「Re」と一致するもの

 「俺、UKIP支持に回るかも」
 と隣家の息子が漏らしていたというのは数カ月前に書いた話だ
 リベラルでお洒落なゲイ街にはレインボウ・フラッグがはためいているが、貧民街の家々には聖ジョージの旗が掲げてあり、それはまるで、もはや「自分はイングリッシュである」ということしか誇るものがなくなった白屑(ホワイト・トラッシュ)の最後の砦のようだ。と書いたのは一昨年の話だ。
 つまり、ずっと前から予感はあった。
 5月23日のEU議会選(地方選とセットで行われた地域もある。ブライトンはEU議会選オンリーだった)が近づくと、それは一気に明らかになった。貧民街の家々の窓に右翼政党「UKIP」支持のステッカーが貼られ始めたのだ。だいたい貧民街では選挙前に政党のステッカー貼ってる人なんていなかった。ミドルクラスなエリアに行くと緑の党や労働党のステッカーが貼られていて、玄関先にフラワーバスケットが下がっているようなお宅に保守党のステッカーが貼ってある。というのが通常の選挙前の光景だった筈だ。
 しかも、品のない貧民街となると窓にステッカーを貼るぐらいじゃ収まらないから、「UKIP」の巨大な落書きがフェンスや外壁に出現し、民家の窓に国旗まで掲揚され始めた。あれ、W杯って5月に始まるんだっけ?と思ったほどである。
 そしてとどめは、「EU議会選はUKIPに投票する」と言い出した連合いだった。うちはそれで離婚問題に発展しそうになった。
 異様な、実に面妖な夏の始まりである。

*********

 「政界に起きた地震」。
 今回の地方選&EU議会選はそうメディアに表現された。アンチEU、アンチ移民の右翼政党UKIPがまさかの大躍進を遂げたのである。「英国は4大政党の時代に突入する」と表現している新聞さえある。
 第三政党の自由民主党(ブライアン・イーノがサポートしてきた党だが、保守党と連立を組んだ時点で死んだ)が壊滅的に議席数を減らし、UKIPがそれに取って代わる勢いで票を伸ばした。排外主義の右翼政党が「大政党」の一つになりそうな勢いとは英国もシュールな状況になったものである。
 が、なんで今さら排外リヴァイヴァルなのか。英国人は長い時の経過の中で「ま、しゃーないか」と外国人を受け入れ続けて来た筈で、だからこそ日本人のわたしなんかも、毎日こどもたちに絵本なんか読んで聞かせて「先生のLの発音、おかしいー」と指摘されても「いやー、わたしガイジンだから。へへへ」「ふふふ」「ははは」とみんなで陽気に笑いながら生きていける社会になったのではないか。
 「80年代に排外が盛り上がった時とは移民数のケタが違う」
 と連合いは言う。
 「EU圏内から来る労働者が多すぎ。このままじゃ下層の若者はマジで働けなくなる。サッチャーが地方の製造業をぶっ潰して失業者を大量生産した時は、あいつは失業保険とか生活保護とかをスッと出したんだよ。でも、今は生活保護打ち切りの時代だ。そういう受け皿を取り上げながらどんどん移民を入れるのは、下層民に死ねと言ってるのも同然だ」
 連合いの言い分は貧民街の人間たちの声を代弁している。トニー・ブレア以降、労働党が労働者をリプリゼントする党ではなくなってしまったから、労働者たちがUKIP支持に回っている。ずっと左だったのに、いきなり極右にジャンプしている人が結構わたしの周囲にもいるのだ。

 実は最近、ちょっとモリッシーについて書いていたのだが、彼も「移民が増えるほど英国のアイデンティティは希薄になる」という発言を『NME』に書かれて揉めたことがある。個人的にはこれはもっともな英国人の感慨だろうと思う(モリッシーの場合、血統的にはアイルランド人というオチがつくが)し、本当にそう言ったんだろうと思う。彼は猛烈な反王室派でアンチ・キャピタリストなので、今どき何処の共産党の爺さんなんだよというようなガチガチの左翼発言もするが、その一方で“National Front Disco”に代表されるような曲も書いた。「England for English」という歌詞を持つこの曲が、ナショナル・フロントに走る青年について客観的に歌ったものだとしても、悲しい情念に満ちた曲調からはモリッシーがそうした若者にある種のシンパシーを抱いていたことが伺える。
 モリッシーのこの左から右に唐突にジャンプする感じはまさに下層民のリアルな姿だ。だからこそ一見すると軟弱な大学生のアイドルのようなモリッシーが下層社会でも熱烈に支持されたのだろう。実はモリッシーも「もうちょっとでUKIPに投票するところだった」と発言したことがあり、(現在どう言うかは不明だが)同党の党首ナイジェル・ファラージを「好きだ」と言ったこともある。
 わたしはファラージという人はトリックスターだと思っているので、ただ掻き回して終わるだけだろうと思うが、その掻き回しに英国の下層民が乗っかっているのは、長いあいだ政治が彼らを完全に無視してきたからだ。英国民の右傾化は、政治へのリヴェンジと言ってもいい。
 今回の選挙で、EU議会においてはなんとUKIPが英国の第一党になった。しかも、UKIPに投票した人々の86%が来年の総選挙でもUKIPに入れると言っているらしい。政治がいつまでたっても下層の悲鳴を放置し、あまりにも巷の現実と剥離したエリート様ポリティクスを続けているから、国民が短絡的に2本指を突き上げている。英国は、たとえ短期的にせよ、とても良くない方向に向かうかもしれない。

*********

 ところで、個人的にもっとも驚いているのは、UKIP問題で人と話をする時に
 「ずっと前からこの国にいる移民として、近年になって入って来た移民についてどう思う?」
 尋ねられることだ。どうも英国の人々は、EU圏から近年になって流れ込んできた移民たちと、それ以前からいた移民とを区別して考えているらしい。
 「I’m one of them」
 と答えるとそれ以上は何も訊かれなくなるが、ひょっとすると、「そうなんだよねー、あいつらムカつくー」とか言ってぶーたれるのを期待されているのだろうかと思う。移民であるわたしが、どうして移民に対してムカつかねばならないのだ。
 だからUKIPに多くのブラックやブラウンの党員がいるという事実には驚くし、そうした有色人種の党員が「EU圏からの移民を制限するUKIPのポリシーは、EU圏外の地域から来る移民にもっと入国のチャンスを与えることになり、よりフェアな移民の制限に繋がる」と主張している動画を見た時にはもう呆れて大笑いした。
 それはバングラ系移民2世のお嬢さんのようだった。しかし、彼女の両親はその「EU圏外の地域」からやって来て、この国に受け入れてもらい、働く機会を得て生きてきたのではないか。先に入ったからと言って、後から入って来る者に「来るな」というのは、玩具をシェアすることを知らない幼児の如くに野蛮だし、「私と同じ地域からの移民はオッケーだけど、それ以外の移民はダメ」というコンセプトをレイシズムと呼ばずして何と呼ぼう。
 UKIPがその辺の旧移民の新移民に対する意識も利用し、取り込もうとしていると思うとなんとも恐ろしいが、逆に言えばUKIPなんてその程度だ。ちょっと考えると欺瞞だらけの理念には、人は長期的に心を奪われることはない。
 せいぜい短期間のリヴェンジに使われる程度だ。

*********

 「“フェア”な移民制限や“レイシストでない”移民制限などない。我々は移民制限に反対する。我々は、我々の出自や、我々またはその親が何処の国で生まれたかということや、肌の色、何語を喋るかということで人間の存在を非合法にする全ての法律に反対する」

 ケン・ローチの政党レフト・ユニティのポリシーにはシンプルにそう書かれている。移民を一切制限するな。とは、このご時世にアナキーどころかキチガイ沙汰だ。

 が、このポリシーの後半部分には、移民として18年生きて来たわたしには打たれるものがある。

 政治というものは、本来、この「打たれるもの」がコアにあるべきではないのか。
 それは古い言葉で言えば「思想」でもいいし、「社会は、そして人間はこうあったほうがクールだ」という個人的な美意識でもいい。
 「弱者が可哀そう」とかいうヒューマニズムばかり強調しているから左翼はダメになったという定説がある。が、わたしは全くそうは思わない。寧ろ真逆で、誰もポリシーの根本にある揺るがぬもの、妥協など入る余地のない美意識を語らなくなったから政治は人を動かすことができなくなったのだ。
 UKのみならず欧州全体が右傾化しているのは、人々がそうした妥協しない何かを右翼の中に見たような気になっているからかもしれない。
 社会の右傾化は、思想なき政治への民衆のライオットである。


V.A.
カーネーション・トリビュート・アルバム なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?

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 カーネーションのライヴをはじめて観てからというもの、僕はこの2カ月すっかりこのヴェテラン・バンドに恋してしまっている。僕は不覚にもカーネーションの名前しか知らなかった。が、いまは、i-podにはアルバムが5、6枚ほど常備されている。それらはすべてライヴ後に手に入れたものだ。勢い余ってというのも変だが、少し前に発売された2枚の7インチも買った。1枚は曽我部恵一とうどん兄弟がそれぞれ“Edo River”をカヴァーしたもの。もう1枚には、ミツメによる“YOUNG WISE MEN”、スカートによる“月の足跡が枯れた麦に沈み”のカヴァーが収められている。カーネーションが多彩なミュージシャンたちから愛され、現在のインディ・ミュージック・シーンに流れこむいくつもの水脈をつくってきたという事実が、僕にとってまず重要な発見だった。そして、より重要だったのは、カーネーションの音楽とともに春を過ごせたことで、悩ましい日常の幸福度指数が思いがけずリアルに急上昇したことと、ひさびさに魂を揺さぶるロックンロールを体感できたことだった。

 3月15日、昨年リリースされたカーネーション・トリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』発売記念ライヴに足を運んだ。友人からの何気ない誘いがきっかけだった。その日、下北沢の〈GARDEN〉に集まったオーディエンスの年齢層は30代後半から40代が中心で、長年カーネーションの音楽を聴きつづけてきたファンが多かったように思う。20代らしき男女も見かけたが、「ライヴを観てやろう」という長年のファンが熟成させてきた静かな気迫がじわーっと会場に漂っていた。間違っても、「イエー!」というノリではなかった。日曜の夕方という、平日労働者の高揚と憂鬱が交錯する時間帯からはじまるライヴ・イヴェントだったが、バー・カウンター前でいい気分になっている酔狂な集団もいない。「これは手強い音楽ファンだ」というのがフロアを見渡したときの第一印象で、この独特の緊張感がカーネーションというバンドが歩んできた30年の道のりを物語っているようにも感じられた。

