バンドは効率悪いなーとは思いますけどね。ぜんぜん、自分たちのお金になんないし。機材だって、ライヴハウスでやるんならいいけど基本的にはすごくかさばる。制作費もかさむ。でも、入ってくるお金は4等分。(夏目)
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とにかくスカッとしないことだらけだ。現在、2013年日本における、もっともまっとうな気分があるとしたら、多分、こんな具合じゃないのかな。「いやー、どうしたもんかなー、正直わかんねーなー、いや、まいったなー」。正直な話。だが、そんな状態が長く続きすぎたりすると、「これこそが解答だ!」と思わず胸を高まらせてくれるような絶対的な表現が欲しくなってしまうもの。そんなもの、ありゃしないのにね。いや、わかってるんですよ。でもね。
この『たからじま』という作品は、ダーティ・プロジェクターズに対する日本からの解答であり、ある意味、本家を凌駕してしまってると言っていい。と同時に、シャムキャッツというバンドが喜ばしき発展途上の過程にあることを示したアルバムだ。いたるところ、きらめく可能性の宝庫であり、「決定的な一言」はない――勿論、いい意味で。なぜなら、ここにあるのは、90年代ペイヴメントに端を発する、「自分自身が一瞬でも感じたことのある確信をエモーショナルに断言することは出来ない」という、ポストモダンな感性だからだ。勿論、こいつは危険といえば危険。そいつをこじらせてしまった場合、何も出来なくなってしまうからね。バートルビーよろしく一言も発することが出来なくなってしまう場合だってある。俺みたいに。
だが、シャムキャッツの『たからじま』は、そうした下らない現代的な病いに対するリアクションとしては最良のひとつだ。間違いなく。何よりもグルーヴと呼んでいいものかどうか躊躇せずにはいられない、ぐらぐらと揺れまくるバンド・アンサンブルが素晴らしい。絶対的な「たったひとつの正解」を必死に模索しながら、躊躇に躊躇を重ねて、だが、ようやく辿り着いた「いま」に着地している。これでもない、あれでもない、そうか、これか、取りあえずこれか。それゆえ、時には歯切れが良くない場合だってある。だって、確信なんてないんだもん。だが、だからこそリアルだ、とさえ思う。
一聴する限りでは、この42分51秒の時間軸には穏やかな空気が流れてはいるが、その底流にはどうにも隠しきれない苛立ちがある。思わず過剰にシリアスになったり、過剰にエモーショナルになってしまいそうな自身に対する照れやはぐらかしがあり、思わず取りあえずの正しさを主張してしまいそうな自分自身に対する戒めがある。だが、と同時にここには、そんな所在なさげな時代の感性を笑い飛ばせるだけの知性とユーモアがあって、そんな風に時代に足をからめとられずにはいられない不甲斐なさをそのままサウンドに全力で叩きつけるだけの無鉄砲さがある。そして、何よりも、時代とじっくりとのんびりと対峙していこうという、肝が据わったところがある。あまりに見事だと、溜飲を下げずにはいられない。
なので、迷わず彼らに一票を投じたい。去年は生まれて初めて選挙に行くなんて、それほど本意ではないこともあったことだし。そして、「あんたもこいつらに賭けてみろよ」と無責任に言い放ちたい。本当の本当のことを言えば、そうは言えないのだけども、そう言いたくて言いたくてたまらない――こんな風に、どうにも面倒臭い気分にさせてしまう何かが、この『たからじま』にはある。それはきっと、とても素晴らしいことだ。
ポップとは、何かしらのアイデアの提示であって、問いかけであって、正解ではない。焦んなよ。気楽に行こうぜ。なんだかやれそう、な気がしないでもない。
■いま、これだけ音楽産業が変化しているなかで、いわゆるヒッツヴィル的な音楽ーーソングライターがいて、プロデューサーがいて、シンガーがいて、ミュージシャンがいて、っていうかたちで戦略的なポップ・マテリアルを作り出していくっていうスタイルは、産業的なモチヴェーションとしてすごく理解できる。だけど、そうじゃなくて、わざわざバンドを結成して、自らの表現というものをやる――ただ人に聴かせたいってだけじゃなくて、お金にもしなきゃならない――モチヴェーションって、あんまり想像つかないんだよね。いきなり失礼な話なんだけど(笑)。
(一同笑)
夏目:バンドは効率悪いなーとは思いますけどね。ぜんぜん、自分たちのお金になんないし。機材だって、ライヴハウスでやるんならいいけど基本的にはすごくかさばる。制作費もかさむ。でも、入ってくるお金は4等分。ロスがでかいですよね。食えないすよね、全然(笑)。
■しかも、ヒッツヴィル音楽に比べて、作れるものも限られてくるでしょ。いい意味でも悪い意味でも、音楽的にやれることも限られてる。
菅原:あんま思わないかな......はじまりが4人だったから、それがあたりまえというか。逆にひとりになったら、ちょっとさびしくなっちゃうかな。
藤村:おもしろくないでしょ。
大塚:むしろ4人の方が広がるし、おもしろくなるってみんな思ってるんじゃないかな。
■それは音楽的にということ? 音楽以外のおもしろさもある?
夏目:あると思います。でも、そのへんは重なる部分もあって、コミュニケーションとしてのおもしろさと、音楽的なおもしろさとはほとんど同じかな。曲作りでも、スタジオで誰かがなんか変なことをやりだしたりすると、「あ、ちょっとそれ続けてやってみてよ」、「いや、やっぱりボツ」とかってやりとりが生まれていくんですけど、そういうことの積み重ねがおもしろいですね。曲作りをひとりでコンプリートすることはできると思うんですけど、それだとおもしろくないんですよね。面倒くさいし。
菅原:見通しがついちゃうし。
夏目:みんなに(曲作りを)放り投げていったほうがいいかなって。
■実際にはシャムキャッツのアンサンブルって、時おり、「これ、アンサンブルとして成り立ってるのかな?」っていうムチャなところもがあるじゃない。テンプレートになってるようなスタイル化されたアンサンブルじゃなくて、「いや、それ、ちょっと無理があるんじゃないかな?」みたいなさ(笑)。
(一同笑)
いちばん楽しいものを選び取ってるんだよな? たぶん。(夏目)
うん。それをやめないわけだからね。(菅原)
■でも、それは、一般的なバンド・アンサンブルというのを理解していないとか、演奏力が追いついていってないとかってことではなくて、「あえて選び取っている」んだよね?
