「TT」と一致するもの

ShotahiramaをTOWER RECORDS渋谷店で! - ele-king

 Shotahirama、この若き才能は何に苛立ち、何に戸惑い、そして何に向かって疾駆しているのだろうか──。本日掲載のディスクレヴューに加え、近日公開の三田格氏によるインタヴューからは興味深いアーティスト像が次々と露わになるようでいて、むしろミステリアスさの度合いも強まっていく(乞うご期待!)。ぜひともこの最新作『Stiff Kittens』や、それを記念するインストア・ライヴも目の当たりにしたい。

■shotahirama 『Stiff Kittens』発売記念ライブ+特典引換会

shotahirama (LIVE)
Ametsub (DJ)

開催日時:
2015年3月1日(日)

開始時間:
16:00

場所:
TOWER RECORDS渋谷店
8F Space HACHIKAI

内容:
ライブ+特典引換会

参加方法:
観覧自由(*)

ノイズ/グリッチミュージックの新機軸として、いま国内で最も注目を集めるshotahiramaによる待望の最新作『Stiff Kittens』発売を記念してタワーレコード渋谷店での貴重なライブパフォーマンスが決定!また、日本が世界に誇る音楽家AmetsubがスペシャルゲストとしてDJセットで登場!エレクトロニック・ミュージックの新たな地平を切り開き、シーンの最前線を直走るサウンドを発信する両雄の一夜限りの豪華共演、絶対にお見逃しなく!(担当:高野)

◆shotahirama by Shota Hirama Independent sound label SIGNALDADA
https://www.signaldada.org/

◆Ametsub Official Website
https://www.drizzlecat.org/

(*)
2/22発売(渋谷店先行2/15入荷)shotahirama『Stiff Kittens』(SIGNAL010)をタワーレコード渋谷店、新宿店にてお買い上げいただいたお客様に、先着で特典引換会参加券を差し上げます。特典引換会参加券をお持ちのお客様はライブ終了後の特典引換会にご参加頂けます。

対象店舗:
渋谷店 ・新宿店

対象商品:
shotahirama『Stiff Kittens』(SIGNAL010)
2015/2/22発売(渋谷店先行2/15入荷) 2,000円(税別)

※対象商品のご予約、お取り置きはお電話とタワーレコードホームページ(https://tower.jp/)の店舗予約・取置サービスでも承っております。
※特典引換会参加券の配布は定員に達し次第終了いたします。終了後にご予約(ご購入)いただいてもお付けできませんのでご注意ください。
※特典引換会参加券を紛失・盗難・破損された場合、再発行はいたしませんのでご注意ください。
※ライヴ終了後特典引換会を実施致します。
※特典特典引換会参加券1枚で1名様ご参加頂けます。(ライブ観覧自由です)
※当日は必ず特典引換会参加券をお持ちください。盗難・紛失等による再発行は致しません。
※当日の混雑具合により入場規制をかけさせて頂く場合がございます。
※イベント対象商品は不良品以外での返品をお受け致しません。
※カメラ及び録音機器等によるLIVE模様の撮影及び収録は固くお断り致します。
※店内での飲食は禁止となっております。
※都合によりイベントの内容変更や中止がある場合がございます。あらかじめご了承ください。


interview with Future Brown - ele-king


Future Brown
Future Brown

Warp/ビート

rapgrimefootworkdancehallR&Breggaeton

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 アンダーグラウンド・スーパーグループ? ホントかよ? いかにもハイプな称号に思えるが、フューチャー・ブラウンはたしかにアンダーグラウンド・スーパーグループだ。欧米メディアはもちろんのこと、僕のまわりでも昨年末から「12インチ聴いた?」とか「アルバムどうだった?」とか、なにかと話題になっている。「アルバムよりシングルのほうが良かったんじゃない?」とか、「でも、よくよく聴いたら良かった」とか、FKAツイッグスのときに似ているかもしれない。
 メンバーは、ファティマ・アル・カディリ(クウェート出身で、昨年ハイパーダブからアルバム・デビュー)、ダニエル・ピニーダ&アスマ・マルーフ(LAを拠点とするイングズングスのふたり組。ナイト・スラッグス一派)、Jクッシュ(シカゴのジューク天才児、ラシャドの作品で知られる〈Lit City Trax〉主宰)の4人。ね、スーパーグループでしょ?

 いまアンダーグラウンドがどこにあるのか、それがレッドブルでないことは『vol.15』に書いたけれど、ひとつは確実にインターネット空間にある。ポルノのことではない。たとえば、我々は液晶画面の向こう側に見えるワールド・ミュージックを知っている。サイバーな探索旅行を通してアクセスするワールド・ミュージックだ。イラクの音楽も南アフリカのバカルディもアンゴラのクォドロも、もちろんプエルトリコのレゲトンだって、なんだって聴ける。エジプトのシャアビも、シカゴのドリルも、なんだって。
 フューチャー・ブラウンは、まさにそんな時代を反映している。世界中のビートに影響を受けて、世界中にアクセスしている……といったら大袈裟だが、イメージとしてはそうなる。ディアスポラ音楽、ハイブリッドという言葉は、従来は、USの黒人音楽ないしはラテン音楽における文化的衝突に象徴されるものだったが、フューチャー・ブラウンを聴いていると、インターネット時代における「ワールド」を意味するものへと変わりゆくんじゃないかと思えてくる。
 もちろん、なんでもかんでもあるわけじゃないけど。フューチャー・ブラウンの基盤にあるのは、おそらく……UKのグライムとシカゴのジュークだろう。
 以下、4人揃ってのインタヴュー。

 F=ファティマ
 J=ジェイミー (J-クッシュ)
 D=ダニエル
 A=アスマ

 4人とも、自分の言いたいことを言ってくれたおかげで面白い取材になった。ちなみに、UKでは2014年はグライムの「セカンド・カミング」と言われたほど、ディジー・ラスカルのデビュー以来の、グライム熱が高まった1年だった。インターネット時代のグライム、ディアポラ音楽としてのグライム、ハイブリッド・ミュージックとしてのグライムを代表するのが、この若さとエネルギーに満ち満ちた4人組なのである。

外交上、丁寧な物の言い方をしましょう。文章でも何でも、積極的に誰かをディスすることはしたくないわ。私たちはディプロのことは好きじゃない。それだけ。

このプロジェクトは、世界中のアンダーグラウンド・シーン/ローカルなダンス・ミュージックにコネクトしながら、ハイブリッドな音楽を創出するものだと思います。メンバー4人もNY、シカゴ、LA、レーベルはロンドンとそれぞれ距離的に離れていてながら、ひとつにまとまっている点も現代的だと思います。そもそも、このコンセプトはどのように生まれたのですか? 

F:メンバー同士が、一緒に音楽を作っていたけれど、グループとしてではなかった。つまり、ダニエルはアスマと音楽を作っていたし、私はジェイミーと音楽を作っていたし、私はアスマとも音楽を作っていた。そんな状況で仕事をするのはまったく効率的じゃないと思ってグループで仕事をすることにした。

レーベルの資料によれば「グライムの進化型」をファティマさんが描いたことが発端となったそうですが、我々としては、そうだとしたら、なぜ「グライム」という言葉を使ったのか、気になりました。

F:それは本当じゃない! 悪いけど、嘘だわ。全然本当じゃない(爆笑)! ワオ、誰がそんなこと言ったの!? クレイジーだわ。

J:グライムの進化型??

F:そんな表現は聞いたこともないわ!

J:ひととつだけ言いたい、それは……

F:幻想よ。

J:矛盾してるときって何て言うんだっけ?

F:知らない。

通訳:Oxymoron(=矛盾表現)でしょうか?

J:そう! 「グライムの進化型」って表現はoxymoron(矛盾表現)だ! グライムとは、その当時、盛んだった音楽だ。そのシーンを経験した奴じゃなければグライムは作れない。それを、よりスマートなグライムとか、グライムの進化型と表現するのは屈辱に近い。だって、歴史的実例をひっくり返して、進化型と称してるんだぜ。過去のレイアウトを使ってるくせに進化型と呼ぶのは、どうかと思う。

F:「グライムの進化型」という考えを描いたことは一度もないわ。今後もそういうことはないと思う(笑)。

J:グライムが自由な音楽だということを前提で、そういう表現を使ったなら少しは理解できる。俺たちも自由な音楽を作っているから。

A:なんて訊かれたの?

J:フューチャー・ブラウンは、ファティマが「グライムの進化型」を描いたことが発端か?

F:(笑)とにかく、それは全くの嘘よ。

いちばん最初にサウンドクラウドに“Wanna Party”を公開したのが2013年ですよね? それから2年後のアルバムとなったわけですが、プロジェクトのコンセプトや脚本は、最初からある程度決まっていたのですか?

F:ええ。“Wanna Party”をネット上で公開したときから、アルバムに収録された曲のインスト版がすでに出来上がっていたの。

J:あの時点で、ヴォーカルに関しては半分くらいが出来上がってたよな。

A:グループとして何がやりたいのかというのはわかっていたわ。

J:このプロジェクトをはじめた当初から、ヴォーカリストのためにビートを作りたいと思ってた。

そもそもこの4人はどうやって知り合ったのですか?

J:音楽活動を通じてだよ。ニューヨークで。

D:ああ。

J:シェインとヴィーナスが、ゲットーゴシックというパーティを毎週やっていて、そのパーティでプレイするために、イングズングズが隔月でNYに来ていた。俺もけっこう頻繁に、そのパーティでプレイしていた。そこで俺たちは、音楽の趣味が似ているなとお互い感じた。ファティマもこのパーティによく来ていたから、みんなでよく一緒にいた。そこで意気投合したんだ。でもアスマとファティマはそれ以前から知り合いだったのかな? よく知らないけど。

今回のプロジェクトが生まれる上で、もっとも重要だった4人の共通項って何だったのでしょうか?