森は生きている、大森靖子、スカート、うどん兄弟、ブラウンノーズ、Babi、カメラ=万年筆、曽我部恵一、カーネーションという順番で、5時間を超える長丁場だった。が、オーディエンスの集中力は本当に高かった。僕もビールを2、3杯しか飲まなかった。このラインナップを前にして、飲んでいる場合ではないと自分に言い聞かせた。トップバッターにするのはもったいないほどディープなサイケデリアをすべて新曲で展開した森は生きている、“愛のさざなみ”で直枝政広のギターとからだと激情的なからみをみせた大森靖子、90年代初頭のヒップホップ・ソウルを彷彿させる“Edo River”のカヴァーを披露したアイドル・グループ、うどん兄弟、“グレイト・ノスタルジア”(僕がいまもっとも愛聴している曲のひとつ)をカヴァーしたカメラ=万年筆(歌手のマイカ・ルブテのあやうさのある不安定なヴォーカルがじつに魅惑的だった)……。詳述したいが、しかし、先に進む。

会場の空気があきらかに変わったのは曽我部恵一がギター一本で登場して歌いはじめた瞬間だった。それは、人気の高さによるものだけではなかった。曽我部恵一は、前口上抜きで大瀧詠一“それはぼくぢゃないよ”を祈るように歌いあげ、間髪入れずに“Edo River”を艶やかに披露した。歌の届く距離というものがまったくちがった。物理的にも、精神的にも。髪を振りみだしギターをがむしゃらに弾きまくり、あのセクシーな声をクールに低く響かせ、背景に黄金色の夕暮れがふわーっと広がっていくようなフォーキーな表情を浮かべる。そういったいくつもの側面を正味20分程度で、過剰さを感じさせずやりきる。会場の雰囲気がさらにぐっと引き締まったのは間違いなかった。

 そして、サポート・メンバーを加えた4人編成のカーネーションの登場だ。初っ端、大田譲の太く、力強いベースがからだを揺さぶったとき、4、5年前に沖縄のロック・バーで体感したライヴの記憶がよみがえった。長年コザ市(現沖縄市)で米兵相手にロックを演奏してきたそのベーシストはいまでも嘉手納基地近くのロック・バーで酔客相手にベースを弾いていた。身長160cmほどと小柄ながらも筋肉隆々とした体格と、物腰の柔らかさの中に潜む殺気が、彼の歴史を物語っていた。そのベーシストはバーに雇われているミュージシャンで、バンドはベース、ドラム、ギターのトリオだった。彼らの猛々しい演奏は、ロックンロールが理屈抜きのダンス・ミュージックであることを僕に教えてくれた。トリオの中央に立つ老ベーシストは、表情をほとんど変えずに力強くしなやかなベースを弾いた。彼らが刻むベースとドラムのシンコペーションと音量の具合は、酔客たちの肌の表面をやさしく愛撫しながら、からだの奥底のダンス衝動を揺さぶるものだった。その1年ほど前にリキッドルームで観たゆらゆら帝国のライヴと、音楽性は異なれども、ロックンロールの快楽という一点で同種のものだった。

カーネーションの、その日の最初の1、2曲(“YOUNG WISE MEN”→“学校で何おそわってんの”)の演奏に感じたのもまさにそれだった。ベースがバスドラの音の表面を撫でながら、有機的にからみあい、ブーンと腹に余韻をのこす音を発して演奏はずんずん前進していく。直枝政広と大田譲は派手な柄シャツを着こなしているが、期待を裏切らない似合い方をしている。ふたりとも長髪だ。ダンディである。「これぞロックンロールですね」。ライヴに誘ってくれた友人に興奮をおさえて耳打ちすると、彼の大きな目も輝いていた。当然だろう。だが、個人的なクライマックスはそのあとに待っていた。元メンバーのギタリスト、鳥羽修を加えての“Superman”だ。パワフルに跳ね上がるビート、軽快なキーボード、直枝政広の粗野と繊細のはざまを揺れ動くヴォーカル。そしてサビに入ると、なんとも切ないメロディと直枝政広の甘いファルセットが曲のドラマを最高潮に持っていく。最高のポップ・ソングとは、3~5分の短い時間、胸を締めつける恋心の幻想を見せる音楽のことだと断言したくなる、ロックンロールだった。こういうロマンチックな曲を書いて、演奏できるからこそ、カーネーションは愛されているのだろう。最後は、その日の出演者のほぼ全員がステージにあがり、“夜の煙突”の大合唱で締めくくられた。

年齢を重ねるたびに、その経験を活かして“枯れ”の技芸に磨きをかけていくというのは、フォークでもロックでもミュージシャンのひとつの“生き残り方”ではあるが、カーネーションの直枝政広と大田譲は年齢とともにますます瑞々しさを増していっているようにみえた。6月には、廃盤となり入手困難だった『LIVING/LOVING』『SUPER ZOO!』という2枚のアルバムが再発されるという。もちろん僕は聴いたことがない。新譜を待つような気持ちで、いまからときめく準備はできている。

ねぇ ねころがって話そうよ 
ねぇ ねころがって話そうよ 
ねぇ ねころがって夢みよう 
ねぇ ねころがって空飛んでこうよ 
小さな指をはなさずについておいでよ 
街がほら星くずのように 
ハイウェイが星くずのように輝くよ
“Superman”


追記

僕は、カーネーション結成30周年記念トリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』の発起人であるスカートの澤部渡とカメラ=万年筆の佐藤優介のいくつかのインタヴューや、カーネーション好きの友人の意見を参考にしながら、アルバムを手に入れてみた。「全員に対して『SPY FOR THE BAND』で様子を見ろとは言いたくないじゃないですか」と、『ミュージック・マガジン』(2014年1月号)で澤部が語っているので、ベスト盤『SPY FOR THE BAND』だけで様子を見るのは止めた。澤部が選んだ『Prakeet & Ghost』を聴いて、なるほど、澤部の発言の意味がわかった気がする。ポップと実験。ポップにおける実験。実験的なポップ。そのような多層的なカーネーションを知るためには、ベスト盤ではまったく事足りない。いわばコロムビア時代のシングル集である『SPY FOR THE BAND』に詰まっているきらめくポップ・サウンドはとても素敵だ。だが、たとえば『Girl Friend Army』と『天国と地獄』を聴き比べてこそ、カーネーションというバンドを深く堪能できるし、カーネーションがコアな音楽ファンから支持されつづけている理由を理解することができる。“ハリケーン”(『天国と地獄』収録)における、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの名曲“イン・タイム”のドラム・ブレイクのサンプリングのセンスはいま聴いても斬新で、発表が92年であることを考えれば、ヒップホップ的観点からも無視できない重要な一曲。

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カーネーション、現在入手困難なトリオ時代の名盤『LIVING/LOVING』、
『SUPER ZOO!』のアルバムが2枚組デラックス・エディションで再発決定!

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 2013年に結成30周年を迎えたカーネーション。トリビュート盤発売や精力的なライヴ活動で現在でも新しいリスナーを獲得しつづけている彼ら。現在のライヴ定番曲が多数収録されているCUTTING EDGE/avex所属時代(2002~2004)の作品はすべて廃盤=入手困難であったが、満を持してフル・アルバム『LIVING/LOVING』、『SUPER ZOO!』2タイトルの再発が決定。どちらもボーナス・ディスク付きのCD2枚組。ボーナス・ディスクにはアルバム未収録のシングルカップリング曲や限定盤収録の楽曲群を網羅。CCCD(コピーコントロールCD)での発売のみだった20周年記念シングル「スペードのエース」や同時発売のアナログ盤収録曲も晴れて通常音源/盤で収録される。
 また、デモ音源などファン垂涎の未発表音源も多数収録。

■『LIVING/LOVING Deluxe Edition』

発売日:2014年6月18日(水)
カーネーション6月ツアーにて先行発売
(オリジナル・リリース2003年8月27日)
品番:PCD-18767/8 価格:¥3,000+税
最新リマスタリング
解説:岡村詩野

トラックリスト:

【LIVING/LOVING Disc 1 】
01. やるせなく果てしなく
02. 春の風が吹き荒れているよ
03. LOVERS & SISTERS
04. あらくれ
05. 永遠と一秒のためのDIARY
06. COCKA-DOODLE-DO
07. ハイウェイ・バス
08. 愚か者、走る
09. BLACK COFFEE CRAZY
10. USED CAR
11. OOH! BABY

【LIVING/LOVING Disc 2:ボーナス・ディスク】
01. 愚か者、走る (Rainy Day Demo)
02. ハイウェイ・バス (Home Demo)
03. LEMON CREME (Live Version)
04. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #1
05. ぼうふら漂流族 (Rainy Day Demo)
06. ダイナマイト・ボイン (Live Version)
07. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #2 "VENTURE CHRISTMAS TIME"
08. 放課後の屋上で
09. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #3 "VENTURE MASSAGE 4 U"
10. 春の風が吹き荒れているよ (Home Demo)
11. あらくれ (Home Demo)
12. 永遠と一秒のためのDIARY (Home Demo)
13. COCKA-DOODLE-DOo (Home Demo)
14. USED CAR (Home Demo)
15. NO TITLE (未発表曲 Home Demo)
M1-9:限定生産シングルシリーズ『VENTURE BUSINESS Vol.1~Vol.3』収録曲
M10-15:未発表デモ

■『SUPER ZOO!  Deluxe Edition』

発売日:2014年6月18日(水)
カーネーション6月ツアーにて先行発売
(オリジナル・リリース2004年11月25日)
品番:PCD-18769/70 価格:¥3,000+税
発売元:P-VINE RECORDS
最新リマスタリング
解説:安田謙一

トラックリスト:

【SUPER ZOO! Disc 1】
01. SUPER ZOO!
02. レインメイカー
03. スペードのエース
04. 気楽にやろうぜ
05. El Soldado (フリーダム!フリーダム!フリーダム!)
06. あの日どこかで
07. カウボーイ・ロマンス
08. Miss Cradle
09. 十字路
10. ANGEL
11. 魚藍坂横断
12. RUNNIN' WILD

【SUPER ZOO! Disc 2:ボーナス・ディスク】
01. 夜の煙突 (20th Anniversary Party Version)
02. シケイロスのように (Recording Live At The Doors)
03. ANGEL (Home Demo)
04. ROSE GARDEN
05. MY LITTLE WORLD (Live Version)
06. BLACK COFFEE CRAZY (Live Version)
07. LOW PRESSURE
08. おそろいのお気にいり
09. OOH! BABY (Acoustic Solo version)
10. LOVERS & SISTERS (Acoustic Steel version)
11. SUPER ZOO! (Home Demo)
12. 十字路 (Home Demo)
13. 魚藍坂横断 (Vocal Demo)
14. LOW PRESSURE (Vocal Demo)
M1-3:20周年記念シングル『ANGEL』収録曲
M4-7:20周年記念シングル『スペードのエース』収録曲
M8-10:アナログ盤『LOVERS' FAVOURITES』収録曲
M11-14:未発表デモ

■2タイトル同時購入応募特典あり!(商品に応募券封入)

CARNATION official website
https://www.carnation-web.com/
https://twitter.com/carnation_web
https://www.facebook.com/carnationweb

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カーネーション、大阪&東京ツアーに旧メンバー、矢部浩志参加決定!
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 カーネーション、6月の大阪&東京ツアーまであと半月!
大阪&東京公演に旧メンバーの矢部浩志((MUSEMENT、Controversial Spark)の参加が決定!

