「PAN」と一致するもの

Special Talk : peepow × K-BOMB - ele-king


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

Blacksmoker

Hip HopExperimentalAbstract

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 目を閉じて想像したまえ。深夜、K-BOMBに呼び出され、マヒトゥ・ザ・ピーポーとの対談の司会を託された二木信の精神状態を。
 それはまるで……たまに電車で一緒の車両に乗り合わせる、名も知らぬあの美しき貴婦人から、いきなり電話をもらって、「いますぐ来て!」と言われるようなものだろう。そんなあり得ない、ウキウキした感情を以下の対談から読み取っていただけたら幸いである。
 もちろん賢明な読者には、これが先日〈Blacksmoker〉からリリースされたマヒトゥのラップ・アルバム『DELETE CIPY』に関する密談であることは、察していただいていることと思う。つまり、もう聴いている人はその余談として、まだ聴いていない人には聴くための契機としてある。

 まあ、悪名高きロック・バンド、下山のヴォーカリストのマヒトゥ(熱狂的なファン多し)が、名門〈Blacksmoker〉からK-BOMBをはじめとする素晴らしいトラックメイカーたちと共演していること自体が、すでに巷では話題となっているわけだが、そこでもっとも好奇心を掻き立てられることのひとつは、マヒトゥとK-BOMBがどのよう状態のなかで会話し、創造していったのかというそのプロセスなのだ。
 二木、この場にいられたお前が心底羨ましいぜ。(野田)

マサトはさ、靴下もさ、あってないんだ。オレと一緒なんだよね。──K-BOMB
たしかに揃ったことがないかもしれない。──peepow

二木:マヒトゥさんとK-BOMBが出会ったのはいつですか?

K-BOMB:わかんない。

peepow:あんまり思い出せないね、オレも。

K-BOMB:カルロス(・尾崎・サンタナ。GEZANのベース)に電話してみたら? 彼はそういうことを憶えている人だ。

二木:ライヴの現場?

peepow:ではない。

K-BOMB:わかるだろ? オレがいつも酔ってるのは。憶えてないな。KILLER-BONGに聞いてみたらいいんじゃねーか? 奴は家で寝てるよ。

二木:K-BOMBから見て、マヒトゥさんの才能とは?

K-BOMB:そういうのは、実のところよくわからない。魅力か。人物とか自由なとこ? かなぁ。

二木:自由とは?

K-BOMB:なんかスケボーにも近いような感じさ。

peepow:オレの〈Blacksmoker〉のイメージもスケボーのりにちょっと近い。好奇心の波みたいのがあって、いい風が吹いている。オレは人も場所もニュアンスでしか感じ取ってない感じがする。

K-BOMB:人といっぱい会うけどさ、才能って人物でしかないと思うんだ。そういうものの塊だと思う。目立つ、そういう雰囲気だ。

peepow:K-BOMBから最初「チャリ、かっこいいな」みたいな話をされたのを憶えてる。

K-BOMB:ママチャリでさ真っ赤に塗られててハンドルが片方無いんだ

二木:マヒトゥさんから見て、K-BOMBの表現者としての魅力は?

K-BOMB:オレとかさ、けっこう関西ノリなんだと思う。関西の人によく言われる。「K-BOMBくん、関西っぽいな」って。

peepow:いや、わかる。東京に来て、数字やデータみたいなもので足場を作ってる人が多いことにげんなりしていた時期にK-BOMBに会って、生き物感バーンって、純度あるなーって感じた。

K-BOMB:そういう軽いノリが似てんだと思うな。

peepow:恋に落ちる時もパッと一瞬目が合って、「あ、好きかも」ってなる。理屈や理由なんかそのだいぶん後でしょ。それは匂いやニュアンスとしか言えない。K-BOMBには細胞レベルの何かってやつを感じた。血なまぐさい獣の匂い。おいしそうなもの目の前に広がってたら、蛍光色でも1回つまんで食ってみる、みたいな感覚に近いな。ドキュメントがまじわるってことは。

K-BOMB:蛍光色っぽい感じだ。わかる?

peepow a.k.a マヒトゥ・ザ・ピーポー feat. K-BOMB「SUNDANCE」

二木:『Delete Cipy』を聴いたり、それこそ“SUNDANCE”のミュージック・ヴィデオを見ると、ふたりが色や感覚で何か感じ合っていることは伝わってくる。

K-BOMB:うん。そうだね。

peepow:利害とかじゃないすよ。

K-BOMB:でも一方で、数字も手にしとかないと、またその逆をというのもある。そういうところを無視してやっているようで、実のところ絡ませたい。そうじゃないとあんまり意味がない。それが数字を相手にした時の面白さなんじゃないか。

peepow:オレは〈Blacksmoker〉やK-BONBをアンダーグラウンドと思ったことはないですね。そういう文脈を超越しよう姿勢で数字と関わってる。いびつなストリート感でしょ。

K-BOMB:アンダーグランドだと言われるけどさ、俺もそういう感覚はまったくないんだ。ただちゃんとリスペクトもある。だからさ、試してる、やってみる、やりたい。ただ、それだけなんだ。

二木:その話につながると思うんですけど、マヒトゥさんはキレイな歌声も出せるし、上手く歌おうと思えばいくらでも歌えて、メロディアスなポップ・ソングも作れる人だと思うんですよ。ただ、今回のアルバムでも上手く歌ったり、ラップすることを追求してるわけじゃないですよね。そこが面白いなと。

K-BOMB:そういうことだと思う。オレにもそういう風に聴こえる。

peepow:ジキルとハイドじゃないけど、朝起きた時は世界も征服をできるかもしれないぐらいの無敵感でも、寝る前にはひとりぼっちで無気力で何もやる気が起きないことすらある。ひとつにキャラクターをまとめることなんて本当は誰も不可能なはずなんだ。オレはいろんな場所を歩いて、歌ったり、形にしながら、自分が思ってることを楽しみながら探してる。おれのなかにいる何人もの顔を解放してあげたいんだよね。だから、卑屈な感じとか悲壮感はない。結局、映画にした時にいちばんグッとくるほうを選ぼうって感覚あるな。最速で最短でキレイなゴールに行きたいわけじゃない。全感覚でいい匂いのするほうに流されてる。

K-BOMB:感覚は大事だよ。絵を描いても写真を撮っても、イイ感覚で見えてると違う。ナナメ感もあるけど、ちゃんとまっすぐしてる。そういう感覚なんだ。マサトはバランスがいいんじゃないか。

二木:さっきの歌の上手さの話で言えば、K-BOMBも上手くフロウするラップもできるわけじゃないですか?

K-BOMB:できる。

二木:でも、あえてやらないわけでしょ?

K-BOMB:やらない。やれちゃうからね、つまらない。オレがつまらないんだからさ、人を楽しませることができない。

peepow:だから、新しい正解のカタチみたいなのを落としたいっていうのはある。

K-BOMB:どんどん知りたいんだからさ、そこら辺が重要で感覚なんだろうね。

peepow:オレのK-BOMBの好きなところは、生き方としてK-BOMBというジャンルになっているところ。その人がそのまんま音楽の言葉とイコールにならないやり方は嘘だと思うから、そこはリスペクトあるね。オレも自分がやるんだから、全部正解って言わせるよ。それは当たり前のことなんだ。

K-BOMB:そういう感覚でチャレンジして、自分を持っている人がやれんだと思う。

peepow:今回『Delete Cipy』を作って、ヒップホップは簡単にできるもんじゃないなって感じた。ただ、ヒップホップは血や生き方や生活だと思うから、そういう意味で言えば、オレもある意味ヒップホップだと思う。自分のフィルターやノドを通ったものはすべてオレのカタチになっていくから。

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上手くなるっていうのは、下手になるっていうことでもある。だから、わざと変えていく。そうすりゃさ、オレははじめた時の気持ちが持続していく。オレがよく知らないものに触れることはラップをはじめた時と同じ感覚に戻ることなんだ。──K-BOMB


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

Blacksmoker

Hip HopExperimentalAbstract

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二木:今回マヒトゥさんがラップ・アルバムを作ろうと思ったのはなぜですか? 

peepow:成り行きだと思うんですけど、自分も最初からそうありたいと思ったんですよね。ただ、オレのラップは、ヒップホップの人が言うラップなのかはわからない。ただ、少なくともオレが純度100%であることは間違いない

K-BOMB:ラップでしょ。

二木:ラップですね。

K-BOMB:うん。ラップにね、定義はないんだよね。韻踏んでりゃラップなんだから。そうだろ?

二木:韻を踏んでればラップか。うん。

K-BOMB:違うの?

peepow:ラップって何なんすか?

K-BOMB:ラップって何なの?

二木:フロウするのがラップじゃないですか。

peepow:オレのアルバム、ラップなんですか?

K-BOMB:だったら、そうとうフロウしてるからね。

二木:ラップですよね。だから。

K-BOMB:そうだね。いいアルバムだよ。

二木:そもそも表現者、ミュージシャンとしてのマヒトゥさんの原点はどこにありますか? 例えば、ロックなのか、パンクなのか、ブルースなのか。

peepow:そのどれでもないですね。何にも考えずに生まれた瞬間は、自分の感情と直結して言葉やルールがまったくわからないのにフロウがバーッと出てくるわけじゃないですか。オギャーって泣いて生まれてくるあの一発目のフロウですよ。いろんなルールや人と会っていく中で上手いこと表現しようとしているけど、オレは最初の、何も考えずに生まれた瞬間に近づきたい感覚がある。失っちゃったものを取り返しにいきたい。

K-BOMB:上手くなるっていうのは、下手になるっていうことでもある。だから、わざと変えていく。そうすりゃさ、オレははじめた時の気持ちが持続していく。オレがよく知らないものに触れることはラップをはじめた時と同じ感覚に戻ることなんだ。だからさ、新しくはじめたことをラップのようにやるだけだよ。何も変わらないんだよね、オレは。気分も変わらない。何をやってもそのうち上手くなっちゃうからな。ふっ(笑)。

二木:それこそ『Delete Cipy』にはK-BOMBの他に、KILLER-BONG、LORD PUFF、KILLA-JHAZZが参加していますよね。とくにLORD PUFFとKILLA-JHAZZは久々登場じゃないですか。

K-BOMB:彼らが連絡して来たんだよ。やらせてくれと。仕方ないよ。

二木:久々に連絡して来たのはなぜ? 

K-BOMB:JUBEくんがコンタクト取ってたみたいだ。そうでしょ?

JUBE:KILLA-JHAZZやLORD PUFFだけでなく、BUN君、WATTER、GURU、そしてKILLER-BONG。狂ったメンバーが集まりました。

二木:LORD PUFFとKILLA-JHAZZはかなり久々じゃないですか?

K-BOMB:だいぶ久しぶりだな。LORD PUFFはカリフォルニア辺りに行ってたらしーし。

peepow:オレも気になるとこですね。

K-BOMB:K-BOMB、KILLER-BONG、KILLA-JHAZZは三つ子だからさ。LORD PUFFはイトコだけど。アナル・ファイタ(ANAL FIGHTER)もイトコなんだ。そーゆーコトになってる。

JUBE:ファイタはTHINK TANKのP……

K-BOMB:彼はエグゼクティブ・プロデューサーだよ。

二木:やはりマヒトゥさんのキャラクターと才能を見て、今回はKILLA-JHAZZとLORD PUFFだと。

K-BOMB:だいたいさ、ヤツらの曲もその場でパッと作って、その場でパッとマサトがラップを入れる感じだったんじゃないか。KILLER-BONGのことも全然わからないからさ。オレ、K-BOMBだからさ。彼らにまた後日インタヴューしたらいいんじゃないの? KILLER-BONGはいま徳島辺りに行ってるんじゃないの? 

二木:なるほどね。アルバム制作はマヒトゥさん主導で作っていった感じですか?

K-BOMB:KILLER-BONGは50曲ぐらい作ったけど、50曲渡すということは、そのすべては完成形じゃない。KILLER-BONGは、他にもっと完成度の高いトラックがあるのに、マサトが20%ぐらいの完成度のトラックでどんどん勝手に歌ってしまったんだと。「なんでそれで歌うの? こっちにもっといいトラックがあるじゃねぇか」と。

peepow:食べ物だってすげぇおいしそうなスパイスの効いたカレーじゃなくて、パーキングエリアのカレーが食いたい時だってある。理屈じゃないんですよ。

K-BOMB:だから、KILLA-JHAZZやLORD PUFFがスパイスを注入する役だ。トマトとかセロリとか。ただ、KILLER-BONGは大変だったみたいだな。ライヴばかりの生活の中50曲近く作って渡すのは。

peepow a.k.aマヒトゥ・ザ・ピーポー feat. K BOMB 「blue echo」

二木:BUNさんがトラックを作った“sleepy beats”(KILLER-BONG『64』収録曲でpeepow a.k.a マヒトゥ・ザ・ピーポーが歌った楽曲をBUNが再構築している)で、マヒトゥさんはいろんな声を出してますよね。

K-BOMB:あれ、いいよね。

二木:もちろんすべてマヒトゥさんの声なんですよね。

peepow:そうです。

二木:これだけ多彩な声が出せるというのはマヒトゥさんのヴォーカリストとしての武器であり、魅力ですよね。

K-BOMB:そうなんだよ。オレも出したい。オレも歌とか歌いたいけど、やっぱヘタなんだ。いい声が出ない。

peepow:はははは。

Fumitake Tamura (Bun) / Sleepy instrumental [[SplitPage]]

K-BOMBと最初に会った頃に、K-BOMBがオレの弾き語りのソロのYouTubeの映像を〈Blacksmoker〉の事務所で観て、「狂ったことしかできないヤツはダメだ」と言っていて、スッと腑に落ちた。──peepow


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

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JUBE:マヒトゥはラップに初挑戦的なイメージだけど、GEZANのライヴを見たときに「もうラップしてるじゃねーか!」って思ったよ。色は違えど、常に挑戦し、すでに多彩な武器を備えてる。K-BOMBと重なったな。これは面白いと思ったよ。

K-BOMB:武器、いっぱいあるよ。声も七色ぐらい持ってる。オレもやっぱ物真似、上手いからさ。そう言えば、アルバムは13曲だけど、あと10曲ぐらいあった。だからさ、20数曲ぐらいラップを録音して、13曲に絞った。だって、マサトは1日に5曲とか録るんだ。似てるよな

peepow:トラックをもらって、その日にリリックを書いて、次の日には録音してる。そういう曲が入ってる。24時間オレなんだから時間はかからない。

K-BOMB:オレたちのスケジュールが合わないぐらい早かった。

JUBE:しかもだいたい一発録り。

K-BOMB:声の重ね方もラッパーのように上手いね。あと、マサトは少女マンガみたいなさ、雰囲気あるわけよ。

peepow:ははははは。

K-BOMB:ファッションもそうだし。

peepow:オレ、ファッション、少女マンガ感ある? 

K-BOMB:あるんじゃないの?

peepow:どこ?

K-BOMB:たまにあるんだよ。

二木:それ、髪長いとかそういうことじゃなくて?

K-BOMB:そうかもしれない。

peepow:そこじゃん(笑)。

K-BOMB:はっはっはっ。いや、だけど、マサトのファンや客は、いまのオレの意見に「わかります」って納得するはずだよね? マサトはロマンティストなのかもしれないな。ところで、君はマサトのアルバムをどう思ったんだい?

