「CE」と一致するもの

Gina Birch - ele-king

 もっとも重要なポスト・パンク・バンドのひとつ、ザ・レインコーツのメンバー、ジーナ・バーチがジャック・ホワイト主宰のレーベル〈Third Man Records〉から初のソロ作品(7インチ・シングル)を発表した。そのタイトルは「フェミニスト・ソング」で、曲の出だしはこんな感じ。「私はフェミニストかって訊かれたらこう言う、無力なんてまっぴらだ。孤独なんかくそ食らえ」、この怒りに満ちたアンセミックで強力な曲は、そのコーラスで「都会の女の子、私は戦士だ!」と繰り返している。同曲はすでにザ・レイコーツのライヴでも披露されていたが、この度初めての録音となった。なおミックスはキリング・ジョークのユースが担当しており、彼は同曲のアンビエント・ミックスでもその手腕を発揮している。現在は配信でも聴けるが、7インチ盤は10月末にはお店に出回っている予定。


Koji Nakamura+duenn+Takuro Okada - ele-king

 ナカコーと duenn が主催するプロジェクト《Hardcore Ambience CH.》の最新映像作品に、ゲストとして岡田拓郎が登場している。先日の GONNO × MASUMURA のライヴでもギターで参加し華を添えていた岡田だが、ナカコーと duenn のサウンドにマルチプレイヤーの彼が加わることで、いったいどんな化学反応が生まれるのか? ぜひ動画を観て確認してみてください。

ナカコーとduenn主催のアンビエントに特化したプロジェクト『Hardcore Ambience CH.』
今回はKoji Nakamura+ duenn + 岡田拓郎によるライブパフォーマンスを公開。

『Hardcore Ambience』は、“ナカコー”(Koji Nakamura, Nyantora, LAMA, exスーパーカー)と、福岡を拠点とするコンポーザー “duenn” によるライブや映像作品を展開するプロジェクト。
第5回となる今回は、ライブゲストに孤高の天才音楽家“岡田拓郎”を迎え、ナカコー・duennと共演する。岡田拓郎はバンド「森は生きている」で活動したのち、現在ソロ活動の他にもギタリスト, プロデューサー, ミキシング・エンジニアとしても活躍している。今回のライブでは岡田のマルチプレイヤーならではの特質的な演奏に、ナカコーのギターと、duennのシンセが加わり、どこか温かみと優しさが感じられる音楽映像作品に仕上がっている。

Hardcore Ambience CH.

■HARDCORE AMBIENCE #5-2【LIVE】-Koji Nakamura + duenn + Okada Takuro

■URL https://youtu.be/Bn13y3fHo_U

dip in the pool - ele-king

 近年ヴィジブル・クロークスとのコラボなどを機に再評価の高まっているdip in the pool。木村達司と甲田益也子から成るこのデュオが、なんと、ラリー・ハードをカヴァー。曲はミスター・フィンガーズ名義で89年にリリースされた“What About This Love”。10月20日に発売されるアルバム『8 red noW』に収録されます。
 また10月8日・11月13日・12月5日には東京・京都・札幌での公演も決定している。あわせてチェックしておこう。

Sarah Davachi - ele-king

 カナダのカルガリー出身の音楽家/作曲家サラ・ダヴァチーの新作がリリースされた。サラ・ダヴァチーは、近年重要な新世代のドローン・アーティスト/音楽家である。今作『Antiphonals』は、サラの2021年新作である。本作もまたバロック音楽とミニマル・ミュージックとドローン音楽の領域を融解させるようなアルバムに仕上がっている。

 サラ・ダヴァチーの音楽は、アルバムをリリースするごとに音楽的・音響的な境地が深まっていった。特に2018年に〈Students Of Decay〉から発表された『All My Circles Run』、同年の〈Ba Da Bing!〉から出た『Gave In Rest』以降から、サラ・ダヴァチーのサウンドのテクスチャーから「硬さ」がとれはじめ音が柔らかくなり、ドローン作家として個性が自律してきたように思う。
 加えて作曲家としての深度・練度も深まってきた。まるでバロック音楽を思わせるような優美な音楽性を纏いはじめているのである。バロック音楽的な古典的な技法を駆使した音楽性や響きに、現代的なドローンを対置する手法がより際立ってきたのだ。
 じっさい2018年の『For Harpsichord / For Pipe Organ And String Trio』や、2020年の『Cantus, Descant』などの楽曲には、クラシック音楽の伝統を継承しつつも、サウンドとして刷新するような面が多くみられた。
 それもそのはずでサラ・ダヴァチーは哲学を学んだのち、カリフォルニア州「Mills College」で電子音楽やレコーディング・メディアの修士号を修了し、現在は「カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)」にて、ポピュラー、実験音楽、古楽などにおける楽器と音色の美学的影響についての研究を行なっているというのだ。いわば研究者である。
 もしかすると初期のドローン・サウンドの「硬さ」は、バロック音楽のチェンバロや弦楽器の音を引き伸ばしたようなものとも言えるかもしれない。そこから彼女は、より親密な音響空間をめざして、サウンドの研磨していったのだろう。毎年複数枚リリースされるアルバムも、その研究成果の途中報告という意味合いもあるのかもしれない。むろん、創作への意欲の結晶といえるだろう。

 ともあれサラ・ダヴァチーは多作なのである。2013年に最初のアルバム『The Untuning Of The Sky』以降、毎年欠かすことなくアルバムを発表しているし、2015年以降は、年に二作の以上もリリースしている。
 2018年には『For Harpsichord / For Pipe Organ And String Trio』、『Gave In Rest』、『Let Night Come On Bells End The Day』など代表作ともいえるアルバムも3作も送り出し、2019年は、Ariel Kalmaとの共作『Intemporel』、『Pale Bloom』などの傑作を、2020年には『Figures In Open Air』、『Gathers』、『Cantus, Descant』など充実した3作のアルバムをリリースしたのである。最初に書いたように、ここ数年、その作品の成熟度、充実度・達成度には目をみはるものがある。
 2020年は、サラ・ダヴァチーは自ら主宰するレーベル〈Late Music〉を設立した。過去作に加えて、『Figures In Open Air』や『Cantus, Descant』などのアルバムをリリースした。新作『Antiphonals』もまた〈Late Music〉からのリリースだ。

