「K Á R Y Y N」と一致するもの

第5回 2011年のリイッシュー・ベスト3 - ele-king

 発掘音源の豊かさに舌を巻き、その点数もピークに達したと思われる2010年。なかでもナーキ・ブリラン『ナーキ・ゴーズ・イントゥー・オーボ』(81)にジャン・クロード・エロワ『シャンティ』(79)、そしてシコ・メロ『アグア』(84)はこのような音楽が当時のリスナーにやすやすと見過ごされてきたかと思うと、自分も含めてがっかりするしかないほど、よくできた音楽だった。発想だけでなく、スキルも申し分ないし、当時の気分だってちゃんと反映されている。なるほどヒネリは存分に効いているし、並外れたセンスではある。しかし、ありとあらゆる要素がシーンから掛け離れていたとも思えない。アウシュビッツへのこだわりだけを見ても『シャンティ』はそれこそスロッビング・グリッスルのすぐ隣にあった音楽だったことはたしかだし。

 ダメンバートの例もあるように10年ほどシーンを先取りできたミュージシャンは意外といるものである。そのようなミュージシャンに誰ひとりとして光を当てなければ簡単に潰れてしまうこともよくあることだろう。あるいは、一時的に活躍したミュージシャンでも次の時代に伝える力と結びつかなければ、これもあっさりと忘れ去れてしまうことはベルナール・フェーヴルの例を見ても明らかだろう。彼の後半生を彩ったブラック・デヴィル・ディスコ・クラブを〈リフレックス・レコーズ〉が再発しようと思わなければ『ザ・ストレンジ・ニュー・ワールド・オブ・ベルナール・フェーヴル』(75/09)などという奇妙な作品に出会うことはなかった。そして、そこから彼の本当の後半生がはじまったのである。〈リフレックス・レコーズ〉は2011年、ブリットコアのレア盤だったザ・クリミナル・マインズの集大成も再発している。

 21世紀になると、人びとはTVディナーを食べながら20世紀につくられたTVドラマばかり観ているというSF小説があった。大きな回顧モードに入ったスロッビン・グリッスル周辺だけでなく、シンセ-ポップとインダストリアル・ミュージックの境界線上に位置する音楽がやたらとリイッシューされた2011年。その頃のSF的なムードはまさにそのような事実と相俟って、驚くほどの相乗効果をもたらした。本当に小説のなかにいるような気がしつつ(現実があれだしね)、その辺りは適当に避けつつも、他の発掘音源に過大な注意を向けざるを得なかったことも2011年という異常な年の余計な楽しみのひとつではあった。

 ファンク好きには36年ぶりのリイッシューとなったプレジャー『ダスト・ユアセルフ・オフ』は絶対に外せないだろうし、たかがイージー・リスニングとはいえ、インパルスがトム・スコット『ハニーサックル・ブリーズ』(67)を蘇らせたことも事件ではあった。流行りとの連動ではジェフ・アンド・ジェイン・ハドスン『フレッシュ』(83)などというものもあった。それこそ数え始めたら切りがない。そのなかから勝手にベスト3を選んでみた。以下、オリジナルのリリース順に。


Pekka Airaksinen / One Point Music

Pekka Airaksinen / One Point Music O Records

 72年に〈O・レコーズ〉からリリースされたフィンランドの古典的実験音楽がついに。03年に〈ラヴ・レコーズ〉からリリースされたコンピレイション『マダム・アイム・アダム』(ナース・ウイズ・ワウンドやミラ・カリックスらによるリミックス盤との2CD仕様)以外、正規に流通していた作品は皆無だったものが、ようやく同レーベルから39年目にして再プレス(ほぼ同時期に8人編成で活動していたスペルマ『シッ!』をディ・スティルが08年にリイッシューしたことに刺激を受けたのだろう)。

 全体を通して非常に即物的な音の羅列といえ、情緒過多だった同時期の瞑想音楽やドローン・ミュージックと較べても、その無機質かつストイックな音楽性はまさに80年代の先取り。前半で不条理な気分を醸し出そうとすると、なるほど70年代の初期という感じにもなるけれど、フィードバック・ギターをメインとした中盤以降は音の悪いウォール・オブ・ノイズというのか、ある種のパルス・ミュージックにダブのような効果を与えることで最終的には金属的なサイケデリックへと歪んだ音像を導いていく。その酷薄なセンスはパンクを通過していないスロッビン・グリッスルかノイバウテン、ないしはアナログ時代のパン・ソニックとも。

 フィンランドはフリー・ジャズの伝統ではよく知られている国だけど、これもまたアンダーグラウンドの歴史の深さを感じさせる1枚である。先達にこんなことをやられていたら、トムトンツやアーエス(ES)が不可解なことをやり出すのも不思議はないというか。


Pete Shelley / Sky Yen

Pete Shelley /
Sky Yen
Drag City

amazon iTunes

 バズコックス以前に録音されていたエレクトロニック・インプロヴァイゼイションのソロ作。パンク・ムーヴメントが一段落した後にシンセ-ポップばかりリリースしていたのも、これを聴けばなるほどで、むしろ、シェリーにとってはフリップ&イーノやクラウス・シェルツェのほうが身近な表現方法だったのだろう。とはいえ、バズコックスをスタートさせた時期の早さからも推測できるように、ここで展開されているのは落ち着いたメディテイション・ミュージックではなく、波打つように電子音が暴れ、サイレンが鳴り渡る様を模したような表現で、それこそパンク・スピリットに通じるメソッドを電子音楽の文脈で独自に確立したものといえる。近い表現を探せばジュリアン・コープの『クイーン・エリザベス』か、バカ陽気なスロッビング・グリッスルとでもいうしかないか。

 どのような衝動に突き動かされてつくったものなのか、聴く人を気持ちよくさせるでもなく、実験音楽の様式性からもかけ離れ、かといって何も訴えてこないというわけでもなく、最初から最後まで同じといえば同じなのに、どこか体験的だというのはどうしたことだろうか。ノイズという方法論がまだなかったからこうなったのかなと思える節もあって、ということはノイズという方法論がこのような創作の可能性を封じてしまったと考えることも......考えるだけなら可能だろう。あるいは当時のリスナーはこのような表現よりもノイズを好んだという言い方もできなくはないし、いずれにしろ、どこにも繋がっていかなかった点でしかなかったにもかかわらず、いまだにその強度を保っている点のままでいるということには素直に驚かされる。パンク・ロックというムーヴメントが起きなかったら、そして、ピート・シェリーという男はいったいどんな音楽をやっていたのだろう......(元々はバズコックスのメンバーだったハワード・ディヴォートがソロになってから元ゼッドのベルナルド・ソジャーンと組んだこともシェリーの影響だったのかもしれない)。
 
 同作はシェリー本人が設立した〈グルーヴィー・レコーズ〉から80年にリリースされ、今回は、〈ドラッグ・シティ〉と共同で同レーベルからリリースされた4点すべてがまとめて復刻されている。どれもユニークな作風で、傾向というものすら持っていなかったといえるなか、ミーコンズから変名で挑んだサリー・シュミット・アンド・ハー・ミュージシャンズ『ハンゲイハー』(80)もオリジナルな作風では引けをとらない出来となっている。あるいは、いま、この作品がイギリスではなく、グルーパーやサン・アローが人気のUSアンダーグラウンドで再発されるのは非常に納得が行くというか。いずれにしろシェリーには、そのA&R能力の点でも感服せざるを得ない。


