「R」と一致するもの

[Sick Team] - ele-king

 すでにご存じの方も多いと思いますが、Budamunk + ISSUGI + S.l.a.c.k. による新ユニット、シック・チーム(Sick Team)がいよいよその全貌を露わにします!
 発売日は6月2日、しかも......なんとその日にはDOMMUNEでライヴも披露することが決定しました! 7時から12時までたっぷり5時間使って、日本の新しいヒップホップの誕生をお届けします。当日は会場に来れる人は来てくださいね! 生で彼らのライヴやDJを体験しましょう!

6月2日(木曜日)
7:00~12:00 @ DOMMUNE
ライヴ:Sick Team、PUNPEE、GAPPER、etc
DJ:PUNPEE、BUDAMUNK
トーク:SORA(DOWN NORTH CAMP)、大前至、二木信、野田努......(後半、Sick Team参加予定)


d'Eon / Grimes - ele-king

 近年のポップ・カルチャーの主題にある種の精神疾患が入り込んでいるのは、音を喩えるさいに"フォビア(恐怖症)"という用語が加わったことからも察することができるけど、この音楽についてもその筋ではR&Bのアゴラフォビア(広場恐怖症)・ヴァージョンなんて形容するようだ。イギー・ポップの"デス・トリップ"(おまえと俺は落ちていく......)で歌われたようなロックのファンタジーから遠く離れた不安だが、しかもその歌メロはR&Bからきているようにポップなのだ。

 まずは女性のほう、グライムスに関しては、先日最初のソロ・アルバムをロンドンの〈ロー・レコーディングス〉からライセンス・リリースしたばかりで、わが国でもチルウェイヴのリスナーを中心に話題になっている。4オクターブの声が出るように特訓を積んだというグライムス=クレア・ブーシェは、パンダ・ベアとアリシア・キーズからの影響を、ダフト・パンクを非情にも串刺しにしたようなエレクトロ・ポップのなかにミックスしている。ウィッチ・ハウスやヒプナゴジック・ポップないしはアンビエント・ポップの流れで紹介された彼女のそれは、パニック症候群になったドナ・サマーの風変わりなポップ・ダンスようで、これをIDM~コズミック・ディスコと追ってきたロンドンの〈ロー・レコーディングス〉が目を付けるという流れもまた、いま動いている変化を表していて面白い。
 流れについては、ディオンの話も魅力的である。幼少期から音楽のトレーニングを積んできたモントリオール(いま、もっとも文化が白熱している街と言われている)の神童として名高いという彼は、学業を休み、チベット音楽を学ぶためにチベットの寺院で修業を積んで、帰国後はダニエル・ロパーティン(OPN)らとアンダーグラウンドの実験へと手を染めている。そして、OPNのチルウェイヴ・プロジェクト、ザ・ゲーム(あるいはハイプ・ウィリアムス)のリリースで知られるLAの〈ヒッポス・イン・タンクス〉からデビュー・アルバム『ペリナプシア』を昨年発表している。

 本作『ダークブルームEP』は、そうした......チルウェイヴ以降の地下変動に関わっているカナダのふたりのキーパーソンによるスプリットである。片面がディオン、もう片面がグライムスで、ここには最新のシンセ・ポップに顕著なスタイルが凝縮されている。その青写真は80年代のエレクトロ・ポップにあり、両者ともにパンダ・ベア以降の声の重ね方、ロング・トーンのチョップド・ヴォイスとそのループを駆使しているが、ふたりの個性は出ている。ディオンはリズム・トラックに工夫を凝らし、グライムスはよりハーモニーに重点を置いている。とくにグライムスによる"ヴァネッサ"はベスト・トラックで、このキャッチーな曲を聴いていると彼女はひょっとしたらリッキ・リーと並んで新しいポップ・アイコンになれるかもしれないと思う。いっぽう、ディオンのほうは陶酔的な"サウザント・マイル・トレンチ"がとくに印象的だ。この人のクセのある歌声は好き嫌いが分かれるだろうが、いかにもチルウェイヴ的な陶酔は悪くない。

Friendly Fires - ele-king

 「黄金時代を感じるには生まれときが遅すぎた」、このように歌いはじめる"リヴ・ゾーズ・デイズ・トゥナイト"は、セカンド・サマー・オブ・ラヴを知らない世代が初めて1989年の夏について歌った歌である。「トビ(rush)も逃したし、良い時代(better days)も知らない/僕は君の経験した時代を感じることができない/君の貴重な過去に触れることもできない」、とまあ、なんとも実直な憧憬が歌われている。そしてフレンドリー・ファイアーズのエド・マクファーレンはその曲のサビを次のように繰り返すのである。「それでも僕はあなたがたのその日々を今夜生きてみせるよ。僕には手が届かない歴史だと言うけれど、それでも僕はそれらの日々を今夜生きてみせる」
 これほど前向きに、レイヴ・カルチャーを知らない世代がそのファンタジーを歌ったことはない。"リヴ・ゾーズ・デイズ・トゥナイト"は過去を調べているが、あくまでも現在についての歌である。「僕をアンダーグラウンドにとどめる亡霊と向き合って/みんなが話している最良のものをいただこう/僕は待っているけど外は寒いから/夜には君をしっかりと抱くんだよ/君の愛を感じるために」
 興味深いことに、5月19日付けの『ガーディアン』では、フランキー・ナックルズの"ユア・ラヴ"(注)の記事が組まれている。「永遠にレイヴさせる歌」というわけで、この曲にはいまだ素晴らしい魅力があり、現在もジ・XXのような若いバンドにまで支持されている......などといった事情が記されているが、真実を言えばこの曲は明らかにある時期に飽きられ、忘れられていたのである。しかし......たしかにここ数年で蘇ったのだ。そして、この1987年のシカゴ・ハウスのクラシックのリヴァイヴァルをうながしたのがフレンドリー・ファイアーズなのだ。"ユア・ラヴ"は、このバンドの2006年のデビュー・シングルでカヴァーされている。渋谷のディスクユニオンの2Fのインディ・ロックのコーナーと4Fのクラブのコーナーを往復するリスナーが果たしてどれほどいるのか知らないが、つまりUKではいまそれが起きているのである。

