「S」と一致するもの

interview with Smerz - ele-king

DJラシャドの音楽がわたしたちのスタート地点だったと思う。いまではほかのいろいろな音楽にインスパイアされているけれどね。(アンリエット)

 スメーツが登場したとき、多くのリスナーが惹きつけられたのは彼女たちの音楽のクールな(冷たい)感触だったのではないだろうか。重たく金属的なビート、素っ気のない電子音の連なり、体温の感じられない醒めた歌。「Okay」(2017年)と「Have Fun」(2018年)の2枚のEPは当時、インダストリアル・リヴァイヴァルとオルタナティヴR&Bの北欧からの応答といちおうは位置づけられたが、その冷ややかさはどこかミステリアスなままで、スカンディナヴィアの冬の暗がりから微笑んでいるようだった。
 ノルウェーの首都オスロで育ち、同じ高校に通っていたにも関わらずデンマークはコペンハーゲンの音楽学校で親しくなったというアンリエット・モッツフェルトとカタリーナ・モッツフェルトのふたりは、ジューク/フットワークへの共通の関心などからエレクトロニック・ミュージックに接近。両者ともプロデューサーとシンガーを兼ね、ふたりの緊密な関係性をあくまで軸としてDIYにトラックを制作していく。〈XL〉から「Have Fun」をリリースする頃には、エリカ・ド・カシエールとともにコペンハーゲンの新しいR&Bとして注目されることとなった。

 だから、期待の新星としては間髪入れずにフル・アルバムをリリースしそうなものだが、ふたりは慣習に囚われずにしばしの沈黙に突入する。3年ほどのブランクを経ていよいよ放たれたデビュー作『Believer』は、なるほどEP群からかなりの飛距離を感じさせるものとなった。
 ダークなトーンのエレクトロニックR&Bという路線は踏襲しながら、オペラやクラシック、コンテンポラリー・ミュージック的な管弦楽の要素を大胆に、しかし断片的に導入。さらにノルウェーのトラッド・フォークの引用も加わり、異形のマシーン・ミュージックが出現している。“Rain” の気だるげでミニマルなR&Bにはエキゾチックな室内楽がまとわりつき、歌を中心に置いたシンプルなピアノ・バラッド “Sonette” にもひどくアブストラクトなシンセが響いてくる。聖と俗とがエレクトロニック・ミュージックのもとで入り乱れるのはビョークの新世代的な展開とも言えるかもしれないが、しかし、スメーツにはビョークのような情熱的なエモーションはない。
貪欲な実験が立て続けに繰り広げられるアルバムのなかで、思いがけずストレートにポップな “Flashing” などを聴くとむしろ煙に巻かれたような気分になるが、サイバーな響きと北欧フォークの土着的な旋律が同座するこの曲からはアヴァンとポップの微妙な領域を進もうとする意思が感じられる。ジャンル・ミックスが当たり前になった時代に、ほかにはない配合で音楽を混ぜ合わせて新しいものを生み出そうとすること。それも、どこまでもクールに。
 すべてのクリエイションを自分たちで掌握する女性ふたりのデュオというところも現代的だし、ラース・フォン・トリアーの諸作を思わせるミュージック・ヴィデオなどヴィジュアル展開を見るとファッショナブルな存在になっていくだろうことも予感させるが、何よりもそのサウンドにおいて、『Believer』はポップ・ミュージックのこの先の可能性を静かに照らしている。

ポップのメロディには、人びとに何かを伝えるというコミュニケーション能力が高く備わっていると思う。ポップ・ミュージックはストーリーを直接的に伝えるのがとても上手。(カタリーナ)

日本では現状ノルウェー出身のデュオと紹介されることが多いのですが、現在もデンマークのコペンハーゲンを拠点にしているのでしょうか? 自分たちの意識としては、「コペンハーゲンのデュオ」というアイデンティティのほうが強いですか?

アンリエット(以下H):わたしたちはいまそれぞれ違う都市にいるのね。カタリーナはオスロにいて、わたしはコペンハーゲンにいる。どちらの都市も違った意味でわたしたちの活動にとって大切だと思う。

初めてのインタヴューですので、基本的なところから少し聞かせてください。初期のバイオを見ると、DJラシャドジェシー・ランザに影響を受けたとありますが、結成時にふたりを強く結びつけた共通のアーティストや作品はどういったものでしょうか? 音楽以外でもだいじょうぶです。

カタリーナ(以下C):かなり昔の話になるね。たくさんあるから難しいけど、デンマークの音楽をふたりでよく聴いていた。でもやっぱりDJラシャドの音楽が当時のわたしたちを象徴していると思う。わたしたちにとってすごく新しいものに感じられたし、彼の平然とした態度もカッコ良かったし、複雑なリズムで遊ぶ感じも楽しくて好きだった。

H:そうね、DJラシャドの音楽がわたしたちのスタート地点だったと思う。いまではほかのいろいろな音楽にインスパイアされているけれどね。

初期のライヴの映像を見ると、おふたりとも機材を触り、歌っていますが、楽曲制作においておふたりの役割分担のようなものはありますか?

C:楽曲制作のときの役割分担はとくにないよね。ライヴのときはヴォーカルのパフォーマンスがメインになるから、機材はバックトラックをかけるくらいしか使っていないの。今回のアルバムでは過去に作ったトラックを生演奏してみた。アンリエットはヴァイオリンを弾いて、わたしはピアノを弾いている。でもライヴのときは、できあがったバックトラックを披露するという形で機材を使っているね。

H:楽曲制作のときはまた別のプロセスで、わたしが何かひとつのことをやって、カタリーナがまた別のことをやったりという感じで進めている。そうすることによって、おたがいを補完するような音楽にしていく。だからおたがいからフィードバックを受け合っているというプロセスなのね。たとえば、カタリーナがビートを作っていたら、わたしはそこからインスピレーションを得て、何か次のことをしようと思う。それをお互いの間で繰り返してやっている感じね。

EP「Okay」や「Have Fun」の時点でスメーツの個性はかなりできあがっていたと思っていたので、『Believer』でのサウンドの拡張には驚きました。デビュー・アルバムとしては時間をかけたほうだと思うのですが、それは音楽的な関心の幅がこの3年で一気に広がったからですか?

