「Nothing」と一致するもの

小原泰広、写真展 - ele-king

 10年ほど昔、都内のとある中古盤/古本屋に入ったら、壁一面にSFPというハードコア・バンドの写真が貼ってあって、それを撮っていたのが小原泰広だった。以来、『remix』時代を入れて、けっこう長きにわたって撮影をお願いしている。
 小原といえば、基本、ハッセルブラッドというお洒落なスウェーデンのカメラにモノクロのブローニーフィルムを入れて、しかし時代錯誤的なまでにがっつりした、無骨な写真を撮る男だ。DJで言えば、いまどき重たいレコードケースを運ぶようなもので、重たいカメラバッグを持って、いちいちフィルムを回している。デジカメどころかスマートフォンでバシバシ撮るようなこの時代に、刃向かっているのか馴染めないだけなのか……あるいは、そうでもしなければ撮れない何かがそこにはあるからなのだろう。

 小原泰広の写真展が恵比寿リキッドルームの上、KATAにて開催される。ele-king読者にはお馴染みの彼だが、ele-kingに載っているアーティスト写真とはまたひと味違った、写真家・小原泰広の世界が待っているだろう。どうぞ、足をお運びください。

2015.09.16 ~ 2015.09.23
YASUHIRO OHARA PHOTO EXHIBITION『BUSINESS DEVELOPMENT』

会 期 : 2015年9月16日(水) – 9月23日(水祝)

営業時間 : 13:00 – 20:00

入場料 : 無料

会場 : KATA (東京都渋谷区東 3 -16 – 6 LIQUIDROOM 2F)
会場では、ZINEやグッズの発売もあり。

EVENT
9/16(水) OPENING PARTY 18:00- DJ STRAWBERRYSEX OVERALL
9/20(日) 15:00- DJ COMPUMA CHANGSIE AKINOBU MAEDA
9/23(水) CLOSING PARTY 15:00- DJ 2MUCH CREW and more

(イベントの日は22:00まで)

Profile
小原泰広(オハラヤスヒロ)

1976年愛知県出身
2002年東京造形大学卒業
2004年から3年間のアシスタントを経て
2007年フリーランスフォトグラファー

音楽誌やカルチャー誌、CDジャケット、広告等で活動 

-info-
KATA https://kata-gallery.net
LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

Gonno - ele-king

 クボケンが言うことを要約すればタサカのアルバムは政治の季節を象徴するものであると。で、だったら、ゴンノの10年ぶりのセカンド・アルバムはいま現在のどこにヒモ付いているのだろうか。
 
 ゴンノは、いまや世界で知られる日本人DJのひとりである。彼はボイラールームに出演しているし、ジェフ・ミルズのリミックスも手掛けている。今作も、ピッチフォークにレヴューが載ったせいで、海外での売れ行きがいっきに伸びているというし、そしてそのレヴュアーの言ってることを要約すればこれは今日のバレアリックを象徴すると。それでさらに売れるわけだから、バレアリックという単語にはまだヒキがあるということなのだろう。まあ、バレアリックというのは、いつの時代でもクラバーを魅了する定番スタイルなのだろうね。
 たしかに本作には〈コンパクト〉が『ニュー・エイジ・オブ・アース』をカヴァーしたようなところがあり、ダンスではなく、家聴きが相応しい、極めて陶酔的なアルバムだ。ぼくのように生活に追われている人間には、なかなかこのような境地にはいく機会がないけれど、しかしだね、ハードな時代とはいえ、こういう音楽もまた絶対に失ってはいけない。

 友人たちからさんざん推薦されていた映画『6才のボクが、大人になるまで。』を先月やっと観たのだけれど、あまりにも面白くて2回観た。ラストシーンが最高だ。あれは要するに、ネタを入れてちょうどピークが来ているときの会話で、あのときのふたりの表情と会話は、まさにバレアリックだと言える。子持ちの40歳以上の人間で、たったいまぼくがここで書いたことの意味が理解できる人があれを観たら、まず泣くよ(しかも夫婦仲でお悩みなら、なおさら)。もちろん、ぼくが感情移入するのはイーサン・ホークのほうだが、あの主人公の気持ちも痛いほどわかる。1億光年も昔のことのようだが……。

 そしていつかあのふたりは、ゴンノの繊細で、優しく、綺麗なダンス・トラックで身を揺らせるかもしれない。暖かい夕日を浴びながら。その瞬間はたしかに永遠だ。人生は美しいと思い出せって、いや、そういう前向きな気持ちになかなかなれない年頃なのだ!! ……けれど、ゴンノがそういうならそうかもしれない。
 

カニエ・ウエスト、大統領選に出馬表明 - ele-king

 ヒラリー・クリントンによる私用メール疑惑が転機となったか、保守系メディアを二分するほどドナルド・トランプが支持率を上げた(ネオ・ナチまでエールを送り始めた)ことに刺激を受けたとしか思えない……そう、MTVアワードのステージでカニエ・ウエストが2020年の大統領選に出馬を表明したのである。マスコミの反応はさすがというのか、もしもカニエ・ウエストが大統領になったらファースト・レディとなるキム・カーダシアンは何をするのかという話題に集中している。一般の人にとってはカーダシアン一家の方が知名度は高いので、なるほど、自然なバカ騒ぎはそっちへ向かうのかと。今年のグラストンベリー・フェスティヴァルでもステージで“ボヘミアン・ラプソディ”を熱唱していたカニエ・ウエストは冷笑されて一蹴という感じだったけれど(アメリカのラジオ局はカニエ・ウエストが歌うのを聴いてフレディ・マーキュリーが笑い転げるという動画まで投稿していた)、むしろ最前列で見ていたキム・カーダシアンに話題は偏っていた。しかも、カーダシアンの名を飛躍的に高めたセックス・テープの一場面をデカいフラッグにして振っていた客をめぐって論争が果てしなく広がっていく始末で、フェスが終わってからカニエ・ウエストが「オレはいま、地球最大のロックスターだ」という発言も、この論争から目をそらすためのブラフにしか感じられなかった。もはやカニエ・ウエストはキム・カーダシアンのコマーシャルみたいなものである。