 さて、2008年のファースト・アルバム『フレンドリー・ファイアーズ』で80年代のニューウェイヴとイビサの快楽をミックスしたこのバンドは、そしてセカンド・アルバムにあたる本作『パラ』においてより情熱的に、さらに思いを深めながら、ダンス・カルチャーとその"夏"をテーマにしている。音楽的にはUKのエレクトロ・ポップの伝統芸を引き継ぎながら、オーソドックスな構成のキャッチーな歌をダンサブルな演奏をバックに歌っている。「裏庭で一本のテープを見つけた/泥だらけの青いカセットだけど/そのホコリの奥ではリールがまわりはじめて/土のなかに保存されたもうひとつの記憶が再生される」"ブルー・カセット"
 『パラ』にひとつ問題があるとしたら、これほどクラブ・カルチャーを扱いながら、ダブステップないしはミニマル・テクノといった現在稼働中である音がまったく関わっていないという点にある。レトロ趣味に終始しているのだ。この音はアンダーワールドでもなければケミカル・ブラザースでもない、ワム!の"クラブ・トロピカーナ"でありアニマル・ナイト・ライフの"ラヴ・イズ・ジャスト・ア・グレート・プリテンダー"なのだ。明らかに彼らは享楽の季節としての80年代をうらやましがっている。
 「塵が降ってくる/彼らは行進していった/地下に眠るレコードたちとともに/階段を上がる/クラブから出てライトにキスする/君の愛が欲しい/街に出る/君の面影を心抱いて世界はふたたび回り出す/しかし君は決して僕のものにならない」"チャイム"
 こうした若い世代の複雑な感情の吐露に享楽の時代を経験した僕はまだうまく応えることができない。当たり前だが、戸惑いを感じるのである。そして、彼ら自身もそれが素直に喜べることではないことも理解している。「君の愛、それは幻/僕が生きるすべては君の嘘/僕は混乱している/トリップしている/僕は傷つき、参っている/寒いし、負けているというのに、この気持ちは強まるばかりだ」"プル・ミー・バック・トゥ・アース"
 な、なんていう告白なのだろう。君の世代にだって面白い音楽がたくさんあるじゃないか、思わずそう言いたくなってくる。ただ......ダンスはあっても、愛と笑顔の夏は手の届かないところに行ってしまったのかもしれない......とは僕も思う。個人的な快楽だけはあっても、集団として理想とするヴィジョンはない。パーティの最後にキング牧師の演説や"パワー・トゥ・ザ・ピープル"をかけるようなDJが、いまさらいるのだろうか。それとも少年たちの愛の歌を聴きながら、潮風に混じったハウスのビートを感じていたあの日々は蘇るのだろうか。「僕はその日々を生きるんだ」と、エド・マクファーレンは何度も何度も繰り返すのだ。「君が持っていた愛を感じる/我慢はしない/僕は今夜、あの日々を生きるんだ」
 なおアルバムのタイトルは、メスカリンやLSDの研究でも有名なオルダス・ハクスリーのユートピア小説『島』から取られている。


(注)正確に言えば、この曲のもうひとりの主人公はジェイミー・プリシプルである。多くの人が「フランキー・ナックルズの」を書いているが、これではプリシプルがあまりにも可哀想。蛇足として、使われたドラムマシンはデリック・メイのものだと言われている。

interview with Silkie - ele-king


E王 Silkie
City Limits Volume 2

DEEP MEDi Musik/Pヴァイン(6/15発売予定)

Amazon iTunes

 「すべてのインタヴュアーがデトロイト・テクノから影響を受けているだろう? と訊いてくるんだけど......」と、ロンドンからやって来た25才のダブステッパーは言う。「僕は本当にデトロイト・テクノのことを知らなかったんだ。で、聴いてみたら、たしかに似ていると思ったけどね」
 このエピソードが彼の音楽的傾向を物語っている。シルキーを名乗るソロマン・ローズは、ダブステップに70年代ソウル/ファンクのフレイヴァーを注ぎこみ、2ステップ・ガラージのビートにそのメロウなフィーリングを混合する。それが2009年に〈ディープ・メディ・ミュージック〉からリリースされた『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』だった。
 それはオリジナル・ダブステップの系譜からの一撃だったが、シルキーの音楽は、ときにロマンティックな都会の叙情主義ゆえに、この2年ものあいだじっくりと時間をかけながら、デトロイト・テクノやハウス・ミュージックのリスナーを巻き込んで、ジャンルを横断するような、より幅広い支持を得るにいたっている。