Die Welttraumforscher / Herzschlag Erde

Die Welttraumforscher
Herzschlag Erde
PLANAM

 スイスからクリスチャン・フリューゲルが81年に初めてリリースしたカセット・テープのアナログ化。82年に録音されたまま未発表だった4曲が補充され、LPサイズの分厚いブックレットもプラスされている。現在でもシンセ-ポップのヴェテランとして創作活動に衰えは見せないものの、けれんみの点ではやはり、その後とは比較できないものがあり、洗練とはまた別の圧縮された衝動に耳を奪われる。一筋縄ではいかない諧謔性にノイバウテンめいた荒々しいコンクレート音との折衷、あるいは伝統的な音楽の脱構築(この頃はとにかくそれが様になった)や肩透かしともいえるチープさと、ひと言でいえば(文化圏的にも)ノイエ・ドイッチェ・ヴェレのヴァリエイションといえる。当時の感覚でいえば消費社会そのものを音の素材としながらも、そのなかから呪術的要素を正確に抜き出した結果、都会的なアニミズムを編み出したとかなんとか。イーノをパロディ化したようなアンビエントもどきに至っては、他とのバランスを完全に欠いているようで、実は裏側から全体を補強しているようにさえ感じられる。稚拙なのに知的、モダンであり、原始的ともいえる円環構造が仕掛けられている......とも。

 フライング・リザーズやパレ・シャンブールを楽しんだことがない(若い)人にどう聞こえるかは見当もつかないけれど、ポスト・パンクの時期に撒き散らされた毒が新鮮味を伴って響くことは間違いがない。そのようなものにもノスタルジーがあり、その毒が自分の体から抜けきっていないことが僕の場合は嫌というほど思い知らされた。いまだに哄笑を伴う音楽が好きなのは、この時代を通過しているからなのか、それとも新しい時代の笑いに気がついていないだけなのか。エレキングでも若い人たちの取り上げるレヴューには笑いというものがまったくないと思うのは僕だけなのだろうか。それとも本当に若い人たちは正しくて真面目なことしか考えていないのだろうか(だとしたら、あー、ホントに息がつまる)。


 次点で、大野松雄 / そこに宇宙の果てを見た

大野松雄
そこに宇宙の果てを見た
EM Records

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 ナース・ウイズ・ワウンド『スペース・ミュージック』のアウトテイクとか言われて聴いていたら果たして信じただろうか......。レイ・ハラカミの恩師にあたり、エレキングVol.3でも取り上げた「音効さん」のファースト・ソロ。『スペース・アンド・マリファナ・トリップ・イズ・セイム』という英題が付けられ、78年に東宝からリリースされていたもので、マリファナのスペルはなぜか「Maryjuane」とミス・スペルになっている(詳しい経緯はライナーに長々と記されている)。これが最近まで30万円から50万円という高値が付けられていて(05年に〈キング・レコーズ〉から『大野松雄の音響世界 The World Of Electro-Acoustic Sound And Music - 2』として『惑星大戦争』とカップリングでCD化はされている)、宇宙の前にサイフの果てを見るしかなかったところ、映画『アトムの足音が聞こえる』の公開に併せたのか、〈エム・レコーズ〉がホログラム・ジャケットでアナログ・リイッシュー。

 効果音からミュージック・コンクレートへ踏み出した先達にトッド・ドックステイダーがいる(裏アンビエントP27)。それに較べれば大野は効果音止まりといえる。あるいは効果音以上の音楽へと発展させる気はなく、あくまでも効果音としてその可能性を広げようとしたのだろう。もしくは「聴かせる効果音」という奇妙なものを作り出したとも。なるほど自分の集中力を変化させることで図にも地にも聞こえ、音に集中したり、しなかったりを繰り返して聴いていた時が最も面白く聴けた(やはり効果音だからか、集中しっ放しで聴いていると、つまらなくなってくる)。それはそのままリミックスの可能性を示唆しているようにも感じられた。

 ちなみにドミューンに大野松雄が出るというので湯山玲子さんと観に行ったところ、僕が驚いたのは88歳で頭がしっかりと回転しているということよりは、大野松雄がいまだにシャイな部分を残していることだった。自分が主役だということは理解しているはずなのに、隙があれば、後ろに引っ込もうとするのである。それはつまり、タメをつくるということでもあり、「次」があると思うから、そのようにできるとも言える。適いませんね。


 番外で、V.A./Klangstudie and Komposition

V.A.
Klangstudie and Komposition
Other Sounds

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 厳密に言えばリイッシューではなく、エレクトロニック・ミュージックについて書かれたデイヴ・ヘンダースン『ジャーニー・トゥ・ア・プラグド・イン・ステイト・オブ・マインド』(チェリー・レッド・ブックス)との連動企画で、〈チェリー・レッド〉が新たにスタートさせた過去音源の編集レーベル(Other Sounds)から第1弾はいわゆるモンド・ミュージックが テーマ(V.A./『Music for a Retro-Future』)。これが、トム・ディッセルヴェルトやジュリアード・パーカッション・オーケストラなどレア音源が手軽に聴けたのはいいけれど、希少性にこだわり過ぎたか、全体の出来はまあまあだったのに対して第2弾はミュージック・コンクレートが題材。〈チェリー・レッド〉というフィルターを通した選曲とそのセンスは、なるほどミュージック・コンクレートの相貌を一変させ、快楽性の高さと同レーベルらしい抒情性の豊かさを堪能させてくれる。ミュージック・コンクレートといえば不条理という連想がまったく働かないのも新鮮なら、コミカルに響く展開の多さもイメージとはかけ離れている。どこからどう聴いてもミュージック・コンクレートには違いないのでヘンな暗示にかかっているとしか思えないんだけど、これは掛けられて損なマジックではないでしょう。この分野は中途半端にしか知らないという人に、むしろオススメしたい。

 ......第3弾以降は何があるのかなと思っていたら、トレイにはこんなアテンションが印刷されていた。「助けてくれる? ヒントがあったら教えて欲しい。チェリー・レッドに相応しいと思うコレクターズ・シリーズが何かあったらEメールを送って下さい。ideas@cherryred.co.uk 感謝します」だって。

Chart by JET SET 2012.1.16 - ele-king

Shop Chart


1

BJORN TORSKE

BJORN TORSKE OPPKOK REMIXES »COMMENT GET MUSIC
Bjorn Torskeが2010年リリースのフル・アルバム『Kokning』からのリミックス・カットは、Mungolian Jet Set / Moon Jocks N Prog Rocksのヒット記録を塗り替える事間違いなしの1枚!

2

TODD TERJE

TODD TERJE IT'S THE ARPS »COMMENT GET MUSIC
2011年発、Running Backからのオリジナル楽曲「Ragysh」がロングヒット中のTodd Terjeによる高揚感満載のスペース・ディスコ大推薦盤です。

3

CANYONS

CANYONS KEEP YOUR DREAMS »COMMENT GET MUSIC
12インチが即完売したサイケ・ディスコ・ロック・アンセム"My Rescue"、Nite Jewelのスクリュー・ヴォーカル炸裂A-3など、センスが光り輝くファースト・アルバム!!

