「Lea Lea」と一致するもの

新しい宇宙が見えるかもしれない - ele-king

 ジェフ・ミルズ×毛利衛。思えば意外な組み合わせではないのかもしれない。昨年ふたりは初めて対面し、お台場の日本科学未来館ではトーク・セッションも行われたが、ジェフが宇宙に寄せるあまりにも一途で純粋な思いは、彼の質問や、毛利の回答に目を輝かせる様子からもありありと伝わってきた。また一方で、毛利の宇宙観も近年では「ユニバソロジ」という科学者としてはいっぷう変わった概念へと結実していて、その広がりのなかに今回のようなコラボレーションが生まれたことは不思議ではない。

 トーク・セッションで印象に残った話のひとつに、光(闇)の体験談がある。それは「宇宙の黒を知っていますか」――言い回しに異同はあるかもしれないが――というような問いかけからはじまる。われわれが普段「黒」と認識している色は、光の反射によって認識されている「黒色」だ。ざっくりと言えば、光が黒いものに当たり、それが反射され、われわれの目に「黒」という色が映っている。だが宇宙の黒は違う。宇宙では光が返ってこない。光は行ったきり戻ってこず、そこに存在するのは、何の反射でもない、まさに無の光(闇)。あの真っ暗さは黒とは明らかに違うのだ......。
 『ホエア・ライト・エンズ』というタイトルからは、思わずこの話が思い出された。光が終わるところとは宇宙なのか、それとも。

 毛利衛によるオリジナル・ストーリーと、それをもとに制作されたというジェフ・ミルズの最新音源を収めた『ホエア・ライト・エンズ』。これは貴重なコラボレーションであるばかりでなく、新しい宇宙のイメージが歴史に書き重ねられる瞬間であるかもしれない。アルバム収録は初だというリミックス音源も期待される。

ジェフ・ミルズの新作『Where Light Ends』は日本科学未来館館長・宇宙飛行士 毛利衛氏とのコラボ!!

テクノシーンを代表するDJ/プロデューサーであるJEFF MILLS(ジェフミルズ)。伝説的なテクノ・ユニット、Underground Resistanceの一員として活動していた活動初期、そしてソロとして活動を開始してから現在に至るまで、“宇宙”というテーマにこだわり続け、多くの作品の中で表現し続けてきたアーティストだ。

昨年、自ら主宰する音楽レーベル〈Axis Records〉が創立20周年を迎え、その活動の集大成として20周年記念盤『SEQUENCE』をリリースし、同時に新章へと向けた展開を開始、その第一弾となる作品はなんと、1992年、スペースシャトル、エンデバーに日本人として初めて搭乗した毛利衛氏とのコラボ作品だ。

現在、日本科学未来館館長を務める毛利衛氏とJEFF MILLSは昨年2012年に初対面。様々な意見が交換されると同時に、毛利氏はJEFF MILLSに未来館の「Geo-Cosmos」(1000万画素を超える高解像度で、宇宙に輝く地球の姿を映し出す有機ELパネルを使った世界初の地球ディスプレイ。日本科学未来館のシンボル展示)が展示されるシンボルゾーンで流れる音楽の制作を依頼(これまでは坂本龍一氏によるオリジナル音楽が流れていた)、またJEFF MILLSは、エレクトロニック・ミュージックとスペーストラベルを毛利氏とミックスしていくというアイデアを提案、毛利氏が快諾したことにより、2つの音楽プロジェクトが始動することになった。

JEFF MILLSが音楽を製作するにあたり、実際に宇宙空間に身をおいた毛利氏の宇宙観を共有するため、毛利氏がオリジナル・ストーリーを作成、これを元にジェフ・ミルズは最新作『Where Light Ends』を制作したということで、2人の出会いによって誰も想像し得なかったコラボレーション作品が誕生することになる。

なお、この作品は2CDとなっており、DISC2には日本人リミキサー陣による作品が収録される予定。過去、JEFF MILLSの作品をリミックスしたのは、KEN ISHIIとBEN SIMSの2人のみで、これらの楽曲も数量限定の12インチアナログとして発売されたのみ。JEFF MILLSの楽曲のリミックス作品が収録されるのは今回が初めてとなるということなので、そのラインナップが気になるところだ。

JEFF MILLSの新作「Where Light Ends」は3月27日にU/M/A/Aより発売される。

【商品情報】
テクノシーンを代表するDJ/プロデューサー ジェフミルズと日本科学未来館館長・宇宙飛行士 毛利衛による最強宇宙コラボ!

JEFF MILLS
「Where Light Ends」

2013.3.27 release


Cat No.:UMA-1015-1016
価格:¥2,580 (税抜 ¥2,457)
仕様: 2CD / ブックレット / ジュエルケース

[DISC 1] "Where Light Ends" オリジナルアルバム
1. T-Minus And Holding
2. STS-47; Up Into The Beyond
3. Light Of Electric Energy
4. Black Cosmic Space
5. Earth And The Geo-Cosmos
6. Life Support
7. Centerless
8. The Inhabitants
9. Deadly Rays (Of A Hot White Sun)
10. Extra Solar Planets (WASP 17b)
11. Way Back

[DISC 2]リミックス集
日本人アーティスト達によるリミックス曲を収録。

[ブックレット]
毛利衛(日本科学未来館館長・宇宙飛行士) によるオリジナルストーリーを収録したブックレットを封入、Jeff Millsによる作品解説、各リミキサーによる作品解説収録予定。

Supermaar (aka DJ MAAR) - ele-king

DEXPISTOLSのDJ MAARのソロプロジェクト。
あらゆる音楽を通過し、たどり着いた先、戻った先。
Deep HouseとTechnoを軸にしつつも、持ち前のヤンチャ心で、日々生まれるフレッシュな音源をグルーヴと低音をキープしながらMixしていく。もう一人のオレ。3番目のオレ。
Dope me, me from Madness.

Recently Play List


1
Barnt / Geffen
完全なるクラブサウンド。家で聴いても、その良さが1ミリも分からない最高な1曲。

2
Shlomi Aber / Foolish Games Feat Moggli
ズブズブしながらも歌い上げてる感じが、最高。Deep HouseとTechnoの程良い中間地点。

3
COS/MES / D.F.G. feat. Dr. Nishimura
こんなのが、あったとは、、、。日本が誇る最狂タッグ。西村さん、超リスペクト。

4
&ME / Everless 
所謂Houseマナーを完全に継承している、旬なHouse。ハマれるし、踊れる。

5
Raz Ohara / El Zahir (Acid Paul's Acid Dub)
理由は、無いけどグッとくる1枚。後半のAcidな展開が、アイディア賞もの。

6
Nu Zau / Pason
カッコイイ。クセは全くないけど、それこそが、今風の最大なクセなのかも。

7
Dark Sky / Hequon 
黒くて、太くて、危険なヤツ。レーベル50 Weaponsにハズレなし。

8
Heiko Laux & Alexander Lukat / Bleak
ド不良な音。激ワル、極悪。大好物だけど、上手く使いこなせるか心配。。。

9
Sis / Foxy (Butch's Raw Cut)
絶妙なバランス感が良い。あった様で無かった感じ。色んなジャンルを横断しそうな1曲。

10
Supernova / Last Night In NY
音は今っぽくないのに、ナゼか今っぽく聴こえる曲。ロケ地がニューヨークってのも不思議。
次点 wAFF / Ibiza
何だかんだで、こういう感じ嫌いじゃない。タイトル通り考える前に、踊れ!騒げ!!的なアンセム。

2013: What The Fuck Is Going On? - ele-king

 『タイニー・ミックス・テープス』によれば、すべて廃盤となっていたザ・KLFのバックカタログが、1月17日、いっせいにiTunesやアマゾンで売り出されたというが、それが海賊盤であったため、間もなくいっせいに削除された、という。復活宣言か! などと騒がれたそうだが、結果、いち部の人たちのみが聴けただけのことだった。
 さて、ele-kingがここで言いたいのは、ことの顛末ではない。『TMT』の記事の秀逸さである。いわく「ザ・KLFがいなければ、バンクシーがブリストルを離れることはなかっただろう。M.I.A.がレコード会社の役員の息子と結婚することで、その莫大な財産を利用して、殺戮についてのヴィデオを作ることもなかった」
 1992年に音楽産業を去ったザ・KLFは、1987年から数年のあいだ、挑発的なゲリラ広告や街中のグラフィティ、二木信以上にバカげた逮捕劇を繰り返しながら、アシッド・ハウスを更新して、既存の音源のサンプリングで最高のチルアウト・アルバムを創造した。それから彼らは、1992年のあいだ英国でもっとも売れた音楽家となった(オリコンチャートのようなチャートで何回か1位となった)。アメリカには、特別な挑発を仕掛けた──「America: What Time Is Love? ]

 ザ・KLFは、『TMT』が言うように、バンクシーの青写真であり、そしてポップ・ミュージック史上、最高の喜劇の実践者でもあった。彼らが最後に逮捕されたのは自分たちの商業的な大成功で儲けた貨幣のうちの100万ポンドを燃やしたときだった。
 物語の発端はリバプールにある。80年代のマンチェスターの物語については我々ジャパニーズもよく知っている。しかしリバプールについては......数ヶ月後に、翻訳者様のがんばり次第では、その素晴らしい真実についてお伝えできるかもしれない。
 いったい、「何が起こってるっていうんだよ(What The Fuck Is Going On)?」

2012年には他にも良い音楽がたくさんあったぜと、なんと、おとぎ話と踊ってばかり国がベスト10を送ってくれました! 俺にも言わせろ「2012年のベスト・アルバム」です!