 この取材は彼がDBSのために来日した4月17日におこなわれている。福島第一原発の放射性物質の漏洩によってDJやミュージシャンの相次ぐ来日キャンセルのなかで、ロンドンからやって来たダブステッパーは意気揚々と渋谷を歩いて、そして居酒屋でビールを飲みながら話してくれた。

グライムというのはアーティストやオーディエンス同士のしがらみがあったり、音もアグレッシヴだし、けっこう大変なんだよ。発砲事件もたびたび起きているし、殴り合いの喧嘩なんか頻繁にある。それが嫌になっていたときに、友だちにダブステップのイヴェントに連れていかれて、あまりにもピースだったんでびっくりした。

『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』がホントに好きなんですよ。

シルキー:それはどうもありがとう。

アルバムからはソウル・ミュージックというものを強く感じました。

シルキー:うん。(しばし沈黙)......それで質問は?

いや、ただ言ってみただけです。

シルキー:ハハハハ、オッケー(笑)。いつ質問が来るのかなーと思って、ついつい構えていたんだよ。

初めてだし、バイオ的なことを訊いてもいいですか?

シルキー:いいよ。2001年、15歳で音楽を作りはじめたんだ。最初はグライムから入った。当時のグライムのシーンはエキサイティングだったけど、メロディを受け入れるような感じはなかったけどね。

何がきっかけだったんですか?

シルキー:姉の影響でガラージを聴いたのがきっかけだったね。ガラージの熱が冷めかけた頃にグライムを聴きはじめて、ダブステップに関しては最初から聴きはじめたわけじゃないんだけど、急カーブを曲がるようにダブステップへといったね。

なぜグライムからダブステップへ?

シルキー:最初はホント、グライムにハマったんだけど、グライムというのはアーティストやオーディエンス同士のしがらみがあったり、音もアグレッシヴだし、けっこう大変なんだよ。発砲事件もたびたび起きているし、殴り合いの喧嘩なんか頻繁にある。それが嫌になっていたときに、友だちにダブステップのイヴェントに連れていかれて、あまりにもピースだったんでびっくりした。チーム同士のしがらみがないところも気に入ったし、それでダブステップのイヴェントに通うようになるんだ。そして自分で作ったテープを持っていって、自分の顔を売っていったんだよね。

ティンバランドやネプチューンズの影響は受けなかったの?

シルキー:ノー。ただまあ、グライムがいろんな音楽に影響されているものだから、直接ではないけど、知らないうちに影響されているかもね。

へー、ガラージやグライムの人たちはUSのヒップホップとR&Bからの影響が大きいでしょ。

シルキー:イエス、僕よりも年上の連中はみんなUSヒップホップからの影響を受けている。ただ、僕の世代になってくるとすでにUKガラージがすごく大きかったし、すぐにコマーシャルにもなった。だから僕の世代にとってのアンダーグラウンドはヒップホップとはまた別の音楽になったんだ。

え、最初からアンダーグラウンドだったんですか?

シルキー:ホントにそうだった。まだガラージがアンダーグラウンドだった1998年、僕が13歳のときに聴きはじめたんだよね。最初はガラージも小さなシーンだったけど、それはあまりにも早く大きくなってしまった。そして嫉妬や人間関係のしがらみが出てきてしまった。

ロンドンのアンダーグラウンドはまずはラジオから?

シルキー:ああ、ホントにラジオの役割はでかいよ。とくに年齢が若いとクラブには行けないから、まずはラジオで聴いて、そしてレコード店に行く。僕がそうだったな。ラジオで音を聴いて、ビッグ・アップルにレコードを買いに行って、ベンガに会うっていうね(笑)。アンダーグラウンドの入口はラジオだし、みんなそこから入っていくんだよ。

ちなみに同世代というと?

シルキー:スクリームやベンガ、ジョーカーなんかだよね。マーラーは年上だから叔父さんに接するみたいな感じだけど(笑)、スクリームやジョーカーみたいな連中はホントに同世代って感じで接している。

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PCがあって、フルーティ・ループスを使って、そして親から盗んだスピーカーを使って(笑)、ベッドルームでとてもベーシックなセットで作りはじめた。実はいまでもそんなに変わらないんだ。自分の部屋で作っているという感じが好きだし。


E王 Silkie
City Limits Volume 2

DEEP MEDi Musik/Pヴァイン(6/15発売予定)

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作りはじめたときに目標とするプロデューサーはいた?

シルキー:とくにいないね。グライムやガラージに対する敬意はあったけど、自分がどうして音楽を作っていったのかと言えば、自分のなかには何かあるんじゃないかと信じていたわけで、そしてそれがシーンに貢献できるんじゃないかと信じていたからなんだよ。

最初の機材は?

シルキー:PCがあって、フルーティ・ループスを使って、そして親から盗んだスピーカーを使って(笑)、ベッドルームでとてもベーシックなセットで作りはじめた。実はいまでもそんなに変わらないんだ。自分の部屋で作っているという感じが好きだし。

最初にヴァイナルで作品を出すのは2003年? 初期の作風はガラージっぽい音だった思うんですが、それがダブステップに変化していくうえでパーティ以外の影響ってありました?

