「S」と一致するもの

Aphex Twin - ele-king

 えー、先日お伝えしたエイフェックスの謎の12インチ「Houston, TX 12.17.16」ですが、さっそく Discogs に登録されています。一昨日確認したときは4万3千円の値で出品されていたんですが、今日確認したら5万8千円に上がっていました。ひええ。ちなみにそれは、いちばん安いコピーの値段です。444万円で出品されているコピーもあります。ひええええ。アホですね。たいていのひとの年収を超えています。もはやギャグです。でもそういう「お祭り」のような事態を引き起こすことこそがエイフェックスの狙いだったのだとしたら、今回の限定リリースはそれ自体が非常によくできたポップアートであると言ってもいいのかもしれません。

 どんなサウンドなのかが気になりますが、購入者が音源を YouTube にアップしています。けっこうカッコイイです。

 Discogs によると、曲名はA面が「no stillson 6 cirk」で、B面が「no stillson 6 cirk mix2」。盤には「WAP348」と、ちゃんと〈Warp〉の品番も振られているようです。しかし、いまだ〈Warp〉のウェブサイト上では何もアナウンスされていません。続報を待ちましょう。

Hope Sandoval And The Warm Inventions - ele-king

 音楽がなしうる最良なことはなんでしょう? という質問をぼくはミュージシャン相手によくする。自分の意識を変える、気づきに契機になる……いろいろな人がいろいろな意見を述べる。どれも正しいと思うけれど、いまぼく自身がその質問に答えるなら、まずそれは酔えるからと言うだろう。生産的ではないし、それでは変革など起こらない。だが、ぼくが音楽を好きになったのは、陶酔できるからだった。学校や家のこともすべて忘れることができる。パンク・ロックも何かをしでかそうと、政治的な関心から聴いたわけではない。最初のうちは、ハマっていたかっただけ。音楽は最高のシェルターである。
 
 ホープ・サンドヴァルはそういうシンガーだ。彼女が歌えば景色は変わる。部屋は違う世界になる。すべてを忘れ、音のなかに沈むことができる。サンドヴァルは90年代にマジー・スターとして過ごした後、ザ・ウォーム・インヴェンションズの力を借りて、2001年に『Bavarian Fruit Bread』という名盤を発表している。ぼくはこのアルバムの素晴らしさをいつでも簡単に説明できる。これほど黄昏が似合う音楽はないと。知らない人は“On The Low”という曲を聴いてくれればいい。
 それから彼女は2009年にもアルバムを出しているだけれど、残念なことに前作ほど印象的なものではなかった。彼女の気体めいた声は変わらずも、決定的な旋律に乏しく、黄昏どきには『Bavarian Fruit Bread』をふたたび訪ねるしかなかった。
 なので、7年ぶりの3枚目『Until The Hunter』にも疑念がなかったわけではない。しかしCD購入にはなんの迷いはなかった。ホープ・サンドヴァルの新作なのだから。
 話は変わるが、サンドヴァルは、ここ数年、地味に作品を出している。たとえばマジー・スターとしてのシングルは2014年に出したり、2016年にはマッシヴ・アタックの新曲にもフィーチャーされていた。マッシヴ・アタックはこれで2回目の起用。彼女とマッシヴ・アタックが組むとはそれはもう黄昏どころではない。インクのように黒い真夜中になる。生きていれば、そのぐらいのほうが相応しい夜もある。
 
 結果からいえば『Bavarian Fruit Bread』にはおよばないものの、『Until The Hunter』には前作よりも佳曲が揃っている。良いアルバムだし、もし君がまだ彼女の音楽を知らないという、じつにもったいない人生を歩んでいるなら、最初の1枚として聴くのもアリだ。この、歌とギターのアルバムを──
 2曲目の“ The Peasant”におけるアコースティック・ギターとスライドギターの序奏を聴いたとき、たぶん、ほとんどのファンは嬉しかったはずだ。特筆すべき曲は、ほかに4曲目の“Let Me Get There”。カート・ヴァイルとのデュエット曲で、ふたりがハモるメロディはアルバム中もっとも滑らかで、キャッチーだと言える。それはひとりでとことん悦にいる類の光沢だ。
 アルバムで最高の曲は、“The Hiking Song”。間違いない。アコースティック・ギターのアルペジオは完璧なファンタジーを用意して、サンドヴァルの美しい歌声を迎え入れる。さあ丘に登って──と彼女は歌っている。何もかも忘れて丘に登ろうじゃないか。