C:そうだと思う。新しい音楽にずっとインスパイアされ続けていると、自分の作品が完成したとなかなか思えなくて。新しい発見がつねにあったり、何か新しいことをやりたいという衝動につねに駆られていると、アルバムの完成というものが見えなくなってしまう。でもそういうことをやりたいという大切な時期があったから、今回のアルバムという形になった。

H:新しい音楽を作りたいという時期がしばらくあったのよね。

C:でもアルバム制作の時期のなかにも様々な段階があったね。ひとつの時期というわけではなかった。

通訳:制作中にも複数の段階があったというわけですね。

C:その通り。

ポップな音楽を作るのはもっとも難しいことのひとつ。だからその要素を扱って作業するのはとても楽しい。(アンリエット)

とくにEPにおいてコンテンポラリーR&Bからの影響が強いように思います。スメーツはトラックだけでもじゅうぶんに個性的で実験的ですが、ポップな歌の要素を捨てることもないですよね。スメーツにとって歌のポップさはなぜ重要なのでしょうか?

C:ポップのメロディには、人びとに何かを伝えるというコミュニケーション能力が高く備わっていると思う。音楽の聴き方はひとによって違うから一概には言えないけれど、個人的には、ポップ・ミュージックはストーリーを直接的に伝えるのがとても上手だと思っている。

H:それにポップな音楽を作るのはもっとも難しいことのひとつだとわたしは思っている。だからその要素を扱って作業するのはとても楽しい。いろいろな工夫をしてポップな音楽に仕上げていくのは楽しいよね。

ただ、歌の入っている曲においても、R&Bのヒット曲のようにエモーショナルに歌い上げないですし、スメーツにはどこか冷たさや醒めた感覚がつねにあるように思えます。この美意識はどこから来るものなのでしょうか?

C:それは意図的なものではないよ。それはわたしたちの作業の仕方から来るものなのかもしれないし、わたしたちの能力や技術によるものなのかもしれない。

H:わたしたちがインスパイアされた、ソースとなった音楽がわたしたちにそういう影響を与えて、その結果としてわたしたちの音楽にそういう雰囲気が含まれているのかもしれない。でもたしかに意図したものではないね。

C:それはパソコンで作業しているからなのかとたまに思う。パソコンだと、ピアノやギターを弾いて作曲するときとは違って、(画面を)縦に見ながら作業することが多いでしょ。でもわたしたちはその作業方法を少し変えていこうとしていて、もう少し横に進めていく感じの作業にしたいと思っている。パソコンで作業していると、最初から細かい要素をいろいろと詰めこみがちになってしまう。サウンドが最初から大切なものとして捉えられてしまうから。短い枠のなかで、取り扱う要素が多くなりがちだと思う。

リズムは初期からジューク/フットワークの影響がありますよね。あなたたちから見て、フットワークの面白さはどういったところにありますか?

C:ヒップホップと共通する要素があって、リズムがあって、とても直感的なところ。ひとを引きつける要素があるところ。フットワークは作るのが難しい部分もあるけれど、その瞬間を楽しめるし、ミックスをするのも楽しい。いいエネルギーがある。

H:難しい部分があるから、すべてを見透かすことができないというか、聴いていて毎回新しい発見があると思う。

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パソコンで作業していると、最初から細かい要素をいろいろと詰めこみがちになってしまう。サウンドが最初から大切なものとして捉えられてしまうから。短い枠のなかで、取り扱う要素が多くなりがち。(カタリーナ)

『Believer』ではオペラやコンテンポラリー・ミュージックの要素が強く入っていることが初期のEPとの大きな違いですが、これはアンリエットさんが作曲を学んでいることが関係しているのでしょうか。そうした要素を、スメーツのエレクトロニック・ミュージックとミックスしようという発想は自然に生まれたものですか?

H:いえ、その発想は、わたしが学校で学んだこととは直接的な関係はないと思う。むしろスメーツとして、いままでよりも幅広いことをやってみようというチャレンジから来ているんじゃないかな。

C:いつだったか忘れてしまったけれど、わたしとアンリエットがとても美しい音楽を聴いていて、それをとても楽しんでいたのね。そして、「このスタイルをわたしたちなりに解釈して音楽に反映させてみよう」ということになった。それがアルバムの曲になるなんてそのときは思っていなかったし、とくに何かを意図したわけではなかったんだけど、この宇宙でわたしたちが何を作れるかやってみよう、という気持ちで制作していたから。

H:でも「これからは新しいことをやろう!」というわかりやすいシフトがあったわけでもなくて。

C:楽しそうだからやってみようか、くらいの気持ちだったよね。

H:昔からそういうアプローチでやってきたんだけど、もう少し幅を広げてみようと今回は思ったんだ。

『Believer』を制作しているこの3年ほどで、おふたりが共通して強く刺激を受けたアーティストや作品は具体的にありますか?

C&H:(即答)バッハ!

C:インスピレーションとして挙げるにはリスクの高い答えかもしれないけど(笑)

通訳:バッハの音楽はタイムレスですよね、複雑なものもあるし。

C:そう! 簡単な音楽ではないけれど、バッハには強いインスピレーションを受けた。それ以外には、コペンハーゲンの音楽シーンにいる友人たちにも刺激を受けたよね。コペンハーゲンの音楽シーンはスタイルごとに細分化されていないというか、少なくともシーン内部にいる者としてはそう感じる。だからスタイルが「分断されていない」という概念に刺激を受けたと思う。

また、北欧の伝統的な文化の探究がヴィジュアル面においてもサウンド面においても『Believer』にはありますよね。これは今回、意識的にアクセスしたものなのでしょうか?