夏目:そうですね(笑)。いちばん楽しいものを選び取ってるんだよな? たぶん。
菅原:うん。それをやめないわけだからね。
大塚:夏目はわからないけど、他の3人は「自分たちの望むテイスト」みたいなものをそんなには持ってなくて、「何か望まないことが起きたらいいな」って思ってるかな。「自分たちの想像よりちょっと上のものができたら楽しいな」って。それが「アンサンブルじゃないアンサンブル」ってやつになってるのかもしれない。
菅原:「これは普通だからやめとこう」ってふうに避けてる作業っていうのはあるかもしれないよね、4人で合わせるなかで。まあ、でも基本的にできないんで。俺ら。ちゃんとできないっていう、単純に技術の問題なんですけど(笑)。
夏目:俺ら、最初から目標にしてるようなものってないんですよ。こうしたいって目指してるものの像がないから、軌道からズレてるって感覚もないですね。
■ただ大方の場合、人って何かをはじめるときに、ロールモデルとするものがあったりするじゃないですか。でも、シャムキャッツの場合、バンドとして、アンサンブルとして、あるいは、楽曲の仕上がりとしてのロールモデルーーそういうものは持たないようにしてるの?
藤村:そういうのは複合的なものだよね。
夏目:うん。ひとつの曲に対して、自分たちの知ってる3~4バンドをミックスしたモンスターみたいなものを仮定して、それを目指していくって感じかな。
藤村:うん、そう。そういうモンスターみたいなものを作りたい。
菅原:でも、こういう意見の共有だって、大して機能してなかったりするんですよ。ふたりがこうして話している反対側で、「俺ら、わかんないねー」って言ってたりすることもあるし、そういうところがおもしろさかな。完全に4人の意見が一致して「これだ!」って言いながら作った曲はないね。
夏目:ないね。
藤村:真似るのがうまいミュージシャンは多いなって思います。ロールモデルがあって、それにかなり近い音を出すことができる。でも僕らはそういうことができない。
夏目:ああ、真似るのがうまくないね。真似られない。どう考えても、ストロークスみたいなのができないんですよ!
■えっ、そんなの難しくないじゃん! ストロークスとかって、それぞれの楽器の役割がすごくはっきりしてるバンドじゃない。
夏目:うん、難しくないはずなんですけど......いや、どうやったらいいかっていうのはもう、わかってるんですよ。でもバンドとしてやったときに、たぶんできないですね。ロック・バンドをやりたいけど、やるならば何かに似たくないっていう思いが、バンドをはじめた当初はすごく強くて。だから、当時はほんとにわけのわからない曲ばっかりで、最近やっと「らしく」なってきたって感じですよ。ずっと「すべての音楽に対してカウンターたり得る音楽って何だろう?」って思ってたけど、それだと音楽にならない。でも音楽が好きなわけだからそれっぽいものができてくる。それで、「ああ、“ぽい”ものが......バンドっぽいものができてしまったなあ」とかって悩みながら進んできたバンドなんですよね。でも、やっと踏ん切りがついて、「こういう感じでいいかな」っていうのが最近はある。
■というのが、まさにこのアルバム、ってことかな?
夏目:そうですね。
[[SplitPage]]ずっと「すべての音楽に対してカウンターたり得る音楽って何だろう?」って思ってたけど、それだと音楽にならない。でも音楽が好きなわけだからそれっぽいものができてくる。それで、「ああ、“ぽい”ものが......バンドっぽいものができてしまったなあ」とかって悩みながら進んできたバンドなんですよね。(夏目)
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■それはわかりやすいね(笑)。じゃあ、教えて下さい。そもそもいちばん最初にあったっていう、「何ものにもなりたくない」「いまあるすべてのもののカウンターでいたい」っていうアティテュードはどこから出てきたの? そう思う人ももちろんいるけど、そう思わない人のほうが多いし、そう思う人にはそれなりの理由があると思う。それは何?
夏目:何なんだろうな......。
藤村:それは幼少時代からじゃないかな。
菅原:うん。幼少時代からそうでしたよ。なんだっけ、「君臨すれども統治せず」って夏目はよく言われてたじゃん(笑)。何かしらコミュニティがあれば必ずそこの長(おさ)になっちゃうんですよ。生徒会長とか、バレー部の部長とか。でもなんか、統治しない。なんなんだろうね? とりあえず一番になりたい、とか、モテたいとか?
夏目:「モテたい」はあんまりないかなー。うーん、どうだろう、そうじゃないとおもしろくないというか。いまだにすごく覚えてるのが、小学生のときにビートルズを聴いて、「すごいヘンテコだな」って思ったことですね。小学4~5年で、自分もまわりも、ミスチルとかスピッツとか奥田民生とか聴いてた頃ですけど、家にあったビートルズの編集盤を聴いて、「こんなにヘンテコなものが世界でいちばん有名なのか!」って思いました。絵がもともと好きで、よく見たりしてたんですが、絵の世界だとピカソとか、ゴッホとかもっとも不思議なものがいちばん有名だったりはするじゃないですか。けど、日本の音楽ってそういうことじゃない。「おもしろくないなー」って感じてました。だから、「何か突出した、曲がった部分や変な部分がないとオリジナルとは言えない」という、強迫観念のようなものが強いんですよね。
■じゃあ、ビートルズに関しては、サウンドうんぬんではなくて、アティテュードとして、ポジショニングとして、スタンスとして、最初のロールモデルではあったわけだ。
藤村:かなりあったでしょ。
■ただビートルズはとても幸福なバンドでもあって、活動が61~62年から69年まででしょ? 社会的な発展や変化もここ100年ではもっとも劇的だった時代。なおかつ、音楽においてもサウンドの進化、録音技術の進化、メディアの変化と、いろんな変化の渦中にあった時代なわけで、「変わること」にいちばん価値があったんだよね。ただ、2012年のいまは、もう出揃ってしまってるでしょ? 「新しい」という言葉はあまりいい意味では使われなかったりもするよね。そんな時代に新しさを標榜するのはどうなんだと思います?
夏目:「まだあるんじゃないかな」って気持ちがちょっとあるんですよね。「まだ出揃ってないぞ」っていう気がしてる。それを探してる途中ですかね。あと7枚くらいアルバム出さなきゃだめかもしれないけど(笑)。
■じゃあ、その目的地というのは? こうしたら到達できたっていうような進化のベクトルはどういうものなの? 完成度ではないわけだよね?
