「PAN」と一致するもの

interview with NRQ - ele-king

 インディ、ライヴハウス、なんでもいいけれども東京のシーンをみまわしたとき、ことベースにかぎれば、近年メキメキ頭角を現してきているのが服部将典であることに異論はあるまい。いや、べつにベースにかぎらなくともよいのであります。アコースティックと(NRQでは出番はないけれども)エレクトリックを弾きわけ、ピチカットにしろアルコ(弓)にせよ、ジャズを出自とするプレイヤーともちがう価値観を演奏に投影する服部の存在は、2010年代のロックなる分野を固定化したエンタメと歴史をひきうけたエクレクティシズムとに二分化するなら、まさに後者を体言するものではないか。『オールド・ゴースト・タウン』所収の“魚の午前”“余分な人”、『のーまんずらんど』の“合間のワルツ”に“春江”、このたびの『ワズ ヒア』の“ショーチャン”といった味わい深い楽曲の作曲者でもある服部将典と、牧野琢磨宅の2階でお話しした。

ギターにはソロがあるじゃないですか。その頃(ベースをはじめた高校生の頃)はそういうのがない、ひたすら同じ役割がつづく感じが居心地よかったんですね。


NRQ - ワズ ヒア
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服部さんは最初からベーシスト志望だったんですか?

服部:最初はエレクトーンで、それが小学生の頃。自発的に選んだ楽器はギターです。高校時代はイングヴェイ・マルムスティーンを聴いて早弾きの練習をしていました。

それは……意外ですね(笑)。

服部:そうですか?

ハードロックやへヴィメタルはだれしも通る道かもしれないですが。それってスキャロップ加工のストラトでハーモニックマイナー・スケールを弾きまくるみたいなのですよね?

服部:そうそう(苦笑)。あとはハロウィンとかクイーンとか。

総じていえるのは、メロディが強い音楽が好きだったということ?

服部:そうかもしれません。そのあとにパンテラの衝撃があって、メロディがないリズムだけの音楽を聴くようになったんです。

反動ですか? パンテラというと90年代なかばですね。

服部:高校生の頃だからそうです。そのときはまだベースを弾いていませんでした。弾きだしたのは高校3年ですから。バンド組むことになって、よくあるパターンですけど、ベーシストがいないから、やってといわれて、じゃあやろうかな、と。それでギターや鍵盤に戻ることなくいまにいたります。ギターにはソロがあるじゃないですか。その頃はそういうのがない、ひたすら同じ役割がつづく感じが居心地よかったんですね。

アコベをはじめたのは大学生になってから?

服部:大学4年ですね。

そんなに早いわけではないですよね。

服部:けっこう遅いと思います。

アコースティック・ベースはだれかに憧れてはじめたんですか?

服部:日本のハードコアにザ・ルーツというバンドがいて、最初はそのバンドに憧れてはじめたんですね。サイレント・アップライトでバチバチ、スラップするスタイルですね。

ジャズではないんですね。

服部:ぜんぜん。でも(アコースティック・ベースを)買うと、あいつ持ってんぞということで、そのころ軽音楽部に入っていたので、いろんなバンドで弾くようになったんですね。その軽音楽部にいた連中はいまも音楽活動をしていて、角田波健太はひとつ下でその代の人らがわりとしっかりオリジナルをつくってライヴハウスで活動していて、そのへんの人たちはいまでもいっしょにやったりしますね。

その頃は曲もつくってましたか?

服部:曲をつくるようになったのは東京に出てきてからです。たぶん最初につくったのは、僕は名古屋の芸大だったんですけど、その同窓生で映画をつくっている人に音楽をつけてほしいといわれたからなんです。その人とはそんなに親しくはなかったんですけど(笑)、仲介されてやることになった。曲なんかしっかりつくったことはなかったんですけど、まあやってみようかなって。曲といっても映画の音楽なので、断片的なフレーズというか雰囲気づくりみたいなものでしたけどね。

曲はベースでつくったんですか?

服部:ベースも使いつつ、家でタンバリンを重ねたり小物を寄せ集めたりしてつくりました。

最初が劇伴だったというのは考えようによっては象徴的ですね。

服部:そうかもしんないですね。

自我を解放するより、対象に寄り添う。

服部:それはずっとあるかもしれないですね。


(曲は)忘れた頃に、これはいいなくらいのものを引っ張ってくることが多いですね。そうやって自己対話をするというか時間のフィルターにかけないと怖いのかもしれない。僕は怖がりなんですよ。

NRQでは服部さんはアルバムごとに1~2曲提供されているじゃないですか? NRQに曲を書いているときも服部さんのなかにはNRQ像がしっかりあって、そのなかで曲をどうするかと考えるんですか?

服部:曲を僕は鼻歌でつくるんですよ。そこに適当にギターを重ねてみたり、でも元が鼻歌なので、それを歌っていたときは、だれとやるための音楽とは考えていないですよね。今回の“ショーチャン”はちょっと考えましたけどね。新曲が出そろったときに今回のアルバムはけっこうしっかりしているなと思って、バカみたいな曲をやりたいなと思って、その点は意識しました。

クレジットに「作曲」のほか「アレンジ=編曲」とあるのは、牧野くんによれば服部さんは総譜を書いてきた、ということでしたが。

服部:そうなんですかね(笑)?

自分のことじゃない(笑)。

服部:(笑)いままでは中尾さんや吉田くんに主メロ以外を譜面に書いてこう弾いて、とお願いするようなことはなかったので、試しにやってみたんです。それで「アレンジ」のクレジットがあると思うんですけど、「アレンジ」といっても全体像が頭のなかにあったというよりは後づけなんですよ。何回かライヴでやって、あくまでそれをふまえたものなんですね。それにギターについてはとくに指定もなかったんですよ。吉田くんも牧野くんもそういったやり方をすることがあるので、彼らの曲にも「アレンジ」とクレジットしてもいいと思うんですけどね。

曲はそれぞれ作曲者が主導権を持つということなんですね。

服部:いちおうそうなっています。それはミックスまでふくめてそうです。

私は服部さんの曲はアルバムのなかでいいアクセントになっていると思うんです。『のーまんずらんど』の三拍子の曲(“合間のワルツ”)や“春江”などはアルバムに多様性をもたせつつ、全体を〆ている。服部さんはそういう全体の流れというか、アルバムのなかでどういう曲がほしいかということを考えてつくるのかなと思っていました。

服部:後出しではあります。曲の断片はいろいろあるので、つくっている段階ではなにも考えていないんですが、どの断片を使おうか、NRQではこれがいいかなというのがだんだんわかってくるんですね。

断片のストックはいっぱいあるんですか?

服部:単に断片という意味ではいっぱいあります。それをパソコンにデータでとりこんだり、携帯に(鼻歌で)吹きこんだりしますね。ベースで弾いたのもあるんですけどね。それも楽器で弾いているだけで鼻歌みたいなものです。それらをたまに聴き返すんです。寝かせないと自分はダメなんですね。これできた、といってポンと出す自信はない。忘れた頃に、これはいいなくらいのものを引っ張ってくることが多いですね。そうやって自己対話をするというか時間のフィルターにかけないと怖いのかもしれない。僕は怖がりなんですよ。

人にどう捉えられるかということですか?

服部:それもありますし、自分の表現がどう評価されるかというのは不安ですよ。

服部さんはかなりいろんな方と共演されてきていますが、それでもそうなんですか?

服部:メチャメチャあります。ライヴ終わった後とか、毎回怖いですもん。

それだと音盤を出すには相当な決意が必要になる気がしますが。

服部:逆にそれがないのはバンドだからです。『オールド・ゴースト・タウン』はまだ個人が強い気がして、僕はいまだにあまり聴けないんです。自分の演奏に耳がいって、怖くて聴けない。『のーまんらずらんど』になるとそれが消えて、録音が終わってすぐにリスナーとして聴ける感じがあった。客観的に聴けるので、自分のなかでいいなという判断がついていて、どう評価されようが聴き手の問題でしかなくなるんです。

『ワズ ヒア』はどうでした?

服部:『のーまんずらんど』と同じでしたね。

今回は録音の関係で低音の出も強いですよね。各楽器が独立してベースも前に出てきた。あらためて、オーソドックスでありながらノートの選び方やフレーズのつくり方に服部さんならではのものがあると思いました。

服部:僕もそれなりに上手くなっているんじゃないかなと思うこともあるんですけど、ふとむかしの録音を聴くと想像より下手じゃないと思うこともあるんです(笑)。となるとあまり成長していないんじゃないかといううれしいのか悲しいのかわからなくなることもあるんですよ(笑)。

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僕は普通になるように勉強しているところもあるんです。普通になるというか、いちばん安定するところにベースの音を置きたいと思うんです。

服部さんはNRQはじめ、穂高亜希子さんエミ・マイヤーさん、多数のセッションに参加されていますが、そうやって勉強している意識は──

服部:もちろんあります。さっき松村さんにノートの選び方がおもしろいといっていただきましたけど、僕は普通になるように勉強しているところもあるんです。普通になるというか、いちばん安定するところにベースの音を置きたいと思うんです。それが足りない意識はずっとあるんです。音大を出ているわけじゃないし、理論的な下支えがあるわけではない。理屈じゃなくて反射的にいま鳴っている音にもっとも安定する場所に音を置けて、でもそのうえであえてこっちをやるんだというのをやりたい気持ちがあるんです。それもたぶん自分の演奏に感じる怖さとかぶる部分もあると思うんです。直感だけで自分はこうだとがんがん進んでいけるタフは僕にはちょっとない。

それはベースという楽器の役割と重なるものですか?

服部:そうですね(とやや留保するように)。

たとえば、エミ・マイヤーさんと永井聖一さんの『エミ・マイヤーと永井聖一』はJポップですよね。その場合、Jポップの枠内でもっとも安定するフレーズを探すということですか。

服部:あのアルバムのレコーディングはけっこう楽しかったんですよ。普段やらない、でもJポップってふだん何気なく耳にするじゃないですか。聴いていたけどやってこなかった音楽をできる楽しさ、というか、いわれてみれば、ちょっとしたコピー感覚みたいなものが、それがいいか悪いかはさておき、あったかもしれません。

アコベとエレベだと服部さんは自分はどちらの演奏者だと思いますか?

服部:いまはアコベですね。

このふたつはともにベースですが、じつはまったくちがう楽器だと思うんです。それを両立させるのはたいへんじゃないですか?

服部:たいへんです――けど考えないようにしています(笑)。たいへんだと思うとやりたくなくなっちゃう。流れでエレキ・ベースをまた弾くことになったので、再開した年はけっこう後悔していたんですよ。そう考え出すとどんどんネガティヴになっていっちゃって(笑)、どっちも放り出したくなったりもしたんですが、いまはどっちも楽しいし、あまり考えないようにしています。ウッド・ベースにはウッド・ベースならではの雰囲気があるじゃないですか?
 でもエレキ・ベースはものすごく剥き出しだと思うんです。エレキ・ベースには空気感がないぶんフレーズが問われる。そこがすごくおもしろくて、その経験がウッド・ベースにフィードバックされているところはあります。いまはそれが相乗効果になっていると思うんです。

服部さんのいまの当面の目標はありますか? NRQでの活動にかぎらず。

服部:自分の作品はつくりたいとは思いますね。純粋に自分の作品はまだ出したことがないので。

どういう形態でつくります?

服部:バンド形式ではないでしょうね。

ベース・ソロですか、バール・フィリップスみたいな?

服部:そういうのはたぶんできない(笑)。曲をいっぱいつくって、ひとりでできるのを選んでそれをちゃんとやりたいとは思います。

NRQのアルバムに採用している各人の曲数ってだいたい同じじゃないですか? 牧野くんがいちばん多くて、吉田さん服部さんの順ですよね。ルールでもあるんですか?

服部:そんなことはないですよ(笑)。がんばりしだいですけど(笑)。曲数を増やすとか、そういった作戦は僕のなかであまり練らないようにしているんですよ、あくまで流れのなかでやっていこうと思っています。


自分は芸大に行っていて最近はあまりないですけど、芸術やアートに対するアレルギーがあったんです。僕はアーティストより職人になりたい気持ちが強いんです。

いまは演劇の劇伴の仕事もやられているんですよね。

服部:さほど数があるわけじゃないですけどね。

新たに進出したい分野はありますか?

服部:仕事ということでいえば、もっとギャラがいい仕事をしたいとは思いますけど(笑)。

そんなナマナマしい話してんじゃないですよ(笑)。服部さんはどんな仕事でも断らない?

服部:基本的に断らないです。

職業意識ということですか?

服部:職人に対する憧れのようなものです。自分は芸大に行っていて、最近はあまりないですけど、芸術やアートに対するアレルギーがあったんです。僕はアーティストより職人になりたい気持ちが強いんです。

職人的なベーシストというだれを思い出しますか?

服部:僕のなかでは松永(孝義)さん、あとは渡辺等さん。

松永さんには影響は受けましたか?

服部:受けていると思います。どこがといわれるとわからないですけど。

松永さんも渡辺さんもタテヨコどちらも弾きますね。ああいうふうになりたいというより彼らの職人的な佇まいに憧れがある?

服部:そうです。

演奏者にはイノヴェーションへの憧れもあると思うんです。ベースだとジャコ・パストリアスのようになりたい人はいっぱいいると思うんです。服部さんにはそういった考えは?

服部:それはまったくないです。職人的にしっかり下支えして、そのうえで自分のやりたい小さい作品ができたらいいと思うんです。自分の作品は職人性とは関係のないものですね。まだつくっていないのでわからないですけど。

この3作、7年くらいNRQを続けて、中尾さんとのリズム隊はかなりこなれてきたと思いますが、そもそもNRQにはリズム隊という概念はあるのでしょうか?

服部:その考えはないかもしれないですね。全体のアンサンブルはありますけど、リズムと上物の関係性はないかもしれない。ほかのバンドでやるときは、けっこうドラムのバスドラを意識して合うように探っていくんですけど、NRQではそういった作業はしたことはないですね。いまいわれるまでまったく無意識だったんですが。

演奏するときはなにをいちばん聴いていますか? NRQの演奏の中心になっているものということですが。

服部:完全に牧野くんのギターだと思います。ギターはリズム、メロディ、ハーモニー全部の要素をもっていて全体の軸になっているということですね。牧野くんはギターでベースラインを弾くこともあるので、彼のギターとの兼ね合いは考えますね。

それでやりにくいとかやりやすいということも――

服部:いや、NRQはやりやすいです。でもあまり自由は感じない。ベースラインをきょうはちょっと変えてみようとか、そういう選択肢はNRQでは僕はあまり感じないです。思うに、牧野くんのギターには弾いていなくてもベースラインが決まってくる感じがするんです。吉田くんや中尾さんがどう考えているかはわかりませんし、曲にもよりますけど、僕にとってはわりと固定している気がします。

でもアルバムを追うごとに自由度は高まっている気もしますね。

服部:それは感じます。“日の戯れ”とかはとくにそうですよね。あと“門番のあらまし”は自分的には新しいというか3枚めならではだと思います。NRQのアンサンブル法があるわけじゃないですけど、それに則ってそこにラテンを加えてみたような、ちょっと余裕というか遊び心が出る余地ができた気がします。

その変化がNRQの成熟を物語っているのかもしれませんね。そのなかで私は服部さんの曲ももっと聴きたいので、次も楽しみにします。

服部:精進します(笑)。

interview with NRQ - ele-king

 前回の牧野琢磨を承けてのNRQリレー・インタヴュー、第二弾となる今回は二胡奏者、吉田悠樹に登場いただく。前野健太の諸作、穂高亜希子、ツジコノリコから昨年の友川カズキの『復讐バーボン』まで、意外なところに顔を出し、濃い色の歌手の歌によりそい、ときにその色の彩度と明度をきわだたせる吉田悠樹と、吉田悠樹の化身と見紛うばかりの彼の二胡はNRQでは伴奏者の軛を逃れたバンドの声そのものとしてのびのび歌っている。『ワズ ヒア』ではそれが新たな段階に入った、その理由を語る前に牧野くんに訊きそびれたNRQの歩みをさらいつつ、この異能の二胡奏者をかたちづくった音楽遍歴をたどってみよう。

中学くらいのときに、ハイスタ(ハイ・スタンダード)が出てきて、そこを入口にガーゼなどにたどりついたんです。


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吉田さんにはバンド・ヒストリーをうかがおうと思います。吉田さんは牧野くんとともにNRQのオリジナル・メンバーですが、牧野くんに訊くのもおもはゆいものがあるので。

吉田:(笑)松村さんと牧野さんはちかいですからね。うん、いいですよ。

牧野くんと最初に出会ったのはいつですか?

吉田:はじめて出会ったのは、普通にお客さんで観に行ったライヴですね。牧野さんはサボテンのサポートでギターを弾いていました。工藤冬里さんも出ていましたね。

サボテンが好きだったの?

吉田:その日にはじめて観て好きになりました。サボテンには後に2人時代のNRQの企画にも出てもらったりしました。

吉田さんっていま何歳だっけ?

吉田:32歳です。

音楽から想像するより若かったですね(笑)! もともとの音楽的な背景はどういったものですか?

吉田:パンク、ハードコアですね。

でもその頃はパンク、ハードコアの時代じゃないよね?

吉田:いや、中学くらいのときに、ハイスタ(ハイ・スタンダード)が出てきて、そこを入口にガーゼなどにたどりついたんです。

中学時代にハードコアだったんですね。しかしハイスタとガーゼの間にはいろいろありそうな気がしますが(笑)。

吉田:ありますよ、ヌンチャクとか、中学のときはいろんなライヴに通っていました。それがもう楽しみで楽しみで。

ジャップ・コアから熱心に音楽を聴きはじめた?