 『Antiphonals』ではこれまで追及・実践・実験されてきた「バロック音楽(古楽)とドローン/ミニマル音楽などの現代音楽の交錯」がいよいよ完成の域に達してきたような印象を持った。これまでの作風を継承しつつ、その音楽世界を深めているのである。2枚組『Cantus, Descant』の中で自らの音楽技法を試行錯誤した結果、より浄化された音楽が生れてきたとでもいうべきか。
 じじつ、『Antiphonals』冒頭、“Chorus Scene” ではヨハン・セバスチャン・バッハのような、もしくはバロック音楽のごとき楽曲を展開している。しかも微妙な半音の使い方には、楽曲の調性を浮遊させるような効果があり、現代音楽的ともいえる響きの残滓を、バロック的な楽曲に忍び込ませているのだ。実に秀逸な曲だと思う。ギターのための曲というのも興味深い。
 同時にまるでコリン・ブランストーンなどの70年代のシンガーソングライター・アルバムのようなムードも醸し出している(歌のないシンガーソングライティング・アルバムのように?)。続く2曲目 “Magdalena” では、透明なカーテンのゆらぎのようにアンビエンスな音が往復し、次第に、より大きなアンビエント・ドローンに変化していく。これも見事な曲である。

 この冒頭の2曲は本アルバムの個性をよく表している。簡素な楽器による古楽的な楽曲と霞んだ質感のドローン風の楽曲の往復だ。まるで西洋音楽史の300年を往復するようにアルバムは構成されていくのである。余談だが古楽とドローンの交錯という意味では、アンビエント・ドローンの名匠とも言えるドイツのシュテファン・マシューの楽曲に通じるように感じられた。
 加えて楽曲の向こうでかすかに聴こえる(鳴っている)小さな音のノイズも良い。まるでカセットを再生したときのような小さなヒスノイズがどの曲にも流れているのだ。本作特有の霞んだ音色の音響空間が、このノイズによって巧みに演出されていることはいうまでもない。録音には名機 RE-501 Chorus Echo と TEAC A-234 が用いられ、ミックスをサラ・ダヴァチー本人が手がけている。マスタリングは〈Recital〉主宰するカリフォルニアのアンビエント作家のシーン・マッキャンが行なっていることも忘れてはならないトピックだろう。

 このアルバムは単に実験的であったり、高尚で堅苦しい音楽ではまったくない。「プログレッシヴ・ロックのキーボード・パートのみで構成されているアルバム」とアナウンスされているように、本作にはバロック的・クラシック的な楽曲のみならず、ドローンやエクスペリメンタルな楽曲にもある種の親しみやすさ、聴きやすさがあるのだ。クラシカルな音楽がよりシンプルな音像のドローンへと変化したような楽曲とでもいうべきか。このような傾向は新世代のドローン音楽家全般に見られる。例えばスウェーデンのストックホルムを拠点とするカリ・マローンのオルガン・ドローンを思い出して欲しい。
 新しい世代の音楽家にとってはなにより「音楽」であることが重要なのであり、実験も古典も分け隔てなく存在するのかもしれない。このフラットな感性にこそ新しい時代/世代の知性を感じる。
 いずれにせよ、ドローンとしての透明な魅力と、モダン・クラシカルとしての曲の練度など、この『Antiphonals』は、2010年後半以降のエクスペリメンタル・ミュージックとモダン・クラシカルの交錯の結果として生まれた素晴らしい作品である。2019年にリリースされたカリ・マローンの『The Sacrificial Code』と並べつつ、何度も繰り返し聴きたい名品だ。

Lee “Scratch” Perry - ele-king

 去る8月29日に逝去したリー・ペリー。追悼の意を込め、10月8日(金)から10月10日(日)にかけ、展示が開催されることになった。場所はリキッドルームの2F「KATA」。8日と9日にはDJイヴェントも予定されているとのこと。さまざまな写真や映像を見つつ、ダブの偉大なる開拓者に思いを馳せたい。

LEE “SCRATCH” PERRY 特別追悼展
10.08 〜 10.10 @ KATA
開催のお知らせ

8月29日にこの世を去ったレゲエ/ダブの偉大なる開拓者リー・スクラッチ・ペリーへの追悼の意を込めて、10月8日(金)から10月10日(日)までの3日間、恵比寿LIQUIDROOM 2FのギャラリースペースKATAにて特別追悼展を開催いたします。会場では、2006年にLIQUIDROOMにて行われた盟友エイドリアン・シャーウッド主催の来日公演にて、リー・スクラッチ・ペリー本人が描いた横幅6メートルを超える巨大壁画や、古くから親交のある菊地昇、石田昌隆、キシ・ヤマモトらによって撮影された貴重な写真の展示、ザ・シー・アンド・ケイクのメンバーで、画家/コミック作家としても知られるアーチャー・プルウィットがデザインしたソフト・ビニール人形の販売や原画の展示、ライブ映像の上映が行われます。また併設のTimeOut Cafe & Dinerでは、10月8日(金)と10月9日(土)にDJイベントも予定されています。

LEE “SCRATCH” PERRY 特別追悼展
日程: 2021.10.8 (金) 〜 2021.10.10 (日)
OPEN: 13:00 / CLOSE: 20:00
※最終日のみ18時 CLOSE
会場: KATA [LIQUIDROOM 2F]
入場料: 無料

展示内容: 巨大壁画展示/写真展示/ソフト・ビニール人形+原画展示
その他: 物販コーナー

企画: BEATINK
協力: On-U Sound/SPACE SHOWER TV/Presspop inc.