 カーダシアン・ファミリーのことを知らない人に少し説明すると、まずはロバート・カーダシアンがO・J・シンプソンの裁判で弁護士を務めたことに遡る。アルメニア系の事業家として成功していたロバート・カーダシアンは、スカッシュか何かで知り合いになったO・J・シンプソンのために20年ぶりに法廷にボランティアで参加し、一躍、知名度を上げる。そして、金持ちの生活ぶりが見たいということだったのかなんだったのか、彼らの生活ぶりが当時のアメリカのリアリティ番組では最も高額のギャラだったと言われる『キーピング・アップ・ウイズ・ザ・カーダシアンズ(Keeping Up with the Kardashians)』として放送されることに。キムだけではなく、コートニー・カーダシアン、クロエ・カーダシアン、ロブ・カーダシアンが世間の目に触れることになる。セレブリティではなく、親の遺産を社会活動に使う子孫はアメリカではソーシャライトとして区別されているけれど、それ以前からTVに出演したり、『プレイボーイ』でヌードを披露していたキム・カーダシアンがさらに違う肩書きで知名度を上げたのがセックス・テープの流出であった。パリス・ヒルトンやファラ・エイブラハムと違ってゴシップの波に沈まなかったのはスゴいとしかいいようがないけれど、どこでどうしたか、キム・カーダシアンはその波にのって2014年にカニエ・ウエストと再々婚を果たし、彼女がインスタグラムにアップした結婚式の写真には2億6000万回の「いいね!」がついたとか。

 さらに、ロバート・カーダシアンの前妻、クリス・カーダシアンはオリンピック選手だったブルース・ジェンナーと再婚していたにもかかわらず、今年になってブルース・ジェンナーが性同一性障害であることをカミング・アウトし、クリスと離婚。性転換者として『ヴァニティ・フェア』の表紙を飾り、名前もケイトリン・ジェンナーに改めてスピーチを行ったところ、今年最高の感動的なスピーチだったと大評判に(ルポールまで人気復活)。ジェンナー夫妻にも何人か子どもがいて、そのうちのひとり、カイリー・ジェンナーはいわゆるセレブのような振る舞いで知られ、今年18歳になる誕生日にキム・カーダシアンと同じ髪型にしたことから、身内からバッシングを受けることになったり。この、いわゆる、アメリカではカーダシアン-ジェンナー一族として知られる親族が一堂に会した写真がやはりインスタグラムにアップされているんだけれど、このなかにカニエ・ウエストが混じっていることの奇妙さは何度見ても拭えない。カニエ・ウエストも音楽情報サイトではなく、一般的なメディアを見る限りではまるで“ウインドウリッカー”の頃のエイフェックス・ツインのような扱いであり、そこで大統領選に出馬表明をしても不思議はないというのか、もう、何が起きてもおかしくはないというのか。アメリカって、やっぱりスゴいかも。

まわるまわる! - ele-king

 オープン・リール・アンサンブルをご存じだろうか。オープンリールを楽器として「奏でる」この奇妙なオーケストラは、音の楽しさにくわえ、視覚的なライヴ・パフォーマンスも傑出しており、坂本龍一の〈commmons〉からデビュー作を出したのち、ISSEY MIYAKEのパリコレクションのために曲を書き下ろすなどの商業的な仕事のほか、オープンリールを解析した世紀の奇書『回典 ~En-Cyclepedia』の刊行や、飽かずあらたなコンセプトや挑戦をみせるライヴ活動など、持ち前のエクスペリメンタリズムをフル「回転」させながら、このたびセカンド・アルバムを発表した。リード・トラックのPVがついに公開、というニュースが届いたので、ぜひ観て(聴いて)いただきたい。ついでにいろんなライヴ映像なんかも上がっているはずなので、クルージングしてみてはいかがだろう。ついついと、この回転の渦から出られなくなるかもしれないけれど──。
 後日、ele-kingではインタヴューも大公開!

■Open Reel Ensembleの2ndアルバム『Vocal Code』から、錯視(目の錯覚)の効果を利用したMV「空中特急」が公開!!

9月2日(水)発売! Open Reel Ensembleの2ndアルバム『Vocal Code』から、錯視(目の錯覚)の効果を利用したMV「空中特急」が公開された。

旧式のオープンリール・デッキと現代のコンピュータをドッキングさせた圧倒的なパフォーマンスで世界中を熱狂させているOpen Reel Ensemble。”声”をテーマした今作では、七尾旅人、森翔太、Babi、Jan(GREAT3)、神田彩香、クリウィムバアニー等、豪華ゲスト陣が集め実験的ポップスに挑んだ意欲作。

今作のリード曲であり、中心メンバーの和田永が歌う楽曲「空中特急」のミュージックビデオは、錯視(目の錯覚)の効果を利用した映像となっている。映像はメンバーの吉田匡、吉田悠が監督、編集を担当。オープンリールを楽器として扱いメディア・アートの世界でも注目を集めるワンアンドオンリーな存在の彼らならではのユニークなミュージックビデオが公開された。


Open Reel Ensemble - 空中特急 short version (Official Video)

真ん中にある黒い点を目を離さずに見続けると
静止していた「空中特急」の世界が動き始めます。
※錯視の効果には個人差があります


■Open Reel Ensemble
Vocal Code
2015/09/02 release
PCD-25180
定価:¥2,500+税
https://p-vine.jp/music/pcd-25180

01. 帰って来た楽園 with 森翔太
02. 回・転・旅・行・記 with 七尾旅人
03. 空中特急
04. ふるぼっこ with クリウィムバアニー
05. Reel to Trip
06. 雲悠々水潺々
07. Tape Duck
08. アルコトルプルコ巻戻協奏曲 with 神田彩香
09. NAGRA
10. (Life is like a) Brown Box with Jan
11. Tapend Roll
12. Telemoon with Babi

