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interview with Sugar’s Campaign

interview with Sugar’s Campaign

ポップ・ルネサンス・2015

──Sugar’s Campaign、インタヴュー

磯部 涼    Jan 30,2015 UP

Sugar’s Campaign
FRIENDS

SPEEDSTAR RECORDS

J-PopSynth PopDisco

■初回限定盤
Tower Amazon
■通常盤
Tower Amazon

 これは、ポスト・インターネット時代におけるポップ・ルネサンスなのだろうか? インタヴューをはじめる前、こちらが手渡した『ele-king Vol.14』の年間ベスト特集をパラパラとめくっているSeihoとAvec Avecに「2014年のベストは?」と訊くと、「僕はGiant Clawの『DARK WAVE』PC MUSICかなぁ」(Seiho)「僕もやっぱりPC MUSICは好きやし、あとは何やろ……Lidoとか? Lindsay Lowendのリミックスがめっちゃ良かったから」(AVEC AVEC)という答えが返ってきた。たしかに、ふたりのユニット=Sugar’s Campaignによるファースト・アルバム『FRIENDS』は、Giant ClawやPC MUSICがズタズタに切り刻んだりグニャグニャに歪めているアーバン・ミュージックやティーン・ポップを、90年代のJ-POPと交換して、そこに、より洗練されたリノベートを施したアヴァン・ポップな作品だと言えるだろう。しかし、その手つきがあまりにも見事なので、以上のような文脈を知らない多くのひとは『FRIENDS』を何の疑問も持たずに最新のポップ・ミュージックとして楽しむにちがいないが、それこそが彼らの意図するところなのだ。アンダーグラウンドなビートメイカーとして頭角を現し、いま、ポップスターへと続く階段を駆け上がらんとしているSeihoとAvec Avecに、作品の裏に複雑に張り巡らせ、そして、覆い隠したコンセプトについて話を訊いた。

■Sugar’s Campaign / シュガーズ・キャンペーン
「Avec Avec」ことTakuma Hosokawaと「seiho」ことSeiho Hayakawaの2人によるポップ・ユニット。2011年に現在の体制となり、2012年1月にその存在を広く認知される契機となった楽曲“ネトカノ”を youtube にて公開。2014年8月には限定のアナログ盤「ネトカノ」をリリース。翌9月には同作のCD盤がリリースされタワーレコード全店チャート10位を獲得。2015年1月、SPEEDSTARRECORDSよりメジャー・デビュー作となるファースト・フル・アルバム『FRIENDS』を発表。

彼が前に進む力をくれたんです。(Avec Avec)
だって、こいつ、ひとりだとほんと進まないんですもん(笑)。(Seiho)

〈ele-king〉といえば、僕がtofubeats feat.オノマトペ大臣「水星」のレヴューをシティ・ポップ・リヴァイヴァルという観点から書いたとき、文中でSugar’s Campaign(以下、シュガーズ)の「ネトカノ」にも触れたんですよ。
 同曲がYoutubeにアップされたのが2012年1月。そこから、活動が本格化すると思いきや、ファースト・アルバム『FRIENDS』まで丸3年と、案外、時間がかかりましたね。

Seiho:かかりましたねぇ(笑)。

ただ、シュガーズの歴史はさらに長いんですよね?

Avec Avec:シュガーズはもともとは僕が組んでいたバンドだったんですよ。高校、大学とずっとやっていて。僕が曲をつくって、ドラムを叩いて──

Seiho:いまもヴォーカルをやってくれてるakioがギター・ヴォーカルで、作詞をやってくれてる小川(リョウスケ)くんがベースで。

Avec Avec:でも、大学3年生くらいのときに、みんなが就職活動やらなんやらで動けなくなってきて、僕ひとりになってしまったんです。そのタイミングでAvec Avecとしてソロ活動をはじめたんですが、「Sugar’s Campaign」って名前は残しておきたかった。ただ、シュガーズのポップ・ミュージックをやるというコンセプトを引き継ぎながらも新しいことをやりたいと思って、大学で仲のよかったSeihoに加入してもらったんです。
 ちなみに、「ネトカノ」もバンド時代に曲は完成してた。それに歌詞とSeihoが撮ってくれたヴィデオとを合わせて、Youtubeにアップした感じですね。

クレジットだと、基本的に作曲はAvec Avecがやって、編曲はSeihoと半々という感じですよね。その表記では見えてこない役割分担があると思うのですが、実際にはどんなバランスなのでしょうか?

