「P」と一致するもの

Buffalo Daughter - ele-king

 あらためて聴くバッファロー・ドーターの20年、全14曲が収録された『ReDiscoVer.』(再発見)。新曲、新ヴァージョン、ライヴ音源も入っているが、基本、『ニュー・ロック』(1998年)や『I』(2001年)、『Pshychic』(2003年)をはじめとする、バンドがこれまで残した7枚のアルバムからの収録だ。で、あらためて聴くと、あらためて格好良いと思う。サウンド的な観点で言って、もしフィッシュマンズとコーネリアスとの溝を埋めるバンドを探すなら、それはあなた、バッファロー・ドーターです。
 雑多な音楽性、グルーヴを保ちながら、直線的なサウンド、とくに1990年代の日本の音楽シーンの最良のところがすべてあるかのように、柔軟かつ禁欲的でいながら陶酔的という、これこそ日本で解体され、更新されたロックンロールです。オールドファンはもちろん、バッファロー・ドーターを知らない世代、『踊ってばかりの国』のハバナ・エキゾチカがその後結成したバンドぐらいにしか認識していない若者は、これを機に再発見すべし。小山田圭吾参加の新曲、環ROYと鎮座ドープネスのKAKATOとの共作も聴くべし。リスナーが自分のベスト盤を作れるように、書き込み可能なCDRも1枚付いての2枚組です。

Buffalo Daughter

Buffalo Daughter
ReDiscoVer. Best,Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter

UMA

2013年7月24日 発売
¥2,600 (tax in)

Amazon


Ignatz - ele-king

 おそらく個人的にここ10年でもっとも感銘を受けたミュージシャンたちのひとりは確実にイグナッツ(Ignatz)ことブラーム・ディーヴェンス(Bram Devens)である。......と、音楽雑誌に寄稿している人間がのっけから感情論で語っていいのだろうか。いいんです。僕にとって彼のサウンドは距離を置くことができないほど美しいのだ。

 漫画文化史にその名を輝かせるジョージ・ヘリマン(George Herriman)の作品、『クレイジー・カット(Krazy Kat)』に登場する同名のネズミ、イグナッツ。漫画の主人公である呑気な猫、クレイジー・カットはこのネズミに恋心を抱いているが、当のイグナッツは毎回頭にレンガを投げつけるかたちでその想いを打ち砕く。しかしながらクレイジー・カットはそれを愛情表現と受け取っていて、この行為によって奇妙に関係性が補完されている。

ブラームのイグナッツは、この湾曲したエゴへの共感に名前を拝借したサイケデリック・ローファイ・フォーク、いやマインド・メルト・ブルースとでも呼ぶべきサウンドだ。かつて自らを「ローファイ・ファシスト」と称したほどの徹底的な劣化音質への拘り。彼のサウンドが昨今のローファイうんぬんと一線を画しているのは、それが彼の枯れに枯れた情念を表現するのにもっとも適したテクスチャーであるからだ。アカデミックなミュージシャン・バッググラウンドが放つギタースキルゆえに成立するクオンタイズされないループ、そこから生まれる絶妙なグルーヴに歌乗せされるエモーション。アメリカが生んだ今日型のアコースティック・ミュージックのヒーローが故ジャック・ローズ(Jack Rose (RIP))だとするならば、ヨーロッパのそれはイグナッツである。

実際、00年代後半から彼を中核としてベルギーのゲントで育まれたサイケ・フォークロア・シーンがヨーロッパのみならず、USシーンにも飛び火していったことは紛れもない事実なのだが、(僕が事あるごとに名前を出すシルヴェスター・アンファングIIでもブラームはしばしばプレイしている)日本での認知度はとても低い。

LSDマーチ(LSD March)でお馴染みの道下氏のサポートの下おこなわれた08年のイグナッツの軌跡のジャパン・ツアーは、蓋を開けてみれば当時結婚したばかりのブラームとデザイナー/アーティストである妻のジュリーの新婚旅行であったのだけれども、いまでもあの〈UFOクラブ〉で見たショウでの涙が出るほどの感動を忘れることはできない。

当時初めて話すブラームに「普段仕事どーしてんの?」と訊ねたら「してるわけないじゃん」と答えた彼の笑顔と、それに対して「わたしはすっごい頑張ってるのよ!」と言うジュリーの笑顔、ふたつの笑顔が神々しいまでの愛を物語っていたこともここに記しておこう。

え? このレコード? いいに決まってるでしょ。イグナッツのよくない音源なんて聴いたことないよ。

 ぶっちゃけた話、ここ最近レコードをいっさい買っていない。もとい、買えていない。無理矢理トレードさせられたものや、勝手に送られてきて現金報酬をうやむやにされる物品が大半を占めているのだ。

 そもそも金がない。金がないのであればそれなりに働けばよいわけであるが、それなりに働くのはそれなりに大変であり、また僕の言うそれなりは世間一般のそれなりの基準値より遥かに下回っているわけでもあり、とは言え同じような自堕落な生活を続けていた以前はそれなりにレコードも購入していた筈だ。諸悪の根源はユーロラック・シンセサイザーにある。

 今思えば数年程前、M・ゲド・ジェングラス(Sun Araw M.Geddes Gengras & Congos, Akron Family)のヤサであったグリーン・マシーン・スタジオのポーチを寝床にしていたことが事の発端であった。常時2~3バンドを掛け持ちしながらレコーディング/マスタリング・エンジニアとして活動するゲドはLAローカル・シーンに最も愛されている男だ。愛されるがゆえにワケのわからない日本人に家の一角を占領されたり、愛車で事故られたりもする。(僕の生涯ただ一度の自動車事故は彼の車でカマを掘ったことである。幸い大事には至らなかったものの掘られた車から出てきたのが2m近いラティーノのオッチャンだったときは死ぬかと思ったけども)

ゲドの長きに渡る膨大なソロ・ワークの主たるプロジェクトはモジュラー・シンセジスの探求である。僕が出会ったころはすでにユーロラック・フォーマット(ドエプファーのA100シリーズに代表される最もコンパクトな3Uサイズ)に移行していたが、それ以前はフラックラック、MOTM(5U)等の異なる規格を渡り歩いてきたそうだ。日々ジョイントを燻らしながら(ときどきその他も)、延々とパッチングを続ける彼の熱は、ほどなくして僕に飛び火した。昨年ホーリー・マウンテン〈Holy Mountain〉からリリースされたアルバム、テスト・リード〈Test Lead〉は彼の近年のシンセジスにおける集大成と呼べる傑作だ。

 昨今のインディ・シーンにおけるギターからシンセへの大移動と電子工作家たちのユーロラックへのベンチャー・ビジネス大進出、どちらのムーヴメントが先行していたのかは定かではないが、相乗していることに間違いはない。

アイオワの伝説であるサイケデリック・フリークアウト・バンド、ラクーン〈Raccoo-oo-oon〉のメンバーであり、現在はドリップ・ハウス〈Drip House〉として活動するダレン・ホー〈Daren Ho〉がNYで営むシンセ屋兼レコ屋兼アート・スペース、〈コントロール(Control)〉は地元でちょっとした社会現象を起こすほどの盛況ぶりだ。何の番組だか知らないがNHKから「アナログシンセ」のテーマで取材されてりゃ(しかも同番組内でゼノ&オークランダーが機材愛を語っとる!)社会現象と呼んでもいいだろう。

先日、〈コントロール〉でおこなわれたシンセ・ワークショップの模様がアップされていたのを流し見していたところ、見覚えのある長髪長身の男が熱心にプレゼンテーションを聞いている。僕は早速ピート・スワンソン(Pete Swanson)に「お前、行っただろ」と問いただしたところ、「あ、行ったよ。何で知ってんの?」との返答があり、その晩は機材話を延々と繰り広げるハメになった。彼もまたユーロラック・モジュラーの犠牲者のひとりだ。

 なんでこんなナ~ドな内容の戯れ言を散らしているかというと、じつは来る6月30日にスー寺で〈東京モジュラーシンセフェスティバル2013〉なる試みが催される。手前味噌で大変申し訳ないが、僕も〈メイク・ノイズ(Make Noise)〉社のプレゼンやデモを手伝ったり手伝わなかったりする予定だ。ちなみに〈メイク・ノイズ〉は自社が提案する「シャアド・システム」でのみ制作されたトラックを7インチでリリースするというレーベル活動を開始したばかりだ。すでにリチャード・ディヴァインとアレッサンドロ・コルティーニ(ナインインチネイルズ)、そして昨年の〈タイプ(Type)〉からの良作が記憶に新しいロバート・アイキ・オーブリー・ロー(Robert Aiki Aubrey Lowe)が控えている。

まだまだ日本においては認知度の低いこの分野だが、ガジェットがもたらすインディ・ミュージックの新世界を覗いてみてはいかがだろうか?

(倉本諒)


■東京モジュラーシンセフェスティバル2013
■2013年06月30日 (日)
■開場 17:30 / 開演 17:30
■料金 予約2000円 / 当日3000円 (ドリンク別)
モジュラーシンセサイザーの祭典「東京モジュラーシンセフェスティバル2013」を開催!実力者達のパフォーマンスからメーカーブースごとの試奏、実演販売、モジュラーシンセスターターキット抽選会、ドキュメンタリービデオの上映までモジュラーシンセサイザーの魅力を堪能する一夜。アナログエレクトリックの有機的で深遠な音色の美しさを思う存分体感して下さい!