二木:相反する要素がせめぎ合っている作品だと思いましたね。混沌と秩序、理性と感情、上手いと下手、本当と嘘、美しさと醜さ、白と黒、そういうものが常にせめぎ合って闘っている。そのせめぎ合いが凄まじいなと。

peepow:2時間の映画じゃないから、そこで曲が完結したとしても、はじまりや終わりは、オレはないと思う。ずっと続いていて、はじまったり終わったりしている感覚がずっとある。だから、この作品も曲も続きのなかの最初の部分を切り取っただけかもしれない。K-BOMBと最初に会った頃に、K-BOMBがオレの弾き語りのソロのYouTubeの映像を〈Blacksmoker〉の事務所で観て、「狂ったことしかできないヤツはダメだ」と言っていて、スッと腑に落ちた。

二木:マヒトゥさんは、K-BOMBのラップする姿は見て、どういう印象を持ちました?

peepow:音との距離が近い。そう感じた。MPCを叩いている時も会話しながら叩いてるし、自然に手元で絵を描いたり、コラージュを切ったり、そういう速度や距離の近さが面白いと感じた。頭で先に考えて、遅くなる人が多いなかで、細胞レベルでバッと感じたことをそのまま行動に出せる。たとえば、今回のリリースもGEZANやオレのライヴを観て、何かの可能性を感じたとかではなくて、オレと会話している時のニュアンスで何かをやろうとなって実現している。その速度がK-BOMBや〈Blacksmoker〉の面白さだと思う。

二木:ということは、普段からけっこう会話してるんですね。

K-BOMB:してるね。メールもしてるしさ。

peepow:まあ、一向にマサトという呼び方が直らないけど。マヒトゥなのにマサトと呼ぶ(笑)。

二木:あ、本名がマサトじゃなかったの!!?

peepow:マヒトゥ。

K-BOMB:マサトで憶えちゃったんだよね。

peepow:はははは。

K-BOMB:マヒトゥって言う時もあるけど、オレのなかじゃ言いづらい。言いづらくて、会話が続かなくなっちゃう。

peepow:はははは。

二木:さすがですねー(笑)。最近、K-BOMBは自分より若い人とやる機会も当然増えていってますよね。

K-BOMB:若い人といろいろやると楽しいな。オレは知らないあいだ長いことやってるけど、いまでも同じ気持ちでずっとやっている。若者から大人になってそのままずっと続いていくんだろうなと思っていたし、そうやってきている。オレはそういうヤツが好きなんだ。マサトもそういうヤツだ。でも、世のなかはそういうヤツばかりではないってことに最近気づいたんだ。そういうのはつまらないよな。

peepow:あと、何かをテクニックだけで言ったり、やったりするのもつまらない。だからと言って、できない拙さみたいのを売りにするのもイヤだし、つまらない。今回のアルバムもそうはしたくなかった。

K-BOMB:あと、狂人を演じるようなヤツもつまらない。

peepow:狂人を演じるヤツはめちゃくちゃマトモだからね。真面目を絵に描いたようなヤツが狂人を演じる。つまらないからおれの半径10mにはいらない。

K-BOMB:オレの前に狂人ぶったヤツが現れやすいんだ。何故なのかわからねーけど狂人みたいなフリして荒々しい感じで近づいてくるんだけど、無視してると、そいつは普通に戻っちゃう。たまに本物の狂人もいるけどね。そういうヤツとは長年付き合っているよね。ある狂人はオレのライヴに10何年も来てくれている。あとさ、マサトはさ、靴下もさ、あってないんだ。オレと一緒なんだよね。

peepow:たしかに揃ったことがないかもしれない。

K-BOMB:オレもあまり揃ったことがない。そういう意味ではいろいろ似てて面白いんだよね。女物の靴下穿いてたりとかさ。おパンティも穿いてるかもしれないな。

二木:ははは。

K-BOMB:あと、マサトと俺は鼻のデザインが同じだ。

peepow:オレとK-BOMBとジャッキー・チェンの鼻のデザインは同じ。

K-BOMB:オレはけっこう鼻のデザインを見てるからね。HIDENKAも鼻のデザインがオレと似ている。オレは人と目を合わさないで鼻の部分だけ見て喋ったりするんだよね。

peepow:Phewさんがあるライヴで、いちばん簡単に人を騙せるのは目の色だ、みたいなことを話してたのを思い出した。目の色だけは嘘つけないってみんな思ってる分、目つきとかで真実味を出して人を騙すことがいちばん簡単だと。

二木:K-BOMBの目つき、ほんとに怖い時がある。

K-BOMB:ふっ(笑)。やめて。

peepow:鼻は嘘をつけない。

K-BOMB:うん。そうだと思う。

peepow:目は嘘をつける。

K-BOMB:オレは顔がいいのが好きだからね。一緒にやったり、何かをやってもらう時に、こいつがやるんだったらなんでもいいよって思える顔が好きなんだ。マサトもそう。

peepow:ずっとそういう表情で生きてきてるわけだから、自然とそういう顔になりますよね。

K-BOMB:顔に出てくる。顔がさ、輝きはじめる。汚い格好だろうが、シャネルとか、そういう豪華なパーティ会場にでも行ける顔っていうのがある。だから、売れていくヤツは顔がどんどん変わっていく。でも、会った時から顔が変わっていかないヤツっていうのは、わからないね。

peepow:プロフィールに具体名をどんどん出したり、誰々と知り合いとか出したり、そういうヤツはほんとに信用できない。基本的にそういうことを言っている時点で遅い。いや、その前にオレはもうお前の顔を見てるし、鼻も見ちゃってると思う。

K-BOMB:そうだよな。マサト。顔を見れば、だいたいさ、そいつがどれぐらいやってるのかわかるじゃない。そいつがどれだけ真剣にやってんのかは顔にも出てくるよね。

peepow:だからマサトちゃいますけどね。

(協力:みどりちゃん)

■■■■■■■ Release Party!! ■■■■■■■■
6/28(SUN)18:00-
at 中野HeavySickZero
ADV:2300yen+1D

LIVE
peepow special live set feat. GEZAN、skillkills、BUN
OMSB
NATURE DENGER GANG
skillkills
THE LEFTY

DJ
Fumitake Tamura(BUN)
WATTER
ひらっち(MANGA SHOCK)
イーグル・タカ


■前売りチケット
https://eplus.jp/sys/T1U90P006001P0050001P002155789P0030001P0007

 以前、海外の古い古い映画をみていたら、明らかに字幕におかしい箇所があり、首をかしげたことがある。どう考えても画面に映っているできごとと字幕があっていない。調べてみると誤訳だそうで、それを誰も指摘するものがいないまま公開に至ってしまったのだそうだ。結局は正確な訳が明かされることもなく、また英語ならまだしも、わたしに何の知識もない言語……いまだにあの映画のあのシーンを思い返すと、ミスマッチな字幕のイメージがありありと浮かびあがってくる。文字の印象というのは、認識するのは容易であってもなかなか消すことができない。字幕は暴力なのだということを、そのときに知った。

 範宙遊泳の山本卓卓は、字幕が暴力だということにいち早く気づいたのみならず、その特殊な暴力性を演劇という形態と調和させることに成功した稀有な劇作家・演出家である。

 範宙遊泳 × Democrazy Theatre『幼女X(日本‐タイ共同制作版)』は、この作品をはじめて目撃した者はもちろんのこと、過去に初演を新宿眼科画廊で、再演をKAATで目撃した者にこそ驚愕をもたらした作品であっただろう。というのも再演にはあるまじき行為、「戯曲に書かれたセリフをいっさい喋らない」という決断をしていたからである。てっきりタイ人が喋ったセリフの日本語訳字幕が逐一表示されていくものだとばかり思い込んでいたらまったくちがった。舞台上には〈待っている間、国家の安定を脅かす人を探しなさい〉〈2時間髪型をセットしなさい〉〈あなたがいったい何をしているのか人に伝わるまでハンマーを食べなさい〉といった理不尽な命令がつねに表示されており、俳優たちはその命令に服従しなければならない、その悲哀を観察するという異質な作品だった。動物実験ですでに薬を打ったあとのラットがどうなるか、檻に入れてじっくりみつめているときの気分がもっとも近いだろうか。そこに再演と呼ぶべきものがあるとするならば思想、あるいは「追い詰められたものが無我夢中で反逆を試みてしまうが稚拙な計画はあえなく頓挫する」という戯曲全体を覆う仄暗いテーマのみである。

***

 Baobabの北尾亘と範宙遊泳の山本卓卓の共同プロジェクトであるドキュントメント『となり街の知らない踊り子』でも、山本特有の仄暗い思想は見受けられるが、こちらの作品は被害者の葛藤、社会のシステムに疲れた生活者たちの行き場のなさに、よりフォーカスをあてている。

ドキュントメント『となり街の知らない踊り子』

 B女 高速で過ぎ去っていくタイムラインの中で、こんな人フォローしていたっけーっていう人が夜中に「母がとてもうざい」っていう書き込みをしててソッコーでフォロー外した。こういうやつが日本の闇なんだよなー。振りまくなよ、貴様の闇を。うざくても、うざいとか、言うな。いうんじゃねー。「ねえ、ひろくん、そう思わない?」 (山本卓卓『となり街の知らない踊り子』

 興味深いのは、一人芝居で北尾が演じるB女に対して、字幕で「そうだね」「思うよ」「え、なんで?」などという、本人の性格がさっぱりみえてこないひろくんの相槌が表示されていくのだが、B女は唐突にひろくんに別れを切り出すのである。6日しか付き合っていないにもかかわらず、である。ここにはただ連帯してほしいだけ、共感してほしいだけ、なぐさめあっていたいだけで、用がなければすぐに切り捨ててしまう、現代社会特有の情のなさが透けて見える。B女は、まるでツイッターの気に入らないアカウントのフォローを外すような気軽さで、ひろくんにあっさりと別れを告げるのだ。

ひろくん 6日間しか付き合ってないのに……。6日で僕の何がわかるんだ。
(同前)

 『となり街の知らない踊り子』にはこのほかにも多数の登場人物が出てくるが、共通しているのは「他者への無関心が、別の誰かの憎しみや苛々を増幅させ、それがなお事態を悪化させる」という夢も希望もない状況である。しかしわたしは残念ながらこの状況を現代の前提として当たり前のように設定する残酷さに未来への期待を見出してしまう。フェイクの夢や希望を掴まされて大けがを負う物語より、よっぽどスマートな人生訓をそこから拾い上げることができるように思えるからだ。山本卓卓は2010年代の、不穏な空気からけっして目を逸らすことのない、誠実なアーティストである。

loadedを“reloaded(再装填)”! - ele-king


久保憲司写真集loaded
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 ノイバウテンやSPKからストロベリー・スウィッチブレイドまで! ロックを中心に洋邦さまざまな媒体で活躍するフォトグラファー、久保憲司。とくに活発に活動を展開し、ロック・ジャーナリズムを支えた80年代半ば~90年代の仕事をたっぷり収録した写真集『loaded』を覚えておられるだろうか。刊行から1年半、「reloaded(再装填)」と題して久保憲司氏が新たに展示会を開催する。期間中にはDJイヴェントやトーク・イヴェントも予定されており、毎回いわくいいがたいテーマが掲げられているようだ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

日本を代表するロック・フォトグラファー、久保憲司。
今回は、これまでの展示にはなかった氏のアナザーサイドにスポットを当て、写真集「loaded」を“reloaded”(再装填)。
80年代を中心にニューウェイブ/ノイズ/インダストリアルのアーティストの貴重な現場写真を展示します。

今回の展示を記念したDJイベント、東瀬戸悟氏(Forever Records)とのトークイベントもありますのでぜひご参加下さい。

■久保憲司 exhibition「reloaded」

2015/6/6(sat) - 6/15(sun) ※closed on 6/10(wed)
mon-fri 15:00-20:00
sat,sun 13:00-20:00

at Pulp
(map https://pulpspace.org/contact)

Einstürzende Neubauten
SPK
Foetus
Depeche Mode
Psychic tv
Strawberry Switchblade
Laibach
Suicide
Soft Cell
Fad Gadget …more

■同時イヴェント

6/6 sat | opening talk event
「狂気の音楽 人はなぜ気が狂うのか」
久保憲司 ×流れの精神科医
19:30-21:30
charge : 1000yen
※ご参加希望の方は、pulp.space.gallery@gmail.com まで
※定員25名(スペースに限りがありますので埋まり次第、終了となります。)

■6/7 sun | talk event
「80年代インダストリアル、ノイズ、ニューウェイブ再検証語り」
久保憲司×東瀬戸悟
19:30-
charge : 1000yen
※ご参加希望の方は、pulp.space.gallery@gmail.com まで
※定員25名(スペースに限りがありますので埋まり次第、終了となります。)

■6/14 sun | closing party
DJ:MR.A(from DAMAGE) / KENJI KUBO
19:00-21:00

::PROFILE::
久保 憲司 Kenji Kubo

https://twitter.com/kuboken999

1981年に単身渡英し、フォトグラファーとしてのキャリアをスタート。
ロッキング・オンなど、国内外の音楽誌を中心にロック・フォトグラファー、ロック・ジャーナリストとして精力的に活動中。
また、海外から有名DJを数多く招聘するなど、日本のクラブ・ミュージック・シーンの基礎を築くことにも貢献した。
著書久保憲司写真集『loaded(ローデッド)』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 〜誰も知らなかった音楽史〜』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 2 ~“写真で見る"もうひとつの音楽史』、『ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム』など。

Moved to England in 1981, and started his career as a photographer.
Kenji Kubo also works as a journalist specialized in rock ‘n’ roll music for various music magazines such as Rockin'on.
He also invited a number of big DJs to Japan and helped to establish the Japanese club music scene.
He has published numerous book in which he photographed and wrote, such as "loaded” , “Dance Drug Rock-on-Roll”, “Dance Drug Rock-on-Roll 2”, and “The Stone Roses, the album that changed the world”.


Prefuse73 - ele-king

すべては“響き”のなかに 矢野利裕

 ギレルモ=スコット・ヘレンという音楽家は、僕にとってあまりにも底知れない。アキレスと亀の関係のように、その姿を捉えたかと思うとすでに先に行っている。プレフューズ73『ヴォーカル・スタディーズ・アンド・アップロック・ナレーティヴス(Vocal Studies And Uprock Narratives)』のときから、それはそうだった。プレフューズ73を一躍「ヴォーカル・チョップの人」にしてしまったその作品は、〈ワープ〉レーベルでさえもしっかりと認識していなかった当時の僕からすれば、DJプレミア的チョップ&フリップの鮮烈な応用として映った。しかし、佐々木敦による国内盤解説を読むと、それはむしろ、ポスト・ロックやエレクトロニカ、並びにフリー・ジャズの文脈から出てきたものらしかった。こんなにもゆたかな音楽性をもつプレフューズ73はしかし、その手法の見事さゆえに「ヴォーカル・チョップ」という印象とともに語られ、多くの模倣者とフォロワーを生んだ。その水脈は、現在のメジャー感のあるEDM~ダブステップにまで流れている。「ヴォーカル・チョップを期待してるリスナーのために、最初の曲で派手にやりまくっておいて、そこから新しい世界へと繋げていったんだ」とヘレン自身が語るように、ヴォーカル・チョップへの葛藤は『ワン・ワード・エクスティングイッシャー(One Word Extinguisher)』ですでに示され、その後、いわゆる「ヴォーカル・チョップの人」としてのプレフューズ73は、息をひそめていくことになる。
 プレフューズ73の4年ぶりの新作は、『リヴィントン・ノン・リオ+フォーシス・ガーデンズ・アンド・エヴリー・カラー・オブ・ダークネス(Rivinton Não Rio + Forsyth Gardens and Every Color of Darkness)』として2CDにまとめられた。前作『ジ・オンリー・シー・チャプターズ(The Only She Chapters)』に比べてビートに対する関心は高く、ヴォーカル・チョップまで披露されている。人によっては、往年のプレフューズ73の帰還と見るかもしれない。コンセプチュアルで静謐な『ジ・オンリー・シー・チャプター』から考えれば、そのとおりだろう。しかし、ビート・ミュージックかそうでないかは、たいした問題ではないのだと思う。いや、僕も今作で聴ける繊細なビートにじゅうぶん酔いしれているのだけど、そんな繊細なビートも含め、サウンド全体の響きに耳が行く。それは、『ヴォーカル・スタディーズ・アンド・アップロック・ナレーティヴス』の頃よりさらに深化させられている。状況論的に言えば、現在のEDM~ダブステップが捨ててしまった細やかな響きこそを追求しているかのようである。ヘレン自身、「同じような音楽を作っている連中が増えたのも事実だ。スクリレックスが悪いとは言わない。けど皆が彼の真似をはじめて、それまでのエレクトロニック・ミュージックが否定されたような気がしてしまった」とも語っている。プレフューズ73にとって、ヴォーカル・チョップは目的化されるものではない。新しいサウンドの響きを獲得するための一手段だ。波形処理によって微分化されたサウンドを緻密に再配置して、繊細な手つきでエフェクトをかけて、未知なる音響を獲得すること。プレフューズ73の音楽は、そういう試みとしてあり続けている。ヴォーカル・チョップという手法はそのヴァリエーションのひとつだ。この音響へのこだわりという点はもちろん、サヴァス&サヴァラス他の変名ユニットに通じている。電子化されているか/いないかは、方法論的な違いに過ぎない。

 今作で言えば――キリがないのだが――まず、ロブ・クロウをフィーチャーした“クワイエット・ワン”とサム・デューをフィーチャーした“インファード”という、ヴォーカル入りの2曲が特筆されるべきである。アコースティック・ギターのサンプルを刻んで変則的に再配置する“クワイエット・ワン”は、シカゴ音響派的なアプローチのトラックと言え、そこでは美しいアコースティックの響きに強いビートが加わっている。優しいヴォーカルと美しいギターに、アントニオ・ロウレイロ的なミナス感を覚える人もいるだろう。ヘレンはかつて、サヴァス&サヴァラスでミルトン・ナシメントの曲をカヴァーしたこともあったが、このような、ミナス的なアコースティックへの志向は、ヘレンの音楽に確実に脈打っているものである。だとすれば、“クワイエット・ワン”の次曲“スルー・ア・リット・アンド・ダークンド・パス・パート1&2(Through a Lit and Darkened Path Pts. 1 & 2)”における、弦楽器の突然の挿入も、音響への関心が室内楽的なものへ向かっていく過程として聴くことができる。この曲の中盤からの展開は、ドラマティックでとても素晴らしい。一方、“インファード”は、サム・デューのヴォーカルに対して幾重にもコーラスが重ねられており、その点、ディ・アンジェロやホセ・ジェームスの音楽を彷彿とさせる。この特徴的な多重コーラスは、ヴォーカルの存在感を高めると同時に、曲全体のリヴァーヴがかった空間の演出に奉仕している。ヴォーカル自体が他のサウンドとともに、繊細な響きの一部となっているのだ。ビートが強くなり、さらにリヴァーヴが深くなっていく同曲のリミックス(ディスク2収録)も必聴だ。
このように、『リヴィントン・ノン・リオ+フォーシス・ガーデンズ・アンド・エヴリー・カラー・オブ・ダークネス』に対しては、それが一定の事実であるにせよ、プレフューズ73のビート・ミュージックへの帰還という物語を読み込み過ぎないほうがいいと思う。複雑なビートは、全体の響きを追求するなかで構成されている。ギレルモ=スコット・ヘレンという音楽家は、その意味で驚くほど一貫しているのだ。したがって見るべきは、トラック全体でどのような響きが獲得されているか、である。ビートもヴォーカルもラップも、トラック全体の響きのなかで捉えるべきである(“140・ジャブズ・インタールード”」で披露されるバスドライヴァーの早口ラップが、どんだけ音響的な気持ちよさを獲得していることか!)。今作は、リズム、メロディー、ハーモニー、ヴォーカル、ラップ……あらゆる要素が一体となって、唯一無二の世界を聴かせてくれる。プレフューズ73の底知れなさは、一部の要素を取り出すことができないからかもしれない。エフェクトがかったサンプルと変拍子的なリズム、あるいは多重コーラスなどが、結果として、あのアコースティックで繊細な音楽をかたどっているのだ。

