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 interview with  Richard H. Kirk(Cabaret Voltaire)

interview with Richard H. Kirk(Cabaret Voltaire)

キャバレー・ヴォルテールの完全復活

──リチャード・H・カーク、インタヴュー

質問:野田努    通訳:坂本麻里子   Nov 16,2020 UP

ああ、とにかく興味があるってことだよ──だから、リズムのパワーに、それが人びととコミュニケーションを持つ力に興味がある。

ダンス・ミュージックのリズムを取り入れているのは、いまにはじまったことではない、もう、80年代からずっとそうなんですが、今作でもリズムの創造に注力していますよね?

RHK:うん。

ダンス・ミュージックにこだわったのはどんな理由からですか?

RHK:ああ、とにかく興味があるってことだよ──だから、リズムのパワーに、それが人びととコミュニケーションを持つ力に興味がある。というのも、リズムの歴史は何千年も前にさかのぼるものだと思うし(笑)、それこそ人類が存在し始めて以来、人間が2本の棒切れを叩き合わせるようになり、そしてドラムを叩くようになって以来存在しているわけで……。となれば、きっとそこにはなにかしら、(笑)大事な世界があるんだろう、と。だからわたしが基本的に思っているのは、言葉を使えるようになる以前は、人びとはリズム、そして音楽を通じてお互いと意思伝達をおこなっていた、ということなんだ。

たとえば“Universal Energy”にはデトロイトのアンダーグラウンド・レジスタンスにも似た力強さを感じます。

RHK:ああ。まあ、自分としてはアンダーグラウンド・レジスタンスとは似ても似つかない曲だと思うけれども……ただ、わたしは彼らのファンだよ。非常にラッキーなことに、2015年に、イタリアでマイク・バンクスに会う機会に恵まれてね。彼はアンダーグラウンド・レジスタンスの“Timeline”、ジャズ版URのような、あのユニットとしてプレイしたんだよ。それに、あのフェス(訳注:Dancity Festival の2015版と思われる)の同じ顔ぶれでは……彼が……クソッ! ど忘れしてしまって名前が浮かばないなぁ、ほら、あの人?……マイクと一緒にやっていた……

とっさに思い出せなければ大丈夫です、後でネットで調べますので。

RHK:うん、そうしてよ……彼の名前を思い出せないなんて、我ながらなんと間抜けだなぁ、情けないと思うけど……。

いえいえ、よくあることですから、どうかお気になさらず。

RHK:うん。で、とにかくまあ、彼らの音楽は90年代初期から知っていたし、12インチ・シングルも山ほど持っているとはいえ、あれ以降、彼らがどんなことをやってきたかについてはよく知らなかった、みたいな。でも、改めて彼らの音楽を探りはじめてね……(ゴホゴホッと咳き込む)失礼。うん、オンラインを通じて、彼らの音楽を探りはじめたんだよ。そうしたら、実にファンタスティックな、素晴らしい音源やヴィデオ群を彼らがポストしているのを発見してね。あれらは本当に、本当に素晴らしいものだよ、うん。

なるほど。で、質問の続きなんですが、クロージング・トラックの“What's Goin’ On”のホーンのコラージュには黒人音楽へのシンパシーがありますよね? あなたはもともとソウルやレゲエのクラブに出入りするような10代を過ごしてきたわけですが──

RHK:その通り。

いまもキャバレー・ヴォルテールの音楽のなかに黒人音楽からの影響はあると思いますか?

RHK:……まあ、いま君の言ったことがそのまま質問の回答になっているんじゃないの?

(笑)あ、なるほど。

RHK:君自身がその影響を作品から聴き取っているわけだから!

