「ピカ」と一致するもの

interview with Tanlines - ele-king

少しのあいだ迷子になって
別の方向を見た
何が問題かって
ひとりぼっちだってこと
"リアル・ライフ"


Tanlines
Mixed Emotions

True Panther/ホステス

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 ブルックリンのタンラインズ(ジェシー・コーエンとエリック・エムのデュオ)は、ニュー・オーダー/デペッシュ・モード......そして、そう、おまちどおさま、ヘアカット100・リヴァイヴァルを代表する。つまり、クラブ・ミュージックの影響を......全面的に思い切り受けているインディ・ロック・デュオである。と同時に、アニマル・コレクティヴの『メリーウェザー・ポスト・パビリオン』(2009)が火付け役となったトロピカルなるコンセプト――南国パーカッションとエレクトロニカとの融合によるこの2~3年のインディ・シーンに起きたバレアリック現象――と共鳴しながら、他方で彼らはトーク・ノーマル、ホリー・ファック、!!!などといったちょっとパンクな連中のプロデュースを手がけている。
 タンラインズをもっとも特徴づけるのは、強いポップ志向だ。ベッドルーム系にありがちな自己撞着はない。シザー・シスターズ(個人的にはそれほど嫌いではないブルックリンのグラム系4人組)のような陰謀性はなく、ダフト・パンクのようなシニカルな態度もない。もちろん急進性も実験性もない。ある種の実用的なダンス・ポップだ。
 ルーティンから逃れることが音楽のできる最良のことだとしたら、タンラインズの『ミックスド・エモーションズ』は優秀な1枚と言えるかもしれない。そのご機嫌なノリに反するかのような陰影のある言葉は彼らの音楽がファスト・フードのように浪費されることを阻んでもいるが、思うにこれはポップ・ソング復権運動の一種で、ラジオから"ブラザーズ"(アルバムの1曲目)が流れて、3回目にはそのメロディを覚え、そして10回目に聴いたときに好きになれたら、タン ラインズの勝ちだ。早い話、ヴァンパイア・ウィークエンドやMGMTのあらたな競争相手の登場である。たとえば......海辺のクラブのカフェで黄昏どきに流れ ているトンプソン・ツインズを想像したまえ、それはひょっとしたらタンラインズなのだ!

悲しいけど、同時にそれをジョークにできてしまうようなもののことさ。ちょっと大人な感情だ。すべての物は同時にいろいろな意味を持っているっていうことを認識できる。それが僕らの美学になっている。そして、それを表す言葉が欲しかった。

生まれはどこちらですか? 

エリック:僕(エリック)はピッツバーグ出身で、ジェシーはワシントンD.C.近くのメリーランド出身だよ。僕は10代の時に自分自身大好きなバンドだったドン・キャバレロに参加して、その後イアン・ウィリアムスと一緒にストーム&ストレスを結成しているよ。

そしてあなたがブルックリン(ニューヨーク)のシーンにアクセスするまでの話を教えてください。

エリック:僕らふたりともそれぞれ2002年か2003年ぐらいにブルックリンに引っ越したんだ。他のたくさんの若者にとっても同じようにね。僕らにとっても「21世紀にニューヨークに引っ越す」っていうことは=「ブルックリンに引っ越す」っていうことだった。

9.11のときは何をしていましたか? 

エリック:そのときはまだウィスコンシンの大学に行っていて、ニューヨークからは何千マイルも離れたところにいたよ。

いずれにしても、ブルックリンには若い才能を惹きつける理由があったということですよね? 

エリック:だね。ただ、ほとどの人にとって何より魅力的だったのは、もうホントに家賃が安いってことだったんじゃないかな。

80年代のシンセ・ポップからの影響は意識していますよね?

エリック:それは間違いない。子供の頃に聴いていたブルース・スプリングスティーン、REM、トーキング・ヘッズ、ティアーズ・フォー・フィアーズなんかに影響を受けていると思うよ、どんな人間でも子供の頃に耳に入っていた音楽に影響されずにいられないのと同じさ。ロバート・パーマーとかね......。

ダンス・ミュージックからは当然影響されていると思いますが......。

エリック:もちろん。決まったお気に入りはないけど、ぱっと頭に浮かぶものではジョン・タラボット、ユルゲンパープ、フォー・テットなんかは大好きだよ。

アルバムのエンジニアをジミー・ダグラスにした理由を教えてください。彼はティンバランド、アリーヤ、ミッシー・エリオットなどヒップホップ/R&Bからテレヴィジョンやロキシー・ミュージックまで手がけているベテランだそうですね。

エリック:僕らがジミーを選んだというよりも、お互いに選んだっていうほうが正しいな。もしかしてジミーが僕らみたいなプロジェクトと仕事をしたいと思ってくれるんじゃないかと思ってレコードを送ってみたんだ。彼がやったティンバランドの作品や、アレサ・フランクリン、レッド・ツェッペリン、ロキシー・ミュージック、テレヴィジョンなどアトランティック時代の作品からも彼の作風などは知っていたからね。彼はアルバムを気に入ってくれて、それで僕らはマイアミに10日間行って彼と仕事をすることになったんだ。素晴らしい経験だったよ。

『ミックスド・エモーション』というタイトルはアルバムの内容にとても合っていると思うのですが、どうしてこの言葉を思いついたのですか?

エリック:「Mixed Emotions」っていうのは僕らのマスコットで、僕が「ウィンキー・サッド」(ウィンクしている悲しい顔)って呼んでいる顔文字についての表現だよ。悲しいけど、同時にそれをジョークにできてしまうようなもののことさ。ちょっと大人な感情だよね。すべての物は同時にいろいろな意味を持っているっていうことを認識できるってことでもある。それが僕らの美学になっているんだ。そして、それを表す言葉が欲しかった。で、付けたのがこの名前さ。

エモーショナルで優しいメロディ、気持ちの入った歌いっぷりにタイラインズの心意気のようなものを感じるのですが。

エリック:僕らはタンラインズの音楽を「実存主義ポップ(エグジステンシャル・ポップ)」って呼んでいるんだ。僕らのスピリットはアップテンポなビートと粘っこいメロディにメランコリックなヴォーカルにある。あらゆるものはそれぞれ同時にいろんな意味を持っていて、同時にいろんなものでもあるんだ。80年代からの影響も感じられるだろうし、同時に現代的な影響もある。それぞれの曲は楽しくもあるし悲しくもある。そういう組み合わせが僕らの音楽のスピリットになっていると思うよ。

すべての歌詞は、ファンタジーでもロマンスでもなく、苦いリアリズムが描かれていると思うのですが、"イエス・ウェイ"や"ラフィング"のような曲は、いまの時代の暗い風に対するあなたたちのリアクションでしょうか? たとえば「いつだって笑っていよう/そこが安息の場所じゃなくても」"ラフィング"なんて、なかなか重たい歌詞じゃないですか。

エリック:それは幅の広い質問だね! 僕らの作るものにはどれも完全に前向きだったり明るいものっていうのはないと思う。だいたいはジェシーが明るいパートを書いて、エリックがダークな部分を作るんだ。陰陽思想みたいな感じなんだね。

「癌を患っている親類のために書いたファンク」なんていう書かれ方もされていますよね。いっけん前向きですが、悲しみや苛立ちもあるという?

エリック:僕らの曲のヴォーカルや歌詞の多くは、自分が世界のどこにいるのかよくわからないままに年をとることの不確実さや不安を反映していると思う。

そういえば、ニューヨークでは「オキュパイ・ウォール・ストリート」がありました。いま世界に動揺があるのはたしかだと思いますが、タンラインズはそこにどのように立ち向かっていこうと考えていますか?