 ところで、まぎれもない打ち込みの音楽であるプレフューズ73の音楽に対して、「アコースティックな響き」と言うのは抵抗がないこともない。しかし、そこにある種の繊細な響きがあることは、やはりたしかだろう。ポスト・ロック/エレクトロニカからフォークやブラジル音楽、あるいは一部のジャズ(それこそ、スティーヴ・チベットとか)などに抱え込まれているような繊細さ、とでも言おうか。ポスト・ロック以降に幅広く共有されることになるが、必ずしもポスト・ロックに中心化されるわけではない、あの繊細でポリフォニックな響き。そしてこの、確実に共有されているが明確にされているわけではないサウンドのありかたが、現在、さまざまなミュージシャンに追求されている気がする。ロウレイロ、ホセ、ディ・アンジェロの名前を出したが、ジャンル問わずさまざまなミュージシャンが、繊細かつポリフォニックなサウンドを表現しようとしているのが、現在の音楽シーンの一潮流ではないか。ジャズとエレクトロニカ、オルタナティヴ・ロックなどを越境するピアニスト、ティグラン・ハマシアンは、自身の曲のリミックスにプレフューズ73を起用していた(『ザ・ポエット・EP』)。4年ぶりの新作と言われるが、『リヴィントン・ノン・リオ+フォーシス・ガーデンズ・アンド・エヴリー・カラー・オブ・ダークネス』が、プレフューズ73の、そういう活動を経ての作品であることを忘れてはいけない。そのような世界的かつ現代的な視野のなかで、今作は聴かれるべきだろう。ギレルモ=スコット・ヘレンという音楽家の、ゆたかな音楽性を、少しでもつかまえるために。

文:矢野利裕

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プレフューズ73の「復活」、エレクトロニカ15年の問題デンシノオト

 プレフューズ73の「復活」の報を受け、その新作をあれこれ予想しているとき、ふと思ったのだが、いまの20代から30代頭くらいの世代はプレフューズ73=ギレルモ・スコット・ヘレンのことをどう思っているのだろうか。場合によっては彼のことを知らない方も多いのではないか。これはネット上での「復活」の反応をみても実感できることであった。

 考えてみればプレフューズ73=ギレルモ・スコット・ヘレンのデビューは2000年、ファースト・アルバムのリリースは2001年である。なんと、もう14~5年も前の出来事だ。現在30歳が当時15歳。もしくは現在の25歳が10歳。むろん10歳でもプレフューズを知っている人もいたであろうが、その歳でプレフューズの衝撃を味わえる人も限られるだろう。

 むろんギレルモ・スコット・ヘレンは、その後も〈ワープ〉から継続的にアルバム・リリースしてきたし、サヴァス&サヴァラス、ピアノ・オーヴァーロードなどの複数の名義を駆使しつつ多彩な活動を繰り拡げてきたことも事実で、いわば2000年代のエレクトロニック・ミュージックのスターであったわけだから、そこから新しいリスナー(ファン)がたくさん生まれきたことだろう。しかしそれですらも2000年代中盤のことであって、現在からすれば7年から10年前の出来事なのだ。

 さらにプレフューズ73名義の沈黙前のアルバム『ジ・オンリー・シー・チャプターズ』は2011年リリースであるが、これすらも4年前のこと。しかも、そのときプレフューズ73のシーン(しかし、とは何か?)での存在感は随分と変わってきたようにも思えた。端的にいえばかつてほど影響力はなかった。これでは知らない人もいて当然だ。10年~15年前という時期はいちばん空白になりやすいものである。そこで、まずは彼の経歴をざっくりと話しておこう。

 2000年代初頭、いわばエレクトロニカ全盛期の時代。それはいわば「9.11前後」の世界でもあるのだが、しかしエレクトロニカは、テクノロジーの急速の発展と普及(ハードディスクとコンピューターの高性能化)の恩恵を受けるかのように、小春日和の季節の只中にあった。そんな時期、マイクロ/エディットによるビート&サウンドによって、彗星のように(本当にそうだった)シーンに登場したアーティストが、プレフューズ73ことギルモア・スコット・ヘレンである。彼は2000年代における「新しい音楽」のホープですらあった。なぜならエレクトロニカ的手法とビート・ミュージックに結びつけたからだ。私がロック雑誌の編集者なら「革命、きたる!」というコピーで特集を組んでもいいほどだ(冗談です)。しかしこれは誇張ではない。彼は、90年代の〈モ・ワックス〉などが牽引したアブストラクト・ヒップホップと、2000年代以降のフライング・ロータスなどを繋ぐ巨大なミッシングリングなのだ。

 じじつ、スコット・ヘレンは、2001年に老舗〈ワープ〉からリリースされたファースト・アルバム『ヴォーカル・スタディーズ・アンド・アップロック・ナレーティヴス』によって音楽に革命を起こした。マイクロ・エディットによるヴォイスとビートのエディットはこのアルバムから生まれたといっても過言ではない(本当はプレフューズだけの「功績」ではないのだが、その影響力の大きさは勲章ものだ)。いわば90年代的なレコード・サンプリングから00年代的なPCのハードディスク内でのマイクロ・エディットの手法へ。たとえるならグラフィック・デザインが、版下の手作業からDTPに変化したような革新・革命・進化であった。

 しかし、である。ヴォーカル・チョップと呼ばれる、あのヴォーカルやヴォイスを細かく切り刻み、グリッチなリズムを生み出すその手法は、あまりに衝撃的であったゆえに多くのフォロワーを生みだしてしまった。そのうえ技法のみが語られる状況も生んでしまった。たしかに、あまりに安易で表面的な作品や言説が多かったことも事実だ。スコット・ヘレンは、その状況に心底ウンザリしたのであろう、ヴォーカル・チョップを封印してしまう。また、自らの名声をはぐらかすように、サヴァス&サヴァラスやピアノ・オーヴァーロードなど複数の名義をコントロールするかのように駆使し、2000年代を駆け抜けきた。

 そして本体プレフューズの作風も変化を遂げていく。前作のカラーを引き継ぐセカンド・アルバム『 ワン・ワード・エクスティングイッシャー』(2003)を経て、ウータン・クランのメンバーも参加した2005年の『サラウンデッド・バイ・サイレンス』以降、いわば〈ワープ〉後期のプレフューズ・サウンドは、ヴォーカル・チョップを封印した結果、音楽性は拡張の一途をたどっていくのだ。たとえば、彼の心情を反映したかのようなヘビーなビート・トラックを凝縮した『セキュリティ・スクリーニング』(2005)、生演奏を導入したサイケデリック絵巻『プレパレイションズ』(2007)、あえてアナログ・テープに落としたという『エヴリシング・シー・タッチド・ターンド・アンペキシアン』(2009)などのアルバムは、その作品ごとの方法論の「変化と拡張」がもたらす巨大さゆえに、われわれを失語症へと追い込んでしまう。
 その「拡張と失語」の方法論と完成形がもっとも極まった作品こそ、〈ワープ〉から最後のプレフューズ73名義のアルバムとなった2011年『ジ・オンリー・シー・チャプターズ』だ。ビートもエディットもヴォーカルもサウンドもすべてがサイケデリックなサウンドの万華鏡の中に反射し融解していたのだ。いわば膨張の果ての融解の果て。まるで1968年にリリースされたサイケデリック・アルバムが最新のテクノロジーで「蘇生」してしまったような謎めいた作品に思えたものだ。彼の10年近いキャリアがその時点での結実。以降、プレフューズ73は長い沈黙に入る。

 とはいえ、ギレルモ・スコット・ヘレンは活動を止めていたわけではなかった。自身のレーベル〈イエロー・イヤー・レコード〉を立ち上げ、ティーブスとのユニット、サン・オブ・ザ・モーニングのEPもリリースし、マシーンドラムとのコラボレーション曲も発表した。昨年にはプレフューズ73名義で来日もしていたのである。

 そして2015年、プレフューズ73はついに復活した。数年をかけて制作したトラックは膨大な量になり、そこからブラッシュアップされ、1枚のアルバムと2枚のEPにまとめられた(日本盤はCD2枚組にまとめられている)。リリース・レーベルは〈ワープ〉ではなく、〈テンポラリー・レジデンスLTD〉。ハウシュカやウィリアム・バシンスキーなどのアルバムをリリースしている優良レーベルである。
この新作では、〈ワープ〉後期においては抑圧されていたビートと、あのヴォーカル・チョップが復活した。いわば初期プレフューズらしいマイクロ・エディット・ビートが自由自在に展開しているのだ。そしてサヴァス&サヴァラス的な、彼らしいヴォーカル・トラックも収録されている。新しいプレフューズ73の新作は、軽やかで、メランコリックで、精密で、何よりポップだった。これは2015年現在の「ビートによるアート」であり、彼の「ソングライティング」を満喫できるアルバムでもある。そう、これこそプレフューズ73の新しいスタートだといわんばかりの出来だ。

 私が本作を聴いたとき、ビートやサウンドの構築はたしかに初期プレフューズ的にも感じたが、同時に、そのメランコリックでどこかブラジリアンの雰囲気にサヴァス&サヴァラスに近いものを感じたものだ。「作曲家としてのギレルモ・スコット・ヘレン」の個性が出ているというべきか。彼は優れたサウンド・デザイナーであると同時に個性的な作曲家でもあった。作曲家とは、自身の和声感覚を持っている人のことであり、音楽家ギレルモ・スコット・ヘレンにはそれがある。そして、この新作には、彼のリズムに旋律と和声が見事に畳み込まれているのだ(本作のプロトタイプは2013年にリリースされたサン・オブ・ザ・モーニングのトラックにあったと思う。メランコリックなムードが共通している)。その意味で、彼はクリスチャン・フェネスやステファン・マシューなどのエレクトロニカ・アーティストと同じく「作曲家」として資質が強いアーティストなのであろう。
 そこであえて注目したいのがフリーで配信されたEP『トラヴェルス・イン・コンスタンス, Vol. 25』のラスト・トラック“ブロード・プラント”だ。これがとてもメランコリックな儚い美しさを持ったピアノ曲なのである。サウンドには微かにグリッチ処理がされている。私は、この素朴な曲に満ちているミニマル/メランコリックな雰囲気と空気感にこそ、彼の音楽の本質があるような気がするのだが、どうだろうか。それはとても「女性的」な何かのようである(考えてみると彼のアートワークには女性がたびたび登場する。本作もそうだ)。

 いずれにせよ、今回の「復活」は歴史と現在性の両極から捉えることができる。ひとつはこの15年ほどのエレクトロニカ以降の電子音楽の問題。さらにもうひとつはサンプリング以降、マイクロ・エディットによるビート・ミュージックという問題。そしてそれらを交錯した「現在」の問題である。プレフューズは「フュージョン以前」という意味だという。現在は、彼に影響を受けた(はず)のフライング・ロータスがコンテポリーなジャズ・シーンで存在感を放っているのが時代である。そんな状況下において、「フュージョン以前」という名前を持つプレフューズ73の復活の持つ意味は大きい。この新作を聴き込みつつ、15年ほどのビート・ミュージックとエレクトロニカの意味と歴史と変化を考えてみるのもいいだろう。

文:デンシノオト

interview with Bushmind - ele-king


Bushmind
SWEET TALKING

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 街は死んでいる。かつては僕たちの遊び場だった街が。
 いま僕たちが街にいるのには、消費者であることが条件付けられている。渋谷系リヴァイヴァルだって? とんでもない、90年代はセンター街の入口のキノコの屋台が、やって来る外国人を驚かせていたほどだ(笑)。渋谷駅構内では毎週、当時の日本で最高のディジェリドゥ演奏者がパフォーマンスを聞かせていた。コンビニで買ってきた缶ビールを飲みながら、僕はいつも地ベタに座っていた。そんな公共性が残っていたのが1990年代の渋谷で、あの時代がリヴァイヴァルするなんてことは、僕にはとても想像できないな。

 街は僕たちの遊び場だった。ブッシュマインドの2007年のデビュー・アルバムのタイトルは『Bright In Town』=「街の輝き」。まごうことなき街の音楽。ceroも歌っている、いわば「失われた街」の生存者。そして、ブッシュマインドはいまでも街の音楽をやっているひとり。泣くことも嘆くこともなく、たんたんとドリーミーに。

 不良の匂いをさせているところも良い。不良というのは悪人のことではない。管理を拒む者のこと。管理サッカー、管理野球、管理社会……を拒むと言うことは、試合中、臨機応変に自分で判断しなければならないということだから、実は(とくに日本人には)難しい。(シカゴなんかは、管理されることもなく、むしろ臨機応変に自分で判断しかしないから、あんなに多彩なゲットー・ミュージックが生まれるのだろう)
 ブッシュマインドは、そういう意味で本当に自由にやっている。新作『SWEET TALKING』は全21曲が収録されているが、もうひとつ重要なのは、ここに30人以上の人間が参加していることだ。そこにいる30人は、トレンドやハイプなどとは無関係の人たち。『Bright In Town』もそうだったように、いろいろな人たちと繫がることでしかこのアルバムは成立しない。街で出会い、街で遊んでいる人たちと。

音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。

新作『SWEET TALKING』は、いままででベストだと思いました!

Bushmind(以下、B):マジっすか、ありがとうございます!

ブッシュマインドってさ、ヒップホップをベースにテクノを取り入れてるっていう風によく語られてて、たしかにその通りなんだけど、僕はドリーミーなチルアウトってイメージを持っているんですよね。で、まさに今回のアルバムはそれを突き詰めたっていうか。『Bright In Town』からずっと継続されているものなんだけど、それを今回のアルバムはいろんな意味で発展させ、研磨している。素晴らしいと思いました。

B:アップデートするってことをすごく意識しました。過去と似通っちゃわないようにっていうのと、できるだけいろんな引き出しを見せるということ。頭のなかで考えたことをうまく曲に反映できた手応えはありますね。
 こうしたいとか、こうやりたいとかっていうのを、パソコンで細かくいじれるようになって。いままでは一旦サンプリングで強引に形を作って、そっから正解を見つける感じだったんですけど、今回は思ったところにいきやすくなったっすね。技術的にはまだまだ全然ですけど、ここ3年でかなりいろいろ覚えられたので。

8年前とは違うぞっていう。

B:そうです(笑)。

ブッシュマインドらしさがすごく出てるよね。13曲目とか、16曲目とか、本当に良い感じのチルアウト・ヒップホップというか。サイケデリックというよりは、チルアウトでありドリーミーなんだよね。前に会ったときはアンチコンからすごく影響を受けているって言っていたけど、アンチコンはもっと実験っていうかさ。

B:ちょっとアート的なね。

そうそう。ブッシュマインドはもっと陶酔的じゃない?

B:そうですね。単純に音楽として楽しめるようにっていうのは考えてやっていますね

ストリートから来るタフな感覚はあるんだけど、同時にドリーミーでチルアウトな感覚が一貫してあるというのは何でだろう?

B:好きなんですよ。何も考えないで作ると自然とその方向へ行っちゃって。

『Bright In Town』(2007年)でブッシュマインドの印象を決定づけたのって、やけのはらとやった"Daydream"だったと思うんだよね。で、ブッシュマインドは、あの曲で表現した感覚をさらに自分に引き寄せて、どんどんブラッシュアップしていったよね。『Bright In Town』の次に『Good Day Commin'』があったでしょう? あれって3.11の年(2011年)だったんだよね?

B:そうですね。

まだショックが生々しかった時期だったよね。いたるところでネガティヴな感情が表出していた時期に、「良い時代がやってくる」というアルバム名の、しかもあれだけドリーミーでスモーキーな……(笑)。

B:はははは。

だって、あの時期だよ。あの時期に『Good Day Commin'』を出すというのは、やっぱりそこにはブッシュマインドなりの時代へのスタンスっていうかさ。

B:そこはけっこう分けていますね。音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。

ある意味では、あの時期にあれってリスキーだと思ったんだよね。

B:いろいろ起きているなかで、おちゃらけてるみたいな(笑)。

わかってて、あえてというか?