夏目:どうなんだろうねえ。
藤村:考えたことがないね。
夏目:これまであまりストーリー性とか、脈絡を気にせずにアルバムを作ってきたんですけど、ちょっとそのあたりを整頓したアルバムを作りたいなという気にはなってきました。そうすれば到達点がどこかということは見えてくるかなと思いますね。こういうアンサンブル、こういうバンド感、こういう歌詞の世界が作れましたという結果を見えるかたちにできたらいいなという気持ちがあります。
■では、そういうものの考え方、ものの見方、ものの進め方を、同じようにしているだろうアーティストやバンドは誰かいます? いま現在で。
夏目:古いものを崩して新しくしてるってことでは、ダーティ・プロジェクターズの3枚前くらいからのアルバムは、「あー、俺もこういうことやりたかったなー」とは思いました。「でも頭良さそうだし、無理かなー」とか(笑)。もうちょっと売れる感じの方がいいんだよ、俺ら、きっと(笑)。だから、「もっとブラーな感じのダーティ・プロジェクターズ」とか。あ、それやっちゃおうか。
■(笑)いま話してくれたみたいなバンド組織論にしてもそうだけど、どんなものを作るのかってことに対して、すごく相対的な視線があるってことだよね。絶対的なイメージがあるわけじゃなくて、そのときどきの判断がある。「世の中が真っ黒になったから赤く染まってみる」とかさ。そういうジャッジの積み重ねってこと?
夏目:そうかもしれないですね。確かなのはこの4人でやるってことだけかもしんない。4人の判断だけですべてを決めるっていうルールだけははっきりあるかもしれないです。
菅原:4人そろって音出すと全然違うよね。
小学4~5年で、自分もまわりも、ミスチルとかスピッツとか奥田民生とか聴いてた頃ですけど、家にあったビートルズの編集盤を聴いて、「こんなにヘンテコなものが世界でいちばん有名なのか!」って思いました。(夏目)
■相対的にそのときどきの判断で物事を決めていって、テンプレ的なものから逃れていくっていうのは、どういうことなんだろう? 何を嫌がっていて何を求めているのか......。
夏目:うーん、感動しないですもん。そのテンプレ的なやつっていうのは。
■じゃあ、「今ある360度すべてに対するカウンターだ」というのは確かだと。
夏目:そこに出発点があるのは確かです。だって、すっごくヘコむんですよ。絶対に何かっぽくはなってしまうから。「ああ、○○っぽいとか言われるんだろうなあ」とか予想がつくし、そうなると「ああ、何ものにもなれてないわ」って、ほんとにヘコむんです。
菅原:4人でいることの4人らしさがなくなったりするといやかな、俺は。
藤村:新しさの種類も、この4人っていう絶対的なものがあった上での新しさというか。ただふつうに斬新だというだけの作品に、ヒューマニティを感じなかったりするけど、そういう「冷たい新しさ」みたいなものにはなりたくないです。
菅原:そういうのいちばんムカつくね。
■じゃあ、例えば、アニマル・コレクティヴのアルバムって、1枚ごとにサウンドが違うじゃない? ただ、「今回はこれです」っていうディレクションが明確だよね。それぞれのアルバムが、どういうアイディア、サウンド、機材、メンバーの関係性のなかで作られたものかがよくわかる。で、シャムキャッツの場合、1枚目に関して言えば、そういった統一感があったと思う。でも、今回はやらなかったよね?
夏目:そう、今回はやらなかったんですよ。
■それっていうのは、現時点でのバンドの考え方が、「ひとつのサウンドでひとつのアルバムを作る」ということではなくて、「1曲ごとにカジュアルな実験をしていく」っていうことにあったということ?
夏目:今回は完全にそうでしたね。あと、「こうなったらまとまるな」っていうアイディアがあんまりなかったので。期間も短かったですしね。次はもっと、はっきりしたディレクションを持ってやりたいなという気持ちはあります。まあ、わかんないですけどね(笑)。
菅原:計画性はないね。
■では、この『たからじま』というアルバムを作るにあたって、無意識的にでもいいので、不特定多数の人間の心をつかむためにこんな風にフォーカスした、という部分があれば教えてください。
大塚:歌を聴かせるアンサンブルですかね。いいメロディでいい歌ができたから、それをちゃんと届けられるようにって。
夏目:僕の場合、そこはプロデューサーの古里(おさむ)さんに投げちゃったかもしれないです。今回はとくに、そういうプロジェクトとして動いたんですよね、最初のミーティングから。ある程度いろいろなことができるようになってるけど、まだまだどんな引き出しがあるかわからないから、「とにかく曲ができたら投げてみてよ」っていう感じだったんですよ、古里さんは。なので、そのへんのジャッジはけっこう任せちゃいましたね。
[[SplitPage]]4人でいることの4人らしさがなくなったりするといやかな、俺は。(菅原)
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■なるほど。じゃあ、できあがった曲を4人それぞれ客観的に見てみた上で、こういう質問に答えてください。このアルバムを、自分のCD棚にテイストで分けて入れるとしたら、両側に入るのは何と何?
メンバー一同:ええー!
夏目:うわー、もうさっき言っちゃったような気がするな。
藤村:ひとつは浮かびましたけどね。『名前をつけてやる』。
■うん、スピッツの2ndアルバム。名盤ですね。
藤村:あのアルバムのフィーリングに近いものはあるんじゃないかと思います。歌詞にも変態的なものがあるかなと。そういうところが似ているかなと。
菅原:俺はやっぱり「2012年にCD屋に行って、買って......」って想像していくと、たぶん新譜になると思うので、そのなかで好きだったものですかね。だから、ダーティ・プロジェクターズの『スウィング・ロー・マゼラン』と、うーん、やっぱセロ(cero)とかになるかな。『マイ・ロスト・シティ』。
藤村:俺はセロで言うと1枚めかな。
夏目:セロ、かぶったらおもしろくないじゃん!(笑)。
菅原:俺はやっぱり、日本という場所でいっしょに生きていて、尊敬できる存在はセロかなあって。自分がシャムキャッツじゃなかったとしたら、チェックしてCD屋さんで買う2枚っていったら......昆虫キッズって言ったらかわいそうかなあ?
■いや、大丈夫でしょ。
藤村:大丈夫。
夏目:大丈夫。
ただふつうに斬新だというだけの作品に、ヒューマニティを感じなかったりするけど、そういう「冷たい新しさ」みたいなものにはなりたくないです。(藤村)
■ダーティ・プロジェクターズとセロを両側に置くとさ、両方とも彼らなりの完成形みたいなものが明確にあるよね。シャムキャッツはそことの違いがすごく特徴かなと思うけど。セロの場合、やっぱり、それぞれのタイミングでの自分たちの完成形っていうもののイメージが明確にあるじゃない?
