「Dom」と一致するもの

The Mount Fuji Doomjazz Corporation - ele-king

 オランダからドゥーム・ジャズを名乗る8人構成のサード・アルバム。母体であるキリマンジャロ・ダーク・ジャズ・アンサンブルにゲストを加えたラインナップで、いまのところ交互に各3枚づつのアルバムをリリースしている。「擬人化」と題されたライヴ・インプロヴィゼイションはアド・ノイジアムからの前2作とは違い、人類の進化をイメージした1時間程度の組曲。
 ジョン・コルトレーン『アセンジョン』やレッド・クレイオラから発展し(様式化し?)、無調であることに歯止めが利かなくなったフリー・ジャズはすべての楽器が溶け合ってしまうニーモニスツ式のドローン状態がいわば終着地点になったと勝手に思っているのだけれど、ここでドゥーム・ジャズと宣言されているものはドゥーム・メタルよろしくディジェリドゥーの演奏を模したヴァリエイションと考えられ、楽器もそこまでドロドロに混ざり合うことはなく、トロンボーンやチェロ、あるいはエレクトロニクスやギターがそれぞれにロング・ドローンを演奏し、それらが明快なアンサンブルとして構成されている。簡単にいえばゴッドスピード・ユー~のジャズ・ヴァージョンで、時代が変化したせいか、あれほど重い演奏ではなく、90年代から続くドイツのストーナー・ロック(ボーレン・ウント・デル・クラブ・オブ・ゴアなど)から派生した流れだと解すればいいのだろう(ジャズには詳しくないので、ジャズ評論家による言及を探してみたものの、ネット上では発見できず。おそらくジャズ・ファンには相手にされていない......?)。
 勇壮としたイントロダクション(ちょっとクラウス・シュルツェ? それが人類誕生のイメージか)。"ディメンジョン"と題されたパートでは「進化」が起こっているようで、なんとなくアシッドな感じがよく、トロンボーン(?)の咆哮がそれに加えて緊張感を与える。"フォーム"でヴァイオリンがしみじみとする辺りは一種の停滞感を表現しているのか、全体的にはダーク・アンビエントといえる範囲。ドゥームには興味があるけれど、メタルはちょっと......という方にはちょうどいい感じでしょう(切れてなければ、まだダウンロードできるかも→https://www.mediafire.com/?bb3b23iru2424us)。

 ゴッドスピード・ユー~からティム・ヘッカーまでドゥーム・カルチャーの総本山と化したモントリオールからは新たに〈コンステレイション〉がサックス奏者のセカンド・アルバムを送り出した。これが一筋縄ではいかない。ドゥームかと思えばミニマルなベースのループにサックスやパーカッションでアクセントを与え、踊れるドゥーム・ジャズのような展開がいくつかと、いわばゴッドスピード・ユー~の呪縛を解いた上で、バロックじみたサキソフォンだけの多重録音(?)はロル・コクスヒルを早回しで聴いているようなチープ・スリル。タイトル曲や"ア・ドリーム・オブ・ウォーター"ではスポークン・ワーズにローリー・アンダースンがフィーチャーされ、ムダに知的な感じがする一方、感覚的に飛ばしてるだけといった曲も多く、戦前のブルース・シンガー、ブラインド・ウイリー・ジョンスンのカヴァー"ロード・アイ・ジャスト・キャント・キープ・フロム・クライング・サムタイムス"はかなり斬新なブルースのドゥーム解釈。なるほどそっちと結び付ける手があったかと。後半に向かってベースが蠢き出す曲が増えたりと、手法的にはまったく統一感がないはずなのに、全体としては奇妙な眼鏡で世界を覗き見たようなスチーム・パンク的な快感を持ったアルバムといえる(それもまだ未完成の魅力にあふれた)。
 ちなみに前作『ニュー・ヒストリー・ウォフェア Vol. 1』からのリミックス・シングルはティム・ヘッカーが手掛けている。

interview with Scuba - ele-king


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ホットフラッシュ・レコーディングス・プレゼンツ......バック・アンド・フォース

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 DIY主義で成り立っているダブステップ・シーンにはいくつもの魅力的なレーベルがあるが、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉は人気レーベルのひとつであり、また、このジャンルにおいて重要なレーベルのひとつでもある。そして、〈ハイパーダブ〉がブリアルを輩出したレーベルとして知られるように、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉は昨年、マウント・キンビーのデビュー・アルバム『クルックス&ラヴァーズ』をリリースしているレーベルとしても知られるようになった。ブリアルとマウント・キンビーといえばジェームス・ブレイクが影響を受けた2トップとも言える存在だが、興味深いのは、〈ハイパーダブ〉を主宰するコード9がレゲエのサウンドシステム文化からの影響を受けているのに対して、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を運営するスキューバは20年前からテクノに親しんでいたばかりか、いまではベルリンで暮らし、高名な〈ベルグハイン〉でレギュラー・パーティをオーガナイズしている。
 こうした背景は、スキューバの音楽性ないしはレーベルの方向性にも表れている。〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉には独自の色があり、以下もちろん 褒め言葉として言うが、クロイドンのヤンキーっぽさとも〈ナイト・スラッグス〉のちゃらさとも別種の、やはりテクノ/ハウス臭の強さによってレーベルの色 は構成されている。
〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉にとって最初のコンピレーション・アルバムとなる『バック・アンド・フォース』のリリースを祝して、レーベルの主宰者であり、もうひとつのダブステップをうなが してきたスキューバを名乗る男、ポール・ローズに話を訊いた。

ダブステップは音が独特だったんだ。他に比べられるものがないくらいユニークだった。FWDはすごく小さなハコなのに、バカでかいサウンドシステムを入れてて、ああいう音を聴くにはすごく良かったというのもあったかな。あとは単純に多くの人があまり好きじゃなかったか、まだ聴いたこともなかったという点も魅力的だったね。

まずは現在の日本の震災、福島原発について知っていると思いますが、あなたのコメントをもらえますか?

スキューバ:すべてが非現実のように思えるほど、テレビなどで見た映像は悲惨で、心を痛めるものだった。みんなと一緒で、一刻でも早く、復興が実現することを心から願っているよ。日本では素晴らしい経験をいままでさせてもらってるから、みんなの生活が元に戻ることを祈ってる。

今回、初めてレーベルのコンピレーションをリリースしますね。ようやくそのタイミングが来たという感じですか?

スキューバ:そうだね、ここ最近多くの才能がレーベルに関わってくれるようになって、それをいちどまとめて世間にショーケースしたかったのがまずあった。はじめたときとは趣向が少し違うけど、そのときといまの音もひとつの作品にするのも面白いと思ったし、これからレーベルを通して出てくるアーティストも見せたかった。みんな素晴らしい人ばかりだから、すぐコンパイルできたよ。

〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉らしい、多様性のある内容になったと思います。だいたいあなたのレコードは、日本ではテクノ系のDJも好んでいるんですよ。

スキューバ:ははは、そうなんだ(笑)。でも納得できる状況だね。たしかにダブステップからはじまった感はあるけど、いまはとくに何のジャンルにこだわっているとかはないし、どちらかと言うとテクノ系のDJの方ほうが回しやすいのかもね。

初めての取材なので、あなたの個人史についてまずは教えてください。ネットで調べたのですが、あなたは幼少期からピアノを習い音楽に親しんできた。学生時代にコリン・フェイヴァーとコリン・デイルをきっかけにダンス・ミュージックの世界の足を踏み入れて、ジャングル、そして〈ワープ〉のようなテクノに熱中した。とくにオウテカの最初の2枚のアルバムが好きだった。当たってますか? 何か付け足すことは?

