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Gang Colours

Gang Colours

The Keychain Collection

Brownswood Recordings/ビート

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野田 努   Feb 23,2012 UP

 疲れているし、アルコールも体内に流れている。真夜中だし、あたりもぐったりとしている。そんなときにギャング・カラーズなんていう名義を初めて聞いたら、おいおい冗談やめてくれよと言うに違いない。その手のいかめしいギャングスタ・ラップは好きじゃないんだ。ところが、いまやロサンジェルスのコンプトン地区からジェームス・フェラーロが大量のカセットとCDRを発信するように、こうした先入観はあてにならない。ギャング・カラーズを名乗る青年は、ボーズ・オブ・カナダとジェームズ・ブレイクが一緒にスタジオに入ったような音楽を展開する。僕はこの人のアルバムを楽しみにしていた。昨年初めて聴いたときから。

 サウサンプトンといえば、赤白のユニフォームで知られるプレミア・リーグの、毎シーズン残留争いをしているようなチームで、最近はJリーグから李忠成という選手が加入したばかりだ。ブリテイン島の南の海岸沿いにあるその町が"ギャング色"を名乗る24歳のウィル・オザンの地元でもある。ちなみに同郷の先輩にはUKガラージ/2ステップのグループ、アートフル・ドジャーがいる。アートフル・ドジャーはUKではそれなりの影響力と人気のあったグループで、その名前はディケンズの小説『オリバーツイスト』に出てくるスリの名人に由来する。
 ウィル・オザンをジャイルス・ピーターソンに紹介したのはゴーストポエトという話だ。彼の音楽にジャズを感じはしないが、そこにはマーキュリー・プライズにノミネートされた知性派ラッパーからUKクラブ・ジャズ界のボスの気を引くに充分な美しさがある。ガラージの影響下にあるダウンテンポ、クラシカルなピアノ、IDMの手法、ウィッチな気配、霞んで、輪郭のぼやけたR&Bヴォーカル......これをコールドトロニカと呼ぶ向きもあるそうだが、敢えてわかりやすく言おう。ジェームズ・ブレイクの"次"に何を聴けばいいのかと訊かれればこれだと答える。デビュー・シングル「In Your Gut Like a Knife」は下北沢のジェットセットでロングセラーとなったが、僕のその流れで一緒に騒いでいたひとりである。

 アートワークにあるように、彼の作品を特徴づけるのはピアノで、それはエリック・サティ風の、もの悲しくも控えめな佇まいを崩さない。ダウンテンポにおける明確な対位法による旋律を活かしながら、ガラージのビート(14歳の頃からビートを作っていたというが、それこそ地元の英雄、アートフル・ドジャーからの影響だ)、ダブの鈍いベースが室内楽の床に響く。期待していた通りというか、驚きはないが失望もなかった。
 ジェームズ・ブレイクの登場は20年前のトリッキーやポーティスヘッドを思わせると、90年代リヴァイヴァルの文脈で捉え直す人もいるように、ダウンテンポというのはウィッチと親和性の高い音楽性で、UKのお家芸のようなところもある。昨日レヴューしたダイアグラムスも元を辿っていけば20年前のトリップ・ホップに行き着く。これがまあ、時代のモード。スクリューな気分少々である。ダブステップ系で今年に入ってわりと繰り返し聴いているのは、いまのところイラレヴェント、そしてこれ。

野田 努

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