B:自分はああいうドリーミーな部分が好きなんだけど、その裏にハードコアな熱い部分をチラ見せするみたいのが、真っ正面には見せない感じが理想ですね。アーティストを追っかけていても、実はムチャクチャ喧嘩っぱやいとかムチャクチャおっかないとか見せてない、裏の一面があるアーティストがすごい好きで。自分が不良じゃない分、そうゆう人には憧れがありますね。

それは本当の自分じゃないと?

B:はい。

今回の『SWEET TALKING』もそうだけどさ、『Bright In Town』や『Good Day Commin'』にしても、タイトルからして、桃源郷の方へ行くじゃない(笑)?

B:だから俺、今回もかなり意識しましたね。“bright”、“good”ときて、さて次はどうしようかなって(笑)。

はははは。

B:でもなんで好きな部分がそっちの方向なのかというのと……。うーん、なんでですかね。

サイプレス・ヒルというよりは、ナイトメアズ・オン・ワックスなわけでしょう?

B:そこを隠したいというのと、俺はできるだけいろんなひとに聴いてもらいたいというのがあって。そういうポジティヴな方向のほうがよりたくさん聴いてもらえるかなって。

みんなはそこで「グッド・デイズ・カミン」ではなく「バッド・デイズ・カミン」って思っているわけじゃないですか?

B:そうなんですかね。自分は楽しく過ごしたいっていうのがあるんで。自分の音楽にそういうネガティヴな要素を入れたいとはそんなに思わないんですよね。作っていてほんと楽しいんで。

今回のアルバムでも、テクノのビートっていうかさ、ヒップホップのトラックメイカーだったらまず作らない曲も入ってるよね。BPMもダンス・ミュージックのテンポだったりするし。

B:そうですね。

アシッド・ハウスっぽいのもあるんだけど。

B:今回は303を多用してますから。偽物ですけどね(笑)。いやぁ、もう楽しくなっちゃって。本当にあの機材はすごいんですよ。ついつい使いすぎちゃった。自分の好きな音とフレーズを決定づけてくれるというか。キラキラしたコードも出やすいというのもあって。

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自分はああいうドリーミーな部分が好きなんだけど、その裏にハードコアな熱い部分をチラ見せするみたいのが、真っ正面には見せない感じが理想ですね。


Bushmind
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「ヒップホップとテクノの融合」みたいなことよく言われるじゃないですか? 今回もまさにその通りなんだけど、そういうミックス感覚はある程度自分でコントロールしているの? この曲はテクノっぽくいこうとか、あとはロー・ビートで何曲くらい作るとか?

B:全部はできてないですけど、アルバムの全貌がある程度見えてきてからはコントロールしましたね。最初はとりあえず何も考えないで曲を作ってコマとしてを並べていって、最後のほうはその隙間というか被らないようにっていうのを意識しましたね。
 あとは自分が聴いて素直にアがれる曲というか。設定優先とかやり方優先とか、方法論で作っても、最終的に聴いてちゃんと機能するものを意識したっすね。

設定とは?

B:設定が面白かったりする音楽ってけっこうあると思うんですけど。たとえばアート・リンゼイが楽譜をシャッフルして演奏するのとか、ああいうのは最終的な仕上がりよりも設定が優先なのかなって自分は思ったので。

ブッシュマインドのミックス感覚は独特だよね。ヒップホップ系のひととも違っていると思うし。

B:もともと曲作りも混ぜて遊ぶっていう感じだったからっすね。DJをしていて2曲、3曲重ねたときに全然違った感じになるときとか、やっぱすごくアがるんですよ。混ぜてまったく違う曲にするっていうのが、自分のDJをする醍醐味だと思っていて。

いまは何を使っているの? 

B:いまはCDですかね。ターンテーブルも使いますけど、データが多くなってきているんで、CDに焼いてますね。それで混ぜてまったく違う曲にするっていうのが、自分のDJをする醍醐味だと思っていて。

そういえば、『Bright In Town』から8年経ったんだね?

B:そうですね。CDが廃盤になってました(笑)。アマゾンで海外の業者が1,5000円とかで出してて「えー!」みたいな。実際、ネットで探しても全く出てこなくて。「もうそんなに時間が経っちゃったんだ」って。

早いよね〜。あのアルバムは、時代のある場面を描写したっていうか、関わっている人間の数もハンパなかったよね。

B:あのときは友だちがどんどん増えて躁状態になってましたね。友だちが増えるといろんな街に行って遊ぶ機会も増えてったんで。その思い出をパックしたアルバムですね。

この8年のなかで、タカアキ君のなかで変わったことって何でしょう?

B:変わったこと……。この8年ですよね。難しいですね。どんだけ変わったんすかね……。

日本社会でいうと、3.11があってものすごく揺れ動いた。それで『Good Day Commin'』が出た。それから数年後、安倍政権が誕生したと。音楽でいうと風営法があったりとか、ますます音楽が売れなくなったりとか。だって、8年前の『Bright In Town』って〈エイベックス〉じゃん。こういう音楽を〈エイベックス〉から出すことって、もう考えられないでしょう(笑)。

B:俺も本当に信じられない(笑)。その思いが年々強くなってるんですよね。当時は「すげぇ良い話がきた!」くらいにしか思ってなかったけど、いま思えば挑戦的なことをしたんだなって。

〈SEMINISHUKEI〉はその前からだよね?

B:レーベルは2000年初頭くらいですね。ずっと人数が少なかったんですけど、ストラグル(・フォー・プライド)のライヴに行くようになって、友だちが一気にバーンっと増えてメンバーを増えていった感じでした。そのときは大人数で遊ぶのがムチャクチャ新鮮で楽しかったですね。
 ただ、時間が経つと離れていくひともいて。そうゆうときにいかに固く自分たちの世界を作れるかっていうのは、すごく意識するようになりました。大所帯のクルーが時間経ってバラバラになって残念な感じになってくってのはよくあるけど、その流れには抵抗したいですね。

『Bright In Town』は勢いって感じがあって、それが良かったし……。あれを出したときに時代は変わるって思った?

B:いや、そこまでは意識していなかったです。本当に初めてなことばっかりだったので、作ることを楽しんだというか。ラップ・トラックを作るのも初めてだったし、ラッパーの友だちもいなかったっすから。それでいろんなひとに紹介してもらって。楽しかったですね。

セカンドの『Good Day Commin'』のときは、また状況が違っていただろうし。

B:あのときはマーシー君、〈WD Sounds /PRESIDENTS HEIGHTS〉が自由にやらせてくれたんですよ。まあ、逆に大変でしたけどね。

あの作品はマーシー君から出さないかってきたの?

B:そうっすね。ただ今回のリリースの話を振ってもらってからがこれでコケたら周りも道連れにするなって思って(笑)。チャンスが来たと思ったのと同時に責任も感じましたね。

世のなかのコミュニティのあり方も、この8年、ネットの普及によって多様化したよね。だって、8年前はツイッターとかなかったわけだからね。

B:ネットはもちろん使っているんですけど、作品を作る上でネットのみのやり取りっていうのは避けてますね。最初のきっかけとしてはいいと思うんですけど、曲を作って実際会ってみたら反りが合わなかったりとか。実際会わないとズレも生まれるし、国が違ったら文化も違うじゃないですか。ネットでも面白い出会いってあると思うんですけど、現場で繋がってできる音楽の方が魅力を感じますね。

それがブッシュマインドだもんね。

B:そうですね。いまは情報を手に入れやすくなったぶん嘘もいっぱいあるじゃないですか。情報に踊らせれて型にはまらないようにってのは気をつけてます。いまって、世界で時間差なしで流行があるようになってきているじゃないですか?

そんなこともないと思うよ。すごく時間差を感じるこもあるし、言いたいことも言えない監視社会になってきているようにも感じたり。本来は自由な発言の場であったハズなのに、ますます不自由な場になっているような。

B:しかもそれが生産的じゃないですもんね。

批判とかじゃなくて、たたきつぶしてやろうっていうね(笑)。そういう意味では、クラブ・カルチャーにはまだまだ役割があると思うんですけどね。

B:音楽に関しては、ネットは使い方によってはいくらでも広がるし、曲との出会いが、ここ最近いっぱいあるんですよね。いまカヴァー曲を聴くのにハマっていて、あるサイトで検索すると世界中のいろんなカヴァーが出て来て、すごく面白い出会いが増えたんすよね。レコード屋に行ってジャケでピンと来て、買って、家に帰って、ブチ上がるみたいなのとは差がありますけど。

タカアキ君は自分は不良じゃないって言ったけど、もうちょっと広い意味で、オモロい不良が年々いなくなったって感じもする。自分が年取っただけなんだろうけど(笑)。

B:たしかにモンスタークラスのニューカマー、そんなに聞かないすね。

ヒップホップはそれでも受け皿になっているように思うな。ゴク・グリーンかさ。

B:A-Thugって知ってますか?

知らないっす。

B:俺はまだ会ったことはないんですけどムチャクチャ聴いてて。『Streets Is Talking』ってアルバムが最高ですよ。

ちょっと、メモっておくよ。

B:今回参加してくれたなかには面白い不良がいるっすね。でもたしかに、ラップが上手いやつはたくさんいるんだけど、それプラスで不良スピリットの両方を持ち合わせた若手って、あまりいないですね。

俺はゴク・グリーンやコウも好きだよ。

B:ゴク・グリーンは聴いたことないですね

たくさん聴いているわけじゃないから、きっと他にもいるんだろうけど。

B:今回のアルバムに参加しているひと以外では、自分のまわりではあんまりいないですね。いるとは思うし、希望も期待もあるから出会えていないだけかもしれないんですけど、まだ耳には届いていないです。

でも、たとえば、このアルバムに参加しているR61 Boysという人たちなんか街の匂いを感じますよね。

B:こいつらの不良度は計りきれてないんですけど、面白い刺激を求めて遊び回ってる印象ですね。どこまでが軍団かわからないですけど、人数もムチャクチャいるすね。新潟の六日町にあるBARMってクラブで自分の企画やったことがあって。R61 Boysにライヴやってもらったんですけど、友だちが30人ぐらい来て。地元のお客さんより多かったです。

今回集まっているメンバーっていうのは、世代的にはどうなんですか?

B:同年代が多いかな。TOKAI勢はちょい下すね。最年少はCOOKIE CRUNCHす。

NIPPSさんも参加しているんだね。

B:NIPPSさんは本当に夢が叶ったって感じですよね。

この曲、かっこいいよ。ひとりだけ毒を吐きまくっている(笑)。

B:いやー、できてびっくりしたっすわ(笑)。分のトラックがあんな曲になるってほんと最高の遊びですね。

CENJU君も参加しているね。

B:こいつはヤバいっすよ。下北にもトラッシュがいたんだっていう。もうゲットー感が。

彼は〈DOWN NORTH CAMP〉のひとだよね?

B:そうです。CENJUとはここ2年くらいで仲良くなって、こんなやつがいたんだって思ったんですけど。あとはKNZZ、大ファンなんですよ。もう不良道。人生がすごくドラマチックですもん。アシッド・テクノみたいな曲でラップしてるやつなんですけど、”Planet Rock”って曲ですね。

”Planet Rock”もユニークな曲だよね。

B:KNZZ君は元々渋谷のアイス・ダイナシティってグループでけっこうトップの方まで人気が出ていたんですけど、トラブルとかでいなくなった状態になって、そこからの復活なんです。それでいままでの負の遺産を返しつつ新しいことをやって。

“Friday”という曲では、R&Bをやっているんですよね(笑)。

B:これもやりたかったことですね(笑)。歌ものをすごくやりたかったんですよ。かなり力を入れました(笑)。曲を作る前に集まって「クラブでの出会いが良いんじゃないか」って。

歌っているルナさんはどういうひとなんですか?

B:ルナさんはMaryJaneってふたり組のグループで活動してて。まわりの友だちで昔から遊んでた人間がけっこういて、音源といろいろ話も聞いてたので紹介してもらった感じですね。

小島麻由美さんにも新たに歌ってもらっていますね。この曲も面白かった。

B:これはかなりエクスクルーシヴになるなと思って。小島麻由美さんに歌ってもらったら面白いことができるんじゃないかと思ってました。最初はダブっぽい感じで歌が入ってきてみたいな感じで考えたんですけど、途中でラップ・トラックみたいになってきちゃって。

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あと連絡が大変だったっす。セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。


Bushmind
SWEET TALKING

SEMINISHUKEI/AWDR/LR2

Hip HopTechnoDowntempo

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そういえば、少し前にトーフビーツのリミックスもやったじゃないですか? あれは、さすがにびっくりした。だって、トーフビーツの曲をブッシュマインドやRAMZAがリミックスしてるんだもん(笑)。

B:あれはスタイル・ウォーズというか、好きなアーティストを使ってどれだけ面白いことができるかをやらせてもらった感じですね。大阪のトラック・メイカーも参加したんで。

いや、良い企画だと思いますよ。トーフビーツについてはどう思う?

B:才能があるなって思います。あの曲の構成は自分にはできないんで、勉強になりますね。好みじゃない部分もありますけど。

ふだん向いているところが違うからね。でも、違うトライブが、リミックスという作業を通じて同じ盤にいることは良いよね。

B:ナード的な物も俺は良い物があると思うし、否定するつもりはないですよ。自分の好きものにもそういう音楽はあるし。ただ、音の鳴らし方とかで音色でちょっと物足りなくなってきちゃうかなって。彼のスタンスは好きですね。斜めに見ていそうな感じとか(笑)。

そこへいくとブッシュマインドや〈SEMINISHUKEI〉って、決して人付き合いが得意なほうではないからねー(笑)。

B:そうなんですよ(笑)。だからいまいち広がんないっていうところがあるんすよね。

それは8年経っても変わらない?

B:〈SEMINISHUKEI〉のメンバーでアルバムを出したのって、3、4人とかですよ。総勢30人くらいいるなかで。本当は仲間うちで作品を出して競い合うっていうのが俺の理想なんですけど、なかなか実現できないですね。あ、でもDJ Highschoolってやつが1ヶ月前にすごく良いアルバムを出したんです。かなり刺激になりましたよね。

へー。

B:Highschoolはすごいっすよ。彼は、どんなジャンルでも興味を持ったらすぐに自分でやってみて、簡単な方法でかっこいい物を作ることができるんですよ。もちろん掘り下げもするんですけど。DJ以外にラップやハードコアのバンドもやっているし。

いろんな人が参加しているんだけど、OVERALLというトラックメイカーも面白いと思った。

B:才能があるっすね。レコードの堀り方も尋常じゃなくて、DJもすごくいいんですよ。やっちゃんとクマと3人でミックスを聴いて、みんな「これはヤバい」ってなって、「〈SEMINISHUKEI〉に入ってもらおうか」って。2マッチ・クルー周辺の人間とも仲いいんで、その影響もでかいんじゃないかと思います。

今回は、トラックメイカーも何人もフューチャーされているんだけど、これは土台となるものをタカアキ君が作って、それに手を加えてもらうの? 

B:いや、その逆で、もらう方が多かったすかね。それを俺が料理してちょっと足したりとかループを変えたりですかね。OVERALLと作った曲はけっこうシンプルで、最初のピアノとサンプリングがOVERALLで、途中から入ってくる303を俺が入れた感じで、あとは展開を自分でアレンジしました。なんかひと味足すっていう。

ひとりで黙々と作るよりは誰かとやっていた方が楽しい?

B:作業によりますね。細かい作業はひとりでやりたいです。ただ、その土台になったりする部分で自分にないものが入ったりすると展開が一気に変わったりすることがあるんですよ。たとえばハットを入れてもらったとか。そこから自分の発想が増えていったりもする。フィードバックが起きたときの感覚がすごく楽しいんです。バンドってひとじゃなくてみんなで作るじゃないですか? 僕はやったことがないんでわからないんですけど、そういう感じなのかなって。だからもちろん相性が悪いひととかはなかなかできなかったりするんですけど、気が合うと、あっという間に仕上がることもあるんで。

今回の作品は、タカアキ君のなかで予定よりも伸びた?

B:完成は伸びましたね。ホントにギリギリでしたからね。ラップ取り終わった後にもトラックを最後までいじってた曲とかがあったんで。あと連絡が大変だったっす。

それ、『Bright In Town』のときも言ってたじゃん(笑)。

B:セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。

はははは。それで井坂さん(担当A&R氏)に怒られたと?

B:いや、それで予定を見たら俺が1週間早く勘違いしていて。まだいける、みたいな。3枚目なんでサッとできるトラックメイカーを目指したかったんですけど。

ジャケの絵は〈フューチャー・テラー〉でも書いているひとなんでしょう?

B:そうですね。本人たちは服飾をやっていたりしていて。ROCKASENとかもそうですね。同じクルーみたいです。

アートワークに関してディレクションはしたの?

B:一応、ホークウィンドの『スペース・リチュアル』を(笑)。

ホークウィンドって、ヒッピーだよ(笑)。

B:いやいや、レミーはヒッピーじゃないですよ!