エリック:良い質問だね。僕らはふたりとも個人的に、世界情勢について詳しいし、自分の意見も持っている。僕は「オキュパイ・ウォール・ストリート」の現場を訪れたし、震災(3.11)の義捐金を寄付したりもした。それが僕らの音楽にどういった影響を与えているかははっきりとはわからないけど、そういうことが僕らの人格に影響していると思うし、僕らの人格が作る音楽を形作っているんじゃないかな。他の多くの影響と同じように、明白というよりはもっと微かで無意識的な影響だと思うけれど。

メモリー・テープスやグラッサー、エル・グインチョなどリミキサーとしても活躍してますね。あなたによって良いリミックスとはどんなものでしょうか?

エリック:僕にとってのいいリミックスの定義は、「聴いたときにまったく新しいバンドみたいに聴こえる」っていうこと。個人的にお気に入りのリミックスはオ・ルヴォワール・シモーヌのやつだね。聴いてみると、誰かのリミックスじゃなくて新しいアーティストの作品みたいに聴こえるんだ。

ニッキー・ミナージュ、ラナ・デル・レイ、M.I.A.の3人のなかでもっとも評価しているのは?

エリック:たぶん、M.I.Aだと思う。

マドンナの新曲"MDMA"は?

エリック:聴いたことないんだ。マドンナのスーパー・ボウルでのパフォーマンスは見たんだけど面白かったよ。

タンラインズは明白なまでにポップ・ソングを追求していると思いますが、良い音楽の定義とはなんだと考えますか? それはいまも昔も同じだと思いますか? 

エリック:良い音楽っていうのはつまり、誰かの人生にとって何らかの意味がある音楽のことじゃないかな。僕にとってもいくつか聴いただけですぐに僕の人生のある時期に戻ったような気分にさせるような曲があるけど、そういう曲はとても強力な力を持っているし音楽の持つ魔法を証明していると思う。

理想とするポップ・ミュージックとはどういうものでしょうか?

エリック:初めて聴いたときにすぐにいっしょに口ずさめる曲っていうのが良質なポップ・ミュージックだと思うよ。

Punks On Mars - ele-king

 伊達なのか真剣なのか、おしゃれなのか天然なのか、敵対的なのか友好的なのか、たとえばアリエル・ピンクは筆者にとって真剣であり、天然であり、友好的であるのだが、パンクス・オン・マーズことライアン・ハウの音楽は何度聴いてもそこがよくわからない(むろん人間の意識という複雑性に敬意を表して補足するならば、アリエル・ピンクも部分的には伊達であり、おしゃれであり敵対的である)。実際にアリエル・ピンクと比較される彼の宅録スキゾ・ポップにはビビッドな個性と才能がありありと刻まれているのだが、どうも小骨が喉にひっかかるというか、その真意や正体がはっきりとつかみきれず、またなんとなくいやがらせというか悪意のようなものが発せられているような気もして、個人的に居心地が悪い思いで聴いていたのである。だがそのあたりのひっかかりがとあるインタヴューを目にして腑に落ちたので、昨年作ではあるが取り上げたいと思う。

 結果として「いやがらせ」のモチベーションは充分にあったということになるだろう。ライアン・ハウには昨今のローファイ礼賛といったインディ・ミュージック・シーンのムードに対する強い反発がある。自らが主宰する〈ラットガム〉からのデビュー作がカセットテープ・オンリーであったりすることをおいても「きみがそれを言うのか!?」というつっこみが避けられないほどハウ自身がみごとにローファイ・マナーのフロンティアであることは疑いをいれないが、彼が標的とするのはどうやら「チル」や「トロピカル」というタグのついたムーディな音――おおむねウォッシュト・アウトや『ライフ・オブ・レジャー』のジャケットが一夜にして築きあげたイメージを指すのだろう――であるらしい。
 「ミュージック」という単語をわざわざ「ミュー」と「シック」に分けて表記するハウは、それらを自己満足的で商業目的の「シック(sick)」な音楽としてみなしている。そこに対置させる意味合いでだろうか、彼が参照するのはパワー・ポップやグラム・ロックだ。しかし、ある特定のアーティストへの強い思い入れがあるわけではないらしく、自らはそのパロディ、風刺画と称して譲らない。ポップ・ミュージックというものが「ミュー・シック」でしかあり得ないという悲観をバネに、ならばそれをわかりやすく世の中につきつけてやろうと「グラムパンク・ミメーシス」、「ハイパー・グラム」といったあやしげな造語を振りまき、ヴィジュアルとしては80年代の消費文化を象徴するMTV的なハリボテの絢爛などをコラージュしながら、ハイテンションな音源を攻撃的に生み出しつづける......つまり彼は彼なりの仕掛けをもってチルウェイヴのエスケーピズムに突っかかっていく、インディ・ミュージック・シーンの反逆児なのだということになる。

 ローファイという録音技術史における一種の価値転倒には彼自身大きく影響を受けたようだが、それを「洗脳セット」と呼んではばからないハウは、これに対しハイファイなリアクションを起こそうという目論見を語っている。いまのところそれがどのような形で実現されているのか、耳では感知できないのだが、意図するところはわからなくもない。しかし、音を聴くかぎりではパンクス・オン・マーズにも厭世や逃避の感覚は色濃いように思われる。またベッドルームで煮詰めたようなローファイぶりやスキゾフレニックな曲構成、多動的でおちつきのないテンションとそれを沈下させるようなドリーム感なども、アリエル・ピンクはじめジェイムス・フェラーロアンノウン・モータル・オーケストラなどに通じ、結局のところチルウェイヴの表裏というか、両者は双子のように似た存在である。だとすれば近親憎悪というべきかライバル意識というべきか、ライアン・ハウのいらだちとエネルギーはチルウェイヴの知恵熱として、次のステージをひらいてくれるものなのかもしれない。そう思うと彼の作品にもわりと素直に向き合えるようになった。

 筆者が好きなのはアルバム前半の顔ともいえる"シャウト・ユア・ラングス・アウト"。華があり、目鼻立ちのくっきりとしたパワー・ポップ・チューンだ。"グラウンデッド・フォー・ライフ"もいい。手あかのついたベース・リフを楽しく再生利用している。そしてなにより彼のメロディ・メイカーとしての才能がいきいきとみずみずしく躍動している。バズコックスやエルヴィス・コステロを思わせる、わずか2分間を駆け抜けるめまぐるしくも思い出いっぱいといった卓抜なソング・ライティングは、クラウド・ナッシングスの青さをひらりとかわす。テレビのチューナーに録音機能のあるカセット・デッキを直づけして録ったような独特のサウンド・メイキングを取り去ったとしても、彼にはメロディという武器があるということを印象づけられる曲である。"タマゴッチ・パンクス・オン・セント・マークス"や"ダラー・メニュー・ドリーム"も好きで、ギターでこそないもののリアル・エステイトやウッズのギター・エクスペリメンタルに近い感触がある。ポニーテイルやダン・ディーコンのような、爆発的なエネルギーを隠し持った白昼夢ポップとも似ている。数年前にボルチモアから聴こえたものが、ミクロな形で埋め込まれているようにも思えておもしろい。

 なるべく自身の音源は自身の〈ラットガム〉からリリースしたいという思いを抱いているようだが、カセット・リリースのファースト・アルバムと本LPのほかには、ダーティ・ビーチズのアルバム・リリースでも知られる〈ズー・ミュージック〉から新録7インチ・シングル「ヘイ! ティファニー」を発表している。グレイテスト・ヒッツのドラマーとして、また本名義以前にはルーク・ペリーとしても密かな注目のあった存在だ。飽きることなくカウンター攻撃をつづけ、好事家に愛されるにとどまらず、その攻撃をより広い文脈につなげていってほしいと思う。

RAZIKA Japan tour 2012 - ele-king

 ノルウェーの森にさんさんと降り注ぐ太陽、日焼けしたメロディ、スカンジナビアの大地に響くスカとロックステディのベース......何かおかしい? ラジカは3分間ポップの復権運動における精鋭、ノルウェーのベルゲン(ロイクソップやキングス・オブ・コンヴィニエンスで知られる)出身の4人の女の子(全員1991年生まれ)によるバンドだ。ザ・スペシャルズ......などとたまに比較されるけれど、あんな深刻な政治性はない。むしろその逆で、まばゆい陽光と希望の兆しへ向かって走っている。ちょっと尖った、かわいらしいポップ・ロック・バンドだ。願わくば、暖かい春を感じながら踊りに行きましょう!