A:音楽を愛していること。

F:私たちの音楽の趣味というのはかなり同系だと言えるわ。それがもっとも重要な事だったと思う。同じような音楽が好きだとコラボレーションも容易にできる。それに、お互いが、各自の安心領域から、出なきゃいけなくなるような流れになるの。他の人と一緒に仕事をすると、自分の安心領域から出ざるを得なくなるから、とても良いチャレンジになっているわ。

J:自分がいままでやったことのないことをやるようにと、追い込んでくれるのは、このメンバーが一番ハードにやってくれる。あと、新しいことを学んだりするのも、こいつらと一緒のときが多い。誰かがクールなことをして、それがインスピレーションになり、自分もそれに影響されて何かをやってみたくなるんだ。俺たちが一緒に音楽を作るときは、すごく楽しいエネルギーが充満してるよ。

ファッション・ブランドの「HBA(フッド・バイ・エア)」があなたがたをバックアップしたそうですが、どんなブランドなのですか?

F:フッド・バイ・エアのデザイナー、シェイン・オリバーとは長年の友だちだった。彼がフッド・バイ・エアを立ち上げる前からよ。だから、昔からの友だちがある日突然、有名デザイナーになったという感じ。私たちはお互いの作品のファンでもあるわ。

J: ファティマは、シェインと6年くらい仕事をしてたんだよな? フッド・バイ・エアの音楽を何シーズンもやっていたよな? それから……

F:そんなに何シーズンもやっていないけど。フッド・バイ・エアの音楽を頼まれたことは何度かあった。それから、私とシェインは2008年に音楽プロジェクトを一緒にやった。だから長い間、一緒に仕事をしていることになるわね。でも、それより大事なのは、私たちがそれ以前から友だちだったということよ。

それでは、アルカもそのブランドと繋がっているそうですね。

J:アルカは俺たちの友だちだよ。

F:そう、彼も友だちなの。フッド・バイ・エアは友だちとしか仕事をしないブランドなの。ファミリー志向が強いブランドよ。フッド・バイ・エアが仕事相手に選ぶ人やサポートする人というのは、フッド・バイ・エアと長い間、友だちだった人、親しい間柄の人だということ。

アルカも、自分のバックボーンにはチャンガトゥキ(Changa Tuki)という地元ヴェネズエラの音楽を持ちながら、インターネット時代らしく、国境を越えていろいろな文化にアクセスし、ハイブリッドな音楽を作っていますよね。そういう姿勢には、やはり、共感するところはありますか?

J:俺たちはコンセプトを思い付いて音楽を作っているわけではない。俺たちの曲は、コンセプチュアルな作品ではないんだ。

F:でも、訊きたいのは、インスピレーションについてよね? アルカは地元の音楽にインスピレーションを得て音楽を作っているけど、私たちはどうか、ということよね? 私の場合、クウェートの民族音楽にインスピレーションを得てフューチャー・ブラウンの音楽制作に影響を与えているか? ということよね。アスマの場合、インドの民族音楽にインスピレーションを得てフューチャー・ブラウンの制作に影響しているか? ということ。

D:俺は、インドの民族音楽に、すごいインスピレーションを受けてるよ!

A:私もインドの音楽からインスパイアされているわ!

F:でも、それがフューチャー・ブラウンの制作に影響している?

A:直に繋がっているわけではないけれど……

J:意識している部分はあるということか。

A:むしろ、無意識に、影響として表れてくるんだと思う。自分の耳にどう聴こえるか、というような影響。私がインド人だからこそ、ある種の音に魅力される影響とか。そんな感じのこと。

F:直接的な影響と間接的な影響があると思う。ひとりが回答するインタヴューなら、まとまった答えができるけど、私たちは4人だから、回答も難しくなってしまうわ。

A:でも、私たちはみんな……

F:私たちはみんな、様々な音楽にインスピレーションを受けている。それがたとえ地元でも地元じゃなくても。

A:その通り! たとえば、私たちは、イラクの曲の構成にインスピレーションを受けたりする。別に私たちがその場所の出身でなくてもインスピレーションを受けるわ。だって、私はレゲトンやダンスホールにも強いインスピレーションを受けるもの。

J:俺たちの出身がどこかというのはとくに関係ないと思う。むしろ、何を経験して聴いてきたかということや、どんな響きに愛着を感じるかということの方が大きい。そういうものが影響して、俺たちが作ったものが出来上がった。

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例えば、私たちは、イラクの曲の構成にインスピレーションを受けたりする。別に私たちがその場所の出身でなくてもインスピレーションを受けるわ。だって、私はレゲトンやダンスホールにも強いインスピレーションを受けるもの。


Future Brown
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みなさん、ふだんはネットでやり取りしていると思うのですが、4人揃うことって、やはり大変ですか? 

J:そんなに大変じゃないよ。

A:計画は必要ね。

F:そう、前もって計画するだけよ。

フィーチャリングされているラッパーやシンガーもいろんな人がいますが、レコーディングはスタジオでおこなわれたそうですね。そこはこだわったんですか? よくあるデータ交換ではなく、あくまでもリアルな現場を共有しながら作るんだということに。

J:それは、実際のところ、全てがその過程でおこなわれたわけではなかった。スタジオでレコーディングをやったのは50%ほどで、残りの50%は俺たちがいないスタジオでレコーディングされ、ファイルが送られてきた。

A:でもたしかに、スタジオに入ってリアルな現場で音楽を作るというのは私たちにとって大事なことだわ。可能な限りそうしたいと思っている。

F:毎回、可能というわけではないから。

A:そうなの。

J:距離的、金銭的な限界がある。

実際は、どんな風に作品が生まれていったのでしょう? 4人で話ながら作っていくんですか?

F:スタジオに入って(笑)、ワニを呼んで、象の鼻を引っ張って(爆笑)、フレンチブルドッグのお腹をさすって……まあ、とにかく……創造する過程は個人的なものだから、それを説明すると、その魔法が解けてしまう気がするの。

J:みんなでスタジオに入る。みんな、一緒に仕事ができることにワクワクしている。誰かがアイデアを出して作業が始まり、そこから作り上げていく。

A:曲の作り方はそれぞれ違うわ。決まった作曲方法があるわけではないの。アルバムの曲を聴けば、それが分かると思う。

〈ワープ〉と契約したいきさつについて教えて下さい。

J:〈ワープ〉が俺たちの音楽を聴いて気に入ってくれた。そこで契約について話し合い、契約がまとまっただけだ。音楽面では、自分たちがコントロールできるような状況を与えてくれた。〈ワープ〉は、俺たちにとって一番フィットするレーベルだった。

D:俺たちがどんな音楽を作るか、ということに関して〈ワープ〉は、とくに指示を出さなかった。だから自由にできた。

フューチャー・ブラウンのような音楽は、アメリカよりも欧州のほうがウケが良いですか?

D:それはマジでわからないな。まだアルバムを出してないから。

F:そうよ、まだアルバムはリリースされてないのよ。

J:正直言って、俺は、メディアが書いているものをあまり読んでない。

通訳:では、ライヴの反応はいかがでしょうか? アメリカでライブはやりましたよね?

D:えーと、ああ。やったことあるね。

F:ええ。

J:アメリカでライヴってやったっけ?

D:PAMM(マイアミ美術館)とかPS1とか。

J:それはパフォーマンスだろ。

D:最高だったよな。だから、アメリカでの反応もすごく良かったよ!

F:いままでやったライヴでは、観客はみんなノリノリで楽しんでいたわ。でも、アメリカとヨーロッパで反応の違いというものは、とくに感じていない。

J:アメリカはひとつの国だけど、ヨーロッパは幾つもの国を指す。ヨーロッパの方が何カ国でもプレイする機会は多いわけだけど、それが果たして、ヨーロッパの方が受けが良いからなのかというのはわからない。

F:物事を一般的に捉えて答えるべきではないと思う。

J:アルバムには、いくつものサウンドが含まれている。アメリカにインスピレーションを受けた曲や、ヨーロッパにインスピレーションを受けた曲。他にもいろいろあるから、それをひと言でまとめるのはムリだ。

みなさんは、たとえば、エイフェックス・ツインやオウテカのような、〈ワープ〉の古株のアーティストの作品を聴きますか?

J:俺は聴いたことはあるよ。

F:私も。ティーネイジャーのときに聴いていたわ。

D:俺も昔、聴いていた。新作ももちろん聴いたよ。

プロジェクト名にある「ブラウン」は何を意味するのでしょうか? 

F:「フューチャー・ブラウン」という名前全体が……

J:「ブラウン」単体の意味というのは無い。

F:そう、「ブラウン」には何の意味も無いわよ。

J:前もそんな話になったよな。ま、いいけど。

F:「フューチャー・ブラウン」とは、(DISマガジンの)ソロモン・チェイスが思い付いた言葉で、それは、自然界に存在しない茶色なの。

“Wanna Party”や1曲目の“Room 302”でフィーチャーされているティンクについてご紹介ください。かなりの評判のシンガーだそうですね。

J: 彼女と制作をはじめたのは……

F:2013年5月。

J: 本当に意欲のある人。彼女と話してみると、彼女がどれだけ音楽に情熱を持っているかということがすぐに分かる。彼女にデモをいくつか聴かせたら、彼女は4時間以内に2曲分の歌詞を書いた。そして、撮り直しなど一切せずにそれらの曲を完成させた。正直言って新鮮だったよ。あれほど完璧な体験は、そう頻繁に起こるもんじゃない。最高の仕事相手だったよ。

F:まさに神童ね。素晴らしい才能に恵まれている。

J: ヴォーカリストはみんな意欲的で、一生懸命、俺たちのビートに乗っかってきてくれたから、俺たちはヴォーカリストには恵まれていた。ヴォーカリストたちが、安心領域というか、身近な人たちのいる環境よりもアウェイな状況に挑んでいく様子を見るのはクールだった。

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私たちは、政治に無関心なわけではない。真空の住人ではないのよ(笑)。


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ロンドンのロール・ディープ・クルーのメンバーも参加していますね?