いや、レミーはヒッピーだよ(笑)。

B:まあ、時代的には、そういう要素もあったかもしれないですけどね(笑)。

しかし、なんで『スペース・リチュアル』だったの?

B:サイケデリックの数ある名盤で、自分のなかではこれが金字塔なんです。今回は、そのくらいの作品を作りたかったんです。ワックワックにアートワークをお願いするのは決まっていたんで、じゃあ、何をお願いするのかってなったときに、彼らにこの絵を描き直してもらってリミックスしてもらったら面白いんじゃないかなって。ヒップホップのアルバムにホークウィンドっていう設定自体もないと思うんで。あとホークウインドのファンのひとが間違って手に取ったりしないかなっていう(笑)。

それは感想を聞きたいね。

B:冒涜だとかいって、怒る人とかもいそうですよね(笑)。

ところで、タカアキ君はなんでそんなにヒッピーを嫌うの? ヒッピーいいじゃん。ある意味では、俺らの先輩とも言えるよ。

B:まぁ、切り開いてくれたヒッピーもいたかもしれないんだけど、ラヴ&ピースで全部片付けるっていうのは、ちょっとなっていうのがあるんですよ。裏側がないっていう。その裏側が重要だと思っているんで。そこはあえて見せるものでもないと思いますけど。

ブッシュマインドのドリーミーな裏側だね。

B:あと、俺が良いヒッピーに出会っていないんだと思います(笑)。面白いヒッピーに出会ったら、俺の考え方も変わるかもしれないですね。ダメなヒッピーってたくさんいるじゃないですか。こうありたいっていう理想像と自分が思うヒッピーの姿は全然違うというか、ある程度ひとぞれぞれの美学やルールが必要だと思うんですよ。そこがぶつかるのはしようがない。

でも、8年後には変わっているかもしれないよ(笑)。

B:そこは確認させてください(笑)。「野田さん、8年経ちました」って(笑)。

でもさ、タカアキ君は、60年代とかも好きそうじゃない?

B:サイケデリックも、やっぱりブルー・チアーとか。ブルー・チアーはヘルズ・エンジェルスじゃないですか。アイアン・バタフライは、ヒッピーっぽいすね。あのバンドは大好きですね。あの人たちに出会えたら、ヒッピーが好きになるかもしれないですね(笑)。

interview with Mourn - ele-king


MOURN

Indie RockGarage

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 この感覚、かつて体験したことがある、と過去の記憶をめぐらしてみて、あ、と思い出した。「僕はペイヴメントとかピクシーズが好きなだけ。ペイヴメントの歌詞をちゃんと理解できたらどんなにハッピーなんだろう! そんな気持ちで曲を作ってバンドで歌って……気がついたらいまここにいる。ほんとにそれだけなんだ」。1995年、最初のアルバム『グランポー・ウッド』を発表したベン・リーに最初に取材をしたときのことだ。彼は当時17歳、どんなにやんちゃな青年なんだろう、と想像して訊ねてみると、好きなバンドの影響を受けて、好きなように自分もギターを手にしてみただけなんだ、というあっけらかんとした回答。そのときの、肩すかしを食らいつつもどこか晴れ晴れとした感覚を、いま、このスペインの若き4人組を聴きながら思い出している。

 いや、もしかするとベン・リー以上に冷めているかもしれない。まだ全員10代というスペインはバルセロナを拠点にするモーン。結成からわずか2年でワールド・ワイド・デビュー、さらにはピッチフォークなどのメディアで高い評価を得るにいたった彼らにはたちまちのうちに注目が集まることとなった。パンクやオルタナティヴ・ロックに触発されたというそのスタイルだけ取り出せばたしかに稚拙ではある。成熟という言葉からはほど遠く、演奏を動画などで見るかぎりはあどけない様子も伝わってはくる。だが、どこまでむき出しにするのかと不安にさえなる荒削りな演奏、感情を闇雲に発露させる場所というより、感情を淡々と刻みつける場所といった感じで、不気味なまでに薄暗い表情を時折見せるヴォーカル、どこか冴えない生活や風景をひたすらに言葉に置き換えたような歌詞……これが果たして10代の姿か、と思えるほどに醒めた表情をうかがわせるのも事実。「ペイヴメントの歌詞を理解できるアイツはカッコいいな」と無邪気かつアイロニカルに歌っていたあの頃のベン・リーを部分的に思い出させるが、モーンは根底にもっと切実な何かを抱えている印象さえあるのだ。

 とはいえ、今回メールで取材をした際の下記回答を読んでもらえばわかるように、ほとんど難しいことを語らない、語りたがらない。その素っ気ない対応はモラトリアムとも思えるもので、この自我を包み隠したような態度がその成長と同時にどう崩壊し、再構築されていくのかを静かに見守っていたい、と、彼らの親世代である筆者は思うのだった。

■Mourn / モーン
バルセロナを拠点として活動する4人組バンド。〈キャプチャード・トラックス〉とサインし、2015年にファースト・アルバム『モーン』をリリース。デビュー前からメディアの高い評価を受けるなど注目を集めている。

ソニック・ユース、スーパーチャンク、アーチャーズ・オブ・ローフ、サニー・デイ・リアル・エステイト、カーシヴとかみたいな90年代のアメリカのバンドに浸かってたわね。

あなたがたはまだ15~18歳とのことですが、幼馴染みや学校の仲間同士なのでしょうか? いつ、どのようないきさつでバンドが結成されたのか教えてください。

カーラとジャズ(以下C&J):カーラとジャズは3年前から同じ学校で人文科学を学んでいたの。レイアとジャズは姉妹だからいっしょに育ってきたし、アントニオとジャズは11歳のときからの友だちなのよ。

あなたがたのホームタウンのバルセロナでは、あなたがたと同じ世代の友だちはどういう音楽をおもに聴いているのですか? スペインのドメスティックな音楽シーンはどういう状況なのでしょう?

C&J:うーん、地元のガレージ・ロックをたくさん聴いたけど、他にも商業的なものとか カタラン・ルンバ(catalan rumba)とかも聴いた……けどやっぱり、わたしたちはソニック・ユース、スーパーチャンク、アーチャーズ・オブ・ローフ、サニー・デイ・リアル・エステイト、カーシヴとかみたいな90年代のアメリカのバンドに浸かってたわね。他にもイギリス、スウェーデン、ベルギー、オランダのバンドも大好き。いまはインターネットがあるから、世界のどこにいてもそういう他国のバンドのレコードやニュースを簡単に見つけることができるでしょ。もちろん、スペインのミュージック・シーンもおもしろい。とくにバルセロナにはたくさんのクールなバンドがいるのよ。なかでもアニミック(Anímic)とBeach Beach(ビーチ・ビーチ)が好きだな。

わたしがある程度知っているかぎり、スペインには80年代頃から独自のインディ・シーン、インディ・レーベルがあり、日本でも古くは〈エレファント〉や〈マンスター(Munster)〉などがインディ・ロック・ファンの間で人気でした。最近では、〈マッシュルーム・ピロー(Mushroom Pillow)〉というレーベルや、デロレアン(Delorean)、ポロック(Polock)、エル・コルンピオ・アセシノ(El Columpio Asesino)、チャイニーズ・クリスマス・カーズ(Chinese Christmas Cards)などのバンドを個人的にはチェックしています。あなたがたはこうした他のスペインのインディ・ミュージック・シーンの中でどういうポジションにいるのでしょうか?

C&J:私たちは自分たちがバルセロナのインディ・ロック・シーンにいると思っているわ。私たち、町の小さなパブや会場で演奏をはじめたからね。マデイ(Madee)、オハイオス(Ohios)、レッド・ベアズ(Red Bears)、ザ・サワーズ(The Saurs)、ダ・サウザ(Da Souza)などとも共演したのよ。

私たちは自分たちがバルセロナのインディ・ロック・シーンにいると思っているわ。

スペインには「インディ・ミュージック・アウォード」という賞があるようですが、あなたがたの世代にとってもこうしたアウォードは一つの通過点、目標だったりするのですか? もしくは、もっと現場でホットなヴェニューやギグ、イヴェントやフェスなどがあれば教えてください。

C&J:賞は私たちにとってゴールではないわね。ただ曲を書いて演奏しているときに楽しみたいだけなの。ただ、〈アポロ(Apolo)〉という私たちのお気に入りの会場で演奏するのが本当に好きで、そこで演奏するときは気楽でいられるわ。前回そこで演奏したとき、本当にすばらしく魔法のようで、次にまたあそこで演奏するのが待ちきれないの。あと、〈プリマヴェラ・サウンド(Primavera Sound)〉っていう私たちが 好きなフェスの一つで演奏したときも興奮したわ。バルセロナには他にも〈ソナー〉っていうかっこいいフェスがあるんだけど、こっちはエレクトロ・ミュージック寄りね。

では、具体的にはどういうバンド、音楽にシンパシーを感じて楽器を手にしたりバンドを組もうと思ったのでしょうか? 

C&J:初めてわたしたちをギターを手に取って音楽を作るように駆り立てたのは、パンク・バンド。ラモーンズ、クラッシュ、セックス・ピストルズ……みたいな。私たちは本当にパンク・ミュージックが好きなの。わたしたちがいっしょに演奏をはじめたときは、PJハーヴェイ、ローリング・ストーンズ、ラナウェイズ、クラッシュ、エリオット・スミスなどのカバーをいくつかやっていたわね。でも、最終的に彼らのどういうところにインスパイアされたかっていうと、音と詩の力強さ、彼らが生きていた瞬間、彼らの働き方についての好奇心、彼らのいろいろな考え方、メッセージや彼らの感じ方、わたしたちができる見方、記憶に深く残って、素晴らしい! と思わせるいくつかのコード……それこそさまざまなの。それらのすべてがわたしたちを突き動かし、毎日楽器を弾かせつづけているんだと思うわ。

初めてわたしたちをギターを手に取って音楽を作るように駆り立てたのは、パンク・バンド。ラモーンズ、クラッシュ、セックス・ピストルズ……

あなたがたが実際にオリジナルの曲を作りはじめたとき、お手本にしたソングライターはいましたか? そして、いまのあなた方が最高と思えるソングライター、コンポーザーは誰ですか?

C&J:そうね、わたしたちはエリオット・スミスのようなリリックや、そしてパティ・スミスのパンク調のポエトリーが本当に大好きなのよ。後は、デヴィッド・ベイザン(ペドロ・ザ・ライオン)やマーク・コズレク(サン・キル・ムーン)なんかも本当にクールなリリックで大好きよ。私たちは物語を作るのが好きで、言葉で生活に対しての感じ方、不安感、いらだたせるものや話したいものについて表現しているの。もちろん、好きな映画や本、写真など影響されたものはなんでも曲にしたいけど、生活の中から感じることを歌にすることが好きなのよ。

それは、あなたがたの場合、スペインという国、バルセロナという町に暮らす一員としての社会への意識が活動のバネになっているということでしょうか?

C&J:そう。わたしたちはスペインのいまの状況に憤りを感じているわ。でも、政府に代わって主張しているつもりはないし、曲を書き演奏しているときはそういったことは避けているの。ただ、それが好きだからそうしているし、少なくともいままではそれが衝動的だったのは間違いないところ。私たちの必要性が評価されているとして、それがすべて社会に対してのそういう憤りの反映ではないとは思うけど、やっぱり社会に対して何かを感じてしまうのよ。おそらく、いつかわたしたちは音楽とこういう考え方、社会への見方を関わらせていくつもりよ。いままでは私たちはライヴではそういうことをとりあえずいっさい忘れて、演奏を楽しみたかったけど、いつかはちゃんとカタチにしたいわね。

僕たちは偽ることなしに誰よりもいいと思っているし、自分たちの音楽が好き、世界には好きなバンドも多くいるから演奏しているってだけなんだ。

あなたがたが〈キャプチャード・トラックス〉と契約することになったきっかけをおしえてください。マック・デマルコなど新たな世代のヒーローへのシンパシーもきっかけになりましたか?

C&J:きっかけはブランク・ドッグスのマイク・スナイパー(レーベル・オーナー)がニュースレターで私たちのスタジオでの映像を見てくれてね。興味を持ってくれてたらしいの。で、アルバムが出たときにわたしたちのスパニッシュ・レーベルである〈ソーンズ(sones)〉が連絡してくれたのよ。何が起こるかわからないわ。もし、彼が映像を見てくれてなかったらいまこうやって話せてないわね(笑)。

そのマック・デマルコには1月に日本に来たときに取材したのですが、そのときに彼はこのように話していました。「チープでロウ・ファイなサウンドにしているのには狙いがある。ウェルメイドな音作りに飽き飽きしてしまったのと、どこか“Weird”な音を出すことそのものが刺激的だから」。では、あなたがたの場合、たった2日間でアルバムを録音してしまうというようなその姿勢に、何か確信犯的な意識はありますか?

C&J:なるほどね。そうね、わたしたちの場合は多くの資金を持っていなかったからっていうのがまず一つめの理由。それとライヴを録音したかったからというのもあるわ。おかげでより楽しく、本当に新鮮で信頼のできるものができた。それはわたしたちのオリジナルなやり方であって、そこにいっさいの策略はないの。たしかにレコーディングはたった2日間だったんだけど充実していたし過不足もなくて。録音はバルセロナと私たちの町に近いアレニス・デ・マルという町の〈ノーチラス(Nautilus)〉というスタジオでしたわ。そこはとても美しくてたくさんのカーペットがあって、本当に高い天井の部屋で。ジャズの父親のバンドのドラマーでもある ルイース・コッツ(Lluís Cots)にプロデュースしてもらって、わたしたちはとても快適な雰囲気の中、作業をしたの。安心していられたわ。

ピッチフォークでも高い評価を得て、世界規模であなたがたのエネルギーが注目されるようになりましたが、そうした状況の変化についてどう受け止めていますか?

C&J:いやあ、そんな実感もまだわからないし、野望とかを抱くような感情もまだ持っていないんだよ。高い評価をもらってどうですか? って訊ねられることもあるけど……本当にまだ何もわからないんだ。そういうことを考えて活動しているわけじゃないからなあ。ただ、僕たちは偽ることなしに誰よりもいいと思っているし、自分たちの音楽が好き、世界には好きなバンドも多くいるから演奏しているってだけなんだ。

CLUB JAZZ definitive 1984-2015 - ele-king


小川充
CLUB JAZZ definitive 1984-2015

(ele-king books)
定価:2600円(+税)
※5月29日発売

Amazon
Tower
HMV

 ele-kingがお送りする好評ディスク・ガイド“definitive”シリーズ第4 弾は、『クラブ・ジャズ・ディフィニティヴ 1984-2015』。著者はこのジャンルの第一人者、小川充です。

 そもそもクラブ・ジャズとは何でしょう。実はこのターム、ネオアコと同様に日本でのみ通用する和製英語なのです。
 DJカルチャー以降のレア・グルーヴ、アシッド・ジャズ、トリップ・ホップ、アブストラクト、ニュー・ジャズ/フューチャー・ジャズ……をひと括りにクラブ・ジャズとするばかりでなく、ニューウェイヴ、ヒップホップ、R&B、ハウス、テクノ、ドラムンベース、IDM、ダブステップなどなど、クラブのスタイルにジャズ/ソウルが注がれたときにもこのタームは使われています。多かれ少なかれ、ブラック・ミュージック/ラテン・ミュージック/アフロ・ミュージックの要素が混ざっています。実に感覚的なタームですが、基本的にはレア・グルーヴ/アシッド・ジャズの流れから来ています。

 ナイトクラブでジャズで踊ることが若者文化として大衆化されたのは、UKが最初でした。ポップの土壌において、その重要なきっかけとなったのがスタイル・カウンシルとワーキング・ウィークであり、EBTGやシャーデーです。ここにレア・グルーヴが流れ込み、やがてセカンド・サマー・オブ・ラヴが絡んで来ます。それがアシッド・ジャズへと展開します。レア・グルーヴとはかんたんに言えばファンクですが、アシッド・ジャズとはクラブ・ミュージックの折衷主義のUKソウル的な表出でした。そこにはヒップホップ/ハウス/レア・グルーヴが混ざっています。
 アシッド・ジャズは、アシッド・ハウスとは別の、クラブ・ミュージックにとってもうひとつの重要な水脈を用意しました。日本ではテクノがすごかったとよく言われていますが、実はそのテクノと双璧をなすほど……いや、少なくとも1991年~1992年の時点ではテクノ以上に猛威となっていたのがアシッド・ジャズのシーンです。商業的にも成功していました。だから日本には国際舞台で評価されているアシッド・ジャズの作品が数多くあります。リキッドルームの大晦日を担当していたのは、石野卓球たちの前はUFOだったことを忘れないで下さい。