4

PLUG

PLUG BACK ON TIME »COMMENT GET MUSIC
Planet Mu主宰μ-ZiqやAphex Twinらとともにコーンウォール一派の一員としてもお馴染みのLuke Vibert。ラウンジxドリルンベースに挑んだ伝説のユニットが奇跡の復活です...!!

5

WALLS

WALLS INTO OUR MIDST »COMMENT GET MUSIC
身体中の筋肉をジワジワと弛緩させる甘美な毒がたっぷりと詰まった魔の傑作が誕生!!

6

I:CUBE

I:CUBE CUBO EDITS »COMMENT GET MUSIC
Esp Institute参戦も話題となったAlexis Le Tanによる2008年カタログ6番以来の新作リリースとなったVersatile傘下レーベル"Les Edits Du Golem"から、本家"Versatille"からのリリースで御馴染みのフレンチ・プロデューサーI:Cubeによるグレイテスト・エディットが新着です!!

7

V.A.

V.A. ANNIVERSARY SERIES: PART 1 »COMMENT GET MUSIC
レーベルの中軸ユニットJuju & Jordashはバレアリック調の鍵盤メロディやストリングスを転がしたビートダウン・ハウスを展開。Morphine Records X Delsin X M>O>Sの共同リリースとなった1stアルバムも最高だったMorphosisは、スリリングなドラム・プログラムにダークネスな鍵盤リフを絡めた圧巻のテクノ・ナンバーを披露したDekmantleレーベルらしいディープなカップリングとなっています。

8

SOUL SYSTEM

SOUL SYSTEM LOST TAPES 1 »COMMENT GET MUSIC
Jason Groveによるレーベル第一弾に続く新作は、No More HitsやClone周辺で目覚しい躍進を遂げている伊プロデューサーNicholasによる新名義作!!

9

FRANK BOOKER

FRANK BOOKER HOPE »COMMENT GET MUSIC
Mark E & Kez YM Remixを収録した国産Wonderful Noiseからの12"作品もヒットした才人Frank Bookerによる新作10"。両面お勧めです!!

10

NEW WORLD GENERATION

NEW WORLD GENERATION S.T. »COMMENT GET MUSIC
謎多きソウル・グループN.W.G.の発掘音源がNow Againより登場。フリーソウル・ファンも虜の絶品モダン・ソウルからRoy Ayers直系ミスティック・ブギーまで、どれもこれも素晴らしすぎます!!

No UFO's - ele-king

 〈スペクトラム・スプールズ〉(エメラルズのジョン・エリオットが〈メゴ〉傘下でA&Rを務めるレーベル)の11枚目は、バンクーヴァーからコンラッド・ヤンダフによるデビュー・アルバムで、〈ナイス・アップ・インターナショナル〉から2010年にカセットでリリースされていたもののアナログ化。これが奇しくも同じバンクーヴァーから飛び出した音響派ロカビリーのダーティー・ビーチーズとエメラルズを橋渡しするような内容となり、あまりにチープな混沌がヘンな未来を感じさせてくれる。スキルがないのにイメージだけが豊富で、曲によってはスペースメン3のデモ・テープのようになってしまったり。
 スーサイドがノイ!をカヴァーしているようなオープニングからいきなりサウンドはヨレヨレ。どの曲も稚拙で乱暴なエディットなのに、あっという間に引き込まれている自分がさっぱりわからない。ノー・UFOズというユニット名は単純にデトロイト・テクノを想起させるものだけれど、なるほど、デリック・メイの〈トランスマット〉が89年にリリースしたK・アレクシー・シェルビー「オール・フォー・リ-サ」からBサイドの"ヴァーティゴ"が続いてカヴァーされている。これをアシッド的な感触はそのままにグルーヴ感を削いでドカスカと叩きつけたと思ったら、すぐにもずっしりとしたドローンへと雪崩れ込み、とんでもなく行き当たりばったりな構成にはさらなる拍車がかかっていく。シームレスという流行り言葉が踏みにじられていく感触は痛快というのか、まるで中原昌也みたいだというべきか。そして、急に音が途切れてBサイドへ。
 後半は『ノイ2』を狙った構成なのか、全体にコラージュ的な要素が強く、リズムにのった曲はしつこく何度もクラッシュを繰り返す。ちょっとこれは煙の世界に行ってみないと、本当の効果はわからないかもなーと思いながら、透き通るようなアンビエント・ドローンでひんやりとエンディング(まー、単純に実用性は高いと思われます。レインジャーズの失ってしまったものがここにはあるというか)。
 録音された順番は逆になるけれど、昨年末にリリースされた『マインド・コントロールズ・ザ・フラッドEP』(パブリック・インフォーメイション)はもう少しスキルがイメージを具体化するようになっていて、見せてくれる景色も明確になってきた(その反面で失われた面もあると感じてしまうところがトリップ・サウンドは難しい)。クラウトロック・リヴァイヴァルも突き詰めていけば、やはり辿り着くのはここなのだろう......か。この柔らかさ。この感触。この......。ああ、スモーカーズ・デライト......

Common - ele-king

社会派なんてクソ食らえ
"自己嫌悪"(キミドリ、1993)

 言葉を持つポップ・ミュージックが、政治的であること、社会的であることは、はたして素晴らしいことなのだろうか。この不毛な議論は結論を分け続けている。が、数でいえば否定派の圧勝であろう。好きな音楽を聴いているあいだくらい、現実を取り囲むうんざりするようなトラブルの数々を、私たちはきっと忘れたいのだ。現実は現実であり、音楽(あるいは広義の文学)は虚構である、という分別が、この手の議論の結末に求められるもっとも凡庸な態度である。冒頭に引いた、この国のラップ・ミュージックにおける初期のクラシックは、いまでもその簡潔なパンチラインで虚構から社会を排除してみせる(残るのは自意識のみ、だ)。が、ときが流れ、キミドリ(あるいは、フィッシュマンズ)が自意識を選んだ代わりに直面していた実存不安をどうにかしのげるようになってくると、状況が変わってくるのは必然でもあった。そうした文化的切断にいらだち、9.11を視界に捉えつつ、虚構と現実をつなぐ関係性の回路を見出そうとしたのが、先の十年でもあったのだろう。そこで、社会派は決してクソではなかった。

 ところで、欧米において、ヒップホップはそうした回路を最初から保持してきたジャンルである。それはいわゆるコンシャス・ラップにとどまらない。必ずしも「訴え」という形を取らなくとも、吐き出すようなライムと威嚇的なビートを併せ持つ描写は、見捨てられた世界からのルポルタージュであり、告発であり、悪意であり、SOSでもあった(もちろん、商業ベースに乗る段階ではいくらかの誇張を含むエンターテインメントでもあったわけだが)。ときにそれは、作家と類似した環境で十代を過ごす子供たちに向けた啓蒙でさえ、あった。とは言え、こういった考えは時代遅れになりつつある。『Take Care』(Drake、2011)が放つゴージャスな憂鬱さは、ヒップホップに関心を持つアメリカの社会学者に衝撃を与えたことだろう。いま、この音楽が写し出すものはなんなのか。保守批評誌『ローリング・ストーン』はあらためてこう整理する。優れたヒップホップとは、パーティ・スターターであり、精神を向上させるものであり、意識さえ変えるものであると。