 2009年に矢部がカーネーションを脱退して以来、直枝、大田、矢部の3人が同じステージに立つのは5年ぶり。本ツアーではカーネーションのエイベックス時代のアルバム『LIVING/LOVING Deluxe Edition』『SUPER ZOO! Deluxe Edition』の先行発売も行われる。

31年目のカーネーション
「タンジェリンとハイウェイ '14」
ツアーサポート:張替智広(Dr)、佐藤優介(Key:カメラ=万年筆)
Special Guest:矢部浩志(MUSEMENT、Controversial Spark、ex.カーネーション)

■大阪公演
2014年6月1日(日)
大阪 Shangri-La

開場:17:00 開演:18:00

オールスタンディング
前売:5,000円 当日:5,500円(ドリンク別)
学割:2,500円
※学割チケットはプレイガイド発売はありません。

学割予約フォームは以下(大阪公演専用)
https://tangerineandhighway0601gakuwari.peatix.com/

チケット一般発売 5月10日(土)
チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード:231-868
ローソンチケット 0570-084-005 Lコード:54262
イープラス https://eplus.jp
モバイルサイトGREENS!チケット https://www.greens-corp.co.jp/

(問)GREENS 06-6882-1224

■東京公演
2014年6月8日(日)
東京 キネマ倶楽部

開場:17:00 開演:18:00

オールスタンディング
前売:5,000円 当日:5,500円(ドリンク別)
学割:2,500円
※学割チケットはプレイガイド発売はありません。
カーネーション公式HPからの受付のみとなります。
学割受付フォームは以下(東京公演専用)
https://tangerineandhighway0608gakuwari.peatix.com/

チケット一般発売 5月10日(土)
■Peatix https://tangerineandhighway0608.peatix.com
■ローソンチケット 0570-084-003 Lコード:70008 https://l-tike.com/
■イープラス https://eplus.jp (5/16より取り扱い開始)

(問)東京キネマ倶楽部 03-3874-7988



Eddi Reader
Vagabond

Reveal / ソニー・ミュージック

Tower HMV Amazon

 まずは日本国内盤(Blu-spec CD2)に添付されている赤尾美香さんのライナー、そこに紹介されているエディ・リーダー自身によって紡がれた言葉の数々を読み合わせてみてほしい。楽曲だけでもじゅうぶん素晴らしい。しかし、故郷グラスゴーでの新生活、夫であるジョン・ダグラス(トラッシュキャン・シナトラズ)の病、子どもたちの進路、等々といった圧倒的な「生活」の苦労や慌ただしさによって4年もの年月が押し流されながら、それをすべて「新しい経験」として自然体で受け入れ、楽しむかのような彼女のスタイル、息づかい、そうしたものに触れずしてこのアルバムを聴くことは、大きな損でもある。

 ジョンの体調への配慮から、録音は自宅の居間にミキサー卓、キッチンにドラムをセットしてはじめられたというような制作エピソードも、いっそう本作を味わい深いものにしてくれる。相変わらずかわいらしくみずみずしい声。しかし少女ではない。「経験の浅い頃の私が“こと”のおかしさ、おもしろさに気づく余裕がなかったようなことも、今ではいい思い出。」いまだからこそ楽しく素晴らしいと思われることがたくさんあるという彼女の、そうした豊かさ、感性の張りを聴きとりたい。

 なお、日本盤の同ライナーには対訳のほか、エディ・リーダー本人による楽曲解説が5ページにもわたって書き込まれている。CDにはボーナス・トラックとしてレアなライヴ・トラックをふくむ合計3曲が追加収録。

 そして来日ツアーも決定。今回はかつてフェアーグラウンド・アトラクションでの来日の際に、こけら落とし公演を行った名古屋〈クラブクアトロ〉の25周年アニバーサリーを含む東名阪のツアーとなる。

 来日を記念して、フェアーグラウンド・アトラクション唯一のオリジナル・アルバム『ファースト・キッス』やエディのソロ・デビュー・アルバム『エディ・リーダー』などの4タイトルも紙ジャケット仕様の完全生産限定盤としてリリースされた。こちらもあわせてチェックしてみたい。
(詳細 https://www.sonymusic.co.jp/artist/EddiReader/info/438207

■エディ・リーダー ジャパン・ツアー

大阪公演
6月28日(土)
Umeda CLUB QUATTRO 
18:00開演 
前売り¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)スマッシュウェスト06-6535-5569

名古屋公演
6月29日(日)
Nagoya CLUB QUATTRO
“Nagoya Club Quattro 25th Anniversary”
18:00開演
前売り¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)クラブクアトロ 052-264-8211

東京公演
7月1日(火)
Shibuya CLUB QUATTRO
19:30開演
前売り ¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)スマッシュ 03-3444-6751

チケット発売中
https://smash-jpn.com/live/?id=2109

interview with Fennesz - ele-king


Fennesz
Becs

P-Vine

ElectronicaNoiseAmbient

Tower HMV iTunes

 途轍もない傑作である。「電子音響のロマン派」とでも形容したい『ブラック・シー』(2008)から6年の月日を経て、クリスチャン・フェネスが放つ待望の新作ソロ・アルバム『ベーチュ』には、90年代後半以降の電子音響/グリッチ・ミュージックの歴史をアップデートしてみせたような圧倒的な音のきらめきが満ちている。

 前作『ブラック・シー』は名門〈タッチ〉からのリリースであったが、本作は『エンドレス・サマー』(2001)以来の〈メゴ〉(現・〈エディションズ・メゴ〉〉からの発表だ。その全体を包みこむようなエモーショナルな曲想は明らかに「アフター・エンドレス・サマー」といった趣。私は先に6年ぶりと書いたが、『エンドレス・サマー』から13年ぶりとでもいうべきかも知れない。そう、「永遠の夏」はまだ終わっていなかったのだ。デジタルなレイヤーの層に圧縮された記憶が、ギターの響きとデジタルなノイズの交錯によって解凍されていく。

 だが、急いで付け加えておかなければならないが、この作品は断じて「続編」ではない。音響的精度や密度は驚くほどにアップデートされているからだ。さらに強靭になった電子ノイズの奔流が渦巻き、フェネスのギターはより生々しく、感情的に耳に迫ってくる。
 さらに注目すべきゲスト・ミュージシャンだ。マーティン・ブランドルマイヤー、ヴェルナー・ダーフェルデッカー、トニー・バック、セドリック・スティーヴンスの演奏・音色がアルバムの色彩を、さらに特別にしている。フェネスのギターとともにデジタル・プロセッシングと拮抗するような演奏が楔のように打ち込まれているのだ(しかもマスタリングは、話題のラシャド・ベッカー!)。

 本作において、2000年代中盤以降、いささか停滞してきたグリッチ・ミュージックが、いままたアップデートされている。音。構造。音響。空間性。音楽。誰の「記憶」も刺激する誰も聴いたことのない音響空間。

 今回、この『ベーチュ』を生み出したフェネスから貴重な言葉をいただくことができた。彼の簡潔な言葉にはアーティストの思考と決意と自信が圧縮されている。ぜひ『ベーチュ』を聴きながら、フェネスの言葉を何度もたどっていただきたい。『ベーチュ』をより深く知る=聴くためのキーワードがここには埋め込まれている。

■Fennesz(フェネス)
1995年にオーストリアの電子音響レーベル、〈ミゴ〉から12インチ「インストゥルメント」でデビュー。ギターをコンピューターで加工し、再/脱構築した綿密なスタジオ・ワークで注目を集める。1997年のデビュー・アルバム『ホテル・パラレル(Hotel Paral.lel)』(ミゴ)以降も順調にリリースを重ね、2001年のサード・アルバム『エンドレス・サマー』(MEGO)は、ジム・オルークの〈モイカイ〉からのシングル「プレイズ」(99年)をさらに発展させたサウンドで各方面から絶賛された。コンピューターで加工したアコースティック・ギターの音色と、温もりのあるグリッチ・ノイズを絶妙のバランスで編集/ブレンドして叙情感溢れるサウンドスケープを完成させている。ほかにデヴィッド・シルヴィアンとの仕事のほか、ジム・オルーク、ピタことピーター・レーバーグとのトリオ、フェノバーグや、キース・ロウのエレクトロアコースティック・プロジェクト、MIMEOへの参加などのコラボレーションなども評価されている。今年2014年、新作『ベーチュ』を〈エディションズ・メゴ〉からリリースした。


レーベルを変えたわけじゃないんだ。僕たちはみな友人だし、僕が『ベーチュ』を〈エディションズ・メゴ〉からリリースすることは、〈タッチ〉にとって問題じゃなかった。

新作アルバム『ベーチュ』のリリース、おめでとうございます。その圧倒的なクオリティに心から感激しました。

CF:ありがとう。

前作『ブラック・シー』より6年ぶりのアルバムですが、フェネスさんはその間も、EP『セブン・スターズ』(2011)やサウンド・トラック『アウン』(2012)をはじめ、坂本龍一さんやYMO、デイヴィッド・シルヴィアンさん、フェノバーグとしての活動などなど、さまざまなアーティストとコラボレーションを活発に行ってきました。それらの多彩な活動やリリースが、本作の制作に与えた影響などはありますか?