Autechre - ele-king

 クラブ・ミュージックを聴くときの耳を用意するか。それとも実験音楽や現代音楽を聴くときの耳を用意するか。それによってオウテカの作品に対する評価は異なってくるだろう。
 前身のレゴ・フィートの音源を聴けばわかるように、オウテカのルーツはエレクトロやヒップホップにある。実際、90年代前半のかれらは〈Warp〉の「A.I. シリーズ」に参加する一方で、〈Mo' Wax〉のコンピレイション『Headz』にもトラックを提供していた。つまりかれらの音楽は、テクノとして聴かれると同時にアブストラクトなヒップホップとしても受容されていたのである。とはいえもちろん、「知性派」であるところのショーン・ブースとロブ・ブラウンのふたりは、誰にでもわかりやすい形でエレクトロやヒップホップを鳴らしていたわけではない。かれらのサウンドは「ポスト・ファンク」とでも形容すべき、あるいはわが編集長のかつての言葉を用いれば「メタ・ファンク」とでも呼ぶべきもので、決して万人に受け入れられるような大衆的な音楽ではなかった。にもかかわらず、ある時期までのかれらの音には、優れたポップ・ミュージックの持つ最高の快楽のようなものが具わっていたように思う。どれほど尖鋭的な試みをおこなおうとも、かれらの鳴らすサウンドの根底にはエレクトロやヒップホップに対する情熱が横たわっていた。そのように、テクノやヒップホップといったポップ・ミュージックとしての側面と、実験的あるいは前衛的な現代音楽としての側面とを絶妙なバランスで両立させていたのが90年代のオウテカだったのである。
 そのバランスが崩れていったのはいつ頃からだったろう。分岐点のひとつに『Confield』があったのは間違いないが、よりポップへの志向との決別が明確になったのは『Draft 7.30』だったろうか、それとも『Untilted』だったろうか、あるいは『Quaristice』だったろうか。
 いま振り返ると、『Confield』以降のオウテカの歩みは、どんどんポップさを切り捨てていく行程だったように思われる。もちろん、それはかれらの作品のクオリティが下がっていったという話ではまったくないし、かれらのヒップホップに対する情熱が失われていったということでもない(ショーン・ブースは『Draft 7.30』がリリースされたときのインタヴューで、ティンバランドやネプチューンズやジェイ・Zの独自性について語り、ブリトニー・スピアーズの“I’m A Slave 4 U”についても「良かった」という発言を残している)。だがかれらの、ポップとエクスペリメンタルとの間でかろうじて保たれていた、あのあまりにも危うい均衡にこそ魅力を感じていたリスナーには、00年代以降のかれらのサウンドはやたら浮世離れしたものに聴こえていたのではないだろうか。
 もしかしたら本人たちもそのことを自覚していたのかもしれない。10年代に入ってからのオウテカは、少しずつかつての均衡感覚を取り戻そうともがいていたように見える。そして、その長きにわたるリハビリを経てリリースされた『elseq 1–5』は、ついにかれらが往年の絶妙なバランス感覚を取り戻したことを告げている。