シルキー:基本的にはクラブからの影響だったね。最初はグライムのクラブに通っていて、ホントにグライムが好きだったんだけど、ただ音楽を聴いているだけなのに喧嘩になるようなところにうんざりもしていて、で、ダブステップの平和な雰囲気に惹かれていった。音楽を聴いて気持ちよくなれないと意味がないと思ったんだよね。

グライムって、やっぱそんな喧嘩ばっかだったんですね。

シルキー:ハハハハ、けっこう酷かったね。いまはだいぶ洗練されているのかもしれないけれど、初期のアンダーグラウンドだった頃のグライムのリリックというのはまったくの真実で、まあ、最悪の場合はパーティの最中に銃で人を撃ったりしていたわけだよ。洒落にならないくらい危ないシーンだった。

それであなたの音楽にはピースな感覚があるんですね。そうそう、あなたの音楽にはメロディがあるけど、以前、何か楽器をやっていました?

シルキー:ピアノは独学で少しやっていた。音楽理論はネットを見ながら勉強した。

音楽はあなたにとってどんな意味で重要だったんですか?

シルキー:僕はサッカーもやらないしコンピュータ・ゲームもやらなかった。僕には音楽しかなかった。他の子供たちがコンピュータ・ゲームをやっている時間に僕は部屋でずっと音楽を作っていたってだけだよ。

多くのダブステップのプロデューサーはシングルはたくさん出すけど、アルバムはあまり出さないですよね。そんななかであなたはわりと早くファースト・アルバム『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』を出しましたよね。

シルキー:2003年が僕の正式なデビューだけど、実は2002年にもホワイトで1枚出しているんだよ。それは音楽を作りはじめて8ヶ月後に出した作品だった。そして2005年からしばらく作品を出さずにいて、それで2009年に『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』を出しているんだよね。

コンセプトがあるアルバムですよね?

シルキー:つねにアルバムを作りたいと思っていた。そういう意味ではすべての曲には共通しているものがあると思う。

都市生活がテーマになっているんですか?

シルキー:たしかにそうなんだけど......というか、僕は世界に出たいけど、ロンドンで暮らしている。ロンドンから出られないんだ。それが"シティ・リミッツ(都市の境界)"という言葉に繋がっているんだ。ロンドンから出られないことが音楽に影響を与えていることは間違いない。"コンクリート・ジャングル"をよく聴くと車の音や街中の音が入っている。すべての曲はロンドンという街から得たインスピレーションで作られれている。

出身はどこ?

シルキー:どこかの雑誌を読んだらサウス・ロンドンと書かれていたけど、ウェスト・ロンドンだよ(笑)。

ご両親の出身は?

シルキー:ジャマイカです。

それでレゲエの曲も入っているんですね。

シルキー:母親から音楽的な影響を受けたことはないんだけどね。彼女も家で音楽を聴いていたわけじゃないんでね。ジャマイカ系ということを抜きにして、ロンドンで暮らしていると自然にレゲエの音が耳に入ってくる。そこからの影響だよね。

それでは、あなたのソウルやファンクのフィーリングはどこから来ているんでしょう?

シルキー:それもいろいろだと思う。90年代のR&Bかもしれないし、ガラージからかもしれない。とくに意識はしていないんだ。

サックスの音が好きなのはなぜ?

シルキー:それはもう、ただその音が好きだとしか言いようがない。

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スティーヴィー・ワンダーとクインシー・ジョーンズはとくに尊敬している。作っていくうちに、何かいいなと思えるアーティストに出会うんだけど、そのひとりがスティーヴィー・ワンダーだったね。実は最近は古い音楽ばかり聴くようになっているんだ。音楽を作っていないあいだは音楽ばかり聴いている。


E王 Silkie
City Limits Volume 2

DEEP MEDi Musik/Pヴァイン(6/15発売予定)

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ダブステップやガラージ以外で尊敬しているアーティストに誰がいますか?

シルキー:たくさんいるけど、スティーヴィー・ワンダーとクインシー・ジョーンズはとくに尊敬している。初期の頃はとにかくビートを作ることに専念していたんだ。それで作っていくうちに、何かいいなと思えるアーティストに出会うんだけど、そのひとりがスティーヴィー・ワンダーだったね。実は最近は古い音楽ばかり聴くようになっているんだ。音楽を作っていないあいだは音楽ばかり聴いている。母親のCDコレクションも聴いているほどだよ。

どんな音楽が好き?

シルキー:嫌いなジャンルはないよ。ヘヴィ・メタルがかかっていると音量を下げるくらいかな(笑)。

ダブステップも生まれて10年くらい経ちますが、あなたから見てシーンはどう見えますか?

シルキー:とても健康的に見えるよ。音楽的に前向きにどんどん展開しているでしょ。古い世代もがんばっているし、新しい世代もどんどん出てきている。ダブステップと呼べるかどうかわからないものまで出てきていることも良いことだと思う。UKではダブステップはすでにメインストリームの音楽だけど、いまでもアンダーグラウンドはしっかりしているし、全体的に良い流れだと思うよ。

あなたが嫉妬を覚えるほどのプロデューサーは誰?

シルキー:ハハハハ、嫉妬は覚えないなー。素晴らしい作品を聴けば、自分にもそれが作れるんじゃないかと励みにしているよ。

好きなプロデューサーは?