東京モジュラーシンセフェスティバル2013
オフィシャルサイト
https://tfom2013.tumblr.com/

■ライヴ
ROBERT PIOTROWICZ (ポーランド)
BRIAN O-REILLY (アメリカ/シンガポール) & NAOKI NOMOTO duo collaboration
坪口昌恭 (日本)
PNEUMOTHORAX (Scott Jaeger of The Harvestman) (アメリカ)
HATAKEN (日本)
千葉広樹 (日本)
DAVE SKIPPER (イギリス / 日本)
& ETHAN DROWN HURLBURT (アメリカ / 日本)

■デモ実演
PITTSBURGH MODULAR (アメリカ)
THE HARVESTMAN (アメリカ)
HEXINVERTER.NET (カナダ)

■その他
日本初のモジュラーシンセサイザーのメーカーブースごとの試奏、実演販売。
モジュラーシンセスターターキット抽選会(モジュラーシンセを組む為に必要となる電源、ケース、ビスなど。)
モジュラーシンセサイザーのドキュメンタリービデオの上映、音楽を流します。



Sports-koide (SLOWMOTION) - ele-king

DJ 予定

6/15 HOUSE OF LIQUID (LIQUID ROOM)
https://www.liquidroom.net/schedule/20130615/14701/

6/22 SLOWMOTION (神戸 塩屋 旧グッゲンハイム邸)
https://www.nedogu.com/blog/archives/7091

6月からオープンのライブスペース「神保町試聴室」にスタッフとして参加しております!宜しくお願いします!!shicho.org

スローモーションなトラック 2013.6.3


1
Low Res - Amuck - Sublime

2
Paddo - Balkon - Suger

3
Rene Breitbarth - Sphere - Deep Data

4
Ezekiel Honing - Under The Covers Remix By Someone Else - Goosehound

5
Satanic Soul - PPP - Pomelo

6
Lawrence - Rabbit Tube DJ Koze Remix - Mule electronic

7
Archie Pelago - Brown Oxford - Mister Saturday Night

8
Am/Pm - Also - Dreck

9
Roger That - Unknown - Playground

10
Elgato - We Dream Electric - Elgato

DJ FULLTONO - ele-king

 ここ2~3年のダンス・ミュージックにおける最大の衝撃は、シカゴのフットワーク/ジュークだった。この強烈なリズムは、僕のようにクラブに行けなくなった年寄りから、IDカードで通れるギリギリの若い世代にまで届いている。エネルギッシュで、過剰で、創造的で、同時に庶民的でもあるからだろう。そして、あらためて顧みれば、それは新ジャンルというよりも、シカゴ・ハウスという大河の新しい支流だったことに気がつく。歴としたシカゴ・ハウスの子孫だ。昨年のトラックスマンの来日は、そのことを証明した晩だった。
 いまや世界的な広がりを見せているフットワーク/ジュークだが、日本には〈プラネット・ミュー〉がそれをセンセーショナルにパッケージしてリリースするよりずっと前から、シカゴ・ハウスにおけるゲットー・ミュージックの進化を追い続けていた複数のDJがいる。〈BOOTY TUNE〉はレーベルだが、その代表的なポッセのひとつだと言えよう。DJフルトノはレーベルの発起人。トラックスマンの来日のときにDJとして共演している。

 現在は大阪に住んでいるDJフルトノがOUTLOOKフェスでのDJのために上京した5月のある日、僕は彼に会うことができた。ビールを飲みながら話していると、シーンに名を馳せている〈BOOTY TUNE〉の強者たちが続々と現れ......飲みながらの熱いシカゴ・トークを繰り広げるなか、相手を見下すことなく、彼らの知識を惜しみなく分け与えてくれたのであるが、その姿勢の低さというか、居酒屋ノリというか、まっすぐな情熱というか、開かれているところもフットワーク/ジューク、いや、シカゴ・ハウスらしいと思った。

先日の飲み会は楽しかったですね。〈BOOTY TUNE〉のみなさんがあんな風に揃って来るとは思わなかったですが、あらためて、みなさんのシカゴに対するリスペクトを感じました。

DJ FULLTONO:こちらこそ、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。深い話になるにつれ、チーマーが電話で仲間呼ぶみたいに、どんどん人数が増えてしまい申し訳ございません......ついみんなを紹介したくなったもんで。

いえいえいえ(笑)。しかも、シカゴ・ハウスの話だけであそこまで長時間話せるっていうのもすごいですよね。で、あのときも話したように、トラックスマンの来日が僕にとってフットワークを考え直す良いきっかけになりました。僕は、わりとシカゴのキワモノ的なところ、エクストリームなところに反応していたのですが、この音楽が、シカゴ・ハウス(ヒップ・ハウスも含む)のアップデートされたものであることをあらためて感じることができました。あれ以来、トラックスマン系のDJラシャドとか好きになってしまい......。

DJ FULLTONO:そうですね。〈プラネット・ミュー〉がフットワークという文脈で紹介した最初のアーティストがDJネイトだったことはご存知だと思うのですが、正直ジューク・ファンからしたら、なんで? って感じでした。無名のネイトがいきなり1EPと4枚組みのアルバムですからねえ。この人はヒップホップもやってて、シーンにはそれほど肩入れしてないような若手です。その次のリリースがDJロック、これまた無名。でもこの人はけっこうベテランで、〈ダンスマニア〉クルーのDJスラゴのレーベルからリリースしてる人でした。このとき、もしかして〈プラネット・ミュー〉はあえて、ラシャドやトラックスマンなんかを外してるのかな? と感じました。ジューク/フットワークにハマるためのストーリーがマイク・パラディナスのなかででき上がってたんじゃないかと。実際のところわからないですけどね。

フルトノ君や〈BOOTY TUNE〉のみなさんは、そういう意味では、まだフットワーク/ジュークが出る前からずっとシカゴ・ハウスを追っていた人たちですよね。そもそも、シカゴとはどうして出会ったのでしょうか? 

DJ FULLTONO:僕は高校のときにテクノに出会ったんです。94年前後ですかね。その頃って、シカゴ・ハウス・リヴァイヴァルがはじまった頃で、テクノ=シカゴと言ってもいいと思うんですよ。僕はジャンルのことなんて全くわからなかったんですが、無意識に耳に入ってたと思います。でもホントにハマッたと言う意味では、やっぱりヴォイス・サンプリング連呼の曲かな。当時、田中フミヤさんが大阪のクラブ・ロケッツで「カオス・ウエスト」というパーティを主催していて、京都からひとりで行って、誰とも喋らず1回も休憩せずにドリンク1杯で朝までひたすら踊ってました。何が楽しいのかわからないんですが、いつかわかると思ってひたすら踊るんです。そしたらあるとき、いきなり人の声が連呼するトラックがフロアに鳴り響いた瞬間、うわー!! ってなって、あのときのフロアの興奮度は凄かったですよ。そのトラックはたぶんDJファンクの「Pump It」だったと思います。何の予備知識も無しであんなもん喰らったら一生抜けられないですよ(笑)。いま一緒に活動してる連中ほとんど似たような経験してるんだと思います。

あの音楽のどんなところに惹かれたのでしょうか?

DJ FULLTONO:それがいくら考えてもわからないんです。シカゴの魅力は言葉で表わしても伝わらない気がして。でも、初めてシカゴ・ハウスの12インチ手に入れて針を落とした瞬間、「これこれ! この音」って思いましたね。なんでしっくり来たのかはわかりません。永遠のテーマですね。でもいまの若い人がジュークを聴いて、「よくわからないけどこれこれ!」って思ってくれたらなんか嬉しいです。

90年代のなかば、グリーン・ヴェルヴェットやDJラッシュなんかが出てきたとき、日本でもシカゴ・ハウスは人気がありましたが、デトロイトやヨーロッパの盤に比べると、手に入りづらかった時期もあったと思います。それでもシカゴ・ハウス/ゲットー・ハウスから離れなかったみなさんのその一途さはどこから来ているのでしょうか?

DJ FULLTONO:ちなみに僕はグリーン・ヴェルヴェットよりもポール・ジョンソン派でした!

ポール・ジョンソンは、シカゴに造詣が深い人はみんな好きですよね。

DJ FULLTONO:日本で手に入りにくかったでしたっけ? 

〈リリーフ〉みたいな人気レーベルはともかく、マイナーなレーベルになると東京ではバロン・レコードぐらいしか扱ってなかったですね。DJゴッドファーザーとか、ああいうのは、バロンでしたね。

DJ FULLTONO:じゃあ、わりと僕はまわりに恵まれてたほうです。90年代半ば、シカゴのゲットー・ハウスをたくさん仕入れてくれてたレコード店は多かったですから。バイヤーさんに感謝したいです。大阪のシスコやソレイユにはお世話になりました。リバーサイドにいたっては、レーベルのリリース番号紙に書いて、「全部オーダーして下さい」って頼んだりしてました。ほとんど入ってきて大変なことになりましたけど(笑)。後にそのリバーサイド京都店のDJイケダさんに誘っていただき、そこでバイトしてました。ゲットー・テックばっかりオーダーしてて、D.J.G.O.が良く買いに来てました。僕が彼の人生を狂わせてしまったんです。
 シカゴ一本でいままでやってきたわけではまったくなくて、逆にけっこう移り気激しい方だと思ってます。最初テクノDJやってたのに、ブレイクコア聴いたりエレクトロニカ聴いたり、ゲットー・テックやエレクトロのDJやったり、いまはジュークやってますからねえ。
 シカゴとかゲットーとかっていうテーマから離れなかった理由は、単純に好きだったのもあるんですけど、紹介してくれるメディアが少なかったからというのもあります。取り上げてくれないんだったら自分らが発信するしかないと思いました。シカゴ好きな人って、みんな何故か使命感みたいなのをどこかに持ってる。頼まれてもいないのに。バカなんですけどね(笑)。自分の場合、自ら情報を発信していこうという気持ちが芽生えたきっかけがあって、実は昔、ele-kingさんでシカゴ・ハウスの特集が組まれたことがあって、そこで、「〈ダンス・マニア〉100番以降は下ネタ連呼のカストラック」と評されたんです。自分が一番好きな部分がそう評されてしまったので、いつか自分がこの100番以降を紹介する立場になりたいという気持ちに火が付きました。野田さんが書いた記事ではないんですが、いま、野田さんがジュークに興味を持たれているということは僕にとって感慨深いものがあります。

しまった、恨みを買ってましたか(笑)。ただ、下ネタ連呼に関しては、英語がわかる人には本当に嫌がる人も少なくないんですよ。ところで、ロン・ハーディのなかにもすでにフットワーク/ジュークの種子があったんでしょうね。

DJ FULLTONO:恨みだなんてとんでもない(笑)。でもやっと言えた、何年越しだろう......。ロン・ハーディもミュージック・ボックスもリアルタイムで体験してないので、もちろん本当のところはわからないんですが、そうかもしれませんね。でもぶっちゃけると、僕あんまりオールド・スクール掘ってなかったんですよね。DJマエサカやDJエイプリルに教えてもらって発見することが多いです。ただ、シカゴ・ハウス・リヴァイヴァルの93年以降のシカゴ・ハウス/ゲットーハウスはアホほど聴きましたし、いまも集めてます。

