ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 大友良英「MUSICS あるいは複数の音楽たち」を振り返って
  2. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  3. KMRU - Kin | カマル
  4. 坂本慎太郎 - ヤッホー
  5. Milledenials - Youth, Romance, Shame | ミレディナイアルズ
  6. Dolphin Hyperspace ──凄腕エレクトリック・ジャズの新星、ドルフィン・ハイパースペース
  7. Loraine James ──ロレイン・ジェイムズがニュー・アルバムをリリース
  8. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  9. interview with Autechre 来日したオウテカ──カラオケと日本、ハイパーポップとリイシュー作品、AI等々について話す
  10. ele-king Powerd by DOMMUNE | エレキング
  11. Deadletter - Existence is Bliss | デッドレター
  12. Squarepusher ──スクエアプッシャーのニュー・アルバムがリリース
  13. Jill Scott - To Whom This May Concern | ジル・スコット
  14. ロバート・ジョンスン――その音楽と生涯
  15. Cardinals - Masquerade | カーディナルズ
  16. HELP(2) ──戦地の子どもたちを支援するチャリティ・アルバムにそうそうたる音楽家たちが集結
  17. Free Soul × P-VINE ──コンピレーション・シリーズ「Free Soul」とPヴァイン創立50周年を記念したコラボレーション企画、全50種の新作Tシャツ
  18. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2026
  19. ぼくはこんな音楽を聴いて育った - 大友良英
  20. Flying Lotus ──フライング・ロータスが新作EPをリリース

Home >  Reviews >  Album Reviews > Popp- Devi

Popp

AmbientGlobalMinimal

Popp

Devi

Squama

Bandcamp

三田格   Sep 29,2021 UP

 ミュンヘンからツイン・ドラムのジャズ・ユニット、ファジー(Fazer)のサイモン・ポップによるセカンド・ソロ。ハッセル&イーノ『Possible Music』を思わせる2年前の『Laya』と同じく打楽器だけで構成されたインプロヴァイゼイション・アルバム。複数の打楽器や細かいパーカッション・ワークを駆使し、全体にインド音楽のテイストを残しながらもアフリカ色が強くなったことで同じようにスタティックな作風でも静謐さの種類に変化がもたらされている。ファジーが元々、ラウンジ・ミュージックに近い音楽性だったこともあり、テンションをみなぎらせるようなインプロヴァイゼイションではなく、かといってニューエイジのようなユルユルでもなく、ビアトリス・ディロンへのクラブ・ジャズからのアンサーというのか、スティーヴ・ライヒから可能な限り緊張感を取り除いたアンビエント・ドラミングというのか。あくまでも演奏を基本にしていることでフィールド・レコーディングとプロセッシングでつくり出すアンビエント・ミュージックにはないオーガニックなムードが全体のトーンを決めている(90年代の雰囲気を出すためにゲート・リヴァーブとピッチ・シフトは多用したらしい)。サイモン・ポップはファジー以外の活動としてアブシュタン(Abstand)やファジーのドラマー2人によるファジー・ドラムス名義のアルバム『Sound Measures』などでミニマルにフォーカスした試行も並行して続けており、そのためか、サイモン・ポップのソロ作を取り上げた欧米のレヴューでは「サード・ストリーム・ミニマリズム」という定義がやたらとコピペされて使われているものの、僕が調べた限りどこにも定義の内容は書かれていない(ので、よくわからない)。お笑いの第7世代みたいなものなのだろうか?



 前作の『Laya』は鐘の使い方やランダムなビートの刻み方など明らかにメディテイションを目的としていて、フィジカルではなく音の効果は意識に集中していた。『Devi』ではそれがガーナのリズムなど東アフリカのリズムを取り入れた結果、一転してフィジカルに訴えかける要素が増え、全体的に内省的な気分を誘発するものではなくなっている。“Gundel”や“Jilu”などインドとアフリカが融合し、なんとも気持ちのいいハイブリッドに仕上がっていて、透き通るような残響音が美しい“Myna”や、いまにもデヴィッド・アレンがごにょごにょとマントラじみたヴォーカルを歌い出しそうな“Dama”などどの曲も素晴らしく、『Devi』はドイツのミュージシャンがアフリカ音楽を取り入れた最高傑作といえるのではないだろうか(“Xolotl”は食品まつりのリミックスが聴いてみたい)。クラシック大国ドイツによるアフリカ音楽の受容はこれまで悲惨としか言いようがない過程を辿ってきた。ボアダムズ『77 Bore Drum』にヒントを与えたらしきナイアガラ(クラウス・ヴァイス)や最近のアフロ・ハウスまで、まったく横揺れがしないドイツ人のアフリカ趣味は彼らの生真面目な性格を伝えるだけで(なにせメトロノミック・ビートである)、カンのヤキ・リーベツァイトを例外としながらマーク・エルネスタスによるジェリ・ジェリやタイヒマン兄弟によるアフリカとの交流によって発展してきたクラブ・ミュージックの片隅でようやく重要が喚起されてきた程度だろう。その上でのサイモン・ポップであり、『Devi』なのである。

 70年代のクラウトロックでもミヒャエル・フェッター(Michael Vetter)やドイター(Deuter)がインド音楽をメインに似たようなことはやっていた。しかし、これらとモンバサやオム・ブッシュマンといったドイツのジャズ・ドラムが結びつくことはなく、2017年にヤン・シュルツ(=ヴォルフ・ミュラー)が『Tropical Drums Of Deutschland』を編纂することで新たなフュージョンの可能性が出てきたということなのだろう。70年代の空気と80年代のテクニックが結びつき、これに「サード・ストリーム・ミニマリズム」wを加えることでサイモン・ポップの音楽性は立ち上がってきたといえる。“Higlehasn”がクラフトワーク“Tanzmusik”のアンビエント・ヴァージョンに聞こえてしまったのは僕だけだろうか。ちなみに「Laya」はインドの音楽用語、「Devi」はインドの女神を意味しているのかなと思うけど、正確にはよくわからない。

三田格