ですね。では、当方の読みは当たっている、と。

RHK:そう。それに、思い出したよ、さっき名前を思い出せなかったのはジェフ・ミルズ! 彼ともあのフェスで会えたんだ。たしか彼は、一時期日本で暮らしていたこともあったんじゃないのかな……? ともかくまあ、うん、あれは本当にこう、ツアー生活に戻ったことに伴うグレイトな体験のひとつだった、みたいな。ヨーロッパ各地で開催される色んなフェスティヴァルに出演するようになるし、おかげでその場で素晴らしい人びとと実際に会えることになる、というね(笑)! うんうん……。

今作は、明らかに悪化していく状況に対してのキャブスの反応と見ているのですが、ただディストピアを描くだけではなく、アルバムの終盤の、希望めいたものも表現しているところに感動を覚えました。

RHK:なるほど。

アルバムの最後の3曲には、アップリフティングな展開の曲を配置しています。その意図について教えて下さい。

RHK:まあ、誰だってハッピー・エンドが好きなものだからね!

(笑)。

RHK:いやだから、あの流れはほとんどもう……ライヴで体験したことから出て来たものだ、みたいな。たとえば……“Universal Energy”、あのトラックを観衆相手にプレイすると、とても妙な効果がオーディエンスのなかに起きるのに気づいてね。すごい数の人間が、狂ったように踊っていた。というわけで、このアルバムになんらかの構造をもたせるに当たって、そのクレイジーさに向けてビルドアップしていくのはいいんじゃないか、と思ったんだ。とは言っても、自分としては(ゴホン!)……“What’s Goin’ On”は高揚するタイプの曲だとは思わないけれども。あの曲に含まれるブラスやホーン・セクションのせいで、たぶんそんな印象が生まれるんだろうな……。というのも、よくよく聴けば、あれはかなりダークな曲でもあるからさ(苦笑)。でも……どうなのかな? あのトラックを仕上げたとき、自分でも思ったんだよ、「これだな、出来た」と。このアルバムを世に出せるようになった、準備完了、とね。

手応えがあった、と。

RHK:と言いつつ、妙な話でもあるんだ。というのも、あの曲を書き始めたときは……たしか、このプロジェクト(=ライヴおよび、その結果としてのアルバム)のために実際に書いた曲としては、あれが1曲目だったはずなんだ。けれども、書いたものの、生であの曲をパフォームすることはなかなかなくてね。2、3回以上、ライヴで演奏する機会を逃してきたと思う。というのも、あの曲にはまだなにか決め手が欠けているなと自分では思っていたから。あれをぐっと持ち上げるのにはもっとなにかが必要だなと感じていたし……アルバムとしてまとめる最後の最後の段階まで、それがなにかを自分にはつかめなかったんだと思う。

いま「希望めいたものも表現している」と言いましたが、具体的にいま現在のあなたが希望を感じていることになにがありますか?

RHK:まあ……とりあえず自分の生は確保しているし──(苦笑)そこには常にありがたい希望を感じているよ! ただ、いまの世界がどうかという点に関して言えば、正直あんまり希望は感じないな(苦笑)!

いまもシェフィールドにお住まいだと思いますが、いま現在のシェフィールドも昔と同じようにお好きですか?

RHK:ノー。まあ、それについてはこの取材の2、3日前にも他の場で話したばかりだけれども……かつてのシェフィールドの多くは解体・撤去されてしまっていてね。古い建物等々、それらは取り壊されてしまった。で、とにかく、いまやシェフィールドの街並は……どことも変わりがない。イギリス北部にあるタウンのどことも差のない、ありふれた景観になってしまった、という。
 それはとにかく悲しいことだと思うし、そもそも自分はあまり表に出歩かないしね(苦笑)、シェフィールドでコロナウイルス問題云々が起きる以前から、あまり外出しないタチだったし、こっちでの他人との社交もやめてしまって。うん……まあ、それは、たぶん自分が年寄り過ぎだからなのかもしれないけどね? ハハハッ! でも、とにかく──いまのシェフィールドには自分が育った街としての面影は見当たらないんだ。まあ、そう感じるのはたぶん老いのせいだろうし……どうなんだろう? 要するに、この街がどうなっているのか、自分にはもうわからない、と。もちろん、シェフィールドにはクラブもたくさんあるし──そうは言いつつ、そのすべてが現時点では閉鎖中なわけだけど──音楽系のヴェニューはたくさんあるんだよ。ただ、そうしたクラブのなかに、かつてそうだったように、実際の「シーン」が存在するのかどうか?というのは、わからないなぁ。それでも、この街には実験的なエレクトロニック・ミュージックをやっている連中がまだいるというのは知っているよ。ただ、これまでのところ、その音楽はわたしの耳にはあまり届いていないね。

