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New Age Steppers

New Age Steppers

Love Forever

ON-U Sounds/ビート

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野田 努   Feb 03,2012 UP

 わりと最近、リアーナの『トーク・ザット・トーク』の1曲目に収録された"ユー・ダ・ワン"のPVが話題になった。映像のなかでリアーナが自慰行為をしているからである。例によって賛否両論を呼んだ。セクシャンな表現をそれなりに理解している人からもマドンナには到底及ばないようなことをするなという厳しい声があがった。ビヨンセと違ってバルバトス島出身のこの女性は、何かと非難の対象になる。リアーナは、アリ・アップがもっとも支持していたR&Bシンガーのひとりである。決して行儀が良いとは言えないけど、私がやりたかったことすべてをやっているとまでアリアップは言った。リアーナやR・ケリーのような大衆的な過剰さを屈託なく楽しみ、愛せるところがアリ・アップらしい。ポスト・パンクにおいてザ・スリッツが抜きん出ていたところも、男女同権主義や多文化主義というよりも、結局のところアンチ・エリートなその包容力、狭量な世間に反する寛容さにあったと言える。彼女は、ロンドンのパンク・ロックにおける男女関係が、フリーセックスでもじめじめした手に負えないものではなく、こざっぱりとした友情関係得にあったことを主張するひとりでもある。

 2007年10月、ザ・スリッツとして来日したとき、アリ・アップはエイドリアン・シャーウッドといっしょにニュー・エイジ・ステッパーズの新作にも着手していることを話してくれたが、周知の通り、2010年10月、彼女は乳ガンによって他界した。ゆえに本作『ラヴ・フォーエヴァー』はプロジェクトにとって28年ぶりのピカピカの新作であり、そして最後の作品でもある。なんにせよ、僕のようなファンにとっては、今月もし1枚だけ選ぶとしたらこれしかない、そう言い切れるほどのアルバムである。
 いくぶん感傷的なタイトルの付けられた本作は、スキップ・マクドナルドやスタイル・スコット(ともにダブ・シンジケート)、ゲットー・プリースト、ニック・コプロウといったシャーウッド率いる〈ON-U〉の仲間たちともに、ダンスホールの多様なリズムからドラムンベースのアーメン・ビート、ヒップホップ、そしてもちろんレゲエと......まあ、アリ・アップらしいと言えばらしいハイブリッドな音楽を展開しているわけだが、予想以上にいろいろやっている。とくに驚いたのはアダムスキーの参加で(彼はレイヴ時代にチャートを賑わせたポップスターで、落ちぶれてからマーク・スチュワートのバックとして来日もしている)、1曲、テクノまでやっている。

 ニュー・エイジ・ステッパーズは最初のアルバムこそダブの実験を――レゲエ純粋主義者が苛つくほど――試みているが、それ以降のセカンドとサードに関して言えばルーツ・レゲエのカヴァー集となっている。当時は僕のように、ジュニア・バイルス、ビム・シャーマン、ホレス・アンディなどといった名前を、それらの作品を介して知ったリスナーは少なくない。
 とはいえ、『ラヴ・フォーエヴァー』は、ファースト・アルバムに立ち返ったような作品である。復帰後のソロ・アルバム『ドレッド・モア・ダン・ドレッド』(2005)、ザ・スリッツの『トラップド・アニマル』(2009)、オーストラリアのダブ・バンド、ダブブレスタンダートとの『リターン・フロム・ダブ・プラネット』(2009)、ヴィック・ルジェーロとの『レア・シングルズ』(2011)などなど、この5年のいずれの作品よりも『ラヴ・フォーエヴァー』には予定調和を揺るがすところがある。新しいことをやってやろうという前向きさがあるし、ポール・クックの娘(復活後のザ・スリッツのメンバーでもあった)のソロ・アルバムが伝統的なレゲエを守っている作品だったのに対して、こちらはレゲエを拡張する作品である。シャーウッドもここぞとばかりにフリーキーなミキシングを楽しんでいる。結局死ぬまでキングストンのサウドシステム文化を深く愛したアリ・アップだが、しかしその音楽がレゲエの型(コピー)に終始することはなかったのである。

 ちなみに"ラヴ・フォーエヴァー"は、ルーツ・シンガーの故ビム・シャーマンの1970年代の曲。ニュー・エイジ・ステッパーズは他にも数曲シャーマンのカヴァーをしているが、この曲はファースト・アルバムのB面の3曲目に収録されている。そのときドラムを叩いたのはブルース・スミス(ポップ・グループ/ザ・スリッツ~リップ・リグ&パニック、PIL、そしてビョークの最初のソロ)、ベースがジョージ・オバン(アズワドほか)、ピアノがスティーヴ・バレスフォード(ザ・49アメリカンズ~フライング・リザーズほか)。その演奏は1980年10月に録音されている。

野田 努