C:サウンド面は意識的なものではないね。アルバムでも、音楽のどの部分が北欧的なのかをピンポイントするのは説明しづらいと思う。でもヴィジュアル面に関しては、わたしたちが去年のロックダウンの最中に主に北欧にいて、ヴィジュアルを制作していたから、そういう選択肢を取るのが自然だった。

コペンハーゲンの音楽シーンはスタイルごとに細分化されていないというか、少なくともシーン内部にいる者としてはそう感じる。だからスタイルが「分断されていない」という概念に刺激を受けたと思う。(カタリーナ)

“I don’t talk about that much” のミュージック・ヴィデオで見られるのは、ノルウェーのハリングダンスでしょうか? 日本ではあまり馴染みがないものなのですが、どういったところにその魅力がありますか?

C:社交ダンスの一種で、どの国にもそういう踊りがあると思う。人びとが集って踊ることによってコミュニケーションを取っている。みんながその踊りという共通言語を知っているから。それってすごく美しいことだと思うのね。ノルウェーにもハリングダンスがまだあれば良いのにと思う。この要素は、パーティにもあれば良いのにと思うものだから。話さなくても、みんなといっしょにいるという一体感があって楽しめる方法。そしてみんながルールを知っている。ハリングダンスもそういう踊りで、色々なパターンに分かれているんだけど、「スプリンガード(訳注:ハリングダンスのパターンのひとつだと思います)をやりましょう!」となれば、みんなどういう動きかを知っていて、どのように踊れば良いのかを知っている。みんなといっしょになってコミュニケーションできる良い方法だと思う。ハリングダンスを通じて、自分のパーソナルな部分も表現することもできるし。そういう魅力があるね。

通訳:ではノルウェーにはハリングダンスは現在はないということですか? 昔の伝統的な踊りということでしょうか?

C:そう、昔の伝統的な踊りね。

ベンジャミン・バロンさんが監督した『Believer』の一連のヴィジュアル・イメージには、北欧の土着的な文化の要素が見られます。本作のヴィジュアル面においてのテーマはどういったものでしたか? また、それをどのように作り上げていったのでしょうか?

C:トレイラーのヴィジュアルを作ったときは、まずアルバムを聴き返して、サウンドには演劇っぽい、ドラマっぽい感じがあると思ったのね。アルバムの曲に登場する様々なシーンが感じられるトレイラーを作ろうと思った。それはより大きな物語から抜粋されたシーンなんだけどね。大きな物語というのは、スメーツの過去3年間の人生。アルバムはその一部。トレイラーはそれをさらに縮小したものということになるね。トレイラーのドラマティックな要素を活用したかった。トレイラーって、それぞれの物語の肝心な部分にすぐ行けて、何の結末も見えないじゃない? そういうのが楽しいと思ったんだ。設定に関しては、時代背景や場所がどこか分からないように、様々な要素を織り交ぜたね。

EP「Have Fun」のジャケットのイメージも強力でしたよね。シスターフッドと言うにはダークなムードもあったように思いますが、スメーツの表現と現代のフェミニズムの間にはどのような関係がありますか?

C:関係をピンポイントで説明するのは難しいけど、現代の時代において女性であることについての物語を語ることによって、フェミニズムの流れの一部という意味になると思う。わたしたちの個人的な物語を共有して、ほかのひとが共感してくれることが大切なのかもしれない。

H:いろいろな物語を共有していくことによって、人びとの視野が少し広くなれば良いと思う。

夢や期待が現実と合致するときもあればしないときもあるという考えがベースになっている。「Believer」というのは、何かが起こるのを信じていたり、信じていなかったりしているひとなんだけど、そういう夢や期待が実現するかしないかという状態。(カタリーナ)

タイトル・トラック “Believer” は歌詞を見るとラヴ・ソングと言えると思いますが、「Believer」という言葉は現代社会を見るとどこか暗喩的な響きがあるように思えます。この言葉をアルバム・タイトルにした理由は何でしょうか?

C:夢や期待というものが、現実と合致するときもあれば合致しないときもあるという考えがベースになっている。「Believer」というのは、何かが起こるのを信じていたり、信じていなかったりしているひとなんだけど、そういう夢や期待が実現するかしないかという状態を指している。その気持ちを総括したくて『Believer』というタイトルをつけた。

“Hester” や “I don’t talk about that much” には強力にレイヴ的なサウンドが入っていますが、レイヴ・カルチャーに思い入れはありますか?

H:レイヴ・カルチャーに強い思い入れはないけれど、コペンハーゲンには良いクラブ・シーンやテクノ・シーンがあるからそこからインスピレーションは得ている。

C:でも、昔のレイヴ音楽というか、多幸感がある感じの音楽には影響を受けているよね。

H:ユーロビートとかね。

C:そうそう、ああいう音楽には多幸感が強く現れていて、そういう要素をわたしたちの音楽にも取り入れたかった。そのような音楽が生み出す感覚というものに興味があるから。

クレジットを見るとペダー・マネルフェルト(Peder Mannerfelt)がいくつかのトラックで参加していますが、彼が本作で果たした役割はどういったものでしたか?

C:彼はわたしたちの音楽にとても良いフィードバックをくれた。完成したアルバムを通しで聴くというセッションをしたんだけど、最初にいっしょに聴いてもらったひとがペダーだった。彼の意見を聞けたのも良かったし、わたしたちも第三者といっしょに聴いたことによって、少し離れたスタンスからアルバムを聴くことができたと思う。そのときが、アルバム制作の過程におけるマイルストーンだった。彼といっしょに音楽を聴いたときに、わたしたちはアルバムを作っていたんだと初めて気づいたね。それまでは、ただいろいろなトラックを作っているという感覚だったから。ストックホルムにある彼のスタジオにはシンセサイザーがたくさんあって、“Lux” というトラックで彼はシンセサイザーを弾いてくれたり、ほかでもミキシングを手伝ってくれた。でも彼にいちばん感謝しているのは彼からのフィードバックね。

H:彼はとても良いひとで、良い友人という感じなのね。彼は外の人間だから、それが良かった。彼と過ごした1週間はとても素敵な時間だった。

現在、世界中がきわめて特殊な状況下に置かれているなかでのリリースですが、あなたたちにとって『Believer』はどのようなシチュエーションでリスナーに聴いてほしい作品ですか?

