さんは嫌いだと思うよ」って。ヒドいもんですよ(笑)。

    ホントおつかれさまでした。今後の村井くんの動きも楽しみです。

    村井:いや~、ホントありがとうございました!

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