では、フルトノ君の、フットワーク/ジュークとの出会いについて教えてください。

DJ FULLTONO:ゲットー・ハウスのBPMが年々上がってきて、97年頃からかな? それまで4つ打ちのハウス・ビートだったのが、ローエンドを強調したようなビートにシフトした頃、ジュークという言葉が使われ出しました。2000年代に入ってからシカゴのシーンはデトロイトのゲットー・テックと融合します。2004年にDJゴッドファーザーが〈ジューク・トラックス〉というレーベルをはじめた頃にジュークを意識しはじめました。
 変則的なビート、フットワークに出会ったのは、そのだいぶ後の2009年です。〈ジューク・トラックス〉からリリースされたDJラシャドのアルバム『ジューク・ワークス』を聴いたとき、新しい時代が来たと思いましたね。ハウスの原型をまったく無視した変則ビートだけど、音色や曲構成はあきらかにシカゴ・ハウス。あまりにも唐突な出来事だったんで意味がわかりませんでした。それと同時期かな。僕はその頃SNSのマイスペースでほとんどのゲットー・テック・ジュークのクリエイターと繋がっていたんですが、そのなかのひとり、トラックスマンが、まったく聴いたことのない変則ビートのトラックばかり使ったショート・ミックスを次々にアップしました。鳥肌ものでしたね。トラックスマンのマイスペース・アカウントは、その当時のままネット上に放置されてますんで、いまでもいくつかのミックスは聴くことができますよ。

ほほぉ。

DJ FULLTONO:でも衝撃的な反面、これがクラブで機能するのか? って悩まされましたね。その後シカゴから〈ゲットー・ファイルズ〉ってレーベルができて、DJラシャドをはじめ、聴いたことない名前のアーティストがどんどん出てくるんですが、それらのトラックはしばらくのあいだほとんどクラブでプレイすることはありませんでした。僕以外にもこの手の音を聴いていたDJはいるのかもしれないけど、おそらく現場ではプレイできなかったんじゃないでしょうか。〈プラネット・ミュー〉がそれらの曲をフックアップするまでは。

DJエイプリルなど、〈BOOTY TUNE〉のみなさんとはどうやって知り合って、そして、どうやってそれが〈BOOTY TUNE〉(https://bootytune.com/)へと発展したのでしょうか?

DJ FULLTONO:D.J.G.O.や黒木幸一は結構古くから一緒にいろいろやってたんですが、レーベルに関しては元々は僕ひとりで思い立って2008年に〈BOOTY TUNE〉をはじめました。ロゴ・マークをデザイナーの落合桃子さん(:::STROLL SPACE:::)に作ってもらった以外、運営は僕ひとりでした。その後、D.J.G.O.が僕に曲を20曲くらい送ってきたのをきっかけにトラックメイカーとして参加するようになりました。
 DJエイプリルとは2010年くらいかな。ツイッターを見ていたら、彼が〈ダンス・マニア〉レーベルの音源だけでUstreamをやってて、しかも1曲プレイするごとにその曲をツイートしてたので否が応でも目に付いて、ちょっと話しかけてみたんです。そしたら僕がUstreamで毎週日曜日午後3時からやってた「Booty Tune Ch.」という番組を聴いてくれるようになって、その後、東京で露骨キットさんが主催していた「galaxxxy mixer」という企画に出演した際、遊びに来てくれたのが初対面です。
 その数日後、大阪の地下一階という箱で回した際もわざわざ東京から来てくれました。そのとき、逆さ絵みたいなおっさんの顔がプリントされたTシャツ着てて、これ誰の顔ですか? って聞いたら、「お父さんを探してるんですよ」って言ってた。面白い人だなあと思って自分のいままでの音楽経歴をたくさん話しました。最初はみんな、レーベルを応援してくれる立場って感じだったんですが、気付いたらレーベルの人になってました。みんなでやった方が面白いことになりそうと思って。

シカゴ系をメインにしたDJパーティも大阪や東京で続けていたのですか?

DJ FULLTONO:2005年くらいからだったかな。その頃ってSNSのミクシーがブームで、マニアックな趣味を持つ人たちが繋がりやすくなった時代でした。そこでタカオカさんやDJファミリーと知り合いました。D.J.G.O.が、ゲットー・テックをメインにしたパーティをやろうと言い出したのをきっかけに、「スラムキング」というパーティを大阪でやったことがあります。あと、黒木幸一が東京で「シカゴ・ビーフ」というマニアックなパーティをやっていたみたいです。その頃って、ゲットー・テックがけっこう人気が出た時期でした。タカオカさんやDJファミリーがゲットー・テックのミックスCDをリリースしたり、タカオカさん監修のコンピレーション『ゲットー・ビート・プッシャーズ』も話題になってました。すごくいい刺激をもらいました。

実は功労者がたくさんいるわけですね。ところで、世界的に名の知れた〈プラネット・ミュー〉がフットワーク/ジュークを紹介したことで、いっきにこの音楽は広がりましたが、こうしたある種のブームは、〈BOOTY TUNE〉の活動にフィードバックされていますか?

DJ FULLTONO:もう、完全に恩恵を受けてます(笑)。『バングス&ワークス』の特典ミックスCD(国内オンリー)をやらせていただいたり、文章書かせていただいたり、めちゃくちゃ感謝しています。

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なんか欧米では、(ジュークというより)フットワークと呼ぶことのほうが多いように見受けられますが、どちらの呼称が一般的で、呼び方がふたつあるのは何故でしょうか?

DJ FULLTONO:呼び方はシカゴのアーティストあいだでも異なるくらい実は曖昧なんですが、足を速く動かすダンス「シカゴ・フットワーク」のバトルのために作られたトラックがフットワーク。パーティのために作られたトラックが「ジューク」という風に使い分けているようです。
 でも最近は、フットワークがクラブでプレイされることも多くなってきたので、UKではフットワークと呼ぶのが一般的みたいですね。僕個人としては、フットワークって呼んじゃうとそれまでのジュークと切り離された感じがするので、ジュークでいいんじゃないかなと思います。地方によって呼び方が異なるとか、一般に良くあることですしね。ただ、曲のレヴューとか書くときは使い分けますね。変則的なビートはフットワーク、反復的なビートはジューク。

なるほど、わかりやすい説明ですね。ところで、トラックスマンの来日時の良い話があったら教えてください。

DJ FULLTONO:それより先日のトラックスマンの事件はビックリしましたね。街で強盗に足を撃たれたということだけしかわからないので、本当に世界中のファンが心配してると思います。

そんなことがあったんですか。

DJ FULLTONO:「心配無い、元気だ」とエイプリルのほうには連絡があったみたいですが、心配です。しかし本人はその後も、いつものようにフェイスブックでオススメ音源を紹介し続けてるんです。すごいなあと。
 で、来日時、ホテルが一緒だったんですが、朝に一緒にマクドナルドに行ってハンバーガーふたつ買って、ひとつ店で食べて後はホテルで食べるってすぐに戻ったんです。「ハンバーガーとYoutubeがあればいいんだ」って言ってドアを閉めて、その後もひたすらフェイスブックでYoutubeをシェアし続けてました。シカゴの音楽を世界に紹介するという使命感がハンパないんです。
 パーティ中はパーティ中で学ぶことは多かったです。ほとんど控え室には行かずフロアにいました。東京公演の時はオープンからステージでマイク持ってましたからね(笑)。〈BOOTY TUNE〉のメンバーでゲットー・ハウスをプレイしてると、マイク持ってアーティストをシャウトアウトしてるんですよ。メインゲストが前座のMCもやるという前代未聞の光景でした。大阪では、自分の番が終わったらすぐにうちらの物販スペースに座ってくれて、その後の僕のDJのときもマイクで盛り上げてくれました。帰国後かな、「いますごく疲れてる。でも俺はバッド・ミュージックから世界を守らなければいけないから休んではいられない」ってコメントしてたそうです。熱すぎるでしょ(笑)。

とても良い人なんですね(笑)。僕はあの、クールさを売りしてない、一種のプロ根性にやられたのですが、ああいうリアルな感覚はフルトノ君も共感するところですか?

DJ FULLTONO:僕なんて好きなようにやってるだけですよ(笑)。でもDJはじめたときから心がけてるのは、まだクラブの雰囲気に慣れてないようなアウェイな人たちに衝撃を与えられるようなプレイをしようとつねに心がけてます。

あのとき、お手本にダンスをやっていた日本人の方はどういう人なのでしょうか? あんな風に動けて、羨ましかったです。

DJ FULLTONO:タクヤとウィージーですね。ふたりともシカゴ・フットワークを独学でやってます。あのダンスを取り入れてる人はいままでもダンスの世界にいたと思うんですけど、クラブで本格的に踊ってるのは彼らだけじゃなかと思います。俺の方が上手いって人は現場でどんどん勝負すればいいと思います。あと、そうしないと彼らもしんどいみたいです。フットワークってめちゃくちゃ疲れるんですよ。ふたりともノリがいいもんだから要望あればどんどん踊っちゃって、最後ぐったりしてるという(笑)。

ハハハハ。酒飲んだら無理っすよね。ところで、フットワーク/ジュークは、わりと大ネタのサンプリングを使ってますが、サンプリングはやはりこのジャンルでは重要な要素ですか?

DJ FULLTONO:サンプリングのないトラックものも多いんですが、大ネタ多いですね。大阪のファンクDJのピンチさんが言っておられたんですが、ジュークのいいところは、誰でも知ってる大ネタを使うところ。つまり、マニアのためにやってる音楽じゃないってことだと。僕は音楽を広く聴いてないのでほとんど元ネタわかってないんですが、DJ終わってお客さんに、「○○ネタ最高でしたよ!」とか良く言われるんで、なるほど有名なネタなんだなと気付かされます。

黒人音楽の大ネタを使うのは、それがブラック・コミュニティで生まれたものだからでしょうかね?

DJ FULLTONO:その辺は逆に野田さんに手ほどきいただきたいですわ(笑)。

デトロイトのゲットー・パティで、DJがマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」を高速でミックスしているのを見たとき、この音楽は本当に大衆音楽なんだなと思いました。踊っていた人たちも、子供から中年まで、幅広い世代にまたがってましたね。庶民的な音楽ですよね。おばさんから若い子まで行くような、チリ紙売ってるような雑貨屋で売っているミックスCDがその手のものでしたから。〈BOOTY TUNE〉では、日本におけるこの音楽の広がりについてはどう考えていますか?