C:それはリスナーの自由だと思う。でも数多くのシチュエーションで聴いてもらえたら嬉しいね。

H:わたしも同感。わたしは洗い物をしているときに音楽を聴くのが大好きなんだ。

C:アルバムを通しで聴くように作ったんだけど、それも絶対そうしなくちゃいけないというわけでもない。でも一応、アルバムとしてまとめた作品ね。

『Believer』はスメーツが現代のエッジーなポップ・ミュージックとシンクロしながら、しかしどれとも異なる個性を見せつけたアルバムだと感じました。あなたたちにとっては、『Believer』でもっとも達成できたと思えるのはどういったことでしょうか?

C:アルバムがリリースされる前に、何を達成できたのかを答えるのは難しいけれど、わたしたちがアルバムを作ってきた過程は本当に素敵な時間で貴重だった。

H:わたしもそう思う。

C:それに、音楽を作っている過程で素敵な時間をたくさん過ごしてきたら、そこから何か良いものが生まれるかもしれないと思うのね。わたしたちがいっしょに制作をして、つねに会話をして、その会話の内容を音楽に反映できたことに満足感を得ている。それに制作中は、つねに新しいものを作りたいという欲求があって、その感覚があったこと自体に達成感を抱いているね。

H:それから、音楽を制作しているときにふたりで遊びながら演奏しているときも達成感があったね(笑)

通訳:とても楽しんで制作ができたようで素晴らしいですね!

H:次のアルバムも作るよ!

Brother Nebula - ele-king

 昨年末リリースですがじわりじわりと聴いているうちに紹介したくなりまして。ということで現在はロンドン・ベースのレーベル〈Legwork〉からの、ブラザー・ネブラのアルバム『The Physical World』。サウンド的にはザ・ブラック・ドッグ・プロダクション~バリル名義あたりのテクノをさらに今様に、そしてDJトラック的に野太く進化させたそんなサウンドで、軽快なブレイクビーツとデトロイト・テクノ的な叙情的なシンセのラインが、思わずその手の音が好きな人にはたまらない音となっています。その手のサウンドのライヴァルと歩調を合わせつつ、リスニング・アルバムとしても、またDJトラックとしても十分に効果を発揮してくれそうな、そんなシンプルな力強さとグルーヴも兼ね備えたアルバムです。

 これまでわりとミステリアスなアーティストで、〈Legwork〉からのその他のリリースでは、もうすこしエレクトロ寄り、音でいうとドレクシアの故ジェームズによるジ・アザー・ピープル・プレイス名義で展開したコズミックかつメランコリックなエレクトロ・トラックをシングル「A Brief History of Lasers」で展開していたり(アルバムの音楽性とは地続きながら別のアプローチなのでこちらもオススメしたい)。また同レーベルからは、〈Future Terror〉での来日などで日本では知られる、アメリカ西海岸、サンフランシスコのウェアハウス・テクノ・シーンの重鎮、DJソーラーと S.I.S. 名義で作品を出していたり(コチラはちょいとイタロが入ったエレクトロ・ディスコで、本作に通じるブレイクビーツ・ハウスなリミックスも披露)、と、わりと謎の存在でした。ところがどうやら最近しれっと Discogs にばらされた情報が本当であれば、その正体はレーベルを主宰するサウンド・エンジニアでもあるベテラン、Lance DeSardi の模様です。もともとはテキサス、ダラスの出身でこれまでにNYの〈Coco Machete〉や〈Chez Music〉といったハウス・レーベルで本名名義や Land Shark で作品をリリース(Land Shark 名義のアルバムは〈Coco Machete〉から、西海岸のハウスの牙城〈OM〉からもライセンス)。

 またキャリアに関しても、2000年代前後にには西海岸のディープ、ハウス・レーベル、例えば〈Seasons〉の作品にクレジットされるなどアーティストとして、さらにはエンジニアとしても長いキャリアがあり、大物アーティストのリミックスなど含めて、さまざまな作品を手掛けていることがそのホームページでわかります。現在はアメリカからハックニーへ移住。
 こうしたキャリアを考えればソーラーとのコラボや、レーベル〈Legwork〉で、ダラス出身で Convextion、E.R.P. 名義などでディープなコズミック・テクノ~エレクトロを奏でるジェラルド・ハンソンの作品をリリースしていることなどもうなづけるといったところでしょうか。

 さてくだんの『The Physical World』は、冒頭で書いたようにそのサウンドのキモはやはりブレイクビーツを援用したリズム・ワークで、表題曲ではイントロでビッグビート?と言ってしまいそうなリズムを鳴らしつつ、グッと引き込まれるメランコリックなシンセのメロディを展開していくあたりで一気にアルバムのとりこに。やはりブレイクビーツ上でデトロイティッシュなテクノを展開した “A Question”、前述のようにブラック・ドッグのバリル名義の作品を豊富とさせる “A Snake In Paradise” “Living WIth It”、ブロークンビーツ的な “The Big If” やジョーイ・ベルトラムの初期を彷彿とさせるアルバムのなかではヘビーな “Clairvoyant” も良きアクセントになっています。

 往年のテクノ・ファン──アズ・ワン、グローバル・コミュニケーション、ブラック・ドッグなどのサウンドが好きな方には現代のサウンドの入り口に、そしてこのアルバムをお好きな方はぜひとも前述のような過去の名作も聴いてみると、なんとも心をわしづかみにされるのではないでしょうか。そんな時代をつなぐ架け橋のようなアルバムでもあったりすると思います。
 とはいえ、もちろんそのサウンドは単なるリヴァイヴァルではなく、現在のアップデートがなされた音であり、その音質や空間表現などに関しても、過去のものとはかなり別の領域でのサウンドのジョイがあります。これは1995年頃に、現在ELMと呼ばれているテクノ・ミュージックの、ある可能性郡がトリップホップ~ジャングル、ハード・ミニマル、エレクトロニカへと別れて霧散してしまわず、ダンス・ミュージックとしての強度、つまるところシンプルなグルーヴ感を失わずに、どこかで生き続けて進化したら……といったことを想像してしまうかのような作品でもあったりします。