藤村:でも1枚めはもうちょっと無骨な印象があって。だから1枚めのほうが好きですね。
大塚:俺の場合、全然ロックとか聴かなくて、ジャズとかしかわからないんで。うん......だから、シャムキャッツは絶対買わないね(笑)。でも、ちょっと無理やりかもしれないけど、マイルスとか、歌ものだったらジョニ・ミッチェルとか、ジャズ的な要素はシャムキャッツのなかに感じてて。即興だったりとか、完成形は見せないでライヴに持っていくっていうようなスタイルがあるのかもしれないとは思います。「音でコミュニケーションをとっているところをそのままパックする」っていうやり方は昔から好きで、そういうことを自分もプレイヤーとしてやりたいと思ってました。だから、たまたまジャズじゃなかったけど、この4人はそういうテイストが合ってるから、いっしょにやっているという感じです。
だから、ほんと無理やり並べる感じにはなるかもしれないけど、エレクトリック期のマイルスとか、ジョニ・ミッチェルがジャズのミュージシャンたちといっしょにやってたときの感じに近いかなとは、なんとなくだけど思ってた。
■いちおう選んどきましょう。エレクトリック・マイルスだと、どれ?
大塚:えー、マイルスだと、『オン・ザ・コーナー』。ジョニ・ミッチェルだったら、『ドン・ファン(のじゃじゃ馬娘)』とか。最近聴いてて、「あ、ダーティ・プロジェクターズっぽいな。源流にあるのかな」とか思ったりしました。
■うん、なるほど。非常に綺麗な答えが出ましたね。
菅原:やばい! 俺、やり直したい。もっと自分のルーツ的なところで行きたい!
(一同笑)
藤村:あ、俺もう1枚わかった。ペイヴメントの『ブライトゥン・ザ・コーナー』。
菅原:ああ、ずりぃなあー!
■じゃあ、シャムキャッツをして、よくペイヴメントって最初に比較されちゃうことについてはどうですか。どういうポイントにおいて「致し方なし」と思い、どこにおいて「うれしく」、どこにおいて「ちょっとノー・サンキュー」って感じますか?
夏目:ペイヴメントは好きだから、単純にそのレベルではオッケー。致し方なしと思うのは、バンドに取り込むスタイルとか、アンサンブルの崩壊の許容範囲とか。ペイヴメントも俺らも、人がグルーヴって思うところよりも遥かに大きい範囲をグルーヴって呼んでるんですよね、たぶん。そこは、致し方なし。
■ノー・サンキューって思うところは?
夏目:ノー・サンキューって思うところは......「だって、全然違うよ?」ってとこ(笑)。「よく聴くと全然違うぜ」って。まあ、そう思ってくれてもいいけどさ。
■まあ、夏目くんの声とか、歌い方とかね。コード・プログレッションとか、アンサンブルを聴けば接点ないんだけど、そういう部分で聴かれちゃうんだろうね。ヨレたグルーヴとひっくり返る寸前の声、っていう(笑)。
夏目:あー(笑)、そこか......。歌ってるとわかんないんだけど。で、えーと、俺の2枚はまず、ヴァインズのファースト(『ハイリー・イヴォルヴド』)。
■ほう!
夏目:と、ビートルズの『4人はアイドル』。
■ほう! そ、それは......いや、ちょっと文脈が見えないので、説明して下さい。
夏目:全体の印象ですけどね。例えば、いま名前の出たダーティ・プロジェクターズとか、セロとかは、時代的にはいっしょだし、音楽に対するアティテュードとかにも似たものがあるかもしれないけど、出てきた音にあまりにも差があると思って。俺だったら、そのラインでは同じ作品として並べない。たぶんもっとロックっぽいところに入れたい。で、「振れ幅がある方が入れがいがあるな」と思って。たぶん最近ので、こういういろんな曲の入った変なバランスのアルバムってそんなにないんじゃないか。わちゃわちゃとしてまとまってないな、けどなんか熱いなーっていうのが何かを考えたら、ヴァインズかなという答えが出ました。
■なるほど。あのアルバムって、すごくアグレッシヴな曲もあるし、ちょっと謎のスカみたいなのもあれば、すごいフォーキーなバラッドもあればっていう振れ幅があるよね。
夏目:『4人はアイドル』は、ちょっとサントラっぽいなと思って。俺たちのは、わかりやすい1曲めがパーン! とあって、あとはドラマチックないろんなタイプな曲が入ってて、人生で起こるいろんなことを歌ってる。そういう、ロック・バンドでサントラっぽいのは何だろうなって思ったときに、『ヘルプ!』(『4人はアイドル』の邦題)かな、と。
[[SplitPage]]「音でコミュニケーションをとっているところをそのままパックする」っていうやり方は昔から好きで、そういうことを自分もプレイヤーとしてやりたいと思ってました。(大塚)
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■なるほど、わかりました。じゃあ、ちょっと別の視点からの質問。さっきから、プレイヤー側から見て、「既存のものではないもの」への志向があるということはよくわかったんだけど、ただ、いわゆるリスナーからすると、いま話してたような聴き方は若干マニアックだと思うんだよね。アンサンブルを聴くとかさ、楽器の音色を聴くとか、構成を聴くとか、そういうふうに音楽に接しながらも、最終的に人間というのは、その音楽を喜怒哀楽なり、フィーリングなりで聴くところがあるでしょ? 「わくわくする」とか、「気持ちをカームしてくれると」か。そういう意味において、「シャムキャッツはどういうものをやろうとしているのか?」ということを尋ねたいんです。
で、どうでしょう、質問をちょっと絞らせてもらうと、いま一般的なポップスの流行を見ていると、すごいエモいじゃん? 「会いたい」「悲しい」「うれしい」であふれている。そういったところを潜在意識において、避けたりした部分があると思いますか?
夏目:うーん、避けてはいないですけどね。
■じゃあ、夏目くんにとってこれはとてもエモーショナルなアルバムだと。
夏目:あ、そうか、そう言われるとエモーショナルではないかなー。こういう作品ができて、できたあと話してるわけだから、ちょっとエモーショナルなことを伝えたいモードに入ってきちゃってるかもしれない。いま。
藤村:マックスでエモーショナルなときってないよね。
夏目:マックスでエモーショナルなときって......ないね!