DJ FULLTONO:そうですね。最近ネットで、ジュークが盛り上がってると良く耳にするんですが、あれはツイッター上だけの話であって、まだまだ少数派だと思うんです。現に僕は毎日自転車でアメ村を通るんですけど、服屋からジュークが聴こえて来たこと一度も無いですよ。そのくらいまだ認知されてないんです。情報が先行しすぎちゃったのかな。これから面白くなるんですが......。卑屈な意味で言ってるんじゃないです。それくらいいろんな人に聴いて欲しいと思ってるんです。いかに普通に耳に入ってくるかがこれからの課題。そのためにはもっと現場でプレイし続けて広げていかないと。
 いまジュークが好きでDJやライヴやってる人は、まわりで自分だけしかやってないとか、この客層では無理とか、なるべくそういうコンプレックス捨てて、この音楽の力を信じて、自分が描く最高のプレイをして欲しいです。オファーが来なければ家で磨いて準備してればいい。もしくはパーティはじめちゃえばいいと思う。時間は掛かるけど自分はそれが大事だと思ってます。ファッションやポップ・ミュージックの源流を辿ればクラブから生まれてたってこと多いですよね。クラブであんまり聴けないのに上辺だけのシーン作ったって薄っぺらいのはすぐリスナーにバレます。そんなものすぐ終わっちゃう。クラブからいろんな場所に繋がっていくって流れが自然だと思う。いろんなやり方があるんだろうけど、僕にはそれしかできません。

いま、日本で起きている面白いことがあれば、ぜひ教えてください。

DJ FULLTONO:世界で起きていることになるのかもしれませんが、最近海外のメディアが日本のシーンを紹介してくれるケースが多くなってきました。UKのリンスFMでIGカルチャーが日本のジュークをメインに紹介する放送があったり、アメリカの音楽メディア『The FADER』が「Japanese Juke」ってタグ作って、日本のアーティストを立て続けに紹介してくれたり、海外のフォロアーも少しづつ増えてきました。逆輸入で日本に広まるということが起これば楽しそうですね。

〈BOOTY TUNE〉はレーベルですが、やはり、フットワーク/ジュークというジャンルにこだわってのリリースを考えていますか? それとも、もっと幅広く考えているんでしょうか?

DJ FULLTONO:基本〈BOOTY TUNE〉は、僕が使いたいと思うものしかリリースしません。なのでおのずとジューク/フットワーク、ゲットー・テックといった音になります。自分のレーベルでリリースしたものを僕がプロモーターとなって現場でプレイするという構図です。小さいレーベルってそれでいいと思うんです。でも、EPで出すなら1曲くらい遊んでもいいかなと思うので、エレクトロとかゲットー・ハウスとか、何やってくるかわからない感じでも面白いですね。

先ほどの話にも出ましたが、インターネットがあることで、現在は日本のシーンが海外と繋がりやすくなっています。〈BOOTY TUNE〉が受けているネットの恩恵について話して下さい。

DJ FULLTONO:マイスペースで海外のアーティストと繋がれたことは大きいです。いまはマイスペースはゴーストタウン化しちゃってますが、フェイスブックで毎日世界のクリエイターと情報交換してます。翻訳ソフトが手放せません。昔は〈ダンス・マニア〉の盤面の少ない情報でしか知り得なかった謎の人たちと普通にスラング用語ばっかでコミュニケーションが取れてるっていうことはホントにネット様々です。
 一方、距離が縮まり過ぎて厄介なこともあります。シカゴの面白エピソードをネットにうかつに書けなくなくなってしまったことです。翻訳ソフト使ってる人もいますからねえ。直訳されたら茶化してるようにしか見えませんので。でも、こう言うと汚く聞こえるかもしれないんですが、シカゴのアーティストが日本人に対してこれほどウェルカムなのは、日本人がちゃんと金を払うからだと思います。そうじゃない人もいるけど、基本ビジネス・パートナーなんです。そこが他の国の人たちとシカゴの違うところ。でもそうあるべきだと思います。paypalで金送って新曲と交換。今週末パーティがあるから、いいのあったらすぐに送ってくれ! とか、とくにヤバイ曲があればリリースしようかって取り引きが結構日常的になってきました。手法は違えど昔からそういう感じだったのかなあと思ったりします。ネットがそれほど普及していなかった時代、日本の〈サブ・ヴォイス〉とかテクノのレーベルがシカゴのアーティストと密接に繋がっていたことは相当な労力と愛情があってのことだったんだろうなあと。比べることもおこがましいですが、ホントに頭が下がる思いです。

お下品なところとお上品なところとの両方がシカゴ・ハウスにはありますが、フットワーク/ジュークにも同様なことを思いました。ある意味では、お下品なところはわりと取り入れやすいと思います。しかし、あのエレガントさはなかなか出せるものではないと思います。日本では、お下品なところは拡大再生産しやすいんじゃないかと思っているのですが、そうしたバランス感覚についてはどう思われますか? 僕は、トラックスマンのバランス感覚の良いところに惚れたのですが......。

DJ FULLTONO:いやー、お下品な部分ですらなかなか真似できないです(笑)。最近広島のCRZKNY(クレイジーケニー)が、「ジュークは誰でも作れる」と良く言ってるんですが、ホントにその通りなんです。誰でも作れる。けどシカゴのフィーリングを出すのは難しいんです。日本のイメージとして、シカゴの人はドラムマシン適当に叩いて作った。みたいなのが昔から定番となっていますが、それは手法だけの話であって、聴けば聴くほどめちゃくちゃ拘っていることに気付かされます。音の良さとかそういうことではなく、ダンスそのものへの拘りです。
 フットワークで言えば、スネアの場所、タイミング、展開が変わるときの変化の具合。ベースはひとつの種類じゃなくて2種類3種類使う。見過ごしがちな細かい変化が随所に施されてるんです。トラックスマン、ラシャドあたりは本当に完璧だなあと感心します。RPブウに関しては、本当に頭のいい人なんだなあと聴けば聴くほど思います。わざとベタな打ち込みをして、そのビートを騙す為にオトリを挿入してきますから。この表現、全然伝わらへん(笑)。まあアルバム買ってみてください。

わかりました。フルトノ君のソロ・アルバムの予定はまだないのでしょうか? 待っているファンも多いかと思いますが......。

DJ FULLTONO:次に自分がリリースするものがリスナーの想定範囲内の音ではダメだと思っているので、実はここ1年くらい、作っては捨てるの繰り返しでした。自分の頭のなかで鳴っているビートを表現することができなかったんです。それがここ最近、いろんな所でプレイさせてもらったおかげで少しづつ表現できるようになってきたんです。自分で現場でプレイしてみて、コレだというものが揃ったタイミングでリリースできればと思ってます。おそらくまったく色気の無いトラック集になると思います。お店がそれを扱ってくれるのかという問題がありますが。

大丈夫でしょう(笑)。最後にフルトノ君の今後の予定、〈BOOTY TUNE〉の活動の予定などを教えてください。

DJ FULLTONO:間もなくデジタル配信でリリースされる、京都のアーティスト、グニョンピックスのEPはなかなかの力作なので是非聴いて欲しいです。彼の作品はとくに海外からのリアクションがすごくいいんです。あと近況では、7月にシカゴの若手プロデューサー、K.ロックのアルバムをCDでリリースします。これも最高。その他にもリリース予定はたくさんありますのでご期待ください。
 レーベル主催パーティはまだ予定はありませんが、いずれ東京でやりたいと思ってます。まだ企画段階ですが、大阪で、ケイタ・カワカミ君とパーティをはじめるかもしれません(言ってしまったのでもうはじめないといけませんね)。あと、8月31日に〈BOOTY TUNE〉クルーが初めて仙台に遠征します。他、大阪、京都、神戸、東京などでやってますんで、bootytune.com のスケジュールをチェックしてください。

ありがとうございました。また飲みに行きましょう。最後にフルトノ君のオールタイム・ベスト10枚を教えてください。

01) ALL RELEASE (DANCE MANIA & RELIEF)
02) KRAFTWERK / ROBOTS(91'ver.)
03) JEFF MILLS / PURPOSE MAKER 1 (PURPOSE MAKER)
04) JOEY BELTRAM / START IT UP (TRAX)
05) RED PLANET 7 
06) DJ HYPERACTIVE / LOCOMOTIVE (CONTACT)
07) DJ FUNK / KNOCK KNOCK (COSMIC)
08) DJ ASSAULT / ASS-N-TITTIE (ELECTRO FUNK)
09) LEGOWELT/ FIZZCARALDO (BUNKER)
10) DJ RASHAD / BETTA MY SPACE (JUKE TRAX)

カタコト - ele-king

 楽しくて、ダンサブルで、爆弾みたいなカタコトのライヴを見たとき、「これはトラブル・ファンクの再来か」と思ったが、しかし、カタコトのカセットテープ「今夜は墓場でヒップホップ」や配信のみのEP「MARYOKU EP」を聴くと、「これはビースティー・ボーイズの『チェック・ユア・ヘッド』だ」と思った。ラップあり、ローファイ・ロックあり、ファンクあり、パンクあり、弾き語りあり、涙も笑いもなんでもあり、彼女が言うように、「これは玩具箱」ではないか。
 カタコトには、すでに"まだ夏じゃない"という秋を歌った名曲があり、"魔力"という『楽しい夕に』の頃のRCサクセションのようなアシッドな名曲があり、"GET LUNCH"という腹が減る歌がある。たとえ惑星が地球に衝突しようと、カタコトこそ、今年の日本のブラテストホープ、ナンバー・ワンであることは間違いない。
 なお、メンバーは、 RESQUE D(MC)、MARUCOM(Guitar)、YANOSHIT(MC)、K.K.C(Bass)、FISH EYE(Drum)という謎の5人。蟹が大好物で、動物とも仲が良く、事情通によれば、メンバーのうちのふたりは快速東京といういま人気沸騰中のバンドでも演奏しているらしい。また、絵を描くのが得意なメンバーがひとりいて、彼はかつてPSGのPVを作ったとか。
 とりあえず、ele-kingでは、カタコトの詳細がまたわかり次第、お知らせしよう。

https://www.katakoto.info/

LowPass - ele-king

 いま、アメリカでは弱冠20歳の新人ラッパーが、カニエ・ウェストやリル・ウェイン、ひいてはプリンスさえ脅かそうとしている。ジューク以降のビート感覚をアーバン・サウンドに落とし込んだChance The Rapper、その最新ミックステープ『Acid Rap』の話だ。もちろん、ジューク以降ということでなら、Le1fの『Dark York』なんかも強烈だったけれど、ポップ・ポテンシャルという点では『Acid Rap』が抜きんでている。

 では、日本はどうか?
 何と言ってもECDが、超遅れてやって来た全盛期をキープしていると僕は思っているが、新世代と言うことに限定すれば「SIMI LAB以降」というのがうねりを生んでいる。彼らの台頭はヒップホップの原点調整、つまりメッセージ性ではなくダンス音楽としての機能性の回復だったと言えるだろう(ポップのレベルを目指すと言う意味でSALUの存在はひとつの試金石だろうが、彼のラップのすべてを必ずしも肯定できないとすれば、それはやはり、言葉の最終的な着地点が人生、人生、またもや人生、でしかないからだ)。
 ラップの純然たる機能性の追求、という意味では、やはり昨年のOMSBがハンパじゃなかった(彼がジュークを好きなのもわかる)。とくにヴィデオも作られた"Hulk"はショッキングで、同作の映像ディレクターを務めたというラッパーのGIVVN は、そこからの影響をTEE-RUGがルーピングするトラックの上に落とし込んでいく。それが、このLowPassと名乗るデュオ――あるいは「SIMI LAB以降」の決定打だ。