吉田:ガーゼ、レンチ、スライト・スラッパーズあたりで、これだ、と思ったんです。実家が東京なので新宿には出やすかったんですね。

〈アンティノック〉や〈ジャム〉ですね。

吉田:(歌舞伎町にあった頃の)〈リキッド・ルーム〉にもよく行っていました。あと好きだったのはスーパー・ジャンキー・モンキーですね。

“ばかばっか”ですね。懐かしい。

吉田:ちなみに『ワズ ヒア』に収録した“スロープ”はあぶらだこに由来しているんです。いわないとだれもわからないと思いますけど。

あぶらだこの何盤ですか?

吉田:『青盤』(1986年)に“スロープ”という曲があって、タイトルをお借りしました。

気づきませんでした(笑)。しかし吉田さんがそんなハードコアな青春を送ったとは存じあげませんでした。当時のライヴハウスは怖くありませんでしたか?

吉田:僕はぜんぜんそうは思わなかった。みなさん見た目は怖いけどやさしかったですよ。僕が中学生だったのもあったでしょうね。そこまで若いお客さんはほとんどいなかったので浮いてたと思います。


胡という楽器の音で激しさを表現しているつもりなんです。

そうなると自分で音楽やろうとなったとき、どういった選択になるんですか?

吉田:高校のときにバンドでギターを弾いていたんですけど行き詰まってギターじゃないなと思ったんです。かといって歌はヘタだったから歌うのもできない。それでいろいろと調べて考えたりしてDTM系にいくか、二胡みたいな民族楽器系にいくかの二者択一になったんです。

選択肢に二胡が入るくらい、ハードコアと並行してすでに民族音楽も聴いていたということですよね。

吉田:そうです。極端な音楽を聴いて一周して世界各地の音楽にたどりついたんですね。同じようにノイズからぐるっとまわって現代音楽を好きになったりもしていました。

極端な表現ということで同根だったんですね。

吉田:そうです。それで二胡をやりたいと漠然と思ってたときに、偶然にも大学の先輩に二胡をもらう機会があって。それでじゃあ二胡だなとなったんです。

思い立っても楽器を修得するには鍛錬が要りますよね。

吉田:その前にギターをやっていたのでわりとすぐにできたんですよね。

でもほら、二胡はギターより弦の数も少ないし、フレットもないじゃない?

吉田:でもそれくらいしかちがいはないんですよ。

しかも弓奏じゃないですか。

吉田:細かく話すと二胡をもらう少し前にモンゴルの馬頭琴を習って挫折したことがあったんです。馬頭琴は二胡とは似ているんですが弾き方がちがっていて、指の爪の生えぎわで弦を抑えるのがすごく痛くて。高校のとき、小西康陽さんのラジオ番組でホーミーを知って、興味があったので馬頭琴に挑戦したんですがそうそうに挫折しました。

最初に買ったレコードはなんですか?

吉田:たまの「さよなら人類」(笑)。

なるほど(笑)。

吉田:たまは子どももファンが多くて学校ですごい人気でした。後にたまの知久寿焼さんは「自分はパンクだ」って発言をしてたということを知って、やっぱり根源は「パンク」なのかもしれないです。夢はガーゼの〈消毒ギグ〉に出演することです(笑)。ハードコアを聴いていると、極端にうるさくて激しい音楽かもしれないけど、ガーゼには前向きな歌詞が多いんです。「家族を大事にしろ」みたいなまっとうなことを、その激しさで表現するのに感動しました。いま自分はそれを逆に実践しているというか、二胡という楽器の音で激しさを表現しているつもりなんです。


最初は僕の持っていた曲と牧野さんがひとりでやっていた曲におたがい音をつけあって、いま思えばそれはNRQの最小限の形態でした。

話は戻りますが、サボテンのライヴで牧野くんと面識ができたんですか?

吉田:直接の面識はそのときはなかったんですが、ギターがメチャクチャよかったのは憶えています。これはすごい、ちょっと頭がおかしい人なのかと思うくらい(笑)のキレのある演奏で衝撃でした。それでその後、〈円盤〉で僕が穂高(亜希子)さんと出たときに牧野さんのソロと対バンしたんです。サボテンでギターを弾いていたひとだとは思わなくて、気を抜いて〈円盤〉のCDの棚を物色していたら、アイラーの“ゴースト”を弾きだして「おっ、これは!」と思って釘づけになったんです。それですぐに話しかけた、それがファースト・コンタクトだと思う。

それは2007年? NRQの結成は2007年となっていますね。

吉田:たぶんその前の年だと思います。僕には当時やっていたパイカルというバンドがあって、それは編成的にはNRQとだいたい同じなんですけど、パイカルは学生時代の友人関係からはじまったバンドなのでやりたいことが先にあったバンドではなかった。だんだんメンバー間のやりたいことのズレが大きくなって、みんなが納得いくかたちで収まらず、CDも結局つくらなかった。バンドがそんな状態の頃に企画したライヴに、牧野さんソロと、服部(将典)さんとギターの青木隼人さん(NRQ『オールド・ゴースト・タウン』ではデザインを担当)のデュオ、その2組を誘ったんです。それはパイカルを2人に観てほしかったのもあったんですね。服部さんとはカナリヤという、ピアノの三浦陽子さんのバンドでいっしょにやっていました。

いまも継続していますね。

吉田:かなりマイペースですがつづいています。その後にあるライヴで牧野さんを誘って2人で演奏したのがすごくおもしろかった。しばらくしてもう一回デュオでやることになった頃にパイカルが解散して、そのことを伝えたら牧野さんが「じゃあ、いっしょにやろうよ」といってくれた。

デュオ編成ではなく、バンドにしようという思いはすでにあった?

吉田:そこまで話は詰めなかったですけど、バンドとしてやっていこうということで一致してはいたと思っています。

NRQのカラーは当然まだないですよね。

吉田:最初は僕の持っていた曲と牧野さんがひとりでやっていた曲におたがい音をつけあって、いま思えばそれはNRQの最小限の形態でした。でもそこにはとくに先行きどうしようというヴィジョンはありませんでした。ライヴの日程を決めて、それに向けてどうしようかと探っていった感じです。バンド名をつけたのはもっとあとですから。

命名者はどちらですか?

吉田:牧野さんです。ニュー・レジデンシャル・クウォーターズ(New Residential Quarters)、新興住宅地ですよね。僕は多摩ニュータウンだし(笑)。でも長くて覚えにくいので省略してNRQになりました。

牧野くんも八王子だし。

吉田:それでちょっと字面もいいし、ということですんなり決まり、その名義でライヴをやるようになったのが2007年。

服部くんが参加した経緯は?

吉田:バリトン・サックスの浦朋恵さんと僕と牧野さんでいっしょに演奏する機会があって、これは絶対ベースがあった方がいいと思って、服部さんを誘いました。ついでにNRQもやってよと音源を服部さんに送ったんです。それで3人で合わせたらもうバッチリで。服部さんとは歌ものも含めていろんなバンドにいっしょに参加していてすでに信頼してたんですけど、NRQではもっと密な感じでできるなと。
それでストリングス隊が3人集まったらドラムがほしくなって、〈円盤〉の田口(史人)さんに「これはドラムを入れるとしたらだれがいいと思いますか?」と訊いてみたら、サム・ベネットか中尾勘二といわたんですね。じつは中尾さんのことはちょっと念頭にあって、うーん、やっぱりそうか、と。そんなときに中尾さんが全バンドに出演する「中尾さん祭」というイヴェントを企画することになって、じゃあついでにNRQにも入ってくださいとお願いしたのが最初です。練習で4人ではじめてスタジオに入ったときにはもうすでに音ができあがっていました。それから中尾さんには最初はライヴのたびにそのつどゲストという感じでお願いしてたんですが、いつの間にか「もう正式メンバーですよね」って(笑)。

それに対して中尾さんはなんと?

吉田:「はぁ」と。(笑)まあ、NRQにノッてくれるという意味だと勝手に受けとりました(笑)。

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みんな作曲するのでいろんな視点が重なってるという点はこのバンドの強みだと思います。

吉田さんがNRQで書く曲は、牧野くんの曲とはちがう方向から全体を補完する役割を担っていますよね。“ピロシキ”“ボストーク”、今回の“スロープ”も牧野くんの書かなさそうな曲だと思うんですが、それは意識的ですか?

吉田:バンドとして次はこういう曲がほしいな
というのを自分なりにイメージしてつくることが多いです。たとえば自分がお客さんでライヴを見るとなると、僕は飽きっぽいので、支離滅裂なくらいの方が好きなんです。結果的に逆をいく感じになってるかもしれません。

俯瞰する視点ですね。

吉田:もちろん4人ともそれぞれそういう視点があると思うんですけど、みんな作曲するのでいろんな視点が重なってるという点はこのバンドの強みだと思います。

吉田さんはいろんな方と共演されていますが、その考えは一貫していますか?

吉田:だいたいいっしょです。でも歌手の伴奏をするのは楽器的にも、自分の技術的にもパターン化しがちなので、最近はあまりやり過ぎないようにしてます。もちろん伴奏は好きなのでもっとやりたい気持ちもあるんですが。またしばらくしたらいろいろとやりたくなるかもしれません。いまはNRQとソロが中心という感じです。ほかのバンドと較べてNRQは自分のバンドだという意識はありますね。4人なので100パーセントではないけど、この4人はバランスがすごくいい、坐りがいいと思うんです。

『ワズ ヒア』ではそれが2作めまでとはちがう段階に入った気がしますね。

吉田:ファーストはそれぞれの曲をもちよってコマを見せ合ったのが2作めでバンドっぽくなって、サードはそこからさらにもう一歩踏み込んでって感じですね。中尾さんのサックスと二胡がハモる曲も増えてきたし、もちろんギターとベースも含めてそれぞれの楽器の絡みでできることが広がってきた手応えはあります。

それはミュージシャンとしての熟達ですか?

吉田:バンドでライヴで地道に練っていった結果だと思います。

ライヴはどれくらいの頻度でやっていますか?

吉田:まちまち、なりゆきまかせです。多いときは月に3~4本あったかな。

牧野くんは音楽に費やせる時間が減ったから決断し、絞らなければならないといっていましたが、吉田さんはどうですか?

吉田:僕はいままでと同じで(音楽のために割ける)時間はむかしと変わらず……いや、むかしよりは減ってるかな。ちょっと前に結婚したのもあって生活のリズムは非常によくなったんだけど。ひとといっしょにやるのには単純に準備時間をとりにくくなったのはあります。そのぶんひとりでも準備できるソロのライヴが増えてる。

結婚したことで逆に演奏ではひとりになりたくて無意識にソロ演奏を志向するのかもね。

吉田:それはいま気づきました(笑)。たしかに前よりはひとりでの演奏もおもしろいと思えるようになってきました。スティーブ・レイシーとか林栄一さんとか独奏の演奏を聴くのは前から好きなんです。関島(岳郎)さんのソロもすごく好き。

関島さんのソロはチューバなんですか?

吉田:チューバだけでなくリコーダーやキーボードを駆使していておもしろいんですよ。

中尾さんと関島さんはコンポステラ~ストラーダですが、〈Off Note〉のようなレーベルの影響は吉田さんは大きいですか?

吉田:めちゃくちゃ大きいです。学生のときにトニー・ガトリフやエミール・クストリッツァの映画の音楽が好きで、国内で似たような音楽をやっているグループを探したんですね。シカラムータや渋さ知らズの流れで、ストラーダやコンポステラに出会ったのは大きかった。そこから沖縄民謡の大工哲弘さんも知りましたから。大工さんと中尾さん関島さんは〈Off Note〉でいっしょに何枚かアルバムをつくっていていまでもよく聴いてます。
伝統音楽とポップミュージックの融合っていうとなかなか難しいと思うんですけど、〈Off Note〉はどの作品も融合ってことも感じさせないくらい自然に聴かせるサウンドで。二胡で音楽をやるにあたってそのあたりはかなり影響を受けてると思います。

「歌」って声でメロディで歌うってことだけじゃなく、叫びで表現することもあるし、楽器で表現できるとも思うんです。

NRQのメンバーとしてミュージシャン吉田悠樹として、当面の目標をお聞かせください。

吉田:NRQ的にはまだまだいろいろできるというか。まだのび代はあるんじゃないかと。『ワズ ヒア』では、自分をふくめてこんなことができるのかって発見があったんです。まだいろんな展開はこれからあると思います。

今回吉田さんが作曲した“スロープ”のほかのもう1曲の曲名を“門番”とつけた理由はなんですか?

吉田:演劇を観た経験からです。〈サンプル〉という劇団があって、そのなかで門番という役が象徴的にあつかわれるのが印象にのこって、それをそのままつけたんですけど、理由らしい理由はとくにないです。

演劇はよく観ますか?

吉田:たまに観ます。サンプル、五反田団とか、飴屋(法水)さんもすごく好きです。

服部さんは劇伴をやられてますよね。吉田さんは演劇に音楽をつけたことはありますか?

吉田:五反田団と仲のよい怪談作家に吉田悠軌さんという僕と一字ちがいで同じ読みの方がいらして、吉田さんと怪談のライヴをやったことがあるくらいですね(笑)。

それは演劇を観にいくのは「物語」に接したいということですか?

吉田:うーん、どうなんだろう。音楽のライヴばっかだと飽きるので、たまには演劇をみたいというくらいで。でもそうやってたまに見る映画や演劇に新鮮に心が動かされて、アイデアを得ることが多いです。

いままでの話を総合すると吉田さんは知らないものにふれたい欲求が強そうですね。

吉田:自分に確固たるものがないからかもしれないですね。

そうなの?

吉田:あるとしたら、ハードコア魂じゃないですか。

(笑)パブリック・イメージにそぐわない決め台詞でしたね。

吉田:いや、ホントそうなんですよ(笑)。「歌」って声でメロディで歌うってことだけじゃなく、叫びで表現することもあるし、楽器で表現できるとも思うんです。

以前湯浅湾にゲストで出ていただいたとき、湯浅湾の大音量のなかでも吉田さんは自分の「歌」をちゃんと捕まえていましたものね。

吉田:あれはぶっつけでやらせてもらってすごく楽しかったです。歌があったら、その裏にもうひとつの歌があるというイメージがあって、それはぶっつけの方が上手くいくことが多い気がします。

対抗する旋律というか、そういうものが折重なって雑音になってもひとつひとつちゃんと存在しているのを吉田さんの二胡は表現しているといえますね。

吉田:ヴォーカルと楽器が対等というか、多少は旋律がぶつかっても、それでいいんじゃないかなと思うこともあります。NRQも4人それぞれ旋律が対抗して折り重なったりぶつかったりしても、全体で自然に聴けるみたいな感じでできたらいいなと思ってます。

ラストは中尾勘二氏!
近日公開予定、乞うご期待。

D/P/Iが日本を通過 - ele-king

 D/P/Iことアレックス・グレイについては、ele-kingでも何度取り上げているかわからない。彼や彼らをとりまくLAローカルがローカルではないことは、この数年のD/P/Iの動向や、マシュー・サリヴァンやショーン・マッカンやゲド・ゲングラスといった才能が名を馳せ、マシューデイヴィッドが押しも押されぬ存在になったいま疑う余地はない。そのD/P/Iのうれしい来日ツアーが金曜(福岡)からはじまるが、東京公演の目撃をゆるされるのはわずか111人+α。先行チケット購入者にはD/P/Iデザインのツアー・ポスターがついてくるということで、ヴィジュアル表現においてもヴェイパーウェイヴ以降のリアリティをスマートに切り取る彼の魅力を(QRコードとはかくもミステリアスで甘やかなものなのか)、何方向からも愉しむことができるにちがいない。

■D/P/I JAPAN TOUR 2015

2.6 FRI Fukuoka at KIETH FLACK 20:00 -
mew×duenn presents OBDELAY feat. D/P/I
More Info: TBA

2.7 SAT Osaka at CIRCUS 17:00 -
INTEL feat. D/P/I Japan Tour Osaka
More Info: https://intelplaysprts.tumblr.com

2.8 SUN Tokyo at KATA LIQUIDROOM 2F 18:00 -
BONDAID #4 feat. D/P/I Japan Tour Tokyo
More Info: TBA

Tour Info: https://meltingbot.net/event/dpi-japan-tour-2015

■BONDAID #4 feat. D/P/I Japan Tour Tokyo
powered by forestlimit sound system

日時:
2015.2.8 Sun START 18:00

場所:
KATA + Time Out Cafe & Diner [LIQUIDROOM 2F]

料金:
ADV ¥2,500 w/ Ticket (LTD 111) / DOOR ¥3,000
※限定111枚
ADV Ticket ¥2,500 yen inc. D/P/I JAPAN TOUR 2015 POSTER
アドバンスのチケットを購入された方にはD/P/Iデザインのツアー・ポスター(A2)が付いてきます。
ポスターは公演当日受付にてチケットと引き換えにお渡します。
※ ¥3,000の当日券もございますが混雑により入場規制がかかることも予想されますので予めチケットのご購入を強くオススメ致します。

チケット販売:
KATA [LIQUIDROOM 2F]
DISK UNION (SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP/SHINJUKU CLUB MUSIC
SHOP/SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP/KICHIJOJI/CLUB/DANCE ONLINE SHOP)
DISK UNION ONLINE SHOP
https://diskunion.net/clubt/ct/detail/1006568517

2014年の各媒体を大いに賑わしたニューフェイスARCAやGiant Clawと並び、今日のオンライン・アンダーグランド~レフトフィールドにおけるエレクトロニック・ミュージックの新時代を切り開くLAの異端児D/P/Iが満を持しての初来日公演。R&B / ヒップホップの名義Heat Wave、アンビエント / ドローンの名義Deep Magic、グリッチ / ミュージック・コンクレートの名義D/P/I、そしてジューク / リディムの新名義Genesis Hullなど、様々な名義で現行の流動的なジャンルを縦横無尽に駆け巡り、コラージュやサウンド・プロセスを繰り返しながらインターネットを介して溶け合うサウンド /ヴィジュアル・アートとダンス・ミュージックのクロス・ポイントへと到達。圧倒的なスピードで加速を続ける時代の寵児が紡ぎ出す"今"という最高の瞬間を祝うべく、既存のジャンルやシーンの主流からは外れた異種 "#Leftfiled" (レフトフィールド)をキーワードに各シーンで異彩を放つ気鋭の国内アーティストが集結。新世代インディーズの巣窟でもある幡ヶ谷のライブ・ハウス forestlimit のサウンド・システムを投入、活気付く電子音楽の現在を体現した全14アクトで東京公演をお届けします。