A$AP Rocky - ele-king

 ずば抜けたラップに脳みそまで痺れるビート、誰もがうらやむウェアとキックス。あとは、最高のトリップとセックス。それ以外にいったい何がいる? ここには崇高なスピチュアリティも、深淵な思想もない。メランコリアや感傷も存在しない。A$AP ROCKY(エイサップ・ロッキー)はぶれない。ディオールのジャケットを着て『フォーブス』の長者番付リストに載るようになっても、相変わらずコデインなんていう貧乏人のドラッグをやっている。黒い肌のジェームス・ディーン。あるいはラップするヘンドリクス。彼の声はいつも、ひどく醒めて、乾いている。

 デビュー時からニルヴァーナやジミ・ヘンドリクスをフェイヴァリットにあげ、ザ・ヴァーヴの“BITTER SWEET SYMPHONY“を丸ごとサンプルしていたROCKYが、今回のアルバムでロックやブルーズ的なアプローチを取り入れたことに驚きはない。ヒューストンやアトランタ産のトラップとチルウェイブを融合させたこれまでのサウンドに、ゴスペルやロック・シンガーによるコーラスまで加わって、音のテクスチュアは混沌としている。
 初っぱなから聖霊を呼び出すゴージャスなイントロ“HOLY GHOST”に続き、一転してミニマルなビートで冷酷な勝利宣言を表明する“CANAL ST.”、あのM.I.A.が「新しいビッチにしゃぶってもらいなよ」と連呼するトリップ・ホップ的な“FINE WHINE”を経て、“JD”のインタルード的導入までの流れは、ひたすらダウナーでサイケデリック。それ以降も、ダークで享楽的なノリはいよいよ強まっていく。稲妻のようなシンセが飛び交い、スモーキー・ロビンソンの歌声が塗りつぶされ、ほとんど爆発音に近いスネアとベースが炸裂する。ROCKYはひたすら膨大な言葉をスピットし続ける。覚醒と酩酊を往復しながらも、そのフロウは決してぶれない。流麗なライミングで金言めいたものを口にしたかと思えば、「ケツを振れよガール、プッシーを濡らせ」と下品な煽りも忘れない。
 サウンド面での特徴はもうひとつ、KANYE WESTやLIL WAYNE、MOS DEFといった大御所と並んで最多曲数でフィーチャーされた無名のギタリスト、JOE FOXの存在だ。ROCKYがニューヨークの路上で偶然ピックアップしたという彼の、ハーモニーというよりは分裂症的なイメージを与える歌声が、本作の印象を決定づけているのは間違いない。
 けれど、最も異色で印象深いのは、ROCKY本人が陶酔感たっぷりの歌声を披露する“L$D”だろう。曲の前半は完全にビートレス。愛と、セックスと、一瞬のサイケデリアを成分とするこの4分間のトリップだけが、グロテスクな享楽と神経症的な焦燥に満ちたアルバムのなかで唯一、幸福と呼べる瞬間をもたらしている。狂騒からの逃避先が出会ったばかりの女とのアシッド・セックスというのも救えない話だ。それでも、この不埒でロマンティックな逃避行は、どうにも抗いがたい魅力を放っている。ハーレム生まれの黒人が歌舞伎町で見るハリウッドの夢、といったエキゾティシズムを漂わせるミュージック・ヴィデオも、息をのむほどに美しい。このきらめく数分間の快楽の芳香には、善悪の境界線を危うくさせる強烈な引力がある。

 かつて「俺が欲しいのは女と金とウィードだけ(PUSSY, MONEY, WEED, THAT’S ALL I REALLY NEED)」というパンチラインを生み出したROCKYは、本作でもヴィラン(悪党)のペルソナを演じ切ることを選んだようだ。爆発的な成功がもたらした苦悩に身悶えしながらも、そこに内省はない。冒頭で呼び出した聖霊も早々に追い払い、シャンパンとコデインに酩酊して悪態をわめき散らし、アシッドを口に放り込んで他人の恋人を奪い取る。悪逆を尽くすその姿はしかも、セレブリティ好きの紳士淑女の口にも合うように、あくまでクールでスタイリッシュにスタイリングされている。この辺のあざといセルフ・ブランディングも、Y-3のパーカに身を包んでコンビニ強盗に押し入っていた前作の延長上にある。最近の悪党は、メゾン・マルジェラやリック・オウエンスを着ているのだ。
 すでに多く指摘されているが、今回のアートワークでROCKYの顔面を彩る紫の痣は、このアルバムのリリース直前、おそらくはコデインの過剰摂取で急逝したA$AP MOBの精神的支柱、A$AP YAM$への追悼を意味している。しかし、その盟友に捧げられたと思われる“M’$”や“WAVYBONE”に、型通りの哀悼の言葉は見当たらない。そこで代わりに繰り返される「金を生み出せ」というアグレッシヴなメッセージはそのまま、A$AP(Always $trive And Prosper)の哲学そのものでもある。どんな困難にぶつかろうと、自分たちのビジネスを貫徹すること。それがA$APファミリーの追悼の流儀だということだろう。