 『クラブ・ジャズ・ディフィニティヴ』を見れば、クラブ・ジャズ30年の歴史(縦軸)と一緒に、そのエクレクティックなさまの、横の広がりもよくわかると思います。90年代初頭の渋谷系にもヒントを与えたモッズ系ニューウェイヴ、温かくソウルフルなクラブ・サウンド、黒くファンキーなハウス・ミュージック、スタイリッシュで洒落たダンス、あるいはテクノにせよダブステップにせよ、そのスタイルが成熟していったときの成果の数々がクラブ・ジャズと括られました。
 増ページで1000枚以上を紹介する、小川充、入魂の一冊です。渋谷宇田川町のDMRのジャズのコーナーに足繁く通っていた人はもちろんのこと、近年のマーラの活動、あるいはフライング・ロータスやロバート・グラスパーあたりに興味を持っている人はぜひ手にとってください。(もちろん、初回は電子書籍アクセスキー付きです)

interview with OMSB - ele-king

 世界中を見回したうえで、なお天才と呼ぶにふさわしい(本気でそう思う!)OMSBが、セカンド・アルバム『Think Good』をドロップした。音楽ファンの期待と予想を軽々と超える、余裕の傑作だ! サウンドの鳴りかた、リズムの作りかた、ラップの乗せかた――どこを取っても、随所に「こんなの聴いたことない!」という驚きをもたらしてくれる。オリジナリティなど幻想? もはや新しいものなどない? OMSBを聴いてからもう一度考えて欲しい、マジで。フレッシュネスとユニークネスが詰まった本作には、未知の喜びが詰まっている。そして同時に、堂々たるヒップホップのたたずまいでもある。OMSB自身が口にした「なににも劣っていない」という言葉は、大げさではない。ナチュラルに「なににも劣っていない」。『Think Good』を中心に、天才・OMSBの、現時点でのスタンスや音楽に対する考えを聞かせてもらった。

■OMSB / オムスビーツ
日本のヒップホップの新世代としてシーンを牽引するSIMI LABのメンバー、Mr. "All Bad" Jordan a.k.a. OMSB。SIMI LABにおいてはMC/Producerとして活動。2012年にソロ・アーティストとしてのファースト・アルバム『Mr. "All Bad" Jordan』を発表。2014年には、自身も所属するグループSIMI LABとしてのセカンド・アルバム『Page 2 : Mind Over Matter』をリリース。多数のフリー・ダウンロード企画のほか、2014年には〈BLACKSMOKER〉よりインスト作品集『OMBS』も発表。その他、KOHH、ZORN、Campanella,、PRIMAL等、様々なアーティストへの楽曲提供・客演参加を果たしている。

ケンドリック・ラマ―はまだ聴けていないのですが、ぜんぜん負けているとは思っていないですね。


OMSB
Think Good

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新作『Think Good』は、かなりの傑作だと思いました。前作『Mr. “All Bad” Jordan』があって、SIMI LABのセカンド・アルバムも出て、『OMBS』というビート・アルバムも出て、そして、今作になるわけですが、なにか特別に意識したことはありますか。

OMSB:いつも通り、ヤバいのを更新したいという感じですね。全包囲的にヤバいのを。ただ、いまの段階だと、自分の内面についてのことが多かったかなと思います。

リリックとかビートとかは、作り置きが多かったんですか。

OMSB:ビートは普段から作っていて、その中で自分用と決めたものをストックしているんです。それで、そこからリリックを書いていって、曲になるやつとならないやつを決めていく感じです。

最近は、菊地凛子さんや入江陽さんの作品での客演など、他ジャンルとの関わりも印象的でした。そういう経験が作品にフィードバックするようなことはありましたか。

OMSB:少なからずありますけど、直接的ではないと思います。洋邦問わず、「やられた!」と思ったものに、刺激をもらっているということのほうが大きいです。菊地凛子さんや入江さんにも「やられた!」という感じがあって、そういうものからどんどん盗むというか、越えようとする。そういう意識のほうが強いです。

最近、「やられた!」というものはなにかありましたか? ケンドリック・ラマ―(Kendric Lamar)の新作など話題ですが、聴かれましたか?

OMSB:じつはまだ聴いていないんですよ。

ケンドリック・ラマ―の新作を聴いて「すごい傑作だ!」と思ったのですが、そのあとOMSBさんの新作を聴いたら、「余裕で匹敵しているよ!」と思って、うれしくなりました。

OMSB:まだ聴けていないのですが、ぜんぜん負けているとは思っていないですね。

その態度には、本当に説得力があります。ナチュラルに勝負していますよね。


ファーストで届きづらかったものがたくさんあると思うので、それを届けるのはどうしたらいいかと考えました。自分のことを歌っていても人に届く余地があるんじゃないか、とか。

今作を聴いたとき、すごく王道のヒップホップっぽいという気がしました。いままではジャンルの外へ外へ行く意識みたいなものを感じ取っていたのですが、今回は、ビートやリリックやスタンスなど、もう少しヒップホップのマナーみたいなものを意識されていたように思いました。

OMSB:ファーストも「外へ」というよりは、単純に好きなヒップホップがそれだった、という感じですよ。好きなヒップホップの感じを自分でトレースしていました。ただ今作に関しては、音の鳴りかたとかトラックの中での振る舞いとか、あと自分の内側について語っていたりもするので、ヒップホップらしさ――これは説明できないですけど――を感じる部分はたくさんあると思いますね。

“Think Good”とかもポジティヴですよね。ヒップホップ的なポジティヴさ、というか。SIMILABのアルバムには“Roots”という曲があって、メンバーがそれぞれ自分のルーツについてラップしています。“Think Good”も、その続編として聴いていたところがあります。そうやって自分の内側を語ろうというモードになっていることについては、理由はあるんですか。

OMSB:ファーストで届きづらかったものがたくさんあると思うので、それを届けるのはどうしたらいいかと考えました。自分のことを歌っていても人に届く余地があるんじゃないか、とか。ファーストは喚き散らしていたように受け取られていたようです、俺はそんなつもりはなかったんですけど(笑)。

ファーストは鮮烈だったし、たしかにそういう印象があったかもしれませんね(笑)。

OMSB:べつに隠居しているわけではないし、そのくらいガツンと行っていいと思うんですけどね。ファーストからすでに達観しているのも気持ち悪いと思うし。ファーストはそういう意味で、若気のいたりみたいですごい好きです。

もともとウータンに衝撃を受けたという話は、よくされていますよね。ファーストとかSIMI LABのトラックなどを聴いていると、僕なんかはRZAやカンパニー・フロウを思い出します。今回は、曲中にEL-Pの名前が出てきますよね。90年代のサンプリング主体のヒップホップと2000年代前後のビートがもっと変態的になっていくヒップホップと、同時に摂取していたんですか。

OMSB:周期がある感じですね。90'sなら90'sだけを聴く時期、サウスならサウスだけを聴く時期、ウエッサイならウエッサイを聴く時期……という周期がずっとあります。季節とかも関係なく、レゲエとかダブとか、ひとつ聴くとそれをずっと聴いています。それこそ、椎名林檎だったら椎名林檎だとか。そのサイクルがずっとあって、その中に新しいものが入ってきたりします。

なるほど。僕なんかからすると、「なんでこんなサウンドが出きちゃうんだ!?」って思ったりします。どういうサウンドに影響を受けて、どういうサウンドを目指すと、こういう音になるんだろう、と。

OMSB:ビートを作るさいは、たとえばRZAとかEL-Pのトラックを真似ようというよりも、イズムみたいな部分を意識していますね。どうしてこの人たちがヤバいと言われるのかを考える、というか。あの人たちのヤバさは、変なところでループさせるとか奇怪なドラムだとか、そういうところだけではないと思うので、それを自分なりにやります。その人たちを頼りにしているんではなくて、自分の中で鳴らしたい音を、レコード聴いて刺激をもらいながら想像する感じです。


たとえばRZAとかEL-Pのトラックを真似ようというよりも、イズムみたいな部分を意識していますね。どうしてこの人たちがヤバいと言われるのかを考える、というか。

そういえば、“Ride Or Die”のサビで“Tom's Diner”のメロディが歌われていますよね。これも、すごく意表を突かれました。

OMSB:あれは、頭の中で鳴っていたから、「じゃあ、リリック付けよう」というノリですね(笑)。合いそうだったので。

そういう遊び心を感じて楽しかったです。ファンキーなネタも多かったですが、レア・グルーヴなどは好きなんですか。

OMSB:好きというか、好きなネタを探しているときにレア・グルーヴが多い、という感じですね。

今作はけっこうサンプリングが多めですよね。

OMSB:サンプリングばっかりですね。

具体的に、ネタとして抜きやすいミュージシャンとかはいるんですか。

OMSB:けっこう無理矢理抜くことが多いので、いちがいになにがいいとかは言えないですね。ラテンが入っているのが好きなので、〈フライング・ダッチマン(flying dutchman)〉レーベルとかは好きです。あとは、〈キャデット(Cadet)〉レーベルとか。

たとえば、元ネタの定番があって、定番の抜きかたがあって、そこにビートを重ねて……みたいな方法論が少なからずあったと思うんです。でも、OMSBさんに限らず、若い世代の人たちは、そういうものからすごく自由だという印象があって、とても新鮮です。これは、必ずしも世代的なものではないかもしれませんが。

OMSB:「自分は他とはちがう」という思いは誰でもあると思うんです。かぶりたくないからちがうものにする、というすごくシンプルな態度。ただ、ちがうものにしたらそれがかっこいいかといえば、そういうわけでもないので、今度はそれをかっこよくする。

聴いたことないようなかっこいいものを作る、ということですよね。そのときに、どういうところを重要視するんですか。

OMSB:音色とリズムと、あとは質感ですかね。でも、作っている段階で変わってきます。替えがきかないものを目指している感じです。

今作は、ラップもすごく多彩なスタイルに挑戦していますよね。

OMSB:そうですね。いろいろやりました。いろいろ挑戦した中でも、間を使って余裕を持たせるという意味では、“Gami Holla Bullshit”がいちばんバシっときたかなと思います。“Think Good”も尺が長いので、いろいろやりました。

“Gami Holla Bullshit”は、途中でテンポが変わっておもしろいですよね。この曲はMUJO情さんのトラックですが、今作はトラックメイカーの起用がいくつかありますね。

OMSB:MUJO情は、たまにトラックを送ってきてくれるんです。送ってもらった中で速攻リリックが書けたものがあって、アルバムに使いたいと思いました。それが“Gami Holla Bullshit”です。あと、Hi’Specのトラックなんかも、聴かせてもらった中でいいなと思ったやつです。

「Scream」ですね。あのギュルギュルなるトラックは、そうとうヤバいですよね。

OMSB:まともじゃない(笑)。

あれは、かなりいいグルーヴになっていましたよね。あのトラックにラップを乗せるのも、すごく楽しそうでした。

OMSB:あれは、自分の曲の中でもけっこう好きですね。


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「ここにいてどれだけ平静を保てるかゲーム」みたいな曲になりました。


OMSB
Think Good

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“Goin' Crazy”のトラックを手がけたAB$ Da Butchaさんは、どういう人なんですか。

OMSB:AB$は、Sound Cloudで見つけた外人さんです。自分のほうから「聴かせてほしい」って連絡して、トラックを送ってもらいました。

あのトラックも、ものすごくよかったです。サンプリングの気持ちよさと、すごく歪(ひず)んだ質感が最高でした。あのトラックを聴いたとき、どういうふうに思いましたか。

OMSB:「これはもうリリックを乗せるしかない!」という感じでした。というか、すぐにリリックが思いついて書けたので、もう「これ、ください」という感じです(笑)。

Sound Cloudで聴いて、「このトラックはもう俺がやるしかない!」という感じだったんですね。Sound Cloudはけっこうチェックしているんですか。

OMSB:そうですね。

しかも、“Goin' Crazy”はポッセカットみたいになっていますよね。あの曲のコンセプトは、どういうふうに出来上がったんですか。

OMSB:最初に考えていたことが、「人の前に出る人はおかしくなってしまうのかな?」っていうことだったんです。クスリやっちゃうとか奇行に走っちゃう、とか。でも、「そうはなりたくない」と思って。「というか、おかしくなっちゃうヤツのほうが普通だろう」とか。そんなことを考えていたから、「ここにいてどれだけ平静を保てるかゲーム」みたいな曲になりました。

この曲には、B.I.G. JOEさんのほかに、野崎りこんさんがラップで参加していますよね。僕も以前からYou Tubeなどで見ていたのですが、このトラックの野崎りこん映えはハンパないと思いました。今回、いちばんハッとしたかもしれません。

OMSB:喰いにきてくれたなと思いました。

野崎さんのラップって、けっこう繊細なイメージがありました。だから、きれいなピアノ・ループのトラックとかに映えるのかな、とか勝手に思っていたんです。でも、今回“Goin' Crazy”を聴いて、「このファンキーなトラックと相性のいいラッパーは誰だろう?」と思ったら、野崎りこんさんで驚きました。

OMSB:かなり、かましてくれましたよね。

しかも、かなりエグい言葉とか固有名を入れてきてますよね。「俺だってパスピエにフィーチャリング呼ばれたい」とか、ヒップホップ以外ではあまり歌詞にできないような内容じゃないですか。

OMSB:野崎くんに関しては、他人のネームドロップをできるのはいまだけだと思うので、今回は内容含めとてもよかったと思います。

なるほど。ところで、“Lose Myself”には、G.RINAさんと藤井洋平さんが参加していて、ラストは藤井さんのエレキ・ギターが入ってきます。あのギターもかなりドキっとするのですが、あのアイデアはどこから出てきたんですか。

OMSB:最初はひとりでやろうと思っていたのですが、そのままだと平坦な曲で終わっちゃう気がしました。それで、ギターが欲しいなと思ったときに、少しまえに紹介してもらっていた藤井さんに頼むことにしたんです。藤井さんは、今年の元旦にリキッドルームでソロをやっていて、それを観て「これだ!」と思ったんです。あと、女の人の声が欲しいとも思って、ここにフィットする声と言ったらやっぱりG.RINAさんだろうということで頼みました。

G.RINAさんも藤井さんも、すごくハマっていますよね。曲として聴くと、「こういう発想があったんだ!」と思って、すごくドキっとします。とくに、最後にギターソロでアガっていく展開は、本当に新鮮でした。それで、最後の“World Tour”にいくわけですが、ここでのOMSBさんのラップも新鮮ですよね。

OMSB:そうですね。この曲に関しては、フラットにラップしてもつまらないというところがありました。「自分にはこれが向いていない」「自分にはこれはできない」って言ってなにかをやらないのはもったいない、と思って、いろいろやりました。

そうですよね。「こういう引き出しもあるのか!」という感じで、すごく楽しかったです。ブルースっぽさもあるし、これはこれで黒いグルーヴ感がありますよね。

OMSB:ありがとうございます。いちばん好きなのが“World Tour”かもしれません。あと、それに近いくらい“Think Good”も好きです。もちろん、どの曲もかなり思い入れがあるのですが。

“World Tour”のたたみかけるようなラストは、すごく感動的ですよね。

OMSB:“World Tour”では、単純にピースで終わりたいと思いました。自分で言うのもなんですが、明るい曲なのに涙が出るものを作りたい、という気持ちがあって、自分の中のそういう部分を探しました。


“World Tour”では、単純にピースで終わりたいと思いました。自分で言うのもなんですが、明るい曲なのに涙が出るものを作りたい、という気持ちがあって、自分の中のそういう部分を探しました。

“World Tour”や“Think Good”を含め、リスナーは今作について、すごくポジティヴな感触を受けると思うんです。OMSBさんは、ここ数年で自分を取り巻く状況なども変わったと思うのですが、気持ちの部分で変わったこととかあったりするんですか。

OMSB:たとえば、SIMI LABのセカンドのときなんかはQNが辞めるとかいう話のあとだったから、すごく疑心暗鬼な部分があって――ファーストのときからそういう感じはあったのですが――「音楽作る以外なにをする必要あんの?」とか「頭下げる必要あんの?」とか思っていました。そういう気持ちは現在もなくはないですが、いまはもう少し、いろんな人とつながっていけたらいいな、という気持ちがあります。それが、変化と言えば変化かな。

なるほど。“World Tour”には、そういう雰囲気を感じます。作品を発表すれば、単純に人のつながりとかも出てきますもんね。そのような人との関わりについては、どのように感じていたんですか。

OMSB:単純に1対1で挨拶して話すときに、そういうことができない人もいて、それはめんどくさいと思ったりすることもあります。でも、基本的にはおもしろい人が多いと思いますね。ただ、やりたいことをやるだけで食える世界ではないように見えてきてしまっているのは、嫌ですね。人とつながって「どうも、よろしくお願いします」って言ったりとか、そういうのが少なからず必要だというのが、ちょっと……。やってもらっていてそういうふうに感じてしまうのは、申し訳ないですけどね。「作って、人に聴かせて、それがヤバい」で済む話ではない。そこは、夢を持ち過ぎていたかなと思います。

意外と社会的なつながりがあった、ということですね。

OMSB:すごい金持ちになったら会計士とかいうのが必要になるかもしれない。そういうことを考えると、「めんどくせー!」って思います(笑)。単純に、仲良いヤツとか大事な人とか、そういう人たちといろんなことを共有しながら、ヤバい音楽を発信できればそれだけでいいのにな、と。なんか、無駄が多すぎる気がしちゃいます。そういうことだったら、音楽抜きで関わりたいかもしれません。たまたま出会った人がめちゃくちゃヤバい人だった、みたいな。

“Orange Way”という曲も、ちょっとシリアスでちょっとポジティヴですよね。この曲も、“Think Good”や“World Tour”と同じようなモチヴェーションで書いたものですか。

