![]() ![]() The XX I See You (ボーナストラック2曲収録) XL Recordings/ビート |
はじめからザ・エックス・エックスの音楽ははっきりと「シェルター」だった。外界から遮断された場所で、自分だけの痛みをこっそりと広げて味わうこと。10代の音楽としてあまりにパーフェクトだったし、その純度の高さこそが特別なバンドとして愛でられた理由だった。ダブステップを横目で見つつ、できるだけ隙間を開けて音を丁寧に配置していく触れたら壊れてしまいそうなギター・ミュージック。それはあらかじめリスナーひとりひとりに向けて作られたもので、自分たちが大観衆の前でプレイするバンドになるとは想像していなかっただろう。セカンド・アルバム『コエグジスト』は、だから、サウンドの幅を広げながらも自分たちの出自を確かめるかのような密室性が貫かれていた。
だがハウス・ミュージックのプリミティヴな喜びがたっぷりと投入されたジェイミーXXの『イン・カラー』を経て、バンドは「シェルター」の別の意味を3枚めとなる『アイ・シー・ユー』にしたためているように見える。すなわち、たくさんの人間たちが緊急避難的に集う場所としてのダンスであり、バラッドであり、ポップ・ミュージックだ。
高らかに鳴らされるブラスがすぐに艶めかしいベースラインを導いてくる“デンジャラス”のイントロを聴くだけですぐにわかる。ここには新しいザ・エックス・エックスがいる。ジェイミーXXのダンス・ミュージックへの情熱がさらに洗練された形で取り込まれることで『イン・カラー』に匹敵するカラフルな音が展開し、オリヴァー・シムとロミー・クロフトの溜息混じりの歌声が交差する様は相変わらずメランコリックだが、『アイ・シー・ユー』にはこれまでになかった熱が宿っている。それは“パフォーマンス”のようなじつにザ・エックス・エックスらしいバラッドにしても例外ではなく、これまでの音の隙間はアンビエントの音響でじっくりと満たされていく。それは閉ざされた快感ではない。キャッチーなサンプリングがビートと跳ねる“オン・ホールド”にしても、コーラスが上方向に開放されていく“アイ・デア・ユー”にしても、それを分かち合うことの喜びが表現されている。『アイ・シー・ユー』はザ・エックス・エックスが自分たちだけの「シェルター」を外界に向けて堂々と開け放った瞬間の記録である。
来日公演に伴ったインタヴューはジェイミー&オリヴァーのチームとロミーとに分けて行われた。ジェイミーがぜんぜんしゃべらないと聞いていたので構えていたのだけれど、いまや人気のプロデューサーのひとりである彼はところどころ恥ずかしそうにしながらもじつにしっかりと自分の考えを話してくれた。ザ・エックス・エックスの軌跡とは、彼が自分を開放する様を音で表現してきた道のりとも言えるだろう。
では、サウンド面での変化をおもな話題としたジェイミー&オリヴァー編をまずはお届けしよう。
Jamie & Oliver
少なくとも、『イン・カラー』がなければ今回のアルバムはこんな形にはなっていなかったと思うよ。理由はいくつかあると思うんだけど、まず僕とロミーがあのアルバムからすごくインスパイアされたから。(オリバー)
■新しいザ・エックス・エックスが感じられる堂々たるライヴでしたね! いまワールド・ツアーをスタートしたところだと思うのですが、発表前の新曲を披露するのはどんな気分ですか?
オリヴァー:日本を含めていまのところ6回なんだけど、2年ぶりってこともあってすごく緊張してるんだよ。でもステージに上がれるのもオーディエンスの顔が見られるのも、すごく楽しいことだと実感してるよ。とくに新曲に対する反応がすごくよくて。ショウを重ねるごとに曲を知っているひとが増えているのを感じるんだ。すごく楽しいね。
■こちらから観ていても、オーディエンスの反応を体感できました。
オリヴァー:クール!
■あとライヴでおもしろいと思ったのは、ザ・エックス・エックスの“シェルター”とジェイミーのソロ曲の“ゴッシュ”をマッシュアップしていたところだったんですけど、あれはどういう風にできたアイデアだったのですか?