スキューバ:その通りだね。90年代なかばはコリン・フィヴァーとコリン・デイルがやっていたラジオ番組をよく聴いていてよ。当時はまだちゃんとしたラジオ番組がいっぱいあったからね。彼らの番組はけっこう幅広いエレクトロニック・ミュージックをかけてて、14~5歳の僕にとってはすごく新鮮だったね。ロンドンではクラブに若くて入れたりして、僕もその直後くらいから行きはじめたりしたんだ。海賊ラジオも聴いたりしてて、そこではジャングルが一時期すごく流行ったり、その後にガレージが来たりしたんだけど、それもチェックしてたね。ダブステップとの出会いはガレージからの流れだったと思うんだけど、いまでも続いてるフォワード(FWD)という月1回のイヴェントがあって、3年ほど何も面白い出来事がなかったような時期の2001年にはじまって、そこでいろんな面白い連中が集まっててね。いまも最前線にいるスクリーム、ベンガやマーラとかみんなそこを通っていったよ。

卒業後、あなたは6年間の会社勤めを経験したが、それがアホらしくなってドロップアウト、そして2003年、スペクター(Spectr)の名義で、最初の12インチ・シングルをリリースするために、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を設立する......。

スキューバ:2001年に学業を終えて、仕事に就いたけど、実は2007年くらいまでは辞めなかった(笑)。だからレーベルやりながら働いてたよ、普通に。

なぜ〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉という名前をつけたんですか?

スキューバ:一時期ブリストルで勉強をしていて、そこでやってたクラブ・イヴェントから名前を取ってるんだ。とくに深い意味はないんだけどね(笑)。

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いままで自分が影響を受けてきたエレクトロニック・ミュージックはアルバム形式のものが多いんだ。初期のオウテカの2枚、オービタルのセカンド・アルバム、エイフェックス・ツインとかもね。最初から最後まで楽しんで聴けるものを作りたかったし、当時はいろんな人を驚かせたと思う。


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自分で音楽を作りはじめたのはいつからですか? 

スキューバ:10代の頃には少し遊びで曲を作ったりしてたけど、大学の頃はずっとDJばっかりだったね。でも学校を卒業してから作りはじめたんだ。2001年に卒業して、2003年に作品を出してるから、2~3年かけて作曲を身に付けていったって感じかな。そんな簡単に出来るものじゃないし、どのプロデューサーもそんなすぐ納得して出せるものもないと思うしね(笑)。

6年も会社勤めをしていながらそれを辞めて、レーベルをはじめるって、けっこう勇気がいったと思うんですよね。

スキューバ:最初はレーベルやりながら働いてたし、辞めたときには逆にほっとしたというか、やっとこれに集中できるって感じだったかな(笑)。

当時のあなたはダブステップのシーンとはどういう関係だったのでしょうか?

スキューバ:レーベルは2003年にはじめて、その当時はリンスFMでも番組をやってて、けっこうどっぷり関わってた感じかな。でもみんな最初はファンとして入っていったんだ。僕らもそうで、ゼド・ビアスとかジンクがレジデントをやっていて、彼らはガレージの延長線のようなものを流してて、それが好きで集まってたんだけど、気付いたら自分たちもダブステップという音楽を作ってて、出してて。本当に気付いたらそうなってた、という感じだったよ。

あなたが知っている初期のダブステップのシーンの良さについて話してもらえますか?

スキューバ:音が独特だったんだ。他に比べられるものがないくらいユニークだった。FWDがやってた場所はすごく小さなハコなのに、バカでかいサウンドシステムを入れてて、ああいう音を聴くにはすごく良かったというのもあったかな。あとは単純に多くの人があまり好きじゃなかったか、まだ聴いたこともなかったという点も魅力的だったね(笑)。

レーベルが本格的にスタートしたのは2004年ですが、ディスタンスやボックスカッターのような人たちとはどのように出会ったのですか? クラブで知り合って、テープをもらったっていう感じですか?

スキューバ:ディスタンスとかはFWDで出会った仲間だったね。最初の頃から友だちだったという感じ。ボックスカッターはレーベルでは10個目のリリースとかだったと思うけど、その時点ではもうデモとかも送ってもらえてる状況になって、彼はそのなかから出会えたアーティストだね。デモはほとんどの場合ダメなものばっかりだけど、根気強くいろいろ聴いてると、たまにすごい才能に出会えるんだ。ボックスカッターは外部から送られてきた音源で初めて契約に至ったアーティストじゃないかな。

2008年にあなたはスキューバとしての最初のアルバム『ア・ミューチュアル・アンティパシー』をリリースしますね。素晴らしいアルバムだと思いますが、あなたの音楽はこのとき、すでにダブステップのクリシェから離れています。ダブやテクノ、アンビエント、エレクトロニカなど、よりオープンなエレクトロニック・ミュージックを展開しいています。あなたのこうした展開の背後には何があったんでしょうか?

スキューバ:アルバムというロングプレイヤー(LP)を作るとなると、ある意味自由度が増すと思うんだ。だからアルバムを作ると決めたときはダンス・トラックを単に集めたものとかにしたくなかった。さっきも言ってたけど、いままで自分が影響を受けてきたエレクトロニック・ミュージックはアルバム形式のものが多いんだ。初期のオウテカの2枚、オービタルのセカンド・アルバム、エイフェックス・ツインとかもね。最初から最後まで楽しんで聴けるものを作りたかったし、当時はいろんな人を驚かせたと思う。当然ダブステップだけじゃないし、テンポはそれに近くても、いろんな音を表現できたと思う。

ダブステップのシーンに対するあなたの気持ちに変化があったのでしょうか? それはあなたがロンドンを離れた理由とも関係があるのでしょうか?

スキューバ:ダブステップ云々でもなかったし、ベルリンに行ったこともあまり関係無かったんだ。というのも、あのアルバムを書いているあいだにちょうど引っ越して、しばらくは部屋にこもって作曲をしていたから、あまり街から影響を受けることもなかった。気持ちに良い変化はあったから、より集中できたというのはあるかもしれないけど。

ベルリンに移住して良かったことは何ですか?