 薬物は人にフィジカルな絶頂と疲労を往復させることで、人生の盛衰を早回しに見せてくれる。極端な快楽は痛みに似ているし、快感と苦痛は同じように人の顔を歪ませる。それでも、ROCKYは倫理や情緒にすがらずに、あくなき衝動と欲望を肯定する。ラップにつきまとうセクシズムや拝金主義、暴力やドラッグといったネガティヴなイメージへの反発から、まっとうな社会的メッセージや詩的な技巧を誇るアーティストが持ち上げられることは多い。けれど、崇高な思想や美しい詩をありがたがるだけなら、大統領のスピーチを聴くか、大人しく読書でもしてればいい。いまや現代のコンシャス・ラッパーの代表格となったケンドリック・ラマーだって、あのメッセージの表層的なモラリティのみをすくいとって賛美することなんて絶対に不可能だ。万が一そんなマヌケなことをするのなら、ラップを聴く意味など一ミリもない。
 この男は、キング牧師の演説の夢を見て、全米で相次ぐ黒人への凄惨な暴力事件のニュースを眺めながら、セックスとドラッグに溺れている。この退廃と混沌は、ポリティカル・コレクトネスに対する幼児的な反発ではない。心臓を氷漬けにし、致死量のドラッグを体に流し込み、南部の熱病にうなされてカス・ワードを口走る。良心的徴兵拒否によってチャンピオン・ベルトを剥奪されたコンシャスなモハメド・アリではなく、衝動まかせに対戦相手の耳を食いちぎる獰猛なマイク・タイソンの時代に、この音楽は生まれた。善悪の彼岸をひた走る人間にとっては、大統領の肌の色が黒だろうが白だろうが関係ない。この確信犯の反知性主義こそは、すべてのラップ・ミュージックをラップ・ミュージックたらしめる、根源的な力なのだ。
 アメリカだけじゃなく、状況は違えど、日本もこんなご時勢だ。気付けば震災以降、安易な涙を誘う感動ポルノや、相対主義どまりのシニカルな社会的メッセージばかりが蔓延している感は否めない。たとえそのフェイムがセレブリティ的なメディア露出によるものだとしても、ROCKYは現在の日本で、おそらく最も名の知れたヒップホップ・アイコンのひとりだ。洗練されたファッションや表面的な音楽スタイル以上に、この吹っ切れた悪の表現の与えるインスピレーションは大きい。ポリティカル・コレクトネスに中途半端な色目を使う優等生や、ケチな露悪をもてあそぶ反動的な卑怯者は知るよしもない、本物の悪人の享楽がここにはある。世界の悲惨を目の前にして、善人は泣くが、悪人は無理にでも不敵に笑う。悲劇を悲劇とも思わないタフな快楽主義は、ときに涙を乾かし、切実な怒りに寄りそう、強力な番犬にもなるのだ。

 豪勢にめかしこんで地獄めぐりの旅に出た。いったんは悪魔に取り憑かれ、魂だけは奪われずに帰還した。ありとあらゆる悪徳にまみれ、もがき苦しみ、それでも懺悔も贖罪もしない。どんなに虐げられても生き延び、繁栄する地下の帝国で短い一生を謳歌する。馬鹿で愚かだと思うんならそれで構わない。この音楽は強靭な生の哲学であり、大罪人の敬虔な祈りであり、善悪の彼岸への招待状だ。大事なことなので、最後にもう一度。ずば抜けたラップに脳みそまで痺れるビート、誰もがうらやむウェアとキックス。あとは、最高のトリップとセックス。それ以外にいったい、何がいる?

New Order - ele-king

 イアン・カーティスの死後、1980年の後半からニュー・オーダーとして再出発した彼らは、まず自分たちのサウンドをどのように創出するかで悩んだ。そして、新たなる音を創出するうえでヒントにしたものがふたつあった。ひとつは、ニューヨークで知り合ったDJから送られてくる最新のクラブ・サウンド。そしてもうひとつがベルリンに移住したイギリス人、マーク・リーダーから送られてくる音。バーナード・サムナーは、自分たちが“ブルー・マンデー”を生むまでの過程において、NYクラブ・カルチャーと同時にマーク・リーダーおよびベルリンからの影響をしかと記している。このくだりを読めば、日本のファンは思わずニヤッとするだろう。ちなみに、──これは本書には書かれていないが──、みなさんご存じのようにリーダーの〈MFS〉とは、1996年に電気グルーヴの「虹」をリリースしたレーベルである。つまりそれは必然だったと、いまは言えるのではないか。
 こういう、ファンにとっては嬉しい話が満載である。
 とはいえ、彼の内省的なところもよく出ている。たとえば冒頭の、サムナーがあの伝説のセックス・ピストルズのマンチェスターでのライヴに行くまでのところの、彼のサルフォードという労働者階級のエリアで過ごした家族との思い出ないしはその環境は、なるほど後のジョイ・ディヴィジョンへとつながる。彼が少年時代に経験した「コミュニティの解体」こそ、あのバンドが表した孤独、苦悩、ディストピア、終わりなき「終わり」と関わっていることをサムナーは明かしているが、そこまでの展開はヘヴィーである。そもそも、サムナーが、風呂さえまともにないような労働階級の出身だったことをぼくは知らなかった。
 そして、感動的な描かれ方をしているセックス・ピストルズの初ライヴを経てからは、物語は、いくつかの死を乗り越えて、ときにはユーモラスに進んでいく。あれだけヒットしたのにもかかわらず、忘れられがちなエレクトロニック(ジョニー・マーとのプロジェクト)に関する記述が多いのも嬉しい。
 しかし、総じて思ったのは、サムナーの語りのうまさである。寡黙で、一時期はインタヴューはいっさい受けない時期があったほどの人物とは思えないほど、饒舌に語っている。まさにこれは作者による作品への、最大の註釈とも言える。30年前の種明かしをいまされたようだ。

 10年ぶりのニュー・オーダーのアルバム、新生ニュー・オーダーにとっては最初のアルバムとなる『ミュージック・コンプリート』が控えているなか、その創設メンバーであり、ヴォーカリスト/ギター/エレクトロニクス担当のバーナード・サムナーが本国では昨年の9月に発売された自伝、その翻訳『ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、そしてぼく』を刊行します。ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーのファンは必読です。

バーナード・サムナー 著/萩原麻理 訳
『ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、そしてぼく』

ele-king books
3300円+税

Amazon

 家族に起きた悲劇の心揺さぶる描写が、温かいユーモアをもって自己憐憫におちいることなく語られる……。ロックンロールによって救われ、形作られた人生が明かされるのと共に描かれるのは、成功とスターダムを猛スピードで駆け抜けた人物の姿であり、武器はストリートの知性と簡素なマンチェスターのウィットだけだった……。ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーのファン、必読。──アーヴィン・ウェルシュ, 『エスクァイア』誌より

ジョイ・ディヴィジョン創設メンバーのでありそのギタリスト、ニュー・オーダーのリード・シンガーであるバーナード・サムナー。
彼の寡黙さは何年にも渡って知られてきた……。彼は1970年代以降のマンチェスターの音楽シーンに不可欠な部分を担い、これまでにもっとも影響力を持ったバンドを生んだ決定的瞬間に立ち会っている。
いま、初めて明かされるジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーの物語、マンチェスター、パンク、NYクラブ体験、“ブルー・マンデー"制作秘話、アシッド・ハウスとイビサ、バンドの分裂……そしてイアン・カーティスへの思い……
バーナード・サムナーの自伝、ついに刊行!