ジェイミー:“シェルター”はぼくたちも好きでライヴでよくやる曲だったんだけど、ずっとファースト・アルバムに収録している形でやってきたから今回のライヴでは変えたいなって言ってたんだよね。で、やってみたらなんか“ゴッシュ”と合ったんだよ。
■「なんか」、なんですね(笑)。
オリヴァー:ジェイミーはソロとバンドでふたつのプロジェクトをかけ持ちしているから、その架け橋になってくれてるんだよね。ファンはどちらの曲も知っているかもしれないけれど、それを実際に合わせて聴けるっていうのはオーディエンスも楽しかったんじゃないかな。
野田:2曲のテイストが全然違うもんね。
ジェイミー:でも“シェルター”はすごくパワフルな曲だから、アレンジをガラッと変えても揺らがないんだよ。それぐらい骨のある曲だからできたと思うんだ。
野田:いちばん最初にインタヴューさせてもらったときに、アルバムで一番気に入ってる曲は何かって訊いたら“シェルター”って答えてくれたんだよね。
オリヴァー:そうだったんだね。
野田:ジェイミーは一言もしゃべらなかったんだけど(笑)。
(一同笑)
ジェイミー:……ああ(恥ずかしそうに微笑む)。
オリヴァー:(笑)でも大分変わったんだよ。自分のアルバムをプロモーションする経験をしたから、しゃべらないわけにはいかなくなったんだよ(笑)。
■“シェルター”がまったく違う姿に変わったことも、バンドの新しい季節を象徴しているかなと思ったんですよ。ジェイミーのなかでは、バンドとソロの境目がなくなってきている感じなのでしょうか?
ジェイミー:昔はバンドのなかで音作りしているときに、あまりにも僕っぽいテイストのもの、僕が出てしまっているものは出したらいけないんじゃないかと思ってたんだ。でも自分のレコードを出したあとに、自分のテイストを出してしまってもいいし、バンドの側としてもサウンド的にオープンに受け入れられるようになってるんじゃないかと感じるようになったんだ。だから最近はぜんぜん遠慮してないんだ。
■なるほど。新作の『アイ・シー・ユー』がまさにそのことがサウンドに表れたアルバムと思うのですが、本作はセカンド・アルバムの『コエグジスト』の続きというよりはジェイミーの『イン・カラー』の続きという共通意識がバンドのなかでもあったのでしょうか?
オリヴァー:そうだね、それはたしかにあるね。少なくとも、『イン・カラー』がなければ今回のアルバムはこんな形にはなっていなかったと思うよ。理由はいくつかあると思うんだけど、まず僕とロミーがあのアルバムからすごくインスパイアされたから。いや、アルバムからというよりは、アルバム・ツアーにオーディエンスとして行ったことだね。あと僕はアルバムに参加もしているから、制作の上でのプロセスの違いは刺激になったのもたしかだね。いままで「ザ・エックス・エックスらしさ」みたいなものにすごくこだわっていたけど、そこからもう少し解き放たれて自由な考え方をしてもいいんじゃないかとか、音としても作り方としてももっと実験的なことをしてもいいんじゃないかとか、そういう風に思えたのもあのアルバム(『イン・カラー』)の制作を踏まえたものだったからなんだよね。だからジェイミーのソロからの影響はすごく大きかったと思う。
■そうしたことを踏まえると、オープニングの“デンジャラス”がすごく鮮烈なダンス・トラックになっているのが象徴的に感じられました。『コエグジスト』もハウスのようなダンス・ミュージックを取り入れたアルバムでしたけど、『アイ・シー・ユー』はサウンド的にさらにカラフルになっていて。1曲めをダンス・トラックにしたのはどうしてでしょう?
オリヴァー:うん、それはあの曲が一番ジェイミーのソロの曲調に近いと思ったからだね。たぶんアルバムを待っていたみんなもそういうサウンドを期待しているんじゃないかなと思ったし。でもそこからアルバムが進んでいくにつれて、そういうサウンドばかりじゃないことが見えてくる流れになってて。たしかにいままでで一番サウンドの幅が広いアルバムだと僕も思うし、だから最初のシングルを選ぶのも大変だったんだ。アルバムをまとめて代表する曲なんて一曲もないからね。だからすごく選びづらかったけど、シングルは“オン・ホールド”が入り口としてはいいかなと思ってそれにしたんだよ。
[[SplitPage]]僕にとってはサンプルを使うのは自然なことなんだ。エレクトロニック・ミュージックをはじめて聴いたのも、たとえばDJシャドウみたいなサンプリング・ミュージックだったから。そういうのを聴きながらプロダクションを覚えていったから、そうするのが当たり前っていうか。(ジェイミー)
![]() ![]() The XX I See You (ボーナストラック2曲収録) XL Recordings/ビート |
■アルバムの制作のときにサウンドのインスピレーションとして3人の間でとくに共有していたものはありましたか?