 男女の唐突な告白シーンから、満面の笑みでの街中をスキップ、そして渋谷〈ルビールーム〉のソファー席でダラダラ、からの、最後は巨大なキャップの例のアレで路上を闊歩......、そんな"Skip"のミュージック・ヴィデオが見せる軽快さ、そして湿り気のなさは、ソーシャルメディア(に投影される自己像)に翻弄されて生きる人たちをあざ笑うようだ。他人にどう見られたいか、どう見られたくないか、というか、前提としてそもそも自分という存在にそれほど興味がない人だっているのだ、ということをそこで思った。
 ラップにはQNからの影響も相当、ある。が、その憧憬に没入するどころか、先輩格からお株を奪うくらいの堂々たるパフォーマンスだ。「ラップはリリックよりもライミングだ!」とでも言いたげな態度が、序盤の"Mirror Mirror"から爆発するし、そこからハード・グルーヴィな"Skip"に雪崩れ込む瞬間は本作のハイライトのひとつだ。サウンド・エンジニアはイリシット・ツボイで、リリックの精読や、サンプリング・ネタの精査は抜きにしても、ただこの音を鼓膜に触れさせればそれだけでひたすら気持ちがいい、という状態に仕上げられている。

 トラックは、プレミア的な、オーセンティックでソウルフルなサンプリング・ループものもあれば、ディアンジェロ以降の揺れるビートもあるし、ダウナー・ハウス的なダンス・ビートの利いたエレクトロものもある。Maliyaなる女性シンガーが参加した"Nightfly"は、宇多田ヒカルを感じさせる妖艶なるR&Bの世界で最高。ゴージャスに重ねられたコーラスはもちろん、サビだけではなくバースも自分で蹴る、という気概にアガる。
 大げさで的外れだと笑われるかもしれないが、デ・ラ・ソウルと、そして『Madvillainy』(2004)と『Only Built 4 Cuban Linx... Pt. II』(2009)の鬼子、と言えば、本作のイメージを多少は伝えられるかもしれない。二木信がリストアップした「2012 Top 20 Japanese Hip Hop Albums」の上位作と比べてもなんら遜色ないし、〈アメブレイク〉のインタヴューによればトラックとラップは完全分業制で、必要以上に煮込むタイプではなさそうだから、スキップでもするような気持ちであまり考えすぎずにバンバン進んでいって欲しい。

 こんなに強く、ひたすらヘドバンしたくなる日本語ラップのアルバムって、実はけっこう久しぶりじゃない?

Deerhunter - ele-king

 高校時代、ディアハンターの『マイクロキャッスル』と『ハルシオン・ダイジェスト』にやられてしまった。そう書いただけで、そんなにハッピーな人生を送ってきていないということをほんの少しおわかり頂けるだろう。いまだにそうだが、僕は目の前にある現実を直視できるだけの強さを持ち合わせていない。だから僕は10代半ばにして自分の居場所を探すことを諦めてしまった。というよりは逃げ場を探しはじめた。そこから僕の音楽への冒険がはじまった。
 ディアハンターの『マイクロキャッスル』を聴きながら真夜中に散歩をした。ドリーミーな世界に守られるように。それは僕にひとときの安息を与えてくれた。

 『モノマニア』が発売された。アルバムがリリースされる少し前、ディアハンターがナイトショーでタイトル曲をパフォーマンスした映像を見た。衝撃的だった。ブラッドフォードはジョーイのようだし、指に包帯を巻いている。最後には、スタジオを飛び出した。それは僕にとって初めてのロックンロールの暴走をリアルタイムで感じた瞬間だったかもしれない。僕の友人はその映像を見た日、僕との約束をすっぽかし、パソコンをぶっ壊し、アコースティック・ギターも少し壊した。彼はブラッドフォードのせいだと言った。僕らはまだロックンロールに熱狂することができる。

 アルバムは"Neon Junkyard"で幕を開ける。初めて聴いたときはこれこそディアハンターだと思った。それがたとえ、前作までの僕らを包み込んだリバーブが消え去っていたとしても。

「ガラクタの中から光を見つけるんだ」
 『モノマニア』は、ブラッドフォード・コックスの救われることのない魂の叫びで溢れているが、同時に現実のなかでもがき続けるという強さもたしかに感じる。4曲目の"Pensacola"では、ロックンロールという古さを身にまとった新たなディアハンターが顔を見せる。9曲目は僕の友人を奇行へと走らせた悪名高きタイトル・トラック。曲の半分以上を長々と反復するアウトロが占める。これぞディアハンター。これまでのサウンドとはかけ離れているかもしれないが、兼ねてからブラッドフォードはディアハンターをロックンロール・バンドであると言い続けていた。

 僕は1995年生まれで、僕の音楽体験は最初から過ぎ去ったムーヴメントを追体験し、思いを馳せることではじまった。しかし、00年代後半からシーンに出てきたディアハンターやガールズ、ザ・ドラムス、ノー・エイジといったインディ・バンドに青春時代、リアルタイムで触れることが出来たのはとても誇らしいことだと思う。
 ディアハンターの新たな旅立ちを心から祝福するとともに、僕らは夜には"Neon Junkyard"に集まり、ガラクタのなかから光を見つけよう。僕らの世代にはディアハンターがいる。これは絶望を分かち合うためのアルバムではない。

DJ Koze - ele-king

 風営法改正のためのレッツダンス署名もいよいよ提出され、朝のテレビ番組などでも報道されるようになったが、見ているとどうもマスなメディアの多くでは「なぜ深夜でなければならないのか」というところをあまり上手くは説明できていないような気がする。いや、25時を回ってからクラブから外に出された方がかえって危険だから、とか何とか現実的な反論もあるにはあるのだが、午前3時を回って朝に向かう、ダンスフロアの「あの感じ」を、クラブを知らないひとに説明するのはクラバーにだって難しい。あるいは、それは言葉にせず胸にしまっておくものなのかもしれない。多くの人間がアルコールや何かに酔い、疲労と眠気がさらなる快楽に変換されるあの時間帯は、そこに集ったひとたちが味わえるちょっとした秘めごとのようなものなのだから......。

 マティアス・アグアーヨのシングル"ミニマル"のDJコーツェによるリミックスが大ヒットしたのは、ダンスフロアにおける「あの時間帯」の「あの感じ」を猛烈にロマンティックに再現していたからである。地下のダンスフロアがふいに色づきだす瞬間と言い換えてもいい。「ミニマルはもうたくさん!」と冗談めかして告げられるそのトラックには、しかしミニマルなマナーにきらきらした飾りがまぶされていて、踊り続けるひとたちの体温が宿っているようだった。
 DJコーツェとしては8年ぶりのオリジナル・アルバム。「We need to eat, we need to sleep, and we need......music!」との宣言から幕を開けることによく表れているが、ハンブルクのベテランによる素朴でユーモラスで、温かみのあるテクノ・ミュージックはブレる気配がない。とくべつ斬新ではないけれども、とてもスウィートで、丁寧によく磨かれた愛のある1枚だ。アートワークを見ているとにっこりするが、それは音を聴いてもそうだ......オープニング・トラック"トラック・ID・エニワン?"にカリブー名義でダン・スナイスが参加しているが、そのカリブーやフォー・テット、パンサ・デュ・プリンス辺りを連想する清潔な音使いが魅力でありつつ、彼らよりももっと率直にクラブ・ミュージックであることを謳歌しているように感じる。多くの曲でイーブン・キックとハイハットが等間隔で鳴らされ、控えめだがグルーヴィーなベースも聴ける。と同時に親しみやすいメロディもあるし、音色(おんしょく)の多彩さと肌触りの良さはさすがと言うほかない。
 アパラットが参加したシングルのアンニュイなムードも捨てがたいが、マシュー・ディアがゲストの2曲が僕のお気に入りだ。タイトルからして素敵な"マジカル・ボーイ"のソウル/ファンク色、その甘美なひとときと、"マイ・プランズ"のファンキーなヒップホップの感覚。また、ライでのアンドロジニックな歌で一躍有名になったミロシュはタイトル・トラックで登場しており、そこではまさにライ的なシルキーでジャジーな世界が展開する......しかしあくまで、ミニマルなテクノ・ミュージックとして。
 だから、やはり朝日が昇り始める頃のクラブで聴けたら最高だろうけど、工夫とウィットに満ちた音の位相はもちろん部屋のなかでヘッドフォンで聴いても楽しめる。深夜3時を過ぎてもこうしてキーボードを叩いている自分のような人間にさえ、そして、ダンスフロアの愛の予感を思い起こさせてくれる。

interview with Deft & JJ Mumbles - ele-king

 ポスト・ダブステップ、ジューク、フットワーク、トラップ、フューチャー・ベース......と新たなスタイルが誕生し続けているダブステップ以降のクラブ・ミュージックにおいて、目下、従来のベース・ミュージック・ファン以外も巻き込んで、とりわけレフトフィールドなハウス/テクノのDJやリスナーからも一際注目を集める"UKベース"ムーブメント。それはUK発の例にもれずまたもや明確な定義が難しいハイブリッドなクラブ・ミュージックだが、"UKベース"の面白さはレゲエ由来の低音の太さやスモーキーなムードにとどまらず、むしろハウス、テクノ、エレクトロニカ、ヒップホップ、ダブ、UKソウルetc.の、様々なエッセンスを「ベース」というキーワードのもと自由に組み替えた音楽性の豊かさと、イーブン・キックのDJセットとも親和しやすい楽曲が多い点にあるのだと思う。
 また、UKにおけるダブステップのハウス・シフト傾向とも相まって、既存の各ジャンルからは少しずつはみ出したような、味わい甲斐のあるダンス・ミュージックが"UKベース"の名の下に次々と生み出されている。その事実に、遊び心に満ちたDJやレコード・バイヤーたちがいち早く反応を示しているというわけだ。この現象はかつてUKファンキー、ブロークン・ビーツ等々で見られた、隙間の音楽を愉しむ数寄心の再燃だとも言えるが、一方で「ダブ」を合言葉にディスコもサイケもハード・ロックも料理した"ディスコ・ダブ"が、ダンスフロア/レコードショップの勢力図を塗り替えた時のようなダイナミズムもまた感じられる。そうするとこの春、どうしても連想するのがドメスティック・ミックスCD三部作"Crustal Movement"におけるムードマンの『SF』である。勿論『SF』が"UKベース"だとは軽はずみには言わないし、その『SF』こそ、それが一体何なのかを容易には定義できない音楽なのであるが......。