 さて、では本作はどうか。2011年の末に放り込まれた、コモンのフルレンスである。かつて、ギル・スコット・ヘロンがポリティカル・ラップの指針として残した「The Revolution Will Not Be Televised」を引用したこともある、いわゆる社会派としても知られるこのラッパーは、例えばドレイクの超然としたアンビエンスが席巻を続けるいまのシーンにおいて、あくまでも自らであることに徹している。ほとんど全曲を、活動初期からのパートナーであるNo I.D.がプロデュースし、客演には気心の知れたナズやジョン・レジェンドらが参加しているのみである。丁寧なバンド演奏に、粛々とリズムを刻むマシン・ビート、そこにもはや古典的とも言える、ソウルやピアノ・バラードのサンプリング・ループが調和される......それは、ヒップホップに慣れ親しんだ人の前ではなんら新鮮さを持ちえないだろう。「俳優ではなくラッパーであったことを思い出させるだけのアルバム」なんて皮肉の評もあるが、コモンは飽きることなく真摯にラップし続けている。「俺は普通の人たちに向けてラップしている 俺の名前は"スバ抜けてる"って意味だぜ 俺はヒップホップにとってのオバマだ」("Sweet"、筆者訳)

 もっとも、コモンは生粋の社会派ラッパーというわけではない。より正確に言えば、少なくとも、その社会性は新聞の紙面上に広がる類のものに限らなかった、ということである。自分と社会を不可避につなぎ、関連づける、逃れられないもの――すなわち、政治、人種、歴史、信仰、教育、ストリート・ライフ、そしてヒップホップそれ自体について、相応にラップし、ときには愛を語り、同業者をディスり、またあるいは人生論のような前向きな抽象性を好んだ、というわけだ。が、やや伝統的に過ぎるのか、極めて紳士的な本作の評価は割れている。『ローリング・ストーン』誌曰く、「彼の掲げる誇りや、慰めの言葉は、感化されるにはあまりにも予定調和だ」が、『ボストン・グローブ』紙は「"Sweet"や、Nasと向かい合った"Ghetto Dreams"は、コモンのヴァースにまだまだパワーがあることを証明している」とした上で、「ベスト・トラックとなるのは、彼の代名詞とも言える作風の2曲、すなわち、愛の超越性に寄せられた感動的な抒情詩である"Cloth"か、あるいは失恋の後悔を綴った"Lovin' I Lost"である」と称している。

 私も、大筋では素晴らしい作品だと思う。優れたヒップホップの条件をほぼ満たしているし、優美なピアノ・ループが完璧にキマる"Celebrate"には、誰しもが魅せられるだろう。個人的にもこれがベストだ、が......コモンがあらためて示したヒップホップに対する愛情に、何となく素直に拍手できない自分もいる。『The Dreamer / The Believer』は、ヒップホップに対してやや忠誠を誓い過ぎているかもしれない。


Trippple Nippples from Tokyo
12/20, 27, 31. 2011& 1/4. 2012

トリプル・ニプルス
w/ガーディアン・エイリアン、アナマナグチ etc...

 東京をベースに活躍するアヴァンギャルド・ロッカー、トリプル・二プルスがニューヨークで旋風おこした。大御所DEVOとのツアーサ・ポートをはじめ、初のアメリカでのショーを颯爽とこなす彼女たちは、総合的なエンターテインメント・グループである。あらためてエンターテイメントの役割を改めて考えさせられる。
 トリプル・ニプルスは日本人の女子3人(ヴォーカル)とアメリカ人男子3人(ギター、シンセ、ドラム)の6人編成。この編成になったのは最近らしく、バンドはすでに5年ぐらい活動をしている。
 今回のアメリカ・ツアー全体の流れは以下の通り。

12/10 Philadelphia@The Blockley, U city
12/13 NYC, N.Y.@ Irving Plaza/with DEVO
12/14 Brooklyn,N.Y@Glasslands
12/15 Falls Church, VA@ State Theatre/with DEVO
12/16 Atlantic City, NJ@ Showboat Casino/with DEVO
12/17  Long Island/Huntington,ニューヨーク@ Paramount Theatre/with DEVO
12/20 NYC, N.Y.@Pianos
12/21 Chicago.IL @Empty Bottle
12/27 NYC N.Y .@ Pianos
12/31 Brooklyn, N.Y @285 kent
1/4 Brooklyn, N.Y.@Shea Stadium

 DEVOとのショー以外は、〈グラスランズ〉、〈ピアノス〉、〈シェア・スタジアム〉などのインディに優しい会場。私は、20日(@ピアノスw/ハード・ニップス)、27日(@ピアノスw/スーザン)、1月4日(@シェア・スタジアムw/ガーディアン・エイリアン、アナマナグチ)の3公演を見ることができた。
 〈ピアノス〉でのショーは、マンハッタンらしく、共演のバンドも知っているバンドと知らないバンドが一緒にブッキングされていた。目当てのバンドを見たらそれで終わり、という感じで、私はあまり好きではない。ショー自体は良かったのだが......。それに比べて〈シェア・スタジアム〉では、共演のバンドもいまのブルックリンを代表するブッキングだった(DIYスタイル!)。やっぱりこちらの方がしっくり来るな。

 〈シェア・スタジアム〉で共演したバンドを紹介しよう。
 ガーディアン・エイリアンは、元リタジーの、グレッグ・フォックス率いる、クラリネット、シンセ、ギター、ドラム、独特なヴォーカルで編成された、アバンガルド・バンド。
グレッグ・フォックスのドラムは脅威的、ボーカルの女の子は完璧に違う世界にいる、すべての楽器が重なり、織りなす音楽は、スペクタクル感いっぱいである。
 アナマナグチは、ゲーム音楽に影響を受けた、ブルックリンではトップ・クラスの人気バンド。彼らはこの日のシークレット・ゲストで、当日に知らされた。ステージにグロースティック(蛍光塗料で光るスティック)をはべらせ、ドラムまわりにもベースの弦にも蛍光色を使う。暗闇なのに変な明るさ、さらに彼らのゲーム音楽が会場を盛り上げる。

 どちらもいまのブルックリンをリードするバンドだが、ガーディアン・エイリアンは、DIYにこだわり、アナマナは余裕を見せながら、コーポレートな大きな会場でもDIYでもどちらでも対応できる。音も正反対だ。このふたつのバンドのあいだにトリプル・二プルス、その前には(筆者の在籍する)ハード・ニップス、ノー・クレジット・バッド・クレジットという、寄せ鍋のような夜だった。