CF:そうとは言えないな。ソロの作品とコラボレーション作は分けて考えるようにしているんだ。でも、ミュージシャンとしてどのコラボレーションからも影響を受けているよ。

『ヴェニス』(2004)、『ブラック・シー』、『セブン・スターズ』は〈タッチ〉からのリリースでしたが、今回のリリースは〈エディションズ・メゴ〉からですね。

CF:レーベルを変えたわけじゃないんだ。僕たちはみな友人だし、僕が『ベーチュ』を〈エディションズ・メゴ〉からリリースすることは、〈タッチ〉にとって問題じゃなかった。2002年に〈メゴ〉が経済的な問題に直面したとき、おそらく3枚めのアルバムを作ることはできないだろうなと思っていたんだ。そのうちに、ピーター・レーバーグがすばらしい方法でレーベルを建て直して、3枚めのアルバムを作る機会が巡ってきたんだ。

今回〈エディションズ・メゴ〉からのリリースということもあり、『エンドレス・サマー』の間に何か繋がりのようなものを考えていますか? そして『ブラック・シー』と本作の違いなどは?

CF:思うに、僕のレコードはそれぞれちょっとずつ違う。『エンドレス・サマー』を作ったとき、僕のスタジオはとてもシンプルだった。ラップトップと数本のギター、いくつかのペダルと小さいミキサーがあるだけだったんだ。いまのスタジオはずっと広いところで、プロダクションもより複雑なものになった。サウンド・デザインとミックスの手法に関しては、おそらく『ブラック・シー』がもっとも複雑な作品だね。一方、『ベーチュ』ではよりダイレクトなアプローチを取ったんだ。

アルバム名『ベーチュ』は、ハンガリー語で(フェネスさんの故郷でもある)「ウィーン」を意味する言葉ということですが、なぜハンガリー語を用いたのでしょうか?

CF:『ヴィエナ(Vienna)』はすでにウルトラヴォックスに取られていたからね。

サウンド・デザインとミックスの手法に関しては、おそらく『ブラック・シー』がもっとも複雑な作品だね。一方、『ベーチュ』ではよりダイレクトなアプローチを取ったんだ。

マーティン・ブランドルマイヤーさんとヴェルナー・ダーフェルデッカーさんが参加されています。1曲め“スタティック・キングス”の冒頭で、突如として鳴り響いた彼らの音に驚愕しました。また、ドラムとしてザ・ネックスのトニー・バックさんも参加されていますね。

CF:うめくようなサウンドは、オシレーターが内蔵されたカスタムメイドのディストーション・ボックスを使ったものだよ。3人とも前に共演したことがあって、長い即興のセットをいっしょにやったから、お互いのことがとてもよくわかっていた。彼らにベーシック・トラックを渡して、そこに音を重ねてもらったんだ。すばらしい結果になってとてもうれしいよ。

同じくゲストに、セドリック・スティーヴンスさんがモジュラー・シンセで参加しておられますね。“Sav”で共作もされています。

CF:セドリックはブリュッセルのいい友人で、このアルバムには彼にどうしても参加してほしかったんだ。彼自身、すばらしいレコードを作っているけれど、より多くのオーディエンスに聴かれるべきだと思っている。彼は僕のスタジオに自分のモジュラー・シンセサイザーをすべて持ってきて、2日間、ジャム・セッションしたんだ。

今回、特徴的な方法でベースとドラムスを取り入れたことによりご自身のサウンドは変化したと思いますか?

CF:このアルバムには少しロックンロールな感じを入れたかったんだ。

フェネスさんにとってビートとは?

CF:アブストラクトなビートを持った曲が好きなんだ。その曲が呼吸しているときがね。

“ザ・ライアー”の冒頭のシンセ(?)によるリフはまるでブラック・メタルのように聴こえました。ブラック・メタルなどをお聴きになりますか?

CF:ブラック・メタルはあまり聴く方じゃないね。でも、スティーヴン・オマリー、KTL、ウルヴェルといった人たちは好きで聴くよ。

近年のドローン・ブームを、どう捉えていますか?

CF:どうだろう? おそらく、すぐに変化がやってくるんじゃないかな。『ベーチュ』はドローンだとは思わないよ。『ブラック・シー』はそうだったかもしれない。

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僕はアナログのサミングのファンなんだ。ミックスはすべて、APIミキサーとコンプレッサーを通してやっているんだ。それが深みと明瞭さを生むんだよ。

前作に比べて、強靭で、かつ解像度の高いノイズが暴れまくり、耳を刺激し、聴きながら恍惚となってしまいました。今回のアルバムにおいて、何か特別な意思を持ってノイズ・サウンドに取り組みましたか?

CF:何年もかけて機材のより効率的な使い方を学んだんだ。それから、スタジオも以前よりもっとハイエンドになった。僕はアナログのサミングのファンなんだ。ミックスはすべて、APIミキサーとコンプレッサーを通してやっているんだ。それが深みと明瞭さを生むんだよ。

この作品に限らずフェネスさんの作品は「記憶」を刺激されてしまいます。フェネスさんにとって「記憶」とはどのようなものでしょうか?

CF:記憶といっしょに制作することは僕にとってとても重要なことだ。僕の音楽を聴いて、みんなそれぞれ自分の記憶を見つけ出してほしい。僕はずっとクリス・マルケルという映画監督の大ファンで、彼の作品から多くのことを学んできたと思う。

まるで電子のウォール・オブ・サウンドのように、一度では聴ききれないほどの音が高密度に重ねられおり驚きました。

CF:何重にもサウンドを重ねていくと、ときどきメタ・メロディのようなものが生まれてくるんだ。倍音のことだね。それが好きなんだ。それについては探求すべきことがまだたくさんあるよ。

ノイズの要素と同じくらい、今回のアルバムではフェネスさんのギターがとても生々しく感じられました。

CF:ギターはいつも僕にとっていちばんの楽器なんだ。今回はそれを比較的加工しないままにしたんだ。そのとき、そうすべきだと感じたんだ。

フェネスさんは、以前、好きなギタリストにジョージ・ハリスンとニール・ヤングを挙げておられましたが、彼らのプレイのどんなところには惹かれますか?

CF:彼らはふたりとも音色がすばらしい。ジョージ・ハリソンはポップで「数学的な」スタイルで、一方のニール・ヤングは完璧なエモーション。アコースティック・ギターを弾く彼の右手はすばらしいと思う。

“スタティック・キングス””““ザ・ライアー”“パラス・アテネ”という曲名について教えてください。

CF:“スタティック・キングス”は大切な友人のマーク・リンカスへのオマージュなんだ。悲しいことに、彼は2010年に自ら命を絶ってしまった。僕たちはノース・カロライナにある彼のスタジオでよく仕事をしたんだけど、そのスタジオの名前が“スタティック・キング・スタジオ”だったんだ。
 “ザ・ライアー(嘘つき)”。それは僕のことだよ。“パラス・アテネ”は19世紀につくられたユーゲント・シュティールのドアの上部分に書かれていて、その先にはここウィーンの僕のスタジオがあるんだ。

“パラス・アテネ”はまるでバロック音楽が電子音響化したようなサウンドでした。フェネスさんは西洋の古楽(バロック音楽/ルネサンス期の音楽)は聴かれますか?

CF:ああもちろん。バッハ、ヘンデル、モンテベルディ、ヴィヴァルディ、ダウランド。

ほかによく聴いていた音楽などはありますか?

CF:制作中には何も聴かなかったね。さもなければ、聴きなれた音楽、ジャズやブラジル音楽、アフリカ音楽を聴くよ。ザ・ネックスが大好きなんだ。〈タッチ〉と〈エディションズ・メゴ〉からリリースされているものはすべて聴いているよ。

今回の『ベーチュ』には『エンドレス・サマー』以来、ポップ・ミュージックの遺伝子を感じました。フェネスさんにとってポップ・ミュージックとは?

CF:ポップ・ミュージックはいまでも大好きだよ。いかにもな、クリーンなポップ・アルバムを作りたいとは思わないけれど、そのエッセンスには興味があるよ。

“Sav”はアルバム中でも穏やかなサウンドでしたが、冒頭から鳴っているカラカラとした乾いた音にも惹かれました。あの音は何の音なのでしょうか? また、“Sav”とはどのような意味なのでしょうか?

CF:「Sav」はハンガリー語で“アシッド”という意味なんだ。あの音は、セドリックが彼のモジュラー・シンセを通してラップトップで演奏したインプロヴィゼーションだよ。

即興と作曲の違いとは、どのようなものでしょうか?

CF:僕の作品の多くは即興演奏の産物だ。作曲は、そのなかから使えそうな破片や部分を見つけたところからはじまるんだ。

フェネスさんの作品は、つねに音質がいいので何度聴いても飽きません。今回の『ベーチュ』でもさらに高解像度になっており非常に驚きました。フェネスさんにとって「音のよさ」とは、どのようなものですか?

CF:自分にとってその重要さは日に日に増しているよ。最近のデジタル機器は、高解像度のサンプルやビット・レートのおかげで以前よりも格段にすばらしいものになっているね。

僕のホームタウンであり、浮き沈みはあるけれど普段は豊かな生活を送ることができる。生活水準は高く、文化生活も最高だね。

「ウィーン」という土地に対する思いが強くアルバムに出ているように思います。フェネスさんにとってウィーンという街は、どのような思いのある土地でしょうか?

CF:僕のホームタウンであり、浮き沈みはあるけれど普段は豊かな生活を送ることができる。生活水準は高く、文化生活も最高だね。

マーティン・ブランドルマイヤーさんのラディアン、トラピスト、もちろんフェネスさんなど日本の音楽ファンにはウィーンの音楽シーンが気になっている人も多いのですが、現在のウィーンのエクスペリメンタルな音楽シーンはどのような感じですか?

CF:正直なところよくわからないんだよ。クラブにはほとんど行かないんだ。「シーン」のなかで知っているのはブルクハルト・シュタングル、マーティン・ジーベルト、マーティン・ブランドルマイヤー、そしてもちろん、ピーター・レーバーグ。

リリースが〈タッチ〉から〈エディションズ・メゴ〉になったことで、アート・ディレクションがジョン・ウォーゼンクロフトさんからティナ・フランクさんになりました。彼女と久しぶりにアートワークを制作するにあたって、何かコンセプトのようなものはありましたか?

CF:いや、彼女の好きなようにやってもらった。信頼しているから。

日本盤にはボーナストラック“アラウンド・ザ・ワールド”が収録されていますが、この曲の成立過程などについて教えてください。

CF:当初はデイヴィッド・シルヴィアンに歌ってもらう予定だったんだ。でも、彼が声を悪くしてしまって、結果的にスロウなギター・トラックになったんだ。

フェネスさんはライヴなどで世界中を訪れていると思いますが、印象に残った国などはありますか?