LIVE :
D/P/I (from LA aka Alex Gray, Genesis Hull, Deep Magic, Sun Araw, etc)
[Leaving Records, Duppy Gun, CHANCEIMG.es, melting bot] #Glitch

DREAMPV$HER #Techno
FUMITAKE TAMURA (Bun) #Beat
Akihiko Taniguchi #Glitch
食品まつり aka Foodman [Orange Milk] #Footwork
KΣITO [SHINKARON] #Footwork

DJ :
Inner Science #NewAge
ENA [7even / Samurai Horo] #Bass
HiBiKi MaMeShiBa [Gorge In] #Gorge
Cold Name (from Jesse Ruins) [Desire] #Industrial
Fruity [SHINKARON] w/ Weezy & Takuya #Footwork
あらべぇ #Ambient
Hi-Ray [Sukima Tokyo] #HipHop
SlyAngle [melting bot / BONDIAD] #Techno

More Info : https://tmblr.co/ZThEfs1aIsq_N

■D/P/I aka Alex Gray :
LAのプロデューサーAlex Grayによるソロ・プロジェクトDJ Purple ImageことD/P/I。Deep Magic名義で2009年に〈Not Not Fun〉よりデビューし、 アンビエント / ドローンを主体とした作品を〈Preservation〉や〈Moon Glyph〉といったレーベルから連発、一方のD/P/I名義は自身のレーベル〈CHANCEIMAG.es〉立ち上げと共に2012年に始動、アブストラクトなベース / ビート・ミュージックへアプローチをした作品を矢継ぎ早にリリース。勢いは加速され〈Brainfeeder〉所属のMatthew David 主宰〈Leaving〉からのEP『RICO』、そしてアルバム『08.DD.15』と『MN.ROY』ではそのアブストラクトなビートは更にデジタルなプロセスを経て細切れとなり、Oneohtrix Point Neverの『R Plus 7』へも通じるシャープでグリッチーな音像のコラージュを主体としたミュージック・コンクレートへと発展。別名儀Heat WaveではR&B / ヒップホップをスクリューしたミックステープ、最近ではSun ArawとM. Geddes Gengrasの電子ダブ・レーベル〈Duppy Gunn〉よりGenesis Hullなる新名義でジューク / フットワークの影響下にあるリディムを披露。また同じくLAの盟友Sun ArawやDreamcolorのメンバーでもあり、映像やアートワークも自身で作る、流動する現在のジャンルを縦横無尽に駆け巡り加速を続けるマルチ多作家。

最新作リリース情報 :
D/P/I - MN.ROY / RICO [melting bot / Leaving Records 2014] #Electronic
#Glitch #MusicConcrete
https://meltingbot.net/release/dpi-mn-roy-rico/

Genesis Hull - Who Feels It, Knows It [Duppy Gun 2014] #Bass #Juke #Riddim
https://soundcloud.com/zonatapes/sets/genesis-hull-who-feels-it

Deep Magic - Reflections Of Most Forgotten Love [Preservation 2013]
#Ambient #Drone #NewAge
https://soundcloud.com/experimedia/deep-magic-reflections-of-most


ANDY STOTT Japan Tour 2015 - ele-king

 AFXの最新EPが先週末出た。評価された作品のすぐあとに出される作品の多くはコケるものだが、AFXは「やっぱすごいわ」と唸らせた。アンディ・ストットの『Faith In Strangers』は大評価された『Luxury Problems』のすぐあとの作品ではないが、前作が大きなインパクトだっただけに、アーティストの真価が問われる作品ではあった。『Faith In Strangers』は、「やっぱすごいわ」とファンを唸らせた。紙エレキングの年間ベストの7位である。2014年はミリー&アンドレアとしての『Drop The Vowels』もあった。こちらは紙エレキングの13位である。
 『Faith In Strangers』は、FKAツイッグスや下手したらビョークの新作ともリンクしそうなほど、彼の拡張する音楽をみせている。パワフルなベースの響きと妖艶なポップ・センスが彼の新しいライヴセットでどのように再現されるのか、注目したい。

2015.2.13 friday @ 東京 代官山 UNIT
LIVE: ANDY STOTT (MODERN LOVE, UK), STEVEN PORTER (10 LABEL)
DJ: HARUKA (FUTURE TERROR), Chris SSG (MNML SSGS)
SALOON: Viorhythm / Live: hakobune / DJ: Koba, Yuki Moriyama, medical, maki / VJ: CHRISHOLIC / Art: STONE63, ayanicoco
Open/ Start 23:00-
¥3,500 (Advance), ¥4,000 (Door)
Ticket Outlets: LAWSON (L: 78755), e+ (eplus.jp), disc union CMS (渋谷, 新宿, 下北沢), TECHNIQUE, Clubberia Store, RA and UNIT
Information: 03-5459-8630 (UNIT) www.unit-tokyo.com
You must be 20 and over with photo ID.

2015.2.14 saturday @ 大阪 心斎橋 CIRCUS
LIVE: ANDY STOTT (MODERN LOVE, UK)
DJ: DJ: Kihira Naoki (S.I), Ooshima Shigeru (S.I, Mobbin hood), AIDA (Factory, Copernicus), Masahiko Takaeda (RÉCIT RECORDS)
Open/ Start 22:00-
¥2,500 (Advance, Members), ¥3,000 (Door)
Ticket Outlets: e+ (eplus.jp) または info@circus-osaca.com までお名前と枚数をお送り下さい。
Information: 06-6241-3822 (CIRCUS) www.unit-tokyo.com
You must be 20 and over with photo ID.


The Pop Group - ele-king

 先日お伝えしたように、35年ぶりに帰ってきた、ブリストルのゴッドファーザー、ザ・ポップ・グループ。
 ここに、いち早く、ミュージック・ヴィデオをお届けしよう!


The Pop Group
マッド・トゥルース


 以下、マーク・スチュワート御大と監督を務めたアーシア・アルジェントのコメントです。


「“怒れる女司祭”ことアーシア・アルジェントは、俺たちが住んでいるこの狂ったゾンビ・ワールドでの同志のひとりだ。俺たちは共に闘うために生まれてきた。彼女は最高だよ!」 マーク・スチュワート 2015
“The priestess of provocation, Asia Argento is a kindred spirit in this crazy zombie world we live in, we were born to collaborate, she’s the bomb!” Mark Stewart 2015


 「ザ・ポップ・グループとのコラボレーションはまさに夢が叶ったとしか言いようがありません。この曲にはぶっ飛ばされました。このビデオに出てくるセットやシンボルはすべて曲と歌詞からインスパイされているの。無意識レベルで。私がイメージしたのは、永遠の子ども達のカラフルな魂が支配する世界。彼女達のクレイジーな愛をアート、すなわち生ける死霊のはびこる世界との霊戦を通して表現しました。
 このヴィデオに登場する子たちは私が最近撮った映画にも出ているの。私の娘、アナ・ルーもいるわ。私たちは自由と信頼の強い絆で結ばれています。
 そして35年ぶりのシングルの監督に私を選んでくれたとき、バンドが同じ自由を私に与えてくれました。
 私の映像と“マッド・トゥルース”が永遠につながっていられることを心から感謝します。」アーシア・アルジェント 2015

"Collaborating with The Pop Group is a dream come true. The track blew my mind: all the set-ups and symbols in the video are inspired on a subconscious level by the music and the lyrics. I imagined a world ruled by the colourful souls of eternal children, expressing their crazy love through art, a spiritual warfare against a world populated by the living dead.

The kids that appear in the video have worked also in the last movie I directed, including my daughter Anna-Lou. Between us there is a deep bond of trust and freedom.

The same freedom I was given by the band when they chose me to direct their first single in 35 years.

I am deeply grateful to have my vision entwined with MAD TRUTH for eternity."

Asia Argento 2015

interview with Sugar’s Campaign - ele-king


Sugar’s Campaign
FRIENDS

SPEEDSTAR RECORDS

J-PopSynth PopDisco

■初回限定盤
Tower Amazon
■通常盤
Tower Amazon

 これは、ポスト・インターネット時代におけるポップ・ルネサンスなのだろうか? インタヴューをはじめる前、こちらが手渡した『ele-king Vol.14』の年間ベスト特集をパラパラとめくっているSeihoとAvec Avecに「2014年のベストは?」と訊くと、「僕はGiant Clawの『DARK WAVE』PC MUSICかなぁ」(Seiho)「僕もやっぱりPC MUSICは好きやし、あとは何やろ……Lidoとか? Lindsay Lowendのリミックスがめっちゃ良かったから」(AVEC AVEC)という答えが返ってきた。たしかに、ふたりのユニット=Sugar’s Campaignによるファースト・アルバム『FRIENDS』は、Giant ClawやPC MUSICがズタズタに切り刻んだりグニャグニャに歪めているアーバン・ミュージックやティーン・ポップを、90年代のJ-POPと交換して、そこに、より洗練されたリノベートを施したアヴァン・ポップな作品だと言えるだろう。しかし、その手つきがあまりにも見事なので、以上のような文脈を知らない多くのひとは『FRIENDS』を何の疑問も持たずに最新のポップ・ミュージックとして楽しむにちがいないが、それこそが彼らの意図するところなのだ。アンダーグラウンドなビートメイカーとして頭角を現し、いま、ポップスターへと続く階段を駆け上がらんとしているSeihoとAvec Avecに、作品の裏に複雑に張り巡らせ、そして、覆い隠したコンセプトについて話を訊いた。

■Sugar’s Campaign / シュガーズ・キャンペーン
「Avec Avec」ことTakuma Hosokawaと「seiho」ことSeiho Hayakawaの2人によるポップ・ユニット。2011年に現在の体制となり、2012年1月にその存在を広く認知される契機となった楽曲“ネトカノ”を youtube にて公開。2014年8月には限定のアナログ盤「ネトカノ」をリリース。翌9月には同作のCD盤がリリースされタワーレコード全店チャート10位を獲得。2015年1月、SPEEDSTARRECORDSよりメジャー・デビュー作となるファースト・フル・アルバム『FRIENDS』を発表。

彼が前に進む力をくれたんです。(Avec Avec)
だって、こいつ、ひとりだとほんと進まないんですもん(笑)。(Seiho)

〈ele-king〉といえば、僕がtofubeats feat.オノマトペ大臣「水星」のレヴューをシティ・ポップ・リヴァイヴァルという観点から書いたとき、文中でSugar’s Campaign(以下、シュガーズ)の「ネトカノ」にも触れたんですよ。
 同曲がYoutubeにアップされたのが2012年1月。そこから、活動が本格化すると思いきや、ファースト・アルバム『FRIENDS』まで丸3年と、案外、時間がかかりましたね。

Seiho:かかりましたねぇ(笑)。

ただ、シュガーズの歴史はさらに長いんですよね?

Avec Avec:シュガーズはもともとは僕が組んでいたバンドだったんですよ。高校、大学とずっとやっていて。僕が曲をつくって、ドラムを叩いて──

Seiho:いまもヴォーカルをやってくれてるakioがギター・ヴォーカルで、作詞をやってくれてる小川(リョウスケ)くんがベースで。

Avec Avec:でも、大学3年生くらいのときに、みんなが就職活動やらなんやらで動けなくなってきて、僕ひとりになってしまったんです。そのタイミングでAvec Avecとしてソロ活動をはじめたんですが、「Sugar’s Campaign」って名前は残しておきたかった。ただ、シュガーズのポップ・ミュージックをやるというコンセプトを引き継ぎながらも新しいことをやりたいと思って、大学で仲のよかったSeihoに加入してもらったんです。
 ちなみに、「ネトカノ」もバンド時代に曲は完成してた。それに歌詞とSeihoが撮ってくれたヴィデオとを合わせて、Youtubeにアップした感じですね。

クレジットだと、基本的に作曲はAvec Avecがやって、編曲はSeihoと半々という感じですよね。その表記では見えてこない役割分担があると思うのですが、実際にはどんなバランスなのでしょうか?

Seiho:劇でいうと、Takuma(Avec Avec)が脚本で僕が演出みたいな。ふたりでアイディアを出し合って、それを基にTakuma(Avec Avec)に曲をつくってもらって、僕がアートワークやらヴィデオやらを考えるという感じですかね。

Avec Avec:あと、Seihoは僕が曲づくりで迷ったときに、指針をバーンと出してくれる。

〈Maltine Records〉から出たAvec AvecのEP『おしえて』を聴くと、シュガーズの音楽性はAvec Avecの延長線上にあるのかなという印象を持ちます。やはり、Seihoのソロとは大きくちがう。

Seiho:そうですね。ちがいますね。

Seihoはシュガーズに誘われたとき、すぐに引き受けたんですか?

Seiho:僕はシュガーズのファンだったんですよ。だから、Takuma(Avec Avec)がこのままひとりでやっていても、一生、活動は再開せえへんやろうなと思って、入ったっていう感じです。

Avec Avec:彼が前に進む力をくれたんです。

Seiho:だって、こいつ、ひとりだとほんと進まないんですもん(笑)。

Avec Avec:そう(笑)。あそこでSeihoがシュガーズに入ってくれなかったらずっと引きこもってたと思います。

たしかにSeihoは〈Day Tripper Records〉もやっていたし(現在は距離を置いている)、行動力がありますもんね。一方、Takuma(Avec Avec)さんは自分ひとりになってもシュガーズを止めようとは考えなかったこだわりの強さがあると思うんですけど、シュガーズというユニットのどんな部分に愛着を感じていたんですか?

Avec Avec:「歌もののポップ・ミュージックをやりたい」というのがずっとあって。でも、僕は歌えないし、かといってゲスト・ヴォーカルを招くのもちょっとちがうというか。そうじゃなくて、ほんまにひとつの劇団をやるような感じでポップスをつくりたいと思ってたんです。シュガーズの活動が停止しているときも、Seihoとはそういうことをよく話していて、価値観とか、物語のつくり方が僕ととても近かったので、じゃあ、ふたりでつくったらもっとおもしろくなるんじゃないかと考えた部分もありましたね。

僕にとってはあくまでもバンドが本チャンの活動で、ブート・リミックスは趣味なんやっていう意識だったんですけど、Tofuくんはそういうものをむしろ本チャンと考えるような活動の仕方をしていたから、驚いて。(Avec Avec)

Seihoはバンド時代のシュガーズにどんな印象を持っていた?

Seiho:いわゆる“京都のインディ・バンド”みたいな。僕はシュガーズの曲が好きだったんですよ。当時の曲をピアノで弾き直して、ヴォーカルを乗せて、別のトラックに差し替えればいまのシュガーズとぜんぜん変わらないと思うんですね。コードの感じとか、メロディの感じとか。でも、いかんせん、形態が3ピースのギターポップなもんやから……。そもそも、僕は“バンド”というものがよく理解できなくて。ただ、その頃はチルウェイヴが出てきた時期で、バンドものがダンス・ミュージックと合流するような感じがあったじゃないですか。トロ・イ・モワとか――

Avec Avec:ウォッシュト・アウトもそうやし。僕的にガッときたのはネオン・インディアンなんですけど。

Seiho:そうそう。それで、「もしかしたらシュガーズがやっていることと、僕がやっていることを合わせたらもうちょっとイケるかもしらん!」って思ったんです。加入することに決めたのはそれがいちばん大きいかな。だから、2010年以降のチルウェイヴの流れに押された感じがありますよね。バンドに打ち込みの音を入れるっていうような単純な話ではなくて、あの時期、ポップスの概念がもっとぐにゃっとしたというか。

Avec Avec:同じ頃、僕はTofuくんと出会って。当時、僕はひとりで〈ニコ動〉とか〈2ちゃん〉にブート・リミックスをアップしてたんです。J-POPやら海外のポップスやら、ガラクタみたいな音源をいじくって、バンドができないフラストレーションのはけ口みたいな感じで。ただ、僕にとってはあくまでもバンドが本チャンの活動で、ブート・リミックスは趣味なんやっていう意識だったんですけど、Tofuくんはそういうものをむしろ本チャンと考えるような活動の仕方をしていたから、驚いて。自分は頭が固いから分けて考えていたものの、そんな必要はないんやなと。さらに、そこにチルウェイヴが出てきて、ネオン・インディアンがトッド・ラングレンのイントロをまるまるサンプリングした上に自分のメロディを乗せるみたいなことをやっていて(「デッドビート・サマー」)、その感覚もアリやわと思って。そういうムーヴメントも世界中で起こりつつあったし、Seihoも横におるし、これはおもしろいことになってきたわって感じはありましたね。

いま、世界的な傾向として、ポップ・ミュージックのメインはダンス・ミュージックを通過したものになっていますよね。テイラー・スウィフトみたいなカントリー出身のアーティストでさえもそうですし、シュガーズもそれに対応している。ただ、シュガーズの場合、果たして、ポップ・ミュージックからダンス・ミュージックへ寄ったのか、あるいはダンス・ミュージックからポップ・ミュージックへ寄ったのか、どっちなんだろうと思っていたんですが、前者がAvec Avecで、後者がSeihoで、その中間でふたりが出会ったというのは乱暴な整理の仕方ですかね?

Seiho:バランスの話でいえば、「J-POPがルーツなのか、洋楽がルーツなのか」とか、「白人音楽なのか、黒人音楽なのか」とかっていう問いも同じですけど、僕は、Sugar’s Campaignの場合、「どっちかではなく、どっちもある」というふうに思ってますね。

ルーツとなっているアーティストの具体名を挙げてもらえますか?