J:参加しているのは、ロール・ディープの元メンバーのローチー、それにラフ・スクワッドのラピッドとダーティ・デンジャー。俺たちはみんな、ロール・ディープとラフ・スクワッドのファンだったから。俺のロンドンの友だちが、ロール・ディープとラフ・スクワッドと仕事をしていて、長年グライムのシーンに関わっていた。その彼が、俺たちにラピッドを紹介してくれた。そこから連絡を取り合い、ダーティ・デンジャーとローチーにも曲に参加してもらおうということになった。そこでビートをいくつか彼らに送ったというわけさ。

最近は、ワイリーをきっかけに、ウェイトレス・グライムという、アンビエント・タッチのグライムが注目を集めてますが、好きですか?

J:それはグライムのファンが作った言葉で、その人なりのグライムの解釈の仕方なんだと思う。よくわからねえ。ある意味、冗長表現だと思う。ワイリーの、デビルミックス・グライム・ミュージック、つまりビートレスなグライム・ミュージックをリ・ブランディングしたというか……。それにグライムは、以前よりも自由でなくなっている。みんな、ワイリーのサウンドに似たようなものを作りたがる。グライムの本質は、自分特有の音を作ることなのに。だから、とにかくばかげてるよ。

F:グライムとは自由であることなのよ。プレデタが以前、こう言ったわ。「グライムを作るのにグライムをリブランディングする必要はない」と。グライムはグライムなのよ。

A:そうよ。

F:グライムの進化型でもないし、ウェイトレス・グライムでもない。ただのグライムってこと。

J:自分特有のことを表情豊かな音楽でやるということ。過去をやり直すとしたら、こうなります、って言ってるようなもんで訳が分からない。作品をウェイトレス・グライムと称している人達は、ワイリーにそれを聴かせるだろうか?多分しないだろう。なぜなら、それはワイリーの作品のリメイクに聴こえるからだ。コンセプチュアルの面にしてもそうだ。アイデアが……

A:でもときには、優れた作品だってあるわよ。

J:もちろん、良い曲はたくさんあると思う。

A:問題になってしまうのは、音楽を理解したいがために、新しい呼び名やジャンルを作ってしまうことだと思う。

F:元々あった呼び名で十分だったのにね。

J:それを、元のものより、優れているとか、進化しているとか、表現してしまうのが問題だ。

F:元のものより新しいとか。

A:そう、新しくてパワーアップした、みたいな。

J:ウェイトレス・グライムというのはワイリーのデビルミックスと同じコンセプトのもので、それは2002年、2003年から存在し、存在し続けているものだ。新しくも何ともない。ウェイトレス・グライムが新しくエキサイティングなものだというのは真実では無い。

F:リ・ブランディングね。

A:そうだわ。

J:マーケティングの良い訓練にはなると思うが。

メンバーの役割みたいなものはどうなっているのでしょうか? いまどちらに住んでいるんですか?

F:私はクエート出身で、いまはどこにも住んでいない。NYに住んでいたときもあったけど、いまは……

J:素晴らしい音楽を普及させるために世界を飛び回っているのさ。

F:プロデューサーとしての強みや弱みは、私たちそれぞれにあると思う。だけど、同時に、自分の安心領域から抜け出すために、あえて弱みに焦点を当てて、自分を成長させて行くこともできる。私たちは、強みを磨き、お互いを通して、弱みの部分を成長させて行っている。

J:役割に関して決まり事は作っていない。それを決めたら……

F:快適過ぎてしまうから。

J:自分を追い込んで、普段とは違ったことをした方が、エキサイティングなものができるかもしれないだろ。

ちなみにJクッシュさんのルーツはどこなんですか?

J:母はイラン人。父はリトアニア系のアメリカ人だ。

通訳育ったのはシカゴでしたっけ?

J:いや、シカゴに住んだことは一度もない。

通訳:そうでしたか、でもDJラシャドの作品でも知られる〈Lit City Trax〉を立ち上げたのはあなたですよね?

J:そう、俺が立ち上げた。シカゴのフットワーク・シーンが盛り上がっていたから、音楽をプッシュするために俺が出来る限りのことをやった。シカゴには何度も行ったことはあるけど住んだことはない。生まれたのはNY。そこに10年住んで、ロンドンに移住して10年住み、その後またNYへ戻ってきた。

ふだんもネットで世界中のビートを探しているんですか?

A:(笑)ええ。そういうときもあるわ。

F:DJ用にってこと?

J:たしかに俺たちはネットで音楽を見つけている。

F:でも、曲のビートは、スタジオに入って作るの。

J:アイデアとしてはじまるけど、そこから積み上げて曲を作っていくんだ。

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グライムの進化型でもないし、ウェイトレス・グライムでもない。ただのグライムってこと。


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これはDJクッシュさんにおたずねしますが、シカゴの新世代のゲットー・ラップ、メディアが「ドリル」と掻き立てているシーンとジュークとは実際に繋がりがあるのですか? 

J:いや、別物だ。ジュークはハウス・ミュージックがベースになっている。ドリルはラップから来ている。類似点はあるかもしれないが、別物と考えていい。

ドリルに対して、「シカゴ・バップ」は、よりダンサブルで、DJネイトなどジュークともより繋がりがあるのでしょうか?

J:バップ・シーンはジューク・シーンから直に発展したものだ。DJターボはバップの曲でよく名前が挙がる人だが、彼がバップ・シーンをけん引したひとりだ。他にもそういう人が何人かいるが、みんなフットワークのシーンから出てきた人たちだ。だからそこにはたしかな繋がりがある。

ドリルとバップ、シカゴのいまのヒップホップ・シーンがどうなっているのか教えて下さい。

J:この質問はみんなも答えてくれよ。シカゴのヒップホップ・シーンはみんな好きだし、アスマとダニエルは、以前何年もシカゴに住んでいたんだぜ。

D:俺たちがシカゴに住んでいた頃は、ドリルやバップはなかった。シカゴは音楽シーンが盛んで、才能のある人がたくさんいる。

A:とても独創性のある街よね。私とダニエルがシカゴにいた頃はドリルやバップはなかったけど、またたく間に大きなシーンが出来上がったもの。シカゴからは、素晴らしい才能の持ち主がたくさん現れてきている。今回のアルバムにも、意図的ではなく、シカゴのアーティストがたくさんフィーチャーされているわ。

J:シカゴでは面白いことがたくさん起こっている。シカゴに住む人の状況や環境などが、その人のパワーとなり、良い音楽を作らせている。シカゴから抜け出すためにね。シカゴから出たいという願望を持ったアーティストを俺は何人も知っている。治安の悪いシカゴから逃れたいと言う。シカゴの人は、ダンスに対してありがたみを感じているし、シカゴの音楽にはソウルが溢れている。俺たちはシカゴが大好きだ!

ドリルの、たとえばリル・ハーブなんかは、緊張感のあるニヒリスティックな作風を打ち出していますが、フューチャー・ブラウンは、もっとパーティに寄っているように思います。

F:私はその意見にとても賛成できない。私たちのアルバムを聴けばわかると思うわ。アルバム聴いた?

通訳:聴きましたよ。

F:あなたはいまの意見に賛成?

通訳:すべてがパーティというわけではないと思います。パーティ曲は1曲だけだったかと……。

F:私たちのアルバムは「パーティ」感が前提となっているわけではない。まったくそうではないわ。「パーティ」感は、いち要素として存在するけれども、アルバム全体のコンセプトではない。

では、みなさんはディプロをどう思いますか? 彼は早い時期からボルチモア・ブレイクやバイレ・ファンキなど、グローバル・ビートを取り入れて自分なりに編集した人です。影響を受けているのでしょうか?

J:奴のグラミー賞を取り下げるべきだ。

通訳:ディプロはグラミー賞に値しないと……?

F:外交上、丁寧な物の言い方をしましょう。文章でも何でも、積極的に誰かをディスすることはしたくないわ。私たちはディプロのことは好きじゃない。それだけ。

J:彼は、アンダーグラウンド・ミュージックを商品化し、金銭面で大きな得をしただろう。だが、彼は、元々そういう音楽を作ってきた人たちのために、シーンが持続できるような未来を用意するまでに至らなかった。

昨年はアメリカで人種暴動がありましたし、シャルリ・エブド事件やISによる人質事件があったり、ウクライナ情勢とか、国際舞台では政治的な事件が続いています。関心はありますよね?

D:もちろんだよ。アメリカの出来事は、人種暴動というより、警察の暴力に対するデモと表現した方が的確だろう。

フューチャー・ブラウンの政治的関心をひとつ挙げるとしたら?

F:警察の残忍性について。

D:こういうことは、みんな各自で興味を持つべきだと思う。グローバルな問題だから、世界の人すべてが関心を持つべきだと思う。

F:私たちは、政治に無関心なわけではない。真空の住人ではないのよ(笑)。

J:だが、フューチャー・ブラウンに、ひとつの政治的アジェンダや動機があって、それを人々に伝えたいというわけでもない。個人において、それぞれ強い政治的信念や意見があるということだ。

もし誰かにリミックスを依頼するとしたら、誰がいいでしょう?

J:ディジー

D:トータル・フリーダム

F:トータル・フリーダム

J: トータル・フリーダム、ディジー・ラスカル……

A: トータル・フリーダムでいいんじゃない?

最後に、みなさんが注目しているシーン、もしくはいま面白いと思っているビート/リズムについて話してもらえますか?

F:たくさんあるわ。たくさんありすぎて……。アルバムを聴いてちょうだい。そしたら私たちが聴いている音楽のバイブスがわかるわよ。たくさんあるから。

A:そうね。

F:クドゥーロもみんな好き。

J:クラブ、ラップ……

F:ラップ……

D:クラブ、バップ、ドリル……

A: まだまだあるけどいくつか挙げるとこんな感じ。

愛国と狂気を見つめる - ele-king

アメリカン・スナイパー
監督 / クリント・イーストウッド
出演 / ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー 他
配給 / ワーナー・ブラザース映画
2014年 アメリカ
©2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
2月21日(土)より、全国公開。

 『アメリカン・スナイパー』劇中、ある海兵の葬儀の場面では弔砲が鳴らされ、トランペットの高らかで悲壮な演奏が響く……日本に住んでいる僕たちでも、この儀式は知っている。なぜならば、何度もその場面をアメリカ映画のなかで目撃してきたからだ。そう、何度も何度も……そこで広がっていくアメリカ映画的としか言いようのない叙情。だけど僕たちは、どうして繰り返し兵隊たちの死を見届けているのだろう?