シルキー:クエストやベンガやジョーカーや......いや、止めておこう。身内を褒めるようで気色悪い(笑)。

『シティ・リミッツ』のシリーズは今後どうなっていくんですか? 今年に入って2枚のシングルを出していますよね。

シルキー:音楽的に言えば、変化するだろうね。PCのプラグインも変えるし、音も変える。

昨年はUKファンキーもすごかったし、UKのベース・ミュージックもいま頂点を迎えていると思います。こうしたシーンの動きは意識していますか?

シルキー:僕のなかの変化はシーンにともなうものっていうよりも僕個人のなかの変化だと思う。自分がどこかのシーンに属しているって感じでもないし。セカンド・アルバムの『シティ・リミッツ・ヴォリューム2』もほんとんど出来ている。日本では〈Pヴァイン〉から6月15日にリリースする予定だよ。

それは楽しみですね。

シルキー:ありがとう。2歳年を取った分だけ、音楽もよくなっていると思うよ(笑)。

最後に、お礼を言いたいんだけど、今回の福島第一原発の事故の影響で多くの欧米のDJやミュージシャンが来日をキャンセルしています。そんなかで来てくれてありがとう。

シルキー:たしかにまわりの友だちにも止められたんだけど、テレビのニュース番組で言っていることを信じるよりも自分で調べてみて、その結果、放射線の量もそんなに気にすることもないんじゃないかと思って。まあ、自分が空港まで歩くまでのリスクとそんなに変わらないんじゃないかと思ったんだよ(笑)。

 取材をした数週間後に、セカンド・アルバム『シティ・リミッツ・ヴォリューム2』が届いた。間が悪いというか、新作について訊けなかったのがホントに残念だ。新作には前作とは違った興味深い変化があるのだ。
 アルバムの1曲目に収録された"フィール"は2ステップのビートとダブの空間のなかを、美しいピアノとストリングスが繊細に交わっていくいかにも彼らしい叙情詩で、アルバムでも1位~2位を競うほどの素晴らしい曲だが、『ヴォリューム2』には前作以上にビートが強調されている。アルバムの中盤はとくにそれが顕著で、ダブステップのビートをさまざまな角度で展開しながら、彼のジャズ/ファンクのセンスが活かされている(たぶん......そのスジでも大いに騒がれるでしょう)。そして、それはUKベース・ミュージックのスリリングな冒険となっているわけだが......、それはときとしてカール・クレイグのようなメランコリーを見せ、ときとしてURのような力強いファンクを見せているという、デトロイティッシュなセンスもさらに際だっている。
 そして......それは放射線量を気にしながら暮らし、もはや軽々しく"アーバン・ソウル"などとは言えなくなった我々にはなおさらずしりと響くかもしれない。まさに我々はいま、"シティ・リミッツ"な状況にいるのだから......。
 とはいえ、まあ、シルキーは新作でも変わらずロマンティックである。アルバムの最後から2番目に収録された"Only 4 U"は、"コンクリート・ジャングル"の続編とも言える曲だ。浮かれ、舞い上がってしまうようなジャズ・ダブステップで、ファンはこういう曲を心待ちにしていたのだろうし、そしてシルキーはそのことよく理解しているかのように、期待に応えている!

Chart by JET SET 2011.05.23 - ele-king

Shop Chart


1

TIGER & WOODS

TIGER & WOODS GIN NATION »COMMENT GET MUSIC
冗談のつもりがあんまり売れるものだから本気になって(?)フル・アルバム発表という事態に発展した、Running Back関係者による匿名ユニット(ということでOK?)タイガー&ウッズ。最高傑作トラックが本家Running Backから正規(?)再発!!

2

BATTLES

BATTLES ICE CREAM »COMMENT GET MUSIC
Comemeの奇才Matias Aguayoがメイン・ヴォーカルに抜擢された注目作"Ice Cream"が限定12"カット。

3

V.A.

V.A. ENJOY THE SILENCE VOL.2 »COMMENT GET MUSIC
Mule Electronic発、『Enjoy the Silence』シリーズの第2弾が到着!国内外のトップ・クリエイター達の渾身のアンビエント・トラックを収録して好評を博したシリーズの第2弾。アナログLPの他、国内盤が先行していたCDもおまけで同封されているお得すぎる内容です!!

4

KOLOMBO

KOLOMBO WAITING FOR »COMMENT GET MUSIC
多岐に渡るスタイルで非常に精力的なリリースを重ねるベルジャン・デュオMugwumpの片割れOlivier Gregoire。今回は105bpmの美しいシンセポップ・ハウス。Michael Mayerリミックスもグレイト!!

5

NIGHT ANGLES

NIGHT ANGLES AERODYNAMOUR »COMMENT GET MUSIC
Nhessingtons, BANDJOらのコズミック~バレアリック良質作品で当店でも大きな注目を集めたスウェーデン発"Force Majeure"から、UKのビートメイカーNight AnglesがデビューEPをドロップ。

6

HARDROCK STRIKER

HARDROCK STRIKER MOTORIK LIFE »COMMENT GET MUSIC
DJ Sprinkles a.k.a. Terre Thaemlitzによるリミックスが素晴しいSkylax新作です!!SkylaxのオーナーHardrock Strikerによる09年以来となる新作が到着。先日のDommuneでの講義も素晴らしすぎた(続編、希望!!)テリコ先生によるリミックスがとにかく最高!!