Satomimagae - ele-king

 サトミマガエ、憶えてらっしゃるだろうか? かつて畠山地平のレーベル〈White Paddy Mountain〉から作品を発表していた、あまりに独自の世界観を表現するフォークシンガーだ。安易な喩えで恐縮だが、あえてわかりやすく言えば、Grouperと比肩されうるサウンドの持ち主である。孤高の……という言葉も現代は安っぽく使われているが、彼女には相応しいのではないだろうか。
 彼女の新しいアルバムが〈RVNG Intl.〉からリリースされることになった。4月23日、タイトルは『Hanazono』。先行シングル曲「Numa」はリリースされたばかり。忘れがたい音楽が待っています。

Satomimagae – Numa [Video]

Satomimagae
Hanazono

PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-151
CD / Digital
2021.04.23
2,000yen + 税

Track List:
01. Hebisan
02. Manuke
03. Suiheisen
04. Tsuchi
05. Houkou
06. Uzu
07. Kaze
08. Numa
09. Ashi
10. Ondo
11. Kouji
12. Uchu
13. Kunugi (Bonus Track)

※日本独自CD化
※ボーナス・トラック1曲収録
※ヴァイナルはUSはRVNG Intl.、オランダはGuruguru Brainからリリース

Pre-order: https://orcd.co/r6qoo37

CAN - ele-king

 昨年、日本ではほぼ全カタログのリイシューを展開し、大きな反響を得たドイツの伝説、CAN。ele-kingからも別冊を刊行しました。
 いまだにその影響力があり、ロック史においてもヴェルヴェット・アンダーグラウンドやクラフトワークらと並んで重要なバンドのひとつに挙げられるであろうこのバンドは、自分たちのスタジオで数多くのセッションを記録していたことでも知られており、その断片はのちのち発表されたりもしているのだが、ライヴ音源に関しては、1997年に公式に発売された『Music (Live 1971 - 1977) 』のみ。しかし、これはまず音質に問題があり、しかもひと晩のライヴの記録ではなく、残っている使えそうな曲単位でのライヴ音源集であり、映像作品からの抜粋も混じっている。
 そんなわけで、CANの、当時は3時間以上ぶっ通しで演奏されたというライヴ演奏の醍醐味を記録したものは過去になかった。なんどかライヴ録音を試みたことはあったのだが、録音は失敗に終わったという。しかしながら、そうした失敗とは別に、劣化したテープによるローファイ録音のブツはいくつか残っていた。それらを現代のデジタル・レストレーション技術によって最高の音質にまで高めることができれば、全盛期のバンドのライヴ演奏を楽しむことができるだろう。
 〈Spoon〉と〈Mute〉の合同プロジェクト『CAN:ライヴ・シリーズ』では、イルミン・シュミット監修のもと、CANのライヴ音源を何回かに分けて発表する。まずは1975年のシュトゥットガルトでのライヴから。ダモ鈴木脱退後の、バンドは4人になったばかりの、『スーン・オーヴァー・ババルーマ』から『ランデッド』のころの演奏。だがヒット曲の再現ではない。当時のライヴでしか聴けなかった、長きにわたって歴史に埋もれていたCANのスケールの大きな演奏をいま堪能しよう。

「Stuttgart 75 Eins」ダイジェスト音源


以下、レーベルの資料から

 CAN は1968年にケルンのアンダーグラウンド・シーンに初めて登場し、初期の素材はほとんど残されていないかわりに、ファン・ベースが拡大した1972年以降は、ヨーロッパ(特にドイツ、フランス、UK)で精力的にツアーを行い、伝説が広がるにつれ、多くのブートレッガーが集まってきたのだ。『CAN:ライヴ・シリーズ』は、それらの音源の中から最高のものを厳選し、イルミン・シュミットとルネ・ティナ―による監修で、21世紀の技術を駆使して、重要な歴史的記録を最高の品質でお届けする。小説家であり、よく知られたCANファンであるアラン・ワーナーは言う──「彼らのライヴ・パフォーマンスは、壮大な物語が語られているかのようだ──異なる章からなり、気分や天候、季節、異国情緒あふれる風景など、変化に富んだ小説のような」

CAN
ライヴ・イン・シュトゥットガルト 1975 (LIVE IN STUTTGART 1975)

2021年5月28日(金) / 2枚組CD
TRCP-291〜293 / JAN: 4571260591011
2,700円(税抜)

-Tracklist-
CD-1
1. Stuttgart 75 Eins
2. Stuttgart 75 Zwei
3. Stuttgart 75 Drei
CD-2
1. Stuttgart 75 Vier
2. Stuttgart 75 Fünf

[Pre-Order]
https://smarturl.it/CAN_Live


Fishmans - ele-king

 今年でデビュー30周年のフィッシュマンズ、そのドキュメンタリー映画がこの夏ついに公開される。これは2019年に実施したクラウドファンディングによって1800万円以上の支援が集まり実現したもの。制作に2年以上を費やし、『映画:フィッシュマンズ』は完成した。
 バンド結成前夜から佐藤伸治の死、そして現在までを時系列順に追って描くこの映画は、茂木欣一がメインの語り部となって物語は進行し、そのときどきの映像が流れ、その合間に入る関係者の証言によって構成される。とくに100本以上のVHSなどの素材をデジタイズした本邦初の映像はファンにとっては見逃せない。180分という長編だが、良い場面がいくつもあり、それがまったく長く感じないほど内容が濃いという。夏が待ち遠しい!