 イラク戦争で160人を射殺したクリス・カイルを取り上げ、予想を遥かに上回る大ヒットとなっているイーストウッドの新作は、「殺戮者を英雄視する、コンサバティヴな映画」との批判も受けつつ、まさにいまもっともコントラバーシャルな一本としてアメリカを揺らしている。立場的には共和党支持者である(実際は中道に近いとも言われるが)イーストウッドへの色眼鏡もあるのだろう、とくにリベラルを自認するメディアからは疑問の声も多い。オバマ政権の行き詰まりに際して、ブッシュ政権時の「英雄」を浮上させる試みなのではないか、と。
 しかし、たとえばキャスリン・ビグロー『ハート・ロッカー』(2008)を「戦意昂揚映画だ」とするひとがいたときも、自分にはどうも、そんなふうには思えなかった。戦時下のイラクの張り詰める死の匂いのなか、地雷処理という命懸けの作業に向かって行くジェレミー・レナーは大義もないままただ「処理」としての戦争に向かいつづけるアメリカの呪われた姿の化身にしか見えなかったのである。たしかにそこに立ち向かっていく兵士たちは勇壮にも見える。が、イラク戦争においてはそれがいったい何のための勇ましさか見えなくなっていたのは誰もが多かれ少なかれ気づいていたことで、だからそこには剥き出しの映画的反復のみが残っていたのだろう。『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーも自宅とイラクの戦場を往復するなかで壊れていくが、それでも戦地で遥か彼方の敵に銃を向ける。そうしないと生きる理由を見失う、とでも言うかのように。
 だからこれはイーストウッドが繰り返し描いてきた、トラウマを抱えた男の物語であるだろう。そしてその傷痕は、紛れもなくアメリカの歪みが生んだものである。『ミスティック・リバー』(2003)の頃には「良心的な」アメリカのリベラルたちは「この国にいるのが恥ずかしい」と言っていた。だが、ラストで償いようのない罪を背負うことになるショーン・ペンを思い返すとき、そこに横たわっていたのはイーストウッドからの「それを負え」という重々しい念のようなものだった……かつてひとを殺しまくっていたダーティハリーだけがあのとき、そのことを告げていたのだ。

 『世界にひとつのプレイブック』(2012)でも怒りをコントロールできなくなったブラッドリー・クーパーは、ここでは「レジェンド」と讃えられるいっぽうで精神に混乱をきたし、父であることも剥奪されている。強い父になることがアメリカのかつての理想だったとして、太平洋戦争における『父親たちの星条旗(Flags of Our Fathers)』(2006)、すなわち「父たちのアメリカ」と、イラク戦争における「アメリカの狙撃手」であることには大きな隔たりがあるようなのだ。彼を所有するのはあくまで国家であり、個人であることは後回しにされている。イーストウッドはこれまでも――とくに21世紀の作品において――二分される政治的立場を超える倫理的葛藤を問いつづけてきたが、舞台がイラクであることで、フィルム自体が混乱しているようにも見える。クリス・カイルは英雄か被害者か? ではなく、同時にそのどちらでもあることが起こってしまっている。
 映画ではクリス・カイルが志願したきっかけはテロのニュースを見たからだとされているが、そこで「国のために」と迷いなく宣言する姿を理解することが僕にはできない。しかし理屈ではない何か強烈にエモーショナルな迸りがそこにはあり、だとすれば、それは「政治的立場」なんてものよりも遥かに恐ろしいもののように思える。愛国という狂気の下で、クリス・カイルは英雄の自分と被害者の自分に引き裂かれていった。ただそのことが痛切だ。

フォックスキャッチャー
監督 / ベネット・ミラー
出演 / スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ 他
配給 / ロングライド
2014年 アメリカ
© MMXIV FAIR HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
2月14日(土)より、全国公開。

 ベネット・ミラー『フォックスキャッチャー』もそのような愛国の下で熟成される狂気を見つめる一本である。映画は財閥の御曹司がレスリングの金メダリストを殺害するまでを張り詰めた空気で映し出すが、スティーヴ・カレル演じる御曹司ジョン・デュポンは経済力によってチャニング・テイタム扮するレスリング選手の疑似的な父親になろうと試みているように見えなくもない。が、それはけっして達成されないまま、関与した人間たちの運命をひたすら狂わせていくことになる。
 それはデュポン自身の内面の問題であったからなのか、母親との確執のせいだったか映画では明示されないが、しかし「強いアメリカ」を標榜する彼の目は宙を泳いでいるようだ。それが「ありもしないもの」だったことが証明されたのがこの四半世紀ないしは半世紀だったとして(映画の舞台は30年前)……しかし彼らはなおも、諦められないのだろうか? 映画はそして、「USA!」の大歓声で幕を閉じる。

 愛国心にまつわる問題をアメリカ映画や、あるいはスプリングスティーンの作品などに見出してきたとき、ヘヴィなものだと認識はしつつもそれでも「よそのこと」だと感じていたのだと僕はいま認めざるを得ない。なぜなら、ここに来て日本に住む人間にとってもそれが急激に生々しいものとして立ち上がってきているからだ。「強い国家」「美しい国」が幻であると、うすうすそのことに気づいていたとしても、熱狂は止められないのだろうか? だとすれば、それはいったいどこに向かっているのだろうか?

 『アメリカン・スナイパー』のエンド・クレジット、そこで流れる映像にはただうなだれるしかなかった。それはたぶん、これからもその場面を繰り返し見なければならないという予感が的中しているからだろう。

『アメリカン・スナイパー』予告編

『フォックスキャッチャー』予告編

Carlton and the Shoes - ele-king

 恋したときの気持ちというのは、悲しいかな、時間とともに薄まり、そして忘れていくものである。理屈でわかっていても、それが性の衝動と結びついている以上、動物としてやむを得ないのかもしれない。しかし、カールトン・アンド・ザ・シューズを知っている私たちは、恋したときの気持ちを何度でも思い出すことができる。私たちは生きている限り、“ラヴ・ミー・フォーエヴァー”や“ギヴ・ミー・リトル・モア”を何度でも繰り返し聴くだろう。
 ジャマイカが生んだ伝説的なロックステディ・グループ、カールトン・アンド・ザ・シューズが来日する。すでに涙ぐんでいる人もいるのではないだろうか……来日を記念して、7インチ・シングルもリリースされる。

 以下、OVERHEATから告知文です。

 1992年に開催された”Rock Steady Night”でGladstone” Gladdy” Andersonらと初来日し、SKA、Rock Steady、Reggaeファンを驚喜させたCarlton and the Shoes(カールトン・アンド・ザ・シューズ)が帰ってくる!!!

 1966年から1968年のジャマイカでは、それまでのSKAに変わりRock Steady(ロック・ステディ)が大流行。その中でもRock Steadyを代表する最高峰のコーラス・グループと言えばCarlton and the Shoesをおいて右に出るものはいない。しかし、当時(76年)わずかたった1枚のアルバム『LOVE ME FOREVER』をCoxsone Doddのレーベル、Studio One(ジャマイカのモータウンと言われる)からリリースしただけであったが、その高い評価は今でも同じである。こうしてジャマイカ音楽の発展に多きな影響を与えた1stアルバムはクラッシックと呼ばれ、その作曲センスと絶妙なハーモニー・ワークは唯一無二、その後にリリースされた2ndアルバム『THIS HEART OF MINE』(Quality)の発売は82年である。
 そのアルバムは日本でもフィッシュマンズの曲「ランニングマン」にも影響を与え、クレモンティーヌが「Give Me Little More」をカヴァーしたり、最近ではCHAN-MIKAも同曲をカバーしたりというように何度も再発やカバーが繰り返されている超名盤である。
 そして昨年(2014年)は精力的にLAやシエラネバダ・ワールドミュージック・フェスへの出演を果たしている。

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〈ツアー日程〉
4月23日(木) 名古屋 クラブクアトロ(Tel:052-264-8211) /
ADV ¥4,500 DOOR ¥5,500
4月24日(金) 代官山 UNIT(Tel:03-5459-8630) /
ADV ¥4,500 DOOR ¥5,500
他、追加予定あり
チケット:2月28日 各プレイガイドにて発売予定
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■来日記念盤として7インチ・シングルも発売!!