オリヴァー:今回レコーディングをいろいろな場所でやったから、テーマとして自然とロード・トリップっていうのがあったんだよね。移動がすごく多くて、しかも車のことが多くて。だからそれぞれでプレイリストを作って、そのときどきで流す音楽を用意したんだ。たとえばLAを移動するときはシアトルから4日間ぐらいかけて海沿いを移動するなか、フリートウッド・マックやビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』なんかをよく聴いていたね。それでシアトルに着いて書いた曲が“レプリカ”だったし……、それからアイスランドのレイキャビクに行ったときはラジオをかなり聴いていて、ポップなものをたいくさん聴いた結果できたのが“アイ・デア・ユー”だったし。そういう影響があったかな。
野田:そんな風にロンドン以外のいくつかの都市でレコーディングした目的は何なのでしょうか。それはやはり、自分たちの殻を破りたいってことだったのでしょうか。
オリヴァー:いい作品っていうのが必ずしも心地いい場所から生まれるわけじゃないってことに気づいたんだよね。ロンドンでももちろん作業自体はできるんだけど、やっぱりそこから一度出てみたかったんだ。
ジェイミー:そうだね。ただ、いろいろなところでレコーディングしても自分たちの仕上げのルーティンっていうのはあって、それはロンドンに持って帰ってやったんだよね。だから作る場所は自由にしたんだけれど、じつは完成させる環境はロンドンだったんだ。
■あと今回のアルバムに特徴として、サンプリングが印象的に使われていますよね。“オン・ホールド”のホール&オーツとか意外だったんですけど、サンプリングが今回ザ・エックス・エックスの音楽にどのようにフィットしたのだと思いますか?
オリヴァー:これは僕の考えだけど、僕とロミーは歌っていう「声」を持っているように、サンプルっていうのはある意味ジェイミーにとっての「声」なんじゃないかなって思うんだ。たとえば“リップス”って曲ではジェイミーの作っていたサンプルがきっかけでソングライティングが始まっていったんだ。そこからストーリーが始まって、僕とロミーで膨らませていったんだ。だから、そんな風に曲作りのきっかけにすらなる「声」をジェイミーは持ってるんだよ。
ジェイミー:(恥ずかしそうに)まだ大した「声」ではないよ……。
(一同笑)
ジェイミー:でも僕にとってはサンプルを使うのは自然なことなんだ。エレクトロニック・ミュージックをはじめて聴いたのも、たとえばDJシャドウみたいなサンプリング・ミュージックだったから。そういうのを聴きながらプロダクションを覚えていったから、そうするのが当たり前っていうか。ただ、たしかにサンプリングで言葉を使うことはいままであまりしてこなかったから、そこはいままでとは違うところだよね。それがフックになっているところはあるね。だからそれが僕の「声」だっていう風に言ってもらえるのはすごく嬉しいことだけど、まだまだだよ。
■じつはさっきロミーにもサンプリングについて訊いたんですけど、彼女もサンプリングがすごく重要だったと話していましたよ。それにしても、ホール&オーツっていうチョイスはいままでのザ・エックス・エックスのイメージからすると驚きですが、これはどうしてでしょう。
ジェイミー:いや、僕らも驚いたんだよ。ホール&オーツに関しては「こんなのあるけどやってみる?」なんて言ってはじめはふざけてやったことなんだよ。まさかハマると思わなかったんだけどハマったんだよね。じつは僕はサンプルを入れる前の状態でいいんじゃないかと思ってたんだけど、オリヴァーとロミーが何か足りないねって言ってて。
オリヴァー:うん、ジェイミーは小さな声だって言うけど、実際はそんなことないんだよね。もはやジェイミーのサンプルが“オン・ホールド”のサビになったんだよ。
ジェイミー:いやあ……(恥ずかしそうに笑う)、やっぱり歌がメインだからね。
■(笑)僕もあの曲はすごくサンプルがカッコいいと思いますよ。
オリヴァー:あの曲のサンプルがないヴァージョンはもう想像できないよね。
■ただ、ジェイミーはレコード買いまくってると思うんですけど、普段から「これをサンプルのネタにしてやろう」なんて考えてしまうほうなのでしょうか?