スキューバ:そうだね、まぁ音楽的にはいろいろあるし、いろんなミュージシャンがいるから、刺激はたくさん受けるね。その上ロンドンよりリラックスしているし、ドイツの首都って感じもしないし、その和やかな空気がいいね。個人的にはあまりどこかのシーンに属するってことはないけど、たくさんの人に出会えて、つねにフレッシュな気分でいれるんだ。ロンドンでは少し飽和状態になってたというか、疲れてきた感じだったから、変化を求めて、ここに来たんだけど、まさに良い意味での変化になってるよ。

昨年リリースした『トライアンギュレーション』はさらにディープな作品になりましたが、やはりベルリンの音楽シーンからの影響が大きいのでしょうか?

スキューバ:もともと自分はいろんなスタイルの音楽に興味があるんだ。だからそれを分けて表現するのもおかしな話だし、よく名前を変えてやる人もいるけど(自分もそうしたりしてるけど、もうバレてるしね(笑))、僕はそれをひとりのアーティストとしてやりたい。1枚目から2枚目、その後もいろんなスタイルの音を追求してきたし、いろんな方向にいっていると思う。ベルリンのシーンから具体的影響を受けたとかは感じてないね。

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もともとこのレーベルはひとつのジャンルにこだわりたいという意志は最初からなかったし、いまでもない。面白いと思ったエレクトロニック・ミュージックは何でも出していきたいんだ。あと、いまの時代はそのように幅広く、好き勝手にやっても受け入れてくれる時代だと思うんだ。


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さて、コンピレーション・アルバム『バック&フォース』の話に戻したいと思います。個性的なアーティストのいろんなタイプの曲があって、過去と未来を繋げたいという気概を感じたのですが、あなた自身はどのようなコンセプトで選曲したのですか?

スキューバ:みんな仲間なんだ。このレーベルに関わってくれた人、これから関わるような人を収録したって感じだね。リリースがあった人、ある人はもちろん、自分が一緒に仕事をした人、関わった人で素晴らしい才能を持った人を選んだつもりだよ。

レーベルには若い才能が集まっていますが、まずはマウント・キンビーとの出会いについて教えてください。

スキューバ:彼らもデモを送ってきて、そこから関係がはじまったアーティストなんだ。メンバーの片方のドムがとても不思議でオブスキュアな音源を送ってきてね(笑)。2分間の沈黙の後にスネアが1回鳴るような音とか。すごく興味を惹かれていったのを覚えているよ。そしていまの編成になってから、より自分たちの音を確立させたような感じだし、最初のEPはアンビエントな作品だったけど、すごく反応が良くて。あと彼らはバンド形式でライヴをやるから、それも助かってるんじゃないかな。努力して世界中でツアーをしているしね。

ジョイ・オービソンのどこをあなたは評価しますか? ジョージ・フィッツジェラルドなんかも似たタイプというか、よりハウス・ミュージックに近い感覚があるように思うのですが。

スキューバ:彼は天性のメロディの持ち主だよ。初期はダブステップ的なことをやっていたかもしれないけど、いまは言う通り、ハウスに近いことをやっているからね。でもそれはすごく努力が必要なことだったと思う。だって、一番か二番を争うようなヒットを出しておいて、そこに背を向けて自分の信じたことをやるってことだからね。その辺も立派だと思う。

あなた自身のなかで、ハウスやテクノのDJで好きなのは誰ですか?

スキューバ:ちょっとベタだけど、マルセル・デッドマン、ベン・クロック、ステッフィとかカシアスとか好きだね。ステッフィの新作はすごく良かったよ。あとはサージョンとかすごく好きだね。彼のライヴ・セットは最近見たけど最高だったよ。

ロスカやアントールド、フェルティDLやディーブリッジなど、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉以外の、他のレーベルや自分のレーベルから作品を出しているキーパーソンの曲を選びましたね。ここにはどんな意図があったんでしょうか?

スキューバ:みんな友人だからさ。ロスカは昔から付き合いがあるし、ディーブリッジもフェルティ・DLもすごく面白いことやってると思うし、仲が良いし。レーベルで具体的にリリースが少なくても、いろいろと一緒にやってる人も多いしね。いろんなスタイルのアーティストがいるこの輪を見せたかったという気持ちもあったかな。

セパルキュア(マシン・ドラム)のようなアブストラクト・ヒップホップ系のベテランの、他のジャンルのシーンにいた人がいるのも面白いですね。

スキューバ:そうだね。彼らはいまレーベルにとって大事な存在だし、いまアルバムを制作中なんだ。9月頃に出したいと思ってるね。もともとこのレーベルはひとつのジャンルにこだわりたいという意志は最初からなかったし、いまでもない。面白いと思ったエレクトロニック・ミュージックは何でも出していきたいんだ。あと、いまの時代はそのように幅広く、好き勝手にやっても受け入れてくれる時代だと思うんだ。レーベル買いをしてくれる人もいるし、そのような人にも違ったスタイルを提供しないと面白くないしね。でもその幅広い中にもこのレーベルらしいカラーみたいなのはしっかりとあると思うんだ。

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個人的にいまはまったく興味がないだけなんだ(笑)。数年前は本当につまらなかったけど、ここ1年くらいはダブステップの周辺に面白い派生音楽があると思うし、そこはちょっと気にしてるけど、いまのダブステップを聴いてって言われたら、嫌だね。


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さて、あなたはいま、ダブステップというジャンルはどんな位置にいると思いますか? ダブステップはすでに終わって、いまはポスト・ダブステップにあると捉える人もいるし、まだまだシーンは元気だという人もいるし、いろんな解釈があると思いますが。

スキューバ:んー、まぁ終わってないことはたしかだね。この前マイアミに行ってたんだけど、ガンガンかかってたよ(笑)。でもたしかに変わったし、ここ数年の変化を客観的に見るのは面白かったけどね。そしてその変化はジャンルとして成功してきた結果の変化だと思う。それには問題はないんだけど、ただ個人的にいまはまったく興味がないだけなんだ(笑)。数年前は本当につまらなかったけど、ここ1年くらいはダブステップの周辺に面白い派生音楽があると思うし、そこはちょっと気にしてるけど、いまのダブステップを聴いてって言われたら、嫌だね。

欧米においてこのシーンはここ2~3年で加速的に拡大しましたね。最後にあなたがシーンの拡大を実感したときのことを教えてください。

スキューバ:んー、何かきっかけがあったという風には感じてないけど、徐々にそう感じるようになったかな。もともと自分もダブステップ専門とかじゃないし、レーベルも偶然ダブステップ的なレーベルに見られるようになっただけなんだよね。

ありがとうございました。日本でお会いできるのを楽しみにしています。

スキューバ:ありがとう。僕も早く日本に戻りたいと思ってるよ!