有馬和樹(おとぎ話)

おとぎ話やってます。有馬和樹と言います。31歳です。2012年の10枚と言われたので、選びました。順不同。1年で3枚アルバム出しちゃうようなTY SEGALLが好きです。青葉さんとホライズンは、日本の音楽表現の可能性を広げてくれたと勝手に思ってます。とか、いろいろ毎日考えてます。1月23日に、おとぎ話の新しいアルバム「THE WORLD」が発売されます。いつもに増して不思議なアルバムです。今年は映画の撮影があったり、いつもに増して不思議な活動になりそうなので、たのしみです。

https://otogivanashi.com/

1. TY SEGALL - TWINS
2. TY SEGALL & WHITE FENCE - HAIR
3. TY SEGALL BAND - SLAUGHTERHOUSE
4. 青葉市子 - うたびこ
5. ホライズン山下宅配便 - りぼん
6. CONVERGE - ALL WE LOVE WE LEAVE BEHIND
7. THE SHINS 「PORT OF MORROW」
8. TAME IMPALA - LONERISM
9. Grimes - Visions
10. King Tuff - King Tuff

下津光史(踊ってばかりの国)

どーも、踊ってばかりの国の下津です。マヤの予言通り新世界になったわけだし、世界を変えるのは一人一人の意識だと思うので、皆さんも心のドアを少し開け、風通しの良い一年にしましょう。若輩者がすいません。年男です。24歳、B型、既婚者です。

1. Dirty Projectors - Swing Lo Magellan
2. Alabama Shakes - Boys & Girls
3. Franc Osean - Channel Orange
4. Lana Del Ray - Born To Die
5. Mala - Mala In Cuba
6. おとぎ話 - サンタEP
7. 青葉市子 - うたびこ
8. Kindness - World You Need A Change Of Mind
9. Grimes - Visions
10. Jack White - blunderbuss

 ドニー・フリッツが出演している、だと......?
 スワンプ・ファンはもちろん、シネフィルのみなさん、若き音楽リスナー諸兄、いまもっともトレンドから遠い(と敬意をこめて。)サザン・ロックの髄液を視覚的に味わえる吉報が舞い込んだ。
 ホワイト・ソウルの名盤『PRONE TO LEAN』を世に残し、09年の来日でも大きく話題となったシンガーソングライター、ドニー・フリッツやオールマン・ブラザーズ・バンドも出演していたという日本未公開映画がついに上陸。ドニー・フリッツはサム・ペキンパー監督『ビリーザキッド/21才の生涯』等への出演も知られるところだが、本作ではマスク姿が確認できるとのことだ。滾る。

 音楽を手がけるのは「ミスターAOR」ことマイケル・フランクス。こちらも大御所だが、シティ感覚にあふれる、ジャジーでメロウな作風を確立する以前の音源だというから、大いに注目されるポイントである。

 映画史的な評価・重要性については、下記をご覧あれ!

公式サイト:https://www.cock-f.com/
シアター・イメージフォーラム上映案内:https://www.imageforum.co.jp/theatre/


映画「コックファイター」ニュープリント版
2013年1月19日(土)より、
4週間限定渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開!
後、全国順次公開


(C) 1974 Rio Pinto Productions, Inc. and Artists Entertainment Complex, Inc.

名優ウォーレン・オーツ『ガルシアの首』×鬼才モンテ・ヘルマン『断絶』
闇に葬られた幻の傑作が、製作39年目にして35mmニュープリント日本初公開。
スクリーンに叩きつけられた負け犬たちの意地が、今ここを荒野へと変える!!

今週末1月19日(土)より渋谷のシアター・イメージフォーラムにて39年の時を経て映画『コックファイター』が4週間限定で日本初公開となる!

この映画の音楽を担当したのは、マイケル・フランクス(1944~)。
フランクスはその後1975年に発表したセカンドアルバム『アート・オブ・ティー』で自らの音楽スタイルをスムースジャズ(フュージョンの一様式の名称で、日本では独自の呼称「AOR(大人向けロック)」を当てはめられることもある)路線に転換し、以後一貫して同路線を継続することになる。
1977年発表のアルバム『スリーピング・ジプシー』に収録されたアントニオ・カルロス・ジョビンに捧げられた歌曲『アントニオの歌』がよく知られている。

さらにこの映画『コックファイター』には思わぬ人たちが"出演"している。

ひとりはドニー・フリッツ。そうです、あのサザン・ロックの大ベテラン。
といっても出演当時はファースト・アルバムが出たばかりか出る直前。
ホテルでの闇闘鶏会場を襲うギャングのひとりとしてマスクを被ったままの演技なので、残念ながら素顔は見られません。
老人のマスクを被った人物がそうです。
ちなみに何故彼がこの映画に出演したかというと、その前に『ガルシアの首』にも出演していて、ウォーレン・オーツの推薦によるものだったとのこと。

そしてオールマン・ブラザーズ。
闘鶏のシーンを見学にやってきたところ、そのまま闘鶏場の観客として出演することになった。
こちらは、「ジュニア」と呼ばれる青年との闘鶏シーン。
青年が反則負けになる場面に注目。あの会場のどこかにメンバーが映っているはず。
メンバーのひとり、ディッキー・ベッツはこの映画の音楽を作りたがっていたという。

マイケル・フランクスの音楽に耳を傾け、ドニー・フリッツやオールマンブラザーズのメンバーをスクリーンで探しながら映画を楽しんではいかが?

公式サイト:https://www.cock-f.com/
シアター・イメージフォーラム上映案内:https://www.imageforum.co.jp/theatre/

お正月の5タイトル! - ele-king

 お正月は何を聴きますか? 元旦からお仕事のかたも、例年にまして長い休暇を取られているかたも、おせちとテレビに飽きたらちょっとご参照ください! ライター陣を中心にお正月に聴く5タイトルを挙げてもらいました。ele-kingのお正月はこんなふうです。
 読者のみなさん、今年もありがとうございました。2013年もどうぞよろしくお願いいたします!

木津毅
1. Bon Iver / For Emma, Forever Ago / Jagjaguwar
2. My Morning Jacket / At Dawn / Darla
3. The National / Boxer / Beggars Banquet
4. Iron & Wine / The Shepherd's Dog / Sub Pop
5. The Tallest Man on Earth / The Wild Hunt / Dead Oceans

僕は半分ほどがアラサー女子の成分でできている人間なので、クリスマスに限定のケーキ(今年は〈ピエール・エルメ・パリ〉のフロコン・アンフィニマン・ヴァニーユ)を買い、ワインを飲み、浴びるようにクリスマス・ソングを聴いて年末には燃えつきるので、正月はみなさまと同じくだらけることに決めております。さすがに年始からスプリングスティーンを聴いて、アメリカについて想いを馳せたりはしません。ということで、正月ぐらい、いい男たちのいい歌を聴いて、甘いひとときを過ごしたいです(これは寂寥感ではない)。冬のいい男は、木こり系ですね。

倉本諒
1.Ash Pool - Cremation is Irreversible
2.Law Of The Rope / Crown Of Bone ‎- Law Of The Rope / Crown Of Bone
3.Rev. Kriss Hades - The Wind of Orion
4.Peste Noire ‎- Les Démos
5.Burzum - Filosofem

正月など大嫌いだ。そもそもお節や懐石料理等の常温で食す料理が好きではないし、公共機関をなどの都市機能の能率は低下のためもろもろの事情が遅れつづけるし、 実家も都内にあるため帰省することも別段珍しいわけでもない。そもそも長い極貧生活の中で脂肪を失ったエクストリーム・モヤシ体型の僕にとっていまは一年で最もしんどい時期なのだ。 でも北欧の冬に比べればマシだよねーってことでブラックメタルだけのアンチ祝賀タイトルです。Burzumしかノルウェイじゃないけど。みんなこれを聴きながらコタツに入り、猫の頭頂にみかんなどを載せてニヤニヤしながらアラン・ムーアのフロム・ヘルでも読みましょう。

斎藤辰也(パブリック娘。)
1. John Lennon / Instant Karma(『Lennon Legend: The Very Best Of John Lennon』収録) / Capitol
2. レミオロメン / エーテル / ビクターエンタテインメント
3. ブランキー・ジェット・シティ / 幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする / EMIミュージックジャパン
4. Hot Chip / One Life Stand / Parlophone
5. Zomby / Nothing / 4AD

「ああ、やってやろう!」の気分で満ち溢れている1位。冬はさむいけどワクワクするし春も近いということを思い出させてくれる2位。冬の寒さは身体にきびしい、そして人間は人間に厳しいのだと思い知らされる3位。冬リリースだった思い出もあり、静と動の往来でときを過ごしたい4位。ふざけんな、僕はもうなにも信じない......という気持ちが呼び覚まされるような5位。

竹内正太郎
1.SHINGO☆西成 / スプラウト / リブラ
2.電気グルーヴ / ドラゴン / キューン
3.neco眠る / エンガワ・ボーイズ・ペンタトニック・パンク / デフラグメント
4.サニーデイ・サービス / ムゲン / ミディ
5. PR0P0SE / プロポーズ / マルチネ

編集から依頼のメールがあってからというもの、暇を見つけてはCDラックの前をウロウロしたり、iTunesのライブラリーをキョロキョロしているのだが、正月の気配がまったくしない。なんてこった。わたしは、こんなにも正月と無縁な音楽ばかりを聴いてきたのだ......。辞退しよう。そう思った。それ以前に、「そもそも正月と音楽ってなんか関係あんの?」という負け惜しみ的な疑問を抱いたところ、「でも、一見まったくの無関係な二者に補助線を引くのがライターというものじゃないですかあ」という橋元編集の神の声が降ってきたので、ええいと瞬発的に選んだのがこの5作品。①のあまりにもデカい愛と温かい音。②から④は気持ちのいいポップスを何も考えずに。⑤は単に最近のお気に入り。(あれ、正月あんまり関係ない......)。ひとつだけ言うなら、普段、自分が聴いている音楽と、お茶の間に受け入れられている(ということにされている)ポップス/歌謡曲との距離を嫌でも考えさせられるのが、この年末年始というシーズンの個人的なお約束だったような気がします。みなさま、よいお年を。来年もよろしくお願いします!