7

MR PRESIDENT

MR PRESIDENT NUMBER ONE »COMMENT GET MUSIC
70年代ソウル/ファンクなサウンドをスタイリッシュに展開して絶大な人気を誇るMr President。待望のアルバムは、込み上げ爽快ソウルから激ファンキー・インストまで、超充実の傑作です!!

8

MO KOLOURS

MO KOLOURS EP1:DRUM TALKING »COMMENT GET MUSIC
Paul White、Bullionらのリリースもある『One Handed』から新たな刺客!インド洋南西部に位置するモーリシャス島出身のパーカッショニスト=Mo KoloursによるデビューEP。土着的なパーカッションとヴォーカルのループが、スモーキーかつマッドな世界観を形成している力作!

9

ROMAN FLUGEL

ROMAN FLUGEL BRASIL »COMMENT GET MUSIC
前作"How to Spread Lies"は即完売、レジェンド・デュオAlter Egoの1/2、Roman Flugelが、お馴染みジャーマン音響ハウス名門Dialから再登場リリースです!!

10

AEROPLANE

AEROPLANE MY ENEMY (GREEN VELVET / REX THE DOG RMX) »COMMENT GET MUSIC
Eskimoの看板アーティストVito de Lucaによるソロ・プロジェクトAeroplane。昨年リリースしたデビュー・アルバム"We Can't Fly"から、Green Velvet & Rex The Dogによるリミックス・カットが到着。

Altz - ele-king

Played June Tune


1
Neil - DiabloI - Boogie Originals

2
Illaiyaraaja - Love Theme - Cartilage Records

3
Serenade Edit - Fushiming - CDR

4
The Backwoods - Breakthrough - ENE

5
Terry Hunter & Joey Donatello - Seduction - Night Club Records

6
The Barking Dpgs vs Jessi Evans - Scientist Of Love - Mad On The Moon

7
Khethi - Rainbow - Alala Records

8
Bryant K - Daisies Grow - Stones Throw Records

9
KZA - Mixed Roots Re-Edit - King Records

10
David Darling & The Wulu Bunun | - Ku-Isa Tama Laug - Panai

aSymMedley - ele-king

 和泉希洋志は日本のエレクトロニック・ミュージックにおいてもっともユニークなひとりである。彼が1997年にロンドンの〈リフレックス〉から八角形のケースでリリースした「Effect Rainbow」は、IDMにおける異色のサイケデリックだったと言えるだろう。ゴムのようにねじられたビートはテクノと呼ぶにはオーガニックな感触があり、実験的だが生温かいのだ。小杉武久やフルクサスなどを通過したこの異才は、それからボアダムスの「スーパー・ゴー!!!!!」「スーパー・ルーツ7」、あるいはOOIOOに参加すると、2000年には〈チャイルディスク〉からアルバムを1枚発表して、その4年後には〈ピース・レコーズ〉からもアルバムをリリースしている。その活動はテクノとアヴァンギャルドのあいだを気まぐれに往復するようで、とにかく捉えどころがないのだ。アシンメドレー名義による本作『エイジ・オブ・サン・エッジ』は、和泉希洋志としては7年ぶりのアルバムとなる。
 それはこれまでの彼の、IDM/アンビエント・テクスチャーを応用した諸作とは少しばかり異なっている。先述したように和泉希洋志は、ひとつのスタイルを貫くというよりも、さまざまなスタイルを取り入れて、咀嚼し、掻き回すような、固有のスタイルを持たないスタイルの作り手だが、『エイジ・オブ・サン・エッジ』からはクラブ・カルチャーのざわめきを間近に感じる。今日の日本において重要なDJのひとり、アルツが主宰するレーベルからのリリースというのは、そのことと無縁ではないはずだ。要するにはここにはハウス・ミュージックのグルーヴがあるのだ。そしてこれはどう聴いても、ユートピアのダンス音楽である。

 "Artificial Tour"はトロピカルなフィーリングをもったアンサンブルが4/4のキックドラムを擁したハウスのBPMのなか、ゆっくりとうねる波のように変化していく。ベースは地面から伸びているが、ジャングルの上のほうから音符が降り注いでくるようだ。美しいピアノとパーカッションが素晴らしコンビネーションをみせる"Akashic Rain"もまた極楽浄土におけるスローテンポのダンストラックで、それはある種のドリーミーなフュージョン・ハウスとして"Prismatic Drms"や"Mirror in Lemuria"へと続いている。
 アルバムは、70年代のイーノを彷彿させるような、5曲目のアンビエント・トラック"Crystal Finite State Machine"からさらに深い茂みのなかに入る。アルバムの曲名には自然を喚起する――雨、水晶、オーロラ、大気、森、太陽――といった言葉が使われているが、和泉希洋志はある種のアニミズム(それはボアダムスにも共通するものである)をハウス・ミュージックのスタイルに変換しているように思える。アトモスフェリックな"Aurora Tones"から自然の精霊たちが踊っているような"Purple Low Air"へと、アルバムはまるで放射性物質によって汚れてしまった大地とは真逆のヴィジョンを強調している。"Fibonacci Forest"などはデリック・メイの〈トランスマット〉から出ていても驚かないようなトラックだが、しかしこのサイケデリアはアフリカニズムとはまた別のところから来ているように感じる。アーサー・ラッセルからヒントを得て、水中にいるような感覚をハウス・ミュージックに変換したカリブーの『スウィム』のようにコンセプチュアルなダンス・アルバムで、『エイジ・オブ・サン・エッジ』にはJ.G.バラードの『結晶世界』をユートピア小説として書き換えたような、奇妙なオプティミズムがあるのだ。
 クローザー・トラックの"Diffused Aura"は、熱帯雨林のスコールのようなノイズが鳴っている。みんながこの音楽を好きな理由がとてもよくわかる。