もし今ストーリーを語らねば、もう語ることはないと思える地点に私も差し掛かった。この後に続くページの中には、自分でも語るのがつらいこと、これまで公に言ったことがないこともあるが、それは私という人間、私が関わってきたバンド、その創造に関わってきた音楽を十分に理解するのにはとても重要だ。バンドや音楽以外のことについ て沈黙してきたことで、神話が作られ、真実ではないことが事実とされてきた。だがこれを書くことで、いくつかの誤解を解き、できるだけ多くの神話を葬りたいと思っている。何より、真実のほうがストーリーとしてずっと、ずっと面白いのだから。
──バーナード・サムナー/本書「序文」より


Black Knights - ele-king

 N.W.A.の伝記映画、『ストレート・アウタ・コンプトン(Straight Outta Compton)』が先月半ばに公開され、大ヒットを記録しているようだ。ヒップホップ史に残る同名タイトルの名盤も26年ぶりにアルバム・チャート上位に食い込んでいるとか。ぜひとも日本公開が待たれるこの作品、ポリス・ブルタリティーへの抵抗の声が高まる本国の若者にはどのように映るのだろうか。

 ブラック・ナイツのラグド・モンクと射殺された元メンバーのドック・ドゥームもまたコンプトン出身のラッパーであるが、ブラック・ナイツのラップは西海岸のサグさと東海岸の哲学性を合わせ持ったドープなリリックが特徴でもある。ジョン・フルシアンテによる2作めのプロデュース作品である本作で聴けるNWAやブギー・ダウンのようなオールド・スクール・ヒップホップが彼の感性で変容したトラックとの相性は抜群だ。

 BPMが変容してゆくトラックやジョンのギター・ソロが大々的にフィーチャーされるトラックなど、ロック畑のヒップホップ・アルバムのプロデュースを超えた実験的な内容となったのは、近年におけるジョンの電子音楽製作からの影響も大きいのかもしれない。

 また、ヒップホップ音源の製作においても対面することなくインターネット上でのトラックとラップのやり取りが通常である近年において、このコラボレーションのように生活をともにしながら製作された作品は素晴らしい。僕の知るLAのミュージシャン・シップこそここにあるのだ。

 じつは前作、『メディエヴァル・チェンバー』のリリースの時点で本作と次作アルバムまで完成しているようで、われわれはこのコラボレーションのさらなる変容を聴けることを約束されている。

BASS WORKS RECORDINGS presents Terry Farley - ele-king

 UKミュージックの格好良さというのは、ある意味ではジョー・ストラマー的開かれ方──ロックから入って、ソウル、レゲエ、ジャズ、ファンク、そしてディスコやハウスへとどんどん広がってくことだろう。そう、どんどん広がってはいくが、何でもアリってものではない。そこには厳密な、枠組みがある。それはファッション雑誌のモデルのような服装など、間違ってもしなことと似ている。
 〈ボーイズ・オウン〉というレーベルは、そういう意味で何から何までUKらしいレーベルだった。音楽の選び方、服装の選び方、フットボールへの愛情……何から何まで(ちなみにこのレーベルを母体に、後にアンダーワールドやケミカル・ブラザースが世に出て行く)。
 そのレーベルの創設メンバーのひとりだったテリー・ファーレイ、大ベテランのDJがスギウラムの〈BASS WORKS RECORDINGS〉主宰にて来日します。
 9月19日、場所は表参道 ARC。最高の夜になります。

■BASS WORKS RECORDINGS presents Terry Farley
9月19日(土曜日)
22:00 open/start
3,000 YEN w/1D
DJs : Terry Farley, Sugiurumn, Chida
info : https://clubarctokyo.com

※テリー・ファーレイの来日を記念して、2010年にHORIZONからリリースされたSugiurumnの名曲ACID 2 ACIDのTerry Farley & Justin DrakeによるリミックスをBass Worksよりデジタル・リイシュー。

テリー・ファーレイ

 ジュニア・ボーイズ・オウン(Junior Boys Own)レーベルの創設者であるロンドン出身のテリー・ファーリーはアンダーワールドとケミカル・ブラザースをこの世界に紹介した功績で知られている。彼は80年代後半からUKクラブ・カルチャーのオリジネイターとして現在まで活動続けている。

 彼のスタイルは30年以上変わらずアンダーグランドであり続けている、50年代のスカ、レゲエ、60年代のソウル、70年代のファンクとレア・グルーヴ、そして80年代のシカゴ・ハウスとアシッド・ハウス、彼が熱心に追い続けてきた音楽はすべてパーティーのためのダンスビートだ。

 ボーイズ・オウンはテリーと友人のアンディ・ウエザーオールやアンダーワールドのマネージャーであるスティーヴ・ホール、パーティ・オーガナイザーであるサイモン・エッケルトらにより創設され、アンダーグラウンドなパーティやストリート・ファッションに関するファンジンの創刊、リアルなパーティのオーガナイズ、さらにレーベルを立ち上げる。その後本格的なレーベルとしてジュニア・ボーイズ・オウン(以下JBO)を創設、ケミカル・ブラザーズ、アンダーワールド、エクスプレス・2など数多くのアーティストを世に送り出した、彼はイギリスのクラブ・カルチャーの土台を作った世代の中心人物だ。

 2013年に彼が監修した初期アシッド・ハウス、シカゴ・ハウスの5枚組コンピレーション『アシッド・レイン』はディスクロージャーやエックス・エックスなどの新世代がディープ・ハウスを再発見、再構築してゆくなかで大きな話題となり、2014年には第二弾である「アシッド・サンダー」が発売となった。


※〈BASS:WORKS:RECORDINGS〉のスギウラム、インタヴュー(取材:与田太郎)

 2013年のスタートからこのおよそ2年間、毎週新曲をリリースするというクレイジーな偉業を続けてきた〈BASS:WORKS:RECORDINGS〉。2015年4月に品番100を超え、この夏から新しいフェーズに突入した。以下、ライター/DJの与田太郎が、その主宰者スギウラムにインタヴュー。
 レコード・ショップの閉店、配信への転換、フェス化するクラブ・シーン、Apple Musicなど急激に変わりゆく音楽やシーンなどなど、アクティブでしかもユーモアを持ってぶつかってきた彼に訊いてみた。

■いよいよ新章スタートっていう感じだね、すごいエネルギーで動いてそうだけどいろいろ大変でしょ?