橋元優歩
1. Pantha du Prince / Black Noise / Rough Trade
2.M. Geddes Gengras / Title Test Leads / Holy Mountain
3. AKB48 / AKB48 in TOKYO DOME~1830mの夢~スペシャルBOX / AKS
4.吉松隆 / NHK大河ドラマ《平清盛》オリジナル・サウンドトラック 其の二 /日本コロムビア
5.Inc. / 3EP / 4AD

1と5は、帰省の新幹線で。越後湯沢からは特急になるんですが、裏日本の雪原とPanthaの相性は半端ないです。Inc.も薄墨色のR&Bというか、余白がきわだつ音使いやビート感覚が、新幹線の静かなスピードをさらに加速し、窓外を叙情的なエンドロール風に変換してくれるはず......。ベストウィッシュ。よい旅を。

2は大掃除用。経験的に4つ打ちは掃除に向かないです。そしてアンビエントだと床拭きのときなんとなくへこむ。サン・アローとコンゴスのあれのもうひとりの重要人物、ゲングラスさんソロのこのタイトル・トラックは、そのあいだをすばらしく埋めてくれます。3拍めに鍵がある。

3はガチで正月休みにと思い。4は最終回の余韻をまだひきずっているため。現時点で4は未購入ですが、ボカロver.とうわさの"遊びをせんとや"は本作収録。しかし "タルカス"・ブームこなかったですね! クラウトロックがヤングに絶大な影響力を及ぼしているのに対し、ブリティッシュというかシンフォニック系はまったくスルーされている印象です。作中ではとてもキマっています。

本年もありがとうございました。

Photodisco
1.Def Leppard / Animal / Mercury
2.THE WiLDHEARTS / Just In Lust / Eastwest
3.FIREHOUSE / Here For You / Sony
4.Dizzy Mizz Lizzy / Find My Way / EMI
5.SKID ROW / Monkey Business / Atlantic

正月、実家に帰省し、何か音楽を聴こうかなと思うと、いつも聴く音楽は、東京に送っているため、実家のCDラックを見ると、ジャンルで言うところのHR/HMが多く、正月は、HR/HMで年を迎えることが定番となっております。
正月は年の初め、学生時代、初めて影響を受けたHR/HM。
"初心忘るべからず"的なトラックを選びました。

ほうのきかずなり(禁断の多数決)
1.岡本太郎 / 芸術と人生 / NHKサービスセンター
2.The Flaming Lips / Race For The Prize / Warner
3.Lou Reed / Walk on the Wild Side / RCA
4.Prefab Sprout / The Best of Prefab Sprout : A life of Surprises / Sony
5.友部正人 / はじめぼくはひとりだった / 友部正人オフィス

新年を迎えるにあたって気持ちを引き締めるため、まずは岡本太郎の声と言葉を聞くようにしています。太郎の言う「芸術は爆発だ!」という言葉がとにかく大好きで、リップスの『レイス・フォー・ザ・プライズ』はまさに大爆発サウンド。「安全な道と険しい道で迷った場合は険しい道を選べ」と、太郎の言葉にもあるように、ルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」を聴いて新年から気を引き締めます。

NaBaBa
1.Dishonored (Bethesda Softwork発売 Arkane Studios開発 / 対応機種Xbox360・PS3・PC)
2.Hotline Miami (Devolver Digital発売 Dennaton Games開発 / 対応機種PC)
3.Far Cry 3 (Ubisoft発売・開発 / 対応機種Xbox360・PS3・PC)
4.Hawken (Meteor Entertainment発売 Adhesive Games開発 / 対応機種PC)
5.Thirty Flights of Loving (Blendo Games発売・開発)

気がつくともう年の瀬ですが、ゲーマー的にはこの年末年始が色々な意味で年間最大の狙い時。Steam等のデジタル販売サイトでは破格の大規模セールが行われるので絶好の買い時ですし、社会人にとっては腰を据えてゲームに打ち込める、数少ない機会でもあります。

そんなわけで最近発売された作品の中から、とくにじっくり遊びたいものを中心に5つほど取り上げさせていただきました。

『Dishonored』は以前連載でも取り上げさせていただいた『Deus Ex』をルーツとした作品。多層構造のマップを自分なりに攻略できる戦略性の高さに、様々な特殊能力を駆使した今時の即興性が組み合わさったゲーム・デザインが特徴で、永らく途絶えていた一人称ステルスゲームを見事現代に復活させました。Viktor Antonovが手がけたアートワークも素晴らしく、個人的に今年のGame of the Yearは本作に決まりです。
https://www.youtube.com/watch?v=-XbQgdSlsd0

『Hotline Miami』は連載の方でも取り上げたのでいまさら言うことはありませんが、それでもなおお薦めしたい一押しタイトルです。シンプルな内容ながらゲームデザイン、ストーリー、ヴィジュアル、音楽と全ての要素が調和していて、ひとつとして無駄がない。ゲームとして卓越していると共に、表現作品としても非常に質が高いと思っています。続編の開発も発表され今後も楽しみな作品ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=6OJ51PG0swE

『Far Cry 3』は名作『Far Cry』と迷作『Far Cry 2』に続くシリーズ3作目のゲリラ戦FPS。ジャングルを舞台に賢い敵AIを相手にゲリラ戦を挑んでいくコアのコンセプトはそのままに、前作のわざとなのかと思うくらいの要素の無さを改善し、いろいろな遊びを詰め込み順当な進化を果たしています。南国の島が舞台で一見すると明るい雰囲気ですが、その実『地獄の黙示録』を下敷きにしているのであろう、全能感の暴走をテーマにしたストーリーにも注目です。
https://www.youtube.com/watch?v=CFll8IVLMVw

『Hawken』はMechを操縦して戦うのが特徴のオンラインFPS。まず何よりもインディーズ離れしたアートワークのレベルの高さが注目点で、マシーネンクリーガーを彷彿させるMechがガシャンガシャン言いながら戦う、ある意味そのロマンが全てと言ってもいい作品。基本プレイは無料なのもお薦めしやすい点ですね。現在オープンベータテスト中で、ゲームバランスは正直まだ詰め切れていない印象ですが、ここから完成度が上がりもっと化ける事を期待しています。
https://www.youtube.com/watch?v=Is9nujmgPBo

『Thirty Flights of Loving』はたった15分で終わる、じっくりとは全く正反対のゲーム。主観視点でのストーリー・テリングのみに特化しており、その意味でゲームと呼ぶべきかどうかも疑わしいですが、表現されているものは既存のゲームに対する明確なアンチテーゼです。過度な演出やいっさいの説明を廃し、行間を読ます内容なのがユニーク。この手の作品のマスターピースにまでは至っていませんが、ひとつの試みとしては興味深い。同梱される前作『Gravity Bone』と併せてお薦めの作品です。
https://www.youtube.com/watch?v=5y1P2BUCeuc

これらのなかの一部は、今後連載の方でも詳細なレヴューをしていきたいと思っていますのでお楽しみに。それでは来年もよろしくお願い致します。

野田努
1.Le Super Biton National De Segou / アンソロジー / Kindred Sprits/カレンティート
2.パブリック娘。 / 初恋とはなんぞや / 自主
3.ジェイク・バグ / ライトニング・ボルト / ユニバーサル
4.Sex Pistols / Never Mind The Bollocks / Virgin
5.Echo And The Bunnymen / Crocodiles / Korova

 20代~30代は、毎年、年末年始はクラブ・イヴェントをハシゴしたものだが、子供が生まれてからは、そういう生活から足をあらったので(子供を女房や親に預けて遊びにいける身分ではないため)、40代以降はもっぱら実家でテレビを見ながら親兄弟たちと会話しているという極めて平凡な時間を過ごしている。
 大晦日は実家の掃除を手伝って、年越しソバを食べて、年が変わったら近所の寺で除夜の鐘の叩いて、お参り。それから寝て、起きて、雑煮を食べて、清水エスパルスが天皇杯の決勝戦に残っていたなら最高だったのだが......しかし、どこのチームであろうと、元旦の1時からはサッカーを見ている。

 それから女房の実家に挨拶に行って、安倍川で凧を上げたり、地元の友だちに会ったりとか、年末年始はなんだかんだで忙しいので、音楽を聴いている時間はない。まあ、強いて思案するなら、コスモポリタンたる小生は、年末年始はなるべくワールドな感じで迎えたいといったところか。シュペール・ビトン・ナシオナル・ド・グゼーはここ数年ヨーロッパに再発掘されたマリのバンドで、新年を迎えるにはほどよい陽気さ、清々しさがある。まだ一度しか聴いてないし、実家でしっかり聴き直したい。
 それから何を聴こうかな......。考えてみれば、実家には自分のレコードもない。芸能人が出ているような番組を見ることもない。たまには音楽を聴かない生活も新鮮だ。他には、山を登ったりとか。読書したりとか......。

 もし自分がいま独身か未婚で、東京に住んでいる人間だったらクラブに行って4つ打ちを浴びていたんだろう。元旦の明け方にそのまま明治神宮まで行っていた頃が、遠い昔のことにように思える。