発売日:2月20日 1,200円(税別)OVE-7-0123
Side A : You(Part1) / Carlton and The Shoes
Side B : Wanna Be Free / Carlton and The Shoes

 『LOVE ME FOREVER』(Studio One)をリリースした後、『THIS HEART OF MINE』をQualityからリリース。どちらも再発され続けているのはご存知の通り。ジャマイカン・アーティストの中でもオリジナルな曲センスとコーラス・ワークには世界中のマニアが一目置くところ。 昨年のLA公演も話題となっている彼らの来日にも期待がかかるが、今回は90年代の音源から選曲されたRock SteadyとSKAがカップリングされた良質な7インチ発売です。

Side A : You(Part1) / Carlton and The Shoes
『THIS HEART OF MINE』に続き95年、OVERHEATからリリースされたアルバム『Sweet Feeling』収録の純甘Rock Steady曲。 エレキ・ドラムにうねるベース、ジャマイカのゲットーを思わせる重いスリリングなリズムに極上のハーモニー。Rock Steadyに似合うのはやはりLove Songだと確信させられる曲。

Side B : Wanna Be Free / Carlton and The Shoes
ディーン・フレイザーとヴィン・ゴードンのホーンで始まる軽快なスカ・チューン。
2002年にOVERHEATからリリースされたアルバム『Music For Lovers』に収録されていた曲。カールトンの脱力ヴォーカルにからむコーラスとホーン・セクションに加え、ピアノの裏打ちはメロウ・キーボーディストことロビー・リンである。


Ryoko Akama - Bruno Duplant - Dominic Lash - ele-king

 〈アナザー・ティンブレ〉は英国の即興/実験音楽レーベルであり、現在、この種のシーンにおいて大きな存在感を示しているレーベルでもある。その横断領域は広く、即興から電子(電気)ノイズ、現代音楽までも射程に入れており、非常に個性的なレーベル・キュレーションが行われている。
 なにしろレーベル初期にはデレク・ベイリーらとミュージック・インプロヴィゼーション・カンパニーで活動したヒュー・デイビスの作品集『パフォーマンス 1969 - 1977』や、音素材を極限まで切り詰め、聴覚/知覚への自覚的なプロセスを浮上させていく静寂の音響・音楽、ヴァンデルヴァイザー楽派の6枚組ボックス・セット『ヴァンデルヴァイザー・アンド・ソー・ヴァイタ―』までもリリースしているのである。また日本のICCで作品が展示された英国の実験音楽家スティーヴン・コーンフォードのアルバム(コラボレーション含む)も多数リリースされている。
 そう、いわば即興/実験/作曲の境界線を越えていくようなレーベルなのだ。ある意味ではマイケル・ナイマン著『実験音楽-ケージとその後』の思想を受け継ぐレーベルともいえよう。

 昨年2014年もジョン・ティルバリー、フィリップ・トーマスらの演奏によるモートン・フェルドマン『ツゥー・ピアノ・アンド・アザー・ピース 1953-1969』もリリースするなど、即興、ノイズ、電子音楽、現代音楽まで幅広く、かつ大量のリリースを続けていた(個人的にはベルリン・シリーズと銘打ったアーティスト・コラボレーション・シリーズにも注目)。また、英国のエクスペリメンタル・ミュージック・マガジンの老舗『ワイアー』誌の2014年トップ50内に選出されたマグナス・グランベルク率いるスクーゲン『ディスペアズ・ハッド・ガヴァンド・ミー・トゥー・ロング』と、ローレンス・クレイン『チェンバー・ワークス 1992 - 2009』も重要な作品だ。10人の演奏家によるスクーゲン(日本からは中村としまる、笙の石川高が参加)は、コンポジションとインプロヴゼーションを明確なコンセプトとともに両立させ、ローレンス・クレインは室内楽であった。両作とも即興と作曲への境界を越境している。インプロヴィゼーション/コンポジションが同時生成するようなレーベルの新しい志向=思考が明確になってきたのである。

 今回紹介するリョーコ・アカマ(VCS3シンセサイザー)、ブルーノ・デュプラント(パーカッション、トーン・ジェネレーター)、ドミニク・ラッシュ (ダブル・ベース、クラリネット、ラップトップ、パーカッション)らによる『ネクスト・トゥ・ナッシング』(2014)もまた純白のミニマリズムでインプロヴィゼーション/コンポジションを越境する素晴らしいアルバムである。まずは各メンバーのことについて簡単に書いておこう。
 リョーコ・アカマはAGFらとのユニット(The Lappetites)、カフェ・マシューズ、そしてエリアーヌ・ラディーグ(!)などとのコラボレーションでも知られる電子音楽家(https://www.ryokoakama.com/)。この『ネクスト・トゥ・ナッシング』でリョーコ・アカマが演奏するVCS3は、70年代にキング・クリムゾンやピンク・フロイドなどのプログレ・バンドに導入されたアナログ・シンセサイザーだが、本作では、それら伝説的なバンドの使い方とは異なり、静謐な音の層/霧のような音響が持続している(VCS3は、昨年発表のソロ・アルバム『コード・オブ・サイレンス』でも用いられていた)。

 そして、ブルーノ・デュプラントは精力的なリリースを続けるフランス人アーティストで、コントラバス、パーカッション、コンピューターなどを駆使したミニマルな作品/演奏を多数送り出している。自身もレーベル〈リゾーム〉を運営している(https://rhizome-s.blogspot.co.uk/)。ドミニク・ラッシュ はコントラバス奏者。彼は〈アナザー・ティンブレ〉からリリースされているヴァンデルヴァイザー楽派のアントワーヌ・ボイガーの作品『カントル・カルテット』などにも参加している(https://dominiclash.blogspot.jp/)。
 インタヴューなどを読むと、このアルバムを主宰したのはどうやらブルーノ・デュプラントのようだ。彼はこれまでもリョーコ・アカマなどとコラボレーションを行ってきたわけだが、その経験を踏まえつつ、さらに新しい音楽を生み出したかったようである。私見だが、このアルバムにおいてはトリオ編成における新しいミニマリズム/アンサンブルを追求しているように思える。

 1曲め“ア・フィールド、ネクスト・トゥ・ナッシング”はブルーノ・デュプラントによる曲で、淡い音色の電子音が持続する静謐な楽曲(このトラックが本アルバムのベーシックとなっているのではないか?)。持続とピッチの繊細なコントロール/コンポジションが素晴らしい。2曲め“グレード・ツー”はリョーコ・アカマの曲。透明な持続音に、ベースの点描的な音。鐘のような響き。電子音の層による静謐な音響アンサンブルだ。3曲め“スリー・プレイヤーズ、ノット・トゥギャザー”はドミニク・ラッシュの曲で、鐘のような響きから幕を開ける。日本の雅楽のような持続や、クリッキーなリズムも刻まれていく。そのうえフィールド・レコーディングされた風や空間のような音(多分、電子音主体のノイズではないかと思う)が鳴り響くのだ。この曲では、さらに音の層が増えており、即興/コンポジションのあいだに、音の揺らめきが生まれている。ラスト4曲めは、リョーコ・アカマによる“グレード・ツー・エクステンデッド”だ。電子音響的な高周波のチリチリしたサウンドが持続し、低音部分は震えるような持続をつづける。

 ブルーノ・デュプラントは「自分はヴァンデルヴァイザー楽派の音楽家ではない」と語っているが、たぶん、彼の目指すべき音は、サウンドのラディカリズムをミニマリズムとアンサンブルとコラボレーションによって生成していく点にあるのではないか。
 静寂と持続の音楽空間を誇る本作は、ほとんどファイル交換によって作り上げられたという。本作では演奏家は、同じ場所・時間で演奏・録音をしていない。しかし実際に会うことなく演奏・録音された本作は、その距離の効果によって独自のサウンドの磁場を形成しているように思えるのだ。反応のアンサンブルではなく、時空間を超えた「応答」のアンサンブル。リアルタイムの反応ではない以上、作曲と即興の境界線は無化していく。
 変わりゆく/移ろいゆく音響の饗宴。その古楽の一瞬の響きを引き延ばしたかのような響き。日本の能楽のような静寂と緊張。それは現代音楽的なコンセプチュアルなミニマリズムではなく、音自体の生成に拘る新しいミニマリズムといえよう。90年代と00年代の即興/音響シーンを経由した2010年代の音楽。ポスト・インプロヴィゼーションから新しいミニマリズムへ。そして、その音は、とても澄みきった響きを獲得しているのだ。

 最後に。ミニマルなイメージのジャケット写真もブルーノ・デュプラントによるものだという。このアルバムの音楽/音響を象徴する見事なアートワークである。

The Body & Thou - ele-king

 昨年、某エナジー飲料協賛、某ベース・ミュージック・イヴェントに招聘されたボディ(The Body)の二人を諸事情でホテルから会場へサウンド・チェックのため連れて行く道中、それまで気にかかっていた質問を投げかけた。

「ハクサン・クローク(Haxan Cloak)とのレコード、最高だったけど、あれライヴでできるの?」
「できないよ。」

……だよね。

 昨年、〈リヴェンジ・インターナショナル(RVNG Intil.)〉からリリースされた『我、ここに死すべし(I Shall Die Here)』はボディのレコーディング音源にハクサン・クロークがリミックス/リエディットを施した秀作である。この晩、彼らが披露したライヴはやはり過去音源で聴ける乾いたテクスチャーが特徴的なドゥーム/スラッジ全開のセットであった。

 ボディにとっては古巣ともいえる〈スリル・ジョッキー〉からリリースされた本作は米国南部のDIYエクストリーム・ミュージック・シーン出身のベテラン2組、ボディとザウ(Thou)によるコラボレーション・アルバムである。両者による異なるヘヴィネスへのアプローチが、疎外/孤立、憂鬱、絶望といった共有のテーマの下に聴者を圧殺、さらなる深淵へと落とし込む。彼らいわく、「黄昏時のダンジョンに迷い、狂王の城跡へ、盟友と肩を並べ、敵の屍を足下に、神秘は解き明かされ、秘宝は発掘される」のようなサウンドだとか……ってベタにメタル過ぎるよ! 中二病だよ!