3/28 (水)
contrarede x FILE-UNDER presents
Nagoya, APOLLO THEATER(052-261-5308)
open 19:30 / start 20:00
adv ¥3,500 / door ¥4,000 (+1drink)
Live : RAZIKA / TWINKE TWINKLES / 他
Dj : 山田岳彦((FILE-UNDER / KNEW NOISE)

3/29 (Thu)
contrarede x FLAKE RECORDS presents
TONE FLAKES vol.36
Shinsaibashi, CLAPPER(06-6213-6331)
open 18:30 / start 19:00
adv ¥3,500 / door ¥4,000 (+1drink)
Live : RAZIKA / NOKIES! / AWAYOKUBA /
DJ : DAWA(FLAKE RECORDS)

3/30 (Fri)
Shibuya, o-nest(03-3462-4420)
open 18:30 / start 19:30
adv ¥4,000 / door ¥4,500 (+1drink)
Live : RAZIKA / miila and the geeks / NEW HOUSE /

主催 : contrarede, calentito
企画制作 : contrarede, calentito
協力 : FILE-UNDER,FLAKE RECORDS,
Total info : contrarede 03-5773-5061 / epistula@contrarede.com


Razika
Program 91
Smalltown Supersound/カレンティート

Album Review Amazon iTunes

Razika
title TBA(来日記念盤)
CLTCD-2012 | ¥1,260 [tax incl.]

祝日本ツアー決定! ティーン女子の若葉マーク・ミラクルが炸裂したユルめのトロピカル・ツートン・サウンドがただいま全国を席巻中、北欧ポップの聖地ベルゲンが生んだ期待の新人=ラジカによる来日記念盤は、アルバム未収録の新曲や未発表曲を収録! Amazon

Chart by Underground Gallery 2012.03.02 - ele-king

Shop Chart


1

PORTER RICKS

PORTER RICKS Biokinetics (Type / 2lp) / »COMMENT GET MUSIC
THOMAS KONER & ANDY MELLWIGによる伝説的ミニマル・ユニットPORTER RICKSが、[Chain Reaction]から1996年にリリースし、今では完全廃盤の為、入手難となっていた、ミニマル・ダブの歴史的名盤「Biokinetics」が、遂にヴァイナル2枚組にて再発! 独ドローン / エレクペリメンタル界の大ベテランTHOMAS KONERと、DUBPLATE & MASTERINGの技師でもあるANDY MELLWIGによる重要ユニットPORTER RICKS が、[Basic Channel]への連鎖反応として設立されたミニマル・ダブのパイオニア的レーベル[Chain Reaction]から、記念すべきアルバム(CD)一作目として1996年にリリースしたダブ・テクノの金字塔が待望の再発。低音の音塊、複雑なエフェクトによる音響工作、グルーヴ、空間性、どれをとってもパーフェクト!これを聞かずにダブテクノは語れない、そんな一枚です。

2

PSYCHEMAGIK

PSYCHEMAGIK Dance Hall Days (Psychemagik / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYプレイでお馴染みのWANG CHUNG「Dance Hall Days」をPSYCHEMAGIKがリミックス! UKの人気バレアリック・デュオ PSYCHEMAGIK新作は、"DJ HARVEY's Play Classic" として、あまりにも有名な、84年リリースのエレクトロ・ポップ/ロック古典、WANG CHUNG「Dance Hall Days」のリミックス。 同バンドのメンバーJUCK HUSSも参加し、オリジナルのポップな雰囲気はそのままに、PSYCHEMAGIKらしい、バレアリックな要素を注ぎ込んだ渾身のリミックスを披露。楽曲が楽曲なだけに、コレは間違いなく大きな話題を集める事でしょう~!さらにカップリングには、アシッディーなダブ・ディスコ・トラックに、変態的なヴォイス・サンプルを交えた「Beauty & The Bass」を収録。

3

V.A

V.A Vanguard Sound Volume 3 (Vanguard Sound / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
昨年は大きな飛躍の年となったN.Yブルックリンの地下ハウス・レーベル[Plan B]周辺の注目アーティスト達が参加したコンピレーション12インチ! このコンピレーション・シリーズ、第一弾はHAKIM MURPHY主宰[Machine Dreams]から、そして前作の第二弾はDJ SPIDER主宰[Plan B]からと、毎回レーベルを変えながらリリースしていくようで、今回の第三弾は[Vanguard Sound]なる、このコンピレーションの為に設立されたと思われる新レーベルからの登場。アブストラクトにうねるアシッディーなベース・グルーヴでグイグイ引っ張るAMIR ALEXANDER、サイバーに発振するアシッドSEがヤバイCHRIS MITCHELL、ノイズ塗れの超キラーのパーカッシブ・ダブ・テックを披露したDJ SPIDERなど、全曲、お世辞抜きにオススメ!

4

LINDSTROM

LINDSTROM Quiet Place To Live (Smalltown Supersound / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
LINDSTROMの新作を、大御所ロック・アーティスト TODD RUNGRENがリミックス! 良作品が続く [Smalltown Superworld]新作は、同レーベルの看板アーティストとして活躍する、ノルウェーの天才 LINDSTROM。 約4年ぶりとなる最新アルバム「Six Cups of Rebel」からの先行12インチ・カットとなる今作。もちろんオリジナルは当然の如く◎ではあるのですが、それよりも注目すべきなのがB面に収録されたリミックス!!何と手掛けているのは、70年代から活躍を続ける大御所ロック・アーティスト TODD RUNDGRENなんです!自身の長いキャリアにおいても初めて他人の作品をリミックスしているという事なのですが、共に美しいメロディーワークを信条とするこの2人、相性が悪い訳がありませんよね。

5

DELANO SMITH

DELANO SMITH An Odyssey (Sushitech / 3x12inch) / »COMMENT GET MUSIC
デトロイト伝説のDJ、KEN COLLIER最初の弟子の1人として、古くからデトロイトのハ ウス・シーンを支えてきた大ベテランDELANO SMITH、3枚組フルアルバム。 シカゴで生まれ、デトロイトで育ち、Jeff Mills、Eddie Fowlkes、Mike Grantなど を"生徒"に持つ事でも知られる、KEN COLLIERの最初の弟子の1人として、ディスコや ファンクDJとして、70年代後半から活躍する、デトロイトの歴史をする、大ベテラ ンDELANO SMITHが、活動開始から20数年を経て、待望の1stアルバムをリリース!