CF:これはお世辞でもなんでもなく、日本に滞在するのは大好きだよ。食べ物や人、文化がね。イタリアもすごく好きだね。最近ではロンドンもかなり楽しんだよ。

今後のご予定を教えてください。

CF:まずは休みを取る予定だよ。来週、ギリシャに行くんだ。夏にヨーロッパでいくつかショウがある。それから秋にヨーロッパと日本(11月22日、東京の〈UNIT〉)を回る予定なんだ。冬にまた新しい作品に取り掛かるかもしれない。今回はあまり間を開けないつもりなんだ……。

『ベーチュ』は本当に素晴らしく、その圧倒的なクオリティと音楽性の高さに、心から感激しました。この作品はフェネスさんの音楽人生において、どのような位置づけになりますか?

CF:ありがとう。ただ自分のいちばん新しいレコードという位置づけだね。いまは次の作品に取り掛かるのを楽しみにしているんだ。

新しい夜へ - ele-king

 この間はアンディ・ストットとデムダイク・ステアのライヴを観に、西心斎橋のアメリカ村に行ってきた。大阪でのクラブ摘発が大々的にはじまった地域だ。そこには〈モダン・ラヴ〉のダークな美に身体を揺らすひとたちがいた。来月は同じ場所にトッド・テリエのライヴを観にいくのを楽しみにしている。……大阪の夜が、少しずつ、また賑わいはじめている。僕が「大阪の夜にはダンスがない」という記事を書いたのがちょうど2年前ごろのこと。法律はまだ変わっていない、が、何かはたしかに変わったのだ。

 いま思い返しても、2012年4月の〈NOON〉摘発はとりわけショッキングな出来事だった。大阪近辺に住む音楽ファンからすれば、そこが日夜おもしろい音楽を鳴らしている場所であることは周知だったからだ。ただ反射的に理不尽だと思えた摘発に対する怒りに任せて「ele-kingで何か記事が作れないだろうか」と野田努にメールした時点では、自分がその記事を書くとも思っていなかった。その後、摘発の事情についていろいろなひとに話を訊いたときも、「自分は法律のことは詳しくないし、現場の人間でもないし……」という声をたくさん聞いた。が、僕も当然法律の専門家ではないし、現場の人間でもなかった。どうしたものか……少し考えて、それでも文章を書いたのは、クラブという場所でおもしろい体験をしたことのある人間のひとりとして、そのとき大阪の街で起こっていたことの不気味さについて素朴に述べてみることからはじめられないかと思ったからだった。

 その約1年半後、僕が映画ページを担当している関西のファッション誌『カジカジ』の取材でドキュメンタリー映画『SAVE THE CLUB NOON』の宮本杜朗監督とプロデューサーである佐伯慎亮カメラマンに話を訊いたとき、それと近いことを話してくださった。「ただ、〈NOON〉という場所を知っている人間のひとりとして、『何かできへんか』って」。同作にはたくさんのミュージシャンがインタヴューとライヴ演奏で出演しており、それぞれの意見を真剣に語る姿がその場所に「集合」していた。僕は映画を観て、ああ、風営法によるクラブ摘発という問題がそれまで会ったことのない人間たちを引き会わせたんだと思った。僕は佐伯カメラマンとちょうど〈NOON〉が摘発された頃にぜんぜん別の仕事をしていて、「いやー、あれ、どうなるんでしょうねえ」と言っていたが、その1年半後、「いやー、こういう形でまたお会いするとは、ですねえ」などと言い合うこととなった(佐伯カメラマンの写真は紙エレキングvol.6の風営法の記事においても掲載されている)。多くのひとがそれぞれのやり方で、それぞれの意見を表明することとなった。Shing02は『Bustin'』というショート・ムーヴィーを撮り、踊ってばかりの国は「踊ってはいけない/そんな法律があるよ」と歌った。たくさんの議論が生まれたし、たくさんの交流が起こった。アメリカ村のクラブが摘発されたとき、新聞など多くのメディアがクラブに対して否定的なトーンだったのを僕はいまでもはっきりと覚えている。しかし、この2年でクラブ・カルチャーはそれまでよりも広い場所で見直されることとなったように思える。

 摘発があってよかったと言いたいわけではもちろんない。思い出のあるクラブや小さなハコがどんどんなくなっていったことはまぎれもない事実だからだ(その割にいわゆる「チャラ箱」は蔓延っているらしいし)。が、僕たちも多くを学んだ。少なからぬクラブが地域コミュニティから疎外されていた事実や、やはり近隣への騒音問題などがあったことをあらためて思い知ったし、クラブの営業が法律に対してきわめてグレーなままであったこともわかった。クラブ・カルチャーの本質とは何か、深夜に踊るために集まることの意義や魅力をいまいちど考え直さずにはいられなかった。あるいは25時までのパーティを楽しむことも覚えたし、着実に小さなイヴェントを成功させてきたSeihoは風営法時代の大阪の街が生んだ新世代のスターとなった。

 たくさんのことが変わった、が、まだ法律は変わっていない。多くのメディアでも大々的に報じられた〈NOON〉裁判の無罪判決には、僕はひとまずほっとしたというところだ。でないと先には進めないだろう。ひとつはっきりと言えるのは、風営法にただ中指を立てる時期はもう終わったということだ。ダンス文化推進議連による風営法改正案は今月中に国会に提出されるということだが、ここからは地道かつアクチュアルな展開が求められてくるだろう。「法律に詳しいひとたちがすることだから……」ではなく、ともに考えることを僕たちは経験してきたはずで、いまこそその続きが求められている。それに昨年末の紙『ele-king』における座談会でもまさに議題となったが、法律が改正されたからといってクラブ・カルチャーが絶対に盛り上がる保証なんてない。しかし、だからこそ新しいアイデアのチャンスだし、そこで楽しめることもあるはずである。
 ナイーヴな言い方かもしれない。が、この2年間、それでもいろいろな場所で音楽は鳴り続けていたし、ひとは集まっていた。次は、それをどうやって繋いでいくかだろう。僕は2年前、大阪の夜は決定的にある終わりを迎えたのだと本当に思った。けれどもいまは、また新しい夜が生み出されようとしているのだとたしかに感じられるのだ。

MARU (MELLOW YELLOW) - ele-king

MIX CD『MARU HOUSE MIX vol.3 - Vivid Summer Traces -』完成しました。過去のはフリーで聞けますのでこちらで。Twitter,FBのリンクもあります→https://soundcloud.com/maru_mellow-yellow

DJスケジュール
5/30(金) 神泉Mescalito
6/11(水) 三軒茶屋 天狗食堂 「Powder & Herb」
6/13(金) 代官山AIR 「MARK E "Product Of Industry" Release Party」
6/20(金) 渋谷Relove 「Let Me In Vol.2」
7/19 (土)-7/20(日) 千葉県 金谷base 「Life」Open Air Party

64歳になっても家で聞きたくなるであろうダンスミュージック12inch single record(順不同)


1
Eddy & Dus meet Lilian Terry - 'Round About Midnight - Mo'Smog Records

2
Axel Boman - Die Die Die!! - Parmanent Vacation

3
Fertile Ground - Let The Wind Blow(Oneness Of Two Mix) - Counter Point Records

4
Bjak - Your Love featuring Janet Cruz(main mix extended) - Deep Explorer

5
Crossroads featuring Deborah Falanga - Sunday Afternoon(Soulpersona Remix) - BeYourself Recordings

6
Rah Band - Questions - s.o.u.n.d recordings

7
Cory Daye - City Nights/Manhattan Cafes - Blue Chip Records

8
Asia Love - You Should Be Here(Mass Mix) - Nu Groove

9
Lama - Love On The Rocks - Numero Uno

10
Sound Of Inner City - Mary Hartman, Mary Hartman(Instrumental) - West End

  世界でもっとも有名な「現代音楽」作品のひとつであるジョン・ケージ『4分33秒』。1952年の初演以来、60年以上を経てもなお新鮮に響く(否、響かない)この作品は、多くの音楽家たちにインスピレーションを与えつづけています。

 なぜ4分33秒なのか、そこでは何が起こっているのか。そして、「音楽」とはなにか。

 批評家・佐々木敦が全5回、10時間以上にわたり様々な視点から「4分33秒」について語り尽くした伝説の連続講義「『4分33秒』を/から考える」が『「4分33秒」論』としてついに書籍化! 一冊まるごと「4分33秒」という前代未聞の内容です。

■佐々木敦著
「4分33秒」論──「音楽」とは何か

本体 2,500円+税
上製256ページ
2014年5月30日発売
ISBN 978-4-907276-05-8

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~目次公開!~

一日目 『4分33秒』とは何をするのか
イントロダクション/「『4分33秒』を/から考える」ということ/『4分33秒』の初演とその時代/無響室の体験/「音」と「音楽」/なぜ四分三三秒なのか/ホワイトペインティング説/『4分33秒』が企図するもの/「あんなの音楽じゃない」/人間は慣れる/「HEAR」と「LISTEN」/「音」から「音楽」へ/耳はフォーカスできる/「聞こえている」ことの豊かさ/現前性・一回性・不可逆性/『4分33秒』を聴く/『4分33秒』を録音するということ/時間の設定/『4分33秒ダブ』/ダニエル・シャルルとの対話/「音」の収奪/作曲なんかいらない?/『4分33秒』は常に流れている/『4分33秒』の後で作曲するということ

二日目 「無為という行為」と「時空間の設定」
否定形で語られる『4分33秒』/ネガティヴがポジティヴに変換する/「意図」の所在/『4分33秒』を「音楽」たらしめるもの/『4分33秒』の理想の有り様/二回目以降/四分三三秒の間に起きていること/意図の介在しない芸術/音楽が不要になる?/それは芸術の範疇なのか/「音楽」vs「音」の不可能性/時空間の設定・限定/「無為」を成立させる条件/アートと音楽/『4分33秒』のオムニバスを聴く/角田俊哉とサーストン・ムーアによる『4分33秒』/参加できなかった理由/リダクショニズム/「無」が語る

三日目 『4分33秒』をめぐる言説
音楽史における「サイレンス」/マイケル・ナイマン『実験音楽』/「偶然性」と「開かれた経験」、そして〈生〉の肯定/近藤譲『線の音楽』/「外聴覚的音楽」/「音楽だと思ったら音楽」なのか/「聴覚的音楽」に回収される/器としての世界/常にそこにある沈黙/庄野進『聴取の詩学』/『4分33秒』がまとう権威性/『4分33秒』と「レディメイド」/「枠」と「中身」/『4分33秒』の続編/若尾裕『奏でることの力』/フルクサスとの関わり/「オーヴァーピース」と「アンダーピース」/コンセプチュアル・アートと『4分33秒』/室内楽コンサートとヴァンデルヴァイザー楽派/『One11 with 103』/ケージとフランク・ザッパ/次回予告