スギウラム(以下、S):いま、大変だよ。いろいろあるけど、レーベルの運営とかパーティをやっている人たちのマインドが会社の仕事としてやってるか、個人の運営なのかで全然違うのが大問題なんだよね。みんななにか新しいことをやろうって言ってるけど、それがもう全然違うって言うか。100番まで来て、なにか変えようと思ったんだよね。もう毎週出すのもいいかなって。やっぱりリリースごとにもうちょっと注目してほしいし、毎週だとかなりスルーされちゃうんだよね。

■でもいまオーディエンスはレーベルを追っかけるっていうより、それぞれのトラックやアーティストでチェックしてるからなんじゃない? それでもベース・ワークスの毎週出すっていう姿勢はすごいと思う、続けられるなら続けてほしいけどね。ジャンルにもとらわれない感じも面白かったしね。

S:でも、その役目はもう果たしたような気もするんだよね。それに、実際いま音楽そのものが盛り上がってないんだよね、みんな新しいものを探してないっていうか。配信だろうがCDだろうが、ヤバイ音楽だったらみんなチェックするでしょ、でも以前のようになにか面白いものを探してる人も減ってるみたいだし。

■そうだね、そういう人は減ってるだろうね。みんな特定のカテゴリーしかチェックしないもんね。俺はむしろダンス・ミュージックやパーティーに出会っていろんな音楽を聴く楽しみを知ったけどね。

S:そうだよね。でもレーベルの話に戻るけど、まわりからいろいろ聞かれるんだよ、「毎週出すことになんか意味あるの?」とかさ。じゃあ意味あるものってなんだよ、とか思いつつ、でもそれもわかるっていうか、ひと昔前と比べてもみんなほんとに音楽買わないもの。メジャーのレコード会社ってどうしてるんだろうね?

■過去の膨大なカタログを少人数で回すことでやってるんだと思うよ。あとはマネージメントやイベント制作も始めてるし。そういう会社の仕事とは関係ないところでやってるなら毎週リリースは続けてほしいけどね、無理にやる必要はないけど。

S:そうだね、でも時々「来週のリリースがない!」みたいな時に、いつも俺が曲を作らないといけないかったりするからね。アルバムの制作が全然進まないんだよ(笑)。あとはほんとに手応えがないんだよね、前は良くも悪くもいろんな反応があったんだけど、いま全然ない時もあるから。ちょっとペース・ダウンするぐらいがちょうどいいのかなとも思ってるんだ。前はエネルギーが有り余ってたから、とにかくなにかやってないと気が済まなかったけど、最近は考える時間もあってちょうどいいと感じてるんだ。

■俺たちも30年ぐらい音楽やってるけど、なにかになるのは50年ぐらいからかもね。なにかになろうとも思ってないし、やめられもしないけど。

S:そうだね、ずーっと面白くなくなったら辞めると思ってたけど、そんなことまたく思わないね。それが情熱ってことだよね。

■ DJってさほんとに凄い瞬間作れるからね、あの体験してしまうとやめれないよね。

S:それをまた忘れちゃうしね(笑)。

■だから毎週リリースは続けてほしいんだよね、自分たちもそうだったようにベース・ワークスはいつも誰かを巻き込んでいてほしいっていうかね。それに誰にでも声かけれる人って杉浦くんしかいないんじゃない?

S:いや、もう全員に声かけたけどね(笑)。なかなかむずかしいんだよ。一緒にやってる、Nao NomuraとOSAKAMANは最高だよ。ほんとお互い助け合ってうまくやってるよ。このメンバーじゃなかったら絶対出来てなかったと思う。他にこんなくだらないことやる人いないしね。与田さんも前から言ってたけど、続けていくには工夫が必要じゃない? いまはその工夫も大変でさ、アイデア考えるのも。どうやったらわかってもらえるかなんだけど、情報がありすぎて難しくなってるよ。パーティーの仲間やオーディエンスに面白いやつはいっぱいいるんだけどね、そういうやつらが知らないっていうとちょっとうれしかったりするんだけど。だた、そういう人たちに気づいてもらうって、別のエネルギーがいるからね。
 塩屋亮潤っていうお坊さん知ってる? 千日回峰行っていうこの1300年で二人しかできなかった修行をやりとげた人なんだけど。千日回峰行は7年ぐらいかけてやるんだけど、毎日30キロとか40キロを歩く修行でさ、間に9日間、飲まず食わず眠らずっていう期間があって、やり遂げるのがほんとに難しい荒業で。それをやったお坊さんが本を何冊か書いてて、これがほんとに凄いのよ。ほんとの話が一番凄いっていうね。心の強さがハンパないんだよ。千日回峰行ってさ1日も休めないんだよ。だからいつも短刀と首を吊る紐を持ってるわけ、やめるときは死ぬときなんだ。世界的な探検家とかさ、凄い人の話をいっぱい聞いたけどこの人の話しとアントニオ猪木自伝が一番凄かったよ。

■毎週リリースも千日回峰行みたいなもんだからね。

S:そうなんだよ、それにグっときちゃってさ(笑)。

■そうだね、俺も杉浦くんの「ライバルは少年ジャンプだから」って言葉にグっときたからね(笑)。

S:この塩屋亮潤の言葉がさ、「私は人に夢と希望を与える仕事をしている。同情されたらおしまいだ」ってほんとカッコイイんだよ。同じような話なんだけど、日本一掃除がうまいおばさんの『プロフェッショナルの仕事』見た?