6

CAGE & AVIARY

CAGE & AVIARY Migration (Smalltown Supersound / 2LP) / »COMMENT GET MUSIC
カルト・レーベル[Dissident]、[Astro Lab]、さらには人気レーベル[Dfa]からも作品を残すロンドンのデュオ CAGE & AVIARY 1stアルバムがPRINS THOMASの[Internasjonal]から!レイドバック感溢れるダビーなギターリフが心地よい、極上バレアリック・チューン A1「Giorgio Carpenter (Director's Cut)」から幕をあけ、2008年に[Astro Lab]、2010年の自身の[The Walls Have Ears]からリリースされたヒット作「Friday The 14th」の未発表ヴァージョン「Part.4」、今では入手困難な、2007年リリースの 1stシングル「Television Train」(後に[Dfa]からもライセンスリリースされました)、ロッキンなワウギターが◎な「Good Eg,Bad Apple」、初期シカゴ~アーリー・ディスコ・ライクな「Migration」など、圧巻の2枚組 全9トラックを収録! 収録作品、そのいずれもが、12インチでリリースされても、不思議ではない、圧倒的な仕上がりです。間違いなく2012年を代表するアルバムとなることでしょう~。DJ HARVEYやPRINS THOMAS、TIM SWENNY、BRENAN GREENらのプレイも確実!ディスコ方面の方は絶対にチェックしておいて下さい。大・大・大推薦!

7

GENE HUNT

GENE HUNT Then & Now Ep (Hotmix Records / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
80年代から活動するシカゴのベテランGENE HUNTの新作12インチ!808 STATEの「Pacefic」ライクなA2、GINO SOCCIO「Dancer」ネタのB2など。 MARCELLO NAPOLETANOを筆頭に、CARL BIASやJOE DRIVEなど、良作をリリースしてきた、SIMONCINOが主催するイタリアの注目プトロ・ハウス・レーベル[Hotmix]の新作は、言わずと知れたシカゴ・レジェンドGENE HUNTによる新作12インチ。 往年の[Relife]レーベル辺りの作品を思わせるような、叩きつけるようなゲットー・シカゴなリズムに、アトモスフェリックなシンセ・シークエンスを走らせたA1、どことなく808 STATEの「Pacefic」に似た透明感と爽快感のあるパッド・シンセが浮遊するA2、定番ディスコ・クラシックGINO SOCCIO「Dancer」を大胆にサンプリングしたB2など、シカゴ節全開の4トラック!流石ベテラン、いぶし銀な1枚です

8

V.A

V.A Love And Money / On The Run (Moton Records Inc. / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
既に IDJUT BOYS、HORSE MEAT DISCOらがプレイ中。DJ HARVEYもリリースを残す UKの老舗リエディットレーベル[Moton]久々の新作!! DJ HARVEYの[Black Cock]と並ぶ、UKの最重要リエディット専科[Moton]久々の新作。今回はレーベル代表 DIESEI & JARVIS、さらには[G.a.m.m]の THE REFLEXが参加した1枚。 まずA面には、HERB ALPHERTの "Loft"/"Deep Space"クラシック「Rotation」に、妖しげな男女混合のヴォイス・サンプルが絡みつく「Love & Money」、B面には [TK Disco]的なトビ感のある、ダヴィーでトロピカル・ムードなパーカッションを鳴らした、ミッド・テンポな女性ヴォーカル・ディスコ「On The Run」を収録。

9

JAMES MASON

JAMES MASON Nightgruv / I Want Your Love (Rush Hour / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
77年にリリースした 自身唯一の作品にしてレアグルーブ史に残る名作「Rhythm Of Life」でもお馴染み、ROY AYERS UBIQUITYの名盤「Lifeline」にギタリストとして参加していた事で知られる JAMES MASONによる、超レア楽曲でもあり、THEO PARRISHが頻繁にプレイする事でもお馴染みのダンス・クラシックス「I Want Your Love」、「Nightgruv」が、アムスの名門[Rushhour]から12インチ復刻! 11分を超えるスローモー・ソウルな「I Want Your Love」、ミニマルなシンセ・リフと、黒いベース・グルーヴが◎な、ディープ・ハウス風サウンド「Nightgruv」、どちらもTHEO PARRISHのプレイする事でもお馴染みの楽曲です。

10

NICHOLAS

NICHOLAS MORNING FACTORY / Looking (X-Master/ 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
イタリアのNICHOLAS、オランダのMORNING FACTORYという、これからのシーンを担って行くであろう注目の新世代ハウサー2組による キラー・ボム!! [No More Hits]、[Quintessentials]、[Dikso]を筆頭に様々なレーベルから作品をリリースし、日に日に注目度の増す、イタリアの NICHOLAS、[2020 Vision]や[Yore]、[Royal Oak]などからリリースを残す、オランダのデュオ MORNING FACTORYが、新レーベル[X-Masters]より新作をリリース。間違いなくダブルA面と言っても過言ではない今作、まずA面に、淡く幻想的なコードや、艶やかな女性ヴォーカルをフィーチャーした、90年代中頃のN.Yディープ・ハウス作品を彷彿とさせるNICHOLAS、B面には力強くグルーヴィーなディープ・ハウスを披露した、MORNING FACTORYの作品を収録。どちらもホント最高です!

Chart by STRADA RECORDS 2012.02.21 - ele-king

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1

STING

STING INSIDE-TIMMY REGISFORD & ADAM RIOS REMIXES TIMMY ADAM / WHITE (US) »COMMENT GET MUSIC
昨年度よりTimmy Regisford自身がプレイを重ねてきた話題作が日本先行でヴァイナル・リリース!2003年リリースのアルバム「Sacred Love」のリード・トラック「Inside」をハウス・リミックスした本作、StingのパワフルなヴォーカルとShelter直系のシンセが絡み合う強力なピークタイム・チューン!世界に先駆けて日本先行リリースとなりますので是非この機会をお見逃しなく

2

STEVIE WONDER

STEVIE WONDER LATELY-TIMMY REGISFORD & ADAM RIOS REMIXES TIMMY ADAM / WHITE (US) »COMMENT GET MUSIC
昨年度よりTimmy Regisford自身がプレイを重ねてきた話題作が日本先行でヴァイナル・リリース!Stevie Wonderの言わずもがなの超名曲「Lately」をハウス・リミックス!パーカッシヴなトラックにメロディアスなピアノ&ヴォーカルが最高で、中盤以降の盛り上がるパートには新たにシンセが加わり、これまた強力なピークタイム・アンセムに仕上がっています!世界に先駆けて日本先行リリースとなりますので是非この機会をお見逃しなく!

3

JOUBERT SINGERS

JOUBERT SINGERS STAND ON THE WORD FAVORITE(FR) »COMMENT GET MUSIC
Larry Levan、David Mancuso、Francois K、Danny Krivitらもフェイヴァリットな超レア盤が遂に!中古市場でも万超えの人気盤がフランスのレーベルFavoriteから正規再発!ピアノが印象的なトラックと、子供達によるゴスペル調のヴォーカルに心動かされる85年リリースの超人気曲!重鎮Tony Humphriesもミックスに参加!これはマスト!

4

VA

VA SOULMATES EP SHARIVARI(FR) »COMMENT GET MUSIC
DERRICK MAYのミックスCD「Mix Up」にも収録されていた96年リリースの大人気曲House Proud People「Lonely Disco Dancer」を収録したEPが登場!途中でSUSAN CLARK「DEEPER」のサンプリングが飛び出すグルーヴィーで盛り上がる傑作!中古市場でも値段が高騰しているのでこれは嬉しい収録!他にもNDATLレーベル主宰のKAI ALCEの作品等を収録!

5

VEDOMIR

VEDOMIR VEDOMIR EP SOUND OF SPEED(JPN) »COMMENT GET MUSIC
ウクライナの気鋭Vakulaが初となる変名プロジェクトVedomirでEPをリリース!生々しいベースやパーカッションにヴィブラフォンやピアノ、シンセが絡む極上インスト・ハウスのA1を筆頭にクオリティーの高いジャジーなインスト作品を計3曲収録!既にMark Eら様々なDJ/アーティストが賛辞を寄せプレイ・サポートの強力盤です!