手嶋悠貴監督コメント:
茂木欣一さんと約束した言葉、「これが最初で最後。嘘偽りなく、フィッシュマンズのすべてを話す」。フィッシュマンズのサウンドを作り上げていった仲間たち、音楽に人生を捧げた佐藤伸治さんの生き様が、三時間近いこの映画の中に詰まっています。彼らの素晴らしい音楽が、沢山の人々の心に響いて欲しい。それがこの映画の想いです。

茂木欣一さんコメント:
フィッシュマンズの仲間たちの出会い、別れ、再会。一人一人がどのような気持ちでここまでの日々を送って来たのか。カメラの前で心の内側を話してくれたみんなの言葉に僕は驚き、そして、こんな素敵な仲間たちと出会えた人生に感謝せずにはいられない。結びつけてくれたのは、佐藤伸治が作り出した色褪せることのない楽曲たち。この映画の完成にすべてを捧げてくれた手嶋監督はじめスタッフの皆さんの愛に、心からありがとう。

出演:フィッシュマンズほか
監督:手嶋悠貴
企画・製作:坂井利帆
撮影:山本大輔
録音・整音:⻩永昌
構成:和田清人
編集:大川景子
アートディレクター:大村雄平
制作プロダクション:ACTV JAPAN
配給:ACTV JAPAN/イハフィルムズ©THE FISHMANS MOVIE 2021
https://twitter.com/FishmansMovie
https://fishmans-movie.com

Smerz - ele-king

 まもなくアルバムが発売となるノルウェーの新世代エレクトロニック・デュオ、スメーツが新たなMVを公開している。明後日2月26日にリリースとなるファースト・アルバム『Believer』収録曲で、「恋愛関係においてチームとしての感覚を失ってしまうこと」が歌われているそう。
 また、3月20日午前6時(日本時間)にはバンドキャンプにてライヴ映像が配信されることも決定。エレクトロニック・ミュージックの今後を担っていくだろう2人のパフォーマンスをチェックする最良の機会だ。お見逃しなく。

Smerz
ノルウェーの新世代エレクトロニック・デュオ、
待望のデビュー・アルバムから最新MV公開。
Bandcamp でライヴ映像配信も決定。

2017年にデビューを果たし、翌年にリリースしたEP作品「Have Fun」で世界を震撼させたカタリーナ・ストルテンベルグとアンリエット・モッツフェルトによるノルウェーのデュオ、スメーツが〈XL Recordings〉より2021年2月26日にリリースする待望のデビュー・アルバム『Believer』から “Flashing” の最新MVを公開した。

Smerz - Flashing
https://youtu.be/3ANjeif2OSY

“Flashing” の公式ヴィデオは先月アルバム発表時に公開された “Believer” のMVと同様にベンジャミン・バーロンが監督を務め、ブロール・オーガストが衣装を担当。「恋愛関係においてチームとしての感覚を失ってしまうこと」を歌っているという “Flashing” は、90sユーロダンスのビートを基礎に、本人たちも公言するクラシックやオペラの影響が垣間見えるスメーツ独特のエレクトロニック・ポップ・サウンドが作り上げられている。

なお、スメーツは2020年9月にオスロで行われた音楽フェス Ultima Festival で収録されたライヴ映像を Bandcamp 上で3月20日午前6時(日本時間)にストリーミング配信することを合わせて発表した。00s初頭から未来へと向かう時空の旅のような、そしてモダニズムを通じてバロック様式を表現するようなスメーツ独特の世界観を味わうことのできる特別なライヴ・パフォーマンスとなっている。

ライヴ映像のご視聴&チケットのご購入はこちら:
https://smerzforyou.bandcamp.com/merch/nattin-med-smerz-soir-e-with-smerz
* 配信日時:3月20日午前6時(日本時間)
* 配信後24時間アーカイヴされます。
チケット代金:€4

近年、盛り上がりを見せるノルウェー地下のクラブ・シーンとも共振しながら、トランスやヒップホップ、R&Bと自身のバックグラウンドである北欧の伝統的な民族音楽、オペラ、ミュージカル、クラシックのハイブリッドとして産み落とされた衝撃のデビュー・アルバム『Believer』は2021年2月26日に世界同時リリース。日本盤CDには解説及び歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックとして人気作「Have Fun」収録の全8曲が初CD化音源として追加収録され、対象店舗で購入すると先着でアート・カード・セットをプレゼント。輸入盤CD/LPとともに各店にて予約受付中。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: Smerz
title: Believer
release date: 2021/02/26 FRI ON SALE

国内盤CD
国内盤特典:ボーナス・トラックとしてEP「Have Fun」全8曲収録
解説書・歌詞対訳封入
XL1156CDJP ¥2,200+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11668

Visionist - ele-king

 グライムから影響を受けたサウンドで頭角をあらわし(ファティマ・アル・カディリとのコラボ経験もあり)、これまで〈Lit City Trax〉や〈PAN〉、〈Big Dada〉といったレーベルから作品を送り出してきたロンドンのエレクトロニック・プロデューサー、ヴィジョニストが3月5日に新作をリリースする。今度のレーベルは〈MUTE〉。
 前作では巧みにノイズとクラシカルを両立させつつ、サンプリングで声への志向性を展開していた彼だけれど、今回はなんと自身で歌っており、どうやらまた新たな一歩を踏み出しているようだ。サーキット・ディズ・ユーのヘイリー・フォアや、ブラック・ミディのモーガン・シンプソンらがゲストで参加。注目です。

ヴィジョニスト、〈MUTE〉移籍第1弾、
通算3作目のアルバム『ア・コール・トゥ・アームズ』を
3/5に発売! 新MVを公開!