 そんな折にロンドンから"UKベース"の寵児デフト(Deft)───かの「未来的すぎるセット」でDJシャドウもピックした新鋭アーティストと、彼を擁するレーベル〈WotNot Music〉を主宰するJJ・マンブルズ(JJ Mumbles)が来日した。彼らを招聘したのは〈ライフ・フォース〉。長期にわたるUKでの生活から90年代初頭に日本に帰国したミュージシャン、プロデューサーのMassa氏と、後に〈DOMMUNE〉、名古屋〈MAGO〉、静岡〈CLUB four〉、岡山〈YEBISU YA PRO〉などの音響設計で名を轟かすサウンド・デザイナーのAsada氏とでスタートし、いまではフェスの人気者ともなったニック・ザ・レコードを、20年前に日本へと紹介した老舗パーティである。

 〈ライフ・フォース〉といえば、そのAsada氏によるサウンド・デザイン───原音忠実再生にしてパワフル、でありながらフロアで長く聴いても耳が疲れない、箱が震える音量なのに隣の人の声は聞こえる、といった画期的なクラブ・サウンド設計は〈DOMMUNE〉の前身〈Mixrooffice〉で広く知られることとなる───が大きな特長であり、長年に渡ってパーティを支えてきた心臓部である。
 Asada氏自身も音響設計の視点から「最新のダンス・ミュージックにおける低音の構造がキックやパーカッション主体から『ベース』主体へとシフトしてきているのを感じていた」と話す。デフト、JJマンブルズ、"UKベース"、そうした新しい音楽的潮流は、Asada氏の音響実験精神をも刺激していたようだ。Asada氏は今回ふたりがプレイした渋谷〈seco〉ではウーファーを増量して低音を強調するだけではなく、ベースの輪郭と定位をいままで以上に感じられるような、新たな音響実験に取り組んでいた。それによりもたらされた極めて重く、しかもスピード感に優れたベースの鳴りは、ダンスフロアを未だ見ぬ角度で切り裂いていた。

 それではデフトとJJ・マンブルズのインタヴューをお届けしよう。なぜ〈ライフ・フォース〉が新しく彼らをフィーチュアしたのか、といまだに首を傾げている向きも、その理由をさまざまに感じ取れると思う。取材は東日本有数の労働者街、東京・山谷でおこなわれた。

ロンドンのクラブ・シーンはお金中心で回っているというのが現状なんだよね。そんな状況もある中で、音楽自体が大切にされているパーティに関われているのは嬉しいことだよ。

〈ライフ・フォース〉でプレイした感想はいかがでしたか?

デフト:すごく楽しかった! お客さんも楽しんでくれていたみたいだったし、ファンタスティックな経験だったよ。実はあの夜は、いつもとはちょっと違った感じでセットをはじめてみたんだ。というのは、日本に着いてから〈ライフ・フォース〉のクルーやその周りの人たちと一緒に音楽を聴いているときに、UKファンキーをすごく面白がってくれた人がいたんだ。だったら、パーティに来てくれたお客さんはどんな反応をするかな、と思ってUKファンキーからスタートしてみたら、実際うまく行って。その後テクノに移行してからの方がお客さんはもっと踊っていたかもしれないけど、全体的にとてもうまく行ったセットだったと思うよ。それと〈ライフ・フォース〉は映像・空間演出も素晴らしかったね。

あの日、自分が会場で聞いた声によると、ふたりはやっぱり、ベースミュージックをずっと追いかけているリスナーやDJからの注目度がすごく高くて。そうしたお客さんと、〈ライフ・フォース〉のファンとが混じり合ってそういう反応になったのかもしれませんね。

JJ:比較的年齢層の高いお客さんが集まっていたのも印象的だったよ。ロンドンで僕らがDJしたりするパーティは20歳前後の若いお客さんが多いんだけど、渋谷SECOの〈ライフ・フォース〉にはいろんな年齢層のお客さんが集まっていたよね。しかもパーティに騒ぎに来てるというよりは、音楽に対して熱心なお客さんが多いと感じたよ。

ふたりがプレイした〈ライフ・フォース〉というのはたしかにいろんな年齢層、いろんな音楽的嗜好のパーティ・ピープルから、非常に高い信頼を得ているパーティなんです。というのは、〈ライフ・フォース〉は約20年前にコマーシャルじゃないところでのレイヴをいち早く紹介したりだとか、また1990年代後半、テクノとニューヨークのハウスがメインストリームだった日本のダンスフロアに、サイケデリックなオルタナティヴ・ハウスを持ち込んだりだとか、要は常にリスナーが驚くような音楽体験を、高いクオリティで提示し続けてきたからなんです。で、その〈ライフ・フォース〉がいままた、新しい方向に舵を切ろうという段階で、そのメインアクトとしてあなたたちふたりを選んだという。そのことについて、何か思うところはありますか?

デフト:自分たちを選んでくれたことについては、もちろんすごく光栄に思っているよ。全く想像してなかったことだし、まだ全然ビッグネームではない自分たちを、新しいディレクションのメインDJとして選んでくれたことが本当に嬉しいんだ。最初に話したように、ロンドンのクラブ・シーンはお金中心で回っているというのが現状なんだよね。そんな状況もあるなかで、音楽自体が大切にされているパーティに関われているのは嬉しいことだよ。

そもそも〈ライフ・フォース〉のクルーとはどういう出会いだったんですか?

JJ:実は昨年の夏に、ガールフレンドと一緒に日本に旅行に来てたんだ。DJとかじゃなくて、本当にただの旅行で。それで、ちょうど日本にいるときに〈ライフ・フォース〉のMassaからコンタクトがあったんだ。すぐにパーティがあるからDJしないかって(笑)。以前から彼が、サウンドクラウドで僕のミックス音源を聴いてくれていたみたいで。

Cossato(LifeForce):ちょうど去年秋の〈ライフ・フォース・アルフレスコ〉のDJを探していた頃に、候補に挙がっていたJJ Mumblesの活動をフェイスブックでチェックしたところ、「どうもこの人、いま日本にいるらしい」と(笑)。それでMassaさんがコンタクトを取って、で1ヵ月後にもう一度来日してもらって〈アルフレスコ〉でプレイしてもらったという。今度、6月14日と22日の〈ライフ・フォース〉に呼ぶアントン・ザップ(Anton Zap)と一緒にプレイする予定だったんですけどね。そのときはアントン・ザップはビザの都合で来られなかったですけど。

その後、昨年12月に〈ライフ・フォース〉でJJがプレイしたときはベース・ミュージック主体、今回は四つ打ち主体と結構違うセットだった印象なんですけど、それは東京のクラウドや〈ライフ・フォース〉に合わせてきたところがあるんですか、それとも自身のなかでハウス・テクノ主体の音がホットだということなんですか。

JJ:実は12月は体調が悪くて、ジュークみたいな激しい曲をたくさんかけることで自分自身を鼓舞していたようなところがあって(笑)。今回はロシアのディープ・ハウスなんかを結構かけたんだけど、そのなかには〈ライフ・フォース〉のクルーから教えてもらった曲も多かったんだ。自分としてもその辺の音が好きだしね。自分の何となくの印象だけど、ジュークとかをかけたときよりも、今回の方が反応が良かったような気がしているよ。ツアーのアフターパーティ(インタヴューの3日後に渋谷kinobarで開催された)では、チルアウトしたUKビートをたくさんかけようと思っているんだ。

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自分たちの音楽はハウス、ヒップホップ、ベースミュージック、そういったものを全部ミックスしてやっているものだと思ってる。レーベルのアーティスト達とは人間的にもちゃんと付き合っていけて、人間同士の関係性を築けるかどうか、というところはすごく重視している。

ところでふたりはおいくつなんですか?

JJ:26歳(1986年生まれ)。

デフト:23歳(1989年生まれ)。

パーティでプレイする側も遊ぶ側も若いんですね。ロンドンでふたりが関わっているパーティ・シーンについてもう少し聞きたいのですが、パーティ・オーガナイズもやるんでしたっけ?

JJ:〈WotNot Music〉でリリースがあったときには、レーベルとしてリリース・パーティをやっているよ。レーベルのクルーみんなでレギュラー・パーティ的なものも運営していきたいとは思うんだけど、ロンドンはいま、そういうパーティをやるには難しい状況でもあって。パーティが飽和状態なのと、日本みたいなサウンドシステムがいいクラブが少ないんだ。なのでレギュラー・パーティをやるには難しい面もあって。

デフト:去年、ロンドンで教会を借りてD.I.Yスタイルのパーティをやったんだ。メンバーは僕、DA-10、マニ・D(Manni Dee)、アルファベット・ヘブン(Alphabets Heaven)、アニュシュカ(Anushka)、チェスロ・ジュニア(Chesslo Junior)という〈WotNot Music〉周辺の仲間たちで。PAは自分たちで入れたし、ヴィジュアルはウィー・アー・イェス(WeAreYes)というチームに担当してもらって、普通のクラブ・イヴェントとは少し違った感じで、ライヴをたくさん入れて。

JJ:教会だから椅子があるよね。最初はみんな椅子に座ってチルしながら映像を楽しんでる感じだったんだけど、だんだん盛り上がってくると前の方に出て踊りだすんだ。他にない雰囲気で楽しかったよ。

デフト:なんでそういうパーティをやったかというと、クラブでパーティするというマジョリティに対して、自分たちはちょっと違うことをやりたかったんだ。DJだけじゃなくヴィジュアルやライヴ・アクトも一緒くたに楽しんでもらうというのが目的で、これまでにもウェアハウスや電車のガード下とか、クラブじゃない場所でそうしたパーティを開催してきたんだ。とはいえそうしょっちゅうやっているわけじゃないんだけど、ロンドンでマジョリティなクラバーたちも、だんだんそういうパーティの楽しさに開眼してきているように感じているよ。

ロンドンでのふたりの活動の様子をいろいろ聞いたのは、日本でもいま、ふたりがやっているようなイギリス発のハイブリッドなベース・ミュージックが「UKベース」というキーワードのもと非常に注目されてるからなんですけど、ふたりの活動や〈WotNot Music〉の音楽は、地元のロンドンでも「UKベース」というワードで盛り上がっているんでしょうか。それとも何かまた別のキーワードもあるんでしょうか?