シェフィールドはかつてのキャラクター/個性を失ってしまったと思いますか?

RHK:だからまあ、わたしにとってはそうだ、ということだよ。でも、シェフィールドで育った、いま20歳くらいの若者は、また違う世代であって、彼らにとってはそうではないだろうし……ただ、いまどきは余りにも多くがコンピュータやその手のテクノロジー頼みになっているよね。それに対して、キャバレー・ヴォルテールの初期の頃は……ちゃんとしたコンピュータというものがそもそもなかったし(苦笑)、あれらの音楽は一種のシンセサイザーや、ギターや様々な楽器をシンセサイザーのプロセッサを通して変化させて作ったものだったんだ。そうやって新しい、ユニークなサウンドを作り出そうとしていた、という。

手作りの機材等で工夫して音を作っていた、と。

RHK:そう。

と言っても、これは批判でもなんでもないですし、パソコンがあれば買ったその日から音楽を作れるのは素晴らしいことだと思います。ただ、便利過ぎるというか、努力せずに済む、というところはあるかもしれません。

RHK:いや、だから、そこの問題は(苦笑)──

どれも似たり寄ったりな音になってしまう、と?

RHK:そう、その通り。そうなってしまう可能性はあるよね。

コロナがいつ収束するのか見えない現在ですが、この先の予定になにかあれば教えて下さい。

RHK:(ゴホン!)そうだな、この時点でいくつか明かせることがあるから話そうかな。

(笑)予定通りに進めば、ということで。

RHK:いやいや、そうなるはずだよ! まず、これからツアーに出てライヴ・パフォーマンスをやれないのははっきりしているから……『Shadow Of Fear』を拡張することにしたんだ。

ほう?

RHK:なので、来年1月に3曲入りの12インチ・シングルを出す予定なんだ。それらのトラックもライヴ・ショウを元にしているけれども、アルバムにはどうにもフィットしなかったものでね。で、その後にアルバムがもう2枚控えている。どちらもわたしが「Drowns」と呼んでいるタイプの作品で、60分にのぼる瞑想型の音楽ピースみたいなもので。それらは、2月と3月に出せればいいなと思っている。というわけで、『Shadow Of Fear』は(ゴホゴホと咳払いして)、一種のシリーズ作のようなものなんだ。だから、ストーリーはまだあるんだよ。

なるほど。徐々に物語が明らかになっていく、と。

RHK:そういうことだね。でも、そこから先はどうなるか自分にもわからないな。というのも、去年の9月から今年4月にかけて猛烈に働いたわけで……いずれ、どこかの時点でまた新しい音楽を書き始めるだろうけれども、自分としてはまだ「そのタイミングがきたぞ」とは感じていないんだ。だから、ここしばらくは仕事を減らして少しのんびり過ごしていた、ということ。そうやって、とにかく自分の健康管理に気を遣おうとしているし……あまりやり過ぎないようにしよう、とね。それに、アルバム3枚に12インチを1枚というのは──年寄りにしちゃ悪くないだろう? アッハッハッハッハッ!

いや、すごいと思います。質問は以上です。ありがとうございました。

RHK:オーケイ。話せて楽しかったよ。

こちらこそ、面白いお話を聞けてよかったです。どうぞ、くれぐれもお体には気をつけてください。

RHK:うん。どうもありがとう。バイバーイ!

質問:野田努(2020年11月16日)

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