感染症拡大予防の観点から、ご来場の際にはマスクのご着用や手指の消毒など協力いただきますようお願い致します。
ご多忙中のお誘いでは御座いますが、ご来場を心よりお待ちしております。

【会場からのお願い】
●会場内、マスクの着用を必ずお願いしております。
●ご入場前の検温と手指消毒にご協力ください。
●37.3度以上の発熱、体調の優れない方の入場はお断りさせて頂きます。
●マスク着用にて御入店頂きます。(※マスクをお持ちでない方のご入場はお断りしております)
●マスクを外す行為、大きな声を出すなどの行為は新型コロナウイルス拡散防止の為、禁止させて頂いております。
●酒類の持ち込みは禁止させて頂いております。泥酔されているご来場者様のご入場は会場の判断でお断りする場合がございます
●駐車場や駐輪スペースのご用意はございません。
●喫煙所のご用意はございません。ご了承ください。隣のTime Out Cafe & Dinerに於いて、電子タバコの使用は可能です(必ずご注文をお願い致します)

Popp - ele-king

 ミュンヘンからツイン・ドラムのジャズ・ユニット、ファジー(Fazer)のサイモン・ポップによるセカンド・ソロ。ハッセル&イーノ『Possible Music』を思わせる2年前の『Laya』と同じく打楽器だけで構成されたインプロヴァイゼイション・アルバム。複数の打楽器や細かいパーカッション・ワークを駆使し、全体にインド音楽のテイストを残しながらもアフリカ色が強くなったことで同じようにスタティックな作風でも静謐さの種類に変化がもたらされている。ファジーが元々、ラウンジ・ミュージックに近い音楽性だったこともあり、テンションをみなぎらせるようなインプロヴァイゼイションではなく、かといってニューエイジのようなユルユルでもなく、ビアトリス・ディロンへのクラブ・ジャズからのアンサーというのか、スティーヴ・ライヒから可能な限り緊張感を取り除いたアンビエント・ドラミングというのか。あくまでも演奏を基本にしていることでフィールド・レコーディングとプロセッシングでつくり出すアンビエント・ミュージックにはないオーガニックなムードが全体のトーンを決めている(90年代の雰囲気を出すためにゲート・リヴァーブとピッチ・シフトは多用したらしい)。サイモン・ポップはファジー以外の活動としてアブシュタン(Abstand)やファジーのドラマー2人によるファジー・ドラムス名義のアルバム『Sound Measures』などでミニマルにフォーカスした試行も並行して続けており、そのためか、サイモン・ポップのソロ作を取り上げた欧米のレヴューでは「サード・ストリーム・ミニマリズム」という定義がやたらとコピペされて使われているものの、僕が調べた限りどこにも定義の内容は書かれていない(ので、よくわからない)。お笑いの第7世代みたいなものなのだろうか?



 前作の『Laya』は鐘の使い方やランダムなビートの刻み方など明らかにメディテイションを目的としていて、フィジカルではなく音の効果は意識に集中していた。『Devi』ではそれがガーナのリズムなど東アフリカのリズムを取り入れた結果、一転してフィジカルに訴えかける要素が増え、全体的に内省的な気分を誘発するものではなくなっている。“Gundel”や“Jilu”などインドとアフリカが融合し、なんとも気持ちのいいハイブリッドに仕上がっていて、透き通るような残響音が美しい“Myna”や、いまにもデヴィッド・アレンがごにょごにょとマントラじみたヴォーカルを歌い出しそうな“Dama”などどの曲も素晴らしく、『Devi』はドイツのミュージシャンがアフリカ音楽を取り入れた最高傑作といえるのではないだろうか(“Xolotl”は食品まつりのリミックスが聴いてみたい)。クラシック大国ドイツによるアフリカ音楽の受容はこれまで悲惨としか言いようがない過程を辿ってきた。ボアダムズ『77 Bore Drum』にヒントを与えたらしきナイアガラ(クラウス・ヴァイス)や最近のアフロ・ハウスまで、まったく横揺れがしないドイツ人のアフリカ趣味は彼らの生真面目な性格を伝えるだけで(なにせメトロノミック・ビートである)、カンのヤキ・リーベツァイトを例外としながらマーク・エルネスタスによるジェリ・ジェリやタイヒマン兄弟によるアフリカとの交流によって発展してきたクラブ・ミュージックの片隅でようやく重要が喚起されてきた程度だろう。その上でのサイモン・ポップであり、『Devi』なのである。

 70年代のクラウトロックでもミヒャエル・フェッター(Michael Vetter)やドイター(Deuter)がインド音楽をメインに似たようなことはやっていた。しかし、これらとモンバサやオム・ブッシュマンといったドイツのジャズ・ドラムが結びつくことはなく、2017年にヤン・シュルツ(=ヴォルフ・ミュラー)が『Tropical Drums Of Deutschland』を編纂することで新たなフュージョンの可能性が出てきたということなのだろう。70年代の空気と80年代のテクニックが結びつき、これに「サード・ストリーム・ミニマリズム」wを加えることでサイモン・ポップの音楽性は立ち上がってきたといえる。“Higlehasn”がクラフトワーク“Tanzmusik”のアンビエント・ヴァージョンに聞こえてしまったのは僕だけだろうか。ちなみに「Laya」はインドの音楽用語、「Devi」はインドの女神を意味しているのかなと思うけど、正確にはよくわからない。

YOUNG JUJU - ele-king

 この春にEP「LOCAL SERVICE 2」をリリースしたKANDYTOWN。同クルーのYOUNG JUJU、現在はKEIJUとして活動するラッパーが2016年に発表した記念すべきファースト・ソロ・アルバム『juzzy 92'』がアナログ化される。オレンジのクリア・ヴァイナル仕様で完全限定プレスとのこと。客演にもプロデュースにも豪華面子が集結した1枚を、いま改めてヴァイナルで楽しもう。

KANDYTOWNのYOUNG JUJU(現KEIJU)が2016年に発表したファースト・ソロ・アルバム『juzzy 92'』がオレンジのクリア・ヴァイナル/帯付きジャケット/完全限定プレスで待望のアナログ化!

◆ KANDYTOWNのラッパー、YOUNG JUJU(現KEIJU)が2016年に発表したファースト・ソロ・アルバム『juzzy 92'』が待望のアナログ化! 客演にはIO、DONY
JOINT、Neetz、Ryohu、GottzのKANDYTOWN勢に加えてB.D.やFEBB、プロデュースにはKANDYTOWNからNeetzにRyohu、MIKI、Fla$hBackSからFEBBとJJJ、さらにはJashwon、Jazadocument、MASS-HOLE、DJ Scratch Nice、U-LEEが参加! MASS-HOLEのプロデュースで先行カットされた "The Way" やIOとNeetzが参加した "Angel Dust" といったライブでもお馴染みな楽曲や縁の深いB.D.とのコラボによる"Live Now"(プロデュースはJJJ)等を収録した傑作!
◆ 親交の深かったFEBBのレコメンにより、ミックス&マスタリングはベニー・ザ・ブッチャーやカレンシー、スモーク・DZAら多くのドープな作品を手掛けている名エンジニア、ジョン・スパークス(John Sparkz)が担当!
◆ フォトグラファー、嶌村吉祥丸氏が撮影し、イラストレーター/グラフィック・デザイナー、上岡拓也氏とIOがディレクションしたアートワークをベースに、CDにはなかった日本語帯を付属したアナログ盤がオレンジのクリア・ヴァイナル/完全限定プレスでリリース!