JJ:自分たちの音楽はハウス、ヒップホップ、ベース・ミュージック、そういったものを全部ミックスしてやっているものだと思ってる。それを言い表す名前はないけれど、他の誰かに説明する時に「UKベース」という言葉を使うことはある。けど、自分たちとしてはUKベースという言葉はそんなに好きじゃなくて。〈WotNot Music〉に関してもUKベースだけじゃなくて、いい音楽なら何だってリリースしたいと思っているんだ。例えば(WotNot Musicからリリースしているアーティストのなかでも)DA-10とチェスロ・ジュニアとでは、作っている音楽も全然違うよね。DA-10はハードウェアのみでビートミュージック的なサウンドを作るアーティストだし、チェスロ・ジュニアのサウンドはトラップ・ビートの進化型ともいえるものだし。

いま話に出たように〈WotNot Music〉のサウンドは幅が広いのが特徴ですね。そうなると、リリースする音源を選ぶ基準はどうなっているんですか?

JJ:これまでのリリースに関して言えば、レーベルに関わる全員が楽しんで聴けるものばかり、ということになる。デモもいろいろ届くんだけど、自分でいろんなところに出かけていって、レコードを掘るようにアーティストをディグするのが好きなんだ。あとリサーチの一環としてサウンドクラウドなんかでもいろいろ聴くけど、例えば100回しか再生されてないけどメチャクチャいい曲があるとするよね。そういうのを見つけるとものすごく嬉しいんだ。もっとたくさんの人に聴いてもらいたい、と思えるような人を見つけるのが楽しいんだよね。あと、アーティストのパーソナリティは重視しているんだ。人間的にもちゃんと付き合っていけて、人間同士の関係性を築けるかどうか、というところはすごく大切だと思っている。

例えば〈WotNot Music〉がフックアップしているアーティストに、沖縄在住でまだ17歳のスティルサウンド(Stillsound)という人がいますよね。彼についてもそういう感じだったんですか。

JJ:スロウ・ディスコというのかスロウ・ファンクというのか、そういう曲を作っているアーティストを1年ぐらいずっと探していて、サウンドクラウドでいろいろ聴いているなかにスティルサウンドがいたんだ。すごくツボだったね。まだ17歳ですごく若くて、例えばミキシングのやり方や音の作り方も未熟というか若さを感じるサウンドなんだけど、そこがすごく気に入ってるんだ。未完成なところもあるけどすごく才能を感じるし、これからどんどん伸びていくアーティストだと確信してるよ。今年の終わりにはロンドンに来てもらって、一緒にギグをする予定なんだ。

DA-10 - The Future Is Futureless


Chesslo Junior - Move South


Stillsound - Live A Little


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DJシャドウ、デイデラス、ジャイルス・ピーターソン、そして〈ライフ・フォース〉......僕らは新しい音楽というものにすごく興味があって、それを常に探し続けているという共通点はあるんじゃないかな。

まあ、ふたりも若いと思いますけど(笑)、これまでにはどんな音楽を聴いてきたんですか?

デフト:いちばん最初はブリンク182とかランシド、ミスフィッツみたいなポップ・パンクが好きで、12歳のときにドラムを叩きはじめたんだ。で、いつからだったか、義理の兄が音楽制作ソフトのFL Studioを持っていたから、それをいじりはじめたんだよね。最初はそれでループを組んでるぐらいだったんだけど、だんだんプログラミングを覚えていって。そこから聴く音楽もヒップホップ、トリップホップになって、そこからサンプリングに興味を持ちはじめたんだ。大学に入る頃には、ボノボ、クアンティック、シネマティック・オーケストラとか、チルアウト/ラウンジ的な音楽を聴いていたかな。そこからドラムンベースやダブステップ。フライング・ロータスや〈ブレインフィーダー〉みたいなのを聴きはじめて。だから何か特定の、というわけではなく、興味を持った音楽をどんどん聴いていくタイプなんだよね。まわりの友だちはサッカーだとか、スポーツに熱心な人が多かったけど、自分は16歳ぐらいのときに、ずっと音楽をやっていこうと思うようになったんだ。

JJ:僕の場合は、義理の父がソウルとかルーツ・レゲエのレコードをすごくたくさん持っていて、そうした音楽がルーツなんだ。祖母もクラシックが好きだったし、家族みんなが音楽好きだったから、いろんな音楽を聴きながら育った。祖父が南アフリカのケープタウンの出身で、ジャズ・バンドでピアノを弾いていたから、自分も音楽をはじめたのは祖父からの影響もあるのかな。最初に大きく惹きつけられた音楽はヒップホップで、そこからMPCで自分でビートを作ったりしはじめたんだ。
 最初にビートを作りはじめたのは13歳のときだね。その頃はマッシヴ・アタックとかトリッキーがすごく好きだった。とくに、父親が持っていたマッシヴ・アタックvsマッド・プロフェッサーの『ノー・プロテクション』のレコードが好きで。アメコミ風のジャケットの絵も含めて、あの作品にはすごく影響を受けてるよ。家族もそうなんだけど、まわりの友だちにも昔から音楽好きが多くて、新しいCDやレコードが出るたびにいろいろ交換し合って聴いてたんだよね。

デフト:僕のまわりには、音楽好きな友だちはあまりいなかったんだ。ジェド(JJ)と知り合って、彼からもいろんな友だちを紹介してもらったりして、ようやく自分と同じような志向の人に巡り合えたという感じ。だからすごく嬉しかったんだ。

JJ:デフトの音源は元々ネットで聴いてたんだけど、たまたま共通の友だちがいて紹介してもらったのが僕らの出会いなんだ。最初に会ったのは約2年前。Wotnotの最初のパーティのときだった。あとそうそう、ヒップホップのビートをメインに作っている時期があったんだけど、その頃のクルーと一緒にUKをツアーして回ったことがあって、そのときにビジネスとして音楽をやるための基礎を学んだんだ。その経験が、〈WotNot Music〉のレーベル運営にすごく役立っているよ。

クラブ、パーティ体験については何かありましたか? クラブで忘れられない体験だとか。

デフト:初めてクラブに行ったのは16、17歳の時なんだけど、その頃のクロイドン(デフトの地元、南ロンドン。かつてあったレコード店〈Big Apple〉と共にベース・ミュージック縁の地として知られる)にはクラブ・シーンといったものはなくて、あったとしてもコマーシャルな感じで、音楽を聴きに行くというよりはお酒を飲んで騒ぐための場所という感じで、自分が行ったのもそういうクラブだったんだよね。その頃はダンス・ミュージックというよりもヒップホップにハマってたし。
 自分がクラブ・ミュージックに目覚めたのはブライトンの大学に入ってからで、ある時にDJシェフ(DJ Chef)のプレイを聴いたんだ。そのとき彼が、当時はまだリリース前の、フライング・ロータスのマーティン・リミックスをかけた瞬間があって。それで初めて、クラブのサウンドシステムや空間でクラブ・ミュージックをすごく楽しむことができた。その瞬間にクラブミュージックに開眼したというか、「これだ!」と思ったんだよね。自分もこういう音楽がつくりたいと思って、その時から音楽をやってるつもりだよ。

JJ:自分はクラバーだったことは一度もないんだ。クラブ・ミュージックは部屋でヘッドフォンで楽しむもので、クラブという場所はナンパしに行く場所だと思っていた(笑)。自分の好みとしてはクラブで遊ぶよりも、ライヴ演奏を聴くことの方が好きかもしれないな。ラップトップでもバンドでも。

さっき音楽遍歴について伺いましたけど、デフトのバイオグラフィを見ると、トキモンスタのリミックスコンペティションであったり、デイデラスのツアー・サポートだったり、またDJシャドウがあなたの曲『Drop It Low』をプレイしたらしい、など、国境や世代に関わらずいろんなアーティストとの絡みが出てきますよね。彼らと自分自身との間で、共有しているものは何だと思いますか?

デフト:うーん、自分ではよくわからないけど、ひとつ挙げればヒップホップが好きで、それが基本にあることなのかなぁ......。
 シャドウに関しては、自分の曲をデモで送ったりしたわけじゃないから、彼がただ自分のトラックを見つけて気に入ってくれて、自分のセットに入れてくれたんだよね。シャドウはすごく有名になったいまでもアンダーグラウンドな音楽にちゃんと目を向けて、ずっとディグし続けている人なんだっていうことを実感できたし、すごく嬉しい出来事だったよ。
 デイデラスとはツアー・サポートをした時に結構長く話をしたんだ。すごく情熱的な人だった。一緒のツアーがきっかけで、今もビートを交換したりしているんだ。うん、いま名前が挙がった人たちと僕とで何か共有していること......ひとつ言えるのは、僕らは新しい音楽というものにすごく興味があって、それを常に探し続けているという共通点はあるんじゃないかな。

Deft - Drop It Low


そういう、アンダーグラウンドのフレッシュなサウンドを一貫してディグし紹介し続けている存在としては、あなたたちの国にはジャイルス・ピーターソンもいますよね。そしてデフトは、ジャイルスのレーベル〈Brownswood〉から出ているギャング・カラーズ(Gang Colours)のEPにリミックスを提供しています(『Fancy Restraunt (Deft Remix)』)。



デフト:そのリリースのオファーにはものすごく驚いたし、同時に本当にすごく嬉しかったんだよ。ギャング・カラーズ自身から「サウンドクラウドで君の曲を聴いたんだけど、リミックスをやってくれないか。マシーンドラムのリミックスなんかと一緒にリリースしたいと思ってるんだけど」というメッセージが届いて、それを読んで即決したんだ。彼の曲は以前から好きだったし、「自分の曲を聴いてくれて、好きになってくれる人がいるんだ」という意味でもすごく自信となったし。自分のキャリアもそれをきっかけとして上がっていったところがあるしね。

なるほど。ジャイルス・ピーターソンについてはどう思いますか。

デフト:彼がホストしているラジオ番組でも常に新しい音楽をプレイしているし、自分も影響を受けてるね。〈Brownswood〉を運営しているスタッフも人間的にもすごく良くて、そういうところも尊敬しているんだ。ジャイルスの凄いところは、エレクトロニック・ミュージックだけでなくてワールド・ミュージックやヒップホップとかも含めて、常に新しいものを、幅広く紹介し続けているところだよね。UKでそういったことを続けているのは、もしかしたらジャイルスただひとりかもしれない。ベンジ・Bも昔はそういうところがあったけど、いま彼はハウスやベース・ミュージック寄りの活動が中心だしね。