 最後に、『バック・アンド・フォース』に曲を提供している主なプロデューサーの名前を記しておこう。取材でも触れているように、ダブステップ、ファンキー、ミニマル、ハウスなど、実に多様性のある内容だが、ひと言で言えば、現在のベース・ミュージックにおけるテクノ系の総本山としての〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉の特徴の出ている好コンピレーションになっている。

■Boxcutter
Boxcutter / Oneric Planet Mu

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 2006年にデビュー・アルバム『Oneiric 』を〈プラネット・ミュー〉から発表したこのアイルランド人は、グライムとダブステップを盗みながら、ユニークなエレクトロニック・ミュージックを展開している。IDMの側からのダブステップへのもっとも初期のアンサーとも言える。

■dBridge
dBridge / Fabriclive 50 Fabric

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 ディーブリッジはインストラ:メンタルと同様にドラムンベースのシーンから来ている人気プロデューサー。

■Scuba
Scuba / Triangulation Hotflush Recordings

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 〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を主宰するポール・ローズによるプロジェクト。2008年の『A Mutual Antipathy 』と2010年の『Triangulation』は日本でも人気盤となっている。

■FaltyDL
Falty DL / You Stand Uncertain Planet Mu

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 ニューヨーク在住のドリュー・ラストマンは、2009年に素晴らしいデビュー・アルバム『Love Is A Liability 』を発表。2011年にリリースしたUKガラージ調のシングル「Hip Love」では、ザ・XXのジェイミー・XXがリミックスを手掛けている。セカンド・アルバムも文句なく良い。

■George Fitzgerald
George Fitzgerald / Don't You Hotflush Recordings

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 2011年に〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉から最初のシングルをリリースしたばかりのロンドン在住の新人。ジョイ・オービソンのようにハウスの4/4のキックドラムを使い、ソウルフルなフューチャー・ガラージでダンスフロアを熱狂に導くであろう注目株。

■Roska
Roska / Rinse Presents Roska 12 Number One Rinse FM

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 UKファンキー(UKガラージにおけるアフロビートないしはソカのハウス的な混合)を代表するDJ/プロデューサー。


■Mount Kimbie
Mount Kimbie / Crooks & Lovers Hotflush Recordings

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 2010年〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉からデビュー・アルバム『クルックス&ラヴァース』を発表したドミニク・メイカーとケイ・カンポスのふたりによるマウント・キンビーは、IDMスタイルを取り入れ、音楽的にこのジャンルをさらに洗練させている。幅広い層から支持され、いまや〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を代表する存在にまでなった。

■Joy Orbison
Joy O - Wade In / JelsHotflush Recordings

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 2009年に〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉からリリースされたデビュー・シングル「Hyph Mngo/Wet Look」によって瞬く間にシーン最大の注目株となった。ジェイディラをはじめ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインからGGアレンまで愛する若き才人は、ダブステップのクリシェにとらわれず、自由な発想でダンス・トラックを作っている。

■Untold
Untold / AnacondaGet Physical

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 〈ヘムロック・レコーディングス〉レーベルを主宰するジャック・ダニングによるアントールドはイノヴェイターのひとり。2011年はいよいよアルバムのリリースが控えているとの噂もあり、それは幅広く注目されることになるだろう。

■TRG & Dub U
Cosmin TRG / A Universal CrushRush Hour

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 最近ファースト・アルバム『A Universal Crush 』を〈ラッシュ・アワー〉から発表したばかりのTRGは、ディープ・ハウスからゲットーテックまで幅広くこなす。収録曲は2562によるリミックス・ヴァージョン。

Dom - ele-king

 現在のようにとてもカジュアルに海外のインディ・バンドの音を聴ける状況下では、ふと気になる音をみつけても、バンド側にまだバンドとしてのキャラクターや方向性、気構えや覚悟といったものが備わっていない場合も多い。まだ無名で、メディアによる吟味を受けていなかったり、結成して数ヶ月というグループさえ気軽に聴けてしまうのだから当然だ。注目され、何だかんだとジャンル名を冠され、点数をつけられ、ツアーに出て云々というプロセスを経れば、おのずとなにかキャラクタライズされ、バンド側にもそれに対するリアクションや姿勢が生まれてくるわけだが、そうなる前の、まるで職場の友人のバンドを眺めているような、未分化でファジーな空気を感じることが、多くなった。ドムに感じるのも同様のものだ。私はそれをいまらしい、好もしいことだと考えている。

 ドムはマサチューセッツの5人組バンド。力の抜けたローファイ・ポップに、リヴァービーなサーフ・ポップと時流を外さないサウンド・スタイル。パッション・ピットを思わせるきらきらと甘いシンセ・チューンもある。MGMTのようにエキセントリックでファッショナブルなサイケデリアもわずかに漂わせつつ、はつらつとしてネオアコ・マナーなソング・ライティングのセンスも時折光る。非常にとっ散らかった印象だが、旬な音がつめこまれている。それに、昨年のデビューEP『サン・ブロンズド・グリーク・ゴッズ』リリースの時点で結成わずか数ヶ月だ。がちゃがちゃとしてまだまだ固まらず、いろいろと試している途中、そんなバンドの活動模様を写メで送ってもらったような、とてもくだけた雰囲気がパッケージングされている。昔なら、果たして海の向こうのいちリスナーの耳に入るようなバンドだっただろうか?し かしデモ・テープ然とした自主盤に過ぎない同作は、フェイスブックやツイッターなどから広がり、ブロガーや「ピッチフォーク」などのメディアに拾い上げられ、先日改めて〈アストラルワークス〉より再リリースされるにいたった。音ももちろんだが、こうした在りよう自体がきわめていまらしいバンドである。

 本作は、レコード・ストア・デイに際して限定リリースされたエクスクルーシヴ音源、新曲が収録されている。狂暴すぎて法的に飼育が禁止されているという(冗談だろう)飼い猫の名前を曲名にとった"ボチチャ"は、ドライヴィンなギター・リフとピクシーズを思わせる屈折したセンスが魅力的だったが、この"シングス・チェンジ"はとてもストレートでスウィートなパンク・チューンだ。クラウド・ナッシングスにも比較できるだろう。中心人物のドムは、借金取りに追われているからフル・ネームは明かせないなどとうそぶく、なかなかやっかいな人柄のようで、「アメリカに住むということはとてもセクシーなこと」と歌って彼らのアンセムともなった"リヴィング・イン・アメリカ"等、デビューEPにもそれは十分垣間見られる。しかし"シングス・チェンジ"は、ドムのサウンドへの支持が、基本的にはこのシングルにあふれるシンプルでストレートなメロディに対するものなのだろうな、ということを感じさせる佳曲だ。けれんみがなく、しかし平凡ではない。幼さを残すヴォーカルも切なく胸にせまる。そしてB面〈キャプチャード・トラックス〉の注目株ミンクスによる"ジーザス"リミックスは、これに対照的な陰影を与える仕上がりになっていて素晴らしい。ジョイ・ディヴィジョンやネオ・サイケのロマンチックな叙情性が、コーラスをたっぷりきかせたギターに溶かし込まれている。

 レコード・ストア・デイも定着しつつあるが、はじめての年はレコ屋店員の労働環境改善を訴えるキャンペーンかと思ったものだ。リアル店舗を持つ大手以外のレコ屋を楽しもう、盛り上げようという趣旨で、該当する店にだけ限定商品を流通させるというこの祭がはじまったのが2008年。いまやリリース数はロックだけでも100タイトルを超える。おそらくはCD作品もあるはずだが、圧倒的にヴァイナルが多く、大型店を嫌って中小規模のストアを優先するアナログ志向な姿勢は昨今のインディ・バンドには広く共有されるものである。『サン・ブロンズド・グリーク・ゴッズ』も10インチやカセットでリリースされているから、ドムも例外ではない。本作ももちろんヴァイナル・オンリーだ。ストレートで自然体でアナログ志向。これがいまのインディ・ロックのリアリティなのだろう。

