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Home >  Interviews > interview with Jehnny(SAVAGES) - サヴェージズ、愛を歌う

interview with Jehnny(SAVAGES)

interview with Jehnny(SAVAGES)

サヴェージズ、愛を歌う

──ジェニー・ベス、インタヴュー

質問原案:野田努    電話通訳:染谷和美   Jan 20,2016 UP

スリーフォード・モッズは大好きよ。共演もしたし。ディスマランドで共演したの。えぇと、あれは……バンクシーか! バンクシーのディスマランドで一緒にやったわ。


Savage
Adore Life

Matador/ホステス

RockPost-Punk

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このアルバムの雰囲気を「スピリチュアル」と表現したら当たってますか?

ジェニー:あぁ……うん、そうね、ラヴというよりはソウルだし、それよりもスピリットかもね。あとセクシャリティ。これは前から言っていることだけど、セクシャリティは私にとって最大のテーマでもある。セックスって本当の自分でいられる、一番安心できる場所なのよ、私にとっては。それをすごく感じさせてくれる展示会が去年、パリであって…えぇと……あ~、名前を忘れちゃった(苦笑)、フランス人の女性アーティストの作品群だったんだけど、あんなふうに自分のセクシャリティを表現できるというのは素敵だなぁと思って。なんなんだろう、表立って語ることをタブー視されるエリアだけど…、いや、だから、なのかな、私が取り組んでみたいと思うのは。つまり、そこまで解放されて初めて真に自由になれると思っている、というか。セックスは安心できる場所。Sex is safe!……って、なんか力説しちゃったけど(笑)。

(笑)、スピリットと同義語なのかどうか、私にはよくわからないけど。

ジェニー:スピリチュアルであることが高尚でセクシャリティが低俗、みたいな分け方は絶対に違う。

うん……。

ジェニー:解放、という点では同義語なんじゃないかな。

つまり、愛を歌うようになったことも含めて、このアルバムには解放されたサヴェージズがいる、と。

ジェニー:そういう言い方はできるわね。別に、前のアルバムで私たちが制約されていた、というわけではないけど、気持ちの上でもミュージシャンシップ的にも色んなことができる余裕ができたんだと思う。

歌詞の上でも?

ジェニー:うん、さっきも言ったように、今回はパート毎に作業だったから、早くやらなくちゃ、とか、メンバーを待たせてるから、とかいう心配をすることもなく、自分のやることにじっくり専念することができたの。私の出番は最後だから、みんなが作ってきたものを聴いてかなり驚かされたわ。わぁ、こんなことができるんだ、みんな! って。刺激されて私の歌もより思い切った表現になった、というのはありそう。詞はいつも書き溜めているものの中から曲に相応しいのを選んで仕上げていったんだけど、ファーストの頃よりもお互いのことがよくわかって、遠慮のない仲になっているから気持ち良く歌えた歌詞もあると思う。

バンド内からの刺激。

ジェニー:そういうこと。

外からの刺激、ということでは、その展示会や、他に何かありましたか。

ジェニー:本はよく読むわ。とくにギタリストのジェマ・トンプソンとは、面白い本を読むと郵便で送って交換したりしてる。この前はふたりでゲーテの『ファウスト』にはまって……というか、その前に映画版にはまったんだけど(笑)、原作は16世紀……だっけ?(編注:ファウストが実在したのは16世紀で、ゲーテが書いたのは19世紀) 映画はロシア制作で、ちょっと前のやつ。知ってる? あれを観ちゃったの(笑)。すごく美しい映像だけど、うわぁ、勘弁して……っていう場面もいくつかあって、観て良かったような、観たくなかったような……

それこそ美しくて重たい、という感じでしょうか。

ジェニー:そう、そう! それで思い出したけど、あの映画のラストシーンを観ながら思ったのよ、これは自分たちのアルバムで表現してみたい世界観だ、って。いままで忘れてたくらいだから、そのまま実践したとはとても言えないけど(笑)、でも、どこか深層心理に残っていたのかも。

ゲーテの『ファウスト』ですよね。

ジェニー:そう、ドイツのヒーロー(笑)。

アルバムを締めくくる“This is What You Get”、“Mechanics”あたりの曲は痛みを伴いますね。こういう終わり方にしたかった理由があるんでしょうか?

ジェニー:“Mechanics”は、ある意味、未来に目を向けている曲よ。少なくとも私はそう思ってる。愛というものを……そうね、愛の可能性、というか……、この愛を本当に自由にしてあげた場合、将来的にどういうものになるか、という可能性を歌っているつもり。恋に落ちるにしても、恋から落ちこぼれるにしても、何の縛りもなく自由に、心のままに身を任せていたらどうなるか……という、うん、だから、いまはまだここにないもの、存在していないものを歌っている。わかる(笑)? 想像の世界、ってことね。だからこそ、あの曲でレコードの幕を下ろすことが重要だったの。未来に向けて開かれた扉、という意味で。

あぁ、なるほど。そこまで読み取れるか、は英語力も関わってくるかな……。

ジェニー:あはは、でも、それはフランス人が相手でも同じよ。ただ。サヴェージズの曲は言葉を理解しなくても伝わるものがあると私は思ってる。音楽そのものやサウンドが、何かしら意味を伝えてるはずだから。あるいは意味の感覚、というか…、だから、歌詞で私が言おうとしている意味そのものじゃなくてもいいの。どの曲も……必ずしも歌詞に書かれている意味で捉えてくれなくてもかまわないし、その人の感覚で楽しんでもらえるのがいちばんいい。それが可能な曲であることがだいじだと思ってる。

時間が迫ってきたので、最後にシンプルな質問をいくつか。まず、あなたはブラッドフォード・コックスが好きですよね。

ジェニー:うん! 大好き!

では、スリーフォード・モッズは?

ジェニー:あははっ! 大好きよ。共演もしたし。ディスマランドで共演したの。えぇと、あれは……バンクシーか! バンクシーのディスマランドで一緒にやったわ。

次に、あなたが思わず口ずさみたくなるようなポップ・ソング、メロディのある曲、というと何でしょうか。

ジェニー:う~ん……新しいので?

新しくても古くても、どこの国のものでも。

ジェニー:わあ……いっくらでもあるんだけど、ちょっと待ってね、コレっていうのを考えてみるから……

OK。

ジェニー:そうだなぁ、ポップ・アーティストってことでいうとマイケル・ジャクソンが私の子供の頃の一番好きなアーティストで、10代の頃は本当にマイケル・ジャクソンに入れ込んでたから、彼の曲が思い浮かぶんだけど……、あ、そういえば、実はビヨンセのこの前のレコードがけっこう気に入ってるのよね、私。

へえ……。

ジェニー:かなり衝撃だったわ、自分がビヨンセのレコードを気に入るなんて(笑)。

(笑)

ジェニー:あはは。でも、たぶんプロダクションなのよね、私が惹かれたのは。曲そのものっていうよりも、一部の曲の音の作り方とか響きとか……、あと、けっこうアンダーグラウンドまで掘って音を作ってる感じはすごくいいと思った。あ! 新しいところでは FKAツイッグスはすごく好き。彼女は存在がポップ・アーティスト! って感じがする。ヘンだけど、そこがいいのよね。ポップなのに極端にヘン。そういうの、私は大好きなの。メインストリームだと、そんなところかなあ……って、全然ポップ・ソングじゃないし、歌えないわね(笑)。

質問原案:野田努(2016年1月20日)

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