 他に......正月に聴きたい音楽を考えてみる。まずはゆとり世代の最終兵器、パブリック娘。の「初恋とはなんぞや」だ。そして、シングル曲というものの魅力、シングル主義の面白さをあらためて証明したジェイク・バグの「ライトニング・ボルト」。そして、自分を見つめ直すという意味でセックス・ピストルズの『ネヴァー・マインド・ザ・ボロックス』も聴いてみたい。もう1枚は、訳あってこのところ聴きまくっているエコー&ザ・バニーメン。その理由は来年明かしましょう。
 それではみなさん良いお年を。

松村正人
1.倉地久美夫 / 太陽のお正月 / きなこたけ
2.高橋アキ、クロノス・クァルテット / ピアノと弦楽四重奏曲(モートン・フェルドマン) / Nonesuch
3.前野健太 / オレらは肉の歩く朝 / felicity
4.The KLF / Chill Out / KLF COMMUNICATION
5.Kraftwerk / Autobahn / Vertigo

 私は十二歳の元旦に車に轢かれ、ラッキーにもほんの半歩の差で死ななかった。それがどうも心的外傷になったようで、外にいると死ぬ気がするから正月は出歩かない。カウントダウンにも初詣にも行かない。せめて神社に行ければ、モータリゼーションがこの世から消えてなくなりますようにと祈れるのに。ただ私はじっとしているだけだが、そんなとき部屋に流す音楽は揺らぎがすくないほうがいいのだけれども、どこかに歪みを求めてしまうのは反復強迫なんスかね。

三田格(関東連合
1.シー・シー・シー(クラークス)
2.ヨー・ヨー・ヨー・ヨー(スパンク・ロック)
3.ウー・ウー(イシット・ムジーク)
4.ガ・ガ・ガ・ガ(RCサクセション)
5.ツ・ツ・ツ(カビヤ)

おおお。

内田学 a.k.a. Why Sheep?
1. ベートーベン / 交響曲第9番『合唱』 フルトヴェングラー&バイロイト(1951 バイエルン放送音源) / EMIミュージック・ジャパン
2. U2 / Where the Streets Have No Name(約束の地) / Universal International
3. Ashra(Manuel Gottsching )/ Sunrain / EMI Europe Generic
4. 佐野元春/ヤング・ブラッズ/エピックレコードジャパン
5. モーツアルト/クラリネット協奏曲(演)ベニー・グッドマン、ミュンシュ&ボストン響、ボストン・シンフォニー四重奏団 /Sony Classical Originals

クリスマスで燃え尽きてしまうので、とくに正月を意識して音楽を聴くことはないんだけど、第九で年またぎは儀式化してますね。ちなみに23時9分10秒あたりから第一楽章をスタートすると、年越しした瞬間に第四楽章の「歓喜の歌」の冒頭のコントラバスが静かに聴こえはじめますのでぜひお試しを! 最後のモーツアルトのしかもベニー・グッドマンのクラリネット協奏曲は毎年正月に父がかけてたから。なぜか理由は知らないが......。あ、そういえば僕は元旦生まれなんでした。

2012 Top 20 Japanese Hip Hop Albums - ele-king

 2012年の日本のヒップホップ/ラップのベスト・アルバム20を作ってみました。2012年を振り返りつつ、楽しんでもらえれば幸いです!!

20. Big Ben - my music - 桃源郷レコーズ

 スティルイチミヤのラッパー/トラックメイカー、ビッグ・ベンのソロ・デビュー作。いま発売中の紙版『エレキング Vol.8』の連載コーナーでも紹介させてもらったのだが、まずは"いったりきたりBLUES"を聴いて欲しい。『my music』はベックの「ルーザー」(「I'm a loser baby so why don't you kill me?」)と同じ方向を向いている妥協を許さないルーザーの音楽であり、ラップとディスコとフォークとソウル・ミュージックを、チープな音でしか表現できない領域で鳴らしているのが抜群にユニークで面白い。

Big Ben"いったりきたりBLUES"

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19. LBとOTOWA - Internet Love - Popgroup

 いまさら言う話でもないが、日本のヒップホップもフリー・ダウンロードとミックステープの時代である。ラッパーのLBとトラックメイカーのOTOWAが2011年3月にインターネット上で発表した『FRESH BOX(β)』は2ケ月の間に1万回以上のDL数を記録した。その後、彼らは〈ポップグループ〉と契約を交わし、フィジカル・アルバムをドロップした。「FREE DLのせいで売れないとか知ったこっちゃない/これ新しい勝ち方/むしろ君らは勉強した方がいいんじゃん?」(『KOJUN』 収録の「Buzzlin` 2」)と、既存のシーンを挑発しながら、彼らはここまできた。ナードであり、ハードコアでもあるLBのキャラクターというのもまさに"いま"を感じさせる。

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18. Goku Green - High School - Black Swan

 弱冠16歳のラッパーのデビュー作に誰もが驚いたことだろう。そして、ヒップホップという音楽文化が10代の若者の人生を変えるという、当たり前といえば、当たり前の事実をリアルに実感した。money、joint 、bitchが並ぶリリックスを聴けばなおさらそう思う。そうだ、トコナ・XがさんぴんCAMPに出たのは18歳の頃だったか。リル・諭吉とジャック・ポットの空間の広いゆったりとしたトラックも絶妙で、ゴク・グリーンのスウィートな声とスムースなフロウがここしかないというところに滑り込むのを耳が追っている間に最後まで聴き通してしまう。

Goku Green"Dream Life"

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17. Zen La Rock - La Pharaoh Magic - All Nude Inc.

 先日、代官山の〈ユニット〉でゼン・ラ・ロックのライヴを観たが、すごい人気だった! いま東京近辺のクラブを夜な夜な盛り上げる最高のお祭り男、パーティー・ロッカーといえば、彼でしょう。つい最近は、「Ice Ice Baby」という、500円のワンコイン・シングルを発表している。ご機嫌なブギー・ファンクだ。このセカンド・アルバムでは、ブギー・ファンク、ディスコ、そしてニュー・ジャック・スウィングでノリノリである。まあ、難しいことは忘れて、バカになろう!

Zen La Rock"Get It On"

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16. Young Hastle - Can't Knock The Hastle - Steal The Cash Records

 ヤング・ハッスルみたいなユーモラスで、ダンディーな、二枚目と三枚目を同時に演じることのできるラッパーというのが、実は日本にはあまりいなかったように思う。"Spell My Name Right"の自己アピールも面白いし、日焼けについてラップする曲も笑える。ベースとビートはシンプルかつプリミティヴで、カラダを震わせるように低音がブーッンと鳴っている。そして、キメるところで歯切れ良くキメるフロウがいい。もちろん、このセカンド・アルバムも素晴らしいのだけれど、ミュージック・ヴィデオを観ると彼のキャラクターがさらによくわかる。2年前のものだけど、やっぱりここでは"V-Neck T"を。最高!

DJ Ken Watanabe"Hang Over ft.Young Hastle, Y's, 十影, Raw-T"

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15. MICHO - The Album - self-released

 フィメール・R&Bシンガー/ラッパー、ミチョのミックステープの形式を採った初のフル・アルバム。凶暴なダブステップ・チューン「Luvstep(The Ride)」を聴いたとき、僕は、日本のヤンキー・カルチャーとリアーナの出会いだとおののいた。さらに言ってしまえば......、ミチョに、初期の相川七瀬に通じるパンク・スピリットを感じる。エレクトロ・ハウスやレゲエ、ヒップホップ/R&Bからプリンセス・プリンセスを彷彿させるガールズ・ロックまでが収められている。ちなみに彼女が最初に発表したミックステープのタイトルは『恨み節』だった。凄まじい気合いにぶっ飛ばされる。

Download

14. D.O - The City Of Dogg - Vybe Music

 田我流の『B級映画のように2』とはまた別の角度から3.11以降の日本社会に大胆に切り込むラップ・ミュージック。D.Oは、「間違ってるとか正しいとか/どうでもいいハナシにしか聞こえない」("Dogg Run Town")とギャングスタの立場から常識的な善悪の基準を突き放すものの、"Bad News"という曲では、「デタラメを言うマスコミ メディア/御用学者 政治家は犯罪者」と、いち市民の立場からこの国の正義を問う。"Bad News"は、震災/原発事故以降の迷走する日本でしか生まれ得ない悪党の正義の詩である。ちなみに、13曲中8曲をプロデュースするのは、2012年に初のアルバム『Number.8』)を完成させ、その活躍が脚光を浴びているプロダクション・チーム、B.C.D.M(JASHWON 、G.O.K、T-KC、LOSTFACE、DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH)のJASHWON。

D.O"悪党の詩"

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13. Evisbeats - ひとつになるとき - Amida Studio / ウルトラ・ヴァイブ

 心地良いひと時を与えてくれるチルアウト・ミュージックだ。タイトルの"ひとつ"とは、世界に広く開かれた"ひとつ"に違いない。アジアに、アフリカに、ラテン・アメリカに。元韻踏合組合のメンバーで、ラッパー/トラックメイカーのエビスビーツは、4年ぶりのセカンドで、すべてを優しく包み込むような解放的な音を鳴らしている。彼にしかできないやり方でワールド・ミュージックにアプローチしている。鴨田潤、田我流、チヨリ、伊瀬峯之、前田和彦、DOZANらが参加。エビスビーツが自主でリリースしているミックスCDやビート集も素晴らしいのでぜひ。

Evisbeats"いい時間"

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12. BRON-K - 松風 - Yukichi Records

 これだから油断できない。年末に、SD・ジャンクスタのラッパー、ブロン・Kのセカンド・アルバムを聴けて本当に良かった。こういう言い方が正しいかはわからないが、クレバの『心臓』とシーダの『Heaven』に並ぶ、ロマンチックで、メロウなラップ・ミュージックだ。ブロン・Kはネイト・ドッグを彷彿させるラップとヴォーカルを駆使して、日常の些細な出来事、愛について物語をつむいでいく。泥臭く、生々しい話題も、そのように聴かせない。オートチューンがまたいい。うっとりする。長い付き合いになりそうなアルバムだ。

BRON-K"Matakazi O.G."