ジェイミー:いや、最近は純粋に聴くためのレコードを買うようになったね。前はディスコとかハウスとかをサンプル用やDJ用に買ってたんだけど、最近はロンドンに家を構えたから居間にきちんと座って曲を聴くってことができるようになったんだ。だからいまは何でも買ってるね。
野田:ちなみに今回の来日で渋谷のレコード屋にはもう行ってるんですか?
ジェイミー:明日、一日じゅうかな……。
野田:はははは。関係ない話なんだけど、イギリスの知り合いが日本に来ると、渋谷に行ってレコードが安いってビックリしてたくさん買って行くんですよ。
ジェイミー:うん。最初来たときは東京はレコード高いって思ったんだけど、最近は値段もイーブンになってきたね。東京にしかないレコードがあるから、最近はそれを探しに行くのが楽しみだね。
僕がちょっと怖いなと思うのは、物価が高くなってしまったことで若いクリエイティヴなひとたちが中心部にはもう住めないことだね。どんどん外へ追い出されてしまう状況で。ダイヴァーシティなんて謳っているけれど、実際にそこに住むという能力がなければ入ってこられない街になってしまっていて。(ジェイミー)
■ジェイミーのソロもですけど、『アイ・シー・ユー』は“オン・ホールド”や“アイ・デア・ユー”みたいなダンス・ミュージック、とくにハウスやディスコ的な高揚感が味わえる曲が印象的で、こうした感覚はいままでのザ・エックス・エックスにはあまりなかったものだと思うんですよ。オーディエンスやリスナーとの一体感があるというか……以前はもっとフラジャイルで密室的だったのではないかと。
ジェイミー:たしかにその辺りの曲はパーティでも楽しめるようなサウンドだよね。ただ、アルバムを通して聴くとものすごくローなところもあって、僕はその幅がアルバムのよさだと思ってるんだ。
オリヴァー:僕が思うのは……『コエグジスト』はきみが言うようにファースト以上にフラジャイルなサウンドで、すごく音数も少なかったんだよね。ただそのツアーがすごく長かったから、続けているうちにサウンドを変えて演奏してみようってことになって、どんどんダンサブルなセットに変わっていったんだ。で、そのことが僕らに影響を与えたんじゃないかと思う。要するに、すごくハウスで、ダンサブルで、エネルギーに満ちている。同じ曲がどんどん変わっていたことで自分たちが受けた印象っていうのが、今回のアルバムには反映されているんじゃないかな。
■なるほど。いまの話も含めて、さっき「ザ・エックス・エックスらしさ」という言葉も出ましたが、それもきっと変わってきていると思うんですよね。いまザ・エックス・エックスのアイデンティティとは何かを訊かれたら、どのように定義しますか?