 5月3日、日比谷野外音楽堂で行われるフィッシュマンズのライヴ「A Piece of Future」がUstreamで中継されます。さらに有志によって中継ポイントを全国各地に設置し、それぞれの会場でもライヴ中継を行う「ソーシャルヴューイング」の呼びかけを現在、行っています。詳しくは https://www.fishmansplus.com/を参照。

以下、公式サイトより

1987年の結成時から現在に至るまで、今だ色褪せないバンド「フィッシュマンズ」。 デビュー20周年、そしてボーカル佐藤伸治の13回忌を迎える今年、フィッシュマンズにとって思い出深い場所である「日比谷野外音楽堂」のライブチケットは、3000枚が一瞬で ソールドアウト。さらに去る3月28日に突然行なわれたドミューン(https://dommune.com)でのUstreamライブでは、わずか一晩で 9万人を魅了し、ソーシャルメディア上での大きな話題となりました。 そこで、メンバーによる「このライブを多くの人に解放したい」との想いと、今回の東日本大震災による復興支援への想いにより、無料のネット中継の実現に加えて、さらに全国各地の有志による「ソーシャルヴューイング」の呼びかけを行なうことになりました。

「ソーシャルヴューイング」とは、ネット中継サービスのUstreamやツイッターを中心とした「ソーシャルメディア」を利用して、まるでひとつの場所に集まったような気持ちでライブ体験を共有しようとする、オーディエンス参加型の新しい試みです。具体的には、全国の有志を募り、それぞれの有志がそれぞれの会場の主催者となって、各会場でUstreamによるライブ中継をスクリーンやモニターに上映し、たくさんの人たちで視聴する場を用意することを指します。 今回のUstream中継は、東日本大震災のチャリティー企画として開催します。各会場の主催者はボランティアとして参加していただき、各会場も 入場無料が前提となります。

この企画はFISHMANS+によるもので、フィッシュマンズの多くのミュージックビデオを手がけ、ライヴ&ドキュメンタリー映画"THE LONG SEASON REVUE"の監督でもある川 村ケンスケが当日のライブ中継の映像演出を担当します。リハーサル風景やライブ当日の設営風景やメンバー出演による楽屋風景も中継する予定です。今回のライブ・タイトルは "A Piece Of Future" 。「未来のかけら」と題された先にあるものは何なのでしょう。フィッシュマンズとソーシャルメディアの組み合わせを意外と感じる人もいるかも知れません。

フィッシュマンズが輝きを放ったあの頃から幾時を経て、徐々にあらゆるものが停滞し、そしてこの3月11日、日本中を大きな悲しみが襲いました。

今回の生中継とソーシャルヴューイングは、そんな今の日本の中を通り抜ける、一筋の風でありたいと願っています。 音楽が持つ力をもう一度感じ、ここからフィッシュマンズとあなたの、新しい未来がはじまっていくと信じて。

新しい気持ちになれること。 例えば、5月3日に日比谷に来れなくとも、好きな場所で寝転んで、夕暮れを眺めながら、ネット経由で参加してください。 カフェやレストラン、ライブハウスで、ボリュームをひとつ大きめにして聴いて欲しい。あるいは家で、台所で、その場所の空気と匂いを感じな がら、みんなで感じること。

そういう実験も、FISHMANS+(フィッシュマンズ・プラス)の活動の一部であり、この日に参加する人たちすべてが 、新しいFISHMANS+のメンバーなのです。メンバーだと思う人は、ツイーターで#FMS0503 のハッシュタグをつけて、このプロジェクトへの参加を宣言してください。

https://www.fishmansplus.com/

Metronomy - ele-king

 メトロノミーの音楽を聴いていて思うのは、いったいどんな連中がこれを聴いているんだろう......ということだ。アークティック・モンキーズのリスナーは大体想像できるし、ハード・ファイはすぐにわかる。フォールズのファンもある程度、ジ・XXやジェームズ・ブレイク、それにダブステップでガンガン踊っている男女も......イギリスでは音楽が若者のカルチャーとしていまでもどうにか機能している部分はあるので、リスナーがトライブを形成している例は多い。しかしメトロノミーはそういった分類のどれにもどうにも収まりが悪く、実験的ではあるけれども難解ではなくつねにポップで、脱力していてフェミニンで、メランコリックだが妙にユーモラスなその音は、オタクもラッズもファッション・ピープルも頭で結びつかない。
 その音楽は様々なもののあいだのどこかを漂っていて、それはエレクトロニカでありエレクトロでありシンセ・ポップであり、しかしそのどれかひとつに収まることをするすると避けてきた。彼らを有名にした『ナイツ・アウト』はくにゃくにゃと脱臼したその音に乗せて、情けなさと切なさと可笑しさの入り混じった説明のできない感情を醸し出していたのだが、それは僕も含め少なからぬ人間にとって皮膚感覚で覚えのあるものでもあった。正確な音階を外れたメロディにノイズが混じったシンセの和音が重なり、ヘナヘナとした歌声で上手くいかない夜遊びについて歌う。ダンスフロアで踊っていれば楽しくないわけではないけれど、かと言ってそこに溶け込めている気もしない......というような、そんな気分にピッタリとハマる音をメトロノミーは絶妙に表現していたのだ。どのトライブにも属しきらない、どのムーヴメントにも完全にはハマりきらないような人間にこそ、彼らの音は響いた。