Avec Avec:僕の場合はトッド・ラングレンとか、ポール・マッカートニーとか、やっぱり、白人音楽が多いです。でも、ビートっていうことになると黒人音楽の方が普遍性があると思うし、結局、「白人が憧れる黒人音楽」みたいなものがいちばん好きなのかもしれません。

ブルーアイド・ソウルみたいな。

Avec Avec:そうですね、ホール・アンド・オーツなんかも好きですし。あとはバート・バカラックとか、王道のポップ職人みたいな人。

子どもの頃に憧れていた大人像を懐かしむというか。あの頃のポップスって大人っぽいものが多いじゃないですか。(Avec Avec)

日本のアーティストだとどうですか?

Avec Avec:広瀬香美さんとかすっごい好きでした。

へえ!

Avec Avec:90年代のあの感覚が好きというか、やっぱり、子どもの頃に聴いてましたからね。あとは、久保田利伸さんとか、岡村靖幸さんとか。他にもアニメの音楽とか、『ポンキッキーズ』で流れてた曲とか……だから、荒井由実さんみたいなガチのシティ・ポップっていうよりは、それを通過した後のポップスが原体験になってるのかもしれません。

そういうものが、子どもの頃に聴いていたというノスタルジーも込みで好きだということでしょうか。

Avec Avec:子どもの頃に憧れていた大人像を懐かしむというか。あの頃のポップスって大人っぽいものが多いじゃないですか。たとえ、アニメの音楽だとしても。

Seiho:子どもが憧れる大人像とか、大人が懐かしむ子ども像とかって、想像上でしか存在しないものだと思うんですよ。僕たちはその虚像みたいなものをイメージして曲をつくってるっていう、穴埋め作業をやっているような感じですね。

Avec Avec:そして、その虚像の気持ち悪さみたいなものが、僕たちがやりたいポップス像でもあって。

Seiho:そう。実際にはそんな大人大人した大人はいないし、子供子供した子供はいないし、よく考えると気持ち悪い。でも、その気持ち悪さこそがポップスとしての普遍性っていうような感覚。

Avec Avec:シティ・ポップの問題もそうで、僕らが“シティ”って言うとき、現実の都会に憧れてるわけじゃないんですよ。

Seiho:東京をイメージしているわけでもないし。たぶん、そこで頭にあるのは、小さい頃に観たアニメとか映画とか、そういうところに出てきた都会なんです。架空の場所というか。

Avec Avec:そもそも、都会を知らないですからね。まぁ、大阪はゆうても都会かもしれないですけど。

出身は何処ですか?

Avec Avec:ふたりとも大阪で、僕は郊外の枚方市。駅前にショッピングモールがあって、似たような家が並んでいて、本当に“ザ・郊外”って感じの街なんですけど、どこか幻想っぽいんですよ。

Seiho:都会の代用品というか。

Avec Avec:そうそう。郊外は都会をミニチュア化したものだから、妙に幻想的な感じがある。

Seiho:いびつだよね。

Avec Avec:不気味さもあるし。

Seiho:道路のつくり方とかマンションの建て方とかが、『シム・シティ』みたいにひとりの人間の計画でできているような。誰かの妄想の中に居るみたいでヤバいっていう感覚。

僕も埋めて立て地のニュータウンで育ったんで、言ってることはわかりますよ。

Avec Avec:あと、ショッピング・モールがおもしろいのは、国内はもちろん、エジプトでも同じような形をしているところで。

東浩紀さんもそういうことを書いてましたね。

Avec Avec:人間の動物的な想像力でつくられているのかもしれないなと思います。

ある種のユートピアの具現化だと。

Avec Avec:ヴェイパーウェイヴなんかもそういうことを表現しているのかもしれないですし、“都会に対する気持ち”みたいなもの自体が幻想だと思うんです。

ひいては、それこそがポップスの魅力。

Seiho:みんなが抱いている憧れみたいなものを集めていくと、存在しないものが出来上がる。それを引いて見ているひとが感じる気持ち悪さこそがポップスなんじゃないかっていうことです。

みんなが抱いている憧れみたいなものを集めていくと、存在しないものが出来上がる。それを引いて見ているひとが感じる気持ち悪さこそがポップスなんじゃないかっていうことです。(Seiho)

ほとんどの人はその気持ち悪さに気付かないような気もしますけどね。

Seiho:そう。だからおもしろおもしろいんですよ。僕らはその気づいていない人たちを見て笑うのが好きなんです。これはあまり言わないことですけど、シュガーズの曲を聴いてシュガーズの世界に入り込んでいる人たちを見て、いちばん笑っているのが僕らだと思います。たとえば、ディズニーランドで楽しんでいる人たちをまじまじと見るとたぶん気持ち悪いじゃないですか。だからこそ、僕らはディズニーランドを作りたいんですよね。テーマパークを。

先程のブルーアイド・ソウルの話でもそうですけど、対象との距離感に惹かれるようなところがあるんでしょうか?

Avec Avec:客観視しようということはつねに考えてますね。主観が強い音楽があまり好きではないというか。

たしかにシュガーズの音楽にはアーティフィシャルな感覚があります。

Seiho:メンバーにヴォーカリストがいないのもそういうことなんです。ヴォーカルってやっぱり主観やから、バンドが5人いたとしても、ヴォーカリストがなよっとしていたらナイーヴなバンド、マッチョやったらマチズモなバンドっていうふうに見られてしまうと思うんですよ。いまの編成になったのは、ヴォーカルを使う上でその主観を排除したかったからというのはありました。

アルバムでは12曲中8曲でakioさんのヴォーカルがフィーチャーされていますが、あくまでもシュガーズの音楽のいち構成要素という感じですね。

Avec Avec:akioにしても、他のヴォーカルにしても、劇団所属の俳優さんっていうぐらいの距離感ですね。

Seiho:もちろん、俳優にもキャラがあるし、それまでの経歴も印象に影響を与えるでしょうけど、劇の中ではあくまで与えられた役を演じているわけじゃないですか。

Avec Avec:ただ、今回のアルバムに関して言うと、俳優は入れ替え不可能で。僕たちが決めた配役と、彼らがやってくれた演技に関しては大事に思ってます。

Seiho:だから、僕らがつくった役を別のひとが演じても意味がないんですけど、劇によって演じた俳優自身が認識されていくというよりも、演じられた役が認識されていくという感じ。

akioさんのヴォーカルがこのアルバムの世界観を支えているのも間違いないと思うものの、それは、彼のパーソナリティとは関係なくて、要は楽器的な使い方をしているということですかね?

Seiho:ヴォーカルの録りはTakuma(Avec Avec)がやってるんですけど、僕が見ていてすごく変わってるなと思うのは、ヴォーカルがヴォーカルらしさを出すと絶対にNGを出すんですよ。ヴォーカルって、当然、歌える人だから、歌いたくなっちゃうじゃないですか。

今回のアルバムに関して言うと、俳優は入れ替え不可能で。僕たちが決めた配役と、彼らがやってくれた演技に関しては大事に思ってます。(Avec Avec)

ヴォーカルの録りはTakuma(Avec Avec)がやってるんですけど、僕が見ていてすごく変わってるなと思うのは、ヴォーカルがヴォーカルらしさを出すと絶対にNGを出すんですよ。(Seiho)

ヴィブラートを使ったり、歌い上げようとするということですよね。

Seiho:そうそう。声を張ったり。でも、Takuma(Avec Avec)は、ヴォーカルのヴォーカルらしくない瞬間だけをきっちりと録っていくことが多くって。たとえば“パラボラシャボンライン”(アルバム収録曲)のトラックが送られてきて僕が思ったのは、あの曲ってコーラス・ワークも巧みやし、ヴォーカルだったらもうちょっと歌い込みたくなるはずなんですよ。けど、それが、「朝5時くらいに、外では雪が降り積もっている7畳くらいのアパートの部屋で、暖房もつけずに窓の外を眺めながら、隣の部屋の人がまだ寝てるので大きな声は出せないけど、歌いたい」みたいな、ギリギリの声の出し方をしてる。

そういう設定を、Takuma(Avec Avec)さんからakioさんに伝えたということですか?

Avec Avec:いや、それは、あくまでもSeihoが感じた雰囲気なんですけど、フィーリングとしては近いですね。録りながら、「もうちょっと抑えよう」って思ってましたから。エモくなりすぎると引いてしまうから。僕自身が。

ヴォーカルにエモーショナルが入ると嫌だけど、ヴォーカルが誰でもいいというわけではない。

Avec Avec:akioは、本来、がっつりと歌える人なんですよ。

Seiho:その彼が、ああいうふうに歌うことに意味がある。

それはボーカロイドではダメなんですか?

Avec Avec:うーん……それでもいいですよ。

Seiho:ボーカロイドならボーカロイドでもいいんですよ。今回に関しては、20代男子が考える妄想の世界は、20代男子が歌う方が合理性があると僕らが考えただけであって。たとえば、「これは人間の恋愛の歌だけど、あえてボーカロイドに歌わせるのがおもしろいんや」っていうふうに思えば、ボーカロイドを使うかもしれない。歌詞が中国語の“夢見ちゃいなガール”(アルバム収録曲)にしても、「これを女の子が歌ってるからいい、こういう立ち位置の人が歌ってるからいい」っていうのがありましたからね。

なるほど。いわゆるフィーチャリングものっていうか、すでに知名度があるヴォーカリストを起用する際に相手のキャラクターを考慮するケースはあると思うんですけど、akioさんにしてもイメージはまっさらなんで、まるでボーカロイドを使っているような印象を受けるのかもしれません。

Seiho:だから、僕らとしてはやっぱり劇の譬えがしっくりくるんですよね。

Avec Avec:劇っていうのは、俳優ではなく、作家と演出家の作品なんやけども──

Seiho:作家と演出家もその劇に脇役として出てくる。シュガーズはそんな立ち位置ですね。松尾スズキ的な。

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僕がいちばん悩んでいたのは、「ネトカノ」をアルバム・ヴァージョンにした方がいいのかどうかっていうことで。(Seiho)

劇ということで言うと、今回のアルバム『FRIENDS』をつくるにあたってどんなストーリーというか、コンセプトを設定したのでしょうか?

Seiho:僕がいちばん悩んでいたのは、「ネトカノ」をアルバム・ヴァージョンにした方がいいのかどうかっていうことで。でも、いろいろと考えると、まず、アルバムを出すまでに3年かかってる。そして、シュガーズが結成されてから7年が経過してる。こうなると、ファースト・アルバムっていうのはもはや僕らのアルバムではないんですよね。

Seihoも途中から入ったわけだし。

Seiho:ですよね。それで、この3年間、応援してくれたり、いっしょに楽しんでくれた人たちのことを考えると、“ネトカノ”は“ネトカノ”のまま入れたほうがいいと思ったんです。ちなみに、“カレイドスコープ”(アルバム収録曲)なんかは、Takuma(Avec Avec)が7年前に録ったままで。

Avec Avec:大学生になる前ですね。

Seiho:だから、ほんまに集大成というか。

Avec Avec:6、7年分の僕らのベストという感じです。

先ほど、ノスタルジーが重要だという話がありましたけど、そこから生まれた曲にもノスタルジーが生まれつつあるというか。

Seiho:そうですそうです(笑)。

となると、先ほど否定したバンドとしての主観みたいなものができてきてしまうようにも思うんですが。

Seiho:いや、そのへんの記名性については、べつに僕らは逃げてるわけではないんです。

Avec Avec:そこは吉本新喜劇がいい例っていうか。あれって演じ手のキャラを押し出すじゃないですか。でも、劇の内容とは関係なかったりする。

Seiho:たとえばその人が借金キャラやったら、劇中で借金取りの役をやらされて、それをいじっておもろいっていうときがありますよね。パーソナルなものと劇中の役がいびつに混ざり合って、パーソナルなものが出た瞬間に、突然、劇から離れるというか、メタな視点に移る。そのパッと後ろに視点が下がる瞬間が好きなんです。

関西人ぽい譬えですね(笑)。

Seiho:ここは関西キャラを押し出しとこうかなと(笑)。そういえば、この間、大阪ローカルの芸人の番組を東京の人に観せたときに、ぜんぜんおもしろさが伝わらなかったんです。それって、たぶん、他の大阪ローカルの番組を観てないからなんですよ。リテラシーが低いというか。でも、東京の人のコントを大阪の人が見ても笑えるんですよね。つまり、それは置換可能な笑いなんです。大阪の笑いは、パーソナルとくっついてるから、リテラシーが低いと笑えない。で、僕らとしてはどっちもやりたいんですよね。

Avec Avec:そこは、やっぱり、ダウンタウンが上手いんやわ。関西の立場込みの大喜利と、コントの置換可能な笑いがいっしょになってる。それがダウンタウン以降の構造かなって……なんや、お笑い論になってるけど(笑)。

シュガーズをお笑いに譬えると誰になるんですかね?

Seiho:僕らとしてはバナナマンを目指してます。バナナマンの場合、各々のキャラがコントに反映されてるんですよ。ふたりともキャラが強いから。で、そのキャラがどんなテレビ番組でも流用できる、みたいな。1からつくらんでも、日村勇紀は日村勇紀として扱われるじゃないですか。なおかつ、「先輩としてのバナナマン」っていう役もできるし、「ダウンタウンとか先輩に対する後輩としてのバナナマン」っていう役もできる。それを無理なくこなす絶妙なバランス感覚はすごいなって思いますね。

つまり、シュガーズは完全な虚構をつくりたいと考えているわけではなく――

Seiho:だから、僕らはラーメンズではないんですよ。

Avec Avec:そやな。

Avec AvecとSeihoというキャラ込みでSugar’s Campaignの世界が成立していると。

Seiho:そう。シュガーズはメタなんで、僕がソロのほうでどんなに格好つけてても、ここに帰ってきたら相対化されるんです。「あれも“役”なんや」って。だからこそ、僕はシュガーズをやってるんですけどね。

そう。シュガーズはメタなんで、僕がソロのほうでどんなに格好つけてても、ここに帰ってきたら相対化されるんです。「あれも“役”なんや」って。(Seiho)


■なるほど。では、アルバムの話に戻りますけど、たとえば“ホリデイ”(アルバム収録曲)のボトムだったりとか、ダンス・ミュージックのエッジィな部分をどのくらい取り入れて、どのくらい丸くするかというあたりは戦略的にやっているんだろうな、という印象を受けましたが。

Avec Avec:そこもほんまバランスですね。

Seiho:どっちがおもろいかです。曲によって「こっちはダンスの比重が高い方がいい」とか、あるいはその逆とか。

“香港生活”(アルバム収録曲)は普通にクラブでも機能しそうですね。

Seiho:そうですね。あのトラックは僕がつくってるんですけど、クラブ・ユースな曲だと思います。やっぱり、役割分担があって、ループのほうがおもしろいと思うときは僕がつくりますし、逆にライトに聴けるようにしたいと思うときはTakuma(Avec Avec)がつくるほうがよかったりしますし。ちなみに、“ネトカノ”に関してはベースだけ僕がやってるんですよ。クラブでも機能するし、歌ものとしても機能するものをつくりたい場合は、パートごとに編曲を分けたりもしてますね。

もう一度、シュガーズにおけるポップ・ミュージックとダンス・ミュージックの関係について聴きたいのですが、先程の説明だと、あくまでも配分が重要なのであって、両者はあまり分けて考えていないということでしょうか?

Avec Avec:そうですね。僕は、全部、ポップ・ミュージックだと思ってます。……いや、そんなことないかな? どうなんやろ。

Seiho:ポップなものとポップじゃないものは分けられるけど、ポップとダンスじゃ分けられへんって感じかな。

でも、Seihoがソロでやっている音楽って、強力なサウンド・システムで鳴らされたときにいちばん効果を発揮する類いのものでもあるじゃないですか。

Seiho:あ、そういうニュアンスなら、シュガーズっていうのは、その曲を譜面に起こして弾き語りで演奏しても機能するっていうことが重要かな。

Avec Avec:「これはドライヴで聴いたら楽しいかな」とかっていう“用途”についてはよく考えてますね。“ホリデイ”もそうやし。

Seiho:“ホリデイ”はクラブに行く前のシチュエーションやから、クラブっぽい曲調になってる。だから、僕らがどういう立ち位置で、どういうことがやりたいかっていうことより、それぞれの曲の世界観のほうが重要っていうか。

Avec Avec:そうそう。自分たちのスタイルが決まっちゃうと遊べないじゃないですか。

「クラブに行く前のシチュエーションだからクラブっぽい曲調になっている」というのは、シュガーズの曲のつくり方を考える上でわかりやすい説明ですね。まず、曲の設定があって、そこに合うジャンルを引っぱってくると。

Avec Avec:シュガーズの記名性とかスタイルについて思うのは、僕の曲のつくり方って、アーカイヴから引っぱってくるやり方なんですね。自分の聴きたい音楽がないから、「AORのこの部分」「エレポップのこの部分」「パンクのこの部分」っていうふうに好きなところを取ってきて組み合わせる。で、そういったアーカイヴからの選び方自体が僕の記名性なんやと思うんですよ。ある曲をつくるときに、たとえば5つの要素を引っぱってくるとするじゃないですか。そして、別の曲を作るときにまたちがう5つの要素引っぱってきたとしても、同じ人間であれば選び方に癖が出てくるわけなので、それが“Sugar's Campaign”っていう記名性になるんじゃないでしょうか。

それは、いわゆる渋谷系と呼ばれた人たちの音楽のつくり方にも近いと思いますし、あるいは、Soundcloudのタグとか――

Avec Avec:Tumblrとかの感覚にも近いですね。

リブログにその人の個性が表れるという。

Seiho:そうですね。ただ、Takuma(Avec Avec)がそうやってつくっていくことによって記名性が強くなるのに対して、僕はアーカイヴを隠す作業をしているんです。それが、劇で言うと演出にあたるというか。「こうすれば、どこから取ってきたかわからんやろ」っていうふうに、手を加えたり、引き算をしたり、商品としてソリッドに仕上げていく。そういった役割分担があるかもしれないですね。

Avec Avec:僕だってバレないように気をつけてるんですよ。いや、バレたっていいけど、センスよくやりたい。

Seiho:文脈とか意味とかを持ちだすのはダサいと思ってるんで。その、引っぱってくる要素が90年代に流行ってようが80年代に流行ってようが、そんなん関係ない。音が格好よければいい。だから、文脈とか意味とかを消して純粋な音にするために削っていくんです。

Avec Avec:タイトルが「ネトカノ」になったのもそういうことなんですよ。

どういうことですか?