藤村:このバンドでエモーショナルなのは俺くらい。
夏目:ただ、ほんとに歌いたいことって、「会いたい」とか、そういうことなんですよね。全然間違ってないと思いますよ、それは。ただ、もうちょっとシャレたいよね。「シャレた感じに言えないかな、言えるんじゃないかな?」って気はしてて。それはちょっとやりたいですね。だから、曲によってはけっこうありますよ。「君のお腹ん中に入らせて」(“SUNNY”)とか、あ、おもしろいなって、おもしろがって作った部分はあります。でも、疲れますよね、エモーショナルっていうのは。
■うん。聴く方もやる方も、感情的に入り込む作業だからね。
夏目:疲れたくないんですよね。
■ただ、例えば、“渚”とそれ以外のアルバム収録曲を比べると、“渚”のほうがエモーショナルだし、センチメンタルだし、若干、欝っぽいところがあるでしょ。
夏目:うん(笑)、そう思います。
■それに比べると、その後に作った曲は、もう少し自分の感じてるネガティヴなフィーリングに対して客観的になってるのかな、と感じました。楽観的というのではなくてね。ネガティヴなフィーリングを笑ってたりするところがあるのかな、と。まずそれは正解ですか。
夏目:正解です!
■(笑)では、なぜそうなったのかということを分析することはできますか?
夏目:単純に、バンドの状況がよくなったというのはあるかなと思います。「なかなか自分が目指してるところに行けないな」とか、「けっこうおもしろいことやってるのに、全然有名にならないな」とか、そういうふうに気持ちが揺れ動いてたときの曲が“渚”で、バンドもあんまりうまくいってなかったし、「どうしよう?」っていう思いもすごくあって。けど、ああいう曲ができて、状況もどんどんよくなって、あんまり文句いうところがなくなってきたり、「よし、とにかくバンドってものをやればいいんだ」っていう気持ちになれたときにできた曲が多いんで、そのへんですかね。悩んでる面がちょっと変わったのかもしれない。
ただ、ほんとに歌いたいことって、「会いたい」とか、そういうことなんですよね。全然間違ってないと思いますよ、それは。ただ、もうちょっとシャレたいよね。(夏目)
■実際のところ、“渚”に関しては、どういうフィーリングを捉えようとした曲なの? すごく乱暴に訊いちゃうんだけど。
夏目:混沌から......輝きが生まれる!――そういうところですかね(笑)。そこからじゃないと何もはじまらない。生命が海辺で誕生したっていうじゃないですか。雨が降り、海ができ、泡みたいなものができて、物質がつながりあって、生命が生まれた。ま、それで“渚”なんですけど。
■それが、当時、自分たちが感じていたことと近い?
夏目:うん、うん。だからけっこう欝でしたね。疲れきってた、というか。
■でも、結果的に、“渚”という曲は、シャムキャッツの名前をそれまでよりも広めることになったし、いまではバンドのトレードマークになる曲として捉えられるようになったわけですよね。当初、それをどう受け止めていましたか? 居心地の悪い部分もあった?
夏目:最初はすごく居心地が悪かったですね。いまでこそ、「シャムキャッツらしい曲」って受け止められているかもしれないけど、それまで聴いてくれてた人とか、僕らにしてみたら、むしろちょっと「らしくない曲」としてできあがったと思うんですよね。ただ、昔から俺を知っている人にとっては、すごく俺らしいものが出てきてしまったというか(笑)。
■ずっと避けてたけれども、という?
夏目:そう、避けてたんだけど。で、それを聴いてくれた人たちがけっこう感動してくれたりもして、プロデューサーについてくれてるおさむさんが、「これを出そう」、「これがいい」と言ってくれたもんだから、「じゃあ、出してみましょうか?」ということになったんです。でも、いざ蓋を開けてみたら売り切れたりして、「そういうもんかあ、ライヴでやらなきゃな」って最初は思ったりしてましたね。ライヴでやるとみんな楽しそうにしてくれるから、とりあえずやっとくか(笑)っていう。
■でも、「本来の自分だからこそ出したくなかった」というのは、なぜ?
夏目:やっぱり恥ずかしいじゃないですか。ダサい、というか。そういう単純な気持ちです。
■じゃあ、基本的にはやっぱりエモーショナルな表現に対する気恥ずかしさはあるんだ?
夏目:ありますねえ。
菅原:相当あるよね。
■じゃあ、夏目君のヴォーカリゼーションの特徴――喜怒哀楽をかき混ぜようとしてるような、むしろ「笑い」に近いような歌い方っていうのも同じ理由によるもの?
夏目:おそらくそうですね。笑いってラクなんですよね。ライヴでも本当に前のめりになって気持ちを入れて歌ったりするのはちょっと恥ずかしいし、それならタケシみたいに着ぐるみを着て出て行っちゃうほうがラク。
■なるほどね。ただ、さっきの「会いたい」の話みたいにね、そういうエモいものを全然否定はしてはいないんだ?
夏目:全然否定しないです! 昔、タナソーさんが大嫌いだって言ってた銀杏ボーイズ、僕は大好きですからね。ゴーイング・ステディが解散したときは、友だちとカラオケで4時間くらい歌いつづけてましたから。
■でも、そこは好きだってはっきり言えるのに、自分的にはその照れ隠しヴァージョンみたいな態度を取ってしまうのは、なぜ?
夏目:似合わないと思ってるんじゃないですかね。好きだということと自分がやりたいということは違いますからね。自分のために歌っているときはいいと思うんですけど、人前に出ていちばん盛り上がることではないと思いますし。なんか、上がってきちゃいけないところに上がってきちゃいけない人が出てきた、みたいな感じになりませんか(笑)?
■じゃあ、もし仮に「銀杏ボーイズが沈黙しているいま、夏目君がすべてを引き受けるべきだ。だって、君はもっとエモーショナルな姿を出せる人でしょう?」っていうリアクションがあったとしたら、どうです?
夏目:うーん、そんな風に思う人、いるかなあ(笑)?
藤村:いると思いますよ。
■(笑)いるよね? ユーチューブで音源聴いただけの人とかだったらわかんないけど、ライヴを観て、MCを聞いて、一言二言話したりすれば、においがぷんぷんしてくると思うよ。
(一同笑)
[[SplitPage]]“渚”はいまでこそ、「シャムキャッツらしい曲」って受け止められているかもしれないけど、それまで聴いてくれてた人とか、僕らにしてみたら、むしろちょっと「らしくない曲」としてできあがったと思うんですよね。(夏目)
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■では、夏目君だけじゃなくて、みんなの書くリリックって、具体的ではなくて曖昧だし、やっぱりシュール・リアリスティックだよね? センテンスごとに脈絡がなかったり、何かしらの飛躍やはぐらかしがある。それは、いま話してもらったことに近いですか?