 そういう意味でメトロノミーの音はニュー・レイヴに対するカウンターであり批判だというように説明されたが、しかしニュー・レイヴがきれいに消え去ったいま、彼らの3枚目のアルバムである『イングリッシュ・リヴィエラ』はますますカテゴライズがしにくいものとして存在している。というか、そういう分類にそもそも彼らの音楽は向いていないように思う。コミカルだった前作に比べれば随分エレガントに聞こえるし、指摘されているように西海岸のようなレイドバック感もあるが、気の抜けたノイズ混じりのシンセ・サウンドは相変わらずだ。ゆるーくチルウェイヴからの反響もあると言えるかもしれないが、もちろんそれはあくまで一部だ。それらが主張し合わずに、微妙なさじ加減で共存している不思議なダンス・トラック集、エレクトロニック・ポップスである。わかりやすい派手さもない。電子音が驚くほど小さな音で奥の方を移動し、ジョセフ・マウントが線の細い声で頼りなく歌っている。その歌とコーラスはメロディアスだが、とことん力が抜けている。
 全編を通して言えるのは、反復が生み出す穏やかなグルーヴと、心地良いメランコリアとアンニュイさだ。ロクサーヌ・クリフォードがムーディな歌で参加している"エヴリシング・ゴーズ・マイ・ウェイ"は「再び恋に夢中よ」と言うわりには物憂げで、アップビートな"ザ・ルック"もマイナー・コードが中心であるためか気分が晴れ渡らないままダンスするような1曲だ。
 アルバムのハイライトは恐らく、繊細で遠慮がちなアンサンブルがそれでも反復とともに上りつめていく"サム・リトゥン"から、ミニマルな音の出入りと展開で聞かせる"ラヴ・アンダーラインド"へと続くラスト2曲のダンスだろう。けれども僕のお気に入りは、アルバムでも突出してポップな"ザ・ベイ"である。そこでは、「ここはパリではなく/ロンドンでもなく/ベルリンでも/香港でも/東京でもないんだ」と、メトロノミーが鳴らしている音楽の居場所のなさが端的に表現されているように僕には思えるからだ。そして「この入り江はとても快適な場所」だと、架空の場所を拠りどころにし、その言葉はアルバムのアートワークへと繋がっていく。
 ジョセフ・マウントが作るおかしなシンセ・サウンドの物悲しさはきっと、どこにも落ち着ける居場所がない人間がつねに底に湛えているものを掬い取ったものだろう。けれどもそれは同時に、前作では力なくも笑えるものだったし、今回は心地良くレイドバックできるものである。何なら、緩やかにダンスだってできる。そして僕は、物悲しさや憂鬱とつねに共存していこうとするそのような態度は、直感的にとても現代的なものなのではないかと思う。メトロノミーは、簡単に気の晴れることのない毎日を送る僕たちのための――そしてとりわけ、それを忘れるくらい何かに熱狂することができない連中のための――、ささやかなユーモアと知恵である。

[Electronic, House, Dubstep] #6 - ele-king

1.Lone - Echolocations EP | R & S Records


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E王  ノッティンガムのボーズ・オブ・カナダ・フォロワー、ローンのこのところの人気にはすごいものがある。アクトレスのレーベル〈ワーク・ディスク〉からリリースされたセカンド・アルバム『エクスタシー&フレンズ』がロング・セラーとなって、そしてダンサブルな方向性を打ち出した昨年末の『エメラルド・ファンタジー・トラックス』によって完璧にファンの心を掴んだと言えるだろう。〈R&S〉からのリリースとなった2枚組のこのシングル「エコロケーションズEP」も『エメラルド・ファンタジー~』の流れで、ドリーミーでメロディアスなディープ・ハウスを展開している。テクノっ子たちが大好きな、昔ながらの909系のスネアの音がキープされているが、ビートにはガラージ~ダブステップ時代のシャッフルがあり、美しいメロディを有する上ものにはここ数年の傾向と言えるだろう、大いなる逃避主義とユーフォリアのみが輝いている。つまりチルウェイヴとも親和性が高く、ぼやけた夏の夢が揺れている。

2.Sbtrkt - Living Like I Do | Young Turks


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 ダブステップにおけるネオ・ソウルの代表を期待されているサブトラクトの新曲だが、曲のテイストは最近のポスト・ダブステップに逆らうかのようなバック・トゥ・ベーシックな展開。UKガラージ流れの2ステップ・ビートにのって、ヴォーカリストのサンパが例によってソウルフルに歌う。曲のはじまりのベースの響きは貫禄充分といったところで、驚きはないが悪くもないといったところ。B面はヒット曲"ルック・アット・スターズ"のマシンドラム(最近は〈ホットフラッシュ〉から素晴らしい12インチも出している)によるリミックスで、チップチューンめいた音色を加えながら安定したブロークンビートを展開している。

3.Factory Floor - Real Love | Optimo Music


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 エレクトロと呼ばれるジャンルにおいて、もっとも危険で、もっとも大胆で、もっともぶっ飛んでいて、ずば抜けて格好いいのがロンドンのファクトリー・フロア。彼らの音楽にはクリス&コージーとアンドリュー・ウェザオールが同居しているようなエロティックでドラッギーな凄みがある。昨年リリースした10インチ+DVDにおいては彼らの毒々しい美学を存分に繰り広げていたが、ミニマリズム映像とノイズによるDVDは、途中で停止ボタンを押すことができないほどの緊張があった。
 これはオプティモが運営するレーベルからのリリースで、高速にドライヴするアルペジエーターが容赦なく性的興奮を誘発する。B面に収録されたオプティモのJDトゥイッチによるリミックスは、オリジナルを過剰なまでにトランシーなトラックに変換している。

4.Toddla T feat. Roisin Murphy - Cherry Picking | Ninja Tune


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 そうか、同じシェフィールド繋がりだからか、ロイジン・マーフィ(10年前はモロコの名義でダウンテンポのクラブ・ジャズ系を出していた女性シンガー)をフィーチャーした、セカンド・アルバムのリリースを控えたトドラ・Tの先行シングルで、グライミーなダンスホール・スタイルにマーフィのキャッチーな歌が入った完璧なポップ・チューン。UKらしいポップ・ソングとも言える。
 トドラ・Tの新作には、その他、ガラージ・シーンの顔役たち、ドネイオー、ショーラ・アマ、ミズ・ダイナマイト、そして大御所ルーツ・マヌーヴァなどが参加しているらしい。ジェイミー・ウーンはいまだに買うかどうか迷っているけど、トドラ・Tに関しては迷わないよ。

5.Ari Up & Vic Ruggiero - Baby Fada | Ska in the World


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 昨年10月、ガンのために逝去したアリ・アップの未発表音源で、ニューヨークのスカ/ロックステディ・バンド、ザ・スラッカーズのメンバー、ビクター・ルジェイロとのコラボ作。これがまた......未発表とは思えないほどの出来で、何の目新しさもないレゲエ・トラックが、彼女の迫力あるヴォーカリゼーションが入っただけで別物すなわち魅力たっぷりのパンキー・レゲエ・スタイルになっている。
 このアルバムを聴くのが楽しみだし、生前にたくさんの録音物を残していたという話で、他にもニュー・エイジ・ステッパーズの新作も出るという。

6.Kitty, Daisy & Lewis - I'm So Sorry/I'm Going Back | Sunday Best Recordings


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 悪名高いレトロ主義者3兄弟のおよそ3年ぶりの新曲は、彼らの50年代のスタイルにさらに磨きをかけている......なんて生やさしいものではなく、驚くほどパーフェクトにそれを具現化している。録音機材もほぼすべてヴィンテージに進められたセカンド・アルバムからの先行シングルで、スカに挑戦した"アイム・ソー・ソリー"にはトロンボーンにリコ・ロドリゲス、トランペットにエディ・ソーントンといったジャマイカの大御所を招いている。それはいちど聴いたら耳から離れない、スタイリッシュかつキャッチーな曲だ。B面は彼らの十八番のレトロなロックンロールで、エネルギッシュで、格好いい。それはただ格好いいだけであり、ただスタイリッシュなだけだが、しかしそれのどこが悪いのだろう。ザッツ・エンターテイメント、本当に素晴らしいシングル。