 それではトリプル・二プルスについて書こう。
 ショーは3日間ともセットは同じだが、何度見てもステージ衣装、パフォーマンスには目を引かれる。ミュージック・ショーというよりはミュージカル風キャバレーで、フロント3人の女の子はパンツ1枚、胸にはテープを貼っただけで、白と赤の点々が、顔と体をうめつくすというアーティな出で立ち。フワフワした白い羽のような、帽子のような被り物をかぶって登場。
 男の子は幽霊のような白い布を着て、頭にはハリネズミのようなトゲトゲしたものがのっている。ショーは流れるように進むし、バックのバンドもかなり良い腕前。頼もしい存在である。
 音楽はハイパーなエレクトロ・ダンス・ミュージック。叫んでいるので歌詞はキチンと聞き取れないが、鳥がキーキー鳴いているかと思えば、応援団長のようなドス声になったりと、意外と体育会系で、かなりの爽快感があった。一歩間違えると色物になりそうなところを、セクシーを強調するでもなく、クールに、アート作品として観客を盛り上げる。緊張感、圧迫感、そしてばつぐんの突撃感で、最初から最後まで体を張ってエンターテイメント道を突き通している。素晴らしいライヴ・パフォーマンスだった。


photos by Andrew St. Clair

https://www.trippplenippples.com/

サイプレス上野とロベルト吉野 - ele-king

 新年のはじまりを、皆さんはどう過ごされただろうか。私は、地元である群馬県で実に典型的な年始を過ごした。十代という、いま思えば恐ろしい季節をともに過ごした旧友たちとの再会である。懐かしい顔ぶれにほころぶ感情もあったが、ほとんどが都心へ出ている面子だったので、嫌でも地元の相対化を迫られることとなる。観光業的には温泉の名所(草津町)等が知られる群馬だが、平野部には典型的な地方の郊外が広がっている。モータリゼーションを前提とした消費文化は、主要道路の脇にコンビニ、ユニクロ、マクドナルド、ブックオフ、TSUTAYA、まあそういった「どこからかやって来た(しかし)どこにでもあるもの」をものをきれいに並べてみせた。そして、それまでは通過する用事さえな かったような空き地に次々と建設される、ショッピングモール、モール、モール......。巨大駐車場を構え、異常な集積率でテナントを詰め込んだそれらは、敵か味方かも分からぬ微笑みを見せ、週末には家族連れやカップルを次々と飲み込んでいく(そこには、あらゆる個性を奪われたHMVやヴィレッジバンガードなんかもある)。率直に言って、そこ(地元)で語れるストーリーというものは限られている。

 サイプレス上野とロベルト吉野(以下、サ上とロ吉)も、「地元」を引っ提げて登場した連中であった。が、そこには、例えばザ・ブルー・ハーブやGAGLEがその初期において見せていた「(東京ではないという意味での)地元」のような、留保の態度は全くなかった。磯部涼による 最新の力著『音楽が終わって、人生が始まる』によると、横浜市戸塚区出身(今も在住)だというこのラップ・グループは、"自己嫌悪"(キミドリ、1993)における実存不安を普遍的なものと認めたうえで、出口のない自己不安の罠にハマらぬよう、意識的にストーリーを語ってきた連中だともいえる。闘争も逃走も物語もなく――最初のフル・レンスは、自身のルーツにちなんで"夢"と名付けられていた。そのアルバムを聴き終えたときに浮かび上がるのは、極端に言えば「自分を探してると生きづらいけど、みんなで集まって盛り上がってるとけっこうイケるぜ!」というメッセージで、それは『ルフィの仲間力』(安田雪著、2011)が分析する集英社の人気漫画の思想に近いのかもしれない。もっともそれは、「リア充的な価値観に生きろ」という勧告ではなかった。そこには、「俺たちはやり過ごしてるだけだ」という、開き直りがあったのだ。その意味で、『ドリーム』(2007)収録の"Bay Dream"は、ゼロ年代のドメスティック・ラップにおけるひとつの思想であった。

 そんな風にして、ゼロ年代をのらりくらりとサバイブした(やり過ごした)サ上とロ吉は、本作で意外にも若干の戸惑いを見せている。それは表題曲のミュージック・ヴィデオに端的に表れており、あらゆるから騒ぎを封印し、ふたりはカメラに向かって淡々と曲を進めていく。ぶつぶつとしたレコード・ノイズが残るオーケストラル・ループの上で、上野はいつになく言葉を選んでいる。「思い出なんて別にないよ」――そう突っぱねるしかない、無残に変わっていく、しかし圧倒的に変わらない地元で、いつものコースを回りながら、「淋しくないといえばウソになるけど」、それでも、「笑い飛ばす、笑い飛ばす、笑い飛ばす......」 ("YOKOHAMA LAUGHTER")。それは、彼らが遠ざけていたはずの"自己嫌悪"との不可避の接近をなんとなく予感させる。あるいは単なるマンネリズムなのかもしれないが、傍目にはうまくやっているかに見えたヨコハマ・ジョーカーは、実は、そんなにうまくいっていなかったのかもしれない。あるいは、常に固有の横浜とともにあった彼らのストーリーは、実は、「"横浜"という名の、実際は入れ替え可能などこにでもある場所」で紡がれていたのかもしれない。

 しかし、ヨコハマ・ラフターに緩やかに転身した彼らには、その表現の原理上、「うまくやってる」というポーズを取り続ける必要があり、それはそれである種の苦しさを彼ら自身に与えているのかもしれない。彼らの音楽は常に遊びとともにあったし、本作でもLUV RAW & BTBと"空っぽの街角"(クレイジーケンバンド、1998)で遊んだり、「しゅばばばJAPAN」でZZ PRODUCTIONらの面々とばか騒ぎしたりしているが、『YOKOHAMA LAUGHTER』は、お世辞にも愉快でブリリアントな作品ではない。もっともアッパーな"★~PLAY~★"にさえ、ある種のメランコリアが漂っている。この「どこにも行けなさ」は、本作をフルレンスにしなかった彼ら自身がよく理解しているのではないだろうか。サ上とロ吉はもう、あまりうまくは笑っていない。ハードなときこそ笑い、ゲロって、発泡酒片手にぶちかまし、のらりくらりやっていくサ上とロ吉を見続けたい、というのが本音だ。その虚勢が地方都市(地元)で生きる人間にも希望を届けたと言えるが、「今もそれなりにうまくやってる、でもけっこうしんどいんだよね」という声が腹のなかにあるのなら、それを聴いてみたい気もする。まだまだ先は長いのだから。3月のフルレンスが楽しみだ。

#12:日本人て暗いね(1) - ele-king

 年末年始は静岡の実家で過ごした。31日の夜は親と一緒に紅白を見て、それから小学生の息子を連れて近所の寺に除夜の鐘を突きに外に出た。自分が静岡に住んでいた頃、大晦日の夜11時半過ぎになると、その鐘を突いたものだったので、いつか子供にも経験させたいと思っていた。鐘を前に合掌して、そして思い切り叩けと、僕は息子に教えた。
 除夜の鐘の響きには、時間的な区切りを告げている以上に、独特の無常観がある。家から歩いて1分ほどの場所で鳴っているこの音を、僕は生まれてから18年連続で聴いているのだから、影響を受けていないはずがない。鐘を突き終わると、それから僕はすぐ近くにある神社に場所を移した。時計の針が12時を過ぎ、新年を迎えたところで境内では"木遣りの歌"が歌われた。これを僕は聴きたかったのである。
 "木遣りの歌"は13世紀初頭(鎌倉時代)、火消しの歌として生まれている。それが人気となって全国に広がって、それぞれの地方のヴァージョンが存在している。静岡で歌われている"上総くずし"(くずしとはヴァージョンを意味する)は、十五代将軍の徳川慶喜が大政奉還後、静岡に隠居するさいに、武士に代わって200人の子分を引き連れ護衛をつとめた新門辰五郎の一味が歌った歌だとされている。新門辰五郎とは、当時もっとも有名な江戸の侠客(ないしは火消し、つまりヤクザ)で、天皇家よりも徳川家を慕っていたことでも知られ、慶喜とも仲が良く、清水の次郎長とも交友関係があったというから、その縁もあって駿河までの道中の護衛をしたのだろう。鐘を突いた寺の筋迎えには当時新門辰五郎をが宿泊したことで知られる常光寺があるが、そうしたエピソードを僕は自分の父から伝聞するほどこのヤクザはいまでも民衆から愛されている。