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11. Soakubeats - Never Pay 4 Music - 粗悪興業

 新宿のディスク・ユニオンでは売り切れていた。タワー・レコードでは売っていないと言われた。中野のディスク・ユニオンでやっと手に入れた。これは、トラックメイカー、粗悪ビーツの自主制作によるファースト・アルバムである。「人生、怒り、ユニークが凝縮された一枚」とアナウンスされているが、怒りとともにどの曲にも恐怖を感じるほどの迫力がある。 "ラップごっこはこれでおしまい"のECDの「犯罪者!」という含みのある叫び方には複数の意味が込められているように思う。シミラボのOMSBとマリア、チェリー・ブラウンは敵意をむき出しにしている。"粗悪興業モノポリー"のマイク・リレーは、僕をまったく知らない世界に引きずり込む。ちょっと前にワカ・フロッカ・フレイムのミックステープ・シリーズ『Salute Me Or Shoot Me』を聴いたときは、自分とは縁のないハードな世界のハードな音楽だと思っていた。このアルバムを聴いたあとでは、音、態度、言葉、それらがリアリティを持って響いてくる。そういう気持ちにさせるショッキングな一枚だ。

粗悪興業公式サイト

10. AKLO - The Package - One Year War Music / レキシントン

 「カッコ良さこそがこの社会における反社会的/"rebel"なんです」。ヒップホップ専門サイト『アメブレイク』のインタヴューでアクロはそう語った。アクロが言えば、こんな言葉も様になる。2012年に、同じく〈One Year War Music〉からデビュー・アルバム『In My Shoes』を発表したSALUとともに、ひさびさにまぶしい輝きを放つ、カリスマ性を持ったトレンド・セッターの登場である。日本人とメキシコ人のハーフのバイリンガル・ラッパーは初のフィジカル・アルバムで、最高にスワッグなフロウで最新のビートの上をハイスピードで駆け抜ける。では、"カッコ良さ"とは何か? 最先端のUSラップを模倣することか? その答えの一つがここにある。

AKLO"Red Pill"

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9. ECD - Don't Worry Be Daddy - Pヴァイン

 このアルバムのメッセージの側面については竹内正太郎くんのレヴューに譲ろう。"にぶい奴らのことなんか知らない"で「感度しかない」とリフレインしているように、ECDは最新のヒップホップの導入と音の実験に突き進んでいる。そして、このアヴァン・ポップな傑作が生まれた。イリシット・ツボイ(このチャートで何度この名前を書いただろう)が、サンプリングを大幅に加えたのも大きかったのだろう。USサウスがあり、ミドルスクールがあり、エレクトロがあり、ビッグ・バンド・ジャズがあり、"Sight Seeing"に至ってはクラウド・ラップとビートルズの"レヴォリューション9"の出会いである。

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8. Kohh - Yellow T△pe - Gunsmith Productions

 Kohh & Mony Horse"We Good"のMVを観て、ショックを受けて聴いたのがKohhのミックステープ『Yellow T△pe』だった。「人生なんて遊び」("I Don`t Know")、「オレは人生をナメてる」("Certified")とラップする、東京都北区出身の22歳のラッパーのふてぶてしい態度は、ちょっといままで見たことのないものだった。しかし、ラップを聴けば、Kohhが音楽に真剣に向き合っているアーティストであることがわかる。シミラボの"Uncommon"のビートジャックのセンスも面白い。また、"Family"では複雑な家庭環境を切々とラップしている。"Young Forever"でラップしているのは、彼の弟でまだ12歳のLil Kohhだ。彼らの才能を、スワッグの一言で片付けてしまうのはあまりにももったいない。

Boot Street Online Shop

7. Punpee - Movie On The Sunday Anthology - 板橋録音クラブ

 いやー、これは楽しい! パンピーの新曲12曲とリミックス3曲が収録された、映画をモチーフにしたミックスCDだ。パンピーのポップ・センスが堪能できる。"Play My Music"や"Popstar"では、珍しくポップな音楽産業へのスウィート・リトル・ディスをかましている。そこはパンピーだから洒落が効いている。もうこれはアルバムと言ってもいいのではないか。ただ、このミックスCDはディスク・ユニオンでの数量限定発売で、すでに売り切れているようだ。ポップ・シーンを揺るがす、パンピーのオリジナル・ソロ・アルバムが早く聴きたい!

diskunion

6. ERA - Jewels - rev3.11( https://dopetm.com/

 本サイトのレヴューでも書いたことだけれど、この作品はこの国のクラウド・ラップ/トリルウェイヴの独自の展開である。ドリーミーで、気だるく、病みつきになる気持ち良さがある。イリシット・ツボイがプロデュースした7分近い"Get A"が象徴的だ。"Planet Life"をプロデュースするのは、リル・Bにもトラックを提供しているリック・フレイムだ。エラの、ニヒリズムとデカダンス、現実逃避と未来への淡い期待がトロリと溶けたラップとの相性もばっちりだ。インターネットでの配信後、デラックス版としてCDもリリースされている。

ERA feat. Lady KeiKei"Planet Life"

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5. 田我流 - B級映画のように2 - Mary Joy Recordings

 「ゾッキーヤンキー土方に派遣/893屋ジャンキーニートに力士/娼婦にキャバ嬢ギャルにギャル男 /拳をあげろ」。ECDを招いて、田我流が原発問題や風営法の問題に真正面から切り込んだ"STRAIGHT OUTTA 138"のこのフックはキラーだ。これぞ、まさにローカルからのファンキーな反撃! そしてなによりも、この混迷の時代に、政治、社会、個人、音楽、バカ騒ぎ、愛、すべてに同じ姿勢と言葉で体当たりしているところに、このセカンド・アルバムの説得力がある。ヤング・Gのプロデュースも冴えている。まさに2012年のラップ・ミュージック!

田我流 "Resurrection"

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4. キエるマキュウ - Hakoniwa - 第三ノ忍者 / Pヴァイン

 キエるマキュウは今作で、ソウルやファンクの定番曲を惜しげもなく引っ張り出して、サンプリング・アートとしてのヒップホップがいまも未来を切り拓けることを体現している。そして大の大人が、徹底してナンセンスとフェティシズムとダンディズムに突っ走った様が最高にカッコ良かった。「アバランチ2」のライヴも素晴らしかった! ここでもイリシット・ツボイのミキシングがうなりを上げ、CQとマキ・ザ・マジックはゴーストフェイス・キラーとレイクウォンの極悪コンビのようにダーティにライムする!

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3. MC 漢 & DJ 琥珀 - Murdaration - 鎖GROUP

 ゼロ年代を代表する新宿のハードコア・ラップ・グループ、MSCのリーダー、漢の健在ぶりを示す事実上のセカンド・アルバムであり、この国の都市の暗部を炙り出す強烈な一発。漢のラップは、ナズやケンドリック・ラマーがそうであるように、ドラッグや暴力やカネや裏切りが渦巻くストリート・ライフを自慢気にひけらかすことなく、クールにドキュメントする。鋭い洞察力とブラック・ユーモアのセンス、巧みなストーリー・テリングがある。つまり、漢のラップはむちゃくちゃ面白い! 漢はいまだ最強の路上の語り部だ。長く現場を離れていたベスの復帰作『Bes Ill Lounge:The Mix』とともに、いまの東京のひとつのムードを象徴している。それにしても、このMVはヤバイ......。

漢"I'm a ¥ Plant"

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2. QN - New Country - Summit

 QNは、この通算三枚目を作る際に、トーキング・ヘッズのコンサート・フィルム『ストップ・メイキング・センス』から大きなインスピレーション受けたと筆者の取材で語った。そして、ギター、ドラム、シンセ、ベース、ラッパーといったバンド編成を意識しながら作り上げたという。ひねくれたサンプリング・センスや古くて新しい音の質感に、RZAのソロ作『バース・オブ・ア・プリンス』に近い奇妙なファンクネスがある。そう、この古くて新しいファンクの感覚に未来を感じる。そして、今作に"新しい国"と名づけたQNは作品を作るたびに進化していく。

QN "Cheez Doggs feat. JUMA"

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1. OMSB - Mr."All Bad"Jordan - Summit

 凶暴なビート・プロダクションも楽曲の構成の独創的なアイディアも音響も変幻自在のラップのフロウも、どれを取っても斬新で面白い。こりゃアヴァンギャルドだ! そう言いたくなる。トラックや構成の面で、カニエ・ウェストの『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』とエル・Pの『Cancer for Cure』の影響を受けたというが、いずれにせよOMSBはこの国で誰も到達できなかった領域に突入した。そして、またここでもミックスを担当したイリシット・ツボイ(2012年の裏の主役!)の手腕が光っている。シミラボのラッパー/トラックメイカーの素晴らしいソロ・デビュー作。

OMSB"Hulk"

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 さてさて、以上です。楽しめましたでしょうか?? もちろん、泣く泣くチャートから外したものがたくさんあります。いろいろエクスキューズを入れたいところですが......言い訳がましくなるのでやめましょう! 「あのアルバムが入ってねえじゃねえか! コラッ!」という厳しい批判・異論・反論もあるでしょう。おてやわらかにお願いします!

 すでにいくつか、来年はじめの注目のリリース情報が入ってきています。楽しみです。最後に、宣伝になってしまって恐縮ですが、ここ10年弱の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした拙著『しくじるなよ、ルーディ』も1月18日に出ます。2000年から2012年のディスク・レヴュー60選などもつきます。どーぞ、よろしくお願いします!

 では、みなさま良いお年を!!!!

