ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Shintaro Sakamoto 坂本慎太郎、新作『物語のように』について語る (interviews)
  2. interview with Kikagaku Moyo 無国籍ロウファイ・サイケデリア (interviews)
  3. Thundercat ──ついにサンダーキャットの来日公演が皮切り、最速ライヴ・レポートが公開 (news)
  4. Ghostly Kisses - Heaven, Wait (review)
  5. Cate Le Bon - Pompeii (review)
  6. Boris ──活動30周年記念アルバム第2弾がリリース (news)
  7. Yutaka Hirose ——アンビエント作家、広瀬豊の36年ぶりの新作『ノスタルジア』がリリース (news)
  8. 遊佐春菜 - Another Story Of Dystopia Romance (review)
  9. Spiritualized - Everything Was Beautiful (review)
  10. Bobby Hamilton, Orang-Utan and Lemuria ──「VINYL GOES AROUND」から貴重な3アイテム (news)
  11. Christopher Owens × Sintaro Sakamoto 対談:クリストファー・オウエンス × 坂本慎太郎 (interviews)
  12. 坂本慎太郎 - @恵比寿リキッドルーム (review)
  13. Funkadelic - Maggot Brain (review)
  14. Jazzanova - Strata Records (The Sound Of Detroit Reimagined By Jazzanova) (review)
  15. Shintaro Sakamoto ——坂本慎太郎、6年ぶりのアルバム『物語のように』リリース (news)
  16. interview with Yutaka Hirose よみがえる1986年の環境音楽 (interviews)
  17. R.I.P. Klaus Schulze 追悼:クラウス・シュルツ (news)
  18. interview with !!! (Nic Offer) 踊れない時代にダンス・パンク・バンドが出した答え (interviews)
  19. interview with Boris スラッジ・メタルの異星、その現在を語る (interviews)
  20. Syd - Broken Hearts Club (review)

Home >  News > それはアメリカの曲がり角だった - ──萩原健太『アメリカン・グラフィティから始まった』刊行!

それはアメリカの曲がり角だった

それはアメリカの曲がり角だった

──萩原健太『アメリカン・グラフィティから始まった』刊行!

Amazon

Dec 07,2016 UP

 紙エレキングの年間ベスト号で、坂本慎太郎に取材したんですけど、そのときの彼いわく「本当は、夏休みの初日のようなアルバムを作りたかった」と、「60年代のアメリカン・ポップスや初期のロックンロールとかにあるキラキラして甘酸っぱい感じを自分でもやりたい」と思っていたと。しかしそれでもまあ、作ってみたら『できれば愛を』だったという話なんですけど、その「キラキラして甘酸っぱい感じ」が映画『アメリカン・グラフィティ』には凝縮されている。
 『アメリカン・グラフィティ』は、ジョージ・ルーカス監督が『スター・ウォーズ』という大ヒット作を世に出す前の、最初の商業映画で、本国アメリカでは1973年に公開されている。この映画は、高校を卒業したばかりの4人の若者が揃って過ごせる夏の最後の一夜を描いたもので、時代は1962年、つまりアメリカがベトナム戦争に向かうその直前の(きわめて象徴的な)最後の夏の一夜のできごとである。そして、映画では、ひっきりなしに「キラキラして甘酸っぱい」オールディーズがかかる。
 ぼく(=野田)がこの映画を観たのは高校時代で、『スターウォーズ』の監督の前作として、地元の映画館でリヴァイヴァル上映したときだった。もちろんLP2枚組のサウンドトラックも購入した。レコードはいまでも家にあるが、そこに収められているロッンロール、ドゥーワップ、ポップスは、なにをどういう風に聴覚と精神をねじ曲げたら嫌いになれるのかわからないというくらいに、素晴らしい。だいたい、ぼくと健太さんと坂本慎太郎が共通して好きという点においても、『アメリカン・グラフィティ』にどれだけ普遍性があるかという話だ。評論家のジョン・サヴェージが描いたパンク評伝の傑作『イングランズ・ドリーミング』のなかで、サヴェージはこのサントラを取りあげ、すべてはここからはじまったみたいなことを書いているが、それは、「俺たちは大人とは違ったやり方でできるんだ」という、ユース・カルチャーなるものの黄金時代の幕開けだったからでもある。
 
 萩原健太の新刊『アメリカン・グラフィティから始まった』は、映画のストーリーを追いながら、1曲1曲を丁寧に紹介しつつ、その映画の切なさを読み解いていく。夏の一夜に集約された少年から大人になる、大人にならざるえない、その覚悟を決める瞬間の物語としての『アメリカン・グラフィティ』。また、アメリカンに最初の陰りが見えてくるその直前のアメリカの物語。そして何よりもその時代のポップスのあまりにも胸きゅんな感覚。
 こんなかったるい時代だからこそ、ぜひいまいちど、再訪して欲しい。



萩原健太
アメリカン・グラフィティから始まった
P-VINE/ele-king books
Amazon