Avec Avec:アーカイヴから引っぱってくる渋谷系的なつくり方をしてるってことが、いちばんわからなくなるタイトルやと思うんですよ、「ネトカノ」って。

Seiho:あれの映像をつくった段階で、もう“ホリデイ”もあったんです。だから、「“ホリデイ”のほうにMVをつけよう」っていう話もしていて。でも、「ネトカノ」にしたのは、「ネトカノ」の方がダサかったんですね。ダサいというか、あの時点で古かった。チルウェイヴも流行ってたし、シティ・ポップも流行りはじめてる中で「この感じはベタすぎやろ!」って。で、1~2年後には“ネオ渋谷系”みたいなものが流行って、そういう音楽が消費され尽くすにちがいないと踏んで、「じゃあ、そこを先回りして渋谷系っぽいMVのイヤな部分だけを切り取ったものをつくろう」と思ったんです。“大学におるいちばんかわいい子”ぐらいの子を1日デートで撮影する、みたいな。

アーカイヴから引っぱってくる渋谷系的なつくり方をしてるってことが、いちばんわからなくなるタイトルやと思うんですよ、「ネトカノ」って。(Avec Avec)

先回りして渋谷系っぽいMVのイヤな部分だけを切り取ったものをつくろう」と思ったんです。(Seiho)

映画サークルの男が、撮影を口実にデートしてワンチャン狙う、みたいな(笑)。

Avec Avec:そうそう(笑)。彼女をジャケットに使う、とかね。

Seiho:そういういう感覚のダサさを含めて渋谷系みたいなMVをつくったというか。でも、ワンチャンもできてないし、彼女でもないっていうところで渋谷系とはちがうところに行けるかなとも思ったり。

Avec Avec:非モテ感が出てるよね。

Seiho:あと、タイトルを「ネトカノ」にすることでリア充感がなくなるんですよ。

Avec Avec:リア充すぎるのはイヤやから。

Seiho:そういう、渋谷系に対してメタ的な視点を持っているという意味を込めて、「ネトカノ」ってタイトルにしたわけです。

ただ、こうしてメジャー・デビューして、実際にショッピング・モールでデートしているところでシュガーズの曲がかかる可能性もあるわけで、そうなったらパラノりそうですね。

Seiho:うん。現実と劇がごっちゃになる。

とはいえ、ポップスとして消費されることを目指しているわけですよね?

Avec Avec:そうですね。

リスナーには、どこまでその仕掛け、そのいびつさに気づいてほしいですか?

Avec Avec:難しいけど……。素直に取ってくれてもいいし、深読みしてくれてもいいし、って感じですかね。

Seiho:『スタンド・バイ・ミー』(監督:ロブ・ライナー、原作:スティーヴン・キング、86年)なんかも奇妙な映画じゃないですか。けど、キャッチー。あんなもんなんちゃう? ポップスって。

Avec Avec:なるほど。

スティーヴン・キングの作品だと知っているひとは、「死体を探す」という設定なのにホラーじゃないって捻りに気づくけど、世間的には純粋な青春映画として受け取られていますよね。

Avec Avec:そういうふうに、ぜんぜん、気持ち悪さに気づかれないというのも理想ですけどね。

Seiho:いきものがかりみたいになりたいよな?

Avec Avec:うん。消費のされ方についての希望はとくになくて、好きに聴いてくださいという感じですね。

Seiho:ふたりともそうなんですよね。自分たちがつくったものにあまり興味がないというか。子どもをつくる行為――セックスは好きなのに、産んでしまったらどうでもいい。

ロクデナシだなー。

Avec Avec&Seiho:ははは!

ちなみに、これからもヴォーカルは固定せずに、曲に合った人を起用していくという編成でやっていくんですか?

Avec Avec:そうですね。ただ、劇団に看板俳優がいるように、よく使う人がいてもいいと思ってるし。

Seiho:それに、「“ネトカノ”のMVのあの子がこの役やってるのヤバない?!」みたいな捻り方もできるから、いろいろと配役を考えていきたいですね。

今回のジャケットの女の子は誰ですか?

Seiho:僕がInstagramで見つけた素人の子です(笑)。今回のジャケットのデザインに関しては、僕のセンス通りにつくったとすると、プラス30パーセントくらいシンプルに、美しく、エモいものになったと思うんですよ。でも、「Sugar’s Campaignのジャケット」として使うことを考えると、外部から見たシュガーズのイメージはこんな感じかなって。そのバランスには気を遣いました。

それを自分たちで言ってしまうのがシュガーズっぽいというか(笑)。

Seiho:僕らのフェティッシュなセンスも、シュガーズとして外に出す際には相対化していきたいんですよ。

僕らがライヴ・ハウスで“ネトカノ”を歌って全国を回るのと、ネットを使って浸透させるのと、結局はスピードが変わらない。音楽っていうものが物理的な人間の生活の中に存在するものである以上、時間は掛かってしまう。(Seiho)

では、“ネトカノ”のアップからこのアルバムのリリースまで3年かかっているわけですが、ここまで徹底的にコンセプチュアルにつくり込んだからこそ時間がかかったということですか?

Seiho:(Avec Avecに対して)ゆうてやれ、ゆうてやれ!

Avec Avec:単なる怠慢です!

ははは!

Seiho:そうなんです(笑)。時間がかかったのは怠慢以外の何ものでもないんです。でも、結果としては3年掛けてよかったなとも思いますよ。Tofuくんの“水星”にしてもアンセム化するまで時間が掛かっているし、インターネットの時代だと言っても、ひとつの曲が徐々にムーヴメントになるまでには、やっぱりこのくらいの時間が必要なんだなっていうことを実感しました。

たしかに、ネットは情報浸透のスピードを早めたって言いますけど、結局、バズにしても炎上にしても一日程度で終わってしまって、残らないですからね。定着させようと思ったら、それなりの時間は必要。

Seiho:そうそう。たとえば僕らがライヴ・ハウスで“ネトカノ”を歌って全国を回るのと、ネットを使って浸透させるのと、結局はスピードが変わらない。音楽っていうものが物理的な人間の生活の中に存在するものである以上、時間は掛かってしまう。それに、ふたりのソロ・ワークも知らんまま、Sugar’s Campaignだけが先に知られてたら、おもしろさもいまのようには理解してもらえんかったかもしれんと思いますね。僕のソロと比べるからこそわかってもらえる部分はぜったいある。そこを含めて楽しんでもらうためにも、3年かけてよかったなって。

Avec Avec:「時間」というものの説得力は大きいと思いましたね。

なるほど。ちなみに、ふたりにとって、メインの活動はそれぞれのソロということになるんですか? Takuma(Avec Avec)さんにとっては、Sugar’s Cmpaignはもともと自分のバンドでもあるわけですが。

Avec Avec:思い入れはAvec AvecよりSugar’s Campaignのほうが強いですね。Avec Avecはいまの気分を表現したり、あるいは、実験とか仕事をするための場所ですから。対して、シュガーズは“作品”をつくる場所という感じです。

Seiho:僕はさっきも言ったように「帰ってくるところ」というか、ここがあるからソロでさんざん格好つけられるんです。シュガーズがInstagramとかTwitterとかFacebookとかでのキャラを相対化してくれるので、ソロのライヴの40分間で完全な主観の世界に、閉じられた世界に入り込むことができる。終わったら、シュガーズのステージで「オモシロ兄さん」になれますからね。

シュガーズについては、伝わりやすいのが“バンド”って言葉なんで、バンドと言ったりもしますけど、やっぱり“劇団”というのがいちばんしっくりきますね。あるいは“場所”。(Avec Avec)

Avec Avec:お互い、ソロだけだとイタくなるよな。

Seiho:そう。僕も本当は格好つけた人間ではないのにそういう人間だと思われる機会が増えてしまって、「何か自分の思てるバランスとちがうねんけどなぁ」って。

そして、演じているはずが――

Seiho:ガチになってまう。でも、シュガーズではそのキャラを引きずりつつ、ネタにできますしね。

「帰ってくるところ」という言葉だけ聞くと、アットホームな響きがありますけど、すごくメタなバンドだからこそ帰ってくると安心するというのはおもしろいですね。

Avec Avec:そもそも、素がメタですしね。ほんま、自分たちを客観的に見てるので。

本来、ポップスのつくり方って、そういうものなのかもしれないですよね。そして、それがベタに消費されるという捻れがおもしろい。このアルバムもふたりならいくらでもセルフ・ライナーノーツみたいなものが書けるんでしょうけど、そんなものはなくても成り立つ問答無用のポップス作品でもある。

Seiho:だんだんとポップスをやるコツみたいなものや、シュガーズがどういう存在かがわかってきましたよ。メジャー契約するにあたって、ふたりで話し込んだことが重要でした。“メジャー契約”って成人式というか、ミュージシャンとしての区切りみたいなものやと思うんですよ。そこである程度ケジメがつく。

気合い入ってますね。

Seiho:最初はアルバムのクレジットを「Sugar’s Campaign プロデュース」にしようと思ってたんです。でも、そうじゃない。Avec AvecとSeihoがつくっているのが“Sugar’s Campaign”やから。

Avec Avec:シュガーズそのものがプロデュースされたもの。

Seiho:そう。だから、“プロデュース・ユニット”ではないんですよ。

なるほど。

Avec Avec:シュガーズについては、伝わりやすいのが“バンド”って言葉なんで、バンドと言ったりもしますけど、やっぱり“劇団”というのがいちばんしっくりきますね。あるいは“場所”。

Seiho:そう、シュガーズは僕たちにとって重要な“場所”ですね。

interview with おとぎ話 - ele-king


おとぎ話
CULTURE CLUB

felicity

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 おとぎ話はロック・バンド。大人が子供に聞かせる物語でも、貴公子たちのプログレ・バンドでもない。結成から屈折14年、男性4人組のご機嫌なロック・バンドだ。つーか、インディ・シーンで、14年もロック・バンドを続けているというのは、なかなかタフである。
 インディ・バンドとはいえ、おとぎ話は、お茶の間で鳴ったとしても違和感のない、レトロスタイルの、ドライヴの効いたギター・ロックを演奏する。曲もキャッチーだし、気のよさそうな感じの連中だ。場慣れしたステージングにはライヴハウスでのキャリアの長さを感じさせる。楽しいし、誰もクレームを入れることはないだろう。なにしろこれは、そう、「おとぎ話」なのだ。
 おとぎ話は先日、7枚目のアルバム『CULTURE CLUB』を〈フェリシティ〉から出したばかり。いったい何故ロックンロール? いったい何故バンド? いったい何故「おとぎ話」? 知りたいことばかりである。ヴォーカリストの有馬和樹と1時間あまり、お喋りをしてきた。


そのへんで育つと自分の父親が音楽的にいちばん長けている存在で、自分の父ちゃんから、キング・クリムゾンとか、レッド・ツェッペリンとか、そういうレコードを聴かせてもらって育っているんで。


僕は、踊ってばかりの国と対バンしているときに初めて見たぐらいの……。

有馬:シェルターかな?

そう、シェルター。2年前ですよね。そんなだから、おとぎ話をインタヴューをする資格がない人間なんですけど。

有馬:ハハハハ、そんなことないじゃないですか(笑)。

だいたい今回のアルバムが7枚目っていうのがびっくりして。

有馬:お、ホントですか。

だって、そんなに長くやっていたんですね。

有馬:実は長い……(笑)。

しかも結成が2000年。

有馬:そうなんですよ、むちゃ長いんですよ(笑)。

しかも結成から7年後の2007年にファースト・アルバム。

有馬:あっははは。稀に見るバンドですよ。

たしかに稀に見るバンドかもね。

有馬:地下に潜り続けているバンドです(笑)。

なんでそんなに長く続けられるんですか?

有馬:仲良いからじゃないですかね、メンバーが。

ああ。

有馬:大学のときに結成して、ずっとやってるんで。ま、ずーっと喧嘩してきたんですけど、最近仲良くなったんで。仲良くなるためにやってきたんじゃないですかね。

ああ。

有馬:バンドが続いているのは、それしかない。

いや、その仲の良い感じは、ステージを見ていてもすごく伝わってくるんですよ。

有馬:はははは、すいません(笑)。

「ロックンロール」という言葉が、“少年”という曲でたびたび出てきますが、いまの音楽シーンにおいては古典的な意味でのロックンロール神話というものは、本当にないと思うんですよ。

有馬:まったくないですね。

僕はロックンロール黄金時代のお尻の世代なんですね。パンクの世代だから。でも、僕自身は、ロックンロールを追うのは昔にやめていて、もう長いあいだロック以外の音楽ばかり聴いてきているんです。

有馬:そうなんですか。

でも、セックス・ピストルズとクラッシュとRCサクセションに対する愛情だけは変わらずにあるし(笑)。

有馬:ハハハハ。

ロックというジャンルに対する思いよりも、特定のバンドに対する思いになってしまうんです。でもおとぎ話はガチにロックンロール・バンドなわけですよ! 有馬くんの世代にとって、ロックンロールというものはどこから来ているんですか?

有馬:どうなんですかね。

何があったんですか? 何がよくてロックなんですか?

有馬:僕は……いま33歳なんですけど、小学校のときは小室とかの世代で、小6ぐらいになると二分化されるんですよね。とんねるずとかタモリとかで深夜番組を小学校6年生とかで見はじめちゃうのと、普段流れているオリコン系のわかりやすいものと選ぶタイプに二分化されていたんですよ。けっこうヤンキー文化だったんで。

横浜のどのあたりですか?

有馬:戸塚っていって。

なんかガラが悪そうですね。

有馬:サイプレス上野先輩とかサケロックのハマケンとかがいる学校のとなりの中学校とか小学校に通っていたのですが、カルチャー的には本当に過疎地でした。

それは過疎地じゃないでしょ。

有馬:ハハハハ。

それだけで言ったら、過疎地じゃないでしょ。

有馬:それだけで言ったらそうなんですけど(笑)。

むしろカルチャー的じゃないですか。

有馬:ただ、ちょっと離れるとヤンキーが強くて。そいつらの下でびくびくしながら生きているようなところもあってね。

へー。

有馬:そこだったんで、自分の意志で選択することができないような。

駅で言うとどこ?

有馬:泉区っていうのがあって、戸塚駅からちょっと離れるんですけど。

大船のほう?

有馬:いや、あっちまで行かないです。湘南台とかわかります?

あ、わかる。小田急線の。

有馬:その、真ん中あたりなんすよね。

あー、あのへんとか、僕からしたら未知のゾーンですね。

有馬:完全に未知だと思いますよ。相鉄線の最後のいずみ中央っていう駅とか。

はー。

有馬:そのへんで育つと自分の父親が音楽的にいちばん長けている存在で、自分の父ちゃんから、キング・クリムゾンとか、レッド・ツェッペリンとか、そういうレコードを聴かせてもらって育っているんで。

団塊の世代?

有馬:そうです、団塊パンチですね。

ロックのゴールデン・エイジの。

有馬:そのオヤジの影響があるから、先輩が聴いているようなボン・ジョヴィとか聴いたとき、すげーダセーなと思って。もうそれだったら、とんねるずのほうにロックを感じていたんで。だから、ロックンロールなんか最初からないんですよね(笑)。

えー、でもおとぎ話はスタイルとしては完全にロック・バンドじゃないですか。

有馬:そうなんですよ。超ロックですよね。でも、そこにこだわっている感じはないですね。

またー。

有馬:自分自身がそんなにロックンロール・スターに憧れているわけじゃないし、ロックは死んだって言われているなかで聴いていたから、ニルヴァーナとか。あー、ニルヴァーナとか聴いたな。

でも、お父さんからの影響のほうが大きかった?

有馬:レディオヘッドを最初に聴いたとき、「プログレだ」って思って。めちゃくちゃ嬉しくて。

有馬君は、レディオヘッドがドンぴしゃな世代だよね。

有馬:だから、オヤジに聴かせたくてレディオヘッドを買うんですよ。で、オヤジに聴かせたら、「何コレ!?」って(笑)。

ハハハハ。

有馬:「むっちゃプログレだよ、おまえ!」って。

なるほどね。お父さんからの影響っていうのは、ポイントだよね。

有馬:だいぶポイントだと思いますよ。下津とかと話したときも、下津って、オヤジの影響が超濃いじゃないですか。

そうなんだ?

有馬:「そこをおとぎ話が体現してくれているから、俺、東京出てくる決心ができたんや」って。「おれ背負ってる。重てー」って思いましたけどね(笑)。でも、最初の段階がそこなんで。

おとぎ話は、お揃いのステージ衣装とか、60年代っぽいバンド・サウンドとか、レトロなテイストが入っているじゃない?

有馬:ありますね。

あれが何だったのか、いままでの話を聞いてわかりましたね。

有馬:わかりました(笑)!?

お父さんからの影響なわけでしょう!?

有馬:たしかにそうなんですけど、オヤジがすげー偏っているんですよね。めちゃブルース好きだったりとか。でも、オヤジが超好きで、ずっと聴いていたのは、ツェッペリンとクリムゾンとピンク・フロイドでしたね。でも、自分たちで演るときは、僕フーとか大嫌いなんですけど、勉強のために聴いてみたりもしたりしました。

フーは違った?

有馬:うちのオヤジはフーとかは全然好きじゃないし……。オヤジが好きなのをばっかり聴いていたので、俺も偏っているでしょうね。人からは、グラムロックっぽいって言われたりとかするんですけど、実はそんなに通ってなかったり。

髪型がそうやって見えるだけじゃないの(笑)? その髪は天然パーマなの?