 新年のお参りの人で混み合ってきた神社で、僕は集中して、"木遣りの歌"を聴いた。新年の神社で演ずる一発目の曲がヤクザの歌というのも面白い伝統だが、僕がもっとも今回注意を払ったのはいまからおよそ90年前に生まれた歌のその歌メロだ。"木遣りの歌"自体は有名だが、地域によって歌詞が違う。僕が気になっているのは静岡で歌い継がれている上総くずしのサビのフレーズである。ロングトーンを多用した印象的な旋律だ。

 ヨーヲィサーエンヤラサーノセーエヤレコノセ~
 サーノセーイーエーハ
 アレワサエーエ、ヤーアラネ~

 「サーノセーイーエーハ」のところは、火消しであるから「イ」「ハ」などそれぞれ組の名前を言っているのだろうか。僕自身が歌詞の意味を解明したわけではないが、それでもこの曲は現代に、ひとつの事実を伝えている。それは祭りで歌われるこの曲が、祭りというにはダウナーで、暗すぎるのだ。音階をたどっても、マイナー・コード、つまり短調である。ブラジル人やアフリカ人に、これが祭りの音楽だといったら信じられないのではないだろうか。スピリチュアルに思うかもしれないが、しかしこれはれっきとした俗曲である。そして、実のところ僕はこの暗さを確認したかったのである。

 僕は静岡市内の歓楽街で生まれ育った。家の隣は「トニオ」という大きなクラブだった。ラリー・レヴァンのクラブではなく、演歌のかかるクラブである。僕が小学校の頃まで(1970年代のなかばまで)、薄い壁を伝わって、「トニオ」でかかる演歌が毎晩のように流れてくる。僕が小学校の頃は阿久悠の全盛期だったが、阿久悠の洒落た言葉よりもひと世代前の"悲しい酒"のような、陰々滅々としたいわゆる古賀メロディが、ほとんど同じ部屋にいるような音量で聴こえてくるのだ。僕は窓を開けて、聞こえようはずもないのに何度となく「トニオ」の壁に向かって怒鳴った覚えがある。小4からラジオ少年となって、やがて洋楽を聴いて、とにかく浴びるように聴いたのは、僕の音楽経験の古層にあるであろう、そうした日本的な暗さがもう二度と姿を見せないように、新しい層を堆積させるためでもあった。
 ところが、日本的な暗さを葬り去りたいと思っていたのは、あとから思えば僕だけではなかった。歌謡曲がピンク・レディやキャンディーズの時代を迎え、そしてアイドル歌手の時代へとシフトする頃には、酒と演歌に酔っていた「トニオ」は取り壊され、実家の隣には大きな空き地が生まれた。空き地は駐車場となり、かれこれ40年近くもそのままである。時代そのものが演歌に表象される酒にまみれた感傷、もの悲しさ、哀愁、自虐、そういったものを押し流そうとしていたのだろう。歌謡曲からJポップへと呼び名が変わってからもさらにまた、暗さのうえには分厚い何かが何重にも積もっている。僕がそうした葬られた暗さを温ねてみたくなったのは、結局のところ自分が好んで聴いている音楽からはついに暗さが消えたことがないと思ったからである。

 さて、神社の境内で"木遣りの歌"が歌い終えると、次は獅子舞(これもまた、面白い芸能である)、そしておかめとひょっとこのダンスだ。最前列で見ていた息子は彼らのパフォーマンスを充分に怖がっていたが、神社では毎年恒例の甘酒がもちろん無料でふるまわれ、大人たちは良い気分になっている。加太こうじ編集の『流行歌の秘密』(1979年)によれば、そもそも日本には日本で生まれた音楽などないそうだ。日本的と呼ばれるすべての音楽の源流は、半島、中国、そしてインドにある。そうはいえ、インド仏教と中国仏教と日本仏教が違うように、大陸からやって来たメロディはこの島国におけるヴァージョンとなって発展している(要するに、東アジア文化の混合)。多くの識者によれば、そのもっとも古い調べは、つまり日本の音楽の源流になるもののひとつは天台宗の声明だという。声明とは、西洋における賛美歌のようなもので、僕は昔、忌野清志郎の"500マイル"を聴いたとき(これはピーター・ポール&マリーによるアメリカのフォーク・ソングのカヴァーでありながら)、その節回しが声明的だと思ったことがある。もし邦楽という言葉を正確に使うのなら、声明的な音楽、そこを土台に広まったご詠歌をベースとする世俗音楽ということになる。浪花節にしろ江戸の三味線歌謡にしろ、ご詠歌とは、この国の大衆音楽のある種の通奏低音だ。そのペシミスティックな響き、無常観、ないしはもの悲しさや哀愁を僕はこだま和文やゴス・トラッドの音楽からも聴き取ることができる。蓋をされて、逃げ場を減らされた暗い情感は、いまではそうしたオルタナティヴな場面において継承されているとも言える。

 歌謡曲にとっての致命傷はニヒリズムというものがないことだと言ったのは寺山修司だが、ダブステップなんかを好んで聴いている僕には、暗い情感の表現が価値のないものだとは思えない。明るくふるまうことが対人関係において約束事になっているこの世界において、暗さが抑圧された感情を解放することはいまにはじまったことではない。西欧の若い世代においても、スクリューのような音をフラットさせる手法が幅をきかせているのが現代だ。あのドロッとした感覚は、滞留し、喉に詰まったような感情を、天突きを用いてところてんを押し出すように逃がしてあげているように僕には感じる。
 声明における鈴の音、獅子舞の笛の音色や太鼓の音は、バレアリックな観点でいえば寂しさいっぱいかもしれない。しかし、それで盛り上がっている文化がここにあるのも事実なのだ。おかめとひょっとこ、獅子が舞台からいなくなると、餅(あるいはお菓子)がふるまわれる。僕は自分の身長の高さを活かしたキャッチングで多くの餅(あるいはお菓子)を手に入れ、そして家に帰ると、母親の所有していたレコードを引っ張り出した。レコード・プレイヤーはもうないので、僕はかつて自分が憎悪した曲の歌詞を読む。「酒よこころがあるならば/胸の悩みを消してくれ/(中略)/好きで添えない人の世を/泣いて怨んで夜が更ける」
 ジュリアン・コープがたどり着けなかった生層がその向こう側にはある。ブラック・ミュージックにおけるヴードゥー、ジャマイカ音楽におけるメントのようなものだ。かのジョン・サヴェージでさえ、日本の音楽を語りながらこの歴史ある無常観にたどり着けていない。西欧のポップ・カルチャーからはまだ日本が見えていないのだろう。ただひとつ、ジュリアン・コープの勘が鋭いと思うのは、日本とイギリスが似ているという指摘だ。たしかにこのふたつの国の音楽には、陰々滅々としたものへの共振があるように思える。(つづく)