 通算12作目、『Exai』以来3年ぶりとなるこのアルバムは、フィジカルでは一切リリースされず、かれらのウェブサイト上でのみ販売された。前作も2枚組の大作だったが、今作はそれをはるかに上回る規模の超大作で、タイトルに「1」から「5」と冠されているように、CDに換算すると5枚組に相当するヴォリュームである。それゆえそのすべてを一気に聴き通すのにはかなりの体力を必要とするが、しかし不思議なことに忍耐力はそれほど必要ない。どういうことかというと、『elseq 1–5』は、00年代のオウテカの作品と比べて、かなりポップに仕上がっているのである。
 先行公開された“feed1”こそつい身構えてしまうような緊張感を醸し出しているものの、 “c16 deep tread”はオウテカらしいインダストリアルなヒップホップだし、ハードコア風パーティ・チューンの残骸を貼り付けたかのような“13x0 step”の出だしや、“latentcall”終盤のエレクトロには思わず胸が熱くなる。“chimer 1-5-1”にはかれらのキュートな部分が表れているし、“c7b2”や“mesh cinereaL”はある種の陽気さないし遊び心に溢れている。メロディアスな“pendulu hv moda”や“foldfree casual”は「EP7」に入っていてもおかしくない。このように、この超大作には「音を聴いてエンジョイすること」を促すトラックが数多く収録されている。
 とはいえ、かれらは何もヒット・ソングを量産する商業機械になったわけではなく、あくまでエレクトロニック・ミュージックのレフトフィールドを突き進む開拓者であることを堅持している。例えば“7th slip”には『Confield』のような官能的な実験があるし、複雑な展開を見せる長尺の“elyc6 0nset”には民族音楽のように聴こえる高音が差し挟まれていたり、かすかにダブ・テクノの香りを漂わせる“freulaeux”には4つ打ちと誤解させるような仕掛けが施されていたり、かれらはいまでも「“慣らされてしまったことへの服従”に抵抗する」ことを忘れていない。
 要するに、このアルバムではダンスへの欲求と思考への欲求とが、ポップへの志向とエクスペリメンタルへの志向とが、理想的な関係を結んで同居しているのである。オウテカはいまふたたび、エクスペリメンタリズムの使徒であることと同時に、ポップ・ミュージックの担い手であることも引き受けようとしている。この長大な『elseq 1–5』は、かれらの新しいマニフェストみたいなものだろう。だから僕たちは実験音楽や現代音楽を聴くときの耳ばかりでなく、クラブ・ミュージックやポップ・ミュージックを聴くときの耳も用意して、思う存分この素敵な超大作を楽しんだらいいのだと、そう思う。
 オウテカが、帰ってきた。

 去る10月に通算4作目のスタジオ・アルバム『ハネムーン・オン・マーズ』──UKダブの重鎮デニス・ボーヴェルがプロデュース、全盛期のパブリック・エネミーの仕事で知られるハンク・ショックリーも参加──をリリースしたザ・ポップ・グループの最新MVが公開された。監督は、元ジーザス&メリー・チェインのダグラス・ハート。ではどうぞ──


OG from Militant B - ele-king

パラダイス銀河3000

 1986年から1992年までロンドンのアンダーグラウンドなクラブでDJをやっていたテリー・ファーレイ、アンドリュー・ウェザーオールを中心にローカルなファンジンとして音楽、ファッションそしてフットボールをテーマにスタートしたBoys Own。88年のアシッ・ドハウス、レイヴの盛り上がりとともに一気に部数を拡大、その活動はレーベルやパーティの運営までひろがり90年代以降のダンス・カルチャーに大きな影響を与えた。レーベルとしてはアンダーワールド、ケミカル・ブラザーズそしてX Press 2を輩出、ウェザオール、ファーレイのDJとしてのその後の活躍はいうまでもない。

 今回のサイト・オープンはファンジンを現代に置き換えウェブ・コンテンツとして、彼らの視点による音楽やファッションなど当初と変わらないワーキング・クラスへのメッシージをユーモアを持って伝えようとしている。そしてファンジン時代からのオリジナル・メンバーであり、90年代のダンス系アートワークを数多く手掛けたデイヴ・リトルによるオリジナル・デザインのTシャツ(しかも新作あり!)もついに販売が解禁となった!

https://www.boysownproductions.com

Aphex Twin - ele-king

 今夏も「Cheetah EP」をリリースするなど、『Syro』での見事な復活以降、精力的に活動を続けているエイフェックス・ツイン。
 12月17日にヒューストンで開催された Day for Night フェスティヴァルにヘッドライナーとして出演し、8年ぶりに合衆国でライヴをおこなったエイフェックスだが、『ピッチフォーク』によると、当日会場では、イベントを記念したと思しき真っ白な限定盤12インチが販売されたようである。
 アートワークには、エイフェックス、Day For Night フェスティヴァル、〈Warp〉の3つのロゴが並び、その下部に「Houston, TX 12.17.16」と記されているが、曲名などの詳細はいまのところ不明。うーん、これは気になる! 現在『ピッチフォーク』が〈Warp〉に問い合わせている最中とのことなので、続報を待ちましょう。