Seiho:劇でいうと、Takuma(Avec Avec)が脚本で僕が演出みたいな。ふたりでアイディアを出し合って、それを基にTakuma(Avec Avec)に曲をつくってもらって、僕がアートワークやらヴィデオやらを考えるという感じですかね。

Avec Avec:あと、Seihoは僕が曲づくりで迷ったときに、指針をバーンと出してくれる。

〈Maltine Records〉から出たAvec AvecのEP『おしえて』を聴くと、シュガーズの音楽性はAvec Avecの延長線上にあるのかなという印象を持ちます。やはり、Seihoのソロとは大きくちがう。

Seiho:そうですね。ちがいますね。

Seihoはシュガーズに誘われたとき、すぐに引き受けたんですか?

Seiho:僕はシュガーズのファンだったんですよ。だから、Takuma(Avec Avec)がこのままひとりでやっていても、一生、活動は再開せえへんやろうなと思って、入ったっていう感じです。

Avec Avec:彼が前に進む力をくれたんです。

Seiho:だって、こいつ、ひとりだとほんと進まないんですもん(笑)。

Avec Avec:そう(笑)。あそこでSeihoがシュガーズに入ってくれなかったらずっと引きこもってたと思います。

たしかにSeihoは〈Day Tripper Records〉もやっていたし(現在は距離を置いている)、行動力がありますもんね。一方、Takuma(Avec Avec)さんは自分ひとりになってもシュガーズを止めようとは考えなかったこだわりの強さがあると思うんですけど、シュガーズというユニットのどんな部分に愛着を感じていたんですか?

Avec Avec:「歌もののポップ・ミュージックをやりたい」というのがずっとあって。でも、僕は歌えないし、かといってゲスト・ヴォーカルを招くのもちょっとちがうというか。そうじゃなくて、ほんまにひとつの劇団をやるような感じでポップスをつくりたいと思ってたんです。シュガーズの活動が停止しているときも、Seihoとはそういうことをよく話していて、価値観とか、物語のつくり方が僕ととても近かったので、じゃあ、ふたりでつくったらもっとおもしろくなるんじゃないかと考えた部分もありましたね。

僕にとってはあくまでもバンドが本チャンの活動で、ブート・リミックスは趣味なんやっていう意識だったんですけど、Tofuくんはそういうものをむしろ本チャンと考えるような活動の仕方をしていたから、驚いて。(Avec Avec)

Seihoはバンド時代のシュガーズにどんな印象を持っていた?

Seiho:いわゆる“京都のインディ・バンド”みたいな。僕はシュガーズの曲が好きだったんですよ。当時の曲をピアノで弾き直して、ヴォーカルを乗せて、別のトラックに差し替えればいまのシュガーズとぜんぜん変わらないと思うんですね。コードの感じとか、メロディの感じとか。でも、いかんせん、形態が3ピースのギターポップなもんやから……。そもそも、僕は“バンド”というものがよく理解できなくて。ただ、その頃はチルウェイヴが出てきた時期で、バンドものがダンス・ミュージックと合流するような感じがあったじゃないですか。トロ・イ・モワとか――

Avec Avec:ウォッシュト・アウトもそうやし。僕的にガッときたのはネオン・インディアンなんですけど。

Seiho:そうそう。それで、「もしかしたらシュガーズがやっていることと、僕がやっていることを合わせたらもうちょっとイケるかもしらん!」って思ったんです。加入することに決めたのはそれがいちばん大きいかな。だから、2010年以降のチルウェイヴの流れに押された感じがありますよね。バンドに打ち込みの音を入れるっていうような単純な話ではなくて、あの時期、ポップスの概念がもっとぐにゃっとしたというか。