[商品情報]
アーティスト:YOUNG JUJU
タイトル: juzzy 92'
レーベル:KANDYTOWN LIFE / BCDMG / P-VINE, Inc.
発売日:2021年11月23日(火)
仕様:LP(オレンジ・クリア・ヴァイナル/帯付きジャケット/完全限定プレス)
品番:PLP-7193
定価:3.740円(税抜3.400円)
Stream/Download/Purchase:
https://p-vine.lnk.to/OAG7L0bu

[トラックリスト]


1. Hallelujah
 Produced by DJ Scratch Nice
2. The Way
 Produced by MASS-HOLE
3. Angel Dust feat. Neetz, IO
 Produced by Neetz
4. Tap This feat. FEBB
 Produced by FEBB
5. First Things First
 Produced by FEBB
6. Skit 24/7
 Produced by MIKI
 Backing Vocal by IO
7. Live Now feat. B.D.
 Produced by JJJ
 Contain a sample from Shota Shimizu "Overflow" (JPSR01200783).
 Licensed by Sony Music Records.
 (P)2012 Sony Music Records


1. Ready
 Produced by JASHWON
2. Prrrr. feat. DONY JOINT
 Produced by Jazadocument
3. Speed Up
 Produced by Ryohu
 Backing Vocal by Ryohu
4. Til I
 Produced by U-LEE
5. DownTown Boyz feat. Ryohu
 Produced by Ryohu
6. Worldpeace feat. Gottz
 Produced by JJJ
 Backing Vocal by Ryohu
7. Outro
 Produced by Jazadocument

All Songs Mixed & Mastered by John Sparkz

Muck Spreader - ele-king

 ジャンルとは境界線とはいったいなんなのだろうか? 全部が隣にあって、時代もなにもかもアーカイヴ化されていて、指先一つでワープが可能な現代、誰かのSpotifyのプレイリストを眺めてみてもごちゃ混ぜで、国も地域も超越している。それでもやっぱりシーンというものはあって、場所がどこかに必要で根っ子にある部分がふとした瞬間に顔を出す。コンピューターの画面の中でどんなにスタイリッシュに先鋭化していっても結局はそんな人間の生身の部分に惹かれていく。

 マック・スプレッダーの『Abysmal』を聞くと頭にそんな考えが浮かんでくる。燃え上がるサウス・ロンドンのシーンを尻目に、そこにひっかかりながらも意に介さず彼らは飄々と存在する。この音楽はいったいなんなんだろう? ブラック・ミディと同じくらいにフラットでごちゃ混ぜ、自分の周りにあるもの(それはもちろん音楽以外のものも含まれる)の全てを鍋にぶち込んで、気怠くアウトプットしたような、マック・スプレッダーの音楽はそんな音楽なのだ。

 たとえばそれは “Would He” の歩みを進めるベースの上に乗ったサックスの音で、そこにギターが重なる、センスが良くて凄まじく格好いい音なのにクダを巻くようなヴォーカルをそこに乗せてグダグダにする。あるいは “A particular Shade Of White” や “Plumbing Problems” の瞑想じみたグルーヴのまどろみの中で語られる物語、僕はそこに生活を感じる。画面が綺麗なだけの映画ではないという魅力、スタイリッシュな画作りの中で路上で酒瓶片手に酔っ払って寝てしまう姿を描いているみたいなラップともしゃべるようなヴォーカルとも違う粘り気のある話かけるようなヴォーカル・スタイル、聞いてくれる相手がいるかどうかはわからないけれどタバコを吹かしながらずっと語りかけてくるようなそれ(しかし結局はひとり言になってしまうのかもしれない)、そんな人間臭い魅力がここにはあるのだ。ジャズがあってパンクがあって、ダブ、ヒップホップにインディ・ロック、サウス・ロンドンのヴェニューで夜毎に繰り広げられていたであろう狂騒の中で生まれた思い、その記憶をグラスの中で混ぜ合わせたようなやさぐれてグダグダで尖った音、マック・スプレッダーが奏でているのはそんな音楽でそれがたまらなく魅力的に映る。

『Abysmal』を聞いてそんなことを考えていたが、実際にマック・スプレッダーはサウス・ロンドンのライヴハウス「ウィンドミル」で生まれたようだ。バンドの中心人物であるヴォーカリスト、ルーク・ブレナン(というかもうこの人の為のプロジェクトのような感じだ)はデイリー・スターのインタヴューでこんな風に語っている。

「元々俺は詩を書いていてハックニーで依存症の問題を抱える人たちの為のスポークン・ワークのイベントを開いていたんだ。そのうちウィンドミルでショーをおこなうようになって、それをバンドをやってる奴らが見て一緒にやらないかって声をかけてきたんだ」