Hidenori Sasaki(zoo tapes) - ele-king

 2011年からスタートした佐々木秀典によるAmbient、Drone、Noise、Industrialカセット・レーベル〈zoo tapes〉、Drone Chart。
 80年代から10年代まで拡散、発展するimprovised/drone/noise recommend、東京のシーンを中心に2012年入手可能な盤をご紹介。
 取り扱いshopはArt into Life、Meditations、S.O.L sound、Futarri CD shop、P.S.F. Records Modern Music、NEdS等。
 〈zoo tapes〉は2012年Festival Fukushima at Ikebukuro atelier bemstar を開催。(https://www.pj-fukushima.jp/festival/201208post-58.php
 同年より90年代のテクノの盤を紹介するトーク・ライヴを企画。
https://www.youtube.com/watch?v=iVpBRFAEmxQ

https://www.discogs.com/artist/Hidenori+Sasaki
https://www.youtube.com/user/hidenorisasaki1980
https://twitter.com/ssk_hidenori
https://www.facebook.com/zootapes
https://zootapes.tumblr.com/

Drone Chart


1
Various - Captured Ambient Cassette - Zoo Tapes
  droneの状況の紹介の前に、現在も続く東京音響noise、improvisedシーンを忘れてはならない。自身の活動もここの影響下からスタート、2007年都内でlive活動を行っていた頃、盆の窪というacoust free improvised trioと出会う。
 自分が参加していたセッションMetaphoricは当時まったくお客さんの反応を得られなかった。盆の窪もまた同じ。お客さんの大半は無反応、物事のはじまりは大抵このような状況なのだろう。
 2012年時点でそのことを記録に留めておきたく自身のソロ名義でSFDD、盆の窪から現在DUOになったセッションをカセットに収めた作品。
 B面収録はsonny+starcuts、Kyosuke Takayasu(bemstar record)、drone、free improvised、00年前後の音響noise、post classicalな要素を持った自身〈zoo tapes〉のオムニバス・カセット。free improvised シーンは現在、水道橋Futarri CD shop,l-e,等で体感できる。

2
Metaphoric - Confirmed Lucky Air CD - Kawagoe New Sound
  improvisedの影響下からスタートした活動のなかでMetaphoricというguitar duoのセッションに録音も含めて参加、2008年頃から録音作業中心。そのなかでUKのdroneシーンの存在を知る。Mirror、Andrew Chalk、Darren Tate、Colin Potter等、彼らの作った実験的なドローン・サウンドを多く聴いていた。自身のサウンド・イメージはfree improvisedからUK drone soundへ、Metaphoricの録音素材を編集して作り上げたambient/drone作品、1st editionのリリースは2009年。
 このアルバム1曲目の"Torimo"はremixが存在する。remixはCeler、Stephan Mathieu、Todd Carter(Tv Pow)、remixの対応にバックアップしてくれたNature Blissの重要度もここに記しておきたい。

3
Reizen - 2nd CD - Self-released
  自身の活動中に同じような思考を持ったアーティストは? とArt into Life サイトで知ったNerae,そのメンバーだったReizen(guitar)を紹介したい。2009~10年頃、当時都心の知人でAnderw Chalkと言って通じるもしくは注目しているのはNerae彼らだけだった。00年代日本人の作ったdrone作品で極めて重要なアーティストと言っても大袈裟ではないと思う。
 その後ソロになったReizenの2nd(self release)。静寂のなかの彼の素晴らしい演奏の説明は各ショップのコメントにお任せする。2012年現在は2nd editionとして入手可能、他ソロ名義では1st、3rdとリリース。
 東京は四谷、喫茶茶会記、江古田Flying tea potでのVeltz(VLZ produkt)との共同企画を中心にライブ等多くの活動を行っている。

4
Diesel Guitar - Stream Of Lights CD - F.M.N Sound Factory
  Reizenとのdrone推薦盤の話のなかで「日本が誇る知られざるギター・ドローニスト、Diesel Guitarを評価することだけは忘れないでほしい」彼の言葉である。Diesel Guitar、Reizenは自身の企画で招聘してライブを行っていた。P.S.F. Records Modern Musicにて2タイトル購入可能。

5
Hakobune - Recalling My Insubstantial Thoughts LP - Tobira Records
  京都のMeditationsで働いていた経歴を持つHakobune。2011年に彼が東京に出てきたことはとても重要、彼の作り出す音、存在は今後多くの若者への影響、指針となるだろう。更にはReizen+Hakobuneの二人が都内でライブ「音ほぐし」を主宰していることはとても重要(四谷、喫茶茶会記にて)。
 droneいやこの作品からは+ambientなサウンドが聴こえてくる。彼がvinylフォーマットで表現しようとしたもの、そのサウンドに身をゆだねよう。多作である彼の作品からvinylフォーマットでのサウンドを是非じっくり聴いていただきたい。Hakobuneの運営するlabel、〈Tobira Records〉からのリリース。

6
Various - Tokyo Flashback 8 CD - P.S.F. Records
  P.S.F. Recordsの重要性、このTokyo Flashback 8、そこにはReizen、Metaphoric他多くのサイケデリック感覚を持ったアーティストが参加している。
 しかし、ここで重要なのは多くのPSFに関連するアーティストの中Soldier Garageを1曲目に紹介したことのように思う。
 彼のギターはまるで「あのアーティスト」の音のようだ......と言われているがここでは伏せておきたい。
 Soldier Garageはその後〈P.S.F. Records〉からリリース。彼はジャケットのイラスト・デザインも手掛ける。

7
suzukiiiiiiiiii×youpy - sxy CD - Headz
  上記00年代improシーンを異端の立場で牽引していた鈴木康文+安永哲郎によるlap top duo VOIMAという存在も紹介しておきたい。なぜ異端と書いたか? それは2008年4月に六本木Super Delux行われたFtarri Festival出演の際、多くのimproviserがelectro acoustのスタイルのなか、彼らはlap top2台でのパフォーマンスだったからだ。当時いやいまでも同じだと思うのだがlap topのライブはパフォーマンスとして面白みに欠けるという指摘があるが、99年来日時に観たJim O'Rourkeのlap top、00年に観たCasey Riceのlap topはいまでも脳裏に焼き付いている。
 その鈴木氏が更にsuzukiiiii+youpy名義として2012年にリリースしたこの盤、全40曲!? からなる音響エレクトロノイズ。
 00年代free impro以降のサウンドを注意深く負わなくては現実を見失う。〈P-Vine〉から。
鈴木氏は六本木Super DeluxでSound Roomを主宰。安永哲郎氏も都内で多くの企画を行っている、安永哲郎事務室を主宰。

8
Takayuki Niwano - Surroundly CD - Kawagoe New Sound
  Metaphoricでguitarを担当、オリジナル・メンバーの庭野氏の最新作、Tower Recordの発行するfree magazine baunceでも取り上げられたが、ここでの庭野氏はギターにフォーカスを当てず、PC上での音作りに没頭したサウンドになっている。90年代から音作りを行っていたアーティストでなければ出せない音、こちらもノイズを出しているが不思議とテクノ、テクノ・ノイズ? テクノという感触が全編に渡って展開された作品。
 改めて彼の多岐にわたる活動、ギターの音色、フレーズすべて重要である。

9
Various - Utmarken 3xCassette - Utmarken
  ドローン後、北欧ノイズに遭遇し更にインダストリアルというキーワードに気がつく。日本で耳にするノイズとは別の側面を持つことに気がつく。個人的に今年発見した海外の盤を1点紹介したかった。やはりカセット・フォーマットは面白い。3本セットのケースなど現在東京では見たことがない。

10
Various - Tribute To MSBR LP - Urashima
  このトリビュート・アルバムを買うになった自分の立場に自覚的でなくてはならない。Japanoiseはまだまだ進化する。
 〈Urashima〉もまた北欧なのだ。2001年に青山CAYで観た「ノイズのはらわた」この企画で初めてノイズに触れたがそのショックをいまも引きずっている。

interview with Yo La Tengo - ele-king


Yo La Tengo - Fade
ホステス

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 1日限りではあるけれど「ザ・フリーホイーリング・ヨ・ラ・テンゴ」と題されたライヴで3年ぶりの来日を果たしたヨ・ラ・テンゴ。今回の来日公演は通常のライヴとは違い、通訳を介したQ&A形式で観客とのトークを挟みながら、その場のフィーリングで選曲を決めていくという特殊なスタイル。ヨ・ラ・テンゴのライヴといえば、本編で圧倒的なサウンドを奏でて観客をうっとりさせ、アンコール・タイムではリクエストを募ったり、嬉々として自分たちの好きな曲のカヴァーを披露したりして、アットホームな雰囲気を醸し出すのがいつもの流れなのだけれど、この日は観客とのQ&A(微笑ましい質問もあれば、マニアックな質問もあり)に半分くらいの時間を割いていることもあり、全編通してアンコール・タイムのような和やかな雰囲気。この晩、ステージにセッティングされた楽器はアコギ、ベース、シンプルなドラムセット(スネアとタム、それにシンバル)だけで、数曲演奏して客電がつき、質問タイムを挟み、また演奏するという構成は、いつものヨ・ラ・テンゴのステージを期待していた人にとっては肩透かしだったかもしれないが、コアなファンにとっては満足のいく極上の公演だった。

 その翌日、インディー・ロック界随一のおしどり夫婦であるアイラ&ジョージアに、今回のライブの裏話や、来年1月に出る新作について話をきくことができた。

 自分としては10年前くらいに書いていた曲のような感覚もあったりするし。自分たちでそれらの違いを発見したり、説明したりするのが難しいだけなのかもしれないわ。

昨晩のライヴでは観客からの質問に、冗談で「プレゼントをくれないと質問に答えないよ」と言っておられたので、プレゼントを用意してきました。どうぞよろしくお願いします。

アイラ:ありがとう。昨日言っておいてよかった(笑)。

メンバーと同じシャツにヅラをかぶったコスプレ姿の通訳3人も笑いをとっていて、大活躍でしたね。あのアイディアは日本に来る前からあたためていたんですか?

