わかる、わかる。こうでもしてなきゃやっちゃいられない。そもそも君が音楽を選んだ理由は、それが大衆的だからという理由ではない。それが少数派の意見を代弁しているからであり、そういう意味では、ブラック・サバスのメタル・サウンドとホークウィンドのスペース・ロック、セックス・ピストルズのうねるようなグルーヴ、あるいは初期のアモン・デュールやアシュ・ラ・テンペルのサイケデリック……らを彷彿させるニューキャッスルのバンド、豚・豚・豚・豚・豚・豚・豚(Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs)の『ネズミに餌をやれ』は無視しようにも無視できない作品なのである。おおー、これはじつに激しく、おそろしく酷く、そしてぶっ壊れている。遙かかなたの闇夜より、地響きを上げながら、さあ、いかれた連中のお出ましだ。
ピグス×7の豚は、なにゆえの豚なのだろう。ジョージ・オーウェルの描いた豚は、みんなのために一緒にがんばってると思われていた1匹が法律を書きかえ、ふと気が付けば権力的な暴君になっていく豚だった。日本で豚のメタファーといえば、愚鈍さとか、下劣さとか……動物愛護者からクレームが来てもおかしくはないものばかりだが、少なくとも狡猾な権力者というイメージはない。
いや、ここで『動物農場』を持ち出してしまうぼくは間違ってる。音楽は社会学的註釈だけに収束されるものではない。音楽は、たとえば逃げ場を塞がれた欲望が噴出するところでもある。トリップする場所、脱落する場所、だ。音の洪水にまみれて、本気で喚き散らす場所。かつてマシュー・ハーバートは、屠殺場で殺されていく豚の一生を描いた。
ちょうどジャングルが流行はじめの1993年に脚光を浴びたコズミック・テンタクルスを思い出さくなくもない。なにせ今年はジャングル・リヴァイヴァル&サマー・オブ・ラヴから50年。しかしピグス×7は、愛の夏ではなく、反感の夏、嫌悪のサウンドトラックだ。気になると言うのなら、2曲目の“Sweet Relief”を聴いてみよう。これでも気持ちが上がらないかい?
UKの労働者階級が生んだロック・バンドは、ザ・ビートルズやセックス・ピストルズ、ザ・スミスやオアシスだけではない。バーミンガムの工場を背景に持つブラック・サバスもそうで、このバンドはしかもビートルズにはできなかったことのすべてをやったと評されている(大袈裟ではあるが、的外れではない)。ピグス×7はその子孫である。ある意味ベリアルとも、ヤング・エコーとも、決して遠くはない。





『Mellow Waves』



〈workshop〉からのリリースによりブレイクしたライプツィヒが誇る若手プロデューサー、グナー・ヴェンデル aka カッセム・モッセは、いまドイツで最も熱い実力派アーティストのひとりである。オマー・S の〈FXHE〉、ドイツの〈Laid〉や〈Mikrodisko〉、UKの〈nonplus+〉などからもアヴァンギャルドながら、ファンキーな魅力も併せ持つエレクトロ~ディープ・ハウス~テクノの傑作トラックを多数発表、カルト的人気を得ているアンダーグラウンド・ヒーローだ。同郷の盟友 Mix Mup とのユニット、MM/KM として〈The Trilogy Tapes〉からのリリースも評判になっており、自身のレーベル〈Ominira〉からも多様なスタイルの作品を発表、昨年は名門〈Honest Jon’s〉から実験的なアルバムを出し話題になるなど、非常に精力的ながら独自のスタンスで活動を続けているユニークな存在。また、パフォーマンスにおいても一点に留まることがない。つねにセッティングや内容を変え、2回と同じことはしない、まさに「ライヴ」感満点なセットだ。特に Kassem Mosse 名義ではヒップホップにも通じるラフなビート感、自然と身体が動いてしまうグルーヴを備え、何度見ても新しさを発見させてくれる。
この1~2年で急に頭角を現してきたように見える(かもしれない) Resom (レゾム)は、ベルリンではよく知られた存在だ。反ナショナリズム、反差別主義を掲げる、ベルリンの中でも特にリベラルなスタンスのクラブ、〈:// about bank〉のレジデントDJを長年務め、ライプツィヒでの学生時代からの友人であるカッセム・モッセや Mix Mup (ミックス・マップ)らを陰で支えるブッキング・エージェントとしての顔も持ち、それ以外にもつねに様々なイベントのオーガナイズや、制作に関わってきた。音楽業界における女性の地位向上のためにも行動する、フェミニストでありアクティヴィストでもある。そのDJスタイルは一言では形容しがたい、非常に独特なもので、ジャンルで言えばアンビエントからエレクトロ、歌物からミニマルまで非常に幅広く縦横無尽にミックスしていくのだが、ただ色々かけているというのではなく、彼女の中で明確なイメージやテーマがあり、それをもっともオブスキュアでレフトフィールドな選曲によって紡ぎ出していくような、まったく予測不可能ながら、いつも彼女らしいちょっぴりストレンジな高揚感に到達させてくれるのである。Ben UFO や DJ NOBU も絶賛する彼女の個性を、ぜひ一度体験してみて欲しい。