Beirut - ele-king

 昨年は再上映されたエミール・クストリッツァの代表作であり「旧ユーゴ映画」である『アンダーグラウンド』を久しぶりに再見したが、そこに込められた祖国を失った人びとの怒りの質量に改めて圧倒されてしまった。その抑えようのないものを表現するのはクストリッツァの場合大抵あの騒々しさなわけだが、そのほとんどはあまり脈絡なく頻繁に現れるブラス・バンドが鳴らすロマの音楽をルーツとするバルカン音楽に支えられている。脈絡がないのは逆にいえば、ロマの音楽は伝統的に、というより旅芸人たちの音楽として受け継がれてきた性質上つねに人びとの生活の側で賑やかに鳴っているのが当たり前だったからだ。流浪の民の寝食の傍らにあった喜びや悲しみが、管楽器を鳴らすための人間の息とともにそこではいつだって吐き出されている。

 レバノンの首都のベイルートを名乗るザック・コンドンもまた、10代の頃東ヨーロッパを旅して発見したというバルカン音楽やロマ音楽にそうした生活との緊密さを感じ取ったのではないだろうか。彼の作る楽曲の骨格そのものはシンガー・ソングライターの一般的な手法を大きく外れるものではないが、その個性はブラス・バンドの演奏により発揮される。そのふくよかな管弦楽器のアレンジから目に浮かぶものは「市井の人びと」そして「路上」である。東欧の街角で開かれるパーティに、着飾って集まった人びとを踊らせるために登場する楽団の音楽だ。
 ディケイドのはじまりがテロの現場となったニューヨークのいち部としてのブルックリンにおいて、その10年を通して「アメリカでないもの」がインディ・ロックと様々な形で邂逅し発展しそして浮上したのはロジカルな展開だったといえるが、ベイルートにとってのブレイクスルーであった2007年の『ザ・フライング・クラブ・カップ』 はシーンの最盛期をとりわけ鮮やかに彩った1枚だった。もしくは、現代版のチェンバー・ポップのヴァリエーションとしても同時代性を持ったアルバムだったが、例えば同じブルックリン拠点の盟友グリズリー・ベアのオーケストラがアカデミックで密室的なテンションを孕んでいることに比べても、もっと鷹揚で野外的な味わいを含んでいた。舞踏音楽であることを強調するかのように繰り返されるワルツのリズムの上でラフに演奏されるホーン類、そしてペーソスに満ち満ちたメロディを朗々と歌い上げるザックの深いヴォーカル。バルカン音楽を主たる参照点としながらもそこだけに留まらず、ヨーロッパの古い大衆音楽のノスタルジックな響きを現代のインディ・ロックに持ち込み、それを彼自身の感情の発露としての歌へと昇華させていた......そこには聴き手を感心させる賢さよりも、胸を打つ情熱があったのだ。
 EPを挟んでの4年ぶりの新作。ややシアトリカルにも感じられた『ザ・フライング・クラブ・カップ』の凝ったアレンジメントに比べればずいぶんシンプルで、アルバムを通してテンポや曲調も穏やかになり、落ち着いたムードで統一されている。前作の湿った色気よりも陽光の明るさを感じる。意気揚々と歌う金管楽器や弾むマーチングスネアドラム、華麗なストリングス・アレンジはすっかり彼の音楽的アイデンティティとして確立されており、例えば"ゴーシェン"のようにピアノと歌が基本となっている曲でその自信のほどが窺える。マーチング・バンドが隊列をなしてゆっくりと進んでいくような"ペインズ・ベイ"、物静かなアコースティックの楽器類の演奏がやがて息がたっぷりと楽器へと吹き込まれる逞しいワルツへと展開する"ポート・オブ・コール"、聴きながら歩けば自然と胸を張りたくなる。どれも開放的で、晴れやかな余裕が漂っている。

 ザック・コンドンは変わらず、どこか遠い国の......おそらくは東ヨーロッパの街角の路上を夢見ているように聞こえる。ニューメキシコ州の故郷であるサンタ・フェをモチーフにしている曲があることにも表れているが、基本的には彼個人の内省を連想させるリリックが目立つ。しかしそのなかで、「僕は行方不明で まだ見つかっていない/誰にわかるだろう」と歌う曲のタイトルが"ヴァガボンド"、すなわち「放浪者」であることが象徴的だ。彼はロマンティックにも自分の日々にある孤独や迷いとかつての放浪者たちのそれを重ね合わせるように、彼らの音楽を取り込むことでその境目を消していく。このアルバムの開かれた力強さは、そのことに対する彼の誇らしさの表れだろう。路上で音楽とともに生きた人びとの感情の起伏の豊かさが、その音楽にこそ宿っていることを確信しているようだ。
 どうしようもなく切ないメロディを持ちながら、やはりゆったり堂々とした演奏の"イースト・ハーレム"が素晴らしい。「イースト・ハーレムで一輪の薔薇がまた萎れる」......ニューヨークの日々の悲しみは、しかしその音楽とともに彼方へと旅に出る。その想像力は日本で生活する我々にも有効だと信じたい。そこで僕たちは、ワルツを踊ることだろう。

Chart by UNION 2012.01.09 - ele-king

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GLENN UNDERGROUND

GLENN UNDERGROUND Forgotten Art MUSIC 4 YOUR LEGS / JPN »COMMENT GET MUSIC
近年のセオ・パリッシュのプレイチャート、またデリック・メイの最新ミックスCDにトラックがピックアップされるなど常に現役であり続け、素晴らしい楽曲をシカゴから放つディープハウス界の重鎮グレン・アンダーグラウンド待望のNEWアルバム。前作『Legacy Of The know』かわずか1年、その前作の流れを踏襲しつつも本作ではフロアから少し距離を空け、リスニングアルバムとしての要素を強めた楽曲製の高い内容に。『Forgotten Art』というアルバムが示す通り、ジャズ~ジャズファンク、ディスコ、ブラジリアンといったクラシックスの素晴らしさをハウスというフォーマットで再提示するかのようにそれらの要素を巧みに取り入れ、GU節ともいえる黒いフュージョン色が圧倒的な完成度と共にリスナーを魅了する1枚。

2

SCOTT K. VS. STEVIE WONDER

SCOTT K. VS. STEVIE WONDER As (Box Edit) BOX MUSIC / UK »COMMENT GET MUSIC
DJ COLE MEDINAとのタッグで注目を浴びたJAMES BROWNやTHE O'JAYS"I Love Music"のエディットがFRANKIE KNUCKLESやDERRICK MAYのヘヴィープレイもありヒットしたSCOTT K.が、今盤ではSTEVIE WONDERの名曲"As"をエディット!!ブラックネス溢れるKDJマナーなハウストラックへと昇華したA-サイド、エフェクティヴにダビーに組たてたセミ・インストB-サイドもヤバい!!お早めに!

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BRONX DOGS

BRONX DOGS Tribute To Jazzy Jay WHITE / JPN »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYリミックス!!!! PERRY BOTKIN & BARRY"Riot"などのオオネタを引用したオールスクール感満載のファンキー・コラージュトラック"Tribute To Jazzy Jay"。最近ではENDLESS FLIGHT、AUTODISCOTEQUE等で活躍するRICHARD SENによるユニットBRONX DOGSの"Tribute To Jazzy Jay"をDJ HARVEYがリミックスしたクラシックを片面収録したホワイト盤!!