OMSB:もう少し暗い気分だったかもしれません。

将来生まれてくるかもしれない子どもに対して、最後に「あと、MPCも教えたい」とあるのは、けっこうグっときました(笑)。

OMSB:それが、いちばん本音です(笑)。クソ生意気でも尊敬できなくても最悪しょうがないから、МPCを教えて、そこだけかっこよかったら「よし!」みたいな(笑)。


最近、わりと主流が生音っぽくなっていると思うんですよ。ヒップホップもそれ以外も、じわじわと生音が強くなってきて、それがけっこういい感じだなと思っています。


最近、おもしろい音楽はありますか。

OMSB:最近、わりと主流が生音っぽくなっていると思うんですよ。ヒップホップもそれ以外も、じわじわと生音が強くなってきて、それがけっこういい感じだなと思っています。このあいだのBADBADNOTGOODとGhostface Killahが組んだアルバムとか。そのへんの音の出かたは、気持ちいいなと思います。

バッドバッドノットグッド(BADBADNOTGOOD)とゴーストフェイス・キラ(Ghostface Killah)のアルバムは、ジャズっぽい質感とヒップホップっぽいビート感、それとラップの混ざりかたがおもしろいですよね。ケンドリック・ラマ―のアルバムにもロバート・グラスパー(Robert Glasper)が参加していたりとか、たしかに生音をいかに使っていくかという試みは、じわじわきているように思います。OMSBさん自身は、そういう生音の試みをやろうというつもりはあるんですか。これは、まさに質問しようとしていたことなので、そういう展開になって驚いているのですが。

OMSB:自分のアルバムやSIMI LABのセカンドでも、生音を出してもらっている部分はあるんですよね。だから、そういうプレイヤーともっといっしょにできれば、とは思っています。やっぱり自分が再現できない部分もあるので、トラックを作るうえで頼みたいという気持ちもあります。「自分でここまでやったから、あとはこうしてほしい」みたいな絡みかたをしたいです。世界標準みたいなものを考えたとき、ヒップホップの中に生音が入ることというのは、けっこう大きなポイントだと思います。

そこは本当に同感です。生音のヒップホップというのは、もちろんこれまでもたくさんあったわけですが、それはヒップホップっぽいビートを生音でギリギリまで再現する、という感じでした。いまはもう少し進んでいて、「生音でしか出ないヒップホップっぽいグルーヴ感」みたいな段階にきている印象があります。

OMSB:本当にそうですよね。おもしろい音になっていると思います。

OMSBさんって、ドラムを打ち込むときにクォンタイズは使うんですか。

OMSB:使うときも使わないときもあります。「ここはかっちりハメたいから使う」とか「ハズしたいから使わない」とか、いろいろです。「ハズしたいけど入れる」とか。

なるほど。あと、ドラムの位置や響かせかたとかも、自分が聴いてきたヒップホップの記憶からすると、やっぱりそうとう異質な感じがするんですよね。そのドラムの歪(ひず)みが、またよかったりするのですが。

OMSB:俺自身としては、そんなに異質だとは思わないです。ただ単純に、聴いてきてヤバいと思ったドラムを自分のMPCに取り込んだとき、どれだけ鍛えられるかだと思うんです。単純に、ガツンとくるかどうか。

もちろん、曲によってもちがいますしね。“Storm”とかはドラムがかっちりしていて、気持ちよかったですし。


自分の生活だけできればいいとか、そんなチマチマしたことを俺は言いたくないです。

“Touch The Sky”は、「これが売れねえとか認めたくねえ」というフックになっています。そういう「売れる/売れない」については、どのように考えていますか。

OMSB:「売れる/売れない」は、絶対に重要だと思っています。それが何人だろうが、野心があるヤツや自分がいちばんだと思っているヤツがいないと、どんどん縮こまってしまうので。自分の生活だけできればいいとか、そんなチマチマしたことを俺は言いたくないです。そういうクオリティに達しているから、そういう言葉が出るんだろうとも思っているし。

これが売れたら、最高ですね。普通に流れていてほしいですよね。

OMSB:違和感はたしかにあるんだろうと思うんです。でも、ポップスっていうのは、それがポピュラーなものとしてずっと流れているから「これがポップなんだ」って思っているだけですよね。仮に、血なまぐさい曲とかが茶の間で流れまくっていたら、みんな感化されているはずで、そんなものなんだと思うんですよね。

そうですよね。いま流れている音楽も、少しまえだったらエグかったかもしれません。そもそも、ディアンジェロ(D’Angelo)が売れまくっている現状とかすごいことですし。だから、売れるために曲を作ることと、自分が作った曲が売れることはぜんぜんちがいますよね。OMSBさんは、曲を作るときに宛先みたいなものは考えるんですか。

OMSB:宛先というか、自分がヤバいと思って消化しているものを、自分のフィルターを通して「こういうのありますよ!」と言っている感じです。「超ウケないっすか?」みたいな(笑)。

まさに、最初の“WALKMAN”のときなんて、みんなそういうふうに反応したのではないかと思います。僕自身も、若い友人に「すごいのありますよ!」という感じで教えてもらいました。SIMI LABの面々は、そういう感覚は共有しているんですか。

OMSB:だと思います。ただ、全員としょっちゅう遊ぶわけではないので、うまくは言えませんが。でもとにかく、楽しんでもらいたいですね。それで、めちゃくちゃ売れてほしいですね(笑)。すごくシンプルです。

単純に楽しいアルバムでもありますよね。僕がSIMI LABやOMSBさんを人に薦めるときは、「ユーモアがあって良いんだ」ということをよく言います。今回も、ふたつのインタールードがあって、とくに“Shaolin Training Day”の素と演技が入り交じった感じには笑っちゃいました。

OMSB:考えさせる部分ばかりを作りたくはないですね。考えないで聴いてもらっていいくらいです。そう思って、インタールードなんかは入れています。そこで楽しんでもらって、不意に入ってきた言葉が刺さって、その人のためになればいいのかな、と。

アルバム一枚の中にすごいフロウの振れ幅があるので、ふとしたときに引っかかりを感じてそのまま歌詞を聴いてしまう、ということがすごくありました。本当に、いろんな人に聴いてほしいですよね。

OMSB:というか、マジでかっこいいと思うんですよね! なににも劣っていない!
――随所に「こんなの聴いたことないよ!」という部分があるので、チェックしてほしいですよね。試聴機で聴くだけでもいいので、聴いてください!


入江陽レコ発にジンタナやOMSBも! - ele-king

 洗練されたソウルとおどろくべき表現力で“歌謡曲”を更新するシンガー、入江陽。JINTANA & EMERALDS、OMSB……ジャンルも個性も異なれど、彼の傑作アルバム『仕事』のレコ発イヴェントを急角度で祝福する、すばらしい顔ぶれが報じられた。ソウルとサイケとヒップホップがしなやかに香ぐわしく交差する夜をWWWで、ともに。

6月29日(月)に渋谷WWWにて開催される入江陽『仕事』レコ発に追加ゲスト発表!
入江陽バンド編成、OMSB [DJ SET]に加えて、横浜のネオ・ドゥーワップ・バンドJINTANA & EMERALDSが出演決定です!


仕事
入江陽

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ヒップ・ホップ以降のソウル感を感じさせる歌謡曲シンガー入江陽のセカンド・アルバム『仕事』のレコ発が6月29日(月)、WWWにて行われる。この日の入江陽のライヴは大谷能生やYasei Collectiveの別所和洋含む特別バンド編成で行われ、OMSB[DJ SET]の出演も決定している。

そしてこの日、追加で横浜発アーバン&メロウ集団PPPことPAN PACIFIC PLAYA所属のスティールギタリスト : JINTANA率いる6人組ネオ・ドゥーワップバンド、JINTANA&EMERALDSの出演が決定した!

世代もジャンルもクロスオーバーして芳醇なニオイたつこの3組が登場するのはまさに奇跡。忘れられない一夜を保証します。
チケット各プレイガイドにて発売中です!

■入江陽 “仕事” Album Special Release Party
2015年6月29日(月)@渋谷WWW
OPEN 19:00 / START 19:30
ADV ¥2,800 / DOOR ¥3,300(別途1ドリンク代)
出演:
入江陽バンド
・入江陽(vocal,keyboards)
・大谷能生(sax,pc,etc)
・別所和洋(keyboards) from Yasei Collective
・小杉岳(guitar) from てんやわんや
・吉良憲一(contrabass)
・藤巻鉄郎(drums)

JINTANA & EMERALDS
OMSB [DJ SET]

TICKET:
ローソンチケット[L:72333]
チケットぴあ[P:266-155]
e+

◎入江陽 プロフィール
1987年生まれ。東京都新宿区大久保出身。 シンガーソングライター、映画音楽家。
学生時代はジャズ研究会でピアノを、管弦楽団でオーボエを演奏する一方、学外ではパンクバンドやフリージャズなどの演奏にも参加、混沌とした作曲/演奏活動を展開する。
その後、試行錯誤の末、突如歌いだす。歌に関しては、ディアンジェロと井上陽水に強い影響を受けその向こうを目指す。
2013年10月シンガーソングライターとしての1stアルバム「水」をリリース。
2015年1月、音楽家/批評家の大谷能生氏プロデュースで2ndアルバム「仕事」をリリース。
映画音楽家としては、『マリアの乳房』(瀬々敬久監督)『青二才』『モーニングセット、牛乳、ハル』(サトウトシキ監督)『Sweet Sickness』(西村晋也監督)他の音楽を制作。
https://irieyo.com/

◎JINTANA & EMERALDS プロフィール
横浜発アーバン&メロウ集団PPPことPAN PACIFIC PLAYA所属のスティールギタリスト : JINTANA率いる6人組ネオ・ドゥーワップバンド、JINTANA&EMERALDS。リーダーのJINTANA、同じくPPP所属、最近ではあらゆる所で引っ張りだこのギタリスト : Kashif a.k.a. STRINGSBURN、媚薬系シンガー : 一十三十一、女優としても活躍するMAMI、黒木メイサなど幅広くダンスミュージックのプロデュースをするカミカオルという3人の歌姫達に加えミキサーにはTRAKS BOYSの半身としても知られる実力派DJ、CRYSTAL。フィル・スペクターが現代のダンスフロアに降り立ったようなネオ・アシッド・ドゥーワップ・ウォールオブサウンドで、いつしか気分は50年代の西海岸へ...そこはエメラルド色の海。エメラルド色に輝く街。エメラルドシティに暮らす若者たちの織りなす、ドリーミーでブリージンなひとときをお届けします。
https://www.jintanaandemeralds.com/

◎OMSB プロフィール
Mr. "All Bad" Jordan a.k.a. OMSB
SIMI LABでMC/Producer/無職/特攻隊長(ブッコミ)として活動。
2012年10月26日、ソロアーティストとしてのファーストアルバム「Mr. "All Bad" Jordan」を発表。
2014年3月には、自身も所属するグループSIMI LABとしてのセカンドアルバム「Page 2 : Mind Over Matter」をリリース。
兼ねてからフリーダウンロード企画でBeat Tapeを多数発表し、2014年11月にはBLACKSMOKER RECORDSよりインストビート作品集「OMBS」も発表。
その他、KOHH, ZORN, Campanella, PRIMAL等、様々なアーティストへの楽曲提供・客演参加もしている。
https://www.summit2011.net/


interview with Jaga Jazzist - ele-king


Jaga Jazzist
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 加齢にしたがって人のハッピー度が下がっていくものである。シニカルになりがちなのも、新鮮味という感覚を得る機会がどんどん減っていくからである。あれほど驚きに満ちた世界も、どんどん既視感に埋められていく。ゆえに、環境の変化が必要になってくる。問題は、その変化に身体がついていけるかどうか……だ。

 ジャガ・ジャジストって良いよと僕に教えてくれたのはたしかハーバートだった。彼がジャズにアプローチしていた時代、2002〜2003年あたりの話だ。ノルウェーで出会った大所帯のバンドの何が、無闇に他を褒めないイギリスの左翼系電子音楽家のハートを捉えたのだろう。ハーバートはリミックスも手掛けているし、「マシュー・ハーバート・ザ・ビッグ・バンドのノルウェー公演へサポート・アクトとして出演したときの盛り上がりは、伝説的なステージ・パフォーマンスとして高い評価を得た」とビートインクのサイトにも記されている。

 僕は、バンドのリーダー、ラーシュ・ホーンヴェットの『Pooka』(2004年)が好きだった。このアルバムは、その年、もっともよく聴いた1枚だ。ジャガ・ジャジストが交響楽団だとしたら、こちらは室内楽団といった趣だが、同じように茶目っ気あるエレクトロニクスが散らばっている。

 ジャガ・ジャジストは、基本、ハッピーなバンドだ。エクレクティックなところはこのバンドの特徴だが、音楽のなかに何を混ぜようが彼らは最終的には桃源郷に向かっていく。イギリスのプログレッシヴ・ロックやクラウトロックへと大接近した前作『ワンアームド・バンディット』を経てリリースされる新作『スターファイヤー』も、いろんなものが混ざっているけれど、彼らの旅の出口は、最終的には明るい。トッド・テリエのリミックスもご機嫌である。
 誰にでもうまくいく話ではないのだけれど、ジャガ・ジャジストの場合は、変化を与えたことでまたひとつ若返ったようだ。人生もこうありたいものである。

LAでは免許なしではやっていけないから、免許をとったんだ。で、それをきっかけにハウス・ミュージックをたくさん聴くようになったんだよ。運転中にはちょうど良いよね。いまでは運転が大好きだ(笑)。

LAでの生活はいかがですか? またなぜオスロからLAに越されたのですか?

ラーシュ:とても気持ちいいよ。明日からまたノルウェーに帰る。で、また寒くなったらLAに戻ってくる。ノルウェーの冬は、ずっと暗くて気がめいるからね。
 LAに越したのは、アルバム制作を新たな気持ちでスタートさせるためだったんだ。これまでも曲作りのためにいろいろと場所は変えてきたけど、普通滞在するのは1、2ヶ月。でも今回は休暇で訪れたLAがすごく気に入った。人がたくさんいる場所でもあるけど、一人にもなれるし、集中できる。毎日太陽を浴びれるっていうのもすごくポジティヴになれるしね。ノルウェーの冬から逃げるっていうのが一番の理由だけど、マネージメントやブッキングエージェント、レーベルのみんながこっちをベースにしてるっていうのも理由のひとつだよ。

このアルバムにおける重要なポイントのひとつに、LAというはありますよね? LAを選んだ理由について訊きます。オスロの外で録音することが重要だったのか、それともLAという場所が重要だったのでしょうか?

ラーシュ:そうだな……自分でもわからない。環境や自然が音に大きく影響してるとは正直思わないね。でも、LAって、作業ひとつひとつにすごく時間がかかるんだ。すごく広いから移動に時間がかかるし、渋滞もすごい。だから、ゆっくりなペースのプロセスっていう意味ではLAが影響していると思うし、もしかしたらそれが音にも出ているからもしれないね。あと、こっちに越してきたばかりの時は、車の免許をもっていなかったんだけど、LAでは免許なしではやっていけないから、免許をとったんだ。で、それをきっかけにハウス・ミュージックをたくさん聴くようになったんだよ。運転中にはちょうどよいね(笑)。それで曲の尺が長い曲を聴くようになった。だから今回は、自分が運転中に楽しめるような曲を作りたいっていう気持ちもあったんだ。音の中を旅しているような気分になれる、長めの曲を意識したね。

通訳:運転するようになったことが影響しているっていうのは面白いですね。

ラーシュ:いまでは運転が大好きだ(笑)。オスローから地元までの1時間半のドライヴだったらすごく長く運転しているように感じるけど、LAでのドライヴは全くそれを感じない。こっちでは、1時間の運転なんて当たり前だからね。わざわざ友だちとコーヒーを飲みにいくのに1時間かけて行くこともあるくらいさ。それを普通にやってるっていうのは変な感じもするけど(笑)。

どんな偉大なバンドにも難しい時期というのがあると思うので訊きますが、大所帯のバンドを長続きさせるコツを教えて下さい。

ラーシュ:この人数でこれだけ長い間活動を続けるというのは、決して容易ではない。でも僕たちはスタートした時点からいろいろなアイディアに対してオープンだったから、それも長く続いている理由のひとつだと思うし、それがあるからこそワンパターンに収まらず新鮮さを保てているんだと思う。メンバー全員がアルバムを作る度に何か新しい要素をいれようと心がけているし、ライヴでも即興や自分たちが面白いと思うものを取り入れて、自分たち自身も飽きないように心がけているしね。だからこそ、1回2時間という長い公演を何度もこなして経験を積んでこれた。
 あと、メンバーそれぞれがJagaだけではなく他のプロジェクトに参加していることも鍵のひとつだと思う。ずっとJagaだけではうんざりしてしまうかもしれないけど、他のプロジェクトにも参加することで気分転換ができるんだ。他のこともやりつつ、活動が楽しいと思う気持ちを持ち続けるっていうのがいいんじゃないかな。

通訳:20年以上も活動しているわけですが、その中で危機というか、いちばん大変な時期はありましたか?