菅原:いっしょだと思いますね。
夏目:ただ、いちばん自分がグッとくるように書いてますけどね。ただの文章じゃ自分が感動しないと思うから。音楽として流れてきてグッとくるように、自分なりに仕掛けはしています。
菅原:2曲め(“本当の人”)とかは僕が書いたんですけど、それはほんとに第三者(3人称)に完全に投げて、第三者に歌わせてる曲なんです。だから、詞なんかも、自分が思ってることとは全然違うけど、「この人はこう言いました」ってふうに淡々と綴ってますね。僕は歌詞より曲のほうが先にできるので、いまのところは「詞なんて面倒くせえな」って感じです。作業としては、ですけどね。おさむさんとも相談して、「夏目君とは違う手法で作ってみない?」っていうことになったので、考えてみたアイディアです。
■でも、この曲のように、「本当」とか「嘘」とかって言葉が使われてたら、それをそのまますごくシリアスに捉えちゃうリスナーもいると思うんだよね。
菅原:そうですね、それはもちろん、「ドキッとさせたいな」とは思ってます。
■なるほど。それがシリアスかそうでないかわかんないように撹乱させたい、と。
菅原:そうです。
夏目:僕は今回はいままで以上にわかりやすくしたという気持ちはあります。「もっと夏目君はわかりやすくていいよ」っていうプロデューサーの指示でもあるんですけどね。
■実際に書いてみて、「ここはいちばんわかりやすくしたな」って思う部分と、逆に「ここはやっぱり照れてるし、ごまかしてるな」って思う部分を教えてください。
夏目:えー(笑)。でも、“なんだかやれそう”は全編通して、「わかりやすくしたなー!」って感じなんですけどね。ぱっとその場でわかるような。
■それでもわかりにくいけどね(笑)。いや、ネガティヴな意味じゃなくて、「いろんな風に受け取れるようになってる」っていうことなんだけど。
夏目:それは、そうしたいですね。けど、そうじゃない歌詞を見たことがない気もします。銀杏ボーイズはわかりやすいけど、でも、わかりにくいよね?
菅原:まあ、そうだね。
夏目:歌詞で言ったら、いちばんスピッツが好きなんですよ。あと、わかりにくさってことでは、くるり、スーパーカー、ナンバガ(ナンバーガール)っていう俺が高校の頃いちばん聴いてたもの、つまり思春期とシーンがマッチした頃の音楽ですけど、どのバンドもまあ詞はわかりづらいですよね。でもあの人たちの歌詞がいちばん感動できた。わかりにくいと思ったことはいっさいなかったです。だから自分の歌詞もわかりにくいと思ったことはないんですよね。
■ただ、自分がこうだろうと思ったことが本当に正解かどうかわからないバンドたちじゃないですか。いま挙げてくれたのは。それはかまわなかったんだ?
夏目:かまわない。「俺がこの曲をいちばんわかってるぜ」って思ってましたね。
■なるほどね。でも、そこから一回転するってことはないんだ? あ、そうか、菅原君のは一回転させたのか。
菅原:僕はそうですね。一回転させました。古里さんに呼び出されて、「夏目君の行かないとこ、行ってみよう」って言われたんですよ。そういう話し合いのなかで生まれたものなんです。「本当の事が知りたい」(“本当の人”)って歌詞が入ってますけど、それとか、絶対に言いたくない言葉ですしね。
(一同笑)
菅原:最後にいちばん言いたいことを入れようって言われて......。
夏目:叫んでるもんね。
藤村:エモいもんね、最後は。
夏目:でも物語としてはわかりにくいよね。
菅原:そうそう。
■じゃあ、最近の日本でいうと、あるひとつの傾向として、メイン・ストリームもアンダー・グラウンドも、ポップスもロック・バンドもヒップホップも、すごく自分自身が暮らしてる時代とかコミュニティとかをレペゼンする歌詞が主流じゃないですか。作り話とか、物語がすごく減っててね。そんな中で、シャムキャッツの歌詞には、時代や世代や自身のコミュニティをレペゼンするような部分――つまり、時代なり自分たちなりを代表してるっていうような部分は、何パーセントくらいあると思いますか?
夏目:ちょっと変なこと言うかもしれませんけど......0パーかもしれませんね。時代性とかを考えたことはあんまりないというか。「時代性とかをいっさい無視して排除していくほうが、作品としてはむしろいい出来になるんじゃないか?」って気がしてるんですよね。昔の歌でも、ずっと残っていくなかで時代によって意味が変わってきたりするじゃないですか。まあ、だからこそいまの時代に合わせて作っても大丈夫という面もあるかもしれないけれども。でも、これだけすべてが出揃ってるって言われてる時代なら、一回そこを無視するぐらいでいいかなって気もしてるんですよね。
■でも、この作品に収められた12曲っていうのは、「2012年」、「日本」――もっと面倒くさいことを言えば、「311から1年半」、さらには、メンバーは30代でもなく10代でもなく、まさに20代だからこその表現っていう特徴が出てる気がするんだけど。
大塚:出さなくても勝手に出てる、っていうような部分ですかね。
夏目:0パーっていうのは、100パーの裏返しってことなのかな? 意味が1個じゃいやだから、自分でいくつかの仕掛けを作れてるって仮定できるとすごく充実するんですよ。で、その仕掛けのなかにはもしかすると時代性のようなものが入っちゃってるかな。こういうふうに思わせたら勝ちだな、とか考えてる部分はあります。
[[SplitPage]]くるり、スーパーカー、ナンバガ(ナンバーガール)っていう俺が高校の頃いちばん聴いてたもの、つまり思春期とシーンがマッチした頃の音楽(中略)あの人たちの歌詞がいちばん感動できた。わかりにくいと思ったことはいっさいなかったです。(夏目)
![]() シャムキャッツ - たからじま Pヴァイン |
■じゃあ、ひとつだけ代表的なサンプルとして“なんだかやれそう”について細かく訊かせてもらっていいですか。 じゃあ、まず「なんだかやれそう」ってことは、歌ってるキャラクターの認識、もしくは、世間一般の認識として「やれないんじゃね?」っていうのが前提にあるってことだよね?
メンバー:はははは!
夏目:まあ、そうですね(笑)。
■ということは、この歌は、乱暴に言うと、世の中全体に蔓延しているシニカルなムード、もしくは、本人のネガティヴなフィーリングを歌った曲ということになる。
メンバー:あははは!