7.The Beauty / Jesse Ruins | Cuz Me Pain

 〈カズ・ミ・ペイン〉は日本のインディ・レーベルで、昨年コンピレーション・アルバム『Complilation #01』を発表している。なんでも"日本のチルウェイヴを代表するひとつ"ということで、そのスジではずいぶんと注目されているという。日本のチルウェイヴ的な動きもいよいよ顕在化してきているようで、今年に入って橋元優歩が紹介していたフォトディスコも素晴らしかったし、遅まきながら僕も〈カズ・ミ・ペイン〉のコンピレーションも聴いたのだけれど、こちらも魅力的な内容だった。〈カズ・ミ・ペイン〉一派の音には、耽美的でエロティックな感性もあり、音楽的にもサイケデリック・ポップからダーク・アンビエント、エクスペリメンタル等々......それをチルウェイヴと呼ぶには抵抗を感じるほど多様な音楽性のように思ったけれど、このレーベルが日本においてUSアンダーグラウンドに強く共振していることはたしかだろう。
 ここに紹介するのは〈カズ・ミ・ペイン〉から出たカセットテープで、ザ・ビューティとジェシー・ルインのふたつがそれぞれの面に3曲づつ収録している。ディストピックなチルウェイヴ、ダーク・エレクトロ、デイドリーミングなポップ......さまざまな側面を見せていて、今後どの方向に進むのかわからないけれど、彼らのポテンシャルの高さは感じる(カセットで出しているところも良いね)。まあ、そんなわけで、日本におけるサイケデリック新世代はすぐにそこにいるようです!

Falty DL - ele-king

 ジェームス・ブレイクの異例のヒットが意味するところは、オリジナルのダブステップそのものではなくその周辺の音、ジャンルの境界線上にいる者たち、気まぐれなスキゾフレニアの面白さがけっこうな勢いで高まりを見せているということでもある。先日紹介した2562はそのひとりだが、フェルティ・DLを名乗るブルックリンのステッパー、ドリュー・ラストマンもそうした遊牧民を代表するプロデューサーだ。彼が2009年に発表したデビュー・アルバム『ラヴ・イズ・ア・レイビリティ(愛は義務)』は"UKガラージとダブステップとIDMの接合点"と形容された作品で、僕には初期のエイフェックス・ツインやブラック・ドッグといったUKのデトロイト・テクノ・フォロワーたちの作風をダブステップの流儀で再現したアルバムに感じられた。ダブステップらしからぬスタイリッシュなアートワークも目を惹いたし、煙でむせかえるような不健康な地下室で鳴っているダークなそれとは明らかに別の魅力を持っていた。

 『ユー・スタンド・アンサーティン』は、ひらたく言えば『ラヴ・イズ・ア・レイビリティ』のポップな展開だ。女性ヴォーカリストをフィーチャーした曲が3曲収録されているのだけれど、その3曲がよくできている。
 1曲目の"ゴスペル・オブ・オパル"はドリーミーでラウンジーな2ステップ・ガラージで、いかめしいベースのかわりにキラキラしたエレクトロニクスが舞っている。アネカなる女性ヴォーカリストの囁くような歌声も、夢の入口として申し分ない。が、しかし、もしもリスナーがネオ・ソウルを求めているならリリー・マッケンジーが歌っている2曲を繰り返す聴くことになる。"ブラジル"はR&Bヴォーカルを取り入れた2ステップにおけるもっともラヴリーな瞬間を持った曲だが、何よりも我々はいま、ダブステップ時代の新しいディーヴァと出会っているのかしれない......という思いを抱くだろう。リリーが歌うもう1曲、クローザー・トラックの"ウェイティッド・ペンシェントリー"は間違いなくアルバムで最高の曲だ。うねるようなアシッド・ベースラインとジャズ・ピアノの見事な絡みのなかで、アーバン・ブルースが流れている。クラブ・ジャズのDJがこの1曲だけを聴いたら、迷うことなくアルバムを買ってしまうだろう。
 とにかくその3曲がずば抜けて良いので、全12曲のうちその他の9曲には若干の見劣りを感じてしまうかもしれないけれど、"エイト・エイティーン・テン"のコズミックなフィーリング、"イッツ・オール・グッド"のラウンジーなダブ、"ラッキー・ルチアーノ"のレイヴィーなグルーヴ、あるいは狂ったSF映画のサントラのような"ヴォエジャー"、女性のスキャットめいた囁き声とハウスのベースラインの"プレイ・ウィズ・マイ・ハート"......等々、総じて『ユー・スタンド・アンサーティン』はサーヴィス精神旺盛なアルバムと言える。ただし......、これはレコード店やレコード会社が頭を痛める作品でもある。ジェームス・ブレイクがそうだったように、これは明らかにクロイドンのダブステップとは別物で、ジャンル分けに迷う音楽だからだ。が、ここには、アルバムのタイトルが言うように、不確かなもの(アンサーティン)の面白さが詰まっている。

Chart by TRASMUNDO 2011.0427 - ele-king

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BUSHBURST 『wit DA Illness』 SEMINISHUKEI »COMMENT GET MUSIC

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仙人掌 『LIVE ON REFUGEE THE MIX TAPE』 DOGEAR »COMMENT GET MUSIC

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H.FUTAMI 『MIX CD』 »COMMENT GET MUSIC

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PRELUDE SQUAD 『BIG TIME EXPERIENCE vol.1』 804 production »COMMENT GET MUSIC

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CMT 『ZONAZONA』 SBM recordings »COMMENT GET MUSIC

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DJ DISCHARGE 『QUIET SLEEP』 »COMMENT GET MUSIC

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WATTER 『demos vol.2』 »COMMENT GET MUSIC

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blahmuzik 『SURVIVING THE MOMENTS』 »COMMENT GET MUSIC

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山上たつひこ 『光る風』 小学館 / »COMMENT GET MUSIC

Matthewdavid - ele-king

 この快楽。濃厚な音の快楽。昨年末のシゲト『フル・サークル』は予兆に過ぎなかったのか、短い曲の連なりで構成された『アウトマインド』は久々に100%スモーカーズ・デライトを狙った作品であり、追求されるイメージはたったの一種類。その反復強化。どこを取ってもキラビやかな光のなかを歩むバレアリック・ブレイクビーツの波は西海岸で起きているドローンやチルウェイヴの変化とも足並みを揃え、DJシャドウによる翳りあるメランコリーをアーカイヴの一部へと封じ込めかねない。いま、ここには光が溢れている。四方八方から光が降ってくる。
 今年、もっとも注目されているカセット・レーベル、〈リーヴィング〉の主催者がその主役で(やはり〈リーヴィング〉からのリリースとなったサン・アローとのジョイント・ライヴに続き)初のスタジオ・ソロ作はフライング・ロータスのレーベルから。「ホコリと光のすごいごちそう」に溢れかえるオープニング"ロス・アンジェルス・イズ・ビューティフル"から有無を言わせず引きずり込まれ、陽気なフライング・ロータスと陽気なベーシック・チャンネルが交互に、あるいは、混合しあって光のなかを引きずり回される。中盤に入ってフライング・ロータスをフィーチャーした"グループ・ティー"で初めてメランコリックな迂回をしばし経験させられるものの、無限大に与えられるユーフォリアのイメージは最後まで揺るぐことがなく、ひと時も快楽的な音楽であることをやめることはない(サン・エレクトリックからドリームフィッシュに変わった程度というか)。
 これはもう、気持ちEとしか書きたくない。ニキ・ランダをフィーチャーした"フロアー・ミュージック"はタイトルを裏切るようにノン・ビートのアンビエント・ドローンで、マシューデイヴィッドがここ数年のアンダーグラウンド・カレントを総合しながらひとつのイメージにまとめていったことが簡単に推し量れる。すべてはここに向かっていたでしょうといわんばかり。最後にメドレー形式で配置された"ノー・ニード・トゥ・ウォリー/ミーン・トゥ・マッチ"で昇天できなければ、もう一度、再生ボタンを押してしまうだけである(つまり廃人コース)、