有馬:天然パーマです。最初はストレートだったんですけど、マンガとかアニメが見たくてお風呂の時間を削っていたらシラミがわいちゃって(笑)。そこでボーズになって、髪が生えたときに天然パーマになっちゃったんですよね。

そんなことってあるの?

有馬:戦後みたいなんですけど(笑)。

お父さんの影響で音楽をはじめたひとたちが最近はわりと多いね。僕らが若かった時代では絶対にありえなかった話だな。当たり前だけど。

有馬:そうですよね。

おとぎ話って名乗るくらいだから、いまやロックこそファンタジーだという?

有馬:むしろ変なことをしたかったんですよね。そうするんだったら、サウンドとか立ち振る舞いとかが変なんだけど、「ガンバの冒険」や「銀河鉄道999」のエンディングに使われているような曲をやることが最初のコンセプトだったので。

なるほどね。シニカルな言い方で申し訳ないけれど、ロック・バンドと呼ぶにはあまりにも「いいひとビーム」がすごいというか。

有馬:うんうん、わかります。

だいたいロック・バンドっていうのは、性格が悪いヤツがヴォーカルじゃなきゃいけないし。見るからにバンドのメンバーも悪そうで、それで初めてロック・バンドと言えるでしょう(笑)?

有馬:自分が最初に「うわ! ロックだな」って憧れたバンドは、高校生のときに聴いたペイヴメントなんです。普通の人がステージに立っちゃっている感じに憧れていましたね。それが超ロックだと思ったな。

僕でも有馬くんの時代では、すでにグランジも過去のものだったし、普段着でステージに上がることが一般的になっていたでしょう?

有馬:そうなんですけど、なんなんですかね。あのペイヴメントに対する感覚って。これはいままでとは違うなって思うようになって。


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オヤジが好きなのをばっかり聴いていたので、俺も偏っているでしょうね。人からは、グラムロックっぽいって言われたりとかするんですけど、実はそんなに通ってなかったり。


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初めて会ったときにタイ・セガールの話をしたんだけど、有馬君は大好きなんだよね?

有馬:タイ・セガールとか好きですね。もう死んじゃったんですけどジェイ・リータードとか、ああいうのが好きなんですよね。音源出しまくったりとか、見境がない感じっちゅうか、なんかもうバカっていうか、そういうのが。俺らも、いままではバカが足りない感じだったので、今回はだいぶバカになったかなと思ってるんですけど。これからの方がもっとバカがやれるのかというか。

なるほどね。

有馬:〈UKプロジェクト〉から出していたときは、わりかしガチガチで「もっとこうした方がいいんじゃないの?」とか言われたり。軽いディレクションとかが常に入っていたので、そこに反発しながらやってましたね。で、〈ローズ〉からも2枚アルバムを出したんですけど、そのときは何も考えずに頭に浮かんだ言葉をそのまま歌詞にして。そのへんから自分たちでもうまくはじけるようになって。
 前作はまた〈UKプロジェクト〉から出したんですけど、そこでデトックスして、次にアルバムを作るんだったら〈フェリシティ〉から出したいと考えていて。そんなときに(レーベルを仕切る)櫻木(景)さんに声をかけさせてもらったんですよね。

有馬くんから櫻木さんにアプローチしたんだ。「おい、櫻木、おれらと一緒に組まないか?」って(笑)。

有馬:いや、「是非、よろしくお願いしたいんですけど」って(笑)。でも、そのときは「お前のことはむかついている」って言われて(笑)。

それはヒドいですね。

有馬:肩をがっつりつかまれながら2時間ぐらい話されましたから。結果、いい感じにケンカしながらできたんで良かったですね。

へー。話は戻るけど、結成からアルバムを出すまで7年間はどうやって過ごしたの? まだ大学に在学中だったんだよね?

有馬:そうですね大学にいた頃にバンドを作ったんですけど。人間形成がまったくなされていないうちに大学に入っちゃったので……。

人間形成されてから大学に入るってことって、あんまないじゃない(笑)?

有馬:でも、大学に入るときってみんなしっかり学部とか選んでくるじゃないですか? あと大学に入ることがゴール地点みたいな人もいるじゃないですか? 僕は完全にそうだったので。入学してから授業も面白くないし、何をすればいいんだってなっちゃって。それでいままでやったことがないことをやろうと思ってバンド・サークルに入って組んだバンドがおとぎ話で。最初は曲作りもしたことがなかったし、ギターもかじる程度だったんです。でも無理矢理バンドを組まされてやるじゃないですか? そのときに見た目なのか、持っていたオヤジのギターが珍しかったのか、すごくちやほやされて。

お父さんのギターはそんなにカッコいいギターだったの?

有馬:普通にSGだったんですけど。

ギブソンの?

有馬:はい。そのときってゆらゆら帝国がめちゃくちゃ流行っていて、「なんでSG持ってんの? しかも天然パーマだし」みたいな(笑)。

それはそう言われるよね(笑)。

有馬:俺、そのときゆらゆら帝国を知らなかったんです。だから、こんなひとがいるんだってびっくりして。それから大学1年のときはゆらゆら帝国とかDMBQのライヴに通いまくりました。

まさに高円寺で。

有馬:はい。とくにDMBQのライヴにめっちゃ行きましたね。これはツェッペリンだと思って(笑)。

ずいぶんとアンダーグラウンドなところだねー。

有馬:自分では自覚していなかったんですがアンダーグラウンドにズブズブいっちゃって(笑)。ちょうどインターネットも出はじめだったので、自分で調べてTシャツとかデッドストックのやつとかも買えるじゃないですか。そのときはだいぶお金を使いましたね(笑)。そこから入って音楽を演奏するようになるんですけど、ギターもあまり弾いたことがなくてバンドが上手くできるわけがないんです。だから最初の2年くらいはわけがわからない感じでやってましたね。ふたつ下でうちのギターの牛尾(健太)くんが入って、あいつはギターが上手で、そこから自分がつくりたいような曲を作るようになって。それで結成4年後くらいに峯田(和伸)さんにデモテープを渡した頃には、おとぎ話は1曲10分くらいのバンドになっていました。

プログレだね。

有馬:超組曲です。

ははは。

有馬:15分の曲のなかに、8曲入っていたりとか(笑)。4分くらいギター・ソロを弾かせたりとか。ドローンっていう音だけで、イントロを10分くらいやったりとか。ライヴでは3曲だけやって終ったり。そんなことばっかりやっていましたね。

まったく想像が付かないね。

有馬:5曲で40分くらいの音源を渡していたら、峯田さんにブログで「スゲエ良い」って書いてもらって。それで人も来るようになっちゃったんですけど、普通の曲を作らなきゃダメだって思って、3分くらいの曲をたくさん作るようになってデビューするんですよね。そこに至るまでさらに3年かかりました(笑)。

すごいね。さっきも話したけどバンドを長く続けるモチベーションって何なの?

有馬:最近のひとたちって長く続かないですよね。オウガって長いじゃないですか?

彼らは拠点が長野だからさ。

有馬:そうか。おとぎ話みたいに東京でこんなに長く続けるバンドってすごいのかな……。

世知辛い話だけど、メンバー間の人間関係だけじゃなく、維持するには、経済的な問題もあるじゃないですか。

有馬:そういう問題はおとぎ話にもめちゃくちゃ転がっていますけどね。

若いうちはいいけど、いずれ仕事をどうしようとかさ。

有馬:うちのバンドには結婚しているメンバーもいますからね(笑)。

じゃあ、この結成14年、アルバム・デビューしてから7年の間にものすごくいろんな……

有馬:修羅場ばっかりでしたね(笑)。

とてもおとぎ話とは言えない(笑)。

有馬:バンドを組むときって最初は友だちじゃないですか? それで、絶対売れなきゃいけないとか成功するとか、そういう目標を設けていなかったのがよかったのかな。最初にアルバムを2枚くらい出したときとかはそういう話をしていたんですけど、〈UK〉からいったん離れたときはただ単にバンドをやるのが楽しくなっていました。さっき適当にやったって言ったじゃないですか? そのときにいまも一緒にやっているようなバンドと出会ったんですよね。そこが良かった感じがするんですよね。

ウィキペディアを見る限りではさぁ、ロッキン・オン・ジャパンみたいな大きなフェスにも出てるじゃない?

有馬:ウィキペディアすごいですよね(笑)。わりと出てましたね。

コマーシャル的なところでは、恵まれていたんだね。

有馬:そうなんですけど、これはじぶんのせいでもあるんですけどなんかつまんなかったんです……。楽屋で酒飲んでいるときに、お互いの交流が生まれたりとか、セッションがいきなりはじまったり、音楽についての会話があったりとか、もっとたくさんあるのかなぁって思ってたんですがそういうのがないんですよ。

ビジネスになってしまってる?

有馬:そういうのがフェスだと思っていたんですけど、でも自分が出ていたとこではそんな交流は一切なくて。みんながみんな自分を輝かせるために、売れるために頑張っている感じが見ていてすごく寒くなっちゃって、「誰か音楽の話ができるひといないのかな」って思っているときに唯一友だちになってくれたのが、出戸くんでしたけれども(笑)。

そうなんだ(笑)。

有馬:あの期間で財産になったのはそれくらいじゃないですか? それ以外はなかったですね。みんなが「〜さんはじめまして」って挨拶していて全然面白くなくて。

違和感を感じた?

有馬:めちゃくちゃ感じました。小学校のクラスみたいにみんなと仲良くしなきゃいけない場所で自分は音楽をやらなきゃいけないんだって考えると、すごく嫌だなって。それで、これからは自分たちでやれることは全部自分たちでやろうと思いはじめたんですよね。でもレーベル幻想みたいなものもあって、レーベルと常に一緒にやりたいと思うことは、ロックに憧れている理由のひとつなのかなって感じはちょっとしました(笑)。例えば〈サブ・ポップ〉とか〈マタ・ドール〉とかみたいなものを考えていて、そういう感じでインディとしてやり続けたいという気持ちはあるかもしれないです。

USのインディ・シーンも、日本のレコード店に行っていると、あまり作品が入ってこないし、トレンド的にはここ数年は落ち着いてるかなって印象があるけど、土台のところで太いものがあるから、この文化は、なんだかんだ絶対にあり続けているからね。

有馬:そうですよね。タイ・セガールとかはちょっと悪そうな感じがするのがいいんですよね。あんなにいろんなレーベルを股にかけて、1年の間に8枚くらいアルバムを出すバカみたいなヤツっていないじゃないですか? そういうのがすげぇ良いなって思ったりしますね。

でも、おとぎ話って、ま、これもウィキペディアによるとですが(笑)、ロッキン・オン・ジャパンみたいなところに出たりとか、くるりと一緒にやったりとか、いわば王道を行っていたということは期待されていたということなんじゃないですか?

有馬:期待されてましたよ、たぶん。だけど、期待に答えたくない感じもありました。期待されると裏切りたいっちゅうか。「そんなにレベル高くないので、ゆっくり見ててくださいよ」みたいなことを当時は思ってましたね。

それはいま言って言い訳にはならない?

有馬:どうなんですかね(笑)。でも実際に当時はそうやって思ってましたね。自分が好きじゃないからっていう理由で素直に断ることが多かったので。

メインストリームのロックには違和感を感じつつも、だからといって敷居が高いこともやろうとは思ってもいない。だから俺はいい意味でお茶の間の感じじゃんって思ったのね(笑)。

有馬:それくらいでいたいんですよね。それでいて、「お前ら、だから言っただろ?」って言いたいっていうのがずっとあるんですよ。基本的には誰でも聴ける音楽をやりたいっていうのはずっとあるんですけど。

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タイ・セガールとか好きですね。もう死んじゃったんですけどジェイ・リータードとか、ああいうのが好きなんですよね。音源出しまくったりとか、見境がない感じっちゅうか、なんかもうバカっていうか、そういうのが。


おとぎ話
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で、なぜロックなんですか? 「ロックンロール・イズ・デッド」ってわざわざ言っているということは、本当はロックンロールに生きていてほしいということだと思うし。

有馬:何なんですかね? ロックンロールがスーパー・ヒーローになって欲しいというのはあるんですよね。まぁ、わかりやすい例だと『ドラゴンボール』の悟空とか(笑)。

お父さんからロックンロールはどのように教わったんですか?

有馬:オヤジにワイト島の映像を見せてもらって、「これがロックだろ?」みたいな。

マイルス・デイヴィスとかが出ていて最後に暴動が起きるやつだよね? 全然おとぎ話と違うじゃん(笑)!

有馬:それでフリーとかをみて、「やべぇ、超ロック」って思って。でもそれがロックだとすると、自分がそこから思い描いてきたロック像ってまたかけ離れているから。

わかった! ロックが、お父さんから聞いたおとぎ話っていう意味なのでは……?

有馬:ハハハハ(笑)。笑っちゃいますけどそれはあるかもしれないですね。

しかし、ワイト島がどうしてファンタジーなのか……あの映像は、ウッドストック的なもの、ああいうラヴ&ピース的なものの終焉を描いているから。マイルス・デイヴィスとか、みんな演奏がラヴリーな感じじゃなくて、もっとこうなんか……

有馬:殺伐としていますよね(笑)。でもそれが幻想としてあったのかも。「ロックンロール・イズ・デッド」とか言っちゃうのは、基本的には負けの美学みたいなものが根付いているというか。哀愁を帯びたものがすごく好きなんですよね。

有馬くんの世代は、わりと若いうちから大人になれって言われてきた世代じゃない? 

有馬:完全にそうですね。でも、俺はずっと子どもでしたよ。

大変だよねぇ。しかし世の中はそうでも、有馬君のお父さんはちがうよね? お父さんは子どもでいろって自分の子どもに教えているわけだからね。

有馬:ホントそうですね。大学に行けば何をやってもいいって言われましたから。「俺が中卒だから」っていう理由だったんですけど(笑)。

ハハハハ!

有馬:「俺が中卒で苦労したから、お前は大学へ行け」と。だから、大学には行ったんですけど、そこからだいぶ子どもになりましたね。

理解のある家庭だったんだね。不良になる理由がなかったでしょ?

有馬:たしかになかったですね。だけど不良には憧れていましたね。でも、その憧れている不良の対象というのがとんねるずっぽさだったりとか。

世の中の不良とは違うよね。

有馬:電気グルーヴがツアーのタイトルに「野糞探し」って付けたりしていて、意味わかんねぇみたいな。ああいうものが自分のなかの不良形成のもとになった気がしますね。

電気グルーヴはいつ聴いたの?

有馬:小中ですね。中学のときに“シャングリラ”って感じじゃないですか? ああいう大人がふざけている感じが気持ちよかったですね。

高校時代は何を聴いていたの?

有馬:ブリット・ポップが流行っていたじゃないですか? めちゃくちゃ好きになってそういうのを一通り聴きました。で、そのとき本当にハマったのはヨ・ラ・テンゴとかフレイミング・リップスでした。

サイケデリックだね。

有馬:そっちの方に行っちゃうんですよ。これは面白いからこれからもずっと聴いていくだろうなって感じました。

いまにしてみたら絶対にブリット・ポップでしょ?

有馬:そうですね(笑)。でもブリット・ポップで好きだったのもパルプだったりとか。あとブラーも好きだった。

でも、パルプみたいに屈折した感じはないでしょ?

有馬:そうなんですよね(笑)。そのへんで言うと、俺はすごく『少年ジャンプ』的な考え方ですね。この先自分から出てくるものが楽しみなんです。アルバムつくっていたこの2年間に環境的にも変化があって、同棲していたんですけど、それも終っちゃったので。

ふられたの?

有馬:まぁいろいろとありましたね(笑)。6年間同棲していたんですけど、結婚になかなか踏み込めなくて、最終的に別れることになっちゃって。いまはひとり暮らしになったんですけど。

じゃあ、その彼女に対する思いがこのアルバムには詰まっているわけだ。

有馬:詰まってますね(笑)。エンケンさんも「ラヴ・ソングは良い」と言ってますからね。

遠藤賢司とおとぎ話はなかなか結びつかないなー。

有馬:共演もしています(笑)! 自分ルールみたいなものがあるんですが、ライトななかに、たまにドキッとするような感じの言葉が散りばめられている(だけど)といいなと。そういうのが一番下にあって、どっかひとを遠目に見たいというのがあるんです。

ステージ衣装はどういうところから来ているんですか?

有馬:わかりやすいかなと思っただけなんですよね(笑)。見た目が本当はわかりやすいから、そのまま出続ければよかったんですけど。ちなみに今年からは普段着でやろうかなと思っているんですよ。
 俺たちは明治学院大学出身で、(同じ学校出身の)ミッシェル・ガン・エレファントも服を買っていた並木っていうお店で1回くらいスーツを作ってみようってなって(笑)。で、〈ローズ〉から出したアルバムのテーマ・カラーが黄色だったので、黄色いスーツを作っちゃえと。

あのスーツの形は一昔前の、言い方が悪いけど、キャバクラのショーとかで着られていそうなやつだよね(笑)。

有馬:手品師みたいな感じになれば良いねみたいなことは言っていましたよ。

モッズ・スーツに金を出すんじゃなくて、あえて手品師のスーツに(笑)。

有馬:「そんなんやるやついないでしょ?」っておとぎ話は常に言っているかもしれないですね(笑)。うちのドラムとかは「有馬はバコーンってわかりやすいストレートな曲を書くから、逆にこんなんやってるやついないだろって感じを他のことでやれば?」って言っています。

自分のなかで理想的なロック・バンドってどんなバンド?

有馬:あーでも、『ホワイト・アルバム』を出したときのビートルズとかは……

メンバーの仲が悪いじゃん。バンドとしては解散状態だよ?

