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〈スペクトラム・スプールズ〉(エメラルズのジョン・エリオットが〈メゴ〉傘下でA&Rを務めるレーベル)の11枚目は、バンクーヴァーからコンラッド・ヤンダフによるデビュー・アルバムで、〈ナイス・アップ・インターナショナル〉から2010年にカセットでリリースされていたもののアナログ化。これが奇しくも同じバンクーヴァーから飛び出した音響派ロカビリーのダーティー・ビーチーズとエメラルズを橋渡しするような内容となり、あまりにチープな混沌がヘンな未来を感じさせてくれる。スキルがないのにイメージだけが豊富で、曲によってはスペースメン3のデモ・テープのようになってしまったり。
スーサイドがノイ!をカヴァーしているようなオープニングからいきなりサウンドはヨレヨレ。どの曲も稚拙で乱暴なエディットなのに、あっという間に引き込まれている自分がさっぱりわからない。ノー・UFOズというユニット名は単純にデトロイト・テクノを想起させるものだけれど、なるほど、デリック・メイの〈トランスマット〉が89年にリリースしたK・アレクシー・シェルビー「オール・フォー・リ-サ」からBサイドの"ヴァーティゴ"が続いてカヴァーされている。これをアシッド的な感触はそのままにグルーヴ感を削いでドカスカと叩きつけたと思ったら、すぐにもずっしりとしたドローンへと雪崩れ込み、とんでもなく行き当たりばったりな構成にはさらなる拍車がかかっていく。シームレスという流行り言葉が踏みにじられていく感触は痛快というのか、まるで中原昌也みたいだというべきか。そして、急に音が途切れてBサイドへ。
後半は『ノイ2』を狙った構成なのか、全体にコラージュ的な要素が強く、リズムにのった曲はしつこく何度もクラッシュを繰り返す。ちょっとこれは煙の世界に行ってみないと、本当の効果はわからないかもなーと思いながら、透き通るようなアンビエント・ドローンでひんやりとエンディング(まー、単純に実用性は高いと思われます。レインジャーズの失ってしまったものがここにはあるというか)。
録音された順番は逆になるけれど、昨年末にリリースされた『マインド・コントロールズ・ザ・フラッドEP』(パブリック・インフォーメイション)はもう少しスキルがイメージを具体化するようになっていて、見せてくれる景色も明確になってきた(その反面で失われた面もあると感じてしまうところがトリップ・サウンドは難しい)。クラウトロック・リヴァイヴァルも突き詰めていけば、やはり辿り着くのはここなのだろう......か。この柔らかさ。この感触。この......。ああ、スモーカーズ・デライト......
三田 格