四日目 『4分33秒』以降の音楽
『ヴァリエーションズⅦ』/「枠」と「出来事」/指示の零度と百%の狭間/出来事性を再認識させる/映像における「枠」と「出来事」/構造映画(ルビ:ストラクチュラル・フィルム)/カメラがパフォームする映画/ほとんど何もない/『4分33秒』への回答/ミニマル・ミュージックとの接点/特権化が神秘化へ向かう/ヴァンデルヴァイザー楽派/聴取ではなく体験、官能ではなく認識/『セグメンツ』/『セグメンツ』で起きていたこと/コンセプトの理解と聴取体験/コンセプトは理解されるためだけにあるわけじゃない/体験が重要なのか/『4分33秒』を/から「考える」こと/即興/聴取の解体

五日目 「聴取」から遠く離れて
三つの『4分33秒』/第二の『4分33秒』/第三の『4分33秒』/「聴取」だけが問題なのか/枠と出来事を再考する/枠とは何か/純粋なタイムマシン/自分の時間が外にある/純粋に時間が流れる/映画におけるフレーム/純粋小説?/『エウパリノス』/「体験」でいい/質疑応答/無駄なことが贅沢だという感覚/『4分33秒』と「人間が生きているということ」/美学に拠らないこと


Mr. Scruff - ele-king

 映画で描かれるクラブの場面といえば、いたって淫らで、不健康で、クラバーは、享楽を貪っているだけの、おおよそ道徳心などない人間として描かれる。そのお決まりの構図は、ある意味では当たっているが、まったくはずれてもいる。
 僕が20代後半のとき、この文化を好きになったのは、友だちとスピーカーや機材を運んでDIYのパーティをはじめたことが契機となっている。音楽好きが週末のフロアを借りてやっただけのことだった。ナンパもなかったし(内心はしたかったが、度胸がなかっただけのことだ)、暴力もなかった。純粋に音楽を楽しむ若い男女がいただけだった。
 そんな出自を持っている人間からすると、映画で描かれるクラブ・シーンは腹立たしいものだが、僕と同じ気持ちの人間はたくさんいて、たとえば音楽を作っている人なら作品によって「違い」を訴える。そうじゃない。これは、純粋に音楽に恋している音楽なんだ。マンチェスターのミスター・スクラフもそうした潔癖派のひとりである。
 
 6年ぶりの彼の新作『フレンドリー・バクテリア』は、ネオソウル系の、穏和な中年(といってもまだ40代とも言えるのだが)DJによる充実のダンス・ミュージック集である。ハウス・ミュージック界の大ベテランのロバート・オウエンズをはじめ、デニス・ジョーンズやヴァネッサ・フリーマンといった歌手を招き、大幅に生楽器(チェロ、サックス、ピアノ、トランペット、ダブルベース)を取り入れつつ、大人なダンス・ミュージックを展開している。
 僕の家の壁には、昔彼が来日した際に手書きで書いてくれたイラストが長いあいだ飾ってあった。よく知られた可愛らしい絵で、それはいままで彼のアートワークに使われてきたし、彼の音楽のユーモラスな側面を表象してもいた。が、『フレンドリー・バクテリア』に可愛らしさはまずない。明らかにダークだ。かつてはイアン・デューリーのパブ・ロックから古いジャズ/ブルースまでと、様々なレトロな音源をネタにしてきたスクラフだが、今回はその手のわかりやすいサンプリングもない。先述したように、生演奏を大きくフィーチャーしている。
 とはいえ、今回は微妙にスクウィーもどきのエレクトロが入っているし、ベース・ミュージックをまったく気にしていないとは言えないウォブルなベースラインも入っている。ちょっとずれている気もするが、若いトレンドも気にしているのかもしれない。
 それでも、2曲目の“Render Me”のように、ときには重たい雰囲気のなか、ジャズの響きと力強いビートをブレンドしつつミスター・スクラフらしいエモーションが顔を出す瞬間が『フレンドリー・バクテリア』の醍醐味だ。綺麗なアコースティック・ギターとピアノの演奏とキレのあるファンクのベースラインが重なる“Thought To The Meaning”も悪くない。雄大なトランペットが耳にこびりついて、たまらなくビールが飲みたくなる“Feel Free”も僕は好きだ。

 四十路を越えたDJがこの先どんな音楽を作るのだろうと考えたことがある。どんなに体調管理をしても、人間40も越えれば身体は動かなくなっていく。若い頃と違って身体を動かして音楽を楽しむことに無理を覚えるようになるのだ。それでもダンス・ミュージックは聴いていて楽しい、ということを50を越えた僕は知ったばかりである。ちなみに、当時は(宇川直宏調で)ヤバイ!!!と言われた、モダンDJの始祖であるフランシス・グラッソと彼の〈サンクチュアリー〉の光景は、1971年のジェーン・フォンダ主演の映画『コールガール』で見ることができるのが、いまの感覚では大人しく見える。本作とはぜんぜん関係のない話だが。
 

interview with Kazuki Tomokawa - ele-king


友川カズキ
復讐バーボン

モデストラウンチ

FolkRock

Review Tower Amazon

 お食事中の方にはもうしわけない。
 10年前に友川さんに取材したとき、インタヴューが終わり、川崎駅のホームを東京方面へ歩いていくと階段の影のデッドスペースで中年の男がかがんでウンコをしている。私は彼の背後から追い越すように歩いていたので、突き出した尻の穴から太めのソーセージのような糞が出てくる、まさにその瞬間に立ち会うことになった。ひとは日々排泄しても排泄する自身の姿を見ることはできない。私はとくにそういった性癖があるのではないので、ひとが大便をするのをまのあたりにしたのははじめてだった。尻は白くすべすべしていた。桃尻といってもそれは白桃なのである。
 私がウソを書いていると思われる方もおられよう。ところがこれは事実である。同行したS氏に糺していただいてもいい。事実は小説よりも奇なりという、その奇なりは物語などではなく現実の物事の不可解さなのだと、私はそのとき思ったというと大袈裟だが、友川カズキを思いだせばそのことに自然に頭がいくわけでも当然ない。ただこのたび、友川さんに会って話を訊くにあたり10年前のことを思い返すにつれ思いだした。思いだすと書かなければいけない気になった。その日の友川さんの飄々としたたたずまいとユーモアと訥々しながら不意に核心に急迫するただならぬ語り口に聞き入ったあの取材のそれはありうべき「細部」だったからといったら失礼だろうか。

 今回も、といっても、取材したのは2月21日なので3ヶ月も前だが、友川さんの語り口はむかしのままだった。歌と言葉と音とが三者三様の強さを示すのではなく重なり合うことで見せた、彼のキャリアのなかでもおそらくはじめての作品である『復讐バーボン』をものした友川カズキは代官山の駅の改札をくぐり、こちらにくる途中売店に立ち寄って、ロングコートに身をつつみハットをかぶってやってきた。頭髪に白いものが目立ったほかは時間の経過を感じさせない。取材はその日ライヴをすることになっていた〈晴れたら空に豆まいて〉の楽屋でおこなった。
 内容はご覧のとおりだが、取材後ライヴを観ながら私は友川カズキと同じ時代に生まれた私たちこそ、それを奇貨とすべきだとまた思った。

■友川カズキ
40年以上にわたって活動をつづける歌手、詩人。1975年にファースト・アルバム『やっと一枚目』にてデビュー。〈PSFレコード〉からの『花々の過失』が評判になったのちは同レーベルからのリリースが意欲的につづけられ、なかでも1994年発表のフリー・ジャズのミュージシャンとのコラボレーション『まぼろしと遊ぶ』は新境地として注目される。画家としても活躍するほか、映画出演や映画音楽の制作、海外公演などいまなお活動の幅を広げている。最新作は『復讐バーボン』(2014年)。


私は友川さんを取材させていただくのは10年ぶりです。前回は三池崇史監督の『IZO』に出られたときでした。それ以降、とくにさいきんは友川さんのことを若い世代も聴くようになった気がしますね。

友川:これはね、はっきりいってインターネット時代だからですよね。口コミというかね。むかしだってそんなに人気なかったし、ひとが入らなかったけど、ここんとこずっと満員ですからね。アピア(40/渋谷から目黒区碑文谷に移転した老舗ライヴハウス)なんか毎回満員札止めだからね。それはインターネットの時代だからですよ。あとはほら、ラジオでナインティナインが私の曲をずっとかけたりしてくれて、それがまたインターネットで口コミみたいになったんですね。私はね、インターネットはやらないんですけどね。ケータイもないから聞いた話ですけどね。いまの時代だから世界の独裁者も斃れる。ネットの時代だからですよ。

友川さんはデビューされてそろそろ40年近くですが、インターネット以後お客さんが変わってきたところはありませんか?

友川:私が若かった時分は同年代のひとたちが聴いてくれていたのが多いんですけど、彼らが社会的に地位があがったり家庭をもったりするともう動かないんだね。いつの時代も若いひとたちですよ、行動力と好奇心があるのは。家庭をもったひとは好奇心がないとは思わないけれども、優先順位がちがってくるんですね。ひとを育てているから自分で自分を育てるようなところにはいかないんだ。だってひとりで行動しているということは自分で自分を育てるということだから、優先順位がちがうんですよね。

他者、子どもをまず育てなければならない。

友川:という立場になっているから。大人になったのに私を聴きにくるひとはそうとう家庭不和かその一歩手間か、ほんとうに好奇心があるかですよ(笑)。

私は家庭がありますが友川さんを聴きたいと思いますし家でも聴きますよ。

友川:それはおかしい! 家庭で聴くような歌じゃないでしょ。ああそうか! こうなったらいけないという反面教師か! 私の歌を聴くと家庭はより結束がかたまるということか。隣の家が火事だと家族全員でバケツで水を運ぶあの感じでしょ。

『復讐バーボン』には「ダダの日」とか、この曲には元歌がありますが、こういった曲は子どもうけもよさそうですよね。

友川:子どもがいきなりダダを知るのは不幸ですよ。

ダダは子どもに近くはありませんか?

友川:ない。

あの破れた感じとか。

友川:それはそうかもしれないけど、子どもは破れちゃダメだよ。

歌詞はどのようにつくられるんですか?