有馬:あれで仲が良かったら最高なんじゃないかなって思うことがあります(笑)。

やっぱり60年代のバンドなんだね。

有馬:そうですね、そっちにいっちゃいますね。

“ハロー・グッバイ”もカヴァーしていたし。

有馬:でも結局このアルバムを作っているときも「これがビートルズの『リヴォルヴァー』だったら」って考えたりしました。勝手に自分のなかで『カルチャー・クラブ』は「リヴォルヴァー期」とかって思ってました(笑)。

同名曲ではサブ・カルチャーについて歌っていますけど、これにはどのような意味が込められていますか?

有馬:ひとつだけ言うと、ツイッターとかみんなやってるけど……お店とかで「サブカルはこれです」とか「サブカル好きはこういう音楽が好き」って雑多にカテゴライズされていて、サブカルが決まり切ったものとして流通しちゃっているというか。
 たとえば、昔読んでた雑誌の『バースト』だってサブカルを感じるてたんです。自分にとって、触れちゃいけないところに飛び込んでいって、自分のなかでいろいろ培っていくのがサブカルみたいな。サブカルって言葉自体も神聖な感じがしたんですよ。日常生活で簡単に情報が入ってくるのが嫌で自分が選択したものがサブカルだと思っていたので。

なるほどね。

有馬:たまに最近サブカル好きが話しているのを聞いていると、気持ち悪くてウザいなって。サブカルってものがすごく型にはまっているというか。まぁでも、この曲は笑いながら作ってましたけどね。

アイロニーとして、“カルチャー・クラブ”だったんですね。

有馬:「サブ・カルチャー」って言葉を曲のフックになるところで入れたから、「じゃあ“カルチャー・クラブ”でいいか! 「カーマは気まぐれ、カメレオン」だもんね」とか言って(笑)。そうしたら櫻木さんから「アルバムのタイトルは『カルチャー・クラブ』が最高です!」って言われて、「えー!」ってびっくりしましたけどね。

櫻木さんもたまに判断を誤ることがありますからね。

有馬:ハハハハ(笑)!

※バタン!(勢いよくドアが開く音)(なんと、ここで櫻木さん登場)

有馬:おお、すごいタイミングで!

いまの会話聞いてたの? すごいタイミングだよ(笑)。

有馬:びっくりした(笑)!

櫻木:清水エスパルス!

有馬:野田さんからフックのあるひと言があったので(笑)。

櫻木:まだこれ取材中ですか?

思い切りそうです(笑)。

有馬:ちょっと面白かったですね!


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結局このアルバムを作っているときも「これがビートルズの『リヴォルヴァー』だったら」って考えたりしました。勝手に自分のなかで『カルチャー・クラブ』は「リヴォルヴァー期」とかって思ってました(笑)。









おとぎ話

CULTURE CLUB


felicity

Rock



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つうか、恐いほどすごいタイミングだったよね。えーと、おとぎ話っていうバンド名は、さっき僕はファンタジーって言ったけど、“カルチャー・クラブ”の話を聞いていると、それもある種のアイロニーなのかなと思いすね。

有馬:いまはそうなりましたね。

このアルバム・ジャケットも、何回もひねって作ったんでしょ?

有馬:これはわりと初期段階で決まりましたよ(笑)。

これはある意味ではさっきのステージ衣装じゃないけど、まぁあれに近いセンスというか。

有馬:これの背景がピンクなのは、俺はキュアーがすごく好きで、キュアーのファースト・アルバム『スリー・イマジナリー・ボーイズ』がピンクだったからです。

ああ、冷蔵庫のジャケットのやつね。しかし、なんでそんなに古いのばっかり知ってんの? それはお父さんからじゃないでしょ?

有馬:そのへんは自分ですね。

キュアーかー……、まったく気づかなかった(笑)!

有馬:実はそうなんですよ。

たしかにアイロニーとしてのロックンロールっていうのもあるのか。でも、アルバムの最後のほうは、感傷的で、青春の使者と化していくじゃない?

有馬:“オーロラ”は自分の叙事詩みたいになったんですけど、“告白ジャム”とか“ピカピカ”とか“おとぎ話みたいねと笑ってばかりの君が”とかはまったく考えないで作った感じが出ていると思います。

自分の内面の叙情性は見せたいものなの?

有馬:本当はしたくないですね。ツラいので(笑)。

ハハハハ。だろうね。

有馬:でもせっかく音楽をやってるので、書いておこうかなと。いま残しておきたいことを残しとこうという感じですかね。

日本語の歌詞で好きなひ人って誰?

有馬:前野健太とか。ソロになったばっかりの奥田民生とかは良いなと思います。他には……三上寛かな。マンガを読んで歌詞を書くことが多いですね。マンガの主人公になったつもりとか。今回のアルバムで、個人的に好きなのは2曲目の“きゅーと研究会”と6曲目の“光の涙”と……。このへんの曲は自分が楽しんでいる感じがしますね。

“きゅーと研究会”もシニカルだよね。

 有馬:自分が本当に楽に書けるのは“きゅーと研究会”のような歌詞なので。“ピカピカ”とかは自分のなかではデヴィッド・ボウイの“スターマン”とかのつもりで作ったんですけど(笑)。

なるほど。じゃあまとめに入ろうと思うんですけど、これからの抱負は?

有馬:バンドとしてはよく続いたし、楽しければいいなと思うんですけれど、もっといろんな場所に呼ばれるバンドになれればいいなと思います。各地の面白いひとしか出ないような会場に出たいです。

長年ライヴハウスで活動してきたわけですが、最近のライヴハウス・シーンはどうでしょう?

有馬:ライヴハウス・シーンは正直に言うと、本当にやばいと思いますね。本当に面白くないから、やべーなと思いますね。カッコいいバンドがいないんですよ。

そうなの?

有馬:音楽を聴いてない子たちが多いんです。人がが本当に音楽を聴きに来ているのかわからないと思うところがあります。それは昔ライヴハウスでやっていたとき、つまりファースト・アルバムを出す前くらいのときと全く違う感じがする。当時はこういうことを自分もやってみたいなと思うバンドがたくさんいました。それこそ、あふりらんぽとかと対バンしたし。CDを出す=実力がある人っていうことだったと思うんですけど、最近はそうじゃなくて、誰でも作品を出せられるようになっていて。

それはお父さんが悪いんじゃないんですか?

有馬:うちのオヤジ(笑)?

ちがうちがう。いまの若いバンドのお父さんが子供に良い音楽をしっかり伝えていないんじゃない(笑)。

有馬:伝えてないですね。じゃあ、俺らのせいか(笑)。

おとぎ話はライヴハウス・バンドなのかもしれないけど、どっかのディナー・ショーで演奏していてもおかしくないバンドだから、そのへんの場所選びが難しいよね。

有馬: そうなんですよねぇ……。夜中のイベントだと何故か本当に盛り上がっちゃったりするんですよ(笑)。

現代のポップ・ミュージックのメインストリームは、打ち込みの音楽だと思うけど、EDM的なものに違和感を抱いている人たちだって絶対にいるわけでしょ。ギター・バンドはチャンスがあると思うんだよ。

有馬:最後のチャンスが(笑)。

みんながAが良いと思っているときにその対岸のBもあるはずだから。そこにおとぎ話がうまく上昇気流に乗って。

有馬:B地区の先輩として君臨したいな(笑)。

しかし、写真だと有馬くんは恐い顔をしてるよね(笑)。ほら、目つきが恐いじゃん。

有馬:僕、デフォルトではわりと恐いんですよ。ステージでははしゃいでるモードに入ります。今年はもっと面白いことをやっていくと思います。

今日はどうもありがとうございました。この先もがんばって続けてくださいね。





おとぎ話「CULTURE CLUB」リリースツアー
CUTE BEAT CULTURE CLUB BAND TOUR

2015年2月18日(水)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:神奈川県 横浜 club Lizard
共演:ASPARAGUS

2015年2月21日(土)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:静岡県 UMBER
共演:忘れらんねえよ

2015年2月26日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 磔磔
共演:LOSTAGE

2015年2月27日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:福岡県 MUSK
共演:ボギー

2015年3月1日(日)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:広島県 4.14
共演:LOSTAGE

2015年3月6日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:宮城県 仙台 PARK SQUARE
共演:SISTER JET

2015年3月13日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:北海道 札幌 COLONY
※ワンマン

2015年3月19日(木)START 19:30
会場:愛知県 名古屋 得三
※ワンマン

2015年3月21日(土・祝)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪府 十三 FANDANGO
※ワンマン

2015年3月23日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 渋谷WWW
※ワンマン

料金:各公演 前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

その他、インストアライブ情報はこちら!
https://otogivanashi.com/


 アイスランドのインディ・シーンが熱い? 2013年に、毎年11月にレイキャビックで開かれる音楽フェスティヴァル「アイスランド・エアウエイヴス」に行って以来、すっかりアイスランドの音楽にハマっているNY在住の沢井陽子。Randam Accese N.Y.番外編として、アイスランド・シリーズ行きます。ビョークの新作も発表されたし、アイスランド人気、日本にも押し寄せそうです。
 まずは、ジャスト・アナザー・スネイク・カルトというバンドのメンバー、ソーリのインタヴュー。アイスランド生まれで、アメリカ育ちの彼は、両国のインディ・シーンを知っています。

interview with Þórir(ジャスト・アナザー・スネイク・カルト)


取材に答えてくれた、
ジャスト・アナザー・スネイク・カルトの
Þórir(ソーリ)

まず自己紹介をお願いします。

Þórir(ソーリ):僕はジャスト・アナザー・スネイク・カルトというバンドのÞórir(ソーリ)です。エクセントリックなローファイ・サイケポップをプレイしています。https://snakecult.tiredmachine.com

どのくらいアイスランド(レイキャビック)に住んでいますか? 現地の生活について教えてください。

P:僕はレイキャビックで生まれ、子供から青年期にかけてアメリカで暮らしました。レイキャビックには5年前に戻ってきました。冬は長く気候は恐ろしいけど、家の中は暖かいので、創造的なことに集中したいなら最高の場所です。週末の夜は、知っている人全員が、同じバーでいるのを見かけます(笑)。とても居心地が良く好きだけど、アメリカが懐かしく感じるときもあります。アイスランドは、ニッチェなシーンを支持できないくらい人口が少ないけど、自分のことだけに集中出来るメリットがあります。アイスランドは不毛で、木や野生動物が懐かしく霜が多すぎます。夏のあいだ少し暖かくなったとしても、日中のある時点で温度がいきなり下がるから、セーター無しでは家から出られないです。

私は、2013年〜14年の「アイスランド・エアウエイヴス」時にレイキャヴィックに滞在し、ユニークなインディ音楽シーンと文化に魅せられました。アイスランドは、一度経済崩壊した国にも関わらず、少なくとも、同じように、経済的、将来の不安にさらされながら、活動している他の国のインディバンドたちに比べて、とても元気で活発なエネルギーがあります。それはなぜでしょうか。

P:銀行が崩壊する前、アイスランド人の生活にはバブルが繁栄していました。銀行と国民の大多数がお金を借り、無責任に投資し、その富がどこから来たのか誰も疑わなかったのです。崩壊時も、アイスランド人はそんなに貧困になりませんでした。自己破産して、自分の家や車を売った人もいましたが、食べ物に困ることはなかったし、むしろ物事は普通に戻りました。人びとは働いて借金を返さなくてはならなかったですが、仕事はあったし、社会保障もありました。
 銀行経済に失敗すると、アイスランド政府は、観光事業に力を入れはじめました。アイスランド通貨の価格が下がったので、観光客は行きやすくなりました。アイスランド自身は、魚とヴィデオゲーム以外、ほとんど生産能力がないので、外貨の流入は、アイスランド人の消費者運動に必要でした。政府はアイスランドと文化を外国に強く促進し、観光地をアピールしました。結果として、アイスランドのミュージシャンにもたくさんのサポートがあり、外国に進出することを助けてくれました。
 が、同時に政府は、近くしか見えていないことも多く、音楽会場を閉め、それをホテルや観光客のための物に建て替えました。観光客の季節には、本当のアイスランド人を、ダウンタウンで見かけることはありません。全員観光客なのです。家は、高い値段で観光客に貸されるため、夏の間だけでも、手頃な価格で住む所を見つけるのが難しくなりました。
 サンフランシスコやニューヨークで起こっていたような、同じ文化の死が、レイキャビックにも起こっているのはおかしいですね。いま、レイキャヴィックの音楽シーンは、黄昏時かも知れません。アイスランドの難しいところは、他にアーティストが行く場所が無いことです。アイスランドのアートや文化を海外に促進し、支持してくれても、住むのが難しくなって来ています。いずれは、バランスが取れるのかも知れませんが。
 音楽やアートを作るときは、やりたくてやるので、ほとんどの人は、そこにお金は絡みません。アイスランドにはミュージシャンをサポートする十分な人口はありません。退屈な大衆音楽を作っている一部の大物ミュージシャンをのぞいて、コンサートやレコードの売り上げで生活出来る人はいないのです。大多数のアーティストが、いつも金銭面で奮闘していますが、これは銀行が崩壊した前も後も、変わらないと思います。

レイキャヴィックに、マクドナルドやスターバックスがないのはなぜでしょうか?

P:経済的な理由からだと思います。他のフランチャイズは、アイスランドで経営するため、より利益を生む企業家でした。他にも、KFC、サブウェイなど多くの多国籍なチェーン店があり、ビジネスモデルを真似た地元のチェーンもあります。マクドナルドがクローズしたのは、フランチャイズのオーナーにとって、自分のハンバーガー屋でビジネスをする方が利益があったからだと思います。

アイスランドの人びとは、反グローバリゼーションを意識しているのでしょうか?

P:アイスランドは、極端な消費者優先主義者国です(ほとんどの欧米の国がそうだと思いますが、それ以上に)。グローバリゼーションを考える人もいますが、ほとんどは考えていないか、少なくとも真剣ではないです。アイスランド人は、環境や社会的に責任を追うたくさんの製品を作りますが、実際は違います。例えば、観光地のお店で売られているアイスランディック・セーターは、ほとんどが中国製で、「ファーマーズ・マーケット」なる意図的な欺き商標名で売られています。
 アメリカに住んでいたときは、アイスランド人の消費者意識に気づいていませんでした。対して、グラスルーツ音楽やアートに関わるアメリカの若者は、何かあると急速に進化します。こんなことはアイスランドではほとんど起こりません。
 アイスランドはEU加盟国ではないですが、ヨーロッパの経済地域にあります。党派の両端から見て、中道派はEUに加盟したいが、リベラル派と保守派は加盟したくないのです。中道派がEUに加盟したいのは、アイスランド政府が堕落していて、乱用を防止することで、利益を得た人びとから力を奪うからだと思います。排他的な漁業権のように、保守派はアイスランドのお金の利益を守りたいし、左翼は反グローバリゼーションの理由で反対していると僕は思います。

ビョークのニュー・アルバムが発売されましたが、ビョークはアイスランドでも特別人気があるのでしょうか? レイキャヴィックで、素晴らしいバンドをたくさん見た後では、ビョークも、アイスランドではごく普通なのでは、と思いました。

P:ビョークは伝説です。彼女は成功したポップスターであると同時に、真のアーティストで、いつもびっくりさせるような創造的な音楽を作っています。アイスランドでビョークに影響を受けていないミュージシャンを見つけるのは難しいと思います。

https://snakecult.tiredmachine.com



「Iceland Airwaves NOV 5-9 2014」レポート

 2013年に初めて行って、あまりの良さに2014年も自動的にアイスランド行きをブックしてしまった。
 ひとから何がそんなに良いのかと訊かれるが、とにかく人が温かく、街の小さいお店、大きな会場など、さまざまな場所で音楽を楽しめるところも良いし、何よりも、来てみるまで、何が起こるかわからないところにこのフェスの魅力がある。今回も、行き当たりばったりでバンドを見たが、アクシデントもありながら新しいお気に入りのミュージシャンにたくさん出会えた。

 今回は金曜日から現地入り、3日で総勢25のバンドを見た。Olena, Fufanu, Vorhees, Sin Fang, La luz, Godchilla, Unknown mortal orchestra, Ham, Anna soley, Mosi musik, Prins polo, Vok, Young Karin, Kaelan Mikla, Munstur, Spray Paint, Leaves, Odonis Odonis, Low Roar, Grisalappalisa, Perfect Pussy, Vintage Caravan, MC bjor, Just another snake cult, AmabadamA
 他にもチラッと見たバンドや、通りかかったバンドも少なくない。歩くとそこかしこで音楽が鳴っているので、音に吸い込まれるように入って行き、良ければステイ、ダメなら次。人気のあるバンドは大勢の人が入っているが、次のバンドまでの暇つぶしと言うこともある。エアウェイヴスのアプリケーションをダウンロードすると、いま何がやっていて場所がどこかなど全て把握できる。このアプリケーションが大活躍!
 以下、好きだったバンドをいくつかピックアップしてみました。

Vok
@ landsbankinn

まずはvok 。去年から噂は聞いていて、今回やっとライヴが観れた。
男2人、女1人、サックスとギター、エレクトロ、DJなど。ディストーションかかった、深い女の子のヴォーカルが良い。ビョークが生まれた町というのが納得出来る。
https://www.facebook.com/Vokband

Grisalappalisa グリサラパリサ
@gaukrinm

知り合いのレコード・レーベルの所属アーティストだったことで、たまたまキャッチしたが、すぐにエアウエイヴスのお気に入りになった。男6人組。ヴォーカル2人、サックス、ギター、ベース、ドラム、半端ないハイエナジー。キラキラのシャツを脱ぎ捨て半裸になるヴォーカル。聞けばそれがスタイルらしい。アグレッシブなフリーホイール・クラウトロック。
https://grisalappalisa.com

Just another snake cult
ジャスト・アナザー・スネイク・カルト
@ kaffbarinn

ランダムに出会ったローカル・バンド。様々なエレクトロ機材を使いつつも、ベースはローファイ・アコースティック。チェロや爪琴などの弦楽器を加えフリーキーなのにドリーミー。ライヴはドキッとさせられる面多し。
https://snakecult.tiredmachine.com