アイラ:そうだよ。来日する前から考えていたアイディアだね。通訳を入れることで他の国でやるよりもショウのペースがゆるんだり、間が空いてしまったりしないようにと思って、メンバーひとりひとりに通訳をつけようっていうのは最初から考えていたんだけど、さらにショウを面白くするために通訳のみんなに僕たちのコスプレをしてもらおうと思ったんだ。実際にカツラとかを買いに行ったり、準備したりするのはすごく楽しかったよ。

アイラ役の通訳の方は、お揃いのボーダーのTシャツを着ていましたね。あれは日本で調達したんですか?

アイラ:そうだね。日本で買ったよ。

ユニクロですか?

アイラ:違うよ。H&Mだよ(笑)。自分が着ようとしていたTシャツを僕の担当の通訳の人に前もって伝えていたんだけど、彼はそんな種類のTシャツは持ってないって答えたんだ。実際に彼が当日着てきたTシャツを見たらそれでもまったく問題はなかったんだけど、招聘元のスマッシュのスタッフがこのコスプレのアイディアを気にいってくれて、どうせならお揃いのシャツを買いに行こうということでH&Mに連れてってくれて、そこで買ったんだ。

英語圏以外の国で今回みたいなQ&A形式のライブをやるのは大変そうだなと思っていたのですが、とてもユーモア満点で素敵なライブだったと思います。このような形式のショーを観て、思い浮かんだのがアメリカのテレビ番組『アクターズ・スタジオ』だったのですが、もしかして、これがインスピレーションの元になっているのですか?

アイラ:ハッハッハッハ。違うよ(笑)。それは思いもしなかったな。そこからアイディアをとったわけじゃないよ。他の国でやるとみんな好き勝手に同時にいろんなところから発言したり、おしゃべりしたりしていたりして、何が質問されているかまったくわからない状況が多いんだけど、昨日のライブを思い返してみると、みんなマナーがちゃんとしていて、きちんと挙手してマイクを持った人が質問する感じだったから、たしかに『アクターズ・スタジオ』っぽかったかもね。

 ※『アクターズ・スタジオ』......アメリカの俳優・監督・演出家らを養成する演劇の専門学校、アクターズ・スタジオが運営するテレビ番組。俳優・映画監督らをゲストに招き、同校の生徒を前に、インタヴューに答えるという形式。番組終盤には毎回決まった10の質問と、会場の学生からの質問に答える。日本では佐野元春が司会を務める『ザ・ソングライターズ』が近い雰囲気。

昨晩のトーク・セッションのなかで「新作では何か新しいことがしたかった」と言っていましたね。前々作の『アイ・アム・ノット・アフレイド・オブ・ユー・アンド・アイ・ウィル・ビート・ユア・アス』と前作の『ポピュラー・ソングス』はこれまでの集大成的なバラエティに富んだ内容でした。なかでも"ミスター・タフ"はファルセットで歌っていたり、"イフ・イッツ・トゥルー"はモータウンっぽいストリングスが入っていたりしていたので、ヨ・ラ・テンゴの新機軸はソウルっぽいサウンドなのかと思っていたのですが、新作で新しく取り入れた要素はありますか?

ジョージア:ちょっとこれまでと違うところもあるかもしれないけど、際立って新しい要素はそんなにないかなって思うわ。自分としては10年前くらいに書いていた曲のような感覚もあったりするし。自分たちでそれらの違いを発見したり、説明したりするのが難しいだけなのかもしれないわ。

アイラ:きみが言うように、たしかに"ミスター・タフ"とか"イフ・イッツ・トゥルー"みたいな曲はモータウンっぽい感じがするし、それが新機軸になっているっていう考えも理解できるよ。あの頃のアルバムの特徴を話すとすると、いろいろなジャンルっていうものをフォローしてみようって気持ちがあった時期だね。たとえば、"イフ・イッツ・トゥルー"とかはモータウンってコンセプトにもとづいて曲を書いてみようと思って、ストリングスを入れてみたりして、ジャンルをなぞっていた部分はあったんだけど、今回に関しては、特定のジャンルを意識するって感じじゃなくて、自分たちから自然に生まれてきた曲をそのまま収録した感じかな。

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いま、話をしていて考えていたんだけど、どうしてもっと早くにジョン(・マッケンタイア)といっしょにやらなかったのかなって思うよ。


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長年つきあいのあるプロデューサーのロジャー・マテノに変わって、新作ではトータスのジョン・マッケンタイアをプロデューサーとして迎えているそうですが、どのような経緯で実現したのでしょうか?

アイラ:はっきりとは覚えてないんだけど、スタジオで練習しているときに誰かがふとこのアイディアを思いついたんだ。ジョンとは20年以上の知り合いでこれまでいっしょに何かをしてないことが不思議なくらい仲がいいし、音楽的にもあうし、バンドみんなが賛成したよ。ジョンはほんとに忙しい人なんだけど、たまたま彼のスケジュールにちょうど空きがあったから実現したんだ。

長年、インディー・ロックを聴いてきた人たちにとってはこのコラボレーションは夢のようです。

アイラ:そうだね。いま、話をしていて考えていたんだけど、どうしてもっと早くにジョンといっしょにやらなかったのかなって思うよ。僕たちは映画のサントラを依頼されることも多いんだけど、いつも同じようなタイプの曲を求められることが多いんだ。全然違うジャンルの音楽を書けるし、書いてみたいのにね。よく考えてみたらそういう目で自分もジョンのことを見ていたかもしれなくて、トータスのファンだし、彼の音楽も大好きだけど、自分たちは全然トータスっぽくないからと思っていて、そういう固定概念のようなものに囚われていたんだけど、そこから離れて広い視野をもてるようになったことがジョンといっしょにやるきっかけになったかもね。

昨日披露された新曲は3曲ともゆったりとしたリズムでリラックスした曲調でしたね。ジョン・マッケンタイアとタッグを組んだということで、ポスト・ロックっぽい複雑なサウンドになっているのかもとイメージしていましたがいい意味で期待を裏切られました。

アイラ:たぶん、自分たちはポストロックみたいな複雑な拍子のカウントはできないから、ついていけないんじゃないかな(笑)。

ジョンはジャムセッションの段階から関わっていたのでしょうか? それともある程度、サウンドの方向性がまとまってからポスト・プロダクションを施すという形ですか?

ジョージア:彼は一度もわたしたちのジャムセッションには来てないのよ。ジョンはシカゴに住んでいて、私たちはホーボーケンに住んでいるから距離的な問題もあるし。レコーディングをはじめる前にほとんどの曲ができていて、そのデモをもって彼のスタジオに行って、そこからアルバムに向けて共同作業をはじめたから、実際にスタジオに行くまでは彼は曲を聴いていない状況だったの。

SOMAスタジオには膨大なヴィンテージ機材が所蔵されているそうですが、いろいろ試してみましたか?

ジョージア:もちろん。

アイラ:いつもは音楽を作るときに、どういうサウンドにしようとかは前もって考えないようにしていて、自分たちのフィーリングのままに曲を作るようにしているんだけど、今回はSOMAスタジオにあるロクシコードだけは絶対に使おうと決めていたんだ。

ロクシコードとは、どんな楽器なんですか?

アイラ:エレクトリック・ハープシコードの一種で、ハープシコードとオルガンのあいだのようなサウンドなんだ。サン・ラがよく使っていた楽器だよ。

 ※ロクシコード(Rocksichord)......60年代のヴィンテージ・キーボード。テリー・ライリーも『ア・レインボウ・イン・カーヴド・エア』で使用。最近のアーティストだとウィルコやステレオラブが使用。

8月くらいからツイッターにレコーディングの様子を知らせるツイートをしてましたね。機材の写真やソフ・ボーイのフィギュアの写真をアップしていましたが、あれはSOMAスタジオの写真だったんですね。あの写真を見たときは、ジョンがプロデューサーとして参加しているというのを知らなかったので、あとで知って、なるほどと思いました。

ジョージア:そうそう、そうなの(笑)。

 ※ソフ・ボーイ(SoF'BoY)......ジョン・マッケンタイアもメンバーのバンド、シー・アンド・ケイクのメンバーで、イラストレーターとしても活躍するアーチャー・プレウィットが作者のキャラクター。ヨ・ラ・テンゴならではユーモアで、新作へのヒントだったのかも。

ヨ・ラ・テンゴの曲は夕暮れどきや真夜中っぽい雰囲気を想像させる曲が多いと思います。メンバーが集まって行うジャム・セッションもこういった時間帯にやっているんですか?

ジョージア:いいえ。私たちはいつも15時くらいから集まってはじめるのよ。(笑)

アイラ:いつも曲を作るときは、その曲自体が自由になるようにしているから、聴いた人たちがいろいろ想像してさまざまな感想をもつんじゃないかな。たとえば、昨日のライブでやった曲とかも曲の中盤くらいにならないとその曲がどんなムードでどういう方向性になっていくのかも自分たち自身でもわからないくらいだし。昨日演奏した曲も別の場所でやるとちがうムードになったりすることもあるしね。

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昨日のライブでやった曲とかも曲の中盤くらいにならないとその曲がどんなムードでどういう方向性になっていくのかも自分たち自身でもわからないくらいだし。昨日演奏した曲も別の場所でやるとちがうムードになったりすることもあるしね。


Yo La Tengo - Fade
ホステス

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カヴァー曲に関しての質問です。ここ数年ではゾンビーズの"ユー・メイク・ミー・フィール・グッド"やトッド・ラングレンの"アイ・ソー・ザ・ライト"、キャロル・キングの"ユーヴ・ガッタ・フレンド"をカヴァーしていましたね。オーソドックスな選曲が増えているような気がしますが、最近はカヴァー曲のチョイスの基準は変わってきましたか? 昔はダニエル・ジョンストンやアレックス・チルトン、ビート・ハプニング、オンリー・ワンズ等、インディー寄りな選曲が多かった気がするのですが?