ロンドン出身のプロデューサー、ルイス・カーネル(Louis Carnell)のソロ・プロジェクト、ヴィジョニスト(Visionist)は、3月5日に発売される〈MUTE〉移籍第一弾、通算3枚目のアルバム『ア・コール・トゥ・アームズ(A Call To Arms)』からの先行シングル「Form」を発売し、そのミュージック・ビデオを公開した。

新作は、キャリア初となる彼自身のヴォーカルを中心に据えた作品であり、またヘイリー・フォア(サーキット・ディズ・ユー)、モーガン・シンプソン(ブラック・ミディ)、WU-LU、K.K.ヌル等がゲスト参加している。

■「Form」
[YouTube] https://youtu.be/ducIhpBjrWs
[Listen & Pre-order] https://smarturl.it/visionist

ルイス・カーネルは新作に関して次のように語っている。

「プロジェクトのたびに自分を試してみたい。その精神から、わたしはこれまでに作ってきたサウンドの風景を拡張している。『ア・コール・トゥ・アームズ』では、コラボレーションを通して自分の音楽の方向性をさらに前進させ、音響や、ダイナミクス、エネルギー、アイデアにおいて新たな層を取り込めるようにしたんだ」

■参加アーティスト
ヘイリー・フォア(サーキット・ディズ・ユー)、モーガン・シンプソン(ブラック・ミディ)、WU-LU、K.K.ヌルほか。

■商品概要

タイトル:ア・コール・トゥ・アームズ(A Call To Arms)
発売日:2021年3月5日(金)
品番:TRCI-69 / JAN: 4571260590823
定価:2,300円(税抜)
帯付輸入盤
海外プレス・リリース訳付

Tracklist
1. By Design
2. Form
3. Allowed to Dream
4. Nearly God
5. A Born New
6. The Fold
7. Lie Digging
8. Winter Sun
9. Cast

[Listen & Pre-order] https://smarturl.it/visionist
https://www.instagram.com/visionist__/
https://twitter.com/visionist__
https://www.facebook.com/VISIONIST.live/
https://linktr.ee/VISIONIST
https://mute.com/

ライトノベル・クロニクル2010-2021 - ele-king

変わるラノベ、変わる時代

ヒット作から浮かび上がる現代日本の風景
ベストセラー60作を一挙読解

SAO、魔法科、ログホラ、ビブリア、俺ガイル、薬屋、ノゲノラ、オバロ、Re:ゼロ、このすば、転スラ、ダンまち、のぶ、よう実、幼女戦記、ナイツマ、ゴブスレ、はめふら……

時代を彩ったヒット作は何を描いていたのか?
それは読者の心情や社会状況といかに呼応し、あるいはズレていたのか?

従来の文庫ラノベからウェブ小説、ボカロ小説、ライト文芸までを巻き込み変化を続ける「ライトノベル」
その時事風俗・流行商品としての変遷

発表されるやいなやバズを引き起こした「ラノベの中学生離れ」論も所収

目次

はじめに
2010
[コラム] 涼宮ハルヒの変遷 『ハルヒ』受容の一七年史
2011
[コラム] ウェブ小説書籍化の歴史──「異世界転生」前史① 九〇年代~二〇〇〇年代前半
2012
[コラム] ウェブ小説書籍化の歴史──「異世界転生」前史② 二〇〇〇年代後半
2013
[コラム] ラノベの中学生離れ──中学生市場はなぜ重要なのか
2014
[コラム] 西尾維新〈物語〉シリーズ──新規に中高生読者を獲得し続けたモンスター作品
2015
[コラム] 中国ウェブ小説の衝撃
2016
[コラム] 韓国ウェブ小説の衝撃
2017
[コラム] 有料課金モデルを試みたLINEノベルはなぜ終わったか
2018
[コラム] やる夫スレ書籍化から見えるラノベとの差異
2019
[コラム] ボカロ小説の第二の波──ヨルシカ、YOASOBI、カンザキイオリ
2020
[コラム] YouTube発コンテンツのラノベ化の明暗──VTuber小説と「マンガ動画」小説
2021
あとがき

著者プロフィール
飯田一史(いいだ・いちし)
青森県むつ市出身。中央大学法学部法律学科、グロービス経営大学院MBA修了。出版社にて小説誌、カルチャー誌、ライトノベルの編集者を経てフリーランスのライターに。マーケティング的視点と批評的観点からウェブ文化や出版産業、マンガ、アニメ、児童書等について取材&調査して解説。寄稿先に現代ビジネス、Yahoo!ニュース個人、リアルサウンドブック、新文化、monokaki、日刊サイゾーなど、単著に『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』『ウェブ小説の衝撃』、共著に限界研編『21世紀探偵小説』『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』、山川賢一・奥村元気編『Fate/Plus 虚淵玄Lives 解析読本』ほかがある。


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Riddim Chango Records - ele-king

 東京の〈Riddim Chango〉レーベルが新作をドロップする。UKのエレクトロ・ファンクのプロデューサー、Lord Tuskによるサンズ・オブ・シメオン名義のDub作品。今回も売り切れ必至なので、ダブ頭でダビーなハートのダブ戦士たちは急がねばです。 

Label : Riddim Chango Records
artist : Sons of Simeon
title : Goliath Brothers

仕様/品番/バーコード
10"インチ・アナログ盤 / デジタル配信 (Bandcamp先行配信) / RCEP-007 / 4580211858257
発売日:2021年3月26日(金)

Side A
01 - Goliath Brothers Verse 1
Side B
01 - Goliath Brothers Verse 7
02 - Goliath Brothers Verse 36
Produced & mixed by Sons of Simeon
Lacquer cut by Jason Goz (Transition Studio)

プレオーダー
https://riddimchango.bandcamp.com/album/goliath-brothers?fbclid=IwAR1IiwKZp3lk786tYVJwWVl51adBvt5eDd5_WLxdCUhrOJ-gzLB3uvP8Usg

 Funkin Evenの〈Apron〉レーベルやJohn Rustの〈Levels〉レーベルでのハウス/テクノ寄りのリリースや、USのレジェンドMCであるMos Defとのアルバム制作、Sun Runners名義でVaporwave寄りのアルバムの発表など多方面で活躍するLord Tuskは大のサウンドシステム・ファンとしても知られている。幅広い音楽性を生かしたLord TuskならではのキラーなDub/StepperをDMZ等との仕事で知られているTransitionスタジオでマスタリング。サウンドシステムの鳴りは安定保証!

