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interview with Paul Randolph

interview with Paul Randolph

2012年のノーザン・ソウル

――ポール・ランドルフ、インタヴュー

野田 努    通訳:長谷江利子   写真:小原泰広   Aug 24,2012 UP

よく人に「きみは何がしたいの? あっちにもこっちにも行って」っていう風に言われることがあるんだけど、その考え方自体がおかしいと思う。彼ら自身がその質問を自分にしてるんじゃないかなと思います。僕にとってはその質問は意味がないし、何かひとつのところに落ち着く必要もない。


Paul Randolph And Zed Bias presents
Chips N Chittlins

Pヴァイン

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ムーディーマンの初来日のときって、ストリップ嬢をステージに上げてライヴをやったときですよね。そのときにじゃあベースを弾いてたのがあなただったんですか?

ポール:いや、じゃあその次のときかな。自分以外にふたりほどパフォーマンスの人がいて、ムーディーマンがいちばん最後に出てきました。

今回、ちょうどあなたもアルバムを出すわけですけど、先日、Jディラがムーディーマンのところから未発表曲集の「ディラロイト」を出して、『リヴァース・オブ・デトロイト』っていうタイトルのアルバムもリリースされました。デトロイトのソウル・ミュージックというか、デトロイトの音楽を、すごくこう、再定義しようという機運を感じるなかでのあなたのリリースもタイミング的に面白いことだなと思いました。

ポール:ははは、でも、とくにそういう風にしようとしてなったわけではないんだけど。相談してこのタイミングでやろうってなったわけではないです(笑)。

そういえば、あなたにはリミックス・アルバムもありましたよね。2010年かな......『エコーズ(・ロンリー・エデン)』っていうね、2枚組でしたね。

ポール:あれはなんで2枚組だったかというと、キャリアとして2枚目の作品だったんだけど、『ロンリー・エデン』のとき、ディストリビューターにすごく問題があったんです。それでとても不安だったから、曲を少し残しておいたんです。それに新しい曲をプラスして2枚組にしたのが『エコーズ』なんですよね。だから1枚目の余韻の残るようなタイトルにしたくて『エコーズ(・ロンリー・エデン)』となったんです。チャールズ・ウェブスターとか、ジェロームとか、いろいろな人に話を振っていってできたものでした。いまもソロのプロジェクトで、もうすこしで終わりそうなものがあります。いくつもプロジェクトを持っていますが、わりと最近はロックのバンドのを終わらせたところだし、南アフリカのミュージシャンの仕事もやったりしていますよ。

それは楽しみです。今回の『チップス・アンド・チットリンズ』はデトロイトを拠点とするあなたがゼド・バイアスみたいな、UKガラージ/ベース・ミュージックのベテランとコラボレーションしたということがひとつのトピックですよね。『ロンリー・エデン』のときのリミキサーとしておたがいに知り合っているから、その流れから発展したんでしょうけれども、あらためて、どのように今回のプロジェクトが生まれて発展していったのかということを教えてください。

ポール:リミックスが終わったあとに、マイ・スペースでコンタクトを取ったんです。聴いてはいたけど、ダブステップって音楽が流行ってるっていうからどんなものかなと思って、それなら実際にやってる人に訊くのがはやいと。そしたら向こうが「ワオ」ってなってね。「僕、アンプ・フィドラーとのギグを観てるよ」って。「ずっといっしょに仕事をしたかった」ってゼドはすごく興奮してくれてね。「こんな曲どうかな?」ってマテリアルを送ってきてくれたから、すぐやって戻した。お互いすごく仕事がはやくて、「いいじゃない」ってなってね。
 ジャザノヴァの最初のころかな、3年ほど前にロンドンでギグをやったときに、ちょっと時間があまったから電車でマンチェスターまで行って、彼の自宅兼スタジオで数日間過ごしたんです。そしたら1日に4曲もできあがっちゃって。最初はただ行って、「どんな人かな」っていう感触をつかんで、軽いミーティングをしようというようなつもりだったんだけど、「ふたりのうちどちらかがもういやだってなるまでとことんやりましょう」ということになっちゃって、その次の日に3曲ってふうに、どんどんたまってきた。
 そうやってやりとりをしてきたのが3年前なので、彼もいろいろと忙しくなっちゃって一時放置されていたプロジェクトだったんだけれども、ときどき思いついたように連絡がきて、初めのころ作ってた曲を「こんなふうに直したよ」って送ってくる。けど、これは、「なんで直すんだよ! さわらないで!」っていう話ですね(笑)。で、じゃあ、「これもう3年も経ってるんだから終わらせようぜ」ということになったんです。だから今度は僕の自費じゃなくて、デイヴ(ゼッド・バイアス)のほうがチケットを送ってよこしてくれて、マンチェスターへ渡って作業を進めたわけです。