6

FLIGHTS OF FANCY

FLIGHTS OF FANCY VOLUME ONE INTERNATIONAL FEEL(EU) »COMMENT GET MUSIC
【Todd TerjeやChris Coco, Soft Rocks, Max Essaらも絶賛!】ファンキーなベースにグルーヴィーなギター、さらにスペイシーなシンセ・ソロがフィーチャーされた極上バレアリック・ブギー・インスト!スローでバレアリック度がさらに高いB面のカップリング曲も最高!いつもの通り初回プレス分のみアートワーク・ジャケット付き重量盤仕様ですのでお見逃しなく!

7

MK

MK THE MKAPPELLA(10inch) DELSIN (EU) »COMMENT GET MUSIC
人気レーベルDelsinの復刻シリーズX-DSRにMKことMARC KINCHENのレア作品が登場!91年にリリースされた「The Mkappella」は、川の流れる音や小鳥のさえずりをミックスしたディープなアンビエンス・ハウス的作品!B面にはLUKE SLATERが94年にTHE 7TH PLAIN名義でリリースしたアルバムに収録されていた人気曲「Lost」をカップリング!どちらもオリジナル盤はレアですのでこの機会をお見逃しなく!

8

BEN WESTBEECH

BEN WESTBEECH SOMETHING FOR THE WEEKEND D:VISION(ITA) »COMMENT GET MUSIC
Gilles Petersonが発掘したブルー・アイド・ソウル・シンガーBen Westbeechのアルバム収録曲が嬉しいシングル・カット!温かみのあるトラックにソウルフルでエモーショナルな彼のヴォーカルが最高!途中のトランペットのソロも◎!

9

ROBERT COTTER

ROBERT COTTER TIMELESS(LP) DERBY(UK) »COMMENT GET MUSIC
イタリアのレーベルDerbyからリリースされていた80年産の激レア盤がオリジナル仕様で再発!ディスコ、AOR、アーバン、トロピカル・・・と幅広い音楽性が見事に1枚のアルバムに集約された好盤!お見逃しなく!

10

BUCIE

BUCIE GET OVER IT FOLIAGE(FR) »COMMENT GET MUSIC
Black Coffeeの大ヒット曲「Superman」でヴォーカルを務めていたBucieのソロ作が人気レーベルFolliageから登場!リミキサーにはEzelが参加しており、メロディアスで洗練されたトラックにあの可憐な歌声が乗った極上な仕上がりとなっています!

New Age Steppers - ele-king

 わりと最近、リアーナの『トーク・ザット・トーク』の1曲目に収録された"ユー・ダ・ワン"のPVが話題になった。映像のなかでリアーナが自慰行為をしているからである。例によって賛否両論を呼んだ。セクシャンな表現をそれなりに理解している人からもマドンナには到底及ばないようなことをするなという厳しい声があがった。ビヨンセと違ってバルバトス島出身のこの女性は、何かと非難の対象になる。リアーナは、アリ・アップがもっとも支持していたR&Bシンガーのひとりである。決して行儀が良いとは言えないけど、私がやりたかったことすべてをやっているとまでアリアップは言った。リアーナやR・ケリーのような大衆的な過剰さを屈託なく楽しみ、愛せるところがアリ・アップらしい。ポスト・パンクにおいてザ・スリッツが抜きん出ていたところも、男女同権主義や多文化主義というよりも、結局のところアンチ・エリートなその包容力、狭量な世間に反する寛容さにあったと言える。彼女は、ロンドンのパンク・ロックにおける男女関係が、フリーセックスでもじめじめした手に負えないものではなく、こざっぱりとした友情関係得にあったことを主張するひとりでもある。

 2007年10月、ザ・スリッツとして来日したとき、アリ・アップはエイドリアン・シャーウッドといっしょにニュー・エイジ・ステッパーズの新作にも着手していることを話してくれたが、周知の通り、2010年10月、彼女は乳ガンによって他界した。ゆえに本作『ラヴ・フォーエヴァー』はプロジェクトにとって28年ぶりのピカピカの新作であり、そして最後の作品でもある。なんにせよ、僕のようなファンにとっては、今月もし1枚だけ選ぶとしたらこれしかない、そう言い切れるほどのアルバムである。
 いくぶん感傷的なタイトルの付けられた本作は、スキップ・マクドナルドやスタイル・スコット(ともにダブ・シンジケート)、ゲットー・プリースト、ニック・コプロウといったシャーウッド率いる〈ON-U〉の仲間たちともに、ダンスホールの多様なリズムからドラムンベースのアーメン・ビート、ヒップホップ、そしてもちろんレゲエと......まあ、アリ・アップらしいと言えばらしいハイブリッドな音楽を展開しているわけだが、予想以上にいろいろやっている。とくに驚いたのはアダムスキーの参加で(彼はレイヴ時代にチャートを賑わせたポップスターで、落ちぶれてからマーク・スチュワートのバックとして来日もしている)、1曲、テクノまでやっている。

 ニュー・エイジ・ステッパーズは最初のアルバムこそダブの実験を――レゲエ純粋主義者が苛つくほど――試みているが、それ以降のセカンドとサードに関して言えばルーツ・レゲエのカヴァー集となっている。当時は僕のように、ジュニア・バイルス、ビム・シャーマン、ホレス・アンディなどといった名前を、それらの作品を介して知ったリスナーは少なくない。
 とはいえ、『ラヴ・フォーエヴァー』は、ファースト・アルバムに立ち返ったような作品である。復帰後のソロ・アルバム『ドレッド・モア・ダン・ドレッド』(2005)、ザ・スリッツの『トラップド・アニマル』(2009)、オーストラリアのダブ・バンド、ダブブレスタンダートとの『リターン・フロム・ダブ・プラネット』(2009)、ヴィック・ルジェーロとの『レア・シングルズ』(2011)などなど、この5年のいずれの作品よりも『ラヴ・フォーエヴァー』には予定調和を揺るがすところがある。新しいことをやってやろうという前向きさがあるし、ポール・クックの娘(復活後のザ・スリッツのメンバーでもあった)のソロ・アルバムが伝統的なレゲエを守っている作品だったのに対して、こちらはレゲエを拡張する作品である。シャーウッドもここぞとばかりにフリーキーなミキシングを楽しんでいる。結局死ぬまでキングストンのサウドシステム文化を深く愛したアリ・アップだが、しかしその音楽がレゲエの型(コピー)に終始することはなかったのである。

 ちなみに"ラヴ・フォーエヴァー"は、ルーツ・シンガーの故ビム・シャーマンの1970年代の曲。ニュー・エイジ・ステッパーズは他にも数曲シャーマンのカヴァーをしているが、この曲はファースト・アルバムのB面の3曲目に収録されている。そのときドラムを叩いたのはブルース・スミス(ポップ・グループ/ザ・スリッツ~リップ・リグ&パニック、PIL、そしてビョークの最初のソロ)、ベースがジョージ・オバン(アズワドほか)、ピアノがスティーヴ・バレスフォード(ザ・49アメリカンズ~フライング・リザーズほか)。その演奏は1980年10月に録音されている。

Sao Paulo Underground - ele-king

 90年代のUSアンダーグラウンドにおいて重要なムーヴメントといえば、ポスト・ロックだ。その流れはキャレクシコにも、そしてボン・イヴェールにも繋がっている。今回紹介するサンパウロ・アンダーグラウンドのロバート・マズレクは、ポスト・ロックの第一世代であると同時にポスト・バップなるサブジャンルの開拓者でもある。なんでもかんでも"ポスト"と付けるのは我ながら芸がないと思うが、便利だ。ポスト・ロックならびにポスト・バップの起源はもちろんトータスである。