 そうしてルークは観客の中から足りないメンバーを集めはじめた。こいつはギターが弾ける、こいつはヴァイオリンが弾ける、固定されたコア・メンバー以外はそんな風に集められ、かなりの人数が出たり入ったりと流動的なライナップのバンドともコレクティヴとも呼べるようなマック・スプレッダーができ上がっていった。しかしこの集団は一筋縄ではいかない。ファット・ホワイト・ファミリーの登場以降のサウス・ロンドンの雰囲気を身にまといソーリーと一緒にツアーを回るなどシーンと無関係では決してないはずなのに現代のポップ・ミュージックのフォーマットから外れた独自の美学を貫こうとする。
「俺たちが直面した一番の問題はリリースした曲をライヴでやらなくても許されるのか? ってことだった」ルーク・ブレナンは言う、ライヴとレコーディングは完全に別物でライヴは観客が持つ集団的な恐怖感や何が起こるのかという期待感を楽しむものだと。舞台の上でおこなわれるのはその日の空気を表現した即興演奏であってリリースされた曲がそこで披露されることはない。それがたとえデビューEPのリリースを記念してのローンチ・パーティだったとしてもだ。使われなくなった食品倉庫の一角を改装して作られたヴェニューでおこなわれたレーベルメイトであるピーピング・ドレクセルとのライヴにおいて、リリースされたばかりのEP「Rodeo Mistakes」の曲が演奏されることはなかった。
ホドロフスキーのSFコミックに出てくるような探偵をもっとやさぐれさせたみたいな風貌のルーク・ブレナンはくだを巻き、寝転び、観客を見つめる。バンドは目の前のディストピアを祝福するかのようなメロディを奏でて、距離をおいて座る観客はそれぞれに体を揺らす。トランペットが鳴り響く中、最前列の男女がキスをする(ステージなんて見てはいない)。座り込んだルーク・ブレナンは笑顔でそれを眺めて言葉を重ねる、そうして音楽がまた変化していく。YouTubeの画面越しに見る白黒のライヴの映像はまるで映画のシーンを切り取ったかのようだったが、こうやって考えてみるとマック・スプレッダーのスタイルはジャズやフリースタイルのそれに近いのかもしれない。
「完璧なものを作るのが目的ではない。ものごとが完璧な形で組み合わさる必要はないんだ」「曲を覚えて何度も歌詞を歌うのは嫌だし、何かが失われている気がする。昔から写真でも何でも最初に撮ったものが一番で、創造性については本能的に動いているんだ」バンドのインタヴューでもそんな言葉が飛び交うくらいだ、マック・スプレッダーにとってリリースされた音楽はその日までに起こったことの記録という側面が強いのだろう。その日になんでそうなったのかという過程と結果の方が重要でそれをそのままステージの上で再現することには興味はない(彼らはこれをスポーツの試合にたとえていた)。この『Abysmal』にもマック・スプレッダーのそうした思想が反映されていて、それが生々しさやゾクゾクするようなスリルに繋がっている。ここに記録されているのは2021年のサウス・ロンドンに漂うその空気なのだ。

 その空気を考える上で『Abysmal』が〈Brace Yourself〉からリリースされているというのもまた重要だろう。ダンス・ミュージックの名門〈WARP〉や〈Ninja Tune〉がジョック・ストラップスクイッドブラック・カントリー・ニューロードのようなインディ・バンドと契約し、イタリア90やジョン、ピーピング・ドレクセルなどパンクに寄ったギターバンドをリリースする新興レーベル〈Brace Yourself〉からマック・スプレッダーのレコードが出る、そんな状況こそがいまなのだ。ポップ・ミュージックのフィールドでジャズ的な感性を発揮する、ダンス・ミュージックが鳴り響くフロアに向けてギターがかき鳴らされる、ジャンルレスあるいはポスト・ジャンル化が進む現代においてより一層個性が求められている。何を混ぜ何を削るのか、そこにいまを生きる人間の感性が現れる。マック・スプレッダーのレコードは時代との対話だ、そんなことを言いたくなるくらいにここに色々な要素が詰め込まれている。もしかしたらこの中にアンダーグラウンド・シーンの次の形が隠されているのかもしれない、頭の中にぼんやりとそんな考えが浮かんでくる。そうだとしてもそうではなくとも、マック・スプレッダーの音楽は常に疑問を投げかけてくる。ジャンルとは境界線とはいったいなんなのだろうか?

Ryoji Ikeda - ele-king

 電子音楽家、池田亮司による東京では5年ぶりのソロ・ライヴ・パフォーマンスと、2012年から各地で上演が続けられている作品「superposition」の上映が、10月23日(土)WWWとWWW Xにて開催される。両会場を舞台に、ライヴ・パフォーマンスは2回、上映は3回の計5公演が実施。
 そしてこのタイミングで、「superposition」のサウンドトラックCDもリリースされる。「superposition」とは、情報の新たな概念である「量子情報」についての、池田による芸術的探求プロジェクトとして始動したもの。これまでイギリス、アメリカ、コロンビア、ロシアなど世界各地で上演されてきた。初演から10年近くのときを経て、このたびパフォーマンスの音源がCD化される。
 同梱のブックレットには、舞台全体をオペレイトする全シーンのスコア、パーカッショニストが奏でるテキストソースなど、「superposition」を構成する全要素がアーカイヴされている。10月25日発売、限定999部とのことなので、これは逃せません。
 また、10月25日より京都公演の収録映像がcodex | editionのオンラインショップにてオンデマンド配信(有料)される。詳しくは下記より。

池田亮司、東京にて5年ぶりのソロライブパフォーマンスと「superposition」映像上映が決定。
周年を迎えるWWW、WWW Xの両会場を舞台に、知覚の極地へ向かう1日・計5公演を実施。

日本を代表する電子音楽作曲家/アーティスト、池田亮司によるソロライブパフォーマンスと
東京未上演のパフォーマンス作品「superposition」の特別スクリーニングが決定した。

東京でのソロライブパフォーマンスは2016年WWW Xで行われたMerzbowとの共演以来となる。

「superposition」は池田の作品では唯一となる生身の身体(2名のパフォーマー)がステージに登場する作品。
2012年から世界各地で上演され、東京では未上演となっていた。
CD+ブックレットと映像配信の全世界リリースを10月25日に控えており、世界に先駆けてその映像をWWWで特別上映する。

この日は、ライブパフォーマンス2回/上映3回の計5公演を実施。
音そのものの持つ本質的な特性とその視覚化を、数学的精度と徹底した美学で追及する池田亮司。
そのライブパフォーマンスと作品を1日で堪能できる、またとない機会となる。

●WWW & WWW X Anniversaries
 Ryoji Ikeda superposition special screening

日程:2021年10月23日(土)
会場:WWW
料金:各回 前売 ¥1,800 / 当日¥2,300(自由席)

開場/開演:
-1st 12:00/12:30
-2nd 16:00/16:30
-3rd 18:30/19:00
*上映時間は約60分となります。
*3rd setのみ、WWW Xで行われるlive set(2nd)と同時間帯の上映となります。

チケット情報(全公演共通):
先行予約 9月22日(水)18:00 - 9月26日(日)23:59 (先着受付)
一般発売 10月2日(土)10:00
受付URL:https://eplus.jp/ryoji-ikeda-1023/