夏目:(笑)半分イエスです。
■だよね? にもかかわらず、この曲のキャラクターは「やれそう/なんとなくいけそう」と歌う。「やれる!」ではない、曖昧なニュアンスの言葉を使っているということは、この作詞者である夏目君という人は「やる/やれる」と言いたい心持ちはあるが、それをそのまま言葉にすることでは「やれる」フィーリングをかたちにできないと思った、ということだよね?
夏目:まさしく。
■となると、この曲というのは、今日話してもらったようなバンドのアティテュードをわかりやすく象徴してるよね。これ、いちばんアグレッシヴだし、ポジティヴでしょ?
メンバー:うん。
■にもかからわず、拍子が奇数だし、アンサンブルもいちばんギリギリだし(笑)。つまり、ストレートなようでいて、やっぱり一筋縄ではいかない。すごくカラーは出てるよね。
藤村:うん、出てると思います。だって、「全部やっちゃえ!」って言って作ってたもんね。
夏目:そうそう。“なんだかやれそう”のアイディアは藤村が言ったんですよ。レコーディングの1回めの期間が終わったときに「パンクが足りない!」ってことになったんです。「もっとドーン!ってやるバンドじゃなかったっけ、俺たち?」 って。「シンプルでわかりやすいやつが欲しいし、そういうのがカッコイイよね」ってふうにメンバー内で話し合って、アンダートーンズとか、ひと通り聴いたりして、「これをやろう」ってことになりました。自分たちにもまわりにもない音だったし、いいんじゃないかと。しかし、どうするんだ、こんな恥ずかしいやつ(笑)?
藤村:そう(笑)。
夏目:「でも、なんだかやれそうだね!」って(笑)。
藤村:バンドのムードを盛り上げるためによく言ってたんですけど、「なんだかやれそう」って。そしたら、プロデューサーが、「それだ!」って言って。
(一同笑)
夏目:よく覚えてるんですけど、そしたら、俺たちの担当の柴崎さんが「なんだかやれそうだなあって気分がアンセムになったら、新しい時代かもしれない」って言ったんですよ(笑)。「よくわからないけど、じゃあ、ちょっとそれに付き合ってみるか!」ってことになりました。で、「どうせやるんなら全部やっちゃおう」って思って、最初はもうコード一発。俺らは頭にスネアが入る曲がほとんどなかったので、それもやってみようと。
藤村:前からやりたいとは言ってたんですよ。
夏目:でも、4(拍子)じゃつまらないから、ここから3にしよう、とか。
菅原:4はちょっとダルいし、長い。
藤村:しかも3×4(小節)じゃなくて、3×3なんだよね。
夏目:ああ、そうか。そこまでのアイディアだけ生まれて、藤村とふたりでスタジオ入って、やってましたね。「サビは4にしたい。じゃ、つなぎはどうする? 5でいこう」みたいな。
藤村:しかも、最初の3も、基本はストレートな曲だから、俺は8で叩いてるんですよ。8プラス1で叩いてたりする。
時代はよくない。でも、「そういう状況でどう遊ぶか?」というのがいちばん大切なところです。「楽しそうに遊んでるところにはみんな寄ってくるはずだ」という気持ちがあって。だから、なるべく大胆に遊びたいとは思ってますね。(夏目)
■はいはいはい。なるほど。じゃあ、今日はいろいろと話すなかで、普段よりも自分たちについて分析的で客観的になってもらったと思うんだけど、その上で、ではシャムキャッツというバンドや、この『たからじま』という作品は、この2012年の年末の日本のどういう状況や気分に対するリアクションであり、どういうかたちのカウンターになると思うか。それをできるだけ風呂敷を広げたかたちで、できるだけ細かく、教えてください。
夏目:なるほど(笑)。
菅原:難しいなー(笑)。
夏目:時代的なことで言えば、悪くないと思ってるんですよ。というか、時代はよくない。でも、おもしろいなとは思っていて。これだけいろいろなことがあって、これだけクソみたいな状態なのに、経済的には豊かな国ってないなと思って。社会的な問題にしろ、いろんな要素がありすぎて、むしろこんなときに20代を送れるのは恵まれてるなと思ったりもするんですよ。ただ、状況を変えていけるか、良くしていけるか、ということになると、全然ヴィジョンがない。「おそらくつぶれるだろう」と思ってますね。「でも、そういう状況でどう遊ぶか?」というのがいちばん大切なところです。「楽しそうに遊んでるところにはみんな寄ってくるはずだ」という気持ちがあって。だから、なるべく大胆に遊びたいとは思ってますね。その意味で、このアルバムは「遊んだなあ」と思います。その分、わかりにくくはなったけど。......って感じ、あるよね?
菅原:うん。あるね。
■例えば、ここ最近、若い世代が久しぶりに公務員志向を強めた、とか言うじゃない? で、若者が出歩かない。遊ばない。酒を飲まない、とかね。
夏目:それ全部やってるな。もっと遊んだほうがいいですね。僕、昔から若者の仕事って遊ぶことだと思ってて。バカみたいに金使って。親から巻き上げてもなんでもいいから、金使って遊ぶっていうのが若者の役割だと思うんですよ。「どうやって遊ぼうかな、どうやって遊ぶ人を増やそうかな?」って感じはすごくあるしね。お金なくても、全然怖くないしね?