ジョージア:自分たちでも気づいてなかったんだけど、たまたまだと思うわ。まだリリースされてないけどタイムズ・ニュー・ヴァイキングのカヴァーもしているし。

アイラ:自分のなかで、いま挙げられたアーティストたちの境界線はなくて、たとえば、アレックス・チルトンもキャロル・キングのことをすばらしいソングライターだって公言していたように、ダニエル・ジョンストンもすばらしいと思うし、同じようにトッド・ラングレンもすばらしいと思うし。自分のなかではどっちがインディーとかいうような意識はないよ。

毎年やっているWFMUマラソンですが、リクエスト曲は事前に練習しているんですか?

ジョージア:リクエスト曲は事前にはわからないから練習できないのよ。

アイラ:リクエストが来てから演奏するまで数分しか時間がないから、その間にお互い話してみたり、音を鳴らしてみたりするだけだよ。

ジョージア:いちおう、ウォームアップを兼ねて練習スタジオでお互いに曲名を出しながら練習することはあるけど、実際にはリクエストでその曲がくることは少ないわね(笑)。

 ※WFMUマラソン......NYのネットラジオ局WFMUの運営資金を募るために、ヨ・ラ・テンゴが10年以上毎年行っているチャリティー・ライヴ。リスナーから寄せられたリクエスト曲に応えて演奏する生放送番組で、リクエストするには100ドル以上が必要。

今年に入ってから「ザ・ラヴ・ソング・オブ・R.バックミンスター・フラー」という特別なショーを何回かやっていますが、どのようなプログラムなのでしょうか?

アイラ:バックミンスター・フラーという人物に関するドキュメンタリー作品で、サム・グリーンという映像作家といっしょにはじめたプロジェクトなんだ。彼は近年、人々がスマートフォンとかそういったデバイスで映画を観ることに対していい感情をもっていなくて、劇場に足を運んで映画を観てもらいたいって意味合いを込めて、映像を流しながら、彼がナレーションをして、その横でバンドが演奏するライヴ・ドキュメンタリーという形式をやっているんだ。僕たちはその映像のために12曲のインスト曲を書き下ろしたんだ。自分たちのスケジュールに組み込みことが難しいから、そんなにしょっちゅうはできないけど。

 ※バックミンスター・フラー(The Love Song of R. Buckminster Fuller)・・・「20世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とも評されるアメリカの思想家、デザイナー、建築家、発明家。「宇宙船地球号」という概念・世界観の提唱者。デザイン・建築の分野では、ジオデシック・ドームやダイマクション地図、ダイマクション・ハウス(住宅のプロトタイプ)などを発明。

ヨ・ラ・テンゴのオフィシャル・サイト限定でジョージアのソロ作品がリリースされていますね。これはどんな作品ですか?

ジョージア: 20分間のギター・インスト1曲入りの12インチで、B面はドローイングが施されているわ。どっちかっていうとアート作品みたいな感じね。

アイラ:とても美しい作品だよ。

 ※ジョージアのソロ作品......リトル・ブラック・エッグ(Little Black Egg)という名義で500枚限定プレスの12インチ。ヨ・ラ・テンゴのオフィシャル・サイトのみで販売。

ジェームスは、はっぴいえんどや不失者、非常階段、Salyu等、日本のアーティストのレコードをたくさん買ったといっていましたが、あなたが日本で入手したレコードはどんなものがありますか?

アイラ:僕は今回、スパイダースの7インチを買ったよ。

ジョージア:裸のラリーズのすごい高いボックスセットは?

アイラ:あれは日本じゃないよ。何年か前だけどサンフランシスコで買ったんだよ。高かったけど、それだけの価値はあるよ(笑)。

ヨ・ラ・テンゴはこれまでにも数々の映画のサントラに曲を提供してきましたが、もし自分たちがスコアを担当できるとしたら、どの監督といっしょに仕事がしたいですか?

アイラ:最近の映画は音楽を全然気にしてなくて、音楽は後から取って付けたような感じの映画が多いけど、マーティン・スコセッシとかジム・ジャームッシュ、コーエン兄弟とかはとても音楽を気にしているから、そんな監督の作品に携われたら嬉しいな。でもコーエン兄弟はいつもいっしょに音楽を作っているパートナーがすでにいるから無理だよね。

昨日のライブの最後に「来年また来るよ」といっていましたね。楽しみにしています。

アイラ:ありがとう。

Alt-J - ele-king

 今年の英国の夏は肌寒かったので、上着が手離せなかった。
 思えば、むかしの英国はあんな感じだった。80年代にロンドンに住んでいた頃は、8月でもクラブに行くのにコートを着ていた覚えがある。しかし、地球の温暖化というのは本当なのか、近年は30度近くまで気温が上がっていたので、寒い英国の夏のことをすっかり忘れていた。
 そんな按配だったので、今年は海辺のリゾート地ブライトンも盛り上がらなかった。その侘しい夏のテーマ曲であったかのように、地元民がまったりとふきだまっているバーやカフェでかかりまくっていたのが、Alt-J(アルト・ジェイ)のデビュー・アルバムだった。
 いやらしい音楽だな。と、聴いた瞬間に思った。
 加えて、それは今年の夏に妙にしっくり来るサウンドであった。が、それは気温の低い夏に似合う、というより、英国の夏が寒かった時代を思い出させる音なんじゃないか。とも思った。そしてそれはいったい何故なんだろうと考えていた。

 エレクトロニカ、インディ・ロック、ダブステップ、モダン・フォーク、トリップ・ホップ、ギター・ポップなど、こちらのメディアが書いた彼らのレヴューを読むと、いずれも音楽のジャンルを称する言葉の羅列だ。最終的にはフォークステップという言葉に落ち着いたようだが、要するに、彼らの音楽は純雑種(そんな言葉があるとすれば)なのである。個人的には、エレクトロニカとギター・バンドが完璧な配合で結婚した音楽に聞こえるが、わたしが前述の「いやらしさ」を感じてしまうというのも、やはりこの結婚とか雑種とかいう、子作りを連想させる異種交合の匂いに起因するのかもしれない。
 彼らの音楽は「シネマティック」と評されることも多く、それぞれの曲に映画や書物、特定の人間に感情などのテーマが存在するそうで、文化系おタク青年らしく本人たちが進んで種明かしをしている。映画『レオン』に触発されたという曲には主人公の女の子の名前"Matilda"がそのままタイトルになっているし、"Breezeblocks"は、モーリン・センダックの絵本「かいじゅうたちのいるところ」に基づいているという。"Fitspleasure"は、Hubert Selby Jr.の著著「Last Exit To Brooklyn」がネタになっているらしい。
 しかし。どんなに文化的・芸術的背景を解説されても、彼らのサウンドから漂う性的な匂いは消えない。だいたい、絵本をヒントにしたという"Breezeblocks"にしろ、おもちゃのピアノの音なんか使ってみたところで楽曲そのものがいやらしくてしょうがないし(そもそも、「かいじゅうたちのいるところ」は、少年が夜の航海に出て大人になって帰ってくるというセックスの話ではないか)、"Tessellate"に至っては、暇を持て余したしょぼい大学生にしか見えない青年たちにどうしてこんな音楽が作れるのかと思うほど色っぽい。ギークの性のほむら。というやつをわたしは見くびっていたのだろうか。

 ところで、日本には草食系という言葉があるそうだが、英国では、草食化が進んだのは一般の男性ではなく、ロック界だったように思う。
「レディオヘッドとコールド・プレイの音楽はソウルレスだ」
 と言ったのはジョン・ライドンだが、このツートップとも言える巨頭バンドを系譜の始祖として、UKロックはクリーン・カットのインテリ君かメロディアスな泣き虫君かに大別されるようになった。Alt-Jなんかも、一見すればインテリ君そのものだし、実際、彼らをレディオヘッドと比較する評論家もいる。が、彼らの場合、そこに収めてしまうにはサウンドがあまりに不純すぎるのだ。
 2012年ベスト・アルバム特集号で彼らを5位に選んだ『NME』が、選評で「smart, sexy, baby-making music」と書いていたので、そう感じていたのはわたしじゃなかったのね。と思って笑ったが、しかし、実はこのbaby-makingという言葉は本質をぐっさりと突き刺しているかもしれない。

 異なるジャンルの音楽を次々と交尾させて全く新たな音楽(というベイビー)を作り出す。
 という手法は、ポスト・パンクの代表的音楽製造メソッドだった。それはとてもエキサイティングでリスキーで不埒なほど多様で、それ故とてもセクシーな音楽の時代だった。Alt-Jの1stは、サウンドこそ剥離しているものの、あの時代のバンドが発散していた猥雑な音の交尾臭を感じさせる。
 まるで80年代のように寒かった今年の夏、英国でAlt-Jがブレイクしたというのは偶然ではなかったかもしれない。
 2012年のUKはパンク前夜のようだったが、もはやこの国の大衆音楽シーンは打ち壊すものなど何もないほど崩壊しているので、来年はいきなりポスト・パンクな年になる可能性もある。
 Alt-Jの『An Awesome Wave(アン・オーサム・ウェイヴ)』は、そのブリリアントな予兆だったのかもしれない。

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