ZETTAI-MU Monthly Groundation in TOKYO & KYOTO - ele-king

 今年はベース・ミュージックがますます盛りあがりそうです。ダブステップ系の勢いも相変わらずですが、ハドソン・モホークやラスティーといったウォンキー系のリリースも控えているみたいだし、ホントに楽しみです。そんなわけで、日本のベース・ミュージックの総本山とも言える、KURANAKA 主宰の〈ZETTAI-MU 〉が東京と京都で開かれます!!
 震災後、海外からのDJの来日キャンセルが相次いでいますが、僕が東京でハウスで踊っていた大昔なんかは、外国人のDJがまわすなんて滅多にありえない時代でした。だからみんな日本人のDJを英雄視していました。いまでも、日本には良いDJがたくさんいます。今回の〈ZETTAI-MU 〉がもうひとつ興味深いのは、すべて日本で暮らしているDJでやっていることです。
 とりあえず低音好きは絶対に行こう! 踊って、瞑想しよう!


2011.5.27 (FRI)
ZETTAI-MU MONTHLY GROUNDATION in TOKYO @ AIR
"GRASP AT THE AIR"


O.N.O a.k.a Machine Live (THA BLUE HERB)
DJ BAKU (POPGROUP)
KURANAKA 1945 (Zettai-Mu)
DJ QUIETSTORM (中目黒薬局 / TIGHT)
GOTH-TRAD (DEEP MEDi / BACK to CHILL)
BLUE BERRY (BLACK SMOKER / SKUNK HEDAS)

@ AIR
Info tel: 03-5784-3386(AIR)
ADDRESS: 東京都渋谷区猿楽町2-11氷川ビル B1, B2
WEB SITE : https://www.air-tokyo.com/

OPEN/START. 22:00
¥3,000 Admission
¥2,500 w/Flyer
¥2,500 AIR members

https://www.zettai-mu.net/news/1105/0527_air/0527_air.html
https://www.air-tokyo.com/schedule/543.html


2011.6.3 (FRI)
ZETTAI-MU MONTHLY GROUNDATION in KYOTO @ WORLD


KODAMA KAZUFUMI (DUB STATION / MUETBEAT)
KURANAKA 1945 (Zettai-Mu)
O.N.O a.k.a Machine Live (THA BLUE HERB)
ナカムライタル (OUTPUT)
Light-One
and more act!

@ 世界WORLD
Info tel: 075 213 4119(WORLD)
ADDRESS: 京都市下京区西木屋町四条上ル真町97 イマージアムBF~2F
WEB SITE : https://www.world-kyoto.com/

OPEN/START. 22:00
¥2,500 ADV
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https://www.zettai-mu.net/news/1106/0603_world/0603_world.html
https://www.world-kyoto.com/schedule/2011/6/3.html

スーパーカー - ele-king

 紙ele-kingに掲載されていた2010年の彼のベストにはZsにOPNにマウント・キンビー、あるいは灰野敬二による静寂までもが並んでいる。それらを彼は「とんでもなくマニアックな表現や音がポップな形になった作品」だと説明している。OPNをポップだと表現する感性が間違っていないことは、アントニー・ハガティが"リターナル"を純然たる歌ものとしてカヴァーしていることが証明しているが、逆に言えば彼はマニアックなだけの、言い換えれば自分本位な音の実験に終始することにも不満を覚えているとも言える。

 スーパーカーの楽曲を中村弘二が再構築したアルバムを出すというこの企画を聞いたとき、彼にとってスーパーカーは過去のものになっていると勝手に思い込んでいたから、まずは驚き、次にいまの彼の知識と技術を動員してかつてバンドが鳴らしていた意味を解体するような音の実験を想像した。この第一弾は、IDMを取り入れて大胆な変化を遂げる『FUTURAMA』以前の、バンドがまだ「瑞々しいギター・ロック」と呼ばれていた頃の楽曲を対象としている。それらオリジナル・ヴァージョンは、ここ数年の中村弘二の音楽とはかなり遠いものである。
 が、左右のチャンネルにドラムが振り分けられた冒頭の"Walk Slowly"からそうした先入観は小気味良く裏切られる。中村弘二の巧妙な音の配置の実験やクラブ・ミュージックの手法の導入はあるのだが、しかしいしわたり淳治が書いた歌詞を分解するようなこともなければ、メロディを損なうこともない。多くの曲はiLLでみせたミニマリズムにもとづくサウンド・デザインを応用しているとはいえ、たしかにこれはスーパーカーなのだ。
 本作の聴きどころはアレンジと録音である。音数を絞りつつ反復と細かな音の出入り、それから生音とエレクトロニクスの配分にかなり意識を傾けているように思える。アンビエントのような音響空間を作っている"Drive"から、波の音が導入になっている"Dive"などはエレクトロニカへのアプローチが生かされ、"OOYeah"はエレクトロ・ハウス、"Wonderful World"はエレガントなシンセ・ポップに仕立てられている。"Trip Sky"では彼らしいサイケデリックなトリップ感が際だっているが、これ見よがしにサウンドの大胆さを強調することもない。謙虚で、奥ゆかしいアレンジに徹している。ミニマル・テクノ風の"Lucky"はオリジナルからもっとも遠いサウンドになっているが、その楽曲が放つフィーリング――この場合、思春期特有の憂鬱だ――自体は変わらない。彼がこの頃の自分たちの曲にいまどういう想いがあるのか僕にはわからないが、それはもはや彼(ら)だけのものではなくなった、ということに自覚的になっているのではないだろうか。ラストに収録されているデビュー・シングル"cream soda"も面白い。いま聴いてもなお甘酸っぱいバンドの思春期を代表するこの曲は、大きくアレンジを変えずに、よりノイジーな生々しさを際立たせている。やはりこの曲はノイジーなギター・サウンドがよく似合っていると思う。