オリヴァー:いままさに、そのアイデンティティというものを忘れようとしている段階だと思う。『コエグジスト』のときはアイデンティティにすごくこだわっていたんだ。ファースト(『ザ・エックス・エックス』)のときはオーディエンスのことは想定していなかったから何をやっても間違いにはならないし、制約も一切なかった。それに対して『コエグジスト』のときはみんなが何を求めているかを意識したし、自分たちにオーディエンスがいるんだっていうことがすごく頭にあったせいで、ある意味ではいろいろなことを排除してしまったんだよね。それで「これがザ・エックス・エックスなんだ」っていうところだけを残した。で、その経験を通過することで、今回そういったこだわりを取っぱらっんだ。いまの僕らだったら、無理をしなくたって僕らの音にちゃんとなるんだって。それは僕らのDNAのなかにちゃんと入っているから、「何が自分たちにふさわしいか?」なんてことは忘れてしまって……だからこそホール&オーツのサンプルを取り入れるようなこともできた。『コエグジスト』のときにあれが出てきたらダメだって言ってたと思うんだよね。だから「らしさ」にこだわらなくなったのがいまの僕らだね。
■なるほど、それはすごく納得する話ですね。
野田:あと訊きたいのは、2016年はブレクジットやトランプの勝利など政治的な不安定さが露呈した一年だったと思うんですけど、そういった時代の暗い空気はあなたたちの音楽に影響を与えることはあるのでしょうか。
ジェイミー:僕らの音楽にその状況が反映されているってことはないと思う。でも、僕らの気持ちには当然影響を与えるよね……望まないことがたくさん起きてしまったから。ただ、イングランドでは若い世代がこういう状況だからこそ立ち上がって主張することが大事だと気がついて、行動し始めてるんだよ。それはすごくいいことだと思う。ただ、それも含めて、そういった状況と僕たちの音楽は分けて考えてるんだ。僕たちの音楽は純然たる楽しみであってほしいし、そういった状況もすべて忘れられるのが音楽だと思って作っているから。
野田:なるほど。ではたとえば、ひとりのリスナーとしてケンドリック・ラマーやビヨンセのような音楽を通して社会を表現するようなアーティストの作品はどのように思いますか?
オリヴァー:そうだね。さっきジェイミーが言ったことが作り手の姿勢だとすれば、聴く側としては彼らのことは僕はすごく尊敬するよ。政治的なことを扱ってそれを良い形で表現している例だと思うからね。
野田:たとえばジェイミーはアリシア・キーズのアルバムに参加していますよね。
ジェイミー:ひとつ前のやつだよね。
野田:ええ、彼女の新しいアルバムは好きですか?
ジェイミー:うん、ロンドンで観たよ。ルーツに帰った感じで、すごく良かったよ。
野田:さっきいろいろな都市で録音するなかでもロンドンが心地いいって話をしてましたよね。それはロンドン出身というところもあると思うんですけど、それは文化的な側面でもそんな風に感じますか?
オリヴァー:ロンドンもどんどん変わっていくんだよね。じつは『コエグジスト』のツアーがすごく長かったから、終わったときにロンドンじゃないところに住もうかなと思ったりもしたんだけど。今回あちこちでレコーディングして、何だかんだで2年ぐらいロンドンを離れていると、ほんと観光客だらけになってたんだよね。
野田:ああー。
オリヴァー:ただ音楽的にすごくおもしろい街であることには変わりはないけど……ただ、その変化の速さについていくのが大変だと思うときはあるかな。
ジェイミー:僕がちょっと怖いなと思うのは、物価が高くなってしまったことで若いクリエイティヴなひとたちが中心部にはもう住めないことだね。どんどん外へ追い出されてしまう状況で。ダイヴァーシティなんて謳っているけれど、実際にそこに住むという能力がなければ入ってこられない街になってしまっていて。お金持ちしかいないっていうのは街として絶対におもしろくないと僕は思うから。まあ僕なんかは家族がロンドンにいるからそこに住まわせてもらえるからまだ楽だけれど、そうじゃないひとたちにはつまらない状況になりつつあるんじゃないかなという気はしているね。
野田:なるほどね。では最後に、ザ・エックス・エックスとは直接関係ない質問ではあるんですけれども。UKっていうのはそれこそビートルズからオアシスまで、すごく偉大な音楽を生んでいると思うんですけど、ただ、ここ最近は労働者階級のバンドが出てこないという話を聞きます。あるいは音楽リスナーが階級的に分断されているということも聞くのですが、実際のところ、あなたたちから見てもそんな風に感じるところはありますか?
ジェイミー:ロンドンと他の街をいっしょには考えられないかもしれないけれど、たとえばグライムなんかはワーキング・クラスの音楽だと思うし、それがすごく盛り上がってはいるよね。ただバンドってことになると……バンドそのものが盛り上がってないんじゃないかな。
野田:ははは。
ジェイミー:バンド自体が出てきてなくて、エレクトロニック系やソロ・アーティストだから、そういうことなんじゃないかな。ロンドン自体がそういう状況だから、グループとして活動しているひとたちがそんなにいないよね……まあ、僕らがいるか(笑)。
(第一部了/ロミーのインタヴューへ続く)


















