Home > Interviews > intervew with Eccy - ――エクシーのUKダブステップ体験談
Y氏:でも、日本でもそういう瞬間があったじゃないですか。
90年代前半とか?
Y氏:90年代の後半とかも。パーティが終わると、「代々木公園行こうよ」とか。「うちに来なよ」とか。
まあ、そうだね。
でも、日本では無理っすよ。
無理じゃなかった瞬間もあったわけだし。
でもいまは無理な気がする。
なんで?
まわり見てて、パーティ行くヤツが少ない。
残念だね。
クラブもカラオケの代わりになっちゃってるし。マンチェスターの奴らとか、あれしか楽しみがないんだろうなぐらいの気の入れようだったから。で、次の日はロンドンで、〈プラスティック・ピープル〉に行って。
〈プラスティック・ピープル〉?
それは地元密着型の濃いパーティ。
どこ?
えー、あれは......、ダメだ、ぜんぜん思い出せない(笑)。ロンドンで有名な駅って?
たくさんあるよ、パディントン、ノッティングヒル・ゲート、コヴェント・ガーデンとか(笑)。
えー、思い出せない(笑)。とにかく小箱で、でもファンション・ワン置いてあるみたいな。ミラーボールもなんもなくて、そこで毎週〈フォワード〉っていうダブステップのパーティをやってて。それに行って。メンツはMAワンっていうファンキーのDJ、で、ジンクやって。
おー、クラック・ハウス。
で、ジャック・ビーツっていうエレクトロ・ハウスっぽいのをやって、で、スクリームがやるみたいな。
ジンクのクラック・ハウスのコンピ、知ってる? 黄色のジャケのヤツ(「Crack House EP」)。
オレも買いました。
あのCDだけ聴いても現場がどんななのかわからないんだよね。
そうですよね。オレ、ジンク好きっすよ。
あれはホントにパーティ・ミュージックだよね。ちなみにそのパーティは何曜日?
日曜日っすね。オープンが大幅に遅れて、9時ぐらいから2時までやってましたね。で、そこ行ったら、今回初めて日本人がいて。「あれ日本人じゃないっすか?」ってケイタが言うから、で、訊いたら「そうだよ」って。で、話したら、その人がエナさんっていう、ゴス・トラッドなんかが出ている〈Back To Chill〉をやっている人で。共通の知り合いがすごくいっぱいいて、で、仲良くなって。
へぇー。
Y氏:よくロンドンのどのクラブ行っても日本人がいるって話聞くんだけど、ダブステップのクラブには滅多にいないよね。
ぜんぜんいないっすね。アジア人がいない。
アフリカ系はいるでしょ?
半々ぐらいでいますね。で、それが5日目で、で、6日目は「さすがにちょっとぐらい観光しようか」って話になって。で、結局レコード屋とかに行って、CDとTシャツを買って。そしたらまたエナさんに会って(笑)。
ハハハハ。行動パターンが同じなんだ。
そう。で、「今日の夜、ブリクストン・アカデミーでヤバいパーティがあるよ」って。それが16歳以上から入れるパーティで。
16から入れるっていいよな。
だから酒は売っていない。
なるほど。
で、ケイタと「どうする?」って。オレら、ドラムンのパーティをアムスで逃していて、ケイタがどうしてもドラムンで踊りたいって言い出して(笑)。「じゃ、行くか」みたいになって(笑)。
ブリストルって、中心地からは遠いからね。
遠いじゃないですか。だから終電で行って。そしたらガキんちょたちで溢れていて、あり得ないくらいの熱気で(笑)。
あんな広いところで。
あんなに広いところがガキんちょでいっぱいで(笑)。で、さすがにその日はもうオレらも疲れていたから隅っこのほうで休みつつって感じだったんですけど、誰かのDJになった途端、すべてのフロアから人が集まってきて。それがチェイス&ステイタスで。「うわ、こんなに人気があるんだ」って。
チェイス&ステイタス?
リアーナのダブステップやったり、スヌープのダブステップやったり。
ああ~。
すごかった。あんなに人気があるとは思わなかったね。
しかし16歳で行けるDJパーティがあるって良いよね。
しかも朝の5時ぐらいになると親とか車で迎えにきて(笑)。ドラムンでガン踊りしていた子供を迎えに来るって、「物わかり良すぎだわ」って(笑)。
それはハウス世代の親じゃないの? 「もう、しょーがねーな」みたいな(笑)。
しかし、月曜日に5000人の若いのが踊ってるって......。
健康的でいいなー(笑)。
ヴァイタリティ半端ないっすよね。〈プラスティック・ピープル〉で、白人のガキんちょがでかい黒人のセキュリティに超からんでいるんすよ。「おまえ出てけ」って投げ飛ばされたりしてるんすけど、すげー食いかかっていて。明らかに体格差もあんのに、「ファックユー」連発で、「こんなヤツ、日本人であんまいないなー」と思って。
へぇー。
とにかく、ダブステップ、こんなに踊ってる感じなんだーって、日本からはつかめなかったんで。それがもう、爆発してたんで。
レイヴ・カルチャーそのものなんだね。
それでオレも、自分でもダブステップやりはじめようかなと思って。
やってるじゃん、新作『ルーヴィア・ミトス』で。
それはダブステップというよりは......。
フライング・ロータス?
フライング・ロータス。
やっぱり。
そう、でも、もっとフォーマットにのったダブステップを作ろうと最近は思っているんですよ。
ダンス・ミュージックって、フォーマットがあるからね。
そうなんですよ。オレ、これ(『ルーヴィア・ミトス』)では好き勝手やってるだけなんで。もうちょい縛りあったうえで踊らせるっていうか、他のDJもかけやすくするっていうか。それって大事かなって。で、やってみたら面白かった。
文:野田 努(2010年2月02日)