なるほど、なるほど。デトロイトにはデトロイトの独自のシーンがありますけど、UKガラージ/ベース・シーンっていうのはあなたからみてどういうふうに映ってるんですか?

ポール:音楽的なことでいえば、僕がそれまでまるで聴いたことのないものって感覚だったですね。デトロイトにダブステップのような音楽が入ってきたのってやっとこの2~3年前で、「そういうものがあるらしい」というような認識しかなかったんですよ。もともとデトロイトはテクノとハウスを中心に発展してきたような町で、そのなかに覚えきれないほどのサブ・ジャンルが枝分かれしていたわけなんですけど。そのなかにベース・ミュージックのようなものはなかったですからね。
 ゼッドと仕事しているあいだ、デトロイトでゼッドの名前が話に出たりすると「ああ、知ってるよ」っていう人もいたけど、だいたいは名前は知ってるけど、よくわからないって感じだった。僕が「聴いたほうがいいよ」ってすすめると、曲によっては好きだったり嫌いだったり、拒絶してしまう人もいればおもしろがるひともいた。やっとそれが定着してきて、デトロイトにも若いDJでダブステップDJって言われる人たちがでてきて、ちゃんとシーンを成立させてるって状況が生まれたんだけど、こっちからしてみれば、「きみたち4年前は何してたんだよ?」って気持ちもあってね。マンチェスターに行ったこともなければイギリスにも行ったこともないのに、彼らはベンガやら何やらダブステップの有名な作品のコレクションをたくさん持ってて、そういうDJをやってしまう。僕自身はクラブへは行けてなくて、それはデイヴが僕をスタジオに缶詰めにして「アルバムを終わらせるから」って遊びに行かせてくれなかったからなんです(笑)。

ははは、それは面白い話ですね。今回はジャザノヴァで来日されてますけど、あなたはほんとにいろいろな活動をされていて、たとえばディスコグスなんかを見ていたら、クレジットの多さに驚かされるんですね。ふだんはデトロイトに住んでいらっしゃるんですかよね? 10歳のときでしたっけ? ブラジルのサンパウロからアメリカのデトロイトに引っ越してこられたというのは。

ポール:そうですね。10歳になりそうってころからかな。

そのころすでに、ご家族の影響で楽器が使えたっていう話を聞いたことがあるんですが、デトロイトの文化にはすぐにうちとけることができたんですか?

ポール:デトロイトに移ったころというのは、子どもだったし、シーンというものを認識できていなかったというか、そんなものなかったのかもしれないですね。僕の世界は学校で、学校のなかのバンドでジャズをやったり、ロックをやったりしていました。でもそのときの学校の先生が、ほかの子どもよりも僕のほうが音楽的に先に進んでしまっているから、この子は退屈なんだろうなと気づいてしまっているようでした。実際にそのとおりだったし、どうやってこの子にもう少し楽しんで音楽をやってもらえるだろうかと先生が困っていたのを覚えています。シンプルなものとか誰にでもわかる音楽には興味がなかったし、もう少し深いことをやりたいとそのとき思っていました。

取材:野田 努(2012年8月24日)

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