 ステレオラブのマネージャーのレーベルからリリースされたトータスの1995年の12インチ「ゲメラ」は当時、多くの場面において〈ワープ〉系のテクノのネクストとして聴かれているが、あのシングルに感謝しているのは、おかげでジェフ・パーカーの『ザ・リテラティヴス』にたどり着けたということだ。"ゲメラ"の冒頭のギターの煌めきはそれこそ『TNT』でもなじみ深いけれど、ポスト・ロックはそれをロックと呼ぶには無理があるほどジャズに寄っている。このムーヴメントにはジェフ・パーカーやチャド・テイラーのようなインプロヴェイザーをフックアップしてきた一面もあって、ロバート・マズレクは、アイソトープ217名義での諸作もさることながら、シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ(ないしはシカゴ・アンダーグラウンド・アンサンブルほか)においても彼のジャズを展開している。それらはしかし、彼が敬愛するオーネット・コールマンやドン・チェリーの作品とくらべるまでもなく、90年代のIDMとの親和性の高さにおいてモダンで、そして洗練されている。アヴァンギャルドというにはこざっぱりしていたし、陶酔的だが潔癖性的で、ポスト・バップというサブジャンル名もあながち的はずれに思えない。

 『トレ・カベカス・ロークラス』はマズレクが活動の拠点をシカゴからサンパウロへ移してからブラジル人、マウリシオ・タカラと結成したグループで、本作は彼らにとって3枚目のアルバムとなる。
 このグループへの興味とは、ラテン・ジャズにおけるポスト・ロック的な展開とはどんなものなのかという点に尽きるわけだが、本作はそれこそ『TNT』のラテン・ヴァージョンとでも呼べそうな、緻密さと大胆さのバランスの取れた力作となっている。彼のフリー・ジャズ志向はこれまで以上に抑制されている。奇数拍子におけるミニマリズムも効果的だ。1曲目の"Jagoda's Dream"はポスト・ロックとトロピカリズモの鮮やかな調和で、ドリーミーなアナログ電子音、雄大なトランペット、そして突然降り注ぐ陽の光のようなサンバのあたたかさ......舌を巻く演奏が聴ける。たっぷりと情熱が込められたリズミカルな"Pigeon"、ジョアン・ドナートが宇宙でフリークアウトしたような"Carambola"、アイソトープ217の最初のアルバムにおけるなかば催眠的で上質な静けさを彷彿させる"Colibri"......それから心地よいそよ風のなか平和的なトランペットの調べが流れるような"Just Lovin'"、反復するマリンバやヴィブラフォンには微笑みが注がれている。
 このアルバムにおけるサンパウロ・アンダーグラウンドは、活気溢れる変拍子の"Six Six Eight"のように、ラテン、ジャズ、ポスト・ロック/ポスト・バップという領域の境界線など気にも止めず、魅力的なメロディとリズムを創出し、自由に飛び回っている。日の照りつけるサンパウロで彼らは自分たちの音楽をぞくぞくするようなものへと押し広げた。拍手しよう。(ちなみこれ、昨年の作品です)

Francis Bebey - ele-king

 年末ギリギリのリリース......というやつです。そういえば2011年は誰も別れ際に「よいお年を」と言いませんねー。空々しい感じがするんでしょうかねー。

 こんな人がいたとは全然知りませんでしたが、マヌ・ディバンゴの次世代にあたり、カメルーンからヨーロッパに渡ったアフリカ系ギタリストのコンピレイション盤。75年から88年にかけて20枚のアルバムを残し(2000年にも1枚プラス)、前半期にあたる82年までの音源から14曲が選ばれている(ジャケットはセカンド・アルバム『ラ・コンディシオン・マスクリーヌ』と同じ)。タイトル通り、エレクトロニクスが強調されている曲は前半とエンディングに近い数曲で、中盤はいわゆるアフリカン・ポップスとして耳に馴染みのあるパターンも少なくない。そのアレンジに関しても、いわゆるニューウェイヴがワールド・ミュージックを取り入れたパターンを想起させ、タイミング的にはファン・ボーイ・スリーやトーキング・ヘッズよりも早い時期に録音されていたことがわかる。ライナーによるとフランス語圏ではかなりのヒット・メイカーだったらしく、ある日、彼が学校から帰ると居間にオルガンが置かれていたことから、一直線に音楽人生を歩み始めたという。初めて聴いたオルガンの音をベベイは「ビザーレ」に感じたと語り、多重録音をメインに、「サヴァンナ・ジョージア」などでは、なるほどアメリカにモーグ・シンセサイザーの音がもたらされた時とほとんど同じ気分が表現されている。

「時間を超えた」というチープなキャッチそのままのコンピレイションは、彼のアルバムのなかでももっとも高値をつけている『ニュー・トラック』(82)のタイトル・トラックにはじまり、カリンバやシンセサイザーの区別もつかないまま、ドラム・マシーンにストリングスを被せた"ラ・コンディシオン・マスクリーヌ"やセニョール・ココナツのデモ・テープに聴こえてしまう"ウーマ・テ"など4曲続けて76年の曲を配置する。"フルアー・トロピカーレ"ではリズム・ボックスとアフリカン・チャントの組み合わせが完全に時間の感覚を狂わせる。79年以降のエントリーは機材の扱いに慣れてきたようで、「ビザーレ」感もかなり薄まり、同時期のZEレコーズと同質のキッチュなムードが醸し出されていく(この時期のものが中古市場では最も安い)。アーサー・ベイカーやトッド・テリーを思わせる"キャッチング・アップ"からファースト・アルバムへと曲は回帰し、後半はなんとも言いがたいモンド風の曲構成へと変わっていく。どれもプリ-ハウス的というか、マルカム・マクラーレンが『ダック・ロック」で取り入れていたムバカンガにも通じるところがあり、シカゴじゃなくてもハウス・ミュージックは(フォーマット的には)生まれる可能性はあったんだなーと思う反面、アメリカという国には新しい音楽をカタチにするパワーがあるんだろうなーということにも思い当たる。

 この時期の音楽をジャンルレスに浴びるほど聴いている人でなければ面白さは半減かもしれない。そうとは言い切れないけれど、そのような条件が満たされているリスナーにはスルメのような体験になることは請け合いのアルバムです。リミックス・アルバムがつくられることも期待したい感じ。