■(笑)見てない。

S:メチャ面白かったよ、中国から日本に帰化して働きはじめるんだけど、厳しい上司の下で働くんだよ。ものすごくがんばって、掃除のコンテストに出て優勝するんだ。それを上司に報告したらさ、その上司が「あなたが優勝することはわかってました」っていうのよ。そのシーンが最高で(笑)。そのあとに今度は羽田空港で窓拭きのプロの人がでてくるんだけど、そのおばさんも羽田で働いてるから、番組が窓拭きの人に会わせるんだ。そしたらさ、窓拭きの人が見たこともないような道具を使って仕事をしてるのを見て、「かっこいいー!」っていうのよ、(笑)最高でしょ。

■(笑)最高だね。でもそのお坊さんでも、掃除のおばさんでもなにか突き詰めたら喜びも発見できるし、見えなかったものが見えてくるっていうのはそうなんだね。DJもパーティもそうだもんね。

S:ほんと今の状態ってすべてが重なった結果だと思うんだ、震災とかレコード・ショップがなくなったりさ、誰でも簡単に曲が作れるようになったりとか、iPhoneで音楽聴くようになったり、風営法のこととかね。この数年間で同時に重なった出来事の結果、いままでのやり方が難しくなったよね。でも、俺ってほんとにもうだめだって思った時になにかが見えるんだよね。だからさ、制作費もリミックスとかでも予算がなくったけど、自分ですべてやることでエンジニアリングやマスタリングの技術もわかってきたし、なによりひとりで作るのが楽しいんだよね。
 俺さあ、いろんな場所でいつも一番最後まで元気なんだよ。それがね、俺よりも元気な卓球さんに会って(笑)、「あれ!」俺と同じ人がいる!って思ったんだよ。それにすごい勇気づけられたよ。最近またそういう元気な人が周りに増えてるような気がする。

■それは、そういう人が残ってるからじゃない(笑)。

S:まさにスティーヴ・ジョブスのアップルの宣伝だよね、あの「クレイジーな人たちがいる~Think different」の。これからまた盛り上がってほしいよね、パーティーも。

■波みたいなものだからね。

S:どういうふうに盛り上がるんだろうね?

■でもそれが想像できた試しがないね。

S:そうなんだよな、いつも予想外の流れがやってくるのが面白いよね。新しい科学反応っていうか、それがまた面白くて続けてられるってこともあるからね。特にいまは音楽だけじゃなくって世の中全体があんまりよくないじゃない。ネットで起きてることも、みんな極端なことばかり主張するから普通に常識のある人たちが黙るようになってるし、ほんとはそういう人の声も響いてほしいんだけど。

■そういうタイミングがきっと来ると思いたいね。

S:それが俺の続けていられる理由なんだ、この先になにかがあるって感じてるんだよね。ちょっと前まではそれが見えなかったんだけど、ようやくこの先に来るものを見るまでとてもやめられないって気がしてきたんだよね。なんなのかはわかないんだけど、これから面白いことが起きるって感じが凄いんだよね。それが原動力になってる。

■もう25年ぐらい続いてるからね、楽しいと思いながらやることが。

S:そうだね、90年代前半から姿勢は変わってないからな。でも俺の場合はいつも時代からちょっとずれてるんだよね、渋谷系にも入れてもらえなかったし。高円寺生まれだからいれてもらえなかったんだろうな(笑)。

■杉浦くんはもともと渋谷系とかを目指したわけでなくて楽しいことを追っかけてただけだしね、それは俺もそうなんだけど。

S:そのままやってきて、残っている人とは話が通じるしね。リッチー・ホウティンがいいこと言ってたんだけど、なんでパーティをやってるのか聞かれて、「自分とおなじような人を探すため」って言ってたんだよね。それよくわかるんだよね、自分とおなじような感覚をもってるやつをずっとさがしてるって、ほんとそれだと思うんだよ。

■ずーっとそうだよね、杉浦くんのやってることを場面ごとでしか知らないとわかりにくいけど、全部の流れでみると全然変わってないもんね。

S:俺も常に新しいものっていうか、ヤバいものを探してるからやれてると思うんだ。バンドの時でも、ハウスの時でもあったことだけど、ある程度経験したら同じことをちょっと変えたりしたらこなせる瞬間ってあったんだけどね。でもどうしても全部捨てて新しいことに突っ込んじゃうんだよね。それからしばらくはほんと大変なんだけど、まさに苦行っていうか荒業だよ(笑)。DJはじめた時も、レーベルでもそうだけど、わかってもらうのに時間かかるからね、こっちが本気だってことをね。

■ジャンルやカテゴリーの問題じゃなくて生き様の問題だね。

S:どうなるんだろうね、これから。

■まったくわからないね、ほんと予想できない。

S:この10年ぐらい、パーティーにアンセムがないじゃない、みんながかける曲ってなくなったよね。特にジャンルをクロスオーバーするような。それってDJもいろんな音楽を探してないってことだよね。そういう曲がないのか。

■フェスや大きなイベントで盛り上がることとクラブ・カルチャーが別のことにもなってるし。もっとクローズドなパーティが増えてもいいと思うんだけど。

S:それも難しいかな、俺たちの世代はまだ日本にないものが多かったからね。自分たちで始めるしかなかったことが多いけど、いまは型だけだとしても全部あるから。情報すらなかったのはよかったのかもね。想像力使ったし、本気で憧れたもん。

■杉浦くんはまだその情熱が続いてるね。ところで杉浦くん、自分の昔の曲聴く?