友川:説明はうまくできないですよ。ただ今回の“順三郎畏怖”については石原吉郎(1915~1977年、戦後詩の代表的詩人)の歌をつくろうとして、たしかにむずかしくて、私にはわからない詩がほとんどなんだけど、なんか感じていてね。1年か2年ずっとやっていてね。石原吉郎をなんとかかたちにしたいとステージでもよくしゃべったもんです。
 私はもうずっと本は買わなくて図書館なんですよ。年だしいずれ死ぬし、本が部屋にあってもしょうがないから。図書館で借りて本を読むんです。たまたま石原吉郎の仕切りを見ていたら西脇順三郎の本が何冊かあったんですよ。西脇順三郎も読んでいたけどやっぱりわからなくて、でも彼の絵が好きなんですよ。絵が載っている本もちらちらあったから借りてみようと思ってね。そうしたら塚本邦雄が西脇順三郎のことを書いた文章があって、そこに「間断なく祝福せよ」という一行があった。それがあんまりよかったから曲にしたんですよ。

図書館には言葉を探すために通う感じですか?

友川:そんなことない。いちばん借りるのは動物図鑑とか、『世界のホタル』とかそういうのですよ。10冊くらい借りられるんですよ。でっかい美術書とか。無料だから。あんないいことないね。図書館は最高ですね。

『復讐バーボン』をつくろうとしたなりゆきから教えてください。

友川:それは〈MODEST LAUNCH〉小池さんのおかげですよ。小池さんが新しいのをやりましょう。ということで、私はもうつくらなくてもいいかなと思っていたの。年だし、いままでつくったのでいいかなと思っていた節もあるの。前はかたちをつくると元気が出て、次に行けたんですけど、もう大丈夫じゃないかなと思っていたから。

レコードというかパッケージはもう充分だと?

友川:かたちっていうのはよくないと思ったこともあったからね。だいいち時間もないしね。競輪も忙しいし。それがいざやったら元気が出ちゃってね。いいのつくってくれたの。それでまた(次に)行ける感じがしたんですよね。

かたちはもういい、というのはライヴだけでやっていこうということですか?

友川:ライヴもね、もうだいたいでいいなと思っていたの。ただほら、彼らに迷惑をかけているから。歌詞集(友川カズキ歌詞集 1974-2010 ユメは日々元気に死んでゆく/ミリオン出版)を出してくれた佐々木さんがいて、映画(ヴィンセント・ムーン監督『花々の過失』)のDVDも出て、そこそこ売らないとただ世話になっただけじゃ悪いなと、それだけ。私は義理人情にはあつくはないけど、中くらいはあるのよ。あつくはないよ、そういうことは信じないし。絆とか、ああいうのは信じない。「おもてなし」と「絆」は死語ですよ。寺の坊主が暮れにあそこで字を書いたら、その字は全部死語ですよ。いらないですよ。こけおどしだもの。あんなふうに言葉に集約される時代や人生なんかどこにも誰にもないですよ。

清水寺のやつですね。

友川:そうそう。墨を垂らしながね。あれは墨のムダだ。それをまたマスコミが伝えるでしょ。あんなバカなことあります? その字に向かって生きているひとなんかいないし、その字でなにかあったとかなかったとか、そんなひといません。字なんかそんなに重くない。

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それは詩が甘いんじゃないね。人間が甘いんですよ。簡単な話。詩を語ってはダメなんです。ひとを語れば詩になるんです。そのひとに詩があるかないかは、そのひとと語ればいい。詩を真ん中に置いて語ると詩に墜ちる。

しかし友川さんは言葉を生業にしているところもありますよね。

友川:ない(と断言する)。言葉を遊んでいるだけ。蹴飛ばして口笛のように吹いているだけ。生業ではいっさい、ない。寺山修司の名言がありますよ。「詩人という職業はない」詩を書けば誰でも詩人なんですよ。

さっこんの詩については甘いものも多い気がしますが。

友川:それは詩が甘いんじゃないね。人間が甘いんですよ。簡単な話。詩を語ってはダメなんです。ひとを語れば詩になるんです。そのひとに詩があるかないかは、そのひとと語ればいい。詩を真ん中に置いて語ると地に墜ちる。

わかりやすい詩を求めている人も多くいますよね。それを詩と呼んでいいのか、ポエムと呼ぶべきかはわかりませんが。

友川:私も平明な詩がいいとは思っているんですよ。詩も絵もそうだけど、むずかしくするほうが簡単なの。

そうでしょうね。

友川:平明に誰でもわかる言葉で伝えるほうがむずかしい。けっこう気をつかうんですよ。

詩というものは現代詩に象徴されるように難解になっていった歴史というか経緯はありますよね。

友川:現代詩なんて何年も読んだことない。このまえどこかで『現代詩手帖』をわたされましたよ。若いひとでそこに詩を書いている方がいらした。何十年も前に私はずっと投稿していたんですけど一度も載ったことはない。デビューしてからは何度か載りましたけどね。

そうなんですね。

友川カズキ:諏訪優(1929~1992年、詩人。バロウズやケルアックなどビートニクの翻訳者であるともに紹介者であり、レナード・コーエンの歌詞集の翻訳なども手がけた)さんという方と親しくしていたから、諏訪さんが私の詩を2、3回載せてくれたけどね。それだってコネですよね。

諏訪優さんだって友川さんの詩がよいと思うから推薦してくれたんだと思いますよ。

友川:そうそう、私、諏訪さんに助けられたことがあるんですよ。ライヴハウスでケンカになって路上で血だらけで倒れていたところ、たまたま通りがかった諏訪さんが助けてくれたの。私はそのときアレン・ギンズバーグはもう読んでいたけど、そのひとが諏訪さんだとは知らなかった。諏訪さんは学生といっしょで、助けられてどこかに店に入って名刺をもらったら諏訪さんだとわかったのよ。それから何度か連絡をとりあってね。最後は東北の旅をふたりでやりましたよ。彼の詩の朗読と私の歌でコンサート・ツアーをね。彼が死んだときは、私も歌いましたから。福島さんの寺でやったの。

福島泰樹さんですか?

友川:そうそう。

そういう奇縁があるんですね。出会いといいますか。

友川:諏訪さんの場合はあまりにも奇異な出会いだけどね。だからひとですよ、私の場合は。

ひととの出会いでなにか変わるものがありますか?

友川:誰とでもというわけではもちろんないですよ。私は飲んでひとと出会って変わってきた感じがありますね。だってどこも出かけないから。とくにいまは。むかしだって、ただゴールデン街を飲み歩いていただけだから。ああいうところで出会っていった感じがしますね。たとえば中上健次さんあたりにもゴールデン街を連れて歩かれたのよ。嵐山光三郎さんとかね。そういう人間と出会ったからでしょう。

レコードをつくるのもひとつの縁かもしれませんね。

友川:そうそう。ステージとはまったく別の次元のものだからね。

そういうふうにレコードはいいかと思いながらも、『復讐バーボン』が思いのほかよかったから先に進めると思ったんですね。

友川:松村さんも書かれていたけど、はじめて練習したのよ。私、最初小池さんのこと怒ったの。みんなプロなのになんで練習なんかしなきゃいけないのって。それがやったらクセになっちゃってね。ぜんぜんちがうの。私じゃないですよ、まわりがちがうんです。いつもの即興でお願いします、というあれがどれだけ失礼かがわかったの。

長いことかかりましたね。

友川:40年かかったね。いくら技術があってもテンションがあっても、会ってすぐは知らない曲はできないよね。


『復讐バーボン』レコーディング風景
Kazuki Tomokawa "Vengeance Bourbon" Recording Footage

2013.10.11 at APIA 40
歌:友川カズキ“兄のレコード”
共演:石塚俊明(drums)、永畑雅人(piano)、金井太郎(guitar)、
ギャスパー・クラウス(cello)、坂本弘道(cello)、松井亜由美(viol­in)、吉田悠樹(nico)
撮影:川上紀子


トシ(石塚俊明)さんにしろ永畑雅人さんにしろ、彼らの即興はまたすごいと思いますけどね。

友川:彼らはいつでも私に合わせてくれるの。それに私はオンブにダッコだったわけです。バンドにははじめて会うようなひとだっているわけで、曲を知らないこともあるじゃないですか。それを即興で、というのはムリなところもあるし、だいいちつまらない。上っ面をなぞるだけで終わっちゃうから。

そうですか。

友川:曲がわかったうえでそこからのアレンジや即興で壊すと本人が考えるのはいいんだけどなんにも知らないで参加させられた日にはちょっとつらいと思うな。小池さんにはほんとうに勉強させられました。叱った私がバカでした。

私も長らく友川さんの音楽は聴かせていただいていますが、練習することでこれだけ変わるものなんだなとは思いました。

友川:変わる余地は私にはいっぱいあるんです。うぬぼれで生きてきたから。ひとと折り合おうという気はまったくないから。トシとか雅人さんはむかしから会っていて、気心が知れているから合わせてくれていたわけよね。ギターをまちがえたところも、わかっていて流してくれたりしていたんですよ。ところがはじめて会うひとに甘えるのはキツい。それにそれは音楽にも出るんです。

練習というのは友川さんがコード進行を書いてメンバーにわたしたんですか?

友川:歌詞を渡してコード進行をわたしました。佐村河内と同じで譜面は書けないからね。

佐村河内は余計なひとことだと思いますが。

友川:佐村河内は興味があるね。まぁ、MCのネタとしてですけどね。そういう仕込みには怠りないんですよ、私(笑)。文春も毎週のように買っちゃった。

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枷のなかでの飛び跳ね飛び散らかりじゃないと自由じゃない。自由というと手足を伸ばしてだらだらしている状態だと思うひともいるけど、あれじゃあないんですよね。

そうですか。でもそうやってコード譜を書いてバンド・メンバーにわたすというのは、それまではやっていなかったということですか?

友川:それはやっていましたよ。

今回はレコーディングの前にリハーサルをやったということですね。

友川:そう。ふだんドラムのひとやピアノひととも音楽の話はしないから。ライヴの前にラーメン屋に入っていても音楽の話なんて出ませんよ。私が知らないのもあるんだけど、それが今回スタジオで音楽の話をしたりしてね。

具体的にはどういうことを話したのか憶えていますか?

友川:ギターのひとがイントロはこういう感じでいいですか、とかそういうことを活かしたり、いろいろでしたね。そしたらちゃんと技があるんだよなあ。それがおもしろかったですね。

バンドには長くいっしょにやられてきたメンバーも多いですが、それまで友川さんはメンバーのどこに信を置いてお願いしてきたんですか?

友川:お願いするということでもないよね。

それも縁のようなものですか?

友川:そうだね。トシはね、あのテンションだね。私、頭脳警察のファンだったんですよ。前座も何回かやらせてもらってね。トシのコンガがよくてね。バンドをやるならいっしょにやりたいな、と思っていたのがもう何十年にもなっているだけですよ。

テンションというのは?