菅原:そう、なんかもっと、自由にみんな生きたらいいのになって思いますね。
■ここ1~2年ですごく感じることなんだけど、自分の世代は、60年代後半の社会の動乱とか、そのなかで芽生えたものとかへの憧れがいちばんあった世代なわけ。だから、「自由」って言葉に対しても最上級の憧れがあったのね。面倒くさいしがらみ――地縁みたいなものもすごく強かった。特に俺なんて大阪の育ちだから。それに社会的な制約も大きかった。だから、自由ほどすばらしい概念はないって思ってたんだけど、ここ最近はさ、自由って言葉は状態じゃなくて、人の性質を表すような使われ方をするよね。「ごめんなさい! この子ほんと自由なんで!」みたいなさ。場を読まない、ものがわかってないってことを表す言葉になっちゃってる。それは多分にいまの社会のものの見方を反映していると思ってて。
夏目:たしかに。......でも、自由のほうがいいね。
メンバー一同:うん。
夏目:音楽のフィールドに関して言えば、エモーショナルなものとか、ジャンルに特化したものは、わかりやすいですよね。インディーズからメジャーに上がっていって、みんなが知るようになる。でも、そのヴァリエーションが少なすぎて――さっき言ってたみたいに、エモーショナルなものでいっぱいになってしまう。下からもたぶんそういうものしか上がってこないように見えてるかもしれないけど、「90年代のポップスの雰囲気を大きなフィールドでやれる可能性はあるぞ」と。そういうことはちょっとだけ見せられたかな、という気はします。それが希望だし、「なんだかやれそう」ってことですね。
藤村:僕個人としては、このコミュニティはけっこう理想に近いと思ってまして。「政治や他のコミュニティのあり方も、こうすればいいのにな」って。そういうことを伝えたい。
菅原:ふたりの話につながりますけど、俺は最近、この社会にあってすごく居心地が悪いですね。でも、4人でやってる楽しさを世に出していくってことをやりたい(笑)。
夏目:同じことを言ってる(笑)! 何だろうなあ。俺とかからすると、20歳を超えるまで、思春期の間、「この世は暗いんだぞ」っていうパンチをずっと食らい続けてきたっていうイメージがあって。サリン事件あり、阪神大震災あり、911あり、リーマンショックあり。音楽的にも大学ん時にレディオヘッドがあって。「うわ、暗いパンチ来たよ!」って感じだったよね。でも、昔に比べればよくなってると思うんですよ。高校くらいの頃とかは「日本ってあんまりおもしろくないな」って思ってたんですけど、いまはちょっとおもしろい。
藤村:内閣がどんどん変わりますよね。それ、ほんと変じゃない? あれがすごく変だなって感覚が僕らの世代にはあると思うんですよ。なんで一度リーダーを決めたら、そのリーダーをサポートしないのか? いろいろ難しいんだと思うんですけど、そうしないと何も進まない。バンドも同じで、みんなで船を漕ぐような姿を見せられればいいと思う。
夏目:何か価値観を提示したのかなあ? 『たからじま』ってアルバムってさ。
■でも、『たからじま』っていうタイトルだけでも、明確なアティチュードがあると思うけど。「どこかに宝があるはずだ」「で、探すんだ」ってことなわけだから。だって、いまはみんな、『青い鳥』みたいな話が大好きじゃない。
夏目:でも、まあ、男の子4人揃ったらね、アドヴェンチャーしないとね(笑)。
[[SplitPage]]ライヴ情報
■2013.1.29(火)
“月刊ウォンブ!
創刊号・初めてのウォンブ!”
渋谷WOMB
開場19:00 / 開演19:30
前売2,000円(1ドリンク別) / 当日2,500円(1ドリンク別)
●出演
シャムキャッツ / Alfred Beach Sandal / ミツメ 他
DJ:BIOMAN / マイケルJフォクス
●問い合わせ
渋谷WOMB tel:03-5459-0039
■2013.2.3(土)
“節分のMEME TOKYO FESTIVAL 2013″
渋谷WWW
開場17:30 / 開演18:00
前売3,300円(1ドリンク別) / 当日3,800円(1ドリンク別)
●出演
シャムキャッツ / でんぱ組.inc / かせきさいだぁ /
スペシャルゲスト(※2/1発表) / AIZENN(オープニングアクト)
●チケット
e+, ローソン(77549)
※プレイガイドは1/19発売開始
●問い合わせ
渋谷WWW tel:03-5458-7685
※本公演ではチケットのメール予約は受け付けておりません。
■2013.2.9(土)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアー in 埼玉”
埼玉 熊谷MORTAR RECORD 2F
開場18:30 / 開演19:00
SOLD OUT
●出演
シャムキャッツ / ミツメ / 平賀さち枝
●問い合わせ
埼玉 熊谷MORTAR RECORD tel:048-526-6869
Thank You Sold Out.
※本公演ではチケットのメール予約は受け付けておりません。
■2013.2.15(金)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアー in 愛媛”
愛媛 松山Bar Caezar
前売2,500円(1ドリンク付) / 当日3,000円(1ドリンク付)
●出演
シャムキャッツ / Coelacanth 他
DJ : Nori(ROCK TRIBE) / KondoROCK TRIBE
●問い合わせ
松山Bar Caezar tel:089-932-7644
ライブの予約はこちらから!
■2013.2.16(土)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアー in 福岡”
福岡 薬院Utero
開場18:00 / 開演18:30
前売2,000円(1ドリンク別) / 当日2,500円(1ドリンク別)
●出演
シャムキャッツ / H Mountains / ライスボウル 他
●問い合わせ
福岡 薬院Utero tel:092-201-0553
ライブの予約はこちらから!
■2013.2.17(日)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアー in 熊本”
熊本NAVARO
開場20:00 / 開演20:30
前売1,800円(1ドリンク別) / 当日2,000円(1ドリンク別)
●出演
シャムキャッツ / H Mountains / Doit Science 他
●問い合わせ
熊本NAVARO tel:096-352-1200
ライブの予約はこちらから!
■2013.2.27(水)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアー in 愛知”
愛知 鶴舞K.D ハポン
開場19:30 / 開演20:00
前売2,000円(1ドリンク別) / 当日2,300円(1ドリンク別)
●出演
シャムキャッツ (ワンマン)
●問い合わせ
愛知 鶴舞K.D ハポン tel:052-251-0324
ライブの予約はこちらから!
■2013.2.28(木)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアー in 京都”
京都磔磔
開場18:00 / 開演19:00
前売2,500円(1ドリンク別) / 当日2,800円(1ドリンク別)
●出演
シャムキャッツ / Turntable Films
●チケット
ぴあ(190-931)
※当日の入場順はプレイガイド購入者→メール予約となります
●問い合わせ
京都磔磔 tel:075-351-1321
ライブの予約はこちらから!
■2013.3.1(金)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアー in 大阪”
大阪 十三ファンダンゴ
開場18:00/開演18:30
前売2,500円(1ドリンク別) / 当日2,800円(1ドリンク別)
●出演
シャムキャッツ / 昆虫キッズ / The Cigavettes / どついたるねん
●チケット
e+, ローソン(53206)
※当日の入場順はプレイガイド購入者→メール予約となります
●問い合わせ
大阪 十三ファンダンゴ tel:06-6308-1621
ライブの予約はこちらから!
■2013.3.8(金)
“シャムキャッツ NEW ALBUM『たからじま』リリースツアーファイナル ワンマンライブ”
代官山UNIT
開場18:30 / 開演19:30
前売2,800円(1ドリンク別) / 当日未定
●出演
シャムキャッツ (ワンマン)
●チケット
e+, ローソン(76345)
※プレイガイドは1/11発売開始
※当日の入場順はプレイガイド購入者→メール予約となります
●問い合わせ
代官山UNIT tel:03-5459-8630