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/013788.php
問い合わせ:WWW 03-5458-7685

●WWW & WWW X Anniversaries
 Ryoji Ikeda live set

会場:WWW X
出演:池田亮司 / Ryoji Ikeda
料金:各回 前売 ¥5,000 / 当日¥5,500(オールスタンディング/ドリンク代別)

開場/開演:
-1st 13:30/14:30
-2nd 17:30/18:30

チケット情報(全公演共通):
先行予約 9月22日(水)18:00 - 9月26日(日)23:59 (先着受付)
一般発売 10月2日(土)10:00
受付URL:https://eplus.jp/ryoji-ikeda-1023/

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/013790.php
問い合わせ:WWW X 03-5458-7688

※本公演は「ライブハウス・ライブホールにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に基づいた対策を講じ、お客様、出演者、スタッフの安全に最大限配慮した上で、従前の50%以下のキャパシティにて実施いたします。チケットのご購入、ご来場の際は必ず「新型コロナウィルス感染拡大予防に関する注意事項」(https://www-shibuya.jp/news/013186.php)にてご注意事項の確認をお願いいたします。

Ryoji Ikeda
1966年岐阜生まれ、パリ、京都を拠点に活動。 日本を代表する電子音楽作曲家/アーティストとして、音そのものの持つ本質的な特性とその視覚化を、数学的精度と徹底した美学で追及している。視覚メディアとサウンドメディアの領域を横断して活動する数少ないアーティストとして、その活動は世界中から注目されている。音楽活動に加え、「datamatics」シリーズ(2006-)、「test pattern」プロジェクト(2008-)、「spectra」シリーズ(2001-)、カールステン・ニコライとのコラボレーション・プロジェクト「cyclo.」(2000-)、「superposition」(2012-)、「supersymmetry」(2014-)、「micro | macro」(2015-)など、音/イメージ/物質/物理的現象/数学的概念を素材に、見る者/聞く者の存在を包みこむ様なライブとインスタレーションを展開する。これまで、世界中の美術館や劇場、芸術祭などで作品を発表している。2016年には、スイスのパーカッション集団「Eklekto」と共に電子音源や映像を用いないアコースティック楽器の曲を作曲した新たな音楽プロジェクト「music for percussion」を手がけ、2018年にCDをリリース。2001年アルス・エレクトロニカのデジタル音楽部門にてゴールデン・ニカ賞を受賞。2014年にはアルス・エレクトロニカがCERN(欧州原子核研究機構)と共同創設したCollide @ CERN Award受賞。
www.ryojiikeda.com

2012年から世界各地で上演を続けている池田亮司のパフォーマンス作品『superposition』のサウンドトラックCDとブックレットをcodex|editionから限定999部でリリース、2021年9月22日よりプレオーダー開始。10月25日より公演収録映像をオンデマンド配信。

アーティスト:Ryoji Ikeda
タイトル:superposition [cd+booklet]
レーベル:codex | edition
品番:CD-003
税込価格:5,500円
発売日:2021年10月25日(月)
(デジタル音源も同日リリース予定)

●superposition [cd+booklet] (2021.10.25 リリース)
*12トラック収録(全54分)のCDと96ページのブックレットのセット
*限定999部、エディションナンバー入りカード付き
*9月22日(水)20時(JST)よりcodex | editionのオンラインショップ(www.codexedition.com)にてプレオーダー開始
*10月23日(土)WWWにて先行販売実施予定(要入場チケット)

●superposition [video on demand] (2021.10.25 リリース)
*2013年10月のKYOTO EXPERIMENTでの公演(於 京都芸術劇場 春秋座)を収録、編集した4K映像をオンデマンド配信開始(有料)
*10月25日(月)よりcodex | editionのオンラインショップ(www.codexedition.com)にて配信開始予定

Richard H. Kirk - ele-king

野田努(9/22)

 日本時間の昨晩、キャバレー・ヴォルテール(通称ザ・キャブス)の活動で知られるリチャード・H・カークが9月21日、65歳で亡くなったことを〈ミュート〉が発表した。昨年11月はキャバレー・ヴォルテールとしては26年ぶりのアルバム『Shadow of Fear』を発表し、エレキングの取材も快く答えてくれたカークだが、いまあらためてその記事を読み返してみると、すでに体調に問題があったのだろうか、取材中に何度か咳き込む様子が記されている。いずれにせよ悲しいことだ。各国の主要メディアが報じているように、偉大な音楽家/アーティストがまたひとりいなくなってしまった。

 1973年のイギリスのシェフィールドという地方都市で、リチャード・H・カークを中心に、クリス・ワトソンにスティーヴン・マリンダーという3人の“ダダ中毒”によって結成されたキャバレー・ヴォルテールは、パンク以降の音楽シーンにおいて未来を切り開いた重要なバンドのひとつだった。ブライアン・イーノが提唱した「non-musician」(音楽を作るのに音楽家である必要はない)という考え方に感化され、アブストラクトなテープコラージュから出発した彼らは、自らを「ミュジーク・コンクレートのガレージ版」と呼んだように、いわばアヴァンギャルドとパンクとの融合を実現させた第一人者でもあった。(初期の音源は2019年に〈ミュート〉から再発された『1974-76 (1974-76)』で聴ける)