ラーシュ:2006年くらいだったかな。続けようか、それとも止めようかっていう時期はあった。重要なメンバーたちがバンドから出て行ってしまった時で、当時はどうしていいかわからなくなってしまった。『What We Must』(2005年)のあとだね。でも、『One Armed Bandit』(2009年)を作りはじめて、また新たなスタートをきることができた。その2作品のあいだ、たぶん4年くらい何もしてなかったんだじゃないかな。重要なメンバーが去ってしまうことは危機ではあるけど、同時に、これだけ長く活動してるんだからメンバーが変わっても大丈夫だとも思えた。新しいメンバーが抜けたメンバーと全く同じことができるわけではないけど、逆にそれで新しいことができるならそれはそれでいいと思ったんだ。

やり続けることの難しさということもありますよね? 

ラーシュ:たしかに難しいとは思う。とはいえ、同じメンバーで違うことをやり続けるっていうのは、やはりその分やりがいがある。僕はとくにメロディーに対して決まったテイストを持っているんだけど、過去のJagaの作品を聴いてもらうとそれがわかると思うし、同時にそのテイストを保ちながらも様々なプロダクションが試されていることもわかると思う。……元々の質問はなんだったっけ(笑)?

通訳:(笑)やり続けることの難しさについてです。

ラーシュ:そうだそうだ。20年かけて、このバンドでは本当にたくさんのことを試してきた。だからいまでは、完全に新しいことを見つけるのがすごく難しくなってきている。アルバムを作る度に、前とは違うもの、前とは違うバンドからインスピレーションを受けようと努力している。僕ら自身もそうだし、Jagaのオーディエンスも定番の音楽を聴き続けたいタイプのオーディエンスだとは思わない。みんな、常にオリジナルで新しいものを求めていると思うんだ。活動を続けていく上で大切なのはそれだね。自分たちをリピートしないことが長続きに繋がるとも思うし、それをやるからこそアルバム作りにどんどん時間がかかるようになるんだよ。

そうやってアルバムごとのに新しいことに挑戦したり、いろいろと乗り越えてきたわけですが、今回のアルバムは、完成まではスムーズに進行した作品なのでしょうか?

ラーシュ:少なくとも僕個人にとっては、今回はいつもよりスムーズだった。このアルバムでは1回もリハーサルしなかった。僕が曲のアウトラインを書いて、それをメンバーそれぞれに渡して演奏してもらった。8人、9人同時に演奏してレコーディングするより、少人数でレコーディングするほうがそれぞれからいろいろ引き出せると思って。だから時間も長くかかったんだ。それぞれのアプローチをまとめるのにも時間がかかったしね。

通訳:それはこれまでにない初めて挑戦したプロセスだったんですよね?

ラーシュ:そう。完全に新しかった。いままではレコーディングの前に4、5ヶ月リハーサルしてきたから。レコーディング前に全てが書き終わっていたし、演奏が難しい部分はとことんリハーサルした。レコーディングの時も、大人数で一斉にレコーディングすると、かならず誰かが浮いてしまったり埋もれてしまったりする。だから今回は、バラバラにレコーディングすることでそれぞれの特徴を活かしたかった。その中でも、とくにギターのマーカスとキーボードのオイスタインは他のメンバーよりも長くスタジオに入って、いろいろと試してみたよ。

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ジェントル・ジャイアントっていうプログ・ロックのバンド知ってる?  彼らのジャケに妖精をデザインしたものがある。そこからインスピレーションを受けたのが前作。対して、今回のアルバムはもう少しダークなサウンドにしたくて、あまりユーモアの要素は入れたくなかった。


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今回のアルバムの推進力は何でしょうか?

ラーシュ:そうだな……何だろう……自分自身にとってオリジナルなものを作るっていう気持ち。このアルバムのサウンドをどういったサウンドにしようかと考えるのに結構時間がかかったんだけど、さっき言った長旅のフィーリングというか、そういうアイディアを思いついてからはそれに従って制作を進めていった。だから、いままで以上に尺が長くなってる。
 このバンドにせよ、他のプロジェクトにせよ、いつも僕は新しい何かを求めていて、いちど何か面白いものを思いつくと、できるだけそれに従って制作を進める。いろんなやり方で、自分の好きな音楽、そしてその演奏の仕方を広げて行く。それを見つけ出すのは容易ではないし、長いプロセスだね。

たぶん、スタジオ録音盤としては、いままでもっとも曲数が少ないアルバムになったと思います。曲をたくさんつくることよりも、1曲のなかの展開やアレンジの濃密さを重視しているというか。

ラーシュ:このアルバムは、いままでのアルバムと形式が違う。収録されている曲のほとんどが、まるで1曲の中に曲が2〜3曲入っているような作りになっている。トラックを作るために15〜20くらいセッションをやって、プレイリストを作ってその中から重要なアイディアをピックアップしていくうちに、それを繋ぎ合わせて曲にしたら面白いんじゃないかと思ってね。アルバムに収録されているのは5曲だけど、実際はそれ以上に曲が入っているようなものなんだ(笑)。

過去にはユーモアの込められた、IDM的なアプローチに特徴があったと思いますが、今回はもっと優雅な感覚を感じます。このアルバムが大切にしているものは、何でしょうか?

ラーシュ:さっきと同じ答えになってしまうけど、大切なことは、前回のアルバムと逆のものを作ることだった。たしかに2009年の『One Armed Bandit』では、60年代後半〜70年代前半のプログ・ロック・シーンっぽい要素に加えてユーモアがあったね。ただオシャレなだけな音楽は作りたくないから、面白くしたり、キャッチーにするためにユーモアっぽい要素を入れた。例えばあのアルバムに収録されている「Prognissekongen」っていうのも作った言葉で、“プログレッシヴのノーム(妖精)の王"って意味がある(笑)。
 ジェントル・ジャイアントっていうプログ・ロックのバンド知ってる?  彼らのアルバムのジャケにノームをデザインしたものがあって、そこからインスピレーションを受けてそのタイトルにした。そういう意味でのユーモアはあった。対して、今回のアルバムはもう少しダークなサウンドにしたくて、あまりユーモアの要素は入れたくなかった。さっきも言ったようにこれまでとは違ったものからインスパイアされたものを作りたかったし、正直これまでの作品にも果たして実際どの程度ユーモアが入っていたか自分でもわからない。曲のタイトルはジョークだったりするけど、音自体はそこまで面白おかしくはないから。

今回に限らずですが、あなたのソロをふくめ、ジャガ・ジャジストにはロック的な雑食性も感じます。今回はギターの演奏が前面に出ているので、とくにそう思うのかもしれませんが、ソフト・マシーンのような60年代末〜70年代初頭のプログレッシヴ・ロックのことは意識しましたか? 

ラーシュ:それを意識したのは『One Armed Bandit』だよ。ソフト・マシーンやジェントル・ジャイアントからはインスピレーションを受けている。あとはクラウトロックからもね。カン、ノイ!、ファウスト、クラスター、そういったバンドから影響を受けているんだ。
 こういうことは、自分たちよりも周りの方がそれに気づくことが多いんだよね。フランク・ザッパと似てるって言われるけど、実は僕たちはあまりフランク・ザッパのファンじゃない。だからとって、みんながなぜそう言うかはわかるんだ。彼らのジャンルとある意味同じものを作ろうとしているからね。キャッチーでありながらも新しく、驚きのある音楽を意識している。だから、そういった昔のプログ・ロック・バンドの要素が感じられるのは自然なことだと思うよ。僕にとってはそれはいいことで、その要素が入っていることで『One Armed Bandit』ではオーディエンスの幅が広がった。これまではもっとエレクトロニック・ミュージック・シーン寄りだったけど、リアルタイムでそういったプログ・ロックを、とくにイギリスの作品を聴いてきた自分たちよりも年上の人たちが僕らの音楽を聴いてくれるようになった。あれはよかったね。

ここ数年、日本では排外主義が目に見えるようになりました。ノルウェーでは、数年前に移民に対する連続テロ事件がありましたよね。あながたの音楽は、むしろいろいろな文化を受け入れことで成り立っています。それはノルウェーにおけるある種の理想郷のようなものを描こうとしているとも言えるのでしょうか?

ラーシュ:あれは移民に対するテロというか、テロを起こした犯人がかなりの人種差別者だったと言ったほうがいいかもしれない。あれは政府に対する攻撃で、ノルウェーの労働党に対するものだったから。30年も力を持ち続けて来た政党だから、犯人は彼らがやってきたこと全てに対して鬱憤がたまっていたんだ。彼はかなりイカレていたから、あれは例外で、ノルウェーとはあまり関係がないと思う。みんなにかなりショックを与えたし、政治に対して考え直すきっかけを与えたというのはあるかもしれないけど。理想郷を描こうとしているっていうのはちょっと考え過ぎかもね(笑)。
 僕はいま35歳なんだけど、20〜26歳くらいの時は、もっと音楽に対して堅かったし、好みが偏っていたと思う。26歳くらいから、もっと音楽に対してオープンになっていったんだ。自分があまり好きだと思っていなかったものにも耳を傾けるようになったし、それを自分のやり方で作ってみたりするようになった。それは自分でも良いことだと思うし、たしかに前よりも柔軟で、いろいろな要素を取り入れるようになってるとは思う。だから理想郷っていう言葉は褒め言葉ではあるね。ありがとう(笑)。

透明感のあるサウンドといえば、とくにノルウェーのジャズ。ドイツのECMが有名だけど、僕はそれを聴いて育ってきた。いまだに好きな音楽のひとつさ。でも、そういった音楽はロマンティックすぎるとも思う。

LAという土地にも関わる話ですが、フライング・ロータスに触発されたところはありますか? あるいは、彼らの周辺の音楽とか。

ラーシュ:ビート・ミュージックとサイケデリック・ジャズがミックスされた音楽にとってはすごく良い時代が来ていると思う。フライング・ロータスはそのマスターだと思うし、彼の作品は素晴らしいと思う。曲の作り方は彼と僕では全然違うけどね。彼はもっとサンプルを使うし、即興をよくやる。でも僕はもっと曲っぽいから。でもフライング・ロータスがやっていることは好きだよ。お互いの音楽にはジャズ要素が常に存在しているし。フライング・ロータスと僕が影響を受けてきた音楽も共通していると思う。

『Starfire』とはどんな意味が込められたタイトルなのですか?

ラーシュ:音楽を作りはじめる時は、その作品がどんな内容になるのか全く見当がつかない。だから、よく適当に意味のない仮のタイトル=呼び名をつける。あと、特定の意味を持たないオープンなタイトルが好きでもある。例えば”Starfire"っていう言葉は、宇宙のイメージがある。そこからみんな、銀河とか惑星とか、いろいろなことが想像できる。長い旅っていうイメージもあるし、良いタイトルだと思ったんだよね。しかし、元々は、「Starfire」の曲を"starfire"っていうギターで書いたからそのタイトルになった。理由はそれだけさ(笑)。でも、みんながそれぞれに理解してくれたらそれでいいんだ。

SMALLTOWN のコミュニティはいまも継続されているのようですね。今回もデザインはキム・ヨーソイ(Kim Hiorthøy)? 今回はトッド・テリエ(Tod Terije)によるリミックスがあります。

ラーシュ:僕自身はもうSMALLTOWNには関わっていないんだ。今後はまたソロ作品をSMALLTOWNからリリースする可能性はあるよ。今回のデザインはキムじゃなくてMartin Kvammeなんだ。彼は『Live With Britain Sinfonia』のデザインも手掛けてくれている。ちなみにKimは、今もSMALLTOWNで働いている。
 トッド・テリエのリミックスに関しては、僕はトッド・テリエのライヴ・バンドでプレイしているんだけど、彼とはノルウェーの音楽フェスティヴァル、オイヤ・フェスティヴァルのためにコラボレーションをはじめたんだ。だから彼の音楽は本当に良く聴いて知っていたし、彼も僕たちの曲を長い間聴き続けてくれていた。そういうわけで、彼が一番最初にリミックスを依頼したかったのが彼だったんだ。彼とはその前から共演していたけど、このリミックスに関しては去年の夏から話していたと思う。彼のスタイルが大好きだし、リミックスを初めて聴いたときも素晴らしいと思った。大満足だったね。

いまでもクラブ・ミュージックは好きですか? 

ラーシュ:大好きだね。いままでで一番聴いていると思う。このアルバムは、実はそれに影響されてかちょっとダンスできるような作品を作りたかった(笑)。結果的にはそうならなかったかもしれないけどね(笑)。元々そういうアイディアはあった。少なくとも、もう少しハウスっぽくしたいっていう気持ちはあったんだ。ハウスという点で特に聴いていてインスピレーションを受けたのは、トッド・テリエとジョン・ホプキンス。とくにジョン・ホプキンスは、曲を盛り上げて、少ない要素で音を面白くする天才だと思う。それを自分でも試してみたいと思ったんだ。
 Jagaは違うタイプのバンドだし、人数も8人だし、かなり楽器を使うから、それを再現するのはすごく難しかった。でもそういった音楽が持つ、ひとつのソウルに入り込んでいくようなフィーリングというか、長い時間をかけて盛上がっていくようなものは少なからず表現出来たんじゃないかな。ある特定の時空じゃなくて、宇宙空間に放たれるような、そういうエンドレスなフィーリングはあると思う。彼らの音楽よりも、トラックの構成はもっと”曲っぽい”けどね。

昨年出したライヴ盤では、クラークやマシンドラム、ティーブスなどクラブ系のプロデューサーのリミックスがありましたが、これはあなたがたの希望でしょうか? それともレーベル側からの意見でしょうか? 

ラーシュ:半分は僕がオファーしたし、半分はレーベルやマネージメントの意見だった。いろいろなアーティストによるさまざまなヴァージョンが聴けて、すごく面白かったよ。

いま、あらためて「ジャガ・ジャジストのコンセプトは?」と訊かれたら、あなたはなんと答えますか?

ラーシュ:ワーオ(笑)。バンドのコンセプトは、ゆっくりと進化し続けて、新しいスタイルを常に試みていくことかな。あとはたくさんの種類の音楽をブレンドすること。そして、自分たち自身にとってオリジナルなものを作り続けていくことだね。だから、もちろん影響を受けている音楽はたくさんあるんだけど、それをなるだけわからないようにしている。そうやってオリジナルのものを作ろうと心がけているんだよ。

ノルウェーらしさというと、我々は小綺麗で透明感のあるサウンドを思い浮かべますが、あなた方のように、実際そこに住んでいる者にとってそれは何だと思いますか?

ラーシュ:ノルウェーの音楽シーンは、すごく幅広い。エレクトロ・シーンも盛んだし、個人的にはロイクソップが大好きで、彼らはエレクトロのシーンでは一番ビッグだと思う。すごくクリーンなサウンドが特徴的だよね。あと、トッド・テリエのようなハウスやディスコのアーティストがたくさんいるのと同時に、良いロックバンドやジャズ・バンドもたくさんいるんだ。僕もそのシーンにハマっているんだけど、小さい国だからそれぞれのアーティスト同士が近い。だから、何か面白いことをやっていて自分がコラボしたいと思うアーティストが見つかったら、電話一本でオファーが出来る。そういう意味では、すごくオープンなシーンなんだ。
 透明感のあるサウンドっていうのは、とくにノルウェーのジャズかな。そういうサウンドで言えばドイツのECMっていうレーベルが有名だけど、僕はそれを聴いて育ってきた。いまだに好きな音楽のひとつさ。でも、そういった音楽はロマンティックすぎるとも思う。次に何が起こるかがわかるっていうか、ちょっとお決まりなんだよね。だから自分の音楽を作るときは、もっとエッジの効いたものを作るよう意識しているんだ。

オスロの音楽シーンは、10〜15年前とはどのように変化しましたか?

ラーシュ:10年前のオスロの音楽シーンは全然違ったよ。当時はBlå(読みはブローみたいです。英語でブルーという意味だそうです)っていうクラブがあったんだけど、僕たちはそのクラブやジャズ・シーンに大きく関わっていたんだ。ジャズとはいえエレクトロもあったし、すごくオープンなシーンだった。そのクラブは今もありはするんだけど、前とは違う。前はもっとミュージシャン達の場所って感じで、オーディエンスがたくさん入っていたからね。今はもっとクラブ・シーンが盛んかな。ハウスなんかもそうだし、それはそれで面白い。良いジャズ・シーンもあるよ。とくにエレファント9っていうバンドは面白いし、僕自身のお気に入りでもあるんだ。もっとプログレッシヴ・ジャズっぽくて、エッジが効いてるんだよね。前よりもシーンは広がっていて、バンドもたくさん出て来ているし、徐々に大きくなっていってると思うよ。

夏で楽しみにしていることは何でしょう?

ラーシュ:ツアー以外では、オスロのビーチでのんびりすること。夏はオスロの中で一番いい時期だからね。水はあったかくて綺麗だし、オスロの人たちは休暇で外に行ってるから空いていていい。それが楽しみだね。まあでも、メインはツアーだよ。Jagaのショーはもちろん、トッド・テリエとのパフォーマンスもあるし。今はLAにも住んでるから、オスロにいるのが前よりも楽しめているんだ。

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