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夜、汗、ニコチン、酒、セックス、テクノ……

夜、汗、ニコチン、酒、セックス、テクノ……

──ドイツの国民的DJ、ウエストバムの半生と90年代レイヴの狂騒

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Nov 18,2016 UP

 これはドイツのテクノの情熱と狂騒の物語である。90年代のはじまりとおわりの物語。本書で、ベルリンの壁崩壊後、ヨーロッパ、ことドイツにおいてテクノがいかに重要な意味を持っていたのかをぼくたちは知ることになる。過去を振り返らず、前途洋々たる未来を見つめ、自らを祝福することで生まれた革命──テクノを要求した人たち(西側)とテクノを必要とした人たち(東側)との邂逅。ドイツのテクノが、のちにラヴ・パレードに代表される巨大なレイヴとなったのには理由があった。
 ウエストバムは、ドイツにおいて、お茶の間でも知られるDJである(そこは盟友、石野卓球と同じ)。彼は、ドイツでもっとも早くシカゴ・ハウスをスピンしたDJであり、ドイツで最初のアシッド・ハウスと言われる「モンキー・セイ、モンキー・ドゥ」(曲名はイギー・ポップの歌詞からの引用)を作ったプロデューサーだ。メガ・レイヴのメイデイを主宰し、ドイツにおけるレイヴ・カルチャーの土台を築いた最重要人物でもある。『夜の力』は、そんな彼の半生が描かれている。同時に、80年代のノイエ・ドイチェ・ヴェレからハウスの時代へと、そしてテクノとレイヴの時代へと展開する模様がユーモラスなタッチで描かれている(冗談が好きなのも卓球と同じ)。

 それにしても……みなさんはウエストバムという名前にどんなイメージをもってらっしゃるだろうか。ドイツ・テクノ界の巨匠、じつは技術のあるターンテーブリスト、卓球が尊敬するDJ……他には? まあ、いろいろあるかもしれないけれど、彼の口からアドルノやショーペンハウアーという思想家の名前が出てくるとは、思わないのではないでしょうか? また、〈ミル・プラトー〉のアヒムと仲良しだってこととか。つーか、ヒッピー左翼系の大学教授の息子だったんですね。などなど、意外な事実やさりげない知性も垣間見れる。たとえば、90年代初頭のジャーマン・テクノを聴き漁っていた世代が読んだら、スヴェン・フェートをけっこうおちょっくているところは笑えます。ウエストバムはジャーマン・トランスが本当に嫌いだった……。大丈夫ですよ、愛とギャグのある批判なんで。
 DAFのガビ・デルガドと一緒に手作りのシカゴ・ハウスをかけるパーティを主宰するといういい話もあるし、UKセカンド・サマー・オブ・ラヴ体験はもちろん、デリック・メイをベルリンに初めて招聘したときのエピソード、URとの思い出も出てくるし、ウエストバムがデトロイトでまわした話もある。さらにまたもうひとつ言うと、ドイツ語で書かれ、ドイツの出版社から昨年刊行された本書には、しっかり石野卓球とWIREのエピソードも描かれている。
 これは90年代の終わりの物語ではあるが、あらたな祝祭を要求する物語でもある。
 テクノ・ファンは必読。発売は11月21日です!


ウエストバム (著),
楯岡三和+トーマス・シュレーダー (翻訳)
『夜の力──ウエストバム自伝』
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