 RZAとエイフェックス・ツインに影響を受けたという18歳のインフィニティロックが昼間は学生、夜はグリッチ・ホップのプロデューサーと化してつくり上げたファースト・アルバムも同じ傾向に足を踏み入れようとしているアルバムで、手習いの感はまだ拭えないものも、完成度ということでは申し分ない。なるほど『アンビエント・ワークス』をブレイクビーツで下支えしたような"テンチ・サイティングス(天地目撃?)"や"キルン"、タイトルとは裏腹に天国的なイメージを掻き立てる"ガンス・オブ・キングストン"など、あっという間にどこかに連れ去ってくれる曲は多い。ヒンズー語が理解できないインド系2世か3世にあたるそうだけど、ジュンパ・ラヒリのような屈折もなく、文字通り年齢にあった感性の産物といえる。
 『ミュージック・フォー・プライモーディアル・リコレクション』は、1年ほど前に紹介したスフィアン・スティーヴンスのレーベルからライブラリーの体裁でリリースされたローウェル・ブラームスと同じシリーズの14作目にあたるもので、同時にリリースされたレブ・レイズのセカンド・アルバム『ミュージック・フォー・トラブルド・マシーナリー』も同じくアンダーグラウンド・ヒップホップの変り種。上記2作に比してダイナミックで何をやろうとしているのかすぐにはわからない迷宮性が持ち味といえる(PS 1年前にローウェル・ブラームスってまさかスフィアン・スティーヴンスの変名じゃないだろうなと内心では思いつつ書いていたりしたのだけれど、実は母親の再婚相手で、初めての出会いはスティーヴンスが1歳未満のときだったとか。アスマティック・キティ=喘息猫はふたりが共同で運営するレーベルであり、スティーヴンスの勧めで初めて録音したのが『ミュージック・フォー・インソムニア』だったそうです。ちなみにドミューンやヴィンセントラジオでオン・エアしたなかでは、いまのところもっともリアクションが高く、買いましたよといわれたレコードである)。

 すべてのタイトルに『ミュージック・フォー~』という決まり文句が付けられたライブラリー・カタログ・ミュージック・シリーズはほかにも魅力的なリリースが多い。全作を聴いたわけではないけれど(そんなことするのは岡村詩野だけ!)、最近のものでは12番のB・ラン3『ミュージック・フォー・ハンティング・アンド・マッピング』、少し前のものだとインストゥルメンツ・オブ・サイエンス&テクノロジーが出色の出来で、とくに後者はリチャード・スイフツの名義でふだんは普通にロック・ミュージックを演奏している人なのに、この名義に変わると底が抜けてしまうのか、予想も付かない実験主義に走り出す異才。セカンド・アルバムにあたる『ミュージック・フォー・パラダイス・アーマー』は、前作ではまだ少しは残っていた楽曲性もあらかた砕け散って、部分的には坂本龍一『B2ユニット』を思わせるキッカイな内容に。

Arrington de Dionyso's Malaikat dan Singa - ele-king

 ケチなことを言うようで恐縮だけれど、再結成したザ・ポップ・グループがサマー・ソニックで来日すると知って、僕のようにリアルタイムで熱心に聴いていた夢見がちな世代――1978年に2800円払ってUK盤を買った人なんて決して多くはないだろうけれど――はけっこ失望しているんじゃないだろうか。よりによってなぜあのザ・ポップ・グループが......と思っていることでしょう。しかしまあ冷静に考えてみれば、再結成とは屍体を墓場から掘り起こすようなものであって(だからアリ・アップはザ・スリッツは再結成ではないと強調したのであって)、マーク・スチュワートの初来日時のあの素晴らしかったよれよれのステージとは比較にもならないだろうし、そう考えればぜんぜんアリなのだ。が、それにしてもなぁ......("ウィ・アー・オール・プロスティチューズ"を演奏したら爆笑するしかないが、きっと笑えないだろうし)。
 セックス・ピストルズやザ・クラッシュからファッション性をさっ引いて、さらに過剰に政治と哲学とアヴァンギャルドを詰め込んだのがザ・ポップ・グループだった。その音楽を戦地の"野火"のようだと形容していた人がいたけれど、『Y』とはそうした喩えが泉のように湧いて出てくるほどの作品だった。ザ・スリッツもそうだったが、ポスト・パンクの時代は、西欧主義を挑発するかのような、ある種の野蛮さが賞揚された。ことにザ・ポップ・グループのような、サイモン・レイノルズ言うところの"ディオニソス的プロテスト・ミュージック"すなわち"激情派の反抗"の背後には、キャプテン・ビーフハートからの影響がうかがえる。日本で言えばじゃがたらも同類で(そして一時期のボアダムスにもそういうところがあった)、ビーフハート系のディオニソスはワールド・ミュージック的ななものへとアクセスする。まあ、それもいまとなっては秩序的なものへの毒づき方のひとつのクリシェと言えなくもないけれど、それを多数の耳を惹きつけるほどの高みに持っていけるバンドはそう多くはない。90年代末は狂ったガレージ・パンク・バンド、オールド・タイム・レリジュンで活動していたアーリントン・デ・ディオニソによるプロジェクト、マレイカット・デン・シンガ(Malaikat dan Singa)のアルバム『スアラ・ナガ(Suara Naga)』はまさしくビーフハート~ザ・ポップ・グループの熱狂と陶酔の系譜に位置づけられる作品である。

 インドネシアのデス・メタル・バンドがフリー・ジャズを演奏したらどうなるか想像して欲しい。それがこのアルバムである。アーリントン・デ・ディオニソはインドネシア語で、むせかえるような声で雄叫びをあげる。なぜインドネシア語なのかはわからないけれど、とにかくこのアルバムを家で聴いていると、さすがに家人たちも「何これ?」と言ってくる。それだけこの音楽には耳障りな異様さがあるのだ。ところどころファンクもあり、リズミックなうねりが熱狂を待ちわびていることは明かである。ギャング・ギャング・ダンスやチューン・ヤーズと同様に、ある種の空想的ワールド・ミュージックとも言えるが、アーリントン・デ・ディオニソはポップとは真逆の方向に突進している。その過剰さにおいて、『Y』に連なるディオニソスであることは間違いないのである。

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