 もう最近こんなんばっかり書いてる俺ほんと気持ち悪いわー勘弁してよーと思いつつ聴いているこの音源、たしかに圧倒的破壊力で圧殺されるドゥーム/スラッジではあるのだけれども、上記の説明的なメタル的な絶望や鬱屈といったドロドロ感は控えめにカラっと怒れるクラスティな要素が強い。バーニング・ウィッチからアイヘイト、ヌース・グラッシュなどを信奉するクラスティ・ドゥーム・ファンには堪らないだろう。どうやらこの音源、昨年リリースされたヴァイナル・オンリー音源である『愛からの解放(Released From Love)』に新譜『おれが常に憎んでいたのは、おまえだ(You, Whom I Have)』を追加した形でリリースされているようだ。こういう乾いた遅くて重いサウンドはアメリカのバンドならでは。ナイン・インチ・ネイルズ、ヴィック・チェスナットのカヴァーも収録。

 1月末、NYでは「史上最大の暴風雪に見舞われる」との警報があり、住民をあたふたさせた。地下鉄などの交通機関が止まり、食料調達も十分(スーパーマーケットに入るのに長い行列!)「危険なので、家にから出ないように」など住民に呼びかけ、万全で暴風雪に備えた。が、結局、史上最大ではなく、よくある雪の1日で終わった。
 みんなが悶々していた暴風雪警報が出た月曜日の夜、ほとんどのショーがキャンセルの中で、勇敢にもショーを行ったのがゾラ・ジーサス(https://www.zolajesus.com)だ。予定より早めに行われたショーの途中で、彼女は「ついてきて」、トロンボーン・プレイヤーを率い会場の外に出て、1曲「Nail」をアカペラで歌いだすなど、雪ならではのパフォーマンスを披露した。車も通らない、ガランとした雪のストリートにこだまする彼女の声と、それをあたたかく見守るオーディンス。大停電や台風の時といい、ニューヨーカーは災難時でも、エンターテインメントの心を忘れない。因みに、彼女はウィスコンシン出身、雪には慣れたものだったのかもしれない。
https://www.brooklynvegan.com/archives/2015/01/zola_jesus_perf.html



 暴風雪騒ぎから1週間経った今日2月2日も雪は降っていて、外はマイナス10度の世界。雪が降ろうが槍が降ろうがイベントは普通にある。昨日2月1日はスーパーボウル、フットボールの決勝戦。個人的に興味ないが、周りが盛り上がっているので、いやでも目に入ってくる。行き着けのバーに行くと、この日だけは大きいスクリーンを出し、みんなが大画面でスーパーボウルを鑑賞している。お客さんはもちろん、店員も仕事そっちのけで画面を熱く見守っている。点を入れなくても、何か好プレイ珍プレイをするたびに、「おーー!!!」や「ノーーー!!」や、「ぎゃーーー」などの奇声が飛び交うので、ドリンクもうかうかオーダー出来ない。一緒に行った友だちは、接戦の最後の5分は「もう心配で心配でしかたない!!!」と、私の手をぎゅっと握り、自分の事のようにハラハラドキドキしていた。
 結果、ニューイングランドのペイトリオッツが勝利(10年ぶり)。ルールがわからない著者にも、周りの気迫で好ゲームだったことが伝わってくる。
 スーパーボウルで注目されるのは、ハーフ・タイムショー。過去に、マドンナ(w/M.I.A.,ニッキー・ミナージュ)、ビヨンセ(w/ディスティニー・チャイルド)、ブルノ・マーズ(w/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)などが出演しているが、今年はケイティ・ペリーとレニー・クラヴィッツ、ミッシー・エリオット。旬なのか、古いのかわからないラインナップだった。
 そういえば、テロリスト(?)に揺すられ、公開中止になりかけた、問題の映画『インタビュー』のなかで、主役のセス・ローガン(役名アラン)が、北朝鮮の最高指導者の金正恩の戦車に乗った時に、流れてきた曲を聴いて一言「あんた、ケイティ・ペリー聞いてるの?」。著者は、それで初めてケイティ・ペリーを知った。それだけ、彼女が「いま」の大衆音楽を表している。ハーフタイム・ショーの彼女も見事だった。レニー・クラヴィッツもミッシー・エリオットも貫禄抜群だったが、今年の顔はケイティ・ペリーで万場一致。

 ケイティ・ペリーは、メイクやポップなファッションが特徴で、一見今の時代どこにでもいるような女の子。歌がこの上なくうまいとか、ダンスが飛び抜けて上手とかではなく、格好を付けようとせず、素で勝負しているところが、同世代からの共感をかっているのだろう。下積みも長く、所詮ポップスなのだから流通しないと意味がないと、堂に入ったあきらめ感もあるし、彼女のキャラクターや世界観は、見る人を素直にハッピーにさせてくれる。プライヴェートもさらけ出し、ポップスターにも悩みはあるのよと、オーディエンスに近い感覚が現代のスーパースターのあり方なのだ。
 楽曲も親しみやすく耳に残り、カラオケに行ったらみんながシンガロングで歌いたくなるつぼを抑えている。ハーフタイムショーの1曲目に演奏した「ロアー」は聴いているとヴォリュームを上げたくなってしまう。映画で流れた「ファイア・ワークス」も、ヘリコプターを爆破するシーンに使われたが、周りの雰囲気を壊すことなく、シーンにぴったりとはまっていた。実際、彼女の曲は人の生活のなかに入って来ても邪魔しない。そこが現代的で彼女が支持されている理由なのだろう。

 ファイア・ワークスと言えば、スーパーボウルの1日前の1月31日に、ウィリアムスバーグの北の川沿いで大規模な火災があった。N11とケントアベニューの4F建ての貯蔵施設シティ・ストレッジから発炎し、200人以上の消防士が出動し、寒い中消火にあたった(制服に氷柱がしたたっていた)。一駅離れた著者の家の周りさえも灰が飛んできたり、こげた臭いが充満し、窓を開けることが出来ない。周辺の住人お店やレストランは、避難したり休店したり、暴風雪よりも大きい被害を被っている。完全鎮火には1週間ほどかかる見込みだそうだ。ドミノ・シュガー・ビルディングなど周辺ビル/コンドミニアムの契約書類が保管されていたのだが、無残にも焼かれてしまった。ここは、デス・バイ・オーディオやグラスランズなどの音楽会場を閉店に追いやった、ヴァイス・オフィスの真近くでもある。実はあまり報道されていないが同じ頃、グリーン・ポイントでも火災があったのだが、このふたつの火災の関係は? ウィリアムバーグの家賃高騰に対する嫌がらせだと言う噂も飛び交っているのだけれど……。

 スーパーボウルの日、誰もが家でピザやバッファローウィングを食べながらテレビを見ると思われたが、著者がスタジオをシェアしているバンドは「今日ショーがあるんだ」と雪のなか揚々と出て行った。雪+スーパーボウルという悪条件で「人は来るの~?」と思われたが、「友だちがたくさん来てくれた」とご機嫌に話してくれた。彼らは20代前半で、「スーパーボウルなんて、ピザしか食べない年寄りの見る物」と思っているらしい。
 彼らが演奏したのは、トラッシュ・バーという、ウィリアムスバーグの音楽会場。こちらも他の会場と同じく、リースが継続できず(家賃が4倍(!)になると言われたらしい)、3月の閉店が決まった。閉店後は、ブッシュウィックに移る予定らしいが、既にブッシュウィックはヒップスターの聖地、どうなることやら。
 また、元ウィリアムスバーグにあったガラパゴスという音楽会場は、ダンボで数年営業した後、来年ニューヨークを飛び出し、デトロイトに移ることを決めた。NYの小さなアパートメントと同じ値段で、デトロイトでは10,000スクエアフィートの湖つきの会場が手に入るらしい。ガラパゴスはウィリアムスバーグ時代は、ガラス張りの外から見える会場にある湖がトレードマークだった。ダンボに移った時点で、会場に湖なんて夢のまた夢と忘れられていたが、デトロイトで初心に戻るのだろう。ゴーストタウンと言われるデトロイトだが、そろそろ移住してもいいかもと思えるようになったのは新たな希望だ。アメリカの地方都市がこれからなるべき姿なのかもしれない。もちろんいまもNYは特別で、人が集まりたい場所であることは否定できない。が、ウィリアムスバーグの家賃問題は深刻極まりないし、火事も起こる(!)。地価問題と戦いながら、バンドは残されたところで演奏して行く。露出されなければ意味がないが、転がっているチャンスを、掴むことも可能な場所だから……。

スーパーボウル
https://www.nfl.com/superbowl/49
https://www.billboard.com/articles/events/super-bowl-2015/6458199/katy-perry-super-bowl-xlix-halftime-show-review

ウィリアムバーグの火事
https://bedfordandbowery.com/2015/01/photos-six-alarm-fire-on-williamsburg-waterfront/
https://bedfordandbowery.com/2015/02/photos-epic-warehouse-fire-enters-day-2-in-williamsburg/

トラッシュバー
https://www.thetrashbar.com

ガラパゴス
https://www.galapagosartspace.com

 さて、ブレイディみかこ氏による本作レヴューはご覧いただいているだろうか。いよいよこの週末から公開となる『ニック・ケイヴ/20,000デイズ・オン・アース』、ele-kingではご招待枠をいただいたので、観覧を決めかねていたかたへチケットをプレゼントいたします!

・2月8日(日)24:00を締切としてご応募下さった方から抽選で3組6名様に、2月10日(火)着で手配させていただきます
・チケットは新宿シネマカリテさんのみで有効です
・下記要綱にしたがってご応募ください

■ご応募方法
・件名を「ニック・ケイヴ チケットプレゼント応募」として、info@ele-king.netまでご応募ください(Eメールのみの受付となります)
・本文には「郵便番号/ご住所/お名前(代表者)/枚数」をお書きください
・当選された方には2月9日(月)中にチケットの発送と、「発送済み」のご連絡を差し上げます

※ご応募メールは抽選後破棄させていただき、個人情報につきましても本件以外の目的に使用させていただくことはございません。


映画情報:https://nickcave-movie.com/
新宿シネマカリテ:https://qualite.musashino-k.jp/
※本チケットプレゼントについてのお問い合わせは劇場では受付できません

Dub Syndicate - ele-king

 2014年はレゲエ・ファンにとって悲しみの1年だった。ホープトン・ルイス(歌手)、ジョン・ホルト(歌手)、フィリップ・スマート(ダブ・エンジニア/プロデューサー)、ウェイン・スミス(歌手)、バニー・ラグス(サード・ワールド)が死んで、スタイル・スコット(ドラマー)は10月に殺害された。58才だった。
 ジャマイカのスコットは、彼を巻き込んだ残忍な事件の前に、ダブ・シンジケートとして11年ぶりとなるオリジナル・アルバムの録音を終えていた。アルバムには、リー“スクラッチ”ペリー、U-ロイ、バニー・ウェラーといったレゲエの巨匠たちが参加した。ミキシングは、いままでのようにロンドンのエイドリアン・シャーウッドが担当した。こうして、2015年1月、ジャマイカの名ドラマーのひとり、スタイル・スコットの遺作はドイツのレーベルからリリースされた。