Avec Avec:同じ頃、僕はTofuくんと出会って。当時、僕はひとりで〈ニコ動〉とか〈2ちゃん〉にブート・リミックスをアップしてたんです。J-POPやら海外のポップスやら、ガラクタみたいな音源をいじくって、バンドができないフラストレーションのはけ口みたいな感じで。ただ、僕にとってはあくまでもバンドが本チャンの活動で、ブート・リミックスは趣味なんやっていう意識だったんですけど、Tofuくんはそういうものをむしろ本チャンと考えるような活動の仕方をしていたから、驚いて。自分は頭が固いから分けて考えていたものの、そんな必要はないんやなと。さらに、そこにチルウェイヴが出てきて、ネオン・インディアンがトッド・ラングレンのイントロをまるまるサンプリングした上に自分のメロディを乗せるみたいなことをやっていて(「デッドビート・サマー」)、その感覚もアリやわと思って。そういうムーヴメントも世界中で起こりつつあったし、Seihoも横におるし、これはおもしろいことになってきたわって感じはありましたね。

いま、世界的な傾向として、ポップ・ミュージックのメインはダンス・ミュージックを通過したものになっていますよね。テイラー・スウィフトみたいなカントリー出身のアーティストでさえもそうですし、シュガーズもそれに対応している。ただ、シュガーズの場合、果たして、ポップ・ミュージックからダンス・ミュージックへ寄ったのか、あるいはダンス・ミュージックからポップ・ミュージックへ寄ったのか、どっちなんだろうと思っていたんですが、前者がAvec Avecで、後者がSeihoで、その中間でふたりが出会ったというのは乱暴な整理の仕方ですかね?

Seiho:バランスの話でいえば、「J-POPがルーツなのか、洋楽がルーツなのか」とか、「白人音楽なのか、黒人音楽なのか」とかっていう問いも同じですけど、僕は、Sugar’s Campaignの場合、「どっちかではなく、どっちもある」というふうに思ってますね。

ルーツとなっているアーティストの具体名を挙げてもらえますか?

Avec Avec:僕の場合はトッド・ラングレンとか、ポール・マッカートニーとか、やっぱり、白人音楽が多いです。でも、ビートっていうことになると黒人音楽の方が普遍性があると思うし、結局、「白人が憧れる黒人音楽」みたいなものがいちばん好きなのかもしれません。

ブルーアイド・ソウルみたいな。

Avec Avec:そうですね、ホール・アンド・オーツなんかも好きですし。あとはバート・バカラックとか、王道のポップ職人みたいな人。

子どもの頃に憧れていた大人像を懐かしむというか。あの頃のポップスって大人っぽいものが多いじゃないですか。(Avec Avec)

日本のアーティストだとどうですか?

Avec Avec:広瀬香美さんとかすっごい好きでした。

へえ!

Avec Avec:90年代のあの感覚が好きというか、やっぱり、子どもの頃に聴いてましたからね。あとは、久保田利伸さんとか、岡村靖幸さんとか。他にもアニメの音楽とか、『ポンキッキーズ』で流れてた曲とか……だから、荒井由実さんみたいなガチのシティ・ポップっていうよりは、それを通過した後のポップスが原体験になってるのかもしれません。

そういうものが、子どもの頃に聴いていたというノスタルジーも込みで好きだということでしょうか。

Avec Avec:子どもの頃に憧れていた大人像を懐かしむというか。あの頃のポップスって大人っぽいものが多いじゃないですか。たとえ、アニメの音楽だとしても。

Seiho:子どもが憧れる大人像とか、大人が懐かしむ子ども像とかって、想像上でしか存在しないものだと思うんですよ。僕たちはその虚像みたいなものをイメージして曲をつくってるっていう、穴埋め作業をやっているような感じですね。

Avec Avec:そして、その虚像の気持ち悪さみたいなものが、僕たちがやりたいポップス像でもあって。

Seiho:そう。実際にはそんな大人大人した大人はいないし、子供子供した子供はいないし、よく考えると気持ち悪い。でも、その気持ち悪さこそがポップスとしての普遍性っていうような感覚。

Avec Avec:シティ・ポップの問題もそうで、僕らが“シティ”って言うとき、現実の都会に憧れてるわけじゃないんですよ。

Seiho:東京をイメージしているわけでもないし。たぶん、そこで頭にあるのは、小さい頃に観たアニメとか映画とか、そういうところに出てきた都会なんです。架空の場所というか。

Avec Avec:そもそも、都会を知らないですからね。まぁ、大阪はゆうても都会かもしれないですけど。

出身は何処ですか?