Low roar ロウローア
@gamla bio

アメリカ出身のライアンがアイスランドの引っ越して、ひとりぼっちの寂しさからこのバンドを作った。切なくて美しいレーザービームが似合うバンド。ライヴはストリング隊が美しく弦を奏で、オーケストラのようなスペクタクル。いまではビルボードまでが彼らをカヴァーするまでに。
https://www.lowroarmusic.com

Vorhees ヴォーチス
@bio paradis

NY出身のdenaのプロジェクトで、エレクトニックとギターをミックスした、サウンドコラージュ。Rachel coleyというNYのデザイナーが彼女のスタイルを担当し、ヘアリーなトップがよく似合っていた。mumのサウンドを担当していたゆかりで、9回ほど来日経験あり。只今日本語勉強中。
https://vorheesmusic.tumblr.com

Unknown mortal orchestra
アンノウン・モータル・オーケストラ
@bio paradis
会場に入るのも一苦労な人の多さ。外から覗いていたが、勇気を出して人混みの中へジャンプ。ライヴは3人編成。サイケデリックなシャープ・ソウルは、ヒップホップからインディロックファンまでを網羅し、一緒に歌っているファンもいた。イギリスのバンドだと思っていたら(なぜ?)、ルーベンは、ニュージーランドからポートランドに移住したらしい。
https://unknownmortalorchestra.com

Godchilla ゴチラ
@12 tonar

男3人組のコズミック/ドーム/ノイズ/サーフバンド。音は宇宙の様にヘビーで、来ている客は男が多かったが、ルックスが良いので、ファンが増えそう。
https://www.facebook.com/Godchillah

Ham ハム
@ KEX hostel

びっくり! アイスランドの伝説のヘビーロック・バンド。マスタード色のベスト、シャツ、パンツにシルバーのヘアーがヴォーカリスト。バンド全体がカッコよすぎて、エアウエイヴスってエレクトロが主流じゃなかった? と疑ってしまった。このショーがHAMのたった一回のエアウエイヴス・ショー。KEXPが盛り上がるのもわかった。
https://blog.kexp.org/2014/11/07/kexp-at-iceland-airwaves-day-3-ham/?fb_ref=Default&fb_source=message

ラジオ・ショーが終わっても10分ほどアンコールが鳴り止まず。アイスランドのレッド・ゼペリンは言い過ぎか?
https://facebook.com/svikharmurdaudi

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 レイキャヴィックの歩ける町の作りがこのフェスを可能にしているひとつだが、人びとの音楽に対する半端ない熱意、昼のショーは子供も参加できるしファミリーフレンドリー、10代のバンドもチラホラ、英語が通じる、人々の大酒呑み&パーティ好きで誰彼も受け入れる、と理由は様々だが、1日目で興奮がピークに達してしまうのだ。
 エアウエイヴスが終わると、人々はレイキャヴィックから抜け出し、南部やゴールデンサークル、ブルーラグーンなどの観光地、町をふらっと歩くだけで、自然の美しさに感謝し、時間がなければ近所の温水プールなど、アイスランドのアトラクションは後を絶たない。世界中からこのフェスティバルに来る人が後を絶たないのはよくわかる。何が起こるかは自分次第だが、素晴らしい音楽と感動に出会えるのは間違いない。来年は一緒にいかがですか? 

https://icelandairwaves.is

ookubofactory初作品に多数のコメント! - ele-king

 ookubofactoryの初作品にたくさんのコメントが寄せられている。こんなに祝福を受けるookubofactoryとはどんなバンドなのかというと、トクマルシューゴが参加していることでも知られるGellersや、前野健太とdavid bowie たちでベーシストを務める大久保日向が率い、ハヤシ(Gt./nhhmbase)、岡崎英太(Ba./ex:YOMOYA)、ヤノアリト(Dr./H Mountains)といった名うてのミュージシャンたちが集う「オルタナティヴ・ホームメイド・ロック・バンド」。力ある演奏者たちが生み出すホームメイドな空気感が、おのおのが短編のようにいきづくこのささやかなアルバムとなった──リリース日である2月18日に先んじて本作が販売されるというイヴェントにも足を運びたい。

■ookubofactory  『ホームワーク』  (P-VINE)

 トクマルシューゴも参加するガレージロックバンドGellers、そして、前野健太とdavid bowie たちでベーシストを務める大久保日向率いるバンドがookubofactory。泣きのメロディと意外性の詩満載の大久保の曲に、ハヤシ(Gt.、nhhmbase)、岡崎英太(Ba.、ex:YOMOYA)、ヤノアリト(Dr.、H Mountains)、といった界隈の実力者が集まり、良質なUS インディーロックからの影響を感じさせる作品『ホームワーク』は生まれた。
宅録感、箱庭感のある全10 曲からなる短編集のようなアルバム。アーティスト写真は大森靖子の写真集も上梓した金子山が手掛ける。

■アルバム・ダイジェストはこちら!
https://soundcloud.com/ok_kojo/uuczregqjiwn

■推薦コメント

ookuboFactoryとして大久保日向が初ソロアルバムをリリース。
本当にかなり良くて、その理由が幼馴染みだからか知らないけど感動。
何年一緒にいても彼のことは何もわからない。――トクマルシューゴ(twitterより)

「とめられないぜ オレ ずっと アメリカ」と聴こえる歌詞が一瞬ロック、と思いきや気だるい。アルバム通してこの気だるさがまどろんでいてペシッと叩きたくなる。――前野健太

インディー大航海時代をゆく大久保船。見習いでいいんでおれも乗せてください!――菅原慎一(シャムキャッツ)

大久保くんの創るサウンドは鋭利で重くてかっこいいなといつも思うんだけど、彼が特異なのはそこに哀愁や恥じらいを感じさせてくれるところ。歌詞もよくよく聴くとフォークみたいでなんだか泣けてくるし。面白いね。大久保くんに、愛しさに似た感情が沸きました(恥)。――あだち麗三郎

大久保日向のうたはドライで底知れぬ不気味さを持っている。叙情的で轟音且つ緻密なバンド・サウンドと相俟って、この先まだ誰も行けていないところまで行ける気がします。それとまた大久保家で餃子パーティやろうぜ。――吉田悠樹(NRQ)

本気になったお父さんの背中は逞しく、優しく、丸い背中をパンと叩く。
裸のオオクボくんはちと気持ち悪いけど、とても心に響きました。――シャンソンシゲル(ゲラーズ)


今じゃすっかり姿を消した、くだらない駄洒落と下ネタと思い出話でげらげら笑う朝焼けの景色なんだけど、ついつい同居しがちな切なさが一切漂っていない。
日本人離れした天然の楽観主義。余裕のダンディズム。
馬鹿どもが大好きなめんどくさいの対極にあるロックンロールです。最高です。――田代幸久(ゲラーズ)

小さな沢山の 日向くん が蠢いて 大きなお城を 築いてる。――三輪二郎

謎の多い男、大久保くん。の、謎のCD。これで謎が解けるかと思いきや、さらに謎が深まるばかり。大久保くん……。謎だ……。――pop 鈴木

何もない荒野でやけっぱちになりながらキラキラした何かを生成するような、やるせなく愛おしい黄昏ポップ作品集『ホームワーク』。疾走感溢れるライヴ感はそのままに、Lo-Fi で温かみのある本作、是非期待してお待ちください。

■ookubofactory HP

https://ookubofactory.tumblr.com/

■LIVE INFORMATION

ookubofactory Presents 『factory 5』
〜ookubofactory 1st album「ホームワーク」先行販売〜

2015/2/10(火) @ 下北沢three
open 19:00 / start 19:30
ADV:¥1,500(+1D)/DOOR:¥2,000(+1D)
w/ GOUPIL AND C / 石井ナルト(Qomolangma Tomato)

ookubofactory Presents 『factory 6』
〜ookubofactory 1st album「ホームワーク」発売イベント〜

2015/5/15(金) @ Shibuya O-nest
open 19:00 / start 19:30
ADV:¥2,300(+1D) / DOOR¥2,800(+1D)
w/ elephant and more...

【RELEASE INFORMATION】

ookubofactory / ホームワーク
品番:PCD-93875
定価:¥2,300+税
Release: 2015.2.18
Tower HMV Amazon

収録曲
1. 春風
2. アメリカ
3. エリックさん
4. みんな正しい
5. アルバトロス
6. ニワトリ
7. 待合室
8. 終わりからの始まり
9. やらなくちゃ
10.夏合宿


Panda Bear - ele-king

木津毅

 ここのところティム・バートンの過去作をまとめて見返していたせいか、パンダ・ベアの新作をバートン作品と切り離して聴くことができない。このアルバムを聴いていると、脳裏に『シザーハンズ』や『スウィーニー・トッド』のジョニー・デップが現れる……。いや、パンダ・ベアはゴスでもないし、ファンタジーに執着しているわけでもない。が、このアルバムは音のヴィジュアル志向とでも言おうか、とてもカラフルな色づけが施されている。子どもっぽい感性で独自の死生観に立ち向かって行ったらキッチュな世界が立ち上がっていた、という感じか。インナースリーヴで死神と対峙する彼、ノア・レノックスのイラストを見ていると、そこにはなにか、童話やファンタジーを基にした映画のようなイマジネーションが広がっているように感じる。タイトルがなんといっても秀逸で、脳内では反射的にこう日本語に変換される……『パンダさんクマさん しにがみにであう』。

 アニマル・コレクティヴ、ひいてはパンダ・ベアの足取りとは、21世紀におけるある少年(たち)の冒険譚だったのではないか。それは『トム・ソーヤーの冒険』的な腕白なものではなくて、もっとこう頼りなく、どこかしら控えめで、空想的な……自分を含める多くの人間が「逃避的な」と形容したそれである。だからこそ、インターネット時代のか弱いベッドルーム・ポッパーたちを繋ぎとめ、ディケイドの一大潮流を生み出したわけだが、本人(たち)はどこまでもマイペースに自分たちの遊び場を守ってきた。その遊びはアメリカという国においてはおよそ男性的だったりタフだったりする要素に欠けていたが、あまりにも本人たちが楽しそうだったため、みんな真似せずにはいられなかったのだ。
 冒険譚、といってもパンダ・ベアのソロ前作『トムボーイ』におけるテーマのひとつは父親になることで、そこで繰り広げられていたのは子どもっぽさや頼りなさを片方で抱えながらも大人になることへの試みであった。あらためて言うまでもなく父というモチーフはじつにアメリカ的なものだが、パンダ・ベアはそのステレオタイプに(おそらくは無意識的に)逆らっていた。強くたくましい父親にはなれない、けれどもなんとか声を出して、「僕を頼っていいんだよ」と告げること。わたしたちがパンダ・ベアのスウィートな長音に象られた歌を応援したくなるのは、自分の居場所をどうにか見つけるのに懸命な子どもがやがて年を取り、成長「してしまう」ことでどうにか外界に向かって行くドキュメントをそこに見出していたからではないか。

 だとすれば『しにがみにであう』は、その続編である。音としては『トムボーイ』よりもアニコレの『センティピード・ヘルツ』との連続性を強くしていて、サンプリングを中心にしたという音作りはノイジーで、音々にそれぞれ強い個性が与えられている。“ミスター・ノア”のいかにもな無邪気なメロディ、“ボーイズ・ラテン”のトリッピーなヴォイスの左右からの応酬を盛り上げるのは、間違いなくそこにわらわらと集まってくる「変な音」の群れである。プロデューサーのソニック・ブームとのやり取りがよりこなれてきたのもあるだろうし、ダブにインスパイアされたという録音での実験が大いに生きている。いっぽうでパンダ・ベアのアンビエント志向を打ち出しているなかでの白眉は中盤、“トロピック・オブ・キャンサー”。甘い夢の調べが8割、その隙間に不穏さや不気味さが2割挿しこまれる、まさに優れた児童ファンタジーのようなドリーム・ポップだ。
 その「キャンサー=癌」が癌で死んだ父親のことを示しているのではないか、ということはすでに指摘されているが、僕はなおさらティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』を思い出さずにはいられない。父親の死という、時間を経ることで訪れる残酷な現実を前にしてファンタジーを持ち出さずにはいられなかったその映画と、“トロピック・オブ・キャンサー”の甘い響きはとても近いところにあるように感じるのだ。『PBMTGR』ではこれまでのパーソナルなモチーフをやや離れ、より普遍的なテーマをもった歌詞を目指したという。それでも“ミスター・ノア”などはじゅうぶんパーソナルだと思うが、たしかに抽象的な言葉が増していて、なるほど、さらにパンダ・ベアが外界に歩を進めたのだと見なすことができる。
 「お前はずっと中にいる/こんなにやさしく/眠っている幼い男の子のように」(“プリンシペ・レアル”)……そうだ、パンダ・ベアはもうその男の子がどこへも行かないことを知っている。だからあとは冒険に出てしまえばいい。たくさんの奇妙な音の登場人物たちを引き連れて、しにがみ=避けられない変化に会いに行く。このアルバムは胸がワクワクする前向きさに貫かれていて、少しばかりキッチュで、そしてどこまでもキュートだ。

木津毅

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野田努

 ホント、たんなる偶然だが、年末帰省したときに入った中古レコード店で見つけて、年明け最初に聴いたレコードがブライアン・ウィルソンの『スマイル』だった。あらためて「あー、つくづくこれってアニコレ……、いやいや、アニコレとはつくづくブライアン・ウィルソンなのだな」と思った。その少し前に初期の大滝詠一を聴いていたことが無意識のうちに自分をその衝動買いへと導いたのだろう。
 そう思えば、ブライアン・ウィルソンを起点に1970年代大瀧詠一とアニマル・コレクティヴは線でつなげることができる。いやいや、できない、いや、でき……まあ、どっちでもいいのだが、いろんな国のいろんな場所にいろんなリスナーいて、いろんな音楽を楽しんでいる現代を生きるアニコレには、良くも悪くも、何が何でもポップ・ソングを作らなきゃならないというプレッシャーも、オブセッションもない。歌を聴かせるというより、彼らは音響を聴かせようとしている。お気楽なものである。

 そして実際のところ、まったく、想像以上に、ずば抜けてお気楽だった。ぜひCDショップで現物を手にとって見て下さい、このアートワーク。黒や灰色やシックな色彩が主流の今日において、かつてのスペクトラムないしはボアダムスを彷彿させるような、目がくらむほどカラフルで発色の良いサイケデリック、時代のなかで浮いている妖しげな別世界への切符──それは見事に『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』を象徴している。ようこそ虹色の世界へ。
 もっともこの色彩豊かなオプティミズムは、今日のトレンドと言えない。そもそも彼らは、時代を読むどころか、もう、自分たちの好きなことを徹底的に追求している感じだ。
 また、ソニック・ブームとパンダ・ベアのミキシングのセンス、方向性、コンセプトは、キング・タビー的と言えない(橋元優歩のインタヴュー記事を参照)。タビーは骨組みだけ残すという意味で「レントゲン音楽」と呼ばれたほどの引き算音楽の創出者だ。あらたに音を加え、音に遊んでいる感覚は、むしろリー・ペリー的だ。ことパンダ・ベアは、ポップスとしての体をなすかなさないかのきわどいところにまでリヴァーブをかけるし、ドラッギー・サウンドでありながら歌のパートが多すぎる。

 ……などと書いているとケチをつけているようだが、違う。誤解しないで欲しい。『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』は予期せぬ、喜ばしい不意打ちのようなアルバムなのだ。パンダ・ベアとソニック・ブームの浮世離れしたサイケデリック・サウンドは、そんなものには興味はなくしつつある五十肩に悩む中年男もその気にさせるほどの、鮮やかな色味を帯びている。このアートワークのように。灰色の音楽ばかりを聴いていたベッドルームを明るく照らす。子供の笑い声のように、あまりにも明るすぎる。

 ソニック・ブームとの共同作業もよりスムーズになったのだろう。音響的な快楽において、『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』は前作以上にパワフルで、スリリングな作品になっている。2曲目の“ミスター・ノア”はハードにトリップするる“サージェント・ペパー~”だし、メロディアスな“クロスワーズ”や“セルフィッシュ・ジーン”、電子仕掛けのシド・バレットと言いたくなる“ボーイズ・ラテン”などなど、チャーミングで、強力な楽曲が並んでいる。悪戯めいた細かい効果音、ソニック・ブームのエンジニアリングも、大胆かつキャッチーでバランスが良い。
 最高の瞬間は、8曲目の“トロピック・オブ・キャンサー”だ。押し黙ってしまうほど美しい、彼にしか歌えないこのバラードを聴くためだけにアルバムを手にする価値はある。とくに初期の、ギターを弾いていた頃の彼が好きなオールドファンにはたまらない曲だが、もう1曲、注目すべきユニークな曲がある。クラシカルなピアノ・ループと電子ノイズが巧妙に交錯する10曲目の“ロンリー・ワンダラー”だ。10年前の陶酔的なチルアウト“ザ・ソフティスト・ヴォイス”が確実にアップデートされている。

 グルーヴィーなベースラインに導かれる“カム・トゥ・ユア・センシス”を聴けば、彼が2007年の『パーソン・ピッチ』のインナーに、ムーディーマンやロバート・フッドといったブラック・ハウス/テクノのプロデューサーの名前を記していたことを思い出す。クラブ・ミュージックからの影響は、“プリンシプル・リアル”のような曲にも表れている。
 アフリカ系のディアスポラは、よく辞書を欺く。与えられた言葉の意味を反転させる。マイケル・ジャクソンの「I'm bad」は「俺は不良」ではない。「俺はいけてる」と訳す。Pファンクの「give up the funk」は「ファンクを諦めろ」ではない。「ファンクは終わらない」というニュアンス。『パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーバー』は、どこをどう聴いても「死神」ではない。「こんにちわ。天使」だ。悪魔的なまでにアシッディではあるけれど、しかしやはりどうしようもなく、童話的だ。

野田努

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