 スコットの死は、音楽のシーンにとって大きな喪失に違いないが、しかし彼の遺作は、そうした感傷をさっ引いたところにおいて、思いも寄らぬ悦びをもたらす傑作である。なんてことはない、相変わらぬレゲエ/ダブだ。が、「あれ、こんなに良かったっけ?」と、嬉しい驚きがあった。いちど聴いて、そしてもういちど聴いて、家にいるときに何度も繰り返し聴いている。ホント、気持ちが晴れ晴れとする。

 スタイル・スコットは、1970年代後半、クリエイション・レベルやルーツ・ラディックスといったバンドのドラマーとして頭角を表している。前者はルーツ・レゲエ・バンド、後者はダンスホール・スタイルへの橋渡し的なバンドだった。また、クリエイション・レベルがエイドリアン・シャーウッドと巡り会ったことで、スコットはザ・スリッツや〈ON-U〉レーベルと関わりを持つようになった。シャーウッドとスコットのふたりのパートナーシップは、1980年代の〈ON-U〉の音楽の骨格となった。ダブ・シンジケートもそのなかで生まれている。
 そんなわけで、スコットは、かたや〈Greensleeves〉で、かたや〈ON-U〉で、あるいはその他さまざまなレーベルの作品でドラムを叩いている。レゲエ・ファンであれ、パンクであれ、1970年代後半から1980年代前にかけてのスコットのドラミングを聴いてない者はいないだろう。

 ダブ・シンジケートの作品は、バンドがジャマイカで録音した素材を、ロンドンでシャーウッドがミックスしたものである。クリエイション・レベルの名作『スターシップ・アフリカ』(1980年)を聴けばわかるように、シャーウッドのダブ・ミキシングは、よりテクノロジカルなアプローチを具現化している。とくに初期は極端な電気処理を多用した。自家製のミキサーを使ったキング・タビーともポンコツを再利用したリー・ペリーとも違って、UKにはまともな機材があった。そうした環境面もこのプロジェクトの個性に結びついている。
 テクノ・ファンに〈ON-U〉好きが多いのは、エレクトロニックであることもさることながら、スコットが創出するリディムのミニマリズムが魅力的なグルーヴを有しているからだろう。オリジナル・アルバムとしては11年ぶりに録音された『ハード・フード』でも、彼のリディムは冴えに冴えている……いや、それどころではない。ひょっとしたら本作は、ダブ・シンジケートの数ある作品のなかでもベストなんじゃないかと思ってしまうほどの輝きがある。

 シャーウッドが情報量を削ぎ落としたストイックなミキシングに徹しているのが良い。ダブ・シンジケートのトレードマークである派手な電子効果音は、極力抑えられている。ときおり音響は揺らめくものの、基本的には心地良いリズムがたんたんと続いている。だだっ広い空間のなかを鼓動がこだまして、彼方で帚星が流れる。1曲目の、ほとんどドラム&ベースの展開を聴いたらファンは泣くかもしれないけれど、アルバムのなかに感傷的な要素はない。“Jah Wise”の透明な広がり、“Bless My Soul”の惚れ惚れとする美しさ、“Love Addis Ababa”の陶酔的な美しさ……などなど、「らしさ」は円熟の域に達している。好むと好まざるとに関わらず、人生は永遠にぶっ飛んではいられない。
 もっともスタイル・スコットその人の人生は、アルバムのタイトルが暗示するように「ハード(厳しい)」なものだったのだろう。しかし、僕がこの作品を推薦する理由は、この作品がハードだった彼の人生を反映しているからではない。むしろアルバムには、温かさ、優しさのようなものが滲み出ているからである。自分の内側から光が灯るように。

■5 classics of Dub Syndicate‎

The Dub Syndicate‎
The Pounding System (Ambience In Dub)

On-U Sound  1982

Dub Syndicate Featuring Bim Sherman & Akabu
Live At The T+C

On-U Sound  1993

Lee "Scratch" Perry & Dub Syndicate
Time Boom X De Devil Dead

On-U Sound  1987

Dub Syndicate
Stoned Immaculate

On-U Sound  1991

Dub Syndicate
Strike The Balance

On-U Sound  1989

interview with NRQ - ele-king

 インディ、ライヴハウス、なんでもいいけれども東京のシーンをみまわしたとき、ことベースにかぎれば、近年メキメキ頭角を現してきているのが服部将典であることに異論はあるまい。いや、べつにベースにかぎらなくともよいのであります。アコースティックと(NRQでは出番はないけれども)エレクトリックを弾きわけ、ピチカットにしろアルコ(弓)にせよ、ジャズを出自とするプレイヤーともちがう価値観を演奏に投影する服部の存在は、2010年代のロックなる分野を固定化したエンタメと歴史をひきうけたエクレクティシズムとに二分化するなら、まさに後者を体言するものではないか。『オールド・ゴースト・タウン』所収の“魚の午前”“余分な人”、『のーまんずらんど』の“合間のワルツ”に“春江”、このたびの『ワズ ヒア』の“ショーチャン”といった味わい深い楽曲の作曲者でもある服部将典と、牧野琢磨宅の2階でお話しした。

ギターにはソロがあるじゃないですか。その頃(ベースをはじめた高校生の頃)はそういうのがない、ひたすら同じ役割がつづく感じが居心地よかったんですね。


NRQ - ワズ ヒア
Pヴァイン

RockJazz

Tower HMV Amazon iTunes

服部さんは最初からベーシスト志望だったんですか?

服部:最初はエレクトーンで、それが小学生の頃。自発的に選んだ楽器はギターです。高校時代はイングヴェイ・マルムスティーンを聴いて早弾きの練習をしていました。

それは……意外ですね(笑)。

服部:そうですか?

ハードロックやへヴィメタルはだれしも通る道かもしれないですが。それってスキャロップ加工のストラトでハーモニックマイナー・スケールを弾きまくるみたいなのですよね?

服部:そうそう(苦笑)。あとはハロウィンとかクイーンとか。

総じていえるのは、メロディが強い音楽が好きだったということ?

服部:そうかもしれません。そのあとにパンテラの衝撃があって、メロディがないリズムだけの音楽を聴くようになったんです。

反動ですか? パンテラというと90年代なかばですね。

服部:高校生の頃だからそうです。そのときはまだベースを弾いていませんでした。弾きだしたのは高校3年ですから。バンド組むことになって、よくあるパターンですけど、ベーシストがいないから、やってといわれて、じゃあやろうかな、と。それでギターや鍵盤に戻ることなくいまにいたります。ギターにはソロがあるじゃないですか。その頃はそういうのがない、ひたすら同じ役割がつづく感じが居心地よかったんですね。

アコベをはじめたのは大学生になってから?

服部:大学4年ですね。

そんなに早いわけではないですよね。

服部:けっこう遅いと思います。

アコースティック・ベースはだれかに憧れてはじめたんですか?

服部:日本のハードコアにザ・ルーツというバンドがいて、最初はそのバンドに憧れてはじめたんですね。サイレント・アップライトでバチバチ、スラップするスタイルですね。

ジャズではないんですね。

服部:ぜんぜん。でも(アコースティック・ベースを)買うと、あいつ持ってんぞということで、そのころ軽音楽部に入っていたので、いろんなバンドで弾くようになったんですね。その軽音楽部にいた連中はいまも音楽活動をしていて、角田波健太はひとつ下でその代の人らがわりとしっかりオリジナルをつくってライヴハウスで活動していて、そのへんの人たちはいまでもいっしょにやったりしますね。

その頃は曲もつくってましたか?

服部:曲をつくるようになったのは東京に出てきてからです。たぶん最初につくったのは、僕は名古屋の芸大だったんですけど、その同窓生で映画をつくっている人に音楽をつけてほしいといわれたからなんです。その人とはそんなに親しくはなかったんですけど(笑)、仲介されてやることになった。曲なんかしっかりつくったことはなかったんですけど、まあやってみようかなって。曲といっても映画の音楽なので、断片的なフレーズというか雰囲気づくりみたいなものでしたけどね。

曲はベースでつくったんですか?

服部:ベースも使いつつ、家でタンバリンを重ねたり小物を寄せ集めたりしてつくりました。

最初が劇伴だったというのは考えようによっては象徴的ですね。

服部:そうかもしんないですね。

自我を解放するより、対象に寄り添う。

服部:それはずっとあるかもしれないですね。


(曲は)忘れた頃に、これはいいなくらいのものを引っ張ってくることが多いですね。そうやって自己対話をするというか時間のフィルターにかけないと怖いのかもしれない。僕は怖がりなんですよ。

NRQでは服部さんはアルバムごとに1~2曲提供されているじゃないですか? NRQに曲を書いているときも服部さんのなかにはNRQ像がしっかりあって、そのなかで曲をどうするかと考えるんですか?

服部:曲を僕は鼻歌でつくるんですよ。そこに適当にギターを重ねてみたり、でも元が鼻歌なので、それを歌っていたときは、だれとやるための音楽とは考えていないですよね。今回の“ショーチャン”はちょっと考えましたけどね。新曲が出そろったときに今回のアルバムはけっこうしっかりしているなと思って、バカみたいな曲をやりたいなと思って、その点は意識しました。

クレジットに「作曲」のほか「アレンジ=編曲」とあるのは、牧野くんによれば服部さんは総譜を書いてきた、ということでしたが。

服部:そうなんですかね(笑)?