KOHH、新作音源を無料リリース! - ele-king

 12月16日、KOHHの新作音源がタイトーの携帯アプリ「GROOVE COASTER」内で無料リリースされた。オリジナル・ヴァージョンとリミックス・ヴァージョン2曲が同時リリースされ、リミックス・ヴァージョンの「KOHH - 働かずに食う(IA Ver.)」をゲーム内でクリアするとオリジナル・ヴァージョンが現れ、アプリ内で聴くことができるといった仕組みになっている。

 フランク・オーシャンや宇多田ヒカルのアルバムへの参加後の動きに注目が集まるKOHHだが、次の共演者としてボーカロイドのIAを起用するという動きは誰もが予想しなかったことだろう。
 とはいえ、お互いに世界各国でツアーを行うなど、日本国内にとどまらず世界的な活躍をしている二者だけに、このコラボレーションは案外、納得できるのものなのかもしれない。一聴すればその親和性は明らかだ。
 リミックスヴァージョンの楽曲プロデュースは、KOHHやIAの数々の楽曲を手がけるTeddyloid氏が担当し、同曲はアーケード版のGROOVE COASTERにも2017年1月6日(金)より追加予定とのこと。

タイトー「GROOVE COASTER」ダウンロードリンク
https://groovecoaster.com/apps/

関連リンク

KOHH オフィシャルサイト
https://やばいっす.com

IA オフィシャルサイト
https://1stplace.co.jp/ia/

IA オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/user/IAPROJECT

TeddyLoid オフィシャルサイト
https://www.teddyloid.com/

Rhetorica#03 - ele-king

 待つことのない時代は幸せなのだろうか。アマゾンも翌日届くし、情報にいたっては瞬時に広まり、その多くは、ほどなくして忘却される。webメディアをやっていながら言うのもナンだが、この速度には正直疲れる。歳のせいだろうか、毎日どころか毎時間、毎分、我先にとばかりに情報がアップされるさまはP.K.ディック的な悪い夢を見ているんじゃないかという気になる(歳を取るとP.K.ディック的悪夢にさいなまれ、朝起きると自分が虫けらのように感じるというカフカ的な悪夢をも実感する。嫌なモノだ)
 戻そう。たとえそれが悪夢だとしても、時代はつねに新しい言葉とメディアを欲する。『Rhetorica#03』は、インターネット普及とともに育った世代(トーフビーツなんかと同じ世代)が作る紙メディアで、米澤慎太朗くんによればゼロ年代批評の影響のもと2012年に創刊、本書はその3号目である。音楽誌ではなく、ジンでもなく、デザインや印刷に注力した立派な衣装の紙メディアだが、ISBNコードは偽物で、バーコードはダミー、書店の流通の紙メディアのパロディとも解釈できるだろう。
 なんにせよコンセプチュアルな紙メディアで、その特集タイトルは「FICTION AS NON-FICTION」。世界中のニュースが毎分更新され、ドラッグ逮捕とシリア内戦はフラットに並ぶ。情報は果てしなくリンクしつづけ、ともすれば真実が他人事(虚構)のように感じても不思議ではない今日のメディア環境に切り込むかのように、ここではその逆説的な用語=“ストリート”ないしは現場体験談がたびたび弄されている。全体の1/3以上を費やしている特集記事=スケプタ/UKグライムの論考、そしてマルチネのUSツアー/ロンドン・レポートがそれで、熱の入れ方、問題意識、“シーン”と呼びうるものについての言葉には当事者(アクチュアルなシーンの一部であるという感覚)ならではの迫力がある。
 横山純氏との対話で案内するUKグライムの記事は熱くほとばしり、音楽性や歌詞のみならず彼らを取り巻く政治的情況ないしはそのねじくれた歴史にいたるまでが語られ、考察されている。と同時に、同じ誌面からは、そのルックス、音楽性、おそらくは階級もふくめ、UKグライムの対岸にあると思わしきロンドンのPCミュージックやKero Kero Bonitoといったele-kingが得意ではない人たちの現場(シーン)、アティチュードも伝達されると。欧米における「クールジャパン」なるエキゾチズムも重々わかったうえで、が、しかし、じつはその商用タームをはね除けている彼ら内面および批評精神が読めるのが嬉しい。海外コンプレックスを持つインディ・バンドにありがちな、オレら海外でもウケてます的なレポートとはまったく別モノ。