Avec Avec:ふたりとも大阪で、僕は郊外の枚方市。駅前にショッピングモールがあって、似たような家が並んでいて、本当に“ザ・郊外”って感じの街なんですけど、どこか幻想っぽいんですよ。

Seiho:都会の代用品というか。

Avec Avec:そうそう。郊外は都会をミニチュア化したものだから、妙に幻想的な感じがある。

Seiho:いびつだよね。

Avec Avec:不気味さもあるし。

Seiho:道路のつくり方とかマンションの建て方とかが、『シム・シティ』みたいにひとりの人間の計画でできているような。誰かの妄想の中に居るみたいでヤバいっていう感覚。

僕も埋めて立て地のニュータウンで育ったんで、言ってることはわかりますよ。

Avec Avec:あと、ショッピング・モールがおもしろいのは、国内はもちろん、エジプトでも同じような形をしているところで。

東浩紀さんもそういうことを書いてましたね。

Avec Avec:人間の動物的な想像力でつくられているのかもしれないなと思います。

ある種のユートピアの具現化だと。

Avec Avec:ヴェイパーウェイヴなんかもそういうことを表現しているのかもしれないですし、“都会に対する気持ち”みたいなもの自体が幻想だと思うんです。

ひいては、それこそがポップスの魅力。

Seiho:みんなが抱いている憧れみたいなものを集めていくと、存在しないものが出来上がる。それを引いて見ているひとが感じる気持ち悪さこそがポップスなんじゃないかっていうことです。

みんなが抱いている憧れみたいなものを集めていくと、存在しないものが出来上がる。それを引いて見ているひとが感じる気持ち悪さこそがポップスなんじゃないかっていうことです。(Seiho)

ほとんどの人はその気持ち悪さに気付かないような気もしますけどね。

Seiho:そう。だからおもしろおもしろいんですよ。僕らはその気づいていない人たちを見て笑うのが好きなんです。これはあまり言わないことですけど、シュガーズの曲を聴いてシュガーズの世界に入り込んでいる人たちを見て、いちばん笑っているのが僕らだと思います。たとえば、ディズニーランドで楽しんでいる人たちをまじまじと見るとたぶん気持ち悪いじゃないですか。だからこそ、僕らはディズニーランドを作りたいんですよね。テーマパークを。

先程のブルーアイド・ソウルの話でもそうですけど、対象との距離感に惹かれるようなところがあるんでしょうか?

Avec Avec:客観視しようということはつねに考えてますね。主観が強い音楽があまり好きではないというか。

たしかにシュガーズの音楽にはアーティフィシャルな感覚があります。

Seiho:メンバーにヴォーカリストがいないのもそういうことなんです。ヴォーカルってやっぱり主観やから、バンドが5人いたとしても、ヴォーカリストがなよっとしていたらナイーヴなバンド、マッチョやったらマチズモなバンドっていうふうに見られてしまうと思うんですよ。いまの編成になったのは、ヴォーカルを使う上でその主観を排除したかったからというのはありました。

アルバムでは12曲中8曲でakioさんのヴォーカルがフィーチャーされていますが、あくまでもシュガーズの音楽のいち構成要素という感じですね。

Avec Avec:akioにしても、他のヴォーカルにしても、劇団所属の俳優さんっていうぐらいの距離感ですね。

Seiho:もちろん、俳優にもキャラがあるし、それまでの経歴も印象に影響を与えるでしょうけど、劇の中ではあくまで与えられた役を演じているわけじゃないですか。

Avec Avec:ただ、今回のアルバムに関して言うと、俳優は入れ替え不可能で。僕たちが決めた配役と、彼らがやってくれた演技に関しては大事に思ってます。

Seiho:だから、僕らがつくった役を別のひとが演じても意味がないんですけど、劇によって演じた俳優自身が認識されていくというよりも、演じられた役が認識されていくという感じ。

akioさんのヴォーカルがこのアルバムの世界観を支えているのも間違いないと思うものの、それは、彼のパーソナリティとは関係なくて、要は楽器的な使い方をしているということですかね?