JJの方は、単独名義での初リリースは〈WotNot Music〉カタログ2番の『Boxes & Buttons EP』になると思うんですけど、美しいUKソウルのオリジナル・ヴァージョンと、6ヴァージョン収録されたリミックスとで、ノース・ロンドンとUKのベース・ミュージックのいまが象徴されているように思えるんですよね。フィーチャーしている女性シンガーのナディーナ(Nadina)も魅力的ですし。このシングルが完成した背景を教えてください。

JJ Mumbles - Boxes and Buttons (Jamie Wilder remix)


JJ:ナディーナは当時、僕の友だちと付き合っていたんだけど、彼女の声が最初から好きで。どんな風に唄ってもらうかというシンガーとしてのプロデュース、ディレクションも僕がやったんだ。あのEPに入ってる僕のビートが完成して2、3日後に彼女を家に呼んで、そこで歌ってもらって完成した。EPに6ヴァージョンもリミックスが収録されているのは、そう、いろんな音をつめ込んだEPにしたかったからだね。友人の中には「ヴァージョンの数が多すぎるんじゃないか」と言う人もいたんだけど。
 『Boxes & Buttons』は、歌詞も僕が書いたんだ。音楽をしている者として「あまりお金はないけれど、楽しくやるのにそういうことは関係ないんじゃないか」みたいなことを唄っているんだ。一方で自分のなかにある、不安な気持ちだったりね。いまは別の男性シンガーと、新しい曲に取り組んでいるところなんだ。これはファンクというか、スロウなハウスのようなトラックになりそうだよ。

デフト:その曲は僕もまだ聴かせてもらってないんだ。

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未来は若者の力にかかっているというのは、日本もUKも同じだよね。若者をきちんと育てていかなくてはならない、というのは日本にもUKにもすごく重要なことなんじゃないかな。

音楽を世に出すことで、何か伝えていきたいメッセージはありますか?

デフト:メッセージ性は曲にもよるけど、何で音楽をやっているのかというと一番はやっぱり楽しいからだし、メシを食っていくために頑張るものでもあるよね。曲を作る、ということはすごくパーソナルな行為なので、その動機に関しても、やっぱりパーソナルな部分が大きいよ。つまり何かのメッセージを伝えたいというよりは、自分はこれまでいろんな音楽を聴いて育ってきたし、それによっていまの自分があるわけだから「他の人にも自分の音楽を聴いてもらいたい、自分が音楽にしてもらってきたことを他の人にも経験してもらいたい」ということが目的やモチベーションになっている。だからとくに何か、ポリティカルなメッセージとかがあるわけではなくて。あとは「自分の感情を表現する手段」という部分もあるかな。その時のフィーリングによってつくる曲も違ってくるしね。感情やフィーリングを曲を通じて表現するために、昇華するために音楽を作っているというのはある。

JJ:自分は本当に、曲を作っていれば1週間でも2週間でも作り続けられるような人間だし、本当に楽しいということが第一だよ。ただ自分の場合はそれと同時に、メッセージを伝えたいという気持ちもある。さっき話したような、歌詞のある曲を作っているのもそういう理由、動機からで。自分は良質なポップ・ミュージックを作りたいという思いがあるんだ。それは17、18歳ぐらいのキッズのための音楽というよりは、もっと大人が楽しんで聴けるような音楽、そういうものを作りたい。それは自分がソウル・ミュージックなどを聴いてきたというバックグラウンドがあるからなんだけど、自分もそういうところを目指してみたい。あと自分の場合はポリティカルな部分で思うこともあるから、もしそれを音楽を通じて表現できるのであれば、やっていきたいとも思っている。

それはどういった思いなんですか。

JJ:仕事でユースワーカー(若者の自立を支援する専門職)をしているから、10代の子たちと日常的に接しているんだけど、2011年のイギリス暴動に見られるように、僕らの国でも若者を取り巻く状況は厳しいんだ。お金があれば大学に進んだりもできるけれど、そういうチャンスがない人も多くて。若い人たちになるべくたくさんのチャンスが与えられるような社会にしていきたい、と僕は思っている。

音楽のメッセージ性というのは、JJの場合はずっと親しんできたソウル・ミュージックなどの影響なんですよね、きっと。あと、例えばルーツ・レゲエにもいわゆるレベル・ミュージック、被抑圧者の音楽という面がありますけど、現在のUKのベース・ミュージックにもそうした面は引き継がれているのでしょうか?

JJ:まず、いまのUKで言う「ベース・ミュージック」というのは、ルーツ・レゲエの系譜というよりは、パーティ・ミュージックとしての側面が強いと思う。ルーツ・レゲエみたいに、抑圧された人たちが声を上げるための音楽としては、グライムやロード・ラップがそれにあたるだろうね。グライムやロード・ラップで唄われていることや音楽のスタイルはすごくアグレッシヴなのはたしかだけれど、それは彼らが正直に自分たちの気持ちを表現していることの表れなんだ。

デフト:ベース・ミュージックにも「コミュニティ」があるけど、それは政治的なものというよりもパーティをするために集まっているものだよね。一方、グライムやロードラップのコミュニティは自分たちの声を上げて、何とかして状況を変えるために力を合わせているんだけど。誤解している人も多いみたいだけど、グライムやロードラップはギャングスタ・ラップとは全然別物だよね。

JJ:2011年のイギリス暴動に話を戻すと、アッパー・ミドル・クラスといわれる人たちよりも上の階層の人たちは、何で暴動が起きたのかをまったく理解していないんだ。単にトラブルメーカーの若者たちが起こした騒ぎだとしか認識してないし、ちゃんとした形で理解しようという動きもない。若者がトラブルを起こしたから静かにさせなきゃ、というぐらいのことしか考えてないんだよ。
 「階級の低い」子どもたちがそこから抜け出すための機会が全然与えられずにそこにとどまるしかなくて、抜け出そうとしても抜け出せないという状況になっている。だからこそ子どもが犯罪に走ってしまうという悪循環があるわけだし、あの暴動にはそういう背景があるんだけど......僕は、これからそういう若者に力を与えることで、社会を変えていかなくてはいけないと思っている。〈WotNot Music〉も、レーベルがもうちょっと大きくなったらインターンを募集したりして、若者たちが犯罪など以外で生きていく術を見つけるための手助けをしていきたいと思っているんだ。

このインタヴューを行っている山谷という地域は日雇い労働者の宿場街なんですけど、いまはこの街に長期滞在している労働者の多くは、生活保護を受けて過ごしているんです。日本もイギリスに追随して新自由主義主義の道を進んでから格差がどんどん広がってきていて、このまま行くと、いまJJが教えてくれたイギリスの状況のようになりかねないですね。そんななかで2年前の原子力発電所の爆発事故に際して政府への不信・怒りが強くなっていて、日本でもかつてないほど、社会運動に自発的に参加する若者が増えてきているんです。パーティ・ピープルのなかにもそういう子は多いですし、彼らの精神的支えであるようなラッパーやミュージシャンも出てきています。社会運動に関しては、イギリスは日本の大先輩ですから。

JJ:未来は若者の力にかかっているというのは、日本もUKも同じだよね。そうでなければディストピアというか、『ブレードランナー』みたいなお金持ちだけがいいところに住んで、それ以外は皆スラムに追いやられる、という世界になってしまうよ。そうならないためにも若者に投資して、若者をきちんと育てていかなくてはならない、というのは日本にもUKにもすごく重要なことなんじゃないかな。
 たしかに僕も日本人には、例えば「労働時間がメチャクチャ長くてもそんなに文句を言わない」みたいなイメージを持っていた(笑)。一方でUKは反政府運動の歴史がすごく長くて、行動の参考にできるものがたくさんあるから、その点はいいといえるね。日本もUKも、お互い勉強しあって進んでいけばいいんだと思うよ。

本当にそうですよね。

JJ:あと、そうだ。さっきも言ったけど僕の祖父母は南アフリカのケープタウン出身で、まだアパルトヘイトが実施されていた時代をそこで過ごしたんだよ。当時のケープタウンは、アパルトヘイトにちょっと反対するようなことを言っただけで牢屋に入れられたりするような状況だったという。その点、いまの自分は政治的なメッセージを発したり、行動したぐらいでは逮捕されたりはしないから、それを思うと勇気をもらえるね。祖父母から学んだことというのは「その人を憎むのではなくて、その人がそういうことをしている理由は何かというのを考えなさい」というメッセージなんだ。

最後に、今後の予定を教えてください。

デフト:まずはリミックスを提供した、フランスのアーティスト・123MRKの作品が〈インフィニト・マシーン(Infinite Machine)〉というレーベルから5月早々に出る。それと〈WotNot Music〉からも新しいEPを出す予定で、これはほぼ作り終わっているんだ。あとはオランダの〈Rwina〉からの新しいEPとか、ほかにもいくつかリリースの話が来てる。リリース先は未定だけど、アルバムの制作も進行中だよ。あとはフェスでのDJ。ヨークシャーとマンチェスターとでフェス3本、あとカンタベリーのフェスでは〈WotNot Music〉でステージを1つ用意するんだ。DJじゃなくてライヴのセットも準備しているよ。

JJ:僕自身のリリース予定は、先ほど言った、DA-10のDAnalogueをシンガーにフィーチャーしてのシングル。〈WotNot Music〉としてはDA-10の新しいEP『The Shape Of Space』と、それから僕がコンパイルするコンピレーション『Dancefloor Sweets vol.1』が出たばかり。これはヨーロッパのアーティスト中心の内容で、これをチェックしてもらえば、いま自分がどんな人たちに注目しているかががわかると思う。次のリリースにはグレン・ケリー(Glenn Kelly)というロンドン郊外のディープ・ハウス・ガイのシングルが控えている。その後はK15というアーティストのアナログ・リリース。これには大阪のメトメ(Metome......3月にファースト・アルバム『OPUS cloud〈moph records〉』をリリースした新鋭)と、カイディ・テイタム(Bugz In The Atticのメンバー)とによる2ヴァージョンのリミックスを収録予定なんだ。
 アルバムも2枚出したいと思っていて、ひとつはさっき話に出た沖縄のスティルサウンド。あともうひとつはサッカー96という名義でも活動するDAnalogueと10-Davidによるふたり組・DA-10。彼らは〈WotNot Music〉が初めてリリースしたアーティストなんだけど、プログラミングではなくて、自分たちでハードウェアを叩いたり弾いたりして曲を作るんだ。そういうスタイルのアーティストがいることが、〈WotNot Music〉としてはすごく重要なんだよ。あとは、〈ライフ・フォース〉と〈WotNot Music〉でコラボレーションしてコンピレーションCDをリリースする話も進行中なんだ。

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