 スケプタとtomadoが雑誌の2トップのように並列していることじたいが斬新で、同時代性ということもあるのだろうけれど、特集の大きなサブジェクトのひとつ、今日のもろもろの環境/状況(グローバリゼーションから音楽市場の冷え込みなど)において“インディペンデント”であることを強く意識している点では共通しており、その手段のひとつとしてネットがある。と、が、しかし、ネットは目的ではなく手段であるからこそ、彼らは現場をつくり、ツアーをし、言葉が醸成され、それを“より欲している読者に確実に伝えるために”紙メディアを刊行しているのだろうとぼくは受け取った。
 『Rhetorica#03』がもうひとつ良いのは、自由に好き放題やっている編集にある。当たり前といえば当たり前だが、そんな雑誌(紙エレキングは除く)ってじつは……ないでしょ。コラムがとにかく脈絡なく雑多で、料理から美術、哲学、SF、散歩、旅行、小説……自分たちが興味あることを好きなように書いていて、いちいち誰かの視線を気にしない──。これ、基本ですよね。
 ちなみにですが、コラムのひとつにアシッド・ハウス/セカンド・サマー・オブ・ラヴ回顧展のレポートがある。間違いなくあのムーヴメントは大衆音楽の分水嶺だった。スター不在、過去(サンプリング)を使い、いろんなところのいろんな連中が勝手に音源を発表し、いろんなところで勝手にパーティがはじまった時代──三田格は当時それを「自分たちの“側”に豊かさをもたらす」と書き表していたものだったが、実際の現場はただただよりぶっ飛びたいだけだったという(これもまた基本)、本書ではそれが“内輪”という言葉で表現されている。このニュアンスの違いは、別の文脈から紙エレキング年末号の座談会でも、「瞬時に人と繫がることが良いのか悪いのか」という、ちょっとした問題提起(というほどではないけれど、微妙な提起)になっている。うーむ、そういえば、95年〜96年のele-kingを見ると、近い将来パソコン通信で海外との交流がリアルタイムでできるようになるかも、すげーとか、URやベルリンのレーベルなどにもぼくたちは嬉々としながらFAXという通信テクノロジーでやり取りしていたのである、はははは、まさに隔世の感ですな。
 それでこの原稿の冒頭を反復すれば、ネットで素速くやればいいものを、いま彼らがわざわざ紙メディア=伝達の遅いメディアに着手することにぼくは関心を寄せている。それは記念にアナログ盤を、物販としてカセットテープを、ということではない。書を出し、町に出よう。ぼくもがんばらねば。──とはいえ、もう飽き飽きするほど知っていることもある。悪夢を払拭するには、1985年にホアン・アトキンスが自らのレコードに吹き込んだように、「飛ぶ(fly)」のがいちばんなのだ。
 
 
最新号はpaypalで入手可。https://rhetorica.jp/rhetorica-03/

Brian Eno - ele-king

 なんということだ。先日お伝えしたように、ブライアン・イーノは2017年1月1日に新作『Reflection』をリリースするのだけれど、その『Reflection』が「プレミアム・エディション」としてアプリでもリリースされることが発表された。
 たしかに、どれほど一回性を追求して作品を制作しようとも、それがヴァイナルやCDという形で発表される限り、イーノの求めるジェネレイティヴ(=自動生成的)な音楽が真の姿を現すことはない。おそらくイーノは長きにわたり葛藤してきたのだろう。彼はこれまでもピーター・チルヴァースとともに『Bloom』や『Trope』といったアプリでジェネレイティヴな音楽のあり方を探究してきたが、ついに今回、アルバムそれ自体のアプリ化に踏み切ったわけである。
 一体どんなアプリになっているのだろう? アルバムのリリースまでおよそ半月。首を長くして待っていようではないか。