 個人的な話で恐縮だが、彼らの初期の代表作“Nag Nag Nag”で見せた原始的なドラムマシンとテープ操作による反復、シンセサイザーと電子ノイズにスポークンワードめいた声といったキャブスのスタイルは、それが出たとき高校生だったぼくには、音楽に対する感受の仕方をいきなり押し広げられたような、相当な衝撃があった。また、彼らは政治的でもあり、予見的でもあった。ヴェルヴェッツのカヴァーを収録し、“バーダー・マインホフ”で締める『Live At The Y.M.C.A.』(1980)をはじめ、レーガン政権下で右傾化するアメリカを題材とした『The Voice Of America』、そしてイスラム主義の台頭を主題とした「Three Mantras」(1980)という、アメリカと中東における原理主義や宗教の政治介入に対する彼らの関心はその後のアルバム『Red Mecca』(1981)にも集約されている。こうしたコンセプトはリアルタイムで聴いていた10代の頃には何のことかさっぱりだったけれど。(ちなみに高校1年生の石野卓球が静岡のぼくの実家に遊びに来たときにぼくのまだわずかながらのレコード・コレクションを見て最初に反応したのがキャブスだった。いまでもその場面を鮮明に憶えている。お互い初めて会ったそのとき、「それ俺も好きです」とかなんとか、そんなようなことを彼は言った)
 1981年にクリス・ワトソンが脱退し、カークとマリンダーのふたりになってからの第二期は、レーベルも〈ラフトレード〉から〈サム・ビザール〉またはメジャーの〈パーロフォン〉へと変わって、音楽も実験色の強いコラージュ的なものからダンス・ミュージックへと路線変更された。80年代のキャブスは、“Just Fascination”(1983)や“Sensoria”(1984)、“I Want You”(1985)などポップ・チャートに入っても不自然ではないような曲をいくつか発表している。もちろんこうした彼らのエレクトロニック・ダンス・ミュージックは、同時代のアメリカのアンダーグラウンドなブラック・コミュニティで始動したダンス・カルチャーと併走し、そしてやがて合流した。カークは1989年から数年のあいだ地元のハウスDJ、パロットと結成したスウィート・エクソシストを介して〈Warp〉を拠点にブリープ・テクノ・ダンス・トラックの 12インチを切り、1990年のキャブスの12インチ「キープ・オン」においてはデリック・メイによるリミックス・ヴァージョンを収録している。それまでの方向性を考えれば必然だったと言えるかもしれないが、ポスト・パンク世代ではハウス‏/テクノに対してのダントツに素早い反応だった。あの当時はカークのその行動に痺れたし、自分たちの選んだ道は間違っていないとずいぶん勇気づけられもした。

 ハウスやテクノといったクラブ・ミュージックとの出会いを機に、リチャード・カークとキャバレー・ヴォルテールは、いっきにアンダーグラウンドヘと潜っていった。1990年代以降のカークは〈Warp〉や〈R&S〉、〈Touch〉といった先鋭的なインディペンデント・レーベルからソロ名義のほか、サンドズ名義をはじめとする数々の名義で作品を発表するようになる。90年代半ばにはキャブスからマリンダーも離れてしまうが、結果ひとりになってからもカークはひたすら作品を制作し、彼自身の〈Intone〉レーベルなどから、カーク本人でさえもとてもすべてを覚えられなかったのではないかと思われるほどのたくさんの名義を使ってテクノ‏/アンビエントの作品のリリースを停止することなく続けた。
 その数はあまりに多く、彼のすべての作品をチェックしている人がどれほどいるのだろうかと思う。ぼくは1994年のサンドズ名義の『Intensely Radioactive』と同年のソロ名義による〈Warp〉からの『Virtual State』、そしてマリンダー在籍時のキャブスの最後のアルバム〈Apollo〉からの『The Conversation』の3枚がお店で購入した最後のレコードだった。それは以降は、2000年代初頭のポスト・パンク・リヴァイヴァル時にいっしゅん初期の音源を聴き直したことはあったかもしれないが、2010年代に〈ミュート〉が80年代のキャブス作品を中心に再発するまでは、キャバレー・ヴォルテールもカークも自分のリスニング生活とはほとんど無関係だったことは否めない。それは個人的ではあるが、1979年/1980年のキャブスに心底震えた世代にとってありがちなコースだったのではないだろうか。(ゆにえ、まだ聴いていない彼の作品はあまりにも多くあるとは言える)

 2020年11月にキャバレー・ヴォルテール名義としては26年振りにリリースした『Shadow of Fear』は、カークのなかの“ファンク”が噴出した生命力ある力作で、そしてまた、初期の作品を彷彿させる言葉のカットアップを効果的に使った作品でありディストピックで暗示的なアルバムでもあった。その破壊的な迫力と否定の力に、カークの芸術的始祖のひとりであるトリスタン・ツァラもさぞかし歓喜したことだろう。が、しかし65歳とは、やはり早すぎた。今年に入ってからは3月にキャバレー・ヴォルテール名義での1曲およそ50分の『Dekadrone』と1時間にわたる『BN9Drone』という2枚のドローン作品をリリースしているが、彼は結局、ぶっ倒れるまで作り続けたのだろう。「彼は最後まで、ハングリーでアングリーでファンキーだった」とは『ガーディアン』の追悼記事の見出しだが、いやまったく、本当にその通りだ。

野田努

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三田格(9/24)

 ele-king臨時増刊号メタヴァース特集のために原稿を書きながらキャバレー・ヴォルテールがこの春にリリースした『Dekadrone』を聴き直し、漠然と初期のインダストリアル・テイストをロング・ドローンでやり直している感じかなあと思っていたら、深夜になってリチャード・H・カークの訃報を目にした。第一報では死因は不明とあった。亡くなったことを知って聴くのとそうでないのとでは聴き方がまったく変わってしまう。え、死んじゃったの!と思って、もう一度『Dekadrone』を再生すると、今度はなんともオプティミスティックで、近年のデッドロックな気分を反映したドローンとは正反対の高揚感がダイレクトに耳を打ってきた。「デカドロン」というのはステロイドの一種であるデキサメタゾンとドローンを足して、イタリアの古典文学「デカメロン」と掛けた造語のようで、おそらくはカークが最後まで服用していた抗炎症薬を題材としたものなのだろう。LSDを開発した製薬会社サントスの名義で10枚以上のアルバムを残した男である。デカドロンという薬にも大きな希望を見出していたのかもしれない。

 訃報を目にして最初に思い出したのはなぜかメジャーフォースの工藤(昌之)さんに聞いた話だった。キャブスが初めて来日し、新宿のツバキハウスでライヴを行なった後、彼らは工藤さんがDJを務めていた六本木クライマックスに遊びに来たというのである。そして、キャブスの3人はナンパをはじめたんだよと工藤さんは笑いながら言った。僕もつられて笑い、旧ベイシング・エイプのスタジオは俗っぽい雰囲気でいっぱいになってしまった。工藤さんが言いたかったことはこうだろう。インダストリアル・ミュージックの急先鋒として喧伝されていたキャバレー・ヴォルテールは当時、神格化ではないけれど、どこか恐れ多い雰囲気に包まれていた。でも、そんなことはなくて、当時から彼らは人間味のある人たちだったんだよと。クライマックスは狭いハコで客がすし詰めになっているようなこともなかったから、ナンパなんかしていれば、ほぼ全員に何をやっているかわかってしまうクラブである。チーク・タイムという習慣を最初に辞めたハコであり、陰湿な性格には似合うスペースではなかった。ちなみにツバキハウスのライヴを収めた『Hai!』は名作ながらマスター・テープを紛失し、〈Mute〉の復刻版はアナログ起こしだという。