4

MARCEL DETTMANN

MARCEL DETTMANN Deluge 50 WEAPONS / GER »COMMENT GET MUSIC
DETTMANNの2011年最後のシングルはベルリン・テクノ・シーンの裏番・MODESELEKTOR主宰の50 WEAPONSから到着。 ヒプノティックなベースライン上をトビ系のウワモノが跳ね回る危険極まりないバッドトリップ・ミニマル"Deluge"と重量級のキックが容赦なく打ち込まれるインダストリアル・テクノ"Duel"共に鉄壁のフロアキラー、特にB-1"Duel"のバウンスして打ちまくる捩れキックのソリッドさ加減はその一音だけでもシビれてしまいます。

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EQD

EQD Equalized 111 EQUALIZED / GER »COMMENT GET MUSIC
MARCEL DETTMANNと並ぶOSTGUT TON一派の代表格・SHEDの変名・EQDが放つ待望のファースト・アルバム。ベルリン・テクノを席巻するレーベル・OSTGUT TONから2枚のアルバムを発表、名実共にモダン・テクノの最高峰へと登り詰めたSHEDことRENE PAWLOWITZが、2007年より始動させた別プロジェクト・EQDのファースト・アルバムをドロップ!! 本作「EQUALIZED 111」は、これまでリリースされた12"x 5枚をコンパイルした全10曲の構成で、アナログ・ユーザー以外にはまさに待望と言える内容。徐々にビルドアップしていくヒプノティックなビートに震えるM-1、国内外のTOP DJがヘビー・プレイしたソリッド・ミニマルM-5等等、どこを取ってもキラー・チューンの嵐!MARCEL DETTMANNをはじめとするOSTGUT TON一派、SANDWELL DISTRICT、PETEER VAN HOESENなど現在進行形のテクノがストライクなリスナーはマストな最強盤。

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LINKWOOD

LINKWOOD Secret Value SHEVCHENKO / UK »COMMENT GET MUSIC
FIRECRACKER傘下の要注目レーベルSHEVCHENKOの4番、VAKULAの3部作に続いてはLINKWOODの新作がリリース!ジワジワと空間を埋めていくシンセ・フレーズに鋭角なハット、Bassの抜き差しでテンションを変化させ展開されるA-1、有機的に変化するスペーシーなSEが重なりアンビエンスに上昇、ロング・ミックスに重宝しそうなA-2に、息をのむ美麗なシンセが舞う壮大なディープハウスB-1はぜひ野外で。再プレス無しの180gのクリアヴァイナル重量盤!

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MILTON BRADLEY

MILTON BRADLEY Dark Of The Psychic Unknown DO NOT RESIST THE BEAT / GER »COMMENT GET MUSIC
MILTON BRADLEY主宰、ベルリン・アンダーグラウンド・シーンで熱い注目を集めるDO NOT RESIST THE BEATレーベルから最新第7弾の到着。このDO NOT RESIST THE BEATは勿論、PROLOGUEやZOOLOFT等からのリリースやPERCやCIO D'OR、ABSTRACT DIVISION等へのリミックス提供、更にMARCEL DETTMANNの最新ミックスCD「Conducted」やDJ NOBU「On」等にもその楽曲が収録されるなど、この数年で瞬く間に頭角を現したMILTON BRADLEY、本作でも音数少ないダビーなボトムをベースにジリジリとノイジーな音響系ウワモノが捩れる、一貫して凄まじくドープなアンダーグラウンド・サウンドを唸りを上げて鳴らしており、全く目が離せない好内容となっています。

8

HARMONIOUS THELONIOUS

HARMONIOUS THELONIOUS Drums Of Steel ASAFA / GER »COMMENT GET MUSIC
2011年最後の最後にHARMONIOUS THELONIOUS新作が到着!!A ROCKET IN DUB, ANTONELLI ELECTR., REPEAT ORCHESTRA etc..と幾多の名義を使い分けるSTEFAN SCHWANDERニュー・プロジェクトとして昨年リリースしたアルバム「Talking」及びそのシングル・カットで聞かせたミニマル + アフリカン・リズム・パターンで展開する激プリミティブ・サウンドが大反響となったHARMONIOUS THELONIOUS、来年早々にリリース予定のセカンド・アルバム「Listen」からのシングル・カットとなる待望の新作12"。 幻術的なエレクトロニック・サウンドとめくるめくリズムの洪水!

9

A.P.

A.P. Garden Therapy GHOST SOUNDS / SWE »COMMENT GET MUSIC
北欧スウェーデンからミニマル・ダブ/アンビエントの新潮流を巻き起こしているレーベル・GHOST SOUNDS主宰者・A.P.の新作が登場!!マニア心をくすぐる数々の限定盤をリリースし、本物を求めるリスナーから高い支持を得ているスウェーデンのレーベル・GHOST SOUNDS。本作は20分にも及びロング・トラックを片面1曲ずつ収めたA.P.渾身の作品! A面のオリジナルでは、彼にしては珍しくトライバルなリズムを導入しビートの立った躍動感溢れるトラックを披露、そしてB面には盟友ATHEUS(STYLAX/SILENT SEASON)による冷厳なドローン・シンセが空間全体を覆ういつものGHOST SOUNDS路線に近いアンビエント・リミックスを収録。

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HAIR

HAIR Going Adore Alley MENTAL GROOVE / GER »COMMENT GET MUSIC
LTD 100!LUCIANOやMISS KITTINらをいち早くピックアップしたことで知られるMENTAL GROOVEとDISK UNIONのコラボレーション・シリーズが始動、本作はHOPEN名義やNATHAN JOHNSON(WAGON REPAIR)とのユニット・STARTING TEETHで活動するCHILDE GRANGIERの新たなプロジェクト・HAIRのファースト・アルバム。シネマティックな音像がアルバム全体のムードを決定付けている冒頭の佳曲"Where The Palms Grow"、都市の雑踏を拾ったかのようなフィールド・レコーディングスと物悲しいピアノ、散文的なヴォイス・サンプルが乾いた叙情を感じさせるM-3"Indian"等、ノイズとアンビエント、エレクトロニカが自由に混ざり合った非常に興味深い仕上がり。MENTAL GROOVEのオンラインショップとDISK UNIONのみでの販売となります。

Chart by TRASMUNDO 2012.01.09 - ele-king

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DADDY-KAN

DADDY-KAN Music for the MIDNIGHT CRUISER vol.1 »COMMENT GET MUSIC

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CMT


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5LACK

5LACK blacksmokecar »COMMENT GET MUSIC

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DJ HIGHSCHOOL

DJ HIGHSCHOOL INT'L PLAYERS CLASSICS VOL.02 »COMMENT GET MUSIC

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ILL FANTASTICO

ILL FANTASTICO STEAL MY SUNSHINE vol.1 »COMMENT GET MUSIC

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ISSUGI&DJ SCRATCHNICE

ISSUGI&DJ SCRATCHNICE WHERE OWN WONDER »COMMENT GET MUSIC

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COSAPANELLA

COSAPANELLA The Cosapanella from Mdm »COMMENT GET MUSIC

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DJ 49

DJ 49 THE SWEETEST HOLIDAY »COMMENT GET MUSIC

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BUDAMUNK

BUDAMUNK LIGHT THE CANDLES »COMMENT GET MUSIC

10

DJ ASAMA

DJ ASAMA White serenity »COMMENT GET MUSIC
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