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Dub Syndicate

DubReggae

Dub Syndicate

Hard Food

Echo Beach/ビート

Amazon

野田努   Feb 05,2015 UP
E王

 2014年はレゲエ・ファンにとって悲しみの1年だった。ホープトン・ルイス(歌手)、ジョン・ホルト(歌手)、フィリップ・スマート(ダブ・エンジニア/プロデューサー)、ウェイン・スミス(歌手)、バニー・ラグス(サード・ワールド)が死んで、スタイル・スコット(ドラマー)は10月に殺害された。58才だった。
 ジャマイカのスコットは、彼を巻き込んだ残忍な事件の前に、ダブ・シンジケートとして11年ぶりとなるオリジナル・アルバムの録音を終えていた。アルバムには、リー“スクラッチ”ペリー、U-ロイ、バニー・ウェラーといったレゲエの巨匠たちが参加した。ミキシングは、いままでのようにロンドンのエイドリアン・シャーウッドが担当した。こうして、2015年1月、ジャマイカの名ドラマーのひとり、スタイル・スコットの遺作はドイツのレーベルからリリースされた。

 スコットの死は、音楽のシーンにとって大きな喪失に違いないが、しかし彼の遺作は、そうした感傷をさっ引いたところにおいて、思いも寄らぬ悦びをもたらす傑作である。なんてことはない、相変わらぬレゲエ/ダブだ。が、「あれ、こんなに良かったっけ?」と、嬉しい驚きがあった。いちど聴いて、そしてもういちど聴いて、家にいるときに何度も繰り返し聴いている。ホント、気持ちが晴れ晴れとする。

 スタイル・スコットは、1970年代後半、クリエイション・レベルやルーツ・ラディックスといったバンドのドラマーとして頭角を表している。前者はルーツ・レゲエ・バンド、後者はダンスホール・スタイルへの橋渡し的なバンドだった。また、クリエイション・レベルがエイドリアン・シャーウッドと巡り会ったことで、スコットはザ・スリッツや〈ON-U〉レーベルと関わりを持つようになった。シャーウッドとスコットのふたりのパートナーシップは、1980年代の〈ON-U〉の音楽の骨格となった。ダブ・シンジケートもそのなかで生まれている。
 そんなわけで、スコットは、かたや〈Greensleeves〉で、かたや〈ON-U〉で、あるいはその他さまざまなレーベルの作品でドラムを叩いている。レゲエ・ファンであれ、パンクであれ、1970年代後半から1980年代前にかけてのスコットのドラミングを聴いてない者はいないだろう。

 ダブ・シンジケートの作品は、バンドがジャマイカで録音した素材を、ロンドンでシャーウッドがミックスしたものである。クリエイション・レベルの名作『スターシップ・アフリカ』(1980年)を聴けばわかるように、シャーウッドのダブ・ミキシングは、よりテクノロジカルなアプローチを具現化している。とくに初期は極端な電気処理を多用した。自家製のミキサーを使ったキング・タビーともポンコツを再利用したリー・ペリーとも違って、UKにはまともな機材があった。そうした環境面もこのプロジェクトの個性に結びついている。
 テクノ・ファンに〈ON-U〉好きが多いのは、エレクトロニックであることもさることながら、スコットが創出するリディムのミニマリズムが魅力的なグルーヴを有しているからだろう。オリジナル・アルバムとしては11年ぶりに録音された『ハード・フード』でも、彼のリディムは冴えに冴えている……いや、それどころではない。ひょっとしたら本作は、ダブ・シンジケートの数ある作品のなかでもベストなんじゃないかと思ってしまうほどの輝きがある。

 シャーウッドが情報量を削ぎ落としたストイックなミキシングに徹しているのが良い。ダブ・シンジケートのトレードマークである派手な電子効果音は、極力抑えられている。ときおり音響は揺らめくものの、基本的には心地良いリズムがたんたんと続いている。だだっ広い空間のなかを鼓動がこだまして、彼方で帚星が流れる。1曲目の、ほとんどドラム&ベースの展開を聴いたらファンは泣くかもしれないけれど、アルバムのなかに感傷的な要素はない。“Jah Wise”の透明な広がり、“Bless My Soul”の惚れ惚れとする美しさ、“Love Addis Ababa”の陶酔的な美しさ……などなど、「らしさ」は円熟の域に達している。好むと好まざるとに関わらず、人生は永遠にぶっ飛んではいられない。
 もっともスタイル・スコットその人の人生は、アルバムのタイトルが暗示するように「ハード(厳しい)」なものだったのだろう。しかし、僕がこの作品を推薦する理由は、この作品がハードだった彼の人生を反映しているからではない。むしろアルバムには、温かさ、優しさのようなものが滲み出ているからである。自分の内側から光が灯るように。

■5 classics of Dub Syndicate‎

The Dub Syndicate‎
The Pounding System (Ambience In Dub)

On-U Sound  1982

Dub Syndicate Featuring Bim Sherman & Akabu
Live At The T+C

On-U Sound  1993

Lee "Scratch" Perry & Dub Syndicate
Time Boom X De Devil Dead

On-U Sound  1987

Dub Syndicate
Stoned Immaculate

On-U Sound  1991

Dub Syndicate
Strike The Balance

On-U Sound  1989

野田努