巨匠ブライアン・イーノが贈る
アンビエント・シリーズ最新作『REFLECTION』
プレミアム・エディションとして
iOS、Apple TV対応アプリのリリースが決定


App images by Nick Robertson

『REFLECTION』は、長きに渡って取り組んできたシリーズの最新作である。あくまでもリリース作品という観点で言えば、その起源は1975年の『Discreet Music』にまで遡るだろう。――ブライアン・イーノ


ブライアン・イーノが、アンビエント・シリーズ最新作『REFLECTION』を、2017年1月1日(日)に高音質UHQCD仕様でリリースすることは既に発表されているが、今作のプレミアム・エディションとして、iOS、Apple TV対応アプリでもリリースされることが明らかになった。本アプリ版は、これまでにイーノが手がけた『Bloom』や『Trope』といった革新的アプリ同様、音楽家でありプログラマーのピーター・チルヴァースと共同開発されたもので、『77 Million Paintings』や『The Ship』といった代表作を生んだソフトウェア・プロジェクトのコンセプトを拡張させ、ジェネレイティヴ(=自動生成的)な音楽や画像を楽しめるアプリとなっている。


『REFLECTION』は、私にとって最新のアンビエント実験作で、これまでのところ最も精巧な作品となっている。私がアンビエント・ミュージックを手掛けることになった当初の意図は、エンドレスな(=無限の)音楽、すなわち、聴き手が望む限りずっとそこに流れている音楽を作ることであった。そしてその音楽が流れている間ずっと、常に異なる展開を生み出し続けることも求めていた。「流れる川のほとりに座っている時のように」だ。つまり、そこにあるのは同じ川だが、流れる水は常に変わり続けているということ。しかし録音作品は、アナログ盤であれカセットであれCDであれ、その長さが限られており、再生する度に毎回、全く同一の内容を聴くことになる。そのため私は従来、音楽を作り出すシステムを開発しても、その後30分もしくは1時間の音源を録音し、それをリリースしなければならないという制限を受けてきた。アルバム形式での『REFLECTION』は、アナログ盤もCDも、そのようなものとなっている。しかし『REFLECTION』の制作に用いた本アプリには、そういった制限がない。本アプリによって、『REFLECTION』という音楽作品の、エンドレスかつ無限に変化し続けるヴァージョ ンを生み出すことが出来るのである。

こういった種類の曲の制作は、3つの段階に分けられる。まず第1の段階が、音の素材及び旋法(モード)の選択、つまり一連の音程関係の選定である。これらは次の段階で、アルゴリズムのシステムによりパターン化され、探査が行われる。そのアルゴリズムのシステムは変動し、最初に私がそこに入力する要素を並べ替えながら、絶えず変容を続ける音楽の流れ(もしくは川)を生じさせる。第3の段階が、試聴だ。一旦システムを作動させると、実際、何週間にも及ぶ長い時間を費やして、私はその作用を確かめ、素材やアルゴリズムを実行する一連の規則を微調整する。それはガーデニングと実によく似ている。つまり、種を蒔き、その後、好みの庭に育つまで、世話をし続けるのだ。
- Brian Eno


コンポジション(作品)をソフトウェアに取り込むことにより、ある特別な機会を得ることができた。1日の時間帯によって、規則自体を変更することが可能になったのだ。午前中にはハーモ ニーがより明るく、それが午後にかけて徐々に変化し、夕刻までには本来のキーに到達。明け方には、新たに導入された条件によって音がまばらになり、全体の速度が落ちる。
- Peter Chilvers


ブライアン・イーノ最新作『REFLECTION』は、CD、アナログ、デジタル配信、iOS、Apple TV対応アプリのフォーマットで、2017年1月1日(日)世界同時でリリース。国内盤CDは、高音質UHQCD(Ultimate High Quality CD)仕様で、セルフライナーノーツと解説書が封入され、初回生産盤は特殊パッケージとなる。



Labels: Warp Records / Beat Records
artist: BRIAN ENO
title: Reflection

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