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Jose James

Jose James

Blackmagic

Brownswood/Beat

Amazon iTunes

野田 努   Mar 24,2010 UP

 ホセ・ジェムスに関して最初に驚いたのは、2009年のムーディーマンのアルバム『アナザ・ブラック・サンデー』で歌っていたことだ。世界は思っているよりも窮屈ではない。小さな島宇宙を喜んでいるのは......(以下、面倒だから省略)......いや、こうした自主規制がよくないのだろう。それが結局のところ、街で遊ぶことと引き替えに、インテリアに囲まれながら誰にも傷つけられることのない空間を無数に作らせているってわけだ。こうした文化状況がどんな人間にとってもっとも都合が良いのかわかっているのだろうか......。

 で、そう、2008年にホセ・ジェイムスがファースト・アルバム『ザ・ドリーマー』を発表したときによく引き合いにだされたのが、アシッド・ジャズの時代に再評価されたジャズ・シンガー、レオン・トーマスである。『ザ・ドリーマー』は、トーマスに代表される昔のメロウ・ジャズのフィーリングを継承しつつ、ディアンジェロのようなモダンR&Bのエッセンを加えて作られたアルバムだった。それは本当に良くできたメロウ・ジャズで、しかもディアンジェロよりもずいぶんとこざっぱりしている。ローランド・カークのゴルペリーな"スプリット・アップ・アバヴ"のカヴァーにもそれがよく表れていた。ピアノはさえずり、ブルース調のベースはうなる。そして彼のソフトな声は滑らかに伸びていく。多くの識者が言うようにそれはたしかに一流なのだろう。が、その一流が、ムーディーマンのゲットー・ソウルと結ぶつくとは思えなかった。

 そればかりか、2年ぶりのセカンド・アルバム『ブラックマジック』ではベンガの曲のカヴァーまで披露している。そう、あまたのダブステッパーのなかでもいまをときめくスターDJのベンガの曲を......である。そしてまあ、ご存じのようにスティーヴン・エリソン――フライング・ロータスの名前で知られる、目下、ジェイ・ディラ以降におけるトップ・プロデューサーとアルバム中の3曲を共作している。いまのトレンドをベタに押さえた組み合わせと言ってまえばそれまでだが、しかし僕のようなリスナーはそれがゆえに「おや?」と興味を示してしまうのだ(逆に言えばそれだけ現在においてダブステップとフライング・ロータスは脅威なのだろう)。日本人のDJ、ミツ・ザ・ビーツも1曲提供している。

 こうしたメンツを考えれば、前作以上にモダンなクラブ・サウンドになるのだろうと思われるかもしれない。前半に関してはそうとも言えるが、大雑把に言えば、ジェイムスのR&Bテイストを加味したメロウ・ジャズは変わらないと言えばそう変わらない......実際、ベンガのカヴァー曲"ウォリアー"やエリソンがトラックを提供した"メイド・フォー・ラヴ"のような野心的な曲もアルバム全体から見れば、言葉は悪いがオマケのようなものだ。"ウォリアー"でもピアノは軽やかに踊り、"メイド・フォー・ラヴ"ではジェイムスのR&Bが展開される。ムーディーマンとの共作"デトロイト・ラヴレター"も、言われなければそれが彼のトラックだとは気がつかないだろう。『アナザ・ブラック・サンデー』の"デザイヤー"で見せたルーズなエロティシズムとは打って変わって、ジェイムスはその曲で清楚なソウルをロマンティックに歌い上げる。エリソンのトラックによるタイトル・ナンバーである"ブラックマジック"はアルバムを象徴しているかもしれない。要するにどこか別の場所に向かうと言うのではなく、『ブラックマジック』はそれがアコースティック・ジャズだろうと打ち込みだろうと、気がつけばメロウ・バラードな響きに帰ってくるのである。アルバムの統一性はほとんどまったく崩れない。

 が、しかし......、ちなみに先行シングル「ブラックマジック」ではふたりのダブステッパー、ジョイ・オービソンとアントールドをリミキサーとして起用している。オービソンにしてもアントールドにしても、ちょっと意外だった。どちらもテッキーな響きに特徴を持つ、昨年から人気急上昇のプロデューサーである。そしてつまり、こうした事態がまた起きている。まるで90年代初頭のような。......世界は思っているよりも窮屈ではないかもしれない。

TrackList

  1. 1. CODE(feat. Flying Lotus)
  2. 2. TOUCH
  3. 3. AY YOU DOWN
  4. 4. ELECTRO MAGNETIC(feat. Ben Westbeech)
  5. 5. PROMISE IN LOVE (feat. DJ Mitsu The Beats)
  6. 6. EMOTIONS
  7. 7. MADE FOR LOVE(feat. Flying Lotus)
  8. 8. SAVE YOUR LOVE FOR ME
  9. 9. THE GREATER GOOD
  10. 10. BLACK MAGIC(feat. Flying Lotus)
  11. 11. DETROIT LOVELETTER(feat. Moodyman)
  12. 12. LOVE CONVERSATION(feat. Jordana de Lovely)
  13. 13. BEAUTY
  14. 14. NO TELLIN'(I NEED YOU)
  15. 15. THE LIGHT
  16. 16. WORK SONG

野田 努