 アフリカと西洋音楽の出会いといえば、この数年、〈クラムド・ディスク〉がコノノNo.1やスタッフ・ベンダ・ビリリといったところを発掘し続けるコンゴにデーモン・アルバーンがダブステップのプロデューサーを大挙して引きつれていったDRCミュージック(エレキングVol.4参照)が話題性でも音楽性の高さでも2011年の筆頭といえる。が、しかし、同じダブステップ周辺でも、それより2年も前からベルリンのプロデューサーたちが同じようにしてケニアを訪れ、ナイロビのクラブ系ミュージシャンたちとつくりあげたBLNRB(ベルリンナイロビ)のことは広く知られていないし、僕もライナーノーツに記された交流の記録以外は何もわかっていない。まずはタイヒマン兄弟がナイロビにDJとして呼ばれ、これにロボット・コッチの母体であるジャクージとモードセレクターが加わってナイロビでレコーディングが続けられ、ある程度、完成を見たところで、今度はナイロビのミュージシャンたちがベルリンに訪れてコンサートを行ったという経過があっさりと書かれているのみである。できあがったものを比較すると、ダブステップの本家であるDRCミュージックにはオリジナリティの点ではやはり突出しているものがあると思うものの、BLNRBは同じ現地のミュージシャンでもクラブ系のミュージシャンたちとコラボレイトしているために、ポイントがもっとはっきりしているともいえる。モードセレクターのレーベルからシングル・カットされた"モンキーフリップ"のキャッチーさや、ドイツならではの重いリズムにナイロビのフローが拮抗しようとする"ンソト・ミリオンズ"などクラブ・ミュージックとしてのオリジナリティには事欠かないし、ネセサリー・ノイズ(必要な雑音)という女性ふたりのラップ・ユニットがジャクージやモードセレクターなど組む相手を変える度に違う味を出している辺りもお見事といえる。ちなみにネセサリー・ノイズはしばらく解散状態にあったものが、このプロジェクトを通してデュオとして復活し、同じくモードセレクターも(国内盤のライナーノーツでは何も触れられていないけれど)長い停滞から脱出するきっかけを掴んだことは想像に難くない。個人的にはジャクージがプロデュースした7曲のほうが好みではあるけれど(/ele-king/review/album/002085/)。

 ケニアといえば、現在はフラッシュ・ロブとして定着を見ているロンドン型の暴動が早くも2008年に起きた国でもある。当時の報道ではルワンダと同じく部族対立で片付けられていたけれど、実際には急速な経済成長のなかで分配機能が無視され、格差社会に抗議する若者たちが年長者に襲い掛かり、かなりな死傷者を出したことがいまとなっては知られている。ベルリン勢がナイロビを訪れたのはその翌年にあたるというのは、驚くべきタイミングである。

Chart by Underground Gallery 2011.12.15 - ele-king

Shop Chart


1

TIMELINE

TIMELINE The Greystone Ballroom (UNDERGROUND RESISTANCE / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
JEFF MILLSとの奇跡の競演が話題となった初来日から7年、思えばあの時が、日本で「Hitech Jazz」が初めて演奏された瞬間でした。後のISFバンドの原型とでも言える演奏者としては最強の布陣であったオリジナルTIMELINE。発表された作品は1枚だけでしたが、所謂、「Hitech Jazz」縲怐uKnights Of Jaguar」の流れにある強く美しいものでした。その伝説のユニットが、再来日を前に、G2Gの主要若手メンバーで再構成され、新生TIMELINEとしてシングルを発表します。 G2Gのフロント・マン DeSEAN JONES (Sax)、同じくG2Gのメイン・キーボーディスト JOHN DIXONに、親分 MAD MIKEによるプロデュース作品は、一言で言うなら『ジャズ・テクノ』。「Hitech Jazz」とは違うのか?「Hitech Jazz」のコズミック感から、ストリートに降りてきた感じとでも申しましょうか、きっと今の20代前半のアーティストにはMAD MIKEの世代よりも、ジャズとテクノの融合は自然なものであって、いちいち"Hi-tech"などと言わずに、自然体でセッションしている、そんな感じの楽曲です。オススメは、抑えめのビートにフィルタリングが怪しげな空気感を作り、その中に忍び込んでくる生のサックスが印象的なA1。そして、JOHN DIXONのジャズ・キーボード・プレイが冴えるB-1。

2

MARK FLASH

MARK FLASH The King Of Light (UNDERGROUND RESISTANCE / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
まさかの台風で中止となった2011年の"メタモルフォーゼ"。そこでは、数々の伝説的なステージングが予定されていました。中でも、G2GとMOODYMANNの共演は、幻に終わりましたが、もうひとつ残念だったのは、G2Gの新曲がほとんど演奏されなかったこと。急遽、別のイベントとして渋谷"WWW"にて開催された公演では、会場や機材の都合から演奏リストの変更を余儀なくされたのです。その新曲の中から、MARK FLASHによるプロデュース作品がシングル・カットとなりました。まさにG2Gでの、バンド演奏で聴いてみたくなるようなA-1。ラテンのフレーバーを持ちながら、「Knights Of Jaguar」などのティストとは違ったストリングス・ワークが聴きごたえのあるB-1。そして、一番のオススメは、B-2。これは、まるで「Knights Of Jaguar」の続編かと思うようなドラマチックでロマンチックな展開の...あぁ、そうか...だから「KNIGHTS」の次で「THE KING」なのか?いや、とにかく、タイトルが如く「暗闇を切り裂く強い光が差し込んでくる」ような楽曲です。オススメ!

3

CANYONS

CANYONS See Blind Through (DJ HARVEY Remix) (Modular / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
ここ数年のDJ HARVEYの作品の中でも 最もフロアー・キラーなトラックではないでしょうか!? オーストラリアのエレクトロ/ディスコ系レーベル[Modular]新作は、[Dfa]や[On The Prowl]からリリースを残す、同地のデュオ CANYONSによる1枚。今回は、間もなくリリースが予定される 1stアルバム「Keep Your Dreams」からの「See Blind Through」が12インチ・カット!やはり注目せざるを得ないのは、B面に収録された DJ HARVEYリミックス!! ドープなマシンビート・グルーブを軸に、アシッディーなリフや、ダヴィーな処理が危険なヴォーカル、さらに ハメ系のヴォイス・ループ、サイレンなどのSEを交え サイケ & トリッピーに展開させていき、中盤過ぎからは、意表をつくようなブレイク・パートへと展開する、かなりトリッキーにぶっ飛んだキラーなリミックスを披露! コレ、ここ数年のDJ HARVEYのリミックスワークの中でも、一際ド肝を抜かされた、かつ、最もフロアー・キラーな仕上がりと言っても過言ではないのではないでしょうか!?本当にヤバイです

4

DREXCIYA

DREXCIYA Journey Of The Deep Sea Dweller I (Clone Classic Cuts /Cd) / »COMMENT GET MUSIC
今尚、世界中に大きな影響力を持ち、多くのフォロワーやコレクターが存 在するデトロイト・ディープ・サイドの象徴と言える伝説のエレクトロユニッ トDREXCIYAが、[UR]時代に発表した、超レア・トラックをコンパイルした究極のベスト・アルバムがリリース!1992年にJAMES STINSONとGERALD DONALDによって結成されSubmerge系列[Shock Wave]レーベルから「Deep Sea Dweller」でデビュー、その後は、[UR]を中心に、 [Somewhere In Detroit]、[Warp]、[Rephlex]といった名門レーベルから数多くの作品 をリリースし、APHEX TWINことRICHARD D.JAMESを筆頭に、世界中のDJやプロデューサーなど、特に音楽関係者から「デトロイト・ディープ・サイドの象徴」とまで、形容さ れるほどに、絶大なリスペクトを集めたエレクトロ・ユニットDREXCIYA。2002年にメンバーのJAMES STINSONが突然の心臓発作で他界し、その後は、デトロイトの伝説として語り継がれてきたDREXCIYAが、[UR]時代に残した数多くの名作群を、新たにコンパイルした究極のベスト・アルバムが今作。

5

SEAHAWKS

SEAHAWKS Invisible Sunrise (Ocean Moon / LP) / »COMMENT GET MUSIC
自身主宰[Captain Log]からの数タイトルで、一躍シーンの中心へと上り詰めた UKの新世代バレアリックデュオSEAHAWKS待望のセカンド・アルバムが完成! デビューアルバムで魅せたニュー・エイジ感溢れるアンビエンスたっぷりのシンセ・サウンド、先日リリースされたミニ・アルバムでの、スティールパンやパーカッションなどアコースティック色が強くなった、トロピカルなバレアリック・ディスコ、さらに今作では その二つのエッセンスにAOR的なムードも漂わせ、過去、現在、未来が交差させたノスタルジア・ワールドを披露。この、ありとあらゆる要素が凝縮され、それを巧く昇華される事に成功した、上質なチル・アウト・ミュージック、もはや他の追随を許さない、唯一無二なモノだといえるでしょう!ホント、素晴らしいの一言です!(e-z)