Seiho:ヴォーカルの録りはTakuma(Avec Avec)がやってるんですけど、僕が見ていてすごく変わってるなと思うのは、ヴォーカルがヴォーカルらしさを出すと絶対にNGを出すんですよ。ヴォーカルって、当然、歌える人だから、歌いたくなっちゃうじゃないですか。

今回のアルバムに関して言うと、俳優は入れ替え不可能で。僕たちが決めた配役と、彼らがやってくれた演技に関しては大事に思ってます。(Avec Avec)

ヴォーカルの録りはTakuma(Avec Avec)がやってるんですけど、僕が見ていてすごく変わってるなと思うのは、ヴォーカルがヴォーカルらしさを出すと絶対にNGを出すんですよ。(Seiho)

ヴィブラートを使ったり、歌い上げようとするということですよね。

Seiho:そうそう。声を張ったり。でも、Takuma(Avec Avec)は、ヴォーカルのヴォーカルらしくない瞬間だけをきっちりと録っていくことが多くって。たとえば“パラボラシャボンライン”(アルバム収録曲)のトラックが送られてきて僕が思ったのは、あの曲ってコーラス・ワークも巧みやし、ヴォーカルだったらもうちょっと歌い込みたくなるはずなんですよ。けど、それが、「朝5時くらいに、外では雪が降り積もっている7畳くらいのアパートの部屋で、暖房もつけずに窓の外を眺めながら、隣の部屋の人がまだ寝てるので大きな声は出せないけど、歌いたい」みたいな、ギリギリの声の出し方をしてる。

そういう設定を、Takuma(Avec Avec)さんからakioさんに伝えたということですか?

Avec Avec:いや、それは、あくまでもSeihoが感じた雰囲気なんですけど、フィーリングとしては近いですね。録りながら、「もうちょっと抑えよう」って思ってましたから。エモくなりすぎると引いてしまうから。僕自身が。

ヴォーカルにエモーショナルが入ると嫌だけど、ヴォーカルが誰でもいいというわけではない。

Avec Avec:akioは、本来、がっつりと歌える人なんですよ。

Seiho:その彼が、ああいうふうに歌うことに意味がある。

それはボーカロイドではダメなんですか?

Avec Avec:うーん……それでもいいですよ。

Seiho:ボーカロイドならボーカロイドでもいいんですよ。今回に関しては、20代男子が考える妄想の世界は、20代男子が歌う方が合理性があると僕らが考えただけであって。たとえば、「これは人間の恋愛の歌だけど、あえてボーカロイドに歌わせるのがおもしろいんや」っていうふうに思えば、ボーカロイドを使うかもしれない。歌詞が中国語の“夢見ちゃいなガール”(アルバム収録曲)にしても、「これを女の子が歌ってるからいい、こういう立ち位置の人が歌ってるからいい」っていうのがありましたからね。

なるほど。いわゆるフィーチャリングものっていうか、すでに知名度があるヴォーカリストを起用する際に相手のキャラクターを考慮するケースはあると思うんですけど、akioさんにしてもイメージはまっさらなんで、まるでボーカロイドを使っているような印象を受けるのかもしれません。

Seiho:だから、僕らとしてはやっぱり劇の譬えがしっくりくるんですよね。

Avec Avec:劇っていうのは、俳優ではなく、作家と演出家の作品なんやけども──

Seiho:作家と演出家もその劇に脇役として出てくる。シュガーズはそんな立ち位置ですね。松尾スズキ的な。

取材:磯部涼(2015年1月30日)

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Profile

磯部 涼磯部 涼/Ryo Isobe
1978年、千葉県生まれ。音楽ライター。90年代後半から執筆活動を開始。04年には日本のアンダーグラウンドな音楽/カルチャーについての原稿をまとめた単行本『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』を太田出版より刊行。

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