 〈Rough Trade〉の3枚目ということもあり、キャブスはデビューEPから聴いていた。正直、ピタッと来る感じではなく、いま聴いてもカンの粗雑なコピーみたいに聞こえてしまう曲も多い(それでも全部買っていたのは『ロック・マガジン』がプッシュしていたから)。それが先行シングルもなく、ふいに2枚組でリリースされた4thアルバム『2X45』で僕は彼らの編み出したインダストリアル・ファンクにめろめろになってしまった。『2X45』はインダストリアル・ミュージックとファンクの官能性をものの見事に融合させ、ボディ・ミュージックや遠くはハード・ミニマルに至るまでダンス・ミュージックのアンダーグラウンド化に多大な導線を示した作品である。それこそヴァージン・プルーンズのギャビン・フライデーは『2X45』を聴いて「自分たちはもっといいディスコ・レコードをつくれる」とコメントしていたけれど、カークによればそれまでもダンス・ミュージックをやっているつもりはあったようで、クリス・ワトスンが脱退したことで思いっきり舵を切ることができた結果が『2X45』だったという。しかし、さらに驚かされたのは、続く『The Crackdown』だった。『2X45』以前のインダストリアル・テイストを大幅に回復させ、有象無象のブリティッシュ・ファンク・ブームとは一線を画すオルタナティヴ・ファンクの流れがここに確立される。『The Crackdown』がなければそれこそフロント242もタックヘッドもなかったかもしれない。

 キャバレー・ヴォルテールとフラ、そして、フォン・フォースがシェフィールドをダンス・カルチャーに引きずり込み、やがて〈Warp〉が設立される。〈Warp〉ではただひとりの創設メンバーとなってしまったスティーヴ・ベケットは早くからキャバレー・ヴォルテールのアルバムを出したがっていたけれど、彼の思いはかなり歪んだかたちで実現する。シェフィールドでは逸早くアシッド・ハウスに手を出し、現在もクルックド・マンなどの名義でアシッド・ハウスの改良に余念がないDJパロットがカークを誘って二人はスウィート・イクソシストを結成、設立当初の〈Warp〉に“Testone”を吹き込み、「ブリープ」と呼ばれるタームを引き起こす。LFOのビッグ・ヒットもあって「ブリープ」は〈Warp〉を認知させる大きな要因となるも、ここからが少しややこしい。〈Warp〉の創設メンバーのひとり、ロブ・ゴードンはイギリス人がハウスやテクノをやるならアメリカとは違ってレゲエのリズムを取り入れなければならないと主張し、もうひとりの創設メンバー、ロブ・ミッチェルと対立、レーベルから離脱してユニーク3のプロデュースに専念する。この対立を受けてカークは〈Warp〉ではなく、ロブ・ゴードンとゼノン(XON)というユニットを組み、さらに「ブリープ」を推し進める。その本質は「信号音」ではなくレゲエのリズムにあることが明らかとなり、これはスウィート・イクソシストのアルバムがいまでもグローバル・ミュージックの文脈で聴くことができる土台にも通じている(カークはレゲエをメインとしたサントスもほぼ同時にスタートさせる)。

 以後は、スウィート・イクソシストの新作もカークが新設した〈Plastex〉からのリリースとなり、キャバレー・ヴォルテールの新作も同レーベルを通じて〈R&S〉傘下の〈Apollo〉にライセンスされることに。リチャード・H・カークが〈Warp〉からソロ・アルバムをリリースするのは〈Plastex〉を閉鎖した1994年を待ってからであり、カークがテクノというタームと格闘を続けた91~93年を〈Warp〉が共有できなかったことは〈Factory〉とニュー・オーダーの関係とは異なる気分を浮上させ、できれば本人からもっと詳しい事情を聞いてみたかったところでもある。〈Apollo〉にライセンスされた『The Conversation』は、そして、ようやくレイヴ・カルチャーと距離が取れるようになった作品として完成度も高く、2020年に復活を果たすまでカークにとっても超えられない壁となってしまった感もなくはない。アシッド・ハウスの波に飲み込まれてしまい、自分でもキャバレー・ヴォルテールの作品らしくなかったと述懐していた『Groovy, Laidback And Nasty』やアシッド・ハウスに対抗してミニストリーと組んだアシッド・ホース、あるいはテクノにオリジナリティを見いだすことができなかった『Plasticity』とは異なり、『2X45』や『The Crackdown』をテクノで再構築した『The Conversation』はゆったりとした官能性を呼び戻し、ようやくオルタナティヴ・ファンクの本流に返り咲くことができた傑作だった。2時間を超える大作にもかかわらず、まったく飽きさせないのはさすがとしか言いようがない。

 リチャード・H・カークがさらにスゴいと思うのは自分の音楽を先入観をもって聞かれたくないために40以上の名義を使い分けたことである。『Red Mecca』や『Three Mantras』など早くから西欧とイスラムの衝突に関心があったというカークは、ジョージ・ブッシュがイラクに戦争を仕掛けた際はバイオケミカル・ドレッドの名義で『Bush Doctrine』をリリースして奇天烈なレゲエを聞かせ、ヴァスコ・ドゥ・メント名義ではさらにインダストリアル・ダブをこじらせていく。イクステンディッド・ファミリー(拡大家族)とかニトロジェン(窒素)とか気になるネーミングはたくさんあるけれど、さすがにすべてはフォローできない。どの名義だったか忘れてしまったけれど、ある時、石野卓球とカークのソロ作を聴いていて、卓球が「いまどきダダダッてプリセット音をそのまま使うのは彼だけだよ」と笑っていたことを思い出す。そう言われるまで僕は気がつかなくて、以降、ダダダッというプリセットのスネア音を聴くとリチャード・H・カークのことを思い出すようになってしまった。それこそダダイズムだし。R.I.P.

三田格

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