6

ARTTU FT JERRY THE CAT

ARTTU FT JERRY THE CAT Nuclear Funk (Clone Royal Oak / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
アナロジカルでLO-FIな、グルーヴィー・アフロ・チューン![Futuredub]、[Philpot]といったレーベルからリリースを重ねてきたLUMPことARTTUと、THEO PARRISHやMOODYMANNの作品への参加でお馴染みのデトロイトのパーカッショニストJERRY THE CATのコラボレーション! シカゴ・ハウスとも、ベルリン・テクノとも、またひと味違う、モノトーンなハウス・グルーヴに、JERRY THE CATによる、黒々したヴォイスとパーカッションでビルドアップするように展開するA面「Nuclear Funk」が、文句なしにオススメ!リズムの打ち込みも完璧!アシッド風味のB面「Get Up Off It」も、時折リバースする展開が懐かしく新鮮で◎

7

HARMONIOUS THELONIOUS

HARMONIOUS THELONIOUS Drums Of Steel Ep (Asafa / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
[Diskant]レーベルからの作品がDJ PETE(HARDWAX)などのプレイもあり、一部コアなファンの間でカルト・ヒットした、ANTONELLIやRHYTHM MAKER等々の名義で知られる才 人STEFAN SCHWANDERのソロ・プロジェクトHARMONIOUS THELONIOUSの新作12インチ! 怒涛のアフロ・ドラムが、4/4グルーヴと絡み合い、凄まじ渦を巻き上げる、強烈な一 枚!全曲ヤバイです...。入荷枚数が少ないので、気になる方がお早めに

8

MARVIN DASH

MARVIN DASH Workshop 14 (Workshop / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
ベルリンの"ロウ"ハウス・レーベル[Workshop]の新作はベテランMARVIN DASH! 本当にハズレの無い、素晴らしいリリースが続いているベルリンHARDWAXが送る、ロウ・ハウス・レーベル[Workshop]の新作は、LOWTECと共に、90年代から活動するベテラン、MARVIN DASHによる、アンダーグラウンド・ハウス集![Workshop]レーベルらしい、スモーキーでロウなグルーヴは、中毒性あります...

9

MAURICIO MAESTRO Feat NANA VASCONCELOS

MAURICIO MAESTRO Feat NANA VASCONCELOS Upside Down (Far Out / lp) / »COMMENT GET MUSIC
ブラジリアン・ミュージック、超優良レーベル[Far Out]新作は、同レーベルからもリリースされた JOYCEとの 76年作「Vision Of Down」という超名盤でも知られる MAURICIO MAESTROと NANA VASCONCELOSの最強コンビが、ヴォーカルに男性シンガー KAY LYRAを迎え、前述の「Vision Of Down」の続編とでもいうべき、暖かなブラジリアン・ソウル・ワールドを展開させた、最高に気持ちよすぎる1枚をドロップ!これからのブラジル音楽史において確実にその名を残し続けることになるであろう今作、ブラジリアン・ミュージックが好きな方には絶対に押さえておいてもらいたいです! 一家に1枚級の家宝モノ!

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JON GORR

JON GORR It'S No Lie (Peoples Potential Unlimited / 12inch) / »COMMENT GET MUSIC
カルト & オブスキュアーなディスコ再発で話題を呼ぶ[PPU] 第32弾。今回は、80年代に活躍した ニューイングランド系レゲエバンド THE I-TONESのキーボード奏者 JON GORRが、83年にリリースしたソロ名作「It's No Lie」。なんとも言いようのない、フュージョンテイストな鍵盤と甘い歌声が印象的な ラヴァーズ風モダン・シンセ・ディスコなオリジナル Side-Aがまず最高過ぎる今作ですが、さらにカップリングには、原曲をいい感じに壊してくれた、心地の良い脱力感が◎な 極上ダブミックスを披露。毎度のことながら若干値段は高めではあるのですが、コレは絶対にその価値あります!! 原盤は絶対に出てくることないと思いますので、この機会に必ずゲットしておいて下さい。オススメ!!

Raleigh Moncrief - ele-king

 アニマル・コレクティヴ世代のIDMとして、これ以上の標本はないかもしれない。パンダ・ベアはもちろんのこと、アニコレのサイケデリアからポップでトロピカルな要素を切り出して展開させたMGMTやドードース、同時期のブルックリンを賑わしたダーティ・プロジェクターズやダン・ディーコンなどの片鱗が、この作品にはずらりと並んでいる。リリース元の〈アンチコン〉周辺からはデイデラスやバスの面影もあり、あとはマスロック的なアプローチが特徴的だろうか。この作品のコンポーザー、ローリー・モンクリーフは、ヘラのザック・ヒルと懇意で長年のコラボレーターである他、マーニー・スターンのツアー・ギタリストも務めていたりと実際にエクスペリメンタルなロック人脈に連なる人で、ダーティ・プロジェクターズ『ビッテ・オルカ』の共同プロデューサーとしても名が知られている。最近ではギャングリアンズの新譜にもプロデューサーとして参加しているから、現USのインディ・ミュージック・シーンのある一面を確実に体現している存在だと言えるだろう。

 アルバムはまずパンダ・ベアのソロから〈ウッジスト〉へとまたがる大浴場的な音響を持った"ジ・エアー"からはじまる。アコースティック・ギターが豊かなリヴァーブとともに響き、多重録音によって彼自身のヴォーカルがダーティ・プロジェクターズ風の複雑なコーラスを生み出している。ビートも多層的に展開し、このあたりはデイデラスなどを思わせる。"ア・デイ・トゥ・ダイ"にも顕著だが、こうしてばらばらに枝葉を伸ばし始めた各パートはアコギをメインとしたユニゾンのリフで突如まとめられるパターンが多い。こうしたときのアコギはとてもパーカッシヴに機能していて、そのへんはドードースと比較できるだろうか。"キャスト・アウト・フォー・デイズ"の冒頭などはヴォーカリゼーション含めMGMTを思い出さずにはいられない。お聴きの方によってはまだまだこうした例が挙げられるだろう。とにかく「歩く00'Sインディ図鑑」である。
 しかし、彼のアイデンティティはやはりギターにある。非常に多くの音色やノイズが用いられているが、ギターが主軸となっていることがよくわかる。そして声にはそれに張り合うだけの強度こそないが、ハーモニーへ向けられた意志がそれを補っている。ギターとコーラス。アニコレ以降のインディ・ロックが、彼の持てる方法の中でその二つに分光されて消化されているのだなといった印象を受ける。両者ともたっぷりとして催眠的なサイケデリアを生んでいて、アニマル・コレクティヴのなかにチルウェイヴの種が宿っていたことを、というかアニマル・コレクティヴのひらいた地平を耕地し拡大したのがチルウェイヴであったことを図表のように示し証明してくれるアルバムだ。

 ただ、作品レヴェエルで考えたときには、うまく整理されているとはいいにくい、なかなか微妙な作品だとも言える。アイディアも方法もはっきりとしているのだが、それを統べるものがいまひとつ見えてこないと言えばよいだろうか。彼自身、これを作り上げたことでどのような喜びを得たのか、なぜソロ・アルバムを制作したいと思ったのか、そうした部分が不思議と空っぽな作品だと感じた。ここを満たす動機があれば、方法は命となり、必ず存在感のあるアルバムになるだろう。

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