 実験的とはいえ、レフトフィールドに振り切ることは敢えてやらずに、アルバムはあくまでもポップ・ミュージックとして成立している。結果として本作は、やや複雑な回路を持つアルバムになった。過去の楽曲を取り上げること自体が聴き手のノスタルジーを刺激するものであるし、とくにスーパーカーのように当時若い層から熱烈に支持されたバンドならなおさらだろう。が、中村弘二は原曲のムードは残しつつ音の冒険をしっかりコントロールすることで、ノスタルジーに回収されることを周到に避けているようだ。素材は古いものだが、音が過去を振り向いていない。それらの歌をかつてと同じように口ずさむことができるのは、世代的にスーパーカーを聴いてきた僕としてはやはり嬉しいものだが、ここでは懐かしさよりもその新しい姿に対する興奮が上回るのである。

Damon & Naomi - ele-king

 ビーチ・ハウスとヴェルヴェット・アンダーグラウンドとのあいだにいるバンドのひとつが、昨年〈ドミノ〉から3枚のアルバム(すべてが名作)が再発されたギャラクシー500である。
 80年代の後半、アメリカのハーバード大学の学生によって結成されたギャラクシー500は、ヴェルヴェッツとジョナサン・リッチマンからの影響を――あるいはジョイ・ディヴィジョンやヤング・マーブル・ジャイアンツ、あるいは小野洋子からの影響を――包み隠すことなく展開した(バンドは優秀なレコード・コレクションを有するカヴァー好きのバンドとしても知られている)。そうした彼らの態度がアメリカのインディ・シーンのアイデンティティをよりはっきりさせたことは明らかだったが、もっとも彼らのサイケデリックなフォーク・ロック・サウンドは、ヴェルヴェッツよりもさらに甘ったるい白昼夢の音楽だった。ギャラクシー500の1988年の"フラワーズ"(『トゥデイ』収録)は、USのインディ・ロックにおけるドリーム・ポップの早い時期の成果のひとつである。ギャラクシー500はセックス・ピストルズの25曲ほどのレパートリーにおいてもっとも神秘的な曲"サブミッション"をカヴァーしているが、それは彼らのパンク解釈をよく物語っていると言えるだろう。彼らのガレージ・ロックはダダイズムとシュールレアリズムのあいだを往復するのだ。

 デーモン&ナオミは、オフィシャルには3枚のアルバムを発表して、そして解散したそのバンドのリズムをになっていたふたり、デーモン・クルコフスキーとナオミ・ヤンによるバンドである。1992年から活動を続けているデーモン&ナオミによる8枚目のアルバムが、本作『フォールス・ビーツ・アンド・トゥルー・ハーツ』となる。
 〈ドミノ〉からギャラクシー500の3枚が再発されたこと――その背後にはもちろんディアハンターに代表されるような、あるいはチルウェイヴに象徴されるような、昨今のUSインディ・ロックにおけるサイケデリックの顕在化があるのだろう――を追い風にしたのが、このアルバムであることは間違いない。アコースティック・ギターやピアノによるギャラクシー500的な淡いテクスチャーは、この4年ぶりのアルバムでは充分に輝いている。それは敗北者の美しい叙情詩のようだ。ここには優雅なコーラスがあり、こわれやすい(フラジャイルな)ものの美しさがある。デーモン&ナオミのベテラン・リスナーにはお馴染みのザ・ゴーストの栗原道夫も参加しているが、気心の知れているであろう彼のギターがこの静かな音楽に時折アクセントを与えている。彼ららしい思慮深い歌詞は日本盤にある訳詞を参照もらうとしても、この音楽がいま、僕のようにリアルタイムで聴いていた世代のリスナーから、スローコアを好むダウナーなリスナーないしは二流のシューゲイザーになけなしの金を払っている若い世代、あるいはいまさらスローダイヴを探しているリスナーにいたるまで、幅広く受け入れられることはほとんど約束されている。

 そういえばルナ(ギャラクシー500のメイン・ソングライターだったディーン・ウェアラムが結成したバンド)が来日したときに演奏したイーノのカヴァー......素晴らしかったです。

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