自分のことじゃない(笑)。

服部:(笑)いままでは中尾さんや吉田くんに主メロ以外を譜面に書いてこう弾いて、とお願いするようなことはなかったので、試しにやってみたんです。それで「アレンジ」のクレジットがあると思うんですけど、「アレンジ」といっても全体像が頭のなかにあったというよりは後づけなんですよ。何回かライヴでやって、あくまでそれをふまえたものなんですね。それにギターについてはとくに指定もなかったんですよ。吉田くんも牧野くんもそういったやり方をすることがあるので、彼らの曲にも「アレンジ」とクレジットしてもいいと思うんですけどね。

曲はそれぞれ作曲者が主導権を持つということなんですね。

服部:いちおうそうなっています。それはミックスまでふくめてそうです。

私は服部さんの曲はアルバムのなかでいいアクセントになっていると思うんです。『のーまんずらんど』の三拍子の曲(“合間のワルツ”)や“春江”などはアルバムに多様性をもたせつつ、全体を〆ている。服部さんはそういう全体の流れというか、アルバムのなかでどういう曲がほしいかということを考えてつくるのかなと思っていました。

服部:後出しではあります。曲の断片はいろいろあるので、つくっている段階ではなにも考えていないんですが、どの断片を使おうか、NRQではこれがいいかなというのがだんだんわかってくるんですね。

断片のストックはいっぱいあるんですか?

服部:単に断片という意味ではいっぱいあります。それをパソコンにデータでとりこんだり、携帯に(鼻歌で)吹きこんだりしますね。ベースで弾いたのもあるんですけどね。それも楽器で弾いているだけで鼻歌みたいなものです。それらをたまに聴き返すんです。寝かせないと自分はダメなんですね。これできた、といってポンと出す自信はない。忘れた頃に、これはいいなくらいのものを引っ張ってくることが多いですね。そうやって自己対話をするというか時間のフィルターにかけないと怖いのかもしれない。僕は怖がりなんですよ。

人にどう捉えられるかということですか?

服部:それもありますし、自分の表現がどう評価されるかというのは不安ですよ。

服部さんはかなりいろんな方と共演されてきていますが、それでもそうなんですか?

服部:メチャメチャあります。ライヴ終わった後とか、毎回怖いですもん。

それだと音盤を出すには相当な決意が必要になる気がしますが。

服部:逆にそれがないのはバンドだからです。『オールド・ゴースト・タウン』はまだ個人が強い気がして、僕はいまだにあまり聴けないんです。自分の演奏に耳がいって、怖くて聴けない。『のーまんらずらんど』になるとそれが消えて、録音が終わってすぐにリスナーとして聴ける感じがあった。客観的に聴けるので、自分のなかでいいなという判断がついていて、どう評価されようが聴き手の問題でしかなくなるんです。

『ワズ ヒア』はどうでした?

服部:『のーまんずらんど』と同じでしたね。

今回は録音の関係で低音の出も強いですよね。各楽器が独立してベースも前に出てきた。あらためて、オーソドックスでありながらノートの選び方やフレーズのつくり方に服部さんならではのものがあると思いました。

服部:僕もそれなりに上手くなっているんじゃないかなと思うこともあるんですけど、ふとむかしの録音を聴くと想像より下手じゃないと思うこともあるんです(笑)。となるとあまり成長していないんじゃないかといううれしいのか悲しいのかわからなくなることもあるんですよ(笑)。

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僕は普通になるように勉強しているところもあるんです。普通になるというか、いちばん安定するところにベースの音を置きたいと思うんです。

服部さんはNRQはじめ、穂高亜希子さんエミ・マイヤーさん、多数のセッションに参加されていますが、そうやって勉強している意識は──

服部:もちろんあります。さっき松村さんにノートの選び方がおもしろいといっていただきましたけど、僕は普通になるように勉強しているところもあるんです。普通になるというか、いちばん安定するところにベースの音を置きたいと思うんです。それが足りない意識はずっとあるんです。音大を出ているわけじゃないし、理論的な下支えがあるわけではない。理屈じゃなくて反射的にいま鳴っている音にもっとも安定する場所に音を置けて、でもそのうえであえてこっちをやるんだというのをやりたい気持ちがあるんです。それもたぶん自分の演奏に感じる怖さとかぶる部分もあると思うんです。直感だけで自分はこうだとがんがん進んでいけるタフは僕にはちょっとない。

それはベースという楽器の役割と重なるものですか?

服部:そうですね(とやや留保するように)。

たとえば、エミ・マイヤーさんと永井聖一さんの『エミ・マイヤーと永井聖一』はJポップですよね。その場合、Jポップの枠内でもっとも安定するフレーズを探すということですか。

服部:あのアルバムのレコーディングはけっこう楽しかったんですよ。普段やらない、でもJポップってふだん何気なく耳にするじゃないですか。聴いていたけどやってこなかった音楽をできる楽しさ、というか、いわれてみれば、ちょっとしたコピー感覚みたいなものが、それがいいか悪いかはさておき、あったかもしれません。

アコベとエレベだと服部さんは自分はどちらの演奏者だと思いますか?

服部:いまはアコベですね。

このふたつはともにベースですが、じつはまったくちがう楽器だと思うんです。それを両立させるのはたいへんじゃないですか?

服部:たいへんです――けど考えないようにしています(笑)。たいへんだと思うとやりたくなくなっちゃう。流れでエレキ・ベースをまた弾くことになったので、再開した年はけっこう後悔していたんですよ。そう考え出すとどんどんネガティヴになっていっちゃって(笑)、どっちも放り出したくなったりもしたんですが、いまはどっちも楽しいし、あまり考えないようにしています。ウッド・ベースにはウッド・ベースならではの雰囲気があるじゃないですか?
 でもエレキ・ベースはものすごく剥き出しだと思うんです。エレキ・ベースには空気感がないぶんフレーズが問われる。そこがすごくおもしろくて、その経験がウッド・ベースにフィードバックされているところはあります。いまはそれが相乗効果になっていると思うんです。

服部さんのいまの当面の目標はありますか? NRQでの活動にかぎらず。

服部:自分の作品はつくりたいとは思いますね。純粋に自分の作品はまだ出したことがないので。

どういう形態でつくります?

服部:バンド形式ではないでしょうね。

ベース・ソロですか、バール・フィリップスみたいな?

服部:そういうのはたぶんできない(笑)。曲をいっぱいつくって、ひとりでできるのを選んでそれをちゃんとやりたいとは思います。

NRQのアルバムに採用している各人の曲数ってだいたい同じじゃないですか? 牧野くんがいちばん多くて、吉田さん服部さんの順ですよね。ルールでもあるんですか?

服部:そんなことはないですよ(笑)。がんばりしだいですけど(笑)。曲数を増やすとか、そういった作戦は僕のなかであまり練らないようにしているんですよ、あくまで流れのなかでやっていこうと思っています。


自分は芸大に行っていて最近はあまりないですけど、芸術やアートに対するアレルギーがあったんです。僕はアーティストより職人になりたい気持ちが強いんです。

いまは演劇の劇伴の仕事もやられているんですよね。

服部:さほど数があるわけじゃないですけどね。

新たに進出したい分野はありますか?

服部:仕事ということでいえば、もっとギャラがいい仕事をしたいとは思いますけど(笑)。

そんなナマナマしい話してんじゃないですよ(笑)。服部さんはどんな仕事でも断らない?

服部:基本的に断らないです。

職業意識ということですか?

服部:職人に対する憧れのようなものです。自分は芸大に行っていて、最近はあまりないですけど、芸術やアートに対するアレルギーがあったんです。僕はアーティストより職人になりたい気持ちが強いんです。

職人的なベーシストというだれを思い出しますか?

服部:僕のなかでは松永(孝義)さん、あとは渡辺等さん。

松永さんには影響は受けましたか?

服部:受けていると思います。どこがといわれるとわからないですけど。

松永さんも渡辺さんもタテヨコどちらも弾きますね。ああいうふうになりたいというより彼らの職人的な佇まいに憧れがある?

服部:そうです。

演奏者にはイノヴェーションへの憧れもあると思うんです。ベースだとジャコ・パストリアスのようになりたい人はいっぱいいると思うんです。服部さんにはそういった考えは?

服部:それはまったくないです。職人的にしっかり下支えして、そのうえで自分のやりたい小さい作品ができたらいいと思うんです。自分の作品は職人性とは関係のないものですね。まだつくっていないのでわからないですけど。

この3作、7年くらいNRQを続けて、中尾さんとのリズム隊はかなりこなれてきたと思いますが、そもそもNRQにはリズム隊という概念はあるのでしょうか?

服部:その考えはないかもしれないですね。全体のアンサンブルはありますけど、リズムと上物の関係性はないかもしれない。ほかのバンドでやるときは、けっこうドラムのバスドラを意識して合うように探っていくんですけど、NRQではそういった作業はしたことはないですね。いまいわれるまでまったく無意識だったんですが。

演奏するときはなにをいちばん聴いていますか? NRQの演奏の中心になっているものということですが。

服部:完全に牧野くんのギターだと思います。ギターはリズム、メロディ、ハーモニー全部の要素をもっていて全体の軸になっているということですね。牧野くんはギターでベースラインを弾くこともあるので、彼のギターとの兼ね合いは考えますね。

それでやりにくいとかやりやすいということも――

服部:いや、NRQはやりやすいです。でもあまり自由は感じない。ベースラインをきょうはちょっと変えてみようとか、そういう選択肢はNRQでは僕はあまり感じないです。思うに、牧野くんのギターには弾いていなくてもベースラインが決まってくる感じがするんです。吉田くんや中尾さんがどう考えているかはわかりませんし、曲にもよりますけど、僕にとってはわりと固定している気がします。

でもアルバムを追うごとに自由度は高まっている気もしますね。

服部:それは感じます。“日の戯れ”とかはとくにそうですよね。あと“門番のあらまし”は自分的には新しいというか3枚めならではだと思います。NRQのアンサンブル法があるわけじゃないですけど、それに則ってそこにラテンを加えてみたような、ちょっと余裕というか遊び心が出る余地ができた気がします。

その変化がNRQの成熟を物語っているのかもしれませんね。そのなかで私は服部さんの曲ももっと聴きたいので、次も楽しみにします。

服部:精進します(笑)。

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