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DJ Koze

Experimental Minimal Techno

DJ Koze

Amygdala

PAMPA

Amazon Apple Music

木津 毅 Jun 04,2013 UP

 風営法改正のためのレッツダンス署名もいよいよ提出され、朝のテレビ番組などでも報道されるようになったが、見ているとどうもマスなメディアの多くでは「なぜ深夜でなければならないのか」というところをあまり上手くは説明できていないような気がする。いや、25時を回ってからクラブから外に出された方がかえって危険だから、とか何とか現実的な反論もあるにはあるのだが、午前3時を回って朝に向かう、ダンスフロアの「あの感じ」を、クラブを知らないひとに説明するのはクラバーにだって難しい。あるいは、それは言葉にせず胸にしまっておくものなのかもしれない。多くの人間がアルコールや何かに酔い、疲労と眠気がさらなる快楽に変換されるあの時間帯は、そこに集ったひとたちが味わえるちょっとした秘めごとのようなものなのだから......。

 マティアス・アグアーヨのシングル"ミニマル"のDJコーツェによるリミックスが大ヒットしたのは、ダンスフロアにおける「あの時間帯」の「あの感じ」を猛烈にロマンティックに再現していたからである。地下のダンスフロアがふいに色づきだす瞬間と言い換えてもいい。「ミニマルはもうたくさん!」と冗談めかして告げられるそのトラックには、しかしミニマルなマナーにきらきらした飾りがまぶされていて、踊り続けるひとたちの体温が宿っているようだった。
 DJコーツェとしては8年ぶりのオリジナル・アルバム。「We need to eat, we need to sleep, and we need......music!」との宣言から幕を開けることによく表れているが、ハンブルクのベテランによる素朴でユーモラスで、温かみのあるテクノ・ミュージックはブレる気配がない。とくべつ斬新ではないけれども、とてもスウィートで、丁寧によく磨かれた愛のある1枚だ。アートワークを見ているとにっこりするが、それは音を聴いてもそうだ......オープニング・トラック"トラック・ID・エニワン?"にカリブー名義でダン・スナイスが参加しているが、そのカリブーやフォー・テット、パンサ・デュ・プリンス辺りを連想する清潔な音使いが魅力でありつつ、彼らよりももっと率直にクラブ・ミュージックであることを謳歌しているように感じる。多くの曲でイーブン・キックとハイハットが等間隔で鳴らされ、控えめだがグルーヴィーなベースも聴ける。と同時に親しみやすいメロディもあるし、音色(おんしょく)の多彩さと肌触りの良さはさすがと言うほかない。
 アパラットが参加したシングルのアンニュイなムードも捨てがたいが、マシュー・ディアがゲストの2曲が僕のお気に入りだ。タイトルからして素敵な"マジカル・ボーイ"のソウル/ファンク色、その甘美なひとときと、"マイ・プランズ"のファンキーなヒップホップの感覚。また、ライでのアンドロジニックな歌で一躍有名になったミロシュはタイトル・トラックで登場しており、そこではまさにライ的なシルキーでジャジーな世界が展開する......しかしあくまで、ミニマルなテクノ・ミュージックとして。
 だから、やはり朝日が昇り始める頃のクラブで聴けたら最高だろうけど、工夫とウィットに満ちた音の位相はもちろん部屋のなかでヘッドフォンで聴いても楽しめる。深夜3時を過ぎてもこうしてキーボードを叩いている自分のような人間にさえ、そして、ダンスフロアの愛の予感を思い起こさせてくれる。

木津 毅