Jeff Mills - ele-king

 このコロナ禍、まったく沈黙することなく作品をばんばん積極的に発表しているジェフ・ミルズが今度は雑誌を創刊した。タイトルは『The Escape Velocity(脱出速度)』(https://ziniy.com/newsstand/edition/509)。
 ご覧の通り、デザインもかなり凝っているこの雑誌(表紙はアブカディム・ハック)、ジェフが興味を持っているミュージシャンのインタヴュー記事がメインだが、写真家のインタヴューやSF小説のコラムもある。そのほとんどはジェフ・ミルズが取材し、ジェフ・ミルズが書いている。質問もジェフらしく、未来についての話が目につく。
 テクノDJ/プロデューサーが多いが、サン・ラー・アーケストラの女性メンバー、June Tysonのインタヴュー記事もある。
 なかなか他では読めないものばかりで、日本のファンにもgoogle翻訳を使って読んで欲しいとのこと。ただ、挨拶文と巻頭言のみはジェフのパートナー、Yoko Uozumiによる日本語訳があるので、ここに掲載しておきます。
 

 読者の皆さんへ、

 エレクトロニック・ミュージックにはより良い注意力、常時の観察力が必要とされている側面があります。イベントの告知、業界のサービス、アーチスト育成やオーディエンスが集うことを取り巻く全ての情報をフォローすることを我々は当然だと思っています。しかし何よりも音楽制作そのものが一番肝心な要素です。1980年代半ばに始まったとされるエレクトロニック・ミュージックの誕生から、音楽制作のアートフォームに対する注目が少なすぎると業界に身をおく私は個人的に感じていました。我々が頻繁に目にするのは音楽を聴いた結果、効果なのです。そこに至るまで、音楽制作において公衆に触れるまでの過程はほとんど注目されていません。アーチストの名前や出身地以上にどんなシチュエーションがあったのか?この世のものとは思えないアイディアを音とリズムで表現するこの人たちは誰なのか?我々が聴くことができる音のどこまでがアーチストのパーソナリティに寄与するものなのか?何をみて、何を信じるのか?必ずしも全てのアーチストに公平に発表の機会を与えているとは言えない業界において、クリエイティビティ、意見交換やエレクトロニック・ミュージックを想像の壁を超えて拡げていくことなどを話し合う余地は常にありました。

 The Escape Velocity (エスケープ・ヴェロシティ)アーチスト・プログラムと雑誌はこのようなトピックに貢献すべく生まれました。クリエイティビティのメカニズムにまつわる様々なことを検証していきます。一見、聴く音楽とは関連性がないように思えるものも、実際にはエレクトロニック・ミュージックやアーチストが長年にわたり多くの創造的な努力を促進するのに役立ってきているのです。この雑誌は季刊(3が月ごと)にデジタルで発行されますが、その間インタビュー、記事やパフォーマンスなど色々なことが起きることを予想して季刊の間にサプリメントを発行することも考えています。デジタル形式のため様々な利点があります。雑誌の形態を取りながらビデオを挿入したり、ページ制限がないので記事は好きな長さにすることができます。ページは拡大してみていただくことができます。物理的な発送がないため環境にも優しく、より早く皆さんに届けることができます。そして何より、無料です。

The Escape Velocity マガジンはwww.axisrecords.com から簡単にアクセスすることができます。Axis RecordsとThe Escape Velocityより、皆さんの引き続きのサポートを感謝します。

ジェフ・ミルズ

P.S. 日本語訳をご希望の場合はリンクよりPDFをダウンロードしていただき、Google Translateを利用していただくことになります。


The Escape Velocityマガジンへようこそ。
(本誌P.4-5翻訳)

 この雑誌の内容に飛び込む前に、このアイデアがどこから生まれたのか、そしてどのようにしてこの地点に到達したのかを説明させてください。The Escape Velocityプロジェクトは、2020年の世界的パンデミックによる急激なスローダウンへの反応として生まれました。懸念や現状への反応から文化をじっくりと見つめ、何が最も重要かを認識することになりました。そこで既成概念からはみ出して考え抜く自由で無限の能力を再認識することになります。夢を見ること、その夢を創造性に変換すること。未来派、サイエンスフィクション、宇宙科学、または「何か前向きなことについて」作成された作品の影響を強く受けたスタイルは、これまでも最も影響力のあるアートフォームのいくつかを生み出しました。 元の要素、つまり必要なコンポーネントがまだここにあり、利用可能であることを認識することも重要です。
 
エスケープ・ヴェロシティ「脱出速度」の教科書上の定義は、宇宙空間に出るために地球の引力から解放されるのにかかる速度(時速25,000マイル)を指します。私がこのテーマを選んだのは音楽に当てはめることができるからです。大きな変化を起こすには、アーチストやプロデューサーは同じような極端な精神的体験を通り抜けなくてはならず、クリエイティブ業界でしばしば邪魔になる正常性と自己満足から自分自身を引き離す必要があります。このプロジェクトは、アートフォームを通じて創造性のバリアを超えて探求する人たちを支援し、長年アーチストをサポートしてきた人たちが進歩を確認する機会を提供するために始まりました。二つのセクター間のギャップを狭めることはポジティブにこのアートフォームの拡大を支援することにつながります。

 この1年間、私たちはさまざまな文化分野で最も才能があり想像力に富んだアーティストを見つけて招待し、エスケープ・ヴェロシティのコンセプトに合わせて自分で選んだテーマで制作するように依頼しました。彼らのアイデアとそれらを分析する準備ができているオーディエンスとの間の連絡役として 彼らの機会を増やすことが我々の使命です。特別なコンセプト作品を、創造性とは何かを真に理解している熱心な聴衆に提示すること。これまで、招待された各アーティストは宇宙科学やそれを超越するさまざまな主題に関するコンセプチュアルなアルバムとアートを制作してきました。参加アーティストの数が増えてきたので、彼らの作品やアイデアをまとめて、彼らが誰であるかをもっと知る方法を見つける必要がありました。デジタルカタログの形で、私たちはこの雑誌のアイデアを思いつきました。アーティストの足跡を追い、彼らの作品に触れ、進歩を確認できるより濃密な方法と考えています。

Escape Velocityに関わる全員を代表して今後のサポートを感謝し、この雑誌を楽しんでもらえれば嬉しいです。

──ジェフ・ミルズ

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