友川:狂気ね。表現というのは悪魔と天使、大胆さと繊細さがないとダメだと思うんですよ。トシには見事にそれがある。その量が大きいのよ。悪魔も大きければ天使も大きい。それがすばらしいバランスなのよ。すごく凶暴だしすごく繊細。どっちかひとつだったら誰にでもあるのよ。こいつは悪魔は大きいけど天使は小さいなとか、天使はすごいけど悪魔はないなとかね。その量が(どちらも)すごいの。キンタマも大きいけどね。2倍だよ。

なんの2倍なんですか(笑)?

友川:ポイント2倍(笑)。いや、あれは大きい。

キンタマの話はさておき。

友川:いやね、松村さん。話というのは枝葉末節のほうがおもしろいのよ。

おっしゃるとおりです。細部というのはなににおいても大切だと思います。

友川:ディテールね。

なぜ英語でいいかえたんですか。

友川:どこかに英語をいれとかないとね(笑)。

天使と悪魔の配分の話ですが、友川さんとしては一方だけはものたりないということですね。

友川:つまらないんですよ。

友川さんの表現もそういうものだと思います。

友川:私は自分のことはわからないけどひとのことは見えますからね。こうやって話していても見えるでしょ。ただ自分のことって意外とね、見えないからわからない。誰でもそうでしょう。

自分のことは見えないということは自分なりの確たる方法論もおもちではない?

友川:方法論ということではないけれども、さっきからの話を集約すると、またひとの言葉になるんだけど、寺山修司が「枷のない自由は自由じゃない」といっているんですよ。枷のなかでの飛び跳ね飛び散らかりじゃないと自由じゃない。自由というと手足を伸ばしてだらだらしている状態だと思うひともいるけど、あれじゃあないんですよね。

枷というのは、歌をつくるときの枷というのはどういうものだと思いますか?

友川:3分半で歌詞は3番までとかね。20分30分する歌もあるかもしれないけど、生理的に3分から5分が限界だと私は思いますよ。

それが友川さんにとっての決めごとになるんですか?

友川:そういったことは……考えたことないなあ。むしろ自然にやっちゃっている感じがある。ただこの言葉はマズいなというのはあるんです。“一人ぼっちは絵描きになる”という歌があるんですが、これはもとは“一人ぼっちは画家になる”というタイトルだったの。ところが「画家」だと「バカ」に聞こえるのよ。これはマズいと思って“一人ぼっちは絵描きになる”に変えたの。だから歌詞の語呂がちょっとおかしいんだよね。気をつけるのはそういうことだね。書いた詩で読んでもらうなら「画家」でいいんだけど私の場合耳から入る詩だからね。あとはむずかしくてわからない言葉でもいいやというのはいっぱいある。わからなければわからないでぜんぜんいい。さっきの平明な言葉と矛盾するかもしれないけど、わからなくてもいいんです。総合的に感じるか感じないかであって、あの言葉はわからないからこの歌はダメだということにはならない。

書く言葉と歌う言葉は――

友川:完全にわけている。私はいまは書きませんけど、むかしは書いていましたから書く詩はなんでもいいわけ。歌はまずひとに聴いてもらう前提があり、歌うという前提があり、人前に出るという前提がある。書いた詩は人前に出なくても読もうが読まれまいが関係ないという気持ちで書くし、読むひとの顔もみえない。歌は見えるんです。聴いているひとの顔が。コンサート会場ではなくともね。

書く詩はなんでもいいわけ。歌はまずひとに聴いてもらう前提があり、歌うという前提があり、人前に出るという前提がある。書いた詩は人前に出なくても読もうが読まれまいが関係ないという気持ちで書くし、読むひとの顔もみえない。歌は見えるんです。聴いているひとの顔が。


友川カズキ
復讐バーボン

モデストラウンチ

FolkRock

Tower Amazon

歌詞をつくるのは時間がかかりますか?

友川:私はなんでも早いですよ。粘ったりしないの。すぐできないのはできないの。絵もそう。できるときはすぐですよ。

でも絵を描くのは地道なコツコツした作業のような気もしますが。

友川:それは絵描きによるし、どういう絵かにもよるね。私は努力とか嫌いだし、地道なんて一刀両断に切って捨てたい言葉だね。

地道に歌いつづけていらっしゃるじゃないですか?

友川:それはちがうな。歌だって2年くらい止めていた時期があるんだから。もういいやと思っていたんだから。飽きっぽいしそういうのはないの。そうしたら渋谷時代の〈アピア〉にあるファンから電話がきて、「友川さんにまた出てほしい」と。毎日のように電話がくるんだっていうのよ。それでまたやることになったんですよ。(お客さんが)10人以下になったらもう止めるとも決めていたんですけどね。それがいつも12、13人だったりするのよ(笑)。これがむずかしいところですよ。

それこそ神の差配なんじゃないですか?

友川:いやいや、神なんかいるもんか。

それでも、すくなくとも10人以上はお客さんはいたわけですよね。

友川:そうだね。これだけ長く歌っているといろんなひとがいるね。

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変わる余地は私にはいっぱいあるんです。

私も〈アピア〉でも何度も聴きました。

友川:滝澤明子さんといういまイギリスに住んでいるカメラマンの方は日本に帰ってくるたびにコンサートにずっときてくれてたんだって。そのときは顔も名前も存じませんでしたが、私がロンドンでライヴをしたときに、彼女がきてくれて、知り合いになった。そういうこともありましたよ。

海外でも友川さんの歌が評価が高いですが、言葉が通じない場所で聴かれていることをどう思われますか。

友川:私だってローリング・ストーンズを聴いたりするわけだしね。しかしどういった感覚なんだろうね。

スタッフの佐々木氏:ロンドンでは〈cafe OTO〉というところでライヴしたんですが、滝澤さんによれば、あんなに話し声がしない〈cafe OTO〉ははじめてだということでした。イギリスではお客さんは演奏中もしゃべっていることが多いらしいんですが、友川さんのライヴはシーンとしていたとおっしゃっていました。

友川:ロンドンでは私は(曲間に)ほとんどしゃべらなかったんですよ。英語しゃべれないから。次々と歌だけ歌ったんです。

それをみんな真剣に聴いていたんですね。

友川:そうそう。

感想は訊かれましたか。

友川:訊くもなにも、話せないから、ただ飲んでいただけ。

私も18、19歳でヨーロッパに行ったとき、友川さんの『初期傑作選』のCDを、当時はCDウォークマンでしたからそれにいれて旅していたんですけど――

友川:つらい旅だ。

いろいろ思うところがあったんでしょうね(笑)。フランスに寄ったとき、知り合った同世代の男性に聴かせたらほしいというもんであげた憶えがあります。私もフランス語はできませんでしたから、いいと思った理由はよくわからなかったですが、言葉の壁を越えて伝わるものが友川さんの歌にはあるのかもしれませんね。

友川:フランスからロンドンに私の歌を聴きにきたレオナルドという男がいたんだけど、彼は私のレコードを全部もっていたからね。ヘンな男だったよ。なんの仕事やってるって訊いたら、無職ですって。アンコールも彼がたちあがってアンコールかけたもので全員仕方なく手を叩きはじめたんだけどね。

そういう熱狂的なファンがいるんですね。

友川:あちこちに、そういった危ない感じのひとがいるのよ(笑)。フランスには多いですよ。

言葉の響きの問題ですか?

友川:関係ないでしょ(笑)。

『復讐バーボン』にも訳詞がついていますし、海外でも聴かれるといいですね。

友川:そうね。

友川カズキ“馬の耳に万車券”
Kazuki Tomokawa "A Lucky Betting Slip to Deaf Ears"

2014年1月29日 in 大阪『復讐バーボン』レコ発ライヴ
友川カズキ、永畑雅人、石塚俊明、ギャスパー・クラウス


言葉にしろ曲にしろ、演奏しても『復讐バーボン』はこれまでの友川さんの作品のなかでも頭ひとつ抜けていると思いました。

友川:それはうれしいね。いつまでも『初期傑作集』じゃね。

初期は初期ですばらしいと思いますよ。前に原稿でも書きましたが、変わっていくもののなかに一貫しているところがあるのも友川さんだと思うんですね。

友川:松村さんはそう書いていたけど、私もそう思う。一昨日の私ではダメなのよ、明後日の私がつねにここに坐っているような感じでないと。なにかないと。

そうありつづけるひとも多くはないと思いますけどね。

友川:いや表現者にはいっぱいいますよ。

そういう表現者がいっぱいいれば日本はもっと住みやすいと思いますけどね。

友川:偉いこといったな、あんた(笑)。ちょっと政界にでもいってきてよ。(ライヴハウスの店員に)じゃあ、ビールとあとカレー3つ。


(後編につづく)


BACK DROP BOMBというBANDでguitarを弾いたり、
歌舞伎町のドープオアシスSPOT BE-WAVEで色々とやっております。
DJ nameはDJ TASAKAと同様の発音でお願いします。
BAND活動20周年を記念してTRIBUTE ALBUMを作りました。
20周年特設サイト(https://bdb20th.com/)

DJ&LIVEスケジュール
6/3 DJ BAKU PRESENTS "MIXXCHA"VOLUME ONE"@中目黒solfa(DJ)
6/7 歌舞伎町be-wave 8Anniversary party@be-wave(DJ)
6/9BACK DROP BOMB特別番組@DOMMUNE(Talk)
6/14 Broccasion Live@六本木ex-theater(Live)
6/15rega「2014tour discuss」@仙台MACANA(Live)
6/22HOLYDAYS@LOUNGE NEO(DJ)
6/27Broccasion Live@大阪BIGCAT(Live)
まだ他にも決まっているlive等有ります。こちらでチェックプリーズ(https://backdropbomb.jp/

最近DJで良くかける曲10


1
PAPER,PAPER... (MxAxD) - BRON-K feat.NORIKIYO

2
Animal Chuki - Capicúa

3
Mastered - A-Trak feat.Lupe Fiasco

4
Rathero - Semilla

5
Buraka Som Sistema - Zouk Flute

6
Dillon Francis - I.D.G.A.F.O.S. (Neki Stranac Cumbia Digital Rework)

7
Liliana (Dengue Dengue Dengue! Refix) - Los Demonis del Mantaro

8
FISSA - UFO!&Hoodie

9
Snake (Neki Stranac Moombahton Mix) - Blasterjaxx

10
Lagartijeando aka Mati Zundel - Doña Maria - El Pescador (Lagartijeando Remix)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884