前にも書いたことだが、今年の正月に静岡でデリック・メイのDJを聴いた。彼は、ロバート・オウェンスが歌う、あのたまらなくセクシャルなクラシック"ブリング・ダウン・ザ・ウォールズ"をスピンした。なんといってもあの曲は、オウェンスの喘ぎ声にも似た歌い方もさることながら、ベースラインがきまっている。ものの10秒でアドレナリンがこみ上げてくる、1986年あたりのシカゴ・ハウスのグルーヴ。2008年にハーキュリーズ&ラヴ・アフェアが〈DFA〉からリリースしたデビュー・アルバムにはそれがあった。"ブラインド"におけるアントニー・ヘガティの歌とアンディ・バトラーのトラックは、われわれを危険な領域に持ち上げた。そしてフランキー・ナックルズのリミックスがそのグルーヴを完璧なものにした。快楽の館、美しき蕩尽の世界、ようこそ、ディスコ/ハウスの楽園へ!
ハーキュリーズは確信犯的なリヴァイヴァリストだ。2年前に登場したとき、彼らははっきりとクラブ・カルチャーにおける最良の場所にはドラッグとセックスがあると話し、その文化の復興について説いた。それはニューヨークのディスコ・アンダーグラウンドがエイズによって長いあいだ言えなくなっていた言葉でもあった。音楽におけるエロティシズムの追求は、最高のカリスマ性を備えたヴォーカリストとティム・ゴールドワーシー(DFA)の力を借りて走り出した。バトラーは70年代のディスコと80年代のハウス・ミュージックを研究して、強い曲をいくつも作った。それら結実が2008年の素晴らしいデビュー・アルバムだった。この度発表した『ブルー・ソングス』は2年ぶりのセカンド・アルバムである。
そしてそれは......僕には凡庸なセカンド・アルバムに思える。ヘガティの声とゴールドワーシーのドラム・プログラミングはたしかに強力だったけれど、彼らの不在だけがアルバムのグレードを落としているとは思わない。単純な話、新作にはデビュー・アルバムにあった強さがないのだ。中途半端にポップを志向しているうえに、説得力の乏しいバラードまでやっている。その凡庸な展開が前作にあった危うさを水で薄めている。がっかりしたが、それだけ僕は楽しみにしていたのだ。
まったく魅力を欠いたアルバムというわけではない。"マイ・ハウス"は1986年あたりのシカゴ・ハウスのベースラインを持った曲で、間違いなくベスト・トラック。シングル・カットするとしたらこれだろう(12インチで出たら買うだろう......)。ディスコのベースとドラマティックなストリングスが掛け合う"ペインティッド・アイズ"も、ミディアムテンポの綺麗なラヴ・ソング"レオノラ"も、あるいは"ボーイ・ブルー"のようなチルなバラードも悪くはないのだけれど、まあとにかく"ブラインド"のように感情を釘付けにするような強さがない。ただ、そのまま、ぼーっと聴き流してしまうのだ......ドナ・サマーのシングルのB面のように。
楽しみにしていた作品がいまひとつだったときは悲しいものだが、考えてみればこの2月はインパクトの強いアルバムが重なっていた。ジェームス・ブレイクとトロ・イ・モアをはじめ、ワイアーの新作も良かったし、ザ・ストリーツの最後のアルバムも実はこっそり聴いていた。今日は自転車で下高井戸まで行ってスラックの新しいアルバムを買ってきた。同じ時期に競合が多すぎたというのはある。時間をおいてまた聴いてみればもうちょっと好きになれるかもしれないけど......。























ハウス、ブレイクビーツの影響を受け、89年からDJ活動を開始。海賊放送やレイヴで活躍しつつハードコア~ジャングル/ドラム&ベースの制作を始める。95年にGanjaから"Super Sharp Shooter"、Frontlineから"6 Million Ways"の大ヒットを放ち、96年にはDJ HYPE、PASCALと共にレーベル、True Playazを設立、ファンキー・ビーツとバウンシーかつディープなベースラインで独自のスタイルを築く。00年の"138 Trek"は自己のレーベル、Bingo Beatsに発展、ブレイク・ステップの新領域を開き、2ステップ~グライムやブレイクス・シーンに多大な影響を与える。03年にはPolydor UKからブレイクビーツを自在に遊泳する1st.アルバム『FASTER』を発表し、絶賛を浴びる。Bingo
BeatsからはDYNAMITE MCをフィーチャーした"Creeper"を含む『DROP BEATS NOT BOMBS EP』を始め、数々のマッシヴ・チューンで衝撃を与え続け、07年には『IN BASS WE TRUST EP』、MIX CD『WATCH THE RIDE』(Harmless)を発表。ここ最近は"Crack House"と銘打ったZINC自身が提唱する新型サウンドを布教。"Crack House"はBasslineサウンドを主体として、エレクトロ、ダブステップ、フィジェットハウス、ブレイクス、ジャングル等をミクスチャーした最新鋭のエレクトロ・ダンスミュージック。まさにその集大成ともいえるオリジナルアルバム『Crack House E.P.』、『Crack House Vol.2』をこれまでに発表。またMS
DYNAMITEをフィーチャーしたシングル、"Wile Out"はUK TOP40にチャートインする等、UKのベースミュージックの最前線を驀進中!
ダブステップ/グライム・シーンのトップ・プロデューサー/DJの一人、PLASTICiAN。かつてDJ DARKSTARの名前でガラージをスピンしていた彼は、03年にDJ SLIMZEEのレーベル、SlimzosからPLASTICMAN名義で"Venom/Shock Wave"をリリース以来、"Pump Up The Jam" (Soulja)、"Hard Graft"(Contagious)等がアンダーグラウンドでヒット、またRINSE FMでレギュラーを務め、初期ダブステップの礎となる。04年には"Pump up the jam"を含む4曲がRephlexにライセンスされ、コンピレーション『GRIME』でセンセーションを巻き起こす。また自己のレーベル、Terrorhythmを立ち上げ、"Cha"、"Value
Beats EP"を発表、またLUKE VIBERTの"Moog Acid"、M.I.A.の"U.R.A.Q.T"等のリミックスを手掛ける。その後、PLASTICIANと改名し、08年には1st.アルバム『BEG TO DIFFER』をリリース、SKEPTAをフィーチャーした"Intensive Snare"はSoul Jazzにライセンスされる。またMIX CD『Rinse:06』(Rinse)のリリースでDJとしても世界的な人気を集める。