S:まったく聴かない(笑)。まえはエレクトリック・グラス・バルーンの曲とか、スギウラム初期の曲とか恥ずかしいとか照れくさいってのがあったけど、いまはまったくないね(笑)、むしろかわいいっていうか。

■昔から聴かないよね、自分の曲。

S:そうだね、だからクラブで曲聴いて「お!この曲かっこいい」って思って「この曲なに?」ってDJに聞いたら自分の曲だったってことよくあるよ(笑)。とくにこの1~2年は多いね。ほんとメチャつくってるからね。それでベース・ワークスが100リリースになったから自分の曲とリミックスが何曲あるか数えてみたら74曲もあったよ!(笑)。それプラス、このまえのアルバムだからね。他のレーベルで作ったリミックスとか入れたら100曲ぐらいあるよ、この1年半から2年で。だから3日に1曲は作ってるんだよね、そりゃスキルもあがるよ(笑)。

■はやくそうしてればよかったのに。

S:そうなんだよね、やっててほんと面白いよ。エンジニアリングとかメチャ向いてると思うもん(笑)。こんな面白いことを人にやらせてたなんて!(笑)。DJでもほんと自在にできるようになったし、レーベルも始めたしね。

■成長しつづけたんだ(笑)。

S:そういう流れが大事だったかもね、リッチー・ホウティンも〈コクーン〉から出て自分のエンターはじめたみたいな。俺と同い年だし、リッチー、リカルド、ダブファイヤー、みんな同級生なんだ。でも、ダレン・エマーソンは年下なんだよ、おまえ何歳で「REZ」作ってるんだよって。うらやましいよね。すぐそこにあるってさ。でも日本人って見た目が若いじゃない、それでカルチャーの遅れを取り戻せるって気がしてるんだよね(笑)。俺なんか海外で44歳にみられたことないからね、アメリカで酒買うときにパスポートみせると、店員が「すいませんでした!」って感じだから。

■杉浦くんは見た目とかでなくて本当にパワーあるから大丈夫だよ(笑)。

https://sugiurumn.com/
https://bass-works-recordings.com/

後日談:結局〈BASS:WORKS:RECORDINGS〉は毎週リリースを継続中! 9月のラインナップは以下の通り。

9/2 Lyoma Captured / mudhand (BWR112)
https://soundcloud.com/…/sets/lyoma-caputured-mudhand-bwr112
9/9 BBL Minako'S:Snare / Going Out (BWR113)
https://soundcloud.com/…/sets/bbl-minakos-snare-going-out-b…
9/16 SUGIURUMN ACID 2 ACID Terry Farley and Justin Drake NY After HourS:Remix (BWR114)
https://soundcloud.com/…/sugiurumn-acid-2-acid-terry-farley…
9/23 OSAKAMAN Colombia / Guatemala (BWR115)
9/30 SUNSEAKER 589 (BWR116)

この夏、聴き逃した5曲。 - ele-king

 訳あってギター・サウンドばかり聴くはめになり、ゴジラ・エル・ニーニョ(今年のアメリカではそう呼ばれている)とは無関係にぐったりとしている。ベースが懐かしい。トランペットが聴きたい。しかし、僕の前に立ちはだかるのはギター・バンドの山である。ぐあー。それでも次から次へと聴いていくうちに耳に残るものがあるから音楽というのはオソロしい。それもかなり真っ当なポップ・ソングばかりである。どうなってしまったんだろうか、僕の耳は。こうやって集団的自衛権にも慣れて……いや。


1 Jaill / Getaway

よく知らない人たち。アルバムのほかの曲はどれもイマイチでしたが、これは1日1回聴いてしまいます。

2 Destroyer / Dream Lover

長いキャリアの人で、いままでは妙にしみったれていたのに、なぜか急にゴージャス。

3 Drinks / Hermits On Holiday

意外な顔合わせというやつです。ケイト・ル・ボンとホワイト・フェンス(ジー・オー・シーズ)が新バンドを結成。

4 Travis Bretzer / Lonely Heart

カナダからマック・デマルコを甘ったるくしただけ?

5 The Last Hurrah!! / The Weight Of The Moon

オーソドックスなものに耳が慣れきってしまったみたいで、これはノルウェイから。

おまけ。

■Beach House / Sparks

すっかり変わり果てたビーチ・ハウス!

■Astronauts, Etc, / No Justice

おまけのおまけ。ポスト・ビーチ・ハウスだとか!

ノー・ギャグ・ノー・ライフなのだ!! - ele-king

 タワーレコードの意見広告シリーズ「NO MUSIC, NO LIFE!」ポスター最新版に、故・赤塚不二夫の登場が決定した。
 これは赤塚の生誕80周年を記念するものでもあり、氏の誕生日である9月14日(月)には『赤塚不二夫 実験マンガ集』(著者:赤塚不二夫、解説あらためインタビュー取材:石野卓球)と『破壊するのだ!! 赤塚不二夫の「バカ」に学ぶ』(著者:高平哲郎、三上寛、坂田明、奥成達、足立正生、山下洋輔他)が同日発売となる(買ってね!)。

 この最新版ポスターは、9月14日(月)よりタワーレコードおよびTOWERmini全店にて順次掲出予定。手書き文字「これでいいのだ!!」のプリントにもグっとくる。ぜひ探してみてください。

■『破壊するのだ!!──赤塚不二夫の「バカ」に学ぶ)』
著者:高平哲郎/三上寛/坂田明/奥成達/足立正生/山下洋輔ほか
定価:1,800円+税
ISBN:978-4-907276-38-6
ページ数:224頁
判型:並製/四六判
発売:9月14日(赤塚先生の生誕日)
刊行:ele-king books

■『赤塚不二夫 実験マンガ集』
定価:1,800円+税
ISBN:978-4-907276-39-3
ページ数:384頁
判型:並製/B6
発売:9月14日(赤塚先生の生誕日)
刊行:ele-king books

※タワーレコードなど一部の店舗では、書籍購入の先着特典として、


『破壊するのだ!!──赤塚不二夫の「バカ」に学ぶ)』には「実物大のバカボンなのだ」から1コマ・ステッカー

『赤塚不二夫 実験マンガ集』には「サイケ・サイケビーチにて」から1コマ・ステッカー

を進呈なのだ!!

■商品情報はこちら


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